説明

多発性硬化症を処置するための抗CS1抗体を用いる組成物および方法

本発明は、骨髄腫細胞において高度に発現される、細胞表面糖タンパク質のCD2ファミリーのメンバーであるCS1(CD2サブセット1)に特異的な抗体を、1以上の治療剤と組み合わせて含む医薬組成物に関する。該組成物を使用して多発性硬化症を処置する方法もまた、本発明の目的である。標的化薬剤、慣習的な化学療法剤、ホルモン治療剤および補助ケア物質および/またはそれらの組み合わせのような1以上の治療剤が、抗CS1抗体の投与と同時に、抗CS1抗体の投与より前に、または抗CS1抗体の投与に続いて、投与され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願の引用
本願は、2006年8月7日出願の米国出願第60/836,250号および2006年11月11日出願の米国出願第60/856,144号に対して米国特許法第119条(e)項の下での利益を主張する。これらの内容は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
2.背景
多発性骨髄腫(「MM:multiple myeloma」)は単一クローン由来形質細胞が悪性増殖したものを表す。多発性骨髄腫及び骨髄腫という用語は交換可能に使用され、同じ状態を指している。骨髄腫腫瘍、その産物及びこの腫瘍に対する宿主応答は、多くの臓器機能不全並びに骨痛もしくは骨折、腎不全、易感染性、貧血、低カルシウム血症及び時に凝固異常の症状、神経学的症状及び血管の過粘性症状をもたらす。非特許文献1を参照されたい。現在、MMに対して有効な長期処置はない。これは、高蛋白血症、貧血、腎機能不全、骨病変及び免疫不全として表れる形質細胞の悪性疾患である。MMは、早期段階では症状が認められない場合があるので、早期診断が困難である。この疾患は、処置がなされない場合、生存期間中央値が6ヶ月の進行性の経過を示す。全身性化学療法が主要な処置であり、化学療法による現段階の生存期間中央値は約3年ではあるが、10年より長期の生存者は5%未満である(非特許文献2参照)。
【0003】
多発性骨髄腫は薬剤感受性の疾患であると考えられているが、最初のうちは化学療法に反応した患者も殆ど全てが最終的には再発する(非特許文献2参照)。MMに対してメルファランおよびプレドニゾンの療法が導入されて以来、ビンカアルカロイド、アントラサイクリンおよびニトロソウレアをベースとした処置を含めた多数の多剤併用化学療法が試験されてきた(非特許文献3参照)が、過去30年間にわたって結果の改善は殆ど認められていない(非特許文献3及び非特許文献4参照)。モノクロナール抗体、治療剤、およびMMに関与する細胞レセプターおよび/またはタンパク質の低分子阻害剤を用いる組合せ療法などの新規な処置方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】D. Longo、Harrison’s Principles of Internal Medicine 第14版p.713(McGraw−Hill、ニューヨーク、1998年)
【非特許文献2】Anderson,K. et al.、Annual Meeting Report 1999、Recent Advances in the Biology and Treatment of Multiple Myeloma(1999年))
【非特許文献3】Case,D C et al.、(1997年)Am.J.Med)63:p.897−903
【非特許文献4】Otsuki,T. et al.、(2000年)Cancer Res. 60:p.1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
3.概要
本明細書では、抗CS1抗体の抗腫瘍特性を活用するのに有用な組成物及び方法について記載している。これらの方法及び組成物に用いることができる抗CS1抗体については米国特許公開第2005/0025763号及び同2006/0024296号に記載されており、これらの内容は引用により本明細書に組み込まれている。こうした抗CS1抗体は、SLAMF7、CRACC、19A、APEX−1及びFOAP12(Genbank登録番号NM_021181.3)としても公知のCS1(CD2サブセット1)を標的とする。CS1は、MMと診断された患者からの骨髄試料において高度に発現される糖蛋白質である。インビトロ及びインビボのいずれにおける実験でも、抗CS1抗体は顕著な抗骨髄腫活性を示す(例えば、米国特許公開第2005/0025763号及び同2006/0024296号参照。これらの内容は引用により本明細書に組み込まれている)。例えば、抗CS1抗体HuLuc63は抗体依存性細胞障害作用(ADCC)を介して骨髄腫細胞の溶解を効果的に媒介する(例えば、米国特許公開第2005/0025763参照。これの内容は引用により本明細書に組み込まれている。)が、これに限定されるものではない。マウス骨髄腫腫瘍モデルでは、HuLuc63を用いた処置によって腫瘍量が50%を超えて著しく縮小した(例えば、米国特許公開第2005/0025763号参照。これの内容は引用により本明細書に組み込まれている。)。
【0006】
本開示内容は、新たに診断されたものから末期再発/難治性のものまでの範囲の、意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS:Monoclonal Gammopathy of Undetermined Significance)、くすぶり型骨髄腫、無症候性MM及び症候性MMと診断された患者を処置するための組成物及び方法に関する。特に、上記方法は、抗CS1抗体を含む医薬組成物と1種以上の治療剤とを組合せた投与に関する。通常、この抗CS1抗体は、0.5〜20mg/kgの範囲の用量で週に1回から月に1回までで、静脈内注入として投与される。
【0007】
標的化薬剤、慣習的な化学療法剤、ホルモン治療剤および補助ケア物質および/またはそれらの組み合わせのような1以上の治療剤が、抗CS1抗体の投与と同時に、抗CS1抗体の投与より前に、または抗CS1抗体の投与に続いて、投与され得る。
【0008】
一部の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物を投与することにより、治療剤に対する多発性骨髄腫細胞の感受性が増大する。例えば、HuLuc63のような抗CS1抗体は治療剤の活性を増強させ、その結果、より低い用量を本明細書に記載の組成物及び方法で用いることができる。
【0009】
一部の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物を投与することにより、欧州血液骨髄移植グループ(EBMT:European Group for Blood and Marrow transplantation)によって定義されている有益な寛解のうちの少なくとも1つが誘発される。例えば、本明細書に記載の医薬組成物を投与することにより、完全寛解、部分寛解、最小寛解、無変化又はプラトー(plateau)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、インビボマウス多発性硬化症異種移植モデルにおける、HuLuc63単独、およびデキサメタゾンとの組み合わせでのHuLuc63の、抗腫瘍活性を示す。
【図2】図2は、インビボマウス多発性硬化症異種移植モデルにおける、HuLuc63単独、サリドマイド単独、およびサリドマイドとの組み合わせでのHuLuc63の、抗腫瘍活性を示す。
【図3】図3は、インビボマウス多発性硬化症異種移植モデルにおける、HuLuc63単独、サリドマイド/デキサメタゾン、ならびにサリドマイドおよびデキサメタゾンとの組み合わせでのHuLuc63の、抗腫瘍活性を示す。
【図4】図4は、インビボマウス多発性硬化症異種移植モデルにおける、HuLuc63単独、およびベバシズマブとの組み合わせでのHuLuc63の、抗腫瘍活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
5.詳細な説明
本明細書に記載の組成物は抗CS1抗体と特定用量の1種以上の治療剤を組み合わせたものであり、これによって互いに抗骨髄腫活性が増強又は補完される。好適な抗CS1抗体の例としては、CS1上に特定されている3つのエピトープクラスターのうちの1つ以上に結合する単離抗体及びハイブリドーマ細胞株Luc2、Luc3、Luc15、Luc22、Luc23、Luc29、Luc32、Luc34、Luc35、Luc37、Luc38、Luc39、Luc56、Luc60、Luc63、Luc69、LucX.1、LucX.2又はLuc90によって産生されたモノクロナール抗体が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の以下では、これらのモノクロナール抗体をそれぞれ抗体Luc2、Luc3、Luc15、Luc22、Luc23、Luc29、Luc32、Luc34、Luc35、Luc37、Luc38、Luc39、Luc56、Luc60、Luc63、Luc69、LucX及びLuc90と称する。ヒト化型は「hu」という接頭語によって示されている(例えば、米国特許公開第2005/0025763号及び同2006/0024296号参照。これらの内容は引用により本明細書に組み込まれている)。
