説明

太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに太陽電池モジュール

【課題】湿熱経時環境下における接着耐久性に優れた太陽電池用バックシートの提供。
【解決手段】太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の前記封止材と接触させて配置される太陽電池用バックシートであって、ポリエステルフィルム基材と、前記ポリエステルフィルム基材上に設けられた少なくとも1層のポリマー層とを有し、前記ポリエステルフィルム基材は、末端カルボキシル基濃度が1eq/ton以上15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定により求められる微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下であり、温度125℃、相対湿度100%RHの条件下で72時間放置した後の平均伸度保持率が10%以上のポリエステルフィルム基材であり、前記ポリマー層の少なくとも1層は、少なくともフッ素系ポリマーを含有し且つカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤由来の架橋構造を有するポリマー層である太陽電池用バックシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池素子の太陽光入射側の反対側に設けられる太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、発電時に二酸化炭素の排出がなく環境負荷が小さい発電方式であり、近年急速に普及が進んでいる。
【0003】
太陽電池モジュールは、通常、太陽光が入射する側のガラスと、太陽光が入射する側とは反対側(裏面側)に配置される、いわゆるバックシートとの間に、太陽電池セルが挟まれた構造を有している。ガラスと太陽電池セルとの間、及び太陽電池セルとバックシートとの間は、それぞれEVA(エチレン−ビニルアセテート)樹脂などで封止されている。
【0004】
太陽電池発電モジュールは、風雨や直射日光に曝される過酷な使用環境下でも、数十年もの長期間に亘って発電効率などの電池性能を保持できるよう、自然環境に対する高い耐候性能を備えていることが必要とされる。太陽電池発電モジュールにこのような耐久性能を与えるためには、太陽電池発電モジュールを構成するバックシートや素子を封止する封止材などの諸材料に耐候性能が求められる。
【0005】
バックシートは、太陽電池モジュールの裏面からの水分の浸入を防止する働きを有するもので、従来はガラスやフッ素樹脂等が用いられていたが、近年では、コストの観点からポリエステルフィルムが用いられるようになってきている。そして、バックシートは、単なるポリマーシートではなく、種々の機能が付与される場合がある。
【0006】
バックシートとして適用されるポリエステルフィルムとしては、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも称する)フィルムが使用されており、耐候性を向上させるべく種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、3種以上の構成成分をポリエステル中に共存させたPETフィルムが開示されている。また、特許文献2には、耐加水分解性を向上させるべく、末端カルボキシル基濃度及び示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)を特定範囲としたPETフィルムが開示されている。
【0007】
一方、一般的なPETフィルムは、太陽電池保護シート、その中でも特に最外層となる太陽電池用のバックシートとして長期間使用した際に、太陽電池上で剥がれが発生し易い、PETフィルム自身の強度劣化が生じ易いといった問題があり、PETフィルム単層のバックシートでは、屋外等の風雨に曝されるような環境下に長期間置かれるとバックシートとEVA等の封止材との間で剥がれを生じ易い。このため、このような耐候性の問題に対して、従来、主として耐候性フィルムをPETなどの基材フィルムの最外層側に張り合わせた積層体タイプのバックシートが用いられていた。張り合わせ方式の積層体の中でも最も汎用されていたのは、ポリフッ化ビニルフィルム等のフッ素系ポリマーフィルムであった。フッ素系ポリマーフィルムを用いた太陽電池用バックシートとしては、例えば、フッ素系ポリマーフィルムと金属箔との複合フィルム、フッ素系ポリマーフィルム、ケイ素酸化物薄膜層、及び透明樹脂との積層体(例えば、特許文献3参照)などが挙げられる。
【0008】
しかしながら、フッ素系ポリマーフィルムを積層体タイプの太陽電池用バックシートとして用いた場合、PETフィルムとフッ素系ポリマーフィルムとの層間の密着性(接着性)が弱く、特に長期間使用すると層間剥離しやすい問題があった。このようなフッ素系ポリマーフィルムを用いた場合の問題点を解決する技術として、近年、フッ素系ポリマーを含む組成物をPET基材フィルム上に塗布した塗布型バックシートが開発されてきた(特許文献4〜6参照)。例えば、特許文献4及び5には、ポリエステルフィルムフィルム上に直接、硬化性官能基を含有するフッ素系ポリマー塗料の硬化塗膜を形成した太陽電池用バックシートや、従来公知の架橋剤や硬化剤を添加したフッ素系ポリマー溶液を塗布したシートが開示されている。一方、架橋剤を用いる代わりに基材PETへの表面処理を行った例として、特許文献6の実施例には、基材PETへのコロナ表面処理を行った後、その上にフッ素系ポリマーを塗布したシートが開示されている。
【0009】
なお、このようなフッ素系ポリマーと併用される表面処理技術としては、特許文献6に記載されているコロナ処理、火炎処理及びグロー放電処理のほか、特許文献7には特別な電磁波で照射する方法やプラズマ処理が記載されており、同文献の実施例には特に真空に近い低圧条件下で特別な電磁波で照射する方法やプラズマ処理を行う態様が開示されている。
【特許文献1】特開2010−248492号公報
【特許文献2】国際公開第2010/110119号パンフレット
【特許文献3】特開平4−239634号公報
【特許文献4】特開2007−35694号公報
【特許文献5】国際公開第2008/143719号パンフレット
【特許文献6】特開2010−053317号公報
【特許文献7】特開2002−282777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、太陽電池用バックシートにおける基材として、特許文献1及び2に記載されるようなポリエステルフィルムを適用した場合、湿熱経時後におけるバックシートの剥離の問題は依然として生じ、特許文献3〜7に記載される如き方法を用いた場合においても十分な改善効果は得られないのが現状である。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、湿熱経時環境下における接着耐久性に優れた太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに、安定した発電効率を有する太陽電池モジュールを提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の前記封止材と接触させて配置される太陽電池用バックシートであって、ポリエステルフィルム基材と前記ポリエステルフィルム基材上に設けられた少なくとも1層のポリマー層とを有し、前記ポリエステルフィルム基材は、末端カルボキシル基濃度が15eq/ton以下1eq/ton以上であり、示差走査熱量測定により求められる微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下であり、温度125℃、相対湿度100%RHの条件下で72時間放置した後の平均伸度保持率が10%以上のポリエステルフィルム基材であり、前記ポリマー層の少なくとも1層は、少なくともフッ素系ポリマーを含有し且つカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤由来の架橋構造を有し、且つ塗布により形成されたポリマー層である太陽電池用バックシート。
【0013】
<2> 前記ポリエステルフィルム基材が、ジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分、及び、カルボキシル基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上である構成成分(p)を有するポリエステルを含み、前記構成成分(p)の含有量が、ポリエステルに含まれる全構成成分に対して0.005モル%以上2.5モル%以下である<1>に記載の太陽電池用バックシート。
<3> 前記ポリエステルフィルム基材に含まれるポリエステルの全質量に対して、緩衝剤を0.1モル/ton以上5.0モル/ton以下の範囲で含有する<1>又は<2>に記載の太陽電池用バックシート。
<4> 前記ポリエステルフィルム基材に含まれるポリエステルの全質量に対して、カルボジイミド化合物である末端封止剤を0.1質量%以上5質量%以下の範囲で含有する<1>〜<3>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート。
<5> 前記ポリエステルフィルム基材における蛍光X線測定により求められるリン原子の含有量が200ppm以上である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート。
<6> 前記ポリエステルフィルム基材は、表面処理が施されている<1>〜<5>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート。
<7> 前記表面処理は、シラン化合物を導入した火炎を用いる火炎処理及び大気圧プラズマ処理から選ばれる少なくとも1つの表面処理である<6>に記載の太陽電池用バックシート。
【0014】
<8> 前記少なくともフッ素系ポリマーを含有し且つカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤由来の架橋構造を有するポリマー層が、前記ポリエステルフィルム基材における表面処理が施された面に直接接している<6>又は<7>に記載の太陽電池用バックシート。
<9> 前記少なくともフッ素系ポリマーを含有し且つカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤由来の架橋構造を有するポリマー層が、最外層である<1>〜<8>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート。
<10> 前記ポリマー層の少なくとも1層は、白色系顔料を含み、光反射性を有する反射層である<1>〜<9>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート。
【0015】
<11> 末端カルボキシル基濃度が1eq/ton以上15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定により求められる微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下であり、温度125℃、相対湿度100%RHの条件下で72時間放置した後の平均伸度保持率が10%以上のポリエステルフィルム基材上に、少なくともフッ素系ポリマーとカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤とを含有する塗布液を塗布する工程を含む太陽電池用バックシートの製造方法。
<12> 前記ポリエステルフィルム基材における前記塗布液が塗布される面上に、シラン化合物を導入した火炎を用いる火炎処理及び大気圧プラズマ処理から選ばれる少なくとも1つの表面処理を施す工程を含む<11>に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
<13> 前記塗布液は、更に溶媒を含有し、該溶媒の50質量%以上が水である<11>又は<12>に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
<14> <1>〜<10>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート、又は<11>〜<13>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートの製造方法により製造された太陽電池用バックシートを備えた太陽電池モジュール。
【0016】
<15> 太陽光が入射する透明性のフロント基板と、前記フロント基板の上に設けられ、太陽電池素子及び前記太陽電池素子を封止する封止材を有するセル構造部分と、前記セル構造部分の前記フロント基板が位置する側と反対側に設けられ、前記封止材と隣接して配置された、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート又は請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシートの製造方法により製造された太陽電池用バックシートと、を備えた太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、湿熱経時環境下における接着耐久性に優れた太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに、安定した発電効率を有する太陽電池モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに太陽電池モジュールについて詳細に説明する。
【0019】
[太陽電池用バックシート及びその製造方法]
本発明の太陽電池用バックシートは、太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の前記封止材と接触させて配置される太陽電池用バックシートであって、ポリエステルフィルム基材と、前記ポリエステルフィルム基材上に設けられた少なくとも1層のポリマー層とを有し、前記ポリエステルフィルム基材は、末端カルボキシル基濃度が1eq/ton以上15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定により求められる微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下であり、温度125℃、相対湿度100%RHの条件下で72時間放置した後の平均伸度保持率が10%以上のポリエステルフィルム基材であり、前記ポリマー層の少なくとも1層は、少なくともフッ素系ポリマーを含有し且つカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤由来の架橋構造を有し、且つ塗布により形成されたポリマー層である太陽電池用バックシートである。
【0020】
本発明のバックシートは、その構成要素として、少なくとも、末端カルボキシル基濃度、示差走査熱量測定により求められる微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)、及び、温度125℃、相対湿度100%RHの条件下で72時間放置した後の平均伸度保持率を特定範囲としたポリエステルフィルム基材と、少なくともフッ素系ポリマーを含有し且つカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤由来の架橋構造を有するポリマー層とを備えることを要し、これにより、本発明のバックシートは湿熱経時環境下における隣接部材との接着耐久性に優れたものとなる。従って、本発明のバックシートは、熱や水分に長時間曝される環境条件下において、長期間に亘って優れた耐久性を発揮することができる。
更に、このような本発明のバックシートを備えた太陽電池モジュールは、良好な発電性能が得られると共に、長期に亘って発電効率を安定に保つことができる。
【0021】
(ポリエステルフィルム基材)
本発明におけるポリエステルフィルム基材は、末端カルボキシル基濃度が1eq/ton以上15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下であり、温度125℃、相対湿度100%RHの条件下で72時間放置した後の平均伸度保持率が10%以上のポリエステルフィルムからなる基材である。
以下、ポリエステルフィルム基材を構成するポリエステルフィルムについて詳細に説明する。
【0022】
<末端カルボキシル基濃度(AV)>
ポリエステルフィルムにおける末端カルボキシル基濃度(以下、適宜「AV」と称する。)は、1eq/ton以上15eq/ton以下であり、より好ましくは2eq/ton以上13eq/ton以下、さらに好ましくは3eq/ton以上9eq/ton以下である。
【0023】
末端カルボキシル基は、ポリエステルフィルムに隣接する部材又は層の表面に存在する水酸基と水素結合を形成し密着力を向上させる働きがある。また、本発明においては、基材であるポリエステルフィルム中に存在するカルボキシル基(特にフィルム表面に存在するカルボキシル基)と反応し、強固な1次結合を形成する特定の架橋剤を用いて本発明におけるポリマー層が形成されることで、従来にない高い密着力が付与される働きがある。このため、AVが1eq/ton未満であると密着力が低下する。一方、末端カルボキシル基におけるHは、酸触媒として働きポリエステル分子を加水分解する作用を有する。従って、15eq/tonを超えるAVでは、高湿度下で経時させた場合において、加水分解によりポリエステルフィルム表面の分子量が低下し力学強度が低下し、その結果、ポリエステルフィルム表面が破壊されることによるバックシートの剥離(密着不良)が発生してしまう。
【0024】
AVの具体的な調整方法としては、ポリエステルフィルムの「面配向係数」の調整、ポリエステルを構成する「構成成分」の種類及び含有量の調整、「緩衝剤」や「末端封止剤」等の添加剤の添加、ポリエステル中に存在する「リン原子量」の調整などが挙げられる。
【0025】
上記具体的な調整方法により、AVを1eq/ton以上15eq/ton以下に調整することで、末端カルボキシル基に起因するポリエステルの加水分解によるバックシートの剥離(密着不良)を好適に抑制できる。
ここで、上記具体的な調整方法のうち、「緩衝剤」及び「末端封止剤」等の添加剤の添加量、及び/又は、「リン原子量」により、AVを本発明の範囲内とするには、ポリエステルにおけるこれらの含有量をより多くすることが必要となる。しかしながら、ポリエステルフィルム中における過剰量の添加剤やリン原子の含有は、当該基材を湿熱経時させた際において基材表面に添加剤等が析出したり、配向が強すぎることによる熱収縮の増大などの問題を招来し、延いてはバックシートの剥離(密着不良)を発生させる。かかる観点からも、本発明におけるポリエステルフィルムのAVは、1eq/ton以上15eq/ton以下であることが必要である。
【0026】
また、ポリエステルフィルムの製膜に供するポリエステル原料(ペレット)については、耐加水分解性を向上せしめるために、末端カルボキシル基濃度(AV)を15eq/ton以下の範囲とすることが好ましい。好ましくは13eq/ton以下であり、より好ましくは10eq/ton以下、最も好ましくは8eq/ton以下である。下限は特に限定されるものではないが、0eq/tonが理論上の下限となる。ペレットのAVについては、重合条件、固相重合条件、末端封止剤により調整することができる。
