説明

太陽電池の製造方法、太陽電池の製造装置及び太陽電池

【課題】薄膜太陽電池及びそれを製造する製造装置の低コスト化、薄膜太陽電池の品質向上、薄膜太陽電池の発電効率の向上を図る。
【解決手段】基板上に、第1の電極膜を減圧雰囲気下で形成し、その後、大気に曝すことなく、前記第1の電極膜上に、光電変換層を減圧雰囲気下で形成し、その後大気に曝すことなく、前記光電変換層上に、第2の電極膜を減圧雰囲気下で形成して、積層膜を形成する工程と、前記積層膜を分断して、前記基板上に併設された複数の太陽電池セルを形成する工程と、前記複数の太陽電池セルのうちの第1の太陽電池セルの前記第2の電極膜及び前記光電変換層を選択的に除去して、前記第1の電極膜を表出させ、前記第1の太陽電池セルに隣接する第2の太陽電池セルの前記第2の金属膜と、表出させた前記第1の電極膜と、を電気的に接続する製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の製造方法、太陽電池の製造装置及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の立場から、クリーンなエネルギーの研究開発が進められている。中でも、太陽電池は資源となる太陽光が無限であること、無公害であることから注目を集めている。
同一基板上に形成された複数の太陽電池セルが、直列接続された太陽電池(光電変換装置)の代表例は、薄膜太陽電池である。
薄膜太陽電池は、薄型で軽量、製造コストの安さ、大面積化が容易であることから、今後の太陽電池の主流となると考えられている。また、薄膜太陽電池は、電力供給用以外に、建物の屋根や窓などにとりつけて利用される業務用、一般住宅用にも需要が広がってきている。
【0003】
従来の薄膜太陽電池は、ガラス基板を用いているものが一般的であった。このような薄膜太陽電池は、ガラス基板上に、その下層から下部電極、半導体層からなる光電変換層、上部電極が積層された光電変換素子(またはセル)が複数形成されている。そして、任意の光電変換素子の上部電極と、これに隣接する光電変換素子の下部電極とを電気的に接続する構成が繰り返されている。これにより、最初の光電変換素子の上部電極と最後の光電変換素子の下部電極との間に必要な電圧が出力される。
【0004】
このような光電変換素子間の直列接続は、電極層と光電変換層の成膜と各層のパターニング、およびこれらの組み合わせによりなされる。そして、最近では、基板上に積層された膜をレーザ加工により分断して、光電変換素子を直列接続する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−060219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した方法は、直列接続するための配線工程や製造工程中での位置合わせが複雑になり、簡便な方法で太陽電池を製造したものではない。
【0007】
本発明は、上述した直列接続を簡略化することにより、太陽電池及びそれを製造する製造装置の低コスト化を図ると共に、太陽電池の品質を向上し、太陽電池の発電効率が向上する太陽電池の製造方法、太陽電池の製造装置及び太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、基板上に、複数の太陽電池セルが直列に接続された太陽電池の製造方法であって、前記基板上に、第1の電極膜を減圧雰囲気下で形成し、その後、大気に曝すことなく、前記第1の電極膜上に、光電変換層を減圧雰囲気下で形成し、その後大気に曝すことなく、前記光電変換層上に、第2の電極膜を減圧雰囲気下で形成して、積層膜を形成する工程と、前記積層膜を分断して、前記基板上に併設された前記複数の太陽電池セルを形成する工程と、前記複数の太陽電池セルのうちの第1の太陽電池セルの前記第2の電極膜及び前記光電変換層を選択的に除去して、前記第1の電極膜を表出させ、
前記第1の太陽電池セルに隣接する第2の太陽電池セルの前記第2の金属膜と、表出させた前記第1の電極膜と、を電気的に接続する工程と、を備えたことを特徴とする太陽電池の製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、基板上に、複数の太陽電池セルが直列に接続された太陽電池の製造装置であって、前記基板上に、第1の電極膜を減圧雰囲気下で形成し、その後、大気に曝すことなく、前記第1の電極膜上に、光電変換層を減圧雰囲気下で形成し、その後大気に曝すことなく、前記光電変換層上に、第2の電極膜を減圧雰囲気下で形成して、積層膜を形成する第1の手段と、前記積層膜を分断して、前記基板上に併設された前記複数の太陽電池セルを形成する第2の手段と、前記併設された前記複数の太陽電池セルのうちの前記第1の太陽電池セルの前記第2の電極膜及び前記光電変換層を選択的に除去して、前記第1の電極膜を表出させ、前記第2の太陽電池セルの前記第2の金属膜と、表出させた前記第1の電極膜と、を接続する第3の手段と、を備えたことを特徴とする太陽電池の製造装置が提供される。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、基板上に形成された、第1の電極膜と、前記第1の電極膜の上に設けられた光電変換層と、前記光電変換層の上に設けられた第2の電極膜と、を含む積層膜が一括して分断されて前記基板上に併設された複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セルを直列に接続する接続部材と、を備えたことを特徴とする太陽電池が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽電池及びそれを製造する製造装置の低コスト化がなされ、太陽電池の品質が向上し、太陽電池の発電効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係わる薄膜太陽電池を説明する要部図である。
