説明

定着装置、画像形成装置

【課題】定着装置に設けられた加熱部材の昇温異常検知精度を向上させることができる定着装置及び画像形成装置を得る。
【解決手段】判断部66は、記録媒体Pを搬送する準備のために定着ベルト50の回転を開始した時と定着ベルト50の回転を開始させた時の定着ベルト50の温度とを基準とし、計測部68で計測された時間が閾値時間に達するまでに、検出部材62によって検出された定着ベルト50の上昇温度が閾値温度に達したか否かに基づいて定着ベルト50の昇温異常を検知する。このため、定着ベルト50の昇温異常検知精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載に記載された定着装置に備えられた定着ローラの内部磁気回路を構成する磁性材料のキュリー点は、異常時に定着ローラが熱暴走し、保護すべき温度に達したときの温度より低く設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−198171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、定着装置に設けられた加熱部材の昇温状態の検知精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る定着装置は、発熱手段と 前記発熱手段に一部が対向すると共に、対向している一部が前記発熱手段により発熱し、回転しながら記録媒体に形成されたトナーを加熱する加熱部材と、前記加熱部材との間で前記記録媒体を搬送すると共に、前記記録媒体を前記加熱部材に押し付ける押付部材と、前記加熱部材の温度を検出する検出部材と、時間を計測する計測部と、前記記録媒体を搬送する準備のために前記加熱部材を回転させる際に、前記発熱手段によって閾値時間内に前記加熱部材が上昇すべき閾値温度を記憶する記憶手段と、前記記録媒体を搬送する準備のために前記加熱部材の回転を開始させた時の前記加熱部材の温度を基準とし、前記計測部で計測された時間が閾値時間に達するまでに、前記検出部材によって検出された前記加熱部材の上昇温度が、前記記憶手段に記憶された閾値温度に達したか否かに基づいて前記加熱部材の温度上昇が正常か否かを判断する判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る定着装置は、請求項1に記載において、前記記録手段には、複数の閾値時間及び複数の閾値温度が記憶され、前記加熱部材を回転させる前に、前記発熱手段により前記加熱部材を加熱する余熱モードの場合には、前記判断手段は、前記記録手段によって記憶された複数の閾値時間から比較的長い閾値時間を選択、又は前記記録手段によって記憶された複数の閾値温度から比較的低い閾値温度を選択することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る定着装置は、請求項1又は2に記載において、前記判断手段は、前記計測部で計測された時間が閾値時間に達するまでに、前記検出部材によって検出された前記加熱部材の上昇温度が閾値温度に達した場合は、前記加熱部材の温度が閾値温度に到達した際の温度及び時間を基準とし、改めて前記計測部で計測された時間が閾値時間に達するまでに、前記検出部材によって検出された前記加熱部材の上昇温度が閾値温度に達したか否かを判断することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る定着装置は、請求項3項に記載において、 前記判断手段は、前記加熱部材がトナーを記録媒体に定着するために必要な温度に達するまで、判断を繰り返すことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る定着装置は、請求項1〜4の何れか1項に記載において、前記判断手段は、前記計測部と前記検出部材とによって検出された時間毎の前記加熱部材の温度から算出される昇温カーブと、前記記憶手段に記憶された閾値時間及び閾値温度と、を比較することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る定着装置は、請求項1〜5の何れか1項に記載において、前記検出部材は、前記発熱手段により発熱している前記加熱部材の一部に対向して設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項7に係る定着装置は、請求項1項に記載において、前記判断手段は、前記記録媒体を搬送する準備のために前記加熱部材を回転させる際に、前記発熱手段に供給される電力に基づいて、閾値時間又は閾値温度を定めることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項8に係る画像形成装置は、表面にトナー画像が形成される像保持体と、前記像保持体に形成されたトナー画像を記録媒体に転写する転写部材と、前記転写部材によって記録媒体に転写されたトナー画像を記録媒体に定着させる請求項1〜7の何れか1項に記載の定着装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1の定着装置によれば、本構成を有しない場合と比して、定着装置に設けられた加熱部材の昇温状態の検知精度を向上させることができる。