【0027】
AVの具体的な測定方法については後述する。
【0028】
<示差走査熱量測定により求められる微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)>
本発明におけるポリエステルフィルムは、示差走査熱量測定(以下、「DSC」とも称する。)により求められる微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が、220℃以下であり、より好ましくは150℃以上215℃以下、さらに好ましくは160℃以上210℃以下である。
【0029】
微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)は、ポリエステルフィルムにおける「面配向係数」と、ポリエステルフィルムを製膜する際における「延伸後に実施する熱固定の温度」を制御することにより、本発明に係る範囲とすることができる。延伸後に実施する熱固定の温度としては、150℃以上220℃以下が好ましく、より好ましくは160℃以上210℃以下であり、さらに好ましくは170℃以上200℃以下である。
【0030】
Tmeta(℃)の具体的な測定方法については後述する。
【0031】
<平均伸度保持率>
本発明のバックシートは、湿熱経時後においても高い密着力を有することが特徴である。そのためには、ポリエステルフィルム表面における加水分解を抑制することで、密着力の低下が抑制されることが好ましい。かかる観点から、ポリエステル基基材表面における加水分解の目安として、「温度125℃、相対湿度100%RHの条件下で72時間放置した後の平均伸度保持率」が採用され、本発明においては、該平均伸度保持率が10%以上であることを要する。
【0032】
ここで「伸度保持率」とは、湿熱経時前の破断伸度(Li)と、湿熱経時後の破断伸度(Lt)の比率(%)を指し、下記式で求められた値である。
伸度保持率(%)=100×(Lt)/(Li)
【0033】
本発明における「平均伸度保持率」は、伸度保持率の測定を、ポリエステルフィルムの長手方向(MD)及びその直行方向(TD)で行い、その平均値で表したものである。
【0034】
伸度保持率の調整方法としては、例えば、ポリエステルフィルムの「面配向係数」の調整、ポリエステルの「固有粘度」の調整、ポリエステルポリマーを構成する「構成成分」の種類及び含有量の調整、「緩衝剤」や「末端封止剤」等の添加剤の添加、ポリエステル中に存在する「リン原子量」の調整などが挙げられる。
【0035】
加水分解し易いほど分子量が低下することから、ポリエステルフィルムが示す平均伸度保持率の値が低下し易い。かかる観点から、本発明におけるポリエステルフィルムは、平均伸度保持率が10%以上であることが必要であり、より好ましくは20%以上95%以下であり、さらに好ましくは30%以上90%以下である。
平均伸度保持率を10%以上にすることで、ポリエステルの加水分解に起因するバックシートの剥がれ(密着不良)を効果的に抑制できる。
【0036】
平均伸度保持率の具体的な測定方法については後述する。
【0037】
<熱収縮率及び分布>
本発明におけるポリエステルフィルムの好適な態様の一つは、該ポリエステルフィルムの長手方向(MD)とその直行方向(TD)とにおける150℃30分の熱収縮率が、それぞれ1.0%以下であり、且つ、熱収縮分布が、それぞれ1%以上20%以下である態様である。
【0038】
本発明者らは、バックシートの湿熱経時による密着不良は、ポリエステルフィルム中の残留歪による熱収縮の発生による場合があるとの知見を得た。即ち、湿熱経時されたポリエステルフィルム中に残留歪による熱収縮が発生した場合、該熱収縮によりEVA等の封止材とポリエステルフィルムとの間に収縮応力が発生し、これがバックシートの密着不良を引起すというものである。
前記特許文献1及び2に記載されるポリエステルフィルムにおいても、熱収縮が低減されてはいるが、熱収縮の低減のみでは密着不良は充分に解消しえない。一方、本発明の好適な態様のポリエステルフィルムでは、熱収縮に分布を持たせることにより密着不良の抑制効果を向上させることができる。
【0039】
その作用は明確ではないが、次のように考えている。即ち、ポリエステルフィルムにおける熱収縮が、フィルム面内に均一であれば、応力も均一に発生することから、バックシートは剥離し易い。これに対し、本発明における好適な態様のポリエステルフィルムのように、熱収縮に分布が存在すると、フィルム面内に熱収縮の大きなところが存在しても、同一面内に熱収縮の小さな箇所が存在することにより、そこで熱収縮が停止し(即ち、収縮が伝播しない。)、フィルム全体に波及する大きな収縮力にはならず、延いてはバックシートの剥離が抑制される。
【0040】
本発明における好適な態様のポリエステルフィルムの好ましい熱収縮分布は1%以上20%以下であり、より好ましくは2%以上15%以下、さらに好ましくは3%以上12%以下である。
【0041】
ここで、ポリエステルフィルムの熱収縮分布は、その長手方向(MD)とその直行方向(TD)とに、10cm間隔で5点測定し、下記式から熱収縮分布(%)を求め、大きいほうの値を指す。
熱収縮分布(%)=100×(最大値−最小値)/平均値
【0042】
熱収縮分布が20%を超えると、熱収縮の大きい箇所と小さい箇所の寸法変化が大きくなりすぎ、クレーター状の収縮分布が発生する傾向となり、このクレーターの縁にそって応力集中が発生し、剥離(密着不良)が発生し易い。一方、熱収縮分布が1%を下回ると、上記のような収縮抑止の効果が発現し難くなり好ましくない。
【0043】
このようなポリエステルフィルムにおける収縮応力の発生は、小さな面積であれば発現し難い。このため、熱収縮分布を上記範囲とすることは、バックシートを0.5m以上(より好ましくは0.75m以上、さらに好ましくは1m以上)の如き大面積のパネルに貼り付けた際に、その効果が特に顕在化する。これは即ち、小面積であれば、収縮量の大きな部分と小さな部分とが共存する確率が低いためである。
【0044】
さらに、このような熱収縮率及び熱収縮分布の制御は、湿熱経時後の密着性の向上効果の顕在化に特に有用である。即ち、高湿下での湿熱経時中に熱収縮が発生し、しかも高湿度である場合では、ポリエステルフィルム及び該ポリエステルフィルムと水素結合を形成しうる隣接部材又は隣接層の界面に水が浸透し、水素結合を切断するため、密着が低下し易くなるが、このような状況に於いても、熱収縮率及び熱収縮分布の制御を上記範囲とすることで、残留歪による収縮応力を低減できるため、密着力を確保し易い。
【0045】
本発明におけるポリエステルフィルムの熱収縮率は、150℃30分で測定される。
その好ましい範囲は、長手方向(MD)及びその直行方向(TD)ともに、1%以下であることが好ましく、より好ましくは−0.5%以上0.8%以下、さらに好ましくは−0.3%以上0.6%以下である。(なお、ここで云う「−」とは「伸張」を意味する)。
【0046】
熱収縮率が1%以下であれば、熱収縮分布を前記特定範囲とした効果を有効に発現しうる。熱収縮率が1%を超えると、ポリエステルフィルムの寸法変化を抑制し切れなくなり、熱収縮分布を特定範囲とする効果が得られなくなる傾向となる。一方、ポリエステルフィルムの伸張が大きくなりすぎる場合には、熱収縮分布の制御によるポリエステルフィルムの寸法変化の抑制効果が得られない傾向となる。
【0047】
熱収縮率は、ポリエステルフィルムを製膜する際の延伸後に熱処理を行うことで調整することができる。熱処理の好ましい温度は150℃以上220℃以下、より好ましくは160℃以上210℃以下、さらに好ましくは170℃以上200℃以下であり、10秒以上120秒以下、より好ましくは15秒以上90秒以下、さらに好ましくは20秒以上60秒以下である。
【0048】
さらに、延伸後に熱処理に合せて、縦方向及び横方向の少なくとも一方に緩和することが好ましく、好ましい緩和量は0.5%以上10%以下であり、より好ましくは1.5%以上9%以下、さらに好ましくは3%以上8%以下である。
【0049】
また、熱収縮分布は、ポリエステルフィルムを製膜する際の溶融押出し後に、冷却ロール上で固化し未延伸フィルム(原反)を作製する際において、温度分布を形成することで調整することができる。即ち、溶融体が冷却する際に球晶を形成するが、冷却速度を変えることでこの球晶分布を形成する。これが縦、横延伸中に配向分布を引起し、これが収縮量の分布となって現れる。このような溶融体の冷却速度の分布は、冷却ロールに温度分布を与えることで達成できる。このような温度分布は、冷却ロール中に温調のために流している熱媒の流れを、邪魔板を儲け乱すことで達成される。好ましい温度分布は0.2℃以上10℃以下であり、より好ましくは0.4℃以上5℃以下、さらに好ましくは0.6℃以上3℃以下である。これらの温度分布は、長手方向、幅方向、いずれの方向でも構わない。
【0050】
このような熱収縮率及び熱収縮分布の制御とともに、後述するように、「末端封止剤」をポリエステル中に含有させること、ポリエステルの構成成分としては「3官能以上の構成成分(C)」含有させることで、より効果的に湿熱経時後の密着性を向上させることができる。
【0051】
末端封止剤は、ポリエステルと反応させることで末端を嵩高くでき、これが引っ掛りとなりポリエステル分子間の易動性を低下させる。また、3官能以上の構成成分(C)は、3官能基を介して分子が枝分かれするため、ポリエステル分子の易動性を低下させる。このように運動性が低下することで熱収縮分布を形成し易くできる。即ち、熱収縮の大きな箇所と小さな箇所には応力が発生するが、この応力によってポリエステル分子が移動し応力(熱収縮の分布による歪)を解消しようとする。このとき、上記のように運動性が低下すると。このような熱収縮分布の解消が起きづらく、本発明における熱収縮分布を形成し易い。
【0052】
熱収縮率の具体的な測定方法については後述する。
【0053】
<面配向係数及びその分布>
本発明におけるポリエステルフィルムは、面配向係数が0.165以上であることが好ましく、より好ましくは0.168以上0.18以下、さらに好ましくは0.170以上、0.175以下である。面配向係数を0.165以上とすることにより、分子を配向させ、上記の「半結晶」の形成を促し、耐加水分解性をさらに向上させることができる。
【0054】
ここで、本発明で言う面配向係数とは、アッベ屈折計を用い、下記式(A)より求められるものである。
面配向係数= (nMD+nTD)/2−nZD・・・(A)
【0055】
式(A)中、nMDは、フィルムの長手方向(MD)の屈折率を表し、nTDはフィルムの直行方向(TD)の屈折率を表し、nZDはフィルム厚み方向の屈折率を表す。
【0056】
ポリエステルフィルムの面配向係数は、製膜時の延伸倍率を大きくすることで調整することができる。好ましくはフィルムの長手方向(MD)、フィルムの直行方向(TD)ともに延伸倍率を2.5〜6.0倍に調整すればよい。フィルムの面配向係数を0.165以上とするためには、MD方向及びTD方向の延伸倍率を、それぞれ3.0〜5.0倍に調整することが好ましい。さらに、面配向係数は、縦延伸中での「予熱」「多段延伸」(後述)によっても向上させることができる。
【0057】
さらに、面配向係数を0.165以上とすることで、耐加水分解性を抑制しポリエステルフィルム表面の分子量低下による密着不良を抑制できる。
また、フィルムの面配向係数の上限は、面配向係数を上げるために延伸倍率を大きくしていくと製膜安定性が悪化するため、また、面配向が進みすぎることで発生するデラミ(層状剥離)を抑制し密着力を高めることができるため、0.180以下であることが好ましく、より好ましくは0.175以下である。
【0058】
さらに、本発明においては、面配向係数に分布を設けることが好ましい。該面配向係数の分布としては、1%以上20%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以上15%以下であり、さらに好ましくは3%以上12%以下である。
【0059】
面配向係数に分布を設けることにより、密着力をより一層向上させることができる。即ち、湿熱経時後にポリエステルフィルムが収縮するため、該フィルムとEVA等の封止材との間に収縮応力が発生、これにより密着不良が発生する。この熱収縮応力は、フィルムの弾性率に比例し、これは面配向係数に比例する。従って、ポリエステルフィルム面配向係数に分布が存在すると、弾性率にも分布が発生し、これにより弾性率の高い(硬い)箇所と、弾性率の低い(柔らかい)箇所が形成される。弾性率の低い箇所は、発生した熱収縮応力を吸収する働きがあり、これが緩衝部となり密着低下を抑制する効果を発揮する。
面配向係数の分布が1%未満となる場合には、熱収縮応力を緩和できずに密着力が低下する傾向がある。一方、面配向係数の分布が20%を超える場合には、面配向の小さいところに収縮応力が集中しすぎ、密着不良が発生し易い傾向がある。
【0060】
ポリエステルフィルムにおける面配向係数の分布は、ポリエステルフィルムを製膜する際の縦延伸において、予熱温度分布を調整することにより形成できる。即ち、予熱温度分布により、縦延伸での配向分布、及びこれに伴う結晶分布を形成し、これにより横延伸の配向分布を形成する。ここで云う温度分布とは、幅方向の温度分布を指す。即ち幅方向に形成された温度分布により縦延伸後に幅方向に結晶、配向分布が発生する。これがこの後に横方向に延伸される際、フィルム全面に渡り配向むらを形成することで、面配向係数の分布が形成される。
【0061】
予熱温度の分布は、予熱ロールに温度分布を与えることで調整できる。具体的には、予熱温度分布は、予熱ロール中に温調のために流している熱媒の流れを、邪魔板を儲け乱すことで調整すればよい。予熱温度の好ましい温度分布は0.2℃以上10℃以下であり、より好ましくは0.4℃以上5℃以下、さらに好ましくは0.6℃以上3℃以下である。
【0062】
このような面配向係数の分布の制御とともに、後述するように、「末端封止剤」をポリエステル中に含有させること、ポリエステルの構成成分としては「3官能以上の構成成分(C)」含有させることで、より効果的に湿熱経時後の密着性を向上させることができる。
【0063】
末端封止剤は、ポリエステルと反応させることで末端を嵩高くでき、これが引っ掛りとなりポリエステル分子間の易動性を低下させる。また、3官能以上の構成成分(C)は3官能基を介して分子が枝分かれするため、ポリエステル分子の易動性を低下させる。このように運動性が低下することで面配向分布を形成し易くできる。即ち、面配向の大きな箇所と小さな箇所の間で発生する応力差により分子が流動(クリープ)し、これを解消しようとする。このとき、上記のように分子の運動性が低下すると、このような面配向分布の解消が起きづらく、面配向係数の分布を形成し易い。
【0064】
面配向係数の具体的な測定方法については後述する。
【0065】
<固有粘度(IV)>
本発明におけるポリエステルフィルムは、固有粘度(以下、適宜「IV」と称する。)が0.6〜1.2dl/gの範囲にあることが好ましい。より好ましい固有粘度は0.65〜1.0dl/gであり、さらに好ましくは0.70〜0.95dl/gである。
ポリエステルフィルムの固有粘度が、0.6dl/g未満であると、分子の易動性が大きく、上述した熱収縮や面配向の分布が緩和(解消)され易くなる傾向がある。一方、固有粘度が1.2dl/gを超えると、溶融押出しの際に剪断発熱し易く、これがポリエステル樹脂の熱分解を促し、この結果、ポリエステル中のカルボン酸量(AV)が増加し易い。これがサーモ中の加水分解を促し密着不良を発現し易くなる傾向がある。
【0066】
ポリエステルフィルムのIVは、固相重合における温度及び反応時間により調整することができる。固相重合の好適な態様としては、ポリエステルペレットを、180℃以上250℃以下、より好ましくは190℃以上240℃以下、さらに好ましくは195℃以上230℃以下の温度条件において、5時間以上50時間以下、より好ましくは10時間以上40時間以下、さらに好ましくは15時間以上30時間以下、窒素気流中あるいは真空中で熱処理することである。固相重合は、一定温度で実施してもよく、変動させながら実施してもよい。
【0067】
また、ポリエステルフィルムの製膜に供するポリエステル原料(ペレット)については、耐加水分解性を満たすために、固有粘度が0.6〜1.2dl/gの範囲にあることが好ましい。より好ましくは0.65〜0.10でdl/gあり、さらに好ましくは0.70〜0.95dl/gである。耐加水分解性を向上させるためには、固有粘度を高めることが好ましいが、固有粘度が1.2dl/gを越える場合はポリエステル樹脂製造時に固相重合時間を長くする必要がありコストが著しく高くなるため好ましくないことがある。また0.6dl/gより小さい場合は、重合度が低いため耐熱性・耐加水分解性が著しく落ちるため好ましくない。ペレットの固有粘度は、ポリエステル樹脂の製造時の重合条件、固相重合条件を調整することで上記好ましい範囲にすることができる。
【0068】
IVの具体的な測定方法については後述する。
【0069】
<表面抵抗>
本発明におけるポリエステルフィルムは、その少なくとも一方の表面の表面抵抗Rが、10Ω/□以上1014Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗Rは、より好ましくは10Ω/□以上1013Ω/□以下であり、更に好ましくは10Ω/□以上1012Ω/□以下である。
【0070】
表面抵抗Rの具体的な測定方法については後述する。
【0071】
ポリエステルフィルム表面にゴミが付着すると、この上に貼り合せるEVA(封止材)との界面に隙間が生じ、密着力が低下する場合があるが、ポリエステルフィルムの表面抵抗を上記の範囲とすることで、静電気の発生を抑制し、静電気の発生によるポリエステルフィルム表面のゴミ付きを抑制しうる。
ポリエステルフィルム表面の表面抵抗Rが、上記の好適な範囲を上回ると、静電気が発生し密着力が低下しやすくなる傾向となる。一方、ポリエステルフィルム表面の表面抵抗Rが上記の好適な範囲を下回ると、導電性粒子や導電性樹脂などの導電剤を多量に含ませる必要が生じる場合があり、湿熱耐久性が低下し易い傾向となる。
【0072】
<ポリエステル>
以下、本発明におけるポリエステルフィルムに含まれるポリエステルについて、より具体的に説明する。
【0073】
本発明におけるポリエステルフィルムに含まれるポリエステルは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分とを含む線状飽和ポリエステルである。
【0074】
ポリエステルとしては、全ジカルボン酸構成成分中の芳香族ジカルボン酸構成成分の割合が、90モル%以上100モル%以下であるもの好ましい。芳香族ジカルボン酸構成成分の割合が90モル%に満たないと、耐湿熱性、耐熱性が低下したりする場合がある。本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル中の全ジカルボン酸構成成分中の芳香族ジカルボン酸構成成分の割合を90モル%以上100モル%以下とすることで、耐湿熱性、耐熱性を両立することが可能となる。
【0075】
ポリエステルにおける芳香族ジカルボン酸構成成分の割合は、より好ましくは95モル%以上100モル%であり、更に好ましくは98モル%以上100モル%以下であり、特に好ましくは99モル%以上100モル%以下であり、最も好ましくは100モル%である。即ち、ジカルボン酸構成成分全てが芳香族カルボン酸構成成分であることが最も好ましい。
【0076】
