媒体の成分を吸着する方法
【課題】燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体から二酸化炭素を回収する方法を提供する。
【解決手段】吸着組成物120を含むポリマーネットワーク150から構成される複数の蛇行経路155有し、かつ、該蛇行経路と内腔130の流体連通を防止するガスバリア層140を有する中空糸110に、被処理媒体を接触させ、媒体中の被処理成分を選択的に吸着させる。
【解決手段】吸着組成物120を含むポリマーネットワーク150から構成される複数の蛇行経路155有し、かつ、該蛇行経路と内腔130の流体連通を防止するガスバリア層140を有する中空糸110に、被処理媒体を接触させ、媒体中の被処理成分を選択的に吸着させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35U.S.C.§119(e)に基づき、2008年5月8日提出の米国仮特許出願番号61/051,595および2007年6月27日提出の米国仮特許出願番号60/946,475の利益を主張し、これらの全内容および実体を、本願は引用して、以下に説明されるように援用する。
【0002】
本開示の様々な実施の形態は、一般的に吸着繊維組成物に関する。より特定的には、本発明の様々な実施の形態は温度スイング吸着プロセスのための吸着繊維を対象にする。
【背景技術】
【0003】
石炭工場は、米国の電力の多くを供給し、二酸化炭素(CO2)のような温室効果ガス排出の主要な発生源である。発展途上国は、大気中のCO2レベルに非常に加え得る速度で、急速に石炭発電所を建設している。もっとも一般的な形態の石炭発電所は、粉炭(PC:Pulverized Coal)型発電所であり、典型的に毎分約500MWを産生し、約9.2トンのCO2、または2.2lbm CO2/kWh(500MWに対して)を排出する。地球の大気中の増加したCO2濃度は、温室効果ガスの影響を悪化させ、望まない気候変動を引き起こし、その結果の危険性として、異常気象、海面上昇および農業および生態系の多様性に有害な影響がある。したがって、石炭燃焼工場は二酸化炭素回収・隔離(CCS:carbon capture and sequestration)に主要な標的を与える。故に、CCSのための効果的および費用効率の高い方法に大きな関心が持たれている。
【0004】
PC型発電所は老朽化し、現在の炭素回収方法はそのままで実行するのには非常に費用がかかる。ガス化複合(IGCC:integrated gasification combined cycle)発電所および天然ガス複合(NGCC:natural gas combined cycle)発電所はより効率的かつより少ない排出量をもたらすが、PC型設備も効果的な環境変動緩和のために、CCS装置を必要とする。CCSの主要な障壁の一つは回収コストである。効果的な排出コントロールおよび隔離のために、CO2は75%を超える純度で回収され、パイプライン圧力(たとえば約1500psia)に圧縮され、続いて噴射圧力(たとえば2300psia)に圧縮されるべきと考えられている。低圧供給、低温供給および非常に大きな流速における、燃焼後のCO2回収プロセスは、CCSの課題の多くの困難な側面の一つである。したがって、現存のPC型発電所に備え付けることのできる低コストのCCSシステムの必要性が、新規のIGCC型およびNGCC型発電所と同様に存在する。石油化学および産業部門での重要な利用も期待されている。
【0005】
吸着プロセスは、産業界で流体混合物の分離のために広く用いられている。この分離は、吸着物質の表面または空洞内部での選択的成分の優先的吸着に基づいている。ほとんどの分離システムでは、吸着物質は適切な吸着能力を提供するため、大きな表面積を有している。たとえば分子篩ゼオライト、活性炭、アルミナおよびシリカゲルのような、一般的に使用されている吸着剤の表面積は、少なくとも200m2/gである。
【0006】
多くの産業的吸着プロセスは固定床型カラムで行われている。吸着物質(たとえば、顆粒、粒子)は、一般的に円筒形容器に封入され固定化されている。分離に指定された流体混合物は充填カラムを通過し、混合物中の吸着性成分が、吸着質として吸着剤によって捕捉されて保持され、非吸着性成分は吸着剤顆粒間の隙間を通じてカラムを通過する。
【0007】
供給流体混合物の連続的処理のために、それぞれの床が吸着/再生サイクルを順々に行う複数床(multi-bed)システムが使用されている。いくつかの異なる再生方法が商業的に行われ、それらは圧力スイング吸着(PSA:pressure swing adsorption)プロセスおよび熱スイング吸着(TSA:thermal swing adsorption)プロセスを含む。TSAプロセスでは、飽和吸着剤が高温ガスで浄化されて再生される。それぞれの加熱/冷却サイクルは、通常数時間から一日以上を要する。PSAプロセスでは、吸着剤の再生は減圧下において精製製品ガスの一部で浄化することによって行うことができる。PSAの処理量は、一般的にTSAの処理量よりも多く、これはより速い時間的サイクル、通常数分から数時間、が一般的に可能だからである。
【0008】
吸着剤の吸着能力を除いて、吸着速度および圧力低下は、吸着カラムの設計において考慮しなければならない二つの重要な因子である。吸着カラムを通り抜ける圧力低下は最小化されなければならず、なぜなら大きな流体圧力低下は吸着剤粒子の運動または流動化の原因となり得、結果として吸着剤の深刻な摩耗と損失につながるからである。吸着速度は吸着プロセスの効率に重要な関連を有している。吸着速度は通常、バルク流体相から吸着剤粒子の内部表面への吸着質輸送に対する物質移動抵抗によって決定される。遅い吸着速度は、大きな物質移動抵抗のため、長い物質移動帯(MTZ:mass transfer zone)で、その内部で吸着剤が部分的にのみ吸着質で飽和されているものをもたらすだろう。MTZの上流領域での吸着剤は実質的に吸着質で飽和され、一方MTZの下流領域は原則的に吸着質が存在しない。流体が流れ続けるにつれて、MTZは流体流れの方向に吸着カラムを通り抜けて進む。吸着ステップは、流出物流れ内に吸着質が突破するのを防ぐために、MTZが吸着剤出口に到達する前に終了しなければならない。したがって、長い物質移動帯で、大量の部分的に使用された吸着剤を含むものが、短い吸着工程および吸着能力の非効率的な使用をもたらすだろう。
【0009】
圧力低下および物質移動抵抗の両者が、吸着剤粒子のサイズに大きく影響を受ける。あいにく、粒子サイズの変更はこれらの二つの重要な因子に反対の影響を与える。固定床中の吸着粒子間の隙間領域は粒子のサイズに比例する。吸着剤を通過する流体流れの抵抗は充填床の空洞サイズに反比例するため、小さな吸着剤粒子の使用は大きな圧力低下をもたらすだろう。この理由から、固定床操作のための市販の吸着剤粒子のサイズは、一般的に平均直径が2mmより大きい。
【0010】
加えて、市販の吸着剤のほとんどの表面積は吸着粒子の内部に位置している。吸着が生じるためには、吸着質は外部流体相から粒子の内部表面に移動される必要がある。移動速度は連続した二つの物質移動メカニズムに影響を受ける:(a)吸着剤粒子の外部表面周囲の流体境界層を通じた界面物質移動−拡散、および(b)粒子の内部間隙空間(マイクロ孔、マクロ孔)から吸着が行われる内部表面へ通じる粒子内物質移動−拡散。粒子のサイズはこれら二つの拡散プロセス速度に大きな影響を与える。小さな粒子は、界面物質移動のための固定床内に大きな流体/固体接触面積を提供し、粒子内拡散のための経路長を減少させる。故に、小さな吸着粒子は吸着速度を上昇させ、迅速かつ効率的な吸着/脱着サイクルの操作のための狭い物質移動帯をもたらす。したがって、小さな吸着粒子は効率的な吸着プロセスに望ましいが、最小粒子サイズは固定床吸着剤の許容可能な流体力学的操作条件によって制限される。すなわち、流動化と過剰な圧力低下を防止したい。
【0011】
CCSに関して、圧力スイング充填床吸着が燃焼排ガス回収後に考慮されてきたが、大きな流量と、燃焼排ガスを必要とされる圧力に加圧する費用が、この技術を超精製ニッチマーケットに限定している。現在の充填床形式での温度スイング吸着は、巨大なシステムサイズとコストを避けるために十分に頻繁に循環させることができない。これらの制限のために、もっとも有名な回収技術は、CO2の、メチルエタノールアミンやメチルジエタノールアミンのような液体アルキルアルカノールアミン内への化学吸着に基づく液体−気体カラム吸着に基づいている。溶媒再生のための集中的なエネルギーの必要性を除いては、この回収技術は、大量の環境有害廃棄物、腐食、エントレインメント、フラッディングおよび侵出を扱う必要性を含む、いくつかの問題を有している。
【0012】
したがって、媒体の少なくとも一つの成分を吸着する組成物および方法で、比較的小さな粒子サイズで、なおかつ許容可能な圧力効果で操作可能であることによって特徴づけられるものへの要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のさまざまな実施の形態は、組成物および吸着繊維組成物の使用を対象とする。より特定的には、本開示のさまざまな実施の形態は吸着物質および温度スイング吸着プロセスでのこれらの使用を対象とする。概して言えば、本発明の一つの観点は、少なくとも一つの吸着物質を含む中空糸と、中空糸内部に配置された内腔と、前記内腔と前記吸着物質との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む、吸着繊維を含む。
【0014】
中空糸はさらにポリマーマトリックスを含むことができる。本発明の一実施の形態において、ポリマーマトリックスは複数の蛇行経路を含むことができる。複数の蛇行経路は1つ以上のマイクロ孔、メソ孔またはマクロ孔を含むことができ、1つ以上のマイクロ孔、メソ孔またはマクロ孔が流体連通している。中空糸は、少なくとも約100マイクロメートルの平均最長断面寸法を有することができる。中空糸内に配置された内腔は、少なくとも約55マイクロメートルの平均最長断面寸法を有することができる。中空糸は、内腔の平均最長断面寸法の少なくとも2倍より大きい平均最長断面寸法を有することができる。中空糸は、中空糸の長手方向末端部に配置された無孔末端キャップを含むことができ、無孔キャップは内腔を通り抜ける流体流動を妨げない。バリア層は約50マイクロメートル未満の平均厚みを有することができる。
【0015】
吸着物質は複数の蛇行経路の少なくとも一部と流体連通している。吸着物質は、約10マイクロメートル未満の平均最長寸法を有することができる。吸着物質は中空糸の約80重量%未満を構成することができる。吸着物質は、窒素に対する二酸化炭素の選択性が約10から約60であり、二酸化炭素1モル当たり、約25キロジュールから約90キロジュールの吸着熱を有することができる。
【0016】
本発明の一観点は、繊維系吸着接触器であって、チャンバを含み、前記チャンバは、供給流れ流入口と、供給流れ流出口と、熱伝導流体流入口と、熱伝導流体流出口と、複数の実質的に整列した中空糸とを含み、前記中空糸のそれぞれは、前記供給流れ流入口および前記供給流れ流出口と流体連通する複数の蛇行経路と、前記複数の蛇行経路の少なくとも一部と流体連通する複数の吸着成分と、前記熱伝導流体流入口および前記熱伝導流体流出口と流体連通する中空糸内部に配置された内腔と、前記内腔と、前記中空糸の少なくともかなりの大部分の前記複数の蛇行経路との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む、繊維系吸着接触器を含む。複数の中空糸が、前記中空糸の少なくともかなりの大部分の前記複数の蛇行経路と熱伝導媒体との間の流体連通を防止するのに効果的な、前記中空糸の長手方向末端に配置された末端キャップをさらに含むことができる。繊維系吸着接触器は、さらに隣接する繊維を相互連結するのに効果的なバインダー物質を含むことができ、前記バインダー物質は末端キャップとともに、熱伝導媒体と隣接する繊維の複数の蛇行経路との間の流体連通を防止する。繊維系吸着接触器は、燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体を含む供給流れに利用することができる。繊維系吸着接触器は、温度スイング吸着プロセスで使用することができる。温度スイング吸着プロセスにおいては、熱伝導媒体が水、水蒸気、水流、ガス、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0017】
本発明の一観点は、媒体の成分を吸着する方法を含み、前記方法は、媒体を、複数の蛇行経路と、前記複数の蛇行経路と流体連通する複数の吸着成分と、中空糸内に配置された内腔と、前記内腔と前記複数の蛇行経路との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む中空糸と接触させる工程と、前記媒体の成分を吸着する工程とを含む。媒体の成分を吸着する方法は、さらに媒体の成分を脱着する工程を含むことができる。媒体の成分を吸着する方法は、さらに媒体と熱交換流体との間の流体連結を防止する工程を含むことができる。前記媒体は、燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体を含む。前記吸着成分がCO2、SOx、NOx、および水から選択されることができる。本発明の典型的な一実施の形態において、前記媒体は燃焼排ガスであり、前記吸着成分は二酸化炭素である。本発明の一実施の形態において、前記媒体は、CO2および窒素を含むことができ、前記吸着成分が窒素に対して5より大きいCO2吸着の選択性を有することができる。一連の吸着間のサイクルタイムが約2分未満であり得る。
【0018】
本発明は、媒体の成分を吸着する方法であって、媒体を、複数の蛇行経路と、前記複数の蛇行経路と流体連通する吸着物質と、中空糸内に配置された内腔と、前記内腔と前記複数の蛇行経路との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む、中空糸と接触させる工程と、前記媒体の成分を吸着物質で選択的に吸着する工程とを含む、媒体の成分を吸着する方法に関する。
【0019】
本発明の媒体の成分を吸着する方法は、さらに前記媒体の成分を脱着する工程を含むことが好ましい。この場合、さらに前記接触および吸着を繰り返す工程を含むことがより好ましく、一連の吸着間のサイクルタイムが2分未満であることが特に好ましい。
【0020】
本発明の媒体の成分を吸着する方法において、前記媒体は、燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体を含むことが好ましい。
【0021】
本発明の媒体の成分を吸着する方法は、さらに前記媒体と熱交換流体との間の流体連結を防止する工程を含むことが好ましい。
【0022】
本発明の媒体の成分を吸着する方法において、前記成分はCO2、SOx、NOx、および水から選択されることが好ましい。
【0023】
本発明の媒体の成分を吸着する方法において、前記成分はCO2であることが好ましい。この場合、前記媒体がCO2および窒素から成り、前記吸着成分が、窒素に対して5より大きいCO2吸着の選択性を有することがより好ましい。またこの場合、前記媒体がCO2および窒素から成り、前記吸着物質が窒素に対して、10から60の二酸化炭素の選択性を有し、−25kJ/(mol CO2)から−90kJ/(mol CO2)の吸着熱を含むことがより好ましい。さらにこの場合、前記媒体が燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体であることが特に好ましく、また、燃焼排ガス蒸気であることが特に好ましい。
【0024】
本発明の実施の形態の他の観点および特徴は、以下の図面とともに、本発明の特定の、典型的な実施例の下記の記述を検討すると、当業者に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1 A−Bは、ポリマーマトリックス内に分散した吸着物質を含む中空糸組成物で、一種類の吸着物質を有するもの(A)および複数種類の吸着物質を有するもの(B)を示す。
【図2】図2A−Bは、チャンバ(A)と透明チャンバ(B)を含むクロスフロー接触器の透視図の概略図である。
【図3】図3は、ポリマー/溶媒/非−溶媒溶液を示す三角相図である。
【図4】図4は、吸着および脱着モード間の調節弁切換装置の概略図である。
【図5】図5は、RTSAシステム設計外観の概略図である。
【図6】図6は、繊維吸着RSTAシステムのPC型発電所への統合の概観を示す概略図である。
【図7】図7は、“ケージ内篩(sieve-in-cage)”を示す顕微鏡写真を示す。
【図8】図8は、圧力衰吸着システムの概略図である。
【図9】図9A−Cは、繊維吸着剤(A)、酢酸セルロースマトリックス内のゼオライト13X分散(75重量%)、および酢酸セルロースマトリックス内の“ケージ内篩”(sieve-in cage)顕微鏡写真を示す13X粒子(C)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、繊維吸着剤および繊維吸着剤成分の等温式を図示する。
【図11】図11は、純粋13Xおよび13Xに埋め込まれた吸着繊維間の物質移動比較を図示する。
【図12】図12は、繊維吸着剤内の多孔率勾配を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】13A−Cは、PVDC内腔層(A)、閉鎖アクリル系内腔層(B、C)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】図14は、可視的ピンホール欠陥を有する内腔層の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】図15A−Dは、典型的な中空糸操作(A)、繊維吸着剤内の内腔層バイパス(B)、処理後の毛管力が繊維チップのアクリル系キャッピングに関与した(C)、内腔層バイパスなしのキャップ化繊維チップ(D)の概略図である。
【図16】図16は、PVDCキャップ化繊維チップの走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
媒体分離は、制限されるものではないが、燃料、化学品、石油化学品および専門品の製造を含む、さまざまな産業で重要である。本明細書において、“媒体”という用語は便宜的に使用され、一般的に多くの流体、液体、気体、溶液、縣濁液、粉体、ゲル、分散液、エマルジョン、蒸気、流動性材料、多相物質またはこれらの組み合わせに言及する。媒体は供給流れを含むことができる。媒体は複数の成分の混合物を含むことができる。本明細書において、“複数”という用語は一より大きいことに言及する。
【0027】
媒体分離は、熱、固体、流体または他の手段の援助を受けて、一般的に分離される成分の物理的および/または化学的特性の違いを有効に利用して達成することができる。たとえば、気体分離は部分的液化または、ガス混合物のより容易でない被吸着成分に比べて、より容易に保持または吸着される成分を優先的に保持または吸着する吸着物質を利用して達成できる。
【0028】
このような商業的に実施されている気体分離プロセスは温度スイング吸着(TSA)である。TSAは吸着物質の床が媒体の一つ以上の成分を分離するために用いられる工程を含み、その後吸着剤床は床の温度を上昇させることによって再生(被吸着成分を放出)される。
【0029】
TSAプロセスは、媒体中の第二成分または他の成分と比較した、吸着物質による媒体の少なくとも一成分の選択的吸着を含む。媒体から吸着される少なくとも一つの成分の総量(たとえば、吸着物質の吸着能)および媒体中の他の成分に対する一成分の吸着の選択性は、しばしば特定の圧力および温度条件下で吸着工程を操作することによって改善することができる。なぜなら圧力および温度の両者が媒体の成分の吸着充填に影響を与えることができるからである。
【0030】
媒体の被吸着成分は吸着物質から脱着することができる。成分の脱着は吸着等温式が温度に強く影響されるため生じる。したがって、高純度の媒体の成分は、低温で吸着することにより得ることができる。低温では吸着が強力で、強力に保持された成分の放出は脱着のための高温手段によって可能である。圧力スイング吸着(PSA)と比較すると、TSAは等温式の飽和レジメで操作することができ、これは吸着物質の能力および有用性の範囲に利点を与える。TSAプロセスでは、脱着熱は、高温脱着媒体を床を通して流すことによって直接的に吸着物質に供給することができ、または熱コイル、電気熱源、電熱媒体、または熱交換器などの、吸着媒体と親密な関係を有するものを通じて間接的に吸着物質に供給することができる。
【0031】
TSAは、当該分野で実施されている時に、いくつかの不都合な点を有する。たとえば、直接加熱TSAプロセスでは、高温流体が通常、吸着剤の温度を上昇させるために、吸着床を流れるが、温度の上昇が大きいほど、より多くの流体が必要となる。これは大量の加熱媒体中への脱着成分の分散をもたらし、吸着剤の温度を上昇させるために用いられた多くの熱はしばしば回収不能である。いくつかの例では、熱の回収が不可能であり、これは多くの直接加熱TSAシステムは長期の吸着時間(たとえば数日)と、より短期の再生時間によって操作されているからである。さらに、吸着物質の不定期および緩やかな再生は、装置の下流における濃度上昇と流れの変化をもたらし、これは定常状態製造プラント以外では取り扱いが難しいだろう。間接的加熱TSAシステムでは、熱は熱交換器によって供給することができ、これは被吸着物質が熱伝導媒体によって希釈されることを防ぐが、間接的加熱TSAプロセスの熱の取り扱いおよび周期性はしばしば困難を示す。さまざまなスイング吸着方法が何年にも渡って商業的に実施されているが、当該分野には改良されたスイング吸着方法への要求が未だ存在し、それは特に燃焼排ガスからCO2を分離する時、および吸着プロセスで生じた熱の効率的な使用に対してである。
【0032】
