説明

好中球エラスターゼ阻害剤としてのキノキサリン誘導体およびその使用

式(I):
【化1】


[式中、R、R、R、G、G、L、およびnは、本明細書中で定義した通りである]の新規化合物、およびその光学異性体、ラセミ体、および互変異性体、およびそれらの薬学的に許容される塩;その製造方法、それらを含む組成物、および治療におけるその使用が提供される。本化合物は好中球エラスターゼの阻害剤である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、新規キノキサリン誘導体、その製造方法、それらを含む医薬組成物、および治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
エラスターゼは、ことによると体内で最も多い分解酵素である。この酵素は、実質的に全ての結合組織成分を分解することが可能である。エラスターゼによる非制御蛋白質分解は、多くの病理状態に関係している。すなわちセリンプロテアーゼのキモトリプシン スーパーファミリーのメンバーであるヒトの好中球エラスターゼ(hNE)は、好中球のアズール顆粒中に保存される33KDaの酵素である。好中球においてNEの濃度は5mMを超え、かつその細胞当たりの総量は3pg未満であるとみられている。活性化の際に、NEは、該顆粒から、細胞外スペースに素早く放出されるが、幾らかは好中球原形質膜に結合しているままである(Kawabat et al. 2002, Eur. J. Pharmacol. 451, 1-10 を参照のこと)。NEの主要な細胞内生理学的機能は、好中球によって貧食される外来有機分子の分解であるのに対し、細胞外エラスターゼの主要な標的はエラスチンである(Janoff and Scherer, 1968, J. Exp. Med. 128, 1137-1155)。他のプロテアーゼ(例えばプロテイナーゼ 3)と比較して、細胞外マトリックスおよび鍵となる血漿蛋白のほぼ全てを分解する能力を有する点で、NEは独特である(Kawabat et al., 2002, Eur. J. Pharmacol. 451, 1-10 を参照のこと)。それは、広範囲の細胞外マトリックス蛋白質、例えばエラスチン、3型および4型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、サイトカインなどを分解する(Ohbayashi, H., 2002, Expert Opin. Investig. Drugs, 11, 965-980)。NEは、上皮の損傷を含む慢性肺疾患で見られる多くの病理変化の主要な一般的なメディエーターである(Stockley, R.A. 1994, Am. J. Resp. Crit. Care Med. 150, 109-113)。
【0003】
NEの分解機能は、Laurell および Eriksson が、血清α−アンチトリプシンの不足と慢性気道閉塞および肺気腫との関係を報告したほぼ40年前に確定した(Laurell and Eriksson, 1963, Scand. J. Clin. Invest. 15, 132-140)。次に、それが、α−アンチトリプシンが最も重要なヒトのNEの内在性阻害物質であることが決定された。ヒトのNEと外来性抗プロテアーゼの不均衡が、肺組織においてヒトのNEを過剰にすると考えられており、そのことが慢性閉塞性肺疾患(COPD)における主要な病原と考えられている。過剰なヒトのNEは、顕著な破壊プロファイルを示し、正常な肺構造の破壊に活発に関与し、主に肺気腫で見られるような呼吸空間の不可逆な拡大を起こす。α−プロテイナーゼ阻害物質欠損マウスにおける肺エラスターゼ負荷の増大および肺気腫を伴った好中球の肺への集積が増大する(Cavarra et al., 1996, Lab. Invest. 75, 273-280)。気管支肺胞洗浄液中のNE−α−プロテアーゼ阻害物質複合体が高レベルである個体は、より低いレベルの個体と比較して、肺機能の有意に加速された低下を示す(Betsuyaku et al. 2000, Respiration, 67, 261-267)。ラットにおいて、気管を介したヒトのNEの滴下注入は、肺出血、急性期における好中球集積、および慢性期における気腫様変化を引き起こす(Karaki et al., 2002, Am. J. Resp. Crit. Care Med., 166, 496-500)。研究により、ハムスターにおいて、NEによって引き起こされる肺気腫および肺出血の急性期は、NE阻害物質での前処理によって阻害され得ることが示された(Fujie et al.,1999, Inflamm. Res. 48, 160-167)。
【0004】
多好中球気道炎症および気道粘膜閉塞は、嚢胞性線維症および慢性気管支炎を含むCOPDの主要な病理学的特徴である。NEは、ムチン産生を損ない、気道の粘膜閉塞を引き起こす。NEは、主要な呼吸ムチン遺伝子MUC5ACの発現を増大させることが報告されている(Fischer, B.M & Voynow, 2002, Am. J. Respir. Cell Biol., 26, 447-452)。モルモットへのNEのエアゾール投与は、接触後20分以内に広範囲の上皮損傷を引き起こす(Suzuki et al., 1996, Am. J. Resp. Crit. Care Med., 153, 1405-1411)。さらに、NEは、in vitro でのヒトの呼吸器上皮の繊毛拍動数を減少させ(Smallman et al., 1984, Thorax, 39, 663-667)、このことはCOPD患者で見られる粘膜毛様体クリアランスの減少と一致している(Currie et al., 1984, Thorax, 42, 126-130)。気道へのNEの滴下注入は、ハムスターにおいて粘膜腺肥厚化をもたらす(Lucey et al., 1985, Am. Resp. Crit. Care Med., 132, 362-366)。NEの役割はまた、喘息における粘膜分泌過多を含む。アレルゲン感受性モルモット急性喘息モデルにおいて、NE阻害物質は、杯状細胞脱顆粒および粘膜分泌過多を妨げた(Nadel et al., 1999, Eur. Resp. J., 13, 190-196)。
【0005】
NEはまた、肺線維症の発病に関与することが示されている。NE:α−プロテアーゼ阻害物質複合体は、肺線維症を有する患者の血清中で増加し、このことは、これらの患者における臨床パラメーターと相関している(Yamanouchi et al., 1998, Eur. Resp. J. 11, 120-125)。ヒトの肺線維症のマウスモデルにおいて、NE阻害物質は、ブレオマイシン誘発肺線維症を減少させた(Taooka et al., 1997, Am. J. Resp. Crit. Care Med., 156, 260-265)。さらに、研究者らは、NE欠損マウスがブレオマイシン誘発肺線維症に耐性があることを示した(Dunsmore et al., 2001, Chest, 120, 35S-36S)。ARDSが進行している患者において、血漿NEレベルが上昇していることが見出され、このことは、初期ARDS疾患発病におけるNEの重要性を示唆している(Donnelly et al., 1995, Am. J. Res. Crit. Care Med., 151, 428-1433)。抗プロテアーゼおよび抗プロテアーゼと複合体化したNEは、肺癌領域で増大している(Marchandise et al., 1989, Eur. Resp. J. 2, 623-629)。近年の研究により、NE遺伝子のプロモーター領域における多型は、肺癌の発症に関連していることが示された(Taniguchi et al., 2002, Clin. Cancer Res., 8, 1115-1120)。
【0006】
実験動物におけるエンドトキシンによって引き起こされる急性肺傷害は、NEレベルの上昇に関連している(Kawabata, et al., 1999, Am. J. Resp. Crit. Care, 161, 2013-2018)。マウスにおけるリポ多糖気管内注射によって引き起こされる急性肺炎症は、気管支肺胞洗浄液中のNE活性を上昇させ、またこれはNE阻害物質によって著しく阻害されることが示されている(Fujie et al., 1999, Eur. J. Pharmacol., 374, 117-125; Yasui, et al., 1995, Eur. Resp. J., 8, 1293-1299)。NEはまた、摘出され灌流されたウサギの肺において腫瘍壊死因子α(TNFα)および酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)によって引き起こされる急性肺傷害のモデルで観測される、好中球誘発肺微小血管透過性増大において、重要な役割を果たす(Miyazaki et al., 1998, Am. J. Respir. Crit. Care Med., 157, 89-94)。
【0007】
