説明

太陽電池モジュール用裏面保護シート及び太陽電池モジュール

【課題】太陽電池モジュールの封止材との密着性が良く、また紫外線吸収性能に優れ、長期間使用した場合でも基材シートの光劣化を生じ難く、長期安定性に優れた太陽電池モジュール用裏面保護シートの提供。
【解決手段】基材シートの一方の面にアクリル系高分子型紫外線吸収層を有し、前記アクリル系高分子型紫外線吸収層は、分子内に紫外線吸収性ユニットをもつ単量体単位を有することを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用裏面保護シートと、それを備えた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である太陽電池モジュールは、二酸化炭素を排出せずに発電できるシステムとして注目されている。その太陽電池モジュールには、高い発電効率とともに、屋外で使用した場合にも長期間の使用に耐えうる耐久性が求められている。
太陽電池モジュールの主な構成は、光発電素子である太陽電池セル、電気回路のショートを防ぐ電気絶縁体である封止材、およびそれらを保護する表面保護シート及び裏面保護シートからなる。
【0003】
太陽電池モジュールを長期間使用する場合、該太陽電池モジュール内の電気回路の漏電や腐食を防ぐために、太陽電池モジュール用裏面保護シートには、高い水蒸気バリア性と耐候性が求められている。また該裏面保護シートは、太陽電池モジュールの封止材との良好な密着性を有し、かつ長期にわたり密着性を安定して維持できることが求められている。従来、エチレン−酢酸ビニル共重合体などからなる封止材との良好な密着性を有し、かつ、高温多湿環境下においても密着性が安定して維持できることが可能な裏面保護シートとしては、例えば、特許文献1に開示された技術が提案されている。
特許文献1には、太陽電池裏面封止用シートの太陽電池モジュールを構成する充填材と貼り合わさる面に易接着コート層を設けていることを特徴とする太陽電池裏面封止用シートが開示されている。また前記易接着コート層として、アクリル系、エポキシ系、フェノール系、ポリエステル系、ウレタン系、スチレン系樹脂、あるいはこれらの変性物から選ばれる樹脂が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−332091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の太陽電池裏面封止用シートは、太陽電池モジュールのセル同士の隙間から漏れ出す太陽光に含まれる紫外線によって基材シートが黄変したり、脆くなって剥離してしまうという問題があった。
この紫外線による基材シートの劣化を防ぐために、従来の太陽電池モジュール用裏面保護シートでは、易接着コート層に紫外線吸収剤を配合することが行われていた。
しかし、紫外線吸収剤は、少量添加しただけでは紫外線を十分に防ぐことができず、大量に添加した場合には、易接着コート層の封止材及び基材シートへの密着性が低下して剥離し易くなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、太陽電池モジュールの封止材との密着性が良く、また紫外線吸収性能に優れ、長期間使用した場合でも基材シートの光劣化を生じ難く、長期安定性に優れた太陽電池モジュール用裏面保護シートの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、基材シートの一方の面にアクリル系高分子型紫外線吸収層を有し、前記アクリル系高分子型紫外線吸収層は、分子内に紫外線吸収性ユニットをもつ単量体単位を有することを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供する。
【0008】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記紫外線吸収性ユニットをもつ単量体が、一般式(I)
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、Rは置換基及び/又はエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基又はオキシアルキレン基、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキレン基、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、Aは紫外線吸収性ユニット、Dはエステル結合、アミド結合、エーテル結合又はウレタン結合、m及びnは、それぞれ独立に0又は1を示す。]
で表される構造を有するものであることが好ましい。
【0011】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記一般式(I)におけるAで示される紫外線吸収性ユニットが、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤ユニット又はベンゾトリアゾール系紫外線吸収ユニットであることが好ましい。
【0012】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記アクリル系高分子型紫外線吸収層は、前記紫外線吸収性ユニットの含有量が40〜80質量%の範囲内であり、質量平均分子量が1〜20万の範囲内であり、かつガラス転移温度が60〜90℃の範囲内であることが好ましい。
【0013】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記基材シートの他方の面に、フッ素樹脂層が積層された構成としてもよい。