ここで図面を参照して、本発明の典型的な実施の形態を詳細に説明する。図面では同様の参照番号は、複数の図面を通じて同様の部分を示す。本明細書を通じて、さまざまな成分は特定の値またはパラメータを有して特定されるが、これらの事項は典型的な実施の形態として提供される。実際、典型的な実施の形態は、実行され得る多くの比較パラメータ、サイズ、範囲、および/または値と同様に、本発明のさまざまな観点および概念を制限しない。たとえば吸着剤(sorbent)という用語は吸着(adsorption)および吸収(absorption)の両者を包含するように意図される。本開示を通じて、吸着および関連組成物、物質およびプロセスに言及するが、この記載は吸収も包含することを意図していることを認識すべきである。
【0033】
本発明の一観点は、それ自身が少なくとも一つの吸着物質(および、上述のように拡大解釈すると、少なくとも一つの吸収物質)120を含む中空糸110、前記中空糸110内部に配置された内腔130、および内腔130と少なくとも一つの吸着剤物質120との間の流体連通を防止するための、前記内腔130を覆うバリア層140とを含む、吸着剤組成物100を含む(図1参照)。本発明の一実施の形態において、中空糸110はポリマーネットワーク150を含むことができ、前記ポリマーネットワークは複数の蛇行経路155を含む。中空糸110は、連続的で柔軟性のあるフィラメント、または糸の長さと同様の分離した細長い断片であるさまざまな種類の物質を含む。本明細書中で、“中空糸”とは連続的で柔軟性のあるフィラメント物質で、比較的大きなアスペクト比(たとえば、長さの平均最長断面に対する比)を意味する。本発明の一実施の形態において、アスペクト比は約4:1とすることができる。本発明の一実施の形態において、アスペクト比は少なくとも約10:1、少なくとも約100:1、またはもっとも少なくとも1000:1とすることができる。
【0034】
中空糸110はさまざまな断面形状を有することができ、制限されるものではないが、長方形、円形、半円形、四角形、五角形、三角形、六角形、八角形、星状形、星型形、“U”形、浅裂形、複数の浅裂形、不規則形、またはこれらの組み合わせ、またはこれらの間を含む。当業者は中空糸110の断面形状は、中空糸の平均最長断面寸法を決定するであろうことに気付くだろう。たとえば、円形断面形状を有する中空糸の平均最長断面寸法は、中空糸の直径であろう。別の一例では、長方形断面形状を有する中空糸の平均最長断面寸法は中空糸の長方形断面の長さと幅の間の対角線であろう。さらに別の一例では、星型断面形状を有する中空糸の平均最長断面寸法は、中空糸の星型断面の二つのもっとも遠い地点間の距離であろう。
【0035】
本発明の一実施の形態において、中空糸110は少なくとも約100マイクロメートル、または少なくとも約500マイクロメートル、または少なくとも約1000マイクロメートルの平均最長断面寸法を有する。本発明の一実施の形態において、中空糸110は約1200マイクロメートルの平均最長断面寸法を有する。本発明の典型的な一実施の形態において、円形断面を有する中空糸は、約1200マイクロメートルの平均直径を有する。中空糸は約800から約1500マイクロメートルの範囲の直径を含むことができる。
【0036】
内腔130は多数の断面形状を有することができ、制限されるものではないが、長方形、円形、半円形、四角形、五角形、三角形、六角形、八角形、星状形、星型形、“U”形、浅裂形、複数の浅裂形、不規則形、またはこれらの組み合わせ、またはこれらの間を含む。当業者は内腔130の断面形状は、内腔の平均最長断面寸法を決定するであろうことに気付くだろう。たとえば、円形断面形状を有する内腔の平均最長断面寸法は、内腔の直径であろう。別の一例では、長方形断面形状を有する内腔の平均最長断面寸法は内腔の長さと幅の間の対角線であろう。さらに別の一例では、星型断面形状を有する内腔の平均最長断面寸法は、内腔の星型断面の二つのもっとも遠い地点間の距離であろう。
【0037】
本発明の一実施の形態において、内腔130は少なくとも約50マイクロメートル、または少なくとも約200マイクロメートル、または少なくとも約500マイクロメートルの平均最長断面寸法を有する。本発明の一実施の形態において、内腔130は約300マイクロメートルの平均最長断面寸法を有する。本発明の典型的な一実施の形態において、円形断面を有する内腔は、約300マイクロメートルの平均直径を有する。内腔は約200から約500マイクロメートルの範囲の直径を含むことができる。
【0038】
本発明の一実施の形態において、中空糸110はその内腔130と同一または類似の断面形状を有することができる。本発明の一実施の形態において、中空糸110はその内腔130と比較して異なる断面形状を有することができる。本発明の一実施の形態において、中空糸の平均最長断面寸法の内腔の平均最長断面寸法に対する比は、約2:1より大きく、または約4:1より大きい。本発明の典型的な一実施の形態において、中空糸の平均最長断面寸法の内腔の平均最長断面寸法に対する比は、約4:1である。
【0039】
本発明の一実施の形態において、中空糸110は少なくとも一つの吸着物質を含む。本発明の一実施の形態において、中空糸は少なくとも一つの吸着物質または少なくとも二つの吸着物質120および125(図1B参照)を含む複数の吸着物質を含むことができる。本発明のさまざまな実施の形態は、媒体の少なくとも一つの成分を選択的に吸着するために、少なくとも一つの吸着物質120を使用する。少なくとも一つの成分は多くの物質を含むことができ、制限されるものではないが、二酸化炭素、水素、窒素、酸素または水を含む。吸着物質は、分子篩、ゼオライト、ケイ素アルミノリン酸塩(SAPO)物質、アルミノケイ酸塩、アルミノリン酸塩(ALPO)物質、活性炭素、活性化アルミナ、ケイ酸塩、アミン−グラフト化シリカ、有機金属骨格物質、共役有機骨格物質、有機金属多面体、ゼオライト−イミダゾレート骨格物質、ポリマー系吸着剤、またはこれらの組み合わせといったものを含む。
【0040】
本発明の一実施の形態において、吸着物質は燃焼排ガスからのCO2を選択的に吸着するために用いることができる。空気が燃焼プロセスに用いられて燃焼排ガスを形成すると、得られた燃焼排ガスには大量の窒素が存在する。したがって、使用される吸着物質が窒素に対してCO2の高い選択性を有することが望ましい。CO2を回収するために、燃焼排ガス供給流れは、燃焼排ガス混合物中の窒素に対して、約5より大きいCO2吸着の選択性を有する、または燃焼排ガス混合物中の窒素に対して、約10より大きいO2吸着の選択性を有する吸着物質に接触させられる。本発明の一実施の形態において、吸着物質は窒素に対して、約10から60の二酸化炭素の選択性を有することができる。
【0041】
特に注記のない限り、本明細書中で“選択性”とは、特定のシステム操作条件下での吸着プロセス中の特定の吸着剤に吸着されるある成分のモル濃度と、供給流れ媒体中のある成分のモル比とのバイナリ比較(たとえば一対比較)に基づいている。成分A、成分Bおよび追加の成分を含む媒体に対しては、B成分に対してより大きいA成分の選択性を有する吸着物質は、スイング吸着プロセスサイクルの最終吸着工程において、以下の比:
【0042】
【数1】
【0043】
は、
【0044】
【数2】
【0045】
よりも大きく、ここで、UAは“成分Aの吸着吸収”およびUBは“成分Bの吸着吸収”である。したがって、成分Bに対して、より大きな成分Aの選択性を有するものは:
選択性=UA/UB(ここでUA>UB)
で表わされる。供給流れ媒体中の異なる成分の比較の中で、供給流れ中のモル比に対する吸着剤に捕捉された総モル数が最小比率である成分は、スイング吸着プロセスで“もっとも少ない成分”である。もっとも少ない成分がもっとも軽い分子量を有する必要はないが、CO2とN2との場合、ここで使用される意味でもっとも“軽い”成分はN2である。これは、吸着工程の間に流出する流れ中のもっとも軽い成分のモル濃度は、供給流れ中のもっとも軽い成分のモル濃度がよりも大きいことを意味する。本発明の一実施の形態において、吸着剤組成物は、第2成分に対して、第1成分(たとえば成分A)の選択性を少なくとも5、第2成分に対して第1成分の選択性を少なくとも10、第2成分に対して第1成分の選択性を少なくとも25で有することができる。
【0046】
本発明の一実施の形態において、吸着物質のCO2充填量は、吸着物質1グラム当たりCO2約0.25ミリモルより大きく、吸着物質1グラム当たりCO2約0.75ミリモルより大きく、またはさらに吸着物質1グラム当たりCO2約1.5ミリモルより大きくできる。本発明の一実施の形態において、吸着物質は約−25kJ/(mol CO2)から約−90kJ/(mol CO2)の吸着熱を含むことができる。選択的にCO2を窒素含有燃焼排ガス混合物から除去し、所望の充填量を達成できる吸着物質の例は、制限されるものではないが、ゼオライト、カチオン性ゼオライト、ALPO物質およびSAPO物質のような微小孔性物質を含む。ここで使用に適切なゼオライトの非限定例はゼオライト4A、5A、Bx、NaXおよびNaYを含む。カチオン性ゼオライトの非限定例は、Si/Alの比が約5未満であるゼオライトで、フォージャサイト、ベータおよびモルデナイトなどを含む。たとえばMFIなどのケイ質ゼオライトも窒素含有混合物からCO2を除去するのに用いることができる。追加の吸着物質はハイドロタルサイト、SiまたはAl以外(たとえばPなど)の成分の骨格を含む微孔性物質、炭素、微孔性ゾルゲル由来物質、シリカ、およびメソ孔性シリカにグラフトしたアミンなどを含むことができる。これらの吸着物質は単独または他の物質と組み合わせて用いることができる。
【0047】
本発明の一実施の形態において、吸着物質は乾燥状態の中空糸の約80重量%未満、または乾燥状態の中空糸の約75重量%未満、または乾燥状態の中空糸の約70重量%未満とすることができる。本発明の典型的な一実施の形態において、吸着物質は乾燥状態の中空糸の約65重量%である。
【0048】
本発明の一実施の形態において、中空糸110は少なくとも一つの吸着物質120を含む。吸着物質120は、吸着(adsorbent)層、吸着(adsorbent)粒子、吸着(adsorbent)構成要素、複数の吸着(adsorbent)粒子、複数の吸着(adsorbent)構成要素、吸着(sorbent)粒子、吸着(sorbent)構成要素、複数の吸着(sorbent)粒子または複数の吸着(sorbent)構成要素などを含むことができる。本発明の一実施の形態において、吸着物質120は約100マイクロメートル未満の平均最長断面寸法を有することができる。本発明の一実施の形態において、吸着物質は約50マイクロメートル未満の平均最長断面寸法を有することができる。本発明の典型的な一実施の形態において、吸着物質は約10マイクロメートル未満の平均最長断面寸法を有することができる。本発明の一実施の形態において、吸着物質は約2マイクロメートル未満の平均最長断面寸法を有することができる。
【0049】
本発明の一実施の形態において、吸着剤組成物100は中空糸110を含み、前記中空糸は内腔130と吸着物質120との間の流体連通を防止するための、中空糸110の内腔130を覆うバリア層を有する。バリア層140は多数の物質を含むことができ、制限されるものではないが、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、エピクロロヒドリン(ヒドリン)、ポリエーテルアミドブロック共重合体、ガラス、シリカ、アルミナ、金属、金属酸化物、ラテックス、他の高バリア性ポリマー、これらの共重合体、またはこれらの組み合わせを含む。本発明の一実施の形態において、バリア層140は約50マイクロメートル未満の平均厚みを有する。本発明の一実施の形態において、バリア層140は約30マイクロメートル未満の平均厚みを有する。
【0050】
本発明の一実施の形態において、吸着剤組成物100は、ポリマーと中空糸を通過する複数の蛇行経路を含むポリマーマトリックス150をさらに含むことができる。複数の蛇行経路155は、複数の孔を含み、ここで孔の少なくとも一部はお互いに流体連通している。本発明の一実施の形態において、複数の蛇行経路155は一つ以上のメソ孔、マクロ孔、およびマイクロ孔を含むことができ、ここで一つ以上のメソ孔、マクロ孔、およびマイクロ孔の少なくとも一部はお互いに流体連通している。本発明の一実施の形態において、吸着物質はポリマーマトリックスと関連している。さまざまな本発明の一実施の形態によると、複数の吸着粒子はポリマーマトリックスに高度に結合している必要はない。本発明の一実施の形態において、吸着物質とポリマーマトリックスとの関係は“ケージ内の篩”と記載することができる。本発明の典型的な一実施の形態において、中空糸は複数の蛇行経路の少なくとも一部と流体連通している複数の吸着粒子を含むことができる。本発明の実施の形態は中空糸を通じて複数の吸着物質が分散しているものを開示するが、蛇行経路のいくつかはそれらに関係する吸着物質を含まない。
【0051】
中空糸110は多数のポリマーを含むことができ、限定されるものではないが、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスルホン、エピクロロヒドリン、ポリエーテルアミドブロック共重合体、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ(テトラフルオロエテン)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エラストマー、これらの共重合体、またはこれらの組み合わせを含む。中空糸110はガラスまたはセラミック物質を含むことができる。中空糸110はポリマーおよびガラスまたはセラミック物質の組み合わせとすることができる。
【0052】
本発明の一実施の形態において、中空糸は、中空糸の長手方向末端部に配置された末端キャップを含むことができ、キャップは内腔を通り抜ける流体流動を妨げない。末端キャップは中空糸の長手方向末端部の蛇行経路と、中空糸の長手方向末端部周辺の環境の間の流体連通を防止することができる。
【0053】
本発明の一観点は媒体の成分を選択的に吸着する方法を含む。前記方法は、媒体を、少なくとも一つの吸着物質と、中空糸内に配置された内腔と、前記内腔と前記吸着物質との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む、中空糸と接触させる工程と、前記媒体の成分を吸着する工程とを含む。本発明の典型的な一実施の形態において、流体を吸着する方法は、媒体を、複数の蛇行経路、前記複数の蛇行経路の少なくとも一部と流体連通する複数の吸着粒子と、中空糸内に配置された内腔と、前記内腔と前記複数の蛇行経路との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む中空糸と接触させる工程と、前記媒体の成分を吸着する工程とを含む。前記方法は、さらに媒体の成分を脱着する工程を含むことができる。
【0054】
本発明のさまざまな実施の形態は媒体の成分を選択的に吸着することを対象とし、媒体は燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有流体を含むことができる。本発明の典型的な一実施の形態において、吸着繊維組成物は燃焼排ガスからのCO2の回収のための温度スイング吸着プロセスで用いることができる。
【0055】
本発明のTSAプロセスは複数の繊維系組成物を含む接触器を使用することができる。本発明のTSAプロセスは複数の繊維系組成物を含む複数の接触器を利用することができる。図2A−Bに示されるように、接触器はチャンバを含み、前記チャンバは、供給流れ流入口と、供給流れ流出口と、熱伝導流体流入口と、熱伝導流体流出口と、複数の実質的に整列した中空糸とを含む。本発明の典型的な一実施の形態において、前記中空糸は、前記供給流れ流入口および前記供給流れ流出口と流体連通する複数の蛇行経路と、前記複数の蛇行経路の少なくとも一部と流体連通する複数の吸着成分と、前記熱伝導流体流入口および前記熱伝導流体流出口と流体連通する中空糸内部に配置された内腔と、前記内腔と、前記中空糸の少なくともかなりの大部分の前記複数の蛇行経路との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む。
【0056】
図2A−Bは、構造化された中空糸がクロスフロー接触器内へ形成され得る様式の概略説明図を示す。構造化中空糸吸着剤110を含むクロスフロー接触器200が図2Aおよび2Bに示される。図2Bは、図2Aの接触器205のチャンバの外表面を透明にした接触器を示す。図2Bの点線は接触器の外表面の境界を示す。中空糸110はポリマー、少なくとも一つの吸着物質120および複数の蛇行経路を含むポリマーマトリックス150を含む。中空糸110は、中空糸110内部に配置された内腔130と、前記内腔と前記吸着物質との間の流体連通を防止するための、前記内腔130を覆うバリア層140とを含む。バリア層140が内腔と少なくとも一つの吸着物質120との間の流体連通を防止するため、熱伝導媒体が中空糸110の内腔130を通過することができる。拡散バリアとして作用するために、バリア層140の効果的な拡散係数は、ポリマーマトリックス150の平均拡散係数の約1/50未満、好ましくはポリマーマトリックス150の平均拡散係数の約1/10,000未満とすべきである。拡散バリアは、内腔130を通る加熱および冷却流体供給がポリマーマトリックス150に入ること、またはCO2のような吸着質物質の損失の内腔流体への流入を効果的に防ぐ。
【0057】
実質的に整列した中空糸110は、束状構造または斜めに配列することができる。繊維束の末端は、結合物質210内に埋め込むまたは組み込むことができる。結合物質210は隣接する中空糸を効果的に相互連結する。本発明の一実施の形態において、結合物質は中空糸110を実質的な平行配列に固定する。これを行う一つの方法は、中空糸の末端を結合物質210で囲む、組み込みまたは埋め込み工程を含む。埋め込まれた中空糸配列を視覚化するために、図2Bは、チャンバ205とともに結合物質210を透明にした平行チャネル繊維系接触器を示す。この埋め込まれた配列は、その後チャンバ205内にシールされる。シール面240はチャンバ205の末端に備えられる。操作時に、チャンバ205はTSAまたはRCTSA(高速サイクル熱スイング吸着:rapid cycle thermal swing adsorption)モジュールに、分離のための媒体と熱交換媒体の間の流体連通を防止す
る方法で取り付けられる。チャンバ205は管状または円筒状で示されているが、チャンバは、限定されるものではないが、長方形または立方体形状を含む多くの形状を有することができる。溝215がチャンバ205の壁を通過して切り取られ、ガスが接触器内へ通過できるようになる。接触器の中央に中央ガス収集チューブ220が配置される。ガス収集チューブの中央ガス収集チューブの末端225は、固体の不浸透性物質であり、これは、限定されるものではないが、固体金属またはエンジニアリングプラスチックを含む。これにより、ガスが過熱または冷却媒体と混ざることなく接触器200に流入または流出することを可能にする。モジュール230内部のガス収集チューブの一部は、多孔性金属または多孔性ポリマーまたは織物メッシュのような多孔性物質である。これは接触器内のガスが効果的に収集されるのを可能とする。吸着工程では、燃焼排ガスは溝215を通過してクロスフロー接触器200内部に流れ、中空糸吸着剤110に接触する。少なくとも一つの吸着物質120を含むポリマーマトリックス150はCO2および任意にH2O、SOxおよびNOxを燃焼排ガスから除去する。精製された蒸気は中央ガス収集チューブ230の高多孔性部分230に収集される。精製ガスは、流れ調節バルブ(図示せず)および排気筒(図示せず)とを連結する中央ガス収集チューブ220の不浸透性部分225を通じて接触器220の外部へ通過する。吸着工程の間の温度上昇を制限するために、冷却媒体(たとえば水)が構造化中空糸110の内腔130を通過する。吸着工程が完了した後、モジュール内への燃焼排ガスの流れはバルブで止められ、加熱媒体(たとえば蒸気)が構造化中空糸110の内腔130を通過する。少なくとも一つの吸着物質120を含むポリマーマトリックス150から遊離された、CO2および任意にH2O、SOxおよびNOxが、中央ガス収集チューブ220または溝215のいずれかを通じて接触器200の外部へ通過する。
【0058】
複数の中空糸を含む繊維系吸着接触器は、中空糸の少なくともかなりの大部分の複数の蛇行経路と熱伝導媒体との間の流体連通を防止するのに効果的な、中空糸の長手方向末端のそれぞれに配置された末端キャップをさらに含むことができる。繊維系吸着接触器は、さらに隣接する繊維を相互連結するのに効果的なバインダー物質を含むことができ、前記バインダー物質は末端キャップとともに、熱伝導媒体と隣接する繊維の複数の蛇行経路との間の流体連通を防止する。
【0059】
本発明のさまざまな実施の形態において、接触器200は、媒体(たとえば燃焼排ガス混合物)と、媒体から少なくとも一つの成分を選択的に除去する少なくとも一つの吸着物質とを、効率的に接触するように設計することができる。効率的な接触は必要とされる吸着剤の量、接触器の容量および接触器を再生するのに必要なエネルギーを最小化する。効率的に設計された接触器では、燃焼排ガスの圧力降下、および接触器を加熱または冷却するために使用される流体も最小化される。これは、同様に、接触器を通過する燃焼排ガスの圧力低下からのエネルギー損失および接触器を加熱または冷却するために使用される流体の膨張または圧縮に必要とされるエネルギーを最小化する。
【0060】
本発明の一実施の形態において、繊維系吸着接触器は少なくとも2つの工程、吸着工程および再生工程、を通じて循環される。接触器の再生は、接触器を、結果として接触器から回収成分(たとえばCO2)を脱着できる効果的な温度に加熱して遂行することができる。接触器はその後、他の吸着工程を完了できるように冷却される。本発明のさまざまな実施の形態は、複数の繊維系吸着接触器を、吸着および脱着を促進するために熱伝導媒体に周期的に接触させることを対象とする。熱伝導媒体は多くの媒体を含むことができ、制限されるものではないが、水、水蒸気、蒸気またはこれらの組み合わせを含む。本発明の典型的な一実施の形態において、水はCO2吸着のため、繊維系吸着接触器200の複数の中空糸110の内腔130を通じて流れ、蒸気はCO2脱着のため、繊維系吸着接触器200の複数の中空糸110の内腔130を通じて流れる。
