説明

多機能性多価血管新生阻害薬

多機能性多価血管新生阻害薬は、血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックするポリペプチドと、プロテイナーゼ感受性領域によって分離された、オリゴマー化ドメインおよび機能的に活性な血管新生プロセスインヒビターまたはモジュレーター領域を含んでなるポリペプチドとを含んでなる融合タンパク質で構成されている。これらの阻害薬は、血管新生プロセスによって起こる病変、例えば、癌、関節リウマチまたは乾癬の治療および予防に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明分野
本発明は、血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックするポリペプチドと、プロテイナーゼ感受性領域によって分離された、オリゴマー化ドメインおよび機能的に活性な血管新生プロセスインヒビターまたはモジュレーター領域を含んでなるポリペプチドとを含んでなる多機能性多価血管新生阻害薬として有用な融合タンパク質に関する。本発明はまた、前記融合タンパク質の生産に有用な遺伝子およびベクター構築物にも関する。
発明の背景
【0002】
血管新生は、器官または組織において既存の血管から新たな血管の形成を導く生体内プロセスである。血管新生は、内皮細胞によって分泌されたプロテイナーゼの作用による基底膜の分解で始まり、前記内皮細胞の移動および増殖を続けて、周辺細胞での管腔、基底膜および外包の形成で完了する。
【0003】
血管新生は、女性の月経周期および創傷治癒と関連する現象は例外として、健常成人の正常な生理学的状態では起こらない。しかしながら、血管新生プロセスの不均衡は、病理学的障害、例えば、とりわけ、関節リウマチ、乾癬、バルトネラ症、移植臓器拒絶反応、出血および眼血管新生(失明の最も多い原因の一つ)、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、血管新生緑内障、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、翼状片、ルベオーシス、角膜新生血管系、固形腫瘍、血管腫、ならびに腫瘍増殖および転移の進行の一因となる。
【0004】
血管新生は、さらに、腫瘍の進行性増殖および転移拡散において重要な役割を果たす。腫瘍は、増殖するために新しい毛細血管の発生を絶えず刺激していると思われる。腫瘍で生じた新しい血管は、悪性細胞に、それらの悪性細胞が循環に入り、遠位部位に転移をもたらし得る経路を提供する。もしこの血管新生活性を抑制するか、またはなくすことができたとすれば、たとえ腫瘍が存在したとしても、その腫瘍の発達は起こり得ない。
【0005】
このような理由で、様々な研究グループが血管新生の進行によって起こる病変を治療または予防するための治療薬として有用な、血管新生に対して抑制作用を及ぼす化合物(血管新生阻害薬または抗血管新生薬)を発見しようと取り組んでいる。
【0006】
腫瘍に関しては、腫瘍は新しい血管を形成することなく、増殖または別の器官に転移することはないため、血管新生スイッチが腫瘍進行の初期事象となるということが認められている。血管新生経路の様々なレベルで介入するいくつかの抗血管新生戦略が開示されている:増殖因子活性の阻止;細胞外マトリックス(ECM)プロテイナーゼの阻害;内皮細胞(EC)での直接誘導;内因性阻害薬の過剰調節など。内因性血管新生阻害薬は、毒性のない非免疫原性薬剤であると思われることから、癌療法では特に注目を受けてきた。少なくとも10種類の内因性血管新生阻害薬が同定されており[O'Reilly, M.S. et al, Cell, 88: 277-285, 1997]、それらのうちで最も有名なものがアンジオスタチンおよびエンドスタチンである。
【0007】
エンドスタチン(ES)は、内皮細胞移動および血管新生の阻害薬であり、動物モデルにおいてエンドスタチンが腫瘍増殖を抑制することが証明されている。前記作用に関与する機構は不明であるが、それらの作用が細胞表面受容体結合(インテグリンおよびヘパラン硫酸、VEGFR−2)、メタロプロテイナーゼおよびECM成分に関わっていることが示されている。ESは、コラーゲンXVおよびXVIIIのNCIドメインに由来し、そこからタンパク質分解によりESが三量体形で放出され、それらが約20kDaの単量体エンドスタチンにさらに変換される。NC1 N末端には、タンパク質分解切断後にエンドスタチンを放出する異なるプロテイナーゼ感受性部位を含むフレキシブルヒンジ領域によって、およそ180残基のESモジュールと連結された約60残基の三量化ドメインが存在する。
【0008】
Boehmら[Nature, 390:404 (1997)]により、いくつかの腫瘍(ルイス肺癌、繊維肉腫および黒色腫)を移植したマウスの実験モデルとしての使用が開示されている。ESで処置していないマウスでは、前記腫瘍が急速に増殖し、その動物は死に至った。これに対し、腫瘍成長後にESで処置したマウスでは、ほぼ顕微鏡的大きさに達するまで腫瘍容積の減少が認められた。動物モデルにおいて、担腫瘍マウスのESでの周期的治療は腫瘍の完全緩解をもたらした。しかしながら、ESで行った臨床試験では、有効な腫瘍増殖阻害は報告されておらず、腫瘍緩解はまれにしか見られなかった。残念なことに、これは例外ではなく、様々な抗血管新生分子を含む他の臨床試験も、動物モデルにおける抗腫瘍効果の有効性の程度に関わらず、満足のいくものではない。これに関連して、ヒト癌を治療するためのいくつかの血管新生阻害薬を組み合わせることは論理的であると思える。あるいは、生物活性の増強(ES+アンギオスタチン)および腫瘍に向けた作用[ES+RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)]により腫瘍増殖阻害が高まる可能性がある。
【0009】
一方、抗血管新生活性を有する抗ラミニン抗体(L36)の単鎖Fv(scFv)フラグメントの治療可能性は、in vivoでもin vitroでも証明されている。それらの結果から、細胞に関連したマトリックスの形態形成の可能性を変更することが腫瘍に関連した血管のin vivo形成を予防する効果的な方法であることが分かった。
【0010】
これまでの努力にもかかわらず、血管新生の進行によって起こる病変を治療または予防するための治療薬として有用な血管新生阻害化合物を開発することがなお必要である。
【0011】
発明の概要
本発明は、血管新生によって起こる病変、例えば、乾癬、関節リウマチ、網膜症、癌などを予防および/または治療するための治療薬として潜在的に有用な、抗血管新生活性を有する化合物を提供するという問題に向けられる。
【0012】
本発明によって提供される解決策は、(a)血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする領域を含んでなるポリペプチドと、(b)プロテイナーゼ感受性領域によって分離された、オリゴマー化ドメインおよび機能的に活性な血管新生プロセスインヒビターまたはモジュレーター領域を含んでなるポリペプチドとを含んでなる多機能性多価血管新生阻害薬として潜在的に有用な融合タンパク質に基づく。
【0013】
本発明をいくつかのタンパク質キメラの構築によって説明する。融合タンパク質のうちの一つは(実施例参照)、抗ラミニンモノクローナル抗体L36の単鎖Fv(scFv)フラグメントと、タンパク質分解切断後に単量体ESを放出するプロテイナーゼ感受性部位を含むヒンジペプチドによって結合された三量化ドメインおよびエンドスタチン(ES)ドメインを含んでなるコラーゲンXVIIIのNC1ドメインとを含んでなる。プロテイナーゼレベルは腫瘍微小環境で高まるため、前記融合タンパク質はin situでES単量体とscFv三量体の両方を放出する。前記融合タンパク質は、遺伝子操作したヒト細胞により機能的に活性な形で分泌された。その無傷の形は、分子量はおよそ210kDaであり、これにより、生理学的条件では、個々のサブユニットが非共有的に共有結合して、三量体構造を形成するということが分かる。前記三量体融合タンパク質は、内皮細胞をマトリゲル基質で増殖させたときに、内皮細胞の、増殖因子を受けて移動する能力および毛細血管タイプの細管内で発達してくる能力をかなり阻害した。前記融合タンパク質をいくつかの異なるプロテイナーゼで同様に処理した。そのデータからは、カテプシンL、膵エラスターゼおよびいくつかのマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、ESタイプの単量体と三量体抗体フラグメント(scFv)の両方を生じさせることが分かる。融合タンパク質が遺伝子操作されたMMP産生腫瘍細胞により産生されるときは、その融合タンパク質がさらに正確にプロセシングを受けたが、融合タンパク質がMMPを産生しない遺伝子操作細胞により産生されるときにはそのプロセシングを受けなかった。これらの結果は、このタイプの融合タンパク質を用いる癌に対する新規遺伝子療法戦略に道を開き、これらの融合タンパク質が、前記血管新生における不均衡に関連した疾患を治療するための治療薬として有用な、次世代血管新生阻害薬の一つとなる。
【0014】
よって、一態様において、本発明は、作動可能に結合された、血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックするポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる少なくとも一つの核酸配列(A);ならびに(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および(iii)前記オリゴマー化ドメインと前記血管新生プロセスにおける機能的活性領域の間のプロテイナーゼ感受性領域、を含んでなるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸配列(B)、を含んでなり、ここで前記第1の核酸配列(A)の3’末端が前記第2の核酸配列(B)の5’末端に結合されている、遺伝子構築物に関する。
【0015】
もう一つの態様において、本発明は、発現制御配列に作動可能に結合されている前記遺伝子構築物を含んでなる発現カセットに関する。
【0016】
もう一つの態様において、本発明は、前記遺伝子構築物または前記発現カセットを含んでなる組換えベクターに関する。
【0017】
もう一つの態様において、本発明は、前記遺伝子構築物、または前記発現カセット、または前記組換えベクターを含んでなる宿主細胞に関する。
【0018】
もう一つの態様において、本発明は、前記遺伝子構築物に含まれる核酸配列の発現によって得られる融合タンパク質に関する。前記融合タンパク質は、一般に、血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする領域を含んでなるポリペプチド(A’);並びに(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および(iii)前記オリゴマー化ドメインと前記血管新生プロセスにおける機能的活性領域の間のプロテイナーゼ感受性領域、を含んでなるポリペプチド(B’)を含んでなる。
【0019】
もう一つの態様において、本発明は、前記融合タンパク質を、少なくとも1種類の薬学上許容される賦形剤とともに含んでなるか、または本発明の遺伝子構築物もしくは本発明の発現カセットを含んでなるベクターと、所望により、少なくとも1種類の薬学上許容される賦形剤を含んでなる医薬組成物に関する。
