説明

太陽電池パネルのスクライブのためのレーザビームアラインメントの方法および装置

太陽電池パネルを作成することを目的として、ラインが既にスクライブされている1つまたは複数の他の下側層の上に重なる、材料の薄い最上層にレーザスクライブラインを精密に位置付けるための方法が記載される。これは、パネル上の最上層に1つまたは複数のラインをスクライブするため、1つまたは複数のレーザビームを発生させる光学ユニットを用いて達成される。アラインメント検出器システムは、光学ユニットに取り付けられ、検出器は、後でスクライブされるパネルの領域において、検出器が下側層にあるスクライブの1つの位置を測定するように、光学ユニットからある距離だけ偏位される。制御および運動システムは、レーザスクライブラインを下側層に既にスクライブされたラインに対して精密に配置できるようにするため、光学ユニットに取り付けられたアラインメント検出器からのデータを受け入れ、そのデータを使用して、スクライブ方向に垂直な方向でパネルに対する光学ユニットの相対位置を補正する。運動システムは、パネルを光学ユニットおよび関連するアライメント検出器に対して移動し、アラインメント検出器が、下側層の1つにスクライブされたラインの1つまたは複数の経路を辿り、光学ユニットによる最上層のレーザスクライブがパネルの別の領域で進行している間、全長にわたって1つまたは複数のラインの位置を測定する。本発明は、上述のような方法を実施するためのレーザアブレーション工具をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の薄膜太陽電池パネルをパネル上の既存のスクライブラインに関して分割するのに使用され、かつスクライブされているものに隣接した場所における既存のラインの位置を記録しながら他のラインのスクライブを進行させる検出システムに基づく、平行なレーザスクライブを精密に整列させる新しい方法に関する。そのような方法により、第2のスクライブラインの位置を既にスクライブしたラインに対して非常に精密に配置することが可能になるとともに、パネルの歪みによって生じる位置の不規則性を補償することができる。
【背景技術】
【0002】
レーザを使用して太陽電池パネルに見られる薄層をスクライブして、サブセルを作成し相互接続することは、長年よく知られている。この技術は、酸化スズ、酸化亜鉛、または酸化インジウムスズなどの透明な導電酸化物である場合が多い下部電極材料の薄層を、ガラスプレート上に置き、一般的には5〜10mmの間隔でラインをレーザスクライブして、層を電気的に絶縁された領域に分離することからなる。次に、アモルファスシリコンなどの電気発生層を全体面積の上に適用し、レーザを再び使用して、第1の層の最初のスクライブに平行な、かつそれらに可能な限り接近させて、この層にラインをスクライブする。次に、アルミニウムなどの金属である場合が多い第3の最上層を適用し、レーザビームを三度目に使用して、他のラインに接近した、かつそれらに平行なラインをこの層にスクライブして、電気的連続性を遮断する。
【0003】
この方法によって、電気的に直列の接続がパネル内のすべてのセル間に作られるので、パネル全体によって発生する電圧は、各セル内に形成される電位とセル数との積によって与えられる。一般的に、パネルは50〜100個のセルに分割されるので、パネル全体の出力電圧は50ボルトの範囲内である。特許文献1は、使用される標準的なレーザ加工の詳細な説明を示している。
【0004】
ITO/シリコン/アルミニウム構造と同様に、他の多数の材料を使用して太陽電池パネルを作成することができる。他の等しく有効なデバイスは、テルル化カドミウム(CdTe)、ジセレン化銅インジウム(CIS)、および結晶質シリコンオンガラス(CSG)をベースとして作られる。すべての場合において、レーザを使用して、関与する層のいくつかまたはすべてがスクライブされる。
【0005】
個々の層をスクライブするのに使用されるレーザビームは、場合によってはガラス板のコーティング面から適用されるが、ビームが膜と相互作用する前にガラスを通り抜ける場合、反対側から適用することもできる。一般に使用される10レーザは、赤外線(1064nmの波長)のスペクトル範囲で動作するが、第二高調波の波長(532nm)で動作するレーザも広く使用される。UVレーザさえも使用される場合がある。レーザは、一般に、数ナノ秒〜数百ナノ秒の範囲のパルス幅で振動し、数kHz〜数百kHzの範囲のパルス繰返し率で動作する。
【0006】
場合によっては、太陽電池パネルは金属板などの不透明基板上に作られる。この場合、基板を通る照射は不可能なので、スクライブ加工はすべてコーティング面から入射するビームを必要とする。他のいくつかの場合では、太陽電池パネルは、薄い金属またはポリマーの板などの可撓性基板上に作成される。前者の場合、コーティング面のみからの照射が可能である。後者の場合、コーティング面からの照射、または基板を通る照射の両方が可能である。
【0007】
これらのデバイスすべての共通の特性は、パネル上の各層を分割するため、それぞれ長さ1メートル〜数メートル以下の複数のスクライブを作成しなければならないことである。したがって、100mをはるかに上回る長さ以下の層当たりの合計スクライブ長さを、太陽電池パネル加工工具によって、容認可能なパネル加工時間内で作ることが必要な場合が多い。パネルサイズ、生産ライン出力要件、および工具の数に応じて、これらの加工時間は、一般に1〜3分間の範囲である必要がある。つまり、1秒当たり数メートル以下のレーザスクライブ率が必要である。
【0008】
これを達成するためのレーザ工具は既に構築されてきた。場合によっては、工具は固定の光学部品を有し、つまり、パネルは、一方向に非常に高速で移動させ、次に他方向に進行させなければならない。過度のパネル速度を回避するため、複数の平行なビームを有する光学ユニットが使用される場合が多い。この一例として、160の別個のスクライブを必要とする約1.1×1.1mの寸法のパネルを、8本の平行なビームを用いて、パネルを300mm/秒未満の最大速度で移動させて100秒間未満で加工することができる。
【0009】
上述の例では、複数ビームを有するビームユニットは固定であり、パネルは二方向に移動される。他の配置も可能である。別の例では、パネルは固定して保持され、ビームまたは光学ユニットは、パネルの上の移動ガントリを用いて二方向で移動される。パネルが一方の軸線で移動し、光学ユニットがパネルの上のガントリ上で他方に移動する中間の方策も可能である。
【0010】
別の太陽電池パネルスクライブの方策は、単一ビームを使用してラインすべてをスクライブし、ただし、検流計駆動式のミラースキャナシステムを使用して、ビームを高速で移動させる。特許文献2はそのような例を記載している。スキャナシステムを使用して、レーザビームが、幅600mmのパネルの全幅にわたって4メートル/秒以下の速度で移動される一方、パネルは、スキャナユニットを越える直交方向で移動される。
【0011】