【図2】製造装置の構成を説明するための要部図である。
【図3】薄膜太陽電池の製造方法を説明するための要部図である。
【図4】薄膜太陽電池の製造方法を説明するための要部図である。
【図5】薄膜太陽電池の製造方法を説明するための要部図である。
【図6】薄膜太陽電池の製造方法を説明するための要部図である。
【図7】薄膜太陽電池の比較例を説明するための要部図である。
【図8】薄膜太陽電池の製造工程の変形例を説明するための要部図である。
【図9】薄膜太陽電池の製造工程の変形例を説明するための要部図である。
【図10】薄膜太陽電池の製造工程の別の変形例を説明するための要部図である。
【図11】薄膜太陽電池の製造工程のさらに別の変形例を説明するための要部図である。
【図12】薄膜太陽電池の製造工程のさらに別の変形例を説明するための要部図である。
【図13】薄膜太陽電池の製造工程のさらに別の変形例を説明するための要部図である。
【図14】本実施の形態に係る薄膜太陽電池の変形例を説明する要部図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本実施の形態に係る薄膜太陽電池を説明する要部図である。すなわち、図1は、薄膜太陽電池(太陽電池モジュール)1aの要部斜視図である。
薄膜太陽電池1aは、主に、基板10と、基板10に複数形成された太陽電池セル20と、それぞれの太陽電池セル20を電気的に直列状に接続する金属ワイヤ30と、を含む。
【0015】
それぞれの太陽電池セル20は、その下層から、下部電極としての透明電極層20a、薄膜半導体材からなる光電変換層20b、金属電極層20cが積層されている。それぞれの太陽電池セル20には、局部的に透明電極層20aが表出した孔部20haが設けられている。そして、孔部20haの底における透明電極層20aと、隣接する太陽電池セル20の金属電極層20cとが、金属ワイヤ30により電気的に接続されている。
【0016】
なお、このような太陽電池セル20は、図示する個数に限らず、必要とされる出力電圧に応じて、その数が調節される。そして、上述した電気的な接続を繰り返すことにより、直列接続の最初の太陽電池セルの上部電極と、直列接続の最後の太陽電池セルの下部電極と、の間で必要な電圧が出力される。
【0017】
なお、溝tr1を隔てた、それぞれの太陽電池セル20は、平面状の透明電極層20a、光電変換層20b及び金属電極層20cの積層体を一括でレーザスクライブなどの方法で分断することにより形成する(後述)。
【0018】
基板10の材質としては、例えば、ガラス、絶縁性樹脂フィルムが適用される。
また、透明電極層20aとしては、いわゆるTCO(Transparent Conductive Oxide)等が適用される。その代表的なものとして、ITO(Indium Tin Oxide)が挙げられる。
【0019】
また、光電変換層20bの材質としては、シリコン系、化合物系の半導体材が適用される。例えば、その代表的なものとして、アモルファスシリコン、CIGS(Cu(InGa)Se)等が挙げられる。このような光電変換層20bは、例えば、p型とn型の半導体層が接合した構造を有している。そして、光電変換層20bに光が吸収されると、光起電力効果により透明電極層20a−金属電極層20c間に電力(電圧)が発生する。
【0020】
金属電極層20cの材質としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)が適用される。
透明電極層20aの膜厚は、例えば1μm程度であり、光電変換層20bの膜厚は、例えば2μm程度であり、金属電極層20cの膜厚は、例えば1μm程度である。
太陽電池セル20については、基本的な3層構造を例示したが、本実施の形態については、3層以上の構成であっても対応可能である。
また、溝tr1の幅は、例えば、50μmである。
【0021】
次に、薄膜太陽電池製造装置(以下、製造装置)を用いて、薄膜太陽電池1aを製造する工程について説明する。
図2は、製造装置の構成を説明するための要部図である。すなわち、図2は、製造装置M1aのブロック図である。また、図3〜図6は、薄膜太陽電池1aの製造方法を説明するための要部図である。
【0022】
図2に示すように、製造装置M1aは、成膜ユニットU1と、レーザ加工ユニットU2と、配線加工ユニットU3と、を含む。成膜ユニットU1では、減圧雰囲気で基板10に成膜処理が行われる。レーザ加工ユニットU2では、大気中で被膜のレーザ加工が行われる。配線加工ユニットU3では、上述した直列接続のための配線が行われる。これらの各ユニットU1〜U3間は、相互に行き来することができる。また、これらの各ユニットU1〜U3を直線状に近接して配列することにより、製造装置M1aの小型化が実現できる。また、各ユニットU1〜U3内での処理を連続して行うことができる。
【0023】
次に、上述した製造装置M1aを用いて薄膜太陽電池1aを製造する方法を具体的に説明する。
まず、基板10を製造装置M1aの成膜ユニットU1内に設置し、図3(a)に示すように、矩形状の基板10上に、平面状(べた状)の透明電極層20a、光電変換層20b及び金属電極層20cをスパッタリング法、PVD(Physical Vapor Deposition)法あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより形成する。これにより、基板10上に、透明電極層20a、光電変換層20b及び金属電極層20cで構成される、平面状の積層体20lが形成される。これらの透明電極層20a、光電変換層20b及び金属電極層20cは、それぞれ大気に晒されることなく形成される。
