説明

多環芳香族炭化水素の除去方法

タバコまたはタバコ抽出物または他の材料などの材料から多環芳香族炭化水素を抽出する方法であって、この方法は、該材料を低極性媒体の存在下で多環芳香族炭化水素に選択的な分子インプリントポリマーで処理することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多環芳香族炭化水素の抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1にいくつかの一般的な多環芳香族炭化水素の化学構造を示す。多環芳香族炭化水素(PAH)は、有機物質が加熱されると形成され、場合によってはいぶされた食物、揚げ物、タバコ製品などの食用の物質に見られる。多くの多環芳香族炭化水素は、発がん性であることが知られている、または疑われているので、このような製品から除去することが望まれている。ベンゾ(a)ピレンは、典型的な多環芳香族炭化水素であり、発がん性であることが知られている。
【0003】
多環芳香族炭化水素を取り除くためのいくつかの方法においては、多環芳香族炭化水素が存在する物質から最初に抽出媒体を使用してこれらの炭化水素を取り除く必要があり、その後この抽出媒体から取り除かれる。抽出媒体は、物質内の他の成分も抽出する場合があり、他の抽出された成分の損失を最小限にするためにこれら他の成分を元の物質に戻し、抽出媒体を除去する必要が生じる場合がある。このような工程において、多環芳香族炭化水素を抽出媒体から選択的に例えば選択性吸着剤で除去する必要がある。
【0004】
また多環芳香族炭化水素が液体に溶けていて、その液体から除去する必要が生じる状況がある。例えば、多環芳香族炭化水素を汚染された植物油、動物油またはエッセンシャルオイルなどから除去しなければならない場合がある。
【0005】
他の状況においてはこのような抽出をある物質中の多環芳香族炭化水素の量を定量化するための分析目的で行う場合がある。いくつかの分析方法において、多環芳香族炭化水素が最初に抽出媒体を使用して物質から抽出され、その後吸着剤に吸着される。多環芳香族炭化水素は溶出溶媒で吸着剤から放出され、定量化することができる。場合によっては他の結合した化合物を選択的に放出するために多環芳香族炭化水素を放出する前に洗浄工程を1回以上行うこともある。このような方法では吸着剤は、分析を乱したり、阻害したりする他の成分を除去するように選択的でなければならない。
【0006】
分子インプリントポリマー(MIP)は、選択的な吸着剤の一分類である。分子インプリントポリマーは、テンプレートに相補的な部位の形成に繋がるテンプレート分子の存在下で調製され、テンプレートおよび他の機能的に関連する分子を選択的に結合することができるポリマーである。しかしながら、MIPは多環芳香族炭化水素の抽出には良好に機能していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、多環芳香族炭化水素に選択的な分子インプリントポリマーが極性の低い媒体の存在下で該炭化水素が分子インプリントポリマーと接触する場合に極めて良好に機能するという発見を基礎になされたものである。
【0008】
従って本発明は、少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を取り除くための方法を提供し、この方法は、極性の低い媒体の存在下で該炭化水素に選択的な分子インプリントポリマーに該炭化水素を接触させることを含む。
【0009】
本発明で使用される好ましい媒体は、例えば1から8、1から6、1から4、そして1から2.5といった8未満の誘電率を有するという点で低極性のもの、またはほとんど極性の無いものである。該媒体の誘電率は、4未満であるのが望ましく、2.5未満であると最も有利である。例えば圧力に応じて1から1.8の誘電率を有する超臨界二酸化炭素は、本発明のいくつかの用途では好ましい。
【0010】
あらゆる理論によって限定されるのを望まないが、我々は極性の低い溶媒が多環芳香族炭化水素の抽出により適していると考える。なぜなら多環芳香族炭化水素自体も極めて極性が低いからである。さらに食物および植物材などの有機物の複合混合物から低極性の溶媒で多環芳香族炭化水素を抽出すると、この混合物から抽出される他の化合物の数が通常は減少する。なぜならこの混合物は、低極性構成成分より低極性媒体に溶けにくい炭水化物やタンパク質などの極性構成成分を多く含む傾向があるからである。
【0011】
本発明の1つの用途として、喫煙材または喫煙材から派生する物質、例えば喫煙材の抽出物などから多環芳香族炭化水素を除去することが挙げられる。喫煙材は、タバコ、非タバコ喫煙材またはタバコと非タバコ喫煙材のブレンドであってもよい。非タバコ喫煙材としては乾燥および硬化された果物材などの植物材、アルギン酸塩およびエチレングリコールなどのエアロゾル発生物質から製せられるような合成喫煙材などがある。喫煙材がタバコを含む場合、該タバコは空気硬化、火力硬化、煙硬化または日光硬化された葉片、葉柄などのあらゆる好適な種およびそのブレンドであってもよく、そしてあらゆる好適な方法で処理されたものであってもよい。例えばタバコは、切断、裁断、膨張または再生されたものであってもよい。
【0012】
従って本発明は、具体的には喫煙材またはその派生物から少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を除去する方法を提供し、この方法は喫煙材またはその派生品を低極性媒体の存在下で該炭化水素に選択的な分子インプリントポリマーと接触させることを含む。