NEの機能はまた、モノクロタリン(monocrotoline)誘発肺血管壁肥厚および心肥大において示唆されている(Molteni et al., 1989, Biochemical Pharmacol. 38, 2411-2419)。セリンエラスターゼ阻害物質は、モノクロタリン(monocrotaline)誘発肺高血圧およびラットの肺動脈における修復を逆行させる(Cowan et al., 2000, Nature Medicine, 6, 698-702)。近年の研究により、セリンエラスターゼ、すなわちNEもしくは血管性エラスターゼが、モルモットにおける肺小動脈の喫煙誘発製筋肉化(muscularisation)に重要であることが示された(Wright et al., 2002, Am. J. Respir. Crit. Care Med., 166, 954-960)。
【0008】
NEは、実験的脳虚血損傷(Shimakura et al., 2000, Brain Research, 858, 55-60)、虚血−再灌流肺傷害(Kishima et al., 1998, Ann. Thorac. Surg. 65, 913-918)、およびラットの心臓の心筋虚血(Tiefenbacher et al., 1997, Eur. J. Physiol., 433, 563-570)において鍵となる役割を果たす。血漿中のヒトのNEレベルは、炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎において、正常値より有意に上昇している(Adeyemi et al., 1985, Gut, 26, 1306-1311)。さらに、NEはまた、リウマチ性関節炎の病因に関与すると考えられている(Adeyemi et al., 1986, Rheumatol. Int., 6, 57)。マウスにおけるコラーゲン誘発性関節炎の発症は、NE阻害物質によって抑制される(Kakimoto et al., 1995, Cellular Immunol. 165, 26-32)。
【0009】
従って、ヒトのNEは、最も強力な分解セリンプロテアーゼの一つとして知られており、そして種々の炎症性疾患に関係している。ヒトのNEの重要な内在性阻害物質は、α−アンチトリプシンである。ヒトのNEとアンチプロテアーゼの不均衡は、ヒトのNEを過剰生産し、非制御組織分解を起こすと考えられている。酸化剤(例えばタバコの煙)による不活性化によって、または遺伝的に十分な血清レベルを合成できないことに起因する、α−アンチトリプシンの利用可能性の低下によって、プロテアーゼ/アンチプロテアーゼの均衡は逆転し得る。ヒトのNEは、幾つかの疾患、例えば肺気腫、肺線維症、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、虚血性再灌流傷害、リウマチ性関節炎、および肺高血圧の促進もしくは増悪に関係する。
【0010】
本発明は、ヒトの好中球エラスターゼおよび同族のセリンプロテアーゼ(例えばプロテイナーゼ 3および膵臓エラスターゼ)の阻害剤であって、かつそのために治療に有用である、新規のキノキサリン誘導体を開示する。
【発明の開示】
【0011】
本発明の開示
本発明は、式(I):
【化1】

[式中、
は、H、ハロゲン、CN、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、COまたはCONRを表し;
は、フェニルを表すか、またはO、SおよびNから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロ芳香環を表し;
は、H、ハロゲン、C1−6アルキル、CN、C1−6アルコキシ、NO、NR1415、C1−3アルキル(1個以上のF原子によって置換されている)、またはC1−3アルコキシ(1個以上のF原子によって置換されている)を表し;
14およびR15は、独立して、HまたはC1−3アルキルを表し、該アルキルは、所望により1個以上のF原子によってさらに置換されており;
nは整数1、2または3を表し、そしてnが2または3を表すとき、それぞれのRは、独立して選択され;
は、HまたはC1−6アルキルを表し、該アルキルは、所望によりOHまたはC1−6アルコキシによってさらに置換されているか、
またはRおよびLは、結合して一体となり、その結果−NRLは、所望によりO、SおよびNR16から選択されるヘテロ原子をさらに1個含む、5員から7員のアザ環式環を表し;
Lは、結合、O、NR29またはC1−6アルキルを表し;該アルキルは、所望によりO、SおよびNR16から選択される1個のヘテロ原子を含み;そして該アルキルは、所望によりOHまたはOMeによってさらに置換されており;
【0012】
は、
i) フェニルまたはフェノキシ、
ii) O、SおよびNから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロ芳香環、
iii) C3−6飽和もしくは部分的に不飽和のシクロアルキル、または
iv) O、S(O)およびNR17から独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を含み、かつ所望によりさらに1個のカルボニル基を含むC4−7飽和もしくは部分的に不飽和の複素環式環、
から選択される単環式環系を表すか、または
は二環式環系を表し、2つの環のそれぞれは、
i) フェニル、
ii) O、SおよびNから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロ芳香環、
iii) C3−6飽和もしくは部分的に不飽和のシクロアルキル、または
iv) O、S(O)およびNR17から独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を含み、かつ所望によりさらに1個のカルボニル基を含むC4−7飽和もしくは部分的に不飽和の複素環式環、
から独立して選択され;そして
2つの環は、互いに縮合しているか、または直接結合しているかもしくはO、S(O)またはCHから選択されるリンカー基によって隔てられ、
該単環式もしくは二環式環系は、所望によりCN、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロゲン、NR1819、NO、OSO38、CO20、C(=NH)NH、C(O)NR2122、C(S)NR2324、SC(=NH)NH、NR31C(=NH)NH、S(O)25、SONR2627、C1−3アルコキシ(1個以上のF原子によって置換されている)、およびC1−3アルキル(SO39によってもしくは1個以上のF原子によって置換されている)から独立して選択される1から3個の置換基によってさらに置換されているか、または
Lが結合を表さないとき、GはまたHであってもよく;
p、q、sおよびtは、独立して、整数0、1または2を表し;
【0013】
およびRは、独立して、HまたはC1−6アルキルを表すか、または
NRは、一体として、所望によりO、SおよびNR28から選択されるさらに1個のヘテロ原子を含む5員から7員のアザ環式環を表し;
18およびR19は、独立して、H、C1−6アルキル、ホルミル、C2−6アルカノイル、S(O)32またはSONR3334を表し、該アルキルは、所望によりハロゲン、CN、C1−4アルコキシまたはCONR4142によってさらに置換されており;
25は、H、C1−6アルキルまたはC3−6シクロアルキルを表し、該アルキルは、所望によりOH、CN、CONR3536、CO37、OCOR40、C3−6シクロアルキル、C4−7飽和複素環式環(O、S(O)およびNR43から独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を含む)、およびフェニル、または5員もしくは6員のヘテロ芳香環(O、SおよびNから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む)から独立して選択される1個以上の置換基によってさらに置換されており、該芳香環は、所望によりハロゲン、CN、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、OH、CONR4445、CO46、S(O)25またはNHCOCHから独立して選択される1個以上の置換基によってさらに置換されており;
32は、H、C1−6アルキルまたはC3−6シクロアルキルを表し;
、R16、R17、R20、R21、R22、R23、R24、R26、R27、R28、R29、R31、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45およびR46は、独立して、HまたはC1−6アルキルを表す]の化合物、およびその薬学的に許容される塩を提供する。
【0014】
式(I)の化合物は、エナンチオマーおよび/または互変異性体の形態で存在し得る。全てのエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体、互変異性体、およびそれらの混合物は、本発明の範囲に含まれると理解されるべきである。
【0015】
