説明

太陽電池モジュールの設置構造

【課題】屋根または屋上に対する太陽電池モジュールの設置構造であって、雨水などによるセルの劣化がなく、積雪による太陽電池モジュールの変形や太陽電池セルの損傷を防止でき、発電量の低下を低減し得る太陽電池モジュールの設置構造を提供する。
【解決手段】太陽電池モジュールの設置構造において、屋根または屋上側の太陽電池モジュール1の設置部分には、太陽電池モジュール1が下方へ撓んだ際に当該太陽電池モジュールの背面を支持する補強スペーサー3が配置されており、当該補強スペーサーの上端と太陽電池モジュール1の背面との間には、常態において1〜5mmの隙間が設けられている。積雪や着雪の際の太陽電池モジュール1の撓み量を低減し、かつ、補強スペーサー3と太陽電池モジュール1との間の排水性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの設置構造に関するものであり、詳しくは、積雪による太陽電池モジュールの撓みを抑制でき、発電量の低下を低減できる太陽電池モジュールの設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムには、発電した電力を二次電池に蓄電する独立蓄電方式、電力会社の送電網に繋げる系統連系方式があるが、何れの方式においても、太陽電池モジュール(以下、適宜「モジュール」と略記する。)を使用して太陽光から直接電力を得る。周知の通り、上記のモジュールは、光起電力効果により光を電力に変換する複数の太陽電池セル(以下、適宜「セル」と略記する。)をシート状の基材の上に配列して構成されており、一般的には建物の屋根、屋上あるいは壁面に設置される。
【0003】
例えば、屋根にモジュールを設置する場合には、複数のモジュール(屋根装置)を棟の伸長方向に配列してモジュールで屋根面を覆い、所要の発電量を確保する。その場合の設置構造としては、波板状の金属製ベース板の突条部(凸部)にセルが予め接着剤で固定されたモジュールを使用し、これを野地板に取り付けると共に、長手方向に直交する断面が逆樋状に形成された細長の固定フレームをモジュールの連結部分の上方から野地板に取り付けることにより、各隣接するモジュール間の目地を封止するようにした構造が挙げられる。上記のような設置構造は、金属製ベース板を使用し、野地板に対する防火性能および防水性能の向上を企図したものである(特許文献1,図8〜図11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−13266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、降雪地域においては、建物の屋根や屋上にモジュールを設置した場合、積雪や着雪によってモジュールに撓みが生じる。モジュール自体の構造によっても差異はあるが、一般的に、モジュールの中央部分において10mmを超える大きさの撓みが生ずると、モジュールの変形やセルの損傷を惹起し、その結果、比較的短期間に発電量が低下すると言う問題がある。その点、前述の設置構造のように、波板状のベース板の突条部にモジュールを固定する等、モジュールの背面を突起状の支持体で支持することは撓み防止の有効な手段と考えられる。
【0006】
しかしながら、屋根や屋上に設置されたモジュールは、日常的に風雨に晒され、融雪水にも晒されるため、実際、支持体の先端部とモジュール背面との界面部分である接着部分に水が浸透する。その結果、滞留した水分によってセルの保護層が劣化し、セル自体の劣化を促進させる虞がある。
【0007】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、雨水などによるセルの劣化がなく、しかも、積雪や着雪によるモジュールの変形やセルの損傷を防止でき、発電量の低下を低減し得る太陽電池モジュールの設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明においては、屋根または屋上側のモジュール設置部分に補強スペーサーを配置し、かつ、補強スペーサーとモジュールとの間に特定の大きさの隙間を設けることにより、積雪や着雪の際にモジュールを背面から支持してその撓み量を低減すると共に、補強スペーサーとモジュールとの間の排水性を確保した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、複数の太陽電池セルを平面的に配列して成る太陽電池モジュールの屋根または屋上に対する設置構造であって、屋根または屋上側の太陽電池モジュールの設置部分には、太陽電池モジュールが下方へ撓