【0013】
また本発明は、喫煙材またはその派生物以外の材料、例えば非タバコ植物材およびその抽出物、食物材および風味材、特に植物油、動物油、エッセンシャルオイル、液体煙、タール抽出物またはこれらの混合物から多環芳香族炭化水素を除去する場合にもの利用可能である。
【0014】
本発明の好ましい処理において、多環芳香族炭化水素を含む材料は、抽出媒体と接触させられ、その際該炭化水素と他の可溶性または一部可溶性の成分は、実質的に抽出媒体に溶解され、さらにこの方法は、これらの他の成分を該材料に戻す工程を含む。
【0015】
抽出媒体は溶媒、溶媒混合物、超臨界流体または超臨界流体と1つ以上の溶媒との混合物であってもよい。抽出媒体が低極性のものである場合、媒体中の炭化水素は媒体を分子インプリントポリマーと接触させることによって媒体から抽出される。
【0016】
従って本発明は、多環芳香族炭化水素を含む材料がこれから多環芳香族炭化水素を抽出するために低極性抽出媒体と接触され、この多環芳香族炭化水素を含む抽出媒体が分子インプリントポリマーと接触させられて該炭化水素を除去する多環芳香族炭化水素を含む材料から多環芳香族炭化水素を抽出する方法を提供する。
【0017】
抽出媒体が極性を有する場合、その極性は多環芳香族炭化水素を除去するために分子インプリントポリマーと接触させられる前に例えば該抽出媒体をそれより極性の小さい溶媒と混合して好ましくは誘電率が約8未満になるように減少させる必要がある。従って本発明は、具体的には多環芳香族炭化水素を含む材料をそこから該炭化水素を抽出するために抽出媒体と接触させる工程と、抽出媒体の極性を約8未満の誘電率にまで減少させる工程と、該炭化水素を含む抽出媒体と分子インプリントポリマーとを接触させて該炭化水を除去する工程とを含む材料から多環芳香族炭化水素を抽出する方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一般的な多環芳香族炭化水素の例を示す。
【図2】タバコまたは他の材料から多環芳香族炭化水素を除去するための再循環設備を略式に示す。
【図3】メタノールの量の増加に伴う酢酸エチルとメタノールの混合物中のベンゾ[a]ピレンの保持比k’を示す。
【図4】シクロヘキサンの量の増加に伴う酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物中のベンゾ(a)ピレンの保持比k’を示す。
【図5】分子インプリントポリマーの調製の際にジクロロメタンおよび酢酸エチルをポロゲンとして使用した際のクロマトグラフ実験におけるピーク形状の違いを例示した図である。
【図6】シクロヘキサンの量の増加に伴う酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物中のインプリントおよび非インプリントポリマーの保持比k’を示す。
【図7】a)未処理の抽出物、b)EDMAポリマーをベースにしたMIPを通過した後の抽出物、c)DVBポリマーをベースにしたMIPを通過した後の抽出物のタバコシクロヘキサン抽出物のGC−MSフルスキャンフィンガープリントを示す図である。
【0019】
本発明は、喫煙材、食物材、植物材、植物抽出物および風味剤などの種々の材料から多環芳香族炭化水素を除去する方法に関する。本発明は、喫煙材、滋養または嗜好として人間を含む動物によって食される、または飲まれるあらゆる物質を含む食物材、木を燃やして、発生した煙を抽出媒体で抽出することによって得られる液体煙などの風味および/または味付けのために材料に添加される作用物質などの風味剤、花、茎、葉または根などの植物のあらゆる部分を原料とした植物材、植物油、特に1つ以上の野菜を原料とし、任意に追加の成分を含むトリグリセリドオイル、動物油、特に1種以上の動物を原料とし、任意に追加の成分を含むトリグリセリドオイルおよび例えば植物からスチームによる蒸留または他の方法で得られる揮発性の芳香性化合物の混合物などのエッセンシャルオイルなどに好適であるが、これらの用途に限定されるものではない。
【0020】
本発明は、少なくとも2つの溶融芳香族環を有する多環芳香族炭化水素の抽出に関連して使用されるのが好ましい。いくつかの態様ではこの多環芳香族炭化水素は、4つ以上の芳香族環を有する。
【0021】
本発明の1つの態様では、その方法は個体または液体材料を低極性抽出媒体と接触、例えば抽出する工程およびこの抽出された物を多環芳香族炭化水素に選択的な少なくとも1つの芳香族環を有する分子インプリントポリマーに接触させる工程を含む。この抽出された物は、任意に材料およびそれが取り除かれた抽出媒体に戻される。
【0022】
本発明の1つの態様では材料は、植物油、動物油、エッセンシャルオイルまたはこれらの混合物であり、これらは任意に低極性混合物を得るために低極性媒体によって希釈され、少なくとも1つの芳香族環を有する分子インプリントポリマーと接触される。低極性媒体は、液体の粘度を減少させるために使用され、これにより分子インプリントポリマーで満たされたカラム内を流れることができるようになる。低極性媒体は、その後任意に取り除かれる。材料が低極性媒体で希釈されないときは常に材料自体が低極性混合物を形成する。
【0023】
本発明のいくつかの態様において多環芳香族炭化水素除去の目的は、その量を定量化することである。
【0024】
