説明

太陽電池モジュール及び屋根構造

【課題】家屋の屋根に敷設する太陽電池モジュールを改良する。太陽電池モジュールは長期間に渡って使用されるものであり、ねずみにかじられる等の小動物や昆虫等による害が懸念される。本発明は、この懸念を払拭することを課題とするものであり、長期に渡って使用することができる屋根用の太陽電池モジュールの提供を課題とするものである。
【解決手段】太陽電池モジュール10は、特有の構成として、各太陽電池セル17を横断する限定溝21が設けられている(図3参照)。そして限定溝21よりも上側の領域(B領域)は、端子ボックス14に接続されていない。太陽電池セル17を横断する限定溝21が、上部側の太陽電池モジュール10−2に対する重なり部分から僅かに外側に露出する位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルを有していて屋根に設置される太陽電池モジュールに関するものである。また本発明は、当該太陽電池モジュールを載置した屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、太陽電池パネルと太陽電池パネルが発生した電気を外部に取り出すための付属品を一体化したものであり、太陽光を受けて電気を発生させることができる。
例えば特許文献1に開示された太陽電池モジュールでは、太陽電池パネルの裏面側に端子ボックスが設けられている。そして太陽電池パネル内の太陽電池が端子ボックスに接続されている。さらに端子ボックスには、ケーブルが接続されている。特許文献1に開示された太陽電池モジュールでは、太陽電池パネル内の太陽電池が発生する電気が、端子ボックスに伝導され、さらにケーブルを経て外部に取り出される。
ここで従来技術の太陽電池モジュールでは、太陽電池パネルの略全域に太陽電池が分布しており、太陽電池パネルの略全域に渡る太陽電池の全てが、端子ボックスに接続されている。
即ち従来技術の太陽電池モジュールでは、太陽電池パネルの全域で発電が行われ、全域で発電された電気の全てが端子ボックスを経てケーブルに流れ、外部に取り出される。
【0003】
また近年、太陽電池モジュールを一般家庭の屋根に設置し、家庭で使用する電力を太陽電池モジュールが発生する電力で賄う太陽光発電システムを採用する家庭が増加しつつある。
ここで太陽電池モジュールを一般家庭の屋根に設置する方策として、太陽電池モジュール自体に瓦(屋根部材)の機能を持たせ、屋根下地に瓦に代わって太陽電池モジュールを敷設する構造と、スレート瓦等が敷設された屋根の上にさらに太陽電池モジュールを設置する構造がある。
【0004】
前者の構造は、例えば前記した特許文献1に開示された屋根構造であり、瓦一体型太陽電池モジュールと称されている。
後者の構造は、例えば特許文献2に開示された屋根構造であり、公知のスレート屋根に取り付け金具を設け、当該取り付け金具を介して太陽電池モジュールを取り付けるものである。
【0005】
いずれの構造を採用するにせよ、太陽電池モジュールは、鱗の如く、一部が隣接する屋根部材と重なり、残部が露出する状態で列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−299465号公報
【特許文献2】特許第3609298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
太陽電池モジュールは、無尽蔵に降り注ぐ太陽エネルギーを利用して発電することができ、且つ排気ガスを排出することなくクリーンであり、さらに放射能を放出するといった危険もなく安全である。また一般家庭の屋根は、通常、なにも物を置くことがない場所である。そのため太陽電池モジュールを屋根に設置して発電し、この電力を家庭用の電力として使用することは、空所の有効利用であって、なんらの弊害も起こさずに家庭用電力を生産することができ、好ましい構成であると言える。
【0008】
しかしながら、太陽電池モジュールを一般家庭の屋根に設置する構成は、開発されてからの歴史が浅く、数十年に渡る長期間の間、十分な性能を維持できるかを実地には検証されていない。
【0009】
即ち家(建物)は、建設したのち、最低でも40年から50年に渡って使用されることが通例であり、家屋に設置される太陽電池モジュールについても同様に長期間に渡る耐久性が必要である。
ここで一般的な耐久性能たる、耐オゾン性能、耐紫外線性能、耐雨性能、耐熱性能等については、公知の環境試験装置等によって疑似的な検証が可能である。
しかしながら、ねずみ、昆虫、鳥といった生物がもたらす弊害は、これといった擬似的検証方法が存在ない。
そのため実際に長期間使用し、この間の変化を実地にモニターするより方法がない。
しかしながら、過去の経験則から、これらの生物が弊害を起こしうる可能性がある部位については、予め対策を講じておくべきである。
【0010】
この観点から従来技術の太陽電池モジュールを観察したとき、太陽電池モジュール同士の間に隙間がある点が気にかかる。
即ち太陽電池モジュールは、前記した様に屋根の上で、列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置され、一部が隣接する段の太陽電池モジュールと重なる。しかしながら、上下に重なる太陽電池同士の間には僅かに隙間がある。また下側に位置する太陽電池モジュールの端面と、上側に重なる太陽電池モジュールとの間には、ねずみが侵入できる程度の空間が存在する。
そのためこれらの隙間に、昆虫やクモ、鳥等が侵入し、予期しない故障を発生させる懸念がある。
ここで昆虫やクモ等が分泌する分泌物には、長年の内に思わぬ弊害をもたらすものもある。例えば蟻が分泌する蟻酸は、強い酸であり、この蟻酸に長期に渡ってふれることによって、太陽電池の一部が腐食する可能性もある。
また雨仕舞い板等の隙間からねずみが侵入し、太陽電池モジュールをかじることがあるかも知れない。
【0011】