【0012】
一部の実施態様では、好適な抗CS1抗体として、CS1(下記表1の配列番号1;例えば、米国特許公開第2006/0024296号参照。これの内容は引用により本明細書に組み込まれている。)上に特定されている3つのエピトープクラスターのうちの1つ以上に結合する単離抗体が挙げられる。米国特許公開第2006/0024296号に開示され、また、下記の表1に示したように、これらのCS1抗体結合部位は、以下の3つのエピトープクラスターに分けられている:
(1)hu50/mu50(配列番号2)に結合するLuc90によって規定されるエピトープ。このエピトープはヒトCS1の約23番目のアミノ酸残基から約151番目のアミノ酸残基にわたる。このエピトープは細胞外ドメインのドメイン1(Vドメイン)内にある。また、このエピトープはLuc34、(LucX.1及びLucX.2を含む)LucX並びにLuc69によっても認識される。
【0013】
(2)mu25/hu75(配列番号3)及びhu50/mu50(配列番号81)に結合するLuc38によって規定されるエピトープ。このエピトープはヒトCS1の約68番目のアミノ酸残基から約151番目の残基にわたると思われる。また、このエピトープはLuc5によっても認識される。
【0014】
(3)mu75/hu25(配列番号4)に結合するLuc63によって規定されるエピトープ。このエピトープはヒトCS1の約170番目のアミノ酸残基から約227番目のアミノ酸残基にわたる。このエピトープはヒトCS1のドメイン2(C2ドメイン)内にある。このエピトープはLuc4、Luc12、Luc23、Luc29、Luc32及びLuc37によっても認識される。
【0015】
上記の方法及び医薬組成物については以下にさらに詳細に説明するが、通常、これらには上述のような抗CS1抗体を少なくとも1種含める。一部の実施態様において、こうした医薬組成物には抗CS1抗体HuLuc63を含有させる。HuLuc63はヒトCS1に対する組換えヒト化モノクロナールIgG1抗体である。HuLuc63の重鎖可変領域(配列番号5)及び軽鎖可変領域(配列番号6)のアミノ酸配列は、米国特許公開第2005/0025763号(その内容は引用により本明細書に組み込まれている)及び表1に開示されている。
【0016】
【表1−1】

【0017】
【表1−2】

【0018】
【表1−3】

【0019】
一部の用量では、相加効果がみられ、他の用量では、相乗効果がみられた。一部の実施態様では、この相乗効果によって、1種以上の抗CS1抗体との組合せで1種以上の治療剤を、効力を維持しながら投与量を下げて投与することが可能となる。これらの薬剤の使用に伴う副作用が用量依存性であることを考えれば、本明細書に記載の組成物及び方法を用いることによって、これらの薬剤をその推奨投与量で投与する場合に、MMの処置に用いる従来の処置レジメン及び新規処置レジメンにおいて認められる有害な副作用を減少させることができる。
【0020】
他の実施態様では、この相乗効果によって、承認投与量でありながらも予想される効力よりも高い効力で、1種以上の治療剤を1種以上の抗CS1抗体と組合せて投与することが可能となる。
【0021】
上記組成物は、新たに診断されたものから末期再発/難治性のものまでの範囲の意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)、くすぶり型骨髄腫、無症候性MM及び症候性MMを処置するために投与することができる。通常、こうした組成物を投与することによって血清又は尿中のM蛋白質が減少し、その結果、欧州血液骨髄移植グループ(EBMT)が定義するプラトー、無変化、最小寛解、部分寛解又は完全寛解が認められる。
【0022】
5.2. 医薬組成物
本明細書で提供されるのは、多発性骨髄腫と診断された患者において腫瘍量を縮小させ、及び/又は腫瘍成長を後退させるのに有用な医薬組成物である。さらに、この医薬組成物は、血清または尿におけるモノクローナルタンパク質(M−タンパク質、パラプロテイン)の存在によって特徴付けられる他の疾患を処置するためにも使用され得る。
【0023】
一部の実施態様では、上記組成物の各種成分は別々に提供される。例えば、抗CS1抗体を第一の医薬組成物として提供し、治療剤を第二の組成物として提供することができる。組成物が2種以上の治療剤を含む場合、抗CS1抗体を第一の医薬組成物として提供し、1種類の治療剤を第二の組成物として提供し、その他の治療剤を第三の組成物として提供することができる。他の実施態様では、抗CS1抗体を1つの医薬組成物として提供し、治療剤を混合して第二の医薬組成物として提供することができる。さらに他の実施態様では、抗CS1抗体および1種以上の治療剤を含む1つの組成物を提供することができる。
【0024】
代表的な実施態様では、抗CS1抗体を、0.5mg/kg〜20mg/kgの静脈内投与を可能にするのに十分な濃度で医薬組成物中に存在させる。一部の実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法に用いるのに適した抗CS1抗体の濃度としては、少なくとも約0.5mg/kg、少なくとも約0.75mg/kg、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約2mg/kg、少なくとも約2.5mg/kg、少なくとも約3mg/kg、少なくとも約4mg/kg、少なくとも約5mg/kg、少なくとも約6mg/kg、少なくとも約7mg/kg、少なくとも約8mg/kg、少なくとも約9mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約11mg/kg、少なくとも約12mg/kg、少なくとも約13mg/kg、少なくとも約14mg/kg、少なくとも約15mg/kg、少なくとも約16mg/kg、少なくとも約17mg/kg、少なくとも約18mg/kg、少なくとも約19mg/kg及び少なくとも約20mg/kgが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
上記抗CS1抗体は、単回投与レジメンでも複数回投与レジメンでも投与することができる。概して、抗CS1抗体は約1〜約24時間の時間をかけて投与されるが、通常は約1〜2時間の時間をかけて投与される。投与は、合計4用量以上で約1〜約4週間またはそれより長く反復することができる。通常は、最低4用量から最高52用量までで、週に1回、隔週に1回又は月に1回で投与を繰り返す。
【0026】
抗CS1抗体の有効投与量、用量総数及び処置期間を決定することは、十分当業者の能力の範囲内であり、最大許容投与量(MTD:maximum tolerated dose)を見出すための標準的な用量漸増試験を利用して決定することができる(例えば、Richardson et al.、2002年、Blood、100(9):p.3063−3067参照。これらの内容は引用により本明細書に組み込まれている。)。
【0027】
一部の実施態様では、抗CS1抗体と組み合わせて1種以上の治療剤を投与する。この治療剤は抗CS1抗体の投与と同時に、又はそれに先だって、又はその後に投与することができる。
【0028】
一部の実施態様では、治療剤の投与に先だって抗CS1抗体を投与する。例えば、治療剤投与の約0〜60日後に抗CS1抗体を投与することができる。一部の実施態様では、治療剤投与の約30分〜約1時間前、又は治療剤投与の約1時間〜約2時間前、又は治療剤投与の約2時間〜約4時間前、又は治療剤投与の約4時間〜約6時間前、又は治療剤投与の約6時間〜約8時間前、又は治療剤投与の約8時間〜約16時間前、又は治療剤投与の約16時間〜1日前、又は治療剤投与の約1日〜5日前、又は治療剤投与の約5日〜10日前、又は治療剤投与の約10日〜15日前、又は治療剤投与の約15日〜20日前、又は治療剤投与の約20日〜30日前、又は治療剤投与の約30日〜40日前、又は治療剤投与の約40日〜50日前、又は治療剤投与の約50日〜60日前にHuLuc63などの抗CS1抗体を投与する。
【0029】
一部の実施態様では、治療剤の投与と同時に抗CS1抗体を投与する。
【0030】
