説明

太陽電池パネル用梱包材

【課題】重量物である太陽電池パネルの複数枚を収容する梱包体において、高い作業効率で梱包作業を行うことができながら、外的衝撃に対して高い安全性を確保することができる太陽電池パネル用梱包材を開示する。
【解決手段】太陽電池パネル用梱包材1は、ともに発泡樹脂の一体成形品である箱形容器10と蓋部材20のみからなる。箱形容器10の対向する2つの側壁12a,12bは、太陽電池パネルPの側端面を支持する支持溝15を形成するための複数本の互いに平行な凸条14を上下方向に有しており、容器底面11aには凸条を備えた各側壁に沿うようにして空隙16,16が形成されている。また、蓋部材20の天面21aにも、蓋をしたときに箱形容器10の前記凸条を備えた側壁12a,12bに沿う領域に、やはり空隙26,26が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルを梱包し搬送するための梱包材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への関心が高まるとともに、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池に対する需要が高まり、太陽電池セルモジュールに枠構造や端子箱を取付けた太陽電池パネルが、広く流通するようになっている。その一方で、太陽電池パネルは、概して大型かつ重量物であり、流通時等に荷崩れ等によって損傷を受け易いことから、複数枚の太陽電池パネルを安全に輸送できるようにした太陽電池パネル用梱包材が求められており、いくつかの提案がすでにされている。
【0003】
特許文献1には、筒状をなす本体部と、この本体部の底部開口を閉塞する底板と、上部開口を閉じる蓋体とから構成された発泡樹脂製のパネル搬送ボックスが記載されており、そこにおいて、前記筒体は一対の長辺側側板と一対の短辺側側板とから構成されるとともに、一対の短辺側側板の内側には、パネルを保持するための保持溝が上下方向に形成されている。
【0004】
特許文献2には、ダンボール、硬質プラスチック、軽金属等で作られる外装箱と、その中に収容する保持部材からなる太陽電池パネル等用の梱包ケースが記載されており、そこにおいて、外装箱内には、太陽電池パネル等を複数個重ねた状態で太陽電池パネル等の側面を挟持する溝が設けられた対の保持部材が対向配置される。保持部材は、軟質ウレタンフォームで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−292087号公報
【特許文献2】特開2007−210641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1あるいは特許文献2に記載のように、従来の太陽電池パネル用梱包体は、分解可能な多くのパーツから形成されているのが多い。この形態の梱包材は、梱包材として使用していないときに保管スペースを小さくできる等の利点がある一方、使用時には多くのパーツを組み立てる作業が必要となる。また、多数のパーツを過不足なく管理する作業も必要となる。さらに、太陽電池パネルを収容した梱包体が搬送時等に分解したりしないように、各パーツの組付けを確実にすること、梱包体をさらに所要の強度を持つ外層ケースで再梱包すること、ベルト等で全体をしっかりと締め付けること、等の安全対策も必要となる。そのために、高い作業効率を達成することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、高い作業効率で梱包作業を行うことができながら、外的衝撃に対して高い安全性を確保することができる太陽電池パネル用梱包材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による太陽電池パネル用梱包材は、発泡樹脂の一体成形品である箱形容器と前記箱形容器の開口部を閉鎖する発泡樹脂製の蓋部材とを備え、前記箱形容器の対向する2つの側壁は太陽電池パネルの側端面を支持する支持溝を形成するための複数本の互いに平行な凸条を上下方向に有し、容器底部には前記凸条を備えた各側壁に沿う領域に空隙が形成されており、さらに、前記蓋部材の天面には、蓋をしたときに箱形容器の前記凸条を備えた各側壁に沿う領域に空隙が形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記の太陽電池パネル用梱包材は、ともに発泡樹脂の一体成形品である箱形容器と蓋部材の2パーツのみ構成されており、パーツの管理はきわめて容易である。また、太陽電池パネルの梱包に当たっては、すでに一体に成形されている箱形容器内に、そこに形成されている支持溝を案内として、必要枚数の太陽電池パネルを上方から落とし込み、その後、箱形容器の開口部を蓋部材で閉鎖するだけでよく、その作業はきわめて容易であって、高い作業効率が得られる。
【0010】
さらに、本発明による太陽電池パネル用梱包材では、容器底部における前記凸条を備えた各側壁に沿う領域に空隙が形成されており、また、蓋部材の天面における、蓋をしたときに箱形容器の前記凸条を備えた各側壁に沿う領域にも空隙が形成されている。この空隙の存在により、梱包材落下時の衝撃が収容した太陽電池パネル用梱包材の角部に直接作用するのを緩和することができるので、梱包した太陽電池パネルの角部に損傷が生じるのを効果的に回避することができる。それにより、高い安全性を備えた太陽電池パネルの梱包体が得られる。
