説明

媒体厚み測定装置

【課題】媒体の厚みを高精度で測定することを目的とする。
【解決手段】媒体厚み測定装置10であって、基準ローラ100と、媒体の厚みと前記基準ローラの誤差要因による厚み測定誤差とを合わせた第1の測定値を取得する第1の測定部と200A、前記第1の測定部と予め定められた位相差θ分ずれた位置に配置され、前記第1の測定部が測定した位相における前記基準ローラの誤差要因による厚み測定誤差を第2の測定値として取得する第2の測定部200Bと、前記第2の測定部による第2の測定値を前記位相差分ずらすとともに、前記第1の測定部による第1の測定値との差分を求めて、前記媒体の厚さを取得する媒体厚さ取得部350とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体の厚みを測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体の厚みを測定する装置において、その精度を上げるための様々な工夫がなされている。たとえば、基準ローラの中心に対して第一の測定子とは対称位置に第二の測定子を設ける方法が知られている(特許文献1)。この方法では、第一の測定子の変化量から媒体の厚みと基準ローラの変位量を合わせた変位量を取り込み、第二の測定子の変化量から基準ローラの変位量を取り込み、取り込んだ2つの変位量を用いて基準ローラの中心からの基準ローラの回転中心の偏心に起因する誤差を補正している。
【0003】
【特許文献1】特開平5−141957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の方法では、基準ローラの真円度に起因する誤差や、基準ローラの表面の凹凸に起因する誤差を補正することは困難であった。
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも1つを解決し、媒体の厚みを高精度で測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は以下の態様をとる。
【0007】
本発明の第1の態様は、媒体厚み測定装置であって、基準ローラと、媒体の厚みと前記基準ローラの誤差要因による厚み測定誤差とを合わせた第1の測定値を取得する第1の測定部と、前記第1の測定部と予め定められた位相差分ずれた位置に配置され、前記第1の測定部が測定した位相における前記基準ローラの誤差要因による厚み測定誤差を第2の測定値として取得する第2の測定部と、前記第2の測定部による第2の測定値を前記位相差分ずらすとともに、前記第1の測定部による第1の測定値との差分を求めて、前記媒体の厚さを取得する媒体厚さ取得部とを備える。この態様によれば、第1の測定部で基準ローラの誤差と媒体の厚みを合わせた値を測り、第2の測定部で第1の測定部が媒体の厚さを測定した位相における基準ローラの誤差を測るので、その差分から媒体の厚さを高精度で求めることが可能となる。
【0008】
本発明の第1の態様において、前記第1及び第2の測定部は、前記基準ローラと接する検知ローラを備え、前記基準ローラの径は、前記検知ローラの径の整数倍であってもよい。この態様によれば、基準ローラ上の任意の点に接触する検知ローラ上の点は同じになるので、誤差を少なくできる。
【0009】
本発明の第1の態様において、前記第1の測定部の第1の検知ローラと、前記第2の測定部の第2の検知ローラは、同じ径を有していてもよい。この態様によれば、基準ローラ上の任意の点に接触する第1の検知ローラ上の点及び第2の検知ローラ上の点は同じになるので、誤差を少なくできる。
【0010】
本発明の第1の態様において、前記第1の測定部は前記第1の検知ローラ上の特定点が前記基準ローラに接するタイミングで測定を行い、前記第2の測定部は前記第2の検知ローラ上の特定点が前記基準ローラに接するタイミングで測定を行ってもよい。この態様によれば、測定時には検知ローラ上の同じ点が基準ローラに接しているので、検知ローラの誤差を取り除くことが可能である。
【0011】
本発明の第1の態様において、前記媒体厚さ取得部は、媒体を測定しないときの前記第1の測定部による測定値変化のうちの最大値と最小値との差を、前記第2の測定部による測定値変化のうちの最大値と最小値の差と等しくなるように前記第1の測定部と第2の測定部の少なくとも一方を補正する補正部を備えていてもよい。この態様によれば、第1の測定部の感度と第2の測定部の感度差による誤差を抑制することが可能となる。