そこで本発明は、従来技術の上記した懸念を払拭することを課題とするものであり、長期に渡って使用することができる屋根用の太陽電池モジュールの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、建屋の屋根に設置される太陽電池モジュールであって、太陽電池パネルは複数の溝によって区切られた単体電池が電気的に直列接続されたものであり、各単体電池を横断する限定溝が設けられて面積の広い稼働領域と面積の狭い非稼働領域に区画され、稼働領域からのみ外部に電気が取り出されることを特徴とする太陽電池モジュールである。
【0013】
本発明の太陽電池モジュールでは、各太陽電池セルを横断する限定溝が設けられている。そして当該限定溝によって面積の広い稼働領域と面積の狭い非稼働領域に区画されている。
本発明の太陽電池モジュールは建屋の屋根に設置されるものであり、公知のそれと同様に、列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置され、一部が隣接する段の太陽電池モジュールと重なる状態となる。そして本発明の太陽電池モジュールでは、面積の狭い非稼働領域に隣接する段の太陽電池モジュールを重ねられる。また本発明では、稼働領域からのみ外部に電気が取り出される。
そのため太陽電池モジュールの重なり部分に生物が侵入し、太陽電池の一部を破壊しても、太陽電池のショートや漏電がおこることはない。
また非稼働領域は、隣接する段の太陽電池モジュールが重ねられる部位であるから、そもそも隣接する段の太陽電池モジュールに覆われて陰になる部分であり、発電に寄与しない。そのため太陽電池モジュールに限定溝を設け、面積の狭い非稼働領域からは電気を取り出さない構成を採用しても、何らの不都合もない。
【0014】
請求項2に記載の発明は、太陽電池パネルが発生した電気を外部に取り出すケーブルを有し、稼働領域に属する単体電池が前記ケーブルに接続されており、非稼働領域の単体電池はケーブルに接続されていないことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールである。
【0015】
本発明の太陽電池モジュールでは、ケーブルで電気が取り出されるから配線が容易である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、太陽電池モジュールの裏面に端子ボックスが設けられており、稼働領域に属する単体電池が端子ボックスに接続されており、非稼働領域の単体電池は端子ボックスに接続されていないことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池モジュールである。
【0017】
本発明の太陽電池モジュールでは、端子ボックスを設け、端子ボックスを介して太陽電池パネルと外部とを電気接続するものであり、端子ボックスを介することによって太陽電池パネル内の配線等が外力を受けることが防がれる。そのため太陽電池パネル内に断線が生じない。
【0018】
請求項4に記載の発明は、太陽電池パネルは平面視が四角形であり、その一辺から30mm〜60mm内側に入った位置に限定溝が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュールである。
【0019】
本発明は、限定溝の位置の目安を示すものである。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の太陽電池モジュールが、列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置され、一部が隣接する段の太陽電池モジュールと重なると共に一部が露出する状態であり、前記非稼働領域が太陽電池モジュールの重なり部に配置されていることを特徴とする屋根構造である。
【0021】
本発明の屋根構造によると、太陽電池モジュールの一端をねずみにがじられると言うような不測の事態が生じても、ショートや漏電が生じない。
【発明の効果】
【0022】
本発明の太陽電池モジュールは、長期に渡って使用することができる。また本発明の太陽電池モジュールは、安全性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態の屋根構造を外観した斜視図である。
【図2】本実施形態の屋根構造で採用するスレート瓦の斜視図である。
【図3】本実施形態の屋根構造で採用する太陽電池モジュールの説明図であり、(a)は太陽電池モジュールを正面側から観察した斜視図であり、(b)は第一ケーブルのコネクタ部分を拡大した断面図であり、(c)は第二ケーブルのコネクタ部分を拡大した断面図である。
【図4】図3の太陽電池モジュールを裏面側から観察した斜視図である。
【図5】図3の太陽電池モジュールを正面側から観察した斜視図であり、裏面構造を破線で示している。
【図6】図3の太陽電池モジュールのコネクタの断面図である。
【図7】本実施形態の屋根構造で採用する軒先取付け金具(軒先取付け具)の斜視図である。
【図8】図7の軒先取付け金具の分解斜視図である。
【図9】図7の軒先取付け金具の断面図である。
【図10】本実施形態の屋根構造で採用する中間取付け金具(取付け具)の斜視図である。
【図11】図10の中間取付け金具の分解斜視図である。
【図12】図11のD−D断面図である。
【図13】図11のE−E断面図である。
【図14】図10の中間取付け金具の断面図である。
【図15】本実施形態の屋根構造で採用する中間取付け金具(取付け具)の斜視図であ る。
【図16】本実施形態の屋根構造の施工手順を示す斜視図であり、屋根下地の軒先に軒先取付け金具を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図17】図16の断面図である。
【図18】図16、図17の工程に続く工程を示し、第一段目のスレート瓦を装着した状態における屋根構造の斜視図である。
【図19】図18の断面図である。
【図20】図19の工程に続く工程を示し、第二段目のスレート瓦を装着した状態における屋根構造の断面図である。
【図21】図20の工程に続く工程を示し、第二段目のスレート瓦に第一段目の中間取付け金具の固定部構成部材を取り付ける状態を示す斜視図である。
【図22】図21の断面図である。
【図23】第二段目のスレート瓦に第一段目の中間取付け金具の固定部構成部材を取付ける際の固定部構成部材の拡大斜視図である。
