説明

安定性が向上したアムロジピン及びロサルタンを含む固形薬剤的組成物

本発明は互いに分離されて顆粒化されたアムロジピン及びロサルタン、並びに安定化剤を含む心血管疾患の予防または治療用固形薬剤的組成物に関し、かかる本発明の組成物はアムロジピンとロサルタンとの間の最小化された相互作用に起因して優れた保管安定性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた保管安定性を有するアムロジピン及びロサルタンを含む心血管疾患の予防または治療用固形薬剤的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中、心不全、心筋梗塞などの冠状動脈疾患及び心血管疾患のような合併症の危険を減らす高血圧の治療において、血圧水準それ自体を単純に下げるよりも血圧を一定の基準値として正常範囲内に維持することがもっと重要である。よって、高血圧治療剤は高血圧の長期間治療に効果的ではなければならない。さらに、薬理作用の異なる二つ以上の薬物の組み合わせを用いる先進治療法は予防または治療効果を向上させることができ、単一薬物の長期服用によって発生する副作用を減少させることができる。
【0003】
主な高血圧治療薬は、利尿剤、交感神経遮断剤及び血管拡張剤が挙げられる。血管拡張剤は最も幅広く処方される高血圧治療薬であって、薬理作用によってACE (angiotensin converting enzyme;アンジオテンシン変換酵素)阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤及びカルシウムチャンネル遮断剤を含む多くの群に分けられる。
【0004】
アムロジピン(amlodipine)は、3−エチル−5−メチル−2−(2−アミノエトキシ−メチル)−4−(2−クロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−6−メチル−3,5−ピリジンジカルボキシレートの一般名である。アムロジピンベシル酸塩は、ノルバスク(Norvasc(登録商標))という商品名で市販されている。アムロジピンは長時間作用型のカルシウムチャンネル遮断剤であって、狭心症、高血圧及びうっ血性心臓麻痺のような心血管疾患の治療に有用である。
【0005】
ロサルタン(losartan)は、2−ブチル−4−クロロ−1−[[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1'−ビフェニル]−4−イル]メチル]−1H−イミダゾール−5−メタノールの一般名であって、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3などに記述されている。ロサルタンカリウムは、コザール(Cozaar(登録商標))という商品名で市販されている。ロサルタンはアンジオテンシンIIとその受容体との相互作用を遮断することで、高血圧、心不全、虚血性末梢循環障害、心筋虚血(狭心症)、糖尿病性神経病症及び緑内障を治療し、心筋梗塞後心不全の進行を予防することに主に用いられる。
【0006】
本発明者らは、薬理活性の異なるアムロジピン及びロサルタンの複合製剤が心血管疾患の予防または治療に有用であることを見つけて、かかる複合製剤に対する鋭意研究を重ねてきた。しかし、主にこれらの二つの薬物、すなわちアムロジピンとロサルタンの取り扱いの難しさに起因して、再現性よくかつ容易に製造されることができる安定したアムロジピン-ロサルタン複合剤形を開発することが困難であった。
【0007】
アムロジピンは一般的に遊離塩基の形態のものに比べて、一層安定的かつ一層高い水溶性を示す、薬剤的に許容される酸との酸付加塩の形態の製剤が使用される。
【0008】
このようなアムロジピンの酸付加塩の一つであるアムロジピンマレイン酸塩は、製剤化された際、時間経過に伴い下記式(I)のアムロジピンアスパラギン酸または下記式(II)のアムロ-ピリジンに徐々に分解される傾向があり、これを含む医薬組成物の効能を低下させるということが知られている(特許文献4)。現在市販中であり、特許文献5 (対応する特許文献6)に開示されたアムロジピンベシル酸塩は最近一般的に使われているが、それも分解及び低い保管安定性のような上述した問題点を有している。
【0009】
【化1】

【0010】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(I)
【0011】
【化2】

【0012】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(II)
