説明

多結晶シリコン及びその製造法

本発明は、多結晶シリコンロッドにおいて、該ロッドが、シリコンの50〜99%の電気伝導に利用される面積分を有するロッド横断面を有し、かつ、該ロッドが0.1〜80N/mm2の曲げ強さを有することを特徴とするシリコンロッドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体及び光電装置に適用するための多結晶シリコン及びその製造法に関する。
【0002】
多結晶シリコン(ポリシリコン)は、チョクラルスキー(CZ)法又は浮遊帯域(FZ)法による半導体用の単結晶シリコンの製造のための、並びに、光電装置用の太陽電池の製造のための種々の引き上げ法及びキャスティング法による単結晶又は多結晶シリコンの製造のための出発物質として利用される。多結晶シリコンは、通常シーメンス法により製造される。前記方法の場合、釣鐘状反応器("シーメンス反応器")中で、ケイ素からなる細いフィラメントロッドが直流電流により加熱され、かつ、ケイ素含有成分と水素とを含有する反応ガスが導入される。反応ガスのケイ素含有成分は、一般的に、モノシラン又は一般組成SiHn4-n(n=0、1、2、3;X=Cl、Br、I)のハロゲンシランである。好ましくは、該ハロゲンシランはクロロシラン(X=Cl)、特に好ましくはトリクロロシラン(n=1)である。主に、SiH4又はSiHCl3が水素との混合物で使用される。フィラメントロッドは反応器底部に存在する電極に垂直にはめ込まれており、これを介して電流供給装置への接続が行われる。加熱されたフィラメントロッド及び水平なブリッジ上に高純度ポリシリコンが析出し、それによりロッド直径が時間と共に増大する。
【0003】
前記方法は、ロッド温度及び反応ガス流ないし反応ガス組成の設定により制御される。ロッド温度の測定は、垂直なロッドの表面上で放射高温計を用いて行われる。ロッド温度は、電力の制御又は調節により、一定にか又はロッド直径に応じて設定される。反応ガス量はロッド直径に応じて設定される。この場合、析出条件は、ロッド直径の増大が均一でかつ細孔不含の層の形で行われるように、即ち、そのように製造されたシリコンロッドが亀裂、細孔、継ぎ目、裂け目等を十分に不含であり、ひいては均質で、密でかつ堅固となるように選択される。このような材料及びその加工は、例えばUS6350313B2に記載されている。このような緻密なポリシリコンの見かけ密度はポリシリコンの真密度に相応し、かつ2.329g/cm3である。
【0004】
そのようにして得られたポリシリコンロッドがFZ法による単結晶の製造に使用されない場合には、該ポリシリコンロッドをブロック及びチップへと加工しなければならない。そのために、ロッドは、ハンマー、粉砕機又はミルのような工具で粉砕され、引き続きサイズに応じて分級される。この場合、破砕物サイズが小さいほど、またポリシリコンロッドの強度が高いほど、ポリシリコンは工具により強度に汚染される。
【0005】
単結晶及び多結晶シリコンの製造のために、坩堝に種々のサイズの破砕物が充填される。初期充填のためには、坩堝の出来る限り高い充填度の達成に努められる。このために、極めて種々のサイズ及び質量のシリコン破片、即ち、のこ引きされたロッド破片、粗いブロック、小さなチップ及び微細な材料を混合しなければならない。この場合、シリコン破片のサイズは1mm未満から150mm以上の破片に達し、破片の形状は球形から大きくずれてはならない。坩堝に何度も繰り返し充填するためには、微細粒で流動性の、即ち出来る限り球状の破砕物が好適であり、それというのも、材料は管及びアーマチャーを経て坩堝へと搬送されねばならず、かつ、坩堝を損傷することも、シリコン溶融物を過度に妨害することもあってはならないためである。坩堝引き上げ法の収量は、またもや、Si溶融物中に蓄積した、主に微細粒のシリコン破砕物によりもたらされる不純物の量によって制限される。
【0006】