一部の実施態様では、治療剤の投与後に抗CS1抗体を投与する。例えば、治療剤投与の約0〜60日前にHuLuc63などの抗CS1抗体を投与することができる。一部の実施態様では、治療剤投与の約30分〜約1時間後、又は治療剤投与の約1時間〜約2時間後、又は治療剤投与の約2時間〜約4時間後、又は治療剤投与の約4時間〜約6時間後、又は治療剤投与の約6時間〜約8時間後、又は治療剤投与の約8時間〜約16時間後、又は治療剤投与の約16時間〜1日後、又は治療剤投与の約1日〜5日後、又は治療剤投与の約5日〜10日後、又は治療剤投与の約10日〜15日後、又は治療剤投与の約15日〜20日後、又は治療剤投与の約20日〜30日後、又は治療剤投与の約30日〜40日後、又は治療剤投与の約40日〜50日後、又は治療剤投与の約50日〜60日後にHuLuc63を投与する。
【0031】
本明細書中に記載される抗CS1抗体と組み合わせて使用されえる治療剤としては、標的化薬剤、慣習的な化学療法剤、ホルモン治療剤、および補助ケア物質が挙げられるが、これらに限定されない。異なるクラスに由来する1以上の治療剤、例えば標的化、慣習的化学療法剤、ホルモン剤、および補助ケア、および/またはサブクラスが、本明細書中に記載の組成物と組み合わされ得る。本明細書中に記載の種々のクラスは、さらにサブクラスに分けられ得る。例として、標的化薬剤は、その作用機序に基づいて多数の異なるサブクラスに分別され得る。当業者には明白であるように、この薬剤は、1以上の作用機序を有し得、したがって1以上のサブクラスに分類され得る。本明細書中に記載の組成物および方法の目的のために、以下のサブクラスが同定されている:抗脈管形成、成長因子シグナル伝達の阻害剤、免疫調整剤、タンパク質合成、フォールディングおよび/または分解の阻害剤、遺伝子発現の阻害剤、プロアポトーシス剤、シグナル変換を阻害する物質、および「他の」作用機序の物質。代表的に、「他の」サブクラスに入る物質の作用機序は、未知であるか、あまり特徴付けられていない。
【0032】
例えば、いくつかの実施形態において、標的化薬剤、例えばベバシズマブ、スチニブ、ソラフェニブ、2−メトキシエストラジオール(すなわち、2ME2)、PTK787、バンデタニブ、アフリベルセプト、ボロシキマブ、アタラシズマブ(MEDI−522)、シレンギチド(cilengitide)、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ゲフィニチブ、トラスツズマブ、TK1258、CP−751,871、アタシセプト、リツキシマブ、アレムツズマブ、アルデスロイキン、アトリズマブ、トシリズマブ、テムシロリムス、エベロリムス、NPI−1387、MLNM3897、HCD122、SGN−40、HLL1、huN901−DM1、アチプリモド(atiprimod)、ナタリズマブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、NPI−0052、タネスピマイシン、サキナビル、メシレート、リトナビル、ネルフィナビルメシレート、インジナビルサルフェート、ベリノスタット、LBH589、マパツムマブ、レキサツムマブ、AMG951、ABT−737、オブリメルセン(oblimersen)、プリチデプシン(plitidepsin)、SCIO−469、P276−00、エンザスタウリン、チピファルニブ(tipifarnib)、ペリフォシン、イマチニブ、ダサチニブ、レナリドマイド、サリドマイド、シンバスタチン、およびセレコキシブが、HuLuc63のような抗CS1抗体と組み合わせて使用され得、そしてMM患者を処置するために使用され得る。
【0033】
他の例として、慣習的な化学療法剤、例えばアルキル化剤(例えば、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド、ウラムスチン、クロラムブシル、カルムスチン、メクロエラミン、チオテパ、ブスルファン、テモゾロミド、ダカルバジン)、抗代謝薬(例えば、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド、Ara−C、カペシタビン、5−FU(5−フルオロウラシル)、アザチオプリン、メルカプトプリン(6−MP)、6−チオグアニン、アミノプテリン、ペメトレキセド、メトトレキサート)、植物アルカロイドおよびテルペノイド(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、エトポシド、VP−16、テニポシド、イリノテカン、トポテカン)。抗腫瘍抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ドキソルビシン。リポソームドキソルビシン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、ミトキサントロン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシンC、カルミノマイシン、エスペラマイシン)、および他の薬剤(例えば、ダリナパルシン)が、HuLuc63のような抗CS1抗体と組み合わせて使用され得、そしてMM患者を処置するために使用され得る。
【0034】
別の例として、ホルモン剤(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ゴセレリン、タモキシフェン、デキサメタゾン、プレドニゾン、およびプレドニシロン)が、HuLuc63のような抗CS1抗体と組み合わせて使用され得、そしてMM患者を処置するために使用され得る。
【0035】
別の例として、補助ケア物質(例えば、パミドロネート、ゾレドロン酸(zoledonic acid)、イバンドロネート、ガリウム硝酸塩、デノスマブ、ダルベポチンα、エポエチンα、エルトロンボパグ(eltrombopag)、およびペグフィルグラスチム(pegfilgrastim))が、HuLuc63のような抗CS1抗体と組み合わせて使用され得、そしてMM患者を処置するために使用され得る。
【0036】
こうした治療剤は、臨床医が適切と判断する任意の方法で投与することができ、通常、Physician Desk Reference、第56版(2002年)(メディカルエコノミックス出版社(Publisher Medical Economics)、ニュージャージー州)に記載されているもののような一般に認められている有効用量範囲で提供される。他の実施態様では、標準的な用量漸増研究を行うことによって最大許容投与量(MTD)を見出すことができる(例えば、Richardson et al.、2002年、Blood、100(9):p.3063−3067参照。これの内容は引用により本明細書に組み込まれている。)。
【0037】
一部の実施態様では、治療剤をその一般に認められている有効用量よりも低い用量で用いることができる。例えば、各種実施態様において、前記組成物は、一般に認められている有効用量範囲の約10%〜75%未満の投与量を含む。一部の実施態様では、この一般に認められている有効用量範囲の少なくとも約10%以下、少なくとも約15%以下、少なくとも約25%以下、少なくとも約30%以下、少なくとも約40%以下、少なくとも約50%以下、少なくとも約60%以下、少なくとも約75%以下又は少なくとも約90%を用いる。
【0038】
上記治療剤は、下記のようにして、単独で若しくは順次、又は他の治療剤とのカクテルとして投与することができる。この治療剤は経口で、静脈内で、筋肉内注射により全身で、皮下に、髄腔内もしくは腹腔内注射により投与することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、医薬組成物中に提供される治療剤は、デキサメタゾン、サリドマイド、ビンクリスチン、カルムスチン(BCNU)、メルファラン、シクロホスファミド、プレドニゾン、ドキソルビシン、シスプラチン、エトポシド、ボルテゾミブ、レナリドマイド、ara−C、および/またはそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0040】
しかしながら、特定の実施形態においては、上記医薬組成物は、ボルテゾミブおよび/またはレナリドマイドを含まない。
【0041】
従って、一部の実施態様では、以下の2種の医薬組成物を提供する:治療上有効な量のHuLuc63などの抗CS1抗体を含む第一の組成物及び治療上有効な量のデキサメタゾンを含む第二の組成物。
【0042】
一部の実施態様では、少なくとも2種の医薬組成物を提供する:治療上有効な量のHuLuc63などの抗CS1抗体を含む第一の組成物及び治療上有効な量のデキサメタゾンおよびサリドマイドを含む第二の組成物。一部の実施形態において、デキサメタゾンおよびサリドマイドは、合計3つの医薬組成物が提供されるように別個に提供される:HuLuc63のような抗CS1抗体を含む第一の組成物、デキサメタゾンを含む第二の組成物、およびサリドマイドを含む第三の組成物。
【0043】