【0012】
本発明の第1の態様において、前記補正部は、媒体を測定しないときの前記第1の測定部による測定値及び前記第2の測定部により測定値について、それぞれ、平均値をゼロとしてもよい。この態様によれば、第1の測定部と第2の測定部のゼロ点補正が可能となる。
【0013】
本発明の第1の態様において、さらに、前記第1の測定値と前記第2の測定値を用いて前記第1の測定部と前記第2の測定部との位相差を取得する位相差取得部を備えていてもよい。この態様によれば、第1の測定部と前記第2の測定部の配置を厳密に行わなくても第1の測定部と第2の測定部との位相差を求めることが出来、媒体の厚さを高精度で求めることが可能となる。
【0014】
本発明の第1の態様において、さらに、前記第2の測定部に前記媒体を送る媒体搬送部備え、前記位相差取得部は、前記第1の測定部による第1の測定値が予め定められた値以上遷移したタイミングと、前記第2の測定部による第2の測定値が予め定められた値以上遷移したタイミングとの差から、前記第1の測定部と前記第2の測定部との位相差を取得してもよい。媒体を測定する時には、媒体の有無により測定値は基準ローラの誤差以上変動する。したがって、第1の測定部と第2の測定部でこのような変動があったタイミングをそれぞれ取得し、その差から、第1の測定部と第2の測定部の位相差を取得することが可能である。
【0015】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、媒体厚み測定装置の他、媒体の厚みの測定方法、媒体の厚みの測定精度向上方法等、様々な形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第1の実施例:
図1は、第1の実施例に係る媒体厚み測定装置の概略構成図である。媒体厚み測定装置10は、基準ローラ100と、2つの測定部200A、200Bを備える。2つの測定部200A、200Bは同一の構成を有しているので、これらを区別しない場合には、「A」「B」を省略して「測定部200」と呼ぶ。基準ローラ100は、図示しないモータにより駆動されて回転し、媒体400を搬送する。第1の測定部200Aは、検知ローラ210Aと、検知レバー220Aと、リニア出力センサ230Aと、スプリング240Aを備える。第2の測定部200Bについても同様である。検知ローラ210は、基準ローラ100と接しており、基準ローラ100の回転に伴って回転する。第1の検知ローラ210Aと基準ローラ100との接触位置Aと、基準ローラ100の回転中心Oと、第2の検知ローラ210Bと基準ローラの接触位置Bとのなす角∠AOBの大きさは、θとなっている。本実施例では、このθを第1の測定部200Aと第2の測定部200Bとの「位相差」ともいう。なお、位相差は、測定部200A、200Bの取り付け位置により決まるので、一般に既知である。基準ローラ100が回転すると、基準ローラ100の真円からの歪みと、基準ローラ100の中心とその回転中心とのずれである偏心と、基準ローラ100の凹凸とを含む誤差要因に応じて、検知ローラ210が、基準ローラ100の半径方向に上下動する。また、第1の検知ローラ210Aは、基準ローラ100との間を媒体400が通過するとき、媒体400の厚さに応じて、基準ローラ100の半径方向に上下動する。すなわち、第1の検知ローラ210Aの上下動は、誤差要因による上下動と媒体の厚みによる上下動とを合わせたものになる。
【0017】
厚み検知レバー220は、検知ローラ210を支持するとともに、検知ローラ210の位置の変化をリニア出力センサ230に伝える。リニア出力センサ230は、検知ローラ210の変化量を取得する。たとえば、リニア出力センサ230を、厚み検知レバー220の支点に配置し、厚み検知レバー220の支点角度を検知することで、検知ローラ210の変位量を検知することが可能である。なお、第1のリニア出力センサ230Aと第2のリニア出力センサ230Bは、媒体を測定しないときの基準ローラ100の測定値の最大値と最小値の差が同じになるように補正がされている。これにより、第1のリニア出力センサ230Aと第2のリニア出力センサ230Bの感度の差を補正することが可能である。また、リニア出力センサ230A、230Bは、媒体400の無い状態で、基準ローラ100が回転した時の測定値の平均値がゼロになるようにゼロ点補正がされている。スプリング240は、検知ローラ210が基準ローラ100に加圧接触するように弾性力を加えるための弾性体である。