本発明者らはアムロジピンベシル酸塩に比べて溶解度及び安定性の側面で優れた物性を示すカンシル酸アムロジピンを開発したし、このカンシル酸塩はアモディピン(Amodipin(登録商標))という商品名で市販されている。しかし、カンシル酸アムロジピンはロサルタンと単純に混合して製剤化される場合、アムロジピン、ロサルタン及び賦形剤との間で望まない化学的相互作用によって非常に低い保管安定性を示すことが確認された。
【0013】
酸性条件下で加熱されると、ロサルタンカリウムは更に分解されて分解物EまたはFと命名される産物を形成することがよく知られている (非特許文献1参照)。また、ロサルタンがアムロジピンの酸付加塩と単純混合して複合製剤の形態で剤形化される場合、このアムロジピン塩の酸性成分はロサルタンを不安定にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,608,075号明細書
【特許文献2】米国特許第5,138,069号明細書
【特許文献3】米国特許第5,153,197号明細書
【特許文献4】米国特許第6,919,087号明細書
【特許文献5】欧州特許第244,944号明細書
【特許文献6】米国特許第4,879,303号明細書
【特許文献7】韓国特許出願公開第2008−0052852号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Z. Zhaoら、J. Pharm. Biomed. Anal, 20: 129-136, 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的はアムロジピンとロサルタンの二つの薬物間の最小化された相互作用によって優れた保管安定性を有する、アムロジピン及びロサルタンを含む固形薬剤的組成物を提供することである。
【0017】
前記目的を達成するために、本発明は、互いに分離されて顆粒化されたアムロジピン及びロサルタン、並びに安定化剤を含む心血管疾患の予防または治療用固形薬剤的組成物を提供する。
【0018】
前記安定化剤は、抗酸化剤であることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による固形薬剤的組成物は、互いに分離されて顆粒化されたアムロジピン及びロサルタン、並びに安定化剤を含むことで、二つの薬物間の相互作用が最小化されるという特徴を有し、これによって極めて優れた保管安定性を有する。
【0020】
本発明に用いられるアムロジピンは、多様な形態の薬剤的に許容される塩であることができる。アムロジピンの薬剤的に許容される塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、ベシル酸塩及びカンシル酸塩が挙げられ、ただしこれらに限定されるものではない。これらの中、好ましくはアムロジピンベシル酸塩及びカンシル酸塩であり、より好ましくはアムロジピンカンシル酸塩である。また、本発明に用いられるアムロジピンはアムロジピンラセミ体またはS-アムロジピンであることができる。
【0021】
本発明に用いられるロサルタンは、多様な形態の薬剤的に許容される塩であることができる。好ましくは、ロサルタンの薬剤的に許容される塩はロサルタンカリウムである。
【0022】
本発明の組成物において、アムロジピンとロサルタンは1:1〜1:40、好ましくは1:2〜1:20範囲の重量比に相当する量で用いられ得る。
【0023】
アムロジピン及びロサルタン二つの薬物を単純混合して複合製剤を製造する場合、ロサルタンの望まないゲル化(gelation)が起きて、アムロジピンがそのゲルの内部に閉じこめられてアムロジピンの溶出が難しくなる。
【0024】
かかるロサルタンゲル化の問題を克服するため、アムロジピンとロサルタンとの間に分離層を形成する方法が特許文献7に開示されている。しかし、この方法により形成された分離層は保管安定性を大きく改善しないが、その理由はアムロジピンまたはその酸付加塩とロサルタンとの間の化学的相互作用が不完全に防止されてアムロジピンの比較的早い分解が起きるからである。事実上、アムロジピンをロサルタンから物理的に分離されてこれらを別々に顆粒化して製造された比較例3及び4の複合製剤は、比較例1及び2のアムロジピン単一製剤で観察されるものよりも10倍以上のアムロジピン由来の不純物を生成させる。
【0025】
アムロジピン-ロサルタン複合製剤の安定性を向上させる目的で、酸性化剤またはアルカリ化剤を用いて組成物のpHを最適化する方法が提示された。しかし、この方法は高いpHがアムロジピンのエステル残基の加水分解を誘発することができるものの、低いpHはロサルタンの早い分解をもたらすという点で問題点を有する。例えば、特許文献3はpHが5.5〜7.0に調節されたアムロジピン−ロサルタン複合製剤が十分な安定性を示すことができないという事実を開示している。
【0026】