【0061】
当業者は、結果的に、繊維系吸着接触器(たとえば第一接触器)が飽和状態に近づき、吸着前面が接触器を突破し、結果として燃焼排ガスから除去されるCO2の量が、所望量を下回ることを認識するだろう。結果として、第一接触器への燃焼排ガスの流れは、第二接触器内に流用することができ、第二接触器はすでに再生済みであり、一方第一接触器は熱的に再生される。熱低再生に続いて、第一接触器は吸着工程の準備がされ、燃焼排ガス混合物の流れは第二接触器から第一接触器へと切り替わる。総サイクルタイムは、第一サイクルでガス状混合物が最初に第一接触器に導入された時から、即座に続くサイクル、たとえば一回の床の再生の後、ガス状混合物が再び第一接触器に導入された時までの時間の長さである。第一接触器および第二接触器に加えて、複数の接触器(たとえば、第三、第四、第五など)の使用は継続的処理をもたらすことができ、特に吸着時間が再生時間よりも短い場合である。
【0062】
本発明の一実施の形態において、熱スイング吸着プロセスは吸着および脱着の迅速なサイクルを含み、この場合プロセスは高速サイクル熱スイング吸着(RCTSA)プロセスと呼ばれる。高速サイクル熱スイング吸着プロセスは、本開示の目的のために、連続する吸着工程間のサイクルタイムが約2分未満、または約1分未満、または約0.5分未満、さらにまたは0.25分未満のもの、と定義される。本発明の一実施の形態において、再生工程は部分的パージ圧力置換、または圧力スイングなどによって補助され得る。これらの工程の組み合わせは、本明細書中で、再生工程の間のいくつかの時点で熱スイングを採用する限り、熱スイングプロセスと呼ぶ。
【0063】
多くの場合、吸着剤再生に必要な時間は、接触器の吸着能をすべて利用するのに必要な時間よりも短いだろう。このような場合、複数の接触器が加熱/再生段階および再冷却段階にある間に、複数の接触器が吸着段階であることが望ましい。本発明の一実施の形態において、吸着に携わる複数の接触器は、もっとも直近に再生された接触器ユニットが吸着列の最終床であり、列の最初のユニットは次に再生され得るような、一連の方法で接続される。他の一実施の形態において、吸着ユニットは、それぞれの吸着剤が全供給流れの一部を扱うように、平行に接続される。
【0064】
燃焼排ガスまたは煙道ガスは、広範な種類の産業工程から排出される。燃焼排ガスの圧力は典型的に大気圧より若干高く、一般的に約2気圧よりも低い。燃焼排ガスの温度は典型的に約100℃から約250℃の範囲であり、より典型的には約150℃から約250℃であり、しかしSOx除去のために湿式石灰石洗浄が使用される時は、約30℃から約70℃である。燃焼排ガスのガス状成分は一般的にN2、O2、CO2、およびH2Oなどを含む。NOxやSOxのような少量の汚染物質もしばしば存在する。燃焼排ガス中のCO2濃度は、典型的に約3モル%から約15モル%の範囲であり、H2Oは典型的に約0.1モル%から約15モル%である。CO2+H2Oの総モル濃度は、化学量論的燃焼が煙道ガスを生じる時は通常約25%未満であり、高温燃焼プロセスにおける温度を制限するために希釈または過剰空気が工程に採用された時は通常約15%未満である。
【0065】
ある場合、CO2を濃縮または純粋蒸気に分離して、蒸気を高圧に圧縮して、それを分離のための適切な地下形成に導入して、CO2排出を軽減することが有利である。適切な地下形成の非制限例は、制限されるものではないが、注入されたガス状成分のかなりの損失を防止する上端のシールを有する帯水層、オイルタンク、ガスタンク、枯渇オイルタンク、枯渇ガスタンクを含む。一般的に分離されたCO2は、これらの種類の地下形成に注入するために、約1000psiより大きい、または2000psiより大きい、およびしばしば約5000psiより大きい圧力に圧縮されなければならない。回収CO2の低圧廃棄もまた想定でき、たとえば温室環境での促成植物成長およびバイオ燃料製造のための藻の繁殖などである。
【0066】
本発明の実施で用いられる燃焼排ガスからのCO2回収のために設計された組成物、方法および装置は、非常に効率的である。ある場合では、燃焼排ガスから、CO2を約50%を超えて、約75%を超えて、約85%を超えて、または約95%を超えて、吸着物質を用いて回収することができる。当業者は本発明の方法の実施の形態が、燃焼排ガスから、CO2を約50%未満で回収することも含み得ることを理解するだろう。
【0067】
本発明の一実施の形態において、吸着剤組成物および方法は、媒体から一つ以上の成分を分離することを含む。本発明の一実施の形態において、一つ以上の成分は、燃焼排ガス蒸気を一つ以上の吸着物質を含む接触器に接触させることによって、媒体から分離することができる。本発明の一実施の形態において、熱再生を採用するスイング吸着プロセスを用いて、燃焼排ガスからCO2を回収する。本発明の一実施の形態において、方法はさらに燃焼排ガス中の水の除去を含む。本発明のさらに他の一実施の形態において、方法はさらにSOxおよび/またはNOxの除去を含む。
【0068】
本発明の一実施の形態において、接触器は複数の中空糸を含むことができ、一つの中空糸は媒体の異なる成分を吸収できる少なくとも一つの吸着物質の混合物を含んでいる。本発明の一実施の形態において、接触器は複数の中空糸を含むことができ、一つの第一の中空糸は媒体の第一の成分を吸着できる第一の吸着物質を含んでおり、一つの第二の中空糸は媒体の第二の成分を吸着できる第二の吸着物質を含んでいる。第一および第二の中空糸に加えて複数の中空糸(たとえば、第三、第四、第五)の使用は、媒体の多数の成分の吸着をさらにもたらすことができる。
【0069】
本発明の一実施の形態において、燃焼排ガスの一つ以上の成分は、一つ以上の接触器を用いて吸着することが可能である。本発明の一実施の形態において、燃焼排ガス流れは、媒体の第一の成分を除去するために第一の接触器を通過し、媒体の第二の成分を除去するために第二の接触器を通過することができる(たとえば、媒体のそれぞれの成分のための別個の操作ユニット(たとえば、接触器)。1つ以上の接触器を用いて、媒体(たとえば、燃焼排ガス)から多数の成分を除去する時は、一つの接触器を一つの特定の成分の除去のために最適化することができる。
【0070】
本発明の一実施の形態において、一つ以上の接触器は、水を除去するための第一の接触器と、SOx、NOx、およびCO2の一つ以上を除去するための第二の接触器を含むことができる。一つ以上の接触器は、本発明のさまざまな実施の形態が吸着工程の終了後にそれぞれの接触器を再生するための方法を開示しているため、使用することができる。
【0071】
本発明の一実施の形態において、複数の異なる吸着物質を接触器を形成するために使用することができる。このような実施の形態においては、吸着物質を媒体の特定の成分の所望の除去のために選択できる。複数の吸着物質を含む接触器は、1つの接触器で複数の成分を選択的に除去することを可能にする。本発明の他の一実施の形態において、接触器は媒体から複数の成分を除去できる吸着物質を含むことができる。
【0072】
本発明の一観点は、燃焼排ガスからCO2と水を除去するためのシステムを含む。このシステムは複数の吸着物質を含む接触器を含むことができ、吸着物質は独立して水および/またはCO2を吸着することができる。本発明の典型的な一実施の形態において、水選択吸着剤は供給流れ供給口付近に設置でき、CO2選択吸着剤を水選択吸着剤から下流に設置することができる。このような配置は、燃焼排ガスは、CO2選択吸着剤の前に水選択吸着剤に接触するため、最初に燃焼排ガスから水を除去し、続いてCO2を除去することを意図している。いくつかの実施の形態ににおいて、CO2除去に使用されるのと同一の吸着物質は、燃焼排ガス中の、たとえばSOx、NOx、または水といった、他の成分も除去できる。SOx、NOx、および水を吸着できる吸着物質は、制限されるものではないが、ゼオライト、カチオン性ゼオライト、メソ孔物質、炭素、ポリマー、混合マトリックス物質、およびこれらの組み合わせを含む。
【0073】
本発明の一実施の形態において、脱水工程はグリコール脱水を含むことができ、これは燃焼排ガスから水を除去するために用いることができる。このような実施の形態において、燃焼排ガスは、別個のプロセスまたは燃焼排ガスを吸着接触器に導入する前のユニット操作で脱水することができる。グリコール脱水で効率的に水を除去するために、燃焼排ガスの温度は110℃未満、または75℃未満に降下させることができる。
【0074】
本発明の他の一実施の形態において、脱水工程は燃焼排ガスを吸着接触器に接触させる前に、凝縮水(たとえば、水滴や霧)の物理的ノックアウト(physical knockout)を含むことができる。このような実施の形態において、接触器は燃焼排ガスから選択的に水を除去する吸着物質を含むことができる。燃焼排ガスから水を選択的に除去できる吸着剤は、限定されるものではないが、カチオン性ゼオライト、機能性マイクロ孔およびメソ孔、炭素、混合マトリックス物質、ポリマー、またはこれらの組み合わせを含む。
【0075】
本発明のさまざなな実施の形態において、吸着接触器に存在する処理済燃焼排ガスを、吸着サイクルの間の少なくとも一時点において、約400ppm以下、または約50ppm以下、または約20ppm以下の水含有量に脱水できる。
【0076】
接触器が燃焼排ガスからかなりの割合(たとえば、75%より大きい)のCO2および水を除去した時は、本発明の一実施の形態はこれらの両方の成分を除去するための熱再生工程を含むことができる。本発明の一実施の形態において、再生工程は、分離した水が豊富な流れと、分離したCO2が豊富な流れを、熱再生工程の間で生じるように実施できる。
【0077】
本発明の一実施の形態において、接触器の吸着および再生は外部から接触器をそれぞれ冷却および加熱することで完遂される。外部から加熱された接触器は、接触器を加熱または冷却するための熱伝導媒体(たとえば、流体、液体、ガス)を流す複数の内腔を備える。本発明の典型的な一実施の形態において、熱伝導媒体が、再生工程の間に遊離された供給流れ燃焼排ガスまたはCO2と混合しないように、複数の内腔は吸着物質と流体連通していない。
【0078】
本明細書および付属するクレームにおいて、単数形“a”、“an”、および“the”は、内容が明らかに違うことを指示しない限り、複数対象も含むことに留意しなければならない。
【0079】
本明細書中に含まれる全ての特許、特許出願、および参考文献の全体を、参照して具体的に援用する。
【0080】
もちろん、前述の事項は本発明の典型的な実施の形態のみに関係し、多数の改良または代替手段を、本開示中で説明された本発明の精神および範囲から離れることなく、その中に行うことができる。
【0081】
本発明の典型的な実施の形態が本明細書中に示されるが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。当業者に連想されるさまざまな改良および代替手段が存在する。
【0082】
本発明はさらに、本明細書中に含まれる、理解を明確にするために提供される実施例によって説明される。典型的な実施の形態は、それらに関して範囲に制限を加えるように解釈されては決してならない。一方、頼ることはさまざまな他の実施の形態、改良、およびこれらの同等物を含むことができ、本明細書の記載を読んだ後に、当業者に、本発明の精神および/または添付のクレームの範囲を離れることなく、これら自身を提供するであろうことを明確に理解すべきである。
【0083】
そのため、本発明の実施の形態が、典型的な実施の形態への言及で詳細に説明されていても、当業者は、変化および改良は、付属のクレームで定義された本発明の範囲内でもたらされ得ることを理解するだろう。したがって、本発明のさまざまな実施の形態の範囲は上記で議論された実施の形態に限定されるべきではなく、以下のクレームおよび全ての同等物によってのみ定義されるべきである。
【実施例】
【0084】
実施例1:繊維組成物設計
本実施例では、新規の中空糸系固体吸着システムを検討する。中空糸形成は、一般的に当該技術分野で“湿式紡糸”と呼ばれる、公知の非溶媒相変換手法に基づく。溶媒、非溶媒、および硝酸リチウムのような添加剤を含むポリマー溶液を、ダイスを通して非溶媒急冷浴に押し出す。非溶媒急冷浴は、急冷浴と新生繊維内に存在する溶媒の間の物質移動の駆動力となり、結果として、ミクロ相分離と多孔質繊維をもたらす。相分離は、図3に示されるように、ポリマー/溶媒/非溶媒溶液のための三角相図を用いると、もっとも視覚化される。バイノーダル線は、単相と二相領域の間の分割を示し、二相領域はさらに準安定領域と非安定スピノーダル領域に分割され得る。紡糸溶液は、バイノーダル線近くの単相領域に存在するように形成される。紡糸工程の間、凝固浴槽からの過剰の非溶媒が組成物を二相領域に移動させ、液液分離が生じ、結果として連続的なポリマー細孔ネットワークとなる。
【0085】
ポリマーおよび無機サンプル吸着技術を特徴付けるために用いることのできる方法は、たとえば、Koros,W.J.およびD.R.Paulによる“Design considerations for measurement of gas sorption in polymers by pressure decay”,J.Polym.Sci.:Part B:Polym.Phys.,14,1903-7(1976)に報告されている。これらの技術は、一定温度での濃度対圧力をプロットすることによって、特定の一組の吸着剤−吸着剤のための平行等温式を決定するために用いられる。さらに、周期的吸着工程で使用できる、サイクルタイムの知見を提供する、平衡に達するまでの時間を測定することができる。これは、繊維系吸着剤の研究において、吸着を非常に貴重なキャラクタリゼーション法とする。このやり方は、これを主に、第一場面キャラクタライゼーションツールに限定する制限を有する。第一に、熱はあらかじめ吸着システム内部に介在できない。第二に、吸着システムはフロー方式ではなくバッチ方式であるため、対流物質移動抵抗が関与しない。最後に、純粋ガスのみを使用することができるため、競合する吸着の効果を説明できない。
【0086】
実施例2:繊維系システム設計
燃焼後炭素回収システムは混合マトリックス中空糸基本骨格に基づいて設計された。混合マトリックス中空糸基本骨格は、いくつかの理由から選択された。第一に、吸着の間に中空糸の穴に冷却剤、および脱着の間に穴に加熱剤を供給するために中空糸形態を利用することによって、高い吸着効率を達成できる。第二に、中空糸の薄い多孔質壁は、迅速な加熱および物質移動時間を可能とし、このような厳しい供給量には必要である。最後に、設計において、中空糸中の加熱および冷却剤は単純に蒸気または水であり得、このためいずれの不要な副産物の除去は、システムに関連した。
【0087】
繊維系システムは、擬似安定状態連続操作のために、保護床を有しない2つの床システムを用いて設計される。図4に示される様に、活発にCO2を吸着している床は、中空糸の穴を通過する液体の水を有し、活発に脱着している床は、中空糸の穴を通過する蒸気を有するだろう。いずれの場合も、本質的に不浸透性の内腔層が、燃焼排ガスと熱交換水または蒸気流れの間の交換を防止する。吸着の間、燃焼排ガスはクロスフロー熱交換配置の中空糸を通過する。
【0088】
設計に使用される土台は、500MW PC発電所であった。繊維系吸着システムに供給される燃焼排ガス条件は、実に粉炭発電所と一致しており、1M SCFM供給、15モル%CO2、1.1気圧、および50℃での温度を含む。いくつかの他の設計制限が、現在の技術および費用の考慮に基づき加えられた。大気圧付近で、このような大量のガスを圧縮する費用は、極めて高いと見なされた。同様に、分離コストおよび排出を低減するために、製品ガスを可能な限り高圧にすると同時に、回収効率を90%以上に設定した。最後に、繊維設計において、中空糸内の物質移動速度を、燃焼排ガスの高い表面速度と短い接触時間に適用させるために最大化した。これらおよび他の制限を、燃焼排ガスの圧力低下を最小化することに対して最適化した。
【0089】
多くの設置された発電所にとって重要な要素は、予定の装置の面積である。考慮した要素制限に基づくと、繊維連結間は12m長さ、12m高さおよび25m幅の大きさと計算されるが、アミン除去設備と比較するとこれは実際は非常に小さい。アミン除去システムは典型的に6つの吸着剤(それぞれ22フィートの直径を有する)、6つの半効率的除去剤(それぞれ20フィートの直径を有する)、3つの効率的除去剤(それぞれ21フィートの直径を有する)を有する。繊維系システムは約300m2の面積を有し、一方アミン除去システムは約600m2の面積を有する。圧力低下を最小にするために、床は12%
のみ充填されなければならない。これを1200ミクロンの中空糸の最適外径と組み合わせると、中空糸の数を一床あたり32百万の中空糸と容易に決定できる。これは決して小さくないが、工業適用途の繊維モジュールは150百万の繊維を含む可能性があり、したがってこの数はこのような大きな供給流れにとって不合理ではない。
【0090】
次に行うべき決定は、吸着剤の選択およびポリマー繊維マトリックス内部に分散する吸着剤の量であった。中空糸中の65重量%の吸着剤という目標値は、一中空糸当たりの大きなCO2吸着能の必要性から設定された。中空糸内部直径は320ミクロンに設定された。高い吸着剤充填を有する、大きな外径(OD)/小さな内径(ID)中空糸は、設計制限の中で、一中空糸当たり、大量のCO2が回収されることを可能とする。実現性および入手可能性の困難性に基づき、3つの吸着剤が当初検討された。第一の選択は、CO2吸着の伝統的な産業標準であるゼオライト13Xであった。他の吸着剤と比較して、ゼオライト13XのCO2吸着能は非常に高く、吸着熱は低い。表1に、さまざまな吸着剤の品質が比較されている。次の吸着剤選択は、高シリカMFIであった。この吸着剤は非常に疎水性であり、ゼオライト13Xと比較して吸着熱が低く、同等のCO2吸着能を有するという利点を示す。最後に、第三の吸着剤の選択はメソ孔シリカ上にグラフトしたアミンであった。これらのアミン系吸着剤は、燃焼排ガスのような湿った供給においてCO2吸着能が上昇するという利点を示す。しかし、これらの吸着剤は、通常、ゼオライト13Xまたは高シリカMFIのいずれかよりも、非常に高い吸着熱を有し、それ自身、システムを操作するのにより多くの脱着蒸気とより多くの冷却水を必要とするだろう。さらに、これらの結合アミンの長期操作条件下での安定性を測定するための重要な研究を行う必要が未だある。
【0091】
【表1】
【0092】
最後に、中空糸中の吸着剤充填は決定要因であり、中空糸中75重量%の吸着剤充填のものを、いくつかの予備紡糸スクリーニング試験に基づき、達成可能目標として選択した。
【0093】
MFIの吸着特性を使用して、RTSA繊維系システムのサイクル特性を決定することができる。典型的な500MW発電所は1分間に9.2トンのCO2を放出し、システムを通して単純な質量バランスをとることで、1サイクル当たりのCO2回収量を、サイクルタイムとともに見つけることができる。吸着工程中の脱着熱が、吸着剤が緩やかな温度の上昇のみを経験するように、およびCO2吸着剤がたった50℃であり、吸着が35℃で起きるように、吸着剤の温度を穏やかにすると仮定すると:
【0094】
【数3】
【0095】
15℃で:
【0096】
【数4】
【0097】
したがって、本方式の捕捉は:
【0098】
【数5】
【0099】
ここから、サイクルタイムは燃焼排ガスCO2流量を決定することにより決定された:
【0100】
【数6】
【0101】
25秒のサイクルタイムは、典型的なTSA除去設備のサイクルタイムが数時間から数日であることを考慮すると、非常に速い。この迅速なサイクルタイムは吸着質の吸着剤への接触時間が短いであろうことを示唆している。これを確定するために、表面速度を以下に示されるように計算した。
【0102】
【数7】
【0103】
ここから、接触時間は4.3秒であることがわかった(9.25fpsで、29.4ft通過長さ)。これは、中空糸中での物質移動のために利用可能な上限時間を設定する。
【0104】
いったん中空糸連結および繊維系吸着剤の大きさが決められると、床を通過した燃焼排ガスの圧力低下を計算できた。良好な物質移動をもたらしている間の圧力低下を最小にするために、クロスフロー熱交換器フローパターンを選択して、繊維床を横断する圧力低下を、観測を横切る圧力変化のための方程式を用いて計算できた。
【0105】
【数8】
【0106】
これは中空糸床を通じる流れのための遷移領域と同じ桁数であり、したがってこの事例を利用した(これは控えめにも高い圧力低下となるだろう)。
【0107】
【数9】
【0108】
Nrは、典型的なガスの“束(packet)”が、連結管を通過する際に、いくつの妨害物と衝突するかの量である。これは以下のように予測された。
【0109】
【数10】
【0110】
ここで、L0は妨害物含有セルの直径である。いったんこの特徴的な直径が見つけられたら、妨害物の数は単純に以下のように予測された:
【0111】
【数11】
【0112】
結果として得られた圧力低下は0.15atmであるとわかった。供給ガスを1.15atmまで圧縮するために、追加の通風器または容積型送風機が必要となるだろう。
【0113】
実際の装置への関心は、発電所の炭素回収方式寄生負荷である。この方式で見つけられた2つの主要な寄生負荷は蒸気の使用と、他の冷却塔の追加であった。必要な蒸気および水の総量を決定するために、物質とエネルギー平衡が、吸着および脱着工程の間に、システム上で行われた。典型的な熱交換器方法であるΔTが5℃を吸着工程に選択した。25℃での環境条件の水が35℃まで加熱されると予測し、一方シェル側燃焼排ガスが50℃から40℃に冷却されると予測した。
【0114】
【数12】
【0115】
吸着を通じての熱付加は、穴の中の水によって除去されるため、これらの熱は同等に設定され、冷却水の必要量を決定した。
【0116】
【数13】
【0117】
結果として得られた水の流速56,000pgmは、ダクトの必要性から大きな資本投資を意味する。脱着の間、最悪の場合の概算として、排気蒸気の潜在エンタルピーを有すると予測された。さらに、凝縮蒸気はより多くの特定の熱を損失し、発電所内の蒸気コンデンサシステムに送り戻される前に40℃に冷却すると予測された。より潜在的な熱を有するより高品質な蒸気を使用することができ、その結果、より少ない蒸気の使用が可能となるが、しかし廃棄蒸気が入手可能でない限り、費用が高い。このことに関して最適化する条件は確実に存在する。