【0018】
図2は、媒体400を挿入せずに基準ローラを回転させたときのリニア出力センサ230A、230Bの出力を示す説明図である。通常、リニア出力センサ230の出力値(以下「変位量」とも呼ぶ)は、基準ローラ100に起因する誤差要因(真円からのずれ、偏心、表面の凹凸)が無ければ、ある一定の値となる。なお、リニア出力センサ230A、230Bの測定値がゼロ点補正されていれば、この一定の値はゼロである。しかし、これらの誤差要因がある場合には、リニア出力センサ230の出力値には、基準ローラ100の1回転分の周期をもって、誤差が現れる。例えば、基準ローラ100に凹凸があり、第1の検知ローラ210Aとの接点が凸部から凹部に変わるとき、第1のリニア出力センサ230Aの出力には、値が大きく下落するPa部が現れる。そして、Pa部は、一周期後に再び現れる。また、Pa部は、第2のリニア出力センサ230Bの出力においてもPa’部として、Pa部の発生からからtθ後に現れる。ここで、基準ローラ100の回転の角速度をωとすると、第1の測定部200Aと第2の測定部200Bの位相差θとの間に、
θ=tθ・ω
の関係がある。
【0019】
図3は、媒体厚み測定装置10の測定値の処理部を示す説明図である。媒体厚み測定装置10は、測定値の処理部300として、増幅器310、A/D変換器320、サンプリングクロック発生部330、記憶部340、CPU350を備える。リニア出力センサ230の出力は、増幅器310により増幅され、A/D変換器320により、アナログデータからデジタルデータに変換される。このデジタルデータは、サンプリングクロック発生部330からのクロックごとに、記憶部340に格納される。CPU350は、記憶部340のデジタルデータを用いて媒体の厚さを取得する媒体厚さ取得部として機能する他、上述したリニア出力センサ230の感度補正、ゼロ点補正を行う補正部としても機能する。
【0020】
図4は、誤差を相殺する原理を模式的に示す説明図である。なお、図4(a)では、図示の便宜上第1のリニア出力センサ230Aからの出力値を第2のリニア出力センサ230Bからの出力値よりも上方にプロットしている。図4(b)に示すように、CPU350は、第2のリニア出力センサ230Bからの測定データをtθ分前方にシフトさせる。次に、図4(c)に示すように、CPU350は、第1のリニア出力センサ230Aからの測定データと、シフトした第2のリニア出力センサ230Bからの測定データの差分をとる。図4(c)に示すように、差分は、どの時点においてもゼロとなっており、時間による変化はない。すなわち、誤差が相殺されている。
【0021】
この原理は、以下のように考えることができる。すなわち、ある時点(基準ローラ100上のある位相)において第1の測定部200Aにおいて生じた誤差の誤差要因は、tθ後に第2の測定部200Bによる測定に掛かる。そして、この誤差要因による誤差が第2の測定部200Bおいても測定される。このとき、第1の測定部200Aにおいて生じた誤差と第2の測定部200Bで生じた誤差は、誤差要因が同じであるため、同じである。したがって、第2のリニア出力センサ230Bからの測定データをtθ分(位相差ではθ分)前方にシフトさせ、第1のリニア出力センサ230Aからのデータとの差分をとることにより誤差を相殺することが可能である。このようにすれば、基準ローラ100の回転位置を検知するため手段は必要ない。
【0022】
図5は、媒体400を測定したときのリニア出力センサ230の出力の一例である。図5(a)に示すように、第1のリニア出力センサ230Aの出力値は、基準ローラ100の誤差要因による厚み測定誤差の値と、媒体の厚みとを加算した値となる。一方、図5(b)に示すように、第2のリニア出力センサ230Bの出力値は、基準ローラ100の誤差要因による厚み測定誤差の値であり、図2に示す値と同じである。なお、これらの値は、図3に示す処理部300の増幅器310により増幅され、A/D変換器320によりA/D変換された後、CPU350により測定時間とともに記憶部340に格納されている。