【0024】
次に、積層体20l及び基板10をレーザ加工ユニットU2に移動して、図3(b)に示すように、積層体20lにレーザスクライブを施す。これにより、基板10上の積層体20lが所定の幅に短冊状に分断される。
すなわち、基板10上に形成された、透明電極層20a、光電変換層20b及び金属電極層20cに一括でレーザスクライブ加工を施して、レーザを照射した部分に溝tr1を形成する。
【0025】
さらに、それぞれの短冊状の積層体20lにおける、光電変換層20b及び金属電極層20cの少なくとも1箇所にレーザ加工(レーザスクライブ)を施す。そして、透明電極層20a上の光電変換層20b及び金属電極層20cを選択的にスポット状に除去する。この状態を、図4(a)に示す。これにより、それぞれの短冊状の積層体20lに、透明電極層20aが露出された孔部20haが形成される。
【0026】
次に、短冊状の積層体20l及び基板10を配線加工ユニットU3に移動し、孔部20haにおいて露出している透明電極層20aと、これに隣接する積層体20lの金属電極層20cとを金属ワイヤ30を通じて電気的に接続する。この状態を、図4(b)に示す。
このような工程により、基板10上に複数の太陽電池セル20が設けられた薄膜太陽電池1aが形成される。
【0027】
図5は、薄膜太陽電池1aの上面図である。
図5に示すように、薄膜太陽電池1aの各太陽電池セル20の少なくとも一箇所には、透明電極層20aが表出した孔部20haが設けられている。そして、ある太陽電池セル20の孔部20haにおいて露出した透明電極層20aと、これに隣接する太陽電池セル20の金属電極層20cと、が金属ワイヤ30を通じて電気的に接続されている。このような電気的な接続の繰り返しによって、直列接続の最初の太陽電池セル20の透明電極層20aと、直列接続の最後の太陽電池セル20の金属電極層20cとの間に、必要な電圧が出力される。
【0028】
なお、図5では、1個の太陽電池セル20に対し、2個の孔部20haを設けた例を示している。しかし、本実施の形態では、この数に限定する必要はない。必要に応じて、孔部20haの数を2個より増減してもよい。
また、図5においては、隣接する孔部20ha及び金属ワイヤ30を直線状に配置した例を示した。しかし、本実施の形態では、その配置に限定する必要はない。
【0029】
例えば、図6(a)に示すように、1個おきに孔部20ha及び金属ワイヤ30の位置をずらして配置してもよい。これにより、金属電極層20cに接合する金属ワイヤ30の自由度が増加する。また、図5に示す形態よりも、太陽電池セル20の幅(溝tr1に対し略垂直方向の幅)をより狭くしても、金属ワイヤ30の接合部分の自由度が増す。従って、図6(a)では、図5に示す形態よりも、太陽電池セル20の数の増加を図ることができる。
【0030】
また、それぞれの太陽電池セル20においては、図6(b)に示すように、溝tr1に対し略垂直となる溝tr2を複数個形成して、短冊状の太陽電池セル20を、その長手方向に複数に分断し格子状としてもよい。そして、透明電極層20aを露出するための孔部20hbを溝tr2に対し略平行に形成して、格子状に分断した太陽電池セル20同士を金属ワイヤ30により直列状に接続してもよい。このような構成によれば、薄膜太陽電池1aの発電単位がさらに小さくなる。これにより、所望の出力電圧に応じて、チップ状の太陽電池セルの数を自由に選択することができる。すなわち、チップ状の太陽電池セルの個数を適宜変更して、それらを直列状に接続することにより、出力電圧の異なる薄膜太陽電池を容易に形成することができる。
なお、配線加工ユニットU3で行われる電気的な接続は、上述した金属ワイヤ30の他、導電性ペースト、導電性塗料、導電性テープ等の接続手段に依ってもよい。
【0031】
このように、本実施の形態では、積層体20lを予め形成した後、一括で積層体20lのレーザスクライブを行っている。このような方法では、薄膜太陽電池1aを製造する際、真空開放は、レーザスクライブを行う1回のみで足りる。また、この1回のみのレーザスクライブは、積層体20lが上述した3層よりも、さらに多層となっても実現可能である。
【0032】
その結果、各層においては、各層の成膜とパターニング(レーザスクライブ)とを交互に繰り返さないので、レーザスクライブの際にスプラッシュ等で発生するゴミの太陽電池セル20への再付着が最小限に抑制される。その結果、薄膜太陽電池1aの製品歩留まりが向上する。
【0033】
また、レーザスクライブにおいては、透明電極層20a、光電変換層20b及び金属電極層20cで構成される積層体20lを一括でレーザスクライブすることから、複雑な位置決め精度を要しない。また、一括加工により、製造工程数が減少することから、薄膜太陽電池1a及び製造装置M1aのコスト高を招来することがない。
【0034】
また、それぞれの太陽電池セル20は、一本の溝tr1により分断されていることから、発電に寄与しない部分の面積を減らすことができる(後述)。これにより、発電効率が向上する。
【0035】
例えば、図7は、薄膜太陽電池の比較例を説明するための要部図である。
この薄膜太陽電池100では、基板10にまで貫通する溝traと、透明電極層20aにまで貫通する溝trb及び溝trcが形成されている。そして、溝traにより透明電極層20aが互いに分離されている。また、溝trb内に金属電極層20cが埋設されている。これにより、隣接する太陽電池セル200同士が直列状に電気的に接続されている。
このような形態では、レーザスクライブを行うための真空開放は、透明電極層20aを形成してから溝traを形成する1回目と、光電変換層20bを形成してから溝trbを形成する2回目と、金属電極層20cを形成してから溝trcを形成する3回目という、計3回の真空開放を要する。