特許文献3は、スキャナユニットを使用して、特許文献2にて考察されるようにビームが高速で移動されるが、スキャナユニットによって発生するビームスキャン領域の長さが、全ライン長ではなく必要な合計ライン長の一部に限定される、本発明の拡張例を記載している。この結果は、ラインの全長をスクライブするために、複数バンドが求められるというものである。つまり、全面積を網羅するため、スキャナユニットによるビームの運動と同様に、スキャナユニットに対して2つの軸線での基板の運動が必要である。
【0012】
パネルに対するビームの運動が使用される方法にかかわらず、電気発生層および上部電極層におけるレーザスクライブは、スクライブ間の不活性面積を最小限に抑えるため、下部層の既存のスクライブに信頼性高く非常に近接して配置する必要がある。製造中のパネルの歪みおよびサイズ変化のため、それまでのスクライブの位置を測定するとともに、パネルまたはビームの運動を調節して精密な相対的位置付けを維持することによって補償することが必要である。パネル全体の膨張または収縮の全体的な測定は、装填後のパネルの最初および最後のスクライブの位置と角度を測定することによって容易に行われる。このデータを使用して、パネルに対するビームの運動を制御するパラメータを調節することにより、これらの全体的な変化を補正することができる。しかし、スクライブのピッチは、最初のスクライブを作成する工具におけるエラー、またはすべてのスクライブがそれまでのスクライブに対して必ず精密に配置されるようにする「オンライン」システムを処理するエラーの導入されたリング後続パネルによって不規則になる可能性があるので、単純で全体的な歪み補正は、スクライブの近接し精密な配置を可能にするのに十分ではない。本出願人らは、自身のアラインメントシステムを「動的スクライブアラインメント」(DSA)と呼ぶ。特許文献4は、そのようなアラインメントシステムを、スキャナを使用してビームを移動させ、スクライブライン方向に垂直な一連の平行なバンドの形でパネルをスクライブする場合に使用することを記載している。この出願では、スキャナを使用せず、その代わりに、1つまたは複数のビームを使用して、スクライブ方向に平行な一連のラインまたはバンドの形でパネルをスクライブする場合に、動的スクライブアラインメントシステムを使用することを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−209475号公報
【特許文献2】米国特許出願公開2003/0209527号明細書
【特許文献3】英国特許第0611738.6号明細書
【特許文献4】英国特許第611718.6号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、第2のスクライブラインの位置を既にスクライブしたラインに対して非常に精密に配置することが可能になるとともに、パネルの歪みによって生じる位置の不規則性を補償することができるスクライブの方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、太陽電池パネルを作成することを目的として、ラインが既にスクライブされている1つまたは複数の他の下側層の上に重なる、材料の薄い最上層を加工することを特徴とする、レーザスクライブラインを精密に位置付ける方法であって、
パネル上の最上層に1つまたは複数のラインをスクライブするため、1つまたは複数のレーザビームを発生させる光学ユニットと、
光学ユニットに取り付けられ、後でスクライブされるパネルの領域において、検出器が下側層にあるスクライブの1つの位置を測定するように、光学ユニットからある距離だけ偏位されるアラインメント検出器システムと、
レーザスクライブラインを下側層に既にスクライブされたラインに対して精密に配置できるようにするため、光学ユニットに取り付けられたアラインメント検出器からのデータを使用して、スクライブ方向に垂直な方向でパネルに対する光学ユニットの相対位置を補正する制御および運動システムと、
パネルが光学ユニットに対して移動し、アラインメント検出器が、下側層の1つにスクライブされたラインの1つまたは複数の経路を辿り、光学ユニットによる最上層のレーザスクライブがパネルの別の領域で進行している間、全長にわたって1つまたは複数のラインの位置を測定する運動システムとを用いる方法が提供される。
【0016】
本発明の第1の態様の第1の好ましい変形例によれば、方法は、アラインメント検出器が関連付けられた光学ユニットが、パネルに対して単一ビームを供給することを特徴とする。
【0017】
本発明の第1の態様の第2の好ましい変形例によれば、方法は、アラインメント検出器が関連付けられた光学ユニットが、パネルに対して複数ビームを供給することを特徴とする。
【0018】
本発明の第1の態様の、またはその第1の好ましい変形例の第3の好ましい変形例によれば、方法は、アラインメント検出器が関連付けられた単一の光学ユニットを使用して、一連の単一ラインの形でパネルがスクライブされることを特徴とする。
【0019】
本発明の第1の態様の、またはその第1もしくは第2の好ましい変形例の第4の好ましい変形例によれば、方法は、それ自体のアラインメント検出器をそれぞれ備え、かつスクライブライン方向に垂直な方向でそれぞれ独立に移動することができる複数の光学ユニットを並列に使用して、スクライブの一連のバンドの形でパネルがスクライブされることを特徴とする。
【0020】
本発明の第1の態様の、またはそのいずれかの先行する好ましい変形例の第5の好ましい変形例によれば、方法は、光学ユニットおよび関連付けられたアラインメント検出器が、パネルのコーティング面上に載置されることを特徴とする。
【0021】
本発明の第1の態様の、またはそのいずれかの先行する好ましい変形例の第6の好ましい変形例によれば、方法は、太陽電池パネルの基板材料が光学的に不透明であることを特徴とする。
【0022】
本発明の、またはその先行する第1から第4の好ましい変形例のいずれかの第7の好ましい変形例によれば、方法は、光学ユニットおよび関連付けられたアラインメント検出器が、パネルのコーティング面とは反対側の面上に載置されることを特徴とする。
【0023】
本発明の第1の態様の、またはその先行する第1から第6の好ましい変形例のいずれかの第8の好ましい変形例によれば、方法は、太陽電池パネルの基板材料が光学的に透明であることを特徴とする。
【0024】
本発明の第1の態様の、またはそのいずれかの先行する好ましい変形例の第9の好ましい変形例によれば、方法は、太陽電池パネルの基板材料が剛性であることを特徴とする。
【0025】
本発明の第1の態様の、またはその第1から第8の好ましい変形例のいずれかの第10の好ましい変形例によれば、方法は、太陽電池パネルの基板材料が可撓性であることを特徴とする。
【0026】
本発明の第1の態様の第11の好ましい変形例によれば、方法は、アラインメント検出器ユニットが、CCDカメラなどの一次元または二次元アレイ検出器上に下側層に予めスクライブされたラインの画像を作り出す光学系からなることを特徴とする。
【0027】
本発明の第1の態様の第12の好ましい変形例によれば、方法は、DSA検出器ユニットが、下側層に予めスクライブされたラインの位置を検出し測定する何らかの他の光学的方法からなることを特徴とする。
【0028】
