説明

大環状ラクトン化合物およびその使用方法

本発明は、医薬上許容される賦形剤、および式(I)の化合物 [式中、R1、R2、R3、R5、R6 および R8 は各々独立に、H、C1-6 アルキル および OH からなる群から選択されるメンバーである; R4、R7 および R9 は各々独立に、C1-6 アルコキシ および OH からなる群から選択される; R10 は H、-OH、-OP(O)Me2、(II)、-O-(CH2)n-OH および -O-(CH2)m-O-(CH2)o-CH3 からなる群から選択されるメンバーであり、ここで、下付き文字 n および m は各々独立に 2 から 8 であり、下付き文字 o は 1 から 6 である; L1 および L4 の各々は独立に、(III) からなる群から選択される; L2 および L3 の各々は独立に、(IV) からなる群から選択される]; およびその塩、水和物、異性体、代謝産物およびプロドラッグ、を含む医薬組成物を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年9月13日に出願された米国仮出願第60/825,531号の利益を主張し、その開示事項は引用により本明細書に包含される。
【0002】
連邦政府に支援された研究または開発の下でなされた発明についての権利に関する記述
不適用
【0003】
コンパクトディスクで提出された“配列表”、表、またはコンピュータープログラムリストの付属書の参照
不適用
【0004】
発明の分野
本発明は、デメチル、ヒドロキシル、デメチルヒドロキシルおよびエポキシド大環状ラクトンの構造、その合成、医薬組成物、および全身的および部位特異的な治療適応のための使用に関する。
【背景技術】
【0005】
背景
ラパマイシン(シロリムス)は、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクスによって産生される 31-員の天然大環状ラクトン[C51H79N1O13 ; MWt = 914.2 ]であり、1970年代に発見されている(米国特許第3,929,992号; 3,993,749号)。ラパマイシン(構造は下で示される)は1999年に腎臓移植拒絶反応の予防用として食品医薬品局(FDA)によって認可された。
【化1】

【0006】
ラパマイシンはタクロリムスに似ている(同じ細胞内結合タンパク質または FKBP-12 として知られるイムノフィリンに結合する)が、その作用機序が異なる。タクロリムスおよびシクロスポリンが、リンフォカイン(例えば、IL2)遺伝子の転写を妨げることによって T-細胞活性化を阻害する一方、シロリムスは哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)に結合することによって T-細胞活性化および Tリンパ球の増殖を阻害する。ラパマイシンは免疫系の抑制において、シクロスポリンまたはタクロリムスと相乗的に作用することができる。
【0007】
ラパマイシンはまた、全身的エリテマトーデス [米国特許第5,078,999号]、肺炎 [米国特許第5,080,899号]、インスリン依存型糖尿病 [米国特許第5,321,009号]、皮膚障害、例えば乾癬 [米国特許第5,286,730号]、腸障害 [米国特許第5,286,731号]、血管傷害に続く平滑筋細胞の増殖および内膜肥厚 [米国特許第5,288,711号および第5,516,781号]、成人 T-細胞白血病/リンパ腫 [欧州特許出願 525,960 A1]、眼の炎症 [米国特許第5,387,589号]、悪性の癌 [米国特許第5,206,018号]、心臓の炎症性疾患 [米国特許第5,496,832号]、貧血 [米国特許第5,561,138号] および神経突起伸長の増大 [Parker, E. M. et al、Neuropharmacology 39、1913-1919、2000] の予防または治療においても有用である。
【0008】
ラパマイシンは様々な病状を治療するために用いることができるが、該化合物の医薬品としての有用性は、その非常に低くかつ可変の生物学的利用能およびその高い免疫抑制能および潜在的な高い毒性によって制限されている。また、ラパマイシンは水にごく僅かしか溶解しない。これらの問題を乗り越えるため、該化合物のプロドラッグおよび類縁体が合成されてきた。グリシネート、プロピオネート、およびピロリジノブチレート プロドラッグを形成するよう、ラパマイシン構造の位置 31 および 42 (以前は位置 28 および 40)を誘導体化することによって調製される、水溶性のプロドラッグが記載されている(米国特許第4,650,803号)。当該技術分野において記載された幾つかのラパマイシン類縁体は、モノアシルおよびジアシル類縁体(米国特許第4,316,885号)、アセタール類縁体(米国特許第5,151,413号)、シリルエーテル(米国特許第5,120,842号)、ヒドロキシエステル(米国特許第5,362,718号)、およびアルキル、アリール、アルケニル、およびアルキニル類縁体(米国特許第5,665,772号; 5,258,389号; 6,384,046号; WO 97/35575)を含む。
【0009】
ラパマイシンのプロドラッグおよび類縁体は化学合成によって合成され、ここで、特定の位置を保護および脱保護するために付加的な合成工程が必要である。類縁体は生物学的に合成することもでき、ここで、ストレプトマイセスの株はラパマイシンのこのような類縁体を産生するよう遺伝子改変される。類縁体はタンパク質結合または他の細胞相互作用のために必要な位置を維持する必要があり、かつ、その活性を保つために立体障害を生じさせない必要がある。このような類縁体の安全性は、一連の前臨床および臨床実験によって幅広く試験することを要求する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は新規な大環状ラクトンおよび大環状ラクトンについての新規な使用を含み、ここで、組成物は化学的または生物学的に合成することができ、全身的および部位特異的な適用における使用のための、少なくとも幾らかの免疫抑制、抗-増殖、抗-真菌および抗-腫瘍特性を保っている。
【0011】
発明の概要
1つの態様において、本発明は医薬上許容される賦形剤および以下の構造を有する化合物:
【化2】


[式中、 R1、R2、R3、R5、R6 および R8 は各々独立に、H、C1-6 アルキル および OH からなる群から選択されるメンバーである; R4、R7 および R9 は各々独立に、C1-6 アルコキシ および OH からなる群から選択される; R10 は H、-OH、-OP(O)Me2
【化3】

【化4】


、-O-(CH2)n-OH および -O-(CH2)m-O-(CH2)o-CH3 からなる群から選択されるメンバーであり、ここで、下付き文字 n および m は各々独立に 2 から 8 であり、下付き文字 o は 1 から 6 である; L1 および L4 の各々は独立に、以下からなる群から選択される:
【化5】

および
【化6】


; L2 および L3 の各々は独立に、以下からなる群から選択される:
【化7】

【化8】

および
【化9】

]; およびその塩、水和物、異性体、代謝産物およびプロドラッグ、を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
第2の態様において、本発明は体内での(intracorporeal)使用のための装置を提供し、該装置はインプラント;および本発明の化合物の少なくとも1つの供給源を含む。
【0013】
第3の態様において、本発明は、治療上有効な量の本発明の化合物を、それらを必要とする対象に投与することによって細胞増殖を阻害する方法を提供する。
【0014】
第4の態様において、本発明は下記式の大環状ラクトン化合物:
【化10】


[式中、 R1、R2、R3、R5、R6 および R8 は各々独立に、H、C1-6 アルキル および OH からなる群から選択されるメンバーである; R4、R7 および R9 は各々独立に、C1-6 アルコキシ および OH からなる群から選択される; R10 は H、-OH、-OP(O)Me2
【化11】

【化12】


、-O-(CH2)n-OH および -O-(CH2)m-O-(CH2)o-CH3 からなる群から選択されるメンバーであり、ここで、下付き文字 n および m は各々独立に 2 から 8 であり、下付き文字 o は 1 から 6 である; L1 および L4 の各々は独立に、以下からなる群から選択される:
【化13】

および
【化14】


; L2 および L3 の各々は独立に、以下からなる群から選択される:
【化15】

【化16】

および
【化17】


; ただし、R1、R6 および R8 が Me であり、R3 および R5 が H であり、R4、R7 および R9 が OMe であり、R10 が OH であり、L2 および L3 が -CH=CH- であり、L1 および L4
【化18】

である場合、R2 は OH 以外であることを条件とする;

ただし、R1、R6 および R8 が Me であり、R2、R3 および R5 が H であり、R7 および R9 が OMe であり、R10 が OH であり、L2 および L3 が -CH=CH- であり、L1 および L4
【化19】

である場合、R4 は OH 以外であることを条件とする;

ただし、R1、R6 および R8 が Me であり、R2、R3 および R5 が H であり、R4 および R7 が OMe であり、R10 が OH であり、L2 および L3 が -CH=CH- であり、L1 および L4
【化20】

である場合、R9 は OH 以外であることを条件とする;

ただし、R1、R6 および R8 が Me であり、R2、R3 および R5 が H であり、R4、R7 および R9 が OMe であり、L2 および L3 が -CH=CH- であり、L1 および L4
【化21】