【0020】
もう一つの態様において、本発明は、血管新生の進行を予防し、治療し、阻害し、または最小限に抑える医薬組成物の製造における、前記融合タンパク質、または前記遺伝子構築物、または前記発現カセット、または前記組換えベクターの使用に関する。
【0021】
もう一つの態様において、本発明は、血管新生によって起こる病変を治療および/または予防するための医薬組成物の製造における、前記融合タンパク質、または前記遺伝子構築物、または前記発現カセット、または前記組換えベクターの使用に関する。
【0022】
発明の詳細な説明
一態様において、本発明は、作動可能に結合された、少なくとも:
a)血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックするポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、第1の核酸配列(A);並びに
b)(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および(iii)前記オリゴマー化ドメインと前記血管新生プロセスにおける機能的活性領域の間のプロテイナーゼ感受性領域、を含んでなるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、第2の核酸配列(B)
を含んでなり、
前記第1の核酸配列(A)の3’末端が、前記第2の核酸配列(B)の5’末端に結合されている、
遺伝子構築物(以下、本発明の遺伝子構築物)に関する。
【0023】
核酸配列(A)は、血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックするポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる。血管新生プロセス関連分子の具体的な例としては、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、血管新生因子、細胞膜受容体などが挙げられる。ECMタンパク質には、コラーゲン、プロテオグリカン類、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、エンタクチンおよびトロンボスポンジンが含まれる。特定の実施形態において、前記血管新生プロセス関連分子はラミニン(哺乳類ラミニン、例えば、ラット、マウスまたはヒトラミニンなど)である。血管新生因子には、血管内皮増殖因子(VEGF)のファミリーなどが含まれる。前記血管新生因子の受容体、例えば、VEGF受容体2(VEGFR−2)、インテグリンなども同様に、血管新生に関与する細胞膜受容体として挙げることができる。
【0024】
血管新生プロセス関連分子を認識する抗体、例えば、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体、または前記血管新生プロセス関連分子を認識する領域、例えば、組換え単鎖型(単鎖Fvフラグメント、すなわちscFv)、二機能性型(ダイアボディー)、全長型(Fab+Fc)、を含むその組換えフラグメントなどのような、血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする領域を含んでなる事実上いずれのポリペプチドも本発明に使用することができるが、特定の実施形態において、核酸配列(A)は、リンカー(GS配列を含んでなるペプチドなど)を介して、mAb L36の軽鎖可変(VL)領域と融合されたモノクローナル抗体L36の重鎖可変領域(VH)を含む、抗ラミニンmAb L36(図2C)から得られた組換え単鎖抗体(scFv)(実施例1)をコードし、この配列はSanz Lら[Cancer Immunology and Immunotherapy, 2001 Dec; 50(10)557-65]により記載されており、その配列ではVLコード配列の3’末端が前記リンカーをコードする配列の5’末端に結合されており、前記リンカーをコードするヌクレオチド配列の3’末端がVLコード配列の5’末端に結合されている。
【0025】
mAb L36は、異なる動物種の間で非常に保存されている領域と相互作用するため、異なる動物種、例えば、マウス、ラット、ヒトなどのラミニンを認識する[Sanz L et al. EMBO J 2003, Vol. 22(7):1508-1517]。
【0026】
その性質から、血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする前記ポリペプチド(そのあらゆる型(scFv、二機能性または全長)の抗体など)は、血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックすることができ、前記ポリペプチドと融合させた抗血管新生ポリペプチドを血管新生プロセス関連分子(例えば、ECMタンパク質、血管新生因子、細胞膜受容体など)に向けることができ、前記分子の機能的活性領域をブロックすることができる。
【0027】
核酸配列(B)は、(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および前記オリゴマー化ドメイン(i)と血管新生プロセスにおける前記機能的活性領域(ii)の間に(iii)プロテイナーゼ感受性領域を含んでなるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる。
【0028】
オリゴマー化ドメインは、オリゴマーの形成(例えば、ペプチドまたはタンパク質の二量体、三量体、四量体など)を可能にするドメインである。事実上いずれのオリゴマー化ドメインも(例えば、組換え発現し、それを含んでなるタンパク質のタンパク質オリゴマーを形成することができる真核生物および原核生物の両方を起源とする様々なタンパク質に存在する、二量化、三量化、または四量化ドメインなど)、本発明を実際に行うために使用することができる。特定の実施形態において、前記オリゴマー化ドメインは、三量化ドメイン、例えば、コラーゲンXVIIIまたはコラーゲンXVのNC1ドメインの三量化ドメインである。
【0029】
血管新生プロセスにおける機能的活性領域は、血管新生プロセスにおける任意の機能的活性ペプチドまたはタンパク質、例えば、血管新生プロセスインヒビターまたはモジュレーターペプチドまたはタンパク質を含んでなる。血管新生プロセスにおける事実上いずれの機能的活性ペプチドまたはタンパク質も本発明に使用することができるが、特定の実施形態において、血管新生プロセスにおける前記機能的活性領域は、哺乳類エンドスタチン(ES)、例えば、コラーゲンXVまたはコラーゲンXVIIIのNC1ドメインに存在するESを含んでなる。
【0030】
プロテイナーゼ感受性領域は、前記オリゴマー化ドメイン(i)と血管新生プロセスにおける前記機能的活性領域(ii)との間に位置しており、プロテイナーゼの作用を受けやすいポリペプチド配列を含んでなる。任意のプロテイナーゼの影響を受けやすいいずれのペプチド配列も本発明に使用される可能性があるが、実際には、本発明の融合タンパク質が「プロセシングを受けて」、血管新生プロセスにおける機能的活性ペプチドまたはタンパク質単量体および血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックすることができるポリペプチド三量体分子を生成するように、前記プロテイナーゼが腫瘍環境でのみ発現されるプロテイナーゼであることが有利である。よって、特定の実施形態において、前記プロテイナーゼ感受性領域は、腫瘍環境でのみ発現されるプロテイナーゼの作用に感受性であるため、NC1ドメインの三量化ドメインとESドメインまたは領域との間に、哺乳類コラーゲンXVまたはXVIIIのNC1ドメインに存在するヒンジ領域を含んでなる。
【0031】
よって、特定の好ましい実施形態において、核酸配列(B)は、哺乳類コラーゲンXVIIIのNC1ドメインをコードする、または哺乳類コラーゲンXVのNC1ドメインについてのヌクレオチド配列を含んでなる。知られているように、前記コラーゲンXVIII(およびコラーゲンXV)のNC1ドメインは、ヒンジペプチドによって結合された三量化ドメインとESドメインを含んでなる(図2B)。コラーゲンXVおよびXVIIIの前記NC1ドメインの配列は公知であり、例として、コラーゲンXVIIIのNC1ドメインの配列は、Sasakiらによってこれまでに開示されている[Sasaki et al. Structure, function and tissue forms of the C-terminal globular domain of collagen XVIII containing the angiogenesis inhibitor endostatin. EMBO J. 1998 Aug 3;17(15):4249-56]。実施例1では、マウスコラーゲンXVIIIのNC1ドメインをコードする領域を含んでなるヌクレオチド配列の取得について記載している。
【0032】
(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および(iii)前記オリゴマー化ドメインと血管新生プロセスにおける前記機能的活性領域の間のプロテイナーゼ感受性領域、有利には、腫瘍環境で発現されるプロテイナーゼに感受性である領域、を含んでなるコラーゲンXVIIIのNC1ドメインと類似したいずれの他のドメインも本発明を実際に行うために使用することができる。
【0033】
一般に、核酸配列(A)は、核酸配列(B)と直接融合されないが、前記核酸配列(A)によってコードされるポリペプチドと前記核酸配列(B)によってコードされるポリペプチドとの間にフレキシブル結合ペプチド(またはスペーサーペプチド)を導入することが有利である。よって、必要に応じて、本発明の遺伝子構築物は、前記核酸配列(A)と(B)との間に位置するフレキシブル結合ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む第3の核酸配列(C)をさらに含んでもよく、前記核酸配列(C)の5’末端が前記核酸配列(A)の3’末端に結合されており、前記核酸配列(C)の3’末端が前記核酸配列(B)の5’末端に結合されている。有利には、前記スペーサーペプチド(C)は構造的柔軟性を有するペプチドである。構造的柔軟性を有する事実上いずれのペプチドも使用することができる。例として、前記フレキシブルペプチドは、アミノ酸残基の繰り返し、特に、Gly残基およびSer残基を含んでよく、またはアミノ酸残基の他のいずれの好適な繰り返しを含んでもよい。フレキシブル結合ペプチドを定義する事実上いずれのペプチド配列も本発明に使用することができる。フレキシブル結合タンパク質の具体的な例としては、Gly−Ser−Pro−Gly(GSPG)または配列(Gly−Ser)などの配列が挙げられる。それにもかかわらず、特定の実施形態において、前記フレキシブル結合タンパク質は、配列Leu−Glu−Gly−Ala−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Ser−Gly−Ser−Asp−Gly−Ala−Ser−Gly−Serを含んでなる。よって、特定の実施形態において、本発明の遺伝子構築物は、前記核酸配列(A)および(B)に加えて、ペプチドLeu−Glu−Gly−Ala−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Ser−Gly−Ser−Asp−Gly−Ala−Ser−Gly−Serをコードするヌクレオチド配列を含んでなる第3の核酸配列(C)を含んでなる。