【図24】図23の工程に続く工程を示し、第一段目の中間取付け金具の第一凹部に第三段目のスレート瓦を装着する状態を示す斜視図である。
【図25】図24の断面図である。
【図26】第三段目のスレート瓦に第一段目の中間取付け金具の固定部構成部材をネジ止めする状態を示す斜視図である。
【図27】図26の断面図である。
【図28】第三段目のスレート瓦に第一段目の中間取付け金具の固定部構成部材をネジ止めした状態を示す平面図である。
【図29】(a)は第四段目のスレート瓦を装着する状態を示す屋根構造の断面図であり、(b)はその円内の拡大図である。
【図30】(a)は第四段目のスレート瓦に第2段目の中間取付け金具の下板部材を取り付けた状態を示す屋根構造の断面図であり、(b)はその円内の拡大図である。
【図31】(a)第2段目の中間取付け金具の第一凹部に第五段目のスレート瓦を装着した状態を示す屋根構造の断面図であり、(b)はその円内の拡大図である。
【図32】各スレート瓦に軒先取付け金具と中間取付け金具の固定部構成部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図33】太陽電池モジュールの接続方法を説明する概念図である。
【図34】太陽電池モジュールの接続構造を示す電気配線図である。
【図35】軒先金具に第一段目の太陽電池モジュールを装着する状態を示す屋根構造の断面図である。
【図36】図35に次ぐ工程を示す屋根構造の断面図である。
【図37】第一段目の固定部構成部材に中間板部材(押さえ部材込み)を装着し、太陽電池モジュールの棟側辺を押さえた状態を示す斜視図である。
【図38】図36の第一段目の固定部構成部材に中間板部材(押さえ部材込み)を装着した状態を示す断面図である。
【図39】第一段目の太陽電池モジュールを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図40】第一段目の太陽電池モジュールを取り付けてケーブル配線を行った状態を示す斜視図である。
【図41】第一段目の太陽電池モジュールを取り付けてケーブル配線を行った状態を示す平面図である。
【図42】第二段目の太陽電池モジュールを載置しケーブル配線の上に第二段目の太陽電池モジュールを被せた状態を示す屋根構造の断面図である。
【図43】第二段目の固定部構成部材に第二段目の中間板部材(押さえ部材込み)を装着し、第二段目の太陽電池モジュールの棟側辺を押さえた状態を示す屋根構造の断面図である。
【図44】第二段目の太陽電池モジュールを取り付けてケーブル配線を行った状態を示す平面図である。
【図45】第三段目の太陽電池モジュールの軒側に雨仕舞い板を取り付けた状態を示す断面図である。
【図46】太陽電池モジュールを屋根構造に取り付けた状態を示す断面図である。
【図47】図1の状態から接続片を取り外す状態を示す斜視図である。
【図48】図45の状態から太陽電池モジュールを取り外す状態を示す断面図である。
【図49】図48に続く工程を示す断面図である。
【図50】図10とは別形態の押さえ板部材を備えた中間取付け金具を示す斜視図である。
【図51】図5とは別形態の断熱補強材を備えた太陽電池モジュールを正面側から観察した斜視図であり、裏面構造を破線で示している。
【図52】本実施形態で採用する太陽電池パネルに構成される集積型太陽電池の層構成を概念的に説明する概念図である。
【図53】太陽電池モジュールの重なり具合を示す斜視図である。
【図54】太陽電池モジュールの重なり具合の変形例を示す斜視図である。
【図55】図54とは異なる太陽電池モジュールの重なり具合の変形例を示す斜視図である。
【図56】図54、図55とは異なる太陽電池モジュールの重なり具合の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の屋根構造1は、図1の様にスレート瓦(屋根部材)2で葺かれた基礎屋根構造3の上に、軒先取付け金具(軒先取付け具)5及び中間取付け金具(取付け具)6を介して太陽電池モジュール10が取付けられたものである。また必要部分には、部分的に雨仕舞い板11が設置されている。
【0025】
スレート瓦2は、図2の様に、セメント等で成形された略長方形の薄板である。スレート瓦2には、短手方向の中心近傍に、予め、取付け孔12が一列に4個設けられている。本実施形態では、取付け孔12の間隔は均等ではなく、中央の2個の孔12b,12cの間隔が他の孔同士の間隔よりも広い。
より詳細には、4個の孔を図面左から孔12a,孔12b,孔12c,孔12dとすると、両脇の孔の間隔たる孔12aと孔12bの間隔Waと孔12cと孔12dの間隔Wcは等しく、中央の孔12b,12cの間隔Wbは前記した間隔Wa,Wcよりも広い。
【0026】
次に太陽電池モジュール10の構造について説明する。後記する様に本実施形態では、太陽電池モジュール10を、ケーブル16,18側が棟側になる向きに敷設するので、説明の便宜上、ケーブル16,18が突出した側を上側として説明する。
本実施形態で採用する太陽電池モジュール10は、図3,図4,図5に示すように、2つの長辺と2つの短辺を有し、正面視が略長方形状である。そして、太陽電池パネル13と、太陽電池パネル13の裏面に取付けられる端子ボックス14(図4参照)と、端子ボックス14から延設される二本のケーブル16,18と、ケーブル16,18のそれぞれに接続されるコネクタ20,22及び断熱補強材23とを備えている。そして、太陽電池パネル13が発電した電力を端子ボックス14及びケーブル16,18を介して取り出すことが可能である
【0027】
太陽電池パネル13は、図3のようにほぼ長方形の面状に形成されている。太陽電池パネル13は長手方向の長さが900乃至1200[mm]であって短手方向の長さが230乃至650[mm]であることが望ましい。
なお太陽電池パネル13の長手方向の長さは、前記したスレート瓦2の2倍程度である。太陽電池パネル13の短手方向の長さAWがスレート瓦2の短手方向の長さawの約1.3倍〜1.6倍程度である。より具体的には太陽電池パネル13の短手方向の長さ(幅)AWは、スレート瓦2の短手方向の長さ(幅)awより長く、重ねられた状態におけるスレート瓦2の2枚分に相当する長さである。
【0028】