んだ際に当該太陽電池モジュールの背面を支持する補強スペーサーが配置され、当該補強スペーサーの上端と太陽電池モジュールの背面との間には、常態において1〜5mmの隙間が設けられていることを特徴とする太陽電池モジュールの設置構造に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、積雪や着雪によって太陽電池モジュールが撓む際の撓み量を補強スペーサーで一定量に規制できるため、モジュールの変形やセルの損傷を防止でき、しかも、補強スペーサーの上端と太陽電池モジュールの背面との間に特定の大きさの隙間が設けられているため、補強スペーサーと太陽電池モジュール背面との間に水分が滞留することがなく、その結果、発電量の低下を一層低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る太陽電池モジュールの設置構造に使用される各部材の係合関係を示した展開斜視図である。
【図2】太陽電池モジュールの一例の平面形状を示す上面図である。
【図3】図2の太陽電池モジュールにおける枠組みの構造を示す図であり、分図(a)は図2のA−A線に沿って破断した太陽電池モジュールの縦断面図、分図(b)は図2のB−B線に沿って破断した太陽電池モジュールの縦断面図である。
【図4】太陽電池モジュールの屋根への取付け手段の一例を示した縦断面図である。
【図5】本発明に適用される補強スペーサーの配置例を示した縦断面図である。
【図6】本発明に適用される補強スペーサーの他の配置例を示した縦断面図である。
【図7】補強スペーサーと太陽電池モジュールとの隙間を一部破断して示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る太陽電池モジュールの設置構造の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。以下、太陽電池セルを「セル」、太陽電池モジュールを「モジュール」、太陽電池モジュールの設置構造を「設置構造」とそれぞれ略記する。
【0013】
本発明の設置構造は、屋根または屋上に対するモジュールの設置構造であり、建物の構造に拘わらず、積雪、着雪を生じる各種の屋根や屋上に適用できる。図1中に符号1で示すモジュールは、屋根または屋上の1つの設置場所に対して通常は複数基配置される。図1では、部材構成を示すため、多数配列されるモジュール1の4基だけを抽出して例示している。なお、以下の実施形態では、屋根に設置する態様を一例に挙げて説明する。
【0014】
図1に示すように、各モジュール1は、複数のセル2を平面的に配列して構成されている。本発明において、セル2としては、モジュール1を構成し得るものであれば特に制限されるものではなく、周知の各種のセル、例えば、各種の結晶シリコン型やアモルファスシリコン型のシリコン系電池セル、InGaAs、GaAs系、CIS系、Cu2ZnSnS4(CZTS)、CdTe−CdS系などの各種の化合物系電池セル、光電変換層に有機化合物を用いた有機系電池セル等が挙げられる。通常、1枚のセル2は、概略、ガラス基板または基材フィルムの表面に第1電極、光電変換層、第2電極、透明保護層を積層配置して構成されている。
【0015】
図2及び図3に示すように、モジュール1は、平面形状が例えば略正方形に形成された上記のようなセル2をシート状の基材21の表面に10〜100枚程度配列して構成されている。基材21は、例えば、エチレン酢酸ビニール共重合(EVA)、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体などから成る封止材と、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、各種プラスティックフィルム等から成る裏面材とが積層された積層構造を備えている。また、図示しないが、モジュール1の上面は透明な保護フィルムで被覆されている。各モジュール1においては、通常、1枚のセル2の第1電極とこれに隣接するセル2の第2電極とを順次に直列に接続されている。モジュール1の平面形状は、設置場所に応じて、正方形、長方形、台形などの適宜の形状に設計できる。
【0016】
図2に示すように、モジュール1の外周部には、屋根の下地である野地板8にモジュール1を固定し且つ隣接するモジュール1同士を連結し、しかも、これらモジュールの背面側に放熱および排水用の隙間を設けるため、補強用の枠組み4が付設されている。具体的には、図2及び図3(a)に示すように、1組の平行な2辺に相当するモジュール1の縁部には、固定用の補強枠41が取り付けられている。また、図2及び図3(b)に示すように、他の1組の平行な2辺に相当するモジュール1の縁部には、連結用のメス型補強枠42及びオス型補強枠43がそれぞれ取り付けられている。モジュール1は、補強枠41の長さ方向を屋根の勾配方向に沿わせ、メス型補強枠42及びオス型補強枠43の長さ方向を棟の長さ方向に沿わせるように配置される。