アムロジピン-ロサルタン複合製剤の安定性を向上させる方法の一つとして活性成分をコーティング物質でコーティングする方法があるが、この方法は更なるコーティング工程及び流動層の顆粒機の使用を要する。また、この方法によれば、均一な複合製剤を再現性よく製造することが困難である。
【0027】
望ましい一つの実施態様によれば、本発明の組成物の安定化剤は、アムロジピン顆粒内に含まれる。本発明に用いられる安定化剤は混合工程中に、ロサルタンまたは他の薬剤的に許容される賦形剤との望ましくない反応、並びに光、熱や水分によるアムロジピンの経時変形に対してアムロジピンの安定性を向上させる機能をする。前記安定化剤を使用することによりロサルタンの安定性も向上させることと期待される。
【0028】
本発明に用いられる安定化剤は、好ましくは抗酸化剤であることができる。自動酸化の連鎖反応を抑えたり、過酸化物を分解させるか金属による酸化促進作用を抑えたりする機能をする物質を“抗酸化剤”と指称する。驚いたことに抗酸化剤の使用によってアムロジピン-ロサルタン複合製剤の保管安定性が格段に増加することを確認することができるが(下記表3参照)、その理由は抗酸化剤がロサルタンによるアムロジピンの分解の促進を抑制して、アムロジピン由来の未知の不純物の生成を減少させる予期せぬ効果を奏するからである。
【0029】
本発明に用いられる抗酸化剤の具体的な例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、アスコルビン酸、エリソルビン酸、クエン酸、パルミチン酸アスコルビル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ピロ亜硫酸ナトリウム及びこれらの混合物が挙げられる。本発明においては、前述した抗酸化剤の中でブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール及びトコフェロールのような中性抗酸化剤が好ましい。酸性及び塩基性抗酸化剤は、ロサルタン及びアムロジピンの安定性をそれぞれ多少低下させることができる。
【0030】
安定化剤は、組成物総重量に対して、好ましくは0.005重量%〜5重量%、より好ましくは0.01重量%〜1重量%、最も好ましくは0.02重量%〜0.5重量%の量で用いられ得る。
【0031】
本発明の組成物は、アムロジピン顆粒及びロサルタン顆粒のそれぞれに薬剤的に許容される担体や賦形剤を含むことができる。薬剤的に許容される担体や賦形剤としては、例えば、微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、グリシン、デンプン、崩壊剤 (例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、複合ケイ酸塩及びクロスポビドン)、及び顆粒化結合剤 (例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン及びアカシアガム)が挙げられる。また、本発明の組成物はステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル及びタルクのような潤滑剤をさらに含むことができる。
【0032】
アムロジピン及びロサルタンを含む本発明の組成物は、狭心症、高血圧、動脈攣縮、心不整脈、心肥大、脳梗塞、うっ血性心不全及び心筋梗塞のような心血管疾患に対して優れた予防または治療効果を奏することができる。
【0033】
望ましい一つの実施態様によれば、安定化剤をアムロジピン顆粒内に含ませるために、アムロジピンと薬剤的に許容される賦形剤との混合物を顆粒化して乾燥することでアムロジピン顆粒を製造すると、安定化剤を前記混合物に粉末の形態または溶媒に溶解された溶液の形態で添加することができる。もしくは、顆粒化工程に先立って、アムロジピンと安定化剤を溶媒に一緒に溶解させた後、生成された溶液を噴霧乾燥することでアムロジピンと安定化剤との混合粉末を製造してもよい。
【0034】
アムロジピン及びロサルタンの各々の顆粒化工程において、通常の押出顆粒法、破砕顆粒法、乾式顆粒法、流動層顆粒法、転動顆粒法、転動流動層顆粒法、または高速撹拌顆粒法を用いることができ、これらの中、乾式顆粒法、流動層顆粒法および高速撹拌顆粒法が好ましい。
【0035】
本発明の組成物は、経口、口腔及び舌下を含む経口投与の多様な経路を通じて、錠剤、カプセルまたは多重粒子の形態で投与され得る。しかし、本発明の組成物の投与経路は患者の症状及び要求に応じて担当医者により決められなければならない。
【0036】
本発明の組成物は、錠剤の形態で製剤化されることが好ましい。好ましくは、本発明の組成物から得られた錠剤は、外部コート層を有することができ、このコート層はフィルムコーティングを形成することができる通常の高分子化合物からなる。このコーティング量は、容易な投与及び製造効率のために最大限減少されなければならなく、製剤の総重量に対して約1重量%〜10重量%、好ましくは約3重量%〜5重量%の範囲であることができる。前記コーティングは通常の錠剤コーティング方法によって行われることができる。前記組成を有し、かつ前記方法によって製造された錠剤は通常の保管条件の下で非常に安定しかつ光及び水分についても非常に安定する。
