定着装置および剥離手段の間隔の調整方法
【課題】誘導加熱定着装置において、弾性体層上に導体層を持つ加熱回転体、または加圧回転体の表面が剥離部材により破壊した場合の検知を迅速に行う。
【解決手段】加熱ローラ2の芯材に負荷されている駆動力による回転速度から加熱ローラ2の周速Aを計算して求める。これと同時に速度検出ローラ17を用いて加熱ローラ2の周速Bを検出する。ついで、周速A、Bの値の大小関係を判定するためにその差A−Bを求める。これら周速A、Bは加熱ローラ2に破壊がない場合には同じになる。加熱ローラ2に破壊がある場合には、破壊した部分で回転の滑りが生じ、破壊部分より外側の部分は内側の部分の回転速度より遅い速度で回転、もしくはまったく回転しない状態になる。そのため、ローラ周速Bはローラ周速Aより遅くなる。このことからA−B>0となった場合にはローラ2が破壊していると判断する。
【解決手段】加熱ローラ2の芯材に負荷されている駆動力による回転速度から加熱ローラ2の周速Aを計算して求める。これと同時に速度検出ローラ17を用いて加熱ローラ2の周速Bを検出する。ついで、周速A、Bの値の大小関係を判定するためにその差A−Bを求める。これら周速A、Bは加熱ローラ2に破壊がない場合には同じになる。加熱ローラ2に破壊がある場合には、破壊した部分で回転の滑りが生じ、破壊部分より外側の部分は内側の部分の回転速度より遅い速度で回転、もしくはまったく回転しない状態になる。そのため、ローラ周速Bはローラ周速Aより遅くなる。このことからA−B>0となった場合にはローラ2が破壊していると判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、画像形成装置に用いられる定着装置および剥離手段の間隔の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の定着装置には円筒型の剛体を有し、この剛体の外側に低熱伝導性材料からなる層、導電性材料からなる導電体層、及び離型層を順次、積層してなる定着ローラを備えるとともに、この定着ローラの近傍にその外周面に対向して誘導加熱源を設け、この誘導加熱源により定着ローラの導電体層を誘導加熱することにより、定着ローラを短時間で所望する温度に加熱できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、この種の定着装置には、中空部材上に導電層を形成してなる加熱部材と、この加熱部材の外側に配置され導電層に変動磁界を発生させる磁界発生手段とを備えてなり、短時間でウォームアップできるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
さらに、この種の定着装置には、加熱ローラと加圧ローラとのニップ部以外の周面を囲むようにリッツ線により構成した導線を配置し、この導線を高周波発振部に接続して高周波電流を印加することにより加熱ローラの表面を加熱するものがある。この定着装置は、加熱ローラの表面を直接加熱するため、エネルギー損失が少なく、かつ立ち上がり時間の短縮が可能となっている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2002−49261号公報
【特許文献2】特開2001−188427号公報
【特許文献3】特開平10−63126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては、実用にあたって発生すると考えられる以下のような問題についての考慮が無かった。
【0006】
1.長期間にわたる使用などが理由の劣化等による、定着ローラの構成要素である各層の破壊や層間剥離などが起こった時の対処。
【0007】
2.各層間に滑りが発生した時の対処。
【0008】
3.定着ローラが変形したときの用紙剥離用のブレードの位置決めに関する考慮。
【0009】
4.加熱回転体と加圧回転体の両方に弾性体層上に導体層を持つ回転体を用いた場合において双方の材料や層厚を変えることによる、ローラ硬度及び熱伝導率、熱容量の調整と、それによる剥離性、定着性、ウォームアップ時間の改善。