【0034】
また、本発明によって得られる融合タンパク質の単離および精製を容易にする目的で、本発明の遺伝子構築物には、必要に応じて、融合タンパク質の単離または精製目的に使用することができるペプチドをコードする核酸配列を含めてよい。よって、特定の実施形態において、本発明の遺伝子構築物は、必要に応じて、単離または精製目的に使用することができるペプチド(タグペプチドとして知られている)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列(D)を含む。前記核酸配列(D)は、前記核酸配列(A)および(B)によって発現されるポリペプチドのいずれの機能性も変更しない任意の位置に存在し得る。例として、前記核酸配列(D)は前記核酸配列(B)の3’末端から下流に位置する可能性がある。融合タンパク質の単離または精製を可能にする事実上いずれのペプチドまたはペプチド配列も使用することができる、例えば、ポリヒスチジン配列、タグペプチドなどのような、得られた融合タンパク質をイムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製するのに使用してよい抗体が認識できるペプチド配列(例えば、熱ウイルス血球凝集素由来のエピトープまたはC−mycエピトープ)など。
【0035】
本発明の遺伝子構築物は、技術水準の周知の技術を用いて得ることができる[Sambrook et al., 「Molecular cloning, a Laboratory Manual」, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., 1989 Vol 1-3]。本発明の前記遺伝子構築物は、作動可能に結合された、核酸配列(A)および(B)によってコードされるポリペプチドをコードする核酸配列の発現調節配列を組み込んでよく、従って、発現カセットとなる。本記載において用いられる、「作動可能に結合された」とは、核酸配列(A)および(B)、必要に応じて(C)によってコードされるポリペプチドが発現制御または調節配列の制御下で正確なオープンリーディングフレーム内で発現されるということを意味する。
【0036】
よって、もう一つの態様において、本発明は、(a)血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックするポリペプチド、並びに(b)(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および(iii)前記オリゴマー化ドメインと血管新生プロセスにおける前記機能的活性領域の間のプロテイナーゼ感受性領域、を含んでなるポリペプチド、を含んでなる、本発明により提供される融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の発現制御配列に作動可能に結合されている本発明の遺伝子構築物を含んでなる発現カセットを提供する。制御配列は、転写、必要に応じて、前記融合タンパク質の翻訳を制御し、調節する配列であり、それにはプロモーター配列、転写調節因子をコードする配列、リボソーム結合配列(RBS)および/または転写終了配列が含まれる。特定の実施形態において、前記発現制御配列は原核細胞および生物(例えば、細菌など)において機能し得る一方で、もう一つの特定の実施形態において、前記発現制御配列は真核細胞および生物(例えば、昆虫細胞、植物細胞、哺乳類細胞など)において機能し得る。本発明により提供される発現カセットに存在し得るプロモーターの具体的な例としては、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモーターなどが挙げられる。
【0037】
有利には、前記発現カセットは、目的、すなわち、前記発現カセットで形質転換された宿主細胞の選択を可能にする表現型についてコードするマーカーまたは遺伝子をさらに含んでなる。本発明の発現カセットに含めてよい前記マーカーの具体的な例としては、抗生物質耐性遺伝子、毒性化合物耐性遺伝子、および遺伝的形質転換植物の選択を可能にする一般的に総ての遺伝子が挙げられる。
【0038】
本発明の遺伝子構築物、または本発明により提供される発現カセットは、適当なベクターにより挿入することができる。よって、もう一つの態様において、本発明は、本発明の前記遺伝子構築物または前記発現カセットを含んでなるベクター(発現ベクターなど)に関する。ベクターの選択は、そのベクターをその後導入する宿主細胞によって決まる。例として、前記核酸配列を導入するベクターは、宿主細胞に導入した際に、前記細胞のゲノムに組み込まれることとなるプラスミドまたはベクターであってよく、前記細胞のゲノムには組み込まれないプラスミドまたはベクターであってもよい。前記ベクターは、当業者には公知の従来の方法によって得ることができる[Sambrok et al, 1989, 前掲]。特定の実施形態において、前記組換えベクターは、動物細胞の形質転換に有用なベクターである。
【0039】
前記ベクターは、前記ベクターによって形質転換し、トランスフェクトし、または感染させることができる細胞を形質転換し、トランスフェクトし、または感染させるのに使用することができる。前記細胞は、原核細胞または真核細胞であってよい。よって、もう一つの態様において、本発明は、本発明により提供されるベクターで形質転換し、トランスフェクトし、または感染させた宿主細胞に関する。よって、前記形質転換細胞、トランスフェクト細胞、または感染細胞は、本発明の遺伝子構築物、または本発明により提供される前記発現カセットもしくはベクターを含んでなる。形質転換細胞、トランスフェクト細胞、または感染細胞は、当業者には公知の従来の方法によって得ることができる[Sambrok et al., 1989, 前掲]。特定の実施形態において、前記宿主細胞は、適当なベクターで形質転換し、トランスフェクトし、または感染させた動物細胞であり、前記形質転換動物細胞、トランスフェクト動物細胞、または感染動物細胞は本発明により提供される融合タンパク質を発現することができるため、前記ベクターは本発明により提供される融合タンパク質を動物細胞において発現させるのに使用することができる。
【0040】
本発明の遺伝子構築物は、(a)血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする領域を含んでなるポリペプチド(A’);並びに(b)(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および(iii)前記オリゴマー化ドメインと血管新生プロセスにおける前記機能的活性領域の間のプロテイナーゼ感受性領域、を含んでなるポリペプチド(B’)、を含んでなる融合タンパク質を生産するのに使用することができる。
【0041】
よって、もう一つの態様において、本発明は、本発明により提供される前記融合タンパク質を生産するための方法であって、本発明により提供される細胞または生物を、前記融合タンパク質の産生を可能にする条件下で増殖させることを含む方法に関する。前記細胞または生物の培養を最適化するための条件は、使用する細胞または生物によって決まる。必要に応じて、本発明により提供される目的産物を生産するための方法には前記融合タンパク質の単離および精製がさらに含まれる。
【0042】
もう一つの態様において、本発明は、本発明の遺伝子構築物に含まれる核酸配列の発現によって得られる融合タンパク質に関する。さらに詳しくは、本発明は、
(a)血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする領域を含んでなるポリペプチド(A’);並びに
(b)(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および(iii)前記オリゴマー化ドメインと血管新生プロセスにおける前記機能的活性領域の間のプロテイナーゼ感受性領域、を含んでなるポリペプチド(B’)
を含んでなる融合タンパク質を提供する。
【0043】
血管新生プロセス関連分子の具体的な例としては、ECMタンパク質、血管新生因子、細胞膜受容体などが挙げられる。ECMタンパク質には、コラーゲン、プロテオグリカン類、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、エンタクチンおよびトロンボスポンジンがある。特定の実施形態において、前記血管新生プロセス関連分子はラミニン(哺乳類ラミニン、例えば、ラット、マウスまたはヒトラミニンなど)である。
【0044】
血管新生プロセス関連分子を認識する抗体、例えば、モノクローナル抗体、または前記血管新生プロセス関連分子を認識するその組換えフラグメント、例えば、前記血管新生プロセス関連分子を認識する抗体の単鎖Fv(scFv)フラグメント、または前記血管新生プロセス関連分子を認識する二重特異性抗体もしくはダイアボディー、またはその全長組換え型(Fab+Fc)のもののような、血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする領域を含んでなる事実上いずれのポリペプチドも本発明に使用することができるが、特定の実施形態において、前記ポリペプチド(A’)は、血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする領域を含んでなり、リンカー(配列GSを含んでなるペプチドなど)を介して、mAb L36の軽鎖可変(VL)領域と融合されたモノクローナル抗体L36の重鎖可変(VH)領域を含む抗ラミニンmAb L36(図2C)から得られた組換えscFv(実施例1)であり、この配列はSanz Lら[Cancer Immunology and Immunotherapy, 2001 Dec; 50(10)557-65]により開示されており、その配列ではVLコード配列の3’末端が前記リンカーをコードする配列の5’末端に結合されており、前記リンカーをコードするヌクレオチド配列の3’末端がVLコード配列の5’末端に結合されている。知られているように、mAb L36は、異なる動物種の間で非常に保存されている領域と相互作用するため、異なる動物種、例えば、マウス、ラット、ヒトなどのラミニンを認識する[Sanz L et al. EMBO J 2003, Vol. 22(7): 1508-1517]。
【0045】
前記ポリペプチド(A’)は、血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックすることができ、前記ポリペプチドと融合させた抗血管新生ペプチドを血管新生プロセス関連分子(例えば、ECMタンパク質、血管新生因子、細胞膜受容体など)に向けることができ、前記分子の機能的活性領域をブロックすることができる。
【0046】