【0036】
従って、レーザスクライブの際にスプラッシュ等で発生するゴミの太陽電池セル200の各層への再付着の頻度が太陽電池セル20を形成する際より多くなってしまう。
【0037】
また、薄膜太陽電池100では、その都度、レーザスクライブを実行する必要があることから、各レーザスクライブ工程において複雑な位置決め精度が必要とされる。また、レーザスクライブ工程が一括加工でないので、製造工程数が増加していまい、薄膜太陽電池及び製造装置のコスト高を招来してしまう。
【0038】
また、それぞれの太陽電池セル200は、発電に寄与しない部分(図中のAの部分)が残存している。その分、各セル幅の狭小化を図ることができない。このAの部分の長さは、溝traに略垂直な方向で、例えば、300μmから400μmとなり、溝tr1にくらべ幅広い。これに対し、薄膜太陽電池1aでは、図7に示すAの部分が存在せず、溝tr1を隔てて、太陽電池セル20が基板10上に設けられている。
このように、本実施の形態では、上述したような有利な効果を有している。
【0039】
なお、図示はしないが、太陽電池セル20は、略正方形としてもよく、その際の太陽電池セル20の配列を碁盤目状としてもよい。また、各溝tr1は、それぞれ並行である必要もなく、必要に応じて、非平行としてもよい。また、各太陽電池セル20の幅、形状は、それぞれ同一である必要もない。また、太陽電池セル20における電気的な接続部分は、各太陽電池セル20において何箇所あっても構わない。また、各太陽電池セル20において、その接続部分の位置が異なっていてもよい。
【0040】
また、上記の構成では、太陽電池セル20の構成を3層構造としたが、さらに多層の膜を形成した太陽電池(タンデム型、トリプル形)についても対応可能であり、レーザスクライブ加工時の積層膜の層数に制約がない。
【実施例2】
【0041】
次に、薄膜太陽電池製造装置を用いた薄膜太陽電池の製造工程の変形例について説明する。
図8、図9は、薄膜太陽電池の製造工程の変形例を説明するための要部図である。
【0042】
まず、図8(a)に示すように、基板10を製造装置M1aの成膜ユニットU1内に設置し、基板10上に、平面状の透明電極層20a、光電変換層20b及び金属電極層20cを形成する。すなわち、基板10上に、透明電極層20a、光電変換層20b及び金属電極層20cで構成される、平面状の積層体20lを形成する。積層体20lは、PVD法あるいはCVD法により形成する。
【0043】
次に、積層体20l及び基板10をレーザ加工ユニットU2に移動して、図8(b)に示すように、積層体20lにレーザスクライブを施す。これにより、積層体20lの中、光電変換層20b及び金属電極層20cのみが所定の幅に分断される。すなわち、光電変換層20b及び金属電極層20cとを、所定の間隔で分断する溝tr3を形成する。これにより、透明電極層20aの表面の一部が露出する。
【0044】
次に、図8(c)に示すように、溝tr3内で露出した透明電極層20aの一部にレーザスクライブを施し、露出した透明電極層20aの一部を所定の幅に分断する。これにより、基板10の表面の一部が露出する。
なお、図8(c)に示す工程は、波長の異なる2つのレーザを備えたレーザ加工装置を用いて処理してもよい。例えば、光電変換層20b及び金属電極層20cを加工する際のレーザの波長と、透明電極層20aを加工する際のレーザの波長を連続で切り替えて、図8(c)に示す工程を一括で処理してもよい。
【0045】
次に、溝tr3を形成した積層体20l、及び基板10を配線加工ユニットU3に移動し、図9(a)に示すように、溝tr3内において露出している透明電極層20aの一部が表出したまま、溝tr3の両側の側面20lw及び角部20lc近傍を選択的に絶縁部材40で被覆する。これにより、図中の矢印aで示す積層体20lの透明電極層20aの一部、側面20lw及び角部20lc近傍が絶縁部材40で被覆される。また、図中の矢印bで示す積層体20lの側面20lw及び角部20lc近傍が絶縁部材40で被覆される。このような絶縁部材40の被覆は、例えば、インクジェット塗布法、ディスペンス塗布法、転写法、印刷法のいずれかよって行う。また、このような処理に従えば、絶縁部材40の被覆が迅速かつ低コストになる。なお、絶縁部材40の材質は、無機材ペースト、有機樹脂、有機塗料等が該当する。
【0046】
そして、図9(b)に示すように、矢印aで示す積層体20lと、矢印bで示す積層体20lに形成された絶縁部材40の間隙から、矢印bで示す積層体20lの金属電極層20c表面まで連続するように、導電性接続部材50を形成して、矢印aで示す積層体20lの透明電極層20aと、矢印bで示す積層体20lの金属電極層20cとを電気的に接続する。
【0047】
このような導電性接続部材50の形成は、例えば、インクジェット塗布法、ディスペンス塗布法、転写法、印刷法、貼り付け法のいずれかよって行う。また、このような処理に従えば、導電性接続部材50の形成を迅速かつ低コストで行うことができる。なお、導電性接続部材50の材質は、導電性ペースト、導電性塗料、低温半田、ナノ銀微粒子、カーボンナノチューブ、ナノ銀微粒子含有導電性ペースト、カーボンナノチューブ含有導電性ペースト等が該当する。
【0048】
このような工程により、基板10上に形成された、矢印aで示す太陽電池セル20と、矢印bで示す太陽電池セル20とが直列に接続される。
【0049】
また、実施例2においても、真空開放は1回のみなので、実施例1と同様の効果が得られる。特に、実施例2では、絶縁部材40、導電性接続部材50の形成をインクジェット塗布法、ディスペンス塗布法、転写法、印刷法のいずれかよって実施している、従って、配線加工が迅速かつ低コストになる。これにより、薄膜太陽電池の生産性がさらに向上する。
【実施例3】