異なる指定をしない限り、本明細書中で記載の“C1−6アルキル”という用語は、1から6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキルを表す。このような基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル、およびヘキシルを含む。“C1−3アルキル”および“C1−4アルキルという用語は、同様に解釈されるべきである。
【0016】
“1個以上のF原子によって置換されているC1−3アルキル”の例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、および3,3,3−トリフルオロプロピルを含む。
【0017】
異なる指定をしない限り、本明細書中で記載の“C1−6アルコキシ”という用語は、1から6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルキルに結合した酸素置換基を表す。該基の例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、およびt−ブトキシを含む。“C1−3アルコキシ”および“C1−4アルコキシ”という用語は、同様に解釈されるべきである。
【0018】
“1個以上のF原子によって置換されているC1−3アルコキシ”の例は、フルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、および3,3,3−トリフルオロプロポキシを含む。
【0019】
異なる指定をしない限り、本明細書中で記載の“C2−6アルカノイル”という用語は、1つのカルボニル基を介して分子に結合している、1から5個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルキルを表す。このような基の例は、アセチル、プロピオニル、およびピバロイルを含む。
【0020】
異なる指定をしない限り、本明細書中で記載の“ハロゲン”という用語は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を表す。
【0021】
O、SおよびNから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロ芳香環の例は、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、オキサジアゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、チアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリミジン、およびピラジンを含む。
【0022】
異なる指定をしない限り、本明細書中で記載の“C3−6飽和もしくは部分的に不飽和のシクロアルキル”という用語は、所望により1個以上の二重結合を含む3から6員の非芳香族性炭素環式環を表す。例は、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、およびシクロヘキセニルを含む。“5員もしくは6員の飽和もしくは部分的に不飽和のシクロアルキル環”という用語は、同様に解釈されるべきである。
【0023】
異なる指定をしない限り、本明細書中で記載の“O、S(O)およびNR17から独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を含み、かつ所望によりさらに1個のカルボニル基を含むC4−7飽和もしくは部分的に不飽和の複素環式環”という用語は、所望により1個以上の二重結合を含み、かつ所望により1個のカルボニル基を含む、4員から7員の非芳香族性複素環式環を表す。その例は、テトラヒドロフラン、チオラン 1,1−ジオキシド、テトラヒドロピラン、4−オキソ−4H−ピラン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリジン、1,3−ジオキソラン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ペルヒドロアゼピン、ピロリドン、およびピペリドンを含む。“O、S、およびNR13から選択される1個のヘテロ原子を含む5員もしくは6員の飽和もしくは部分的に不飽和の複素環式環”という用語は、同様に解釈されるべきである。
【0024】
“所望によりO、SおよびNR16から選択されるさらに1個のヘテロ原子を含む5員から7員のアザ環式環”の例は、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリンおよびピペラジンを含む。
【0025】
Lの定義において、“C1−6アルキル;該アルキルは、所望によりO、SおよびNR16から選択される1個のヘテロ原子を含む”は、1から6個の炭素原子の直鎖もしくは分枝鎖を含み、ここで、何れか2つの炭素原子は、所望によりO、SまたはNR16によって隔てられている。従って、この定義は、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ヘキサメチレン、エチルエチレン、−CHCHO−CH−、−CHCHO−CH−CH−、−CHCHS−および−CHCHNR16−を含む。
【0026】
2個の環が互いに縮合しているか、またはO、S(O)またはCHから選択されるリンカー基によって隔てられている二環式環系の例は、ビフェニル、チエニルフェニル、ピラゾリルフェニル、フェノキシフェニル、ナフチル、インダニル、キノリル、テトラヒドロキノリル、ベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、プリニル、イソキノリル、クロマニル、インデニル、キナゾリル、キノキサリル、クロマニル、イソクロマニル、3H−インドリル、1H−インダゾリル、キヌクリジル、テトラヒドロナフチル、ジヒドロベンゾフラニル、モルホリン−4−イルフェニル、1,3−ベンゾジオキソリル、1,1−ジオキシド−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾチエニル、2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシニルおよび3,4−ジヒドロ−イソクロメニルを含む。
【0027】
1つの態様において、式(I)におけるRは、Hを表す。
1つの態様において、式(I)におけるGは、フェニルまたはピリジルを表す。別の態様において、式(I)におけるGは、フェニルを表す。
【0028】
1つの態様において、式(I)におけるRは、ハロゲン、C1−6アルキル、CN、またはC1−3アルキル(1個以上のF原子によって置換されている)を表す。別の態様において、式(I)におけるRは、Cl、CH、CNまたはCFを表す。
【0029】
1つの態様においてnは整数1を表す。
別の態様において、式(I)におけるGはフェニルを表し、RはCFを表し、そしてnは整数1を表す。
【0030】
1つの態様において、RはHを表す。
1つの態様において、LはC1−6アルキルを表す。別の態様において、Lは−CH−を表す。別の態様において、LはNR29を表し、そしてR29はHを表す。
【0031】
1つの態様において、Gは、
i) フェニル;
ii) O、SおよびNから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む、5員もしくは6員のヘテロ芳香環;
iii) C3−6飽和もしくは部分的に不飽和のシクロアルキル;または
iv) O、S(O)およびNR17から独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を含み、かつ所望によりさらに1個のカルボニル基を含む、C4−7飽和もしくは部分的に不飽和の複素環式環;
から選択される、所望により置換されている単環式環系を表す。
【0032】
別の態様において、Gは、所望により置換されているフェニルを表す。別の態様において、Gは、OSO38、S(O)25、SONR2627、NR1819(ここで、R18およびR19の少なくとも一方が、S(O)32またはSONR3334を表す)、またはC1−3アルキル(SO39によって置換されている)によって置換されているフェニルを表す。
【0033】
別の態様において、Gは、所望により置換されている二環式環系を表し、ここで、2個の環は、それぞれ、
i) フェニル;
ii) O、SおよびNから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロ芳香環;
iii) C3−6飽和もしくは部分的に不飽和のシクロアルキル;または
iv) O、S(O)およびNR17から独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を含み、かつ所望によりさらに1個のカルボニル基を含む、C4−7飽和もしくは部分的に不飽和の複素環式環;
から独立して選択され、そして2つの環は、互いに縮合しているか、または直接結合して一体となっているか、またはO、S(O)またはCHから選択されるリンカー基によって隔てられている。
【0034】
1つの態様において、