ポリペプチド(B’)は、(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および(iii)前記オリゴマー化ドメインと血管新生プロセスにおける前記機能的活性領域の間のプロテイナーゼ感受性領域、を含んでなる。すでに述べたとおり、前記オリゴマー化ドメインは、オリゴマーの形成(例えば、組換え発現し、それを含んでなるタンパク質のタンパク質オリゴマーを形成することができるペプチドまたはタンパク質の二量体、三量体、四量体など)を可能にする事実上いずれのドメインであってもよい。それにもかかわらず、特定の実施形態において、前記オリゴマー化ドメインは、三量化ドメイン、例えば、哺乳類コラーゲンXVIIIまたはコラーゲンXVのNC1ドメインの三量化ドメインである。
【0047】
血管新生プロセスにおける機能的活性領域は、血管新生プロセスにおける任意の機能的活性ペプチドまたはタンパク質、例えば、血管新生プロセスインヒビターまたはモジュレーターペプチドもしくはタンパク質を含んでなる。血管新生プロセスにおける事実上いずれの機能的活性ペプチドまたはタンパク質も本発明に使用することができるが、特定の実施形態において、血管新生プロセスにおける前記機能的活性領域は、哺乳類エンドスタチン(ES)、例えば、コラーゲンXVまたはコラーゲンXVIIIのNC1ドメインに存在するESを含んでなる。
【0048】
プロテイナーゼ感受性領域は、前記オリゴマー化ドメイン(i)と血管新生プロセスにおける前記機能的活性領域(ii)との間に位置しており、プロテイナーゼの作用を受けやすいペプチド配列を含んでなる。任意のプロテイナーゼの作用を受けやすい事実上いずれのペプチド配列も本発明に使用することができるが、本発明の融合タンパク質が「プロセシングを受けて」、血管新生プロセスにおける機能的活性ペプチドまたはタンパク質単量体(例えば、ES)および血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックすることができるポリペプチド三量体分子(例えば、scFv)を生成するように、前記プロテイナーゼが腫瘍環境でのみ発現されるプロテイナーゼであることが有利である。よって、特定の実施形態において、前記プロテイナーゼ感受性領域は、腫瘍環境でのみ発現されるプロテイナーゼの作用に感受性であるため、NC1ドメインの三量化ドメインとES領域またはドメインとの間に、哺乳類コラーゲンXVまたはXVIIIのNC1ドメインに存在するヒンジ領域を含んでなる。
【0049】
知られているように、前記コラーゲンXVIII(およびコラーゲンXV)のNC1ドメインは、ヒンジペプチドによって結合された三量化ドメインとESドメインを含んでなる(図2B)。よって、特定の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、NC1ドメインのヒンジペプチドを介して結合された前記NC1ドメインの三量化ドメインとESドメインを含むコラーゲンXVのNC1ドメインまたはコラーゲンXVIIIのNC1ドメインを含んでなるポリペプチド(B’)を含んでなる。コラーゲンXVおよびコラーゲンXVIIIの前記NC1ドメインの配列は公知であり、例として、コラーゲンXVIIIのNC1ドメインの配列は、Sasakiらによってこれまでに開示されている[Sasaki et al. Structure, function and tissue forms of the C-terminal globular domain of collagen XVIII containing the angiogenesis inhibitor endostatin. EMBO J. 1998 Aug 3;17(15):4249-56]。
【0050】
よって、例として、特定の実施形態において、本発明は、
(i)全長mAb L36、二機能性型のmAb L36、およびフレキシブルペプチドを介して、mAb L36の軽鎖可変領域(VL)と融合されたmAb L36の重鎖可変領域(VH)を含む組換えscFvからなる群から選択されるポリペプチド;並びに
(ii)哺乳類コラーゲンXVIIIのNC1ドメインを含んでなるポリペプチド(B’)
を含んでなる融合タンパク質を提供する。
【0051】
しかしながら、(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および(iii)前記オリゴマー化ドメインと血管新生プロセスにおける前記機能的活性領域の間のプロテイナーゼ感受性領域、有利には、腫瘍環境で発現されるプロテイナーゼ感受性領域、を含んでなるコラーゲンXVIIIのNC1ドメインと類似したいずれの他のドメインも、多機能性多価血管新生阻害薬を得る目的で本発明を実際に行うために使用することができる。
【0052】
本発明により提供される融合タンパク質には、必要に応じて、前記ポリペプチド(A’)と(B’)との間にフレキシブル結合ペプチドのアミノ酸配列を含んでなる第3のポリペプチド(C’)、および/または(b)融合タンパク質の単離および精製を容易にするペプチド(D’)をさらに含めてよい。
【0053】
すでに述べたとおり、前記ポリペプチド(C’)は、フレキシブル結合ペプチドを定義する事実上いずれのペプチド配列も含み得る。フレキシブル結合ペプチドの具体的な例としては、Gly−Ser−Pro−Glyまたは配列(Gly−Ser)などの配列が挙げられる。しかしながら、特定の実施形態において、前記フレキシブル結合ペプチドは、配列Leu−Glu−Gly−Ala−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Ser−Gly−Ser−Asp−Gly−Ala−Ser−Gly−Serを含んでなる。
【0054】
本発明の融合タンパク質の単離および精製を容易にする目的で、前記融合タンパク質には、必要に応じて、融合タンパク質の単離または精製目的に使用することができるペプチド(D’)、例えば、タグペプチドも同様に含めてよい。前記ペプチド(D’)は、ポリペプチド(A’)および(B’)のいずれの機能性も変更しない融合タンパク質の任意の位置に存在することができ、例えば、前記ペプチド(D’)は、ポリペプチド(B’)の後に位置する可能性がある。融合タンパク質の単離または精製を可能にする事実上いずれのペプチドまたはペプチド配列も使用することができる、例えば、ポリヒスチジン配列、タグペプチドなどのような、得られた融合タンパク質をイムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製するのに有用であり得る抗体が認識できるペプチド配列(例えば、熱ウイルス血球凝集素由来のエピトープまたはC−mycエピトープ)など。
【0055】
本発明により提供される融合タンパク質は、血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする領域を含んでなるポリペプチド(A’);並びに(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および(iii)前記オリゴマー化ドメインと血管新生プロセスにおける前記機能的活性領域の間のプロテイナーゼ感受性領域、を含んでなるポリペプチド(B’)を含んでなる。この融合の結果として、腫瘍環境でのみ発現される特定のプロテイナーゼの作用により、その融合タンパク質が「プロセシングを受けて」、血管新生プロセスにおける機能的活性ペプチドまたはタンパク質単量体(例えば、ES)および血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックすることができるポリペプチド三量体分子(例えば、scFv)が生成される。血管新生プロセスがいくつかの異なる経路により同時に攻撃されることから、本発明は多機能性多価血管新生阻害化合物を提供する。
【0056】
従って、それぞれの特徴から、本発明の融合タンパク質は、血管新生プロセスの進行の治療および/または予防に使用することができるため、血管新生プロセスによって起こる病変の治療および/または予防に使用することができる。
【0057】
よって、もう一つの態様において、本発明は、本発明により提供される融合タンパク質を、少なくとも1種類の薬学上許容される賦形剤とともに含んでなるか、または本発明の遺伝子構築物もしくは本発明の発現カセットを含んでなるベクターと、所望により、少なくとも1種類の薬学上許容される賦形剤を含んでなる医薬組成物に関する。
【0058】
特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明により提供される少なくとも1種類の融合タンパク質を治療上有効な量で含んでなる。本記載において用いられる意味において、「治療上有効な量」とは、所望の効果をもたらすために算出された本発明の融合タンパク質の量を指し、その量は、一般に、いくつかある理由の中で特に、融合タンパク質それぞれの特徴と得ようとする治療効果により決まる。
【0059】
もう一つの特定の実施形態において、本発明により提供される医薬組成物は、遺伝子療法における使用を目的とする、本発明の遺伝子構築物または本発明の発現カセットを含んでなる本発明により提供されるウイルスまたは非ウイルスベクターを含んでなる組成物である。例として、前記ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルスなどに基づくもの)であり得るし、またはDNA−リポソーム、DNA−ポリマー、DNA−ポリマー−リポソーム複合体などのような非ウイルス性でもあり得る[「Nonviral Vectors for Gene Therapy」, Huang, Hung and Wagner共編, Academic Press (1999)参照]。本発明の遺伝子構築物または前記発現カセットを含む前記ベクターは、従来の方法によりヒトまたは動物体に直接投与することができる。別法として、前記ベクターを用いて、細胞、例えば、ヒト細胞をはじめとする哺乳類細胞をex vivoで形質転換、トランスフェクト、または感染させてよく、その後、それらの細胞をヒトまたは動物体内に移植して、所望の治療効果を得てもよい。
【0060】
本発明により提供される医薬組成物は、任意の好適な投与方法により、例えば、経口的にまたは非経口的に投与することができる。本発明により提供される医薬組成物の製造に使用することができる賦形剤は、いくつかある因子の中で特に、前記医薬組成物の投与方法によって決まる。様々な有効成分の投与方法、使用する賦形剤、およびそれらを製造するための工程の総説については、the Tratado de Farmacia Galenica, C. Fauli i Trillo, Luzan 5, S. A. de Ediciones, 1993で見られる。
【0061】
もう一つの態様において、本発明は、さらに、血管新生の進行を予防し、治療し、阻害し、または最小限に抑える医薬組成物の製造における、本発明により提供される融合タンパク質、または本発明の遺伝子構築物または本発明により提供される発現カセットまたは本発明により提供される組換えベクター、の使用にも関する。
【0062】
もう一つの態様において、本発明は、血管新生によって起こる病変を治療および/または予防するための医薬組成物の製造における、本発明により提供される融合タンパク質、または本発明の遺伝子構築物または本発明により提供される発現カセットまたは本発明により提供される組換えベクター、の使用に関する。血管新生によって起こる病変の具体的な、限定されない例としては、癌、血管腫、関節リウマチ、乾癬、バルトネラ症、移植臓器拒絶反応、出血、眼血管新生(失明の最も多い原因の一つ)、網膜症(糖尿病性または早期網膜症など)、黄斑変性、血管新生緑内障、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、翼状片、ルベオーシス、または角膜血管新生が挙げられる。特定の実施形態において、本発明の融合タンパク質、本発明の遺伝子構築物、本発明により提供される発現カセットまたは本発明により提供される組換えベクターは、固形腫瘍、ならびに腫瘍増殖および転移の治療を含む癌の治療に特に有用である。