本発明の1つの態様では喫煙材またはその抽出物、食物材、風味剤または植物材などの材料は、低極性抽出媒体で抽出される。いくつかの態様では材料は、低極性抽出媒体で溶解される。抽出物および/またはこのような材料を含む低極性媒体は、分子インプリントポリマーと接触させられ、多環芳香族炭化水素は分子インプリントポリマーに吸着される。多環芳香族炭化水素が吸着された後の抽出物は、その後任意に材料に戻される。これは多環芳香族炭化水素以外の他の抽出された化合物を材料に戻すために行われる。分子インプリントポリマーは、任意ではあるが1つ以上の溶媒または溶媒混合物または材料に後で戻される超臨界流体で洗浄される。低極性抽出媒体および洗浄溶媒または超臨界流体は、その後任意ではあるが材料から取り除かれる。
【0025】
1つの態様では多環芳香族炭化水素または多環芳香族炭化水素を含む製品は、液体に解けており、多環芳香族炭化水素を液体から取り除く必要がある。例えば植物油または動物油、エッセンシャルオイル、ワックス、バター、マーガリン、ココナッツ油などの調理用油脂から多環芳香族炭化水素を取り除くことが必要とされる場合がある。
【0026】
本発明のいくつかの態様において、多環芳香族炭化水素が取り除かれる材料は、1つ以上の食物材料、1つ以上の風味剤または1つ以上の植物材またはそれから得られる材料、例えば抽出物などである。他には材料は喫煙材またはその抽出物である。
【0027】
本発明のいくつかの態様において低極性抽出媒体は、超臨界二酸化炭素などの超臨界流体、シクロヘキサン、ヘプタンまたはトルエンなどの炭化水素、酢酸エチル、ジエチルエーテル、植物または動物油またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0028】
本発明のいくつかの態様では多環芳香族炭化水素は、分子インプリントポリマーを再利用することができるように、再生溶媒で分子インプリントポリマーから放出される。本発明の1つの態様では低極性媒体は、極性または低極性媒体に囲まれてもよい。
【0029】
本発明1つの態様ではタバコまたは他の喫煙材またはその抽出物のサンプルが超臨界二酸化炭素で抽出され、抽出物は超臨界抽出物から多環芳香族炭化水素を除去する分子インプリントポリマーと接触させられる。本発明の1つの態様では抽出物はその後1つ以上の追加の抽出サイクルのためにタバコサンプルに戻される。本発明の1つの態様では抽出サイクルは、多環芳香族炭化水素のレベルが所望のレベルまで減るまで繰り返される。この所望のレベルは、タバコの用途によって変わる。図2はこの工程の設備を略式に示している。
【0030】
図2は多環芳香族炭化水素をタバコまたは他の材料から除去するための装置の一例を略式に示している。多環芳香族炭化水素は、超臨界媒体を使用して分子インプリントポリマーが詰め込まれた捕捉カラム(1)に捕捉される。この装置は、圧力ポンプ(2)と、再循環ポンプ(3)と、抽出セル(エクストラクター)(4)例えば材料が詰められた半予備HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)カラム(10x150mm)と、MIPが充填された捕捉カラム(1)(4.6x50mm)と、処理された材料の再循環の際に逆圧を調整することができるニードルバルブ(5)と、抽出後の圧力を解放するための制限バルブ(6)とを含む。制限バルブからの外流は、抽出された成分を捕捉するための好適な溶媒で満たされた収集ガラス瓶を通過させられる。任意にヒーター(8)が存在してもよい。
【0031】
本発明のいくつかの態様で多環芳香族炭化水素は、再生溶媒で分子インプリントポリマーから放出され、分子インプリントポリマーは再利用される。
【0032】
本発明の1つの態様では液体または固体材料が低極性抽出媒体によって抽出される。抽出された物は、分子インプリントポリマーと接触し、多環芳香族炭化水素が分子インプリントポリマーに吸着される。分子インプリントポリマーは、任意であるが1つ以上の溶媒または溶媒混合物で洗浄され、多環芳香族炭化水素は、溶出溶媒で分子インプリントポリマーから放出され、定量化することができる。本発明のいくつかの態様では多環芳香族炭化水素が抽出される材料は、1つ以上の食物材、1つ以上の風味剤、または1つ以上の植物材である。
【0033】
本発明のいくつかの態様において、低極性抽出媒体は、超臨界二酸化炭素などの超臨界流体、シクロヘキサン、ヘプタンまたはトルエンなどの炭化水素、酢酸エチル、ジエチルエーテル、植物または動物油またはこれらの混合物である。
【0034】
本発明の1つの態様では材料は、任意に低極性有機溶媒で希釈される、または溶解され、分子インプリントポリマーと接触させられる。分子インプリントポリマーは、取り除かれ、任意に1つ以上の溶媒、溶媒混合物または材料に戻され、任意に取り除かれる超臨界流体で洗浄される。多環芳香族炭化水素の量が減少した材料が得られる。
【0035】
本発明のいくつかの態様では材料は、液体材料である。
【0036】
本発明のいくつかの態様では液体材料は、植物または動物油、エッセンシャルオイル、リキッドスモークまたは喫煙材の液状抽出物である。本発明のいくつかの態様では低極性有機溶媒は、シクロヘキサン、ヘプタンまたはトルエンなどの炭化水素、酢酸エチルまたはジエチルエーテルである。本発明のいくつかの態様では分子インプリントポリマーは、カラムに充填される。本発明のいくつかの態様では多環芳香族炭化水素は、分子インプリントポリマーの再利用を可能にする再生溶媒で分子インプリントポリマーから放出される。
【0037】