【0118】
【数14】
【0119】
それぞれのサイクルで平衡状態にあるシステムのために、蒸気によって除去される熱量は、脱着に必要とされる熱量と同等でなければならない。仮に低品質蒸気が十分な潜熱を供給しない場合は、われわれは蒸気が凝結すると予測し、われわれは凝縮蒸気のための、温度60°Kの値の降下を、脱着熱源として使用する低品質蒸気の場合は、妥当とみなす。
【0120】
【数15】
【0121】
この数値を発電所効率への寄生負荷を決定するために使用した。これらの熱伝導流体を中空糸の穴を通じて送り出すために必要な圧力低下は、非圧縮性の流れおよびニュートン性流体と仮定して、Hagen-Poiseuille方程式を用いて計算できる。1トンのCO2回収に必要な蒸気は、異なる炭素回収手段の間の有用な対照であり、以下のように計算できる:
【0122】
【数16】
【0123】
繊維系吸着剤の蒸気の必要性の低さは、この技術の主要な利点の一つを例示している。伝統的な気液アミン接触器は、1トンのCO2に1.3−1.5トンの蒸気の再生必要性がある。
【0124】
水は蒸気よりも実質的に圧力低下が大きいだろう。したがって、水を穴の中の圧力低下を測定するために用いた。
【0125】
【数17】
【0126】
蒸気は、脱着工程の間に、穴の中で凝結すると予測されるため、必要とされる圧力低下は、サイクルの吸着部分の間の穴の中で使用される水の圧力低下に比べて、ごくわずかだろう。
【0127】
繊維系吸着システム設計に関連する多くの問題の一つは、熱および物質移動に必要な時間であった。管束を通過する層流の物質移動相関関係を、中空糸壁を通過するCO2の物質移動係数を決定するのに用いた。
【0128】
【数18】
【0129】
さらに、多孔質繊維壁内の有効拡散係数を予測でき、即ち以下である。
【0130】
【数19】
【0131】
これから、外部物質移動限界、対、内部物質移動限界を計算した。
【0132】
【数20】
【0133】
α値は低いことがわかり、外部物質移動限界を示している。90%飽和までの時間は、約0.55秒であることがわかり、このようにして最小必要接触時間を設定する。この炭素回収方法の有効性をさらに確実にするために、中空糸の熱的平衡に必要とされる時間を計算しなければならない。極端な例として、流れはヌッセルト数が設定されるように十分に作成されたと予測された。
【0134】
【数21】
【0135】
中空糸壁の有効熱伝導率を、その後、ポリマー熱伝導率、吸着粒子、および隙間の空気の加重平均として決定し、2.45W/m−Kと予測した。熱伝導グラフを、中空糸壁内の熱平衡の時間を決定するために採用した。
【0136】
【数22】
【0137】
【数23】
【0138】
【数24】
【0139】
【数25】
【0140】
平衡までの時間は0.027秒と決定され、これは必要とされる迅速な熱サイクルが可能であることを示す。この結果はCO2が局部的に中空糸壁内に埋め込まれた篩の中に吸収するのに必要な時間は重要でないことも示している。MFI粒子は、3マイクロメートルの球体(または立方体)と予測され、篩が最高平衡充填の99%に到達する時間を計算した。
【0141】
【数26】
【0142】
粒子が0.3ミクロンとすると、このタイムスケールはなおさら重要でない。したがって、主要な発見された抵抗は気相抵抗であった。さらなる調査は繊維系吸着剤強度の抵抗であり、繊維系吸着剤システムの妥当性を決定するために実施された。
【0143】
【数27】
【0144】
40MPaのセルロース降伏応力を使用して、中空糸は両方の流れ条件でも適用できる。
圧縮費用を軽減するために、高純度のCO2を可能な限り最大圧力で生産することが重要であり、なぜなら圧縮コストは初期圧力の桁と反比例して上昇するからである。吸着工程が終了し、脱着工程が開始した後に、中空糸間の空間は燃焼排ガス(15モル%のCO2)で充填されると想定され、調節弁バルブを閉じた。蒸気が穴を通過して流れた時に、CO2が脱着および加圧を始めるだろう。
【0145】
【数28】
【0146】
20pisaの脱着圧力は、約25%のガスが圧力差のために流出するのを可能とする。残りを流出させるために、脱着工程が開始し、圧力差が残りの製品ガスを大気圧下で押し出す。燃焼排ガスリサイクル蒸気が脱着工程に役立つという確実な可能性がある。ここから、CO2製品ガス圧縮され隔離設備に送られる。システムの概観を図5および6に示す。いくつかのユニット操作を、送水ポンプ、第二冷却塔、連続した2つの送風機、隔離コンプレッサを含む典型的な発電所に加えた。プロセス統合略図に見られるように、このシステムは、NGCCおよびIGCC発電所に容易に備え付けることができる。
【0147】
【数29】
【0148】
次の中空糸の設計の考慮は、有機/無機界面形態であった。吸着剤への物質移動速度を最大にするために、“ケージ内の篩”形態が目標に選択された。“ケージ内篩”は、充填顆粒がポリマーマトリックスに不完全に接着している(またはまったく接着していない)現象である(図7参照)。ポリマー−充填剤の不適合性、および溶媒交換の間のポリマー応力蓄積は“ケージ内の篩”の背景にある原因と信じられている。
【0149】
中空糸設計の一つの観点は、内腔側面バリア層の構造とバリア層の材料の選択である。バリア層の構築には2つの方法が考慮され、二重層紡糸および後処理工程である。二重層紡糸は、内腔層が、中空糸が形成される時に直接形成されることを可能にする。この例は中空糸の後処理に重点を置く。後処理方法は、典型的に適切なコーキングポリマーで中空糸の外側を洗浄することを含む。この設計では、後処理は中空糸の穴の中で行われただろう。ポリビニリデンジクロライド(PVDC)ラテックスが、この適用の主要な候補として選択された。このポリマーは非常に低い水およびガス浸透率、およびこのシステムの高速熱サイクルに十分な熱耐性を有する。
【0150】
実施例3:試験方法
N−メチル−ピロロジン(NMP)(ReagentPlus(登録商標)99%、Sigma-Aldrich社製、ミルウォーキー、ウィスコンシン州)をポリマー溶液の溶媒として用いた。なぜならこれは水に混和性であり、酢酸セルロースに強い溶媒だからである。メタノール(99.8%、ACS Reagent、Sigma-Aldrich社製)およびヘキサン(ACS Reagent、>98.5%、Baker社製)を、中空糸形成の溶媒交換の一部として使用した。この意図は、毛管力が乾燥中に孔構造を壊すのを防止するために、表面張力の高い流体を、表面張力の低い流体に置き換えることである。すべての溶媒および非溶媒を、精製または改良なしで使用した。
【0151】
ゼオライト13X(1−3ミクロン粒子、Sigma-Aldrich社製)をポリマーマトリックスに分散させる吸着剤として選択した。一度受け取られると、統合体からいずれの過剰有機物を取り除くために、ゼオライトを230℃で乾燥させた。乾燥後、ゼオライトを湿度の高い空気で飽和させることができる。これはゼオライトがNMPまたはポリマー溶液中の水を吸収し、溶液がバイノーダル線から離れることを防止するために行った。
【0152】
酢酸セルロース(MW60,000、Sigma-Aldrich社製)およびPVP(MW55,000、Sigma-Aldrich社製)が本実施例で用いたポリマーである。すべてのポリマーを水を取り除くため、真空下110℃で一日乾燥した。乾燥後、ポリマーを直接それぞれの溶液に加えた。PVPをLiNO3上の伝統的なポア形成として選択した。なぜならLiNO3は酢酸セルロース繊維に化学変化を起こすことがわかったからである。PVDCラテックスはSolVin Chemicals社製から提供された。
【0153】
繊維紡糸装置を繊維系吸着剤を作成するために使用した。装置は、工業的繊維システムを真似て、容易に拡張可能なように設計され建設された。近年、多くの紡糸装置が、2つのポリマーが同時に接触して紡がれるという二重層紡糸金口を使用し、2つのポリマーのうち1つのポリマーがコア層として供され、他が分離シース層として作用する。ポリマー−吸着剤紡糸ドープを、必要量の80%のNMPと、脱イオン水を混合し、1lガラス製広口瓶に入れ、PTFE栓で封をして準備した。主要ドープを、必要量の20%のNMPと水を混合し、PTFE栓付500mlガラス製広口瓶に入れ準備した。次に、必要量の20%の乾燥酢酸セルロースおよびPVPを溶液に加えた。溶液を完全な溶解が生じるまで、50℃でローラー上で混合した。周囲の湿度条件と平衡関係にあるゼオライト13Xを、次にNMP/H2O混合物に加え、1分の超音波分解(1000W最大ホーン、Dukane社製、Leesgurg、バージニア州)と30秒の休止を3回行って超音波分解した。主要溶液を次に超音波溶液に加え、さらに超音波サイクルを2回行った。最後に、残りの乾燥酢酸セルロースおよびPVPを混合液に加え、完全な溶解が生じるまで、50℃のローラー上に配置した。各種溶媒、非溶媒、およびゼオライト組成物中のドープを三成分系のバイノーダル線を、一層または二層レジメを決定するための曇り点技術を用いて決定するために作製した。純粋ポリマー溶液を最初に純粋ポリマーバイノーダル線を決定するために作製した。一度決定されたら、ポリマーの液体比は同様に保たれ、NMPのH2O比はゼオライトが加えられた時に同様に保たれた。これらのサンプルドープはシリンジに充填され、層分離速度を定性的に決定するためにDI H2Oに押し出された。
【0154】
圧力衰吸着法を遷移系吸着剤の吸着等温式を決定するために用い、吸着の概略図を図8に示す。吸着セルを低温湯浴中に浸した。繊維系吸着剤サンプルを充填した後に、湯浴を110℃に設定し、セルおよび繊維系吸着剤を完全に空にするために、サンプルセルを真空下に置いた。乾燥工程後、湯浴を45℃に設定し、CO2をタンク(A)に導入し平衡になるまで時間を置いた。熱的平衡が確立された後、サンプルバルブ(B)を一時的に開けてCO2を繊維系吸着剤サンプルに導入した。経時的圧力衰をそれぞれの膨張で記録し、2つのタンクの間のモルバランスから、吸着等温式を作成した。これから、繊維系吸着剤動態を測定することができ、繊維系吸着剤等温式を測定できた。しかし、実験の制限のため、実際のRTSAシステムのように、サンプルセル内の局所熱効果を緩和することができなかった。
【0155】
非処理繊維系吸着剤のガス輸送性能を、穴側供給口圧力が20−30psigの純粋N2およびCO2を用いて明らかにした。シェル側浸透流速を、バブルフローメーター(bubble flow meter)を用いて、45分毎に、測定値が前測定値の5%以内になるまで測定した。処理済繊維を、穴側供給口圧力が70−80psigの純粋N2およびCO2を用いて測定し、定常状態が達成された時点で、浸透流速を下流の圧力変換機で測定した。走査型電子顕微鏡(SEM)を、繊維系吸着剤間隙構造、ポリマー−充填剤界面を測定し、内腔層欠陥を調べるために使用した。溶媒交換中空糸をヘキサンに2分間浸し、液体N2に移動させ、2つの微細針ピンセットで2つにせん断した。これらの中空糸を次に10−20nmの金薄膜でスッパッタ被膜し(Model O-S1、ISI社製、Mountain View、カルフォルニア州)、電界放射型走査電子顕微鏡、Leo 1530(Leo Electron Microscopy社製、Cambridge、英国)に移動した。
【0156】
後処理方法を、PVDCラテックスを必要量のDI H2O(40体積%ラテックス、60体積%H2O)で希釈して行った。この希釈ラテックスを次にISCOポンプ(Model500DM、Isco社製、Lincoln、ネブラスカ州)内に充填し、中空糸浸透モジュールへ取り付けた。この溶液を10psigで15秒間、中空糸の穴を通して送り込んだ。その後、モジュールをN2シリンダーに接続し、湿度の高いN2(50%R.H.(相対湿度))を30psigで15分間、中空糸の穴を通過させ、流出物の相対湿度は40%であった。このサイクルを2回繰り返した。最後に、乾燥N2を、流出物の相対湿度が0%とわかるまで(典型的には1時間)、30psigで穴を通過させた。
【0157】
実施例4:繊維組成物の分析
曇り点技術およびシリンジ押出を用い、選択された最終ポリマードープ溶液は10重量%CA/4%PVP/30%ゼオライト13X/49.3%NMP/6.7%水であった。乾燥相では、これは75重量%ゼオライト充填量に対応する。この溶液は、他のCA溶液に比較した迅速な層分離と、高充填剤充填量という理由から、選択した。ポリマーの溶液に対する高い比率のドープは非常にゆっくり相分離し、紡糸にとって理想的ではないだろう。より大きなゼオライト濃度のドープは、破砕することなく中空糸に引き込まれることはできないだろう。
【0158】
最初の一連の紡糸は、75重量%ゼオライト13Xで一層性中空糸を作製することに注力した。主要な課題はCAドープの相分離時間、中空糸の引き上げ能力をいまだ保持している間の大きなOD(高分子中空糸)の調節、および穴流体組成物の決定であった。これらの課題を考慮して、使用した紡糸状態を表2に示す。
【0159】
【表2】
【0160】
深い凝固浴槽を新生中空糸を完全に分離するの時間を与えるために用いた。小さな巻き取り速度を大きなODの必要性から用い、大きな押出速度を、中空糸が最初に必要なODに近づけるように、ラインのダイスウェルを操作するために用いた。穴流体を、水が中空糸内部を迅速に相分離させずに、中空糸がドラム上にひきつけられるための電位を取り除くために、主にNMPとなるように選択した。最後に、空隙を非常に低く設定し、実際に紡糸金口を沈めることなく、環帯内の相分離の原因とせずに、湿式紡糸を真似た。湿式紡糸は、非溶媒蒸発が空隙内で(乾式紡糸のように)生じず、緻密な層を形成するため、理想的であった。得られた中空糸は、機械的に強いことがわかり、通常の埋め込み工程を経ることができた。
【0161】
これらの中空糸のSEM像は多くの中空糸デザイン対象物が達成されたことを明らかにする。図9Aに示されるように、中空糸ODおよびIDはデザイン目標に近く、ODは1100マイクロメートル、およびIDは300マイクロメートルである。第2に、図9Bから、良好な吸着剤分散をポリマーマトリックスの至るところに確認できる。最後に、図9Cは“ケージ内篩”形態の存在を示し、これは中空糸を通じた迅速な物質移動の主要要因である。
【0162】
ガス浸透を、中空糸を通じた物質移動速度を決定するために、この単一中空糸上で行った。中空糸は、非選択的で、N2浸透速度が60,000気体透過単位(GPU:gas permeation unit)であり、ここで
【0163】
【数30】
【0164】
であり、中空糸の孔構造が開いていて連続的なことを示している。
繊維系吸着剤上の吸着実験を、ゼオライト13Xの文献結果を的確な温度に調節したもの、および、CAの文献結果で適切な温度のものと比較した。繊維系吸着剤の等温式が以下の図10に示され、中空糸内のゼオライト充填の確認に役立つ。ポリマーおよびゼオライト吸着能は中空糸内の添加物である(たとえば、25%の純粋CA能に、75%の純粋ゼオライト能を加えた結果が繊維系吸着剤能となる)。第一の膨張を使用して、中空糸上の吸着動態を行った。吸着技術の主要な制限の一つは、吸着熱の放出により産生される熱の消失である。図13に見られるように、測定半減時間は約7秒であった。予測動態よりも遅いことの、可能性の有る原因は、CO2が13Xの表面上に吸着する時の、吸着熱の
放出を原因とする非調節の局所温度上昇である。この局所温度上昇は、吸着等温式が一時的に下方へ移動する原因となり得、したがって吸着剤の平衡能が低下する。湯浴からの熱伝導のため、この温度上昇は最終的には調節され、吸着は平衡に達するだろう。RTSAシステムでは、中空糸壁と、熱移動流体としての冷水との密接な接触は、これらの局所温度急騰のいくつかを調節しなければならない。COMSOLモデルを温度の工程変化を仮定して、吸着セルの外部へ伝導する加熱時間を測定するために作製した。熱が完全に消失するための時間を同じ図面にプロットし、明らかに、熱伝導の時間は吸着の重要因子である(図11参照)。
【0165】
PVDCラテックス後処理法は、単純で成功する内腔層作製法であることがわかった。ラテックスが10psigで中空糸穴を容易に流れられるように、ラテックスを60重量%にDI H2Oで薄めた。これより低い希釈レベルでは、ラテックス溶液が中空糸穴を
塞ぐことがわかった。図9A−Cおよび図12から、穴から外側に広がる多孔率勾配が見られ、中空糸は、中空糸のシェル側に向かって密度が大きくなり、中空糸の穴側に向かってより多孔性になっている。この多孔率の変化は、約30ミクロンの穴を通じるラテックスの流れの内在的逆流防止装置として作用し、これは図13A−Cで確かめられる。このラテックスの後処理は、穴内部の追加の空間を塞がず、吸着繊維本体の活性領域内にほとんど面積を必要としない、非常に密度の大きいバリア層をもたらす。ラテックスは毛管力を通じて穴の周囲の多孔性領域を通過して動き、すべての孔が充填されるのを可能とする。N2が通過する間に、ラテックス中の過剰な水が運び去られ、蒸発水の表面張力が、ポ
リマー粒子を相互に近づける原因となり、粒子表面上の界面活性剤が、粒子がもつれ、内在的欠陥の自由層を形成するのを可能にする。湿度の高いN2を乾燥速度を調節するのに用い、PVDC層の欠陥が永久的に固定されないようにした。湿度の高いN2がないと、バリア層にピンホールが検出され、これはたぶん速い水蒸発速度によるものである(図14参照)。バリア層の作製のために、後処理済み中空糸を、真空オーブン中に100℃で24時間置き、PVDCフィルムをアニールした。CO2およびN2ガス浸透が、後処理済み吸着繊維上で行われた。密度の大きいPVDC層はガス輸送に大きな抵抗を与え、N2浸透を70psigで約0.5GPUに減少させる。穴側面供給圧力が上昇するにつれて、中空糸壁を通じる流れが、内腔層が150psigの圧力に充満するまで上昇した。
【0166】
繊維系吸着剤に直面する問題は、内腔層バイパスの問題であった。典型的な選択的中空糸膜において、外部選択膜は埋め込み物質に対して封止し、供給流れを中空糸の選択部分を通じて通過させる(図15A)。繊維系吸着剤では、しかしながら、中空糸の内部に選択層があり、このようなシールは存在しない。穴側に導入される、水および蒸気などは、中空糸のコア構造を通じて連結管のシェル側内部に迂回できた。さらに、シェル側供給からの燃焼排ガスは、水および蒸気システムに逃げることができた(図15B)。これらの問題の両方とも、取り上げられていない場合は、RTSAシステムを効果のないものに変える潜在能力を有する。これに取り組むために、埋め込みシールで中空糸を“キャッピング”する方法が開発された。後処理法の間に、中空糸正面に存在する毛管力が、ラテックスを中空糸の先端内に押し戻した。このラテックスを、次に中空糸正面を横切るN2のサッとした流れを用いて乾燥した(図15C−D)。これは図16で確認できる。このキャッピング技術の成功は、浸透実験を行う能力で確認できた(不十分なキャッピングは、浸透バイパスをもたらすだろう)。
【技術分野】
【0001】
本出願は、35U.S.C.§119(e)に基づき、2008年5月8日提出の米国仮特許出願番号61/051,595および2007年6月27日提出の米国仮特許出願番号60/946,475の利益を主張し、これらの全内容および実体を、本願は引用して、以下に説明されるように援用する。
【0002】
本開示の様々な実施の形態は、一般的に吸着繊維組成物に関する。より特定的には、本発明の様々な実施の形態は温度スイング吸着プロセスのための吸着繊維を対象にする。
【背景技術】
【0003】
石炭工場は、米国の電力の多くを供給し、二酸化炭素(CO2)のような温室効果ガス排出の主要な発生源である。発展途上国は、大気中のCO2レベルに非常に加え得る速度で、急速に石炭発電所を建設している。もっとも一般的な形態の石炭発電所は、粉炭(PC:Pulverized Coal)型発電所であり、典型的に毎分約500MWを産生し、約9.2トンのCO2、または2.2lbm CO2/kWh(500MWに対して)を排出する。地球の大気中の増加したCO2濃度は、温室効果ガスの影響を悪化させ、望まない気候変動を引き起こし、その結果の危険性として、異常気象、海面上昇および農業および生態系の多様性に有害な影響がある。したがって、石炭燃焼工場は二酸化炭素回収・隔離(CCS:carbon capture and sequestration)に主要な標的を与える。故に、CCSのための効果的および費用効率の高い方法に大きな関心が持たれている。
【0004】
PC型発電所は老朽化し、現在の炭素回収方法はそのままで実行するのには非常に費用がかかる。ガス化複合(IGCC:integrated gasification combined cycle)発電所および天然ガス複合(NGCC:natural gas combined cycle)発電所はより効率的かつより少ない排出量をもたらすが、PC型設備も効果的な環境変動緩和のために、CCS装置を必要とする。CCSの主要な障壁の一つは回収コストである。効果的な排出コントロールおよび隔離のために、CO2は75%を超える純度で回収され、パイプライン圧力(たとえば約1500psia)に圧縮され、続いて噴射圧力(たとえば2300psia)に圧縮されるべきと考えられている。低圧供給、低温供給および非常に大きな流速における、燃焼後のCO2回収プロセスは、CCSの課題の多くの困難な側面の一つである。したがって、現存のPC型発電所に備え付けることのできる低コストのCCSシステムの必要性が、新規のIGCC型およびNGCC型発電所と同様に存在する。石油化学および産業部門での重要な利用も期待されている。
【0005】
吸着プロセスは、産業界で流体混合物の分離のために広く用いられている。この分離は、吸着物質の表面または空洞内部での選択的成分の優先的吸着に基づいている。ほとんどの分離システムでは、吸着物質は適切な吸着能力を提供するため、大きな表面積を有している。たとえば分子篩ゼオライト、活性炭、アルミナおよびシリカゲルのような、一般的に使用されている吸着剤の表面積は、少なくとも200m2/gである。
【0006】