式(I)におけるRはHを表し;
はフェニルを表し;
は、ハロゲン、C1−6アルキル、CN、またはC1−3アルキル(1個以上のF原子によって置換されている)を表し;
はHを表し;
LはC1−6アルキルを表し;そして
は、
i) フェニル;
ii) O、SおよびNから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロ芳香環;
iii) C3−6飽和もしくは部分的に不飽和のシクロアルキル;または
iv) O、S(O)およびNR17から独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を含み、かつ所望によりさらに1個のカルボニル基を含む、C4−7飽和もしくは部分的に不飽和の複素環式環;
から選択される、所望により置換されている単環式環系を表す。
【0035】
別の態様において、本発明は、特に、実施例に記載された通りの化合物またはその遊離塩基もしくは薬学的に許容される塩全てを提供する。特定の化合物は、
N−(4−クロロベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
4−(3−シアノフェニル)−N−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
4−(3−クロロフェニル)−N−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
4−(3−メチルフェニル)−N−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(シクロヘキシルメチル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
3−オキソ−N−(ピリジン−3−イルメチル)−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
3−オキソ−N'−フェニル−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボヒドラジド;
N−(3−ブロモベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(4−ブロモベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
3−オキソ−N−[(2R)−2−フェニルシクロプロピル]−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−[2−(3−クロロフェニル)エチル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−[(4−シアノシクロヘキシル)メチル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(1−ナフチルメチル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(4−メチルベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(2,4−ジクロロベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(4−メトキシベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
【0036】
N−(2−クロロ−4−フルオロベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(3,4−ジクロロベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−[2−(3−メトキシフェニル)エチル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−[1−(4−クロロフェニル)エチル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
3−オキソ−N−[3−(2−オキソピロリジン−1−イル)プロピル]−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
3−オキソ−N−(ピリジン−4−イルメチル)−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イルメチル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
4−{[({3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−イル}カルボニル)アミノ]メチル}安息香酸メチル;
3−オキソ−N−(4−フェノキシベンジル)−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−{2−[4−(アミノスルホニル)フェニル]エチル}−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
3−オキソ−N−[4−(1H−ピラゾール−1−イル)ベンジル]−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
3−オキソ−N−フェノキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−{[3−(4−メトキシフェニル)イソオキサゾール−5−イル]メチル}−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(3−アゼパン−1−イルプロピル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−[4−(アセチルアミノ)ベンジル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(4−シアノベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
N'−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボヒドラジド;
N−[4−(メチルスルホニル)フェノキシ]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド;
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0037】
本発明は、塩、特に酸付加塩の形態の式(I)の化合物を含む。適切な塩は、有機酸と、また無機酸と形成される塩の両方を含む。該酸付加塩は、通常、薬学的に許容されるが、薬学的に許容されない酸の塩は、対象の化合物の製造および精製に有用であり得る。従って、望ましい塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、およびベンゼンスルホン酸から形成される塩を含む。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、式(I)の化合物の製造方法であって、式(II):
【化2】

[式中、R、R、G、およびnは式(I)で定義した通りであり、そしてLは脱離基を表す]の化合物を、式(III):
【化3】

[式中、R、G、およびLは式(I)で定義した通りである]のアミンもしくはその塩と反応させること;
そして望ましいならば、または必要であれば、
得られた式(I)の化合物もしくはその別の塩をその薬学的に許容される塩に変換すること;または
式(I)の1つの化合物を式(I)の他の化合物に変換すること;
そして望ましいならば、
得られた式(I)の化合物をその光学異性体に変換すること:
を含む方法を提供する。
【0039】
該工程は、適切な温度で、一般的には0℃から溶媒の沸点の間の温度で、適切な溶媒(例えばジクロロメタンもしくはNMP(N−メチルピロリジノン))中で行われる。該工程は、所望により、塩基および/またはカップリング試薬(例えばHATU、HOAT、HOBTもしくはDIEA)の存在下で行われる。適切な脱離基LはOHおよびハロゲンを含み、特にOHである。
【0040】
がOHを表す式(II)の化合物は、当業者にとって容易に明らかである方法を用いて製造され得る。例えば Hyrayama Takashi et al., J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1987, 75-84 を参照のこと。
【0041】
式(I)の化合物の塩は、遊離塩基またはその塩、エナンチオマー、互変異性体、もしくは保護された誘導体を、1当量以上の適切な酸と反応させることによって形成され得る。該反応は、塩が不溶な溶媒もしくは媒体中で行っても塩が可溶な溶媒中で行ってもよく、次に真空でのもしくは凍結乾燥による溶媒の除去が行われてもよい。適切な溶媒は、例えば、水、ジオキサン、エタノール、2−プロパノール、テトラヒドロフランもしくはジエチルエーテル、またはそれらの混合物を含む。該反応は、複分解工程であってもよく、またイオン交換樹脂上で行ってもよい。