【0014】
本発明の請求項2の定着装置によれば、加熱部材の周方向の温度差が大きい場合でも昇温異常検知精度を向上させることができる。
【0015】
本発明の請求項3の定着装置によれば、本構成を有さない場合と比して、定着装置に設けられた加熱部材の昇温異常検知精度を向上させることができる。
【0016】
本発明の請求項4の定着装置によれば、加熱部材がトナーを記録媒体に定着するために必要な温度に達する前に判断をやめてしまう場合と比して、定着装置に設けられた加熱部材の昇温異常検知精度を向上させることができる。
【0017】
本発明の請求項5の定着装置によれば、温度の値のみを用いる場合と比して、定着装置に設けられた加熱部材の昇温異常検知精度を向上させることができる。
【0018】
本発明の請求項6の定着装置によれば、検出部材が、発熱手段により発熱している加熱部材の一部に対向して設けられない場合と比して、加熱部材の周方向の温度差を精度よく検出することができる。
【0019】
本発明の請求項7の定着装置によれば、本構成を有しない場合と比して、定着装置に設けられた加熱部材の昇温状態の検知精度を向上させることができる。
【0020】
本発明の請求項8の画像形成装置によれば、請求項1〜7の何れか1項に記載された定着装置を備えない場合と比して、定着装置に設けられた加熱部材の昇温異常検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る定着装置を示した側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る定着装置を示した側面図である。
【図3】(A)(B)本発明の実施形態に係る定着装置に用いられた定着ベルト等を示した斜視図、正面図である。
【図4】(A)(B)本発明の実施形態に係る定着装置に用いられた定着ベルトの温度上昇を示した図面である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像形成装置を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例を図1〜図5に従って説明する。なお図中に示す矢印UPは鉛直方向上方を示す。
【0023】
(全体構成)
図5に示されるように、画像形成装置10は、一様に帯電された後、レーザ光を照射することにより表面に静電潜像が形成される像保持体12と、像保持体12の表面を一様に帯電させる帯電装置14と、画像データに基づいて像保持体12にレーザ光を照射して静電潜像を形成する露光装置16と、この静電潜像にトナーを選択的に転移してトナー画像として可視化する現像装置18と、搬送経路20に沿って供給される記録媒体としての記録媒体Pに像保持体12の表面のトナー画像を転写する転写ロール22と、記録媒体P上のトナー画像を加熱・加圧して記録媒体Pに定着させる定着装置24と、トナー画像が転写された後の像保持体12に残留するトナーを清掃するクリーニング装置26とを備えている。
【0024】
また、画像形成装置10は、本体側面カバー10B及び天板10Aで覆われている。そして、本体側面カバー10Bの上端角部分には、天板10Aを回転可能に本体側面カバー10Bに連結する軸10Cが設けられており、天板10Aを、軸10Cを中心とて矢印A方向に回転させることで、画像形成装置10の内部が開放されるようになっている。
【0025】
ここで、帯電装置14とクリーニング装置26とは一つの帯電ユニット28として構成され、現像装置18と像保持体12とは一つの交換カートリッジ30とされている。そして、画像形成装置10の天板10Aを開放することで、帯電ユニット28及び交換カートリッジ30は、夫々画像形成装置10内部の本体フレーム(図示せず)に対して着脱可能となっている。
【0026】
また、この画像形成装置10の側方には、像保持体12と転写ロール22とで形成される画像形成部31に、記録媒体Pを手差しで供給することができる手差給紙台32が備えており、この手差給紙台32には、半月形状の送出ロール34が設けられている。さらに、送出ロール34に対して記録媒体Pを挟んで反対側には、分離ロール36が設けられている。
【0027】