結晶引き上げ法は、使用されるポリシリコンのサイズ分布及び形状に敏感に影響を受けるため、0.7〜1.0のシリコン破砕物の長さに対する幅の比(B/L)、並びに、0.7〜1.0のシリコン破砕物の球形度が、結晶引き上げ法における使用のための業界標準として確立されている。出来る限り高い坩堝充填度を伴う狙い通りの坩堝設備のための、世界市場で慣用の種々の破砕物サイズ範囲の一例について、例えばWacker Chemie AG社の以下のインターネットサイトには、5〜45mm、20〜65mm、20〜150mmのシリコン破砕物の最大長を有する破砕物サイズフラクションが供覧されている。(http://www.wacker.com/internet/webcache/en_US/PTM/Polysilicon/PolyChunks/Polysilicon_chunks_etched.pdf)
【0007】
長さLは粒子の最大の広がりを表し、幅Bは最大の広がりに対して垂直な寸法である。球形度は、粒子の投影面積に等しい円の直径を、粒子の投影像を包囲する円の直径で除したものとして定義される(二次元測定空間のためのWadellによる定義)。
【0008】
US2003/0150378A2から、いわゆる"ティアドロップ−ポリ"及びその製造法は公知である。前記方法の場合、モノシランSiH4から、シーメンス法によりシリコンロッド直径が45mmとなるまで、850℃でかつ1.14モル%のシラン濃度で、緻密で細孔不含の高純度ポリシリコンロッド("ステム")が析出される。引き続き、ロッド表面温度が跳躍的に850℃から988℃へと高められ、かつシラン濃度が跳躍的に1.14モル%から0.15モル%へと低減される。前記パラメータの跳躍により、シリコンロッド上でのシリコン結晶の成長が急激に変化し、かつ針状物、いわゆるデンドライトがロッド表面から成長する。引き続き、析出の終了まで、針状物から大きな液滴状の"ティアドロップ"へとさらに成長が続くように、ロッド表面温度が連続的に低下される。"ティアドロップ"は液滴状の構造物であり、該構造物はその先端のみがステムと結合しており、合一していない。これにより、シリコン破砕物の製造の際に"ステム"からをティアドロップを容易に折り取ることが可能となる。前記のポリシリコン及びその製造法は一連の欠点を有する:該ポリシリコンロッドは極めて不均質である。該ポリシリコンロッドは、亀裂及び裂け目のない緻密な、従って堅固な"ステム"と、空洞により相互に離れており合一していない"ティアドロップ"とからなる。"ティアドロップ"を分離した後、ステムを別個にさらに加工しなければならない。これは、二段法の形で場合によりさらに材料の中間貯蔵を伴う、付加的な労力を意味する。ステム及びティアドロップの相対質量分は析出法により定められる。従って、均一な材料とは対照的に、粉砕された材料のサイズ分布はもはや自由に選択できない。ティアドロップ間の結合の不在に基づき、電流はステムにのみ流れる。従ってステムの直径を任意に小さく選択することはできず、なぜなら、さもなければステムが溶融してしまうためである。析出の際に必要な電流強度は直径の増加に伴って増大するため、このことは、ステムの直径もが増大しなければならないことを意味する。従って、ロッド直径の増加に伴って低減する析出されたシリコン分のみをティアドロップとして使用することができる。ティアドロップの形状は、緻密なシリコンロッドから得られた破砕物と、サイズ分布、球形度及びB/L比が大きく相違する。従って、前記材料は、シリコン引き上げ法を適合させなければ、単又は多結晶シリコンの製造には使用できない。
【0009】
本発明の課題は、半導体技術における、及び特に光電装置における使用に特に好適な多結晶シリコンロッドを提供することである。
【0010】
前記課題は、多結晶シリコンロッドにおいて、該ロッドが、シリコンの50〜99%の電気伝導に利用される面積分を有するロッド横断面を有し、かつ、該ロッドが0.1〜80N/mm2の曲げ強さを有することを特徴とするシリコンロッドにより解決される。
【0011】
有利には、ロッド横断面は、シリコンの80%〜99%の電気伝導に利用される面積分、極めて特に有利にはシリコンの90%〜99%の電気伝導に利用される面積分を有する。ロッド横断面の残りは、亀裂及び細孔により構成されている。シリコンロッドの電気伝導性は、微小亀裂及び細孔によって、従来の緻密なポリシリコンと比較してほとんど損なわれない。
【0012】