本実施形態で採用する太陽電池パネル13は、集積型太陽電池である。太陽電池パネル13には、例えばガラス基板に導電膜や半導体膜を積層し、これに複数の縦列の溝15を設けて所定数の単体電池(太陽電池セル)17を形成し、各太陽電池セル17を電気的に直列接続したものなどを採用することができる。本実施形態の太陽電池パネル13は、一枚で約100ボルトの電圧を得ることができる。
前記した様に太陽電池セル17は電気的に直列接続され、端子ボックス14に接続されている。
なお作図の関係上、溝15の数は実際よりも少なく描いている。
【0029】
また本実施形態の太陽電池パネル13に特有の構成として、各太陽電池セル17を横断する限定溝21が設けられている。限定溝21の位置は、ケーブル16,18が導出される側の辺を上辺としたとき、当該上辺から30mm〜60mm程度内側に入った位置である。より望ましい限定溝21の位置は、ケーブル16,18が導出される側の辺を上辺としたとき、当該上辺から30mm〜50mm程度内側に入った位置である。
太陽電池パネル13では、限定溝21によって各太陽電池セル17が図面下側のA領域(稼働領域)と、図面上側のB領域(非稼働領域)に分断されている。B領域は、太陽電池モジュール10を屋根に敷設した際に、棟側の段の太陽電池モジュール10に覆われて陰になる部分(重なり部)である。そのため本実施形態では、図面下側にあって面積の広いA領域の太陽電池セル17だけが端子ボックス14に接続されており、日陰になって発電に寄与しないB領域は、端子ボックス14に接続されていない。
【0030】
以下、太陽電池パネル13の太陽電池セル17及び限定溝21の断面構造について付言する。図52は、太陽電池パネル13の層構成を簡単に説明する太陽電池の概念図の一例である。太陽電池パネル13は、図52に示すように、ガラス基板141に透明導電膜142と半導体層143及び裏面側電極膜144が順次積層されたものであり、透明導電膜142と裏面側電極膜144の間に電位差が生じる。即ち透明導電膜142と半導体層143及び裏面側電極膜144とによって太陽電池140を構成している。
しかしながら、一個の太陽電池140が発生させる電圧は極めて低いものであり、一つの太陽電池140だけでは実用的な電圧に達しない。そこで太陽電池140の薄膜に複数の溝15を設けて多数の単体電池(太陽電池セル17)に分割し、この多数の太陽電池セル17を電気的に直列接続し、実用的な電圧にまで高める工夫がなされている。なおこの様な太陽電池は集積型太陽電池と称されている。
【0031】
図53は、本実施形態で採用する太陽電池パネル13に構成される集積型太陽電池の層構成を概念的に説明する概念図である。
太陽電池パネル13の集積型太陽電池155の層構成は、ガラス基板141に透明導電膜142と半導体層143及び裏面側電極膜144が順次積層されたものであるが、各層に溝156,157,158が形成されている。
【0032】
すなわち透明導電膜142に第一溝156が形成され、透明導電膜142が複数に分割されている。また半導体層143には第二溝(電気接続溝)157が形成され、半導体層143が複数に分割され、さらに当該第二溝157の中に裏面側電極膜144の一部が進入して溝底部で透明導電膜142と接している。
さらに裏面側電極膜144と半導体層143を切除して透明導電膜142の表面に至る第三溝158が設けられている。
【0033】
また集積型太陽電池155の端部近傍には、裏面側電極膜144と半導体層143を切除して透明導電膜142に至る3列の電極接続溝159が設けられている。電極接続溝159には半田160が流し込まれ、積層体の上部に配されたリード161が接続されている。リード161は半田160を介して透明導電膜142と連通している。図示していないが、裏面側電極膜144も別のリード161と半田160を介して電気的に連通している。
【0034】
また電極接続溝159の外側には、分離溝162が形成されている。分離溝162は、図53の様に、透明導電膜142と半導体層143及び裏面側電極膜144の三者が共に除去されて形成された溝である。
【0035】
そして本実施形態に特有の構成として、各太陽電池セル17を横断する限定溝21が設けられている。限定溝21についても、図53の様に、透明導電膜142と半導体層143及び裏面側電極膜144の三者が共に除去されて形成された溝である。
【0036】
さらにガラス基板141の最も外側の部位は、積層体が除去された裸地部165となっている。
また前記した裏面側電極膜144のさらに裏面側は図示しない被覆フィルムによって覆われている。
【0037】
太陽電池パネル13に構成される集積型太陽電池155は、透明導電膜142に設けられた第一溝156と、半導体層143(具体的にはp層、i層、n層を持つ)及び裏面側電極膜144に設けられた第三溝158によって各薄膜が区画され、独立したセルが形成されている。そして前記した様に、第二溝157の中に裏面側電極膜144の一部が進入し、裏面側電極膜144の一部が透明導電膜142と接しており、一つのセルは隣接するセルと電気的に直列に接続されている。
すなわち半導体層(太陽電池膜)143で発生した電流は、透明導電膜142側から裏面側電極膜144側に向かって流れるが、裏面側電極膜144の一部が第二溝157を介して透明導電膜142と接しており、最初のセルで発生した電流が隣のセルの透明導電膜142に流れる。そのため電圧が順次加算されてゆく。
【0038】
本実施形態では、前記した様に各太陽電池セル17を横断する限定溝21が設けられているから、大小二つの集積型太陽電池163,164が構成される。前記した様に限定溝21は、透明導電膜142と半導体層143及び裏面側電極膜144の三者が共に除去されて形成されたものであるから、大小二つの集積型太陽電池163,164は電気的に絶縁されている。
そして本実施形態では、図面下側のA領域(稼働領域)の集積型太陽電池163のみが端子ボックス14に接続されている。B領域(非稼働領域)の集積型太陽電池164は、端子ボックス14に接続されていない。
即ち端部に設けられたリード161のA領域(稼働領域)161aが端子ボックス14に接続され、B領域(非稼働領域)のリード161bは、端子ボックス14に接続されていない。
【0039】