本発明の第1の態様の、またはそのいずれかの先行する好ましい変形例の第13の好ましい変形例によれば、方法は、パネルが直線状のステージ上の1つの軸線で移動し、光学ユニットおよび関連付けられたアラインメント検出器が、パネルの上または下に定置された直交するステージ上を独立に移動することを特徴とする。
【0029】
本発明の第1の態様の、またはその先行する第1から第9の好ましい変形例のいずれかの第14の好ましい変形例によれば、方法は、パネルがスクライブの間固定して保持され、光学ユニットおよび関連付けられたアラインメント検出器が、パネルの上または下に定置された直交するステージ上を独立に移動し、このステージが、パネルの全長に沿って第1のステージを移動させる別のステージ上に定置されていることを特徴とする。
【0030】
本発明の第1の態様の、またはその先行する第1から第9の好ましい変形例のいずれかの第15の好ましい変形例によれば、方法は、単一の光学ユニットおよび関連付けられたアラインメント検出器が、スクライブの間固定して保持され、パネルが、パネル面積全体を網羅する2つの軸線を移動することを特徴とする。
【0031】
本発明の第1の態様の、またはその先行する第1から第9の好ましい変形例のいずれかの第16の好ましい変形例によれば、方法は、パネルがパネル面積全体を網羅する2つの軸線を移動し、それぞれアラインメント検出器が関連付けられた1つを超える光学ユニットを使用してパネルがスクライブされ、1つの光学ユニットが固定され、他のすべてがスクライブライン方向に垂直な方向でステージ上を独立に移動することができることを特徴とする。
【0032】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様またはそのいずれかの好ましい変形例の方法を実施するように適合されたことを特徴とするレーザアブレーション工具が提供される。
【0033】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様またはそのいずれかの先行する好ましい変形例による方法を用いて形成されることを特徴とする製品が提供される。
【0034】
太陽電池パネルのスクライブの間に発生する主要な問題の1つは、パネルの表面上におけるスクライブ位置の精密な制御である。ほとんどの太陽電池パネル製造装置は、3つの別個の連続するレーザスクライブ工程を必要とする。第1の一連のスクライブラインは下側電極層内に作られる。この第1の層におけるスクライブの位置決め精度の要件は、第2および第3の層における後に続くスクライブと比べて重要度がはるかに低いが、それは、3つの平行なスクライブ間にあるパネルの不活性領域を最小限に抑えるため、これら後続のスクライブを、先のスクライブに対して非常に精密に位置させなければならないためである。つまり、スクライブは、互いに可能な限り近接して位置させなければならないが、接触してはならない。既存のスクライブに対して必要なビーム配置の精度は、マイクロメートル程度以上である。パネルが、単一ビームを用いて一連の個別のラインの形で、または複数ビームを有する光学ユニットによってラインの一連のバンドの形でスクライブされる場合、適切な検出器系を使用して、スクライブを行いながら、スクライブされているラインまたはバンドに隣接した、下側層の既存のスクライブのパネル上における位置が測定される。集められたデータは、格納され、測定されたバンドが続いてスクライブされるときに、パネルまたは光学ユニットの運動を補正するのに使用される。このようにして、システムは、スクライブされる次のバンドにおいて、既にスクライブされたラインの正確な位置を連続的に測定すると同時に、各バンドにおける第1のスクライブに対する第2のスクライブの精密な配置が行われる。本出願人らは、このアラインメント技術を「動的なスクライブアラインメント」(DSA)と呼ぶ。
【0035】
動的スクライブアラインメント(DSA)は、適切な検出器を各光学ユニットに取り付けることによって、その最も単純な形態で実現される。検出器は、隣接したスクライブラインバンドの幅内にそれを配置する距離だけ、スクライブラインに垂直な方向でビーム中心からずれている。この位置で、光学ユニットがパネルの表面の上を移動するか、またはパネルが光学ユニットの下を移動すると、検出器は、次にスクライブされるラインのバンドの形のスクライブラインの1つまたは複数の位置を記録する。
【0036】
光学ユニットの運動はスクライブラインに沿っているので、検出器は隣接した既存のスクライブラインの1つまたは複数を追随する。本出願の検出器は、既存のスクライブラインの画像が、CCDカメラなどの適切な一次元または二次元アレイカメラ上に投影される、何らかの形態の光学結像システムである。カメラからの出力データの周期的なロギングによって、光学ヘッドから、追随している1つまたは複数のスクライブラインまでの距離に関する情報が与えられ、予期される経路からのスクライブの偏差を記録することが可能になる。このデータは、ガントリまたはパネルステージ上の位置エンコーダによって発生するデータにリンクされて、その全長にわたるスクライブライン位置の完全な記録が得られる。バンドが完全にスクライブされた後、ITO/シリコン/アルミニウム構造ならびに他の多くの材料において、1つまたは複数のスクライブラインの位置に関する完全なデータセットを使用して、太陽電池パネルを作成することができる。他の等しく有効なデバイスは、テルル化カドミウム(CdTe)、ジセレン化銅インジウム(CIS)、および結晶質シリコンオンガラス(CSG)をベースとして作成される。すべての場合において、関与する層のいくつかまたはすべてをスクライブするのにレーザが使用される。
【0037】
個々の層をスクライブするのに使用されるレーザビームは、場合によってはガラス板のコーティング面から適用されるが、ビームが膜と相互作用する前にガラスを通り抜ける場合、反対側から適用することもできる。使用されるレーザは、一般に、スペクトルの赤外(1064nmの波長)域で動作するが、二次高調波波長(532nm)で動作するレーザも広く使用される。UVレーザでさえも場合によっては使用される。レーザは、一般に、数〜数百ナノ秒の範囲のパルス幅でパルス化され、数kHz〜数百kHzの範囲のパルス繰返し率で動作する。
【0038】
場合によっては、太陽電池パネルは金属板などの不透明な基板上に作られる。この場合、基板を通る照射は不可能なので、すべてのスクライブ加工はコーティング面から入射するビームを必要とする。他のいくつかの場合では、太陽電池パネルは、薄い金属またはポリマーの板などの可撓性基板上に製作される。前者の場合、コーティング面のみからの照射が可能である。後者の場合、コーティング面からの、または基板を通る照射の両方が可能である。
【0039】