である場合、R10 は OH、-OP(O)Me2
【化22】

【化23】


、-O-(CH2)n-OH および -O-(CH2)m-O-(CH2)o-CH3 以外であることを条件とする]; およびその塩、水和物、異性体、代謝産物およびプロドラッグ、を提供する。
【0015】
第5の態様において、本発明は、本発明の化合物を製造する方法、大環状ラクトンを酸と接触させてアルコキシ基を求核剤で置換し、それによって本発明の化合物を製造することを含む方法を提供する。
【0016】
第6の態様において、本発明は、本発明の化合物を製造する方法、大環状ラクトンをエポキシ化剤と接触させてアルケン基をエポキシドへ改変し、それによって本発明の化合物を製造することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図 1 は本発明の化合物を提供するための化学修飾が可能ないくつかの部位を有する大環状ラクトンの構造を示す。四角で印を付けられた領域はデメチル化のための部位であり、円で印を付けられた領域はヒドロキシル化のための部位であり、C=C 部位(C17=C18、C19=C20=、C21=C22、C29=C30)はエポキシ化のための部位である。
【図2】図 2A-2AZ は本発明の化合物を示す。
【図3】図 3 は拡張可能な構造を有するステントの立体配置の例を示す。
【図4】図 4 は化合物 AR の分取用 HPLC クロマトグラムを示す。
【図5】図 5 は化合物 AR のプロトン-NMR スペクトルを示す。
【図6】図 6 は化合物 AR の液体クロマトグラフィーの結果および質量スペクトルを示す。
【図7】図 7(a) は化合物 AR の分析用 HPLC クロマトグラムを示す。図 7(b) は異性体を伴う化合物 AR の分析用 HPLC クロマトグラムを示す。
【図8】図 8 は様々な濃度のラパマイシンおよび化合物 AR への曝露後のヒト平滑筋細胞増殖の百分率を示す。
【図9】図 9 はブタ冠動脈モデルにおける植込みから 28 日後の、定量的冠動脈造影(QCA)によって評価する、ラパマイシン溶出 Cypher ステントと比較しての化合物 AR 溶出ステントの狭窄を示す。
【図10】図 10 はブタ冠動脈モデルにおける異なる時点での化合物 AR の組織中の濃度を示す。
【図11】図 11 はブタ冠動脈モデルにおいてステントから放出された化合物 AR の百分率を示す。
【図12】図 12(a) は、活性化マクロファージによって放出される IL-6、MMP-9 および MCP-1 の、10nM の濃度で大環状ラクトン化合物 AR およびシロリムスに曝露する事による阻害を示す。図 12(b) は、活性化マクロファージによって放出される IL-10 の、10nM の濃度で大環状ラクトン化合物 AR およびシロリムスに曝露する事による阻害を示す。
【図13】図 13 は様々な濃度の 17,18-29,30-ビス-エポキシド大環状ラクトンおよび化合物 AR への曝露後のヒト平滑筋細胞増殖の百分率を示す。
【図14】図 14 は本発明の 16-O-デメチル大環状ラクトンの合成を示す。
【図15】図 15 は 19,20 ビス-ヒドロキシ大環状ラクトンの合成を示す。
【図16】図 16 は 17,18-29,30-ビス エポキシド大環状ラクトンの合成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
I. 定義
本明細書において用いる場合、“酸”という語は、水に溶解した場合に 7.0 より低い pH を有する溶液をもたらすあらゆる化学的化合物をいう。酸は一般的に、水素イオン(H+)を供与する化合物(ブレンステッド-ローリー)として、または電子対受容体(ルイス酸)として説明される。本発明において有用な酸は、これらに限定されないが、HCl、H2SO4、HNO3 および 酢酸を包含する。当業者は、本発明において他の酸が有用であることを理解するであろう。
【0019】
本明細書において用いる場合、“投与”という語は、対象への全身および局所投与、またはそれらの組み合わせ、例えば経口投与、坐薬としての投与、局所接触(topical contact)、非経口、血管内、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、鼻腔内、肺、粘膜、経皮、皮下投与、髄腔内投与、一時的装置(temporary device)、例えばカテーテル、多孔質バルーン(porous balloon)を通した送達、インプラント、例えば浸透圧ポンプ、補綴、例えば薬剤溶出ステントを通した送達、またはその他の方法を言う。当業者は、本発明の化合物を投与する他の様式および方法が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0020】
本明細書において用いる場合、“アルコキシ”という語は、酸素原子を包含するアルキル、例えば、メトキシ、エトキシ等を言う。“ハロ-置換-アルコキシ(Halo-substituted-alkoxy)”は水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されているアルコキシとして定義される。例えば、ハロ-置換-アルコキシはトリフルオロメトキシ等を含む。当業者は、他のアルコキシ基が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0021】
本明細書において用いる場合、“アルキル”という語は、示される数の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の、飽和した、脂肪族基(ラジカル)をいう。例えば、C1-C6 アルキルは、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソ-プロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、等を含む。当業者は、他のアルキル基が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0022】
本明細書において用いる場合、“体の内腔(body lumen)”という語は、動脈、静脈または器官の内張りまたは空洞をいう。
【0023】
本明細書において用いる場合、“接触”という語は、少なくとも2つの異なる化学種を、それらが反応できるように接触させる過程をいう。しかしながら、結果として生じる反応生成物は、添加された試薬間の反応から直接に、または添加された1もしくはそれより多い試薬から反応混合物中で生成され得る中間体から、生成され得ることが理解されるべきである。
【0024】
本明細書において用いる場合、“水和物”という語は、少なくとも1の水分子と複合している化合物をいう。本発明の化合物は、1 から 100 の水分子と複合し得る。
【0025】
本明細書において用いる場合、“インプラント”という語は、症状を治療するために体に挿入される医療装置をいう。インプラントは、これらに限定されないが、薬剤-溶出装置を含む。
【0026】
本明細書において用いる場合、“阻害”、“阻害する”および“阻害剤”という語は、特定の作用または機能を制止し、減少させ、減弱させまたは軽減する化合物、または、制止し、減少させ、減弱させまたは軽減する方法をいう。
【0027】
本明細書において用いる場合、“体内の(intracorporeal)”という語は、哺乳類の体をいう。
【0028】
本明細書において用いる場合、“異性体”という語は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合、ラセミ体、ジアステレオマー、エナンチオマー、幾何異性体、構造異性体を有する本発明の化合物を言い、個々の異性体は全て本発明の範囲内に含まれることを意図される。
【0029】
本明細書において用いる場合、“器官”という語は、哺乳類のあらゆる器官、例えば、これらに限定されないが、心臓、肺、脳、眼、胃、脾臓、骨、膵臓、腎臓、肝臓、腸管、子宮、結腸、卵巣、血液、皮膚、筋肉、組織、前立腺、乳房および膀胱をいう。当業者は、他の器官が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0030】
本明細書において用いる場合、“過酸”という語は、酸性の -OH 基が -OOH 基で置換されている酸をいう。過酸は式 R-C(O)-OOH のペルオキシ-カルボン酸であり得、ここで、R 基は例えば、H、アルキル基、アルケン基またはアリール基であり得る。過酸は、これらに限定されないが、ペルオキシ-酢酸およびメタ-クロロ-ペルオキシ安息香酸(MCPBA)を含む。当業者は、他の過酸が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0031】
本明細書において用いる場合、“過酸化物”という語は、酸素-酸素 単結合を含有する化合物をいう。過酸化物の例は、これらに限定されないが、過酸化水素を含む。当業者は、他の過酸化物が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0032】
本明細書において用いる場合、“医薬上許容される賦形剤”という語は、活性物質の対象への投与および対象による吸収を助ける物質をいう。本発明において有用な医薬賦形剤は、これらに限定されないが、ポリマー、溶媒、抗酸化剤、結合剤、充填剤(fillers)、崩壊剤、潤滑剤、被覆剤、甘味料、香料、安定化剤、着色料、金属、セラミックおよび半金属を含む。医薬上許容される賦形剤のさらなる考察については以下を参照されたい。当業者は、他の医薬賦形剤が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0033】
本明細書において用いる場合、“ポリマー”という語は、共有化学結合によって連結している、繰り返す構造単位またはモノマー、で構成される分子をいう。本発明において有用なポリマーは以下に記載される。当業者は、他のポリマーが本発明において有用であることを理解するであろう。
【0034】
本明細書において用いる場合、“プロドラッグ”という語は、哺乳類の対象に投与された場合に本発明の方法の活性物質を放出することができる化合物をいう。活性成分の放出は生体内で起こる。プロドラッグは当業者に公知の手法によって調製することができる。これらの手法は一般的に、所与の化合物において適切な官能基を修飾する。しかし、これらの修飾された官能基は、常套の操作により、または生体内で、元の官能基を再生する。本発明の活性物質のプロドラッグは、ヒドロキシ、アミジノ、グアニジノ、アミノ、カルボキシまたは類似の基が修飾されている活性物質を含む。
【0035】
本明細書において用いる場合、“塩”という語は、本発明の方法において用いられる化合物の酸性または塩基性塩をいう。医薬上許容される塩の具体例は、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)塩、四級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、など)塩である。適当な医薬上許容される塩についてのさらなる情報は、Remington's Pharmaceutical Sciences、17th ed.、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985 の中に見られ、それは引用により本明細書に包含される。
【0036】
本発明の酸性化合物の医薬上許容される塩は、塩基と共に形成される塩、すなわちカチオン性塩、例えばアルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、および、アンモニウム塩、例えばアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリス-(ヒドロキシメチル)-メチル-アンモニウム塩である。
【0037】
塩基性の基、例えばピリジルが構造の一部を構成するならば、同様に酸付加塩、例えば鉱酸、有機カルボン酸および有機スルホン酸、例えば、塩酸、メタンスルホン酸、マレイン酸の酸付加塩も可能である。
【0038】
化合物の中性型は、塩を塩基または酸と接触させて、常套の方法で親化合物を単離することによって再生され得る。化合物の親型は、様々な塩の型とは一定の物理的性質、例えば極性溶媒への溶解度が異なるが、それ以外の点では、塩は、本発明の目的のための化合物の親型と同等である。
【0039】
本明細書において用いる場合、“供給源(source)”という語は、本発明の化合物の供給または治療剤の供給を提供する、本発明の装置上の部位をいう。本発明の装置は、1より多い供給源、例えば第1および第2の供給源を有し得る。各々の供給源は、種々の化合物および組成物を有することができ、種々の適応症を治療するために用いられ得る。
【0040】
本明細書において用いる場合、“対象”という語は、動物、例えば哺乳類をいい、これらに限定されないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含む。特定の態様において、対象はヒトである。
【0041】
本明細書において用いる場合、“治療剤”という語は、該治療剤が投与される患者に治療効果を有するあらゆる剤、化合物または生物学的分子をいう。
【0042】
本明細書において用いる場合、“治療上有効な量または用量”または“治療上十分な量または用量”または“有効または十分な量または用量”という語は、治療効果を生じる用量を言い、その治療効果を目的として用量が投与される。的確な用量は治療目的に依存し、公知の手法を用いて当業者によって確かめられ得る(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms (vols.1-3、1992); Lloyd、The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar、Dosage Calculations (1999); および Remington: The Science and Practice of Pharmacy、20th Edition、2003、Gennaro、Ed.、Lippincott、Williams & Wilkins を参照)。感作された細胞において、治療上有効な用量は多くの場合、非-感作細胞のための通常の治療上有効な用量よりも低くありうる。
【0043】
本明細書において用いる場合、“血管補綴”という語は、哺乳類の循環器系のための補綴をいう。
【0044】
II. 本発明の化合物
本発明においては、大環状ラクトン、その塩、プロドラッグ、および異性体はまとめて“大環状ラクトン”として称される。
【0045】
本発明の化合物は、下記式の大環状ラクトン化合物:
【化24】


[式中、R1、R2、R3、R5、R6 および R8 は各々独立に H、C1-6 アルキル および OH からなる群から選択されるメンバーである; R4、R7 および R9 は各々独立に C1-6 アルコキシおよび OH からなる群から選択される; R10 は H、-OH、-OP(O)Me2
【化25】

【化26】


、-O-(CH2)n-OH および -O-(CH2)m-O-(CH2)o-CH3 からなる群から選択されるメンバーであり、ここで、下付き文字 n および m は各々独立に 2 から 8 であり、下付き文字 o は 1 から 6 である; L1 および L4 の各々は独立に、以下からなる群から選択される:
【化27】

および
【化28】


; L2 および L3 の各々は独立に以下からなる群から選択される:
【化29】

【化30】

および
【化31】


;ただし、R1、R6 および R8 が Me であり、R3 および R5 が H であり、R4、R7 および R9 が OMe であり、R10 が OH であり、L2 および L3 が -CH=CH- であり、L1 および L4
【化32】

である場合、R2 は OH 以外であることを条件とする;

ただし、R1、R6 および R8 が Me であり、R2、R3 および R5 が H であり、R7 および R9 が OMe であり、R10 が OH であり、L2 および L3 が -CH=CH- であり、L1 および L4
【化33】

である場合、R4 は OH 以外であることを条件とする;

ただし、R1、R6 および R8 が Me であり、R2、R3 および R5 が H であり、R4 および R7 が OMe であり、R10 が OH であり、L2 および L3 が -CH=CH- であり、L1 および L4
【化34】

である場合、R9 は OH 以外であることを条件とする;

ただし、R1、R6 および R8 が Me であり、R2、R3 および R5 が H であり、R4、R7 および R9 が OMe であり、L2 および L3 が -CH=CH- であり、L1 および L4
【化35】

である場合、R10 は OH、-OP(O)Me2
【化36】

【化37】


、-O-(CH2)n-OH および -O-(CH2)m-O-(CH2)o-CH3 以外であることを条件とする];およびその塩、水和物、異性体、代謝産物およびプロドラッグ、である。
【0046】
いくつかの態様において、R10
【化38】

である。

他のいくつかの態様において、R10
【化39】

である。

他の態様において、R10 は -OP(O)Me2 である。

さらに他の態様において、R10
【化40】

である。

別の態様において、R10
【化41】

である。
【0047】
さらなる態様において、化合物は 図 2 の化合物である。他の態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8 および R9 のうち少なくとも1つは OH である。さらなる他の態様において、R4 は OH である。
【0048】
本発明は、式 IA、IB および IC で詳細に表される大環状ラクトン化合物を提供する。
【0049】
一つの態様において、組成物は、ヒドロキシ、デメチル、ヒドロキシデメチルおよびエポキシド大環状ラクトンを含む、大環状ラクトンを含有する。
【0050】
本発明の化合物を生成するための化学修飾が可能ないくつかの部位を有する特定の大環状ラクトンの構造は、以下に示される。
【化42】

[式中、R10 は -OH、
【化43】

【化44】


、-OP(O)Me2 、-RaOH、および RbORc からなる群から選択されるメンバーであり、ここで Ra は アルキル、例えば -(CH2)2 から (CH2)7 であり、Rb は C2-6 アルキレンであり、Rc は C1-5 アルキルであり、例えば 40-O-(エトキシエチル)ラパマイシンである]。
【0051】
いくつかの態様において、本発明の化合物は、式 IA に示される通り、特定のデメチル大環状ラクトン、例えば 16-O-デメチル大環状ラクトン、39-O-デメチル大環状ラクトン、27-O-デメチル大環状ラクトン、16,27-ビス-O-デメチル大環状ラクトン、27,39-ビス-O-デメチル大環状ラクトン、16,39-ビス-O-デメチル大環状ラクトンを、個別にまたは互いに組み合わせて包含する。
式 IA
【化45】