有利には、ロッド横断面はロッドの長手軸に対して垂直に決定される。シリコンの面積分、及び、亀裂、細孔及び継ぎ目の面積分は、市販の光学的画像分析装置を用いて測定できる。
【0013】
有利には、曲げ強さは0.1〜16N/mm2、特に有利には0.5〜2N/mm2、特に有利には0.5〜1.6N/mm2未満である。
【0014】
有利には、ロッドはさらに1〜100N/mm2、特に有利には20〜60N/mm2の圧縮強さを有し、特に有利には圧縮強さは58N/mm2である。
【0015】
有利には、ロッドはさらに2.0〜2.3g/cm3の見かけ密度を有する。2.25〜2.3g/cm3の見かけ密度が特に有利である。見かけ密度は、DIN−EN 1936により乾燥状態での孔隙を含めたポリシリコンの密度として定義されている(体積により定義された試験体の秤量、又は、比重天秤を用いた水銀中の飽和試料の浮力の測定)。
【0016】
有利には、析出されたポリシリコンは0.01〜0.2、極めて特に有利には0.023の全多孔度を有する。試料の全多孔度は、相互に結合している空洞、周囲と結合している空洞、及び相互に結合していない空洞の合計からなる。全多孔度、即ち、ポリシリコンの全体積中の全細孔体積(連続気泡及び独立気泡)の割合は、DIN−EN 1936により見かけ密度及び真密度からの算出から求められ、即ち、全多孔度=1−(見かけ密度/2.329[g/cm])である。
【0017】
曲げ強さはDIN 51902により測定される。圧縮強さはDIN 51910により測定される。それによると、本発明によるポリロッドの曲げ強さは、160N/mm2であると測定された緻密なポリシリコンの値を2〜3オーダー下回る。本発明によるポリロッドの圧縮強さは、約170N/mm2の圧縮強さを有する緻密なポリシリコンの圧縮強さよりも著しく低い。
【0018】
本発明によるポリシリコンロッドの場合、シーメンス法で成長したシリコン層はロッド半径にわたって均質な構造を有し、その際、前記構造は、細孔、継ぎ目、割れ目、亀裂及び裂け目を含み、かつ、ポリシリコン強度の低下が生じるが、しかしながら電流の流れはロッドに限定されない。
【0019】
本発明によるポリシリコンロッドの前記特性は、析出されたシリコン中の細孔、継ぎ目、割れ目、亀裂及び裂け目をもたらす析出法での方法実施により達成され、その際、前記細孔、継ぎ目、割れ目、亀裂及び裂け目は、これらが電流の流れを妨害しないように小さなサイズを有する。従って、本発明によるロッドにおいて、電流の流れは従来のポリシリコンロッドと同様に全ロッド横断面にわたって生じ、かつ、ティアドロップ−ポリに関して記載した欠点、特にロッドの直径の制限は生じない。
【0020】
本発明によるポリシリコンロッドは、公知の緻密なポリシリコンロッドと同様に粉砕することができる。本発明によるポリシリコンロッドにより、破砕物の、公知の緻密なポリシリコンロッドと同様の破砕物サイズ分布、同様の球形度及び同様の幅/長さの比がもたらされる。有利には、本発明によるポリシリコンロッドは、そのわずかな強度に基づき、勿論、従来のポリシリコンロッドよりもはるかによりわずかなエネルギー消費で破砕することができる。従って、得られたポリシリコン破砕物は、通常の清浄化されていないポリシリコン破砕物よりもわずかな表面汚染を有する。従って、引き続くポリシリコン破砕物の清浄化は多くの場合不要であり、多結晶シリコンからの破砕物の製造コストはそれによりさらに低下される。
【0021】
従って、本発明によるポリシリコンロッドにより、結晶引き上げの際に従来既に標準的に使用されている範囲内のサイズ、幅/長さの比及び球形度のポリ破砕物の、廉価でかつ汚染の少ない製造が可能となる。
【0022】
従って本発明はさらに、本発明によるポリシリコンロッドから後清浄化なしに製造することのできる、1〜150mmのサイズの多結晶シリコンからの高純度の破砕物に関する。前記破砕物は、1〜150mmの破砕物サイズ分布、0.7〜1の幅/長さの比、0.7〜1の範囲内の球形度を有しており、かつ、該破砕物が1〜12ppbwの金属不純物の総和を有する表面を有し、かつ、該表面が硝酸塩化合物62ppb未満及びフッ化物化合物1ppb未満を有することを特徴とする。