【0037】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0038】
実施例1: 複合錠剤の製造 (I)
[アムロジピン顆粒]
カンシル酸アムロジピン 7.84mg(アムロジピン5mg)
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.2mg
微結晶セルロース 90.0mg
マンニトール 40.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 17.0mg
ポリビニルピロリドン 5.0mg
[ロサルタン顆粒]
ロサルタンカリウム 100.0mg
微結晶セルロース 150.0mg
クロスポビドン 12.0mg
[潤滑剤]
ステアリン酸マグネシウム 4.0mg
カンシル酸アムロジピン、微結晶セルロース、マンニトール及びデンプングリコール酸ナトリウムを、それぞれ16メッシュを通過させて高速攪拌機で3分間混合した後、精製水とエタノールとの混合物にブチル化ヒドロキシトルエンとポリビニルピロリドンを溶かした溶液をこれに入れて5分間攪拌した。高速攪拌機の内壁に沈積した物質を擦り取った後、得られた混合物をさらに2分間攪拌し、60℃で乾燥して顆粒化して特定量の成分を有するアムロジピン顆粒を製造した。
【0039】
一方、ロサルタンカリウム、微結晶セルロース及びクロスポビドンを混合してローラー圧縮機を用いて乾式顆粒化を行って特定量の成分を有するロサルタン顆粒を製造した。
【0040】
混合器を用いてアムロジピン顆粒をロサルタン顆粒と30分間混合した。次いで、適正量のステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)をこれに添加して5分間混合した後、得られた混合物を複合錠剤の形態で製剤化した。
【0041】
実施例2: 複合錠剤の製造 (II)
ブチル化ヒドロキシトルエンを1.0mgの量で用いたことを除いては、実施例1と同様の工程を行うことで複合錠剤を製造した。
【0042】
実施例3: 複合錠剤の製造 (III)
カンシル酸アムロジピン7.84mgの代りにベシル酸アムロジピン6.94mg(アムロジピン5mg)を用いたことを除いては、実施例1と同様の工程を行うことで複合錠剤を製造した。
【0043】
実施例4: 複合錠剤の製造 (IV)
ブチル化ヒドロキシトルエンを1.0mgの量で用いたことを除いては、実施例3と同様の工程を行うことで複合錠剤を製造した。
【0044】
実施例5: 複合錠剤の製造 (V)
0.2mgのブチル化ヒドロキシトルエンの代わりに0.5mgのブチル化ヒドロキシアニソールを用いたことを除いては、実施例1と同様の工程を行うことで複合錠剤を製造した。
【0045】
実施例6: 複合錠剤の製造 (VI)
0.2mgのブチル化ヒドロキシトルエンの代わりに2.0mgのトコフェロールを用いたことを除いては、実施例1と同様の工程を行うことで複合錠剤を製造した。
【0046】
実施例7: 複合錠剤の製造 (VII)
0.2mgのブチル化ヒドロキシトルエンの代わりに2.0mgのエリソルビン酸を用いたことを除いては、実施例1と同様の工程を行うことで複合錠剤を製造した。
【0047】
実施例8: 複合錠剤の製造(VIII)
実施1で得られた複合錠剤をOpadry Y−1−7000(商品名)水溶液でコーティングして、コーティングされた複合錠剤を製造した。
【0048】
比較例1: アムロジピン単一錠剤の製造 (I)
[アムロジピン顆粒]
カンシル酸アムロジピン 7.84mg(アムロジピン5mg)
微結晶セルロース 90.0mg
マンニトール 40.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 17.0mg
ポリビニルピロリドン 5.0mg
[潤滑剤]
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
カンシル酸アムロジピン、微結晶セルロース、マンニトール及びデンプングリコール酸ナトリウムを、それぞれ16メッシュを通過させて高速攪拌機で3分間混合した後、精製水とエタノールとの混合物にポリビニルピロリドンを溶かした溶液をこれに入れて5分間攪拌した。高速攪拌機の内壁に沈積した物質を擦り取った後、得られた混合物をさらに2分間攪拌し、60℃で乾燥して顆粒化して特定量の成分を有するアムロジピン顆粒を製造した。次いで、適正量のステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)をアムロジピン顆粒と5分間混合した後、得られた混合物を錠剤の形態で製剤化した。
