説明

大動脈瘤の半自動分析のためのシステム及び方法

【課題】コンピュータ断層血管造影において大動脈横断面を自動的にセグメント化する方法に関して、従来のアプローチが有していた欠点を克服する。
【解決手段】大動脈瘤を自動分析する方法において、大動脈のディジタル化された3次元画像ボリュームを用意し、前記画像中のどのボクセルが内腔ボクセルである尤度が高いのかを判定し44,43、大動脈の境界から前記内腔ボクセルまでの距離を求め44、前記画像ボリューム中の大動脈の中心線を前記内腔ボクセル距離に基づいて見つけ出し45、この中心線と直交する一連の2次元多断面再構成(MFR)画像平面を形成し、前記MPR画像平面の各々において大動脈の横断面をセグメント化し、前記大動脈壁の位置から大動脈の3Dモデルを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2006年4月21日に提出されたO'Donnell, et al.による米国仮出願番号60/748558の"Image Based Physiological Monitoring of Cardiovascular Function"の優先権を主張するものであり、上記仮出願の内容は参照によって本願の開示内容に含まれるものとする。
【0002】
本開示はコンピュータ断層血管造影において大動脈横断面を自動的にセグメント化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
大動脈は体内で最も大きな動脈であり、酸素化血液の主導管である。大動脈瘤(AA)はこの血管の恒常的かつ不可逆的な局所的拡張であり、治療せずにおくと、破裂するまで次第に膨張し、90%の症例で死をもたらす。AAはアメリカ合衆国における主な死因の第13位にある。標準的な処置では、大動脈の最大直径に基づいて動脈瘤破裂の危険性を評価している。これらの測定値を得るための最近の臨床ツールは非常に多くのユーザインタラクションを要し、非常に時間がかかる。
【0004】
切開修復などのようなこの疾患の治療法は、感染、仮性動脈瘤形成、及び第二種勃起不全を含む重大な危険を冒すものである。血管内ステント修復が人気を得てきているが、この処置の長期成績はまだ知られておらず、すべてのAAがステントの候補であるわけではない。したがって、切迫した破裂の危険がないと考えられるAAに関しては、すぐに積極的治療をするよりも経過観察をする方が好ましいと考えられる。このことはこの疾患に罹患する最大の集団である65歳以上の男性に特に当てはまる。というのも、破裂の前に他の原因による病的状態が生じる場合があるからである。
【0005】
しかし、AAの破裂の危険をどのように判定するかは未だに未解決の問題である。提案されている指標も多様であり、壁応力、壁硬化度、血管内血栓の厚さ、壁張力はすべて提案されている。しかし、標準的な処置では、最大直径が5.5cmを超える場合には、介入(切開修復又はステント)が必要となる。最大直径の経時的変化も予後の尺度として提案されている。
【0006】
現在、動脈の直径の測定には2つの一般的なアプローチが存在している。第1のアプローチは画像ボリュームの最大値投影法(MIP)において直線的測定を行うことを必要とする。しかしながら、MIP投影角の選択がこの測定に高度の主観性をもたらす可能性がある。第2のアプローチは測定の行われる血管経路に直交する再構成画像を得るためにダブルオブリークMPRを用いる。このアプローチの欠点は時間がかかることであり、結果として、分析の継続時間に関する実際的な限界のために、動脈が疎にサンプリングされる可能性がある。その上、手動で実行した場合には、直交面が正しくなく、誤差が入る可能性もある。また、縦断的研究において同じ直交横断面位置を再生することが困難となる場合もある。結局、手動で行われる測定は、どの点が連結して最大直径を形成しているのかをユーザの主観に依拠して判断するので、正しくない可能性がある。
【0007】
ある1つのアプローチは内腔と血管境界とをセグメント化するために3Dレベルセットを使用する。血管境界に関しては、大動脈の表面は滑らかで丸いという仮定に基づいた停止基準が使用される。直交MPRを計算するために、中心線が形成される。
【0008】
別のアプローチは動的形状モデルによる定式化であり、データを訓練することによってではなく、隣接スライスを相関させることによってランドマークを定める。このモデルは手動で初期化され、2スライスモデルが大動脈に沿って一度に1つのスライスを登っていく。血管の中心軸が画像スタックに対してほぼ垂直となる腹部大動脈に焦点があるので、中心線の計算は不要であるが、訓練集合が必要であり、大動脈横断面はしばしば円形であるので、変動モードの縮退の危険がある。
【0009】