【0010】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、実用にあたって発生すると考えられる問題に対する対策と、加熱回転体、加圧回転体の両方、又は片方に弾性体層上に導体層を持つ回転体を用いた場合に有効に利用できる定着装置および剥離手段の間隔の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記課題を解決するため、第1の回転体と、この第1の回転体と周面が接触され、前記第1の回転体と接触される領域により被転写体を搬送する第2の回転体と、前記第1の回転体の周面もしくは前記第2の回転体の周面との間の距離を一定に維持する調整手段と、この調整手段に設けられ、前記第1の回転体の周面もしくは前記第2の回転体の周面から被転写体を剥離する剥離手段と、を有することを特徴とする定着装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、実用にあたって発生すると考えられる問題に対する対策と、加熱回転体、加圧回転体の両方、又は片方に弾性体層上に導体層を持つ回転体を用いた場合、すなわち加熱回転体、例えばローラ体あるいはエンドレス体、加圧回転体、例えばエンドレス体もしくはローラ体の両方、又は片方の外周面に対して、常に一定の距離に位置される爪状、あるいはブレード状の剥離手段により、定着装置、およびその定着装置を含む画像形成装置において生じることのある、ローラ体あるいはエンドレス体への影響を、抑止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態である定着装置1を全体的に示す概略的構成図である。
【0015】
定着装置1は、画像形成装置に備えられ、加熱回転体としての加熱(ヒート)ローラ2(φ40mm)と、加圧回転体としての加圧(プレス)ローラ3(φ40)を備えた構成となっている。加熱ローラ2としては図2に示すようなエンドレス部材11を用いている。エンドレス部材11の詳しい構成については後で述べる。
【0016】
加圧ローラ3は芯材の周囲にシリコンやフッ素などのゴムを被覆して構成されている。加圧ローラ3は加圧機構4によって前記加熱ローラ2に対して圧接され、一定のニップ幅を持つように維持されている。加熱ローラ2は駆動モータ21により矢印方向に駆動され、加圧ローラ3は従動で矢印方向に回転するようになっている。
【0017】
加熱ローラ2の上部側には、磁束発生用のコイル100が設けられ、加熱ローラ2はこの磁束発生用のコイル100からの磁束を受けて発熱する。これら加熱ローラ2と加圧ローラ3との圧接部(ニップ部)である定着ポイントを用紙22が通過することで、この用紙22上の現像剤像22aを融着圧着して定着するようになっている。
【0018】
加熱ローラ2の周囲部にはその回転方向に亘って、剥離爪5、サーミスタ6、クリーニング部材7、およびサーモスタッド8が配設されている。剥離爪5は用紙22を加熱ローラ2から剥離させるものである。サーミスタ6は加熱ローラ2の長手方向に複数配設され、加熱ローラ2の温度検出をするものである。このサーミスタ6の検出温度に基づいて図示しない温度制御装置により加熱ローラ2の温度を調節するようになっている。
【0019】
クリーニング部材7は加熱ローラ2上にオフセットされたトナーや紙屑等のごみを除去するものである。サーモスタッド8は加熱ローラ2上に少なくても1つ以上設けられ、加熱ローラ2の表面温度の異常を検出して加熱を遮断するものである。加圧ローラ3の周囲部には、用紙22を加圧ローラ3から剥離するための剥離爪9、トナーを除去するためのクリーニングローラ10が設けられている。
【0020】
図2は、加熱ローラ2を構成するエンドレス部材11を示す断面図である。
【0021】
エンドレス部材11は芯材16を有し、この芯材16上に順次、弾性体層12、導体層13、弾性体層14、及び離型層15を積層して構成されている。弾性体層12は例えばシリコンゴム又は発泡ゴムにより形成され、導体層13は例えばニッケルにより形成されている。弾性体層14は、例えばシリコンゴムにより形成され、離型層15は例えばPFAにより形成されている。
【0022】
このような構成にすることで、導体層13を誘導加熱し、エンドレス部材11の表面近くで発熱させることができるため、エネルギー効率がよく、加熱装置の早い立ち上がりを期待できる。
【0023】
また、導体層13や弾性体層12、14の層厚や材料の硬度を調節することでエンドレス部材11の硬度を調節でき、ニップ幅や剥離性能を調整できるメリットも併せ持つ。
【0024】
