説明

太陽電池用タブリード半田付け装置

【課題】半田付けを行う前に、半田フラックスの塗布状態の良否を検出することできる太陽電池用タブリード半田付け装置を提供する。
【解決手段】太陽電池セルバスバーに半田フラックスを塗布する半田フラックス塗布手段6と、半田フラックス塗布手段6が塗布した塗布対象領域に光を照射する投光系51と、塗布対象領域から反射した前記光を受光する受光系52と、半田フラックスが正常に塗布された場合の塗布対象領域からの反射光の強度の値を保持し、前記値と前記受光系52が受光した塗布対象領域からの反射光の強度を比較し、半田フラックスの塗布状態を判定する判定手段53と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用タブリード半田付け装置に関する。
【0002】
特に、本発明は、半田フラックスが塗布されている部分と、半田フラックスが塗布されていない部分の反射光が有意に異なることを発見し、かかる知見に基づいて塗布対象領域に光を照射し、その反射光の強度を検出することにより、半田フラックスの塗布状態を判定することができるようにした太陽電池用タブリード半田付け装置に関する。
【0003】
さらに、タブリードを半田付け後、半田付けの是非を判定する機能を有する太陽電池用タブリード半田付け装置に関する。
【背景技術】
【0004】
一般に太陽電池は、出力を大きくするため、太陽電池セルにリード線(「タブリード」という)を半田付けし、複数の太陽電池セルを直列に接続してストリングを形成し、さらに該ストリングを複数接続して太陽電池モジュールを構成している。
【0005】
こうした製造工程において、タブリードを太陽電池セル電極(バスバー)に半田付けするために、その前工程として、半田付けを容易にするため、半田フラックスを太陽電池セルバスバーに塗布した後、タブリードを半田付けする製法が一般的に実施されている。(特開2000−22188号公報、本願出願人による半田付け装置)
このような半田付け装置において、半田フラックスを塗布する方法としては、太陽電池セルの搬送経路に半田フラックスを外周面に付着させた塗布用ローラーを配して太陽電池セルの両面に一度に塗布する方法や(特許第3825791号)、噴霧器によって太陽電池セルバスバーに塗布する方法(特開2008−192980号公報)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−22188号公報
【特許文献2】特許第3825791号公報
【特許文献3】特開2008−192980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の太陽電池モジュールの製造工程において、太陽電池セルバスバーに半田フラックスを塗布する際に、何らかの原因により半田フラックスが太陽電池セルバスバーに正常に塗布されないことがある。
【0008】
このように半田フラックスの塗布が不良な状態であるにかかわらず半田付けを行った場合、半田付け不良の太陽電池セルを含む不良ストリングが製作されることになり、この結果、ストリングの中の半田付けが良好であった太陽電池セルまで廃棄せざるを得ず、歩留まりが低下する問題がある。
【0009】
これに対して、半田フラックスの塗布状態を検出できれば、その時点で半田付け工程の停止を行うことができ、半田付けが不良の太陽電池セルを含むストリングの製作を防止することができる。また、一般に半田フラックスの塗布状態が良好であれば、半田付け工程の歩留まりが向上する。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、半田付けを行う前に、半田フラックスの塗布状態の良否を検出することができる太陽電池用タブリード半田付け装置を提供することにある。
【0011】
さらに、半田付け後の太陽電池ダイオードI-V特性およびタブリード電位の測定により、半田付けの是非を判定することで、不良ストリングの太陽電池モジュールへの混入を防止し、製造の歩留まりも向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
光は物体の表面が平滑でない場合に拡散反射する。
【0013】
ところが、太陽電池セルバスバーに半田フラックスを塗布し、半田フラックスの塗布部分が濡れている状態で光を照射すると、水等で濡れた状態の太陽電池セルバスバーからの反射光の強度より大きい反射強度で光が反射することが、実験によって判明した。
【0014】