多くの産業的吸着プロセスは固定床型カラムで行われている。吸着物質(たとえば、顆粒、粒子)は、一般的に円筒形容器に封入され固定化されている。分離に指定された流体混合物は充填カラムを通過し、混合物中の吸着性成分が、吸着質として吸着剤によって捕捉されて保持され、非吸着性成分は吸着剤顆粒間の隙間を通じてカラムを通過する。
【0007】
供給流体混合物の連続的処理のために、それぞれの床が吸着/再生サイクルを順々に行う複数床(multi-bed)システムが使用されている。いくつかの異なる再生方法が商業的に行われ、それらは圧力スイング吸着(PSA:pressure swing adsorption)プロセスおよび熱スイング吸着(TSA:thermal swing adsorption)プロセスを含む。TSAプロセスでは、飽和吸着剤が高温ガスで浄化されて再生される。それぞれの加熱/冷却サイクルは、通常数時間から一日以上を要する。PSAプロセスでは、吸着剤の再生は減圧下において精製製品ガスの一部で浄化することによって行うことができる。PSAの処理量は、一般的にTSAの処理量よりも多く、これはより速い時間的サイクル、通常数分から数時間、が一般的に可能だからである。
【0008】
吸着剤の吸着能力を除いて、吸着速度および圧力低下は、吸着カラムの設計において考慮しなければならない二つの重要な因子である。吸着カラムを通り抜ける圧力低下は最小化されなければならず、なぜなら大きな流体圧力低下は吸着剤粒子の運動または流動化の原因となり得、結果として吸着剤の深刻な摩耗と損失につながるからである。吸着速度は吸着プロセスの効率に重要な関連を有している。吸着速度は通常、バルク流体相から吸着剤粒子の内部表面への吸着質輸送に対する物質移動抵抗によって決定される。遅い吸着速度は、大きな物質移動抵抗のため、長い物質移動帯(MTZ:mass transfer zone)で、その内部で吸着剤が部分的にのみ吸着質で飽和されているものをもたらすだろう。MTZの上流領域での吸着剤は実質的に吸着質で飽和され、一方MTZの下流領域は原則的に吸着質が存在しない。流体が流れ続けるにつれて、MTZは流体流れの方向に吸着カラムを通り抜けて進む。吸着ステップは、流出物流れ内に吸着質が突破するのを防ぐために、MTZが吸着剤出口に到達する前に終了しなければならない。したがって、長い物質移動帯で、大量の部分的に使用された吸着剤を含むものが、短い吸着工程および吸着能力の非効率的な使用をもたらすだろう。
【0009】
圧力低下および物質移動抵抗の両者が、吸着剤粒子のサイズに大きく影響を受ける。あいにく、粒子サイズの変更はこれらの二つの重要な因子に反対の影響を与える。固定床中の吸着粒子間の隙間領域は粒子のサイズに比例する。吸着剤を通過する流体流れの抵抗は充填床の空洞サイズに反比例するため、小さな吸着剤粒子の使用は大きな圧力低下をもたらすだろう。この理由から、固定床操作のための市販の吸着剤粒子のサイズは、一般的に平均直径が2mmより大きい。
【0010】
加えて、市販の吸着剤のほとんどの表面積は吸着粒子の内部に位置している。吸着が生じるためには、吸着質は外部流体相から粒子の内部表面に移動される必要がある。移動速度は連続した二つの物質移動メカニズムに影響を受ける:(a)吸着剤粒子の外部表面周囲の流体境界層を通じた界面物質移動−拡散、および(b)粒子の内部間隙空間(マイクロ孔、マクロ孔)から吸着が行われる内部表面へ通じる粒子内物質移動−拡散。粒子のサイズはこれら二つの拡散プロセス速度に大きな影響を与える。小さな粒子は、界面物質移動のための固定床内に大きな流体/固体接触面積を提供し、粒子内拡散のための経路長を減少させる。故に、小さな吸着粒子は吸着速度を上昇させ、迅速かつ効率的な吸着/脱着サイクルの操作のための狭い物質移動帯をもたらす。したがって、小さな吸着粒子は効率的な吸着プロセスに望ましいが、最小粒子サイズは固定床吸着剤の許容可能な流体力学的操作条件によって制限される。すなわち、流動化と過剰な圧力低下を防止したい。
【0011】
CCSに関して、圧力スイング充填床吸着が燃焼排ガス回収後に考慮されてきたが、大きな流量と、燃焼排ガスを必要とされる圧力に加圧する費用が、この技術を超精製ニッチマーケットに限定している。現在の充填床形式での温度スイング吸着は、巨大なシステムサイズとコストを避けるために十分に頻繁に循環させることができない。これらの制限のために、もっとも有名な回収技術は、CO2の、メチルエタノールアミンやメチルジエタノールアミンのような液体アルキルアルカノールアミン内への化学吸着に基づく液体−気体カラム吸着に基づいている。溶媒再生のための集中的なエネルギーの必要性を除いては、この回収技術は、大量の環境有害廃棄物、腐食、エントレインメント、フラッディングおよび侵出を扱う必要性を含む、いくつかの問題を有している。
【0012】
したがって、媒体の少なくとも一つの成分を吸着する組成物および方法で、比較的小さな粒子サイズで、なおかつ許容可能な圧力効果で操作可能であることによって特徴づけられるものへの要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のさまざまな実施の形態は、組成物および吸着繊維組成物の使用を対象とする。より特定的には、本開示のさまざまな実施の形態は吸着物質および温度スイング吸着プロセスでのこれらの使用を対象とする。概して言えば、本発明の一つの観点は、少なくとも一つの吸着物質を含む中空糸と、中空糸内部に配置された内腔と、前記内腔と前記吸着物質との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む、吸着繊維を含む。
【0014】
中空糸はさらにポリマーマトリックスを含むことができる。本発明の一実施の形態において、ポリマーマトリックスは複数の蛇行経路を含むことができる。複数の蛇行経路は1つ以上のマイクロ孔、メソ孔またはマクロ孔を含むことができ、1つ以上のマイクロ孔、メソ孔またはマクロ孔が流体連通している。中空糸は、少なくとも約100マイクロメートルの平均最長断面寸法を有することができる。中空糸内に配置された内腔は、少なくとも約55マイクロメートルの平均最長断面寸法を有することができる。中空糸は、内腔の平均最長断面寸法の少なくとも2倍より大きい平均最長断面寸法を有することができる。中空糸は、中空糸の長手方向末端部に配置された無孔末端キャップを含むことができ、無孔キャップは内腔を通り抜ける流体流動を妨げない。バリア層は約50マイクロメートル未満の平均厚みを有することができる。
【0015】
吸着物質は複数の蛇行経路の少なくとも一部と流体連通している。吸着物質は、約10マイクロメートル未満の平均最長寸法を有することができる。吸着物質は中空糸の約80重量%未満を構成することができる。吸着物質は、窒素に対する二酸化炭素の選択性が約10から約60であり、二酸化炭素1モル当たり、約25キロジュールから約90キロジュールの吸着熱を有することができる。
【0016】
本発明の一観点は、繊維系吸着接触器であって、チャンバを含み、前記チャンバは、供給流れ流入口と、供給流れ流出口と、熱伝導流体流入口と、熱伝導流体流出口と、複数の実質的に整列した中空糸とを含み、前記中空糸のそれぞれは、前記供給流れ流入口および前記供給流れ流出口と流体連通する複数の蛇行経路と、前記複数の蛇行経路の少なくとも一部と流体連通する複数の吸着成分と、前記熱伝導流体流入口および前記熱伝導流体流出口と流体連通する中空糸内部に配置された内腔と、前記内腔と、前記中空糸の少なくともかなりの大部分の前記複数の蛇行経路との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む、繊維系吸着接触器を含む。複数の中空糸が、前記中空糸の少なくともかなりの大部分の前記複数の蛇行経路と熱伝導媒体との間の流体連通を防止するのに効果的な、前記中空糸の長手方向末端に配置された末端キャップをさらに含むことができる。繊維系吸着接触器は、さらに隣接する繊維を相互連結するのに効果的なバインダー物質を含むことができ、前記バインダー物質は末端キャップとともに、熱伝導媒体と隣接する繊維の複数の蛇行経路との間の流体連通を防止する。繊維系吸着接触器は、燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体を含む供給流れに利用することができる。繊維系吸着接触器は、温度スイング吸着プロセスで使用することができる。温度スイング吸着プロセスにおいては、熱伝導媒体が水、水蒸気、水流、ガス、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0017】
本発明の一観点は、媒体の成分を吸着する方法を含み、前記方法は、媒体を、複数の蛇行経路と、前記複数の蛇行経路と流体連通する複数の吸着成分と、中空糸内に配置された内腔と、前記内腔と前記複数の蛇行経路との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む中空糸と接触させる工程と、前記媒体の成分を吸着する工程とを含む。媒体の成分を吸着する方法は、さらに媒体の成分を脱着する工程を含むことができる。媒体の成分を吸着する方法は、さらに媒体と熱交換流体との間の流体連結を防止する工程を含むことができる。前記媒体は、燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体を含む。前記吸着成分がCO2、SOx、NOx、および水から選択されることができる。本発明の典型的な一実施の形態において、前記媒体は燃焼排ガスであり、前記吸着成分は二酸化炭素である。本発明の一実施の形態において、前記媒体は、CO2および窒素を含むことができ、前記吸着成分が窒素に対して5より大きいCO2吸着の選択性を有することができる。一連の吸着間のサイクルタイムが約2分未満であり得る。
【0018】
本発明は、媒体の成分を吸着する方法であって、媒体を、複数の蛇行経路と、前記複数の蛇行経路と流体連通する吸着物質と、中空糸内に配置された内腔と、前記内腔と前記複数の蛇行経路との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む、中空糸と接触させる工程と、前記媒体の成分を吸着物質で選択的に吸着する工程とを含む、媒体の成分を吸着する方法に関する。
【0019】
本発明の媒体の成分を吸着する方法は、さらに前記媒体の成分を脱着する工程を含むことが好ましい。この場合、さらに前記接触および吸着を繰り返す工程を含むことがより好ましく、一連の吸着間のサイクルタイムが2分未満であることが特に好ましい。
【0020】
本発明の媒体の成分を吸着する方法において、前記媒体は、燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体を含むことが好ましい。
【0021】
本発明の媒体の成分を吸着する方法は、さらに前記媒体と熱交換流体との間の流体連結を防止する工程を含むことが好ましい。
【0022】
本発明の媒体の成分を吸着する方法において、前記成分はCO2、SOx、NOx、および水から選択されることが好ましい。
【0023】
本発明の媒体の成分を吸着する方法において、前記成分はCO2であることが好ましい。この場合、前記媒体がCO2および窒素から成り、前記吸着成分が、窒素に対して5より大きいCO2吸着の選択性を有することがより好ましい。またこの場合、前記媒体がCO2および窒素から成り、前記吸着物質が窒素に対して、10から60の二酸化炭素の選択性を有し、−25kJ/(mol CO2)から−90kJ/(mol CO2)の吸着熱を含むことがより好ましい。さらにこの場合、前記媒体が燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体であることが特に好ましく、また、燃焼排ガス蒸気であることが特に好ましい。
【0024】
本発明の実施の形態の他の観点および特徴は、以下の図面とともに、本発明の特定の、典型的な実施例の下記の記述を検討すると、当業者に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1 A−Bは、ポリマーマトリックス内に分散した吸着物質を含む中空糸組成物で、一種類の吸着物質を有するもの(A)および複数種類の吸着物質を有するもの(B)を示す。
【図2】図2A−Bは、チャンバ(A)と透明チャンバ(B)を含むクロスフロー接触器の透視図の概略図である。
【図3】図3は、ポリマー/溶媒/非−溶媒溶液を示す三角相図である。
【図4】図4は、吸着および脱着モード間の調節弁切換装置の概略図である。
【図5】図5は、RTSAシステム設計外観の概略図である。
【図6】図6は、繊維吸着RSTAシステムのPC型発電所への統合の概観を示す概略図である。
【図7】図7は、“ケージ内篩(sieve-in-cage)”を示す顕微鏡写真を示す。
【図8】図8は、圧力衰吸着システムの概略図である。
【図9】図9A−Cは、繊維吸着剤(A)、酢酸セルロースマトリックス内のゼオライト13X分散(75重量%)、および酢酸セルロースマトリックス内の“ケージ内篩”(sieve-in cage)顕微鏡写真を示す13X粒子(C)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、繊維吸着剤および繊維吸着剤成分の等温式を図示する。
【図11】図11は、純粋13Xおよび13Xに埋め込まれた吸着繊維間の物質移動比較を図示する。
【図12】図12は、繊維吸着剤内の多孔率勾配を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】13A−Cは、PVDC内腔層(A)、閉鎖アクリル系内腔層(B、C)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】図14は、可視的ピンホール欠陥を有する内腔層の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】図15A−Dは、典型的な中空糸操作(A)、繊維吸着剤内の内腔層バイパス(B)、処理後の毛管力が繊維チップのアクリル系キャッピングに関与した(C)、内腔層バイパスなしのキャップ化繊維チップ(D)の概略図である。
【図16】図16は、PVDCキャップ化繊維チップの走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
媒体分離は、制限されるものではないが、燃料、化学品、石油化学品および専門品の製造を含む、さまざまな産業で重要である。本明細書において、“媒体”という用語は便宜的に使用され、一般的に多くの流体、液体、気体、溶液、縣濁液、粉体、ゲル、分散液、エマルジョン、蒸気、流動性材料、多相物質またはこれらの組み合わせに言及する。媒体は供給流れを含むことができる。媒体は複数の成分の混合物を含むことができる。本明細書において、“複数”という用語は一より大きいことに言及する。
【0027】
媒体分離は、熱、固体、流体または他の手段の援助を受けて、一般的に分離される成分の物理的および/または化学的特性の違いを有効に利用して達成することができる。たとえば、気体分離は部分的液化または、ガス混合物のより容易でない被吸着成分に比べて、より容易に保持または吸着される成分を優先的に保持または吸着する吸着物質を利用して達成できる。
【0028】
このような商業的に実施されている気体分離プロセスは温度スイング吸着(TSA)である。TSAは吸着物質の床が媒体の一つ以上の成分を分離するために用いられる工程を含み、その後吸着剤床は床の温度を上昇させることによって再生(被吸着成分を放出)される。
【0029】
TSAプロセスは、媒体中の第二成分または他の成分と比較した、吸着物質による媒体の少なくとも一成分の選択的吸着を含む。媒体から吸着される少なくとも一つの成分の総量(たとえば、吸着物質の吸着能)および媒体中の他の成分に対する一成分の吸着の選択性は、しばしば特定の圧力および温度条件下で吸着工程を操作することによって改善することができる。なぜなら圧力および温度の両者が媒体の成分の吸着充填に影響を与えることができるからである。
【0030】
媒体の被吸着成分は吸着物質から脱着することができる。成分の脱着は吸着等温式が温度に強く影響されるため生じる。したがって、高純度の媒体の成分は、低温で吸着することにより得ることができる。低温では吸着が強力で、強力に保持された成分の放出は脱着のための高温手段によって可能である。圧力スイング吸着(PSA)と比較すると、TSAは等温式の飽和レジメで操作することができ、これは吸着物質の能力および有用性の範囲に利点を与える。TSAプロセスでは、脱着熱は、高温脱着媒体を床を通して流すことによって直接的に吸着物質に供給することができ、または熱コイル、電気熱源、電熱媒体、または熱交換器などの、吸着媒体と親密な関係を有するものを通じて間接的に吸着物質に供給することができる。
【0031】
TSAは、当該分野で実施されている時に、いくつかの不都合な点を有する。たとえば、直接加熱TSAプロセスでは、高温流体が通常、吸着剤の温度を上昇させるために、吸着床を流れるが、温度の上昇が大きいほど、より多くの流体が必要となる。これは大量の加熱媒体中への脱着成分の分散をもたらし、吸着剤の温度を上昇させるために用いられた多くの熱はしばしば回収不能である。いくつかの例では、熱の回収が不可能であり、これは多くの直接加熱TSAシステムは長期の吸着時間(たとえば数日)と、より短期の再生時間によって操作されているからである。さらに、吸着物質の不定期および緩やかな再生は、装置の下流における濃度上昇と流れの変化をもたらし、これは定常状態製造プラント以外では取り扱いが難しいだろう。間接的加熱TSAシステムでは、熱は熱交換器によって供給することができ、これは被吸着物質が熱伝導媒体によって希釈されることを防ぐが、間接的加熱TSAプロセスの熱の取り扱いおよび周期性はしばしば困難を示す。さまざまなスイング吸着方法が何年にも渡って商業的に実施されているが、当該分野には改良されたスイング吸着方法への要求が未だ存在し、それは特に燃焼排ガスからCO2を分離する時、および吸着プロセスで生じた熱の効率的な使用に対してである。
【0032】
ここで図面を参照して、本発明の典型的な実施の形態を詳細に説明する。図面では同様の参照番号は、複数の図面を通じて同様の部分を示す。本明細書を通じて、さまざまな成分は特定の値またはパラメータを有して特定されるが、これらの事項は典型的な実施の形態として提供される。実際、典型的な実施の形態は、実行され得る多くの比較パラメータ、サイズ、範囲、および/または値と同様に、本発明のさまざまな観点および概念を制限しない。たとえば吸着剤(sorbent)という用語は吸着(adsorption)および吸収(absorption)の両者を包含するように意図される。本開示を通じて、吸着および関連組成物、物質およびプロセスに言及するが、この記載は吸収も包含することを意図していることを認識すべきである。
【0033】
本発明の一観点は、それ自身が少なくとも一つの吸着物質(および、上述のように拡大解釈すると、少なくとも一つの吸収物質)120を含む中空糸110、前記中空糸110内部に配置された内腔130、および内腔130と少なくとも一つの吸着剤物質120との間の流体連通を防止するための、前記内腔130を覆うバリア層140とを含む、吸着剤組成物100を含む(図1参照)。本発明の一実施の形態において、中空糸110はポリマーネットワーク150を含むことができ、前記ポリマーネットワークは複数の蛇行経路155を含む。中空糸110は、連続的で柔軟性のあるフィラメント、または糸の長さと同様の分離した細長い断片であるさまざまな種類の物質を含む。本明細書中で、“中空糸”とは連続的で柔軟性のあるフィラメント物質で、比較的大きなアスペクト比(たとえば、長さの平均最長断面に対する比)を意味する。本発明の一実施の形態において、アスペクト比は約4:1とすることができる。本発明の一実施の形態において、アスペクト比は少なくとも約10:1、少なくとも約100:1、またはもっとも少なくとも1000:1とすることができる。
【0034】
中空糸110はさまざまな断面形状を有することができ、制限されるものではないが、長方形、円形、半円形、四角形、五角形、三角形、六角形、八角形、星状形、星型形、“U”形、浅裂形、複数の浅裂形、不規則形、またはこれらの組み合わせ、またはこれらの間を含む。当業者は中空糸110の断面形状は、中空糸の平均最長断面寸法を決定するであろうことに気付くだろう。たとえば、円形断面形状を有する中空糸の平均最長断面寸法は、中空糸の直径であろう。別の一例では、長方形断面形状を有する中空糸の平均最長断面寸法は中空糸の長方形断面の長さと幅の間の対角線であろう。さらに別の一例では、星型断面形状を有する中空糸の平均最長断面寸法は、中空糸の星型断面の二つのもっとも遠い地点間の距離であろう。
【0035】
本発明の一実施の形態において、中空糸110は少なくとも約100マイクロメートル、または少なくとも約500マイクロメートル、または少なくとも約1000マイクロメートルの平均最長断面寸法を有する。本発明の一実施の形態において、中空糸110は約1200マイクロメートルの平均最長断面寸法を有する。本発明の典型的な一実施の形態において、円形断面を有する中空糸は、約1200マイクロメートルの平均直径を有する。中空糸は約800から約1500マイクロメートルの範囲の直径を含むことができる。
【0036】
内腔130は多数の断面形状を有することができ、制限されるものではないが、長方形、円形、半円形、四角形、五角形、三角形、六角形、八角形、星状形、星型形、“U”形、浅裂形、複数の浅裂形、不規則形、またはこれらの組み合わせ、またはこれらの間を含む。当業者は内腔130の断面形状は、内腔の平均最長断面寸法を決定するであろうことに気付くだろう。たとえば、円形断面形状を有する内腔の平均最長断面寸法は、内腔の直径であろう。別の一例では、長方形断面形状を有する内腔の平均最長断面寸法は内腔の長さと幅の間の対角線であろう。さらに別の一例では、星型断面形状を有する内腔の平均最長断面寸法は、内腔の星型断面の二つのもっとも遠い地点間の距離であろう。
【0037】
本発明の一実施の形態において、内腔130は少なくとも約50マイクロメートル、または少なくとも約200マイクロメートル、または少なくとも約500マイクロメートルの平均最長断面寸法を有する。本発明の一実施の形態において、内腔130は約300マイクロメートルの平均最長断面寸法を有する。本発明の典型的な一実施の形態において、円形断面を有する内腔は、約300マイクロメートルの平均直径を有する。内腔は約200から約500マイクロメートルの範囲の直径を含むことができる。