本実施の形態では、弾性体層12としては厚さ4.73mmの発泡ゴム、導体層13としては厚さ40μmのニッケル、弾性体層14として厚さ200μmのシリコンゴムを用いている。離型層15としては、厚さ30μmのPFAを用い、芯材16として厚さ1.5mmの鉄を用いている。
【0025】
そして、弾性体層12と導体層13の境界、及び導体層13と弾性体層14の境界は、それぞれ耐熱温度200℃以上の耐熱接着剤25,26により接着されている。
【0026】
定着時には加熱ローラ2の表面は、約200℃程度まで加熱される。また、加熱ローラ2、加圧ローラ3は用紙搬送の役わりも持っており、定着時には各層が互いに滑らないように各層12,13,14同士を固定する必要がある。これらのことから、各層12,13,14同士の固定には耐熱温度200℃以上の耐熱接着剤25,26が用いられている。
【0027】
この実施の形態によれば、各層12,13,14の滑り、剥離を防止することができる。
【0028】
図3は、本発明の第2の実施の形態である定着装置を示すものである。
【0029】
なお、上記した第1の実施の形態で示した部分と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
上記加熱ローラ2には、サーミスタ6より加熱ローラ2の回転方向下流側に位置して検出ローラ17が当接され、この検出ローラ17は、図示しない押圧機構により加熱ローラ2に押圧されている。なお、検出ローラ17はサーミスタ6より加熱ローラ2の回転方向上流側に位置して設けても問題はない。
【0031】
検出ローラ17の回転軸には例えばエンコーダ(図示しない)が取り付けられており、検出ローラ17の角速度を検出手段28で検出できるようになっている。加熱ローラ2が芯材16に駆動力を受けることにより回転する際、検出ローラ17もそれに従動して回転し、検出ローラ17の周速と加熱ローラ2の周速は同じになる。
【0032】
従って、検出ローラ17の半径を予め知っておき、その角速度を検出することで速度検出ローラ17の周速を計算し、加熱ローラ2の周速を知ることができる。本実施例では速度検出ローラ17は加熱ローラ2のクリーニングローラも兼ねている。
【0033】
図4〜図6は加熱ローラ2の周速を検出するための他の例を示すものである。
【0034】
この例では、図4に示すように加熱ローラ2の表面が撮影可能な位置に近接対向して例えばフォトカプラなどの光読取素子18を設置している。そして、図5に示すように、加熱ローラ2の表面の一部に加熱ローラ2の表面の色とは異なる色のライン2Aを形成し、或いは図6に示すようにマーク2Bを形成する。
【0035】
加熱ローラ2の回転時にそのライン2A或いはマーク2Bを光読取素子18によって読み取ることにより、加熱ローラ2の角速度を検出して、加熱ローラ2の半径との関係からその周速を計算する。
【0036】
この実施の形態では加熱ローラ2の周速を検出しているが、加圧ローラ3についても同様の方法で周速を検出できることは言うまでもない。
【0037】
この実施の形態で用いているエンドレス部材11は機械的強度の異なる複数の層12,13,14で構成されており、比較的強度の弱い弾性体層12,14の破壊や層間剥離が予想される。そのような部材の破壊を検出するために本実施例で用いている画像形成装置には上記速度検出手段を用いた自己診断ルーチンが搭載されている。
【0038】
図7は、自己診断ルーチンを示すフローチャートである。
【0039】
この自己診断ルーチンでは、まず、加熱ローラ2の芯材16に負荷されている駆動力による回転速度(角速度)と加熱ローラ2の半径の関係から加熱ローラ2の周速Aを計算して求める(ステップST1)。これと同時に上記のように速度検出ローラ17を用いて加熱ローラ2の周速Bを検出する(ステップST2)。
【0040】
ついで、周速A、Bの値の大小関係を判定するためにその差A−Bを求める(ステップST3)。
【0041】
これら周速A、Bは加熱ローラ2に破壊がない場合には同じになる。加熱ローラ2に破壊がある場合には、破壊した部分で回転の滑りが生じ、破壊部分より外側の部分は内側の部分の回転速度より遅い速度で回転、もしくはまったく回転しない状態になる。
【0042】
そのため、ローラ周速Bはローラ周速Aより遅くなる。このことからA−B>0となった場合にはローラ2が破壊していると判断する(ステップST4)。この場合には、制御手段29により画像形成装置の運転を停止し、故障が生じていること、部品の交換が必要であることをユーザーやサービスマンなどに知らせるために、例えば画像形成装置本体の操作部の表示パネルにその旨を表示する。この自己診断ルーチンは速度検出対象の加熱ローラ2が回転しているときには常に働いている。
