説明

多段スクリュー炭化炉

【課題】トラフの熱変形を防止したスクリューコンベアを備えた多段スクリュー炭化炉を提供すること。
【解決手段】炉体3内で加熱されたスクリューコンベア2が、筒状のトラフ20内をスクリュー8が回転することによって被炭化物を搬送し、縦方向に複数並べられた当該スクリューコンベア21を解して炭化物を生成する多段スクリュー炭化炉1であって、スクリューコンベア2を構成するトラフ20は、長手方向に見た断面がU字形のトラフ本体21と、そのトラフ本体21の上方開口部を塞ぐように配置された天板22とが一体に形成されたものであり、トラフ本体21には、長手方向に直交する幅方向に掛け渡した複数の桁部材24が上方開口部に接合され、天板22は、そうしたトラフ本体に対して長手方向の一部分y1〜y6が接合され、他の部分が非接合状態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被炭化物を加熱した炭化炉内を多段のスクリューコンベア内を移動させて炭化させる多段スクリュー炭化装置に関し、特にスクリューコンベアを構成するトラフの変形を考慮した多段スクリュー炭化炉に関する。
【背景技術】
【0002】
畜舎から排出される蓄糞尿などの有機性廃棄物については、その有効利用を図るため炭化物にすることが考えられ、近年、様々な炭化物製造装置が提案されている。例えば、図8は、下記特許文献1に記載された多段スクリュー炭化炉を示した図である。多段スクリュー炭化炉では、炉体102内を横切るように、ほぼ水平に配置されたスクリューコンベア111,112,113が縦に3段設けられ、被炭化物がホッパ104から供給され、最上段のスクリューコンベア111からスクリュー122の回転によって順に搬送される。その間に被炭化物は加熱されるが、それには炉体102内は加熱バーナー108によって下側から加熱されるとともに、スクリューコンベア111〜113からはガス吹出口135を通して乾留ガスが吹き出し、それが火炎となってスクリューコンベア111〜1123内を通る被炭化物を加熱する。
【特許文献1】特開2001−172639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした多段スクリュー炭化炉では、スクリューコンベア111〜112が、加熱バーナー108の他にもガス吹出口135による火炎によって直接加熱されるため、その熱影響による問題があった。すなわち、スクリューコンベア111などは、筒状のトラフの中にスクリューが挿入され、その回転するスクリューによって被炭化物を搬送するよう構成されている。そのトラフは、およそ500度から、高い箇所では900度にまで加熱されるが、加熱方法や中を流れる被炭化物によって、そのトラフ自身が上下位置や内側と外側といった、場所によって偏りが生じる。そのため、トラフを構成する部材間の温度差によって、伸びの違いによる熱応力が生じ、トラフが変形してしまいメンテナンスや交換が必要になる。
【0004】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、トラフの熱変形を防止したスクリューコンベアを備えた多段スクリュー炭化炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る多段スクリュー炭化炉は、炉体内を横切るように設けられたスクリューコンベアが、筒状のトラフ内をスクリューが回転することによって被炭化物を搬送し、加熱された被炭化物から発生する乾留ガスを排気するガス吹出口を有するものであって、縦方向に複数並べられ、接続シュートによって連続的に接続されたものであり、前記スクリューコンベアを構成するトラフは、長手方向に見た断面がU字形のトラフ本体と、そのトラフ本体の上方開口部を塞ぐように配置された天板とが一体に形成されたものであり、前記トラフ本体には、長手方向に直交する幅方向に掛け渡した複数の桁部材が上方開口部に接合され、前記天板は、そうしたトラフ本体に対して長手方向の一部分が接合され、他の部分が非接合状態であることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る多段スクリュー炭化炉は、前記トラフ本体が、その上方開口端に内側へ折り曲げられた返シが形成されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る多段スクリュー炭化炉は、前記天板が、長手方向に分割され、それぞれがトラフ本体に対して長手方向の一部分が接合され、他の部分が非接合状態であることが好ましい。