この分離ロール36は、両端部に設けられた図示せぬ支持部材に回転可能に支持され、さらに、支持部材の内部に設けられたコイルスプリングの付勢力で、送出ロール34に向って付勢されている。この構成により、送出ロール34が回転すると手差給紙台32に載せられた記録媒体Pが送出ロール34と分離ロール36によって一枚ずつ、画像形成部31に送られるようになっている。
【0028】
また、この画像形成装置10内の下側には、記録媒体Pを一枚ずつ給紙する給紙装置40が設けられている。給紙装置40は、記録媒体Pが複数枚積載された給紙部材41を備えており、給紙部材41に積載された記録媒体Pは、取出ロール42によって順次取り出され、回転駆動する給紙ロール44と給紙部材41に設けられた分離ロール46とによって、一枚ずつ搬送される構成となっている。
【0029】
さらに、記録媒体Pの搬送経路20に沿って複数個の搬送ロール48が設けられており、記録媒体Pが搬送経路20に沿って記録媒体Pの搬送方向の下流側(以下単に下流側)へ搬送されるようになっている。
【0030】
また、画像形成部31の下流側には、前述した定着装置24が設けられており、定着装置24は、加熱部材の一例としての定着ベルト50と押付部材の一例としての押付ロール52(図1参照)とを含んで構成されている。そして、定着ベルト50と押付ロール52との間を記録媒体Pが搬送されることで、記録媒体P上のトナー画像が記録媒体Pに定着させるようになっている。なお、定着装置24については、詳細を後述する。
【0031】
さらに、定着装置24の下流側には、トナー画像が定着された記録媒体Pを天板10Aの上面に排出する排出ロール38が設けられている。
【0032】
上記構成による画像形成装置10では、次のようにして画像が形成される。
【0033】
まず、電圧が印加された帯電装置14は、像保持体12の表面を予定の電位で一様にマイナス帯電する。続いて、図示しないスキャナによって読み取られた画像データ又は外部から入力されたデータに基づいて露光装置16が帯電された像保持体12の表面を露光し、像保持体12の表面に静電潜像を形成する。
【0034】
つまり、図示しない制御装置から供給されるビデオデータに基づき、露光装置16のレーザをオン・オフすることによって画像データに対応した静電潜像が像保持体12上に形成される。さらに、この静電潜像は、現像装置18から供給されるトナーによってトナー画像として可視化される。
【0035】
そこで、給紙部材41から取出ロール42によって取り出された記録媒体Pが、給紙ロール44と分離ロール46とによって一枚ずつ搬送ロール48に渡されて搬送経路20に送り出される。搬送経路20に送り出された記録媒体Pは、像保持体12と転写ロール22との間に形成された画像形成部31を通り、トナー画像が記録媒体Pに転写される。この転写されたトナー画像は、定着装置24に備えられた定着ベルト50と押付ロール52との間を通過することで記録媒体Pに定着され,排出ロール38によって天板10Aの上面に排出される。
【0036】
なお、本実施形態の画像形成装置10では、現像装置18は1台であるが、カラー画像を形成する場合には、像保持体12と対向する位置に、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色分の現像装置18が配置される構成となる。
【0037】
(要部構成)
次に定着装置24について詳細に説明する。
【0038】
図2に示されるように、定着装置24は、磁界が印加された際に発生する渦電流により発熱する発熱層(図示省略)を備えた筒状の定着ベルト50と、定着ベルト50との間で記録媒体Pを搬送すると共に記録媒体Pを定着ベルト50に押し付ける押付ロール52と、押付ロール52が設けられた側と反対側の定着ベルト50の内周面を内側から押圧する加圧パッド54と、交番電流を流すことにより定着ベルト50の発熱層に磁界を印加する発熱手段の一例としての電磁誘導方式の発熱装置56と、を備えている。
【0039】
また、押付ロール52は、回転可能に支持されており、定着ベルト50に対して、記録媒体を押し付ける押付位置と、定着ベルト50から離れる待機位置(図1参照)とに移動可能に図示せぬ支持部材によって支持されている。
【0040】
詳細には、図3(A)(B)に示されるように、筒状の定着ベルト50の一端部には、定着ベルト50を定着ベルト50の周方向に回転させる駆動ギア58が設けられている。そして、駆動ギア58の定着ベルト50側には、定着ベルト50の内周面と面接触するように凸状のフランジ部材60が一体的に形成されている。このフランジ部材60の外周面と定着ベルト50の内周面が接着剤で接着されており、図示せぬモータから回転力を受けて回転駆動する駆動ギア58は、このフランジ部材60を介して定着ベルト50に回転力を伝達するようになっている。
【0041】
