説明

始動発電システム及び始動発電機

エンジン始動時にはスタータモータとして機能し、エンジンの始動後は発電機として機能する始動発電機1を有する始動発電システムにおいて、始動発電機1は、複数個の突極16が形成されたステータコア14と、突極16mに巻装されモータ時に使用されるモータ用コイル21と、モータ用コイル21とは異なる突極16gに巻装され発電時に使用される単相の発電用コイル22とを備える固定子3を備える。固定子3の外側には、エンジンのクランクシャフトに接続された回転子2が回転自在に配設される。回転子2には、複数個の界磁用マグネット4が周方向に沿って取り付けられる。モータ用コイル21にはモータドライバが、発電用コイル22にはオープンレギュレータが接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、モータ及び発電機として機能する始動発電機を備えた小型二輪車用エンジンや汎用エンジン等の始動発電システムに関する。
【背景技術】
モータとジェネレータは、回転電機としての基本構成が共通しているため、両機能の兼用機も多く存在する。例えば、小型二輪車やエンジン発電機等においては、エンジン起動用のスタータモータと、エンジンによって駆動される発電用のジェネレータとを兼用した始動・発電兼用機である始動発電機が多く用いられている。このような始動発電機は、モータ駆動用のドライバと、発電制御用のレギュレータを伴った始動発電システムを形成しており、エンジン制御用等に設けられたCPUによってその動作が制御される。
ところが、このような始動発電システムでは、始動発電機においてモータ用と発電用のコイルを共用すると、モータとして機能するとき(以下、モータ時と称す)と発電機として機能するとき(以下、発電時と称す)の性能のバランスが取りづらいという問題がある。エンジン始動用のモータと、エンジンにて駆動されバッテリの充電等を行う発電機とでは求められる性能に差があり、共用コイルによりこれらを高いレベルで両立させることは非常に難しい。始動発電システムではエンジンを始動させることが第1命題であり、これを優先してモータ性能を重視した設計を行わざるを得ない。このため、始動発電システムでは、始動発電機における発電機としての性能が犠牲にされ、所望の発電能力が得られないという弊害が生じていた。
モータ出力を重視した設計では、一般に、インダクタンスを小さくするため太いコイルを少なく巻いて巻線を形成する。ところが、インダクタンスの小さい巻線の場合、エンジン低速域(低回転域)での発電出力の立ち上がりが遅く、出力が低く抑えられてしまう。また、高速域(高回転域)では、発電出力の抑えが効かず出力が高すぎるという弊害を生じる。低速域での発電不足はアイドリング時のバッテリ消耗を招来し、高速域での発電過多はエンジンフリクションの増大による燃費低下を招来する。
そこで、かかる弊害をなくすため、コイルをモータ用と発電用とに分けて設定し、それらを適宜切り換えてモータ・発電両特性のバランスを図るものも提案されている。図7は、このようにコイルを機能別に設定した始動発電機の巻線構造を示す説明図である。図7のように結線された始動発電機では、モータ時にはコイル51a〜51dを全て用いて出力を確保し、発電時にはコイル51dのみを用いて発電を行う。すなわち、発電時には黒く塗りつぶされたコイル51dのみが機能し、他のコイル51a〜51cは休止状態となる。
このような始動発電機では、図7のように例えば3相のブラシレスモータの場合、発電用のコイルもモータ用のコイルと同様に3相に結線されるのが一般的である。すなわち、コイル51a〜51dは全て星形等の3相結線となり、3相のモータドライバによって駆動されると共に、発電用コイルの後段には3相用のレギュレータが配設される。そして、コイル51dの起電力によってバッテリを充電し、バッテリが満充電状態となるとレギュレータをショート制御し、起電力を適宜接地へ逃がしている。
しかしながら、このような始動発電機を持つ始動発電システムでは、モータが例えば3相のブラシレスモータの場合、発電用のコイルもモータ用のコイルと同様に3相に結線される。このため、発電用コイルの後段には3相用のレギュレータが必要となり、システムがコスト高となるという問題があった。また、3相モータドライバと3相レギュレータを制御するCPUもFETやサイリスタ等を複雑かつ精緻に制御しなければならず、高い処理能力が求められ、この点においてもシステム価格が増大するという問題があった。特に、レギュレータ機能をも備えた3相用モータドライバは非常に高価であり、その改善が望まれていた。加えて、従来の始動発電システムでは、バッテリが満充電状態となるとレギュレータをショート制御する構成のため、そこでエネルギロスが生じ、エンジンフリクションとなるという問題があった。