【0014】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記基材シートの他方の面に、無機物蒸着膜が積層された構成としてもよい。
【0015】
また本発明は、太陽電池モジュールの封止材の裏面側に、前述した本発明に係る太陽電池モジュール用裏面保護シートの前記アクリル系高分子型紫外線吸収層が接着されてなる太陽電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、基材シートの一方の面にアクリル系高分子型紫外線吸収層を有し、前記アクリル系高分子型紫外線吸収層は、分子内に紫外線吸収性ユニットをもつ単量体単位を有する構成としたものなので、太陽電池モジュールの封止材との密着性が良く、また紫外線吸収性能に優れ、長期間使用した場合でも基材シートの光劣化を生じ難く、長期安定性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの構成を示した模式図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの第1実施形態の断面図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの第2実施形態の断面図である。
【図4】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの第3実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(太陽電池モジュール)
図1は、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート(以下、裏面保護シートと記す。)を用いる太陽電池モジュールの構成を示した模式図である。
図1に例示するように、本発明の裏面保護シートを用いる太陽電池モジュール10の構成は、太陽電池セル11、封止材12、表面保護シート13、裏面保護シート14を有する。
【0019】
前記封止材12としては、一般的に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと記す。)などの樹脂が用いられており、本発明の裏面保護シート14は、前記封止材12との良好な密着性を有している。
この太陽電池モジュール10内に複数配置された太陽電池セル11…の隙間からは、光15が漏れ出してくる。本発明の裏面保護シート14は、このようにモジュール裏面側に漏れ出した光15による裏面保護シート14の光劣化を効果的に防止し得る。
【0020】
この太陽電池セル11の種類や構造は特に限定されず、a−Si太陽電池、c−Si太陽電池、μc−Si太陽電池、GaAsなどの化合物半導体型太陽電池、色素増感型太陽電池などとすることができる。
【0021】
(裏面保護シートの第1実施形態)
図2は、本発明の裏面保護シートの第1実施形態を示す図である。
本実施形態の裏面保護シート20は、基材シート21の一方の面に、分子内に紫外線吸収性ユニットをもつ単量体単位を有するアクリル系高分子型紫外線吸収層22が積層された構成になっている。
【0022】
前記基材シート21として用いうる樹脂シートとしては、一般に太陽電池モジュール用裏面保護シートにおける樹脂シートとして使用されているものが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、シクロオレフィン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリm−フェニレンイソフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミド等のポリマーからなるシートが挙げられる。なかでも、ポリエステルからなるシートが好ましく、より具体的には、機械的強度、絶縁性の観点から、PETシート、PBTシートが好ましいものとして挙げられる。
【0023】
前記基材シート21の厚さとしては、太陽電池システムが要求する電気絶縁性に基づいて選択すればよい。例えば、前記基材シート21が樹脂シートである場合には、該膜厚が10〜300μmの範囲であることが好ましい。より具体的には、前記基材シート21がPETシートである場合には、軽量性および電気絶縁性の観点から、該PETシートの厚さは10〜300μmの範囲であることが好ましく、30〜200μmの範囲であることがより好ましく、50〜125μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0024】
前記アクリル系高分子型紫外線吸収層22は、分子内に紫外線吸収性ユニットをもつ単量体単位を有するアクリル系高分子重合体からなっている。
前記紫外線吸収性ユニットをもつ単量体としては、例えば一般式(I)
【0025】
【化2】

【0026】
で表される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0027】
前記一般式(I)において、Rは置換基及び/又はエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基又はオキシアルキレン基を示し、mは0又は1を示す。ここで、炭素数1〜10のアルキレン基及びオキシアルキレン基は直鎖状であってもよく、分岐を有するものであってもよい。前記アルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基、各種オクチレン基、各種デシレン基などを挙げることができ、オキシアルキレン基としては、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、各種オキシブチレン基、各種オキシペンチレン基、各種オキシヘキシレン基、各種オキシオクチレン基、各種オキシデシレン基などを挙げることができる。