【0017】
補強枠41は、アルミニウム合金の押出し型材で構成された細長の縁取であり、図3(a)及び図4に示すように、長手方向に直交して断面視した場合、上端部に2つの挟持片41gがF字状に張出され且つ下端に前記の挟持片41gとは反対側に脚部41fが張出された構造を備え、2つの挟持片41gの間にセル2の一辺部を挟み込むようにして取り付けられている。そして、上記の補強枠41は、図4に示す支持型材5及び押え縁6を使用して野地板8側に固定されるようになされている。なお、図示を省略するが、野地板8は、通常、防水用のアスファルトルーフィングで表面が被覆されている。
【0018】
支持型材5は、図1に示すように、アルミニウム合金の押出し型材で構成された細長のレール状の部材であり、図4に示すように、長手方向に直交して断面視した場合、扁平な箱形の台座部51の両側面からそれぞれ上方に向けて支持片52が張出され且つ下方に向けて脚部53が張出された構造を備えている。支持型材5は、ねじ71によって各脚部53を垂木81に固定され、補強枠41は、ねじ72によって脚部41fを台座部51に固定され、同時に、前述のメス型補強枠42は、支持型材5の支持片52で下方から支持されている。
【0019】
各モジュール1は、補強枠41が互いに隣接する状態で上記の支持型材5によって野地板8側に固定され、各隣接するモジュール1の間、すなわち、隣接する各補強枠41の間の目地は、押え縁6によって塞がれている。押え縁6は、アルミニウム合金の押出し型材で構成された細長の目地材であり、長手方向に直交して断面視した場合、凹状に形成された固定部61の上端から張出片62が左右に各張出された構造を備え、かつ、固定部61の上部内壁には、内側に僅かに突出する段差部が形成されている。また、固定部61には、その上端を塞ぐための封止部材63が取り付けられている。封止部材63は、帯状平板体の裏面にキーとしての一対の突条が押え縁6の固定部61の内法に相当する間隔で設けられており、突条の先端の膨出部が固定部61の段差部に係合するようになされている。
【0020】
押え縁6は、その固定部61の底部に挿通したねじ73を前述の支持型材5の台座部51の上端面に螺着することにより各補強枠41間の目地に取り付けられている。これにより、押え縁6の張出片62が補強枠41及びセル2の縁部を上方から押さえ付けように作用し、支持型材5に対してモジュール1を一層強固に固定できる。そして、押え縁6の固定部61の上端開口は、封止部材63を嵌め合わせることにより封止されている。
【0021】
一方、メス型補強枠42及びオス型補強枠43は、アルミニウム合金の押出し型材で構成された細長の縁取である。メス型補強枠42は、図3(b)に示すように、長手方向に直交して断面視した場合、外形が略縦長の長方形に形成された中空の枠本体の上端部に2つの挟持片がF字状に張出されており、斯かる2つの挟持片の間にセル2の一辺部を挟み込むようにして取り付けられている。更に、上側の挟持片は、枠本体の上端面に後述するオス型補強枠43の重ね代が重なり合うように、型材の略厚さ分だけ枠本体の上端よりも高い位置に張出されている。
【0022】
また、オス型補強枠43は、図3(b)に示すように、長手方向に直交して断面視した場合、外形が略逆L字状の箱形に形成された中空の枠本体の上端部に2つの挟持片がF字状に張出されており、斯かる2つの挟持片の間にセル2の一辺部を挟み込むようにして取り付けられている。そして、枠本体の上端部には、上記の2つの挟持片とは反対側に前述の重ね代が張出されている。
【0023】
すなわち、野地板8上にモジュール1を配置した状態においては、メス型補強枠42の枠本体の上端面にオス型補強枠43の重ね代を重ね合わせることにより、各隣接するモジュール1間の隙間、換言すれば、棟の長さ方向に沿って並ぶモジュール1の繋ぎ部分が封止されている。そして、メス型補強枠42及びオス型補強枠43は、それぞれ枠本体の高さ部分が前述の補強枠41の高さよりも短く形成されており、モジュール1を設置した状態において、モジュール1の平行な2辺部であるメス型補強枠42とオス型補強枠43の各下端側に通気および排水用のスリット4cが形成されるように構成されている。
【0024】