また、図2に示されるように、定着ベルト50の内側には、押付ロール52と対向する位置に、定着ベルト50の内周面を押圧し、局所的にニップ圧を高める加圧パッド54が設けられている。この加圧パッド54には、定着ベルト50の内周面に接してニップ部を押圧するニップヘッド54Bと、このニップヘッド54Bを保持するシリコンゴム等からなるニップパッド54Cと、ニップパッド54Cを支持する支持体54Aとが設けられている。さらに、支持体54Aには、ニップヘッド54Bが取り付けられる側とは反対側に突出する突出部54Dが設けられている。そして、この突出部54Dには、先端部が定着ベルト50の内周面と当って定着ベルト50の温度を検出する検出部材62の基端が取り付けられている。この検出部材62によって発熱装置56によって発熱する定着ベルト50の時間毎(経時的に)の温度が検出されるようになっている。
【0042】
さらに、定着ベルト50に対して押付ロール52と反対側で、定着ベルト50の一部と対向する位置には、本実施例における発熱装置56が設けられている。発熱装置56は電磁誘導コイル(励磁コイル)56Aを内蔵した電磁誘導方式で、電磁誘導コイル56Aに交流電流を印加することにより発生する磁場を励磁回路で変化させ、定着ベルト50の発熱層に渦電流を発生させるものである。この渦電流が発熱層の電気抵抗によって熱(ジュール熱)に変換され、結果的に定着ベルト50の発熱装置56と対向する一部が発熱するようになっている。この方式では、周方向で電磁誘導コイル56Aに対向している定着ベルト50の一部のみが発熱するようになっている。そして、前述した検出部材62は、発熱装置56によって発熱する定着ベルト50の一部と対向して設けられている。
【0043】
さらに、記録媒体Pを搬送する準備のために定着ベルト50を回転させている際に、発熱装置56によって閾値時間内に定着ベルト50が上昇すべき閾値温度を記憶する記憶手段の一例としての記憶部64と、時間を計測する計測部68とが設けられている。なお、記憶部64には、その状況に応じて選択される複数の閾値時間と複数の閾値温度とが記憶されている。
【0044】
ここで、複写指示等の記録媒体Pに画像を形成される旨の指示が画像形成装置に入ると、画像形成装置は画像を形成するための準備、すなわち、記録媒体Pを搬送する準備を始める。その際、定着装置24では、定着ベルト50を定着可能温度まで昇温させるための電力を電磁誘導コイル56Aに供給させることと共に、定着ベルト50の回転を開始させる。この定着ベルト50の回転を開始させた時と、定着ベルト50の回転を開始させた時の定着ベルト50の温度とを基準とし、計測部68で計測された時間が閾値時間に達するまでに、検出部材62によって検出された定着ベルト50の上昇温度が、閾値温度に達したか否かに基づいて定着ベルト50の温度上昇が正常か否か(昇温異常)を判断する判断部66が設けられている。この判断部66は判断手段の一例である。
【0045】
具体的には、本実施例においては、この記憶部64に記憶された閾値時間及び閾値温度と、検出部材62によって検出された時間毎の定着ベルト50の温度から昇温カーブを算出し、その昇温カーブから比較すべき時間に達するであろう温度と、を比較した定着ベルト50の温度上昇が正常か否かを判断するようになっている。なお、昇温カーブを算出しなくても、閾値時間に相当する一定時間経過後の温度と閾値温度を比較しても良い。
【0046】
また、この判断部66は、記録媒体Pを搬送する準備のために定着ベルト50の回転を開始した時の定着ベルト50の温度に基づいて、記憶部64に記憶された複数の閾値時間及び閾値温度から、最も適した閾値時間及び閾値温度を選択するようになっている。
【0047】
なお、詳細には、図1に示されるように、定着装置24の非作動状態(記録媒体Pを搬送する準備に入っていない状態)には、押付ロール52は、定着ベルト50から離間する待機位置に配置されおり、この状態から定着装置24の作動、すなわち、本実施例における記録媒体Pを搬送する準備が開始される。
【0048】
記録媒体Pを搬送する準備のために定着ベルト50の回転を開始した時の定着ベルト50の温度は、例えば雰囲気温度や、前回の定着動作からのインターバルや、余熱の有無によって左右される。記録媒体Pを搬送する準備の際に、検出部材62によって測定された定着ベルト50の温度が予め決められた温度以上のときには、判断部66は、発熱装置56によって上昇すべき閾値温度に達するのに必要な閾値時間を時間Tとする。
【0049】
これに対し、記録媒体Pを搬送する準備の際に、検出部材62によって測定された定着ベルト50の温度が予め決められた温度Tよりも低いときには、高いときより定着ベルト50の加熱に時間が必要となるため、判断部66は、発熱装置56によって上昇すべき閾値温度に達するのに必要な閾値時間を時間Tではなく時間T(T>T)を選択する。
【0050】