これらのデバイスすべてに共通の特性は、パネル上の各層を分割するため、それぞれ長さが1〜数メートル以下の複数のスクライブを作成しなければならないことである。したがって、太陽電池パネル加工工具によって、容認可能なパネル加工時間内で層当たり100メートルをはるかに超えるスクライブの全長を作成することが必要な場合が多い。パネルサイズ、生産ライン出力要件、および工具数に応じて、これらの加工時間は、一般に、1〜3分間の範囲であることが必要とされる。つまり、毎秒数メートル以下のレーザスクライブ率が必要とされる。これを達成するレーザ工具は既に構築されている。場合によっては、工具は固定の光学部品を有し、つまり、パネルを一方向に非常に高速で移動させ、次に他方向に進行させなければならない。過度のパネル速度を回避するため、複数の平行なビームを有する光学ユニットが使用される場合が多い。この一例として、160本の別個のスクライブを必要とする、寸法が約1.1×1.1mのパネルを、300mm/秒未満の最大速度でパネルを移動させながら、8本の平行なビームを用いて100秒間未満で加工することができる。
【0040】
上述の場合では、複数ビームを有するビームユニットは固定であり、パネルが二方向で移動されるが、他の構成も可能である。別の場合では、パネルは固定して保持され、ビームまたは光学ユニットが、パネルの上を移動するガントリを用いて二次元で移動される。パネルが1つの軸線で移動し、光学ユニットが、パネルの上のガントリ上を他方に移動する、中間の方策も可能である。
【0041】
別の太陽電池パネルスクライブの方策は、単一ビームを使用してすべてのラインをスクライブするが、検流計駆動式のミラースキャナシステムを使用してビームを高速で移動させる。特許文献2はそのような例を記載している。スキャナシステムを使用して、幅600mmのパネルの全幅にわたって4m/秒以下の速度でレーザビームを移動させながら、直交方向でスキャナユニットを超えてパネルを移動させる。
【0042】
特許文献3は、スキャナユニットを使用して、特許文献2に考察されているような高速でビームを移動させるが、スキャナユニットによって発生するビームスキャン領域の長さが、ライン全長ではなく必要な合計ライン長の一部に限定される、本発明の拡張例を記載している。この結果、ラインの全長をスクライブするのに複数バンドが必要である。つまり、全面積を網羅するため、スキャナユニットによるビーム運動と同様に、スキャナユニットに対して2つの軸線で基板の運動が必要である。
【0043】
パネルに対するビーム運動のどの方法が使用されるかにかかわらず、電気発生層および頂部電極層のレーザスクライブは、スクライブ間の不活性領域を最小限に抑えるため、下側層の既存のスクライブに信頼性高く非常に近接して配置する必要がある。製造中のパネルの歪みおよびサイズ変化のため、先のスクライブの位置を測定するとともに、パネルまたはビームの運動を調節することによって、精密な相対位置付けを維持するように補償することが必要である。パネル全体の拡張または収縮の全体的な測定は、装填後のパネル上の最初および最後のスクライブの位置と角度とを測定することによって容易に行われる。このデータを使用して、パネルに対するビーム運動を制御するパラメータを調節することにより、これらの全体的変化を補正することができる。しかし、スクライブのピッチは、最初のスクライブを作成する器具におけるエラー、または後に続くパネル加工中に導入されるエラーによって不規則になる場合があるため、単純な全体的歪み補正は、スクライブの近接し精密な配置を可能にするのに十分ではない。
【0044】
「オンライン」システムは、すべてのスクライブが先のスクライブに対して必ず精密に配置されるようにする。本出願人らは、自身のアラインメントシステムを「動的スクライブアラインメント」(DSA)と呼ぶ。特許文献4は、そのようなアラインメントシステムを、スキャナを使用してビームが移動され、スクライブライン方向に垂直な一連の平行なバンドの形でパネルがスクライブされる場合に使用することを記載している。この出願では、本出願人らは、スクライブ方向に平行な一連のラインまたはバンドの形でパネルをスクライブするのにスキャナが使用されず、その代わりに1つまたは複数ビームが使用される場合に、動的スクライブアラインメントシステムを使用することを記載している。
【0045】
太陽電池パネルのスクライブの間に発生する主要な問題の1つは、パネルの表面上におけるスクライブ位置の精密な制御である。ほとんどの太陽電池パネル製造装置は、3つの別個の連続するレーザスクライブ工程を必要とする。第1の一連のスクライブラインは下側電極層内に作られる。この第1の層におけるスクライブの位置決め精度の要件は、第2および第3の層における後に続くスクライブと比べて重要度がはるかに低いが、それは、3つの平行なスクライブ間にあるパネルの不活性領域を最小限に抑えるため、これら後続のスクライブを、先のスクライブに対して非常に精密に位置させなければならないためである。つまり、スクライブは、互いに可能な限り近接して位置させなければならないが、接触してはならない。既存のスクライブに対して必要なビーム配置の精度は、10マイクロメートル程度以上である。
【0046】
パネルが、単一ビームを用いて一連の個別のラインの形で、または複数のビームを有する光学ユニットによってラインの一連のバンドの形でスクライブされる場合、適切な検出器系を使用して、スクライブを行いながら、スクライブされているラインまたはバンドに隣接した、下側層の既存のスクライブのパネル上における位置が測定される。集められたデータは、格納され、測定されたバンドが続いてスクライブされるときに、パネルまたは光学ユニットの運動を補正するのに使用される。このようにして、システムは、スクライブされる次のバンドにおいて、既にスクライブされたラインの精密な位置を連続的に測定すると同時に、各バンドにおける第1のスクライブに対する第2のスクライブの正確な配置が行われる。本出願人らは、このアラインメント技術を「動的なスクライブアラインメント」(DSA)と呼ぶ。
【0047】
動的スクライブアラインメント(DSA)は、適切な検出器を各光学ユニットに取り付けることによって、その最も単純な形態で実現される。検出器は、隣接したスクライブラインバンドの幅内にそれを配置する距離だけ、スクライブラインに垂直な方向でビーム中心からずれている。この位置で、光学ユニットがパネルの表面の上を移動するか、またはパネルが光学ユニットの下を移動すると、検出器は、次にスクライブされるラインのバンドの形のスクライブラインの1つまたは複数位置を記録する。光学ユニットの運動はスクライブラインに沿っているので、検出器は隣接した既存のスクライブラインの1つまたは複数を追随し、本出願の検出器は、既存のスクライブラインの画像が、CCDカメラなどの適切な一次元または二次元アレイカメラ上に投影される、何らかの形態の光学結像システムである。カメラからの出力データの周期的なロギングによって、光学ヘッドから、追随している1つまたは複数スクライブラインまでの距離に関する情報が与えられ、予期される経路からのスクライブの偏差を記録することが可能になる。このデータは、ガントリまたはパネルステージ上の位置エンコーダによって発生するデータにリンクされて、その全長にわたるスクライブライン位置の完全な記録が得られる。隣接したバンドにおける1つまたは複数スクライブラインの位置に関する完全なデータセットが記録されるように、バンドが完全にスクライブされた後、データは処理され、ステージコントローラにダウンロードされる。このデータダウンロード工程は、パネルまたは光学ユニットを、レーザがスクライブしたばかりのバンドの上の位置から、測定されたばかりの隣接したバンドの上の位置まで移動される時間の間に行うことができる。次に、記録され処理されたスクライブ位置データを使用して、スクライブされたラインの軌跡が、先にスクライブされたラインの小さな偏位について補正されるように、ステージ運動が補正され、その結果として、新しいラインそれぞれと先にスクライブされたラインそれぞれとの間の間隔を精密に維持することができる。