なお上記した各溝の形成は、レーザ加工機を使用したレーザスクライブによって形成されている。また裸地部165の形成には、サンドブラスト等が採用されている。
【0040】
太陽電池モジュール10の説明に戻ると、図4に示すように、端子ボックス14は太陽電池パネル13の裏面側に接着剤などを用いて固定されている。端子ボックス14は、太陽電池パネル13の長辺の略中央であって、一方の長辺150側の領域に取付けられている。より具体的には、端子ボックス14は、太陽電池パネル13の裏面であって上側の位置に取付けられている。したがって、端子ボックス14は太陽電池モジュール10の上側の長辺寄りに位置する。ただし、端子ボックス14の上部側の辺の位置は、太陽電池パネル13の上側の辺と一致しているのではなく、上側の辺よりも少し内側に入った位置に取付けられている。具体的には、30mmから50mm程度内側に入った位置に端子ボックス14の上部側の辺がある。
【0041】
端子ボックス14は、太陽電池パネル13の正極が接続されるプラス側電極接続端子(図示せず)と、太陽電池パネル13の負極が接続されるマイナス側電極接続端子(図示せず)とが内部に設けられている。端子ボックス14内において、プラス側電極接続端子には、黒色の被服導線であるプラス側の導線24が二本接続されており、白色の被服導線であるマイナス側電極接続端子には、マイナス側の導線26が二本接続されている。
【0042】
第一ケーブル16は、二本のプラス側導線24,24のうちの一方のプラス側導線24と、二本のマイナス側導線26,26のうちの一方のマイナス側導線26とを束ねて形成された二芯ケーブルである。また第二ケーブル18は、二本のプラス側導線24,24のうちの他方のプラス側導線24と、二本のマイナス側導線26,26のうちの他方のマイナス側導線26とを束ねて形成された二芯ケーブルである。
【0043】
図3,図4,図5に示すように、第一ケーブル16および第二ケーブル18は色彩が相違しており、第一ケーブル16は、白色の絶縁チューブ16a内にプラス側芯線24およびマイナス側芯線26が配されており、第二ケーブル18は、黒色の絶縁チューブ18a内にプラス側芯線24およびマイナス側芯線26が配されている。
【0044】
また第一ケーブル16および第二ケーブル18は、長さに長短があり、一方が長く、他方が短い。具体的には、第一ケーブル16が第二ケーブル18よりも短い。第一ケーブル16の全長は、長方形状の太陽電池パネル13の長辺の長さの50パーセント未満の長さであり、第二ケーブル18の全長は、太陽電池パネル13の長辺の長さの50パーセント以上である。
【0045】
ただし第一ケーブル16の長さと第二ケーブル18の長さの合計は、太陽電池パネル13の長辺の長さよりも長い。
【0046】
図3に示すように、第一ケーブル16および第二ケーブル18のそれぞれの端部には、第一コネクタ20および第二コネクタ22が設けられている。第一コネクタ20および第二コネクタ22の色彩は相違しているが、構造は同一である。本実施形態において、第一コネクタ20は白色であり、第二コネクタ22は黒色である。
【0047】
図3,図6に示すように、第一コネクタ20および第二コネクタ22は、ピン状端子28およびソケット状端子30を備えている。また第一コネクタ20および第二コネクタ22は、雌片32と雄片34とを有し、前記したピン状端子28は、雌片32内にあり、ソケット状端子30は、雄片34内にある。
【0048】
図3(b),(c)に示すように、本実施形態において、第一コネクタ20のピン状端子28にはプラス側芯線24が接合されており、第一コネクタ20のソケット状端子30にはマイナス側芯線26が接合されている。また第二コネクタ22のピン状端子28にはマイナス側芯線26が接合されており、第二コネクタ22のソケット状端子30にはプラス側芯線24が接合されている。即ち、第一コネクタ20では、ピン状端子28が正極であり、ソケット状端子30が負極である。これに対し、第二コネクタ22では、ピン状端子28が負極であり、ソケット状端子30が正極である。そのため、第一コネクタ20と第二コネクタ22とは、一方の雌片32と他方の雄片34とを嵌合させて一方のピン状端子28を他方のソケット状端子30に接続させることにより、同極同士を電気的に接続することが可能である。
【0049】
次に断熱補強材23について説明する。図4に示すように、断熱補強材23は、太陽電池モジュール10の強度や断熱性を確保するために太陽電池パネル13の裏面に取付けられる発泡樹脂製の部材である。断熱補強材23は図4のように太陽電池パネル13の裏面の中央部分にあり、図面下辺の近傍に沿う部分は断熱補強材23が欠落していて配線収納空間41が形成されている。
また前記した端子ボックス14が取付けられている部位は、端子ボックス用欠落部43がある。従って端子ボックス14はその三方が断熱補強材23によって囲まれている。さらに端子ボックス用欠落部43の両脇にも欠落部45が設けられている。
欠落部45の下方部分は、断熱補強材23の厚さが薄く、溝状部46となっている。
さらに太陽電池パネルの上部側の長辺150の近傍部分40についても断熱補強材23が欠落している。当該部分は、中間取付け金具6の前端エリアBの前部側に載置される部位である。なお、欠落部45と溝状部46は屋根上に太陽電池モジュール10を敷設した際に、軒側と棟側で連続する2つの太陽電池モジュール10の間でコネクタを接続するとき、第1ケーブル16や第2ケーブル18を通すことができる。
【0050】
太陽電池パネル13の左右の短辺には、サイドガスケット47が取付けられている。サイドガスケット47は、樹脂系材料で作られている。
【0051】
次に本実施形態の屋根構造1の施工方法について説明する。本実施形態の屋根構造1を施工するには、最初の屋根下地を形成し、その上にスレート瓦2を列状及び複数段状に並べ平面的な広がりをもって載置する。そしてこのスレート瓦2を設置する際に、軒先取付け金具(軒先取付け具)5と、中間取付け金具(取付け具)6を取付ける。
すなわち本実施形態では、太陽電池モジュール10の設置に先立って、基礎屋根構造3を構築する。
【0052】
具体的な手順は次の通りである。