一部の実施態様では、以下の少なくとも2種の医薬組成物を提供する:治療上有効な量のHuLuc63などの抗CS1抗体を含む第一の組成物並びに治療上有効な量のビンクリスチン、ドキソルビシンおよびデキサメタゾン(例えば、VAD)を含む第二の組成物。一部の実施態様では、ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびデキサメタゾンを別々に提供する。これらの薬剤がその活性を維持する限り、用量、投与経路、およびその薬剤が、固形形態で提供されるか、半固形形態で提供されるか、または液体形態で提供されるかのいずれかであるかに部分的に依存して、他の組み合わせの薬剤を含む組成物が調製され得る。例えば、合計3種の医薬組成物が製造され得る:治療有効量のHuLuc63のような抗CS1抗体を含む第一組成物、デキサメタゾンを含む第二組成物、およびビンクリスチンおよびドキソルビシンを含む第三組成物。
【0044】
一部の実施態様では、以下の少なくとも2種の医薬組成物を提供する:治療上有効な量のHuLuc63などの抗CS1抗体を含む第一の組成物及び治療上有効な量のドキソルビシンHClリポソーム注射剤、ビンクリスチンおよびデキサメタゾン(例えば、DVd)を含む第二の組成物。これらの薬剤がその活性を維持する限り、用量、投与経路、およびその薬剤が、固形形態で提供されるか、半固形形態で提供されるか、または液体形態で提供されるかのいずれかであるかに部分的に依存して、他の組み合わせの薬剤を含む組成物が調製され得る。一部の実施態様では、以下の計3種の医薬組成物を提供する:HuLuc63などの抗CS1抗体を含む第一の組成物、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤を含む第二の組成物及びビンクリスチンおよびデキサメタゾンを含む第三の組成物。
【0045】
一部の実施形態では、2種の組成物が提供される:治療有効量のHuLuc63のような抗CS1抗体を含む第一の組成物、および治療有効量のシクロホスファミドを含む第二の組成物。
【0046】
一部の実施態様では、以下の少なくとも2種の医薬組成物を提供する:治療上有効な量のHuLuc63などの抗CS1抗体を含む第一の組成物及び治療上有効な量のデキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミドおよびエトポシド(例えば、DT−PACE)を含む第二の組成物。これらの薬剤がその活性を維持する限り、用量、投与経路、およびその薬剤が、固形形態で提供されるか、半固形形態で提供されるか、または液体形態で提供されるかのいずれかであるかに部分的に依存して、他の組み合わせの薬剤を含む組成物が調製され得る。例として、デキサメタゾンとサリドマイドとは1つの組成物において提供され得、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、およびエトポシドが別の組成物において提供され得る。
【0047】
一部の実施形態において、少なくとも2種の組成物が提供される:治療有効量のHuLuc63のような抗CS1抗体を含む第一の組成物、および治療有効量のビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、およびシクロホスファミドを含む第二の組成物。これらの薬剤がその活性を維持する限り、用量、投与経路、およびその薬剤が、固形形態で提供されるか、半固形形態で提供されるか、または液体形態で提供されるかのいずれかであるかに部分的に依存して、他の組み合わせの薬剤を含む組成物が調製され得る。例として、ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびシクロホスファミドは、1つの組成物として提供され得、そしてデキサメタゾンが第二の組成物として提供され得る。
【0048】
一部の実施態様では、以下の少なくとも2種の医薬組成物を提供する:治療上有効な量のHuLuc63などの抗CS1抗体を含む第一の組成物及び治療上有効な量のドキソルビシンHClリポソーム注射剤、ビンクリスチン、デキサメタゾン、およびサリドマイドを含む第二の組成物。一部の実施態様では、レナリドマイド、ボルテゾミブ及びデキサメタゾンを別々に提供する。これらの薬剤が有効性を保持する限り、ある程度投与量、投与経路、及び薬剤が固形、半固形又は液状のいずれで提供されるかに応じて、他の組合せを含む組成物を調製することができる。例としては、ビンクリスチン、デキサメタゾンおよびサリドマイドが1つの組成物として提供され得、そしてドキソルビシンHClリポソーム注射剤が第二の組成物として提供され得る。
【0049】
一部の実施態様では、以下の少なくとも2種の医薬組成物を提供する:治療上有効な量のHuLuc63などの抗CS1抗体を含む第一の組成物並びに治療上有効な量のドキソルビシンHClリポソーム注射剤及びボルテゾミブを含む第二の組成物。これらの薬剤が有効性を保持する限り、ある程度投与量、投与経路、及び薬剤が固形、半固形又は液状のいずれで提供されるかに応じて、他の組合せを含む組成物を調製することができる。例として、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤が1つの組成物として提供され得、ボルテゾミブが第二の組成物として提供され得る。
【0050】
一部の実施形態において、HuMax−Cd38(Genmab)のような抗CS1抗体と同じ作用機序を有する薬剤が、本明細書中に記載される医薬組成物中に提供され得る。
【0051】
一部の実施形態において、上記医薬組成物は、抗CS1抗体とは異なる作用機序を有する治療剤を含む。例えば、脈管形成を阻害する標的化薬剤(ベバシズマブ、スチニブ、ソラフェニブ、2−メトキシエストラジオール(2ME2)、フィナスネート、PTK787、バンデタノブ、アフリベルセプト、ボロシキシマブ、エタラシズマブ(MEDI−522)、シレンギチドが挙げられるが、これらに限定されない)が、本明細書中に記載の医薬組成物において使用され得る。他の実施形態において、成長因子シグナル伝達を阻害する薬剤(エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ゲフィニチブ、トラスツズマブ、TKI258、CP−751、871、アタシセプトが挙げられるが、これらに限定されない)が、本明細書中に記載の医薬組成物において使用され得る。他の実施形態において、免疫調整剤(リツキシマブ、アレムツズマブ、アルデスロイキン、アトリズマブ、トシリズマブ、テムシロリムス、エベロリムス、NPI−1387、MLNM3897、HCD122、SGN−40、HLL1、huN901−DM1、アチプリモド、ナタリズマブが挙げられるが、これらに限定されない)が、本明細書中に記載の医薬組成物において使用され得る。他の実施形態において、タンパク質合成、フォールディングまたは分解を阻害する薬剤(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、NPI−0052、タネスピマイシン、サキナビル、メシレート、リトナビル、ネルフィナビルメシレート、インジナビルサルフェートが挙げられるが、これらに限定されない)が、本明細書中に記載の医薬組成物において使用され得る。他の実施形態において、遺伝子発現を阻害する薬剤(ベルノスタット、LBH589が挙げられるが、これらに限定されない)が、本明細書中に記載の医薬組成物において使用され得る。他の実施形態において、プロアポトーシス剤(マパツムマブ、レキサツムマブ、AMG951、ABT−737、オブリメルセン、プリチデプシンが挙げられるが、これらに限定されない)が、本明細書中に記載の医薬組成物において使用され得る。他の実施形態において、シグナル変換を阻害する薬剤(SCIO−469、P276−00、エンザスタウリン、チピファルニブ、ペリフォシン、イマチニブが挙げられるが、これらに限定されない)が、本明細書中に記載される医薬組成物において使用され得る。他の実施形態において、他の作用機序を有する薬剤(ダサチニブ、レナリドミド、サリドマイド、シンバスタチンおよびセレコキシブが挙げられるが、これらに限定されない)が、本明細書中に記載の医薬組成物において使用され得る。
【0052】
これらの医薬組成物は固形、半固形又は液(例えば、懸濁液もしくはエアロゾル)状の剤型として存在させることができる。通常、この組成物は正確な投与量の単回投与に適した単位投与形態で投与する。例えば、抗CS1抗体は約1〜1,000mgの範囲の投与量で包装することができる。一部の実施態様では、抗CS1抗体は、少なくとも約1mg、少なくとも約10mg、少なくとも約20mg、少なくとも約50mg、少なくとも約100mg、少なくとも約200mg、少なくとも約300mg、少なくとも約400mg、少なくとも約500mg、少なくとも約750mg、少なくとも約1,000mgの投与量で包装される。
【0053】