太陽電池セルバスバーの表面は比較的粗いため、反射光が拡散反射する。かかる太陽電池セルバスバーの表面にたとえば水を塗布した場合、反射光の強度の変化は小さく、太陽電池セルバスバーの表面が濡れているか否かを判別することは難しい。
【0015】
一方、太陽電池セルバスバーに半田フラックスを塗布した場合、半田フラックスの光学特性によって、反射が大きく変化することが判明した。
【0016】
具体的には、半田フラックスを塗布した場合の太陽電池セルバスバーは、通常の濡れた状態よりはるかに反射光が強く、太陽電池セルバスバーの表面からの反射光の強度のばらつきと有意に判別できることが判明した。
【0017】
本発明では、上記知見に基づき、半田フラックスを塗布した場合の反射強度の差異を利用して、半田フラックスを塗布した部分に光を照射してその反射光の強度を計測することにより、半田フラックスの塗布状態を判定することができる太陽電池用タブリード半田付け装置を考案した。
【0018】
本発明による太陽電池用タブリード半田付け装置は、
太陽電池セルバスバーに半田フラックスを塗布する半田フラックス塗布手段と、
前記半田フラックス塗布手段が塗布した塗布対象領域に光を照射する投光系と、
前記塗布対象領域から反射した前記光を受光する受光系と、
半田フラックスが正常に塗布された場合の塗布対象領域からの反射光の強度の値を保持し、前記半田フラックスが正常に塗布された場合の塗布対象領域からの反射光の強度の値と前記受光系が受光した前記塗布対象領域からの反射光の強度を比較し、半田フラックスの塗布状態を判定する判定手段と、
で構成する。
【0019】
本発明による他の太陽電池用タブリード半田付け装置は、
太陽電池セルバスバーに半田フラックスを塗布する半田フラックス塗布手段と、
前記半田フラックス塗布手段が塗布した塗布対象領域に光を照射する投光系と、
前記塗布対象領域から反射した前記光を受光する受光系と、
前記受光系が受光した前記塗布対象領域からの反射光の強度の変化量が所定の閾値に達するか否かによって半田フラックスの塗布状態を判定する判定手段と、
で構成する。
【0020】
本発明による他の太陽電池用タブリード半田付け装置は、
太陽電池セルバスバーに半田フラックスを塗布する半田フラックス塗布手段と、
前記半田フラックス塗布手段が塗布した塗布対象領域に光を照射する投光系と、
前記塗布対象領域から反射した前記光を受光する受光系と、
前記投光系が投光した光の強度と、前記受光系が受光した光の強度を比較し、前記投光系が投光した光の強度と前記受光系が受光した光の強度の比が所定の閾値に達するか否かによって半田フラックスの塗布状態を判定する判定手段と、
で構成する。
【0021】
前記投光系はエネルギー強度を振幅変調あるいは周波数変調した光を照射し、前記受光系は前記変調した光の反射光を受光し、前記判定手段は前記投光系の変調を利用し、復調における情報理論に基づくフィルタリングでノイズを低減して半田フラックスの塗布状態を判定する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用タブリード半田付け装置。
【0022】
請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用タブリード半田付け装置であって、タブリードを半田付けした後、ダイオードI-V特性およびタブリードの電位変化を測定し、半田付け後のストリングが正しく半田付けされているか、およびセルのクラック、欠けなどの異常がないかどうかを判定する装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明による太陽電池用タブリード半田付け装置の一つによれば、半田フラックス塗布手段と、塗布対象領域に光を照射する投光系と、塗布対象領域から反射した前記光を受光する受光系と、半田フラックスが正常に塗布された場合の反射強度の値を保持し、前記半田フラックスが正常に塗布された場合の反射強度の値と前記受光系が受光した塗布対象領域からの反射光の強度を比較し、半田フラックスの塗布状態を判定する判定手段を有する。
【0024】
この発明によれば、判定手段が、半田フラックスが正常に塗布された場合の塗布対象領域からの反射光の強度の値を保持し、この値と受光系が受光した塗布対象領域からの反射光の強度を比較する。
【0025】
前述したとおり、半田フラックスが正常に塗布されている場合の塗布対象領域からの反射光の強度は高い値を有しているため、半田フラックスが正常に塗布されていないときは、受光系が受光した塗布対象領域からの反射光の強度は相対的に低く、これにより、半田フラックスが正常に塗布されていないことを容易に検出することができる。