ポリエステルを主として構成する、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分からなる主たる繰り返し単位は、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、プロピレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート及びこれら混合物が好適である。なお、ここでいう「主たる繰り返し単位」とは、その合計が、ポリエステルに含まれる全繰り返し単位の70モル%以上であることを意味し、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。
【0077】
さらには、低コストで、より容易に重合が可能で、かつ耐熱性に優れるという点で、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、及びこれらの混合物が主たる構成成分であることが好ましい。この場合、エチレンテレフタレートをより多く構成単位として用いた場合は、より安価で汎用性のある耐湿熱性を有するフィルムを得ることができ、また、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートをより多く構成単位として用いた場合はより耐湿熱性に優れるフィルムとすることができる。
【0078】
共重合成分としては、以下に示す各種ジカルボン酸成分又はそのエステル形成性誘導体とジオール成分を用いてもよい。
共重合可能なジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。また、共重合しうる脂環族ジカルボン酸成分としては1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができる。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の脂肪族、脂環族、芳香族ジオール等を挙げることができる。
これらの成分は1種のみ用いてもよく、また2種以上併用してもよい。
【0079】
本発明におけるポリエステルフィルムに好ましく使用されるポリエステルの融点は、250℃以上のものが耐熱性の上で好ましく、300℃以下のものが生産性上好ましい。この範囲内であれば、他の成分が共重合しても、ブレンドしていてもよい。
【0080】
また、ポリエステルの中には、公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子などが添加されていてもよい。特に、無機粒子や有機粒子は、フィルム表面に易滑性を与え、フィルムの取り扱い性を高めるために有効である。
【0081】
ポリエステルは、従来公知のポリエステルの製造方法に従って製造することができる。すなわち、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して、余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造することができる。また、酸成分としてジカルボン酸を用いて、従来公知の直接重合法により製造することもできる。反応触媒としては従来公知のチタン化合物、リチウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物等を用いることができる。
【0082】
こうして得られたポリエステルは、固相重合を施すことにより、さらに重合度を上げることができ、かつ末端カルボキシル基濃度を低減させることができる。
固相重合は、乾燥機中200℃〜250℃の温度で1torr以下の減圧下または窒素気流下で5〜50時間行われることが好ましい。
【0083】
本発明におけるポリエステルの好適な態様の一つは、ジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分、及び、カルボキシル基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上である構成成分(p)を有するポリエステルを含み、前記構成成分(p)の含有量が、ポリエステルに含まれる全構成成分に対して0.005モル%以上2.5モル%以下であるポリエステルである。
【0084】
〜構成成分(p)〜
カルボキシル基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上である構成成分(p)について説明する。
【0085】
構成成分(p)の例としては、カルボキシル基数(a)が3以上のカルボン酸構成成分、水酸基数(b)が3以上の構成成分、一分子中に水酸基とカルボキシル基数の両方を有するオキシ酸類であり、かつカルボキシル基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上である構成成分が挙げられる。
【0086】
カルボキシル基数(a)が3以上のカルボン酸構成成分の例としては、三官能の芳香族カルボン酸構成成分として、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、アントラセントリカルボン酸等が、三官能の脂肪族カルボン酸構成成分として、メタントリカルボン酸、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸等が、四官能の芳香族カルボン酸構成成分としてベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、アントラセンテトラカルボン酸、ベリレンテトラカルボン酸等が、四官能の脂肪族カルボン酸構成成分として、エタンテトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、アダマンタンテトラカルボン酸等が、五官能以上の芳香族カルボン酸構成成分として、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ナフタレンペンタカルボン酸、ナフタレンヘキサカルボン酸、ナフタレンヘプタカルボン酸、ナフタレンオクタカルボン酸、アントラセンペンタカルボン酸、アントラセンヘキサカルボン酸、アントラセンヘプタカルボン酸、アントラセンオクタカルボン酸等が、五官能以上の脂肪族カルボン酸構成成分として、エタンペンタカルボン酸、エタンヘプタカルボン酸、ブタンペンタカルボン酸、ブタンヘプタカルボン酸、シクロペンタンペンタカルボン酸、シクロヘキサンペンタカルボン酸、シクロヘキサンヘキサカルボン酸、アダマンタンペンタカルボン酸、アダマンタンヘキサカルボン酸等が、及びこれらエステル誘導体や酸無水物等が例として挙げられるがこれらに限定されない。
また、上述のカルボン酸構成成分のカルボキシ末端に、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類、及びその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたものも好適に用いられる。
また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
【0087】
水酸基数(b)が3以上の構成成分の例としては、三官能の芳香族構成成分としては、トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシカルコン、トリヒドロキシフラボン、トリヒドロキシクマリン、三官能の脂肪族アルコール構成成分として、グリセリン、トリメチロールプロパン、プロパントリオール、四官能の脂肪族アルコール構成成分として、ペンタエリスリトール等の化合物、また、上述の化合物の水酸基末端にジオール類を付加させた構成成分(p)も好ましく用いられる。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
【0088】
一分子中に水酸基とカルボキシル基数の両方を有するオキシ酸類のうち、かつカルボキシル基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上である構成成分としては、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸などが挙げられる。
また、上述の構成成分のカルボキシ末端に、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類、及びその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたものも好適に用いられる。
また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
【0089】
ポリエステルが構成成分(p)を含む場合、該構成成分(p)の含有量は、ポリエステル中の全構成成分に対して0.005モル%以上2.5モル%であることが好ましい。構成成分(p)の含有量は、より好ましくは0.020以上1以下、更好ましくは0.025以上1以下、更に好ましくは0.035以上0.5以下、更に好ましくは0.05以上0.5以下、特に好ましくは0.1以上0.25以下である。
【0090】
ポリエステル中における構成成分(p)の含有量が、ポリエステル中の全構成成分に対して0.005モル%以下であると、耐湿熱性の向上効果が確認されない場合があり、また2.5モル%を越えると、樹脂がゲル化して溶融押出が困難となる等の理由で現実化困難であり、できたとしてもゲルが異物として存在し、フィルムにした場合の二軸延伸性が低下したり、延伸して得たフィルムが異物欠点を多数有する場合がある。
ポリエステル中の構成成分(p)の含有量が、該ポリエステル中の全構成成分に対して0.005モル%以上2.5モル%とすることで、溶融押出性を維持しながら、耐湿熱性を高めることが可能となり、また、二軸延伸時の延伸性や、得られたフィルムの品質を維持することができる。
【0091】
構成成分(p)は、カルボキシル基数(a)が3以上でありかつカルボン酸を有する化合物が芳香族系化合物であるか、または、水酸基数(b)が3以上でありかつ水酸基を有する化合物が脂肪族系化合物であることが好ましい。ポリエステルフィルムの配向特性を落とすことなく、架橋構造を形成することが可能となり、分子運動性を更に低下させることが可能となり、耐湿熱性を更に高めることが可能となる。
また、ポリエステルが構成成分(p)を含む場合には、後述の緩衝剤や末端封止剤を成形時に添加することも好ましい。
【0092】
構成成分(p)を含むポリエステルは、高結晶性樹脂であることが好ましく、具体的には、JIS K7122(1999)に準じて、昇温速度20℃/minで樹脂を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持後、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/minの昇温速度で300℃まで昇温を行って得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、融解ピークのピーク面積から求められる結晶融解熱量ΔHmが、15J/g以上であるのが好ましい。好ましくは結晶融解熱量が20J/g以上、より好ましくは25J/g以上、更に好ましくは30J/g以上の樹脂を用いるのがよい。このように高結晶化することによって、延伸、熱処理により、配向結晶化させることが可能となり、その結果、機械的強度、耐湿熱性により優れるポリエステルフィルムとすることができる。
【0093】
構成成分(p)を含むポリエステルの融点Tmは、245℃〜290℃であることが好ましい。ここでいう融点TmとはDSCにより得られる、昇温過程(昇温速度:20℃/min)における融点Tmであり、上述と同様にJIS K−7121(1999)に基づいた方法により、25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って得られた2ndRunの結晶融解ピークにおけるピークトップの温度でもってポリエステルの融点Tm1とする。より好ましくは融点Tmが247〜275℃、更に好ましくは250〜265℃である。融点Tmが245℃に満たないと、フィルムの耐熱性に劣ったりすることがあり好ましくなく、また、融点Tmが290℃を越えると、押出加工が困難となる場合があるため好ましくない。ポリエステルの融点Tmを245〜290℃とすることにより、耐熱性と加工性を両立したポリエステルフィルムとすることができる。
【0094】
<緩衝剤>
本発明におけるポリエステルフィルムは、緩衝剤を含むことが好ましい。緩衝剤の含有は、ポリエステルがその構成成分として、構成成分(p)を含む場合に特に好ましい。
【0095】
緩衝剤の具体例としては、重合反応性、耐湿熱性の点から、緩衝剤がアルカリ金属塩であることが好ましく、例えば、フタル酸、クエン酸、炭酸、乳酸、酒石酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリアクリル酸などの化合物とのアルカリ金属塩を挙げることができる。中でも、アルカリ金属元素として、カリウム、ナトリウムであることが触媒残渣による析出物を生成しにくい点から好ましく、具体的には、フタル酸水素カリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、炭酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、ポリアクリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0096】
また、下記式(I)で示されるアルカリ金属塩であることがポリエステルの重合反応性や溶融成形時の耐熱性の点で好ましく、さらにはアルカリ金属がナトリウム、及び/又はカリウムであることが重合反応性、耐熱性、耐湿熱性の点で好ましく、特にリン酸とナトリウム及び/又はカリウムの金属塩であることが重合反応性、耐湿熱性の点で好ましい。
【0097】
POxHyMz ・・・(I)
(ここで、xは2〜4の整数、yは1又は2、zは11又は2であり、Mはアルカリ金属である。)
【0098】
緩衝剤の含有量はポリエステルの全質量に対して、0.1モル/ton以上5.0モル/ton以下であることが好ましく、更に好ましくは0.3モル/ton以上3.0モル/tonである。緩衝剤の含有量が、上記範囲内であることで、耐湿熱性や機械特性をより向上させることができる。
【0099】
緩衝剤として式(I)で表されるアルカリ金属塩を用いる場合には、リン酸を併用することが好ましい。これにより、緩衝剤による加水分解抑制効果をさらに高めることが可能となり、得られたポリエステルフィルムの耐湿熱性をより高めることができる。
その場合、ポリエステルフィルム中のアルカリ金属元素含有量W1が2.5ppm以上125ppm以下であり、かつアルカリ金属元素含有量W1とリン元素含有量W2の比W1/W2が0.01以上1以下の範囲とすることが好ましい。この範囲とすることによって、加水分解抑制効果をより高めることが可能となる。より好ましくは、アルカリ金属元素W1が15ppm以上75ppm以下であり、アルカリ金属元素含有量W1とリン元素含有量W2の比W1/W2が0.1以上0.5以下である。アルカリ金属元素含有量W1が2.5ppmに満たないと加水分解抑制効果が不足し、得られたポリエステルフィルムが十分な耐湿熱性が得られない場合がある。また、125ppmを越えると、過剰に存在するアルカリ金属が溶融押出時に熱分解反応を促進して分子量が低下し、耐湿熱性や機械特性低下の原因となる場合がある。また、アルカリ金属元素含有量W1とリン元素含有量W2の比W1/W2が0.1に満たないと加水分解抑制効果が不足し、125ppmを越えると、過剰なリン酸が重合反応中にポリエステルと反応し、リン酸エステル骨格が分子鎖に形成されその部分が加水分解反応を促進してしまうため、耐加水分解性が低下することがある。
ポリエステルフィルムにおけるアルカリ金属元素W1が、15ppm以上75ppm以下であり、アルカリ金属元素含有量W1とW2の比W1/W2が0.1以上0.5以下とすることで、耐加水分解抑制効果をより高めることが可能となる結果、高い耐湿熱性を得ることが可能となる。
【0100】
緩衝剤は、ポリエステルの重合時に添加しても、溶融成形時に添加してもいずれも構わないが、緩衝剤のフィルム中への均一分散の点から、重合時に添加することが好ましい。重合時に添加する場合、添加時期は、ポリエステルの重合時のエステル化反応、またはエステル交換反応終了後から、重縮合反応初期(固有粘度が0.3未満)までの間であれば任意の時期に添加することができる。緩衝剤の添加方法としては、粉体を直接添加する、エチレングリコール等のジオール構成成分へ溶解させた溶液を調整して添加する、いずれも構わないが、エチレングリコール等のジオール構成成分へ溶解させた溶液として添加することが好ましい。その場合の溶液濃度は場合も10質量%以下に希釈して添加すると、添加口付近への緩衝剤の付着が少なく、添加量の誤差が小さくなる点、及び反応性の点で好ましい。
また、構成成分(p)を含むポリエステルである場合は、重合時の副生物であるジエチレングリコールの含有量が2.0質量%未満であることが耐熱性、耐湿熱性の点から好ましく、さらには1.0質量%未満であることが好ましい。
【0101】
<末端封止剤>
本発明におけるポリエステルフィルムは、末端封鎖剤を含むことも好ましい態様の一つである。末端封止剤とは、ポリエステルの末端のカルボキシル基と反応し、ポリエステルのカルボキシル末端量を減少させる添加剤である。
末端封止剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
【0102】
末端封鎖剤は、ポリエステルフィルムの製膜時にポリエステルと一緒に添加するとより効果が高い。固相重合の際に末端封鎖剤を同時に利用してもよい。
【0103】
さらに、末端封鎖剤は、前記カルボキシル基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上である構成成分(p)を含有するポリエステルと併用してもよい。
【0104】
ポリエステルフィルムにおける末端封止剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましい。末端封止剤が0.1質量%より少ないと、カルボキシル基を封止する効果が小さく耐加水分解性が悪化する場合がある。また、末端封止剤が5質量%よりも大きいと製膜時に異物が多く発生したり、分解ガスが発生したりして生産性に影響がある場合がある。より好ましい末端封止剤の含有量の上限値は4質量%であり、さらに好ましい上限値は2質量%である。より好ましい末端封止剤の含有量の下限値は0.3質量%、さらに好ましい下限値は0.5質量%である。末端封止剤の含有量のより好ましい範囲は0.3〜4質量%であり、さらに好ましい範囲は0.5〜2質量%である。
【0105】
〜カルボジイミド化合物〜
カルボジイミド化合物には、一官能性カルボジイミドと多官能性カルボジイミドとがある。
一官能性カルボジイミドとしては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド及びジ−β−ナフチルカルボジイミドなどが挙げられる。特に好ましくは、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドである。
【0106】