【0011】
本発明による太陽電池パネル用梱包材の一態様において、太陽電池パネル用梱包材は、前記箱形容器の容器底部に敷くための緩衝性を備えたシートをさらに備えるようにしてもよい。この態様では、収容した太陽電池パネルの重量によって箱形容器の底部に損傷が生じるのを回避することができ、梱包材の繰り返しの使用が可能となる。緩衝性を備えたシートは任意であるが、例えば、段ボール、発泡樹脂シート、非発泡樹脂シートなどを例示できる。
【0012】
本発明による太陽電池パネル用梱包材のさらに他の態様では、前記箱形容器を支持するパレットをさらに備える。この態様では、パレット上に太陽電池パネルを収容し蓋をした箱形容器を載置し、バンド等で一体に締め付けることで、輸送時や保管時での梱包体の取り扱いを容易かつ安定化することができる。
【0013】
なお、太陽電池パネルは、ガラス基板等と比較して肉厚であり、傷が付き難く、また、削れ粉の発生に対する対策も必要としない。そのために、本発明による太陽電池パネル用梱包材のように、ともに発泡樹脂の一体成形品である箱形容器と蓋部のみからなる梱包材であっても、太陽電池パネル用の梱包材として支障なく用いることができる。また、収容した太陽電池パネルの上下の縁部分に対して、EPE等のクッション材を別途配置することも不要であり、箱形容器の底部および蓋部材の天面部は、格別の支持溝を有しないフラットな面のままであって差し支えない。もちろん、箱形容器の底部および蓋部材の天面部に、箱形容器の側壁に形成した支持溝と対応するようにして、複数本の凸条からなる支持溝を形成するようにしてもよい。
【0014】
本発明による箱形容器と蓋部材とは、好ましくは型内発泡成形によって一体成形される。樹脂材料には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリスチレンとポリエチレンとを含む複合樹脂を用いることが好ましい。発泡体の倍率は、梱包しようとする太陽電池パネルの重量等を勘案して適宜設定すればよいが、緩衝性がよく、軽量で経済的である点から、好ましくは20〜40倍程度である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い作業効率で梱包作業を行うことができながら、外的衝撃に対して高い安全性を確保することができる太陽電池パネル用梱包材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による太陽電池パネル用梱包材の一形態を分解して示す斜視図。
【図2】図1に示す太陽電池パネル用梱包材の断面図。
【図3】本発明による太陽電池パネル用梱包材の他の形態の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による太陽電池パネル用梱包材を実施の形態に基づき説明する。
図1および図2は、本発明による太陽電池パネル用梱包材1の一実施の形態を示している。太陽電池パネル用梱包材1は、ともに発泡樹脂製である、箱形容器10と蓋部材20とで構成される。限定されないが、この例において、箱形容器10と蓋部材20は、ともにポリスチレンとポリエチレンを含む複合樹脂からなる発泡性樹脂粒子を型内発泡成形したものであり、密度は、0.05〜0.025g/cm程度である。
【0018】
箱形容器10は、底板11と4周の側壁12とで構成され、全体として立方体形状である。側壁の上縁側は内側が凸となる段部13となっている。4つの側壁12における一対の対向する側壁12aと側壁12bの内面側には、複数本の互いに平行な凸条14が上下方向に向けて形成されており、隣接する2つの凸条14、14の間に、太陽電池パネルPの側端面を支持する複数個の支持溝15が形成される。前記凸条14の間隔、すなわち支持溝15の幅は、収容しようとする太陽電池パネルPの厚さ、および、1つの支持溝15内に何枚の太陽電池パネルPを挿入するか、などを考慮して適宜設定する。
【0019】
図2に示すように、箱形容器10の底板11の内側面11aは平坦面であり、前記凸条14が形成された各側壁12a,12bに沿う領域には、側壁に沿うようにして空隙16,16が形成されている。各空隙16の外側縁16aは、各側壁12の内側面と面一な垂直面となっており、各空隙16の内側縁16bは、前記外側縁16aから1cm程度内側に寄った位置となっている。また、各空隙16の深さは、1cm程度であればよい。
【0020】
蓋部材20は、天板21と、箱形容器10の4つの側壁12と対向して位置する4つの側壁22とからなる。4つの側壁22の上端側は前記天板21に連続しており、側壁22の下縁側は外側が凸となる段部23となっている。天板21の内側面、すなわち天面21aは平坦面となっている。また、前記天面21aにおける、蓋をしたときに、箱形容器10の凸条14が形成された側壁12a,12bに対向することとなる側壁22a,22bに沿う領域に、側壁22a,22bに沿うようにして空隙26,26が形成されている。
【0021】
前記した空隙16と同様に、前記各空隙26の外側縁26aは、各側壁26の内側面と面一な垂直面となっており、各空隙26の内側縁26bは、前記外側縁26aから1cm程度内側に寄った位置となっている。また、各空隙26の深さは、1cm程度であればよい。なお、図2に示す例では、側壁26の内側面は、箱形容器10の側壁12の内側面よりも外側に位置している。このようにすることにより、後記するように、衝撃により太陽電池パネルPの上側の角部が損傷するのをより確実に回避することができるが、双方の内側面は面一であってもよい。