【0023】
表面上の金属不純物はASTM F 1724−96によりICPMSで測定される。フッ化物不純物及び硝酸塩不純物は、Semidraft Document 3083、Semiconductor Equipment and Materials international, 805 East Middlefield Road, Mountain View, CA 84043-4080、書類番号:3083、改訂N/A、1999年7月22日に記載されているように、キャピラリー電気泳動法を用いて測定される。
【0024】
本発明のもう1つの課題は、本発明による多結晶シリコンロッドの製造を可能にする方法を提供することである。
【0025】
前記方法は、クロロシラン混合物と水素とを含有するある流量の反応ガスを反応器に導入し、かつ高純度ポリシリコンを直流電流により加熱されたケイ素からなるフィラメントロッド上に析出させ、その際、該フィラメントロッドを2つの垂直なロッドと1つの水平なロッドとから形成し、かつその際、該水平なロッドが垂直なロッドの間で結合ブリッジを形成している方法であって、クロロシラン混合物としてジクロロシランとトリクロロシランとからの混合物を使用し、かつ、フィラメントロッドがブリッジの下側で1300〜1413℃の温度を有するようにフィラメントロッドによって電流が調節されており、かつ、反応器中の反応ガスの温度を測定して該温度がせいぜい650℃となるように調節し、かつ、クロロシラン混合物の流量を、クロロシラン混合物の供給開始から30時間未満、有利には5時間未満でその最大値となるように調節することを特徴とする。
【0026】
以下で、ブリッジの下側の温度をブリッジ温度と呼称し、かつ反応器中のガスの温度をガス温度と呼称する。
【0027】
クロロシラン混合物中のジクロロシラン含分は、1〜15質量%、有利には3〜10質量%の範囲内である。
【0028】
従来の方法とは異なり、クロロシラン混合物の流量は、本発明によればロッド直径の増加に比例して高められるのではなく、最大値が著しくより迅速に調節される。クロロシラン混合物の流量の最大値は、シリコンロッド表面1m2当たり、有利にはクロロシラン350〜1000kg/h、極めて特に有利には460kg/(h・m2)超〜1000kg/(h・m2)である。従来技術とは異なり、本発明による方法ではさらに反応器中のガス温度が考慮される。該ガス温度は、有利には測定装置を用いて、例えば温度センサ(例えば熱電対)を用いて、反応器中か又は特に有利にはガス出口で測定される。前記温度は最高で650℃に制限される。有利には、前記温度は400〜650℃である。
【0029】
シリコン含有反応ガス中のクロロシラン濃度は、本発明による方法の場合、方法の開始からガス温度が650℃に達するまでは、クロロシラン22〜30モル%、有利には25〜28モル%の一定の高い値である。650℃のガス温度から析出の終了まで、クロロシラン濃度は、水素の添加により15〜25モル%、有利には19〜22モル%のより低い値に低減される。反応器中のクロロシラン濃度の調節は、反応ガス混合物中の水素の量を変化させることにより行われる。反応器中のガス温度の調節も、有利には、反応ガス混合物中の水素の量を変化させることによって行われる。
【0030】
さらに、ブリッジの下側、従ってロッドの最も高温の箇所でのロッド温度を規定することが本発明において本質的である。本発明による方法において有利であるように、全析出段階にわたって出来るだけ最高の析出温度で作業するためには、温度測定の前記形に代わるものは存在しない。なぜならば、ブリッジ温度と垂直なロッドの表面積との関連性は多くのプロセスパラメータに依存しており、従って、ロッド厚、ガス量、モル%、反応器形状、装置圧力を変化させると、ブリッジの下側の温度が同じである場合に、垂直なロッドの表面上では種々の温度が生じるためである。垂直なロッドの温度は、ブリッジの温度よりも、ガス流条件及びガス流量にさらに強く依存して変化する。
【0031】
ブリッジ温度、クロロシラン添加量の迅速な最大化、クロロシラン混合物中のジクロロシラン含分、ガス温度、及び、クロロシラン/水素のモル比ないしは反応ガス中のクロロシラン分の上記組合せにより、本発明によるもろいポリシリコンロッドが得られる。方法実施の有利な一形式を図2にまとめて示す。