本発明の1つの態様では植物または動物油、エッセンシャルオイル、リキッドスモークまたは喫煙材の液体抽出物が任意に低極性溶媒で希釈される。任意に希釈された油は、分子インプリントポリマーと接触し、多環芳香族炭化水素は分子インプリントポリマーに吸着される。分子インプリントポリマーは、任意に1つ以上の溶媒または溶媒混合物で洗浄され、多環芳香族炭化水素は、溶出溶媒によって分子インプリントポリマーから放出され、定量化してもよい。本発明のいくつかの態様では低極性有機溶媒は、シクロヘキサン、ヘプタンまたはトルエンなどの炭化水素、酢酸エチルまたはジエチルエーテルである。
【0038】
上述の分子インプリントポリマーは、少なくとも1つの芳香族モノマーで調製される。
【0039】
好適な機能性モノマーとしては、スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、3−ニトロ―スチレン、2−、3−または4−ビニルビフェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)スチレン、4−アセトキシ−スチレン、N−メチル−2−ビニルピリジニウム塩、N−メチル−3−ビニルピリジニウム塩、N−メチル−4−ビニルピリジニウム塩、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ジビニルベンゼンまたはその誘導体または類似体であるが、これらに限定されない。機能性モノマーは、架橋モノマーとして機能してもよい。
【0040】
架橋モノマーの好ましい例としては、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびジビニルベンゼンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
1つの態様において、テンプレートは少なくとも2つの縮合または共役芳香族環を有する化合物である。ピレンを分子インプリントポリマーの調製においてテンプレートとして使用することが可能であるが、他のテンプレート、例えばナフタレン、スチルベン、アントラセン、ベンゾ[a]ピレンアセナフテン、アセナフチレン、アントラセン、ベンズ[a]アントラセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[ghi]ペリレン、ベンゾ[a]ピレン、クリセン、ジベンズ[a、h]アントラセン、フルオランテン、フルオレン、インデノ[1,2,3−cd]ピレン、ナフタレンおよびフェナントレンなどを使用してもよい。1つの態様ではピレンがテンプレートとして使用される。本発明のいくつかの態様では分子インプリントポリマーは、モノマーとしてジビニルベンゼンおよび4−ビニルピリジンまたはこれらの類似物または派生物を使用して調製される。
【0042】
いくつかの態様においてポロゲンは、好ましくは溶媒として重合反応中で存在し、多孔性ポリマーの形成を導く。好適なポロゲンは、当業者に知られており、その例としては、酢酸エチル、トルエン、ベンジルアルコール、シクロヘキサン、イソプロパノールおよびアセトニトリルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。1つの態様では酢酸エチルが使用される。いくつかの態様では分子インプリントポリマーは、モノマーとしてジビニルベンゼンおよび4−ビニルピリジンそしてテンプレートとしてピレンを使用して調製される。1つの態様では分子インプリントポリマーは、モノマーとしてジビニルベンゼンおよび4−ビニルピリジンそしてテンプレートとしてピレンをポロゲンとして酢酸エチルを使用して調製される。本発明の分子インプリントポリマーと類似しているがテンプレートとしてベンゾ[a]ピレンをポロゲンとしてジクロロメタンを含む分子インプリントポリマーがメタノールで希釈されたコーヒーからベンゾ[a]ピレンを抽出することができ(Lai等による「Analytica Chimica Acta522(2004)」137−144頁)、ジクロロメタン中ベンゾ(a)ピレンを弱く結合することが示されている。ジクロロメタンは中間の極性を有する溶媒である。それより低い極性の有機溶媒による実験は、開示されなかった。
【0043】
多環芳香族炭化水素との分子インプリントポリマーの反応に関する総合的な研究(Baggiani等による「Anal Bioanal Chem (2007)389」413−422頁)は、本発明による分子インプリントポリマーに似ているが、ポロゲンとしてクロロホルムで調製された分子インプリントポリマーは、ジクロロメタン中のピレンの保持力が小さく、保持力は高極性溶媒であるアセトニトリルを多量にジクロロメタンと混合した場合に徐々に増加すると開示している。これらの結果は、ピレンと分子インプリントポリマーとの疎水的相互作用を引き起こす分離機構によって説明がつく。極性の低い有機溶媒の実験は、開示されなかった。多環芳香族炭化水素は、極性溶媒中に保持され、その保持力は、溶媒の極性がジクロロメタンなどの中間の極性の溶媒によって低くなる場合に小さくなることは知られている。この反応がさらに極性の小さい溶媒を使用した場合に変わると信じる根拠はない。しかしながら本発明の発明者達は、本発明による分子インプリントポリマーがシクロヘキサン、ヘプタン、超臨界二酸化炭素またはこれらの混合物などの低極性溶媒中で良好な保持力を示すという驚異的な発見をした。
【0044】