また別のアプローチは、測地線活動領域モデルをノンパラメトリック領域ベース情報と併用して脳内の動脈瘤をセグメント化するものである。しかし、この分野では、脳の血管が大動脈に比べてより細かく複雑であるため、血管のモルフォロジーに難題があり、血栓の組織を扱えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、コンピュータ断層血管造影において大動脈横断面を自動的にセグメント化する方法に関して、従来のアプローチが有していた欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、大動脈のデジタル化された3次元画像ボリュームを用意するステップと、ただしここで、前記画像はボクセルの3D格子上で定義された複数の輝度値から構成されたものであり、前記画像中のどのボクセルが内腔ボクセルである尤度が高いのかを判定するステップと、大動脈の境界から前記内腔ボクセルまでの距離を求めるステップと、前記画像ボリューム中の大動脈の中心線を前記内腔ボクセル距離に基づいて見つけ出すステップと、この中心線と直交する一連の2次元多断面再構成(MFR)画像平面を形成するステップと、前記MPR画像平面の各々において大動脈の横断面をセグメント化するステップと、ただしその際、大動脈壁は各MPR画像内に位置しているものとし、前記大動脈壁の位置から大動脈の3Dモデルを構築するステップとを有することを特徴とする大動脈を自動分析する方法により解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書に記載された発明の実施例は、大動脈(内腔)の中心線を半自動的に求め、この中心線と直交する一連の画像を再構成することにより、大動脈横断面を自動的にセグメント化する方法及びシステムを全般的に含むものである。血管横断面は修正された等周セグメンテーションアルゴリズムで自動的にセグメント化される。血栓、石灰化、及び、グレイスケール上での血管壁と周囲構造物の類似性により生じる難題があるため、ユーザがセグメンテーションを編集できるようにしてもよい。編集されたセグメンテーションから大動脈の3Dモデルが構築される。最後に、追跡調査を容易にするため、2つの画像ボリュームのレジストレーションが行われる。
【0013】
本発明の1つの実施形態によれば、大動脈を完全にカバーすることが可能である。開業臨床医にとって、調査を吟味する時間がほんの数分に限られているということは珍しいことではない。本発明の実施形態によるシステムを用いれば、臨床医は血管全体の最適かつ再現可能な一連の直交横断面を数秒内に得ることができ、これら直交横断面から視覚的に不整を調べることができる。さらに、ユーザはこれらの横断面をセグメント化し、保証最大直径を自動的に計算させることができる。3Dモデルを作成することにより、壁応力や壁硬化度などの有効性と同様にボリューム特徴の有効性を評価することが可能になる。3Dモデルを構築した後、ステント計画が可能となり、(血圧の読み取りと共に)壁応力などのような破裂危険性指標を計算する手筈が整えられる。最後に、レジストレーションにより、異時点における同一の大動脈の並列比較が容易になる。危険な状態にあるAAと修復された大動脈の両方を監視するのが一般的なので、この特徴には価値がある。
【0014】
本発明の1つの側面によれば、大動脈のデジタル化された3次元画像ボリュームを用意するステップと、ただしここで、前記画像はボクセルの3D格子上で定義された複数の輝度値から構成されたものであり、前記画像中のどのボクセルが内腔ボクセルである尤度が高いのかを判定するステップと、大動脈の境界から前記内腔ボクセルまでの距離を求めるステップと、前記画像ボリューム中の大動脈の中心線を前記内腔ボクセル距離に基づいて見つけ出すステップと、この中心線と直交する一連の2次元多断面再構成(MFR)画像平面を形成するステップと、前記MPR画像平面の各々において大動脈の横断面をセグメント化するステップと、ただしその際、大動脈壁は各MPR画像内に位置しているものとし、前記大動脈壁の位置から大動脈の3Dモデルを構築するステップとを有することを特徴とする大動脈瘤を自動分析する方法が提供される。
【0015】
本発明の別の側面によれば、前記方法は前記中心線を初期化するために前記大動脈内に2つの入力ボクセルを設けるステップをさらに有する。
【0016】
本発明の別の側面によれば、前記ボクセルのうちの一方は大動脈の基部の近傍にあり、他方のボクセルは腸骨分岐部の近傍にある。
【0017】
本発明の別の側面によれば、どのボクセルが内腔ボクセルである尤度が高いのかを判定するステップは、各入力ボクセルの近傍における輝度分布に関するガウス分布推定量を用いてヒストグラムを計算するステップと、各ボリュームボクセルの大動脈内腔への帰属尤度に閾値を設けるステップを含む。
【0018】
本発明の別の側面によれば、大動脈の中心線を見つけ出すステップは、前記大動脈境界からの距離が最大である内腔ボクセルから、前記入力ボクセル間の経路を形成するステップを含む。
【0019】
本発明の別の側面によれば、前記方法は前記中心線を平滑化するステップを有する。
【0020】
本発明の別の側面によれば、前記MPR画像平面内の大動脈横断面をセグメント化するステップは、前記大動脈の横断面と前記大動脈の境界との等周比を最小化する画像パーティションS,S-を見つけ出すステップを含む。
【0021】
本発明の別の側面によれば、前記等周比を最小化するステップは、ボクセルi,jにより定義される成分から成るラプラス行列L
【数1】