セル2と野地板8との隙間の大きさ(野地板8からセル2の基材21までの高さ)は、枠組み4の補強枠41の高さの設定により、30〜50mm程度とされ、メス型補強枠42及びオス型補強枠43の各下側のスリット4cの開口高さは、10〜30mm程度とされている。なお、モジュール1は、屋上に配置する場合も、屋根におけるのと同様に、補強枠41の長さ方向を水の排水方向に沿わせた状態に設置される。
【0025】
本発明の設置構造においては、積雪や着雪によるモジュール1の撓みを低減するため、具体的にはモジュール1の中央部分における撓み量を10mm未満に制限するため、図1に示すように、屋根または屋上側のモジュール1の設置部分には、モジュール1が下方へ撓んだ際に当該モジュールの背面を支持する補強スペーサー3が配置されている。本発明において、モジュール1の設置部分とは、図に例示したような屋根や屋上に直接設置する場合は屋根の野地板8や屋上スラブなどの建物部分を指し、扁平な箱状のケーシング等に予め収められたモジュール1を屋根や屋上に設置する場合、あるいは、屋根や屋上に装着された受け台にモジュール1を設置する場合は、屋根または屋上に設置した状態におけるケーシングの底面部分または受け台の部分を指す。
【0026】
補強スペーサー3は、樹脂、金属、木質材料などの適宜の材料で構成することができるが、モジュール1を支持する際、当該モジュールに対する反発力を緩衝するため、全体がゴム又は上部がゴムで構成されているのが好ましい。ゴムを使用した補強スペーサー3の構造としては、金属や他の樹脂から成るスペーサー本体の上部にゴム製の緩衝部を設けたもの、硬度の異なる2種類のゴムの成形体を上下に組み合わせたもの、あるいは、1つのゴムの成形体で構成されたものが挙げられる。図に例示した補強スペーサー3は、1つのゴム成形体で構成されたものである。
【0027】
補強スペーサー3は、短軸の角柱状や円柱状などの適宜の形状に形成できる。図1に例示した補強スペーサー3は、略立方体に近い四角柱状に形成されている。そして、図1及び図5に示すように、補強スペーサー3は、平面視してモジュール1の中央に相当する位置に1個配置されている。あるいは、補強スペーサー3は、平面視してモジュール1の中央に相当する位置の周囲に2〜4個均等配置されている。換言すれば、モジュール1の1辺部の長さを略均等に分割する位置に複数の補強スペーサー3が配置されている。図6に示す態様においては、モジュール1の一辺部を略三等分する位置に2個の補強スペーサー3が配置されている。複数の補強スペーサー3がモジュール1の中央に相当する位置から外れて配置されていることにより、配線端子や電子部品の収納用の電子ボックスが背面中央に設けられたモジュール1を設置する際に電子ボックスとの干渉を避けることができる。
【0028】
上記のような補強スペーサー3は、その材料構成や形状に拘わらず、モジュール1の撓み荷重を支持する機能と適度な緩衝機能とを発揮する必要がある。一方、補強スペーサー3は、施工性を高め且つ製造コストを低減する観点から、また、後述するように水分の滞留を防止する観点から、出来る限り小型に形成されているのが好ましい。
【0029】
そこで、本発明においては、補強スペーサー3の荷重支持機能、荷重に対する緩衝機能および小型化を考慮し、モジュール1の撓み方向(モジュール1による荷重方向)に直交する補強スペーサー3の断面の総面積は、モジュール1の投影面積(モジュール1の表側の表面積)の0.2〜0.9%、好ましくは0.25〜0.35%に設定されている。そして、斯かる断面積の範囲において、補強スペーサー3は、少なくともその上端部がA30〜100の硬度、好ましくはA40〜60の硬度のゴムで構成されている。
【0030】
本発明において、補強スペーサー3の断面の総面積とは、補強スペーサー3が複数設けられる場合にはこれらの各断面積の合計を言う。また、ゴムの硬度とは、JIS K 6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方」に基づき、デュロメータのタイプA(ショアA)を使用して測定した値を言う。デュロメータは、スプリングによって付勢された押針(圧子)を試料に押し付け、加圧力と試料からの反発力とが平衡状態になったときの押針の押し込み量を「硬さ」としてゲージで表示するゴム・プラスチックの高度計であり、硬度測定は、温度23±2度、湿度50±5%の環境下で行われる。
【0031】
上記の補強スペーサー3は、十分な荷重支持機能を発揮し、かつ、モジュール1を支持した際の歪み量が小さく、しかも、不均一な積雪荷重によるモジュール1の偏った撓みに対しても転倒することのないように、当該補強スペーサーにおけるゴムの部分の厚さは、5〜50mm、好ましくは10〜30mmに設定されている。なお、補強スペーサー3の全体の高さは、枠組み4の厚さ、野地板8からモジュール1の背面までの離間距離、および、後述する補強スペーサー3とモジュール1との隙間32の大きさΔSとの関係で設定される。