[式中、
R4、R7 および R9 の各々は -OCH3 および -OH からなる群から選択される。
R4 および R7 は共に、独立して、-OH および -OCH3 からなる群から選択される。
R7 および R9 は共に、独立して、-OH および -OCH3 からなる群から選択される。
R4 および R9 は共に、独立して、-OH および -OCH3 からなる群から選択される。
R4、R7 および R9 は各々独立して、-OH および -OCH3 からなる群から選択される。]
【0052】
さらに、ここで R10 は 上記の通りである。
【0053】
別の態様において、本発明の化合物は、式 IB に示される通り、ヒドロキシル大環状ラクトン、例えば、11-ヒドロキシル大環状ラクトン、12-ヒドロキシル大環状ラクトン、14-ヒドロキシル大環状ラクトン、24-ヒドロキシル大環状ラクトン、25-ヒドロキシル大環状ラクトン、35-ヒドロキシル大環状ラクトン、の組成物を、個別にまたは互いに組み合わせて包含する。
式 IB
【化46】

[式中、
R1、R6 および R8 の各々は、-CH3 および -OH からなる群から選択される。
R2、R3 および R5 の各々は、-H および -OH からなる群から選択される。]
【0054】
さらに、ここで R10 は上記の通りである。
【0055】
別の態様において、本発明の化合物は、式 IC に示される通り、エポキシド大環状ラクトン、例えば、19,20-21,22-29,30 トリスエポキシド大環状ラクトン、17,18-19,20-21,22 トリスエポキシド大環状ラクトンおよび 17,18-29,30 ビスエポキシド大環状ラクトン、の組成物を包含する。
式 IC
【化47】

【化48】

【化49】

【0056】
さらに、ここで R10 は上記の通りである。
【0057】
別の態様において、本発明の化合物は、式 IA および 式 IB の組み合わせであり、デメチルヒドロキシ大環状ラクトン、例えば、14-ヒドロキシ-39-O-デメチル大環状ラクトン、16,39-ビス-O-デメチル-24-ヒドロキシ大環状ラクトン、16,27-ビス-O-デメチル-24-ヒドロキシ大環状ラクトン、27,39-ビス-O-デメチル-24-ヒドロキシ大環状ラクトンの、個別のまたは互いに組み合わせての組成物を包含する。
【0058】
別の態様において、本発明の化合物は、式 IA および 式 IC の組み合わせであり、エポキシドデメチル大環状ラクトン、例えば 17,18-19,20-ビス-エポキシド-16-O-デメチル大環状ラクトン、17,18-29,30-ビス-エポキシド-16-O-デメチル大環状ラクトンの、個別のまたは互いに組み合わせての組成物を包含する。
【0059】
さらに別の態様において、本発明の化合物は、式 IA、式 IB および 式 IC の組み合わせであり、エポキシド デメチルヒドロキシル大環状ラクトン、例えば、17,18-19,20-ビス-エポキシド-16-O-デメチル-24-ヒドロキシ-大環状ラクトン、17,18-29,30-ビス-エポキシド-16-O-デメチル-24-ヒドロキシ-大環状ラクトンの、個別のまたは互いに組み合わせての組成物を包含する。
【0060】
本発明はまた、式 IA、IB および IC の本発明の化合物の水和物、塩、異性体、プロドラッグ、代謝産物および誘導体の組成物をも包含する。
【0061】
式 IA、IB および IC、およびそれらの組み合わせの本発明の化合物の中で、好ましい態様の構造(A、B、C、…AA、AB、AC、…AX、AY、AZ)は、いくつかが 図 2A-2AZ に示されると共に、表 1 に示される。

表 1 好ましい化合物の表
【化50】

【表1−1】



【表1−2】







【表1−3】

* ラパマイシン。 全ての -OH 置換は、R および S 異性体両者の混合物を表す。
【0062】
いくつかの態様において、本発明の化合物は以下の構造を有する:
【化51】

【0063】
本発明は、16-位の立体化学がラセミ(R、S)である化合物、および個々の、16-位における R および S 立体異性体、および該化合物の他の全ての異性体を含む。
【0064】
本発明は、様々な多形形態(polymorphic forms)を有する化合物を含む。これは様々な多形形態(polymorphic forms)を有する16-O-デメチル大環状ラクトンを包含する。例えば、16-O-デメチル大環状ラクトンの様々な多形形態(polymorphic forms)は、ジクロロメチレンの使用から、およびメタノールと水の混合物の使用から得られる。
【0065】
大環状ラクトンについて提案される番号付与方式は様々なものが存在する。混乱を避けるため、本明細書において特定の大環状ラクトンが命名される場合、該名称は上記化学式の番号付与方式を用いる大環状ラクトンを基準にして与えられる。本発明はまた、化学構造内の同じ位置に同じ官能基が存在するのであれば、異なる番号付与方式によって異なる名称を有する全ての大環状ラクトンを含む。例えば、39-O-デメチル大環状ラクトンは 41-O-デメチル大環状ラクトンと同一の化合物であり、16-O-デメチル大環状ラクトンは 7-O-デメチル大環状ラクトンと同一の化合物である。
【0066】
本発明の化合物は、様々な方法によって調製することができる。いくつかの態様において、本発明の化合物は、本発明の化合物を産生するように生物の株を遺伝的に改変すること又はその他の方法によって生物学的に合成される。
【0067】
別の態様において、本発明の化合物は、化学合成を用いて調製される。本発明の化合物の化学合成は、大環状ラクトン内の 17-18,19-20,21-22 トリエン構造を利用し得、その構造は C16 メトキシ基の酸触媒求核置換を促進し、多くの異なる置換の導入を可能にし、大環状ラクトンのエフェクタードメインの選択的操作を可能にする。大環状ラクトン内の C16 メトキシ基は酸性試薬に向かって処置され、本発明の化合物を産生する。例えば、様々な求核剤、例えばアルコール、チオールおよび電子豊富な芳香族基での C16 メトキシ基の置換が達成され得る。この合成方法は、保護および脱保護の工程なしで実行され得る。
【0068】
トリエン官能基を有する化合物と共に酸性試薬を用いる合成方法は、対応する化合物の類縁体を合成するため、トリエン官能基を有する他の化合物に適用され得、保護および脱保護の工程なしの合成方法を提供する。
【0069】
いくつかの態様において、本発明は、本発明の化合物を製造する方法であって、大環状ラクトンを酸と接触させてアルコキシ基を求核剤で置換すること、それによって本発明の化合物を製造することを含む方法を提供する。他のいくつかの態様において、大環状ラクトンはラパマイシンである。他の態様において、求核剤は -OH、-SH および 電子豊富な芳香族基からなる群から選択されるメンバーである。当業者は、他の方法が本発明の化合物を調製するために有用であることを理解するであろう。
【0070】
デメチル大環状ラクトンの合成は、一つの例として 16-O-デメチル大環状ラクトンを用いて 図 14 に提供される。ヒドロキシ大環状ラクトンの合成は、一つの例として 19,20 ビス-ヒドロキシ大環状ラクトンを用いて 図 15 に提供される。エポキシド大環状ラクトンの合成は、一つの例として 17,18-29,30-ビスエポキシド大環状ラクトンを用いて 図 16 に提供される。
【0071】
別の態様において、本発明は、本発明の化合物を製造する方法、大環状ラクトンを適切な剤、例えば過酸または過酸化物と接触させて、アルケン基をエポキシドへ改変し、それによって本発明の化合物を製造することを含む方法を提供する。本発明の方法において有用な過酸は、これらに限定されないが、式 R-C(O)-OOH のペルオキシ-カルボン酸を含み、ここで、R 基は例えば H、アルキル、アルケンまたはアリールなどの基であり得る。いくつかの態様において、過酸はペルオキシ-酢酸またはメタ-クロロ-ペルオキシ安息香酸(MCPBA)であり得る。本発明の方法において有用な過酸化物は、これに限定されないが、過酸化水素を含む。当業者は、他のエポキシ化試薬が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0072】
本発明の化合物は、所望により重水素化される。
【0073】
いくつかの態様において、本発明は、対応する親の大環状ラクトンと同様の効力を有する、本発明の化合物を提供する。別の態様において、本発明は、化合物の安全性プロファイルを改善するために、対応する親の大環状ラクトンよりも効力の低い本発明の化合物を提供する。
【0074】
III. 本発明の化合物の送達
本発明の化合物は、あらゆる適切な様式で投与され得る。いくつかの態様において、化合物は、経口、筋肉内、腹腔内、皮下、肺内、粘膜、経皮、血管内およびその他の様式で投与される。他の態様において、化合物は、一時的または持続的な薬物送達手段、または全身的および部位特異的手段の組み合わせ、を介して部位特異的に投与される。例は、これらに限定されないが、カテーテル、ステント、バスキュラーラップ(vascular wrap)、ポンプ、シャント、または他の一時的または持続的な薬物送達手段を包含する。
【0075】
A. 装置
いくつかの態様において、本発明は、体内での使用のための装置、血管補綴を含む装置;および少なくとも1つの本発明の化合物の供給源を含む装置を提供する。
【0076】
他の態様において、本発明は、細胞増殖または細胞遊走を阻害するため、体の内腔または器官に対し、体内において(within intracorporeal body)化合物を放出するよう構成されている装置を提供する。さらなる態様において、該装置は、平滑筋細胞の増殖を阻害するため、体の内腔または生物に対し、体内において(within an intracorporeal body)化合物を放出するよう構成されている。
【0077】
本発明の別の態様において、薬物送達手段は装置、例えば、移植片(graft)インプラント、血管インプラント、非-血管インプラント、植込み型管腔補綴、創傷閉鎖インプラント、薬物送達インプラント、縫合糸、生物学的送達インプラント、尿路インプラント、子宮内インプラント、器官インプラント、眼部(ophthalmic)インプラント、骨プレート、骨ネジを含む骨インプラント、歯科インプラント、椎間板補綴(spinal disks)、などを含むインプラントである。
【0078】