【0026】
また、本発明による他の太陽電池用タブリード半田付け装置によれば、半田フラックス塗布手段と、塗布対象領域に光を照射する投光系と、塗布対象領域から反射した前記光を受光する受光系と、受光系が受光した前記塗布対象領域からの反射光の強度の変化が所定の閾値に達するか否かによって半田フラックスの塗布状態を判定する判定手段を有する。
【0027】
この発明によれば、判定手段は、受光系が受光した前記塗布対象領域からの反射光の強度の変化を監視し、該反射強度の変化量が所定の閾値に達しないときに、半田フラックスが正常に塗布されていないと判定する。
【0028】
前述したように、半田フラックスが正常に塗布されている場合の塗布対象領域からの反射光の強度と、半田フラックスが正常に塗布されていない場合の塗布対象領域からの反射光の強度の差異が大きいため、塗布対象領域からの反射光の強度の変化が所定の閾値に達しないときに、半田フラックスが正常に塗布されていないことを容易に検出することができる。
【0029】
また、本発明による他の太陽電池用タブリード半田付け装置によれば、半田フラックス塗布手段と、塗布対象領域に光を照射する投光系と、塗布対象領域から反射した光を受光する受光系と、投光系が投光した光の強度と、受光系が受光した光の強度を比較し、その比が所定の閾値に達するか否かによって半田フラックスの塗布状態を判定する判定手段を有する。
【0030】
この発明によれば、判定手段は、投光系が投光した光の強度と、受光系が受光した光の強度を比較し、両者の比が所定の閾値に達するか否かによって半田フラックスの塗布状態を判定する。
【0031】
前述したように、半田フラックスが正常に塗布されている場合の塗布対象領域からの反射光の強度は大きい。逆に、半田フラックスが正常に塗布されていない場合は、反射光の強度は大きく減少する。
【0032】
このため、本発明では、判定手段が塗布対象領域の投光強度と受光強度の比を監視し、その比が所定の閾値に達するか否かにより半田フラックスの塗布状態を判定することができる。
【0033】
また、本発明による他の太陽電池用タブリード半田付け装置によれば、投光系は外乱光や類似光の影響を低減するようにエネルギー強度を振幅変調あるいは周波数変調した光を照射し、受光系は変調した光の反射光を受光し、判定部は復調におけるフィルタリング理論に基づき、ノイズを低減して半田フラックスの塗布状態を判定する。
【0034】
外乱光や類似光は、反射光の強度の値に影響を与える。
【0035】
本発明によれば、投光系が照射する光に一定の変調を施す。たとえば、光のエネルギー強度に、外乱光や類似光では生じ得ない一定の規則的な振幅あるいは周波数変調を施すことにより、外乱光や類似光による反射光の強度への影響を排除することができる。
【0036】
一定の変調を施していない反射光の変化は、外乱光や類似光として排除し、一定の変調を施した反射光の変化のみを、半田フラックスの塗布状態の変化として検出し、これにより、外乱光や類似光を排除して真に半田フラックスが塗布されていない部分を検出することができる。
【0037】
さらに、本発明によれば、半田付けを終えた一連のストリングのダイオードI-V特性およびタブリードの電位変化を測定し、半田付けが正常に行われているかを判定することができる。
【0038】
以上のように、本発明によれば、半田付けの前工程の半田フラックスの塗布工程で、半田フラックスの塗布不良を検出することができ、これにより、半田フラックス塗布対象部分の不良半田付けを防止することができる。さらに、本発明によれば、半田付けを終えた一連のストリングのダイオードI-V特性およびタブリードの電位変化を測定し、半田付けが正常に行われているかを判定する機能がある。
【0039】
これにより、不良ストリングが製作されて該ストリングの中の半田付けが良好な太陽電池セルまで廃棄する無駄を防止することができる。
【0040】
また、事前に半田付けの不良を防止することができることにより、製品の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態による太陽電池用タブリード半田付け装置の構成図。
【図2】本発明の原理を説明した説明図。
【図3】本発明の一実施形態によるレーザセンサ部のレーザ光の照射の様子を示した説明図。
【図4】本発明の一実施形態によるストリング検査部の説明図。
【図5】本発明の一実施形態によるストリング検査部の説明図。
【図6】太陽電池ストリングおよびストリング検査部の断面図。
【図7】本発明の一実施形態によるストリング検査部の回路図。