また、上記組成物には、動物又はヒトへの投与用医薬組成物を製剤化するのに一般に用いられる賦形剤と定義される医薬用として許容可能な、毒性のないキャリア又は希釈剤を、目的とする製剤に応じて含有させることもできる。この希釈剤は、上記組合せの生物活性に影響を与えないように選択され。このような希釈剤の例は蒸留水、生理食塩液、リンゲル液、デキストロース溶液及びハンクス液である。
【0054】
さらに、上記医薬組成物又は製剤には、他のキャリア、佐剤又は毒性がなく非治療用で非免疫原性の安定剤などを含有させることもできる。このような希釈剤又はキャリアの効果的な量は、成分の溶解性又は生物活性の面で医薬用として許容可能な製剤を得るのに効果的である量である。
【0055】
5.3. 多発性硬化症を処置するための医薬組成物の使用
本明細書に記載の医薬組成物はMMの処置において有用である。通常、この組成物は、新たに診断されたものから末期再発/難治性のものまでの範囲の意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)、くすぶり型骨髄腫、無症候性MM及び症候性MMを処置するために用いることができる。
【0056】
上記組成物は、他の処置ストラテジー、即ち、自家幹細胞移植および同種異系エフェクター細胞移植と組み合わせることによって、処置される骨髄腫の病期に基づいた効果的な処置ストラテジーを開発することができる(例えば、多発性骨髄腫研究財団(Multiple Myeloma Research Foundation)、Multiple Myeloma:Stem Cell Transplantation、p.1−30(2004年));米国特許第6,143,292号;同第5,928,639号;Igarashi, et al.、Blood、2004年、104(1):p.170−177;Maloney, et al.、2003年、Blood 102(9):p.3447−3454;Badros, et al.、2002年、J Clin Oncol.20:1295−1303;Tricot, et al.、1996年、Blood 87(3):p.1196−1198参照;これらの文献の内容は引用により本明細書に組み込まれている)。
【0057】
1975年以来最も広く用いられてきた病期分類システムはデューリー・サーモン(Durie−Salmon)システムであり、このシステムでは疾患の臨床病期(病期I、II又はIII)は4種の測定値に基づいている(例えば、DurieおよびSalmon、1975年、Cancer36:p.842−854参照)。これら4種の測定値とは、(1)血清及び/又は尿中の単一クローン性(M)蛋白質(パラプロテインとも呼ばれる)のレベル、(2)溶解性骨病変の数、(3)ヘモグロビン値並びに(4)血清カルシウムレベルである。これらの3病期は、さらに腎機能によって類別されることができ、A(比較的正常な腎機能、血清クレアチニン値<2.0mg/dL)とB(異常な腎機能、クレアチニン値≧2.0mg/dL)とに分類される。新しい、より簡単な別のシステムは、国際病期分類システム(ISS:International Staging System)である(例えば、Greipp et al.、2003年、”Development of an international prognostic index (IPI) for myeloma: report of the international myeloma working group”,The Hematology参照)。上記ISSは2種の血液検査結果ベータ−ミクログロブリン(β−M)及びアルブミンの評価に基づいたものであり、この評価により患者は療法の種類とは無関係に3つの予後群に分類される。
【0058】
上記医薬組成物を選択された投与量範囲及び経路で投与すると、通常、欧州血液骨髄移植グループ(EBMT)によって定義されているような有益な寛解が誘導される。表2にEBMTの治療効果判定基準を列挙する。
【0059】
【表2】

【0060】
処置の結果を評価するのに用いることができる追加的な判定基準としては、「ほぼ完全寛解(near complete response)」及び「非常に良い部分寛解(very good partial response)」が挙げられる。「ほぼ完全寛解」は、免疫固定テストが陽性である以外は「完全寛解(CR)」の判定基準と同じと定義される。「非常に良い部分寛解」は、M蛋白質の90%超の低下と定義される(例えば、多発性骨髄腫研究財団(Multiple Myeloma Research Foundation)、Multiple Myeloma: Treatment Overview 9(2005年)参照)。
【0061】
MMに関連する少なくとも1種の症状を臨床的に発呈している個体において組成物の投与が寛解を誘発する程度は、疾患の重症度(例えば、病期I、II又はIII)にある程度依存しており、そしてその患者が新規に診断された者か末期難治性MMを有する者かどうかにある程度依存している。従って、一部の実施態様では、上記医薬組成物の投与によって完全寛解が誘発される。
【0062】
他の実施態様では、上記医薬組成物の投与によって非常に良い部分寛解又は部分寛解が誘発される。
【0063】
他の実施態様では、上記医薬組成物の投与によって最小寛解が誘発される。
【0064】
他の実施態様では、上記医薬組成物の投与によって疾患の進行が阻止され、EBMTによって「無変化」又は「プラトー」と分類される効果が得られる。
【0065】
MMと診断された個体を治療するための抗CS1抗体(例えば、HuLuc63)及び1種以上の治療剤を含む組成物の投与経路及び投与量範囲については、MTDを見出すための標準的な用量漸増試験などの当該分野で標準的な技術を用いて決定することができる(例えば、Richardson, et al. 2002年、Blood、100(9):p.3063−3067参照。この内容は引用により本明細書に組み込まれている)。
【0066】
通常、抗CS1抗体は静脈内投与される。本明細書に記載の他の治療剤の投与は当該分野で公知の任意の手段によって行われ得る。このような手段としては、経口、直腸、経鼻、局所(口腔内及び舌下を含む)又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内)の投与が挙げられ、こうした手段は、利用できる剤形によってある程度依存する。例えば、丸剤又はカプセル剤形式で利用できる治療剤は通常、経口投与される。しかしながら、経口投与では、一般に静脈内投与の場合よりも高用量を投与することが必要となる。具体的症例で最良である実際の投与経路の決定は当業者の能力の範囲内に十分あり、ある程度、1ヶ月当たりの必要投与回数と必要用量との関係に依存する。
【0067】
本明細書に記載の組成物及び方法に用いる抗CS1抗体及び治療剤の投与量の選択に影響する因子としては、薬剤の種類、レシピエント患者の年齢、体重及び臨床症状並びに治療を施す臨床医又は実施者の経験及び判断が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に、選択される投与量は無変化をもたらすのに十分であるべきであるが、少なくとも最小変化をもたらすことが好ましい。医薬品の有効量とは、臨床医又は有資格の観察者により確認され、EBMTによって定義されている、客観的に確認可能な寛解(例えば、プラトー、変化なし最小寛解、部分寛解又は完全寛解)を与える量である。
【0068】
一般的には、抗CS1抗体は、治療剤を含む組成物とは別の組成物として投与される。上述のように、治療剤同士はそれぞれ別の組成物として投与するか、カクテルに混合して単一の混合組成物として投与することができる。一部の実施態様では、抗CS1抗体及び1種以上の治療剤をそれぞれ含む組成物を同時に投与する。他の実施態様では、治療剤を含む組成物の投与の前に抗CS1抗体を投与することができる。さらに他の実施態様では、治療剤を含む組成物の投与の後に抗CS1抗体を投与する。
【0069】
抗CS1抗体を治療剤の投与前又は後に投与する実施態様では、抗CS1抗体の投与と治療剤の投与との間の持続期間についての決定は当業者の能力の範囲内に十分あり、ある程度、1ヶ月当たりの必要投与回数と必要用量との関係に依存する。
【0070】
本明細書に記載の方法に用いる抗CS1抗体の用量は、通常0.5mg/kg〜20mg/kgの範囲である。上記治療剤の至適用量は、Physician Desk Reference、第56版(2002年)(メディカルエコノミックス出版社(Publisher Medical Economics)、ニュージャージー州)に記載されているもののような一般に認められている有効用量である。Physician Desk Referenceに記載されていない薬剤の至適用量についてはMTDを見出すための標準的な用量漸増試験を利用して決定することができる(例えば、Richardson et al.、2002年、Blood、100(9):p.3063−3067参照。これらの内容は引用により本明細書に組み込まれている)。