により前記内腔輝度値を表すステップを含でおり、ここで、eijは隣接ボクセルi,jを結ぶ辺を表しており、w(eij)は
【数2】

で定義される辺eijに対する重みであり、ここで、DLは推定された内腔分布であり、DTは推定された血栓分布であり、diは、前記ボクセルを結ぶ辺の重みを合計し、費用関数
【数3】

を最小化することにより定義されるボクセルiの次数であり、ここで、dはボクセル次数のベクトルであり、xは
【数4】

により定義されるパーティション指標関数であり、Uは一様な重みをもつラプラス行列を表しており、uは一様な重みをもつグラフの次数ベクトルを表しており、yは真円度パラメータである。
【0022】
本発明の別の側面によれば、前記費用関数を最小化するステップは、中心線とMPRとの交点に相当するノードを基本ボクセルVgとして選択するステップと、次元低減されたラプラス行列L0と次数ベクトルd0を形成するためにVgに対応する行/列を削除するステップと、xが任意の実数値をとれるようにL00=d0を解くステップと、最小の等周比に対応するパーティションを生じさせる値をパーティション指標xの閾値に設定するステップとを含む。
【0023】
本発明の別の側面によれば、前記方法はK平均法を用いて内腔ボクセルと血栓ボクセルを背景ボクセルから分離するステップを有する。
【0024】
本発明の別の側面によれば、大動脈のデジタル化された3次元画像ボリュームを用意するステップと、ただしここで、前記画像はボクセルの3D格子上で定義された複数の輝度値から構成されたものであり、前記画像ボリューム中の大動脈の中心線を見つけ出すステップと、この中心線と直交する一連の2次元多断面再構成(MFR)画像平面を形成するステップと、K平均法を用いて内腔ボクセルと血栓ボクセルを背景ボクセルから分離するステップと、前記大動脈の横断面と前記大動脈の境界との等周比を最小化する画像パーティションS,S-を見つけ出すことにより、前記MPR画像平面内の大動脈横断面をセグメント化するステップと、ただしその際、大動脈壁は各MPR画像内に位置しているものとし、前記大動脈壁の位置から大動脈の3Dモデルを構築するステップとを有することを特徴とする大動脈を自動分析する方法が提供される。
【0025】
本発明の別の側面によれば、前記大動脈中心線を見つけ出すステップは、前記中心線を初期化するために前記大動脈内に2つの入力ボクセルを設けるステップと、各入力ボクセルの近傍における輝度分布に関するガウス分布推定量を用いてヒストグラムを計算するステップと、各ボリュームボクセルの大動脈内腔への帰属尤度に閾値を設けて、内腔ボクセルを識別するステップと、大動脈の境界から前記内腔ボクセルまでの距離を求めるステップと、前記大動脈境界からの距離が最大である内腔ボクセルから前記入力ボクセル間の経路を形成するステップを含む。
【0026】
本発明の他の側面によれば、大動脈瘤を自動分析するのための方法ステップを実行するコンピュータにより実行可能な命令から成るプログラムを有形的に実現したコンピュータ可読プログラム記憶装置が提供される。
【実施例】
【0027】
本明細書に記載された発明の実施例は、コンピュータ断層血管造影において大動脈横断面を自動的にセグメント化するためのシステム及び方法を全般的に含むものである。したがって、本発明は様々な変更および択一的形態を許容するが、ここでは、本発明の特定の実施形態を例として図示し、詳細に説明する。しかしながら、本発明は開示された特定の形態に限定されるものではなく、逆に、本発明の趣旨および範囲の中に入るすべての変更形態、等価形態、および択一的形態を包摂するものであることが理解されねばならない。
【0028】
本明細書で使用されているように、「画像」という用語は離散的な画像要素(例えば、2D画像ならばピクセル、3D画像ならばボクセル)から成る多次元データを指す。画像は、例えば、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴映像法、超音波、または、当業者に知られている他の任意の医用画像システムにより収集された被験者の医用画像であってよい。画像はまた、例えば、リモートセンシングシステム、電子顕微鏡などのような非医療的コンテキストから提供されるものであってもよい。画像はR3からRへの関数と見なすこともできるが、本発明の方法はこのような画像に限定されるものではなく、2Dピクチャまたは3Dボリュームなどの任意の次元の画像に適用することができる。2次元または3次元画像では、画像の領域は一般には2次元または3次元の方形アレイであり、各ピクセルまたはボクセルは2つまたは3つの相互に直交する軸を基準として指定することができる。本明細書で使用される「デジタル」及び「デジタル化」という用語は、適切には、デジタル収集システムを介して又はアナログ画像からの変換を介して得られたデジタルフォーマットの又はデジタル化されたフォーマットの画像もしくはボリュームを指す。
【0029】
本発明の1つの実施形態によれば、大動脈の横断面を自動的にセグメント化する方法は、大動脈(内腔)の中心線を求め、この中心線と直交する一連の画像を再構成し、修正された等周セグメンテーションアルゴリズムで血管横断面を自動的にセグメント化する。
【0030】
図4は、本発明の1つの実施形態による中心線計算方法のフローチャートである。中心線の計算は、ステップ41において、大動脈の基部にある1つの点と腸骨分岐部の近傍にあるもう1つの点の2つの点をインタラクティブに用意することにより初期化される。ステップ42では、入力点の小近傍内における輝度分布に関して標準的なガウスカーネル推定量を使用することにより、これら2つの点から内腔輝度の輝度分布が推定される。ステップ43では、内腔輝度分布推定に従い、各ボクセル輝度が大動脈内腔に属する尤度に関して、ボリューム内のボクセルに閾値が設けられる。内腔ボクセルである考えられるボクセルに関しては、ステップ44において、各内腔ボクセルの大動脈境界からの距離を推定する距離関数が計算される。大動脈中心線は距離値の最も大きなボクセルを含むので、ステップ45において、これら最も距離値の大きな内腔ボクセルから2つの入力点の間の経路を形成することができる。この経路は大動脈中心線として出力され、後にステップ46において平滑化される。
【0031】
画像ボリュームはステップ47において中心線に対して垂直な一連の多断面再構成(MPR)へと再サンプリングされる。中心線とこれら画像との交点は内腔、すなわち大動脈の管の部分、の中心に点を形成する。これは大動脈境界のセグメンテーションへの入力として役立つ。
【0032】
大動脈の最大直径を求めるため、血管境界の全体がセグメント化される。血栓が存在している場合、すなわち、大動脈内に凝固血が存在している場合、大動脈内の輝度分布が複峰性(鮮明な内部境界を含む)を有し、隔膜、静脈、及び分岐血管のような紛らわしい構造物が付近に存在するため、この境界のセグメンテーションは難題である。
【0033】
本発明によるセグメンテーション手法は以下の要素を考慮している:(1)内腔と血栓の輝度を推定することができる;(2)弱連結した紛らわしい構造物をカットすることのできるアルゴリズムを使用しなければならない;(3)大動脈横断面は一般に円形であると仮定してよい;(4)中心線と交差する部分からの内腔点を利用することできる。
【0034】
内腔と血栓のボクセルを背景ボクセルから分離するために、K平均法アルゴリズムを用いて画像内の異なる輝度グループがクラスタ化される。K平均法アルゴリズムは対象を属性に基づいてk個のクラスタに分割するアルゴリズムである。それは期待値最大化アルゴリズムの変種であり、ガウス分布から生成されたデータのk平均値を求めることをその目標としている。このアルゴリズムの目的はクラスタ内分散の総計を最小化すること、すなわち、2乗誤差関数
【数5】