【0050】
次に、薄膜太陽電池製造装置を用いた薄膜太陽電池の製造工程のさらに別の変形例について説明する。この実施例3では、積層体20lのレーザスクライブ加工については、図8と同様なので、その次の工程から説明する。
【0051】
上述した溝tr3を形成した積層体20l、及び基板10を配線加工ユニットU3に移動し、図10(a)に示すように、溝tr3内に絶縁部材40を埋設する。このような絶縁部材40の埋設は、例えば、インクジェット塗布法、ディスペンス塗布法、転写法、印刷法のいずれかよって行う。このような処理に従えば、絶縁部材40の被覆が迅速かつ低コストになる。なお、絶縁部材40の材質は、無機材ペースト、有機樹脂、有機塗料等が該当する。これにより、矢印aで示す積層体20lの透明電極層20a、側面20lw及び角部20lc近傍が絶縁部材40で被覆される。また、矢印bで示す積層体20lの側面20lw及び角部20lc近傍が絶縁部材40で被覆される。
【0052】
次に、積層体20l及び基板10を再びレーザ加工ユニットU2に移動し、図10(b)に示すように、絶縁部材40にレーザスクライブ加工を施す。これにより、絶縁部材40の中央部に溝tr4が形成され、図中の矢印aで示す積層体20lの透明電極層20aが露出する。なお、絶縁部材40の中央部のみに溝tr4を形成したことから、図中の矢印a,bで示す積層体20lの透明電極層20aの一部、側面20lw及び角部20lc近傍は、絶縁部材40で被覆されている。
【0053】
そして、積層体20l及び基板10を、再び配線加工ユニットU3に移動し、図10(c)に示すように、溝tr4内から矢印bで示す積層体20lの金属電極層20c表面まで連続するように、導電性接続部材50を形成する。これにより、矢印aで示す積層体20lの透明電極層20aと、矢印bで示す積層体20lの金属電極層20cとが電気的に接続される。
【0054】
このような導電性接続部材50の形成は、例えば、インクジェット塗布法、ディスペンス塗布法、転写法、印刷法、貼り付け法のいずれかよって行う。このような処理に従えば、導電性接続部材50の形成が迅速かつ低コストになる。なお、導電性接続部材50の材質は、導電性ペースト、導電性塗料、低温半田、ナノ銀微粒子、カーボンナノチューブ、ナノ銀微粒子含有導電性ペースト、カーボンナノチューブ含有導電性ペースト等が該当する。
【0055】
このような工程により、基板10上に形成された、矢印aで示す太陽電池セル20と、矢印bで示す太陽電池セル20とが直列に接続される。
【0056】
また、実施例3においても、真空開放は1回のみなので、実施例1と同様の効果が得られる。特に、実施例3では、絶縁部材40、導電性接続部材50の形成をインクジェット塗布法、ディスペンス塗布法、転写法、印刷法のいずれかよって実施していることから、配線加工が迅速かつ低コストになる。これにより、薄膜太陽電池の生産性がさらに向上する。
【実施例4】
【0057】
次に、薄膜太陽電池製造装置を用いた薄膜太陽電池の製造工程のさらに別の変形例について説明する。この実施例4では、積層体20lのレーザスクライブ加工については、図8と同様なので、その次の工程から説明する。
【0058】
上述した溝tr3を形成した積層体20l、及び基板10を配線加工ユニットU3に移動し、図11(a)に示すように、溝tr3内及び積層体20l上に平面状の絶縁部材41を形成する。このような絶縁部材41の形成は、例えば、インクジェット塗布法、ディスペンス塗布法、転写法、印刷法、貼り付け法のいずれかよってなされる。また、このような処理に従えば、絶縁部材41の形成が迅速かつ低コストになる。なお、絶縁部材41の材質は、樹脂フィルム、有機樹脂、有機塗料、無機材ペースト等が該当する。これにより、図中の矢印aで示す積層体20lの透明電極層20a、側面20lw及び角部20lc近傍が絶縁部材41で被覆される。また、図中の矢印bで示す積層体20lの側面20lw及び角部20lc近傍が絶縁部材41で被覆される。
【0059】
次に、積層体20l及び基板10を、再びレーザ加工ユニットU2に移動し、図11(b)に示すように、絶縁部材41の2箇所にレーザスクライブ加工を施す。これにより、溝tr3内に形成した絶縁部材41の中央部に溝tr4が形成され、矢印aで示す積層体20lの透明電極層20aが露出する。また、矢印bで示す積層体20l上の絶縁部材41にも溝tr5が形成され、金属電極層20cが露出する。
【0060】
なお、溝tr3内に形成した絶縁部材41の中央部のみに溝tr4を形成したことから、矢印aで示す積層体20lの透明電極層20aの一部、側面20lw及び角部20lc近傍は、絶縁部材41で被覆されている。また、矢印bで示す積層体20lの側面20lw及び角部20lc近傍は、絶縁部材41で被覆されている。
【0061】
そして、積層体20l及び基板10を、再び配線加工ユニットU3に移動し、図11(c)に示すように、溝tr4内から溝tr5内に連続するように、導電性接続部材50を形成する。これにより、矢印aで示す積層体20lの透明電極層20aと、矢印bで示す積層体20lの金属電極層20cとが電気的に接続される。
【0062】
このような導電性接続部材50の形成は、例えば、インクジェット塗布法、ディスペンス塗布法、転写法、印刷法、貼り付け法のいずれかよって行う。このような処理に従えば、導電性接続部材50の形成が迅速かつ低コストになる。なお、導電性接続部材50の材質は、導電性ペースト、導電性塗料、低温半田、ナノ銀微粒子、カーボンナノチューブ、ナノ銀微粒子含有導電性ペースト、カーボンナノチューブ含有導電性ペースト等が該当する。
【0063】
このような工程により、基板10上に形成された、矢印aで示す太陽電池セル20と、矢印bで示す太陽電池セル20とが直列に接続される。
【0064】