【図8】ダイオードI-V特性曲線。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に本発明を実施するための形態について説明する。
【0043】
図1は、本発明の一実施例による太陽電池用タブリード半田付け装置を示している。
【0044】
図1において、符号1は本実施例による太陽電池用タブリード半田付け装置の全体を示している。符号2は太陽電池セルを示している。
【0045】
太陽電池セル供給部3から供給される太陽電池セル2は、太陽電池セル搬送手段4により半田フラックステーブル5上に搬送される。
【0046】
太陽電池セル2は、半田フラックステーブル5上で、半田フラックス塗布ユニット6(半田フラックス塗布手段)を通過することにより、半田フラックス塗布ユニット6により半田フラックスを塗布される。
【0047】
半田フラックス塗布ユニット6によって半田フラックスを塗布された後、太陽電池セル2はレーザセンサ部7を通過し、レーザ光を照射され、半田フラックスの塗布状態を判定される。
【0048】
レーザセンサ部7は、半田フラックス塗布ユニット6が塗布した塗布対象領域に光を照射する投光系51と、塗布対象領域から反射した光を受光する受光系52とを有している。符号53は、半田フラックスの塗布状態を判定する判定手段を示している。
【0049】
本実施形態の場合、判定手段53は、半田フラックスが正常に塗布された場合の塗布対象領域からの反射光の強度の値を予め保持し、半田フラックスが正常に塗布された場合の塗布対象領域からの反射光の強度の値と受光系52が受光した塗布対象領域からの反射光の強度を比較し、塗布対象領域からの反射光の強度が予め保持していた正常な塗布対象領域の反射光の強度からある範囲内におさまっているか否かにより、半田フラックスの塗布状態を判定する。
【0050】
太陽電池セル2は、レーザセンサ部7を通過した後、太陽電池セル搬送手段8によりタブリード半田付け部9に搬送され、タブリード供給部10から供給される適切な長さに切断されたタブリードを半田フラックス塗布部分に積載され、タブリード半田付け部9で前記タブリードを半田付けされた後、規定枚数分連結されて、1本のストリングを形成する。前記ストリングは、ストリング搬送手段11により、ストリング検査部に搬送される。ストリングは、ストリング検査部61にて電圧電流を印加され、太陽電池のダイオードI−V特性およびタブリードの電位変化を測定される。測定データは制御部13に送信され、半田付けが不良と判定されれば、ストリング搬送手段62により不良ストリングストック部63に搬送され、良品と判定されれば良品ストリングストック部64に搬送される。
【0051】
ここで、レーザセンサ部7の周辺をさらに詳しく見ると、半田フラックステーブル5は、太陽電池セル2を乗せた状態で、半田フラックステーブル5の上方と下方にそれぞれ設けられた2基の半田フラックス塗布ユニット6の間を搬送される。
【0052】
半田フラックス塗布ユニット6は、半田フラックステーブル5が通過する際、太陽電池セル2の表裏の所定の箇所に半田フラックスを塗布する。ここの例では、半田フラックスは太陽電池セル2の一つに対して2つ塗布される。
【0053】
その後半田フラックステーブル5はレーザセンサ部7が設置されている箇所を通過する。レーザセンサ部7の投光系51は、太陽電池セル2の半田フラックス塗布部分にレーザ光を照射し、その反射光を受光系52が受光する。判定手段53は、受光系52が受光した反射光の強度を入力し、予め保持している半田フラックスが正常に塗布された場合の塗布対象領域からの反射光の強度の値と比較し、半田フラックスの塗布状態を判定する。
【0054】
判定手段53は、半田フラックスの塗布状態を判定し、制御部13に判定信号を出力し、発する。
【0055】
制御部13は、タブリード半田付け部9の半田付けの動作を制御し、判定手段53から半田フラックスの塗布状態が不良であるという判定信号を受信すると、タブリード半田付け部9の半田付けの動作を停止させ、半田フラックス塗布不良の警告を発して、太陽電池用タブリード半田付け装置1の使用者に不具合を知らせる。
【0056】
ここで、塗布対象領域からの反射光により半田フラックスの塗布状態を判定する本発明の原理を説明する。
【0057】
図2は、本発明の根拠となる反射光の変化の測定概念を説明した説明図である。表1はその測定結果である。
【0058】
図2に示すように、太陽電池セル2のバスバーに対してレーザセンサ部の投光系51からレーザ光を照射し、その反射光をレーザセンサ部の受光系52で受光する。
【0059】