【0043】
この実施の形態では周速A、Bの値の比較のために速度差を用いたが、これに限られず速度比なども用いることができ、周速A、Bの値の大小が比較できれば比較方法は何でも良い。
【0044】
また、自己診断ルーチンにより加熱ローラ2の破壊が検出された際に、本実施例では画像形成装置を停止させているが、定着装置1のみ、或いは加熱ローラ2の回転のみ、または、加熱のみを停止させても良い。
【0045】
また、この実施の形態では、自己診断ルーチンは、速度検出対象のローラが回転しているときには常に働いているとしたが、画像形成装置が稼動中は常に働いているとしても良く、自己診断ルーチンがいつ働いているかにより本発明の範囲を限定することはない。
【0046】
図8は、本発明の第3の実施の形態である定着装置を示す構成図である。
【0047】
なお、上記した第1の実施の形態で示した部分と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
第2の実施の形態では、加熱ローラ2に駆動力を付与して回転させ、それに加圧ローラ3を従動させて回転させたが、この第3の実施の形態では、加圧ローラ3に対して駆動モータ31により回転力を付与して回転させ、それに加熱ローラ2を従動回転させる。
【0049】
この加熱ローラ2の周速Dを第2の実施の形態と同様の方法で検出する。詳細は省略する。そして、本実施例で用いている画像形成装置には従動して回転する加熱ローラ2と加圧ローラ3の間の滑りを検出する滑り検出ルーチンを備えている。
【0050】
図9は滑り検出ルーチンを示すフローチャート図である。図15の回路と合わせて、この滑り検出ルーチンを以下に説明する。
【0051】
この滑り検出ルーチンでは、定着装置の駆動が開始されると、速度比較回路50はROM51から加熱ローラ2及び加圧ローラ3の速度差許容値Eを読み出す(ST11)。その後、加圧ローラ3に付加されている駆動力を加圧ローラ駆動手段52から読み出し、回転速度(角速度)とローラ3の半径との関係から加圧ローラの周速度Cを求める(ST12)。ついで、検出手段53により加熱ローラ2の周速Dを検出する(ステップ13)。
【0052】
次に、これらC,Dの値の大小関係を判定するためにその差C−Dを求め、その誤差を許容値Eと比較する(ST14)。上記差が許容値E以上であれば、ローラ2,3間で滑りが発生していると判断し、許容値E以内であれば、滑りは発生していないと判断する(ST15)。
【0053】
この場合には、画像形成装置の運転を停止し、故障が生じていることをユーザーやサービスマンなどに知らせるために、例えば画像形成装置本体の操作部の表示パネルにその旨を表示する。この滑り検出ルーチンは速度検出対象のローラが回転しているときには常に働いている。
【0054】
この実施の形態では周速C,Dの値の比較のために速度差を用いたが、他にも速度比なども用いることができ、C、Dの値の大小が比較できれば比較方法は何でも良い。
【0055】
また、滑り検出ルーチンによりローラ2,3間の滑りが検出された際に、本実施例では画像形成装置を停止させているが、定着装置のみ、或いは加熱装置のみを停止させても良い。
【0056】
さらに、この実施の形態では滑り検出ルーチンは、速度検出対象のローラが回転しているときには常に働いているとしたが、画像形成装置が稼動中は常に働いているとしても良く、滑り検出ルーチンがいつ働いているかにより本発明の範囲を限定することはない。
【0057】
また、本実施例では加圧ローラ3に駆動力を付加し、加熱ローラ2の周速を速度検出手段により検出したが、加熱ローラ2に駆動力を付加し、上記と同様の方法で加圧ローラ3の周速を検出することや、その値を用いて滑り検出を行うことは当然可能である。
【0058】
この滑り検出ルーチンでは駆動力が付加されているローラの破壊によるローラの回転不良も検出できる。加圧ローラに上記エンドレス部材11を用いた場合にも滑り検出ルーチンが使用可能であることは言うまでも無い。
【0059】
図10は、本発明の第4の実施の形態である定着装置を示すものである。
【0060】
なお、上記した第1の実施の形態で示した部分と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