次の実施例は、本発明を説明する手段となり得るが、その範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0063】
実施例1
設計および発現、ならびに抗体フラグメントおよびコラーゲンXVIIIオリゴマーで構成される血管新生阻害薬
次の産物を発現することができるいくつかの遺伝子構築物(図3A)を作製した:
抗ラミニンモノクローナル抗体L36の単鎖Fvフラグメント(scFv)(L36 scFv)、
マウスコラーゲンXVIIIのNC1ドメインに存在する三量化ドメイン(残基10〜60)にフレキシブル連結ペプチド(リンカー)を介して融合されたL36 scFvで構成される融合タンパク質(L36 scFv−NC1ES−と表示される)、
マウスコラーゲンXVIIIのNC1ドメイン(残基10〜325)に前記リンカーを介して融合されたL36 scFvで構成される融合タンパク質(L36 scFv−NC1ES+と表示される)、
マウスコラーゲンXVIIIのNC1ドメイン(残基10〜315)(NC1)、および
マウスコラーゲンXVIIIのNC1ドメイン(残基130〜315)由来のエンドスタチン(ES)(このESはタンパク質分解により三量体形で放出され、続いてそれがおよそ20kDaの単量体ESに変換される(図2Aおよび図2B))。
【0064】
タンパク質の免疫検出を容易にする目的で、調製される遺伝子構築物には、タグをコードする配列、具体的に言えば、his6mycをコードする配列を、前記タグが異なるタンパク質のC末端に結合されるように、さらに含めた。
【0065】
前記遺伝子構築物をヒトオンコスタチンMのシグナル配列を含むヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモーターの制御下で哺乳類発現ベクターにクローニングした[Sanz L et al Gene Therapy (2002) 15:1049]。ES(位置130〜315)およびマウスNC1(位置1〜315)の発現ベクターを対照として使用した。
【0066】
前記組換えタンパク質は、抗血管新生薬としてのそれらの可能性を評価するために、マトリゲルでの毛細血管構造形成アッセイ、ならびに細胞移動アッセイに使用した。
【0067】
I.材料および方法
細胞および培養条件
HEK−293細胞(ヒト腎臓上皮;ATCC CRL−1573)、HT−1080細胞(ヒト繊維肉腫;ATCC CCL−121)およびB16−F10細胞(マウス黒色腫;ATCC CRL−6475)は、10%のウシ胎児血清(FBS)(Life Technologies, Gaithersburg, MD, U.S.A.)で強化されたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で培養した。
【0068】
初代ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、B. Gimenez博士(Instituto de Investigaciones Biomedicas, Madrid, Spain)により提供されたものであり、それらの細胞は、10%のFBS、50μg/mlのウシ下垂体由来の内皮細胞成長サプリメント(ECGS)および100μg/mlのヘパリン(Sigma Biosciences, St. Louis, MO, U.S.A.)を含有するハムF12K培地(Life Technologies)で培養した。
【0069】
ヒト微小血管内皮細胞株HMEC−1(Ades EW et al., 1992, Journal of Investigative Dermatology, 99:683-690)は、E. W. Ades博士(Center for Disease Control, Atlanta, GA, U.S.A.)により供給されているものであり、10%のFBS、10ng/mlのEGF(上皮成長因子)および1mg/mlのヒドロコルチゾン(Sigma Biosciences)で強化されたMCBD 131培地(Life Technologies)で培養した。
【0070】
発現ベクターの構築
連結ペプチド(connector peptide)、三量化ドメイン、ヒンジペプチド、およびESドメインをコードする配列を含むNC1ドメインの配列(図2B)を、B. Olsen博士(Harvard Medical School, Boston, MA, U.S.A.)により提供されたマウス由来α1クローンmc3b(コラーゲンXVIII)[Oh et al. Genomics. 1994 Feb; 19(3):494-9]から、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、プライマー対1および2(表1参照、ベクターの構築、その後のベクター配列の確認に使用される異なるプライマーの配列を含む)を用いて増幅した。
【0071】
【表1】

【0072】
そのPCR産物を再び、プライマー対2および3(表1)を用いて増幅し、NotIで切断したそのPCR終局産物をプラスミドpCR3.1−L36のNotI部位に結合して[Sanz L et al Gene Therapy (2002) 15:1049]、プラスミドpCR3.1−L36−NC1を得た。その配列をプライマー4および5(表1)を用いて確認した。
【0073】
L36 scFv−NC1ES+と表示される遺伝子構築物(図3A)を作製するために、前記「ペプチド連結子(peptide connector)」が様々なメタロプロテイナーゼ(MMPs)の作用に感受性であることから、L36 scFvのアミノ末端のNC1ドメインの起こり得る切断を防ぐ目的で、コラーゲン三重らせんと、親コラーゲンXVIIIからのNC1ドメインの放出に関与するNC1三量化ドメインを連結している「連結ペプチド」を「フレキシブルペプチド連結子」(「フレキシブルリンカー」)Leu−Glu−Gly−Ala−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Ser−Gly−Ser−Asp−Gly−Ala−Ser−Gly−Ser[LEGAGGSGGSSGSDGASGS](図2Bおよび図2C)と置き換える。これを受けて、前記「フレキシブル連結ペプチド」(「フレキシブルリンカー」)をコードする配列を含むオリゴヌクレオチド対(プライマー6および7)(表1)をPCR3.1−L36−NC1のEcoRI−BglII部位に結合し、プラスミドpCR3.1−L36−リンカー−NC1を得た。
【0074】
プラスミドpCR3.1−NC1は、プラスミドpCR3.1−L36−リンカー−NC1(L36 scFvの総てを含む)からClaI−BglIIフラグメントを排除すること、およびNruI部位を含むオリゴヌクレオチド対(プライマー8および9)(表1)を挿入することにより構築した。
【0075】
プラスミドpCR3.1−ESを構築するために、ネズミエンドスタチン(ES)モジュール(NC1ドメインの残基130〜315)[Sasaki et al. Structure, function and tissue forms of the C-terminal globular domain of collagen XVIII containing the angiogenesis inhibitor endostatin. EMBO J. 1998 Aug 3;17(15):4249-56]をプラスミドpCR3.1−NC1からプライマー対2および10(表1)を用いて増幅した。BglII/NotIにより切断されたそのPCRフラグメントをBglII/NotIにより消化されたプラスミドpCR3.1−NC1に結合した。その配列をプライマー4(表1)を用いて確認した。
【0076】
NC1ドメインに存在する三量化ドメイン[Sasaki et al. Structure, function and tissue forms of the C-terminal globular domain of collagen XVIII containing the angiogenesis inhibitor endostatin. EMBO J. 1998 Aug 3;17(15):4249-56]をプラスミドpCR3.1−NC1からプライマー対11および12(表1)を用いて増幅した。NotIで消化したそのPCRフラグメントを、NotIで消化したプラスミドpCR3.1−L36に対するリガンドとして、プラスミドpCR3.1−L36−三量体を得た。その配列をプライマー4(表1)を用いて確認した。
【0077】
細胞トランスフェクション
HEK−293細胞、HT−1080細胞およびB16−F10細胞を、リポフェクトアミン(Life Technologies)に基づく系を用いて、好適な発現ベクター(pCR3.1、pCR3.1−L36、pCR3.1−L36−三量体、pCR3.1−ES、pCR3.1−NC1またはpCR3.1−L36−リンカー−NC1)でトランスフェクトした。安定な細胞株を作製するために、トランスフェクトしたHEK−293細胞、HT−1080細胞およびB16−F10細胞を0.5mg/ml、0.6mg/mlまたは3mg/mlのG−418(Life Technologies)を含有するDMEMで選抜した。種々のベクターによって形質導入された親腫瘍細胞の増殖を、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾイルブロミド(MTT,Promega)を用いたアッセイにより連日4日間毎日解析した。SDS−PAGE[Sanz L et al. Gene Therapy (2002) 15:1049]、ELISA[Sanz L. et al Gene Therapy (2002) 15:1049]および抗myc(Life Technologies)または抗エンドスタチン(Upstate Biotechnology, Lake Placid, NY, U.S.A.)mAb(モノクローナル抗体)を用いたウェスタンブロット(免疫ブロット法)[Blanco et al. J. Immunol (2003) 171:1070]によりタンパク質発現を確認するために、一時的な細胞集団と安定な細胞集団の上清を解析した。
【0078】
組換えタンパク質の発現および精製