また、前記アルキレン基やオキシアルキレン基は、置換基及び/又はエーテル結合を有していてもよく、置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基又はオキソ基(=O)などが挙げられる。
【0028】
は置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキレン基を示し、nは0又は1を示す。前記アルキレン基は直鎖状であってもよく、分岐を有するものであってもよい。該アルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基、各種オクチレン基などを挙げることができる。また、該アルキレン基は置換基を有していてもよく、この置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基などが挙げられる。
【0029】
は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられるが、これらの中でメチル基が好ましい。Aは紫外線吸収性ユニットを示す。Dはエステル結合、アミド結合、エーテル結合又はウレタン結合を示し、具体的には、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−O−、−NHCOO−、−OCONH−などである。
【0030】
前記Aで示される紫外線吸収性ユニットとしては特に制限はなく、従来公知の紫外線吸収剤、例えばサリチレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系などの紫外線吸収剤のユニットを挙げることができるが、これらの中で、紫外線吸収効果の点から、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤ユニット及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤ユニットが好ましく、特にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤ユニットが好適である。
【0031】
分子内に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤ユニットをもつ単量体としては、下記一般(II)で表される化合物を、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤ユニットをもつ単量体としては、下記一般式(III)で表される化合物を挙げることができる。
【0032】
【化3】

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシル基、Rは水素原子、ハロゲン原子又はメチル基、Rは水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R〜R、D、m及びnは前記一般式(I)と同じ意味である。]
【0033】
前記一般式(II)において、Rのうちの炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、さらに好ましくはメチル基及びエチル基である。また、Rのうちの炭素数1〜6のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、各種ブトキシ基、各種ペントキシ基、各種ヘキソキシ基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基、さらに好ましくはメトキシ基及びエトキシ基である。このRの好ましい置換位置は3位又は5位である。また、Rの好ましい置換位置は4位である。
【0034】
一方、前記一般式(III)において、Rのうちのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられるが、好ましくは塩素原子である。Rの位置については特に制限はないが、Rとしては、水素原子が好ましい。Rのうちの炭素数1〜6の炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基などが挙げられる。このRの置換位置については特に制限はないが、3位が好ましい。また、Rの好ましい置換位置は5位である。
【0035】
前記一般式(II)で表される化合物としては、例えば2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メチル−2−アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノンなどを挙げることができる。
【0036】
前記一般式(III)で表される化合物としては、例えば2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(メタクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−メチル−5−(アクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−メチル−5−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(アクリロイルオキシブチル)フェニル]−5−メチルベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(アクリロイルオキシエトキシカルボニルエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。