本発明の目的は、モータ及び発電機として機能する始動発電機を有する始動発電システムにおけるモータ性能と発電性能のバランスを向上させ、制御回路の簡素化を図りシステムのコストを低減させることにある。
【発明の開示】
本発明の始動発電システムは、エンジン始動時にはスタータモータとして機能し、前記エンジンの始動後は発電機として機能する始動発電機を有する始動発電システムであって、複数個の突極が形成されたステータコアと、前記突極に巻装され前記始動発電機がモータとして機能する場合に使用されるモータ用コイルと、前記モータ用コイルとは異なる突極に巻装され前記始動発電機が発電機として機能する場合に使用される単相の発電用コイルとを備える固定子と、エンジンのクランクシャフトに接続されると共に前記固定子の外側又は内側に回転自在に配設され、複数個の永久磁石が周方向に沿って取り付けられた回転子と、前記モータ用コイルに接続され、前記回転子の位置に基づいて前記モータ用コイルを励磁し前記固定子の周囲に回転磁界を形成させるモータドライバと、前記発電用コイルに接続され、前記発電用コイルからの出力を制御するレギュレータとを有することを特徴とする。
本発明にあっては、始動発電機の巻線をモータ用コイルと発電用コイルに分けて独立させたことにより、各々を最適な巻線仕様とすることが可能となる。このため、発電用コイルを細線多巻数仕様とすることができ、低速時の発電出力向上と、高速時の発電抑制を図ることができる。また、発電用コイルが単相のため、発電用レギュレータに単相用の安価なものを採用でき、しかもオープン制御が可能となる。従って、システム価格を低減することが可能となると共に、高速時の発電抑制とオープン制御により低フリクションが実現でき、燃費向上を図ることが可能となる。
前記始動発電システムにおいて、前記発電用コイルが巻装された前記突極の配置間隔を、前記永久磁石の個数Nに対して、X=360°/Nを基準とし、前記Xの整数倍又は前記Xを整数で除した値に設定しても良い。これにより、発電用コイルが巻装された突極全てが永久磁石と常に同位相で対向し、発電用コイルから滑らかな単相出力を得ることが可能となる。
また、前記始動発電システムにおいて、前記モータ用コイルを各相の巻線からなる複数組のモータコイル群から構成し、前記発電用コイルを前記モータコイル群の間に配置さするようにしても良い。この場合、前記発電用コイルを隣接配置された複数の前記突極によって1組の発電コイル群から構成することも可能である。
さらに、前記始動発電システムにおいて、前記発電用コイルが巻装された前記突極同士の間隔を、前記モータ用コイルが巻装された前記突極同士の間隔と異なる値に設定しても良い。この場合、前記発電用コイルが巻装された前記突極同士の間隔を、前記モータ用コイルが巻装された前記突極同士の間隔よりも広く設定することも可能であり、これにより、発電用コイルの巻数をモータ用コイルのそれよりも多くさせることができ、インダクタンス増による発電特性の改善が図られる。
加えて、前記始動発電システムにおいて、前記レギュレータをオープンレギュレータとしても良く、これにより満充電時におけるエネルギロスが回避され、低フリクションを実現できる。
一方、本発明の始動発電機は、エンジン始動時にはスタータモータとして機能し、前記エンジンの始動後は発電機として機能する始動発電機であって、複数個の突極が形成されたステータコアと、前記突極に巻装され前記始動発電機がモータとして機能する場合に使用されるモータ用コイルと、前記モータ用コイルとは異なる突極に巻装され前記始動発電機が発電機として機能する場合に使用される単相の発電用コイルとを備える固定子と、エンジンのクランクシャフトに接続されると共に前記固定子の外側又は内側に回転自在に配設され、複数個の永久磁石が周方向に沿って取り付けられた回転子とを有することを特徴とする。