【0048】
様々なセンサをDSA検出器として使用することができるが、最も単純な形態は、下側層にスクライブされたラインの、一次元または二次元アレイ検出器上への光学結像に基づく傾向がある。二次元CCDカメラは適切な検出器の好例である。検出器の要件は、1つの薄膜が別の薄膜で覆われたとき、そこに刻まれるラインの位置を測定することである。異なる材料が様々な薄膜に使用されるため、スクライブ位置における膜の光透過性は通常は大幅に変化するので、光透過性の変化は容易に測定することができる。例えば、要件が、非晶質シリコンの保護層の下にある、ITOなどの透明な導電層にスクライブされたラインを位置決めすることである場合、このラインは、薄膜層の上から、あるいはスクライブライン周辺のパネルの領域が光によって適切に照明される場合、パネルを通して薄膜層の下から、ラインを観察する光学結像システムによって容易に位置決めすることができる。照明は、明視野または暗視野どちらかのタイプのものであることができ、また、検出器と同じ側から、または反対側からパネル上に入射することができる。前者の場合、照明光源はDSA検出器カメラに取り付けることができ、または、照明光は検出器カメラの結像光学系を通して方向付けることもできる。照明が、パネルの検出器カメラとは反対側からである場合、光源が、パネルの反対側にある光学ユニットおよび関連付けられたDSA検出器に対応して光源を移動させるステージシステム上に必ず定置されているようにする必要がある。光学ユニットが、単一ビームのみをパネルに供給する場合、DSA検出器の理想的な位置は、最上層にスクライブされているラインに直接隣接した下側層のスクライブラインの位置を測定するような位置である。つまり、スクライブ方向に垂直な方向でのビーム位置から検出器位置までのずれは、通常、5〜15mmの範囲である。そのような小さなずれが不便である場合、検出器をより大きな距離だけずらして、ライン数本のピッチの距離だけずれている先にスクライブされたラインを観察することができる。検出器とビームとの間の比較的小さな距離にわたるガラスパネル上のスクライブ位置の歪みは著しいものである可能性が低いため、そのような方法がもたらす精度の損失はごくわずかである。
【0049】
光学ユニットが、パネル全体にわたるユニットの同じパスの間に多数のラインを含むバンドがスクライブされるように、複数のビームをパネルに供給する場合、DSA検出器の理想的な位置は、次に最上層にスクライブされるバンドの中心に近い下側層のスクライブラインの位置を測定するような位置である。例えば、20mmのピッチでパネルに4本のビームを供給する光学ユニットは、最も顕著には、次にスクライブされる4本のラインのバンドにおける第2または第3の先にスクライブされたラインを測定するように配置されたDSA検出器を有する。そのような位置は、現在スクライブされているバンドにおける第2または第3のラインから80mmのところに検出器を配置する。複数ヘッドのユニットにおけるビーム間のピッチは、通常は固定されているので、DSA検出器の出力データを使用して、すべてのビームに適用しなければならない光学ユニットまたはパネルステージの位置に対する補正が適用される。複数ビームユニット内の個々のビームの位置に対する補正は、通常は不可能であるが、ビーム間隔が適度であり、ビーム数が多くない場合、複数ビームのスパンの幅にわたって生じるパネルの歪みが小さいので、先のスクライブに対する第2のスクライブ位置の精度の損失は低い。
【0050】
そのような複数ビームの光学ユニットの場合、数十mmよりも接近させてビームを配置することは不便なので、ビーム間隔はスクライブのピッチの倍数である場合が多い。ビーム間隔が20mmであり、要件が、10mmのピッチ上にラインをスクライブすることである上述の例の場合、各スクライブパスの端部におけるスクライブラインに垂直な方向での光学ユニットまたはパネルの進行は不規則であり、10mmと70mmの進行が交互に行われる。光学ユニットが30mmのピッチで4本のビームを発生させる場合、5mmのピッチ上におけるラインのスクライブが、5mmの進行5段階とそれに続く95mmの進行1段階とによって最も良好に達成される。これらの複数ビームの場合、DSA検出器は、最良には、次にスクライブされるバンドの中心に近接した先にスクライブされたラインの1つを測定するように配置される。
【0051】
パネルの各縁部に平行にラインをスクライブすることが必要な場合、各光学ユニットに2つのDSA検出器を取り付けることができる。検出器は、両方のステージ軸線に平行な光学ユニット中心線から方向をずらして、互いに90°で定置することができる。光学ヘッド中心線からのずれの距離は、それぞれの場合において、隣接したスクライブバンドの中心の上に検出器を配置するようなものである。
【0052】
「動的スクライブアラインメント」(DSA)のこの方法は、すべてのラインについてのスクライブ位置の局所的変動を、スクライブ加工全体の速度を大幅に遅くすることなく測定し補償することを可能にするため、非常に有効である。DSAはこれを達成するが、それは、パネル上の下側層に既に存在するスクライブラインの1つまたは複数位置の記録を1つのバンドにおいて生じさせると同時に、第2のラインが、上側層において隣接したバンドに精密に位置付けられスクライブされて、スクライブ加工に大幅に時間が付加されないためである。唯一必要な余分な時間は、ラインの第1のバンドを測定するのに使用される時間である。ただし、第1のバンドに沿ったこのアラインメントパスは、可能な最大ステージ速度で達成することができ、その速度は、ラインをスクライブする間に使用される速度よりも大幅に高速であり、また、複数バンドがスクライブされるので、第1のバンドにおけるライン位置と関連付けられたデータを集めるための1つの追加の高速パスを追加することは、全体時間に対してわずかな量の追加である。
【0053】
以下、本発明の代表的な実施形態を、添付図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】単一のレーザビームが長方形パネルの長辺に平行なラインをスクライブする、標準的方法によって太陽電池パネルをスクライブするのに適した構成(スキャナを含まない)を示した一般的な図である。
【図2】4本のビームをそれぞれ供給する2つの光学ユニットが並行して動作して、長方形パネルの長辺に平行なラインをスクライブする、より複雑な構成によって太陽電池パネルをスクライブするのに適した構成を示した一般的な図である。
【図3】入ってくる単一ビームが4本の別個のビームに分割され、それらが次にパネル表面上に集束される光学ユニットの一例を示した図である。