【0037】
本発明においては、前記の分子内に紫外線吸収性ユニットをもつ単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
前記アクリル系高分子型紫外線吸収層22中の前記紫外線吸収性ユニットの含有量は、40〜80質量%の範囲内であることが好ましく、45〜77質量%の範囲内がより好ましく、50〜75質量%の範囲内がさらに好ましい。この紫外線吸収性ユニットの含有量が40質量%未満であると、前記アクリル系高分子型紫外線吸収層22の紫外線吸収性能が十分に得られず、モジュール裏面側に漏れ出した光15によって裏面保護シート20の基材シート21が光劣化を生じるおそれがある。この紫外線吸収性ユニットの含有量が80質量%を超えると、紫外線吸収性ユニットを持つ単量体が多くなってアクリル系高分子重合体を形成する際の重合度合が悪化し、得られるアクリル系高分子型紫外線吸収層22は封止材12との密着性が悪くなってしまうおそれがある。
【0039】
本発明において、アクリル系高分子型紫外線吸収層22に用いられるアクリル系高分子重合体は、前述の分子内に紫外線吸収性ユニットをもつ単量体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を必須とし、その他、共重合可能なエチレン性不飽和結合をもつ単量体とを共重合させることにより得ることができる。
【0040】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、アルキル基の炭素数が1〜4のものが好ましく、具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどが挙げられる。被膜物性向上の点で、メタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルが好適である。
前記エチレン性不飽和結合をもつ単量体としては、芳香族ビニル系化合物、アルキルビニルエーテル類、アルキルビニルエステル類などを用いることができる。
ここで、芳香族ビニル系化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、アルキルスチレンなどが挙げられる。アルキルビニルエーテル類としては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどが挙げられ、アルキルビニルエステル類としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アシル基の炭素数2〜4のものが好ましく挙げられる。
これらのエチレン性不飽和単量体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
前記裏面保護シート20においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、前記の単量体と共に、所望により、官能基含有単量体を用いることができる。この官能基含有単量体を共重合させることにより、得られるアクリル系高分子重合体は、被膜強度や基材への密着性などが向上する。さらに架橋剤を用いて該アクリル系高分子重合体を架橋化する場合には、その中の官能基含有単量体単位の官能基が架橋点となる。
このように前記裏面保護シート20においては、アクリル系高分子型紫外線吸収層22を構成するアクリル系高分子重合体を架橋化することが望ましく、前記の官能基含有単量体を用いることが好ましい。
【0042】
この官能基含有単量体としては、官能基としてカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基などを有するものが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
前記アクリル系高分子型紫外線吸収層22を構成するアクリル系高分子重合体における官能基含有単量体単位の含有量は、0〜20質量%の範囲が好ましく、0.01〜15質量%の範囲がより好ましい。
【0044】
前記アクリル系高分子型紫外線吸収層22を構成するアクリル系高分子重合体は、例えば前記各単量体をラジカル重合開始剤の存在下、従来公知の重合方法、例えば溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などによって製造することができる。
前記ラジカル重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用でき、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物;および過酸化水素が挙げられる。ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤としてもよい。
【0045】
溶液重合法により、前記アクリル系高分子重合体を製造する場合には、適当な溶媒中において、油溶性の有機過酸化物やアゾ系化合物などのラジカル重合開始剤の存在下に、前記の各単量体を共重合させればよい。
この際、重合溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル等のエスエル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類など、公知の溶媒を使用することができる。また、これらの溶媒は単独で、又は2種以上混合して用いることができる。 重合開始剤の使用量は、特に制限はないが、単量体全量に対し、0.05〜2質量%程度である。
【0046】