さらに、判断部66は、計測部68で計測された時間が閾値時間に達するまでに、設定された閾値温度に定着ベルト50の温度が上昇した場合は、定着ベルト50の温度が閾値温度に到達した際の温度及び時間を基準とし、改めて計測部68で計測された時間が閾値時間に達するまでに、検出部材62によって検出された定着ベルト50の上昇温度が閾値温度に達したか否かを判断するようになっている。
【0051】
また、判断部66は、トナーを記録媒体Pに定着するために必要な温度に定着ベルト50の温度が達するまで、ここでは、監視終了条件が成立するまで、検出部材62によって検出された時間毎の定着ベルト50の温度から算出された昇温カーブと、記憶部64に記憶された閾値時間及び閾値温度と、繰り返して比較するようになっている。
【0052】
ここで、判断部66によって行われる記憶部64に記憶された閾値時間及び閾値温度と、検出部材62によって検出された時間毎の定着ベルト50の温度から算出された昇温カーブと、の比較についてグラフに基づいて説明する。
【0053】
図4(A)の縦軸には温度が示され、横軸には時間が示されている。時間が経過するにつれて蛇行して温度が上昇している線Dが、検出部材62によって検出された時間毎の定着ベルト50の温度から算出された昇温カーブである。さらに、時間Eが記憶部64に記憶され中から選択された閾値時間であって、記録媒体Pを搬送する準備のために定着ベルト50の回転を開始した時の定着ベルト50の温度に基づいて、判断部66が選択したものである。また、温度Gが記憶部64に記憶された中から選択された閾値温度であって、記録媒体Pを搬送する準備のために定着ベルト50の回転を開始した時の定着ベルト50の温度に基づいて、判断部66が選択したものである。なお、定着ベルト50の温度が低い場合は、高い場合に比して、長い時間の閾値時間が選択される。
【0054】
図4(A)に記載されたグラフからも分かるように、記録媒体Pを搬送する準備のために発熱装置56によって定着ベルト50が発熱し、定着ベルト50が回転を開始した時から、計測部68による時間の計測と、検出部材62による定着ベルト50の上昇温度の測定とが開始されるようになっている(時間及び温度の測定をリセットする)。
【0055】
計測部68で計測する時間が閾値時間(時間E)に達するまでに、検出部材62で検出された定着ベルト50の上昇温度が閾値温度(温度G)まで達している。この場合には、判断部66は昇温が正常と判断する。さらに、判断部66は、定着ベルト50の温度が閾値温度(温度G)に到達した際の温度及び時間を基準に、改めて計測部68で計測する時間が閾値時間(時間E)に達するまでに、検出部材62によって検出された定着ベルト50の上昇温度が閾値温度(温度G)に達したか否かを判断し、この判断を繰り返すようになっている。
【0056】
そして、判断部66(図2参照)は、定着ベルト50を昇温させなければならない温度H(定着ベルト50がトナーを記録媒体Pに定着するために必要な温度)まで定着ベルト50の温度が上昇するまで、昇温カーブ(線D)と、記憶部64に記憶された閾値時間及び閾値温度と、を比較するようになっている。
【0057】
定着ベルト50の昇温に異常が無い場合には、支持部材によって押付ロール52が待機位置(図1参照)から定着ベルト50に記録媒体を押し付ける押付位置(図2参照)に移動するようになっている。
【0058】
しかし、計測部68で計測された時間が閾値時間(時間E)に達するまでに、定着ベルト50の温度が閾値温度(温度G)まで上昇しなかった場合は、判断部66が、定着ベルト50の昇温異常を検知し、例えば、昇温動作を中止し、別途設けられたモニターに異常を知らせるメッセージを表示させるようになっている。
【0059】
さらに、定着装置24を小休止させた後に、定着装置24を再作動させる場合(小休止モード)には、検出部材62によって測定された定着ベルト50の温度が、定着ベルト50を昇温させなければならない目標温度(温度H)に近いことが考えられる。この際には、定着ベルト50を目標温度に加熱するまでの時間をさほど必要としない、さらに、定着ベルト50の温度と目標温度との温度差が小さい、このため、判断部66は、記憶部64に記憶された閾値時間から比較的短い閾値時間を選択し、さらに、記憶部64に記憶された閾値温度から比較的低い閾値温度を選択するようになっている。
【0060】
一方、画像形成の指示がきていない状態、すなわち、本実施例のおける記録媒体搬送の準備をしていない状態で、発熱装置56により定着ベルト50を加熱させる場合(余熱モード)には、定着ベルト50を回転させる前に、発熱装置56が発熱装置56と対向する定着ベルト50の一部だけを発熱させる。このため、定着ベルト50の周方向に温度分布ができる。そこで、記録媒体Pを搬送する準備のために定着ベルト50の回転を開始させた時の定着ベルト50の昇温カーブが、一旦落ちる(温度が下がる。図4(B)参照)ことがある。この際には、誤検知を抑制し、昇温異常検知精度を向上させるため、判断部66は、記憶部64に記憶された閾値時間から比較的長い閾値時間を選択する、又は、記憶部64に記憶された閾値温度から比較的低い閾値温度を選択するようになっている。