すなわち、図16で示されるように、屋根下地の軒先に、通常スレート瓦2の軒先水切68を設置し、軒先取付け金具(軒先取付け具)5を設置する。軒先取付け金具5の接続片51の正面部60の位置は、スレート瓦2の軒先からの出寸法(図19におけるtl)より、軒先取付け金具5の板厚(図19におけるml)分だけ軒先側に出た位置となる。
軒先取付け金具5は、下板部52の取付け孔59に木ねじ又はクギ等の締結要素115を挿入し、屋根下地に締結要素115を係合させることによって取付ける。
軒先取付け金具5は、正面部60側から見たときに軒先に隙間が出来ない様に、間隔を詰めて取付けられる。
【0053】
図17で示すように、軒先取付け金具5が軒先に取付けられた状態においては、下板部52と第1正面立ち上げ部53と上板部55とによって構成される屋根部材保持凹部64が棟側に向かって開口する。
【0054】
そして次の工程として、軒側第1段目の列のスレート瓦2−1を設置する。スレート瓦は、前記した軒先取付け金具5の屋根部材保持凹部64に嵌め込まれることによって軒側の辺が保持される。(図18)
【0055】
続いて、軒側から第2段目の列のスレート瓦2−2を設置する。
第2段目の列のスレート瓦2−2の設置方法は、公知の屋根工事と同一であり、先に敷設した軒側第1段目の列のスレート瓦2−1の棟側の一部に、第2段目の列のスレート瓦2−2の軒側の一部を重ねる(図20)。
【0056】
第2段目の列のスレート瓦2−2の設置を終えると、第2段目の列のスレート瓦2−2の4個の取付け孔12にクギ等117を挿通してクギ等117を屋根下地に係合させることとなるが、本実施形態では、この工程と平行して中間取付け金具(取付け具)6を取付ける。
推奨される手順としては、図21,図22のように、組み立て状態の中間取付け金具6から中間板部材71を外して固定部構成部材70だけを取付ける。
【0057】
こうして図23のように第2段目の列のスレート瓦2−2の固定が完了すると、次に図24のように、第3段目の列のスレート瓦2−3を取付ける。
図24,図25で示されるように、3段目の列のスレート瓦2−3の軒側の辺は、第一凹部105に奥深く入る。
【0058】
この状態においては、中間取付け金具6の上板部材73の下部には、その全域に3段目の列のスレート瓦2−3が存在する。そして次の工程として、図26,図27に示されるように、中間取付け金具6の上板部材73の後端寄りに設けられた取付け孔80a,80bのいずれかと、3段目の列のスレート瓦2−3の孔12a,12b,12c,12dのいずれかを合致させ、両者にクギ等118(クギ又はネジ)を挿通して中間取付け金具6を固定する。
【0059】
続いて4段目の列のスレート瓦2−4の敷設作業を行う。4段目の列のスレート瓦の敷設作業は、前述した2段目の列のスレート瓦2−2の敷設作業と略同様であり、先に敷設した軒側第3段目の列のスレート瓦2−3の棟側の一部に、第4段目の列のスレート瓦2−4の軒側の一部を重ねる(図29)。
【0060】
そして図30に示されるように、2段目の列の敷設作業と同様、第4段目の列のスレート瓦2−4の設置を終えると、第4段目の列のスレート瓦2−4の4個の取付け孔12にクギ等119を挿通して屋根下地に係合させることとなるが、この工程と平行して中間取付け金具6を取付ける。中間取付け金具6を取付ける作業は、2段目の列の作業と同一である。そして、図31で示される様にスレート瓦2−5を前述したスレート瓦2−3と同様の方法で取付ける。
【0061】
こうして、順次、5段目、6段目を工事し、棟に至るまでスレート瓦2を取付ける。すると図32で示されるように、屋根下地上にスレート瓦2の敷設が完了し、基礎屋根構造3が完成する。
その結果、屋根の最も軒先側には、軒先取付け金具5が固定され、スレート瓦2の一段置きに、中間取付け金具6の固定部構成部材70だけが取付けられた状態となる。
【0062】
そして続いて基礎屋根構造3上に、太陽電池モジュール10を設置する。
また本実施形態では、太陽電池モジュール10の敷設の際に、太陽電池モジュール10の配線を行う。
【0063】
太陽電池モジュール10は、基礎屋根構造3上に、列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置されるが、配線は簡単であり、同列上で隣接する太陽電池モジュール10のケーブルを接続するたけで足る。
本実施形態では、図33に示すように、隣接する太陽電池モジュール10,10において、一方の太陽電池モジュール10の第一コネクタ20と、隣接する他方の太陽電池モジュール10の第二コネクタ22とを接続させると、隣接する二つの太陽電池モジュール10,10を図34の様に電気的に並列に接続させることができる。即ち、白色の第一ケーブル16に取付けられた白色の第一コネクタ20と、黒色の第一ケーブル18に取付けられた黒色の第二コネクタ22とを接続させることで、隣接する太陽電池モジュール10,10の並列接続が可能になる。したがって本実施形態の太陽電池モジュール10は、左右の隣接する太陽電池モジュール10,10を、ケーブル16,18を用いて接続させることにより、モジュール段36に含まれる全ての太陽電池モジュール10を順次並列に接続させることができる。
【0064】
以下、太陽電池モジュール10を基礎屋根構造3上に取付ける工程と、これと平行して行われるケーブル配線工事について説明する。
【0065】
太陽電池モジュール10の敷設は、軒側の列から順に行われる。
先に説明した基礎屋根構造3を構築する作業により、軒先に軒先取付け金具5が取付けられているので、当該軒先取付け金具5のモジュール保持凹部65に第1列目の太陽電池モジュール10−1の軒側辺(ケーブルが突出していない側)を係合させる。
すなわち図35で示されるように、軒先取付け金具5には、支持台部57と第2正面立ち上げ部58と覆い板構成部61によってモジュール保持凹部65が構成され、当該モジュール保持凹部65は建屋の棟側に向かって開口している。そのため太陽電池モジュール10−1の軒側辺を棟側からモジュール保持凹部65に滑り込ませる。
【0066】
一方、図36で示すように、太陽電池モジュール10−1の棟側辺(ケーブルが突出している側)は、2段目のスレート瓦2−2に取付けられた固定部構成部材70の中央エリアBの前側に載置する。