この実施の形態では、加熱ローラ2にエンドレス部材11を用い、加圧ローラ3は芯材33の周囲にシリコンやフッ素などのゴム層34を被覆して構成されている。加熱ローラ2側の弾性層12の厚さは4.73mm、加圧ローラ3側のゴム層34の厚さは2mmとされ、加熱ローラ2の厚さが厚く、表面硬度が柔らかくされている。
【0062】
このような構成にすることで定着後の加熱ローラ2からの用紙Pの剥離性が良くなることが期待できる。
【0063】
この実施の形態ではゴム層12,34の厚さを変えることで加熱ローラ2の硬度を加圧ローラ3の硬度より柔らかくしたが、ゴムの材質を加熱ローラ2の方が加圧ローラ3より柔らかいものにすることで加熱ローラ2の硬度を加圧ローラ3の硬度より柔らかくしても良い。
【0064】
図11は、本発明の第5の実施の形態である定着装置を示す構成図である。
【0065】
エンドレス部材11が柔らかく変形し易いものであることや、長期間にわたる使用での変形、加熱時の熱膨張による変形が予想以上に大きくなることが考えられる。
【0066】
従って、第1の実施の形態の装置構成だと加熱ローラ2側の剥離爪5がローラ2の変形によりローラ2の表面から離れたり、ローラ2に予想以上に強く押し付けられ、意図したとおりに機能しないことが考えられる。
【0067】
そこで、この実施の形態では、調整手段40により剥離ブレード20を保持するとともに、その両端部に位置決めローラ19,19を取り付け、これら位置決めローラ19,19を加熱ローラ2の表面に図示しない押圧機構により当接させている。これにより、図12に示すように位置決めローラ19,19によって位置決めされた剥離ブレード20と加熱ローラ2との間の距離が常に一定に保持され、定着後の用紙22を剥離する。
【0068】
剥離ブレード20の方向は図示しないガイドによって固定されている。図中のEは剥離ブレード20の有効な範囲であり、その長さは310mmと用紙22の幅より広くされている。
【0069】
このような構成にすることで加熱ローラ2が変形した場合にも位置決めローラ19,19がその変形に追従し、ローラ2と剥離ブレード20との間の距離を一定に保ち、剥離ブレード20を有効に機能させることができる。
【0070】
なお、この実施の形態では、剥離ブレード20を用いたが、同様の方法で剥離爪を用いても良い。
【0071】
図13は本発明の第6の実施の形態を示すものである。
【0072】
なお、上記した第1の実施の形態で示した部分と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0073】
この実施の形態では、加圧ローラ3に上記エンドレス部材11を用い、加熱ローラ2は芯材37の周囲にシリコンやフッ素などのゴム層38を被覆して構成されている。加圧ローラ3側の弾性層12の厚さは4.73mmで、加熱ローラ2側のゴム層38の厚さは10mmと厚くされ、加熱ローラ2の表面硬度が柔らかくされている。
【0074】
このように、用紙上に形成されたトナーの溶融が行われる加熱ローラの硬度を加圧ローラの硬度よりも高くすることで定着後の加熱ローラ2からの用紙の剥離性が良くなることが期待できる。
【0075】
本実施例ではゴム層38の厚さを変えることで加熱ローラ2の硬度を加圧ローラ3の硬度より柔らかくしたが、ゴムの材質を加熱ローラ2の方が加圧ローラ3より柔らかいものにすることで加熱ローラ2の硬度を加圧ローラ3の硬度より柔らかくしても良い。
【0076】
図14は、本発明の第7の実施の形態である定着装置を示すものである。
【0077】
なお、上記した第1の実施の形態で示した部分と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0078】
この第7の実施の形態では、加熱ローラ2と加圧ローラ3とが略同様に構成され、その弾性体層12の材料のみが異なる。加熱ローラ2側の弾性体層12の材料にはASKER−C硬度が10°の発泡ゴムが用いられ、加圧ローラ3側の弾性体層12の材料にはASKER−C硬度が40°の発泡ゴムが用いられている。即ち、加圧ローラ3の硬度が加熱ローラ2の硬度よりも高くなるように構成されている。このような構成にすることで、定着後の用紙22が確実に加熱ローラ2から剥離できるようにする。
【0079】