【0032】
更に、本発明においては、雨水、融雪水などの水分の滞留を防止するため、図7に示すように、補強スペーサー3の上端とモジュール1の背面との間には、常態において1〜5mmの隙間32が設けられる。常態とは、重力以外の積雪などによる荷重が掛かっていない通常の状態を言う。図7において、符号ΔSが隙間32の大きさを示している。換言すれば、本発明では、モジュール1に積雪や着雪がない場合は補強スペーサー3の上端側に上記の隙間32を確保し、積雪や着雪があった場合にはモジュール1の撓み量を隙間32の大きさΔSで規定している。これにより、モジュール1の撓みによるセル2の損傷を防止でき、水分の滞留によるセル2の劣化も防止できる。
【0033】
隙間32の大きさΔSを上記の範囲に設定する理由は次の通りである。すなわち、隙間32の大きさΔSを1mm未満に設定した場合には、モジュール1の撓み量を小さくできる反面、補強スペーサー3とモジュール1の間の排水性が低下し、セル2が劣化し易くなる。他方、隙間32の大きさΔSを5mmよりも大きくに設定した場合には、積雪によるモジュール1の撓み量が大きくなり、モジュール1にクラックが発生したり、セル2に損傷を来す虞がある。
【0034】
本発明の設置構造は次のようにして施工される。先ず、屋根の野地板8の上面にモジュール1の配置位置換言すれば、支持型材5の配置位置を罫書き、補強スペーサー3に取付位置を罫書く。次いで、図5又は図6に示すように、耐候性を有する接着剤を使用し、補強スペーサー3を野地板8に固定する。補強スペーサー3が固定された後は、図1に示すように、支持型材5を垂木81に沿わせて野地板8の上に配置し、図4に示すようにねじ71で垂木81に支持型材5の脚部53を固定する。そして、パワーコンディショナーや分電盤に至る所要の配線を予め配置する。
【0035】
次いで、モジュール1同士を結線し且つ配線に接続しながら、支持型材5に沿ってモジュール1を順次取り付けてゆく。モジュール1の取り付けにおいては、図1に示すように支持型材5にモジュール1を載せ、図4に示すようにねじ72で支持型材5の台座部51に補強枠41の脚部41fを固定する。そして、棟の伸長方向に沿って補強枠41が隣接する各モジュール1の間の目地は、支持型材5の台座部51にねじ73で押え縁6を取り付けることにより塞ぎ、押え縁6の固定部61の上端は、封止部材63を嵌め合わせて塞ぐ。また、屋根の勾配方向に沿ってメス型補強枠42及びオス型補強枠43が隣接する各モジュール1の繋ぎ目は、モジュール1を配列する際、メス型補強枠42の枠本体の上端面にオス型補強枠43の重ね代を重ね合わせて塞ぐことができる。
【0036】
上記のようにして施工された本発明の設置構造においては、積雪や着雪によってモジュール1が撓む際のモジュール1の中央部分における撓み量を補強スペーサー3により10mm以下に制限できるため、モジュール1の変形やセル2の損傷を防止できる。特に、補強スペーサー3の断面の総面積が特定の大きさに設定され且つ補強スペーサー3の少なくとも上端部が特定の硬度のゴムで構成されていることにより、モジュール1の撓み変形に対して荷重を緩衝するように支持できるため、セル2の損傷を一層確実に防止できる。一方、常態においては、補強スペーサー3の上端とモジュール1の背面との間に特定の大きさΔSの隙間32が設けられているため、モジュール1の背面側、すなわち、補強スペーサー3とモジュール1との間に水分が滞留することがなく、セル2の劣化を促進させることもない。従って、本発明の設置構造によれば、発電量の低下を一層低減できる。
【0037】
また、本発明の設置構造においては、上記の隙間32により、常態において補強スペーサー3がモジュール1に直接接触していないため、日射および発電時のモジュール1の昇温による補強スペーサー3自体の熱劣化を低減できる。そして、モジュール1裏面への補強スペーサー3の接着を生じることもないため、モジュール1の変形や補強スペーサー3自体の膨張収縮による野地板8の浮き上がり現象を発生させることもない。更に、本発明の設置構造によれば、積雪や着雪による荷重に対し、補強スペーサー3で補強できるため、モジュール1の全体の厚さを薄く設計でき、モジュール1の製造コストを一層低減できる。しかも、施工においては、支持型材5及びモジュール1を取り付ける際、予め固定された補強スペーサー3を簡易足場として利用できるため、効率的に施工することができる。