【図4】8本の平行なビームをパネルに供給する単一の光学ユニットを備え、既存のスクライブライン位置に対する新しいスクライブラインの組の動的スクライブアラインメントのため、検出器がユニットに取り付けられた、太陽電池パネルスクライブ器具の構成を示した平面図である。
【図5】4本のビームをそれぞれパネルに供給するとともに、既存のスクライブラインに対する新しいスクライブラインの組の動的スクライブアラインメントに使用される検出器をそれぞれ有する2つの光学ユニットを備えた、太陽電池パネルスクライブ器具の構成を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、太陽電池パネルスクライブ構成の最も単純な形態の1つを示す。ITO、あるいは他の導体層もしくは半導体層または層の組合せでコーティングされた、ガラス、金属、またはポリマーの基板からなる大型で平坦な太陽電池パネル11は、パネルを1つの軸線Xで移動できるようにするステージシステム上に定置される。要件は、X方向で長方形のパネルの長辺に平行に通る複数の平行なラインを、コーティング内にスクライブすることである。レーザからのビーム12は、ミラーを介して光学ヘッドに至り、パネル上にライン14をスクライブするために、レンズ13によってパネルの表面上に集束される。光学ユニットは、Y方向に移動することができるように、パネルの上のガントリ上にある可動キャリッジ上に定置される。コーティング内のX軸に平行なスクライブラインの列が、図示されているように、一連のラインの形で作成される。ビームがX方向でパネルの全長にわたって移動した後、光学ユニットは、スクライブラインのピッチだけY方向に進行され、パネルを逆向きのX方向で移動させながら、プロセスが繰り返される。このようにして、パネルの全面積が複数のラインでスクライブされる。
【0056】
要件が、複数ビームを作成する光学ユニットを使用して、太陽電池パネルのコーティングに長方形パネルの長辺に平行なラインをスクライブすることである、より複雑な構成を、図2は示ている。パネル21は、X方向に移動することができるようにステージ上に定置される。2つのレーザビーム22および22'は、パネルの幅の半分だけY方向に分離された2つの光学ユニット23および23'に向けられる。光学ユニットはそれぞれ、4本のビームを発生させることができるようにするビーム分割光学系を含み、Y方向に移動できるようにするパネルの上のガントリ上にあるキャリッジ上に定置される。パネルの全面積は、パネルをX方向で連続的に移動させ、両方の光学ユニットを同時に用いてスクライブ工程を行うことによって、長軸に平行な一連のバンドの形でスクライブすることができる。パネルの全長が網羅された後、光学ユニットはバンドの幅だけY方向に進行し、プロセスが繰り返される。スクライブライン間隔が比較的大きい、図2に示された特定の例では、スクライブ工程を完了するためにはパネルの約3回のパスのみが必要であるが、実際にはより多数のパスが必要である。特に、必要なスクライブのピッチがわずか5mmであり、ただし各光学ユニットによって放射される4本のビームのピッチが30mmである場合、5mmの進行で6回のパスとそれに続く95mmの進行とが、各バンドを完了させるのに必要である。合計で96本のラインをスクライブする必要がある場合、合計で12回のパスが必要である。
【0057】
図3は、入って来る単一のレーザビーム31が、3つの50%ビームスプリッタ32、32'、および32''と、3つの全反射ミラー33、33'、33''とを使用して、4つの別個のビームに分割される、光学ユニットの設計を示す。各ビームは、レンズ34によってパネル35の表面上に集束されるので、ヘッドがパネルの上を通過するごとに4つの平行なスクライブを作成することができる。スクライブ間の間隔は、中心軸の周りで光学ヘッド全体を回転させることによって調節することができる。あらゆる合理的な数の出力ビームを有する、図3に示されるのと同様の光学ユニットを作成することができる。2つ、4つ、および8つのビームユニットが当然ながら容易に想到されるが、ビームの中間の数を用いてユニットを構築することも可能である。
【0058】
図4は、太陽電池パネル41がX方向で移動することができ、光学ユニット42がY方向でパネルの上を移動することができる、図1に示されるのと同様の構成の上面図を示している。図示された例では、入って来る単一ビームは光学ユニット内で8本の別個のビームに分割されるので、各パスにおいて8つのスクライブが作成される。太陽電池パネルには、先にレーザスクライブ43が施されている1つまたは複数の薄膜層が既に塗布されており、次にパネルは追加層で上塗りされており、要件は、保護膜に、既存のラインに平行でそれらに非常に近接した新しいライン44のさらなる組をスクライブすることである。この場合、図示のようにDSA検出器デバイス45は光学ユニット上に定置される。検出器は下向きであり、パネル上の既存のスクライブライン43の位置を検出し記録するため、X軸およびY軸ステージのエンコーダと併せて使用される。検出器は、8つの現在スクライブされているライン46に隣接したラインのバンド内の地点において、パネルの表面が見えるように、光学ヘッドからY方向に偏位される。図面では、検出器は、8つのスクライブラインパターンの幅にほぼ等しい距離だけ光学ユニットの中心から分離されており、つまり、検出器は、隣接したバンドのほぼ中心に対応する既存のスクライブ位置データを記録する。検出器は、次にスクライブされるバンド内のどこかの地点でパネルの表面を観察する限り、光学ユニットの中心位置からX方向およびY方向両方に偏位された他の位置で定置することができる。必要であれば、単一バンドの幅よりも大きな距離にDSA検出器を定置することも可能であり、この場合、DSA検出器と光学ユニットとの距離全体にわたってパネルが歪む可能性があるため、既存のスクライブに対するスクライブ配置の精度はより低くなる傾向がある。
【0059】
パネルが光学ヘッドの下でX方向に通過する間ごとに、隣接したバンドにおける既存のスクライブライン位置に関するデータが収集され、適切なコンピュータに格納される。次に、測定されたバンドが光学ヘッドの下に配置されるように、光学ユニットはY方向で進行され、加工済みのスクライブラインの位置データはステージコントローラにダウンロードされ、別のスクライブパスが測定されたバンド上に作成されるとともに、処理済みデータを使用して、光学ユニットをY方向に移動させることによってビームの軌跡が補正されて、予期される位置からの既存のスクライブラインの偏差が補償される。
【0060】