この実施の形態では、弾性体層12のみの材料を異ならせることでローラ硬度を異ならせたが、弾性体層12、導体層13、弾性体層14、離型層15、芯材16等の全ての構成要素について、材料及び厚さを2つのローラ2,3間で互いに異ならせても良い。
【0080】
このようにして、上記エンドレス部材の構成要素の材料、厚さを2つのローラ2,3間で互いに異ならせてローラ2,3の硬度や熱伝導率を変化させ、設計者がある程度の範囲で自由に設定できるため、定着装置の定着性能や加熱時の昇温速度、熱容量の調整ができ、また、用紙の剥離性能の向上を図ることができる。
【0081】
なお、上記した各実施の形態では、加熱ローラ2のみを誘導加熱で加熱したが、磁束発生コイル100を加圧ローラ3側にも設置することや、両方のローラ2,3を加熱できる位置に磁束発生コイル100を設置することで加圧ローラ3も同時に加熱することも可能である。
【0082】
また、加熱ローラ2を加熱する方式として誘導加熱装置を用いたが、他の加熱方法でも問題ない。例えば、加熱ローラ2の外側に設置したリフレクタ付のハロゲンランプを用いてもよいし、上記エンドレス部材11の導体層13の内側や外側に抵抗発熱層を用いて加熱しても良い。
【0083】
さらに、加熱ローラ2の内側に磁束発生コイルを設けて内側から加熱ローラ2を誘導加熱しても良い。
【0084】
また、加熱ローラ2や加圧ローラ3など、回転体としてローラを用いたがエンドレス部材11は芯材を持たない場合などにはベルトとしても構成可能であるので、回転体としてベルトを用いた場合も本発明の要旨の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施の形態である定着装置を示す概略的構成図。
【図2】同定着装置の加熱ローラを示す断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態である定着装置を示す概略的構成図。
【図4】同定着装置の検出手段を示す図。
【図5】同定着装置の加熱ローラに形成されるマークを示す図。
【図6】同定着装置の加熱ローラに形成される他のマークを示す図。
【図7】同検出手段の動作を示すフローチャート図。
【図8】本発明の第3の実施の形態である定着装置を示す概略的構成図。
【図9】同定着装置の滑り検出ルーチンを示すフローチャート図。
【図10】本発明の第4の実施の形態である定着装置を示す概略的構成図。
【図11】本発明の第5の実施の形態である定着装置を示す概略的構成図。
【図12】同定着装置の剥離手段を示す平面図。
【図13】本発明の第6の実施の形態である定着装置を示す断面図。
【図14】本発明の第7の実施の形態である定着装置を示す断面図。
【図15】本発明の第3の実施の形態の検出回路の概略を示す図。
【符号の説明】
【0086】
2…加熱ローラ(加熱回転体)、12…弾性体層、13…導体層、16…芯材、17…検出ローラ、18…光学読取素子、19…位置決めローラ、20…剥離手段、21…駆動モータ(駆動手段)、22a…現像剤像、22…用紙(被定着材)、25,26…耐熱接着剤、28…検出手段、29…制御手段、40…調整手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、画像形成装置に用いられる定着装置および剥離手段の間隔の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の定着装置には円筒型の剛体を有し、この剛体の外側に低熱伝導性材料からなる層、導電性材料からなる導電体層、及び離型層を順次、積層してなる定着ローラを備えるとともに、この定着ローラの近傍にその外周面に対向して誘導加熱源を設け、この誘導加熱源により定着ローラの導電体層を誘導加熱することにより、定着ローラを短時間で所望する温度に加熱できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、この種の定着装置には、中空部材上に導電層を形成してなる加熱部材と、この加熱部材の外側に配置され導電層に変動磁界を発生させる磁界発生手段とを備えてなり、短時間でウォームアップできるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