【0023】
CPU350は、記憶部340から、測定時間と第2のリニア出力センサ230Bの出力値を読み取る。次に、CPU350は、出力値をθ分シフトさせる。具体的には、CPU350は、読み取った測定時間からtθを引く。CPU350は、記憶部340から、測定時間と第1のリニア出力センサ230Aの出力値を読み取る。次に、CPU350は、第1のリニア出力センサ230Aの出力値と、シフト後の第2のリニア出力センサ230Bの出力値との差分をとる。
【0024】
図6は、差分をプロットしたグラフである。図6では、媒体400及び媒体400上の貼付物の厚みを合わせたデータがプロットされており、基準ローラ100の誤差要因による厚み測定誤差は、差分をとることにより相殺されている。なお、CPU350は、ノイズなどの誤検知対策のために、複数の測定時間の変位量の平均値、あるいは移動平均値を新たな変位量として用いて差分を算出したり、ある範囲の変位量の積分値を新たな変位量として用いて差分を算出したりするなどしてもよい。
【0025】
以上、本実施例によれば、第2のリニア出力センサ230Bの出力値と、それよりもtθ前における第1のリニア出力センサ230Aの出力値との差分をとることにより、誤差要因に起因する誤差を相殺できるので、媒体の厚みを高精度で測定することが可能となる。正確な媒体の厚みデータを得ることができれば、媒体上の貼付物の有無の判別や、媒体厚みの種類の判別精度を向上することが可能となる。なお、第1のリニア出力センサ230Aの出力値を取得し、tθ後における第2のリニア出力センサ230Bの出力値との差分をとることにより誤差要因に起因する誤差を相殺してもよい。
【0026】
本実施例では、基準ローラ100と検知ローラ210の大きさについては、特に限定していなかったが、基準ローラ100の径は、検知ローラ210の径の整数倍であってもよい。こうすると、基準ローラ100上の特定の点x(図1)が接する検知ローラ210上の点は、常に特定の点y(点y’)であるため、基準ローラ100と検知ローラ210の誤差を合わせた値を相殺し、測定精度を向上することが可能となる。なお、この場合、第1の検知ローラ210Aと第2の検知ローラ210Bは同じ径であることが好ましい。
【0027】
本実施例では、サンプリングクロックの周期については限定していなかったが、検知ローラ210上の特定の点yが基準ローラ100に接する周期であってもよい。こうすると、検知ローラ210に起因する誤差要因は、点yにおける誤差要因のみになるので、検知ローラ210に起因する誤差を相殺することが可能となる。たとえば、基準ローラ100の半径をR、角速度をω、検知ローラの半径をrとする。このとき、サンプリングクロックの周期Tは、T=2πr/Rωの整数倍にしてもよい。なお、検知ローラ210は、小さい方が好ましい。サンプリングクロックの周期を短くすることが可能となるからである。
【0028】
本実施例では、測定部200は、検知ローラ210を用いた接触式であるが、例えば、レーザ干渉を用いた非接触式であってもよい。こうすれば、検知ローラ210に起因する誤差を無くすことが可能となる。
【0029】
本実施例では、出力をシフトする時に、第1のリニア出力センサ230Aと第2のリニア出力センサ230Bのタイミングの差を用いたが、データの個数を用いてもよい。
【0030】
第2の実施例:
図7は、第2の実施例に係る媒体厚み測定装置の概略構成図である。第2の実施例の媒体厚み測定装置は、第1の実施例の媒体厚み測定装置の構成に加えて、搬送切替ローラ250と搬送ガイド260を備える。搬送切替ローラ250は、媒体400の搬送先を矢印C方向にするか、矢印D方向にするか、を切り替える。搬送ガイド260は、矢印D方向の搬送に際し、媒体400をガイドする。
【0031】
第2の実施例の媒体厚み測定装置には、2つの動作がある。第1の動作は、媒体400の厚さを測定する動作である。この動作では、搬送切替ローラ250は、図示しないアクチュエータにより退避する。媒体400は、矢印C方向に搬送され、矢印D方向には搬送されない。なお、第1の動作は、第1の実施例の動作と同じである。第2の動作は、第1の測定部200Aと第2の測定部200Bの位相差を求める動作である。この動作では、搬送切替ローラ250は、図示しないアクチュエータにより、基準ローラ100方向に押し付けられて移動する。これにより媒体400は矢印D方向に搬送される。そのため、媒体400は、第1の測定部200Aと第2の測定部200Bで測定される。