【0071】
一部の実施態様では、医薬組成物中に抗CS1抗体を、少なくとも約0.5mg/kg、少なくとも約0.75mg/kg、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約2mg/kg、少なくとも約2.5mg/kg、少なくとも約3mg/kg、少なくとも約4mg/kg、少なくとも約5mg/kg、少なくとも約6mg/kg、少なくとも約7mg/kg、少なくとも約8mg/kg、少なくとも約9mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約11mg/kg、少なくとも約12mg/kg、少なくとも約13mg/kg、少なくとも約14mg/kg、少なくとも約15mg/kg、少なくとも約16mg/kg、少なくとも約17mg/kg、少なくとも約18mg/kg、少なくとも約19mg/kg及び少なくとも約20mg/kgの投与量割合で静脈内投与するのに適した濃度又は重量/容量百分率又は重量で存在させる。
【実施例】
【0072】
6.実施例
実施例1:デキサメタゾンと組合せたHuLuc63
デキサメタゾン(Dex)は、治療の複数のラインにおいてMMの処置のために広範に使用されているコルチコステロイドである。Dexは、単一治療として、または種々の薬剤(レナリドマイド、サリドマイド、ベルカデ(velcade)が挙げられる)と組み合わせて、またはVAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン)レジメンの一部として、またはDVdリポソームドキソルビシン、ビンクリスチン、短期スケジュールデキサメタゾンレジメンとして使用されている。Dexの作用機序は、カスパーゼの活性化による骨髄腫細胞のアポトーシスの直接的な誘導に関する(Chauhan et al., 1997, Oncogene 15:837−843; Chauhan et al., 1997, J. Biol. Chem. 272, 29995−29997; Chauhan et al., 2001, J. Biol. Chem., 276: 24453−24456)。
【0073】
MM細胞株及びマウス異種移植腫瘍においてCS1の発現に対するHuLuc63及びDex処置の効果を、それぞれフローサイトメトリー及び免疫組織化学によって検討した。
【0074】
インビボ異種移植マウスモデル:方法及び結果
タコニックファームズ社(Taconic Farms)(ジャーマンタウン、ニューヨーク州)から入手した6〜8週齢の雌性IcrTac:ICR−Prkdcscidマウスの左下側腹部に1×10個のOPM2またはL363(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures, Braunschweig, Germany)細胞を接種した。キャリパーでの測定を週に2回行って式:L×W×H/2(式中、L(長さ)はマウスの背中の平面における腫瘍の最長辺であり、W(幅)は上記長さに対して直角をなす同じ面の最長測定値であり、H(高さ)はマウスの背面に垂直な最高点で測定される)を用いて腫瘍容積を算出した。腫瘍が平均約100mmの大きさに達した時、動物を無作為に1群8〜10匹のマウスの3群に分け、1mg/kgまたは10mg/kgのHuLuc63またはアイソタイプ対照抗体の週2回の最大6用量の腹腔内投与により処置した。
【0075】
Dexを、週2回10mg/kgの用量を最大6用量腹腔内投与した。
【0076】
腫瘍増殖を1〜2ヶ月の期間にわたってモニタリングした。動物実験をPDLバイオファーマ社(PDL BioPharma)のIACUCにより承認されたプロトコルを用いてNIHの指針(「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」)のもとで行った。
【0077】
CS1タンパク質発現を、OPM2多発性硬化症細胞株について試験した。HuLuc63、Dexまたは両薬剤での処置の前または後には、CS1発現における顕著な変化は観察されなかった。DexとのHuLuc63の組み合わせを、インビボで抗骨髄腫活性について試験した。OPM2腫瘍を有するマウスを、最適以下の用量のHuLuc63(1mg/kg)又はアイソタイプ対照抗体で週2回3週間にわたって処置した。Dexを、アイソタイプ対照抗体又はHuLuc63のいずれかを投与したマウスに対して10mg/kgを週2回投与した。これらの結果から、HuLuc63単独及びそのDexと組合せたHuLuc63の抗腫瘍効果は顕著であることが示された(例えば、図1を参照のこと)。組合せ処置群のマウスは、HuLuc63単独療法群よりも、そしてDex群よりも顕著に小さい腫瘍を示した。
【0078】
実施例2:サリドマイドとの組み合わせにおけるHuLuc63
サリドマイド(Thal)は、Dexとの併用でMMの処置のために現在認可されている免疫調整剤である。Thalの作用機序は完全には理解されていないが、脈管形成の阻害、骨髄における間質細胞および腫瘍細胞の増殖および生存の阻害、ならびに骨髄腫細胞の生存に影響する因子(例えば、IL−6、IL−10、IL−4、IL−5、IL−12、IL−8、TNF−α)の産生を変化させることに関与する。
【0079】
MM細胞株およびマウス異種移植腫瘍におけるHuLuc63およびThal処置の効果を、上述のように、フローサイトメトリーおよび免疫組織化学によって、それぞれ試験した。
【0080】
CS1タンパク質発現を、L363多発性硬化症細胞株において試験した。HuLuc63、Thalまたは両薬剤での処置の前または後に、CS1発現における顕著な変化は観察されなかった。HuLuc63とThalとの組み合わせを、インビボでの抗骨髄腫活性について試験した。L363腫瘍保持マウスを、HuLuc63またはアイソタイプ対照抗体で、10mg/kgで週2回、3週間処置した。Thalは、アイソタイプ対照抗体またはHuLuc63抗体のいずれかを与えているマウスに、週5日、50mg/kgで最大15用量与えた。HuLuc63単独、Thal単独、およびThalと組み合わせたHuLuc63において、顕著な抗腫瘍活性が観察された(例えば、図2を参照のこと)。併用処置群のマウスは、HuLuc63単独療法群およびThal単独療法群と比較して、より小さな腫瘍を示した(例えば、図2を参照のこと)。
【0081】
実施例3:サリドマイド/デキサメタゾンと組み早稲多HuLuc63
Thal/Dex併用療法は、MM患者に対するフロントライン処置のために現在認可されている。Thal/DexとHuLuc63との組み合わせを、上述のように、抗骨髄腫活性について試験した。MM細胞株およびマウス異種移植腫瘍におけるCS1の発現に対するThal/Dex処置の効果を、上述のように免疫組織化学によって試験した。
【0082】
L363腫瘍保持マウスを、HuLuc63で、またはアイソタイプ対照抗体で、週2回10mg/kgで3週間処置した。Thalは、週5回50mg/kgで最大15用量、Dexは週2回10mg/kgで最大6用量、アイソタイプ対照抗体またはHuLuc63のいずれかを与えているマウスに与えた。結果は、HuLuc63単独、Thal/Dex単独、およびThal/Dexと組み合わせたHuLuc63の顕著な抗腫瘍活性を示した(例えば、図3を参照のこと)。HuLuc63/Thal/Dex併用処置におけるマウスは、最小の腫瘍を示し、HuLuc63単独療法またはThal/Dex治療と比較して、平均50%〜70%の減少を示した(例えば、図3を参照のこと)。
【0083】
実施例4:ベバシズマブと組み合わせたHuLuc63
ベバシズマブは、内皮増殖因子VEGFを標的とするモノクローナル抗体である。ベバシズマブは、VEGFを阻害することによって、腫瘍における新規血管形成を阻害する。ベバシズマブは、固形腫瘍(転移性結腸直腸癌を含む)の処置のために現在認可されている。ベバシズマブは、MMの処置における使用のためには認可されていない。
【0084】
抗脈管形成剤がHuLuc63の抗腫瘍効果を増強し得るかどうかを決定するために、HuLuc63とベバシズマブとの組み合わせを、上述のように、インビボでの抗骨髄腫活性について試験した。L363腫瘍保持マウスを、HuLuc63またはアイソタイプ対照抗体で、週2回10mg/kgで3週間処置した。ベバシズマブは、週2回0.5mg/kgで、最大6用量、アイソタイプ対照抗体またはHuLuc63のいずれかを与えているマウスに与えた。HuLuc63単独およびベバシズマブとの組み合わせにおいて、顕著な抗腫瘍活性が観察された(例えば、図4を参照のこと)。ベバシズマブ単独は、顕著な抗腫瘍活性を示さなかった。しかしながら、HuLuc63とベバシズマブとの組み合わせは、HuLuc63単独療法群と比較して顕著に小さい腫瘍を示した。このことは、HuLuc63およびベバシズマブが相乗的に作用して抗骨髄腫効果を引き起こし得ることを示している。