また、本発明に係る多段スクリュー炭化炉は、前記天板が、トラフ本体に対して非接合状態である前記他の部分に引掛け部材が設けられ、その引掛け部材が、前記トラフに対して引っ掛けられるようにしたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明によれば、トラフの加熱によってトラフ本体が高温になって天板との温度差を生じた場合でも、両者は一部の接合を除いて分離しているので、伸びの違いによって大きな熱応力を生じさせず、変形を防止することが可能になる。その際、トラフ本体の開口端側を複数の桁部材で支持しているため、熱膨張によってトラフ本体が変形してしまわないように、そのU字形形状を維持することができる。また、本発明は、トラフ本体に返シが形成されているため、トラフ内部で内側面に沿って巻上がった被炭化物の粉体の外部への飛散を防止できる。また、天板に引掛け部材を設け、トラフ本体側に引っ掛けるようにしているため、天板が反って浮き上がってしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明に係る多段スクリュー炭化炉の一実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。図1は、多段スクリュー炭化炉を、スクリューコンベアの搬送方向に見た側部側の断面図である。
この多段スクリュー炭化炉1は、前述した従来例と同様に、ホッパから投入した被炭化物を、左右に2列ある縦方向にそれぞれ7段設けられたスクリューコンベア2内を通し、加熱及び熱分解することによって炭化物を生成する装置である。
【0009】
2列のスクリューコンベア2は、それぞれ縦方向に千鳥状に配置され、各々は筒状のトラフ10が炉体3の向かい合う壁面に架設されている。そして、そのトラフ10内には、回転するスクリュー8が挿入され、その回転によって被炭化物が攪拌されながら搬送される。多段スクリュー炭化炉1は、炉体3の下部に加熱室4が設けられ、バーナー5によって火炎が噴射される。そして、その熱が加熱室4内から炉体3内の炭化室へと送られ、最下段のスクリューコンベア2を直に加熱しつつ、他のスクリューコンベア2も昇温する。なお、炉体3の上方には二次燃焼室6が設けられ、炭化室9内で燃焼しなかった乾留ガスをバーナー7の火炎で燃焼させている。
【0010】
ここで、図2及び図3は、スクリューコンベア2を構成するトラフの一例を示した図であり、図2は平面図を示し、図3は図2のA−A断面を示した図である。
このトラフ10は、搬送方向に見たときの断面形状がU字形(以下、単に「U字形」とする)のトラフ本体11と、このトラフ本体11の上方開口部を塞ぐための天板12が一体になって形成されている。トラフ本体11には、その長手方向の一端に、落下する被炭化物を受ける顎部13が形成されている。一方、天板12は、長手方向両端の平板12a,12bと、その長手方向に沿って折り曲げられた起立部12kを有する長板12c,12dを有している。
【0011】
そして、このトラフ10には、天板12の長板12c,12dに形成された起立部12kによるガス吹出口15が設けられており、対面する起立部12k,12k同士は、複数の連結棒16によって連結されている。こうしたガス吹出口15は、図3に示すように、トラフ10の中央位置からずれたオフセット構造になっており、そこから吹きだした炎が上段のトラフ10を直接炙らないようにしている(図1参照)。
【0012】
トラフ10は、図3に示すように、U字形をしたトラフ本体11の上方開口部を天板12が塞ぐように接合され、筒状に形成されている。それには、トラフ本体11の内側面に天板12の端部が突き当てられ、その突き当てられた溶接ポイントPに隅肉溶接が長手方向に沿って行われている。ところが、こうしたトラフ10は、前記解決課題の欄でも述べたように、加熱による温度差によって熱応力が生じ、変形を起こしてしまう。トラフ10は、図1に示すように、上下のものが左右にずれた千鳥足状に配置され、下からの乾留ガスによる炎で加熱されている。そのため、炎に近い箇所の温度が他よりも上昇して加熱温度に偏りが生じる。また、トラフ内部には被炭化物が存在するため、常に被炭化物と接触しているトラフ本体11下部と、全く接触しない天板12とでは大きな温度差を生じる。
【0013】
こうした加熱温度のバラツキによって熱応力が局所的に生じ、それによってトラフ10全体に変形が生じてしまう。特に、直接加熱されるトラフ本体11と、それに接合された天板12との温度差が大きいため、溶接ポイントPで溶接が切れてしまう。そして、部分的に溶接が切れてしまうと、そのことによって更に応力が作用し、トラフ本体11を変形させて側面を波打たせたりしてしまう。また、変形が進めば、溶接の亀裂部分が撓んで口を開いてしまうようになるなど、最悪の場合にはスクリュー8とトラフ本体11が接触し、双方が破壊に至る。そこで、本実施形態では、こうした熱応力の影響によって生じる変形を抑えることを目的としたトラフを提案する。
【0014】