【0032】
本発明による方法には、あとわずかに、ポリシリコン1kg当たり40kWh未満の比所要エネルギーが必要であるに過ぎず、明らかに毎時1.6mmを上回るシリコンの析出速度が達成される。それに対して、従来技術によるシーメンス析出法は80〜100kWh/kgの比所要エネルギーを有し、かつ1〜1.5mm/hの析出速度が達成される(Handbook of Semiconductor Silicon Technology, William C. O'Mara, Robert B. Herring, and Lee P. Hunt, Noyes Publications, Park Ridge, New Jersey, USA, 1990, 第77頁)。
【0033】
図1は、比較例1によりシーメンス法を用いて製造されたポリシリコンロッドからのこ引きされた多結晶シリコン(左図)、ないし、実施例1によるポリシリコンロッドから製造された多結晶シリコン(右図)からの、辺の長さが50mmである立方体のそれぞれ一つの表面を示す。
【0034】
図2は、本発明による方法の一実施態様の実施における、プロセスパラメータであるブリッジ温度(℃)、ガス温度(℃)、反応ガス中のクロロシランモル分(モル%)、クロロシランの比流量(kg/(h・m2))並びにクロロシラン混合物中のジクロロシラン分(質量%)の経時変化(X軸:時間(h))を示す。
【0035】
次の例は、本発明をさらに説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】比較例1によりシーメンス法を用いて製造されたポリシリコンロッドからのこ引きされた多結晶シリコン(左図)、ないし、実施例1によるポリシリコンロッドから製造された多結晶シリコン(右図)からの、辺の長さが50mmである立方体のそれぞれ一つの表面を示す図。
【図2】本発明による方法の一実施態様の実施における、プロセスパラメータであるブリッジ温度(℃)、ガス温度(℃)、反応ガス中のクロロシランモル分(モル%)、クロロシランの比流量(kg/(h・m2))並びにクロロシラン混合物中のジクロロシラン分(質量%)の経時変化(X軸:時間(h))を示す図。
【実施例】
【0037】
実施例1:本発明によるポリシリコンロッドの製造
シーメンス反応器中で、本発明によるポリシリコンロッドを、加熱されたSiの細いロッド上にクロロシラン混合物と水素とからなる反応ガスからシリコンを析出させることにより製造した。クロロシラン混合物は、トリクロロシラン94質量%とジクロロシラン6質量%とからなっていた。クロロシラン混合物及び水素の流量を相互に無関係に調節した。クロロシラン流量を、析出の開始から15時間以内に、シリコン表面1m2当たり毎時460kgのクロロシラン(kg/(h・m2))に高め、次いで残りの装入所要時間にわたって一定に維持した。ガス温度を反応器からのガス出口の温度センサで測定した。水素流量をガス温度が650℃になるまでクロロシラン流量に比例して高めた結果、反応ガス中のクロロシランのモル分は26モル%で一定であり、その後、本発明によりガス温度がさらに上昇しないように調節し、即ち650℃に限定的に保持した。
【0038】
Siロッドの温度をブリッジの下側で放射高温計を用いて測定し、かつ全装入所要時間にわたって1400℃で一定に保持した。
【0039】
析出をポリシリコンロッドの直径150mmで終了した。そのようにして製造したポリシリコンロッドは以下の特性を有していた:
電気伝導のためのシリコンの面積分:97%
析出されたポリシリコンの全多孔度 0.023
見かけ密度:2.275g/cm3
圧縮強さ(DIN 51910により測定されたもの):58N/mm2
曲げ強さ(DIN 51902により測定されたもの):1.6N/mm2
比較例1:"緻密なシリコン"からのポリシリコンロッドの製造
シーメンス反応器中で、緻密なポリシリコンロッドを、クロロシラン混合物と水素とからなる反応ガスを用いて、加熱されたSiの細いロッド上にシリコンを析出させることにより製造した。クロロシラン混合物は、トリクロロシラン100質量%からなっていた。