【0085】
実施例5:多発性硬化症と診断された患者の処置
この提唱される多施設非盲検複数回投与用量漸増試験は、初回、2回目および3回目再発後の多発性骨髄腫患者におけるHuLuc63及び1以上の他の治療剤の組合せを評価する。HuLuc63を、1以上の他の治療剤との組合せで2.5mg/kg〜20mg/kgの範囲の最大5用量レベルでIV投与する。患者は、週1回(各用量は1時間にわたって注入される)、10日毎に、または2週間に1回、最低4用量、最大で52用量投与される。
【0086】
HuLuc63との投与に適した薬剤の組み合わせとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
1)メルファラン+プレドニゾン。メルファランは28日間サイクルで、1日目〜4日目に8mg/m/d、最大11サイクル与えられる。プレドニゾンは、28日サイクルで、1〜4日目に60mg/m/d、最大11サイクル与えられる。
【0087】
2)メルファラン+プレドニゾン+サリドマイド。メルファランは、28日間サイクルで、1日〜4日目に8mg/m/d、最大11サイクル与えられる。プレドニゾンは、28日サイクルで、1〜4日目に60mg/m/d、最大11サイクル与えられる。サリドマイドは、28日サイクルで、200mg/d、最大11サイクル与えられる。
【0088】
3)メルファラン+プレドニゾン+レナリドマイド。メルファランは、28日〜42日のサイクルで、4〜6週ごとに4日間0.18〜0.25mg/kg、最大9サイクル与えられる。プレドニゾンは、28〜42日のサイクルで、4〜6週ごとに4日間2mg/kg、最大9サイクル与えられる。レナリドマイドは、28日〜42日のサイクルで、4〜6週ごとに1〜21日目に5〜10mg/日、最大9サイクル投与される。
【0089】
4)メルファラン+プレドニゾン+ボルテゾミブ。メルファランは、42日のサイクルで、1日〜4日目に9mg/m/日、最大4サイクル与えられる。プレドニゾンは、42日のサイクルで、1日〜4日目に60mg/m/d、最大4サイクル与えられる。ボルテゾミブは、42日のサイクルで、1日、4日、8日、11日、22日、25日、29日および32日目に1.3mg/m/日、最大4サイクル与えられる。
【0090】
5)サリドマイド+デキサメタゾン。サリドマイドは、28日サイクルで、200mg/d、最大4〜12サイクル与えられる。デキサメタゾンは、1日目〜4日目、9日目〜12日目、および17日目〜20日目に40mg/日、最大4〜12サイクル与えられる。
【0091】
6)サイトキサン+プレドニゾン。サイトキサンは、28日サイクルで、週1回500mg、最大6サイクル与えられる。プレドニゾンは、28日サイクルで、2日に1回100mg/日、最大6サイクル与えられる。
【0092】
サイトキサン+プレドニゾン+サリドマイド。サイトキサンは、28日サイクルで、1日2回21日間50mg、最大7サイクル与えられる。プレドニゾンは、28日サイクルで、2日に1回100mg/日、最大7サイクル与えられる。サリドマイドは、28日サイクルで、200mg/d、最大7サイクル与えられる。
【0093】
8)サイトキサン+プレドニゾン+レナリドマイド。サイトキサンは、28日のサイクルで、1日目および8日目に300〜700mg、最大4〜7サイクル与えられる。プレドニゾンは、28日のサイクルで、2日に1回50mg/日、最大4〜7サイクル与えられる。レナリドマイドは、28日のサイクルで、1日目〜21日目に25mg/日、最大4〜7サイクル与えられる。
【0094】
9)サイトキサン+デキサメタゾン+レナリドマイド。サイトキサンは、28日のサイクルで、1日目および8日目に300〜700mg、最大4〜7サイクル与えられる。デキサメタゾンは、28日サイクルで、1〜4日目、9〜12日目、および17〜20日目に40mg、最大4〜7サイクルで与えられる。レナリドマイドは、28日サイクルで、1〜21日目に25mg/日、最大4〜7サイクル与えられる。
【0095】
10)サイトキサン+プレドニゾン+ボルテゾミブ。サイトキサンは、28日のサイクルで、1日目、8日目、15日目および22日目に300mg、最大4〜7サイクル与えられる。プレドニゾンは、28日サイクルで、2日に1回100mg、最大4〜7サイクル与えられる。ボルテゾミブは、28日のサイクルで、1日目、8日目、および15日目に1.5mg/m/日、最大4〜7サイクル与えられる。
【0096】
11)ベバシズマブ。ベバシズマブは、14日のサイクルで、2週間ごとに5mg/kg、最大6〜26サイクル与えられる。
【0097】
12)タネスピマイシン+ボルテゾミブ。タネスピマイシンは、21日のサイクルで、週2回2週間100〜340mg/m、最大4〜8サイクル与えられる。ボルテゾミブは、21日のサイクルで、週2回2週間0.7から1.3mg/m、最大4〜8サイクル与えられる。
【0098】
13)ドキシル+ボルテゾミブ。ドキシルは、21日のサイクルで、4日目に30mg/m/日、最大4〜8サイクル与えられる。ボルテゾミブは、21日のサイクルで、1日目、4日目、8日目および11日目に1.3mg/m、最大4〜8サイクル与えられる。
【0099】
14)デキサメタゾン。デキサメタゾンは、28日のサイクルで、1〜4日目、9〜12日目、および17〜20日目に40mg/日、最大4から12サイクル与えることができる。または、28日サイクルで4日間40mg/日与えることもできる。
【0100】
上記の薬物の組み合わせは、経口投与することもできるし、IVによって与えることもできる。
【0101】
8〜12週間の治療後、EBMT判定基準を評価する。患者が進行性の疾患を有している場合には、HuLuc63を中止するとともに、他の薬物の組み合わせは中止するか、現場の治験責任医師の裁量で継続することができる。患者が8〜12週目で寛解を示すかまたは安定な疾患を示す場合には、最大52週間の処置が完了するかまたは疾患の進行が生じるようにHuLuc63及び他の薬物の組み合わせの投与を継続する。
【0102】
各薬物の組み合わせについて、5コホートで約15〜30名の患者を登録する。各コホートは3名の患者で開始する。処置の最初の4週間以内にどの患者にも用量制限毒性(DLT:dose−limiting toxicity)が認められない場合、次のより高用量のコホートへの登録を開始する。1名の患者がDLTを有した場合、さらに3名の患者をこのコホートに登録する。このコホートで他にDLTを有する患者がいない場合、次のコホートへの用量漸増を進め得る。コホートの二人目の患者がDLTを示した場合に、最大許容投与量(MTD)に到達する。
【0103】
用量制限毒性(DLT)は、国立癌センター研究所共通毒性基準第3.0版(NCI CTCAE v3.0:National Cancer Center Institute Common Toxicity Criteria Version 3.0)を用い、グレード4血液毒性もしくは高ビリルビン血症、又はHuLuc63もしくはHuLuc63と表1に列挙される任意の薬物との組合せに関連づけられると考えられる任意の他の器官系におけるグレード3毒性と定義される。次のコホートへの用量漸増では、3名の評価可能な患者が最初の4週間の投薬を完了しなければならない。DLTが生じた場合には、さらに3名の評価可能な患者を獲得する。NCI CTCAE v3.0により分類されている有害事象を評価することにより安全性について患者をモニタリングし、EBMTを用いて臨床活性について患者をモニタリングする。最大許容投与量(MTD)は、DLTの発生率が33%未満である試験最高用量と定義される。用量制限毒性が認められない場合は、最高許容投与量は、上で列挙された用量の薬物と組み合わされたHuLuc63 20mg/kgである。
【0104】
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許、特許出願及びその他の文献は、個々の刊行物、特許、特許出願もしくはその他の文献がそれぞれ、あらゆる目的で引用により本明細書に組み込まれていることが個別に示されている場合と同程度に、あらゆる目的で全文引用により本明細書に組み込まれている。
【0105】
種々の特定の実施態様について例示し説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更を加えることができることは明瞭に理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において多発性骨髄腫を処置するのに適した医薬組成物であって、治療有効量のHuLuc63を1以上の治療剤と組み合わせて含み、該組成物は単回又は複数回の投与レジメンで投与され得る、医薬組成物。
【請求項2】