例示として保持比(capcity factor)k’をメタノールまたはシクロヘキサンの濃度を増加させながら、酢酸エチル中で測定した。保持比k’は、無勾配クロマトグラフィー実験における化合物の保持容量とボイド容量(void volume)の差をボイド容量で除したものとして定義され、吸着剤に対する分子の保持力の尺度であり、高い保持比k’は、吸着剤に対する強い結合力を意味する。極性溶媒であるメタノールの量を増やした場合、保持比k’は、図3に示すようにBaggiani等によって開示された情報に基づいて予想されたようにメタノールの量によって増加する。低極性有機溶媒であるシクロはヘキサンの場合、図4に示すようにシクロヘキサンの量によって保持比k’は、増加する。このことは、驚異的なことである。なぜなら本発明者等は低極性有機溶媒の添加は、保持比k’を低下させると予想していたからである。実際には溶媒の極性が増加または減少した場合、保持比k’は、増加するので、保持比k’は純粋な酢酸エチルの最小値に近くなるようである。
【0045】
媒体の極性の共通の尺度は、誘電率であり、高い誘電率は極性媒体を示し、低い誘電率は低極性媒体であることを示す。当業者であれば知られているように極性媒体は、高い誘電率、例えば10超の誘電率を有する。
【0046】
本発明で使用される好ましい低極性媒体は、例えば1から約8の範囲の低誘電率を有する。多環芳香族炭化水素と抽出媒体を含む本発明の方法の過程で形成される低極性混合物は、好ましくは同じ範囲の誘電率を有する。
【0047】
極性媒体は、高誘電率の媒体であり、好ましくは10超の誘電率を有し、低極性媒体は、好ましくは約8未満の低誘電率の媒体である。以下のリストは、分子インプリントポリマーによって異なる極性の溶媒中のベンゾ[a]ピレンに対して得られた保持比をまとめたものである。
酢酸エチル(誘電率6.08):k’=3.0
ジエチルエーテル(誘電率4.27):k’=6.4
シクロヘキサン(誘電率2.02):k’>50
CRC、Handbook of Chemistry and Physics, 80th Edからの値である
【0048】
比較のためにBaggianiは約0.2のジクロロメタン(誘電率8.93)の保持比を報告している。本発明者等によって発見された保持力は、予想された0.2以下の保持比に基づいて期待されたものよりかなり高いことが明らかである。
【0049】
理論に縛られることなく、本発明者はこの良好な保持力は、ポリマーの電子が豊富なピレン分子と電子不足ピリジン環との間の電荷移動相互作用によるものであるとの仮説を立てている。本発明は、ピリジン環を含むポリマーに限定されるものではなく、フェニル、ナフチル、ペンタフルオロフェニル、3−ニトロフェニル、ビフェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4−アセトキシフェニル、ピリジン、N−メチルピリジニウムまたはその誘導体または類似物を含む他の芳香族基を含むポリマーも有効である。
【0050】
本発明ではジクロロメタンおよびクロロホルムの代わりにポロゲンとして酢酸エチルを使用する。本発明者は、酢酸エチルは、分子インプリントポリマーによりクロマトグラフィー実験で証明されたようにより均一な吸着性を供することから(図5)、より良好なポロゲンであるとの知見を得た。そしてここで説明する他のポロゲンも同様な特性を有する。
【0051】
本発明のいくつかの観点において分子インプリントポリマーは、多環芳香族炭化水素が低保持比k’を有する場合、溶媒で洗浄することによって再生される。このような溶媒としては中間の極性を有する溶媒、例えば8から10の誘電率を有するジクロロメタン(誘電率8.9)などでよい。このような中間の極性の間隔は、低極性の溶媒と高極性の溶媒を混合することによって得られる。また他の再生方法も使用可能である。分子インプリントポリマーの再生は、大規模な方法に使用するのに適している。
【0052】
例えば「60%超」などの間隔といった場合、常に本明細書では、60から100のあらゆる間隔を意味し、それよりも狭い間隔、例えば75.1から88.3%、90.2から99.2などの間隔も含み、「10未満」は、10までの間隔を意味し、それよりも狭い間隔、例えば1.1から7.9なども含む。
【実施例】
【0053】
以下の実施例は、あくまで例示を目的としており、本発明をなんら限定するものではない。
【0054】
実施例1
一般的な工程において、テンプレート分子ピレン(200mg、1mmol)、機能性モノマー4−ビニルピリジン(0.84g、8mmol)、架橋剤ジビニルベンゼン(5.2g、40mmol)、開始剤ABDN(アゾ−N,N’−ビスジバレロニトリル)(0.1g)およびポロゲン酢酸エチル(18ml)をガラス瓶に加えて予備重合混合物を調製した。この混合物を全ての成分が溶解するまで超音波で分解し、溶液を予め作製しておいた3%水性ポリビニルアルコール溶液(80ml)と共に反応瓶に移した。混合物を数分間撹拌し、温度を46°Cまで上昇させ、4−6時間後65°Cにまで上げた。この状態を一晩維持した。形成されたポリマーをろ過し、水で洗浄し、メタノールで洗浄した。集められた物質を20−90ミクロンのふるいにかけ、24時間ソックスレー装置中、酢酸エチルで洗浄して4.5gの白色ポリマーを得た。
【0055】
実施例2(比較例)
ポロゲンとしてジクロロメタン(DCM)を使用した以外は、実施例1の実験手順に従った。集められた物質は、20−90ミクロンのふるいにかけ、24時間ソックスレー装置中、酢酸エチルで洗浄して4.5gの白色ポリマーを得た。
【0056】