を最小化することである。ここで、k個のクラスタSi,i=1,2,...,kがあり、μiはすべての点xj∈Siの重心又は平均点である。アルゴリズムはランダムに又はいくつかのヒューリスティックデータを用いて入力点をk個の初期集合に分けることから始まる。つづいて、各集合の平均点又は重心が計算される。アルゴリズムは各点に最近傍の重心を対応付けることにより新たなパーティションを形成する。つづいて、これらの新たなクラスタについて重心が再計算され、アルゴリズムは収束するまでこの2つのステップの交互適用を繰り返す。なお、収束は点がもはやクラスタの切替えを生じさせることがなくなったとき、あるいは、重心が実質的に不変になったときに到達される。
【0035】
本発明の1つの実施形態によれば、"Isoperimetric Graph Partitioning for Image Segmentation", Leo Grady and Eric L. Schwartz, IEEE Trans. on Pattern Analysis and Machine Intelligence, vol. 28, no. 3, pp. 469-475, March 2006に開示されている等周セグメンテーションアルゴリズムが良い候補である。というのも、このアルゴリズムは入力として1つの点を要するだけであり、弱連結した紛らわしい構造物を正しくカットすることができるからである。なお、上記文献の内容は参照により本願の開示内容に含まれるものと見なす。しかし、このアルゴリズムは(重み付けグラフ上での)セグメンテーションの真円度を促進しないので、修正が必要である。
【0036】
等周セグメンテーションアルゴリズムはグラフ理論の概念を用いて記述されるので、以下にこれらの概念を説明する。画像はグラフG=(V,E)として定式化することができ、ボクセルは頂点(ノード)v∈Vに対応し、辺e∈E⊆V×Vである。2つの頂点viとvjを張る辺eはeijで表される。n=|V|、m=|E|であるとしよう。ただし、| |は濃度を表すものとする。重み付けグラフは各辺に割り当てられた重みと呼ばれる値(一般には、非負実数)を有する。辺eijの重みはw(eij)又はwijで表される。頂点viの次数はdiで表され、
【数6】

である。辺の重みは、例えば、この辺によって張られた2つのノード(ボクセル)の輝度差の関数として定義される。
【0037】
古典的な等周問題は、一定のエリアに関して、半径が最小である領域を見つけ出そうとするものである。より形式的には、等周定数とは領域Sの境界の面積と可能なすべての領域Sにわたるその体積との比の最小値
【数7】

である。直観的には、大きな領域であって、しかも周囲との境界が小さいような領域を与えるパーティションが求められる。つまり、ボトルネックのような弱連結した構造がカットされる。集合Sの境界は∂S={eij|vi∈S,vj∈S-}として定義される。ここで、S-は補集合を表している。
【0038】
【数8】

グラフの体積は
【数9】

として定義することができる。ここで、diは上で定義した頂点次数である。等周比を計算する際、輝度の一様な領域は多数のピクセルを有する領域よりも優先される。
【0039】
等周比は行列の形で表現することができる。始めに、各ノードにおいて2進値をとる指標ベクトルxが定義される。
【0040】
【数10】

xの指定がパーティションと見なしうることに注意されたい。グラフのn×n行列Lは
【数11】

として定義される。記号Lvivj、より単純にLijは、頂点viとvjとにより添字付けられた行列Lを指すために使用される。この行列はアドミッタンス行列やラプラス行列として様々な形で知られている。
【0041】
ところで、Lの定義から、|∂S|=xTLxであり、VolS=xTdである。ここで、dはノード次数のベクトルである。したがって、グラフGの等周比は、集合Sが一定の体積VolS=xTd=kを有するという制約条件の下で、指標ベクトルを用いて
【数12】

と書き換えることができる。指標ベクトルxが与えられれば、h(x)はxにより指定されるパーティションに対応する等周比を表す。大動脈壁のセグメンテーションのためには、大動脈の上皮層を周囲組織から分離するパーティションS⊂Vを見つけ出すことが必要である。
【0042】
付随する重みが一様であれば、h(x)の最小化により得られる解が円をもたらすことを示しうる。上記アルゴリズムは等周問題のこの古典的な解に動機付けされたものである。したがって、等周アルゴリズムからの上記項を真円度の項
【数13】