【0042】
式(I)の化合物およびその中間体化合物は、そのままで、または保護された形態で製造され得る。官能基の保護および脱保護は、例えば‘Protective Groups in Organic Chemistry', edited by J. W. F. McOmie, Plenum Press (1973) および ‘Protective Groups in Organic Synthesis', 3rd edition, T. W. Greene & P. G. M. Wuts, Wiley-Interscience (1999) で記載されている。
【0043】
本発明の化合物および中間体は、その反応混合物から単離されてもよく、必要であれば、標準的な方法を用いることによってさらに精製されてもよい。
【0044】
式(I)の化合物は、エナンチオマーもしくはジアステレオマーの形態で、またはそれらの混合物で存在することができ、これらの全ては本発明の範囲に含まれる。種々の光学異性体は、慣用の方法、例えば分別結晶もしくはHPLCを用いて、本化合物のラセミ混合物の分割によって単離され得る。あるいは、個々のエナンチオマーは、適切な光学活性な出発物質をラセミ化が起こらない反応条件下で反応させることによって製造され得る。
【0045】
中間体化合物はまた、エナンチオマーの形態で存在することができ、そして精製したエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体、またはそれらの混合物として使用されてもよい。
【0046】
本発明のさらなる態様に従って、我々は、医薬として使用するための式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0047】
式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩は、それらが動物に薬理活性を有するために有用である。式(I)の化合物は、医薬として、特にヒトの好中球エラスターゼおよび同種セリンプロテアーゼ(例えばプロテイナーゼ 3および膵臓エラスターゼ)のモジュレーターとして活性を有し、そしてそれ自体が治療に有用であると予測される。式(I)の化合物は、特にヒトの好中球エラスターゼの阻害剤として有用である。従って、それらは、炎症性疾患および状態の処置もしくは予防に用いられ得る。
【0048】
これらの状態の例は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および虚血性再灌流傷害である。本発明の化合物はまた、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、心筋梗塞;肝硬変を含む肝臓疾患(これらに制限されない)、全身性エリテマトーデス、Tリンパ球、Bリンパ球、胸腺細胞を含むリンパ球由来炎症性疾患(これらに制限されない);自己免疫疾患、骨髄;関節の炎症(特にリウマチ性関節炎、骨関節炎、および痛風);胃腸管の炎症(特に炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、膵炎、および胃炎);皮膚の炎症(特に乾癬、湿疹、皮膚炎);腫瘍転移もしくは浸潤;細胞外マトリックスの非制御破壊に関連する疾患、例えば骨関節炎;骨吸収疾患(例えば骨粗鬆症およびパジェット病);異常血管新生に関連する疾患;糖尿病、歯周病(例えば歯肉炎)、角膜の潰瘍形成、皮膚の潰瘍形成、手術後状態(例えば結腸吻合)、および皮膚創傷治癒に関連するコラーゲン構築増加;中枢および末梢神経系の脱髄性疾患(例えば多発性硬化症);加齢関連疾患、例えば認知症、心血管由来の炎症性疾患;肉芽腫性疾患;腎炎および多発性動脈炎を含む腎疾患(これらに制限されない);癌;肺高血圧、摂取した毒物、皮膚接触、刺傷、咬傷;喘息;鼻炎;HIV疾患の進行を引き起こすおよび/または広げる内因性および/または外因性生物学的刺激薬の調節に;ヒトの臓器を含む臓器移植(これに制限されない)における臓器拒絶反応の影響を最小にするために;およびプロテイナーゼ阻害物質の補充療法のために有用であり得る。
【0049】
従って、本発明の別の態様は、好中球エラスターゼ活性の阻害が有益である疾患もしくは状態を処置するもしくは予防する医薬の製造における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用;および好中球エラスターゼ活性の阻害が有益である疾患もしくは状態を処置するもしくはそのリスクを軽減する方法であって、該疾患もしくは状態に罹患しているもしくはそのリスクがあるヒトに、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を治療有効量で投与することを含む方法を提供する。
【0050】
別の態様において、本発明は、炎症性疾患もしくは状態を処置するもしくは予防する医薬の製造における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用;および炎症性疾患もしくは状態を処置するもしくはそのリスクを軽減する方法であって、該疾患もしくは状態に罹患しているもしくはそのリスクがあるヒトに、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を治療有効量で投与することを含む方法を提供する。
【0051】
特に、本発明の化合物は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺高血圧、喘息、鼻炎、虚血性再灌流傷害、リウマチ性関節炎、骨関節炎、癌、アテローム性動脈硬化症、および胃粘膜傷害の処置に用いられ得る。
【0052】
予防は、特に、対象の疾患もしくは状態の病歴を有するか、他の原因でそのリスクが増大していると考えられるヒトの処置に関連すると予測される。特定の疾患もしくは状態に罹患するリスクがあるヒトは、一般的に、該疾患もしくは状態の家族病歴があるヒト、または該疾患もしくは状態に特にかかりやすいと遺伝子試験もしくはスクリーニングによって特定されたヒトを含む。
【0053】
上記の治療的適応において、投与される化合物の用量は、用いられる化合物、処置される疾患、投与方法、患者の年齢、体重および性別によって決まる。このような因子は、主治医によって決定され得る。しかし、一般的に、本化合物を0.1mg/kgから100mg/kg(活性成分として測定)の間の1日用量でヒトに投与した場合に、満足のいく結果が得られる。
【0054】
式(I)の化合物は、それ自身で、または薬学的に許容される希釈剤、アジュバント、もしくは担体と組み合わせた、本発明の化合物を含む適切な医薬製剤の形態で用いられ得る。特に望ましいのは、副作用、例えばアレルギー反応を起こし得る物質を含まない組成物である。適切な医薬製剤の選択および製造の慣用の手順は、例えば“Pharmaceuticals - The Science of Dosage Form Designs”, M. E. Aulton, Churchill Livingstone, 1988 に記載されている。
【0055】
本発明によって、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体と混合した、好ましくは95重量%未満、より好ましくは50重量%未満の式(I)の化合物を含む医薬製剤が提供される。
我々はまた、該成分を混合することを含むこのような医薬製剤の製造方法を提供する。
【0056】
本化合物は、溶液、懸濁液、HFAエアゾール、もしくは乾燥粉末製剤(例えば Turbuhaler(登録商標)として知られる吸入装置における製剤)の形態で、局所に(例えば肺におよび/または気道に);または、例えば、錠剤、丸薬、カプセル剤、シロップ、粉剤、もしくは顆粒の形態で、経口投与によって;または、例えば滅菌処理された非経腸用溶液もしくは懸濁液の形態で、非経腸投与によって;または、例えば坐剤の形態で直腸投与によって、全身に投与され得る。
【0057】
本発明の化合物の乾燥粉末製剤および加圧HFAエアゾールは、経口もしくは経鼻吸入によって投与されてもよい。吸入のために、本化合物は、望ましくは微粉砕される。微粉砕した化合物は、好ましくは、10μm未満の質量中位径を有し、分散剤(例えばC−C20脂肪酸もしくはその塩(例えばオレイン酸)、胆汁酸塩、リン脂質、アルキル サッカライド、過フルオロ化もしくはポリエトキシ化界面活性剤、または他の薬学的に許容される分散剤)の助けで噴射剤混合物中に懸濁されてもよい。
【0058】
本発明の化合物はまた、乾燥粉末吸入器によって投与されてもよい。吸入器は、単回もしくは多回投与吸入器であってもよく、呼吸作動型乾燥粉末吸入器であってもよい。
【0059】
微粉砕された化合物を、担体物質、例えばモノ−、ジ−、もしくはポリサッカライド、糖アルコール、もしくは他のポリオールと混合することもできる。適切な担体は、糖、例えばラクトース、グルコース、ラフィノース、メレジトース、ラクチトール、マルチトール、トレハロース、ショ糖、マンニトール;および澱粉である。あるいは、微粉砕された化合物は、別の物質によってコートされてもよい。粉末混合物はまた、そのそれぞれに望ましい用量の活性化合物を含む硬ゼラチンカプセルに入れてもよい。