【0049】
比較例2: アムロジピン単一錠剤の製造 (II)
7.84mgのカンシル酸アムロジピンの代りに6.94mgのベシル酸アムロジピン(アムロジピン5mg)を用いたことを除いては、比較例1と同様の工程を行うことで錠剤を製造した。
【0050】
比較例3:複合錠剤の製造(IX)
[アムロジピン顆粒]
カンシル酸アムロジピン 7.84mg(アムロジピン5mg)
微結晶セルロース 90.0mg
マンニトール 40.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 17.0mg
ポリビニルピロリドン 5.0mg
[ロサルタン顆粒]
ロサルタンカリウム 100.0mg
微結晶セルロース 150.0mg
クロスポビドン 12.0mg
[潤滑剤]
ステアリン酸マグネシウム 4.0mg
ブチル化ヒドロキシトルエンを使わないことを除いては、実施例1と同様の工程を行うことで複合錠剤を製造した。
【0051】
比較例4:複合錠剤の製造(X)
7.84mgのカンシル酸アムロジピンの代りに6.94mgのベシル酸アムロジピン(アムロジピン5mg)を用いたことを除いては、比較例3と同様の工程を行うことで複合錠剤を製造した。
【0052】
比較例5:複合錠剤の製造(XI)
[顆粒]
カンシル酸アムロジピン 7.84mg(アムロジピン5mg)
ロサルタンカリウム 100.0mg
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.2mg
微結晶セルロース 90.0mg
マンニトール 40.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 17.0mg
ポリビニルピロリドン 5.0mg
[潤滑剤]
ステアリン酸マグネシウム 4.0mg
カンシル酸アムロジピン、ロサルタンカリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、微結晶セルロース、マンニトール及びデンプングリコール酸ナトリウムを、それぞれ16メッシュを通過させて高速攪拌機で3分間混合した後、精製水とエタノールとの混合物にポリビニルピロリドンを溶かした溶液をこれに入れて5分間攪拌した。高速攪拌機の内壁に沈積した物質を擦り取った後、得られた混合物をさらに2分間攪拌し、60℃で乾燥して顆粒化して特定量の成分を有するアムロジピン顆粒を製造した。次いで、適正量のステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)をアムロジピン顆粒と5分間混合した後、得られた混合物を複合錠剤の形態で製剤化した。
【0053】
次に、実施例1〜8及び比較例1〜5の製剤の組成を下記表1に示した。
【0054】
【表1】

【0055】
(a)カンシル酸アムロジピン (b)ベシル酸アムロジピン
(c)微結晶セルロース (d)ブチル化ヒドロキシトルエン
(e)ブチル化ヒドロキシアニソール (f)トコフェロール
(g)エリソルビン酸 (h)マンニトール
(i)デンプングリコール酸ナトリウム (j)ポリビニルピロリドン
(k)ロサルタンカリウム (l)微結晶セルロース
(m)クロスポビドン (n) ステアリン酸マグネシウム
(o)Opadry Y−1−7000
試験例1:光安定性試験
実施例1〜8及び比較例1〜5で得られた錠剤に対して次の条件下で生成された不純物の量を測定して光安定性試験を行った。その結果を下記表2に示した。
【0056】
[チャンバ条件]
装備:Q−Lab社製のXe−3−HC
温度及び湿度:25℃±2℃/60%±5%RH
照明:0.80W/m/nm(120万ルクス、ICHガイドライン)、18.4時間
試料保管:ペトリ皿
[試験時点]
試験前及び120万ルクス光露出後
[分析条件](アムロジピン由来の不純物)
カラム:5μm液体クロマトグラフィー用のオクタデシルシリル化シリカゲルで充填されたステンレススチールカラム(内径4.6mm、長さ15cm)
移動相:リン酸緩衝液:アセトニトリル(58:42、v/v)
検出器:紫外分光光度計(237nm)
流速:1.2ml/分
温度:40℃
注入量:10μl
抽出液:移動相
[分析条件](ロサルタン由来の不純物)
カラム:5μm液体クロマトグラフィー用のオクタデシルシリル化シリカゲルで充填されたステンレススチールカラム(内径4.6mm、長さ15cm)
移動相A:リン酸緩衝液:アセトニトリル(850:150、v/v)
移動相B:アセトニトリル
濃度勾配システム
【0057】
【表2】



【0058】
検出器:紫外分光光度計(250nm)
流速:1.5ml/分
注入量:10μl
抽出液:移動相