インプラントは通常、以下の1または複数を可能にする: 病状、例えば、過剰増殖性疾患、再狭窄、循環器疾患、炎症、創傷治癒、癌、動脈瘤、糖尿病、腹部大動脈瘤、高カルシウム血症、などの予防または治療のために、体の内腔、器官、血管、導管、筋肉、組織塊または骨に対し、支持し、含有し、まとめ、貼付し、栓をし、閉じ、維持し、薬剤を送達し、生物製剤を送達すること。
【0079】
本発明のインプラントは、金属、合金、ポリマー、セラミック、半金属、ナノ複合材料またはそれらの組み合わせで形成され得る。例えば、インプラントは金属、例えばタンタル、鉄、マグネシウム、モリブデンなど; 分解性または非分解性合金、例えば 316L ステンレス鋼、炭素鋼、マグネシウム合金、NI-Ti、Co-Cr 例えば L605、MP35 など; 分解性または非分解性のポリマー、例えば ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエステル、ポリアミド、コポリマーなど、または複数のポリマーの混合物; 金属と、金属または合金の組み合わせ、例えばステンレス鋼とタンタルの層の組み合わせなどから作成されるインプラント; ナノ複合材料、例えば ナノ炭素繊維またはカーボンナノチューブ(nano carbon tubules)など、から作成することができる。
【0080】
別の態様において、本発明は装置を提供し、ここで、インプラントは血管補綴である。いくつかの態様において、血管補綴は拡張可能な構造を含む。他の態様において、血管補綴は ステント、移植片、または少なくとも部分的には開いた格子(open lattice)から形成される足場、を含む。さらに他の態様において、血管補綴はステントである。
【0081】
別の態様において、本発明の化合物はインプラントの表面に隣接して適用され得る。例えば、本発明の化合物はインプラント内に、または被覆剤の中に含まれて、またはインプラント上で運ばれて、組み込まれ得る。
【0082】
いくつかの態様において、本発明は血管補綴を含む装置を提供し、ここで、血管補綴は管腔側および組織に面する表面を有し、ここで、化合物は管腔側または組織に面する表面の少なくとも一方に結合する。
【0083】
さらなる態様において、本発明の化合物は、全てのインプラントの表面上で適用される。別の態様において、本発明の化合物は、反管腔側または管腔側の表面に対してのみ適用される。さらに別の態様において、本発明の化合物は、高応力または低応力領域に対してのみ適用される。
【0084】
別の態様において、本発明の化合物は、インプラントに隣接する、1または複数の、腐食性または非腐食性の線維内に含有される。
【0085】
本発明の化合物を運搬するためのステントの立体構造の一例は、図 3 に収縮状態で示される。該ステント本体は、複数のリング 110 で形成される。該リングは、一般的に拡張可能な波状の立体構造、例えば、ジグザグ、鋸歯状、正弦波などにおいて、頂上部 120 および 支柱 130 で形成される。該本体は、連結部または接合部 140 によって結合している。該接合部は、いかなる長さまたは形であっても良く、または頂上部が互いに直接付着している場合には必要とされなくても良い事が理解されている。該ステントは、標準的な収縮状態で 0.25 - 4mm の間またはより好ましくは 0.7 から 1.5mm の間の直径、および 5 から 100 mm の間の長さを有する。拡張状態においては、該ステントの直径は標準的には収縮状態のステント直径の少なくとも2倍であり、10 倍以上である。従って、0.7 から 1.5mm の間の収縮状態の直径を有するステントは 2 から 10mm 以上にまで放射状に拡張し得る。
【0086】
強力な大環状ラクトン化合物、例えばラパマイシンを有する薬剤溶出ステント(Cypher(商標))は、およそ 4ヶ月から12 ヶ月の血管造影経過観察において、およそ 0.01 mm から 0.2 mm の範囲の遠隔期損失径(late lumen loss)を生じた。同じ期間の間の地金ステントの遠隔期損失径(late lumen loss)は、およそ 0.70 mm から 1.2 mm の範囲であった。遠隔期損失径(late lumen loss)の低さは通常、狭窄の割合を低下させる。しかし、薬剤溶出ステントの、地金ステントと比較して著しく低い遠隔期損失径(late lumen loss)は、いくつかの場合において、組織によるステント表面の被覆を不十分にし、それが遅発性ステント血栓症の発生率を潜在的に増大させ得る。
【0087】
好ましい態様において、本発明の化合物を保有するステントについての、植込みからおよそ 4 から 12 ヶ月後の遠隔期損失径(late lumen loss)は、対応する親の大環状ラクトンを保有するステントについての遠隔期損失径(late lumen loss)よりも 0.05 mm から 0.6 mm、好ましくは 0.1 mm から 0.4 mm、より好ましくは 0.15 から 0.3 mm 大きい。例えば、植込み後の遠隔期損失径(late lumen loss)は 0.01 mm から 0.6 mm、好ましくは 0.1 mm から 0.5 mm、もっとも好ましくは 0.2 mm から 0.4 mm の範囲である。別の態様において、本発明は、対応する親の大環状ラクトンを保有するステントに似た、本発明の化合物を保有するステントについての遠隔期損失径(late lumen loss)を提供する。別の好ましい態様において、本発明は、本発明の化合物を保有するステントについての、対応する親の大環状ラクトンを保有するステントよりも高い遠隔期損失径(late lumen loss)を提供する。より高い遠隔期損失径(late lumen)は組織によるステントの被覆を増大させ得、そのことがステントの安全性を改善し得る。
【0088】
別の好ましい態様において、植込みからおよそ 4 から 12 ヶ月後の、本発明の化合物を保有するステントについての狭窄の割合は、対応する親の大環状ラクトンを保有するステントについての狭窄の割合よりも 1 から 30 パーセント、好ましくは 3 から 20 パーセント、より好ましくは 5 から 15 パーセント高い。さらに別の好ましい態様において、本発明は、対応する親の大環状ラクトンを保有するステントに似た、本発明の化合物を保有するステントについての狭窄の割合を提供する。別の好ましい態様において、本発明は、本発明の化合物を保有するステントについての、対応する親の大環状ラクトンを保有するステントよりも高い狭窄の割合を提供する。別の好ましい態様において、本発明の化合物を保有するステントについての狭窄の割合は、対応する親の大環状ラクトンを保有するステントよりも高いが、地金ステントよりも低い。より高い狭窄は、組織によるステントの被覆を増大させ得、そのことがステントの安全性を改善し得る。
【0089】
いくつかの態様において、本発明は、インプラント上の本発明の化合物の量が 約 1 g/cm2 よりも少ない装置を提供する。他の態様において、インプラント上の化合物の量は、約 1 ナノグラム/cm2 から 約 1000 マイクログラム/cm2、好ましくは 約 1 マイクログラム/cm2 から 約 500 マイクログラム/cm2、より好ましくは 約 10 マイクログラム/cm2 から 約 400 マイクログラム/cm2 の範囲であり得る。
【0090】
さらなる態様において、本発明は、インプラントに隣接する組織における本発明の化合物の濃度が、約 0.001 ng/gm組織 から 約 1000 μg/gm組織、好ましくは 約 1 ng/gm組織 から 約 500 μg/gm組織、より好ましくは 約 100 ng/gm組織 から 約 100 μg/gm組織である装置を提供する。
【0091】
別の態様において、本発明の化合物は、1 日 から 2 年、好ましくは 3 日 から 6 ヶ月、より好ましくは 1 週間 から 3 ヶ月の範囲の期間の間、インプラントから放出され得る。別の態様において、本発明の化合物は、1 日を超える、好ましくは 2 週間を超える、より好ましくは 1 ヶ月を超える期間の間、インプラントから放出され得る。別の態様において、本発明の化合物は、ステントから完全に放出されきるのに 2 年を超える期間を要し得る。いくつかの態様において、所与の期間の間に放出される化合物の量は少なくとも 25%である。他の態様において、放出される化合物の量は、少なくとも 50%である。さらに他の態様において、放出される化合物の量は少なくとも 75%である。さらなる他の態様において、放出される化合物の量は少なくとも 80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98 または 99%であり得る。
【0092】
さらなる態様において、本発明は、約 1 日 から 約 2 年の期間の間に、化合物の少なくとも 75% が放出される装置を提供する。別の態様において、約 3 日 から 約 6 ヶ月の期間の間に、化合物の少なくとも 90% が装置から放出される。さらに別の態様において、約 1 週間 から 約 3 ヶ月の期間の間に、化合物の少なくとも 90% が装置から放出される。
【0093】
いくつかの態様において、本発明は、治療剤、例えば以下に記載するものをさらに包含する装置を提供する。他のいくつかの態様において、治療剤は、化合物の放出に先立って、同時に、またはその後に放出される。他の態様において、化合物は第1の供給源から放出され、治療剤は第2の供給源から放出される。さらに他の態様において、化合物および治療剤は単一の供給源から放出される。
【0094】
B. 投与
本発明の化合物は、連日、間欠または単回(one-time dose)投与に基づいて、全身投与され得る。全身的連日投与の用量は、1日あたり 0.1 mg から 20 mg、好ましくは 0.5 mg から 10 mg、もっとも好ましくは 1 mg から 5 mg の範囲であり得る。当業者は、本発明において他の用量も有用であることを理解するであろう。
【0095】
本発明の化合物は、約 1 ナノグラム/cm2/日 から 約 1000 マイクログラム/cm2/日、好ましくは 約 1 マイクログラム/cm2/日 から 約 200 マイクログラム/cm2/日、より好ましくは 約 5 マイクログラム/cm2/日 から 約 100 マイクログラム/cm2/日 の範囲の速度でインプラントから放出され得る。
【0096】
C. 医薬製剤
いくつかの態様において、本発明は医薬上許容される賦形剤および下記式の化合物:
【化52】