【0038】
本発明の一実施の形態において、中空糸110はその内腔130と同一または類似の断面形状を有することができる。本発明の一実施の形態において、中空糸110はその内腔130と比較して異なる断面形状を有することができる。本発明の一実施の形態において、中空糸の平均最長断面寸法の内腔の平均最長断面寸法に対する比は、約2:1より大きく、または約4:1より大きい。本発明の典型的な一実施の形態において、中空糸の平均最長断面寸法の内腔の平均最長断面寸法に対する比は、約4:1である。
【0039】
本発明の一実施の形態において、中空糸110は少なくとも一つの吸着物質を含む。本発明の一実施の形態において、中空糸は少なくとも一つの吸着物質または少なくとも二つの吸着物質120および125(図1B参照)を含む複数の吸着物質を含むことができる。本発明のさまざまな実施の形態は、媒体の少なくとも一つの成分を選択的に吸着するために、少なくとも一つの吸着物質120を使用する。少なくとも一つの成分は多くの物質を含むことができ、制限されるものではないが、二酸化炭素、水素、窒素、酸素または水を含む。吸着物質は、分子篩、ゼオライト、ケイ素アルミノリン酸塩(SAPO)物質、アルミノケイ酸塩、アルミノリン酸塩(ALPO)物質、活性炭素、活性化アルミナ、ケイ酸塩、アミン−グラフト化シリカ、有機金属骨格物質、共役有機骨格物質、有機金属多面体、ゼオライト−イミダゾレート骨格物質、ポリマー系吸着剤、またはこれらの組み合わせといったものを含む。
【0040】
本発明の一実施の形態において、吸着物質は燃焼排ガスからのCO2を選択的に吸着するために用いることができる。空気が燃焼プロセスに用いられて燃焼排ガスを形成すると、得られた燃焼排ガスには大量の窒素が存在する。したがって、使用される吸着物質が窒素に対してCO2の高い選択性を有することが望ましい。CO2を回収するために、燃焼排ガス供給流れは、燃焼排ガス混合物中の窒素に対して、約5より大きいCO2吸着の選択性を有する、または燃焼排ガス混合物中の窒素に対して、約10より大きいO2吸着の選択性を有する吸着物質に接触させられる。本発明の一実施の形態において、吸着物質は窒素に対して、約10から60の二酸化炭素の選択性を有することができる。
【0041】
特に注記のない限り、本明細書中で“選択性”とは、特定のシステム操作条件下での吸着プロセス中の特定の吸着剤に吸着されるある成分のモル濃度と、供給流れ媒体中のある成分のモル比とのバイナリ比較(たとえば一対比較)に基づいている。成分A、成分Bおよび追加の成分を含む媒体に対しては、B成分に対してより大きいA成分の選択性を有する吸着物質は、スイング吸着プロセスサイクルの最終吸着工程において、以下の比:
【0042】
【数1】
【0043】
は、
【0044】
【数2】
【0045】
よりも大きく、ここで、UAは“成分Aの吸着吸収”およびUBは“成分Bの吸着吸収”である。したがって、成分Bに対して、より大きな成分Aの選択性を有するものは:
選択性=UA/UB(ここでUA>UB)
で表わされる。供給流れ媒体中の異なる成分の比較の中で、供給流れ中のモル比に対する吸着剤に捕捉された総モル数が最小比率である成分は、スイング吸着プロセスで“もっとも少ない成分”である。もっとも少ない成分がもっとも軽い分子量を有する必要はないが、CO2とN2との場合、ここで使用される意味でもっとも“軽い”成分はN2である。これは、吸着工程の間に流出する流れ中のもっとも軽い成分のモル濃度は、供給流れ中のもっとも軽い成分のモル濃度がよりも大きいことを意味する。本発明の一実施の形態において、吸着剤組成物は、第2成分に対して、第1成分(たとえば成分A)の選択性を少なくとも5、第2成分に対して第1成分の選択性を少なくとも10、第2成分に対して第1成分の選択性を少なくとも25で有することができる。
【0046】
本発明の一実施の形態において、吸着物質のCO2充填量は、吸着物質1グラム当たりCO2約0.25ミリモルより大きく、吸着物質1グラム当たりCO2約0.75ミリモルより大きく、またはさらに吸着物質1グラム当たりCO2約1.5ミリモルより大きくできる。本発明の一実施の形態において、吸着物質は約−25kJ/(mol CO2)から約−90kJ/(mol CO2)の吸着熱を含むことができる。選択的にCO2を窒素含有燃焼排ガス混合物から除去し、所望の充填量を達成できる吸着物質の例は、制限されるものではないが、ゼオライト、カチオン性ゼオライト、ALPO物質およびSAPO物質のような微小孔性物質を含む。ここで使用に適切なゼオライトの非限定例はゼオライト4A、5A、Bx、NaXおよびNaYを含む。カチオン性ゼオライトの非限定例は、Si/Alの比が約5未満であるゼオライトで、フォージャサイト、ベータおよびモルデナイトなどを含む。たとえばMFIなどのケイ質ゼオライトも窒素含有混合物からCO2を除去するのに用いることができる。追加の吸着物質はハイドロタルサイト、SiまたはAl以外(たとえばPなど)の成分の骨格を含む微孔性物質、炭素、微孔性ゾルゲル由来物質、シリカ、およびメソ孔性シリカにグラフトしたアミンなどを含むことができる。これらの吸着物質は単独または他の物質と組み合わせて用いることができる。
【0047】
本発明の一実施の形態において、吸着物質は乾燥状態の中空糸の約80重量%未満、または乾燥状態の中空糸の約75重量%未満、または乾燥状態の中空糸の約70重量%未満とすることができる。本発明の典型的な一実施の形態において、吸着物質は乾燥状態の中空糸の約65重量%である。
【0048】
本発明の一実施の形態において、中空糸110は少なくとも一つの吸着物質120を含む。吸着物質120は、吸着(adsorbent)層、吸着(adsorbent)粒子、吸着(adsorbent)構成要素、複数の吸着(adsorbent)粒子、複数の吸着(adsorbent)構成要素、吸着(sorbent)粒子、吸着(sorbent)構成要素、複数の吸着(sorbent)粒子または複数の吸着(sorbent)構成要素などを含むことができる。本発明の一実施の形態において、吸着物質120は約100マイクロメートル未満の平均最長断面寸法を有することができる。本発明の一実施の形態において、吸着物質は約50マイクロメートル未満の平均最長断面寸法を有することができる。本発明の典型的な一実施の形態において、吸着物質は約10マイクロメートル未満の平均最長断面寸法を有することができる。本発明の一実施の形態において、吸着物質は約2マイクロメートル未満の平均最長断面寸法を有することができる。
【0049】
本発明の一実施の形態において、吸着剤組成物100は中空糸110を含み、前記中空糸は内腔130と吸着物質120との間の流体連通を防止するための、中空糸110の内腔130を覆うバリア層を有する。バリア層140は多数の物質を含むことができ、制限されるものではないが、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、エピクロロヒドリン(ヒドリン)、ポリエーテルアミドブロック共重合体、ガラス、シリカ、アルミナ、金属、金属酸化物、ラテックス、他の高バリア性ポリマー、これらの共重合体、またはこれらの組み合わせを含む。本発明の一実施の形態において、バリア層140は約50マイクロメートル未満の平均厚みを有する。本発明の一実施の形態において、バリア層140は約30マイクロメートル未満の平均厚みを有する。
【0050】
本発明の一実施の形態において、吸着剤組成物100は、ポリマーと中空糸を通過する複数の蛇行経路を含むポリマーマトリックス150をさらに含むことができる。複数の蛇行経路155は、複数の孔を含み、ここで孔の少なくとも一部はお互いに流体連通している。本発明の一実施の形態において、複数の蛇行経路155は一つ以上のメソ孔、マクロ孔、およびマイクロ孔を含むことができ、ここで一つ以上のメソ孔、マクロ孔、およびマイクロ孔の少なくとも一部はお互いに流体連通している。本発明の一実施の形態において、吸着物質はポリマーマトリックスと関連している。さまざまな本発明の一実施の形態によると、複数の吸着粒子はポリマーマトリックスに高度に結合している必要はない。本発明の一実施の形態において、吸着物質とポリマーマトリックスとの関係は“ケージ内の篩”と記載することができる。本発明の典型的な一実施の形態において、中空糸は複数の蛇行経路の少なくとも一部と流体連通している複数の吸着粒子を含むことができる。本発明の実施の形態は中空糸を通じて複数の吸着物質が分散しているものを開示するが、蛇行経路のいくつかはそれらに関係する吸着物質を含まない。
【0051】
中空糸110は多数のポリマーを含むことができ、限定されるものではないが、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスルホン、エピクロロヒドリン、ポリエーテルアミドブロック共重合体、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ(テトラフルオロエテン)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エラストマー、これらの共重合体、またはこれらの組み合わせを含む。中空糸110はガラスまたはセラミック物質を含むことができる。中空糸110はポリマーおよびガラスまたはセラミック物質の組み合わせとすることができる。
【0052】
本発明の一実施の形態において、中空糸は、中空糸の長手方向末端部に配置された末端キャップを含むことができ、キャップは内腔を通り抜ける流体流動を妨げない。末端キャップは中空糸の長手方向末端部の蛇行経路と、中空糸の長手方向末端部周辺の環境の間の流体連通を防止することができる。
【0053】
本発明の一観点は媒体の成分を選択的に吸着する方法を含む。前記方法は、媒体を、少なくとも一つの吸着物質と、中空糸内に配置された内腔と、前記内腔と前記吸着物質との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む、中空糸と接触させる工程と、前記媒体の成分を吸着する工程とを含む。本発明の典型的な一実施の形態において、流体を吸着する方法は、媒体を、複数の蛇行経路、前記複数の蛇行経路の少なくとも一部と流体連通する複数の吸着粒子と、中空糸内に配置された内腔と、前記内腔と前記複数の蛇行経路との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む中空糸と接触させる工程と、前記媒体の成分を吸着する工程とを含む。前記方法は、さらに媒体の成分を脱着する工程を含むことができる。
【0054】
本発明のさまざまな実施の形態は媒体の成分を選択的に吸着することを対象とし、媒体は燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有流体を含むことができる。本発明の典型的な一実施の形態において、吸着繊維組成物は燃焼排ガスからのCO2の回収のための温度スイング吸着プロセスで用いることができる。
【0055】
本発明のTSAプロセスは複数の繊維系組成物を含む接触器を使用することができる。本発明のTSAプロセスは複数の繊維系組成物を含む複数の接触器を利用することができる。図2A−Bに示されるように、接触器はチャンバを含み、前記チャンバは、供給流れ流入口と、供給流れ流出口と、熱伝導流体流入口と、熱伝導流体流出口と、複数の実質的に整列した中空糸とを含む。本発明の典型的な一実施の形態において、前記中空糸は、前記供給流れ流入口および前記供給流れ流出口と流体連通する複数の蛇行経路と、前記複数の蛇行経路の少なくとも一部と流体連通する複数の吸着成分と、前記熱伝導流体流入口および前記熱伝導流体流出口と流体連通する中空糸内部に配置された内腔と、前記内腔と、前記中空糸の少なくともかなりの大部分の前記複数の蛇行経路との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む。
【0056】
図2A−Bは、構造化された中空糸がクロスフロー接触器内へ形成され得る様式の概略説明図を示す。構造化中空糸吸着剤110を含むクロスフロー接触器200が図2Aおよび2Bに示される。図2Bは、図2Aの接触器205のチャンバの外表面を透明にした接触器を示す。図2Bの点線は接触器の外表面の境界を示す。中空糸110はポリマー、少なくとも一つの吸着物質120および複数の蛇行経路を含むポリマーマトリックス150を含む。中空糸110は、中空糸110内部に配置された内腔130と、前記内腔と前記吸着物質との間の流体連通を防止するための、前記内腔130を覆うバリア層140とを含む。バリア層140が内腔と少なくとも一つの吸着物質120との間の流体連通を防止するため、熱伝導媒体が中空糸110の内腔130を通過することができる。拡散バリアとして作用するために、バリア層140の効果的な拡散係数は、ポリマーマトリックス150の平均拡散係数の約1/50未満、好ましくはポリマーマトリックス150の平均拡散係数の約1/10,000未満とすべきである。拡散バリアは、内腔130を通る加熱および冷却流体供給がポリマーマトリックス150に入ること、またはCO2のような吸着質物質の損失の内腔流体への流入を効果的に防ぐ。
【0057】
実質的に整列した中空糸110は、束状構造または斜めに配列することができる。繊維束の末端は、結合物質210内に埋め込むまたは組み込むことができる。結合物質210は隣接する中空糸を効果的に相互連結する。本発明の一実施の形態において、結合物質は中空糸110を実質的な平行配列に固定する。これを行う一つの方法は、中空糸の末端を結合物質210で囲む、組み込みまたは埋め込み工程を含む。埋め込まれた中空糸配列を視覚化するために、図2Bは、チャンバ205とともに結合物質210を透明にした平行チャネル繊維系接触器を示す。この埋め込まれた配列は、その後チャンバ205内にシールされる。シール面240はチャンバ205の末端に備えられる。操作時に、チャンバ205はTSAまたはRCTSA(高速サイクル熱スイング吸着:rapid cycle thermal swing adsorption)モジュールに、分離のための媒体と熱交換媒体の間の流体連通を防止す
る方法で取り付けられる。チャンバ205は管状または円筒状で示されているが、チャンバは、限定されるものではないが、長方形または立方体形状を含む多くの形状を有することができる。溝215がチャンバ205の壁を通過して切り取られ、ガスが接触器内へ通過できるようになる。接触器の中央に中央ガス収集チューブ220が配置される。ガス収集チューブの中央ガス収集チューブの末端225は、固体の不浸透性物質であり、これは、限定されるものではないが、固体金属またはエンジニアリングプラスチックを含む。これにより、ガスが過熱または冷却媒体と混ざることなく接触器200に流入または流出することを可能にする。モジュール230内部のガス収集チューブの一部は、多孔性金属または多孔性ポリマーまたは織物メッシュのような多孔性物質である。これは接触器内のガスが効果的に収集されるのを可能とする。吸着工程では、燃焼排ガスは溝215を通過してクロスフロー接触器200内部に流れ、中空糸吸着剤110に接触する。少なくとも一つの吸着物質120を含むポリマーマトリックス150はCO2および任意にH2O、SOxおよびNOxを燃焼排ガスから除去する。精製された蒸気は中央ガス収集チューブ230の高多孔性部分230に収集される。精製ガスは、流れ調節バルブ(図示せず)および排気筒(図示せず)とを連結する中央ガス収集チューブ220の不浸透性部分225を通じて接触器220の外部へ通過する。吸着工程の間の温度上昇を制限するために、冷却媒体(たとえば水)が構造化中空糸110の内腔130を通過する。吸着工程が完了した後、モジュール内への燃焼排ガスの流れはバルブで止められ、加熱媒体(たとえば蒸気)が構造化中空糸110の内腔130を通過する。少なくとも一つの吸着物質120を含むポリマーマトリックス150から遊離された、CO2および任意にH2O、SOxおよびNOxが、中央ガス収集チューブ220または溝215のいずれかを通じて接触器200の外部へ通過する。
【0058】
複数の中空糸を含む繊維系吸着接触器は、中空糸の少なくともかなりの大部分の複数の蛇行経路と熱伝導媒体との間の流体連通を防止するのに効果的な、中空糸の長手方向末端のそれぞれに配置された末端キャップをさらに含むことができる。繊維系吸着接触器は、さらに隣接する繊維を相互連結するのに効果的なバインダー物質を含むことができ、前記バインダー物質は末端キャップとともに、熱伝導媒体と隣接する繊維の複数の蛇行経路との間の流体連通を防止する。
【0059】
本発明のさまざまな実施の形態において、接触器200は、媒体(たとえば燃焼排ガス混合物)と、媒体から少なくとも一つの成分を選択的に除去する少なくとも一つの吸着物質とを、効率的に接触するように設計することができる。効率的な接触は必要とされる吸着剤の量、接触器の容量および接触器を再生するのに必要なエネルギーを最小化する。効率的に設計された接触器では、燃焼排ガスの圧力降下、および接触器を加熱または冷却するために使用される流体も最小化される。これは、同様に、接触器を通過する燃焼排ガスの圧力低下からのエネルギー損失および接触器を加熱または冷却するために使用される流体の膨張または圧縮に必要とされるエネルギーを最小化する。
【0060】
本発明の一実施の形態において、繊維系吸着接触器は少なくとも2つの工程、吸着工程および再生工程、を通じて循環される。接触器の再生は、接触器を、結果として接触器から回収成分(たとえばCO2)を脱着できる効果的な温度に加熱して遂行することができる。接触器はその後、他の吸着工程を完了できるように冷却される。本発明のさまざまな実施の形態は、複数の繊維系吸着接触器を、吸着および脱着を促進するために熱伝導媒体に周期的に接触させることを対象とする。熱伝導媒体は多くの媒体を含むことができ、制限されるものではないが、水、水蒸気、蒸気またはこれらの組み合わせを含む。本発明の典型的な一実施の形態において、水はCO2吸着のため、繊維系吸着接触器200の複数の中空糸110の内腔130を通じて流れ、蒸気はCO2脱着のため、繊維系吸着接触器200の複数の中空糸110の内腔130を通じて流れる。
【0061】
当業者は、結果的に、繊維系吸着接触器(たとえば第一接触器)が飽和状態に近づき、吸着前面が接触器を突破し、結果として燃焼排ガスから除去されるCO2の量が、所望量を下回ることを認識するだろう。結果として、第一接触器への燃焼排ガスの流れは、第二接触器内に流用することができ、第二接触器はすでに再生済みであり、一方第一接触器は熱的に再生される。熱低再生に続いて、第一接触器は吸着工程の準備がされ、燃焼排ガス混合物の流れは第二接触器から第一接触器へと切り替わる。総サイクルタイムは、第一サイクルでガス状混合物が最初に第一接触器に導入された時から、即座に続くサイクル、たとえば一回の床の再生の後、ガス状混合物が再び第一接触器に導入された時までの時間の長さである。第一接触器および第二接触器に加えて、複数の接触器(たとえば、第三、第四、第五など)の使用は継続的処理をもたらすことができ、特に吸着時間が再生時間よりも短い場合である。
【0062】
本発明の一実施の形態において、熱スイング吸着プロセスは吸着および脱着の迅速なサイクルを含み、この場合プロセスは高速サイクル熱スイング吸着(RCTSA)プロセスと呼ばれる。高速サイクル熱スイング吸着プロセスは、本開示の目的のために、連続する吸着工程間のサイクルタイムが約2分未満、または約1分未満、または約0.5分未満、さらにまたは0.25分未満のもの、と定義される。本発明の一実施の形態において、再生工程は部分的パージ圧力置換、または圧力スイングなどによって補助され得る。これらの工程の組み合わせは、本明細書中で、再生工程の間のいくつかの時点で熱スイングを採用する限り、熱スイングプロセスと呼ぶ。
【0063】
多くの場合、吸着剤再生に必要な時間は、接触器の吸着能をすべて利用するのに必要な時間よりも短いだろう。このような場合、複数の接触器が加熱/再生段階および再冷却段階にある間に、複数の接触器が吸着段階であることが望ましい。本発明の一実施の形態において、吸着に携わる複数の接触器は、もっとも直近に再生された接触器ユニットが吸着列の最終床であり、列の最初のユニットは次に再生され得るような、一連の方法で接続される。他の一実施の形態において、吸着ユニットは、それぞれの吸着剤が全供給流れの一部を扱うように、平行に接続される。
【0064】
燃焼排ガスまたは煙道ガスは、広範な種類の産業工程から排出される。燃焼排ガスの圧力は典型的に大気圧より若干高く、一般的に約2気圧よりも低い。燃焼排ガスの温度は典型的に約100℃から約250℃の範囲であり、より典型的には約150℃から約250℃であり、しかしSOx除去のために湿式石灰石洗浄が使用される時は、約30℃から約70℃である。燃焼排ガスのガス状成分は一般的にN2、O2、CO2、およびH2Oなどを含む。NOxやSOxのような少量の汚染物質もしばしば存在する。燃焼排ガス中のCO2濃度は、典型的に約3モル%から約15モル%の範囲であり、H2Oは典型的に約0.1モル%から約15モル%である。CO2+H2Oの総モル濃度は、化学量論的燃焼が煙道ガスを生じる時は通常約25%未満であり、高温燃焼プロセスにおける温度を制限するために希釈または過剰空気が工程に採用された時は通常約15%未満である。
【0065】
ある場合、CO2を濃縮または純粋蒸気に分離して、蒸気を高圧に圧縮して、それを分離のための適切な地下形成に導入して、CO2排出を軽減することが有利である。適切な地下形成の非制限例は、制限されるものではないが、注入されたガス状成分のかなりの損失を防止する上端のシールを有する帯水層、オイルタンク、ガスタンク、枯渇オイルタンク、枯渇ガスタンクを含む。一般的に分離されたCO2は、これらの種類の地下形成に注入するために、約1000psiより大きい、または2000psiより大きい、およびしばしば約5000psiより大きい圧力に圧縮されなければならない。回収CO2の低圧廃棄もまた想定でき、たとえば温室環境での促成植物成長およびバイオ燃料製造のための藻の繁殖などである。
【0066】