実施例1および2で調製されたポリマーおよび対応する非インプリントポリマー(NIP)、即ちテンプレートのピレンを含まないポリマーで高速液体クロマトグラフィー(HPLC)試験を行った。これらのポリマーをそれぞれ4.6x150mm高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムに充填した。ベンゾ[a]ピレン(B[a]P)標準を移動相(15%DCMを含むアセトニトリル)内に注入し、反応を蛍光検出器で観察した。得られたクロマトグラムをオーバーレイし、図5に示した。
【0057】
この図から解るように酢酸エチル(EtOAc)を使用したMIPおよびNIPのクロマトグラフィー上の挙動は、ポロゲンとしてジクロロメタンを含むポリマーに対して遥かに優れている。NIP/MIPペアの見かけの分解能(apparent resolution)は、EtOAcポリマーで1.3であり。DCNポリマーの場合で0.3だけである。EtOAcMIP(実施例1)のより狭く、より対称なピークは、そのMIPへのより均一な吸着を表している。
【0058】
実施例4
機能性モノマーとしてスチレン(0.84g、8mmol)を使用した以外は、実施例1の実験手順に従った。
【0059】
実施例5
架橋剤としてEDMA(エチレングリコールジメタクリレート)(8.0g、40mmol)を使用した以外は、実施例1の実験手順に従った。
【0060】
実施例6
実施例1および5ならびにそれらの対応するNIP(非インプリントポリマー)をそれぞれが充填された4.6x150mmHPLCカラム中のベンゾ[a]ピレンの保持比(k’)をEtOAc中のシクロヘキサンの量を増加させた移動相によるアイソクラチック運転で測定した。得られたk’を図6に示す。驚異的なことにベンゾ[a]ピレンの保持力は、溶媒がより低極性なると劇的に増加する。図6から解るように保持力は、EDMAポリマーに比べてインプリントDVB(ジビニルベンゼン)ポリマーの場合に最も大きくなる。効果は、極性を低下させたことによってインプリント係数(k’MIP/k’NIP)が増加するNIPに対するほど強くない。従ってPAHに対する特定の選択性は、シクロヘキサンの量の増加によって増加する。
【0061】
実施例7
ベンゾ[a]ピレンを含むタバコ材をこれからベンゾ[a]ピレンが抽出されるまでシクロヘキサンを使用して抽出した。シクロヘキサン抽出物を50mgのMIPが充填された3mlSPEカートリッジ内を通過させた。ベンゾ[a]ピレンは、従ってタバコ抽出物から選択的に取り除かれ、残りの抽出された成分は、例えばタバコをその元来の特性に戻すためにタバコに戻すことも可能である。
【0062】
このようにしてベンゾ[a]ピレン濃度は、図7に示すようにGC−MSフルスキャンフィンガープリントを著しく変えることなく抽出物中で97%超減少させた。
【0063】
実施例8
ベンゾ[a]ピレン含有タバコをこのタバコからベンゾ[a]ピレンを抽出するために最適化された条件で超臨界CO(scCO)を使用して図2に示したような超臨界流体抽出(SFE)で抽出した。抽出中scCOを再循環ポンプで系内で循環させ、抽出物を抽出物から選択的にベンゾ[a]ピレンを取り除くMIPが充填された4.6x50mmのカラム内を連続的に通過させて他の成分はタバコに戻される。
【0064】
実施例9
循環を行わず、即ちscCO抽出物が制限バルブを通過し、酢酸エチルなどの好適な溶媒に集められる以外は実施例8による抽出を行った。実施例8のようにベンゾ[a]ピレンをMIPによって選択的に捕獲させ、他の成分を集めた溶媒をタバコに注ぐまたは噴霧し、溶媒を蒸発させてタバコに戻した。
このようにしてMIPはニコチン量を変えずにベンゾ[a]ピレンの量を97超減少させることができたことを示した。
【0065】
実施例10
低極性抽出物中の効果的な捕獲によってMIPはベンゾ[a]ピレンおよび他の大きな多環芳香族炭化水素、例えば4個以上の芳香族環を含む多環芳香族炭化水素の分析的抽出のための洗浄工程として使用することができた。実施例7に記載した工程の後、多環芳香族炭化水素を酢酸エチルまたはDCMを使用して溶出させ、GC−MSによって定量化し、タバコ中のベンゾ[a]ピレンの量を算出することができた。
【0066】
実施例11
MIPをリキッドスモーク中のベンゾ[a]ピレンと他の大きな多環芳香族炭化水素の量を定量化するために使用した。これらは水系および油系であった。リキッドスモークをMIPが充填されたSPEカートリッジに充填し、選択性を高め、邪魔な化合物を除去するために一連の洗浄工程をシクロヘキサン、メタノールおよび水を使用して行った。多環芳香族炭化水素を酢酸エチルを使用して溶出させた。酢酸エチルを蒸発させ、サンプルを少量の溶媒中で再構成させ、多環芳香族炭化水素をGC−MSによって定量化した。
【0067】
実施例12
実施例1によるMIPを使用して、オイルベースのリキッドスモークからベンゾ[a]ピレンおよびベンゾ[a]アントラセンを回収した。BaP−d12とBaA−d12を含むオイルベースのリキッドスモークの1mlのサンプルを実施例1のMIP(75mg)を含むSPEカラムに加えた。SPEカラムをシクロヘキサンで洗浄し、その後サンプルを酢酸エチル(約3x1ml)で溶出させた。サンプルを蒸発させて、シクロヘキサン/酢酸エチル(50/50、1000μl)で再度溶解し、GC−MSで分析した。80%超のBaPおよびBaAが回収された。任意に液体/液体抽出のような抽出工程を使用し、比較のための結果を得た。
【0068】
実施例13
MIPを使用して植物および動物油中のベンゾ[a]ピレンおよび他の大きな多環芳香族炭化水素を定量化した。実施例11の方法で行った。