[式中、R1、R2、R3、R5、R6 および R8 は各々独立に H、C1-6 アルキル および OH からなる群から選択されるメンバーである; R4、R7 および R9 は各々独立に C1-6 アルコキシ および OH からなる群から選択される; R10 は H、-OH、-OP(O)Me2
【化53】

【化54】


、-O-(CH2)n-OH および -O-(CH2)m-O-(CH2)o-CH3 からなる群から選択されるメンバーであり、ここで、下付き文字 n および m は各々独立に 2 から 8 であり、下付き文字 o は 1 から 6 である; L1 および L4 の各々は独立に、以下からなる群から選択される:
【化55】

および
【化56】


; L2 および L3 の各々は独立に、以下からなる群から選択される:
【化57】

【化58】

および
【化59】

]; およびその塩、水和物、異性体、代謝産物およびプロドラッグ、を含む医薬組成物を提供する。
【0097】
いくつかの態様において、本発明は医薬組成物を提供し、ここで、医薬上許容される賦形剤はポリマー、溶媒、抗酸化剤、結合剤、充填剤(filler)、崩壊剤、潤滑剤、被覆剤、甘味料、香料、安定化剤、着色料、金属、セラミックおよび半金属からなる群から選択されるメンバーである。他の態様において、医薬上許容される賦形剤はポリマーである。
【0098】
本発明の有効成分は、投与様式および剤形の性質に応じて、医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または媒体、例えば保存剤、充填剤(fillers)、ポリマー、崩壊剤、流動促進剤(glidants)、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、香味料、芳香剤、潤滑剤、酸性化剤、および分散化剤(dispensing agents)と混合され得る。経口剤を製剤するために用いられ得る医薬上許容される担体および賦形剤を包含するそのような成分は、Handbook of Pharmaceutical Excipients、American Pharmaceutical Association (1986)に記載されており、引用により全体が本明細書に包含される。医薬上許容される担体の例は、水、エタノール、ポリオール、植物油、脂肪、ワックス、ゲル形成および非-ゲル形成ポリマーを含むポリマー、およびそれらの適切な混合物を包含する。賦形剤の例は、デンプン、アルファ化デンプン、アビセル(Avicel)、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、およびレーキ混合物を包含する。崩壊剤の例は、デンプン、アルギン酸、および一定の複合ケイ酸塩を包含する。潤滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、滑石、および高分子量ポリエチレングリコールを包含する。当業者は、他の様々な賦形剤が本発明による製剤に用いられ得ること、および本明細書において提供されるリストが網羅的でないことを理解するであろう。
【0099】
適切な非分解性または遅分解性のポリマー被覆は、これらに限定されないが、他の合成または天然の重合物質を含む、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、エチレンビニルアルコール コポリマー、シリコーン、C-flex、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パリレン、パリラスト、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸n-ブチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)コポリマー、またはポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸 2-ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸エチレングリコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリカーボネート、ポリアクリルアミドゲルなどとブレンドされたもの; それらの混合物、コポリマー、または組み合わせ、を包含する。
【0100】
適切な生分解性ポリマー被覆は、これらに限定されないが、ポリ(乳酸)、ポリラクテート、ポリ(グリコール酸)、ポリグリコレートおよびコポリマーおよび異性体、ポリジオキサノン、ポリ(グルタミン酸エチル)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリヒドロキシバレレートおよびコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物、ポリ(オルトエステル); ポリ(エーテルエステル)、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ (炭酸トリメチル)、ポリ炭酸エチレン、ポリ(炭酸エチレン)とポリ(炭酸トリメチル)のコポリマー、ポリ(炭酸プロピレン)、ポリ(イミノ炭酸)、デンプンに基づくポリマー、酢酸酪酸セルロース、ポリエステルアミド、ポリエステルアミン、ポリシアノアクリル酸、ポリフォスファゼン、N-ビニル-2-ピロリドン、ポリマレイン酸無水物、塩化ステアリルアンモニウムおよび塩化ベンジルアンモニウムを含む四級アンモニウム化合物、コポリマー、および他の脂肪族ポリエステル、またはポリ(L-乳酸)およびポリ(e-カプロラクトン)のコポリマーを含むそれらの適切なコポリマー; それらの混合物、コポリマー、または組み合わせを包含する。
【0101】
適切な天然被覆は、以下を包含する: フィブリン、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、グリコサミノグリカン、オリゴ糖および多糖、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ハイポキシアパタイト(hypoxyapatite)、リン脂質、フォスフォリルコリン、糖脂質、脂肪酸、タンパク質、セルロース、およびそれらの混合物、コポリマー、または組み合わせ。
【0102】
適切な非ポリマー性被覆は、金属被覆、例えばタングステン、マグネシウム、コバルト、亜鉛、鉄、ビスマス、タンタル、金、プラチナ、ステンレス鋼、例えば 316L、304、チタン合金; セラミック被覆、例えば酸化ケイ素; 半金属、例えば炭素、ナノ多孔質被覆; またはそれらの組み合わせ、を包含する。
【0103】
いくつかの態様において、医薬上許容される賦形剤は、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、エチレンビニルアルコール コポリマー、シリコーン、C-flex、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パリレン、パリラスト、ポリ(メタクリレート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリカーボネート、ポリアクリルアミドゲル、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸n-ブチル)、 ポリ(メタクリル酸ブチル)コポリマー、または ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸 2-ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸エチレングリコール)、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリ L ラクチド-グリコリド コポリマー、ポリ L ラクチド-トリメチレンカーボネート コポリマー および ポリ L-ラクチドとブレンドされたもの、からなる群から選択されるポリマーである。さらなる態様において、ポリマーはポリ(メタクリル酸n-ブチル)である。
【0104】
さらなる態様において、本発明は、化合物とポリマーの混合物中に少なくとも 25% (w/w) の量、化合物が存在する組成物を提供する。別の態様において、化合物は少なくとも 50% (w/w)の量、存在する。さらなる態様において、化合物は少なくとも 75% (w/w)の量、存在する。当業者は、本発明において他の組成物が有用であることを理解するであろう。
【0105】
別の態様において、本発明の化合物は、被覆なしでステント上に適用され得る。別の態様において、本発明の化合物は、ポリマー被覆と組み合わせて、例えば、本発明の化合物-ポリマーマトリックスを形成して、ステント上に適用され得る。本発明の化合物は、完全にまたは部分的に結晶化されるか、または非晶質形態であり得る。ポリマーは、非分解性、部分分解性または完全分解性であり得る。被覆は、非-ポリマー、例えば金属被覆であっても良い。別の態様において、本発明の化合物は、単独で、またはポリマーまたは非ポリマートップコート(topcoat)と共に被覆中に含有されて、ステント上に適用され得る。別の態様において、ステントは、ステント表面と本発明の化合物または本発明の化合物-ポリマー マトリックスとの間に配置された下層被覆を包含する。適切な下層被覆は、ポリマー、例えば パラリン(paralyne)C, パリレン N、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリカプロラクトン、エチルヒドロキシ酢酸ビニル(ethylvinyl hydroxylated acetate)(EVA)など、またはそれらの組み合わせ、または非ポリマー、例えば金属またはセラミックなどであり得る。
【0106】
被覆は、これらに限定されないが、スプレー、超音波成膜、浸漬、インクジェット散布、プラズマ成膜、イオン注入、スパッタリング、真空蒸着、蒸気蒸着、熱分解、電気メッキ、グロー放電被覆などまたはそれらの組み合わせを含む、様々な方法のいずれによっても適用され得る。
【0107】
被覆の厚さは、1 ナノメーター から 100 マイクロメーター、好ましくは 100 ナノメーター から 50 マイクロメーター、より好ましくは 1 マイクロメーター から 20 マイクロメーターの範囲であり得る。
【0108】
本発明の化合物は、酸化または他の手段による分解を防ぐため、抗酸化剤または安定化剤と併用され得る。抗酸化剤は、これらに限定されないが、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、硫酸第一鉄、エチレンジアミン-テトラ-酢酸(EDTA)などを包含する。安定化剤は、これらに限定されないが、アミレン(amglene)、ハイドロキノン、キニーネ、メタ重亜硫酸ナトリウムなどを包含する。抗酸化剤および安定化剤は、製造過程での構造変化または分解を減少させ、化合物または化合物含有インプラントの有効期間または保存寿命を増大させるため、直接に、または化合物製剤、例えば化合物-ポリマー マトリックスと混合されて、化合物と併用され得る。化合物における抗酸化剤、例えば BHT の量は、0.01% から 10%、好ましくは 0.05% から 5% そして最も好ましくは 0.1% から 1% の範囲であり得る。化合物における安定化剤、例えばアミレンの量は、0.001% から 0.1%、好ましくは 0.005% から 0.05%、最も好ましくは 0.01% から 0.02% の範囲であり得る。当業者は、他の抗酸化剤および安定化剤が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0109】
本発明の化合物は、治療剤、例えば抗血小板剤、抗血栓剤、抗炎症剤、抗増殖剤、免疫抑制剤、抗癌剤または他の剤またはそれらの組み合わせ、と併用して投与され得る。当業者は、他の治療剤が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0110】
治療剤は、本発明の化合物と共に、および/または本発明の化合物と別に、ステント上に取り込まれ得る。少なくとも治療剤の一部は、ステントから本発明の化合物が放出される前に、またはそれと同時に、またはその後に、ステントから放出され得る。治療剤は、本発明の化合物が送達される前に、またはその間に、またはその後に、全身的または部位特異的投与を通して別々に与えられ得る。
【0111】
例えば、本発明の化合物は、抗血小板剤または抗血栓症剤、例えばヘパリン、クロピドグレル、クーマディン、アスピリン、チクリッドなどと共に与えられ得る。別の例において、本発明の化合物は、抗炎症剤、例えばアスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、テノキシカム、トルメチン、ケトロラク、オキサプロジン(oxaprosin)、メフェナム酸、フェノプロフェン、ナブメトン(nambumetone)(レラフェン(relafen))、アセトアミノフェン、およびそれらの混合物; COX-2 阻害剤、例えばニメスリド、NS-398、フロスリド(flosulid)、L-745337、セレコキシブ、ロフェコキシブ、SC-57666、DuP-697、パレコキシブナトリウム、JTE-522、バルデコキシブ、SC-58125、エトリコキシブ、RS-57067、L-748780、L-761066、APHS、エトドラク、メロキシカム、S-2474、タクロリムス、およびそれらの混合物; 糖質コルチコイド、例えばヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、フルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロンなど、または上記のものの類縁体またはそれらの組み合わせ、と共に与えられ得る。
【0112】
いくつかの態様において、本発明は、化合物のうちラパマイシンへ代謝されるものが 約 5% よりも少ない組成物を提供する。他のいくつかの態様において、化合物のうちラパマイシンへ代謝されるものは 約 1% よりも少ない。さらに他の態様において、化合物のうちラパマイシンへ代謝されるものは 約 0.1% よりも少ない。
【0113】
他の態様において、本発明は、ひとつの剤形において、約 0.1 mg から 約 20 mg の、化合物の1日全身投与量を有する組成物を提供する。他のいくつかの態様において、化合物の1日全身投与量は 約 0.5 mg から 約 10 mg である。別の態様において、化合物の1日全身投与量は 約 1 mg から 約 5 mg である。
【0114】
IV. 処置
本発明の化合物は、一般に大環状トリエンまたは大環状ラクトンとして知られる化合物のクラスに応答性の症状を処置するために用いられ得る。
【0115】
本発明の化合物は、哺乳類において、例えば次の症状を含む疾患を処置するために、単独で、または他の剤と併用して用いられ得る:
a) 急性または慢性の、器官または組織の移植拒絶反応の治療および予防、例えば、心臓、肺、結合された心肺、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚または角膜移植のレシピエントの治療。本発明の化合物は、移植片対宿主病、例えば後述の骨髄移植、の予防のために用いられ得る。
b) 移植血管障害(transplant vasculopathies)、例えばアテローム硬化の治療および予防。
c) 血管内膜肥厚、血管閉塞、閉塞性血管アテローム硬化、再狭窄につながる、細胞の増殖および遊走の治療および予防。
d) 自己免疫疾患、および炎症状態、例えば関節炎(例えば関節リウマチ、アースリティス・クロニカ・プログレディエンテ(arthritis chronica progrediente)および変形性関節炎)およびリウマチ性疾患などの自己免疫構成要素を含む病因を有する炎症状態、の治療および予防。
e) 喘息の治療および予防。
f) 多剤耐性状態、例えば多剤耐性癌または多剤耐性 AIDS の治療。
g) 増殖性疾患、例えば腫瘍、癌、高増殖性皮膚疾患などの治療。
h) 真菌、細菌およびウイルスなどの感染の治療。
i) 血管シャントにおける細胞増殖の治療または予防。
j) 眼部の症状および疾患の治療または予防。
【0116】
化合物 AR および ラパマイシン(シロリムス)の、ヒト細胞増殖を阻害する効力は、インビトロモデルで実証される。試験は実施例 2 に示され、結果は 図 8 に示される。化合物 AR は、図 8 に示される通りの濃度範囲にわたって平滑筋細胞の増殖を阻害した。
【0117】
いくつかの態様において、本発明は、治療上有効な量の本発明の化合物を、それを必要としている対象に対して投与することによって細胞の増殖または遊走を阻害する方法を提供する。
【0118】
いくつかの態様において、本発明は、本発明の化合物が全身、局所またはそれらの組み合わせを介して投与される方法を提供する。
【0119】
他のいくつかの態様において、本発明の化合物の投与は、経口投与、座剤としての投与、局所接触(topical contact)、非経口、血管内、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、鼻腔内、肺、粘膜、経皮、眼部、皮下投与または髄腔内投与を介するものである。
【0120】
さらに他の態様において、本発明の化合物の投与は、一時的装置またはインプラントを通じた送達を介するものである。別の態様において、一時的装置は、カテーテルおよび多孔質バルーンからなる群から選択される。さらに別の態様において、インプラントは血管補綴である。さらに他の態様において、血管補綴は拡張可能な構造を含む。別の態様において、血管補綴は、ステント、移植片、または少なくとも部分的には開いた格子(open lattice)から形成される足場を含む。
【0121】
一つの態様において、本発明の化合物の阻害濃度(IC50)は、それに対応する親の(図 1 における修飾前の)大環状ラクトンの IC50 とほぼ等しい。別の態様において、IC50 は、それに対応する親の大環状ラクトンの IC50 よりも高い。さらに別の態様において、IC50 は、それに対応する親の大環状ラクトンの IC50 よりも低い。例えば、IC50 は、それに対応する親の大環状ラクトンの IC50 よりも2から1000倍低い。
【0122】
好ましい態様において、本発明の化合物の IC50 は、それに対応する親の大環状ラクトンよりも 1.5 から 1,000 倍高く、好ましくは対応する親の大環状ラクトンよりも 2 から 100 倍高く、より好ましくは対応する親の大環状ラクトンよりも 5 から 50 倍高い。別の態様において、本発明の化合物の IC50 は、約 0.1 nM から 約 1 μM、好ましくは 約 1 nM から 約 0.5 μM、より好ましくは 約 5 nM から 約 100 nM である。
【0123】
本発明の化合物の有効性を評価する他の手段は、有効濃度(EC50)の測定を包含する。一つの態様において、EC50 は、対応する親の大環状ラクトンのEC50 とほぼ等しい。別の態様において、EC50 は、対応する親の大環状ラクトンの EC50 よりも高い。さらに別の態様において、EC50 は、対応する親の大環状ラクトンの EC50 よりも低い。
【0124】
いくつかの態様において、本発明は、化合物の有効量が 約 0.1 mg から 約 20 mg である方法を提供する。他のいくつかの態様において、化合物の有効量は 約 0.5 mg から 約 10 mg である。さらに他の態様において、化合物の有効量は 約 1 mg から 約 5 mgである。
【0125】
本発明の化合物、組成物および装置は、サイトカイン阻害に有用である。炎症促進性サイトカイン IL-6 は、多様な炎症性刺激に反応して合成され、炎症カスケードにおける鍵となる調節タンパク質として作用する。IL-6 は、傷害後の急性期応答の刺激において、フィブリノーゲンおよびC反応性タンパク質の放出を含む、中心的な役割を果たす。
【0126】
IL-6 はまた、それが血管壁への白血球動員、および血管平滑筋細胞増殖、高増殖性疾患、例えば再狭窄の発病に必須の因子を刺激することが示されているように、再狭窄にも直接的に関与する可能性がある。
【0127】
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-9)は、ステント植え込み後の新生内膜増殖および血管再構築などの状態を含む、細胞の遊走および増殖において鍵となる役割を果たす。MMP の放出は、血管傷害後の平滑筋細胞の遊走を増大させる、プロテオグリカンに富む細胞外マトリックスの増加を引き起こす。
【0128】
血漿の活性 MMP-9 レベルは、地金ステント ISR の有用な独立予測因子であり得る。 (Elevated Plasma Active Matrix Metalloproteinase-9 Level Is Associated With Coronary Artery In-Stent Restenosis、Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2006;26:e121-e125)
【0129】
単球走化性タンパク質 1 (MCP-1)は、血管平滑筋および内皮細胞を含む多くの細胞によってインビトロで分泌される、強力な単球化学誘引物質である。MCP-1 遺伝子の除去または MCP-1 シグナルの遮断は、高コレステロール血症マウスにおいてアテローム発生を減少させることが示されている。MCP-1 は、サルにおける新生内膜肥厚の発病において役割を果たすことが示されている(Importance of Monocyte Chemoattractant Protein-1 Pathway in Neointimal Hyperplasia After Periarterial Injury in Mice and Monkeys、Circ Res. 2002;90:1167-1172)。MCP-1 はまた、ヒトおよびウサギの動脈硬化病変のマクロファージに富む領域における小さな細胞サブセットにおいても強く発現される(Expression of Monocyte Chemoattractant Protein 1 in Macrophage-Rich Areas of Human and Rabbit Atherosclerotic Lesions、PNAS、Vol 88、5252-5256)。MCP-1 の阻害は、炎症性、増殖性および上で議論された他の病状の治療および予防に対する治療的な影響力を有し得る。
【0130】
インターロイキン-10 (IL-10)は、単球に対する強力な阻害効果を有する抗炎症性サイトカインである。IL-10 は、傷害後内膜肥厚を減少させることが示されている(Interleukin-10 Inhibits Intimal Hyperplasia After Angioplasty or Stent Implantation in Hypercholesterolemic RabbitsCirculation. 2000;101:908-916)。ヒト単球による、LDL 刺激に反応しての IL-10 の内因性産生は IL-12 の産生を阻害し、このことは、炎症促進性反応を均衡させることができる IL-10 の交差調節作用を示す。
【0131】
本発明において開示される全ての態様が、単独で、または他の態様または本発明の実施例と組み合わせて利用され得ることが理解され得る。
【実施例】
【0132】
V. 実施例
実施例 1: 16-O-デメチル大環状ラクトン(化合物 AR)の調製
500ml のアセトニトリル中の大環状ラクトンラパマイシン(1000mg、10.75 mmol)を、500ml の 0.1N 塩酸で処理した。得られた溶液を室温で約28時間、攪拌した。次いで反応混合物を分液漏斗中で、ジクロロメタンを用いて抽出した。有機層を水および塩水(brine)で洗浄した後、0.1M リン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.4)で2回または pH=7 まで洗浄し、その後蒸留水(DI)で3回洗浄した。最後に有機層を Na2SO4 上で乾燥させ、冷蔵庫内に一晩置いた。減圧濃縮によって、化合物 AR のオフホワイト(off-white)の粉末(およそ 820 mg)を生成した。
【0133】
化合物 AR を、SUPECO の Ascentis C18 カラム(21.2 x 250mm、10μm)上で、15 ml/分の流速で、0-12 分はメタノール:水(80:20)を移動相として用い、その後 12.01-20 分は移動相を 100% メタノールに変える、分取 HPLC によって精製した。ロードする濃度は 350 mg/ml であり、注入容積は 100 ul であった。化合物を 254 nm での UV 吸収によってモニターした。これらの条件下で、化合物 AR は 9.0-11.5 分の間に溶出し、出発物質および副生成物は 17.0-20.0 分の間に溶出した。
【0134】
分取 HPLC を、移動相としてアセトニトリル:水の勾配(70:30 から開始)を用いても実行し、278 nm での UV 吸収によってモニターした。この分離方法を用いる分取 HPLC クロマトグラムは 図 4 に示される。
【0135】
化合物 AR を含有する画分を収集して共にプールし、次いで rotovac および凍結乾燥器を用いて溶媒を蒸発させて、化合物 AR のオフホワイト(off-white)の粉末を得た。
【0136】
1H NMR (CDCl3、400MHz、トランス:シス アミド回転異性体の混合、括弧内の化学シフトは主要な回転異性体を参照する) を 図 5 に示す。δ、ppm 0.532(q、J=12Hz、1H)、0.890(d、J=6.8Hz、3H)、0.921(d、J=6.8Hz、3H)、0.931(d、J=6.4Hz、3H)、0.971(d、J=6.8Hz、3H)、0.991(d、J=6.6Hz、3H)、1.005(d、J=6.4Hz、3H)、1.686(s、3H)、1.772(s、3H)、1.773(s、3H)、1.823(s、3H)、3.330(s、3H)、3.380(s、3H)、3.859(d、J=5.2Hz、1H)、4.001(d、J=3.6Hz、1H)、4.03-4.07(m、1H)、4.22(br、1H)、5.21-5.28(m、3H)、5.336(d、J=11.6Hz、1H)、5.384(dd、J=14.8、9.6Hz、1H)、6.117(dd、J=14.4、10.8Hz、1H)、6.243(dd、J=14.4、10.4Hz、1H)、6.376(dd、J=14.8、11.2Hz、1H)。
【0137】
親化合物のプロトン NMR と比較して、3.14 ppm のピークの消失は、C16 の位置のみの脱メチル化を示し、反応の完了を示す。(NMR スペクトルのラパマイシンへの割当てについては、Journal of Antibiotics 1991、44(6)、688 を参照。)
【0138】
化合物 AR の化学構造を、質量分析実験によってさらに検証した。断片化パターンが m/z 900 の存在を示した一方、ラパマイシンは同一の条件下で m/z 914 を生成する。液体クロマトグラフィーおよび質量分析実験の結果を 図 6 に示し、それは m/z 900 の化合物 AR の同定を示す。
【0139】
化合物 AR の全容量を、Sigma Aldrich の Supelco C18 カラム(4.6 x 150mm、5μm)を用い、移動相としてメタノール:水(90:10)を用いる、流速 1 ml/分の逆相 HPLC によって決定した。化合物 AR を、254nm での UV 吸収によってモニターした。化合物 AR は、7.97 分の保持時間を有した。図 7 は、>98% の全容量を有する化合物 AR の分析用 HPLC クロマトグラムを示す。化合物 AR の純度を、Waters Corporation の YMC ODS-AL C18 カラム(4.6x250mm、5μm)を用い、アセトニトリル:水の勾配移動相を用いる、流速 1.0 ml/分の逆相 HPLC によって決定した。図 7b は、278nm での UV 吸収によってモニターされた通り、>98% の純度を有する化合物 AR の主要な異性体を示す。
【0140】
化合物 AR の酸化を最小化するための手段として、0.1% w/w のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を、分取 HPLC の後に添加した。
【0141】
実施例 2: 化合物 AR の生物学的活性
化合物 AR の効力を、インビトロのヒト平滑筋細胞培養試験によって実証した。様々な濃度の化合物 AR (0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、および 1μM)および様々な濃度のラパマイシン(0.0005、0.001、0.01、および 0.1μM)のサンプルに対して、取り込まれたチミジンの量を、曝露後 1、3 および 8 時間の異なる時点で測定した。平滑筋細胞が化合物 AR およびラパマイシンに曝露された後 1 および 3 時間の短い期間の、化合物 AR およびラパマイシンについての IC50 は、それぞれ、およそ 0.05 および 0.01 μM であった(表 1 および 図 8 に示される通り)。平滑筋細胞が化合物 AR およびラパマイシンに曝露された後 8 時間での、化合物 AR およびラパマイシンの IC50 は、それぞれ、およそ 0.005 および 0.001μM であった。化合物 AR の IC50 は、ラパマイシンの IC50 よりもおよそ5倍高かった。
【0142】
表 I: 様々な濃度のラパマイシンおよび化合物 AR への曝露後のヒト平滑筋細胞の増殖割合のデータ
【表2】