また、実施例4においても、真空開放は1回のみなので、実施例1と同様の効果が得られる。特に、実施例4では、絶縁部材41、導電性接続部材50の形成をインクジェット塗布法、ディスペンス塗布法、転写法、印刷法、貼り付け法のいずれかよって実施していることから、配線加工が迅速かつ低コストで行われる。絶縁部材41が積層体20lの保護層となるので、電池としての信頼性が高まる。また、別途、保護膜を設ける工程が不要になる。これにより、薄膜太陽電池の生産性がさらに向上する。
【実施例5】
【0065】
次に、薄膜太陽電池製造装置を用いた薄膜太陽電池の製造工程のさらに別の変形例について説明する。この実施例5では、積層体20lのレーザスクライブ加工については、図8と同様なので、その次の工程から説明する。
【0066】
上述した溝tr3を形成した積層体20l、及び基板10を配線加工ユニットU3に移動し、図12(a)に示すように、溝tr3内に形成した透明電極層20aの一部、及び矢印bで示す積層体20lの金属電極層20cの一部に、撥水部材60を形成する。すなわち、これらの部分において撥水化処理が施される。撥水部材60は、例えば、撥水加工用の薬剤が該当する。また、撥水化処理は、上述した撥水部材60を形成するほか、この部分に選択的にレーザ処理、プラズマ処理(表面撥水基形成)等を施して、撥水化させてもよい。
【0067】
次に、図12(b)に示すように、平面状の絶縁部材41を形成する。このような絶縁部材41の形成は、例えば、インクジェット塗布法、ディスペンス塗布法、転写法、印刷法のいずれかよってなされる。但し、溝tr3内に形成された透明電極層20aの一部、及び矢印bで示す積層体20lの金属電極層20cの一部には撥水化加工が施されている。 従って、これらの部分への絶縁部材41の付着は抑制されて、図示するように、溝tr3内に形成した絶縁部材41の中央部に溝tr4が生成され、矢印aで示す積層体20lの透明電極層20aの一部が露出する。また、矢印bで示す積層体20l上の絶縁部材41にも溝tr5が生成され、金属電極層20cが露出する。すなわち、透明電極層20aと金属電極層20cとを電機的に接続する部分以外に絶縁部材41が形成される。なお、絶縁部材41の材質は、有機樹脂、有機塗料、無機材ペースト等が該当する。
【0068】
なお、溝tr3内に形成した絶縁部材41の中央部のみに溝tr4が生成することから、矢印aで示す積層体20lの透明電極層20aの一部、側面20lw及び角部20lc近傍は、絶縁部材41で被覆されている。また、矢印bで示す積層体20lの側面20lw及び角部20lc近傍は、絶縁部材41で被覆されている。
【0069】
そして、図12(c)に示すように、溝tr4内から溝tr5内に連続するように、導電性接続部材50を形成する。これにより、矢印aで示す積層体20lの透明電極層20aと、矢印bで示す積層体20lの金属電極層20cとが電気的に接続される。
【0070】
このような導電性接続部材50の形成は、例えば、インクジェット塗布法、ディスペンス塗布法、転写法、印刷法、貼り付け法のいずれかよって行う。また、このような処理に従えば、導電性接続部材50の形成が迅速かつ低コストになる。なお、導電性接続部材50の材質は、導電性ペースト、導電性塗料、低温半田、ナノ銀微粒子、カーボンナノチューブ、ナノ銀微粒子含有導電性ペースト、カーボンナノチューブ含有導電性ペースト等が該当する。
【0071】
このような工程により、基板10上に形成された、矢印aで示す太陽電池セル20と、矢印bで示す太陽電池セル20とが直列に接続される。
また、実施例5においても、真空開放は1回のみなので、実施例1と同様の効果が得られる。特に、実施例5では、絶縁部材41、導電性接続部材50の形成をインクジェット塗布法、ディスペンス塗布法、転写法、印刷法、貼り付け法のいずれかよって実施していることから、配線加工が迅速かつ低コストになる。また、実施例4のように絶縁材をレーザスクライブで除去せずに実施可能となるので、より生産性が高い。これにより、薄膜太陽電池の生産性がさらに向上する。
【実施例6】
【0072】
次に、薄膜太陽電池製造装置を用いた薄膜太陽電池の製造工程のさらに別の変形例について説明する。
図13は、薄膜太陽電池の製造工程のさらに別の変形例を説明するための要部図である。
【0073】
まず、上述したように、基板10上に、平面状の透明電極層20a、光電変換層20b及び金属電極層20cを形成した後、この積層体20l及び基板10をレーザ加工ユニットU2に移動する。そして、図13(a)に示すように、積層体20lの上方からレーザスクライブを施す。これにより、積層体20lが溝tr3を隔てて分断される。但し、実施例6では、矢印a、bで示す積層体20lの透明電極層20aと光電変換層20bとのあいだと、光電変換層20bと金属電極層20cとの間に段差が形成されるようにレーザ加工を施す。
【0074】
例えば、図13(a)に表したように、分断された積層体20lの側面において、金属電極層20cの側面20cwは、光電変換層20bの側面20bwよりも後退している。また例えば、光電変換層20bの側面20bwは、透明電極層20aの側面20awよりも後退している。
【0075】
このような加工を実施することにより、例えば、積層体20lの側面に露出する光電変換層20bの沿面距離を長くして、透明電極層20aと金属電極層20cとの間のリークを抑制できる。また、例えば、金属電極層20cを加工した後に光電変換層20bをレーザ加工する際には、金属電極層20cの側面20cwと光電変換層20bの側面20bwとの距離が離れた状態になる。従って、光電変換層20bをレーザスクライブする際に、積層体20lの側面での熱変質によるリークが抑制される。
【0076】