そして太陽電池モジュール10−1の棟側辺を中央エリアBの前端部分に載置したままの状態で、当該固定部構成部材70に中間板部材71と押さえ板部材74を取付ける。実際上は、予め中間板部材71と押さえ板部材74とを一体化しておき、この状態で、固定部構成部材70に取付ける(図37)。
【0067】
この状態において太陽電池モジュール10−1は、図38のように、軒側の辺が軒先取付け金具5のモジュール保持凹部65と係合し、棟側の辺が中間取付け金具6の第二凹部106に係合するので、対向する両辺が保持され、基礎屋根構造3から離脱できない状態となる。
また軒側と係合するモジュール保持凹部65内にはカバー66、保護部材67が設けられているので、太陽電池モジュール10−1の軒側が傷つくことがなく、且つがたつくこともない。
【0068】
こうして第一列目の太陽電池モジュール10−1を取付けると、続いて隣り合う太陽電池モジュール間でケーブルの配線を行う。
即ち、隣接する太陽電池モジュール10−1,10−1の第一ケーブル16と第二ケーブル18とを接続する。
【0069】
ここで本実施形態の太陽電池モジュール10は、上記したように、第一ケーブル16が第二ケーブル18よりも短く形成されている。そのため太陽電池モジュール10は、作業者がケーブル16,18の長さを確認することによって、そのケーブル16,18に取付けられたコネクタ20,22が第一コネクタ20であるのか、あるいは第二コネクタ22であるのかを瞬時に判断することができる。
【0070】
また本実施形態においては、ケーブル16,18は、太陽電池モジュール10の棟側の長辺150から突出しているから、コネクタ20,22同士の接続作業は、太陽電池モジュール10の外側上部で行うことができる。そして上部側の列の太陽電池モジュール10を設置すると、上部側の列の太陽電池モジュール10の配線収納空間41に配線されたケーブル16,18(コネクタ20,22を含む)が収容されることとなる。
ここで本実施形態では、中間取付け金具6にフック部77が設けられているから、配線し終えたケーブルをフック部77に係合させておくことにより、ケーブルの処理が容易となる。
【0071】
即ち、図39で示されるように、第一段の太陽電池モジュール10−1が敷設し終わった段階では、その上段部は、いまだスレート瓦2が露出した状態であり、中間取付け金具6の上板部材73に設けられたフック部77は、外部に露出した状態である。
そのため図40,41のように接続したケーブルを容易にフック部77に係合させることができる。ケーブルは、フック部77に係合されることにより、位置決めがなされ、フック部77よりも棟側にケーブルが行くことが防がれる。
【0072】
続いて、第二段の太陽電池モジュール10−2を敷設する。
図42,43に示されるように、第二段目の太陽電池モジュール10−2は、中間取付け金具6同士の間に設置される。即ち中間取付け金具6は、前記した様に2枚ごとのスレート瓦2に取付けられている。
そして第二段目の太陽電池モジュール10−2は、先に第一段の太陽電池モジュール10−1の棟側を保持した中間取付け金具6(以下 下部側中間取付け金具6)と、その上部側に設けられた中間取付け金具6(以下 上部側中間取付け金具6)に固定される。
具体的には、第二段目の太陽電池モジュール10−2は軒側の辺を、下部側中間取付け金具6の第三凹部107(モジュール載置部)に係合させる。
【0073】
一方、太陽電池モジュール10−2の棟側辺(ケーブルが突出している側)は、一段目の太陽電池モジュール10−1と同様に、4段目のスレート瓦2−4に取付けられた上部側の固定部構成部材70の中央エリアBの前端側に載置する(図42)。
そして太陽電池モジュール10−2の棟側辺を中央エリアBに載置したままの状態で、当該固定部構成部材70に中間板部材71と押さえ板部材74を取付け、中間板部材71の裏面側で押さえる。その結果、上部側中間取付け金具6の上板部材73の前端側エリアA及び中央エリアBと上板部材73の上に設けられた中間板部材71によって第二凹部106が形成され、当該第二凹部106に太陽電池モジュール10−2の棟側の辺が係合し、太陽電池モジュール10−2は対向する両辺が保持され、基礎屋根構造部から離脱できない状態となる。
【0074】
図44に示されるように、先に配線された第一段目の太陽電池モジュール10−1,10−1の各ケーブル16,18は、下部側中間取付け金具6の上板部材73に設けられたフック部77と係合しているので、ケーブルは、太陽電池モジュールの裏面側の配線収納空間41に納まる。
すなわち前記した様に、太陽電池モジュール10の裏面側に断熱補強材23が設けられているが、軒側の辺の近傍においては、断熱補強材23が欠落し、所定の空隙が設けられている。本実施形態においては、ケーブルは基礎屋根構造部側から突出したフック部77と係合しているので、ケーブルは過度に棟側に入り込まない。そのため第2段目の太陽電池モジュール10−2を設置しても、第二段目の太陽電池モジュール10−2の断熱補強材23が第一段目の太陽電池モジュール10−1のケーブルを踏むことがない。
【0075】
また第一段目の太陽電池モジュール10−1とその上に重なる太陽電池モジュール10−2の重なり部分に注目すると、図54の様に、太陽電池セル17を横断する限定溝21は、上側の太陽電池モジュール10−2の軒側の辺から僅かに外側にはみ出した位置にある。即ち太陽電池セル17を横断する限定溝21は、図54の様に、太陽電池モジュール10−1,10−2の重なり部分から僅かに外側に露出する位置にあり、第一段目の太陽電池モジュール10−1のB領域(非稼働領域)は、その大半の部分がその上に重なる太陽電池モジュール10−2に重なっている。
【0076】
こうして、第2段目の太陽電池モジュール10−2の全てを設置し終えると、先と同様にケーブルを配線し、当該ケーブルをフック部77に係合する。そしてさらに第3段目の太陽電池モジュール10−3を設置する。こうして、順次、太陽電池モジュール10を設置し、所望の段数の設置を終えると、最も上段部の太陽電池モジュール10の棟側に雨仕舞い板11を設置し、工事を完了する(図45)。
【0077】