本発明にあっては、始動発電機の巻線をモータ用コイルと発電用コイルに分けて独立させたことにより、各々を最適な巻線仕様とすることが可能となる。このため、発電用コイルを細線多巻数仕様とすることができ、低速時の発電出力向上と、高速時の発電抑制を図ることができる。また、発電用コイルが単相のため、始動発電機に接続される発電用レギュレータに単相用の安価なものを採用でき、しかもオープン制御が可能となる。従って、始動発電機を含むシステムの価格を低減することが可能となると共に、高速時の発電抑制とオープン制御により低フリクションが実現でき、燃費向上を図ることが可能となる。
前記始動発電機において、前記発電用コイルが巻装された前記突極の配置間隔を、前記永久磁石の個数Nに対して、X=360°/Nを基準とし、前記Xの整数倍又は前記Xを整数で除した値に設定しても良い。これにより、発電用コイルが巻装された突極全てが永久磁石と常に同位相で対向し、発電用コイルから滑らかな単相出力を得ることが可能となる。
また、前記始動発電機において、記モータ用コイルを各相の巻線からなる複数組のモータコイル群から構成し、前記発電用コイルを前記モータコイル群の間に配置するようにしても良い。なお、この場合、前記発電用コイルを隣接配置された複数の前記突極によって1組の発電コイル群から構成することも可能である。
さらに、前記始動発電機において、前記発電用コイルが巻装された前記突極同士の間隔を、前記モータ用コイルが巻装された前記突極同士の間隔と異なる値に設定しても良い。これにより、前記発電用コイルが巻装された前記突極同士の間隔を、前記モータ用コイルが巻装された前記突極同士の間隔よりも広く設定することも可能となり、発電用コイルの巻数をモータ用コイルのそれよりも多くし、インダクタンス増による発電特性の改善が図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施の形態1である始動発電システムに使用される始動発電機の構成を示す断面図である。
図2は、図1の始動発電機の回転子と固定子の構成を軸方向から見た説明図である。
図3は、図1の始動発電機における回路構成を示す説明図である。
図4は、3相モータ用コイルを4組配置した場合のコイル配置の一例を示す説明図である。
図5は、突極を等分に配置し、モータ用コイルと発電用コイルを分散配置した場合のコイル配置の一例を示す説明図である。
図6、全タップ点灯方式を採用した場合における発電コイル関連の回路構成を示す説明図である。
図7、従来の始動発電機の巻線構造を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態1である始動発電システムに使用される始動発電機の構成を示す断面図、図2は図1の始動発電機の回転子と固定子の構成を軸方向から見た説明図、図3は図1の始動発電機における回路構成を示す説明図である。
図1の始動発電機1は、ブラシレスモータと発電機を兼用したアウタロータ型の回転電機であり、自動二輪車におけるACG(交流発電機)スタータとして使用される。始動発電機1は、大きく分けて回転子2と固定子3とから構成されており、回転子2には界磁用マグネット4が、固定子3には巻線5が取り付けられている。固定子3には、ホールIC7を備えたセンサユニット8がねじ15によって固定されている。ホールIC7はセンサマグネット6の外側に配設され、センサマグネット6の磁極変化に伴いセンサ信号を出力する。
回転子2は、エンジンのクランクシャフト(図示せず)に取り付けられる。回転子2は、固定子3の外側に回転自在に配設され、フライホイールとしても機能する。回転子2は、有底円筒形状のロータヨーク11と、ロータヨーク11に取り付けられクランクシャフトに固定されるボスロータ12とを備えている。ロータヨーク11とボスロータ12は共に鉄等の磁性材料にて形成されている。ロータヨーク11の円筒部11aの内周面には、界磁用マグネット4が周方向に沿って複数個配設されている。ここでは、界磁用マグネット4は、内面側の極性が交互にN極とS極になるように12個等分に30°ピッチで配置されている。
ボスロータ12は、円盤状のフランジ部12aと略円筒形状のボス部12bとからなる。フランジ部12aは、ロータヨーク11の底部11bに同心的に取り付けられる。ボス部12bはフランジ部12aから回転中心線に沿って突設され、クランクシャフトにテーパ結合される。クランクシャフトが回転するとボス部12bが共に回転し、回転子2が巻線5の外側にて回転する。ボス部12bの先端には円筒形状のセンサマグネット6が取り付けられている。センサマグネット6は界磁用マグネット4の磁極に対応して、同磁極数(12極)に着磁されている。センサマグネット6の外周にはマグネットカバー13が外装されている。