本発明の実施で用いられる燃焼排ガスからのCO2回収のために設計された組成物、方法および装置は、非常に効率的である。ある場合では、燃焼排ガスから、CO2を約50%を超えて、約75%を超えて、約85%を超えて、または約95%を超えて、吸着物質を用いて回収することができる。当業者は本発明の方法の実施の形態が、燃焼排ガスから、CO2を約50%未満で回収することも含み得ることを理解するだろう。
【0067】
本発明の一実施の形態において、吸着剤組成物および方法は、媒体から一つ以上の成分を分離することを含む。本発明の一実施の形態において、一つ以上の成分は、燃焼排ガス蒸気を一つ以上の吸着物質を含む接触器に接触させることによって、媒体から分離することができる。本発明の一実施の形態において、熱再生を採用するスイング吸着プロセスを用いて、燃焼排ガスからCO2を回収する。本発明の一実施の形態において、方法はさらに燃焼排ガス中の水の除去を含む。本発明のさらに他の一実施の形態において、方法はさらにSOxおよび/またはNOxの除去を含む。
【0068】
本発明の一実施の形態において、接触器は複数の中空糸を含むことができ、一つの中空糸は媒体の異なる成分を吸収できる少なくとも一つの吸着物質の混合物を含んでいる。本発明の一実施の形態において、接触器は複数の中空糸を含むことができ、一つの第一の中空糸は媒体の第一の成分を吸着できる第一の吸着物質を含んでおり、一つの第二の中空糸は媒体の第二の成分を吸着できる第二の吸着物質を含んでいる。第一および第二の中空糸に加えて複数の中空糸(たとえば、第三、第四、第五)の使用は、媒体の多数の成分の吸着をさらにもたらすことができる。
【0069】
本発明の一実施の形態において、燃焼排ガスの一つ以上の成分は、一つ以上の接触器を用いて吸着することが可能である。本発明の一実施の形態において、燃焼排ガス流れは、媒体の第一の成分を除去するために第一の接触器を通過し、媒体の第二の成分を除去するために第二の接触器を通過することができる(たとえば、媒体のそれぞれの成分のための別個の操作ユニット(たとえば、接触器)。1つ以上の接触器を用いて、媒体(たとえば、燃焼排ガス)から多数の成分を除去する時は、一つの接触器を一つの特定の成分の除去のために最適化することができる。
【0070】
本発明の一実施の形態において、一つ以上の接触器は、水を除去するための第一の接触器と、SOx、NOx、およびCO2の一つ以上を除去するための第二の接触器を含むことができる。一つ以上の接触器は、本発明のさまざまな実施の形態が吸着工程の終了後にそれぞれの接触器を再生するための方法を開示しているため、使用することができる。
【0071】
本発明の一実施の形態において、複数の異なる吸着物質を接触器を形成するために使用することができる。このような実施の形態においては、吸着物質を媒体の特定の成分の所望の除去のために選択できる。複数の吸着物質を含む接触器は、1つの接触器で複数の成分を選択的に除去することを可能にする。本発明の他の一実施の形態において、接触器は媒体から複数の成分を除去できる吸着物質を含むことができる。
【0072】
本発明の一観点は、燃焼排ガスからCO2と水を除去するためのシステムを含む。このシステムは複数の吸着物質を含む接触器を含むことができ、吸着物質は独立して水および/またはCO2を吸着することができる。本発明の典型的な一実施の形態において、水選択吸着剤は供給流れ供給口付近に設置でき、CO2選択吸着剤を水選択吸着剤から下流に設置することができる。このような配置は、燃焼排ガスは、CO2選択吸着剤の前に水選択吸着剤に接触するため、最初に燃焼排ガスから水を除去し、続いてCO2を除去することを意図している。いくつかの実施の形態ににおいて、CO2除去に使用されるのと同一の吸着物質は、燃焼排ガス中の、たとえばSOx、NOx、または水といった、他の成分も除去できる。SOx、NOx、および水を吸着できる吸着物質は、制限されるものではないが、ゼオライト、カチオン性ゼオライト、メソ孔物質、炭素、ポリマー、混合マトリックス物質、およびこれらの組み合わせを含む。
【0073】
本発明の一実施の形態において、脱水工程はグリコール脱水を含むことができ、これは燃焼排ガスから水を除去するために用いることができる。このような実施の形態において、燃焼排ガスは、別個のプロセスまたは燃焼排ガスを吸着接触器に導入する前のユニット操作で脱水することができる。グリコール脱水で効率的に水を除去するために、燃焼排ガスの温度は110℃未満、または75℃未満に降下させることができる。
【0074】
本発明の他の一実施の形態において、脱水工程は燃焼排ガスを吸着接触器に接触させる前に、凝縮水(たとえば、水滴や霧)の物理的ノックアウト(physical knockout)を含むことができる。このような実施の形態において、接触器は燃焼排ガスから選択的に水を除去する吸着物質を含むことができる。燃焼排ガスから水を選択的に除去できる吸着剤は、限定されるものではないが、カチオン性ゼオライト、機能性マイクロ孔およびメソ孔、炭素、混合マトリックス物質、ポリマー、またはこれらの組み合わせを含む。
【0075】
本発明のさまざなな実施の形態において、吸着接触器に存在する処理済燃焼排ガスを、吸着サイクルの間の少なくとも一時点において、約400ppm以下、または約50ppm以下、または約20ppm以下の水含有量に脱水できる。
【0076】
接触器が燃焼排ガスからかなりの割合(たとえば、75%より大きい)のCO2および水を除去した時は、本発明の一実施の形態はこれらの両方の成分を除去するための熱再生工程を含むことができる。本発明の一実施の形態において、再生工程は、分離した水が豊富な流れと、分離したCO2が豊富な流れを、熱再生工程の間で生じるように実施できる。
【0077】
本発明の一実施の形態において、接触器の吸着および再生は外部から接触器をそれぞれ冷却および加熱することで完遂される。外部から加熱された接触器は、接触器を加熱または冷却するための熱伝導媒体(たとえば、流体、液体、ガス)を流す複数の内腔を備える。本発明の典型的な一実施の形態において、熱伝導媒体が、再生工程の間に遊離された供給流れ燃焼排ガスまたはCO2と混合しないように、複数の内腔は吸着物質と流体連通していない。
【0078】
本明細書および付属するクレームにおいて、単数形“a”、“an”、および“the”は、内容が明らかに違うことを指示しない限り、複数対象も含むことに留意しなければならない。
【0079】
本明細書中に含まれる全ての特許、特許出願、および参考文献の全体を、参照して具体的に援用する。
【0080】
もちろん、前述の事項は本発明の典型的な実施の形態のみに関係し、多数の改良または代替手段を、本開示中で説明された本発明の精神および範囲から離れることなく、その中に行うことができる。
【0081】
本発明の典型的な実施の形態が本明細書中に示されるが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。当業者に連想されるさまざまな改良および代替手段が存在する。
【0082】
本発明はさらに、本明細書中に含まれる、理解を明確にするために提供される実施例によって説明される。典型的な実施の形態は、それらに関して範囲に制限を加えるように解釈されては決してならない。一方、頼ることはさまざまな他の実施の形態、改良、およびこれらの同等物を含むことができ、本明細書の記載を読んだ後に、当業者に、本発明の精神および/または添付のクレームの範囲を離れることなく、これら自身を提供するであろうことを明確に理解すべきである。
【0083】
そのため、本発明の実施の形態が、典型的な実施の形態への言及で詳細に説明されていても、当業者は、変化および改良は、付属のクレームで定義された本発明の範囲内でもたらされ得ることを理解するだろう。したがって、本発明のさまざまな実施の形態の範囲は上記で議論された実施の形態に限定されるべきではなく、以下のクレームおよび全ての同等物によってのみ定義されるべきである。
【実施例】
【0084】
実施例1:繊維組成物設計
本実施例では、新規の中空糸系固体吸着システムを検討する。中空糸形成は、一般的に当該技術分野で“湿式紡糸”と呼ばれる、公知の非溶媒相変換手法に基づく。溶媒、非溶媒、および硝酸リチウムのような添加剤を含むポリマー溶液を、ダイスを通して非溶媒急冷浴に押し出す。非溶媒急冷浴は、急冷浴と新生繊維内に存在する溶媒の間の物質移動の駆動力となり、結果として、ミクロ相分離と多孔質繊維をもたらす。相分離は、図3に示されるように、ポリマー/溶媒/非溶媒溶液のための三角相図を用いると、もっとも視覚化される。バイノーダル線は、単相と二相領域の間の分割を示し、二相領域はさらに準安定領域と非安定スピノーダル領域に分割され得る。紡糸溶液は、バイノーダル線近くの単相領域に存在するように形成される。紡糸工程の間、凝固浴槽からの過剰の非溶媒が組成物を二相領域に移動させ、液液分離が生じ、結果として連続的なポリマー細孔ネットワークとなる。
【0085】
ポリマーおよび無機サンプル吸着技術を特徴付けるために用いることのできる方法は、たとえば、Koros,W.J.およびD.R.Paulによる“Design considerations for measurement of gas sorption in polymers by pressure decay”,J.Polym.Sci.:Part B:Polym.Phys.,14,1903-7(1976)に報告されている。これらの技術は、一定温度での濃度対圧力をプロットすることによって、特定の一組の吸着剤−吸着剤のための平行等温式を決定するために用いられる。さらに、周期的吸着工程で使用できる、サイクルタイムの知見を提供する、平衡に達するまでの時間を測定することができる。これは、繊維系吸着剤の研究において、吸着を非常に貴重なキャラクタリゼーション法とする。このやり方は、これを主に、第一場面キャラクタライゼーションツールに限定する制限を有する。第一に、熱はあらかじめ吸着システム内部に介在できない。第二に、吸着システムはフロー方式ではなくバッチ方式であるため、対流物質移動抵抗が関与しない。最後に、純粋ガスのみを使用することができるため、競合する吸着の効果を説明できない。
【0086】
実施例2:繊維系システム設計
燃焼後炭素回収システムは混合マトリックス中空糸基本骨格に基づいて設計された。混合マトリックス中空糸基本骨格は、いくつかの理由から選択された。第一に、吸着の間に中空糸の穴に冷却剤、および脱着の間に穴に加熱剤を供給するために中空糸形態を利用することによって、高い吸着効率を達成できる。第二に、中空糸の薄い多孔質壁は、迅速な加熱および物質移動時間を可能とし、このような厳しい供給量には必要である。最後に、設計において、中空糸中の加熱および冷却剤は単純に蒸気または水であり得、このためいずれの不要な副産物の除去は、システムに関連した。
【0087】
繊維系システムは、擬似安定状態連続操作のために、保護床を有しない2つの床システムを用いて設計される。図4に示される様に、活発にCO2を吸着している床は、中空糸の穴を通過する液体の水を有し、活発に脱着している床は、中空糸の穴を通過する蒸気を有するだろう。いずれの場合も、本質的に不浸透性の内腔層が、燃焼排ガスと熱交換水または蒸気流れの間の交換を防止する。吸着の間、燃焼排ガスはクロスフロー熱交換配置の中空糸を通過する。
【0088】
設計に使用される土台は、500MW PC発電所であった。繊維系吸着システムに供給される燃焼排ガス条件は、実に粉炭発電所と一致しており、1M SCFM供給、15モル%CO2、1.1気圧、および50℃での温度を含む。いくつかの他の設計制限が、現在の技術および費用の考慮に基づき加えられた。大気圧付近で、このような大量のガスを圧縮する費用は、極めて高いと見なされた。同様に、分離コストおよび排出を低減するために、製品ガスを可能な限り高圧にすると同時に、回収効率を90%以上に設定した。最後に、繊維設計において、中空糸内の物質移動速度を、燃焼排ガスの高い表面速度と短い接触時間に適用させるために最大化した。これらおよび他の制限を、燃焼排ガスの圧力低下を最小化することに対して最適化した。
【0089】
多くの設置された発電所にとって重要な要素は、予定の装置の面積である。考慮した要素制限に基づくと、繊維連結間は12m長さ、12m高さおよび25m幅の大きさと計算されるが、アミン除去設備と比較するとこれは実際は非常に小さい。アミン除去システムは典型的に6つの吸着剤(それぞれ22フィートの直径を有する)、6つの半効率的除去剤(それぞれ20フィートの直径を有する)、3つの効率的除去剤(それぞれ21フィートの直径を有する)を有する。繊維系システムは約300m2の面積を有し、一方アミン除去システムは約600m2の面積を有する。圧力低下を最小にするために、床は12%
のみ充填されなければならない。これを1200ミクロンの中空糸の最適外径と組み合わせると、中空糸の数を一床あたり32百万の中空糸と容易に決定できる。これは決して小さくないが、工業適用途の繊維モジュールは150百万の繊維を含む可能性があり、したがってこの数はこのような大きな供給流れにとって不合理ではない。
【0090】
次に行うべき決定は、吸着剤の選択およびポリマー繊維マトリックス内部に分散する吸着剤の量であった。中空糸中の65重量%の吸着剤という目標値は、一中空糸当たりの大きなCO2吸着能の必要性から設定された。中空糸内部直径は320ミクロンに設定された。高い吸着剤充填を有する、大きな外径(OD)/小さな内径(ID)中空糸は、設計制限の中で、一中空糸当たり、大量のCO2が回収されることを可能とする。実現性および入手可能性の困難性に基づき、3つの吸着剤が当初検討された。第一の選択は、CO2吸着の伝統的な産業標準であるゼオライト13Xであった。他の吸着剤と比較して、ゼオライト13XのCO2吸着能は非常に高く、吸着熱は低い。表1に、さまざまな吸着剤の品質が比較されている。次の吸着剤選択は、高シリカMFIであった。この吸着剤は非常に疎水性であり、ゼオライト13Xと比較して吸着熱が低く、同等のCO2吸着能を有するという利点を示す。最後に、第三の吸着剤の選択はメソ孔シリカ上にグラフトしたアミンであった。これらのアミン系吸着剤は、燃焼排ガスのような湿った供給においてCO2吸着能が上昇するという利点を示す。しかし、これらの吸着剤は、通常、ゼオライト13Xまたは高シリカMFIのいずれかよりも、非常に高い吸着熱を有し、それ自身、システムを操作するのにより多くの脱着蒸気とより多くの冷却水を必要とするだろう。さらに、これらの結合アミンの長期操作条件下での安定性を測定するための重要な研究を行う必要が未だある。
【0091】
【表1】
【0092】
最後に、中空糸中の吸着剤充填は決定要因であり、中空糸中75重量%の吸着剤充填のものを、いくつかの予備紡糸スクリーニング試験に基づき、達成可能目標として選択した。
【0093】
MFIの吸着特性を使用して、RTSA繊維系システムのサイクル特性を決定することができる。典型的な500MW発電所は1分間に9.2トンのCO2を放出し、システムを通して単純な質量バランスをとることで、1サイクル当たりのCO2回収量を、サイクルタイムとともに見つけることができる。吸着工程中の脱着熱が、吸着剤が緩やかな温度の上昇のみを経験するように、およびCO2吸着剤がたった50℃であり、吸着が35℃で起きるように、吸着剤の温度を穏やかにすると仮定すると:
【0094】
【数3】
【0095】
15℃で:
【0096】
【数4】
【0097】
したがって、本方式の捕捉は:
【0098】
【数5】
【0099】
ここから、サイクルタイムは燃焼排ガスCO2流量を決定することにより決定された:
【0100】
【数6】
【0101】
25秒のサイクルタイムは、典型的なTSA除去設備のサイクルタイムが数時間から数日であることを考慮すると、非常に速い。この迅速なサイクルタイムは吸着質の吸着剤への接触時間が短いであろうことを示唆している。これを確定するために、表面速度を以下に示されるように計算した。
【0102】
【数7】
【0103】
ここから、接触時間は4.3秒であることがわかった(9.25fpsで、29.4ft通過長さ)。これは、中空糸中での物質移動のために利用可能な上限時間を設定する。
【0104】
いったん中空糸連結および繊維系吸着剤の大きさが決められると、床を通過した燃焼排ガスの圧力低下を計算できた。良好な物質移動をもたらしている間の圧力低下を最小にするために、クロスフロー熱交換器フローパターンを選択して、繊維床を横断する圧力低下を、観測を横切る圧力変化のための方程式を用いて計算できた。
【0105】
【数8】
【0106】
これは中空糸床を通じる流れのための遷移領域と同じ桁数であり、したがってこの事例を利用した(これは控えめにも高い圧力低下となるだろう)。
【0107】
【数9】
【0108】
Nrは、典型的なガスの“束(packet)”が、連結管を通過する際に、いくつの妨害物と衝突するかの量である。これは以下のように予測された。
【0109】
【数10】
【0110】
ここで、L0は妨害物含有セルの直径である。いったんこの特徴的な直径が見つけられたら、妨害物の数は単純に以下のように予測された:
【0111】
【数11】
【0112】
結果として得られた圧力低下は0.15atmであるとわかった。供給ガスを1.15atmまで圧縮するために、追加の通風器または容積型送風機が必要となるだろう。
【0113】
実際の装置への関心は、発電所の炭素回収方式寄生負荷である。この方式で見つけられた2つの主要な寄生負荷は蒸気の使用と、他の冷却塔の追加であった。必要な蒸気および水の総量を決定するために、物質とエネルギー平衡が、吸着および脱着工程の間に、システム上で行われた。典型的な熱交換器方法であるΔTが5℃を吸着工程に選択した。25℃での環境条件の水が35℃まで加熱されると予測し、一方シェル側燃焼排ガスが50℃から40℃に冷却されると予測した。
【0114】
【数12】
【0115】
吸着を通じての熱付加は、穴の中の水によって除去されるため、これらの熱は同等に設定され、冷却水の必要量を決定した。
【0116】
【数13】
【0117】
結果として得られた水の流速56,000pgmは、ダクトの必要性から大きな資本投資を意味する。脱着の間、最悪の場合の概算として、排気蒸気の潜在エンタルピーを有すると予測された。さらに、凝縮蒸気はより多くの特定の熱を損失し、発電所内の蒸気コンデンサシステムに送り戻される前に40℃に冷却すると予測された。より潜在的な熱を有するより高品質な蒸気を使用することができ、その結果、より少ない蒸気の使用が可能となるが、しかし廃棄蒸気が入手可能でない限り、費用が高い。このことに関して最適化する条件は確実に存在する。
【0118】
【数14】
【0119】
それぞれのサイクルで平衡状態にあるシステムのために、蒸気によって除去される熱量は、脱着に必要とされる熱量と同等でなければならない。仮に低品質蒸気が十分な潜熱を供給しない場合は、われわれは蒸気が凝結すると予測し、われわれは凝縮蒸気のための、温度60°Kの値の降下を、脱着熱源として使用する低品質蒸気の場合は、妥当とみなす。
【0120】
【数15】
【0121】
この数値を発電所効率への寄生負荷を決定するために使用した。これらの熱伝導流体を中空糸の穴を通じて送り出すために必要な圧力低下は、非圧縮性の流れおよびニュートン性流体と仮定して、Hagen-Poiseuille方程式を用いて計算できる。1トンのCO2回収に必要な蒸気は、異なる炭素回収手段の間の有用な対照であり、以下のように計算できる:
【0122】
【数16】
【0123】
繊維系吸着剤の蒸気の必要性の低さは、この技術の主要な利点の一つを例示している。伝統的な気液アミン接触器は、1トンのCO2に1.3−1.5トンの蒸気の再生必要性がある。
【0124】
水は蒸気よりも実質的に圧力低下が大きいだろう。したがって、水を穴の中の圧力低下を測定するために用いた。
【0125】
【数17】
【0126】
蒸気は、脱着工程の間に、穴の中で凝結すると予測されるため、必要とされる圧力低下は、サイクルの吸着部分の間の穴の中で使用される水の圧力低下に比べて、ごくわずかだろう。
【0127】
繊維系吸着システム設計に関連する多くの問題の一つは、熱および物質移動に必要な時間であった。管束を通過する層流の物質移動相関関係を、中空糸壁を通過するCO2の物質移動係数を決定するのに用いた。
【0128】
【数18】
【0129】
さらに、多孔質繊維壁内の有効拡散係数を予測でき、即ち以下である。
【0130】
【数19】
【0131】
これから、外部物質移動限界、対、内部物質移動限界を計算した。
【0132】
【数20】
【0133】
α値は低いことがわかり、外部物質移動限界を示している。90%飽和までの時間は、約0.55秒であることがわかり、このようにして最小必要接触時間を設定する。この炭素回収方法の有効性をさらに確実にするために、中空糸の熱的平衡に必要とされる時間を計算しなければならない。極端な例として、流れはヌッセルト数が設定されるように十分に作成されたと予測された。
【0134】
【数21】
【0135】
中空糸壁の有効熱伝導率を、その後、ポリマー熱伝導率、吸着粒子、および隙間の空気の加重平均として決定し、2.45W/m−Kと予測した。熱伝導グラフを、中空糸壁内の熱平衡の時間を決定するために採用した。
【0136】
【数22】
【0137】
【数23】
【0138】
【数24】
【0139】
【数25】
【0140】
平衡までの時間は0.027秒と決定され、これは必要とされる迅速な熱サイクルが可能であることを示す。この結果はCO2が局部的に中空糸壁内に埋め込まれた篩の中に吸収するのに必要な時間は重要でないことも示している。MFI粒子は、3マイクロメートルの球体(または立方体)と予測され、篩が最高平衡充填の99%に到達する時間を計算した。
【0141】
【数26】
【0142】
粒子が0.3ミクロンとすると、このタイムスケールはなおさら重要でない。したがって、主要な発見された抵抗は気相抵抗であった。さらなる調査は繊維系吸着剤強度の抵抗であり、繊維系吸着剤システムの妥当性を決定するために実施された。
【0143】
【数27】
【0144】
40MPaのセルロース降伏応力を使用して、中空糸は両方の流れ条件でも適用できる。
圧縮費用を軽減するために、高純度のCO2を可能な限り最大圧力で生産することが重要であり、なぜなら圧縮コストは初期圧力の桁と反比例して上昇するからである。吸着工程が終了し、脱着工程が開始した後に、中空糸間の空間は燃焼排ガス(15モル%のCO2)で充填されると想定され、調節弁バルブを閉じた。蒸気が穴を通過して流れた時に、CO2が脱着および加圧を始めるだろう。