と組合せてもよい。ここで、Uは一様な重みを有するラプラス行列を表しており、uは一様な重みを有するグラフの次数ベクトルを表している。これを最小化することにより、すべての重みに定数γを加えることによって修正された重みを用いた標準的な等周アルゴリズムの解が得られる。パラメータγは解に課せられる真円度のレベルを制御するものであり、画像内容に関して、γ=0は円が選好されないことを表し、γ=∞は解が円となるように強制する。本発明の1つの実施形態によれば、γ=0.03と設定することにより良好なバランスを達成することができる。
【0043】
等周比の制約付き最適化は、ラグランジュ乗数λを導入し、さらに、費用関数Q(x)=xTL’x−λ(xTd−k)の最小化によりxが非負実数値をとりうるようにxの2進定義を緩めることで、制約なし変分となる。L’は半正定値であり、xTdは非負であるから、Q(x)はいずれの臨界点についても最小となる。Q(x)をxに関して微分し、最小値に設定することにより、
(1) 2L’x=λd
を得る。したがって、Q(x)(最小パーティション)を最小化するxを求めることは線形系を解くことに還元される。解の相対値のみが重要なので、以下では、スカラー乗数2とスカラーλを省略し、Lのプライム記号も表示しない。
【0044】
あいにく、行列Lが特異行列である場合、すなわち、すべての行及び列の成分の和がゼロである場合には、(1)の一意解を求めるには付加的な制約条件が必要である。
【0045】
グラフが非連結(すなわち、g(x)=0)ならば、最適パーティションは明らかに各々の連結成分であるから、グラフは連結しているものと仮定する。一般に、c個の連結成分を有するグラフはランク(n−c)の行列Lに対応することに注意されたい。ノードvgがSに含まれるように任意にノードvgを指定した(すなわち、xg=0とする)場合、それは、(1)において、Lから第g行及び第g列を削除し、xとdとから第g行及び第g列を削除することに対応するので、
(2) L00=d0
が成り立つ。なお、この方程式系は正則であり、L0はLから第g行及び第g列を削除したものであり、x0とd0はxとdから第g行及び第g列を削除したものである。
【0046】
(2)をx0について解けば、実数解が得られるが、この実数解は閾値の設定によりパーティションに変換される。選択されたいずれの閾値に関しても、削除されたLの行及び列に対応するノードを含んだパーティションは連結していなければならない、つまり、選択された閾値よりも低いx0値に対応するノードが連結成分を形成していなければならないということを示すことができる。
【0047】
図5は、本発明の1つの実施形態による画像セグメンテーションに適用された等周アルゴリズムのフローチャートである。図を参照すると、アルゴリズムはステップ51において中心線に対して垂直な2次元MPR画像を取得することから始まる。
【0048】
ステップ52では、内腔ボクセルと血栓ボクセルを背景ボクセルから分離するために、K平均法アルゴリズムが適用される。5はKの非限定的な例としての値である。内腔輝度に相当する平均は中心線の点の位置から知られ、血栓平均は、中心線には近いが、内腔平均には属さない平均を探すことによって選択される。平均は、それに属するボクセルの個数が小さすぎるか、又は妥当な血栓輝度の学習された範囲の外にある場合には、血栓を表さないとして拒絶される。
【0049】
ステップ53では、隣接ピクセルiとjの間の重み(近接性)が
【数14】