【0060】
また、微粉砕された粉末を吸入手順の間に砕ける球に加工することもできる。球にした粉末は、患者によって吸入される望ましい用量で投与単位が測定される、例えば Turbuhale として知られる多回吸入器のリザーバーに充填されてもよい。この系では、活性化合物は、担体物質と共に、または坦体物質なしに、患者に投与される。
【0061】
経口投与のために、活性化合物をアジュバントもしくは担体(例えば乳糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール;澱粉、例えばじゃがいも澱粉、とうもろこし澱粉、またはアミロペクチン;セルロース誘導体)、結合剤(例えばゼラチンもしくはポリビニルピロリドン)、および/または滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、ろう、パラフィン)などと混合し、次に錠剤に打錠してもよい。コートされた錠剤が必要ならば、例えばアラビアゴム、ゼラチン、タルク、および二酸化チタンなどを含み得る濃縮糖溶液で、上記のように製造された核をコートしてもよい。あるいは、容易に揮発する有機溶媒に溶解した適切なポリマーで、錠剤をコートしてもよい。
【0062】
軟ゼラチンカプセルの製造のために、本化合物を、例えばベジタブルオイルもしくはポリエチレングリコールと混合してもよい。硬ゼラチンカプセルは、錠剤のための上記の何れかの賦形剤を用いた本化合物の顆粒を含んでもよい。また、本薬物の液体製剤もしくは半固体製剤は、硬ゼラチンカプセルに充填されてもよい。
【0063】
経口適用のための液体製剤は、例えば本化合物ならびに残部が糖およびエタノール、水、グリセロールおよびプロピレングリコールの混合物からなる溶液のようなシロップまたは懸濁剤の形態であってもよい。所望により、このような液体製剤は、着色料、風味剤、粘稠剤としてのサッカリンおよび/またはカルボキシメチルセルロール、または当業者に既知の他の賦形剤を含んでもよい。
【0064】
本発明の化合物はまた、上記の状態の処置に用いられる他の化合物と組み合わせて投与されてもよい。
下記の実施例は、例示を意図しており、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0065】
一般的な手順
H−NMRスペクトルは、Varian Mercury-VX 300 MHz instrument で測定した。ジメチルスルホキシド−dのピークの中央(δH 2.50ppm)を内部標準として用いた。カラムクロマトグラフィーをシリカゲル(0.040−0.063mm, Merck)を用いて行った。異なる指定をしない限り、出発物質は市販されている。全ての溶媒および市販の試薬は、研究室グレードであり、購入品をそのまま用いた。異なる指定をしない限り、有機溶液は無水NaSOを用いて乾燥した。
LC−MS条件 装置:Agilent 1100;カラム:Waters Symmetry 2.1×30mm; C18 3.5μm;マス:APCI;流速 0.7ml/分;波長 254nm;溶媒A:水+0.1% TFA;溶媒B:アセトニトリル+0.1% TFA;グラジエント 15−95%/B 8分, 95% B 1分;保持時間(RT)は分で記録している。
【0066】
下記の略号を用いる。
【表1】

【実施例】
【0067】
実施例1.1
N−(4−クロロベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
a) 3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボン酸
表題化合物を、Hyrayama Takashi et al, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1987, 75-84 によって記載された一般法を用いて製造した。
1H NMR (DMSO-d6): δ 14.03 (1H, s); 8.06-7.80 (5H, m); 7.56 (1H, t); 7.44 (1H, t); 6.62 (1H, d).
【0068】
b) N−(4−クロロベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
NMP(3ml)中の3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボン酸(94mg, 0.28mmol)、HATU(122mg, 0.32mmol)、HOAT(44mg, 0.32mmol)、およびDIEA(138μl, 0.78mmol)の混合物を、NMP(2ml)中の4−クロロベンジルアミン(40mg, 0.28mmol)に加えた。反応混合物を18時間撹拌した。反応物を水(8ml)で希釈し、分取HPLCを用いて精製し、表題化合物を得た(63mg, 49%)。
1H NMR (DMSO-d6): δ 9.35 (1H, t); 8.04-7.90 (4H, m); 7.80 (1H, d); 7.57 (1H, t); 7.45 (1H, t); 7.41 (2H, s); 6.62 (1H, d); 4.51 (1H, d).
【0069】
実施例1.2
4−(3−シアノフェニル)−N−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
a) 4−(3−シアノフェニル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボン酸
表題化合物を Hyrayama Takashi et al, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1987, 75-84 に記載された一般法を用いて製造した。
1H NMR (DMSO-d6): δ 14.04 (1H, s); 8.11 (2H, m); 7.95 (1H, d); 7.89 (2H, m); 7.56 (1H, t); 7.45 (1H, t); 6.65 (1H, d).
【0070】
b) 4−(3−シアノフェニル)−N−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
表題化合物を実施例1.1に記載された方法と類似する方法によって製造した。
1H NMR (DMSO-d6): δ 9.45 (1H, t); 8.11 (2H, dt); 7.99 (1H, dd); 7.94-7.82 (4H, m); 7.64 (2H, d); 7.57 (1H, dt); 7.46 (1H, dt); 6.68 (1H, d); 4.63 (2H, d); 3.20 (3H, s).
【0071】
実施例1.3
4−(3−クロロフェニル)−N−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
a) 4−(3−クロロフェニル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボン酸
表題化合物を、Hyrayama Takashi et al, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1987, 75-84 に記載された一般法を用いて製造した。
1H NMR (DMSO-d6): δ 14.04 (1H, s); 7.94 (1H, d); 7.70 (3H, m); 7.56 (1H, t); 7.52-7.38 (2H, t); 6.66 (1H, d).
【0072】
b) 4−(3−クロロフェニル)−N−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
表題化合物を、実施例1.1に記載された方法と類似の方法によって製造した。
1H NMR (DMSO-d6): δ 9.45 (1H, t); 7.97 (1H, d); 7.91 (2H, d); 7.77-7.51 (6H, m); 7.45 (2H, m); 6.68 (1H, d); 4.63 (2H, d); 3.20 (3H, s).
【0073】
実施例1.4
4−(3−メチルフェニル)−N−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
a) 4−(3−メチルフェニル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボン酸
表題化合物を、Hyrayama Takashi et al, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1987, 75-84 に記載された一般法を用いて製造した。
1H NMR (DMSO-d6): δ 14.04 (1H, s); 7.93 (1H, dd); 7.55 (2H, m); 7.43 (2H, m); 7.25 (2H, d); 6.64 (1H, d); 2.41 (3H, s).