【0061】
図4(B)の縦軸には温度が示され、横軸には時間が示され、前述した余熱モードの昇温カーブが記載されている。時間が経過するにつれて一度下降して上昇している線Jが、検出部材62によって検出された時間毎の定着ベルト50の温度から算出された昇温カーブである。この場合には、元々回転させない状態で余熱をしていために、定着動作のためにコイルの電力をあげたにもかかわらず、定着動作のために回転も始めたので、余熱動作時に加熱されていなかった部分の温度を検知して、一旦ベルトの温度が下がって、初期の昇温カーブ(線J)は、不安定になる。
【0062】
さらに、時間Kが記憶部64に記憶され中から選択された閾値時間であって、余熱モードであることを認識した判断部66が選択したものである。また、温度Mが記憶部64に記憶された中から選択された閾値温度であって、余熱モードであることを認識した判断部66が選択したものである。なお、余熱モードの場合は、前述したように、記憶部64に記憶された閾値時間から比較的長い閾値時間が選択される、又は、記憶部64に記憶された閾値温度から比較的低い閾値温度が選択される。
【0063】
図4(B)に記載されたグラフからも分かるように、記録媒体Pを搬送する準備のために発熱装置56によって定着ベルト50に余熱が与えられて定着ベルト50が回転を開始した時から、計測部68による時間の計測と、検出部材62による定着ベルト50の上昇温度の測定とが開始されるようになっている。計測部68により計測された時間が閾値時間(時間K)に達するまでに、定着ベルト50の温度が閾値温度(温度M)まで上昇している。
【0064】
この場合には、判断部66は正常と判断し、判断部66は定着ベルト50の温度が閾値温度(温度M)に到達した際の温度及び時間を基準にし、改めて計測部68で計測された時間が閾値時間(時間K)に達するまでに、検出部材62によって検出された定着ベルト50の上昇温度が閾値温度(温度M)に達したか否かを判断し、この判断を繰り返すようになっている。しかし、定着ベルト50の温度が、定着ベルト50を昇温させなければならない温度H(定着ベルト50がトナーを記録媒体Pに定着するために必要な温度)に到達してしまい、ここで、判断部66による昇温カーブ(線J)と、記憶部64に記憶された閾値時間及び閾値温度と、の比較が終了するようになっている。
【0065】
そして、定着ベルト50の昇温に異常が無い場合には、支持部材によって押付ロール52が待機位置(図1参照)から定着ベルト50に記録媒体を押し付ける押付位置(図2参照)に移動するようになっている。
【0066】
一方、計測部68で測定された時間が閾値時間(時間K)に達するまでに、定着ベルト50の温度が閾値温度(温度M)まで上昇しなかった場合は、判断部66が、定着ベルト50の昇温異常を検知し、例えば、昇温動作を中止し、別途設けられたモニターに異常を知らせるメッセージを表示させるようになっている。
【0067】
(作用)
次ぎに、定着装置24の動作等について説明する。
【0068】
図1に示されるように、定着装置24の非作動状態(記録媒体Pを搬送する準備に入っていない状態)では、押付ロール52は、定着ベルト50から離間する待機位置に配置されている。定着装置24の作動開始時(記録媒体Pを搬送する準備を開始する時)には、先ず、定着ベルト50の一部に対向して設けられた電磁誘導方式の発熱装置56に電力を供給する。発熱装置56に電力を供給すると、発熱装置56に設けられた電磁誘導コイル56Aに交流電流が印加され、これにより発生する磁場を励磁回路で変化させ、定着ベルト50の発熱層に渦電流が発生する。この渦電流が発熱層の電気抵抗によって熱(ジュール熱)に変換され、定着ベルト50の表面が発熱する。さらに、駆動ギア58(図3(A)参照)を回転駆動させることで定着ベルト50が回転する。
【0069】
計測部68は、記録媒体Pを搬送する準備のために発熱装置56によって定着ベルト50が発熱し、定着ベルト50が回転を開始した時から、時間の測定を開始する。
【0070】
判断部66は、定着装置24の作動開始時に検出部材62によって定着ベルト50の温度に基づいて、記憶部64に記憶された複数の閾値時間及び閾値温度から一つの閾値時間(時間E)、閾値温度(温度G)を選択する。
【0071】
図4(A)に示されるように、判断部66は、計測部68で計測された時間が閾値時間(時間E)に達するまでに、検出部材62によって検出された定着ベルト50の上昇温度が閾値温度(温度G)に上昇した場合は、その温度及び時間を基準にし、改めて計測部68で計測された時間が閾値時間(時間E)に達するまでに、検出部材62によって検出された定着ベルト50の上昇温度が閾値温度(温度G)に達したか否かを判断し、この判断を繰り返す。