また、多官能性カルボジイミドとしては、重合度3〜15のカルボジイミドが好ましく用いられる。具体的には、1,5−ナフタレンカルボジイミド、4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド、4,4’−ジフェニルジメチルメタンカルボジイミド、1,3−フェニレンカルボジイミド、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンカルボジイミド、2,6−トリレンカルボジイミド、2,4−トリレンカルボジイミドと2,6−トリレンカルボジイミドの混合物、ヘキサメチレンカルボジイミド、シクロヘキサン−1,4−カルボジイミド、キシリレンカルボジイミド、イソホロンカルボジイミド、イソホロンカルボジイミド、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−カルボジイミド、メチルシクロヘキサンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド及び1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−カルボジイミドなどを例示することができる。
これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0107】
カルボジイミド化合物は、熱分解によりイソシアネート系ガスが発生するため、耐熱性の高いカルボジイミド化合物が好ましい。耐熱性を高めるためには、分子量(重合度)が高いほど好ましく、より好ましくはカルボジイミド化合物の末端を耐熱性の高い構造にすることが好ましい。また、一度熱分解を起こすとさらなる熱分解を起こし易くなるため、ポリエステルの押出温度をなるべく低温下にするなどの工夫が必要である。
【0108】
〜エポキシ化合物〜
エポキシ化合物の好ましい例としては、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。
【0109】
グリシジルエステル化合物の具体例としては、安息香酸グリシジルエステル、t−Bu−安息香酸グリシジルエステル、P−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル及びピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどを挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0110】
また、グリシジルエーテル化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエ−テル、O−フェニルグリシジルエ−テル、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ブタン、1,6−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ベンゼン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−エトキシエタン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−ベンジルオキシエタン、2,2−ビス−[р−(β,γ−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン及び2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0111】
〜オキサゾリン化合物〜
オキサゾリン化合物としては、ビスオキサゾリン化合物が好ましく、具体的には、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4’−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−9,9’−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)及び2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等を例示することができる。これらの中では、ポリエステルとの反応性の観点から、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)が最も好ましく用いられる。
ビスオキサゾリン化合物は、一種を単独で用いても、二種以上を併用してもどちらでも良い。
【0112】
<リン化合物>
本発明におけるポリエステルフィルムにおいては、加水分解の分解を抑制の観点から、リン化合物を含有させることも好ましい。
【0113】
リン化合物を含有させる場合、ポリエステルフィルムにおける蛍光X線測定により求められるリン原子量が200ppm以上であることが好ましい。リン原子量は、より好ましくは300ppm以上、さらに好ましくは400ppm以上である。
【0114】
リン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、これらのメチルエステル、エチルエステル、フェニルエステル、ハーフエステル及びその他誘導体からなる群から選ばれた一種以上のリン化合物を用いることが好ましい。本発明では、特にリン酸、亜リン酸、ホスホン酸のメチルエステル、エチルエステル、フェニルエステルが好ましい。また、リン化合物の含有方法としては、ポリエステル原料チップを製造するときにリン化合物を添加することが好ましい。
【0115】
<その他の添加剤>
本発明におけるポリエステルフィルムは、太陽電池用バックシートの構成要素であることから、太陽光による劣化の影響を受けにくい方が好ましい。そのため、UV(紫外線)吸収剤やUVを反射する特性のものをフィルム中に添加してもよい。また、少なくとも一方のフィルム表面における波長400〜700nmの平均反射率を80%以上とすることも好ましい態様の一つである。さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。波長400〜700nmの平均反射率を80%以上とすることにより、本発明のフィルムを用いた太陽電池を太陽光が直接当たるところにて使用してもフィルムの劣化が少なくなる。
【0116】
(ポリエステルフィルムの製造方法)
次に、本発明におけるポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(PET)をポリエステルとして用いた二軸配向ポリエステルフィルムを例を代表例として説明する。
もちろん、本発明は、PETフィルムを用いた二軸配向ポリエステルフィルムに限定されるものではなく、他のポリマーを用いたものものでもよい。例えば、ガラス転移温度や融点の高いポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどを用いてポリエステルフィルムを構成する場合は、以下に示す温度よりも高温で押出や延伸を行えばよい。
【0117】
<製膜/押出し>
本発明におけるポリエステルフィルムは、例えば、次のようにして製造される。
まず、ポリエステルフィルムを構成する原反(未延伸)ポリエステルシートを製造する。原反ポリエステルシートを製造するには、例えば、上記で調整したポリエステルのペレットを押出機を用いて溶融し、口金(ダイ)から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、ポリマー中の未溶融物を除去するために、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが好ましい。
【0118】
また、ポリエステルフィルムの表面に、易滑性、耐摩耗性及び耐スクラッチ性などを付与するため、無機粒子や有機粒子、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ及びジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、熱硬化樹脂、シリコーン及びイミド系化合物等を構成成分とする有機粒子、及びポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)などを添加することも好ましい態様である。
【0119】
さらに、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料及び染料などが添加されてもよい。
【0120】
これらの添加剤や、末端封止剤をポリエステル中に含有させる場合には、末端封止剤を直接PETペレットと混合し、270〜275℃の温度に加熱したベント式二軸混練押出機を用いて、PETに練り込み高濃度マスターペレット化する方法が有効である。
【0121】
次に、得られたPETのペレットを、180℃の温度で3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、265〜280℃の温度より好ましくは270〜275℃の温度に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド及び金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。フィルムを積層する場合には、2台以上の押出機及びマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層する。溶融積層は、例えば、前記した反射層(白色層)共押出しする際、好ましく用いられる。
【0122】
このようにして押出し機から押出された融体(メルト)は、上記のように温度分布を付与されたキャスティング(冷却)ロール上で固化し原反(未延伸フィルム)を得る。好ましい冷却ロールの温度は10℃以上60℃以下が好ましく、より好ましくは15℃以上55℃以下、さらに好ましくは20℃以上50℃以下である。このとき、メルトと冷却ロールとの密着力を向上するため、静電印加法や、エアナイフ法、冷却ロール上に水膜を形成する方法等を好ましく用いることができる。
【0123】
さらに、本発明では、メルトをキャストロールに押出す際、キャストロールの線速度を10m/分以上にするのが好ましく、より好ましくは15/分以上50m/分以下、さらに好ましくは18m/分以上40m/分以下である。この範囲以下では、キャストロール上でのメルトの滞留時間が長くなり、せっかく上記方法でつけた温度差が均等化し効果が減少する。一方、この範囲を超えると、メルトの厚みむらが発生し易く、これによるメルトの温度むらが上記範囲を超え好ましくない。このようなキャストロールの速度を達成するには、押出し機での混練速度を大きくする必要があり、通常の方法ではスクリューの回転速度増加に伴う樹脂の剪断発熱によりAVが上昇し易い。このような現象は高IVの樹脂を用いる本発明において特に顕著に発現し易い。このため、本発明では押出し機に樹脂の微粒子を添加することを特徴としている。即ち最も剪断発熱し易いのが混練初期の溶融開始時であり、ここではペレットとスクリューが強く擦れあい発熱する。ここに樹脂の微粒子を添加することでペレット間の摩擦を低減しAVの上昇を抑え、本発明の範囲にすることができる。この微粒子のサイズは200メッシュ以上10メッシュ以下のものが好ましく、ペレットを破砕した後、篩にかけることで得られる。また、この微粒子の添加量は0.1%以上5%以下が好ましく、より好ましくは0.3%以上4%以下、さらに好ましくは0.5%以上3%以下である。この範囲未満では上記効果が不十分であり、この範囲を超えるとスクリューとの摩擦が大きくなりすぎスリップが発生、吐出変動によるメルトの圧みむらが発生し、キャストロール上の温度分布が本発明の範囲を超え好ましくない。
【0124】
<製膜/縦延伸>
続いて、上記のようにして得られた原反(未延伸フィルム)を、長手方向と幅方向の二軸に延伸した後、熱処理する。延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行うなどの逐次二軸延伸法、同時二軸テンター等を用いて長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法などが包含される。
【0125】
ここでは、未延伸フィルムを、数本のロールの配置された縦延伸機を用いて、ロールの周速差を利用して縦方向に延伸し(MD延伸)、続いてテンターにより横延伸を行う(TD延伸)という二軸延伸方法について説明する。
【0126】
まず、未延伸フィルムをMD延伸するが、本発明ではMD延伸に先立って原反を十分に予熱するのが好ましい。好ましい予熱温度は40℃以上90℃以下であり、より好ましくは50℃以上85℃以下、さらに好ましくは60℃以上80℃以下である。このような予熱は原反を加熱(調温)ロール上に通して行うが、この際上述のようにロールに幅方向に温度分布を付与するのが好ましい。また、好ましい予熱時間は1秒以上120秒以下、より好ましくは5秒以上60秒以下、さらに好ましくは10秒以上40秒以下である。
MD延伸は1段でおこなってもよく、多段で行ってもよい。
【0127】
1段で行う場合、ガラス転移温度Tg以上Tg+15℃以下(より好ましくはTg+10℃以下)の温度とし、好ましい延伸倍率は2.0〜6.0倍であり、より好ましくは3.0〜5.5倍であり、さらに好ましくは3.5〜5.0倍である。延伸後、20〜50℃の温度の冷却ロール群で冷却することが好ましい。
【0128】
本発明におけるポリエステルフィルムは、IVが大きく分子量が大きいため、分子の運動性が低下し配向結晶化が起こりにくい。そこで、多段延伸を行うことがより好ましい。即ち、最初に低温で延伸を行い、その後温度を上げて2段階延伸すると配向結晶化が起こり配向を高めることができる。最初の低温での延伸(MD1延伸)は(Tg−20)〜(Tg+10)℃の範囲、さらに好ましくは(Tg−10)〜(Tg+5)℃の範囲にある加熱ロール群で加熱し、長手方向に好ましくは1.1〜3.0倍、より好ましくは1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.5〜2.0倍に延伸し、次にMD延伸1温度より高温(Tg+10)〜(Tg+50)でMD延伸2を行う。より好ましい温度は(Tg+15)(〜Tg+30)である。MD延伸2の好ましい延伸倍率は1.2〜4.0倍であり、より好ましくは1.5〜3.0倍である。MD延伸1とMD延伸2の合わせたMD延伸倍率は、好ましくは2.0〜6.0倍であり、より好ましくは3.0〜5.5倍であり、さらに好ましくは3.5〜5.0倍である。第1段と第2段の延伸倍率の比(第2段/第1段=多段倍率比と称する)は1.1以上3以下が好ましく、より好ましくは1.15倍以上2倍以下、さらに好ましくは1.2倍以上1.8倍以下である。
延伸後、20〜50℃の温度の冷却ロール群で冷却することが好ましい。
【0129】
<製膜/横延伸>
次に、テンター(ステンターと称することもある)を用いて、幅方向の延伸を行う。その延伸倍率は、好ましくは2.0〜6.0倍であり、より好ましくは3.0〜5.5倍であり、さらに好ましくは3.5〜5.0倍である。また、温度は好ましくは(Tg)〜(Tg+50)℃の範囲であり、さらに好ましくは(Tg)〜(Tg+30)℃の範囲で行う(TD延伸)。
【0130】
<熱処理>
延伸の後、フィルムの熱処理を行う。熱処理はテンターや、加熱オーブンの中や、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。この熱処理は一般にポリエステルの融点以下の温度で行われるが、本発明では、上述のような温度、時間熱処理することが好ましい。このとき、縦、横方向の少なくとも一方向に上述のように緩和させることが本発明の熱収縮達成のために好ましい。
そして、このように熱処理を行ったフィルムを巻き取り、本発明におけるポリエステルフィルムを得る。
【0131】
<表面処理>
ポリエステルフィルムは、その少なくとも一方の面に対し、表面処理が施されていることが好ましい。該表面処理としては、火炎中にシラン化合物を導入して火炎処理(以下、適宜「イトロ処理」と称する。)、及び大気圧プラズマ処理(以下、適宜「APP処理」と称する。)から選ばれる少なとも一つの表面処理であることが好ましい。該表面処理は、少なくとも後述する特定ポリマー層を形成するための塗布液が塗布される面に行われることが好ましい。
以下、これらの表面処理について説明する。
【0132】
(1) シラン化合物を導入した火炎を用いる火炎処理(イトロ処理)
シラン化合物を導入した火炎を用いる火炎処理としては、ケイ酸炎処理を挙げることができ、その中でもイトロ処理が好ましい。前記イトロ処理とは、フレームバーナーによる酸化炎を介して被塗布物の表面にナノレベルの酸化ケイ素膜を形成する表面処理方法のことを言う。すなわち、前記イトロ処理は従来の基材表面のみを改質する前処理(フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理)とは異なり、易接着性物質を積極的に表面に付加する表面処理のことを言う。
【0133】
シラン化合物の種類についても特に制限されるものではないが、例えば、アルキルシラン化合物やアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
また、このようなアルキルシラン化合物やアルコキシシラン化合物の好適例としては、テトラメチルシラン、テトラエチルシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジフェニルシラン、ジエチルジクロロシラン、ジエチルジフェニルシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリフェニルシラン、ジメチルジエチルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0134】
また、シラン化合物において、分子内又は分子末端に窒素原子、ハロゲン原子、ビニル基及びアミノ基の少なくとも一つを有する化合物であることがより好ましい。
より具体的には、ヘキサメチルジシラザン(沸点:126℃)、ビニルトリメトキシシラン(沸点:123℃)、ビニルトリエトキシシラン(沸点:161℃)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(沸点:144℃)、トリフルオロプロピルトリクロロシラン(沸点:113〜114℃)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(沸点:215℃)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(沸点:217℃)、ヘキサメチルジシロキサン(沸点:100〜101℃)、及び3−クロロプロピルトリメトキシシラン(沸点:196℃)の少なくとも一つの化合物であることが好ましい。このようなシラン化合物であれば、キャリアガスとの混合性が向上し、炭素化合物の表面に、粒状物(シリカ層)を形成して改質がより均一になるとともに、沸点等の関係で、かかるシラン化合物が炭素化合物の表面に一部残留しやすくなり、フッ素系ポリマーを含む塗布層との間で、より優れた密着力を得ることができる。
【0135】
また、シラン化合物の平均分子量を、マススペクトル測定において、50〜1000の範囲内の値とすることが好ましい。シラン化合物の平均分子量を、マススペクトル測定において、60〜500の範囲内の値とすることがより好ましく、70〜200の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0136】
また、火炎温度を400〜2500℃の範囲内の値とすることが好ましい。火炎温度を500〜1800℃の範囲内の値とすることが好ましく、800〜1200℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0137】