【0069】
実施例14
実施例1のMIPを使用してオリーブオイルからベンゾ[a]ピレンとと他の大きな多環芳香族炭化水素を回収した。オリーブオイルおよび多環芳香族炭化水素(各多環芳香族炭化水素2ng/g)およびクリセン−d12(内部標準)のサンプルを05g調製した。サンプルをシクロヘキサン(0.5ml)で希釈した。SPEカラムをシクロヘキサン(約0.5ml)で調節し、サンプルを加えた。その後SPEカラムをシクロヘキサン(約1ml)で洗浄し、サンプルを酢酸エチル(約3ml)で溶出させた。サンプルを乾燥状態になるまで蒸発させ、酢酸エチル内に再構成させ、GC−MSで分析した。従来の分析方法によって添加した多環芳香族炭化水素が次のように回収された、70%アセナフテン、28%アントラセン、48%フルオランテン、65%ベンゾ[a]アントラセン、70%クリセン、82%ベンゾ(b)フルオランテン、84%ベンゾ(k)フルオランテン、87%ベンゾ(a)ピレン、95%インデノ(1,2,3−cd)ピレン、82%ジベンゾ(a,h)アントラセン、87%ベンゾ(g,h,i)ペリレン。
【0070】
実施例15
MIPを使用してシクロヘキサンまたはヘプタンなどの低極性抽出物中のベンゾ[a]ピレンおよび他の多環芳香族炭化水素の量を定量化し、これは実施例11、12および13で説明したものと類似の方法でこのような溶媒を使用して液体−液体抽出(LLE)または液体−固体抽出(LSE)するための効果的な洗浄工程である。
【0071】
実施例16
実施例9で説明した系を使用してベンゾ[a]ピレンおよび種々の固体サンプルの4つ以上の芳香族環を含む多環芳香族炭化水素などの他の大きな多環芳香族炭化水素を最初にscCOを使用してサンプルマトリックスからこれら多環芳香族炭化水素を抽出し、次に大きな多環芳香族炭化水素が選択的に捕獲されるMIPを通し、DCMの酢酸エチルで溶出させ、多環芳香族炭化水素の定量化のための好適な分析装置で定量化することによって定量化した。元のサンプルの多環芳香族炭化水素の濃度をそれから計算してもよい。
【0072】
実施例17
加熱および加圧した溶媒を使用した加速溶媒抽出のための自動システムをMIPで修正した、またはシクロヘキサンまたはヘプタンなどの低極性溶媒でサンプルを抽出する場合、MIPを大きな多環芳香族炭化水素の選択的な捕獲のための抽出セル内に入れてもよい。その後多環芳香族炭化水素を溶出させ、実施例16で説明したように分析した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある物質から少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を取り除く方法であって、この方法は、低極性媒体の存在下で前記少なくとも1つの炭化水素に選択的な分子インプリントポリマーと前記炭化水素と接触させることを含む方法。
【請求項2】
喫煙材またはその派生物から少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を取り除く方法であって、この方法は、低極性媒体の存在下で前記少なくとも1つの炭化水素に選択的な分子インプリントポリマーと前記喫煙材またはその派生物とを接触させることを含む方法。
【請求項3】
喫煙材以外の材料またはその派生物から少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を取り除く方法であって、この方法は、低極性媒体の存在下で前記少なくとも1つの炭化水素に選択的な分子インプリントポリマーと前記材料またはその派生物とを接触させることを含む方法。
【請求項4】
前記低極性媒体が8未満の誘電率を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を含む材料の極性を低下させる工程と、前記少なくとも1つの炭化水素を含む材料を前記分子インプリントポリマーと接触させて前記少なくとも1つの炭化水素を除去する工程とを含むことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を含む材料が低極性媒体に溶解され、前記少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を含む材料を含む媒体を前記分子インプリントポリマーと接触させて前記少なくとも1つの炭化水素を除去することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を含む材料を低極性抽出媒体と接触させて、この材料から前記少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を除去し、前記少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を含むこの抽出媒体を前記分子インプリントポリマーと接触させて前記少なくとも1つの炭化水素を除去することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を含む材料を抽出媒体と接触させてこの材料から前記少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を抽出する工程と、前記抽出媒体の極性を低下させる工程と、前記少なくとも1つの多環芳香族炭化水素を含む抽出媒体を前記分子インプリントポリマーと接触させて前記少なくとも1つの炭化水素を除去する工程とを含むことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記抽出媒体または低極性抽出媒体が前記少なくとも1つの多環芳香族炭化水素と前記材料の他の成分と共に抽出し、さらに前記方法がこの他の成分を材料に戻す工程を含むことを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記低極性抽出媒体の誘電率が8未満であることを特徴とする請求項6または9記載の方法。