一方、乳化重合法により、前記アクリル系高分子重合体を製造する場合には、必要に応じ乳化剤を用いて単量体成分を乳化させ、水溶性の有機過酸化物、アゾ系化合物、過硫酸塩などの重合開始剤の存在下に、共重合させればよい。
【0047】
このようにして得られたアクリル系高分子重合体は、質量平均分子量が1万〜20万の範囲内であり、ガラス転移温度が60〜90℃の範囲内であることが好ましい。なお、該質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)によるポリスチレン換算の値である。
質量平均分子量及びガラス転移温度が前記の範囲にあれば、耐候性及び耐擦過性などが良好となる。質量平均分子量が1万未満であると、得られるアクリル系高分子型紫外線吸収層22の膜強度が低下すると共に、接着強度が低下してしまう。質量平均分子量が20万を超えると、該樹脂が固くなって薄いアクリル系高分子型紫外線吸収層22を形成することが難しくなる。ガラス転移温度が60℃未満であると、得られるアクリル系高分子型紫外線吸収層22がベタついてブロッキングを生じ易くなる。ガラス転移温度が90℃を超えると、樹脂が固くなり、該層の接着性が悪くなる。
また、アクリル系高分子重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0048】
基材シート21の一方の面上に前記アクリル系高分子重合体を含むアクリル系高分子型紫外線吸収層22を形成させるには、まず紫外線吸収層形成用塗工液(以下、単に塗工液と称することがある。)を調製する。この塗工液は溶剤型、エマルション型のいずれであってもよいが、本発明においては溶剤型が好ましい。
【0049】
前記紫外線吸収層形成用塗工液には、前記アクリル系高分子重合体と共に、所望により架橋剤を含有させることができる。このように架橋剤を含有させることにより、前記塗工液を基材に塗布し、加熱乾燥処理してアクリル系高分子型紫外線吸収層22を形成させる際に、当該塗工液に含まれるアクリル系高分子重合体が架橋化され、形成されるアクリル系高分子型紫外線吸収層22が、耐候性、耐湿性、耐薬品性等に優れたものになる。
なお、架橋剤を加え、アクリル系高分子重合体を架橋化するには、アクリル系高分子重合体中に前記官能基含有単量体成分を有することが肝要である。
【0050】
前記架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
ここで、ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体、弾性変性ポリイソシアネート、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト変性体などを挙げることができる。
前記弾性変性ポリイソシアネートとは、前記のトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート類をモノマーとして用い、これに弾性を有する活性水素含有化合物をウレタン反応させ、NCO末端のプレポリマーとしたものである。
イソシアネート類を弾性変性するために用いられる弾性を有する活性水素含有化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール又はこれらのコポリオールなどが挙げられる。
本発明においては、これらのポリイソシアネート化合物の中で、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体が好適である。
本発明においては、この架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、架橋剤の種類にもよるが、前記アクリル系高分子重合体100質量部に対し、通常0.01〜20質量部、好ましくは、0.1〜10質量部の範囲で選定される。
【0051】
前記紫外線吸収層形成用塗工液には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により各種添加剤、例えば添加型(低分子量型)の紫外線吸収剤や酸化防止剤や帯電防止剤、レベリング剤、充填剤、着色剤、加水分解防止剤、消泡剤などを含有させることができる。
【0052】
前記紫外線吸収層形成用塗工液は、溶剤型の場合、その中に含まれる溶媒の量によって塗工に適した濃度に調整される。該溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類など、公知の溶媒を使用することができる。また、これらの溶媒は単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
塗工に適した濃度としては、固形物濃度で、通常5〜50質量%程度、好ましくは10〜40質量%である。
【0053】
このようにして得られた紫外線吸収層形成用塗工液を、従来公知の方法、例えばロッドコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用い、前記基材シート21の一方の面に塗布し、30〜70℃程度の温度で30秒〜5分間加熱乾燥処理することにより、アクリル系高分子型紫外線吸収層22を形成することができる。
【0054】
このアクリル系高分子型紫外線吸収層22の厚さは特に制限はないが、通常0.5〜20μmの範囲内が好ましく、0.7〜10μmの範囲内がより好ましい。
【0055】
本実施形態の太陽電池モジュール用裏面保護シート20は、太陽電池モジュール10の封止材12にアクリル系高分子型紫外線吸収層22を接着することによって太陽電池モジュール10に積層される。
この太陽電池モジュール用裏面保護シート20を封止材12に接着するための方法は、特に限定されないが、太陽電池モジュール用裏面保護シート20のアクリル系高分子型紫外線吸収層22を封止材12に重ね合わせ、加熱圧着する方法が好ましく、さらに加熱真空ラミネート法を用いることがより好ましい。