また、火炎を生成するためにバーナーを備えることが好ましい。かかるバーナーの種類も特に制限されるものでないが、例えば、予混合型バーナー、拡散型バーナー、部分予混合型バーナー、噴霧バーナー、蒸発バーナー、微粉炭バーナー等のいずれであってもよい。
また、バーナー以外に別の熱源を備えることも好ましい。かかる熱源の種類は特に制限されるものではないが、例えば、レーザー、ハロゲンランプ、赤外線ランプ、高周波コイル、誘導加熱装置、熱風ヒーター、及びセラミックヒーターからなる群から選択される少なくとも一つの加熱手段が好ましい。
例えば、レーザーを用いることにより、スポット的に、極めて迅速に加熱して、シラン化合物を熱分解させて、炭素化合物の表面処理が可能となる。
また、ハロゲンランプや赤外線ランプを用いることにより、極めて均一な温度分布でもって、大量のシラン化合物の熱分解が可能となり、炭素化合物の効率的な表面処理が可能となる。
また、高周波コイルや誘導加熱装置を用いることにより、極めて迅速に加熱して、シラン化合物を熱分解させて、炭素化合物の効率的な表面処理が可能となる。
さらに、熱風ヒーターやセラミックヒーターを用いることにより、例えば、2000℃を超える温度処理が、小規模から大規模まで各種サイズにおいて可能となり、シラン化合物を容易に熱分解させて、炭素化合物の効率的な表面処理が可能となる。
【0138】
その他、シラン化合物を導入した火炎を用いる火炎処理の好ましい態様については、例えば、国際公開WO2003/069017号公報、国際公開WO2004/014989号公報、特開2003−238710号公報、特開2007−039508号公報、特開2008−050629号公報に記載の方法を用いることができる。
【0139】
(2) 大気圧プラズマ処理(APP処理)
大気圧プラズマは、高周波を用いて大気圧下で安定なプラズマ放電を起こさせる法である。
大気圧プラズマでは、キャリアガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等を用いてこれに酸素ガス等を一部混合したものを用いることが好ましく、空気にアルゴンガスを混合したものがより好ましい。
大気圧プラズマ処理は、大気圧またはその近傍下の500〜800Torr程度の圧力下で行うことが好ましく、700〜800Torrで行うことがより好ましい。
また、放電の電源周波数は1〜100kHz、より好ましくは1〜10kHz程度が好ましい。電源周波数が1kHz以上であれば安定した放電が得られ、好ましい。逆に100kHz以下であれば、高価な装置を必要とせず、製造方法上、コストの観点から好ましい。
大気圧プラズマ処理の放電強度は特に制限はないが、本発明では50W・min/m〜500W・min/m程度が好ましい。大気圧プラズマ処理の放電強度が500W・min/m以下であればアーク放電が起こり難くなり、安定した大気圧プラズマ処理を行うことができる。また、50W・min/m以上であれば充分な表面処理効果を得ることができる。
処理時間は0.05〜100秒、より好ましくは0.5〜30秒程度が好ましい。処理時間が0.05以上であれば接着性改良効果が充分となり、逆に100秒以下であれば支持体の変形や着色等の問題が生じ難くなる。
大気圧プラズマ処理において、プラズマを発生させる方法としては特に制限はないが、本発明では例えば、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電等の装置を利用して行うことができる。特に、3.56MHzの高周波を用いた放電装置を利用して行う方法は好ましい。
【0140】
その他、大気圧プラズマ処理の好ましい態様については、例えば、特許3835261号公報などに記載の方法を用いることができる。
【0141】
(ポリマー層)
本発明の太陽電池用バックシートは、前記ポリエステルフィルム基材上に少なくとも1層のポリマー層を設けてなり、該ポリマー層の少なくとも1層は、少なくともフッ素系ポリマーを含有し且つカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤由来の架橋構造を有し、且つ塗布により形成されたポリマー層である(以下、適宜「特定ポリマー層」と称する。)。
【0142】
<特定ポリマー層>
特定ポリマー層は、少なくともフッ素系ポリマーを含有し且つカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤由来の架橋構造を有するポリマー層である。
特定ポリマー層は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。特定ポリマー層を2層以上有する場合、該2層以上の特定ポリマー層は、それぞれが異なる機能を有する層であってもよいし、同一の機能を有する層を複数含むものであってもよい。
【0143】
本発明における特定ポリマー層は、フッ素系ポリマー及び特定の架橋剤に由来する架橋構造を有する構成により、基材であるポリエステルフィルムとの接着、及び層間の接着性(特に電池側基板に設けられた封止材との間の接着性)が改善されるので、ポリエステルフィルムに直に形成されることが好ましい。また、耐湿熱保存性を有するポリマー層が形成されるため、外部環境に暴露される最外層、つまりバック層として用いることも好ましい。
【0144】
このポリマー層は、場合に応じて更に他の成分を用いて構成することができ、適用する用途によりその構成成分が異なる。ポリマー層は、太陽光の反射機能や外観意匠性の付与などを担う着色層、太陽光が入射する側と反対側に配されるバック層、バックシートを電池側基板の太陽電池素子を封止する封止材と強固に接着するための層である易接着性層などとして構成することができる。
【0145】
特定ポリマー層を、例えば、太陽光をその入射側に反射させる反射層として構成する場合、白色顔料等の着色剤を更に用いて構成することができる。この場合、反射層はフッ素系ポリマを含ませてポリマー層として形成される。ポリマー基材上に2層以上のポリマー層を有する場合には、白色層(ポリマー層)/ポリマー層/ポリエステルフィルム基材の積層構造に構成されてもよい。白色層は、反射層として構成することができる。反射層のバックシート内での接着性、密着性をより向上させることが可能である。
【0146】
〜フッ素系ポリマー〜
特定ポリマー層に含有されるフッ素系ポリマーとしては、−(CFX−CX)−で表される繰り返し単位を有するポリマーであれば特に制限はない(但し、X、X、及びXは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又は炭素数1から3のパーフルオロアルキル基を示す。)。
【0147】
フッ素系ポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(以降、PTFEと表す場合がある。)、ポリフッ化ビニル(以降、PVFと表す場合がある。)、ポリフッ化ビニリデン(以降、PVDFと表す場合がある)、ポリ塩化3フッ化エチレン(以降、PCTFEと表す場合がある。)、ポリテトラフルオロプロピレン(以降、HFPと表す場合がある)などがある。
これらの中でも、PTFE又はPCTFEを用いることが好ましい。
【0148】
これらのポリマーは単独のモノマーを重合したホモポリマーでもよいし、2種類以上を共重合したものでもよい。この例として、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロプロピレンを共重合したコポリマー(以降、P(TFE/HFP)と略記。)、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンを共重合したコポリマー(以降、P(TFE/VDF)と略記。)等を挙げることができる。
【0149】
さらに、フッ素系ポリマーを含む特定ポリマー層に用いるポリマーとしては−(CFX−CX)−で表されるフッ素系モノマーと、それ以外のモノマーを共重合したポリマーでもよい。これらの例としてテトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(以降、P(TFE/E)と略記)、テトラフルオロエチレンとプロピレンの共重合体(以降、P(TFE/P)と略記。)、テトラフルオロエチレンとビニルエーテルの共重合体(P(TFE/VE)と略記)、テトラフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルの共重合体(以降、P(TFE/FVE)と略記。)、クロロトリフルオロエチレンとビニルエーテルの共重合体(以降、P(CTFE/VE)と略記。)、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルの共重合体(以降、P(CTFE/FVE)と略記。)等を挙げることができる。
これらホモポリマーと共重合体の中でも、P(TFE/E)又はP(CTFE/VE)を用いることが好ましい。
【0150】
これらのフッ素系ポリマーとしてはポリマーを有機溶剤に溶解して用いるものでも、ポリマー微粒子を水に分散して用いるものでもよい。環境負荷が小さい点から後者が好ましい。フッ素系ポリマーの水分散物については例えば特開2003−231722号公報、特開2002−20409号公報、特開平9−194538号公報等に記載されている。
また、前記フッ素系ポリマーは商業的に入手してもよく、例えば、オブリガートSW0011F(フッ素系バインダー、AGCコーテック(株)製)の他、ダイキン工業(株)製 ゼッフルなどを本発明では好ましく用いることができる。
【0151】
フッ素系ポリマーを含む特定ポリマー層のバインダーとしては、上記のフッ素系ポリマーを単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。また、全バインダーの50質量%を超えない範囲でアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂などのフッ素系ポリマー以外の樹脂を併用してもよい。ただし、フッ素系ポリマー以外の樹脂が50質量%を超えるとバックシートに用いた場合に耐候性が低下する場合がある。
【0152】
〜架橋剤〜
本発明においては、特定ポリマー層が、カルボジイミド化合物及びオキサゾリン系化合物のうち少なくとも1種の架橋剤に由来する構造部分を有している。つまり、特定ポリマー層は、これに含まれるバインダー成分を架橋しうる特定の架橋剤を必須に用いて形成されたものである。架橋剤由来の構造部分を有することにより、湿熱経時後の接着性、具体的には湿熱環境下に曝された場合のポリエテルフィルムに対する接着、及び層間の接着をより向上させることができる。
【0153】
架橋剤としては、湿熱経時後における優れた接着性を確保する観点から、カルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選択された少なくとも1種の架橋剤を必須に用いる。該架橋剤の使用は、表面処理として火炎中にシラン化合物を添加する火炎処理や大気圧プラズマ処理を採用した場合に、相乗的に湿熱経時後における接着性を更に向上できる。
また、本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲において、カルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物以外の他の架橋剤を併用してもよい。該他の架橋剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、等が挙げられる。
【0154】
オキサゾリン系化合物である架橋剤の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく用いられる。
また、オキサゾリン系化合物である架橋剤として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS-500、同WS-700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
【0155】
前記カルボジイミド系化合物である架橋剤の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド等を挙げることができる。また、特開2009−235278号公報に記載のカルボジイミド化合物も好ましい。具体的には、カルボジイミド系化合物である架橋剤として、カルボジライトSV−02、カルボジライトV−02、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトV−04、カルボジライトE−01、カルボジライトE−02(いずれも日清紡ケミカル(株)製)等の市販品も利用できる。
【0156】
また、特定ポリマー層中における、架橋剤由来の構造部分のフッ素系ポリマーを含むバインダー成分に対する質量割合としては、0.5質量%〜30質量%が好ましく、より好ましくは2質量%〜25質量%である。架橋剤の含有割合は、0.5質量%以上であると、特定ポリマー層の強度、及び湿熱経時後の接着性により優れ、30質量%以下であると、塗布液のポットライフを更に長く保てる。
【0157】
〜界面活性剤〜
特定ポリマー層は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1mg/m〜15mg/mが好ましく、より好ましくは0.5mg/m〜5mg/mである。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、15mg/m以下であると、接着を良好に行なうことができる。
【0158】
〜フィラー〜
特定ポリマー層は、フィラーを含んでもよい。
フィラーとしてはコロイダルシリカ、二酸化チタンなどの公知のフィラーを用いることができる。フィラーの添加量は、特定ポリマー層のバインダー成分当たり20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーの添加量が20質量%以下であると、特定ポリマー層の面状がより良好に保て、ポリエステルフィルムとの接着性を改善することができる。
【0159】
(厚み)
特定ポリマー層の厚みは0.5μm〜15μmであることが好ましく、0.8μm〜12μmであることがより好ましく、1.0μm〜10μmであることが特に好ましい。特定ポリマー層の厚みが0.5μm以上であると太陽電池用バックシートにおける特に最外層として耐久性(耐候性)が十分に発揮でき、15μm以上であるとポリエステルフィルムとの接着力が不十分となる場合がある。
【0160】
特定ポリマー層は、フッ素系ポリマーと架橋剤とを少なくとの含む塗布液を、基材となるポリエステルフィルム上に塗布して塗膜を乾燥させることにより形成する。乾燥後、加熱するなどして硬化させてもよい。塗布方法や塗布液の溶媒には、特に制限はない。
塗布方法としては、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
塗布液は、更に溶媒を含有していてもよく、該溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。ただし、フッ素系ポリマー等のバインダー成分を水分散した水系塗布液を形成して、これを塗布する方法が好ましい。この場合、溶媒中の水の割合は50質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上である。含フッ素ポリマー層を形成する塗布液に含まれる溶媒の50質量%以上が水であれば、環境負荷が小さくなるので好ましい。
【0161】
(位置)
特定ポリマー層は、その上にさらに別の層を積層してもよいが、耐久性の向上、軽量化、薄型化、低コスト化などの観点から、特定ポリマー層が、最外層であることが好ましい。ここで、最外層とは、本発明のバックシートにおける最表面を構成する層を意味する。
【0162】
特定ポリマー層は、ポリエステルフィルムにおける表面処理面と、接着剤又は粘着剤を介さずに直接接していることが好ましい。本発明のバックシートは、ポリエステルフィルム及び特定ポリマー層のみで構成されていてもよいし、ポリエステルフィルム上又は特定ポリマー層上、あるいは両方上に、必要に応じて選択される他の層を有するものであってもよい。
【0163】
〜バック層〜
特定ポリマー層をバック層として構成する場合、必要に応じて、さらに各種添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。電池側基板(=太陽光が入射する側の透明性の基板(ガラス基板等)/太陽電池素子を含む素子構造部分)/太陽電池用バックシートの積層構造を有する太陽電池において、バック層は支持体であるポリマー基材の前記電池側基板と対向する側と反対側に配される裏面保護層であり、1層構造でもよいし、2層以上を積層した構造であってもよい。特定ポリマー層が、フッ素系ポリマー及び特定の架橋剤に由来する構造部分を含むことで、ポリエステルフィルム基材に対する接着や、バック層が2層以上からなる場合の層間における接着が良化するとともに、更には湿熱環境下での劣化耐性が得られる。そのため、特定ポリマー層であるバック層が、最外層として配置される層を含む形態が好ましい。
【0164】
バック層を2層以上設ける場合は、両方のバック層が特定ポリマー層であってもよく、一方のみのバック層が特定ポリマー層であってもよい。
中でも、湿熱環境下における接着耐久性を改善する観点から、少なくとも、ポリエステルフィルム基材と接するバック層(第1のバック層)が特定ポリマー層で構成されていることが好ましい。
【0165】
バック層中に含むことができる他の成分については、後述するように、界面活性剤、フィラー等が挙げられる。また、着色層に用いられる顔料を含んでもよい。これらの他の成分及び顔料の詳細、好ましい態様については、後述する。
【0166】
〜着色層〜
特定ポリマー層を着色層(好ましくは反射層)として構成する場合、該着色層は、前記フッ素系ポリマー、及び、特定の架橋剤に由来する架橋構造に加え、さらに顔料を含有する。着色層は、必要に応じて、さらに各種添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。
【0167】
着色層の機能としては、第1に、入射光のうち太陽電池セルを通過して発電に使用されずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げること、第2に、太陽電池モジュールを太陽光が入射する側(オモテ面側)から見た場合の外観の装飾性を向上すること、等が挙げられる。一般に太陽電池モジュールをオモテ面側から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートに着色層を設けることにより装飾性を向上させて見栄えを改善することができる。
【0168】
−顔料−
本発明における着色層は、顔料の少なくとも一種を含有することができる。
顔料としては、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料を、適宜選択して含有することができる。
【0169】
顔料のうち、ポリマー層を、太陽電池に入射して太陽電池セルを通過した光を反射して太陽電池セルに戻す反射層として構成する場合、白色顔料が好ましい。白色顔料としては、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等が好ましい。
【0170】