【0145】
【数28】
【0146】
20pisaの脱着圧力は、約25%のガスが圧力差のために流出するのを可能とする。残りを流出させるために、脱着工程が開始し、圧力差が残りの製品ガスを大気圧下で押し出す。燃焼排ガスリサイクル蒸気が脱着工程に役立つという確実な可能性がある。ここから、CO2製品ガス圧縮され隔離設備に送られる。システムの概観を図5および6に示す。いくつかのユニット操作を、送水ポンプ、第二冷却塔、連続した2つの送風機、隔離コンプレッサを含む典型的な発電所に加えた。プロセス統合略図に見られるように、このシステムは、NGCCおよびIGCC発電所に容易に備え付けることができる。
【0147】
【数29】
【0148】
次の中空糸の設計の考慮は、有機/無機界面形態であった。吸着剤への物質移動速度を最大にするために、“ケージ内の篩”形態が目標に選択された。“ケージ内篩”は、充填顆粒がポリマーマトリックスに不完全に接着している(またはまったく接着していない)現象である(図7参照)。ポリマー−充填剤の不適合性、および溶媒交換の間のポリマー応力蓄積は“ケージ内の篩”の背景にある原因と信じられている。
【0149】
中空糸設計の一つの観点は、内腔側面バリア層の構造とバリア層の材料の選択である。バリア層の構築には2つの方法が考慮され、二重層紡糸および後処理工程である。二重層紡糸は、内腔層が、中空糸が形成される時に直接形成されることを可能にする。この例は中空糸の後処理に重点を置く。後処理方法は、典型的に適切なコーキングポリマーで中空糸の外側を洗浄することを含む。この設計では、後処理は中空糸の穴の中で行われただろう。ポリビニリデンジクロライド(PVDC)ラテックスが、この適用の主要な候補として選択された。このポリマーは非常に低い水およびガス浸透率、およびこのシステムの高速熱サイクルに十分な熱耐性を有する。
【0150】
実施例3:試験方法
N−メチル−ピロロジン(NMP)(ReagentPlus(登録商標)99%、Sigma-Aldrich社製、ミルウォーキー、ウィスコンシン州)をポリマー溶液の溶媒として用いた。なぜならこれは水に混和性であり、酢酸セルロースに強い溶媒だからである。メタノール(99.8%、ACS Reagent、Sigma-Aldrich社製)およびヘキサン(ACS Reagent、>98.5%、Baker社製)を、中空糸形成の溶媒交換の一部として使用した。この意図は、毛管力が乾燥中に孔構造を壊すのを防止するために、表面張力の高い流体を、表面張力の低い流体に置き換えることである。すべての溶媒および非溶媒を、精製または改良なしで使用した。
【0151】
ゼオライト13X(1−3ミクロン粒子、Sigma-Aldrich社製)をポリマーマトリックスに分散させる吸着剤として選択した。一度受け取られると、統合体からいずれの過剰有機物を取り除くために、ゼオライトを230℃で乾燥させた。乾燥後、ゼオライトを湿度の高い空気で飽和させることができる。これはゼオライトがNMPまたはポリマー溶液中の水を吸収し、溶液がバイノーダル線から離れることを防止するために行った。
【0152】
酢酸セルロース(MW60,000、Sigma-Aldrich社製)およびPVP(MW55,000、Sigma-Aldrich社製)が本実施例で用いたポリマーである。すべてのポリマーを水を取り除くため、真空下110℃で一日乾燥した。乾燥後、ポリマーを直接それぞれの溶液に加えた。PVPをLiNO3上の伝統的なポア形成として選択した。なぜならLiNO3は酢酸セルロース繊維に化学変化を起こすことがわかったからである。PVDCラテックスはSolVin Chemicals社製から提供された。
【0153】
繊維紡糸装置を繊維系吸着剤を作成するために使用した。装置は、工業的繊維システムを真似て、容易に拡張可能なように設計され建設された。近年、多くの紡糸装置が、2つのポリマーが同時に接触して紡がれるという二重層紡糸金口を使用し、2つのポリマーのうち1つのポリマーがコア層として供され、他が分離シース層として作用する。ポリマー−吸着剤紡糸ドープを、必要量の80%のNMPと、脱イオン水を混合し、1lガラス製広口瓶に入れ、PTFE栓で封をして準備した。主要ドープを、必要量の20%のNMPと水を混合し、PTFE栓付500mlガラス製広口瓶に入れ準備した。次に、必要量の20%の乾燥酢酸セルロースおよびPVPを溶液に加えた。溶液を完全な溶解が生じるまで、50℃でローラー上で混合した。周囲の湿度条件と平衡関係にあるゼオライト13Xを、次にNMP/H2O混合物に加え、1分の超音波分解(1000W最大ホーン、Dukane社製、Leesgurg、バージニア州)と30秒の休止を3回行って超音波分解した。主要溶液を次に超音波溶液に加え、さらに超音波サイクルを2回行った。最後に、残りの乾燥酢酸セルロースおよびPVPを混合液に加え、完全な溶解が生じるまで、50℃のローラー上に配置した。各種溶媒、非溶媒、およびゼオライト組成物中のドープを三成分系のバイノーダル線を、一層または二層レジメを決定するための曇り点技術を用いて決定するために作製した。純粋ポリマー溶液を最初に純粋ポリマーバイノーダル線を決定するために作製した。一度決定されたら、ポリマーの液体比は同様に保たれ、NMPのH2O比はゼオライトが加えられた時に同様に保たれた。これらのサンプルドープはシリンジに充填され、層分離速度を定性的に決定するためにDI H2Oに押し出された。
【0154】
圧力衰吸着法を遷移系吸着剤の吸着等温式を決定するために用い、吸着の概略図を図8に示す。吸着セルを低温湯浴中に浸した。繊維系吸着剤サンプルを充填した後に、湯浴を110℃に設定し、セルおよび繊維系吸着剤を完全に空にするために、サンプルセルを真空下に置いた。乾燥工程後、湯浴を45℃に設定し、CO2をタンク(A)に導入し平衡になるまで時間を置いた。熱的平衡が確立された後、サンプルバルブ(B)を一時的に開けてCO2を繊維系吸着剤サンプルに導入した。経時的圧力衰をそれぞれの膨張で記録し、2つのタンクの間のモルバランスから、吸着等温式を作成した。これから、繊維系吸着剤動態を測定することができ、繊維系吸着剤等温式を測定できた。しかし、実験の制限のため、実際のRTSAシステムのように、サンプルセル内の局所熱効果を緩和することができなかった。
【0155】
非処理繊維系吸着剤のガス輸送性能を、穴側供給口圧力が20−30psigの純粋N2およびCO2を用いて明らかにした。シェル側浸透流速を、バブルフローメーター(bubble flow meter)を用いて、45分毎に、測定値が前測定値の5%以内になるまで測定した。処理済繊維を、穴側供給口圧力が70−80psigの純粋N2およびCO2を用いて測定し、定常状態が達成された時点で、浸透流速を下流の圧力変換機で測定した。走査型電子顕微鏡(SEM)を、繊維系吸着剤間隙構造、ポリマー−充填剤界面を測定し、内腔層欠陥を調べるために使用した。溶媒交換中空糸をヘキサンに2分間浸し、液体N2に移動させ、2つの微細針ピンセットで2つにせん断した。これらの中空糸を次に10−20nmの金薄膜でスッパッタ被膜し(Model O-S1、ISI社製、Mountain View、カルフォルニア州)、電界放射型走査電子顕微鏡、Leo 1530(Leo Electron Microscopy社製、Cambridge、英国)に移動した。
【0156】
後処理方法を、PVDCラテックスを必要量のDI H2O(40体積%ラテックス、60体積%H2O)で希釈して行った。この希釈ラテックスを次にISCOポンプ(Model500DM、Isco社製、Lincoln、ネブラスカ州)内に充填し、中空糸浸透モジュールへ取り付けた。この溶液を10psigで15秒間、中空糸の穴を通して送り込んだ。その後、モジュールをN2シリンダーに接続し、湿度の高いN2(50%R.H.(相対湿度))を30psigで15分間、中空糸の穴を通過させ、流出物の相対湿度は40%であった。このサイクルを2回繰り返した。最後に、乾燥N2を、流出物の相対湿度が0%とわかるまで(典型的には1時間)、30psigで穴を通過させた。
【0157】
実施例4:繊維組成物の分析
曇り点技術およびシリンジ押出を用い、選択された最終ポリマードープ溶液は10重量%CA/4%PVP/30%ゼオライト13X/49.3%NMP/6.7%水であった。乾燥相では、これは75重量%ゼオライト充填量に対応する。この溶液は、他のCA溶液に比較した迅速な層分離と、高充填剤充填量という理由から、選択した。ポリマーの溶液に対する高い比率のドープは非常にゆっくり相分離し、紡糸にとって理想的ではないだろう。より大きなゼオライト濃度のドープは、破砕することなく中空糸に引き込まれることはできないだろう。
【0158】
最初の一連の紡糸は、75重量%ゼオライト13Xで一層性中空糸を作製することに注力した。主要な課題はCAドープの相分離時間、中空糸の引き上げ能力をいまだ保持している間の大きなOD(高分子中空糸)の調節、および穴流体組成物の決定であった。これらの課題を考慮して、使用した紡糸状態を表2に示す。
【0159】
【表2】
【0160】
深い凝固浴槽を新生中空糸を完全に分離するの時間を与えるために用いた。小さな巻き取り速度を大きなODの必要性から用い、大きな押出速度を、中空糸が最初に必要なODに近づけるように、ラインのダイスウェルを操作するために用いた。穴流体を、水が中空糸内部を迅速に相分離させずに、中空糸がドラム上にひきつけられるための電位を取り除くために、主にNMPとなるように選択した。最後に、空隙を非常に低く設定し、実際に紡糸金口を沈めることなく、環帯内の相分離の原因とせずに、湿式紡糸を真似た。湿式紡糸は、非溶媒蒸発が空隙内で(乾式紡糸のように)生じず、緻密な層を形成するため、理想的であった。得られた中空糸は、機械的に強いことがわかり、通常の埋め込み工程を経ることができた。
【0161】
これらの中空糸のSEM像は多くの中空糸デザイン対象物が達成されたことを明らかにする。図9Aに示されるように、中空糸ODおよびIDはデザイン目標に近く、ODは1100マイクロメートル、およびIDは300マイクロメートルである。第2に、図9Bから、良好な吸着剤分散をポリマーマトリックスの至るところに確認できる。最後に、図9Cは“ケージ内篩”形態の存在を示し、これは中空糸を通じた迅速な物質移動の主要要因である。
【0162】
ガス浸透を、中空糸を通じた物質移動速度を決定するために、この単一中空糸上で行った。中空糸は、非選択的で、N2浸透速度が60,000気体透過単位(GPU:gas permeation unit)であり、ここで
【0163】
【数30】
【0164】
であり、中空糸の孔構造が開いていて連続的なことを示している。
繊維系吸着剤上の吸着実験を、ゼオライト13Xの文献結果を的確な温度に調節したもの、および、CAの文献結果で適切な温度のものと比較した。繊維系吸着剤の等温式が以下の図10に示され、中空糸内のゼオライト充填の確認に役立つ。ポリマーおよびゼオライト吸着能は中空糸内の添加物である(たとえば、25%の純粋CA能に、75%の純粋ゼオライト能を加えた結果が繊維系吸着剤能となる)。第一の膨張を使用して、中空糸上の吸着動態を行った。吸着技術の主要な制限の一つは、吸着熱の放出により産生される熱の消失である。図13に見られるように、測定半減時間は約7秒であった。予測動態よりも遅いことの、可能性の有る原因は、CO2が13Xの表面上に吸着する時の、吸着熱の
放出を原因とする非調節の局所温度上昇である。この局所温度上昇は、吸着等温式が一時的に下方へ移動する原因となり得、したがって吸着剤の平衡能が低下する。湯浴からの熱伝導のため、この温度上昇は最終的には調節され、吸着は平衡に達するだろう。RTSAシステムでは、中空糸壁と、熱移動流体としての冷水との密接な接触は、これらの局所温度急騰のいくつかを調節しなければならない。COMSOLモデルを温度の工程変化を仮定して、吸着セルの外部へ伝導する加熱時間を測定するために作製した。熱が完全に消失するための時間を同じ図面にプロットし、明らかに、熱伝導の時間は吸着の重要因子である(図11参照)。
【0165】
PVDCラテックス後処理法は、単純で成功する内腔層作製法であることがわかった。ラテックスが10psigで中空糸穴を容易に流れられるように、ラテックスを60重量%にDI H2Oで薄めた。これより低い希釈レベルでは、ラテックス溶液が中空糸穴を
塞ぐことがわかった。図9A−Cおよび図12から、穴から外側に広がる多孔率勾配が見られ、中空糸は、中空糸のシェル側に向かって密度が大きくなり、中空糸の穴側に向かってより多孔性になっている。この多孔率の変化は、約30ミクロンの穴を通じるラテックスの流れの内在的逆流防止装置として作用し、これは図13A−Cで確かめられる。このラテックスの後処理は、穴内部の追加の空間を塞がず、吸着繊維本体の活性領域内にほとんど面積を必要としない、非常に密度の大きいバリア層をもたらす。ラテックスは毛管力を通じて穴の周囲の多孔性領域を通過して動き、すべての孔が充填されるのを可能とする。N2が通過する間に、ラテックス中の過剰な水が運び去られ、蒸発水の表面張力が、ポ
リマー粒子を相互に近づける原因となり、粒子表面上の界面活性剤が、粒子がもつれ、内在的欠陥の自由層を形成するのを可能にする。湿度の高いN2を乾燥速度を調節するのに用い、PVDC層の欠陥が永久的に固定されないようにした。湿度の高いN2がないと、バリア層にピンホールが検出され、これはたぶん速い水蒸発速度によるものである(図14参照)。バリア層の作製のために、後処理済み中空糸を、真空オーブン中に100℃で24時間置き、PVDCフィルムをアニールした。CO2およびN2ガス浸透が、後処理済み吸着繊維上で行われた。密度の大きいPVDC層はガス輸送に大きな抵抗を与え、N2浸透を70psigで約0.5GPUに減少させる。穴側面供給圧力が上昇するにつれて、中空糸壁を通じる流れが、内腔層が150psigの圧力に充満するまで上昇した。
【0166】
繊維系吸着剤に直面する問題は、内腔層バイパスの問題であった。典型的な選択的中空糸膜において、外部選択膜は埋め込み物質に対して封止し、供給流れを中空糸の選択部分を通じて通過させる(図15A)。繊維系吸着剤では、しかしながら、中空糸の内部に選択層があり、このようなシールは存在しない。穴側に導入される、水および蒸気などは、中空糸のコア構造を通じて連結管のシェル側内部に迂回できた。さらに、シェル側供給からの燃焼排ガスは、水および蒸気システムに逃げることができた(図15B)。これらの問題の両方とも、取り上げられていない場合は、RTSAシステムを効果のないものに変える潜在能力を有する。これに取り組むために、埋め込みシールで中空糸を“キャッピング”する方法が開発された。後処理法の間に、中空糸正面に存在する毛管力が、ラテックスを中空糸の先端内に押し戻した。このラテックスを、次に中空糸正面を横切るN2のサッとした流れを用いて乾燥した(図15C−D)。これは図16で確認できる。このキャッピング技術の成功は、浸透実験を行う能力で確認できた(不十分なキャッピングは、浸透バイパスをもたらすだろう)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の成分を吸着する方法であって、
媒体を、複数の蛇行経路と、前記複数の蛇行経路と流体連通する吸着物質と、中空糸内に配置された内腔と、前記内腔と前記複数の蛇行経路との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む、中空糸と接触させる工程と、
前記媒体の成分を吸着物質で選択的に吸着する工程とを含む、
媒体の成分を吸着する方法。
【請求項2】
さらに前記媒体の成分を脱着する工程を含む、請求項1に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項3】
さらに前記接触および吸着を繰り返す工程を含む、請求項2に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項4】
一連の吸着間のサイクルタイムが2分未満である、請求項3に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項5】
前記媒体が燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体を含む、請求項1に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項6】
さらに前記媒体と熱交換流体との間の流体連結を防止する工程を含む、請求項1に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項7】
前記成分がCO2、SOx、NOx、および水から選択される、請求項1に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項8】
前記成分がCO2である、請求項1に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項9】
前記媒体がCO2および窒素から成り、前記吸着成分が、窒素に対して5より大きいCO2吸着の選択性を有する、請求項8に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項10】
前記媒体がCO2および窒素から成り、前記吸着物質が窒素に対して、10から60の二酸化炭素の選択性を有し、−25kJ/(mol CO2)から−90kJ/(mol CO2)の吸着熱を含む、請求項8に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項11】
前記媒体が燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体である、請求項9に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項12】
前記媒体が燃焼排ガス蒸気である、請求項9に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項1】
媒体の成分を吸着する方法であって、
媒体を、複数の蛇行経路と、前記複数の蛇行経路と流体連通する吸着物質と、中空糸内に配置された内腔と、前記内腔と前記複数の蛇行経路との間の流体連通を防止するための、前記内腔を覆うバリア層とを含む、中空糸と接触させる工程と、
前記媒体の成分を吸着物質で選択的に吸着する工程とを含む、
媒体の成分を吸着する方法。
【請求項2】
さらに前記媒体の成分を脱着する工程を含む、請求項1に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項3】
さらに前記接触および吸着を繰り返す工程を含む、請求項2に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項4】
一連の吸着間のサイクルタイムが2分未満である、請求項3に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項5】
前記媒体が燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体を含む、請求項1に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項6】
さらに前記媒体と熱交換流体との間の流体連結を防止する工程を含む、請求項1に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項7】
前記成分がCO2、SOx、NOx、および水から選択される、請求項1に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項8】
前記成分がCO2である、請求項1に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項9】
前記媒体がCO2および窒素から成り、前記吸着成分が、窒素に対して5より大きいCO2吸着の選択性を有する、請求項8に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項10】
前記媒体がCO2および窒素から成り、前記吸着物質が窒素に対して、10から60の二酸化炭素の選択性を有し、−25kJ/(mol CO2)から−90kJ/(mol CO2)の吸着熱を含む、請求項8に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項11】
前記媒体が燃焼排ガス、天然ガス、燃料ガス、バイオガス、都市ガス、廃ガス、水、石炭ガス、空気、または二酸化炭素含有媒体である、請求項9に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【請求項12】
前記媒体が燃焼排ガス蒸気である、請求項9に記載の媒体の成分を吸着する方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−210625(P2012−210625A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118744(P2012−118744)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【分割の表示】特願2010−515184(P2010−515184)の分割
【原出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(500020357)ジョージア テック リサーチ コーポレイション (39)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【分割の表示】特願2010−515184(P2010−515184)の分割
【原出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(500020357)ジョージア テック リサーチ コーポレイション (39)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】
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