【0056】
本実施形態の太陽電池モジュール用裏面保護シート20は、基材シート21の一方の面に、分子内に紫外線吸収性ユニットをもつ単量体単位を有するアクリル系高分子型紫外線吸収層22を有する構成としたものなので、EVAなどの樹脂からなる太陽電池モジュール10の封止材12との密着性が良く、また紫外線吸収性能に優れており、長期間使用した場合でも基材シートの光劣化を生じ難く、長期安定性に優れている。
【0057】
(太陽電池モジュール用裏面保護シートの第2実施形態)
図3は、本発明の裏面保護シートの第2実施形態を示す図である。
本実施形態の裏面保護シート30は、基材シート21の一方の面に前記アクリル系高分子型紫外線吸収層22が積層され、さらに基材シート21の他方の面にフッ素樹脂層31が積層された構成になっている。
【0058】
前記フッ素樹脂層31としては、フッ素を含む層であれば特に制限されない。このフッ素樹脂層31を形成するものとしては、例えば、フッ素含有樹脂からなるシート、フッ素含有樹脂からなる塗料を塗布してなる塗膜などが挙げられる。
【0059】
フッ素樹脂層がフッ素含有樹脂からなるシートである場合、接着層を介して、基材シート21にフッ素樹脂層31が積層される。接着層は、基材シート21に対する接着性を有する接着剤から構成される。
【0060】
この接着層を構成する接着剤としては、ポリアクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエステルポリウレタン系接着剤などが用いられる。これらの接着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
フッ素含有樹脂からなるシートとしては、例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)またはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)を主成分とする樹脂をシート状に加工したものが用いられる。
PVFを主成分とする樹脂としては、例えば、「Tedlar(商品名、デュポン社製)」が用いられる。
ECTFEを主成分とする樹脂としては、例えば、「Halar(商品名、Solvay Solexis社製)」が用いられる。
ETFEを主成分とする樹脂としては、例えば、「Fluon(商品名、旭硝子社製)」が用いられる。
【0062】
一方、フッ素樹脂層がフッ素含有樹脂からなる塗料を塗布してなる塗膜である場合、通常、接着層を介することなく、フッ素含有樹脂からなる塗料を基材シート21に直接塗布することにより形成される。
【0063】
塗料に含まれるフッ素含有樹脂としては、硬化性官能基を有するフルオロオレフィン樹脂を用いることが好ましい。硬化性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基などが挙げられる。
【0064】
具体的には、フルオロオレフィン樹脂としては、「LUMIFLON(商品名、旭硝子社製)」、「CEFRAL COAT(商品名、セントラル硝子社製)」、「FLUONATE(商品名、DIC社製)」などのクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類、「ZEFFLE(商品名、ダイキン工業社製)」などのテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類などが挙げられる。
【0065】
前記の塗膜は耐候性、耐擦傷性を向上させるため、架橋剤により硬化していることが好ましい。
架橋剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、金属キレート類、シラン類、イソシアネート類またはメラミン類が好適に用いられる。裏面保護シートを屋外において長期間使用することを想定した場合、耐候性の観点から、架橋剤としては、脂肪族のイソシアネート類が好ましい。
【0066】
本実施形態の太陽電池モジュール用裏面保護シート30は、そのアクリル系高分子型紫外線吸収層22を太陽電池モジュール10の封止材12に接着することによって太陽電池モジュール10に積層される。
この太陽電池モジュール用裏面保護シート30を封止材12に接着するための方法は、特に限定されないが、太陽電池モジュール用裏面保護シート30のアクリル系高分子型紫外線吸収層22を封止材12に重ね合わせ、加熱圧着する方法が好ましく、さらに加熱真空ラミネート法を用いることがより好ましい。
【0067】
本実施形態の裏面保護シート30は、前記第1実施形態の裏面保護シート20と同様の効果を得ることができ、加えて基材シート21の他方の面にフッ素樹脂層31を有するため、第1実施形態の裏面保護シート20に比べ、その耐候性を向上させることができる。
【0068】
(太陽電池モジュール用裏面保護シートの第3実施形態)
図4は、本発明の裏面保護シートの第3実施形態を示す図である。
本実施形態の裏面保護シート40は、基材シート21の一方の面に前記アクリル系高分子型紫外線吸収層22が積層され、さらに基材シート21の他方の面に無機物蒸着膜41が積層された構成になっている。
【0069】
無機物蒸着膜41は、金属または金属の酸化物、窒化物、珪化物などの無機材料から構成されるものであり、基材シート21に対する蒸着によって形成されるものであれば特に限定されない。
無機物蒸着膜41を形成する蒸着方法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法などの化学気相法、または、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理気相法が用いられる。これらの方法の中でも、操作性や層厚の制御性を考慮した場合、真空蒸着法が好ましい。