【0143】
実施例 3: 化合物 AR 含有ステントの調製
15 mg のポリ(メタクリル酸n-ブチル)(PBMA)を、室温で 3 mL のジクロロメタンに溶解した。10 mg の化合物 AR をバイアル中に置き、0.1% (w/w) BHT を含むまたは含まない 2 mL のジクロロメタンに溶解した。それらの溶液を合わせて、さらに 10 mL のジクロロメタンで希釈した。
【0144】
マイクロプロセッサ制御の超音波噴霧機を用いて、450 ug の PBMA 溶液含有薬剤を a18 mm 金属ステント(Elixir Medical Corp、Sunnyvale、Calif. から入手可能)の全表面に適用した。被覆後、該ステントを真空槽中に置いた。次いで該ステントを 3.0 x 20 mm のPTCA 送達カテーテルのバルーン上に乗せた。次いで該カテーテルをコイル中に挿入し、Tyvek(登録商標)ポーチ中に詰め込んだ。該ポーチをエチレンオキサイドで滅菌した。さらに該Tyvek(登録商標)ポーチを、脱酸素剤と共に、窒素パージを行ってホイルポーチ中に真空包装した。
【0145】
実施例 4: 化合物 AR 溶出ステントの生体内試験
(上記の通り調製された)実施例 3 の化合物 AR 溶出ステントシステムの有効性を、ブタ冠動脈における 28±2 日 の血管造影の結果を非疾患ブタ冠動脈モデルにおけるラパマイシン溶出ステントシステム、Cypher(商標)冠動脈ステント(Cordis Corporation)と比較することにより評価した。
【0146】
当該モデルはステントおよび血管形成の研究に広く用いられており、その結果血管の反応特性およびそのヒト血管反応との相関について大量のデータが存在することから(Schwartz et al、Circulation. 2002;106:1867-1873)、非アテローム硬化性ブタモデルを選択した。該動物を米国学術研究会議によって確立された、実験動物のケアと使用に関するガイドに従って飼育および世話をした。
【0147】
全ての動物を、経口投与量あたりアスピリン(325mg)およびクロピドグレル(clopidogel)(75mg)で前処理し、該処理は少なくとも介入の 3 日前から開始し、試験期間の間継続した。麻酔導入後、標準的な技術を用いて左または右の大腿動脈に接近し、動脈シースを導入して動脈の内部へと進めた。
【0148】
蛍光透視ガイドの下で血管造影を行い、シースを通して 7 Fr. ガイドカテーテルを挿入し、冠動脈内ニトログリセリンが投与される適切な位置まで進めた。平均内径 2.25 から 4.0 mm の範囲の冠動脈セグメントを選択し、0.014”ガイドワイヤーを挿入した。参照血管径を実証するため、定量的冠動脈造影(QCA)を行った。
【0149】
適切なサイズのステントを配置部位まで進めた。1.30:1.0 のバルーン対動脈の比を達成するのに十分な圧力まで、一定の速度でバルーンを膨張させた。圧力をおよそ 10 秒間維持した。処置後の血管開存性および直径を実証するため、血管造影を行った。
【0150】
各々の動物について、指定されたエンドポイントで追跡の血管造影を行った。各々の血管造影図を、ステント移入、管腔狭窄、ステント付着(apposition)、解離または動脈瘤の存在、および流動特性のエビデンスについて定性的に評価した。追跡の血管造影を完了させた上で、動物を安楽死させた。
【0151】
各々の動物から心臓を摘出し、冠動脈を 10% 緩衝ホルマリンを用いて 100 から 120 mm Hg で灌流した。心臓を 10% 緩衝ホルマリン中に浸漬した。いかなる心筋障害または異常所見も報告されなかった。
【0152】
測定または計算された血管造影パラメータは、以下を含んだ:
・辺縁部血管(近位および遠位)平均内径(ステント挿入後および最終のみ)
・標的領域の平均内径(全ての血管造影図)
・標的領域の最小内径(MLD)(ステント挿入後および最終のみ)
・径狭窄 [1-(MLD/RVD)] x 100%、ここで RVD は閉塞位置における参照径の計算(投影された血管の補間(intrapolation)を傷害なく生成するため、ソフトウェアに基づく反復性線形回帰法によって得られた測定)である。(最終の血管造影図のみ)
・バルーン対動脈の比 [バルーン/ステント挿入前 平均内径]
・ステント対動脈の比 [ステント挿入後/ステント挿入前 平均内径]
・遠隔期損失の割合 [最終 MLD - ステント挿入後 MLD]
【0153】
全ての動物は指定されたエンドポイントまで生存した。ステント移入、ステントの不完全密着(malapposition)、持続性解離または動脈瘤のエビデンスといった、報告される出来事は存在しなかった。Cypher ステントについての、範囲外の3つのデータポイント(完全な閉塞またはほぼ完全な閉塞)は除外した。Cypher ステントについて 20.21±11.45 (n=22)の平均狭窄率を提供した、本研究および同様のプロトコルを用いた以前の研究からのプールされた Cypher ステントのデータと比較して、化合物 AR ステント(1mmの長さあたりおよそ 10 マイクログラムの薬剤用量)についての平均狭窄率は 25.7±17.8(n=15)であった(図 9)。
【0154】
ブタのモデルに28日間植え込まれた場合、本実施例における化合物 AR 溶出ステントは、Cypher ステントと比較して、より高い狭窄率をもたらした。
【0155】
実施例 5: 生体内での化合物 AR 溶出ステントの薬物動態
実施例 3 の化合物 AR ステントシステムの薬物動態評価を、ブタ冠動脈モデルにおいて 6 時間、3 日、7 日、および 28 日の時点で行った。用いられた介入の手順は、ステント植え込みまでは実施例 4 に記載された生体内血管造影研究と同様であった。
【0156】
適切なサイズのステントを配置部位まで進めた。バルーンを、1:1 のバルーン対動脈の比をを達成するのに十分な圧力まで、一定の速度で膨張させた。圧力をおよそ 10 秒間維持した。処置後の血管開存性および直径を実証するため、血管造影を行った。全部で 9 のステント(時点あたり3)を植え込んだ。
【0157】
適切な時点で動物を安楽死させ、心臓を切り取った。ステント挿入部位に対しおよそ10mmの近位の血管および10mmの遠位の血管を含む、ステントを挿入されたセグメントを切り取った。近位および遠位の部分を分離し、別々のバイアルに保管した。ステントの周りの組織を注意深くステントから取り除き、各々を別々のバイアル中に置いた。次いで、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)を用いて分析する前に、全てを -70 ℃まで凍結させた。
【0158】
全ての動物は指定されたエンドポイントまで生存した。化合物 ARについての組織平均濃度およびステントからの放出率を、図 10 および 11 に示す。化合物 AR 溶出ステントは、本実施例において、7日の時点で40%を超える薬剤が放出されるという、ステントからの化合物 ARの放出を示す。
【0159】
実施例 6: 17,18-29,30-ビス-エポキシド大環状ラクトン(AS)の調製
40 ml メタノール中の 1 グラムのラパマイシン溶液に対し、0.8mL の 5% NaOH-MeOH および 2ml の 30% H2O2 を添加する。反応混合物を室温で24時間、攪拌した。いくらかのラパマイシンが未だ反応していない事を TLC が示した場合には、0.8mL の 5% NaOH-MeOH および 2ml の 30% H2O2 の追加の混合物を、反応溶液に添加した。反応が完了したことを TLC が示すまで、室温で攪拌を継続した。該溶液を、ジクロロメタンおよび塩水(brine)で 3 回抽出した。有機層を合わせ、塩水(brine)および水で洗浄し、無水 MgSO4 上で乾燥させ、MgSO4 を濾過した後、該溶液を蒸発させて原生成物を得た。該原生成物を、TLC プレートを用いてさらに精製し、0.40g の淡黄色の粉末を得た(収率 40%)。1H NMR (CDCl3)の、ラパマイシンと比較しての大きな変化は、δ(ppm) 1.75(s、1H)、1.98(s、1H)、6.71(ddd、5H、J1=16Hz、J2=8Hz、J3=2.8Hz)である(〜4:1 の配座異性体の混合、主要な配座異性体のシグナルのみ記載)。13C DEPT 135 NMR (CDCl3)は δ(ppm) 152、140、133、128、127、126、84、83、76、74、67、59、56、44、43、41、40、36、35、34、33、31、29、28、22、21、20、17、16、15、13 である(〜4:1 の配座異性体の混合、主要な配座異性体のシグナルのみ記載)。質量スペクトルは m/z=962、ラパマイシンは m/z=930 であった。
【0160】
実施例 7: 17,18-29,30-ビス-エポキシド大環状ラクトン(AS)の生物学的活性
17,18-29,30-ビス-エポキシド大環状ラクトンの効力を、インビトロのヒト平滑筋細胞培養試験によって実証した。様々な濃度の 17,18-29,30-ビス-エポキシド大環状ラクトン(0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、および 1μM)および様々な濃度の化合物 AR (0.0005、0.001、0.01、および 0.1μM)のサンプルに対して取り込まれたチミジンの量を、曝露の 8 時間後に測定した。平滑筋細胞が 17,18-29,30-ビス-エポキシド大環状ラクトンおよび化合物 AR に曝露されてから 8 時間後の、17,18-29,30-ビス-エポキシド大環状ラクトンおよび化合物 AR の IC50 は、それぞれ、およそ 0.1 および 0.005μMであった(図 13)。17,18-29,30-ビス-エポキシド大環状ラクトンの IC50 は、化合物 AR の IC50 よりもおよそ 20 倍高かった。
【0161】
実施例 8: 17,18-19,20-21,22-トリス-エポキシド大環状ラクトン(AY)の調製
m-クロロペルオキシ安息香酸 0.93g(3.22 mmol)を、10 ml CHCl3 中の 0.50g ラパマイシン溶液(0.5371mmol)に室温で添加した。混合物を室温で24時間、攪拌した。いくらかのラパマイシンが未だ反応していない事を TLC が示した場合には、追加の m-クロロペルオキシ安息香酸 0.50g および 5 mL の CHCl3 を添加した。TLC によってラパマイシンが全く示されなくなるまで、室温で攪拌を継続した。反応の完了後、溶液をジクロロメタンで希釈し、洗浄によりヨウ素デンプン紙(starch-iodide paper)で陰性の試験結果が得られるまで、含水亜硫酸ナトリウムで処理した。このことは全ての余分な過酸が破壊され、水層が CH2Cl2 のいくらかの部分と共に抽出されたことを確実にする。次いで有機層を 20ml の 5% 炭酸水素ナトリウムで2回洗浄して安息香酸を除去した。合わせた有機性抽出物を水で洗浄し、無水 MgSO4 を用いて乾燥させ、濾過した後、蒸発させて粗製白色個体 0.46g を得た。原生成物を、TLC プレートを用いてさらに精製した。MS は m/z 978、ラパマイシンは m/z 930 であった。
【0162】
実施例 9: 大環状ラクトンによるサイトカイン阻害:
細胞培養研究において、細胞を大腸菌のリポ多糖(LPS)に処理することによって、サイトカイン、例えば Il-6、MMP-9、MCP-1 および IL-10 を分泌するようマクロファージを活性化した。10nM の濃度の化合物 AR およびラパマイシンで活性化マクロファージを処理した上で、これらのサイトカインの阻害を ELISA アッセイを用いて試験した。大環状ラクトンへ曝露した上での、サイトカインを誘導する炎症促進性、および細胞の増殖および遊走の阻害を 図 12(a)に示す。大環状ラクトン化合物 AR およびシロリムスへ曝露した上での、抗炎症性サイトカイン IL-10 の阻害を 図 12(b)に示す。
【0163】
ステント植込みから1、3、7日後における MMP-9 レベルは、ステント植込み6ヶ月後の遠隔期損失指標と正の相関があった(Elevated matrix metalloproteinase expression after stent implantation is associated with restenosis. Int J Cardiol. 2006; 112(1):85-90)。
【0164】
化合物 AR およびシロリムスは IL-6 放出のいかなる有意な阻害も示さなかった。MMP-9 の産生を増大させ、MCP-1 の産生には影響を与えなかったシロリムスと比較して、化合物 AR はサイトカイン MMP-9 および MCP-1 両者の産生を有意に減少させた。
【0165】
化合物 AR およびシロリムスは、IL-6 の放出の阻害において、いかなる差異も示さなかった。他方、シロリムスは MMP-9 の産生を増大させたが、化合物 AR はサイトカイン MMP-9 の産生を減少させた。MCP-1 の産生に影響を与えなかったシロリムスと比較して、化合物 AR はサイトカイン MCP-1 の産生を減少させた。化合物 AR およびシロリムスは両者ともに抗炎症性サイトカイン IL-10 の産生を阻害する。
【0166】
本発明において特許請求の範囲に記載される化合物、例えば 化合物 AR は、高レベルの抗炎症効果(例えば、炎症促進性サイトカイン MCP-1 のより大きな阻害)、および高レベルの抗-細胞増殖および抗-細胞遊走効果(例えば、増殖および遊走促進性サイトカイン MMP-9 のより大きな阻害)を伴う、より良い治療反応を提供し得る。
【0167】
実施例 10: ヒト臨床試験における化合物 AR 溶出ステントの試験:
化合物 AR 被覆ステントの臨床試験を、15 人のヒト被験者について行った。化合物 AR被覆ステントの安全性を、死亡、心筋梗塞(Q波および非Q波の両方)、および標的病変血行再建として定義される主要有害心イベントの評価を通して臨床的に評価した。4 ヶ月時点における血管造影および血管内超音波(IVUS)の結果を通して有効性を評価した。該研究の主要(primary)エンドポイントは、血管造影ステント内遠隔期損失径であった。副次(secondary)エンドポイントは、主要有害心イベント(MACE)および追加の血管造影および IVUS の評価であった。該臨床研究は地域倫理委員会によって承認され、全ての患者は臨床研究に入る前に、倫理承認(Ethics approved)インフォームドコンセントに署名した 。
【0168】
全ての患者をアスピリンおよびチクロピジン経口あたり(500mg)で前処理し、該処理は少なくとも指標の手順(index procedure)の 1 日前または当日に開始した。アスピリン(>100mg/日)およびクロピドグレル(75mg/日)を少なくとも6ヶ月の間継続した。病院の標準的な経皮診療に従い、標準技術を用いて左または右の大腿動脈に接近し、動脈シースを導入して動脈内へ進めた。
【0169】
指標の手順である血管造影を蛍光透視ガイド下で行い、6 または 7 Fr. のガイドカテーテルをシースを通して挿入し、冠動脈内ニトログリセリンが投与される適切な位置まで進めた。3.0mm から 3.5 mm の範囲の平均内径の冠動脈のセグメントを選択し、0.014”ガイドワイヤーを挿入した。参照血管径を実証するため、定量的冠動脈造影(QCA)を行った。ステント植込みの前に、標準的技術を用いて病変部の前拡張を行った。
【0170】
前拡張に続いて、適切なサイズのステント(3.0 x 18 mm または 3.5 x 18 mm)を配置部位まで進めた。ステントを完全に展開させる圧力まで、一定の速度でバルーンを膨張させた。圧力をおよそ 30 秒間維持した。血管壁へのステントの良好な付着(apposition)を確実にするため、必要に応じてステントの後拡張を行うことができた。血管造影および血管内超音波イメージング(IVUS)を行い、記録した。
【0171】
各々の患者について、4 ヶ月の指定されたエンドポイントにおいて追跡の血管造影および IVUS を行った。各々の血管造影図を、管腔狭窄、ステント付着(apposition)、および流動特性のエビデンスについて定性的に評価した。
【0172】
測定または計算された血管造影および IVUS のパラメータは、以下を含んだ:
・辺縁部血管(近位および遠位)平均内径(ステント挿入後および最終)
・標的領域の平均内径(全ての血管造影図)
・標的領域の最小内径(MLD)(ステント挿入後および最終のみ)
・径狭窄 [1-(MLD/RVD)] x 100%]、ここで RVD は閉塞位置における参照径の計算(投影された血管の補間(intrapolation)を傷害なく生成するため、ソフトウェアに基づく反復性線形回帰法によって得られた測定)である。(最終の血管造影図のみ)
・ステント内遠隔期損失径 [最終 MLD - ステント挿入後 MLD]
・IVUS によって評価されるステント内新生内膜量の割合
【0173】
全ての患者は、4 ヶ月の臨床および血管造影による経過観察を経た。経過観察期間中は、一人の患者も、いかなる主要有害心イベントも経験しなかった。血管造影結果は、血管造影ステント内遠隔期損失径の主要(primary)エンドポイントが 0.16 ± 0.32 mm であることを示した。IVUS 分析を 15 人中 13 人の患者について行い、その結果は 3.7 ± 2.7% のステント内新生内膜量の割合を示した。
【0174】
比較として、予備研究において Cypher ステントが試験され、全く臨床イベントを伴わない同様の臨床上の安全性、および 4 ヶ月時点における、徐放性のグループ(現在の市販の製剤)についての 0.09 ± 0.3 mm のステント内遠隔期損失径の血管造影結果、および IVUS による、0.3 ± 0.6 % であるステント内新生内膜量の割合(Sousa、JE、Circulation 2001;103;192-195)が示された。
【0175】
前述の発明は、理解を明確にするため、図示および実施例の方法によってある程度詳細に記載されたが、当業者は、添付の請求項の範囲内において一定の変更および改変が実施され得ることを理解するであろう。加えて、本明細書において提供された各々の参考文献は引用により、各々の参考文献が引用により個別に包含されたのと同程度に、全体が包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬上許容される賦形剤、および下記式の化合物:
【化1】