図2の下部に概念的に示すように、塗布前の塗布対象領域に照射されたレーザ光の反射光は散乱する。これに対して、半田フラックスを塗布した後の塗布対象領域では光の拡散が小さい。
【0060】
表1は、半田フラックスを塗布していない塗布対象領域と、工場雰囲気中において特に結露等で塗布対象領域を濡らす可能性のある一般的物質である水で濡れた場合の塗布対象領域と、実際に半田フラックスを塗布した塗布対象領域のレーザ光の反射強度の値を対比して示している。
【表1】

【0061】
表1に示すように、半田フラックスを塗布していない塗布対象領域と、工場雰囲気中において特に結露等で塗布対象領域が濡れる可能性のある一般的液体である水で濡れた場合の塗布対象領域と、実際に半田フラックスを塗布した塗布対象領域のレーザ光の反射強度は、それぞれ0.5,2.5,30であった。
【0062】
この測定結果から明らかなように、工場環境における一般的物質で濡れた状態のバスバーからのレーザ光の反射光強度に比して、半田フラックスを塗布したバスバーからのレーザ光の反射光強度は大きいことが分かる。
【0063】
半田フラックスを塗布していないバスバーの表面の状態でも、表面が粗いため、レーザ光を照射した場合に、レーザ光の反射光強度は0.5〜1.5程度観測される。したがって、バスバーが液体で濡れているか否かを判定する場合、液体が水である場合はレーザ光の反射光強度が2.5であるため、ノイズを考慮すると、誤検出をする可能性がある。
【0064】
ところが、液体が半田フラックスである場合には、レーザ光の反射光強度が30であるため、ノイズを考慮しても、半田フラックスが塗布されているか否かを容易かつ有意に検出することができる。
【0065】
本発明は、上記半田フラックス塗布面の反射特性を利用し、塗布対象領域に光を照射しその反射光の強度を計測することにより、太陽電池セルのバスバーに半田フラックスが正常に塗布されているか否かを判定するのである。
【0066】
なお、光源としてここでは「レーザ光」を用いているが、上記半田フラックスによる反射強度は半田フラックスの光学特性によるため、レーザ光に限られず、任意の光源、たとえばLED等を用いることができる。
【0067】
図3は、レーザセンサ部7におけるレーザ光の照射の様子を示している。
【0068】
太陽電池セル2は、半田フラックステーブル5に載せられてレーザセンサ部7に搬送される。レーザセンサ部7に搬送される前に、半田フラックス塗布ユニット6は好ましくは上下に設けられており、太陽電池セル2の両面に、それぞれ一対の半田フラックスを塗布する。半田フラックステーブル5は、図3に示すように、塗布対象領域に半田フラックスを塗布できるように、一対のスリットを有している。
【0069】
半田フラックス塗布ユニット6によって半田フラックスを塗布された後に、太陽電池セル2は半田フラックステーブル5に載せられまま、レーザセンサ部7に搬送される。レーザセンサ部7においては、投光系51と受光系52は好ましくは太陽電池セル2の上方と下方に設けられ、太陽電池セル2の上下面の塗布対象領域を同時に検査できるようにする。
【0070】
太陽電池セル2の下面の塗布対象領域は、半田フラックステーブル5のスリットにより露出しており、レーザ光を照射できるようになっている。
【0071】
投光系51から発射されたレーザ光は、太陽電池セル2の塗布対象領域に照射され、その反射光は受光系52によって受光される。
【0072】
受光系52で受光された反射光の強度は、判定手段53に送られ、判定手段53は、この例では前述したように、半田フラックスが正常に塗布された場合の塗布対象領域からの反射光の強度の値を予め保持しており、受光系52からの反射光の強度を入力し、受光系52が受光した塗布対象領域からの反射光の強度と判定手段53が予め保持していた前記反射光の強度の値を比較し、太陽電池セル2の塗布対象領域からの反射光の強度が予め保持していた前記反射光の強度の値からある範囲内におさまっていれば半田フラックスが正常に塗布されていると判定し、太陽電池セル2の塗布対象領域からの反射光の強度が予め保持していた前記反射光の強度の値からある範囲以上に外れていれば半田フラックスが正常に塗布されていないと判定する。
【0073】
半田フラックスが正常に塗布されている場合の塗布対象領域からの反射光の強度は高い値を有しているため、半田フラックスが正常に塗布されていないときは、受光系52の反射光の強度が相対的にきわめて低くなり、ノイズを考慮しても、半田フラックスが正常に塗布されていないことを容易に検出することができる。
【0074】