トランスフェクトした、安定なHEK−293細胞を用いて、血清を含まない馴化培地で培養した。その培地にプロテイナーゼ(アプロチニン、ベスタチン、ロイペプチン、ペプスタチンAおよびE−64)阻害薬の組合せ(「カクテル」)(Sigma Biosciences)を添加して、タンパク質分解を減少させた。その培地(およそ1L)を10,000 MWCO ビバフロー50フィルター(Vivascience AG, Germany)で濃縮し(×10)、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、pH7.4で透析し、1mL HisTrap HPカラム(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)にかけた。ESを含むタンパク質を1mL HiTrap ヘパリンHPカラム(Amersham Biosciences)でさらに精製した。0.1〜2.0NaClの直線勾配により溶出を行った。精製されたタンパク質をPBSで透析し、−20℃で保存した。ES Fc−ドメイン(Fc−ES)融合タンパク質[Cuo CJ et al. J Cell Biol. 2001 152:1233]は、K. Javaherian博士(Boston Children's Hospital, Boston, MA, U.S.A.)により提供されたものであった。前記Fc−ES融合タンパク質は、(ESドメインと免疫グロブリンのFcフラグメントとの)二量体の融合タンパク質であり、毛細血管の形態形成をブロックする。
【0079】
分析的遠心分離
遠心分離試験は、エポンチャコール(Epon charcoal)中央部に3mmダブルセクターを有するAn50Tiローターを用いる紫外線可視光学系を備えたOptima社製XL−A分析用超遠心機(Beckman-Coulter Inc.)により20℃で行った。低速での沈降天秤をショートカラム(23μl)において、一連の3速度(5,000rpm、6,000rpmおよび11,000rpm)にてアッセイし、天秤の画像を(20時間後)波長280nmにて取得した。試験中、水溶性のタンパク質塊の保存に留意した。沈降速度対照試験では、45時間間隔において凝集は示さなかった。高速遠心分離後(42,000rpmにて5時間)参照シグナルを測定した。EQASSOCプログラムを用いて、全細胞の見かけの重量により平均分子量を得た[Minton, A. P. (1994) in Modern Analytical Ultracentrifugation (Schuster, T., and Laue, T., eds), pp. 81-93, Birkhauser Boston, Inc., Cambridge, MA]。沈降速度試験を42,000rpmにて行い、吸光度イメージを280nmにて取得した。SEDFITプログラムで実行されるように、連続分布c(s) Lamm方程式モデルを用いて沈降係数を算出した[P. Schuck. Size-Distribution Analysis of Macromolecules by Sedimentation Velocity Ultracentrifugation and Lamm Equation Modeling. Biophysical Journal 78 (2000), pp. 1606-1619]。これらの沈降試験値を、SEDNTERPプログラムを用いて常用条件に対して補正して、対応するs20,W値を得た[T.M. Laue, B.D. Shah, T.M. Ridgeway and S.L. Pelletier, Computer-aided interpretation of analytical sedimentation data for proteins. In: S. E. Harding, A. J. Rowe and J. C. Horton, Editors, Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science, Royal Society of Chemistry, Cambridge, UK (1992), pp. 90-125]。c(M)分布を得るためのSEDFITプログラムを用いたさらなる流体力学解析(すなわち、摩擦係数比の算出)[P. Schuck. Size-Distribution Analysis of Macromolecules by Sedimentation Velocity Ultracentrifugation and Lamm Equation Modeling. Biophysical Journal 78 (2000), pp. 1606-1619]。
【0080】
分析用ゲルでの濾過クロマトグラフィー
これらの試験は、AKTA FPLCシステムでSuperdex 200 10/300GLカラムを用いて、室温にて行った。PBS中の異なる組換えタンパク質(L36 scFv、L36 scFv−NC1ES−、L36 scFv−NC1ES+およびNC1)の0.1mLサンプルを濃度0.5〜1.0mg/mLで注入し、流速0.5ml/分で分離した。そのカラムを高分子量マーカーおよび低分子量マーカー(Amersham)で較正した。排除容量に対する溶出容量の比率とマーカーの分子量を指数曲線に調整し、その指数曲線を用いて、サンプルの分子量を算出した。
【0081】
プロテイナーゼ
ヒトMMP−1およびMMP−9マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、Oncogene Research Products(San Diego, CA, U.S.A.)から入手し、一方、ヒトMMP類MMP−3、MMP−8およびMMP−14(MTl−MMP)はCalbiochem(San Diego, CA, U.S.A.)から入手した。ヒトカテプシンLおよびブタ膵エラスターゼも同じくCalbiochemから入手した。
【0082】
タンパク質分解プロセシング
組換えタンパク質L36 scFv−NC1ES−、L36 scFv−NC1ES+およびNC1を濃度0.6μMで、以下とともに37℃にて10分間インキュベートした:
50mM酢酸ナトリウム、pH5.5、ジチオスレイトール(DTT)2mM、5mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)中、10nMヒトカテプシンL(ヒトカテプシンLで処置する場合);
50mM酢酸ナトリウム、pH6.0中、25nMブタエラスターゼ(ブタエラスターゼで処置する場合);および
50mM Tris−HCl、pH7.5、10mM CaCl、150mM NaCl、0.05%のBrij−35、50μM ZnSO中、25nMメタロプロテイナーゼ(使用するメタロプロテイナーゼで処置する場合)。
【0083】
次いで、アリコートを、還元条件下、ドデシル硫酸ナトリウムの存在下で12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に付した。そのゲルに対して、硝酸銀(Sigma BioScience)で染色するか、またはマウス抗ES mAbを用いたウェスタンブロットを行った。
【0084】
マトリゲルでの管形成アッセイ
毛細血管様構造(CLS)形成アッセイでは、予備冷凍した72ウェルTerasakiプレート(Nunc, Roskilde, Denmark)にマトリゲルに基づく膜マトリックス(Becton Dickinson, Bedford, MA, U.S.A.)を2μl/ウェルで調製し、その後、それを37℃にて30分間凝固させた。3×10EC(HMEC−1またはHUVEC)を、ゲル化したマトリックスに0.5%FBSを強化した好適な培地10μlで播種した。ウェル内の培地の全容量を25μlに調整する一方で、同時に細胞を調製し、5%COを含む湿潤雰囲気中、37℃にて16時間インキュベートした。アッセイした組換えタンパク質(L36 scFv、L36 scFv−NC1ES−、L36 scFv−NC1ES+、NC1およびES)の管形成阻害効果は、使用した細胞株(HMEC−IまたはHUVEC)に応じて好適な培地で異なる濃度に希釈した(図5D)精製組換えタンパク質15μlを、細胞をプレーティングした時点で、マトリゲルでコーティングしたプレートに添加することにより確認した。それらの試験を3回行った。
【0085】
デジタル画像解析
各ウェルのデジタル画像は、Axiovert 100顕微鏡(Carl Zeiss, Germany)によりSPOTカメラ(Diagnostics Instruments, Inc.)を使用して得、328×256ピクセル、8ビットグレースケールのBMP画像として保存した。それらの画像をMatlab 5.3に基づく新ADソフトウェアを用いて処理した[Sanz, L. et al. Microvasc Res. 2002 May; 63(3):335]。
【0086】
細胞移動アッセイ
EC移動の研究では、孔径3.0μmおよび直径6.5mmのポリエチレンテレフタレートフィルターインサート(Becton Dickinson)を、無血清培地中濃度1.25μg/mlのマトリゲルにより、4℃にて一晩コーティングした。HUVEC細胞(1.5×10)を、無血清培地において、5%CO湿潤雰囲気中、20μg/mlの精製タンパク質(L36 scFv、L36 scFv−NC1ES−、ES、NC1およびL36 scFv−NC1ES+)の存在下で37℃にて30分間プレインキュベートした後、それらを上部コンパートメントに移した。血清を含む培地600μlを下部コンパートメントに加えた。16時間後、それらの細胞をPBS中1%グルタルアルデヒドで固定し、0.1%バイオレットクリスタルで染色し、顕微鏡下で調べた。
【0087】
II.結果
内皮管形成アッセイにおけるエンドスタチンと抗ラミニン抗体(L36)のscFvの複合効果
オリゴマーESが上皮細胞(EC)の細胞外マトリックス(ECM)依存的な形態形成を調整することが示されている[Cuo CJ et al. J Cell Biol. 2001 152:1233]。細胞をマトリゲルにプレーティングした時点で、Fc−ES形態の二量体ESで処置すると、管状構造への構築が有意に阻害され、ECは分散したまま、プラスチック上の細胞のものと類似した形態を示した。これらの形態変化は、EC培養物をL36 scFvで処置した場合に認められるものと類似していた(図1)。
【0088】
融合タンパク質L36 scFv−ESの設計および発現
ESはコラーゲンXVIIIのNC1ドメインに由来し、このESはタンパク質分解により三量体形で放出され、続いてそれがおよそ20kDaの単量体ESに変換される(図2Aおよび2B)。異なるタンパク質を発現する異なるキメラ遺伝子を構築した。
【0089】
特定の実施形態において、マウスコラーゲンXVIIIのNC1ドメイン(残基10〜315)と融合された抗ラミニンmAb L36のscFvで構成される、L36 scFv−NC1ES+と称するキメラ遺伝子を構築した(図2Cおよび図3A)。コラーゲンXVIIIのNC1 N末端には、タンパク質分解切断後に単量体ESを放出するプロテイナーゼに感受性であるいくつかの部位を含む、およそ約70アミノ酸残基のフレキシブルヒンジ領域により、約180アミノ酸残基のESモジュールと連結されたおよそ約60アミノ酸残基の三量化ドメインが存在する(図2B)。コラーゲン三重らせんと、親コラーゲンXVIIIからのNC1ドメインの放出に関与するNC1三量化ドメインを連結している「連結ペプチド」は様々なMMPの作用に感受性である。そのため、L36のアミノ末端のNC1ドメインの起こり得る切断を防ぐために、前記「連結ペプチド」を17アミノ酸の「フレキシブルリンカー」と置き換えた(図2Bおよび図2C)。
【0090】
同様に、もう一つの特定の実施形態において、L36 scFv、前記フレキシブルリンカーおよびNC1の三量化ドメインのみのコード配列を含む、前のものより短い、L36 scFv−NC1ES−と称するキメラ遺伝子を構築した(図3A)。
【0091】
免疫検出を容易にするためにhis6mycタグを融合タンパク質のC末端に付けた。
【0092】