そして、この後においては、上述したように、絶縁部材40と導電性接続部材50を形成して、矢印aで示す積層体20lの透明電極層20aと、矢印bで示す積層体20lの金属電極層20cとが電気的に接続される。この状態を、図13(a)に示す。
このような工程により、基板10上に形成された、矢印aで示す太陽電池セル20と、矢印bで示す太陽電池セル20とが直列に接続される。
【0077】
また、実施例6においても、真空開放は1回のみなので、実施例1と同様の効果が得られる。特に、実施例6では、上述した段差を設けながらレーザ加工を施すので、積層体20lの側面20lwへのスプラッシュの再付着が抑制されて、高品質の薄膜太陽電池が形成される。
【0078】
なお、実施例1〜実施例6においては、金属ワイヤ30、導電性接続部材50を接合する箇所に、これらの導電材の濡れ性(密着性)を向上させるために、親水化処理を施してもよい。例えば、プラズマ処理、超音波処理、薬剤塗布、水洗等を施して、接合部分に親水化処理を施してもよい。
【0079】
このような処理をすることにより、(1)図12に例示した場合とは逆に、導電性接続部材を形成したい部分のみが親水化される。(2)また、撥水化処理、親水化処理の両方を行うことにより、より確実に金属ワイヤ30、導電性接続部材50の接続を達成でき、さらに絶縁性も良好になる。
【0080】
また、レーザ加工の代わりに、エッチング(例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング)によって、それぞれの太陽電池セルに分断する溝を形成してもよい。
また、本実施の形態では、基板10として透明基板を用いているので、レーザ光を入射する方向は、積層体20lの金属電極層20cから透明電極層20aの方向でもよく、透明電極層20aから金属電極層20cの方向でもよい。特に、透明電極層20aから金属電極層20cの方向に入射する場合には、例えば、図3に例示する積層膜20lの積層順序を逆に形成した積層膜に対し有効である。また、レーザ光の入射は、基板10に対し、素直入射、斜め入射も含む。さらに、基板10及び積層膜20lを地面に対し、立てかけて、上述したレーザスクライブ処理を施してもよい。また、予め基板10に透明電極層20aが形成された透明導電ガラスを用いてもよい。このような基板を用いても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0081】
また、電気的な接続を図る前に、積層膜20lを分断して形成された溝内の少なくとも一部、または複数の太陽電池セル20のそれぞれの表面の少なくとも一部に洗浄処理を施して、レーザスクライブ、エッチングによって発生し、積層膜20lに付着したゴミ等を除去してもよい。
例えば、図14は、本実施の形態に係る薄膜太陽電池の変形例を説明する要部図である。
【0082】
この図に示されたように、製造装置M1bは、成膜ユニットU1と、レーザ加工ユニットU2と、配線加工ユニットU3と、表面処理ユニットU4を含む。このような表面処理ユニットU4を、製造装置M1b内に組み込むことで、上述した表面処理を行うことができる。なお、表面処理ユニットU4では、洗浄処理のほか、上述した撥水化処理、親水化処理も併せて実施できる。このように、表面処理ユニットU4では、積層膜20lを分断して形成された溝内の少なくとも一部、または複数の太陽電池セル20のそれぞれの表面の少なくとも一部に表面処理が施され、その部分の表面改質が行われる。
【0083】
また、本実施の形態では、絶縁部材41の材質が親水性であっても、撥水性であっても、対応可能である。
例えば、図12には、導電性接続部材50を透明電極層20a、金属電極層20cに接合させる部分以外に絶縁部材41を形成している。そして、導電性接続部材50を透明電極層20a、金属電極層20cに接合させる部分、すなわち、絶縁部材41を配置しない部分に、選択的に撥水部材60を形成させている。
ここで、親水性の絶縁部材41を用いる場合は、絶縁部材41を形成する下地に選択的に親水化処理を施してもよい。また、撥水性の絶縁部材41を用いる場合は、絶縁部材41を形成しない部分に、選択的に撥水化処理を施してもよい。
【0084】
また、本実施の形態では、金属ワイヤ30、導電性接続部材50の材質が親水性であっても、撥水性であっても対応可能である。
例えば、親水性の金属ワイヤ30、導電性接続部材50を用いる場合は、金属ワイヤ30、導電性接続部材50を接合する下地に、親水化処理を施してもよい。また、撥水性の金属ワイヤ30、導電性接続部材50を用いる場合には、金属ワイヤ30、導電性接続部材50を接合する下地以外の部分に、撥水化処理を施してもよい。
【0085】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本実施の形態はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、以上の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその形成、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて複合することができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものも含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1a 薄膜太陽電池
10 基板
20 太陽電池セル
20a 透明電極層
20b 光電変換層
20c 金属電極層
20ha、20hb 孔部
20l 積層体
20lw、20aw、20bw、20cw 側面
20lc 角部
30 金属ワイヤ
40、41 絶縁部材
50 導電性接続部材
60 撥水部材
M1a、M1b 製造装置
U1 成膜ユニット