【0072】
そして、図4(A)に示されるように、判断部66は、定着ベルト50の温度が温度Hへ上昇するまで、検出部材62によって検出された時間毎の定着ベルト50の温度から算出された昇温カーブ(線D)と、記憶部64に記憶された閾値時間(時間E)及び閾値温度(温度G)と、を比較する。
【0073】
異常なく定着ベルト50の温度が温度Hまで上昇すると、図2に示されるように、押付ロール52が、記録媒体を押し付ける押付位置へと移動して記録媒体Pに転写されたトナー画像を記録媒体Pに定着可能となる。
【0074】
一方、閾値時間(時間E)を経過するまでに、定着ベルト50の温度が閾値温度(温度G)まで上昇しなかった場合は、判断部66が、定着ベルト50の昇温異常を検知し、例えば、昇温動作を中止し、別途設けられたモニターに異常を知らせるメッセージを表示させる。
【0075】
これに対し、余熱モードの場合には、定着ベルト50を回転させる前に、発熱装置56が定着ベルト50を加熱する。定着ベルト50が回転していないため、発熱装置56と対向する定着ベルト50の一部だけが発熱し、定着ベルト50の周方向に温度分布ができる。
【0076】
判断部66は、余熱モードであること考慮し、他のモードとは異なる閾値時間(時間K)、閾値温度(温度M)を記憶部64に記憶された複数の閾値時間、閾値温度から選択する。詳細には、判断部66は、記憶部64に記憶された閾値時間から比較的長い閾値時間を選択する、又は、記憶部64に記憶された閾値温度から比較的低い閾値温度を選択する。
【0077】
図4(B)に示されるように、判断部66は、計測部68で計測された時間が閾値時間(時間K)に達するまでに、検出部材62によって検出された定着ベルト50の上昇温度が閾値温度(温度M)に上昇した場合は、その温度及び時間を基準にし、改めて計測部68で計測された時間が閾値時間(時間K)に達するまでに、定着ベルト50の上昇温度が閾値温度(温度M)に達したか否かを判断し、この判断を繰り返す。しかし、定着ベルト50の温度が、定着ベルト50を昇温させなければならない温度H(定着ベルト50がトナーを記録媒体Pに定着するために必要な温度)に到達してしまい、ここで、判断部66による昇温カーブ(線J)と、記憶部64に記憶された閾値時間及び閾値温度と、の比較が終了する。
【0078】
一方、閾値時間(時間K)を経過するまでに、定着ベルト50の温度が閾値温度(温度M)まで上昇しなかった場合は、判断部66が、定着ベルト50の昇温異常を検知し、例えば、昇温動作を中止し、別途設けられたモニターに異常を知らせるメッセージを表示させる。
【0079】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、装置作動開始時の定着ベルト50の温度に基づいて、判断部66が記憶部64に記憶された中から閾値時間、閾値温度を選択したが、特にこれに限定されることなく、例えば、装置作動開始時の発熱装置56に供給される電力に基づいて、判断部66が記憶部64に記憶された中から閾値時間、閾値温度を選択してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、電磁誘導方式の発熱装置56によって定着ベルト50を発熱(加熱)させたが、とくに電磁誘導方式に限定されることなく定着ベルトの一部を加熱する方法であれば他の方法で定着ベルトを加熱させてもよい。
【0081】
また、ベルトの温度をベルトに当てて測定したが、空間を隔てて検出してもよく、そのようにすることで、内周面に傷が発生するのを防止する。
【0082】
また、コイルに対向した位置に温度検出部を設けたが、コイルに対向していない部位に設けてもよい。その場合は、回転をはじめた際の温度は余熱の有無にあってあまり差はなく、回転をはじめてすぐ一旦高い温度を検出するので、コイルに対向している時と同じように閾値時間を長くすると、誤検知が減る。また、同じ基準温度からでもより余熱がある場合は、高い閾値温度を設定するとよい。
【0083】
また、ベルトの内周面のコイルと対向する位置に熱を蓄えるような蓄熱体を設けてもよい。その様に、構成することで余熱効果が上がる蓄熱材としては、磁性体あることが望ましく、さらに定着温度より高い温度になると非磁性に変化する感温磁性にするとよい。そのように構成することで、磁界が適切に形成され、発熱効果が上がる。
【0084】
また、判断手段が、余熱の有無によって閾値時間、閾値温度を選択するタイミングはいつでもよく、最初は余熱の有無にかかわらず、温度と時間を比較しておいて、正常か否かを判断する場合で、否となっている場合に長い閾値時間、又は低い閾値温度を選択するようにしてもよい。