固定子3は、複数枚の鋼板を重ねて形成したステータコア14を備えている。図2に示すように、ステータコア14には複数個の突極16が形成されでおり、突極16の周囲に巻線5が巻装されている。巻線5は、モータ用コイル21と発電用コイル22に分かれている。モータ用コイル21は3組のモータコイル群21a〜21c(以下、適宜コイル群21a〜21cと略記する)からなり、各コイル群21a〜21cは等分に120°間隔で配置されている。コイル群21a〜21c内には3個のモータコイル用突極16mが隣接配置されている。突極16mには、U,V,Wの三相のモータコイルが巻装されている。突極16m同士の間は、18極構成の固定子と同様に、20°間隔に設定されており、18極の半分である9極が3極ずつ3組のモータコイル群21a〜21cを形成している。
発電用コイル22も3組の発電コイル群22a〜22c(以下、適宜発電コイル群22a〜22cと略記する)からなり、各コイル群22a〜22cは等分に120°間隔で配置されている。発電コイル群22a〜22c内には2個の発電コイル用の突極16gが隣接配置されており、発電コイルが巻装されている。突極16gは、突極16mを9極配置した残りのスペースに2極ずつ3組、計6極配置されている。すなわち、3極分のスペースに2極の突極16gが配置されている。発電コイル群22a〜22c内の突極16g同士の間の角度は30°に設定されており、全ての突極16gは常に同位相で界磁用マグネット4に対向する。従って、3組の発電コイル群22a〜22cには同位相の起電力が生じ、発電用コイル22では単相の発電が行われる。
突極16gは、前述のように、3極分のスペースに2極配置されているため、その間隔(30°)が突極16mの間隔(20°)よりも大きくなっている。すなわち、突極16g間の隙間は突極16m間のそれよりも広くなっている。従って、突極16gには突極16mよりも多くコイルを巻回させることができる。また、発電用コイル22はモータ用コイル21から独立しているため、コイル径を発電用に設定することができる。つまり、突極16gに対し、モータ用コイル21よりも細い線径のコイルを多く巻き付けて発電用コイル22を形成できる。
これにより、発電用コイル22のインダクタンスを大きく設定することが可能となり、エンジン低速域から発電出力が得られるようになる。従って、低回転域での発電性能が向上し、アイドリング時等における充電能力不足が解消する。また、エンジン高速域では、発電出力が抑えられ、高速域での発電過多によるエンジンフリクションを低減し燃費の向上を図ることが可能となる。
一方、モータコイル群21a〜21cは、図3に示すようにU,V,Wの三相巻線が星形に結線された構成となっており、各コイル群21a〜21cは互いに並列に接続されている。これに対し発電コイル群22a〜22cは、群内にて隣接する突極16gに巻装されたコイル同士が直列に結線されると共に、各群同士も互いに直列に結線されている。また、モータ用コイル21はモータドライバ23に、発電用コイル22はオープンレギュレータ24にそれぞれ接続されている。モータドライバ23とオープンレギュレータ24はバッテリ25に接続され、バッテリ25にはストップランプ等の負荷26が接続されている。これらのシステムはCPU27によって制御され、モータドライバ23やオープンレギュレータ24はCPU27からの指令に基づいて作動する。
モータドライバ23は、FET31a〜31fを用いて形成したブリッジ回路からなるインバータ32を備えている。インバータ32は、ホールIC7の検出結果に基づいて回転磁界を形成するような電流をコイル群21a〜21cに通電する通電制御機能を有しており、6個の電界効果トランジスタFET31a〜31fと、それらに並列に接続された6個の寄生ダイオード33a〜33fを備えた構成となっている。
インバータ32では、3列の各ブリッジ列はHighサイドの各FET31a,31c,31eと、Lowサイドの各FET31b,31d,31fとがそれぞれ直列に接続されている。この場合、FET31a,31c,31eは共通にバッテリ25の+側、FET31b,31d,31fは共通にバッテリ25の−側にそれぞれ接続されている。各ブリッジ列の各FET31a,31c,31eと各FET31b,31d,31fとの各接続ノードには、コイル群21a〜21cの各相がそれぞれ接続されている。すなわち、FET31a,31bの間にはU相、FET31c,31dの間にはV相、FET31e,31fの間にはW相のコイルが接続されている。また、FET31a〜31fの各ゲートは、3相ブリッジドライバ34に接続されている。