さらに、この種の定着装置には、加熱ローラと加圧ローラとのニップ部以外の周面を囲むようにリッツ線により構成した導線を配置し、この導線を高周波発振部に接続して高周波電流を印加することにより加熱ローラの表面を加熱するものがある。この定着装置は、加熱ローラの表面を直接加熱するため、エネルギー損失が少なく、かつ立ち上がり時間の短縮が可能となっている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2002−49261号公報
【特許文献2】特開2001−188427号公報
【特許文献3】特開平10−63126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては、実用にあたって発生すると考えられる以下のような問題についての考慮が無かった。
【0006】
1.長期間にわたる使用などが理由の劣化等による、定着ローラの構成要素である各層の破壊や層間剥離などが起こった時の対処。
【0007】
2.各層間に滑りが発生した時の対処。
【0008】
3.定着ローラが変形したときの用紙剥離用のブレードの位置決めに関する考慮。
【0009】
4.加熱回転体と加圧回転体の両方に弾性体層上に導体層を持つ回転体を用いた場合において双方の材料や層厚を変えることによる、ローラ硬度及び熱伝導率、熱容量の調整と、それによる剥離性、定着性、ウォームアップ時間の改善。
【0010】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、実用にあたって発生すると考えられる問題に対する対策と、加熱回転体、加圧回転体の両方、又は片方に弾性体層上に導体層を持つ回転体を用いた場合に有効に利用できる定着装置および剥離手段の間隔の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記課題を解決するため、第1の回転体と、この第1の回転体と周面が接触され、前記第1の回転体と接触される領域により被転写体を搬送する第2の回転体と、前記第1の回転体の周面もしくは前記第2の回転体の周面との間の距離を一定に維持する調整手段と、この調整手段に設けられ、前記第1の回転体の周面もしくは前記第2の回転体の周面から被転写体を剥離する剥離手段と、を有することを特徴とする定着装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、実用にあたって発生すると考えられる問題に対する対策と、加熱回転体、加圧回転体の両方、又は片方に弾性体層上に導体層を持つ回転体を用いた場合、すなわち加熱回転体、例えばローラ体あるいはエンドレス体、加圧回転体、例えばエンドレス体もしくはローラ体の両方、又は片方の外周面に対して、常に一定の距離に位置される爪状、あるいはブレード状の剥離手段により、定着装置、およびその定着装置を含む画像形成装置において生じることのある、ローラ体あるいはエンドレス体への影響を、抑止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態である定着装置1を全体的に示す概略的構成図である。
【0015】
定着装置1は、画像形成装置に備えられ、加熱回転体としての加熱(ヒート)ローラ2(φ40mm)と、加圧回転体としての加圧(プレス)ローラ3(φ40)を備えた構成となっている。加熱ローラ2としては図2に示すようなエンドレス部材11を用いている。エンドレス部材11の詳しい構成については後で述べる。
【0016】
加圧ローラ3は芯材の周囲にシリコンやフッ素などのゴムを被覆して構成されている。加圧ローラ3は加圧機構4によって前記加熱ローラ2に対して圧接され、一定のニップ幅を持つように維持されている。加熱ローラ2は駆動モータ21により矢印方向に駆動され、加圧ローラ3は従動で矢印方向に回転するようになっている。
【0017】
加熱ローラ2の上部側には、磁束発生用のコイル100が設けられ、加熱ローラ2はこの磁束発生用のコイル100からの磁束を受けて発熱する。これら加熱ローラ2と加圧ローラ3との圧接部(ニップ部)である定着ポイントを用紙22が通過することで、この用紙22上の現像剤像22aを融着圧着して定着するようになっている。
【0018】
加熱ローラ2の周囲部にはその回転方向に亘って、剥離爪5、サーミスタ6、クリーニング部材7、およびサーモスタッド8が配設されている。剥離爪5は用紙22を加熱ローラ2から剥離させるものである。サーミスタ6は加熱ローラ2の長手方向に複数配設され、加熱ローラ2の温度検出をするものである。このサーミスタ6の検出温度に基づいて図示しない温度制御装置により加熱ローラ2の温度を調節するようになっている。