で定義される。ここで、DLは推定された内腔分布であり、DTは推定された血栓分布であり、γは上で定義された真円度であり、Lは重みから成る行列である。内腔又は血栓頂点を非内腔又は非血栓頂点と結ぶ辺には低い重みが与えられることに注意されたい。
【0050】
ステップ54では、スライスと交差する中心線上の点として基本ノードが選択され、L0とd0を求めるためにラプラス行列から対応する行及び列が削除される。方程式L00=d0はステップ55においてx0について解かれる。
【0051】
ステップ56では、最も低い等周比に対応するパーティションを与える値にポテンシャルxの閾値が設定される。ステップ58において、アルゴリズムは残りのMPRに対してステップ51〜56を繰り返すためにループバックする。最後に、ステップ59において、セグメント化されたMPRのシーケンスから大動脈の3Dモデルが形成される。
【0052】
ステップ55においてL00=d0を解くために、xの2進定義を実数にまで拡張してもよい。したがって、解xをパーティションに変換するために、ステップ56が実行される。ポテンシャルベクトルのパーティションへの変換は閾値を用いることにより行うことができる。カット値は、S={vi|xi≦α}かつS-={vi|xi>α}となるような値αである。SとS-をこのように分けることをカットと呼ぶ。この閾値設定の動作がポテンシャルベクトルxからパーティションを生成する。連結グラフは単調行列L0に対応しており、ゆえにL0-1≧0であることに注意されたい。この結果はx0=L0-10≧0を含意する。このとき、結果として得られるパーティションが最も低い有効等周比(比カット)を有するように閾値を選択する。
【0053】
図1(a)-(c)はセグメンテーションプロセスの連続する段階を示したものである。左側の画像、すなわち、図1(a)には、血栓を示す大動脈の横断面画像である入力画像が示されている。中央の画像、すなわち、図1(b)には、ピクセルが大動脈に属する確率の確率マップ(重みはこの確率マップに基づいている、つまり、これが修正等周アルゴリズムに渡される画像である)が示されている。一番右の画像、すなわち、図1(c)には、初期中心点を含んだ画像のセグメンテーションが示されており、ここで、スポット11は中心線の通過位置を示しており、リング12は結果として得られたセグメンテーション境界の位置を示している。一番右の画像はセグメンテーションとのコントラストを高めるために白くされていることに注意されたい。
【0054】
本発明の1つの実施形態によるアプローチは4人の患者に対してそれぞれ6ヶ月から1.5年の間隔で撮られた2つの画像ボリューム(Time1とTime2)によって実証されている。患者は2002年2月から2005年12月までの間に少なくとも二度、4スライスCTシステム(Volume Zoom, Siemens Medical Solutions)、16スライスCTシステム(Sensation 16, Siemens)、及び/又は64スライスCTシステム(Sensation 64, Siemens)を用いて撮影された。通常通り、1回の息こらえで胸部大動脈を撮影するために造影非同期ヘリカル検査を用いた。重複のない3mm厚のスライスが再構成された。
【0055】
放射線専門医は横断面を得るためにTime1データセットを(ダブルオブリークを介して)手動で再フォーマットし、大動脈に沿った9つの点において仮想のカリパスを用いて大動脈の直径を手動で測定した。Time1データセットとTime2データセットは両方ともプロトタイプにロードされ、本発明の1つの実施形態に従って、レジストレーションが行われ、中心線が形成された。専門医は自動生成された横断面を前とほぼ同じ点までスクロールして手動で直径を測定し、両時点における直径が自動生成された。ある患者に関するデータセットの一例が図2のテーブルに示されている。このデータを用いてこの患者から構築した大動脈の3Dモデルは図3に示されている。
【0056】
つぎに図2を参照すると、左から右へ向かって、"Man X/Man Diam"とラベル付けされた第1列に、Time1画像ボリューム上での手動横断面/手動直径測定値が表示されている。"Auto X/Man Diam"とラベル付けされた第2列には、Time1画像ボリューム上での自動横断面/手動直径測定値が表示されている。"Auto X/Auto Diam"とラベル付けされた第3列には、Time1画像ボリューム上での自動横断面/自動直径測定値が表示されている。最後の2列も同様にラベル付けされている。
【0057】
すべての患者のTime1に関するMan X/Man DiamとAuto X/Man Diamの間の差の平均は0.197+/-0.152cmであった。符号付きの差は0.136+/-0.209cmで、Man X/Man Diamの方が平均して大きかった。このことは、本発明の1つの実施形態による自動中心線法は概して血管と直交する画像平面を見つけ出すことに優れていたことを示している。血管直径の測定値が真の直交横断面の場合よりも小さいということは決してない。Auto X/Man DiamとAuto X/Auto Diamとに関する全画像ボリュームにわたる差は0.342+/-0.245cmであった。各画像は平均して0.52editsを要した。
【0058】
本発明の1つの実施形態によるアプローチは時間の節約を可能にする。平均して、放射線専門医が手動で1つのデータセットのダブルオブリークサンプリングを行うにはおよそ15分かかった。本発明の1つの実施形態によるプロトタイプを使用することにより、放射線専門医は同じ患者からとった2つの画像を10分で視覚的に分析し、測定を行うことができ、しかも大動脈を完全にカバーすることができた。
【0059】
放射線専門医が比較のために選んだ点は、多くの場合、大動脈の分岐の近傍に位置していた。これらの分岐点のおかげで、手動分析を行う際に一貫して同じ位置を比較することが容易になるが、セグメンテーションが隣接する血管内に滲出することがありうるため、自動セグメンテーションはより手の込んだものになってしまう。
【0060】
本発明は様々な形態のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、特殊用途向けプロセス、又はこれらの組合せにより実施可能であることが理解されなければならない。1つの実施形態では、本発明をコンピュータ可読プログラム記憶装置上に有体的に実現されたアプリケーションプログラムとしてソフトウェアで実施することもできる。このアプリケーションプログラムは任意の相応しいアーキテクチャを持つマシーンにアップロードし、実行することができる。