判定手段53の判定結果は、前述したように制御部13に送られ、塗布対象領域に半田フラックスが正常に塗布されていないという判定信号を受信すると、制御部13によりタブリード半田付け部9の半田付けの動作を停止させ、それ以上の無駄になる太陽電池セル2の半田付けを停止する。
【0075】
以上の太陽電池用タブリード半田付け装置1により、半田フラックスの塗布不良を検出することができ、不良塗布対象領域の半田付けを防止することができ、これにより、ストリングが製作されてから半田付けの不良を発見し、良好な太陽電池セルを含めてストリングを廃棄する無駄を防止することができる。
【0076】
上述した実施形態では、判定手段53は、半田フラックスが正常に塗布された場合の塗布対象領域からの反射光の強度の値を予め保持し、それと受光系52からの反射光の強度を比較していた。
【0077】
しかし、本発明は、上記判定の方法に限られず、半田フラックスが正常に塗布された場合の塗布対象領域からの反射光の強度の値を予め保持する代わりに、受光系52からの反射光の強度を連続的に監視し、その変化の幅によって、半田フラックスが正常に塗布されていないことを検出することもできる。
【0078】
前述したように、塗布対象領域に半田フラックスが塗布されていない場合に、塗布対象領域からの反射光の強度が低下する。そこで、本発明の他の実施形態では、判定手段53が受光系52からの入力した反射光の強度を連続的に監視し、前記反射光の強度の変化が所定の閾値に達したときに、半田フラックスが正常に塗布されていないと判定する。
【0079】
さらに、本発明は、投光強度と受光強度の比の変動を監視することにより半田フラックスの塗布状態を判定することができる。
【0080】
投光系の光量は、温度、経時変化、光学系の汚れなどで一般的に変動し、光の強度にばらつきがでることがある。そうしたばらつきが出た場合でも、投光系と受光系それぞれの強度を比較して、その比が所定の閾値に達するか否かにより半田フラックスの塗布状態を判定することができる。
【0081】
さらに、本発明は、外乱光や類似光の影響を低減するように、投光系の光はエネルギー強度を振幅変調あるいは周波数変調することができる。
【0082】
外乱光や類似光は、反射光の強度の値に影響を与えることがあることが知られている。そこで、本発明によれば、投光系が照射する光に一定の変調を施す。たとえば、光のエネルギー強度に、外乱光や類似光では生じ得ない一定の規則的な振幅あるいは周波数変調を施す。外乱光や類似光は前記変調を施されていないため、ノイズとして排除することができ、前記変調を施した反射光の変化のみを、半田フラックスの塗布状態の変化として検出することができる。これにより、外乱光や類似光を排除して真に半田フラックスが塗布されていない部分を検出することができる。
【0083】
図4は、ストリング検査部61を模式的に示した図である。検査部には、図示しない基部にプラス側に電圧ピンが2本、電流ピンが2本、マイナス側に電圧ピンが2本、電流ピンが2本それぞれ設置されている。
【0084】
図5は、図4に示したストリング検査部の電圧ピンおよび電流ピン、各4本ずつに加え、プラス側とマイナス側の間に、ストリングの表側のタブリードおよび裏側のタブリード各々に接触させる補助電圧検出ピンが、図示しない基部に設置されている。タブリード半田付け後のストリングが検査部に搬入されると、昇降装置によって基部が下降または上昇し、電圧ピンおよび電流ピンが、ストリングの表面および裏面に半田付けされたタブリードそれぞれに密着し、電圧電流を印加する。
【0085】
タブリードの半田付けに不良があれば、直列抵抗が増大する。このため、直列抵抗の測定により、半田付けの不良を判定できる。
【0086】
図6は、太陽電池ストリングおよび図5のストリング検査部の断面の模式図である。図のとおり、タブリードは太陽電池セルの表面と裏面それぞれに半田付けされている。ストリング検査部の補助電圧検査ピンは、図のように表面および裏面それぞれに設置され、タブリードに密着する。
【0087】
図7は本発明の一実施形態によるストリング検査部の回路図である。図のように、タブリードに電流Iを流すと、電流i1〜i4として流れ、各電流に応じて電圧降下が生じる。この電圧降下は補助電圧検出ピンVk〜Vk+7により測定する。測定電圧からi1〜i4、r1〜r8を知ることができる。
【0088】
検査対象である太陽電池ストリングのダイオードI-V特性を、正常なダイオードI-V特性と比較することで、半田付け不良やセルのクラック、欠け等、何らかの異常の有無を検出できる。ダイオードに順電圧を流した場合、順電圧は流れやすい特性を持っている。
【0089】