オープンレギュレータ24は、サイリスタ35a,35b、ダイオード36a,36bから構成されている。発電用コイル22は、サイリスタ35aとダイオード36aの間と、サイリスタ35bとダイオード36bの間にそれぞれ接続されている。サイリスタ35a,35bはCPU27によって制御され、発電用コイル22の起電力の向きに応じて適宜切り替えられる。また、CPU27ではバッテリ25の電圧をモニタしており、バッテリ25が満充電状態となるとサイリスタ35a,35bを共にOFFさせる。これにより、発電用コイル22はオープン状態となり、バッテリ25の充電動作は停止される。
発電用コイル22が単相のため、オープンレギュレータ24は前述のような簡易な構成で対応でき、市販の汎用品を適用することができる。従って、高価な3相レギュレータが不要となり、安価なレギュレータの採用により安価なシステムを構築することが可能となる。
このような始動発電システムでは、自動二輪車のスタータスイッチがONされると、CPU27はモータ用コイル21に通電を行い始動発電機1がモータとして機能する。CPU27はホールIC7からのセンサ信号に基づいてモータドライバ23を制御し、FET31a〜31fを適宜ON/OFFさせることによりモータ用コイル21に通電し、回転子2の周囲に回転磁界を形成する。これにより、回転子2が回転駆動されエンジンが始動される。
エンジンが始動しスタータスイッチがOFFされると、回転子2がエンジンによって回転され、始動発電機1は発電機として機能する。すなわち、回転子2が固定子3の周囲で回転すると、界磁用マグネット4の磁界が発電用コイル22を切り、起電力が生じ発電が行われる。このとき、CPU27はオープンレギュレータ24を制御し、バッテリ25の充電を行う。バッテリ25が満充電状態となった場合には、前述のように、CPU27はサイリスタ35a,35bを共にOFFする。このとき、発電用コイル22はオープン状態となるため、ショート制御の場合のように、発電作用は生ぜず電力を無駄に捨てることがない。従って、その分エネルギロスがなくなり、前述の高速域での発電過多解消も相俟って、エンジンフリクションを大幅に低減することができ、燃費を大きく向上させることが可能となる。
このように本発明の始動発電システムでは、巻線5をモータ用コイル21と発電用コイル22に分けたことにより、各々を最適な巻線仕様とすることが可能となる。すなわち、モータ用コイル21をモータ性能を重視した太線少巻数の設計としつつも、発電用コイル22を細線多巻数とすることができ、低速時の発電出力向上と、高速時の発電抑制が実現される。また、3相のモータ用コイル21を持ちつつ、単相の発電用コイル22を設けているため、発電用レギュレータに単相用の安価なものを採用でき、しかもオープン制御が可能となる。従って、システム価格を低減することが可能となると共に、高速時の発電抑制とオープン制御により低フリクションが実現でき、燃費向上を図ることが可能となる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2として、実施の形態1と同様の3相の始動発電機においてコイルの組数を異にする例を示す。図4は3相モータ用コイルを4組配置した場合のコイル配置の一例を示す説明図である。
図4の始動発電機では、3相のモータ用コイル21が4組と、単相の発電用コイル22が2組が設けられている。モータ用コイル21はモータコイル群21a〜21dからなり、発電用コイル22は発電コイル群22a,22bから構成される。コイル群21a,21bは図中左側に、コイル群21c,21dにそれぞれ配置され、両群の間に発電コイル群22a,22bが配置される。
コイル群21a〜21dでは、各突極16mはここでも20°間隔に設定されており、18極のうち12極が3極ずつ4組のモータコイル群21a〜21dを形成している。コイル群22a,22bは180°間隔をあけて配置されており、突極16gは、突極16mを12極配置した残りのスペースに2極ずつ2組、計4極配置されている。コイル群22a,22b内の突極16g同士の間の角度は20°に設定されており、隣接配置された突極16gと突極16mとの間は30°の間隔が設けられている。この場合、発電用コイル22から単相出力を得るためには、全ての突極16gを常に同位相で界磁用マグネット4に対向させるべく、界磁用マグネット4も20°ピッチで18個配置される。