【0061】
図6は、本発明の1つの実施形態に従って、コンピュータ断層血管造影において大動脈の横断面を自動でセグメント化するための方法を実施するコンピュータシステムの1つの例をブロック図で示したものである。図6を参照すると、本発明を実施するコンピュータシステム61は、とりわけ、中央処理ユニット(CPU)62と、メモリ63と、入出力(I/O)インタフェース64とから構成されている。コンピュータシステム61は一般にI/Oインタフェース64を介してディスプレイ65や、マウス及びキーボードのような様々な入力デバイス66と結合されている。補助回路として、キャッシュ、電源、クロック回路、及び通信バスのような回路を含んでいてもよい。メモリ63はランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ディスク駆動装置、テープ駆動装置またはそれらの組み合わせを含みうる。本発明は、メモリ63に格納され、CPU62により実行されることにより、信号源68からの信号を処理するルーチン67として実施することもできる。コンピュータシステム61はそれ自体としては汎用コンピュータシステムであるが、本発明のルーチン67を実行する際には専用コンピュータシステムとなる。
【0062】
また、コンピュータシステム61はオペレーティングシステムとマイクロ命令コードも含んでいる。本明細書に記載された様々なプロセスや機能はマイクロ命令コードの一部であってもよいし、オペレーティングシステムを介して実行されるアプリケーションプログラム(またはこれらの組合せ)の一部であってもよい。加えて、他の様々な周辺機器を、付加的なデータ記憶装置や印刷機のようなコンピュータプラットフォームに接続してもよい。
【0063】
さらに、構成要素であるシステムコンポーネントと添付図面に描かれた方法ステップのうちのいくつかはソフトウェアとして実施することができるので、システムコンポーネント(又はプロセスステップ)間の実際の接続は本発明のプログラムの仕方に応じて異なりうる。本明細書に開示された本発明の教示により、当業者であれば本発明のこれらの実施形態又は構成だけでなく、これらと類似した実施形態又は構成を想到することもまた可能である。
【0064】
有利な実施形態を参照して本発明を詳細に説明してきたが、当業者には、添付された請求項において示されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な変更及び置き換えを為しうることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1(a)−(c)は、本発明の1つの実施形態によるセグメンテーションプロセスの連続する段階を示したものである。
【図2】図2は、本発明の1つの実施形態によるプロトタイプの評価に関するサンプル結果を示すテーブルである。
【図3】図3は、本発明の1つの実施形態に従って、図2のテーブルのデータから再構成した大動脈を示したものである。
【図4】図4は、本発明の1つの実施形態による中心線計算方法のフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の1つの実施形態による画像セグメンテーションに適用された等周アルゴリズムのフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の1つの実施形態に従って、コンピュータ断層血管造影において大動脈の横断面を自動でセグメント化するための方法を実施するコンピュータシステムの1つの例をブロック図で示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大動脈瘤を自動分析する方法において、大動脈のデジタル化された3次元画像ボリュームを用意するステップと、ただしここで、前記画像はボクセルの3D格子上で定義された複数の輝度値から構成されたものであり、前記画像中のどのボクセルが内腔ボクセルである尤度が高いのかを判定するステップと、大動脈の境界から前記内腔ボクセルまでの距離を求めるステップと、前記画像ボリューム中の大動脈の中心線を前記内腔ボクセル距離に基づいて見つけ出すステップと、この中心線と直交する一連の2次元多断面再構成(MFR)画像平面を形成するステップと、前記MPR画像平面の各々において大動脈の横断面をセグメント化するステップと、ただしその際、大動脈壁は各MPR画像内に位置しているものとし、前記大動脈壁の位置から大動脈の3Dモデルを構築するステップとを有することを特徴とする、大動脈を自動分析する方法。
【請求項2】
前記中心線を初期化するために前記動脈内に2つの入力ボクセルを設けるステップをさらに有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ボクセルのうちの一方は大動脈の基部の近傍にあり、他方のボクセルは腸骨分岐部の近傍にある、請求項2記載の方法。
【請求項4】
どのボクセルが内腔ボクセルである尤度が高いのかを判定するステップは、各入力ボクセルの近傍における輝度分布に関するガウス分布推定量を用いてヒストグラムを計算するステップと、各ボリュームボクセルの大動脈内腔への帰属尤度に閾値を設けるステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
大動脈の中心線を見つけ出すステップは、前記大動脈境界からの距離が最大である内腔ボクセルから、前記入力ボクセル間の経路を形成するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記中心線を平滑化するステップをさらに有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記MPR画像平面内の大動脈横断面をセグメント化するステップは、前記大動脈の横断面と前記大動脈の境界との等周比を最小化する画像パーティションS,S-を見つけ出すステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記等周比を最小化するステップは、ボクセルi,jにより定義される成分から成るラプラス行列L
【数1】