ここで、図4乃至図6は、本実施形態のトラフを示した図であり、図4は平面図、図5は、図4に示すB−B位置での断面図、そして図6は、図5に示すC−C位置での断面図である。このトラフ20は、図1に示す多段スクリュー炭化炉1のトラフ10と置き換え可能なものである。従って、トラフ20は、トラフ10と同様にU字形のトラフ本体21を有し、上方開口部に天板22(22a,22b,22c)が設けられた構造である。そして、トラフ本体21の長手方向一端には、落下する被炭化物を受ける顎部23が一端部に形成されている。また、天板22には、長手方向に沿って連続するガス吹出口25が形成されている。
【0015】
本実施形態のトラフ20では、トラフ本体21と天板22を一部でのみ溶接し、全体で接合することなく、大幅に接合部分を減らした構造となっている。ここで、図7は、トラフ本体21と天板22を分離して示した平面図である。この図に示すように、天板22を長手方向に分割し、3つの天板22a,22b,22cによって構成されている。そして、こうした天板22a,22b,22cが、トラフ本体21に対してそれぞれ部分的に溶接されるようになっている。
【0016】
すなわち、前述したトラフ10では、トラフ本体11と天板12とが全体溶接によって拘束されていたため、熱変形によって溶接部に亀裂を生じさせてしまっていた。このことからトラフ本体21と天板22とは非接合状態であることが好ましい。しかし、U字形のトラフ本体21は、そのままでは熱変形による伸びによって上方開口部が閉じてしまい、内部のスクリュー8が接触してしまうことになる。そこで、本実施形態では、そうした変形を避けるため、トラフ本体21のU字形維持のため上方開口部に桁(ラダー)24を掛け渡し、溶接によって接合されている。
【0017】
従って、トラフ20は、天板22でトラフ本体21の形状を維持する必要がないため、天板22は、トラフ本体21に対して極力の溶接箇所を少なくし、単に載せるだけのイメージで構成されている。しかし、こうした構造ではトラフ20の気密性がなくなり、内部の非炭化物がスクリュー8によってかき回され、トラフ本体21と天板22との隙間から被炭化物の粉体が炉体3内に飛び出してしまう。これでは、その粉体が加熱によって燃えてしまい、炉体3内の温度管理が困難になる他、燃焼後の灰処理などを行わなければならなくなってしまう。そこで、トラフ本体21は、U字形状の上端に内側への返シ21hが左右に形成され、その上に天板22a,22b,22cの端部が重ねて載せられる。ラダー24は、その端部を返シ21hに突き当てて溶接されている。
【0018】
長手方向に3分割された天板22は、図7に示すように、両端の天板22aと22cは、コの字に切欠かれた平板であり、中央の天板22bは、幅の異なる2枚の平板からなるものである。そして、その天板22a,22b,22cには、それぞれ上方に折り曲げられるなどした起立部22kが形成され、長方形のガス吹出口25が構成されている。天板22a,22b,22cは、図4に示すように、トラフ本体21の返シ21hやラダー24に載せられ、そのトラフ本体21と、波線で示した一部の溶接箇所y1〜y6において接合が行われている。従って、天板22a,22b,22cは、それぞれ一端側が溶接され、そこから他端側にかけてはフリーになっている。
【0019】
隣り合う互いの天板22a,22b,22cの端部はラダー24上にあって、一定の距離が取られ、多少の変形によって互いが干渉し合わないようになっている。また、一端部のみを溶接した天板22a,22b,22cは、熱が加わることによって反ってしまい、トラフ本体21との間に隙間を生じさせるおそれがある。そこで、天板22a,22b,22cのフリー端側にはフック26が3個ずつ(図6参照)設けられている。フック26は、図5に示すように略L字形の板材であって、ラダー24に対して下側から引っ掛けられるようになっている。特に、上下方向には、フック26と天板22との間にラダー24がほぼ隙間無く入るようにして、天板22が反って浮き上がらないようにしている。また、トラフ本体21の長手方向には、フック26とラダー24との間に隙間があって天板22の僅かな伸縮を許容できるようになっている。
【0020】
よって、トラフ20によって構成された多段スクリュー炭化炉1では、被炭化物が上段のスクリューコンベア2へと入れられ、トラフ20内を回転するスクリュー8によって攪拌されながら水平に移動し、シュートを介して下段へのスクリューコンベア2へと順に搬送される。その間、トラフ20は、加熱室4のバーナー5から出される火炎によって加熱されるとともに、直下に位置する下段のスクリューコンベア2から吹き出される乾留ガスの炎によっても加熱される。
【0021】
加熱されたトラフ20は、特にトラフ本体21が高温になり、天板22との温度差を生じる。そのため、天板22に対してトラフ本体21が熱膨張によって伸びを生じるが、本実施形態では、天板22がトラフ本体21と分離しているので、トラフ本体21が伸びたとしても大きな熱応力を生じさせない。すなわち、天板22a,22b,22cは、その一端側の溶接箇所y1〜y6でしか接合されていないため、他端がフリーになっていることで、トラフ本体21に引っ張られることがなくなり、大きな熱応力がかからないようになった。