顔料の着色層中における含有量は、2.5g/m〜8.5g/mの範囲が好ましい。顔料の含有量が2.5g/m以上であると、必要な着色が得られ、反射率や装飾性を効果的に与えることができる。また、顔料の着色層中における含有量が8.5g/m以下であると、着色層の面状を良好に維持しやすく、膜強度により優れる。中でも、顔料の含有量は、4.5g/m〜8.0g/mの範囲がより好ましい。
【0171】
顔料の平均粒径としては、体積平均粒径で0.03μm〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15μm〜0.5μm程度である。平均粒径が前記範囲内であると、光の反射効率が高い。平均粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0172】
ポリマー層を着色層として構成する場合、バインダー成分(前記フッ素系ポリマーを含む)の含有量は、顔料に対して、15質量%〜200質量%の範囲が好ましく、17質量%〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、15質量%以上であると、着色層の強度が充分に得られ、また200質量%以下であると、反射率や装飾性を良好に保つことができる。
【0173】
−添加剤−
特定ポリマー層には、必要に応じて、界面活性剤、フィラー等を添加してもよい。
前記界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1mg/m〜15mg/mが好ましく、より好ましくは0.5mg/m〜5mg/mである。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、15mg/m以下であると、接着を良好に行なうことができる。
【0174】
ポリマー層には、更に、フィラーを添加してもよい。フィラーの添加量は、ポリマー層のバインダー成分当たり20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーの添加量が20質量%以下であると、ポリマー層の面状がより良好に保てる。
【0175】
〜物性〜
着色層に顔料として白色顔料を添加して反射層とする場合、着色層及び易接着性層が設けられている側の表面における550nmの光反射率は、75%以上であることが好ましい。なお、光反射率とは、易接着性層の表面から入射した光が反射層で反射して再び易接着性層から出射した光量の入射光量に対する比率である。ここでは、代表波長光として、波長550nmの光が用いられる。
光反射率が75%以上であると、セルを素通りして内部に入射した光を効果的にセルに戻すことができ、発電効率の向上効果が大きい。着色剤の含有量を2.5g/m〜30g/mの範囲で制御することにより、光反射率を75%以上に調整することができる。
【0176】
(他の機能層)
本発明の太陽電池用バックシートは、ポリエステルフィルム基材(支持体)と特定ポリマー層以外に、他の機能層(他のポリマー層等)を有していてもよい。他の機能層としては、例えば、着色層(反射層)、易接着層などが挙げられる。
【0177】
また、本発明の太陽電池用バックシートは、前記ポリエステルフィルム基材の面上又は前記特定ポリマー層の面上、あるいは両方の面上に、必要に応じて選択される他の各種機能層を有していてもよい。他の層は1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
このような機能層の中でも、本発明のバックシートは、着色層(好ましくは、白色層(反射層))を前記ポリエステルフィルム基材上に積層した態様であることも好ましく、易接着性層及び白色層(反射層)を前記基材の一方の表面上に積層した態様であることも好ましく、易接着性層及び白色層(反射層)を、前記ポリエステルフィルム基材の一方の表面上に塗布により積層した態様であることも好ましい。その中でも、ポリエステルフィルム基材の特定ポリマー層が設けられている側の反対側に着色層を設けることが好ましい。また、これらの機能層は、本発明の太陽電池用バックシートの太陽電池素子を封止する封止材と好ましく貼り合わされる側に形成されていることが好ましい。すなわち、本発明の太陽電池用バックシートにおける特定ポリマー層が形成されていない側の基材表面上に形成されていることが好ましく、前記ポリエステルフィルム基材が、太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の前記封止材側に用いられることが好ましい。
【0178】
本発明の太陽電池保護シートは、前記特定ポリマー層が最外層であることが、太陽電池モジュールに組み込んだときにフッ素系ポリマーを含む特定ポリマー層が最外層となるように配置することが、耐候性を改善できる観点から好ましい。
【0179】
<着色層>
本発明のバックシートには、特定ポリマーを着色層として形成する態様の他、フッ素系ポリマーを実質的に含まない着色層(好ましくは反射層)が設けられてもよい。この場合の着色層は、前記フッ素系ポリマー以外のポリマー成分と顔料とを少なくとも含み、必要に応じて、さらに各種添加剤などの他の成分を用いて構成することができる。
なお、顔料及び各種添加剤の詳細については、特定ポリマー層が着色層として形成される場合について既述した通りである。フッ素系ポリマー以外のポリマー成分については、特に制限はなく適宜目的等に応じて選択することができる。
【0180】
前記「実質的に含まない」とは、着色層中にフッ素系ポリマーを積極的に含有しないことを意味し、具体的には、着色層中におけるフッ素系ポリマーの含有量が15質量%以下であることをいい、好ましくはフッ素系ポリマーを含有しない(含有量が0(ゼロ)質量%である)場合が好ましい。
【0181】
<易接着性層>
本発明のバックシートには、さらに易接着性層が設けられていてもよい。易接着性層は、バックシートを電池側基板(電池本体)の太陽電池素子(以下、発電素子ともいう)を封止する封止材と強固に接着するための層である。なお、特定ポリマーを易接着性層として形成してもよい。
【0182】
易接着性層は、バインダー、無機微粒子を用いて構成することができ、必要に応じて、さらに添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。易接着性層は、電池側基板の発電素子を封止するエチレン−ビニルアセテート(EVA;エチレン−酢酸ビニル共重合体)系封止材に対して、10N/cm以上(好ましくは20N/cm以上)の接着力を有するように構成されていることが好ましい。接着力が10N/cm以上であると、接着性を維持し得る湿熱耐性が得られやすい。
【0183】
なお、接着力は、易接着性層中のバインダー及び無機微粒子の量を調節する方法、バックシートの封止材と接着する面にコロナ処理を施す方法などにより調整が可能である。
【0184】
−バインダー−
易接着性層は、バインダーの少なくとも一種を含有することができる。易接着性層を特定ポリマー層として形成する場合には、バインダーとしてフッ素系ポリマーを含有する。
易接着性層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フッ素系樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられ、中でも耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。
【0185】
好ましいバインダーの例としては、フッ素系ポリマーの具体例としてオブリガートSW0011F(フッ素系バインダー、AGCコーテック(株)製)の他、ダイキン工業(株)製ゼッフル、ポリオレフィンの具体例としてケミパールS−120、S−75N(ともに三井化学(株)製)、アクリル樹脂の具体例としてジュリマーET−410、SEK−301(ともに日本純薬(株)製)、アクリルとシリコーンとの複合樹脂の具体例としてセラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)とH7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0186】
バインダーの易接着性層中における含有量は、0.05〜5g/mの範囲とすることが好ましい。中でも、0.08〜3g/mの範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、0.05g/m以上であると所望とする接着力が得られやすく、5g/m以下であるとより良好な面状が得られる。
【0187】
−微粒子−
易接着性層は、無機微粒子の少なくとも一種を含有することができる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
【0188】
無機微粒子の粒径は、体積平均粒径で10〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20〜300nm程度である。粒径がこの範囲内であると、より良好な易接着性を得ることができる。粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0189】
無機微粒子の形状には、特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のいずれのものを用いることができる。
【0190】
無機微粒子の含有量は、易接着性層中のバインダーに対して、5質量%〜400質量%の範囲とする。無機微粒子の含有量は、5質量%未満であると、湿熱雰囲気に曝されたときに良好な接着性が保持できず、400質量%を超えると、易接着性層の面状が悪化する。
中でも、無機微粒子の含有量は、50質量%〜300質量%の範囲が好ましい。
【0191】
−架橋剤−
易接着性層には、架橋剤の少なくとも一種を含有することができる。
易接着性層に好適な架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物等の架橋剤を挙げることができる。
易接着性層を特定ポリマー層として形成する場合には、カルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を用いる。
中でも、湿熱経時環境下での接着性を確保する観点から、オキサゾリン系化合物である架橋剤が特に好ましい。オキサゾリン系化合物である架橋剤の具体例については、既述の特定ポリマー層の項で説明した具体例と同様のものが挙げられる。
【0192】
架橋剤の易接着性層中における含有量としては、易接着性層中のバインダーに対して、5質量%〜50質量%が好ましく、中でもより好ましくは20質量%〜40質量%である。架橋剤の含有量は、5質量%以上であると、良好な架橋効果が得られ、着色層の強度や接着性を保持することができ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保つことができる。
【0193】
−添加剤−
本発明における易接着性層には、必要に応じて、更に、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカ等の公知のマット剤、アニオン系やノニオン系などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
【0194】
〜易接着性層の形成方法〜
易接着性層の形成は、易接着性を有するポリマーシートを基材に貼合する方法や、塗布による方法が挙げられる。中でも、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の塗布法を利用することができる。塗布液の調製に用いる塗布溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0195】
易接着性層の厚みには、特に制限はないが、通常は0.05〜8μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。易接着性層の厚みは、0.05μm以上であると必要な易接着性を好適に得ることができ、8μm以下であると面状がより良好になる。
また、本発明の易接着性層は、着色層の効果を低減させないために、透明であることが必要である。
【0196】
〜物性〜
また、本発明の太陽電池用バックシートは、120℃、100%RHの雰囲気下に48時間保存した後の封止材との接着力が、保存前の封止材との接着力に対し、75%以上であることが好ましい。本発明の太陽電池用バックシートは、既述の通り、所定量のバインダーと該バインダーに対して所定量の無機微粒子とを含み、EVA系封止材に対して10N/cm以上の接着力を持つ易接着層を有することにより、前記保存後にも保存前の75%以上の接着力が得られる。これにより、作製された太陽電池モジュールは、バックシートの剥がれやそれに伴なう発電性能の低下が抑制され、長期耐久性がより向上する。
【0197】
<太陽電池用バックシートの製造>
本発明の太陽電池用バックシートは、上記のように、基材となるポリエステルフィルム基材の上に特定ポリマー層と、必要に応じて設けられる他の層とを形成することができる方法であればいずれの方法により作製されてもよい。
【0198】
本発明においては、ポリエステルフィルム基材上に、フッ素系ポリマーと架橋剤とを含有する塗布液(及び必要に応じて易接着性層用塗布液等)を塗布し、特定ポリマー層を含む少なくとも1層のポリマー層を形成する工程を設けて作製する方法(本発明の太陽電池用バックシートの製造方法)により好適に作製することができる。
なお、特定ポリマー層用塗布液は、既述のように少なくともフッ素系ポリマーと架橋剤とを含有する塗布液である。ポリエステルフィルム基材、及び各塗布液を構成する成分などの詳細については、既述の通りである。
【0199】
好適な塗布法も既述の通りであり、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。また、本発明における塗布工程では、ポリエステルフィルム基材の表面に直に、ポリマー層用塗布液を塗布し、ポリエステルフィルム基材上に特定ポリマー層、及び他のポリマー層(例えば着色層(好ましくは反射層))を形成することができる。
【0200】
ポリマー層の形成は、ポリマーシートをポリマー基材に貼合する方法、ポリマー基材形成時にポリマー層を共押出しする方法、塗布による方法等により行える。中でも、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布による場合、塗布方法としては、例えば、グラビアコーター、バーコーターなどの公知の塗布方法を利用することができる。
【0201】
塗布液は、塗布溶媒として水を用いた水系でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒を用いた溶剤系でもよい。中でも、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0202】
ポリマー層用塗布液としては、これに含まれる溶媒中の50質量%以上、好ましくは60質量%以上が水である水系塗布液であることが好ましい。水系塗布液は、環境負荷の点で好ましく、また水の割合が50質量%以上であることにより、環境負荷が特に小さくなる点で有利である。ポリマー層用塗布液中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の90質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0203】
塗布後は、所望の条件で乾燥を行なう乾燥工程が設けられてもよい。
【0204】
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池モジュールは、既述の本発明の太陽電池用バックシート、又は既述の太陽電池用バックシートの製造方法により製造された太陽電池用バックシートを設けて構成されている。本発明の好ましい形態として、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性のフロント基板と既述の本発明の太陽電池用バックシートとの間に配置し、該フロント基板とバックシートとの間で太陽電池素子をエチレン−ビニルアセテート系等の封止材で封止、接着して構成されている。すなわち、フロント基板とバックシートとの間に、太陽電池素子及び前記太陽電池素子を封止する封止材を有するセル構造部分が設けられている。
【0205】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0206】
透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0207】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【0208】
<評価方法>
以下に詳述する本発明の実施例を含め、本明細書に適用される各特性の評価方法を以下に示す。
【0209】
(1)固有粘度
フィルムをオルトクロロフェノールに溶解し、25℃で測定した溶液粘度から、下式より固有粘度を得る。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマー質量であり(本測定では1g/100mlとする)、Kはハギンス定数(0.343とする)であり。また、溶液粘度、溶媒粘度は、オストワルド粘度計を用いて測定する。
【0210】
(2)末端カルボキシル基濃度
ポリエステルフィルム0.5gをo−クレゾールに溶解し、水酸化カリウムを用いて電位差滴定して測定し、末端カルボキシル基濃度を求める。
【0211】
(3)示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)
微少吸熱ピーク温度Tmeta(℃)は、JIS K7122−1987(JISハンドブック1999年版を参照した)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて測定する。具体的には、サンプルパンにフィルムを5mg秤量し、25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で昇温を行って測定する。
得られた示差走査熱量測定チャートにおける結晶融解ピーク前の微少吸熱ピーク温度でもってTmeta(℃)とする。微小な吸熱のピークが観測しにくい場合は、データ解析部にてピーク付近を拡大して、ピークを読みとる。
【0212】
なお、微小吸熱ピークのグラフ読み取り方法は、JISに記載されていないが、以下の方法に基づいて実施する。
まず、135℃の値と155℃の値で直線を引き、グラフの曲線との吸熱側の面積を求める。同様に140℃と160℃、145℃と165℃、150℃と170℃、155℃と175℃、160℃と180℃、165℃と185℃、170℃と190℃、175℃と195℃、180℃と200℃、185℃と205℃、190℃と210℃、195℃と215℃、200℃と220℃、205℃と225℃、210℃と230℃、215℃と235℃、220℃と240℃の17点についても面積を求める。微小ピークの吸熱量は、通常、0.2〜5.0J/gであることから、面積が0.2J/g以上5.0J/g以下であるデータのみを有効データとして取り扱うものとする。合計18個の面積データの中から、有効データでありかつ最も大きい面積を示すデータの温度領域おける吸熱ピークのピーク温度をもってTmeta(℃)とする。有効データがない場合、Tmeta(℃)はなしとする。
【0213】
4)熱収縮率
JIS−C2318(2007)に準じて、幅10mm、標線間隙約100mmのサンプルを、温度150℃、荷重0.5gで30分間熱処理する。その熱処理前後の標線間隙を(株)テクノニーズ製熱収縮率測定器(AMM−1号機)を用いて測定し、次式より熱収縮率を算出する。