U2 レーザ加工ユニット
U3 配線加工ユニット
U4 表面処理ユニット
tr1、tr2、tr3、tr4、tr5、tra、trb、trc 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、複数の太陽電池セルが直列に接続された太陽電池の製造方法であって、
前記基板上に、第1の電極膜を減圧雰囲気下で形成し、その後、大気に曝すことなく、前記第1の電極膜上に、光電変換層を減圧雰囲気下で形成し、その後大気に曝すことなく、前記光電変換層上に、第2の電極膜を減圧雰囲気下で形成して、積層膜を形成する工程と、
前記積層膜を分断して、前記基板上に併設された前記複数の太陽電池セルを形成する工程と、
前記複数の太陽電池セルのうちの第1の太陽電池セルの前記第2の電極膜及び前記光電変換層を選択的に除去して、前記第1の電極膜を表出させ、
前記第1の太陽電池セルに隣接する第2の太陽電池セルの前記第2の金属膜と、表出させた前記第1の電極膜と、を電気的に接続する工程と、
を備えたことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記積層膜の分断をレーザスクライブにより実施することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記第2の電極膜及び前記光電変換層の選択的な除去を前記レーザスクライブにより実施することを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記接続する前に、前記積層膜を分断して形成された溝内の少なくとも一部、または前記複数の太陽電池セルのそれぞれの表面の少なくとも一部に表面処理を施して、その表面改質をすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記表面処理として、前記第2の金属膜と前記第1の電極膜とを接続する部分に親水化処理を施し、または、接続する前記部分以外に撥水化処理を施すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記第2の金属膜と前記第1の電極膜とを接続する前記部分以外に絶縁部材を形成する前に、前記絶縁部材を形成する部分に親水化処理を施し、または、前記絶縁部材を形成する前記部分以外に撥水化処理を施すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記親水化処理または前記撥水化処理を施した後、前記第2の金属膜と前記第1の電極膜とを接続する前記部分以外を前記絶縁部材で被覆することを特徴とする請求項6に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記表面処理として、前記積層膜を分断して形成された溝内の少なくとも一部、または前記複数の太陽電池セルのそれぞれの表面の少なくとも一部を洗浄することを特徴とする請求項4に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
基板上に、複数の太陽電池セルが直列に接続された太陽電池の製造装置であって、
前記基板上に、第1の電極膜を減圧雰囲気下で形成し、その後、大気に曝すことなく、前記第1の電極膜上に、光電変換層を減圧雰囲気下で形成し、その後大気に曝すことなく、前記光電変換層上に、第2の電極膜を減圧雰囲気下で形成して、積層膜を形成する第1の手段と、
前記積層膜を分断して、前記基板上に併設された前記複数の太陽電池セルを形成する第2の手段と、
前記併設された前記複数の太陽電池セルのうちの前記第1の太陽電池セルの前記第2の電極膜及び前記光電変換層を選択的に除去して、前記第1の電極膜を表出させ、
前記第2の太陽電池セルの前記第2の金属膜と、表出させた前記第1の電極膜と、を接続する第3の手段と、
を備えたことを特徴とする太陽電池の製造装置。
【請求項10】
前記第2の手段による分断をレーザスクライブにより実施することを特徴とする請求項9に記載の太陽電池の製造装置。
【請求項11】
前記第2の電極膜及び前記光電変換層の選択的な除去を前記レーザスクライブにより実施することを特徴とする請求項9または10に記載の太陽電池の製造装置。
【請求項12】
前記接続する前に、前記積層膜を分断して形成された溝内の少なくとも一部、または前記複数の太陽電池セルのそれぞれの表面の少なくとも一部に表面処理を施して、その表面改質をする第4の手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つに記載の太陽電池の製造装置。
【請求項13】
基板上に形成された、第1の電極膜と、前記第1の電極膜の上に設けられた光電変換層と、前記光電変換層の上に設けられた第2の電極膜と、を含む積層膜が一括して分断されて前記基板上に併設された複数の太陽電池セルと、
前記複数の太陽電池セルを直列に接続する接続部材と、
を備えたことを特徴とする太陽電池。
【請求項14】
前記複数の太陽電池セルのうちの第1の太陽電池セルの前記第2の電極膜及び前記光電変換層が選択的に除去されて前記第1の電極膜が表出され、
前記接続部材は、前記第1の太陽電池セルに隣接する第2の太陽電池セルの前記第2の金属膜と、前記第1の太陽電池セルの前記表出された前記第1の電極膜と、を接続することを特徴とする請求項13記載の太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−119343(P2012−119343A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84424(P2009−84424)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】