【0074】
b) 4−(3−メチルフェニル)−N−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
表題化合物を、実施例1.1に記載された方法と類似の方法によって製造した。
1H NMR (DMSO-d6): δ 9.46 (1H, t); 7.96 (1H, d); 7.91 (2H, d); 7.65 (2H, d); 7.56 (2H, t); 7.44 (2H, m); 7.22 (2H, d); 6.64 (1H, d); 4.62 (2H, d); 3.20 (3H, s); 2.41 (3H, s).
【0075】
適切なアミンもしくはその塩を用いて、下記の化合物を実施例1.1に記載された方法と類似の方法によって製造した。
【0076】
実施例2.1
N−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
1H NMR (DMSO-d6): δ 9.44 (1H, t); 8.04-7.87 (6H, m); 7.81 (1H, d); 7.64 (2H, d); 7.57 (1H, dt); 7.46 (1H, dt); 6.64 (1H, d); 4.63 (1H, d); 3.20 (3H, s).
【0077】
実施例2.2
N−(シクロヘキシルメチル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.76分, m/z 430.2 [MH+].
【0078】
実施例2.3
N−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 4.89分, m/z 498.2 [MH+].
【0079】
実施例2.4
3−オキソ−N−(ピリジン−3−イルメチル)−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 3.09分, m/z 425.1 [MH+].
【0080】
実施例2.5
3−オキソ−N'−フェニル−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボヒドラジド
LC-MS RT: 4.90分, m/z 425.1 [MH+].
【0081】
実施例2.6
N−(3−ブロモベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.63分, m/z 502.1 [MH+].
【0082】
実施例2.7
N−(4−ブロモベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.68分, m/z 502.1 [MH+].
【0083】
実施例2.8
3−オキソ−N−[(2R)−2−フェニルシクロプロピル]−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.57分, m/z 450.2 [MH+].
【0084】
実施例2.9
N−[2−(3−クロロフェニル)エチル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.68分, m/z 472.1 [MH+].
【0085】
実施例2.10
N−[(4−シアノシクロヘキシル)メチル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 4.79分, m/z 455.2 [MH+].
【0086】
実施例2.11
N−(1−ナフチルメチル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.71分, m/z 474.2 [MH+].
【0087】
実施例2.12
N−(4−メチルベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.47分, m/z 438.2 [MH+].
【0088】
実施例2.13
N−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.05分, m/z 468.1 [MH+].
【0089】
実施例2.14
N−(2,4−ジクロロベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.98分, m/z 492.1 [MH+].
【0090】
実施例2.15
N−(4−メトキシベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.11分, m/z 454.2 [MH+].
【0091】
実施例2.16
N−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.38分, m/z 460.1 [MH+].
【0092】
実施例2.17
N−(2−クロロ−4−フルオロベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
APCI-MS m/z: 476.3 [MH+].
【0093】
実施例2.18
N−(3,4−ジクロロベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
APCI-MS m/z: 492.2 [MH+].
【0094】
実施例2.19
N−[2−(3−メトキシフェニル)エチル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 6.80分, m/z 468.4 [MH+].
【0095】
実施例2.20
N−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
APCI-MS m/z: 456.3 [MH+].
【0096】
実施例2.21
N−[1−(4−クロロフェニル)エチル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
APCI-MS m/z: 472.3 [MH+].
【0097】
実施例2.22
3−オキソ−N−[3−(2−オキソピロリジン−1−イル)プロピル]−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
APCI-MS m/z: 459.3 [MH+].
【0098】
実施例2.23
3−オキソ−N−(ピリジン−4−イルメチル)−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 3.12分, m/z 425.1 [MH+].
【0099】
実施例2.24
N−(2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イルメチル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.10分, m/z 466.2 [MH+].
【0100】
実施例2.25
4−{[({3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−イル}カルボニル)アミノ]メチル}安息香酸メチル
LC-MS RT: 5.08分, m/z 482.2 [MH+].
【0101】
実施例2.26
3−オキソ−N−(4−フェノキシベンジル)−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
APCI-MS m/z: 516.3 [MH+].
【0102】
実施例2.27
N−{2−[4−(アミノスルホニル)フェニル]エチル}−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
APCI-MS m/z: 517.3 [MH+].
【0103】
実施例2.28
3−オキソ−N−[4−(1H−ピラゾール−1−イル)ベンジル]−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 4.99分, m/z 490.2 [MH+].
【0104】
実施例2.29
3−オキソ−N−フェノキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.11分, m/z 426.1 [MH+].
【0105】
実施例2.30
N−{[3−(4−メトキシフェニル)イソオキサゾール−5−イル]メチル}−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 5.40分, m/z 521.2 [MH+].
【0106】
実施例2.31
N−(3−アゼパン−1−イルプロピル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 3.50分, m/z 473.3 [MH+].
【0107】
実施例2.32
N−[4−(アセチルアミノ)ベンジル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 4.20分, m/z 481.2 [MH+].
【0108】
実施例2.33
N−(4−シアノベンジル)−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 4.94分, m/z 449.1 [MH+].
【0109】
実施例2.34
N'−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボヒドラジド
LC-MS RT: 4.31分, m/z 503.1 [MH+].
【0110】
実施例2.35
N−[4−(メチルスルホニル)フェノキシ]−3−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,4−ジヒドロキノキサリン−2−カルボキサミド
LC-MS RT: 4.53分, m/z 504.1 [MH+].