(実施の形態3)
さらに、実施の形態3として、実施の形態1と同様の3相の始動発電機において突極16を等分に配置し、モータ用コイル21と発電用コイル22を分散配置した例を示す。図5はその場合のコイル配置の一例を示す説明図である。
図5の始動発電機では、実施の形態1と同様、3相のモータ用コイル21が3組と、単相の発電用コイル22が3組が設けられている。ここでは、各突極16(16m,16g)は20°間隔で等分に18極設けられている。モータ用コイル21はモータコイル群21a〜21cからなり、発電用コイル22は発電コイル群22a〜22cから構成される。コイル群21a,21cはU相とV,W相が分離され、コイル群21bはU,V,W相の各相が分離配置されている。コイル群22a,22bは3極のうち1極が分離され、コイル群22cは3極が全て分離配置されている。そして、コイル群21aのU相とV相の間にコイル群22aの分離された1極が配置されるなどして、各コイル群が図5のように分散配置されている。
(実施の形態4)
加えて、実施の形態4として、実施の形態1と同様の3相の始動発電システムにおいて全タップ点灯方式を採用した例を示す。図6はその場合における発電コイル関連の回路構成を示す説明図である。
ここでは、図6に示すように、オープンレギュレータ24と接地との間にAC負荷28が配設されている。AC負荷28としては、例えばヘッドライトなどのように、エンジンが作動している間は点灯するが、エンジンが停止すると消灯するものなどが設置される。オープンレギュレータ24の後段には、バッテリ25と並列にDC負荷29が接続されている。DC負荷29としては、例えばストップランプなどのように、エンジンの作動の有無とは無関係に点灯するものが設置される。本発明によるシステムでは、発電用コイル22は単相の交流を出力するため、このようないわゆる全タップ点灯方式を採用して負荷を接続することができ、電装設計の自由度を向上させることが可能となる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、本発明は汎用エンジンなど、自動二輪車以外の他の始動発電システムにも適用可能である。また、前述の実施の形態では、アウタロータ型のブラシレスモータの例を示したが、回転子が固定子の内側に配設されるいわゆるインナーロータ型のブラシレスモータの始動発電機に本発明を適用することも可能である。
また、前述の実施の形態では、3相のモータに本発明を適用した例を示したが、本発明の適用対象はこれらには限定されず、5相モータ等、さらに多相のものにも適用可能である。さらに、突極16や界磁用マグネット4の数、コイル群の数なども前述の例には限定されない。
本発明の始動発電システムによれば、始動発電機の巻線をモータ用コイルと発電用コイルに分けて独立させたことにより、各々を最適な巻線仕様とすることが可能となる。このため、発電用コイルを細線多巻数仕様とすることができ、低速時の発電出力向上と、高速時の発電抑制を図ることができる。また、発電用コイルが単相のため、発電用レギュレータに単相用の安価なものを採用でき、しかもオープン制御が可能となる。従って、システム価格を低減することが可能となると共に、高速時の発電抑制とオープン制御により低フリクションが実現でき、燃費向上を図ることが可能となる。
また、本発明の始動発電機によれば、巻線をモータ用コイルと発電用コイルに分けて独立させたことにより、各々を最適な巻線仕様とすることが可能となる。このため、発電用コイルを細線多巻数仕様とすることができ、低速時の発電出力向上と、高速時の発電抑制を図ることができる。また、発電用コイルが単相のため、始動発電機の後段に接続される発電用レギュレータに単相用の安価なものを採用でき、しかもオープン制御が可能となる。従って、始動発電機を含むシステムの価格を低減することが可能となると共に、高速時の発電抑制とオープン制御により低フリクションが実現でき、燃費向上を図ることが可能となる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン始動時にはスタータモータとして機能し、前記エンジンの始動後は発電機として機能する始動発電機を有する始動発電システムであって、