その遺伝子構築物をヒトMオンコスタチンの主配列を含むhCMVプロモーターの制御下で好適な哺乳類発現ベクターにクローニングした。ES(位置130〜315)およびマウスNC1(1〜315)の発現ベクターを対照として使用した(図3A)。
【0093】
HEK 293細胞で安定な細胞株を作製し、ならし培地の融合タンパク質を精製した。ウェスタンブロット解析から、精製タンパク質の移動パターンが予測分子量と一致することが分かった(図3B)[レーン1:L36 scFv、レーン2:L36 scFv−NC1ES−、レーン3:L36 scFv−NC1ES+、レーン4:NC1、およびレーン5:ES]。
【0094】
還元条件下では、抗myc mAb 9E10は、見かけの分子量(MW)が26kDa、36kDa、67.5kDaおよび22kDaの単一バンドを示し(図3B)、単量体L36 scFv、三量体L36 scFv、L36 scFv−NC1および単量体ESそれぞれの計算MW28.8kDa、37.6kDa、65.6kDaおよび23.8kDaに相当するものであった。NC1ドメインを含むタンパク質を用いたウェスタンブロット解析では、mAb 9E10は、単量体ESに相当するおよそ24kDaの単一バンドと、プロセシングを受けていないタンパク質に相当する39〜44kDaの二重バンドを認識した(図3B)。二重線内の両方のバンドは、抗ES mAb(Upstate Biotechnology, Lake Placid, NY 12946, USA)を用いたウェスタンブロットにおいて陽性であった。二重線の原因は、翻訳後修飾または内在性タンパク質の折りたたみの影響である可能性がある。
【0095】
抗ES mAbはまた、24kDaのバンドと、見かけのMWがおよそ23kDaである、表示のないESタイプの単量体に相当する可能性のあるさらなるバンドも示した(図3B)。L36 scFv−NC1ES+タンパク質を用いたウェスタンブロット解析では、抗ES mAbは、67.5kDaのプロセシングを受けていない融合物と、mAb 9E10では検出されない、プロセシングを受けたESドメインに相当する24kDaのバンドを認識した(図3B)。精製ESは、抗ES mAbを用いて展開させたときには22〜23kDaの二重線として現れた(図3B)。
【0096】
融合タンパク質L36 scFv−NC1ES−の特性決定
様々な融合タンパク質のオリゴマー化状態をゲル濾過による分析的クロマトグラフィーを用いて評価し、同一サンプルでの分析的遠心分離試験を用いて評価した。IMAC(固定化金属アフィニティークロマトグラフィー)によって精製された融合タンパク質L36 scFv−NC1ES−は、ゲル濾過カラムから分子量109kDaに相当する量で本質的に単一ピーク(総面積の90%)として溶出し、このことはそのタンパク質が三量体であることを示した。沈降速度でもまた、質量が112kDaである主要な単一ピークを示し、沈降平衡法による結果、三量体種には適合させ得るが、単量体や二量体には適合させ得ない質量分布を得た(図4A)。概して、これらの結果は総て、融合タンパク質L36 scFv−NC1ES−の三量体性を示し、ゲル濾過試験および沈降速度試験で示した条件(データは示さず)と同じ条件下では、L36 scFvは単量体であることから、この性質はNC1三量化ドメインから与えられる特質であることが分かった。三量体L36 scFv(L36 scFv−NC1ES−)は、プラスチック上に固定化されているラミニンに対してより強い結合親和性を示し、マトリゲル基質でのEC分化のブロックにおいては単量体よりもはるかに効果があった(図4Bおよび図4C)。
【0097】
試験目的では、融合タンパク質L36 scFv−NC1ES−はプロテイナーゼの存在下でなお安定で、かつ機能し得ることが不可欠である。そのため、種々のプロテイナーゼとともに活性酵素の既知モル濃度にてインキュベートした後のその機能性を確認した。プロテイナーゼには、いくつかのプロテイナーゼクラスの代表的なもの、すなわち、システインプロテイナーゼファミリーのカテプシンL;メタロプロテイナーゼファミリーのMMP−1、MMP−3、MMP−8、MMP−9、MMP−14、およびセリンプロテイナーゼファミリーの膵エラスターゼを含めた。図4Dで示されるように、三量体L36 scFv(L36 scFv−NC1ES−)は、試験したプロテイナーゼの大部分の存在下では切断されなかった。MMP−14は、三量体(L36 scFv−NC1ES−)を部分的にプロセシングしたが、反応の4時間後でさえ、ELISAにより機能的に活性な抗体が検出された。融合タンパク質L36 scFv−NC1ES−を完全に分解したのはカテプシンLだけであった。
【0098】
融合タンパク質L36 scFv−NC1ES+の特性決定
排除クロマトグラフィーでは、精製融合タンパク質L36 scFv−NC1ES+が、三量体と一致する、概算分子量が210kDaである主要なピークと、ESの部分を含まないフラグメントに相当し得る、見かけの分子量が117kDaであるもう一つのピークとして溶出することを示した(図5A)。沈降速度でもまた、重量が181kDaおよび83kDaである二つの種を確認した。
【0099】
その組換えNC1タンパク質は、三量体種と一致する、概算分子量が123kDaである主要なピークと、より小さな別のピークとして溶出し、それらのより小さな別のピークのうちの一つのピークは重量が19kDaであり、ES単量体と一致した(図5B)。沈降速度試験では、分子量が116kDaである主要種が確認された。このデータは、組換えNC1タンパク質は主として三量体であるが、場合によって分解が原因で異成分からなることを示し、これは組換えNC1タンパク質において同様の不均質性を観察した他の研究者によって得られた結果と一致した[Sasaki T. et al. EMBO J. 1998 17:4249-56]。
【0100】
予期したとおり、融合タンパク質L36 scFv−NC1ES+は、プラスチック上に固定化されているラミニンに対して、組換えNC1タンパク質の結合親和性よりも幾分か強い結合親和性を示した(図5C)。同じように、前記融合タンパク質L36 scFv−NC1HS+(二重特異性)は、マトリゲル基質でのEC分化のブロックにおいて組換えNC1タンパク質(単一特異性)よりもはるかに効果があった(図5D)。
【0101】
図5Eは、EC移動アッセイの結果であり、融合タンパク質 L36 scFv−NC1ES+の存在下でのHUVEC細胞の移動がアッセイした他の組換えタンパク質(L36 scFvおよびNC1)の存在下で達する移動よりも少なく、組換えESの場合に達する程度と同じ程度であることを示している。
【0102】
融合タンパク質L36 scFv−NC1ES+のタンパク質分解プロセシング
単量体ESおよび多量体scFvの生成
いくつかのプロテイナーゼを用いてESの生成を研究するために、融合タンパク質L36 scFv−NC1ES+をインキュベートし、反応混合物を抗ES mAb(Upstate Biotechnology, Lake Placid, NY 12946, USA)を用いたウェスタンブロットにより解析した。この融合タンパク質を、アッセイする5種類のMMP(MMP−1、MMP−3、MMP−8、MMP−9およびMMP−14)で処理し、前記MMP類間でタンパク質L36 scFv−NC1ES+のプロセシングの有効性における有意差を観察したところ、MMP−3およびMMP−14で最も有効であった。融合タンパク質L36 scFv−NC1ES+の完全なプロセシングは4時間で観察された。その主要な蓄積産物は、分子量が20kDa〜25kDa間であるポリペプチドであった(図6A)。MMP−3、MMP−8、MMP−9およびMMP−14によりESフラグメントが生じ、それらのESフラグメントが4時間後に蓄積した。このことは、前記MMP類がESフラグメントを分解することができないということを示唆している。図6Aで示されるように、エラスターゼおよびカテプシンLは、融合タンパク質L36 scFv−NC1ES+からESタイプのフラグメントを生じさせるだけでなく、それらを迅速に分解もし、4時間のインキュベーション後にはESはわずかな量しか残存していない。このタンパク質分解プロセシングパターンは、未修飾の天然ネズミNC1タンパク質で観察されたパターンとほぼ同一であった(図6B)。それらの結果は、NC1ドメインにおいて、エピトープを認識するための部位を含む抗体フラグメント(scFvなど)をN末端に付加しても、プロテイナーゼによるその融合タンパク質のタンパク質分解プロセシングもES生成も妨げないことを示した。
【0103】
抗体フラグメント(L36 scFv)の生成に対するプロテイナーゼの有効性を調べる目的で、反応混合物を還元条件下でSDS−PAGEに付し、硝酸銀で染色した。図6Cで示されるように、ESの生成において最も有効なプロテイナーゼはMMP−14であり、L36 scFvも生成した。生成されたL36 scFvおよびESは安定しており、4時間後に蓄積した。このことは、これらの試験条件下ではそのプロテイナーゼがそれらを分解することができないということを示した。三量体L36 scFvの強度とESの強度の関係は、融合タンパク質L36 scFv−NC1ES+プロセシングのバランスを示唆している。同様の結果が他のMMPでも観察された(データは示さず)。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】scFv型の組換えモノクローナル抗体(L36)[抗ラミニンモノクローナル抗体L36の単鎖Fvフラグメント]および二量体Fc−ES融合タンパク質(ESドメインと免疫グロブリンのFcフラグメントとの融合タンパク質)の、異なる濃度での個別治療および併用治療の毛細血管の形態形成に対する効果を示す地図である。
【図2】本発明により提供される融合タンパク質の生産およびそのタンパク質分解プロセシングを説明する図である。図2Aは、遺伝子α1(コラーゲンXVIII)およびNC1ドメインコード配列を示す図である。図2Bは、連結ペプチド、三量化ドメイン、ヒンジペプチドおよびESドメインを含んでなる前記NC1ドメインを示す図である。図2Cは、scFv型の組換え抗ラミニンモノクローナル抗体(L36)およびコラーゲンXVIIIのNC1ドメインより生成される融合タンパク質またはキメラを示す図である。図2Dは、前記融合タンパク質のタンパク質分解プロセシングの結果を示しており、三量体ES抗体および単量体ES抗体の形成が見られる。
【図3】図3Aは、scFv型での抗体の遺伝子構造およびESドメインコード配列を含む(または含まない)いくつかの遺伝子構築物を示す図である。図3Bは、精製した融合タンパク質のウェスタンブロット解析の結果を示している;免疫ブロットは、抗mycモノクローナル抗体(mAb)および/または抗ES mAbを用いて展開させた[レーン1:L36 scFv、レーン2:L36 scFv−NC1ES−、レーン3:L36 scFv−NC1ES+、レーン4:NC1およびレーン5:ES]。