図4は、光学ユニットの下をパネルが9回通過することによって完全に加工されたパネルの特定例を示す。第1のパスは、DSA検出器が、図面の上部に位置する第1のバンドの既存のスクライブラインの位置を測定する、アラインメントパスである。このパスの間、レーザは不活性である。このアラインメントパスの後、スクライブされるラインの第1のバンドに対応するように、光学ヘッドはY方向で移動される。光学ユニットの下をパネルが次に通過する間、アラインメントパスの際に発生したデータを使用して、光学ユニットの位置がY方向で連続的に補正されるとともに、8つのレーザスクライブを既存のスクライブに可能な限り接近させて位置付けるため、パネルはその下をX方向で移動する。合計でスクライブラインの8つのバンドを、または合計で64のスクライブを生じさせるため、さらに7回のパスが行われる。図面は6回目のパスの最中のプロセスを示す。パネルはX方向で図面の左側に向かって移動しており、光学ユニットは、ヘッドの下方でバンドの既存のスクライブに隣接した8つの第2のスクライブをスクライブするとともに、ヘッド上の検出器は、次にスクライブされるバンドにおける先の層のスクライブラインの位置を検出している。光学ユニットのY方向位置に対する細かい補正は、先の通過の間に集められたデータを使用して、各パスの間に行われて、レーザスクライブを先にスクライブされたラインに対して精密に位置付けて保持している。図5は、太陽電池パネル51がX方向で移動することができ、2つの光学ユニット52および52'がパネルの上をY方向で移動することができる、図2に示されるのと同様の構成の上面図を示す。この場合、2つの光学ユニットはYステージ上の別個のキャリッジ上に定置されるので、独立に位置付けることができる。各光学ユニットは、1回のパスの間に4つの平行なスクライブを作成する。太陽電池パネルには、先にレーザスクライブ53が施されている1つまたは複数の薄膜層が既に塗布されており、次にパネルは追加層で上塗りされており、要件は、保護膜に、既存のラインに平行でそれらに非常に近接した新しいライン54のさらなる組をスクライブすることである。この場合、図示のようにDSA検出器デバイス55および55'は各光学ユニットに取り付けられる。検出器は下向きであり、パネル上の既存のスクライブライン53の位置を検出し記録するため、X軸およびY軸ステージのエンコーダと併せて使用される。検出器は、現在処理されているバンドに隣接した既存のスクライブラインの次のバンドの中央に近接した位置において、パネルの表面が見えるように、光学ユニットの中心位置からY方向に偏位される。図面では、検出器は、1つのスクライブバンドの幅にほぼ等しい距離だけビームラインの中心から分離されており、つまり、検出器は、隣接したバンドのほぼ中心に対応するライン位置データを記録する。検出器は、スクライブの配置の精度を補償できるように、光学ユニットから離れすぎない地点でパネルの表面を観察する限り、光学ユニットに対して他の位置で定置することができる。
【0061】
パネルが光学ヘッドの下でX方向に通過する間ごとに、隣接したバンドにおける既存のスクライブライン位置に関するデータが収集され、適切なコンピュータに格納される。次に、測定されたバンドが光学ヘッドの下に配置されるように、光学ヘッドはY方向で進行され、加工済みのスクライブラインの位置データはステージコントローラにダウンロードされ、別のスクライブパスが測定されたバンド上に作成されるとともに、処理済みデータを使用して、光学ヘッドをY方向に移動させることによってビームの軌跡が補正されて、予期される位置からの既存のスクライブラインの偏差が補償される。2つの光学ヘッドは、パネル上の既存のスクライブラインに対する、スクライブされているラインの精密な位置付けを維持するため、各通過の終わりに行われるY方向の移動に関して、かつ各パスの間に行われるY方向の移動に関して独立に動作する。
【0062】
図5は、パネルの上を光学ヘッドが4回通過することによって完全に加工されるパネルの特定の例を示す。第1のパスは、DSA検出器が、スクライブされる第1のバンドの既存のスクライブラインの位置を測定する、アラインメントパスである。このパスの間、レーザは不活性である。次のパスは、アラインメントパスの際に発生したデータを使用して、パネルが両方の光学ヘッドの下をX方向で移動している間にそれらのY方向の位置を補正して、各光学ユニットによって発生する4つのレーザスクライブを既存のスクライブに可能な限り近接させて位置付ける。各4つのスクライブラインの合計で6つのバンドを、または合計で24のスクライブを生じさせるため、さらに2回のパスが行われる。この構成は単に一例として示されるものであり、実際には、より多数のラインが使用されるであろう。
【0063】
図面は2回目のパスの最中のプロセスを示す。パネルはX方向で図面の左側に向かって移動しており、光学ユニットは、ユニットの下方でバンドの既存のスクライブに隣接した4つの第2のスクライブをスクライブするとともに、ユニット上の検出器は、次にスクライブされるバンドにおける先の層のスクライブラインの位置を検出している。各ユニットのY方向位置に対する細かい独立の補正は、先のパスの間に集められたデータを使用して、各パスの間に行われて、レーザスクライブを先にスクライブされたラインに対して精密に位置付けて保持している。
【0064】
図5は、それぞれ4本のビームを発生させる2つの独立の光学ユニットが、パネルの上のガントリステージ上に定置されている特定の例を示す。これは排他的構成ではなく、より多数の光学ユニットが使用される他の構成も可能である。パネルが大型の場合、4つ、6つ、または8つ以下の独立の光学ユニットの数を容易に想到することができる。これらのユニットはそれぞれ、あらゆる数のビームを供給することができる。光学ユニット数およびユニット当たりのビーム数に関する最適な幾何学的配置は、パネルのサイズ、スクライブされるライン数、必要なプロセス時間、ならびに最も重要には、薄膜層がパネル上に事前にスクライブされたラインの上に塗布されるときの、パネルの歪みの程度に基づく。
【0065】
上述の図面すべてにおいて、単一ビーム、または複数ビームを有する光学ユニットは、パネルの上のガントリ上にあるステージ上の1つまたは複数の可動キャリッジに取り付けられるので、1つの軸線を移動することが可能である。運動の他方の軸線は、パネルをガントリの下で運搬する直交するステージによって提供される。これは排他的構成ではなく、他の幾何学的配置も可能である。単一の光学ユニットの場合、固定して保持し、パネルを2つの直交する軸線XおよびYで移動させることが可能である。このようにして、パス間のY方向の運動の進行、または各パス中のY方向の運動の補正は、パネルをY方向で移動させることによって達成される。複数の光学ユニットがある場合、パス間のY方向の運動の進行はやはり、パネルのY方向の運動によって達成することができるが、すべてのユニットが精密に独立してY方向に運動できるようにして、既存のスクライブに対してすべてのレーザスクライブが必ず精密に位置付けられるようにするため、1つを除くすべての光学ユニットを、追加の小さく移動するY方向のステージ上に定置することが必要である。第3の場合、パネルは固定して保持され、1つまたは複数の光学ユニットは2つの直交する軸線で移動される。これは、パネルの全長にわたって移動することができる、パネルの上のガントリを用いて達成され、ガントリは、光学ユニットがパネルの幅にわたって移動できるようにする第2のステージを支持する。2つを超える光学ユニットがある場合、各ユニットは独立の制御を有する。
【符号の説明】
【0066】
11 太陽電池パネル
12 ビーム
13 レンズ
14 スクライブライン