被験体において多発性骨髄腫を処置するのに適した医薬組成物であって、治療有効量のHuLuc63を1以上の標的化薬剤、慣習的な化学療法剤、ホルモン治療剤、または補助ケア物質、および/またはそれらの組み合わせと組み合わせて含み、該組成物は単回又は複数回の投与レジメンで投与され得る、医薬組成物。
【請求項3】
1以上の慣習的な化学療法剤が、サリドマイド、ビンクリスチン、カルムスチン、メルファラン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤、シスプラチン、エトポシド、ara−Cからなる群より選択され、1以上のホルモン治療剤は、デキサメタゾンおよびプレドニゾンからなる群より選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1以上の標的化薬剤は、抗脈管形成剤、成長因子シグナル伝達の阻害剤、免疫調整剤、タンパク質合成、フォールディング、および/または分解の阻害剤、遺伝子発現の阻害剤、プロアポトーシス剤、シグナル変換を阻害する薬剤、他の薬剤、およびそれらの組み合わせである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
デキサメタゾンを含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
デキサメタゾンおよびサリドマイドを含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびデキサメタゾンを含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ドキソルビシンHClリポソーム注射剤、ビンクリスチン、およびデキサメタゾンを含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項9】
シクロホスファミドを含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項10】
デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミドおよびエトポシドを含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、およびシクロホスファミドを含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ドキソルビシンHClリポソーム注射剤、ビンクリスチン、デキサメタゾン、およびサリドマイドを含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項13】
HuLuc63が注射形態である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項14】
約0.5mg/m〜約20mg/mのHuLuc63を含有する、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
該医薬組成物の投与が完全寛解を誘発する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項16】
該医薬組成物の投与が非常に良い部分寛解を誘発する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項17】
該医薬組成物の投与が部分寛解を誘発する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項18】
該医薬組成物の投与が最小寛解を誘発する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項19】
治療剤に対する多発性骨髄腫細胞の感受性を増大させるための方法であって、該細胞を治療上有効な量のHuLuc63と接触させることを含む、方法。
【請求項20】
前記細胞を、治療有効量のサリドマイド、ビンクリスチン、カルムスチン、メルファラン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ドキソルビシンHCl注射剤、シスプラチン、エトポシド、ara−Cからなる群より選択される1以上の慣習的な治療剤、ならびにデキサメタゾンおよびプレドニゾンからなる群より選択される1以上のホルモン治療剤と接触させることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記多発性骨髄腫細胞が前記治療剤に抵抗性である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記抵抗性細胞を該細胞が感受性である治療剤と接触させることをさらに含み、該治療剤が、サリドマイド、ビンクリスチン、カルムスチン、メルファラン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤、シスプラチン、エトポシド、ara−Cからなる群より選択される1以上の慣習的な治療剤ならびにデキサメタゾンおよびプレドニゾンから選択されるホルモン治療剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
被験体における多発性硬化症を処置する方法であって、該方法は、HuLuc63を含む第一の医薬組成物と、1以上の標的化薬剤、慣習的な化学療法剤、ホルモン治療剤、または補助ケア物質、またはそれらの組み合わせを含む第二の医薬組成物を投与する工程を包含し、該組成物は、単回又は複数回の投与レジメンで投与され得る、方法。
【請求項24】
被験体における多発性硬化症を処置する方法であって、該方法は、治療有効量のHuLuc63を、抗脈管形成剤、成長因子シグナル伝達の阻害剤、免疫調整剤、タンパク質合成、フォールディングおよび/または分解の阻害剤、遺伝子発現の阻害剤、プロアポトーシス剤、シグナル変換を阻害する物質、他の薬剤、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される1以上の標的化薬剤と組み合わせて投与する工程を包含し、該組成物は、単回又は複数回の投与レジメンで投与され得る、方法。
【請求項25】
1以上の慣習的な化学療法剤および1以上のホルモン剤をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
1以上の慣習的な薬剤が、サリドマイド、ビンクリスチン、カルムスチン、メルファラン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤、シスプラチン、エトポシド、ara−Cからなる群より選択され、1以上のホルモン治療剤が、デキサメタゾンおよびプレドニゾンからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
HuLuc63が、約0.5mg/kg〜約20mg/kgの用量で静脈内投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項28】
HuLuc63が、1以上の前記標的化薬剤、慣習的な化学療法剤、ホルモン治療剤、補助ケア物質、またはそれらの組み合わせと同時に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記投与が完全寛解を誘発する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記投与が非常に良い部分寛解を誘発する、請求項28に記載の方法
【請求項31】
前記投与が部分寛解を誘発する、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記投与が最小寛解を誘発する、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
被験体における多発性硬化症を処置する方法であって、治療有効量のHuLuc63、治療有効量の標的化薬剤、慣習的な化学療法剤、ホルモン治療剤、補助ケア物質、またはそれらの組み合わせ、および薬学的に受容可能なキャリアを投与する工程を包含し、この組成物は、単回又は複数回の投与レジメンで投与され得る、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−500370(P2010−500370A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523966(P2009−523966)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/075401
【国際公開番号】WO2008/019376
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(500533422)ピーディーエル バイオファーマ,インコーポレイティド (18)
【Fターム(参考)】