【0022】
図2において、30は木製あるいは樹脂製のパレットであり、太陽電池パネルPを収容した梱包体を載せて移動したり保管するのに用いられる。
【0023】
次に、太陽電池パネルPを梱包するときの手順の一例を説明する。最初に、パレット30の上に箱形容器10を置く。適宜の手段により、1枚あるいは複数枚の太陽電池パネルPを立てた姿勢で持ち上げ、その側端面が、箱形容器10に形成した前記凸条14間に形成された支持溝15内に入り込むようにして、上から落とし込む。それにより、各太陽電池パネルPは、下端縁が箱形容器10の底板11の内側面11aに乗り、両側端面が支持溝15に支持された姿勢で、箱形容器10内に安定した姿勢で収容される。その姿勢で、各太陽電池パネルPの下側の角部およびその近傍は、箱形容器10の底板11の内側面11aにおける側壁12a,12bの内面に沿う位置に空隙16,16が形成されていることにより、容器底板11には接していない。
【0024】
次に、蓋部材20を箱形容器10の開口部に被せる。その状態が図2に示される。図2に示すように、蓋をした状態で、箱形容器10の側壁12の上縁側に形成した段部13と、蓋部材20の側壁22の下縁側に形成した段部23とが、嵌め合い状態となっており、蓋部材20は安定した状態で箱形容器10に取り付けられる。なお、図2に示すように、蓋部材20を箱形容器10に取り付けたときに、蓋部材20の前記天面21aが、収容した太陽電池パネルPの上端縁に接するかわずかに離れた位置となるように前記蓋部材20の諸寸法を設定する。
【0025】
その後、必要な場合には、蓋をした梱包体に対して、図示しないバンドをパレット30の開口31を通しながら掛け渡しかつ締め付けることで、梱包作業は終了し、その状態で、輸送や保管に供される。
【0026】
上記のように、本発明による太陽電池パネル用梱包材1は、ともに発泡樹脂の一体成形品である箱形容器10と蓋部材20の2パーツのみ構成されており、太陽電池パネルPを梱包するときの作業はきわめて容易であって、高い作業効率が得られる。さらに、梱包材における、収容された太陽電池パネルPの角部が位置することとなる部位、すなわち4つの偶部領域には、前記したように空隙16,16と空隙26,26の存在しており、万が一、梱包体が落下したときに、落下による衝撃が太陽電池パネルPの角部に直接作用するのを緩和することができる。それにより、梱包した太陽電池パネルPの角部に損傷が生じるのを効果的に回避することができる。
【0027】
図3は、本発明による太陽電池パネル用梱包材の他の形態であり、箱形容器10の部分のみを示している。この太陽電池パネル用梱包材は、前記箱形容器10の容器底部11に敷くための緩衝性を備えたシート40をさらに備える点で、図2に示した太陽電池パネル用梱包材1と相違する。他の構成は太陽電池パネル用梱包材1と同じであり、同じ符号を付して説明は省略する。
【0028】
緩衝性を備えたシート40は、例えば、段ボール、発泡樹脂シート、非発泡樹脂シートなどの材料で作ることができる。緩衝性を備えたシート40を備えることにより、収容した太陽電池パネルPの重量によって箱形容器10の底部11に損傷が生じるのを回避することができ、梱包材の繰り返しの使用が可能となる。
【符号の説明】
【0029】
P…太陽電池パネル、
1…太陽電池パネル用梱包材、
10…箱形容器、
11…箱形容器の底板、
12…箱形容器の4周の側壁、
14…複数本の互いに平行な凸条、
15…太陽電池パネルの側端面を支持する支持溝、
16…箱形容器に形成された空隙、
20…蓋部材、
21…蓋部材の天板、
22…蓋部材の4つの側壁、
26…蓋部材に形成された空隙、
30…木製あるいは樹脂製のパレット、
40…緩衝性を備えたシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂の一体成形品である箱形容器と前記箱形容器の開口部を閉鎖する発泡樹脂製の蓋部材とを備え、
前記箱形容器の対向する2つの側壁は太陽電池パネルの側端面を支持する支持溝を形成するための複数本の互いに平行な凸条を上下方向に有し、容器底部には前記凸条を備えた各側壁に沿う領域に空隙が形成されており、さらに、
前記蓋部材の天面には、蓋をしたときに箱形容器の前記凸条を備えた各側壁に沿う領域に空隙が形成されていることを特徴とする太陽電池パネル用梱包材。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池パネル用梱包材であって、前記箱形容器の容器底部に敷くための緩衝性を備えたシートをさらに備えることを特徴とする太陽電池パネル用梱包材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の太陽電池パネル用梱包材であって、前記箱形容器を支持するパレットをさらに備えることを特徴とする太陽電池パネル用梱包材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−37469(P2011−37469A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185736(P2009−185736)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】