【請求項11】
前記抽出媒体の極性を8未満に低下させることを特徴とする請求項8または9記載の方法。
【請求項12】
喫煙材またはその派生物以外の材料が植物材、植物抽出物、食物材および風味剤から選択されることを特徴とする請求項3乃至11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記植物材、植物抽出物、食物材および風味剤が植物油、動物油、エッセンシャルオイル、リキッドスモーク、タールの抽出物またはこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記低極性媒体、前記低極性抽出媒体または前記抽出媒体が超臨界流体、低極性有機溶媒およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1乃至13いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記超臨界流体が二酸化炭素および水から選択され、低極性有機溶媒がシクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、植物または動物油およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記分子インプリントポリマーが、
a)少なくとも1つの重合性芳香族モノマーおよび予備重合混合物を形成する少なくとも1つのテンプレートを供する工程と、
b)前記少なくとも1つのモノマーの重合を開始する工程と、
c)分子インプリントポリマーを形成する工程と、
d)前記少なくとも1つのテンプレート分子を前記分子インプリントポリマーから取り除く工程とによって得られることを特徴とする請求項1乃至15いずれか1項記載の方法。
【請求項17】
架橋モノマーおよび/またはポロゲンが前記工程a)に供されることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの芳香族モノマーがスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、3−ニトロスチレン、2−、3−または4−ビニルビフェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)スチレン、4−アセトキシスチレン、N−メチル−2−ビニルピリジニウム塩、N−メチル−3−ビニルピリジニウム塩、N−メチル−4−ビニルピリジニウム塩、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ジビニルベンゼンおよびこれらの誘導体から選択されることを特徴とする請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
前記テンプレートが2つの縮合または共役芳香族環を有する化合物であることを特徴とする請求項16乃至18いずれか1項記載の方法。ピレンを分子インプリントポリマーの調製においてテンプレートとして使用することが可能であるが、他のテンプレート、例えばなどを使用してもよい。
【請求項20】
前記テンプレートがピレン、ナフタレン、スチルベン、アントラセン、ベンゾ[a]ピレンアセナフテン、アセナフチレン、アントラセン、ベンズ[a]アントラセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[ghi]ペリレン、ベンゾ[a]ピレン、クリセン、ジベンズ[a、h]アントラセン、フルオランテン、フルオレン、インデノ[1,2,3−cd]ピレン、ナフタレンおよびフェナントレンからなる群から選択されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記ポロゲンが酢酸エチルであることを特徴とする請求項17乃至20いずれか1項記載の方法。
【請求項22】
多環芳香族炭化水素の量が70%超、80%超、90%超、95%超のように60%超減少することを特徴とする請求項1乃至21いずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−526202(P2011−526202A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515627(P2011−515627)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050740
【国際公開番号】WO2009/156763
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(500252844)ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッド (111)
【氏名又は名称原語表記】BRITISH AMERICAN TOBACCO (INVESTMENTS) LIMITED
【Fターム(参考)】