【実施例】
【0038】
錘を使用して積雪量に相当する荷重を1基のモジュール1に加え、補強スペーサー3のゴムの厚さ及び配置形態ならびに荷重の大きさを変えてモジュール1の撓み量を測定した。試料のモジュール1としては、発電量85Wの単結晶型のセル2が基材21の表面に36枚配列され、全体の平面形状を1辺930mmの正方形に形成され且つ厚さを8.4mmに設計されたものを使用した。また、補強スペーサー3は、平面形状を一辺50mmの正方形に形成された木製のスペーサー本体の上端部に同様の平面形状のポリプロピレンゴムから成る緩衝部を付設して構成した。緩衝部のゴムの硬度はA80であった。補強スペーサー3の上端とモジュール1の背面との隙間32の大きさΔSは、補強スペーサー3のスペーサー本体の高さ及び緩衝部の厚さの調節により1mmに設定した。
【0039】
測定に当たり、モジュール1は、その平行な2辺部を支持する樋状の支持台に載せ、補強スペーサー3は、支持台の底部に固定した。そして、約0.5〜2.5mの積雪に相当する1〜5kNの荷重をモジュール1に加え、1時間経過後の撓み量を測定した。撓み量については、レーザー水準器を使用し、モジュール1の平行な他の2辺部側から水平方向にレーザー光を照射してモジュール1の背面中央部(基材21の背面)のレベルを測定し、荷重を加える前と加えた後とのレベルの差をもって撓み量とした。
【0040】
実施例1〜3:
補強スペーサー3の緩衝部(ゴム)の厚さを15mm(実施例1,2)、45mm(実施例3)に設定した。補強スペーサー3の配置形態は、モジュール1の中央に相当する位置に対して1個の配置(実施例1)、ジュール1の中央から左右200mm各離れた部分に相当する位置に対して合計2箇の配置(実施例2,3)とした。そして、上記の荷重を加えた結果、表1に示すように、撓み量は1.1〜6.1mmであった。すなわち、本発明の設置構造によれば、モジュール1の撓み量を10mm未満に抑え得ることが確認された。
【0041】
比較例1:
補強スペーサー3を配置しなかった点を除き、実施例と同様のモジュール1を使用し、実施例と同様の荷重に対するモジュール1の撓み量を実施例と同様に測定した。その結果、表1に示すように、撓み量は7.5〜12.5mmであった。すなわち、比較例の設置構造では、1.5mを超える積雪荷重で撓み量が10mmを超えることが確認された。
【0042】
【表1】

【符号の説明】
【0043】
1 :太陽電池モジュール
2 :太陽電池セル
21 :基材
3 :補強スペーサー
32 :隙間
ΔS :隙間の大きさ
4 :枠組み
41 :補強枠
42 :メス型補強枠
43 :オス型補強枠
5 :支持型材
6 :押え縁
63 :封止部材
8 :野地板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池セルを平面的に配列して成る太陽電池モジュールの屋根または屋上に対する設置構造であって、屋根または屋上側の太陽電池モジュールの設置部分には、太陽電池モジュールが下方へ撓んだ際に当該太陽電池モジュールの背面を支持する補強スペーサーが配置され、当該補強スペーサーの上端と太陽電池モジュールの背面との間には、常態において1〜5mmの隙間が設けられていることを特徴とする太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項2】
補強スペーサーは、太陽電池モジュールの中央に相当する位置に1個配置されている請求項1に記載の設置構造。
【請求項3】
補強スペーサーは、太陽電池モジュールの中央に相当する位置の周囲に2〜4個均等配置されている請求項1に記載の設置構造。
【請求項4】
太陽電池モジュールの撓み方向に直交する補強スペーサーの断面の総面積が太陽電池モジュールの投影面積の0.2〜1%であり、補強スペーサーの少なくともその上端部がA30〜100の硬度のゴムで構成されている請求項1〜3の何れかに記載の設置構造。
【請求項5】
補強スペーサーにおけるゴムの厚さが5〜50mmである請求項4に記載の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−231477(P2011−231477A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100540(P2010−100540)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(509122359)株式会社FPコーポレーション (4)
【Fターム(参考)】