により前記内腔輝度値を表すステップを含んでおり、
ここで、eijは隣接ボクセルi,jを結ぶ辺を表しており、w(eij)は
【数2】

で定義される辺eijに対する重みであり、ここで、DLは推定された内腔分布であり、DTは推定された血栓分布であり、diは、前記ボクセルを結ぶ辺の重みを合計し、費用関数
【数3】

を最小化することにより定義されるボクセルiの次数であり、
ここで、dはボクセル次数のベクトルであり、xは
【数4】

により定義されるパーティション指標関数であり、Uは一様な重みをもつラプラス行列を表しており、uは一様な重みをもつグラフの次数ベクトルを表しており、yは真円度パラメータである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記費用関数を最小化するステップは、中心線とMPRとの交点に相当するノードを基本ボクセルVgとして選択するステップと、次元低減されたラプラス行列L0と次数ベクトルd0を形成するためにVgに対応する行/列を削除するステップと、xが任意の実数値をとれるようにL00=d0を解くステップと、最小の等周比に対応するパーティションを生じさせる値をパーティション指標xの閾値に設定するステップとを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
K平均法を用いて内腔ボクセルと血栓ボクセルを背景ボクセルから分離するステップをさらに有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
大動脈瘤を自動分析する方法において、大動脈のデジタル化された3次元画像ボリュームを用意するステップと、ただしここで、前記画像はボクセルの3D格子上で定義された複数の輝度値から構成されたものであり、前記画像ボリューム中の大動脈の中心線を見つけ出すステップと、この中心線と直交する一連の2次元多断面再構成(MFR)画像平面を形成するステップと、K平均法を用いて内腔ボクセルと血栓ボクセルを背景ボクセルから分離するステップと、前記大動脈の横断面と前記大動脈の境界との等周比を最小化する画像パーティションS,S-を見つけ出すことにより、前記MPR画像平面内の大動脈横断面をセグメント化するステップと、ただしその際、大動脈壁は各MPR画像内に位置しているものとし、前記大動脈壁の位置から大動脈の3Dモデルを構築するステップとを有することを特徴とする、大動脈を自動分析する方法。
【請求項12】
前記大動脈中心線を見つけ出すステップは、前記中心線を初期化するために前記動脈内に2つの入力ボクセルを設けるステップと、各入力ボクセルの近傍における輝度分布に関するガウス分布推定量を用いてヒストグラムを計算するステップと、各ボリュームボクセルの大動脈内腔への帰属尤度に閾値を設けて、内腔ボクセルを識別するステップと、大動脈の境界から前記内腔ボクセルまでの距離を求めるステップと、前記大動脈境界からの距離が最大である内腔ボクセルから前記入力ボクセル間の経路を形成するステップを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
大動脈瘤を自動分析するための方法ステップを実行するコンピュータ実行可能な命令から成るプログラムを有形的に実現したコンピュータ可読プログラム記憶装置において、前記方法ステップは、大動脈のデジタル化された3次元画像ボリュームを用意するステップと、ただしここで、前記画像はボクセルの3D格子上で定義された複数の輝度値から構成されたものであり、前記画像中のどのボクセルが内腔ボクセルである尤度が高いのかを判定するステップと、大動脈の境界から前記内腔ボクセルまでの距離を求めるステップと、前記画像ボリューム中の大動脈の中心線を前記内腔ボクセル距離に基づいて見つけ出すステップと、この中心線と直交する一連の2次元多断面再構成(MFR)画像平面を形成するステップと、前記MPR画像平面の各々において大動脈の横断面をセグメント化するステップと、ただしその際、大動脈壁は各MPR画像内に位置しているものとし、前記大動脈壁の位置から大動脈の3Dモデルを構築するステップを有することを特徴とする、コンピュータ可読プログラム記憶装置。
【請求項14】
前記方法は前記中心線を初期化するために前記動脈内に2つの入力ボクセルを設けるステップをさらに有する、請求項13記載のコンピュータ可読プログラム記憶装置。
【請求項15】
前記ボクセルのうちの一方は大動脈の基部の近傍にあり、他方のボクセルは腸骨分岐部の近傍にある、請求項14記載のコンピュータ可読プログラム記憶装置。
【請求項16】
どのボクセルが内腔ボクセルである尤度が高いのかを判定するステップは、各入力ボクセルの近傍における輝度分布に関するガウス分布推定量を用いてヒストグラムを計算するステップと、各ボリュームボクセルの大動脈内腔への帰属尤度に閾値を設けるステップを含む、請求項14記載のコンピュータ可読プログラム記憶装置。
【請求項17】
大動脈の中心線を見つけ出すステップは、前記大動脈境界からの距離が最大である内腔ボクセルから、前記入力ボクセル間の経路を形成するステップを含む、請求項14記載のコンンピュータ可読プログラム記憶装置。
【請求項18】
前記方法は前記中心線を平滑化するステップをさらに有する、請求項13記載のコンピュータ可読プログラム記憶装置。
【請求項19】
前記MPR画像平面内の大動脈横断面をセグメント化するステップは、前記大動脈の横断面と前記大動脈の境界との等周比を最小化する画像パーティションS,S-を見つけ出すステップを含む、請求項13記載のコンピュータ可読プログラム記憶装置。
【請求項20】
前記等周比を最小化するステップは、ボクセルi,jにより定義される成分から成るラプラス行列L
【数5】

により前記内腔輝度値を表すステップを含んでおり、
ここで、eijは隣接ボクセルi,jを結ぶ辺を表しており、w(eij)は
【数6】

で定義される辺eijに対する重みであり、ここで、DLは推定された内腔分布であり、DTは推定された血栓分布であり、diは、前記ボクセルを結ぶ辺の重みを合計し、費用関数
【数7】

を最小化することにより定義されるボクセルiの次数であり、
ここで、dはボクセル次数のベクトルであり、xは
【数8】

により定義されるパーティション指標関数であり、Uは一様な重みをもつラプラス行列を表しており、uは一様な重みをもつグラフの次数ベクトルを表しており、yは真円度パラメータである、請求項19記載のコンピュータ可読プログラム記憶装置。
【請求項21】
前記費用関数を最小化するステップは、中心線とMPRとの交点に相当するノードを基本ボクセルVgとして選択するステップと、次元低減されたラプラス行列L0と次数ベクトルd0を形成するためにVgに対応する行/列を削除するステップと、xが任意の実数値をとれるようにL00=d0を解くステップと、最小の等周比に対応するパーティションを生じさせる値をパーティション指標xの閾値に設定するステップとを含む、請求項20記載のコンピュータ可読プログラム記憶装置。
【請求項22】
前記方法はK平均法を用いて内腔ボクセルと血栓ボクセルを背景ボクセルから分離するステップをさらに有する、請求項13記載のコンピュータ可読プログラム記憶装置。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−289704(P2007−289704A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−113347(P2007−113347)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(593063105)シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド (156)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
【住所又は居所原語表記】51 Valley Stream Parkway,Malvern,PA 19355−1406,U.S.A.
【出願人】(500064708)ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション (12)
【Fターム(参考)】