【0070】
この無機物蒸着膜41は、水蒸気バリア性を有した防湿層として機能する。また、無機物蒸着膜41は、裏面保護シート40を太陽電池モジュール10に適用することにより、太陽電池モジュール10の耐候性を高めることができる。
【0071】
この無機物蒸着膜41の原料となる金属としては、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトウリム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)などの金属が用いられる。
これらの金属の酸化物、窒化物、酸窒化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ、窒化珪素、酸窒化珪素、酸窒化アルミニウムなどが挙げられる。
【0072】
無機物蒸着膜41は、一種の無機材料からなるものであっても、複数種の無機材料からなるものであってもよい。
無機物蒸着膜41が複数種の無機材料からなる場合、各無機材料からなる層が順に蒸着された積層構造の蒸着層であってもよく、複数種の無機材料が同時に蒸着された蒸着層であってもよい。
【0073】
無機物蒸着膜41の厚みは、水蒸気バリア性を考慮して適宜設定され、用いる無機材料の種類や蒸着密度などによって変更される。無機物蒸着膜41の厚みは、5nm〜200nmであることが好ましく、より好ましくは10nm〜100nmである。
【0074】
本実施形態の太陽電池モジュール用裏面保護シート40は、そのアクリル系高分子型紫外線吸収層22を太陽電池モジュール10の封止材12に接着することによって太陽電池モジュール10に積層される。
この太陽電池モジュール用裏面保護シート40を封止材12に接着するための方法は、特に限定されないが、太陽電池モジュール用裏面保護シート40のアクリル系高分子型紫外線吸収層22を封止材12に重ね合わせ、加熱圧着する方法が好ましく、さらに加熱真空ラミネート法を用いることがより好ましい。
【0075】
本実施形態の裏面保護シート40によれば、第1実施形態の裏面保護シート20と同様の効果が得られ、さらに基材シート11の他方の面に無機物蒸着膜41を積層したことにより、防湿性、耐候性をさらに向上させることができる。
【実施例】
【0076】
[実施例1]
(紫外線吸収層形成用塗工液の調製)
撹拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えたフラスコに、紫外線吸収性ユニットをもつ単量体として2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール(以下、UVAモノマーと記す。)を50質量部、メチルメタクリレート(以下、MMAと記す。)40質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと記す。)10質量部、酢酸エチル30質量部及びメチルエチルケトン50質量部を仕込んで、窒素ガスを流入しながら撹拌し、80℃まで昇温した。滴下槽に酢酸エチル20質量部と重合開始剤として2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1質量部との混合物を仕込み、2時間かけて滴下した。滴下が終了してから2時間経過後に還流反応を始め、滴下終了時から6時間経過したところで、反応系を冷却した。反応生成物を不揮発分が40%となるようにメチルエチルケトンで希釈し、ポリマー溶液を得た。該溶液中のポリマー成分(アクリル系高分子重合体)の質量平均分子量(Mw)は50000であった。
得られた不揮発分40.0%のポリマー溶液100質量部に対してイソシアネート架橋剤(スミジュールN3300;住化バイエルウレタン社製)6.9質量部混合し、メチルエチルケトンで不揮発分が20%になるまで希釈して、紫外線吸収層形成用塗工液を調製した。
【0077】
(裏面保護シートの作製)
基材シートとして厚み125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:ルミラー T−60、東レ社製)を用い、該基材シートの一方の面に、前記の通り調製した紫外線吸収層形成用塗工液をロッドコーターにて塗工して、90℃で1分乾燥し、乾燥膜厚が1μmのアクリル系高分子型紫外線吸収層を形成し、裏面保護シートを作製した。
【0078】
[実施例2]
アクリル系高分子型紫外線吸収層の乾燥膜厚を10μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして裏面保護シートを作製した。
【0079】
[実施例3]
紫外線吸収層形成用塗工液の調製において、UVAモノマー75質量部、MMA15質量部、HEMA10質量部の比率に変更したこと、及びアクリル系高分子型紫外線吸収層の乾燥膜厚を5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして裏面保護シートを作製した。
【0080】
[比較例1]
アクリル系高分子型紫外線吸収層を形成しない基材シートを裏面保護シートとした。
【0081】
[比較例2]
塗工液の調製において、MMA60質量部、HEMA10質量部、シクロヘキシルメタクリレート(以下、CHMAと記す。)30質量部の比率として実施例1と同様にポリマー溶液を調製し、該ポリマー溶液100質量部に対し10質量部のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製、商品名「TINUVIN384−2」)を添加したこと、及びアクリル系紫外線吸収層の乾燥膜厚を5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして裏面保護シートを作製した。