【0032】
図8は、第2の動作におけるリニア出力センサ230A、230Bの出力の一例である。リニア出力センサ230A、230Bの出力値は、いずれも基準ローラ100の誤差要因による誤差と、媒体400の厚みを加えた値である。また、リニア出力センサ230Aと230Bの出力は、位相差分ずれているが、出力波形は同じ形状である。したがって、リニア出力センサ230Aと230Bの出力を比較することにより、位相差を求めることが可能である。ここで、一般に、媒体400の厚みの大きさは、基準ローラ100の誤差要因による誤差の大きさよりも大きい。したがって、媒体400の検知時に、リニア出力センサの出力値は大きく立ち上がる。CPU350は、リニア出力センサ230A、230Bの、この立ち上がりのタイミングをそれぞれ求め、その差から、位相差を求めることが可能である。
【0033】
CPU350は、リニア出力センサ230A、230Bの出力を、図3に示す処理部で処理し、測定タイミングと出力値を記憶部340に格納する。CPU350は、記憶部340に取り込んだ測定値を検索し、リニア出力センサ230A、230Bの出力それぞれについて、測定値の変化が一定値以上である測定のタイミングTa、Tbを取得する。この一定値は、例えば、媒体400の厚さと同じであってもよい。また、媒体400が、測定部200に到達したと判断可能な値であれば、この一定値は、媒体の厚さよりも小さい値、例えば、媒体400の厚さの半分であってもよい。通常、このタイミングTa、Tbは、リニア出力センサ230A、230Bの出力のそれぞれについて1つであり、媒体400がそれぞれの測定部200に到達したタイミングに相当する。したがって、このタイミングTa、Tbの差Tθから第1の測定部200Aと第2の測定部200Bの位相差を求めることが可能となる。
【0034】
以上、第2の実施例によれば、リニア出力センサ230A、230Bの出力それぞれについて、測定値の変化が一定値以上である測定のタイミングTa、Tbを取得し、第1の測定部200Aと第2の測定部200Bの位相差を求めることが可能となる。なお、本実施例では、タイミングを用いて説明したが、タイミングと基準ローラ100の位相は対応しているので、タイミングの代わりに位相を用いても同じことである。これにより、厚み検知装置の経年変化などの任意の取り付け位置の誤差に対して容易に補正することが可能となる。また、最初に測定部200を配置する際に、厳密な位置合わせの必要がなく、測定部200の配置後に、第2の動作の手順にしたがって、第1の測定部と第2の測定部の位相差を求めればよい。
【0035】
第2の実施例では、第1の測定部200Aと第2の測定部200Bの位相差を、リニア出力センサ230の出力が立ち上がるタイミングから求めたが、リニア出力センサ230の出力が立ち下がるタイミングから求めてもよい。
【0036】
第2の実施例では、位相差を求める際に媒体400を測定しているが、媒体400を用いなくても位相差を求めることは可能である。例えば、CPU350は、各測定部200A、200Bについて、各測定タイミングにおける出力の変化が最も大きくなる測定時間をそれぞれ求め、その測定時間の差を用いて、位相差を求めてもよい。例えば、図2において、第1のリニア出力センサ230Aの出力がもっとも大きく変化するのはTaであり、第2のリニア出力センサ230Bの出力が最も大きく変化するのはTbである。CPU350は、このTaとTbの差から位相差を求めることが可能である。なお、出力が最も大きく変化する時間は、隣接する測定タイミングにおけるリニア出力センサ230の出力値の差を用いることにより、容易に求めることが可能である。
【0037】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施例に係る媒体厚み測定装置の概略構成図である。
【図2】媒体400を挿入せずに基準ローラを回転させたときのリニア出力センサ230A、230Bの出力を示す説明図である。
【図3】媒体厚み測定装置10の測定値の処理部を示す説明図である。
【図4】誤差を相殺する原理を模式的に示す説明図である。
【図5】媒体400を測定したときのリニア出力センサ230の出力の一例である。