試験例2:苛酷安定性試験
実施例1〜8及び比較例1〜5で得られた錠剤に対して下記の条件下で生成された不純物の量を測定して苛酷安定性試験を行った。その結果を下記表3に示した。
【0059】
[チャンバ条件]
温度:50℃±2℃
試料保管:HDPEボトル
[試験時点]
試験前及び28日間保管後
[分析条件]
試験例1の分析条件と同一
【0060】
【表3】

【0061】
(a) アムロ-ピリジン
(b) アムロジピン由来の不純物
(c) ロサルタン由来の不純物

前記表3から分かるように、実施例1〜8によって安定化剤及びアムロジピンとロサルタンとを分離した顆粒を用いて製造された複合錠剤は、比較例3〜5の複合錠剤に比べて光露出または苛酷保管条件下でずっと少量のアムロ−ピリジン、アムロジピン由来の不純物及びロサルタン由来の不純物を生成することで、一層高い保管安定性を示した。また、実施例で製造された一部の複合錠剤は比較例1及び2のアムロジピン単一製剤に比べても、遙かに少量の不純物を生成して、一層高い保管安定性を示した。
【0062】
特に、比較例3〜5で製造された錠剤は、ICHガイドラインで求められる安定性の基準(すなわち、たとえ不純物の構造がよく知られた場合でも保管条件下でアムロジピン由来の不純物を0.5重量%以下に生成させること)を満たすことができなかった。
【0063】
以上、本発明を前記特定の実施例により説明したが、添付された特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内で本発明を多様に変形及び変化させ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに分離されて顆粒化されたアムロジピン及びロサルタン、並びに安定化剤を含む心血管疾患の予防または治療用固形薬剤的組成物。
【請求項2】
前記安定化剤が抗酸化剤であることを特徴とする請求項1に記載の固形薬剤的組成物。
【請求項3】
前記抗酸化剤が、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、アスコルビン酸、エリソルビン酸、クエン酸、パルミチン酸アスコルビル、エチレンジアミン四酢酸、ピロ亜硫酸ナトリウム及びこれらの混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項2に記載の固形薬剤的組成物。
【請求項4】
前記抗酸化剤が中性抗酸化剤であることを特徴とする請求項2または3に記載の固形薬剤的組成物。
【請求項5】
前記中性抗酸化剤が、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソールまたはトコフェロールであることを特徴とする請求項4に記載の固形薬剤的組成物。
【請求項6】
前記安定化剤がアムロジピン顆粒内に含まれることを特徴とする請求項1に記載の固形薬剤的組成物。
【請求項7】
前記安定化剤が組成物総重量に対して0.005重量%〜5重量%の量で用いられることを特徴とする請求項1に記載の固形薬剤的組成物。
【請求項8】
前記安定化剤が組成物総重量に対して0.01重量%〜1重量%の量で用いられることを特徴とする請求項7に記載の固形薬剤的組成物。
【請求項9】
前記安定化剤が組成物総重量に対して0.02重量%〜0.5重量%の量で用いられることを特徴とする請求項8に記載の固形薬剤的組成物。
【請求項10】
前記心血管疾患が、狭心症、高血圧、動脈攣縮、心不整脈、心肥大、脳梗塞、うっ血性心不全及び心筋梗塞よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の固形薬剤的組成物。
【請求項11】
前記アムロジピン及びロサルタンが1:1〜1:40範囲の重量比で用いられることを特徴とする請求項1に記載の固形薬剤的組成物。

【公表番号】特表2012−515768(P2012−515768A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547746(P2011−547746)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/KR2009/003028
【国際公開番号】WO2010/085027
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(510316693)ハンミ・ホールディングス・シーオー.,エルティーディー. (10)
【氏名又は名称原語表記】HANMI HOLDINGS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】#45, Bangi−dong, Songpa−gu, Seoul 138−828, Republic of Korea
【Fターム(参考)】