クロロシラン混合物及び水素の流量を相互に無関係に調節した。クロロシラン流量を、析出の開始から30時間以内に、シリコン表面1m2当たり毎時350kgのクロロシラン(kg/(h・m2))に高め、次いで残りの装入所要時間にわたって一定に維持した。
ガス温度をガス出口の温度センサで測定したところ、最高で500℃であった。水素流量をクロロシラン流量と比例して高め、クロロシランのモル分を一定に20モル%とした。Siロッドの温度を垂直なロッドの表面上で放射高温計を用いて測定し、かつ全装入所要時間にわたって1030℃で一定に保持した。析出をポリシリコンロッドの直径150mmで終了した。そのようにして製造したポリシリコンロッドは以下の特性を有していた:
電気伝導のためのシリコンの面積分:100%
析出されたポリシリコンの全多孔度0(即ち、多孔性ではなく、細孔、穴、継ぎ目がなく緻密である)
見かけ密度及び真密度:2.329g/cm3
圧縮強さ(DIN 51910により測定されたもの):170N/mm2
曲げ強さ(DIN 51902により測定されたもの):160N/mm2
比較例2:"緻密なシリコン"からのポリシリコンロッドの製造
シーメンス反応器中で、緻密なポリシリコンロッドをHandbook of Semiconductor Silicon Technology,1990,第1〜81頁に記載されているように製造する。そのために、シリコンを、クロロシラン混合物と水素とからなる反応ガスを用いて、加熱されたSiの細いロッド上に析出させた。クロロシラン混合物は、トリクロロシラン100質量%からなっていた。ガス温度をガス出口の温度センサで測定したところ、最高で575℃であった。水素流量をクロロシラン流量と比例して高め、クロロシランのモル分を10モル%とした。
【0040】
Siロッドの温度を垂直なロッドの表面上で放射高温計を用いて測定し、かつ全装入所要時間にわたって1030℃で一定に保持した。所要エネルギーは90kWh/シリコンkgであり、かつ析出速度は1.2mm/hであった。析出をポリシリコンロッドの直径150mmで終了した。そのようにして製造したポリシリコンロッドは以下の特性を有していた:
電気伝導のためのシリコンの面積分:100%
析出されたポリシリコンの全多孔度0(即ち、多孔性ではなく、細孔、穴、継ぎ目がなく緻密である)
見かけ密度及び真密度:2.329g/cm3
圧縮強さ(DIN 51910により測定されたもの):170N/mm2
曲げ強さ(DIN 51902により測定されたもの):160N/mm2
実施例2:ポリ破砕物の製造
実施例1、比較例1及び2からのポリシリコンロッドを1つずつ炭化タングステン−ハンマーで粉砕した。生じた破砕物は、0.7〜1の範囲内のB/L比及び球形度、及び、1〜150mmの範囲内の同一の破砕物サイズ分布を有していた。従って、該破砕物は、後加工に不可欠であるような通常のポリ破砕物の規格に相応していた。実施例1からの粉砕されたポリロッドの破砕物サイズ分布は20〜150mmの破砕物サイズ範囲内で77%の質量分、20〜65mmの範囲内で11%の質量分、5〜45mmの範囲内で8%の質量分、及び15mm未満の範囲内で4%の質量分を有していた。比較例1からの粉砕されたポリロッドの破砕物サイズ分布は20〜150mmの破砕物サイズ範囲内で74%の質量分、20〜65mmの範囲内で12%の質量分、5〜45mmの範囲内で9%の質量分、及び15mm未満の範囲内で5%の質量分を有していた。比較例2からの粉砕されたポリロッドの破砕物サイズ分布は20〜150mmの破砕物サイズ範囲内で79%の質量分、20〜65mmの範囲内で10%の質量分、5〜45mmの範囲内で7%の質量分、及び15mm未満の範囲内で4%の質量分を有していた。
【0041】
金属性の表面不純物の合計は、本発明による破砕物の場合には1〜12ppbwであり、かつ、キャピラリー電気泳動法を用いて測定されたアニオンによる表面の不純物は、硝酸塩62ppb未満及びフッ化物1ppb未満であった。
【0042】