21 太陽電池パネル
22、22' ビーム
23、23' 光学ユニット
31 レーザビーム
32、32'、32' ビームスプリッタ
33、33'、33' 全反射ミラー
41 太陽電池パネル
42 光学ユニット
43、44 スクライブライン
45 DSA検出器
51 太陽電池パネル
52、52' 光学ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルを作成することを目的として、ラインが既にスクライブされている1つまたは複数の他の下側層の上に重なる、材料の薄い最上層を加工することを特徴とする、レーザスクライブラインを精密に位置付ける方法であって、
前記パネル上の前記最上層に1つまたは複数のラインをスクライブするため、1つまたは複数のレーザビームを発生させる光学ユニットと、
前記光学ユニットに取り付けられ、後でスクライブされる前記パネルの領域において、検出器が前記下側層にあるスクライブの1つの位置を測定するように、前記光学ユニットからある距離だけ偏位されるアラインメント検出器システムと、
前記レーザスクライブラインを前記下側層に既にスクライブされたラインに対して精密に配置できるようにするため、前記光学ユニットに取り付けられた前記アラインメント検出器からのデータを使用して、スクライブ方向に垂直な方向で前記パネルに対する前記光学ユニットの相対位置を補正する制御および運動システムと、
前記パネルが前記光学ユニットに対して移動し、前記アラインメント検出器が、前記下側層の1つにスクライブされた前記ラインの1つまたは複数の経路を辿り、前記光学ユニットによる前記最上層のレーザスクライブが前記パネルの別の領域で進行している間、全長にわたって前記1つまたは複数のラインの位置を測定する運動システムと、
を用いる方法。
【請求項2】
前記アラインメント検出器が関連付けられた前記光学ユニットは、前記パネルに対して単一ビームを供給することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アラインメント検出器が関連付けられた前記光学ユニットは、前記パネルに対して複数ビームを供給することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アラインメント検出器が関連付けられた単一の光学ユニットを使用して、一連の単一ラインの形で前記パネルがスクライブされることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
それ自体のアラインメント検出器をそれぞれ備え、かつスクライブライン方向に垂直な方向でそれぞれ独立に移動することができる複数の光学ユニットを並列に使用して、スクライブの一連のバンドの形で前記パネルがスクライブされることを特徴とする請求項1、2、および3に記載の方法。
【請求項6】
前記光学ユニットおよび関連付けられたアラインメント検出器が、前記パネルのコーティング面上に載置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記太陽電池パネルの基板材料が光学的に不透明であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光学ユニットおよび関連付けられたアラインメント検出器が、前記パネルのコーティング面とは反対側の面上に載置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記太陽電池パネルの基板材料が光学的に透明であることを特徴とする請求項1から6および8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記太陽電池パネルの前記基板材料が剛体であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記太陽電池パネルの前記基板材料が可撓性であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アラインメント検出器ユニットが、CCDカメラなどの一次元または二次元アレイ検出器上に前記下側層に予めスクライブされたラインの画像を作り出す光学系からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
DSA検出器ユニットが、前記下側層に予めスクライブされたラインの位置を検出し測定する何らかの他の光学的方法からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記パネルが直線状のステージ上の1つの軸線で移動し、前記光学ユニットおよび関連付けられたアラインメント検出器が、前記パネルの上または下に定置された直交したステージ上を独立に移動することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記パネルがスクライブの間固定して保持され、前記光学ユニットおよび関連付けられたアラインメント検出器が、前記パネルの上または下に定置された直交したステージ上を独立に移動し、前記ステージが、前記パネルの全長に沿って第1のステージを移動させる別のステージ上に定置されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
単一の光学ユニットおよび関連付けられたアラインメント検出器がスクライブの間固定して保持され、前記パネルがパネル面積全体を網羅する2つの軸線を移動することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記パネルがパネル面積全体を網羅する2つの軸線を移動し、それぞれアラインメント検出器が関連付けられた1つを超える光学ユニットを使用して前記パネルがスクライブされ、1つの光学ユニットが固定され、他のすべてがスクライブライン方向に垂直な方向でステージ上を独立に移動することができることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法を実施するように適合されたことを特徴とするレーザアブレーション工具。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法を用いて形成されることを特徴とする製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−509067(P2010−509067A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535126(P2009−535126)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004210
【国際公開番号】WO2008/056116
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(508342482)エリコン・バルザース・コーティング・(ユーケ−)・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】