【0111】
スクリーニング
ヒトの好中球エラスターゼ消光FRETアッセイ
このアッセイは、血清から精製されたヒトの好中球エラスターゼ(HNE)(Calbiochem art. 324681; Ref. Baugh, R.J. et al., 1976, Biochemistry. 15, 836-841)を用いる。HNEは、−20℃で、30% グリセロールを加えた50mM NaOAc、200mM NaCl(pH 5.5)中に保存した。用いられるプロテアーゼ基質は、Elastase Substrate V Fluorogenic, MeOSuc-AAPV-AMC (Calbiochem art. 324740; Ref. Castillo, M.J. et al., 1979, Anal. Biochem. 99, 53-64)であった。基質は、−20℃で、DMSO中に保存した。アッセイの追加は以下の通りであった:100% DMSO中の試験化合物およびコントロールを1μL、黒色96ウェル平底プレート(Greiner 655076)に加え、次に0.01% Triton X-100 を含むアッセイ緩衝液中のHNEを30μL加えた。アッセイ緩衝液の構成は、100mM Tris(pH 7.5)および500mM NaClであった。酵素および化合物を、室温で15分間インキュベートした。次にアッセイ緩衝液中の基質を30μl加えた。室温で30分インキュベートした後に、停止溶液(140mM 酢酸、200mM モノクロロ酢酸ナトリウム、60mM 酢酸ナトリウム, pH 4.3)を60μl添加することによってアッセイを停止した。蛍光を、Wallac 1420 Victor 2 instrumentで、設定:励起 380nm, 放出 460nmで測定した。IC50値を Xlfit curve fitting using model 205 を用いて決定した。
【0112】
上記のスクリーニングで試験し、実施例の化合物は、30μM未満のヒトの好中球エラスターゼ活性の阻害についてのIC50値を得た。このことは、本発明の化合物が、有用な治療的性質を有すると期待されることを示している。試験結果を下記の表に示す。
【0113】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
は、H、ハロゲン、CN、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、COまたはCONRを表し;
は、フェニルを表すか、またはO、SおよびNから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロ芳香環を表し;
は、H、ハロゲン、C1−6アルキル、CN、C1−6アルコキシ、NO、NR1415、C1−3アルキル(1個以上のF原子によって置換されている)、またはC1−3アルコキシ(1個以上のF原子によって置換されている)を表し;
14およびR15は、独立して、HまたはC1−3アルキルを表し、該アルキルは、所望により1個以上のF原子によってさらに置換されており;
nは整数1、2または3を表し、そしてnが2または3を表すとき、それぞれのRは、独立して選択され;
は、HまたはC1−6アルキルを表し、該アルキルは、所望によりOHまたはC1−6アルコキシによってさらに置換されているか、
またはRおよびLは、結合して一体となり、その結果−NRLは、所望によりO、SおよびNR16から選択されるヘテロ原子をさらに1個含む、5員から7員のアザ環式環を表し;
Lは、結合、O、NR29またはC1−6アルキルを表し;該アルキルは、所望によりO、SおよびNR16から選択される1個のヘテロ原子を含み;そして該アルキルは、所望によりOHまたはOMeによってさらに置換されており;
は、
i) フェニルまたはフェノキシ、
ii) O、SおよびNから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロ芳香環、
iii) C3−6飽和もしくは部分的に不飽和のシクロアルキル、または
iv) O、S(O)およびNR17から独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を含み、かつ所望によりさらに1個のカルボニル基を含むC4−7飽和もしくは部分的に不飽和の複素環式環、
から選択される単環式環系を表すか、または
は二環式環系を表し、2つの環のそれぞれは、
i) フェニル、
ii) O、SおよびNから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロ芳香環、
iii) C3−6飽和もしくは部分的に不飽和のシクロアルキル、または
iv) O、S(O)およびNR17から独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を含み、かつ所望によりさらに1個のカルボニル基を含むC4−7飽和もしくは部分的に不飽和の複素環式環、
から独立して選択され;そして
2つの環は、互いに縮合しているか、または直接結合しているかもしくはO、S(O)またはCHから選択されるリンカー基によって隔てられ、
該単環式もしくは二環式環系は、所望によりCN、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロゲン、NR1819、NO、OSO38、CO20、C(=NH)NH、C(O)NR2122、C(S)NR2324、SC(=NH)NH、NR31C(=NH)NH、S(O)25、SONR2627、C1−3アルコキシ(1個以上のF原子によって置換されている)、およびC1−3アルキル(SO39によってもしくは1個以上のF原子によって置換されている)から独立して選択される1から3個の置換基によってさらに置換されているか、または
Lが結合を表さないとき、GはまたHであってもよく;
p、q、sおよびtは、独立して、整数0、1または2を表し;
およびRは、独立して、HまたはC1−6アルキルを表すか、または
NRは、一体として、所望によりO、SおよびNR28から選択されるさらに1個のヘテロ原子を含む5員から7員のアザ環式環を表し;
18およびR19は、独立して、H、C1−6アルキル、ホルミル、C2−6アルカノイル、S(O)32またはSONR3334を表し、該アルキルは、所望によりハロゲン、CN、C1−4アルコキシまたはCONR4142によってさらに置換されており;
25は、H、C1−6アルキルまたはC3−6シクロアルキルを表し、該アルキルは、所望によりOH、CN、CONR3536、CO37、OCOR40、C3−6シクロアルキル、C4−7飽和複素環式環(O、S(O)およびNR43から独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を含む)、およびフェニル、または5員もしくは6員のヘテロ芳香環(O、SおよびNから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含む)から独立して選択される1個以上の置換基によってさらに置換されており、該芳香環は、所望によりハロゲン、CN、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、OH、CONR4445、CO46、S(O)25またはNHCOCHから独立して選択される1個以上の置換基によってさらに置換されており;
32は、H、C1−6アルキルまたはC3−6シクロアルキルを表し;
、R16、R17、R20、R21、R22、R23、R24、R26、R27、R28、R29、R31、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45およびR46は、独立して、HまたはC1−6アルキルを表す]の化合物、およびその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
がフェニルを表す、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
がHを表す、請求項1もしくは請求項2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
が、Cl、CH、CNまたはCFを表す、請求項1から3の何れか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
医薬として使用するための、請求項1から4の何れか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
所望により薬学的に許容される希釈剤もしくは担体と混合した、請求項1から4の何れか1項に定義した式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項7】
好中球エラスターゼ活性の阻害が有益であるヒトの疾患もしくは状態を処置するもしくはそのリスクを軽減する方法であって、該疾患もしくは状態に罹患しているもしくは罹患しやすいヒトに、請求項1から4の何れか1項に定義した式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を治療有効量で投与することを含む方法。
【請求項8】
好中球エラスターゼ活性の阻害が有益であるヒトの疾患もしくは状態の処置もしくは予防のための医薬の製造における、請求項1から4の何れか1項に定義した式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項9】
炎症性疾患もしくは状態の処置もしくは予防のための医薬の製造における、請求項1から4の何れか1項に定義した式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項10】
請求項1から4の何れか1項に定義した式(I)の化合物、およびその光学異性体、ラセミ体、および互変異性体、およびそれらの薬学的に許容される塩を製造する方法であって、式(II):
【化2】

[式中、R、R、Gおよびnは請求項1で定義した通りであり、そしてLは脱離基を表す]の化合物を、式(III):
【化3】

[式中、R、GおよびLは請求項1で定義した通りである]のアミンまたはその塩と反応させること;
そして望ましいならば、または必要であれば、
得られた式(I)の化合物もしくはその別の塩をその薬学的に許容される塩に変換すること;または
式(I)の1つの化合物を式(I)の他の化合物に変換すること;
そして望ましいならば、
得られた式(I)の化合物をその光学異性体に変換すること;
を含む方法。

【公表番号】特表2007−504127(P2007−504127A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524602(P2006−524602)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001225
【国際公開番号】WO2005/021512
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】