【図6】差分をプロットしたグラフである。
【図7】第2の実施例に係る媒体厚み測定装置の概略構成図である。
【図8】第2の動作におけるリニア出力センサ230A、230Bの出力の一例である。
【符号の説明】
【0039】
10…測定装置
100…基準ローラ
200…測定部
210…検知ローラ
220…検知レバー
230…リニア出力センサ
240…スプリング
250…搬送切替ローラ
260…搬送ガイド
300…処理部
310…増幅器
330…サンプリングクロック発生部
340…記憶部
400…媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体厚み測定装置であって、
基準ローラと、
媒体の厚みと前記基準ローラの誤差要因による厚み測定誤差とを合わせた第1の測定値を取得する第1の測定部と、
前記第1の測定部と予め定められた位相差分ずれた位置に配置され、前記第1の測定部が測定した位相における前記基準ローラの誤差要因による厚み測定誤差を第2の測定値として取得する第2の測定部と、
前記第2の測定部による第2の測定値を前記位相差分ずらすとともに、前記第1の測定部による第1の測定値との差分を求めて、前記媒体の厚さを取得する媒体厚さ取得部と、
を備える、媒体厚み測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体厚み測定装置において、
前記第1及び第2の測定部は、前記基準ローラと接する検知ローラを備え、
前記基準ローラの径は、前記検知ローラの径の整数倍である、媒体厚み測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の媒体厚み測定装置において、
前記第1の測定部の第1の検知ローラと、前記第2の測定部の第2の検知ローラは、同じ径を有する、媒体厚み測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の媒体厚み測定装置において、
前記第1の測定部は前記第1の検知ローラ上の特定点が前記基準ローラに接するタイミングで測定を行い、
前記第2の測定部は前記第2の検知ローラ上の特定点が前記基準ローラに接するタイミングで測定を行う、媒体厚み測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の媒体厚み測定装置において、
前記媒体厚さ取得部は、媒体を測定しないときの前記第1の測定部による測定値変化のうちの最大値と最小値との差を、前記第2の測定部による測定値変化のうちの最大値と最小値の差と等しくなるように前記第1の測定部と第2の測定部の少なくとも一方を補正する補正部を備える、媒体厚み測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の媒体厚み測定装置において、
前記補正部は、媒体を測定しないときの前記第1の測定部による測定値及び前記第2の測定部により測定値について、それぞれ、平均値をゼロとする、媒体厚み測定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の媒体厚み測定装置において、さらに、
前記第1の測定値と前記第2の測定値を用いて前記第1の測定部と前記第2の測定部との位相差を取得する位相差取得部を備える、媒体厚み測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の媒体厚み測定装置において、さらに、
前記第2の測定部に前記媒体を送る媒体搬送部備え、
前記位相差取得部は、前記第1の測定部による第1の測定値が予め定められた値以上遷移したタイミングと、前記第2の測定部による第2の測定値が予め定められた値以上遷移したタイミングとの差から、前記第1の測定部と前記第2の測定部との位相差を取得する、媒体厚み測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−288134(P2009−288134A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142274(P2008−142274)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】