熱収縮率(%)={(L−L)/L0}×100
:加熱処理前の標線間隙
L :加熱処理後の標線間隙
【0214】
(5)面配向係数
アタゴ社(株)製アッベ屈折率計Type 4Tを用い、光源をナトリウムランプとして、フィルム屈折率の測定を行う。
面配向係数= (nMD+nTD)/2 − nZD ・・・ (A)
上記式(A)におけるnMDはフィルムの長手方向(MD)の屈折率を表し、nTDはフィルムの直行方向(TD)の屈折率を表し、nZDはフィルム厚み方向の屈折率を表している。
【0215】
(6)蛍光X線測定でのリン原子の含有量
蛍光X線法(リガク製ZSX100e)により、リン原子の含有量を測定する。
【0216】
(7)ポリエステルの組成分析
ポリエステルをアルカリにより加水分解し、各成分をガスクロマトグラフィーあるいは高速液体クロマトグラフィーにより分析し、各成分のピーク面積より組成比を求める。
以下に一例を示す。
ジカルボン酸構成成分や、カルボキシル基数を有する構成成分は高速液体クロマトグラフィーにて測定を行う。測定条件は既知の方法で分析することができる。以下に、本発明に適用する測定条件を示す。
【0217】
装置:島津LC−10A
カラム:YMC−Pack ODS−A 150×4.6mm S−5μm
120A
カラム温度:40℃
流量:1.2ml/min
検出器:UV 240nm
【0218】
ジオール構成成分や、水酸基を有する構成成分の定量はガスクロマトグラフィーを用いて既知の方法で分析することができる。以下に、本発明に適用する測定条件を示す。
【0219】
装置 :島津9A(島津製作所製)
カラム:SUPELCOWAX−10 キャピラリーカラム30m
カラム温度:140℃〜250℃(昇温速度5℃/min)
流量 :窒素 25ml/min
検出器:FID
【0220】
(8)125℃、湿度100%の条件下72時間放置後の伸度保持率
破断伸度の測定はASTM−D882−97(1999年版ANNUAL BOOK OF ASTM STANDARDSを参照した)に準じて、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度(初期)を測定する。なお、測定は5サンプルについて測定を実施し、その平均値でもって破断伸度(初期)A2とする。
【0221】
次いで、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、(株)平山製作所 高加速寿命試験装置(HAST装置) PC−304R8Dを用いて、125℃、湿度100%の条件下72時間処理を行った後、処理後のサンプルの破断伸度をASTM−D882(1999)−97(1999年版ANNUAL BOOK OF ASTM STANDARDSを参照した)に準じて、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度(処理後)を測定する。なお、測定は5サンプルについて測定を実施しその平均値でもって破断伸度(処理後)A3とする。
【0222】
得られた破断伸度A2,A3を用いて、下記式(3)により伸度保持率を算出する。
伸度保持率(%)=A3/A2×100 (3)
【0223】
また、下記(4)により平均伸度保持率を算出する。
平均伸度保持率(%)=(MD方向の伸度保持率+TD方向の伸度保持率)/2 (4)
【0224】
(9)表面比抵抗(R
ポリエステルフィルムの表面比抵抗Rは、デジタル超高抵抗微小電流計R8340(株)アドバンテスト製((株)アドバンテスト製)で測定を実施する。ただし、表面比抵抗が10Ω/□以下の場合は、ASPプローブを備えたロレスターEP((株)ダイアインスツルメンツ製)を用いる。なお、測定はフィルム面内において任意の10カ所で測定を実施し、その平均値でもって、表面比抵抗Rとする。また、測定試料は23℃、65%Rhの室内で一晩放置したものを用いて測定を実施する。
【0225】
(10)白色度(ハンター法)
色差計(日本電色製:ND−300A)で下記数値を測定、下記白色度の計算式から求める。
・白色度(W)=100−[(100−L)+a+b1/2
L:明度、a:彩度、b:色相。
【実施例】
【0226】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、質量基準である。
また、以下において、体積平均粒子径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕を用いて測定した。
【0227】
<ポリエステルフィルム基材の作製>
〜PET−1の作製〜
[工程1]
テレフタル酸ジメチル100部、トリメリット酸トリメチル(テレフタル酸ジメチル/トリメリット酸トリメチル=99.7/0.3のモル比となるように添加)、エチレングリコール57.5部、酢酸マグネシウム0.06部、三酸化アンチモン0.03部を150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。
【0228】
[工程2]
エステル交換反応終了後、リン酸0.019部(1.9モル/ton相当)とリン酸二水素ナトリウム2水和物0.027部(1.5モル/ton相当)をエチレングリコール0.5部に溶解したエチレングリコール溶液(PH5.0)を添加した。
【0229】
[工程3]
重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.54、カルボキシル基末端基数13eq/tonのポリエステルを得た。
【0230】
[工程4]
得られたポリエチレンテレフタレートを160℃で6時間乾燥、結晶化させたのち、220℃、真空度0.3Torr、9時間の固相重合を行い、構成成分(p)が0.15モル%、固有粘度0.90、カルボキシル基末端基数12eq/ton、融点255℃、ガラス転移温度Tg83℃のポリエステルを得た。
【0231】
[工程5]
工程4にて得られたポリエステル 99部に対して、ラインケミー社製スタバクゾールP100」(ポリカルボジイミド)を1部加えてコンパウンドした。
【0232】
[工程6]
上記で得られたコンパウンド品を温度180℃、真空度0.5mmHgの条件下、2時間の減圧乾燥を行い、295℃に加熱した押出機に供給し、50μmカットフィルターにより異物濾過を行ったのちにTダイ口金に導入した。次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出して溶融単層シートとし、該溶融単層シートを、表面温度20℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸単層フィルムを得た。
【0233】
[工程7]
続いて、得られた未延伸単層フィルムを加熱したロール群で予熱した後、80℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに95℃の温度で2.3倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.1倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。
【0234】
[工程8]
さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで205℃の温度(第1熱処理温度)で20秒間の熱処理を施した。引き続き、180℃の温度下において、フィルムを幅方向(TD)に3%の弛緩率にて弛緩させ、また、テンターのクリップ間隔を縮めることによって、長手方向(MD)に1.5%の弛緩率にて弛緩させた。次いで、25℃まで均一に冷却後巻取り、厚さ250μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(PET−1)を得た。
【0235】
PET−1の特性を評価した結果を以下に示す。
・末端カルボキシル基含有量:5eq/ton
・Tmeta :190℃
・平均伸度保持率 :50%
・面配向係数 :0.170
・固有粘度 :0.75dl/g
・熱収縮率(MD/TD) :0.4%/0.2%
・構成成分(p)含有量 :0.15モル%
・緩衝剤:リン酸二水素ナトリウム 1.5モル/ton
・末端封止剤:ポリカルボジイミド 1質量%
・リン原子の含有量 :230ppm
【0236】
〜PET−2の作製〜
[工程1]
ジメチルテレフタレート100部、及びエチレングリコール60部の混合物を、酢酸カルシウム0.08部、三酸化アンチモン0.03部を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行った。
【0237】
[工程2]
エステル交換反応終了後、リン酸0.019部(1.9モル/ton相当)とリン酸二水素ナトリウム2水和物0.027部(1.5モル/ton相当)をエチレングリコール0.5部に溶解したエチレングリコール溶液(PH5.0)を添加した。
【0238】
[工程3]
重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.52、カルボキシル基末端基数13eq/tonのポリエチレンテレフタレートを得た。
【0239】
[工程4]
得られたポリエチレンテレフタレートを160℃で6時間乾燥、結晶化させたのち、230℃、真空度0.5Torr、20時間の固相重合を行い、固有粘度0.79、カルボキシル基末端基数10.5eq/ton、融点255℃、ガラス転移温度Tg83℃のポリエステルを得た。
【0240】
[工程5]
工程4にて得られたポリエステル 99部に対して、ラインケミー社製スタバクゾールP100」(ポリカルボジイミド)を1部加えてコンパウンドした。
【0241】
[工程6]
上記で得られたコンパウンド品を温度180℃、真空度0.5mmHgの条件下、2時間の減圧乾燥を行い、295℃に加熱した押出機に供給し、50μmカットフィルターにより異物濾過を行ったのちにTダイ口金に導入した。次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出して溶融単層シートとし、該溶融単層シートを、表面温度20℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸単層フィルムを得た。
【0242】
[工程7]
続いて、得られた未延伸単層フィルムを加熱したロール群で予熱した後、80℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに95℃の温度で2.3倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.1倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。
【0243】
[工程8]
さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで205℃の温度(第1熱処理温度)で20秒間の熱処理を施した。引き続き、180℃の温度下において、フィルムを幅方向(TD)に3%の弛緩率にて弛緩させ、また、テンターのクリップ間隔を縮めることによって、長手方向(MD)に1.5%の弛緩率にて弛緩させた。次いで、25℃まで均一に冷却後巻取り、厚さ250μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(PET−2)を得た。
【0244】
PET−2の特性を評価した結果を以下に示す。
・末端カルボキシル基含有量:7eq/ton
・Tmeta :180℃
・平均伸度保持率 :35%
・面配向係数 :0.167
・固有粘度 :0.70dl/g
・熱収縮率(MD/TD) :0.6%/0.2%
・構成成分(p)含有量 :無し
・緩衝剤:リン酸二水素ナトリウム 1.5モル/ton
・末端封止剤:ポリカルボジイミド 1質量%
・リン原子の含有量 :230ppm
【0245】
〜PET−3の作製〜
PET−1の製造方法の[工程2]において、リン酸二水素ナトリウム2水和物を添加しなかったこと以外は、PET−1と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフィルム(PET−3)を作製した。
PET−3の特性を評価したところ、PET−1と比較して平均伸度保持率が40%に、リン原子の含有量が150ppmに変化した。
【0246】
〜PET−4の作製〜
PET−1の製造方法の[工程5]を実施しなかったこと以外は、PET−1と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフィルム(PET−4)を作製した。
PET−4の特性を評価したところ、PET−1と比較して平均伸度保持率が25%に、末端カルボキシル基含有量が12eq/tonに変化した。
【0247】
〜PET−Aの作製〜
PET−1の製造方法の[工程8]について、第1熱処理温度を230℃に変更した以外は、PET−1と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフィルム(PET−A)を作製した。
PET−Aの特性を評価したところ、PET−1と比較して、Tmetaが225℃に、平均伸度保持率が7%に変化した。
【0248】
〜PET−Bの作製〜
[工程1]−エステル化−
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100部とエチレングリコール(日本触媒化学工業(株)製)45部のスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123部が仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123部を重縮合反応槽に移送した。
【0249】
[工程2]−ポリマーペレットの作製
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、エチレングリコールを、得られるポリマーに対して0.3質量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を、得られるポリマー中においてコバルト元素換算値、マンガン元素換算値がそれぞれ30ppm、15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタンアルコキシド化合物の2質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマー中においてチタン元素換算値が5ppmとなるように添加した。その5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマー中においてリン元素換算値が5ppmとなるように添加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし、常圧に戻し、重縮合反応を停止した。そして、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリマーのペレット(直径約3mm、長さ約7mm)を作製した。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
但し、前記チタンアルコキシド化合物には、特開2005−340616号公報の段落番号[0083]の実施例1で合成しているチタンアルコキシド化合物(Ti含有量=4.44質量%)を用いた。
【0250】
[工程3]−固相重合−
上記で得られたペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行なった。
【0251】
[工程4]−フィルム状ポリマー基材の作製−
以上のように固相重合を経た後のペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約3mmの未延伸フィルムを作製した。
続いて、得られた未延伸フィルムを加熱したロール群で予熱した後、80℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに95℃の温度で2.3倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.1倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。
【0252】
[工程8]
さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで205℃の温度(第1熱処理温度)で20秒間の熱処理を施した。引き続き、180℃の温度下において、フィルムを幅方向(TD)に3%の弛緩率にて弛緩させ、また、テンターのクリップ間隔を縮めることによって、長手方向(MD)に1.5%の弛緩率にて弛緩させた。次いで、25℃まで均一に冷却後巻取り、厚さ250μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(PET−B)を得た。
【0253】
PET−Bの特性を評価した結果を以下に示す。
・末端カルボキシル基含有量:30eq/ton
・Tmeta :190℃
・平均伸度保持率 :2%
・面配向係数 :0.170
・固有粘度 :0.60dl/g
・熱収縮率(MD/TD) :0.4%/0.2%
・構成成分(p)含有量 :無し
・緩衝剤 :無し
・末端封止剤 :無し
【0254】
[実施例1]
<含フッ素系ポリマー層の形成>
(含フッ素系ポリマー層形成用塗布液Aの調製)
下記組成中の各成分を混合し、含フッ素系ポリマー層形成用塗布液Aを調製した。
−塗布液Aの組成−
・オブリガートSW0011F ・・・49.5部
(フッ素系バインダー、AGCコーテック(株)製、固形分:39質量%)
・カルボジイミド化合物(架橋剤) ・・・7.7部
(カルボジライトV−02−L2、日清紡績(株)製、固形分:25質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・2.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・蒸留水 ・・・40.8部
【0255】
(ポリエステルフィルム基材への表面処理)
PET−1の両面に、下記の条件でイトロ処理を行った。
・エアー供給量:154L/分
・ガス供給量:7L/分
・イトロ処理液:1L/分
・搬送速度:60m/分、
・炎と表面の距離:20mm。
【0256】
(含フッ素系ポリマー層の塗布)
得られた含フッ素系ポリマー層形成用塗布液Aを、PET−1のイトロ表面処理面の上に、バインダー量が塗布量で3.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚み約3μmの含フッ素系ポリマー層(特定ポリマー層)を形成した。
【0257】
<易接着性層の形成>
(易接着性層塗布液の調製)
下記組成中の成分を混合し、易接着性層用塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・オブリガートSW0011F ・・・3.2部
(フッ素系バインダー、AGCコーテック(株)製、固形分:39質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・7.8部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・オキサゾリン化合物(架橋剤) ・・・0.8部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