図8はダイオードのI-V特性を示している。半田付けが不良である場合、抵抗が増大し、カーブの間に示した矢印のようにカーブが変化するため、半田付け不良あるいはセルのクラック、欠け等、何らかの異常と判定できる。
【0090】
さらに、各電圧ピンの電位差を測定することにより、半田付けの是非を推測できる。また、I-Vではなく、プラス側ピンとマイナス側ピン間、プラスピン間、およびマイナスピン間に電流を流し、それぞれのピン間の電位差から半田付けの是非を推測できる。
【符号の説明】
【0091】
1 太陽電池用タブリード半田付け装置
2 太陽電池セル
3 太陽電池セル供給部
4 太陽電池セル搬送手段
5 半田フラックステーブル
6 半田フラックス塗布ユニット
7 レーザセンサ部
8 タブリード供給部
9 タブリード半田付け部
10 タブリード供給部
11 ストリング搬送手段
13 制御部
51 投光系
52 受光系
53 判定手段
61 ストリング検査部
62 ストリング搬送手段
63 不良ストリングストック部
64 良品ストリングストック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルバスバーに半田フラックスを塗布する半田フラックス塗布手段と、
前記半田フラックス塗布手段が半田フラックスを塗布した塗布対象領域に光を照射する投光系と、
前記塗布対象領域から反射した前記光を受光する受光系と、
半田フラックス塗布対象領域からの反射光の強度の値を保持し、前記半田フラックスが正常に塗布された場合の塗布対象領域からの反射光の強度と前記受光系が受光した前記塗布対象領域からの反射光の強度を比較し、半田フラックスの塗布状態を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする太陽電池用タブリード半田付け装置。
【請求項2】
太陽電池セルバスバーに半田フラックスを塗布する半田フラックス塗布手段と、
前記半田フラックス塗布手段が半田フラックスを塗布した塗布対象領域に光を照射する投光系と、
前記塗布対象領域から反射した前記光を受光する受光系と、
前記受光系が受光した前記塗布対象領域からの反射光の強度の変化が所定の閾値に達するか否かによって半田フラックスの塗布状態を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする太陽電池用タブリード半田付け装置。
【請求項3】
太陽電池セルバスバーに半田フラックスを塗布する半田フラックス塗布手段と、
前記半田フラックス塗布手段が半田フラックスを塗布した塗布対象領域に光を照射する投光系と、
前記塗布対象領域から反射した前記光を受光する受光系と、
前記投光系が投光した光の強度と、前記受光系が受光した光の強度を比較し、前記投光系が投光した光の強度と前記受光系が受光した光の強度の比が所定の閾値に達するか否かによって半田フラックスの塗布状態を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする太陽電池用タブリード半田付け装置。
【請求項4】
前記投光系はエネルギー強度を振幅変調あるいは周波数変調した光を照射し、前記受光系は前記変調した光の反射光を受光し、前記判定手段は前記投光系の変調を復調して半田フラックスの塗布状態を判定する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用タブリード半田付け装置。
【請求項5】
タブリードを半田付けした後、ダイオードI-V特性を測定し、半田付け後のストリング(セル)が正常であるか、半田付けの是非を判定することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用タブリード半田付け装置。
【請求項6】
タブリードに複数の電極を接触し、タブリードに沿った電圧から電流の流れを知り、半田付け不良を検出することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用タブリード半田付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−216882(P2010−216882A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61762(P2009−61762)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(595013427)株式会社エヌ・ピー・シー (54)
【Fターム(参考)】