【0082】
前記の通り作製した実施例1〜3及び比較例1,2の各裏面保護シートについて、後述する測定方法に従って、封止材に対する接着強さ、促進耐候性試験及び黄変度を測定し、比較した。その結果を表1に記す。
【0083】
<封止材に対する接着強さの測定>
裏面保護シートの紫外線吸収層の上に、EVAからなる封止材(サンビック社製、ウルトラパール、厚さ400μm)、白板ガラスの順に積層させ、加熱真空ラミネート(真空135℃5分、加圧135℃10分)後、150℃30分加熱して擬似太陽電池モジュールを作製した。
裏面保護シートを封止材から速度300mm/分で剥離し、その時の接着強さを「JIS K6854−2:1999 接着剤―はく離接着強さ試験方法―第2部:180度はく離」に基づいて測定した。
【0084】
<促進耐候性試験>
促進耐候性試験機(商品名:アイ スーパーUVテスター SUV−W13、岩崎電気社製)を用いて、擬似太陽電池モジュールの白板ガラス面側から紫外線を照射した。
試験条件は、63℃、70%RH、紫外線照度900W/m、試験時間100時間とした。
【0085】
<黄変度の測定>
色差計(装置名:SQ2000、日本電色工業社製)を用いて、前記促進耐候性試験前後の各裏面保護シートのYI(イエローインデックス)値を測定し、「JIS K7373:2006 プラスチック−黄色度及び黄変度の求め方 5.2 a)透過測定方法」に基づいて黄変度ΔYIを求めた。
【0086】
【表1】

【0087】
表1の結果より、本発明に係る実施例1〜3の裏面保護シートは、封止材との接着性に優れている。またアクリル系高分子型紫外線吸収層によって紫外線を効率よく吸収して基材シートの光劣化による黄変を防ぐことができる。
一方、アクリル系高分子型紫外線吸収層を形成しない比較例1では、封止材との接着性が悪く、また基材シートの光劣化によって黄変を生じた。
また、アクリル系高分子型紫外線吸収層に代えて、紫外線吸収剤を含む樹脂層を形成した比較例2についても、基材シートの光劣化によって黄変を生じた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の裏面保護シートは、太陽電池モジュールの封止材との密着性が良く、また紫外線吸収性能に優れ、長期間使用した場合でも基材シートの光劣化を生じ難く、長期安定性に優れている。
【符号の説明】
【0089】
10 太陽電池モジュール
11 太陽電池セル
12 封止材
13 表面保護シート
14 裏面保護シート
15 光
20,30,40 裏面保護シート
21 基材シート
22 アクリル系高分子型紫外線吸収層
31 フッ素樹脂層
41 無機物蒸着膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面にアクリル系高分子型紫外線吸収層を有し、前記アクリル系高分子型紫外線吸収層は、分子内に紫外線吸収性ユニットをもつ単量体単位を有することを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
前記紫外線吸収性ユニットをもつ単量体が、一般式(I)
【化1】

[式中、Rは置換基及び/又はエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基又はオキシアルキレン基、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキレン基、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、Aは紫外線吸収性ユニット、Dはエステル結合、アミド結合、エーテル結合又はウレタン結合、m及びnは、それぞれ独立に0又は1を示す。]
で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
前記一般式(I)におけるAで示される紫外線吸収性ユニットが、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤ユニット又はベンゾトリアゾール系紫外線吸収ユニットであることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項4】
前記アクリル系高分子型紫外線吸収層は、前記紫外線吸収性ユニットの含有量が40〜80質量%の範囲内であり、質量平均分子量が1〜20万の範囲内であり、かつガラス転移温度が60〜90℃の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項5】
前記基材シートの他方の面に、フッ素樹脂層が積層されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項6】
前記基材シートの他方の面に、無機物蒸着膜が積層されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項7】
太陽電池モジュールの封止材の裏面側に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートの前記アクリル系高分子型紫外線吸収層が接着されてなる太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−256674(P2012−256674A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128204(P2011−128204)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】