・シリカ微粒子水分散物 ・・・2.9部
(アエロジルOX−50、日本アエロジル(株)製、体積平均粒子径=0.15μm、固形分:10質量%)
・蒸留水 ・・・85.3部
【0258】
(易接着性層用塗布液の塗布)
得られた塗布液を、バインダー量が0.09g/mになるように、PET−1の含フッ素系ポリマー層を設けた反対側でイトロ処理を施した上に塗布し、180℃で1分間乾燥させて、易接着性層(特定ポリマー層)を形成した。
【0259】
<白色層(反射層)の形成>
(顔料分散物の調製)
下記組成中の成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施した。
【0260】
−顔料分散物の組成−
・二酸化チタン(体積平均粒子径=0.42μm)・・・39.9質量%
(タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分100質量%)
・ポリビニルアルコール ・・・8.0質量%
(PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10質量%)
・界面活性剤 ・・・0.5質量%
(デモールEP、花王(株)製、固形分:25質量%)
・蒸留水 ・・・51.6質量%
【0261】
(反射層用塗布液1の調製)
下記組成中の成分を混合し、反射層用塗布液1を調製した。
−塗布液1の組成−
・上記の顔料分散物 ・・・80.0部
・オブリガートSW0011F ・・・14.8部
(フッ素系バインダー、AGCコーテック(株)製、固形分:39質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・3.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・オキサゾリン化合物(架橋剤) ・・・2.0部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
・蒸留水 ・・・12.2部
【0262】
(反射層用塗布液の塗布)
得られた反射層用塗布液1を、上記で形成した易接着性層上に塗布し、180℃で1分間乾燥させて、反射層(着色層)として、二酸化チタン量が6.5g/mの白色層(特定ポリマー層)を形成した。
【0263】
得られた積層体を実施例1の太陽電池用バックシートとした。
【0264】
[実施例2]
実施例1において、PET−1をPET−2に変更したこと以外は実施例1と同様に実施例2の太陽電池用バックシートを作製した。
【0265】
[実施例3]
実施例1において、PET−1をPET−3に変更したこと以外は実施例1と同様に実施例3の太陽電池用バックシートを作製した。
【0266】
[実施例4]
実施例1において、PET−1をPET−4に変更したこと以外は実施例1と同様に実施例4の太陽電池用バックシートを作製した。
【0267】
[実施例5]
実施例1において、含フッ素系ポリマー層形成用塗布液Aの作製に用いたカルボジイミド化合物(架橋剤)を、以下に示すオキサゾリン化合物(架橋剤)に変更したこと以外は実施例1と同様に実施例5の太陽電池用バックシートを作製した。
・オキサゾリン化合物(架橋剤)
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
【0268】
[実施例6]
実施例1において、PET−1の両面に施した表面処理を、以下に示す大気圧プラズマ処理(APP処理)に変更したこと以外は実施例1と同様に実施例6の太陽電池用バックシートを作製した。
【0269】
・大気圧プラズマ処理(APP処理)
PET−1を搬送させながら、空気にアルゴンガスを混合したプラズマガス(ガス圧力:750Torr)の雰囲気中において、5kHzの電源周波数を有した高周波放電装置を用いた放電によって発生した出力250W・min/mの放電強度のプラズマをPET−1の表面に15秒間照射した。
【0270】
[実施例7]
実施例1において、PET−1に表面処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様に実施例7の太陽電池用バックシートを作製した。
【0271】
[実施例8]
実施例1において、PET−1の両面に施す表面処理を、以下に示すコロナ処理条件
に変更したこと以外は、実施例1と同様に実施例8の太陽電池用バックシートを作製した。
【0272】
・コロナ処理条件
・装置:ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデル
・電極と誘電体ロ−ルギャップクリアランス:1.6mm
・処理周波数:9.6kHz
・処理速度:20m/分
・処理強度:0.375kV・A・分/m
【0273】
[実施例9]
実施例1において、含フッ素系ポリマー層形成用塗布液Aを、以下に示す含フッ素系ポリマー層形成用塗布液Bに変更したこと以外は、実施例1と同様に実施例9の太陽電池用バックシートを作製した。
【0274】
−塗布液Bの組成−
・オブリガートSW0011F ・・・49.5部
(フッ素系バインダー、AGCコーテック(株)製、固形分:39質量%)
・カルボジイミド化合物(架橋剤) ・・・7.7部
(カルボジライトV−02−L2、日清紡績(株)製、固形分:25質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・2.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・下記により調製した白色顔料分散液 ・・・33.0部
・蒸留水 ・・・7.8部
【0275】
〜白色顔料分散液の調製〜
下記組成中の成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施した。
−白色顔料分散液の組成−
・二酸化チタン(体積平均粒子径=0.42μm) ・・・39.9質量%
(タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分100質量%)
・ポリビニルアルコール ・・・8.0質量%
(PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10質量%)
・界面活性剤 ・・・0.5質量%
(デモールEP、花王(株)製、固形分:25質量%)
・蒸留水 ・・・51.6質量%
【0276】
[比較例1]
実施例1において、PET−1をPET−Aに変更したこと以外は、実施例1と同様に比較例1の太陽電池用バックシートを作製した。
【0277】
[比較例2]
実施例1において、PET−1をPET−Bに変更したこと以外は、実施例1と同様に比較例1の太陽電池用バックシートを作製した。
【0278】
[比較例3]
実施例1において、含フッ素系ポリマー層形成用塗布液A、易接着性層塗布液、及び反射層用塗布液1の調製に用いたオブリガードSW0011Fの代わりに、オレスターUD350(ポリウレタン樹脂、三井化学株式会社製、(以下、「PU」とも称する。))固形分38%)を用いて各塗布液を調製し、これらの塗布液を用いて各層を形成した以外は実施例1と同様にして、比較例3の太陽電池用バックシートを作製した。
【0279】
[比較例4]
実施例1において、含フッ素系ポリマー層形成用塗布液Aの調製に用いたカルボジイミド化合物、易接着性層塗布液、及び反射層用塗布液1の調製に用いたオキサゾリン化合物の代わりに、エポキシ化合物(ナガセケムテックス製、固形分:25%)を架橋剤として用いて各塗布液を調製し、これらの塗布液を用いて各層を形成した以外は実施例1と同様にして、比較例4の太陽電池用バックシートを作製した。
【0280】
[比較例5]
実施例1において、含フッ素系ポリマー層形成用塗布液A、易接着性層塗布液、及び、反射層用塗布液1の調製において、いずれの塗布液にも架橋剤を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例5の太陽電池用バックシートを作製した。
【0281】
[比較例6]
比較例5において、PET−1に表面処理を施さなかったこと以外は比較例5と同様にして、比較例6の太陽電池用バックシートを作製した。
【0282】
[評価方法]
(1)破断伸度保持率
後述の方法により、85℃、湿度85%の条件下3000時間放置後の破断伸度保持率を算出した。
太陽電池用バックシートを、幅10mm×長さ200mmに裁断して、測定用の試料A及びBを用意する。
試料Aに対して、25℃、相対湿度60%の雰囲気で24時間調湿した後、テンシロン(ORIENTEC製 RTC−1210A)で引っ張り試験を行う。なお、延伸される試料の長さは10cm、引っ張り速度は20mm/分である。この評価で得られた試料Aの破断伸びをL0とする。
別途、試料Bに対して、85℃、相対湿度85%の雰囲気で3000時間湿熱処理した後、試料Aと同様にして引っ張り試験を行う。この時の試料Bの破断伸びをL1とする。
得られた試料について、以下の測定方法により得られた破断伸びの測定値L及びL1に基づいて、下記式にて示される破断伸び保持率(%)を算出した。
破断伸度保持率(%)=L1/L×100
破断伸度保持率が50%以上のとき、実用上許容可能な範囲である。
【0283】
(2)湿熱経時前の接着性
試料の含フッ素系ポリマー層の表面に片刃のカミソリで、縦横それぞれ6本ずつ3mm間隔に傷をつけ、25マスのマス目を形成する。この上にマイラーテープ(ポリエステル粘着テープ)を貼り付け、手動で試料表面に沿って180°方向に引っ張って剥離する。このとき、剥離されたマス目の数によって、ポリマー層の接着力を下記の評価基準にしたがってランク分けする。評価ランク4、5が、実用上許容可能な範囲である。
<評価基準>
5:剥離したマス目はなかった(0マス)。
4:剥離したマス目が0マスから0.5マス未満。
3:剥離したマス目が0.5マス以上2マス未満。
2:剥離したマス目が2マス以上10マス未満。
1:剥離したマス目が10マス以上。
【0284】
(3)湿熱経時後の接着性
試料を85℃、相対湿度85%の環境条件下で3000時間保持した後、25℃、相対湿度60%の環境下において1時間調湿した。その後、前記「(2)湿熱経時前の接着性」の評価と同様の方法で含フッ素系ポリマー層の接着力を評価した。評価ランク3、4、5が、実用上許容可能な範囲である。
【0285】
(4)紫外線(UV)照射後の接着性
作製した太陽電池用バックシートについて、スガ試験機(株)製の超エネルギー照射試験機(UE−1DEc型)を用い、紫外領域の波長にピークを持つ100mW/cmのエネルギーの光をバック層表面に48時間照射した。照射後、直ちに、前記「(1)湿熱経時前の接着性」の評価と同様の方法でバック層の接着力を評価した。
なお、光照射中のバックシートの温度は63℃にコントロールした。
評価ランク3、4、5が、実用上許容可能な範囲である。
【0286】
実施例及び比較例の太陽電池用バックシートについて得られた、破断伸度保持率、湿熱経時前の接着性、湿熱経時後の接着性、紫外線(UV)照射後の接着性の各評価を下記表1及び表2に示す。
なお、下記表1及び表2に記載のポリマー層としては、上記にて形成した各ポリマー層のうち、含フッ素系ポリマー層形成用塗布液A、該塗布液Aの比較用塗布液(比較例5)、並びに、含フッ素系ポリマー層形成用塗布液Bを用いて形成した特定ポリマー層又は比較用ポリマー層を記載した。
【0287】
【表1】

【0288】
【表2】

【0289】
表1及び表2より、実施例の太陽電池用バックシートは、比較例の太陽電池用バックシートとの対比において、破断伸度保持率、湿熱経時前及び湿熱経時後における接着性、並びに、UV照射後の接着性のいずれについても優れていること分かった。
【0290】
[実施例10]
厚さ3mmの強化ガラスと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のSC50B)と、結晶系太陽電池セルと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のSC50B)と、実施例1の太陽電池用バックシートと、をこの順に重ね合わせ、真空ラミネータ(日清紡(株)製、真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることにより、強化ガラス、太陽電池セル、及びバックシートを、それぞれEVAと接着させた。このとき、バックシートは、その反射層がEVAシートと接触するように配置した。
【0291】
EVAの接着条件は、以下の通りである。
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンにて150℃で30分間、本接着処理を施した。
【0292】
以上のようにして、結晶系の太陽電池モジュールを作製した。作製した太陽電池モジュールを用いて発電運転をしたところ、太陽電池として良好な発電性能を示した。
【0293】
[実施例11〜18]
実施例10において用いた太陽電池用バックシートを、実施例2〜9で作製した太陽電池用バックシートに変更したこと以外は実施例10と同様にして結晶系の太陽電池モジュールを作製した。
実施例11〜18のいずれの太陽電池モジュールも、太陽電池として良好な発電性能を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の前記封止材と接触させて配置される太陽電池用バックシートであって、
ポリエステルフィルム基材と、前記ポリエステルフィルム基材上に設けられた少なくとも1層のポリマー層とを有し、
前記ポリエステルフィルム基材は、末端カルボキシル基濃度が1eq/ton以上15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定により求められる微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下であり、温度125℃、相対湿度100%RHの条件下で72時間放置した後の平均伸度保持率が10%以上のポリエステルフィルム基材であり、
前記ポリマー層の少なくとも1層は、少なくともフッ素系ポリマーを含有し且つカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤由来の架橋構造を有し、且つ塗布により形成されたポリマー層である太陽電池用バックシート。
【請求項2】
前記ポリエステルフィルム基材が、ジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分、及び、カルボキシル基数(a)と水酸基数(b)との合計(a+b)が3以上である構成成分(p)を有するポリエステルを含み、前記構成成分(p)の含有量が、ポリエステルに含まれる全構成成分に対して0.005モル%以上2.5モル%以下である請求項1に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルム基材に含まれるポリエステルの全質量に対して、緩衝剤を0.1モル/ton以上5.0モル/ton以下の範囲で含有する請求項1又は請求項2に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項4】
前記ポリエステルフィルム基材に含まれるポリエステルの全質量に対して、カルボジイミド化合物である末端封止剤を0.1質量%以上5質量%以下の範囲で含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルム基材における蛍光X線測定により求められるリン原子の含有量が200ppm以上である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項6】
前記ポリエステルフィルム基材は、表面処理が施されている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項7】
前記表面処理は、シラン化合物を導入した火炎を用いる火炎処理及び大気圧プラズマ処理から選ばれる少なくとも1つの表面処理である請求項6に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項8】
前記少なくともフッ素系ポリマーを含有し且つカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤由来の架橋構造を有するポリマー層が、前記ポリエステルフィルム基材における表面処理が施された面に直接接している請求項6又は請求項7に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項9】
前記少なくともフッ素系ポリマーを含有し且つカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤由来の架橋構造を有するポリマー層が、最外層である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項10】
前記ポリマー層の少なくとも1層は、白色系顔料を含み、光反射性を有する反射層である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項11】
末端カルボキシル基濃度が1eq/ton以上15eq/ton以下であり、示差走査熱量測定により求められる微小吸熱ピーク温度Tmeta(℃)が220℃以下であり、温度125℃、相対湿度100%RHの条件下で72時間放置した後の平均伸度保持率が10%以上のポリエステルフィルム基材上に、少なくともフッ素系ポリマーとカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤とを含有する塗布液を塗布する工程を含む太陽電池用バックシートの製造方法。
【請求項12】
前記ポリエステルフィルム基材における前記塗布液が塗布される面上に、シラン化合物を導入した火炎を用いる火炎処理及び大気圧プラズマ処理から選ばれる少なくとも1つの表面処理を施す工程を含む請求項11に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
【請求項13】
前記塗布液は、更に溶媒を含有し、該溶媒の50質量%以上が水である請求項11又は請求項12に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート、又は請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシートの製造方法により製造された太陽電池用バックシートを備えた太陽電池モジュール。
【請求項15】
太陽光が入射する透明性のフロント基板と、
前記フロント基板の上に設けられ、太陽電池素子及び前記太陽電池素子を封止する封止材を有するセル構造部分と、
前記セル構造部分の前記フロント基板が位置する側と反対側に設けられ、前記封止材と隣接して配置された、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート又は請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシートの製造方法により製造された太陽電池用バックシートと、
を備えた太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2012−204675(P2012−204675A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68809(P2011−68809)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】