また上記した実施形態の太陽電池モジュール10は、特有の構成として、各太陽電池セル17を横断する限定溝21が設けられている(図3参照)。そして限定溝21よりも上側の領域(B領域)は、端子ボックス14に接続されていない。
この構成は、太陽電池モジュール10を長持ちさせる上で推奨される構成である。即ち、前記したB領域は、そもそも棟側の段の太陽電池モジュール10に覆われて陰になる部分であり、発電に寄与しない。そのため太陽電池モジュール10に限定溝21を設け、限定溝21よりも上側の領域(B領域)は、端子ボックス14に接続しない構成を採用しても、何らの不都合もない。
【0078】
一方、当該部分は、図1等に示されるように、太陽電池モジュール10同士の隙間部分であり、昆虫やクモ、鳥等の侵入によって予期しない故障を発生させる懸念のある部分である。
即ち本実施形態では、各太陽電池モジュール10が、中間取付け金具6を介して取付けられる。そして中間取付け金具6は、ある程度の厚さを有するから、各太陽電池モジュール10の軒側自由端と、その下の太陽電池モジュール10との間には、必然的に隙間があり、昆虫等が侵入する。例えば蜂が侵入して巣を作ったり、蟻が侵入して巣を作ることが懸念される。
ここで昆虫やクモ等が分泌する分泌物には、長年の内に思わぬ弊害をもたらすものもある。例えば蟻が分泌する蟻酸は、強い酸であり、この蟻酸に長期に渡ってふれることによって、太陽電池モジュール10の一部が腐食する可能性もある。
【0079】
またB領域は、太陽電池モジュール10に覆われて陰になる部分であるから、外からは様子が判らない。そのため、たとえば雨仕舞い板11の隙間からねずみが侵入し、太陽電池モジュール10をかじることがあるかも知れない。
そのため限定溝21よりも上側の領域(B領域)は、予期しないショートや断線、漏電を生じさせる懸念を有している。また当該領域は、外から見えないので、故障が生じた場合に故障の原因を発見しにくく、結局すべての太陽電池モジュール10を入れ換えることとなる懸念がある。
【0080】
そこで本実施形態では、棟側の段の太陽電池モジュール10に覆われて陰になる部分を限定溝21で電気的に切り離し、事故の懸念を払拭している。
【0081】
先に示した実施形態では、図54の様に、太陽電池セル17を横断する限定溝21が、上部側の太陽電池モジュール10−2に対する重なり部分から僅かに外側に露出する位置に構成を例示したが、図55に示す様に、太陽電池セル17を横断する限定溝21が、上部側の太陽電池モジュール10−2の軒側の辺の真下の位置にあってもよい。
本構成によると、下側の太陽電池モジュール10−1のA領域(稼働領域)は全て露出していて太陽光が照射され、B領域(非稼働領域)は全て影に隠れる。
【0082】
あるいは図56の様に、太陽電池セル17を横断する限定溝21が、上部側の太陽電池モジュール10−2に対する重なり部分の中にあってもよい。
本構成によると、下側の太陽電池モジュール10−1のA領域(稼働領域)の極一部が影に隠れ、B領域(非稼働領域)は全て影に隠れることとなる。
【0083】
以上説明した実施形態では、中間取付け金具6の押さえ板部材74は断面形状が「L」字状の部材を採用したが、押さえ板部材の形状はこれに限るものではない。例えば、図50に示されるように、断面「コ」字状の押さえ板部材114を用いてもよい。押さえ板部材の形状は適宜変更してよい。
【0084】
また、以上説明した実施形態では、太陽電池モジュール10に溝状部46を有する断熱補強材23を取付けたが、断熱補強材の形状及び数はこれに限るものではない。例えば図51に示されるように、太陽電池モジュール10の中央部分に正面視が「凹」字状の断熱補強材135aを取付け、長手方向両端部に正面視が略正方形状の135b,135cを取付けてもよい。断熱補強材の形状及び数は適宜変更してよい。
【符号の説明】
【0085】
1 屋根構造
10 太陽電池モジュール
13 太陽電池パネル
14 端子ボックス
17 単体電池
16 ケーブル
18 ケーブル
21 限定溝
A 稼働領域
B 非稼働領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の屋根に設置される太陽電池モジュールであって、太陽電池パネルは複数の溝によって区切られた単体電池が電気的に直列接続されたものであり、各単体電池を横断する限定溝が設けられて面積の広い稼働領域と面積の狭い非稼働領域に区画され、稼働領域からのみ外部に電気が取り出されることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
太陽電池パネルが発生した電気を外部に取り出すケーブルを有し、稼働領域に属する単体電池が前記ケーブルに接続されており、非稼働領域の単体電池はケーブルに接続されていないことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
太陽電池モジュールの裏面に端子ボックスが設けられており、稼働領域に属する単体電池が端子ボックスに接続されており、非稼働領域の単体電池は端子ボックスに接続されていないことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
太陽電池パネルは平面視が四角形であり、その一辺から30mm〜60mm内側に入った位置に限定溝が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の太陽電池モジュールが、列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置され、一部が隣接する段の太陽電池モジュールと重なると共に一部が露出する状態であり、前記非稼働領域が太陽電池モジュールの重なり部に配置されていることを特徴とする屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【公開番号】特開2011−166038(P2011−166038A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29584(P2010−29584)
【出願日】平成22年2月13日(2010.2.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】