【0085】
また、本実施例では、温度が上昇しない場合の異常を検出したが、逆に温度上昇が早すぎる場合の異常を検出してもよい。
【0086】
また、本実施例では、中止する場合を説明したが、その後の電力投入を通常とかえるようにして、プリント中を中止しないような制御をしてもよい。例えば、発熱効率が想定よりよいので、少ない投入電力に変更するようにすれば、電力をよくせいしたり、上昇しすぎて画像が乱れたりするのを防止する。
【0087】
また、加圧ロールを押し付けるタイミングはいつでもよく、判断部が判断中に押しつけてもよい。その場合は、加圧ロールによって温度が下がることを考慮して、閾値時間を長め、又は閾値温度を低めにするとよい。
【符号の説明】
【0088】
10 画像形成装置
12 像保持体
22 転写ロール(転写部材)
24 定着装置
50 定着ベルト(加熱部材)
52 押付ロール(押付部材)
56 発熱装置(発熱手段)
62 検出部材
64 記憶部(記憶手段)
66 判断部(判断手段)
68 計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱手段と
前記発熱手段に一部が対向すると共に、対向している一部が前記発熱手段により発熱し、回転しながら記録媒体に形成されたトナーを加熱する加熱部材と、
前記加熱部材との間で前記記録媒体を搬送すると共に、前記記録媒体を前記加熱部材に押し付ける押付部材と、
前記加熱部材の温度を検出する検出部材と、
時間を計測する計測部と、
前記記録媒体を搬送する準備のために前記加熱部材を回転させる際に、前記発熱手段によって閾値時間内に前記加熱部材が上昇すべき閾値温度を記憶する記憶手段と、
前記記録媒体を搬送する準備のために前記加熱部材の回転を開始させた時の前記加熱部材の温度を基準とし、前記計測部で計測された時間が閾値時間に達するまでに、前記検出部材によって検出された前記加熱部材の上昇温度が、前記記憶手段に記憶された閾値温度に達したか否かに基づいて前記加熱部材の温度上昇が正常か否かを判断する判断手段と、
を備える定着装置。
【請求項2】
前記記録手段には、複数の閾値時間及び複数の閾値温度が記憶され、
前記加熱部材を回転させる前に、前記発熱手段により前記加熱部材を加熱する余熱モードの場合には、前記判断手段は、前記記録手段によって記憶された複数の閾値時間から比較的長い閾値時間を選択、又は前記記録手段によって記憶された複数の閾値温度から比較的低い閾値温度を選択する請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記計測部で計測された時間が閾値時間に達するまでに、前記検出部材によって検出された前記加熱部材の上昇温度が閾値温度に達した場合は、前記加熱部材の温度が閾値温度に到達した際の温度及び時間を基準とし、改めて前記計測部で計測された時間が閾値時間に達するまでに、前記検出部材によって検出された前記加熱部材の上昇温度が閾値温度に達したか否かを判断する請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記加熱部材がトナーを記録媒体に定着するために必要な温度に達するまで、判断を繰り返すことを特徴とする請求項3項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記判断手段は、前記計測部と前記検出部材とによって検出された時間毎の前記加熱部材の温度から算出される昇温カーブと、前記記憶手段に記憶された閾値時間及び閾値温度と、を比較することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記検出部材は、前記発熱手段により発熱している前記加熱部材の一部に対向して設けられる請求項1〜5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記判断手段は、前記記録媒体を搬送する準備のために前記加熱部材を回転させる際に、前記発熱手段に供給される電力に基づいて、閾値時間又は閾値温度を定める請求項1に記載の定着装置。
【請求項8】
表面にトナー画像が形成される像保持体と、
前記像保持体に形成されたトナー画像を記録媒体に転写する転写部材と、
前記転写部材によって記録媒体に転写されたトナー画像を記録媒体に定着させる請求項1〜7の何れか1項に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−203386(P2011−203386A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68898(P2010−68898)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】