比較例の緻密なシリコンロッドの比較的高い強度により、このポリシリコンロッドを粉砕するための機械的消費量及びエネルギー消費量は明らかにより大きかった。比較的高い機械的消費量により、そこから製造される破砕物の表面汚染がより多くなる。従って、比較例の破砕物の汚染は明らかにより多かった。金属性の表面不純物の合計は100ppbwを上回っていた。前記破砕物は、付加的な清浄化工程なしには、半導体又は光電装置工業において使用することができない。破砕物を半導体及び光電装置工業において使用し得るために、該破砕物は、従来技術、例えばUS6309467に記載されているような酸浴中で清浄化される。それにより、アニオンによるポリシリコン破砕物表面の汚染が生じる。キャピラリー電気泳動法を用いて測定したところ、清浄化後のアニオン値は硝酸塩62ppb超及びフッ化物1ppb超であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶シリコンロッドにおいて、該ロッドが、シリコンの50〜99%の電気伝導に利用される面積分を有するロッド横断面を有し、かつ、該ロッドが0.1〜80N/mm2の曲げ強さを有することを特徴とするシリコンロッド。
【請求項2】
1〜100N/mm2の圧縮強さ、及び2.0〜2.3g/cm3の範囲内の見かけ密度、及び0.01〜0.2の全多孔度を有する、請求項1記載のシリコンロッド。
【請求項3】
均質な構造を有するシーメンス法で成長されたシリコン層を有し、その際、前記構造が、細孔、継ぎ目、割れ目、亀裂及び裂け目を含む、請求項1又は2記載のシリコンロッド。
【請求項4】
1〜150mmの破砕物サイズ分布、及び0.7〜1.0の球形度、及び0.7〜1.0の範囲内の長さに対する幅の比を有する多結晶シリコン破砕物において、該多結晶シリコン破砕物が1〜12ppbwの金属不純物の総和を有する表面を有し、かつ、該表面が硝酸塩62ppb未満及びフッ化物1ppb未満を有することを特徴とする多結晶シリコン破砕物。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか1項記載の多結晶シリコンロッドの製造法であって、クロロシラン混合物と水素とを含有するある流量の反応ガスを反応器に導入し、かつ高純度ポリシリコンを直流電流により加熱されたケイ素からなるフィラメントロッド上に析出させ、その際、該フィラメントロッドを2つの垂直なロッドと1つの水平なロッドとから形成し、かつその際、該水平なロッドが垂直なロッドの間で結合ブリッジを形成している方法において、クロロシラン混合物としてジクロロシランとトリクロロシランとからの混合物を使用し、かつ、フィラメントロッドがブリッジの下側で1300〜1413℃の温度を有するようにフィラメントロッドによって電流が調節されており、かつ、反応器中の反応ガスの温度を測定して該温度がせいぜい650℃となるように調節し、かつ、クロロシラン混合物の流量を、クロロシラン混合物の供給開始から30時間未満、有利には5時間未満でその最大値となるように調節することを特徴とする方法。
【請求項6】
ブリッジの下側の温度を、全装入所要時間にわたって1400℃で一定に保持する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
クロロシラン量を15時間で最大量に増大させる、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
クロロシランの比流量が、シリコンフィラメントロッド面積1m2当たり毎時クロロシラン400〜1000、有利には500kgの範囲内である、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−540395(P2010−540395A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527402(P2010−527402)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062610
【国際公開番号】WO2009/047107
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】