[式中、
R1、R2、R3、R5、R6 および R8 は各々独立に、H、C1-6 アルキル および OH からなる群から選択されるメンバーである;
R4、R7 および R9 は各々独立に、C1-6 アルコキシ および OH からなる群から選択される;
R10 は、H、-OH、-OP(O)Me2
【化2】

【化3】


、-O-(CH2)n-OH および -O-(CH2)m-O-(CH2)o-CH3 からなる群から選択されるメンバーであり、ここで、下付き文字 n および m は各々独立に 2 から 8 であり、下付き文字 o は 1 から 6 である;
L1 および L4 の各々は独立に、以下からなる群から選択される:
【化4】

および
【化5】


; L2 および L3 の各々は独立に、以下からなる群から選択される:
【化6】

【化7】

および
【化8】

]; およびその塩、水和物、異性体、代謝産物およびプロドラッグ、を含む医薬組成物。
【請求項2】
医薬上許容される賦形剤が、ポリマー、溶媒、抗酸化剤、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、被覆剤、甘味料、香料、安定化剤、着色料、金属、セラミックおよび半金属からなる群から選択されるメンバーである、請求項1の組成物。
【請求項3】
医薬上許容される賦形剤がポリマーである、請求項2の組成物。
【請求項4】
ポリマーが、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、エチレンビニルアルコール コポリマー、シリコーン、C-flex、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パリレン、パリラスト、ポリ(メタクリレート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリカーボネート、ポリアクリルアミドゲル、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸n-ブチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)コポリマー、またはポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸 2-ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸エチレングリコール)、ポリ(炭酸エチレン)、ポリ L ラクチド-グリコリド コポリマー、ポリ L ラクチド-トリメチレンカーボネート コポリマー および ポリ L-ラクチドとブレンドされたものからなる群から選択される、請求項3の組成物。
【請求項5】
ポリマーが、ポリ(メタクリル酸n-ブチル)である、請求項4の組成物。
【請求項6】
化合物が、化合物およびポリマーの混合物中に少なくとも 25%(w/w)の量存在する、請求項4の組成物。
【請求項7】
化合物が、少なくとも 50%(w/w)の量存在する、請求項6の組成物。
【請求項8】
化合物が、少なくとも 75%(w/w)の量存在する、請求項6の組成物。
【請求項9】
化合物のうちラパマイシンへ代謝されるものが約 5% よりも少ない、請求項1の組成物。
【請求項10】
化合物のうちラパマイシンへ代謝されるものが約 1% よりも少ない、請求項1の組成物。
【請求項11】
化合物のうちラパマイシンへ代謝されるものが約 0.1% よりも少ない、請求項1の組成物。
【請求項12】
ひとつの剤形において、約 0.1 mg から 約 20 mg の化合物の1日全身投与量を有する、請求項1の組成物。
【請求項13】
化合物の1日全身投与量が、約 0.5 mg から 約 10 mg である、請求項12の組成物。
【請求項14】
化合物の1日全身投与量が、約 1 mg から 約 5 mg である、請求項12の組成物。
【請求項15】
体内での使用のための装置であって、
インプラント; および
請求項1の化合物の少なくとも1つの供給源
を含む装置。
【請求項16】
装置が、体内において細胞増殖を阻害するために、体の内腔または器官に対し化合物を放出するよう構成されている、請求項15の装置。
【請求項17】
装置が、体内において平滑筋細胞の増殖および炎症を阻害するために、体の内腔または器官に対し化合物を放出するよう構成されている、請求項16の装置。
【請求項18】
インプラントが血管補綴である、請求項15の装置。
【請求項19】
血管補綴が拡張可能な構造を含む、請求項18の装置。
【請求項20】
血管補綴が、ステント、移植片、または少なくとも部分的には開いた格子から形成される足場を含む、請求項18の装置。
【請求項21】
血管補綴がステントである、請求項20の装置。
【請求項22】
血管補綴が管腔側および組織に面する表面を有し、かつ、化合物が管腔側または組織に面する表面の少なくとも一方に結合している、請求項19の装置。
【請求項23】
装置上の化合物の量が、約 1 ナノグラム/cm2 から 約 1000 マイクログラム/cm2 である、請求項15の装置。
【請求項24】
装置上の化合物の量が、約 1 マイクログラム/cm2 から 約 500 マイクログラム/cm2 である、請求項23の装置。
【請求項25】
装置上の化合物の量が、約 10 マイクログラム/cm2 から 約 400 マイクログラム/cm2 である、請求項23の装置。
【請求項26】
隣接する組織における化合物の濃度が、約 0.001 ng/gm組織 から 約 1000 μg/gm組織である、請求項15の装置。
【請求項27】
隣接する組織における化合物の濃度が、約 1 ng/gm組織 から 約 500 μg/gm組織である、請求項26の装置。
【請求項28】
隣接する組織における化合物の濃度が、約 100 ng/gm組織 から 約 100 μg/gm組織である、請求項26の装置。
【請求項29】
約 1 日 から 約 2 年の期間の間に、化合物の少なくとも 75% が装置から放出される、請求項15の装置。
【請求項30】
約 3 日 から 約 6 ヶ月の期間の間に、化合物の少なくとも 90% が装置から放出される、請求項15の装置。
【請求項31】
約 1 週間 から 約 3 ヶ月の期間の間に、化合物の少なくとも 90% が装置から放出される、請求項15の装置。
【請求項32】
装置が治療剤をさらに含む、請求項15の装置。
【請求項33】
治療剤が、抗血小板剤、抗血栓剤、抗炎症剤、抗増殖剤、免疫抑制剤および抗癌剤からなる群から選択されるメンバーである、請求項32の装置。
【請求項34】
治療剤が、化合物の放出よりも前に、同時に、またはその後に放出される、請求項32の装置。
【請求項35】
化合物が第1の供給源から放出され、かつ、治療剤が第2の供給源から放出される、請求項34の装置。
【請求項36】
化合物および治療剤が単一の供給源から放出される、請求項34の装置。
【請求項37】
治療上有効な量の請求項1の化合物を、必要としている対象に対し投与することによって細胞増殖を阻害する方法。
【請求項38】
請求項1の化合物が、全身的、局所的またはそれらの組み合わせを介して投与される、請求項37の方法。
【請求項39】
請求項1の化合物の投与が、経口投与、座剤としての投与、局所接触、非経口、血管内、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、鼻腔内、肺、粘膜、経皮、眼部、皮下投与または髄腔内投与を介するものである、請求項37の方法。
【請求項40】
請求項1の化合物の投与が、一時的装置またはインプラントを通じた送達を介するものである、請求項37の方法。
【請求項41】
一時的装置が、カテーテルおよび多孔質バルーンからなる群から選択される、請求項40の方法。
【請求項42】
インプラントが血管補綴である、請求項40の方法。
【請求項43】
血管補綴が拡張可能な構造を含む、請求項42の方法。
【請求項44】
血管補綴が、ステント、移植片、または少なくとも部分的には開いた格子から形成される足場を含む、請求項42の方法。
【請求項45】
化合物の IC50 が、約 0.1 nM から 約 1 μMである、請求項37の方法。
【請求項46】
化合物の IC50 が、約 1 nM から 約 0.5 μMである、請求項45の方法。
【請求項47】
化合物の IC50 が、約 5 nM から 約 100 nMである、請求項45の方法。
【請求項48】
化合物の有効量が、約 0.1 mg から 約 20 mg である、請求項37の方法。
【請求項49】
化合物の有効量が、約 0.5 mg から 約 10 mg である、請求項48の方法。
【請求項50】
化合物の有効量が、約 1 mg から 約 5 mg である、請求項48の方法。
【請求項51】
下記式の化合物:
【化9】


[式中、
R1、R2、R3、R5、R6 および R8 は各々独立に、H、C1-6 アルキル および OH からなる群から選択されるメンバーである;
R4、R7 および R9 は各々独立に、C1-6 アルコキシ および OH からなる群から選択される;
R10 は H、-OH、-OP(O)Me2
【化10】

【化11】


、-O-(CH2)n-OH および -O-(CH2)m-O-(CH2)o-CH3 からなる群から選択されるメンバーであり、ここで、下付き文字 n および m は各々独立に 2 から 8 であり、下付き文字 o は 1 から 6 である;
L1 および L4 の各々は独立に、以下からなる群から選択される:
【化12】

および
【化13】


; L2 および L3 の各々は独立に、以下からなる群から選択される:
【化14】

【化15】

および
【化16】


; ただし、R1、R6 および R8 が Me であり、R3 および R5 が H であり、R4、R7 および R9 が OMe であり、R10 が OH であり、L2 および L3 が -CH=CH- であり、L1 および L4
【化17】

である場合は、R2 は OH 以外であることを条件とする;

ただし、R1、R6 および R8 が Me であり、R2、R3 および R5 が H であり、R7 および R9 が OMe であり、R10 が OH であり、L2 および L3 が -CH=CH- であり、L1 および L4
【化18】

である場合は、R4 は OH 以外であることを条件とする;

ただし、R1、R6 および R8 が Me であり、R2、R3 および R5 が H であり、R4 および R7 が OMe であり、R10 が OH であり、L2 および L3 が -CH=CH- であり、L1 および L4
【化19】

である場合は、R9 は OH 以外であることを条件とする;

ただし、R1、R6 および R8 が Me であり、R2、R3 および R5 が H であり、R4、R7 および R9 が OMe であり、L2 および L3 が -CH=CH- であり、L1 および L4
【化20】

である場合は、R10 は OH、-OP(O)Me2
【化21】

【化22】


、-O-(CH2)n-OH および -O-(CH2)m-O-(CH2)o-CH3 以外であることを条件とする]; および
その塩、水和物、異性体、代謝産物およびプロドラッグ。
【請求項52】
R10
【化23】

である、請求項51の化合物。
【請求項53】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8 および R9 の少なくとも1つが OH である、請求項52の化合物。
【請求項54】
R4 が OH である、請求項53の化合物。
【請求項55】
R10
【化24】

である、請求項51の化合物。
【請求項56】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8 および R9 の少なくとも1つが OH である、請求項55の化合物。
【請求項57】
R4 が OH である、請求項56の化合物。
【請求項58】
R10 が -OP(O)Me2 である、請求項51の化合物。
【請求項59】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8 および R9 の少なくとも1つが OH である、請求項58の化合物。
【請求項60】
R4 が OH である、請求項59の化合物。
【請求項61】
R10
【化25】

である、請求項51の化合物。
【請求項62】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8 および R9 の少なくとも1つが OH である、請求項61の化合物。
【請求項63】
R4 が OH である、請求項62の化合物。
【請求項64】
R10
【化26】

である、請求項51の化合物。
【請求項65】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8 および R9 の少なくとも1つが OH である、請求項64の化合物。
【請求項66】
R4 が OH である、請求項65の化合物。
【請求項67】
化合物が、図 2 の化合物である、請求項51の化合物。
【請求項68】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8 および R9 の少なくとも1つが OH である、請求項51の化合物。
【請求項69】
R4 が OH である、請求項68の化合物。
【請求項70】
請求項51の化合物を製造する方法であって、大環状ラクトンを酸と接触させてアルコキシ基を求核剤で置換すること、それによって請求項51の化合物を製造すること、を含む方法。
【請求項71】
大環状ラクトンがラパマイシンである、請求項70の方法。
【請求項72】
求核剤が、-OH、-SH および電子豊富な芳香族基からなる群から選択されるメンバーである、請求項71の方法。
【請求項73】
請求項51の化合物を製造する方法であって、大環状ラクトンをエポキシ化剤と接触させてアルケン基をエポキシドへ改変すること、それによって請求項51の化合物を製造すること、を含む方法。
【請求項74】
大環状ラクトンがラパマイシンである、請求項73の方法。
【請求項75】
エポキシ化剤が、過酸および過酸化物からなる群から選択されるメンバーである、請求項73の方法。
【請求項76】
エポキシ化剤が、メタ-クロロ-ペルオキシ安息香酸および過酸化水素からなる群から選択されるメンバーである、請求項75の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図2h】
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【図2i】
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【図2j】
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【図2k】
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【図2l】
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【図2m】
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【図2p】
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【図2s】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−503699(P2010−503699A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528458(P2009−528458)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/078317
【国際公開番号】WO2008/033956
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(509073497)エリクサー・メディカル・コーポレイション (2)
【氏名又は名称原語表記】ELIXIR MEDICAL CORPORATION
【Fターム(参考)】