複数個の突極が形成されたステータコアと、前記突極に巻装され前記始動発電機がモータとして機能する場合に使用されるモータ用コイルと、前記モータ用コイルとは異なる突極に巻装され前記始動発電機が発電機として機能する場合に使用される単相の発電用コイルとを備える固定子と、
エンジンのクランクシャフトに接続されると共に前記固定子の外側又は内側に回転自在に配設され、複数個の永久磁石が周方向に沿って取り付けられた回転子と、
前記モータ用コイルに接続され、前記回転子の位置に基づいて前記モータ用コイルを励磁し前記固定子の周囲に回転磁界を形成させるモータドライバと、
前記発電用コイルに接続され、前記発電用コイルからの出力を制御するレギュレータとを有することを特徴とする始動発電システム。
【請求項2】
請求項1記載の始動発電システムにおいて、前記発電用コイルが巻装された前記突極の配置間隔は、前記永久磁石の個数Nに対して、X=360°/Nを基準とし、前記Xの整数倍又は前記Xを整数で除した値に設定されることを特徴とする始動発電システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の始動発電システムにおいて、前記モータ用コイルは各相の巻線からなるモータコイル群を複数組有し、前記発電用コイルは前記モータコイル群の間に配置されることを特徴とする始動発電システム。
【請求項4】
請求項3記載の始動発電システムにおいて、前記発電用コイルは隣接配置された複数の前記突極によって1組の発電コイル群を形成することを特徴とする始動発電システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の始動発電システムにおいて、前記発電用コイルが巻装された前記突極同士の間隔を、前記モータ用コイルが巻装された前記突極同士の間隔と異なる値に設定したことを特徴とする始動発電システム。
【請求項6】
請求項5記載の始動発電システムにおいて、前記発電用コイルが巻装された前記突極同士の間隔は、前記モータ用コイルが巻装された前記突極同士の間隔よりも広いことを特徴とする始動発電システム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の始動発電システムにおいて、前記レギュレータがオープンレギュレータであることを特徴とする始動発電システム。
【請求項8】
エンジン始動時にはスタータモータとして機能し、前記エンジンの始動後は発電機として機能する始動発電機であって、
複数個の突極が形成されたステータコアと、前記突極に巻装され前記始動発電機がモータとして機能する場合に使用されるモータ用コイルと、前記モータ用コイルとは異なる突極に巻装され前記始動発電機が発電機として機能する場合に使用される単相の発電用コイルとを備える固定子と、
エンジンのクランクシャフトに接続されると共に前記固定子の外側又は内側に回転自在に配設され、複数個の永久磁石が周方向に沿って取り付けられた回転子とを有することを特徴とする始動発電機。
【請求項9】
請求項8記載の始動発電機において、前記発電用コイルが巻装された前記突極の配置間隔は、前記永久磁石の個数Nに対して、X=360°/Nを基準とし、前記Xの整数倍又は前記Xを整数で除した値に設定されることを特徴とする始動発電機。
【請求項10】
請求項8又は9記載の始動発電機において、前記モータ用コイルは各相の巻線からなるモータコイル群を複数組有し、前記発電用コイルは前記モータコイル群の間に配置されることを特徴とする始動発電機。
【請求項11】
請求項8〜10の何れか1項に記載の始動発電機において、前記発電用コイルが巻装された前記突極同士の間隔を、前記モータ用コイルが巻装された前記突極同士の間隔と異なる値に設定したことを特徴とする始動発電機。

【国際公開番号】WO2004/032312
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【発行日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541189(P2004−541189)
【国際出願番号】PCT/JP2002/010358
【国際出願日】平成14年10月4日(2002.10.4)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】