【0022】
また、天板22の分離によって剛性の弱くなるトラフ本体21の開口端側を複数のラダー24で支持しているため、熱膨張によってトラフ本体21が変形してしまわないように、そのU字形形状を維持することができる。
また、トラフ本体21は、U字形の先端を内側に折った返シ21hが形成されているため、トラフ20内でスクリュー8によってかき回された被炭化物は、トラフ本体21の内側面に沿って巻上がっても、その返シ21hによって遮られ、また、天板22と返シ21hとの接触面がシールとなって天板22との隙間から出てしまうことを防止できる。
【0023】
また、分割された天板22a,22b,22cは、フック26によってフリー端側がラダー24に引っ掛けられているため、反って浮き上がってしまうことを防止できる。これによっても、搬送中の被炭化物から巻上がった粉体がトラフ本体21外へ飛散してしまうのを防止することができる。
更に、天板22は3分割した構成にしているため、各天板22a,22b,22cの溶接箇所を少なくして変形を小さく抑えることができるとともに、それぞれに生じ得る反りを小さく抑えることができる。
【0024】
以上、本発明に係る多段スクリュー炭化炉について実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、フック26をラダー24に引っ掛ける構成にしているが、返シ21hに引っ掛けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】多段スクリュー炭化炉を、スクリューコンベアの搬送方向に見た側部側の断面図である。
【図2】スクリューコンベアを構成するトラフの一例を示した平面図である。
【図3】スクリューコンベアを構成するトラフの一例を示した図2のA−A断面図である。
【図4】実施形態のトラフを示した平面図である。
【図5】実施形態のトラフを示した図4のB−B断面図である。
【図6】実施形態のトラフを示した図5のC−C断面図である。
【図7】実施形態のトラフをトラフ本体と天板を分離して示した平面図である。
【図8】多段スクリュー炭化炉を示した図である。
【符号の説明】
【0026】
1 多段スクリュー炭化炉
2 スクリューコンベア
3 炉体
8 スクリュー
10,20 トラフ
21 トラフ本体
21h 返シ
22(22a,22b,22c) 天板
24 ラダー
25 ガス吹出口
26 フック
y1〜y6 溶接箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体内を横切るように設けられたスクリューコンベアが、筒状のトラフ内をスクリューが回転することによって被炭化物を搬送し、加熱された被炭化物から発生する乾留ガスを排気するガス吹出口を有するものであって、縦方向に複数並べられ、接続シュートによって連続的に接続された多段スクリュー炭化炉において、
前記スクリューコンベアを構成するトラフは、長手方向に見た断面がU字形のトラフ本体と、そのトラフ本体の上方開口部を塞ぐように配置された天板とが一体に形成されたものであり、前記トラフ本体には、長手方向に直交する幅方向に掛け渡した複数の桁部材が上方開口部に接合され、前記天板は、そうしたトラフ本体に対して長手方向の一部分が接合され、他の部分が非接合状態であることを特徴とする多段スクリュー炭化炉。
【請求項2】
請求項1に記載する多段スクリュー炭化炉において、
前記トラフ本体は、その上方開口端に内側へ折り曲げられた返シが形成されたものであることを特徴とする多段スクリュー炭化炉。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する多段スクリュー炭化炉において、
前記天板は、長手方向に分割され、それぞれがトラフ本体に対して長手方向の一部分が接合され、他の部分が非接合状態であることを特徴とする多段スクリュー炭化炉。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する多段スクリュー炭化炉において、
前記天板は、トラフ本体に対して非接合状態である前記他の部分に引掛け部材が設けられ、その引掛け部材が、前記トラフに対して引っ掛けられるようにしたものであることを特徴とする多段スクリュー炭化炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−106082(P2010−106082A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277473(P2008−277473)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】