【図4】11,000rpmおよび20℃でのscFv−NC1ES−ドメイン(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中1mg/ml)の沈降平衡による勾配を示している。白丸はデータを表し、3本の実線はscFv単量体(37,148Da)、二量体(74,296Da)および三量体(111,444Da)の理論勾配を表す。前記図4Aの上部の囲み内に、融合タンパク質L36 scFv−NC1ES−(PBSバッファー中1mg/ml)の42,000rpmおよび20℃での沈降速度分布を示している。図4Bは、プラスチック支持体上に固定化されたラミニンの結合親和性を示すグラフである[融合タンパク質L36 scFv−NC1ES−(三量体)の場合の方がL36 scFv(単量体)の場合よりも高い]。図4Cは、典型的なマトリゲルアッセイにおける(異なるscFvまたはL36 scFv−NC1ES−濃度を受けての)内皮細胞分化の用量依存的調節を示すグラフである。各ドットは、2ウェルの平均+/−標準偏差を表す。図4Dは、融合タンパク質L36 scFv−NC1ES−を異なるプロテイナーゼ(MMP、ブタ膵エラスターゼおよびカテプシンL)の作用に供した結果を示している。
【図5】L36 scFv−NC1ES+(図5A)およびNC1(図5B)の沈降速度分布を示している。図5Cは、表示濃度のL36 scFv−NC1ES+およびNC1で得られた飽和曲線を示す。図5Dは、典型的なマトリゲルアッセイにおける(異なる濃度のL36 scFv、L36 scFv−NC1ES+、NC1またはFc−ESを受けての)内皮細胞分化の用量依存的調節を示すグラフである。各ドットは、2ウェルの平均+/−標準偏差を表す。図5Eは、L36 scFv(L36)、NC1、L36 scFv−NC1ES+またはFc−ES(ES)[PBSを対照として使用した]を用いたHUVEC内皮細胞アッセイにおける調節を示す棒グラフである。
【図6】図6Aは、異なるプロテイナーゼ(MMP、ブタ膵エラスターゼおよびカテプシンL)でのL36 scFv−NC1ES+の処置の結果を示しており、一方、図6Bは、NC1についての同じ処置の結果を示している。精製したタンパク質を、実施例に記載の(材料および方法の節参照)異なるプロテイナーゼとともに表示時間の間インキュベートし、反応混合物をSDS−PAGE(図6C)または抗エンドスタチン mAbを用いたウェスタンブロットによって解析した。分子量の移動距離およびNC1マーカーは前記図の左側に示されている。図6Aおよび図6Bの白矢印の先はタンパク質分解産物を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動可能に結合された、少なくとも:
a)血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックするポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、第1の核酸配列(A);並びに
b)(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および(iii)前記オリゴマー化ドメインと前記血管新生プロセスにおける機能的活性領域の間のプロテイナーゼ感受性領域、を含んでなるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、第2の核酸配列(B)
を含んでなり、
前記第1の核酸配列(A)の3’末端が、前記第2の核酸配列(B)の5’末端に結合されている、
遺伝子構築物。
【請求項2】
血管新生プロセス関連分子が、細胞外マトリックス(ECM)のタンパク質、血管新生因子、または細胞膜受容体である、請求項1に記載の遺伝子構築物。
【請求項3】
血管新生プロセス関連分子が、哺乳類ラミニンである、請求項2に記載の遺伝子構築物。
【請求項4】
ラミニンが、ラット、マウスまたはヒトのラミニンである、請求項3に記載の遺伝子構築物。
【請求項5】
血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする領域を含んでなるポリペプチドが、前記血管新生プロセス関連分子を認識する抗体、前記血管新生プロセス関連分子を認識する抗体の単鎖Fvフラグメント(scFv)、または前記血管新生プロセス関連分子を認識する二重特異性抗体もしくはダイアボディーである、請求項1に記載の遺伝子構築物。
【請求項6】
血管新生プロセス関連分子が、細胞外マトリックス(ECM)のタンパク質、血管新生因子、または細胞膜受容体である、請求項5に記載の遺伝子構築物。
【請求項7】
血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする領域を含んでなるポリペプチドが、哺乳類ラミニン、好ましくは、ラット、マウスまたはヒトのラミニン、を認識する抗体のscFvである、請求項5に記載の遺伝子構築物。
【請求項8】
第2の核酸配列(B)が、哺乳類コラーゲンXVのNC1ドメインをコードするヌクレオチド配列または哺乳類コラーゲンXVIIIのNC1ドメインをコードするヌクレオチド配列を含んでなり、前記NC1ドメインの三量化ドメインおよびエンドスタチン(ES)に対応するヌクレオチド配列、ならびに前記NC1ドメインのヒンジペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の遺伝子構築物。
【請求項9】
核酸配列(A)および(B)に加えて、フレキシブル結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む第3の核酸配列(C)を含んでなり、前記第3の核酸配列(C)の5’末端が前記第1の核酸配列(A)の3’末端に結合されている、請求項1に記載の遺伝子構築物。
【請求項10】
発現制御配列に作動可能に結合されている請求項1〜9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物を含んでなる、発現カセット。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物、または請求項10に記載の発現カセットを含んでなる、組換えベクター。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物、または請求項10に記載の発現カセット、または請求項11に記載の組換えベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物に含まれる核酸配列の発現によって得られる、融合タンパク質。
【請求項14】
a)血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする領域を含んでなるポリペプチド(A’);並びに
b)(i)オリゴマー化ドメイン、(ii)血管新生プロセスにおける機能的活性領域、および(iii)前記オリゴマー化ドメインと前記血管新生プロセスにおける機能的活性領域の間のプロテイナーゼ感受性領域、を含んでなるポリペプチド(B’)
を含んでなる、融合タンパク質。
【請求項15】
血管新生プロセス関連分子が、細胞外マトリックス(ECM)のタンパク質、血管新生因子、または細胞膜受容体である、請求項14に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
血管新生プロセス関連分子が、哺乳類ラミニン、好ましくは、ラット、マウスまたはヒトのラミニンである、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
血管新生プロセス関連分子の機能的活性領域を認識し、ブロックする領域を含んでなるポリペプチドが、前記血管新生プロセス関連分子を認識する抗体、前記血管新生プロセス関連分子を認識する抗体の単鎖Fvフラグメント(scFv)、または前記血管新生プロセス関連分子を認識する二重特異性抗体もしくはダイアボディーである、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
血管新生プロセス関連分子が、細胞外マトリックス(ECM)のタンパク質、血管新生因子、または細胞膜受容体、好ましくは、哺乳類ラミニン、さらに好ましくは、ラット、マウスまたはヒトのラミニンである、請求項17に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
ポリペプチド(A’)が、哺乳類ラミニン、好ましくは、ラット、マウスまたはヒトのラミニン、を認識する抗体のscFvである、請求項18に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
ポリペプチド(B’)が、哺乳類コラーゲンXVのNC1ドメインまたは哺乳類コラーゲンXVIIIのNC1ドメインを含んでなる、請求項14に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
ポリペプチド(A’)と(B’)の間に、フレキシブル結合ペプチドのアミノ酸配列を含んでなる第3のポリペプチド(C’)を含んでなる、請求項14に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
請求項13〜21のいずれか一項に記載の融合タンパク質を得るための方法であって、請求項12に記載の細胞を、前記融合タンパク質の産生を可能にする条件下で増殖させること、および、必要に応じて、前記融合タンパク質を単離することおよび精製すること、を含んでなる、方法。
【請求項23】
請求項13〜21のいずれか一項に記載の融合タンパク質を、少なくとも1種の薬学上許容される賦形剤とともに含んでなる、医薬組成物。
【請求項24】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物、または請求項10に記載の発現カセットを含んでなるベクターを、少なくとも1種の薬学上許容される賦形剤とともに含んでなる、医薬組成物。
【請求項25】
血管新生の進行を予防し、治療し、阻害し、または最小限に抑える医薬組成物の製造における、請求項13〜21のいずれか一項に記載の融合タンパク質、または請求項1〜9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物、または請求項10に記載の発現カセット、または請求項11に記載のベクター、の使用。
【請求項26】
血管新生によって起こる病変を治療または予防するための医薬組成物の製造における、請求項13〜21のいずれか一項に記載の融合タンパク質、または請求項1〜9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物、または請求項10に記載の発現カセット、または請求項11に記載のベクター、の使用。
【請求項27】
血管新生によって起こる病変が、癌、血管腫、関節リウマチ、乾癬、バルトネラ症、移植臓器拒絶反応、出血、眼血管新生、網膜症、黄斑変性、血管新生緑内障、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、翼状片、ルベオーシス、または角膜血管新生を含む、請求項26に記載の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−527974(P2008−527974A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539527(P2007−539527)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011714
【国際公開番号】WO2006/048252
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(504434051)ウニベルシダッド・アウトノマ・デ・マドリッド (7)
【Fターム(参考)】