【0019】
クリーニング部材7は加熱ローラ2上にオフセットされたトナーや紙屑等のごみを除去するものである。サーモスタッド8は加熱ローラ2上に少なくても1つ以上設けられ、加熱ローラ2の表面温度の異常を検出して加熱を遮断するものである。加圧ローラ3の周囲部には、用紙22を加圧ローラ3から剥離するための剥離爪9、トナーを除去するためのクリーニングローラ10が設けられている。
【0020】
図2は、加熱ローラ2を構成するエンドレス部材11を示す断面図である。
【0021】
エンドレス部材11は芯材16を有し、この芯材16上に順次、弾性体層12、導体層13、弾性体層14、及び離型層15を積層して構成されている。弾性体層12は例えばシリコンゴム又は発泡ゴムにより形成され、導体層13は例えばニッケルにより形成されている。弾性体層14は、例えばシリコンゴムにより形成され、離型層15は例えばPFAにより形成されている。
【0022】
このような構成にすることで、導体層13を誘導加熱し、エンドレス部材11の表面近くで発熱させることができるため、エネルギー効率がよく、加熱装置の早い立ち上がりを期待できる。
【0023】
また、導体層13や弾性体層12、14の層厚や材料の硬度を調節することでエンドレス部材11の硬度を調節でき、ニップ幅や剥離性能を調整できるメリットも併せ持つ。
【0024】
本実施の形態では、弾性体層12としては厚さ4.73mmの発泡ゴム、導体層13としては厚さ40μmのニッケル、弾性体層14として厚さ200μmのシリコンゴムを用いている。離型層15としては、厚さ30μmのPFAを用い、芯材16として厚さ1.5mmの鉄を用いている。
【0025】
そして、弾性体層12と導体層13の境界、及び導体層13と弾性体層14の境界は、それぞれ耐熱温度200℃以上の耐熱接着剤25,26により接着されている。
【0026】
定着時には加熱ローラ2の表面は、約200℃程度まで加熱される。また、加熱ローラ2、加圧ローラ3は用紙搬送の役わりも持っており、定着時には各層が互いに滑らないように各層12,13,14同士を固定する必要がある。これらのことから、各層12,13,14同士の固定には耐熱温度200℃以上の耐熱接着剤25,26が用いられている。
【0027】
この実施の形態によれば、各層12,13,14の滑り、剥離を防止することができる。
【0028】
図3は、本発明の第2の実施の形態である定着装置を示すものである。
【0029】
なお、上記した第1の実施の形態で示した部分と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
上記加熱ローラ2には、サーミスタ6より加熱ローラ2の回転方向下流側に位置して検出ローラ17が当接され、この検出ローラ17は、図示しない押圧機構により加熱ローラ2に押圧されている。なお、検出ローラ17はサーミスタ6より加熱ローラ2の回転方向上流側に位置して設けても問題はない。
【0031】
検出ローラ17の回転軸には例えばエンコーダ(図示しない)が取り付けられており、検出ローラ17の角速度を検出手段28で検出できるようになっている。加熱ローラ2が芯材16に駆動力を受けることにより回転する際、検出ローラ17もそれに従動して回転し、検出ローラ17の周速と加熱ローラ2の周速は同じになる。
【0032】
従って、検出ローラ17の半径を予め知っておき、その角速度を検出することで速度検出ローラ17の周速を計算し、加熱ローラ2の周速を知ることができる。本実施例では速度検出ローラ17は加熱ローラ2のクリーニングローラも兼ねている。
【0033】
図4〜図6は加熱ローラ2の周速を検出するための他の例を示すものである。
【0034】
この例では、図4に示すように加熱ローラ2の表面が撮影可能な位置に近接対向して例えばフォトカプラなどの光読取素子18を設置している。そして、図5に示すように、加熱ローラ2の表面の一部に加熱ローラ2の表面の色とは異なる色のライン2Aを形成し、或いは図6に示すようにマーク2Bを形成する。
【0035】
加熱ローラ2の回転時にそのライン2A或いはマーク2Bを光読取素子18によって読み取ることにより、加熱ローラ2の角速度を検出して、加熱ローラ2の半径との関係からその周速を計算する。
【0036】
この実施の形態では加熱ローラ2の周速を検出しているが、加圧ローラ3についても同様の方法で周速を検出できることは言うまでもない。
【0037】
この実施の形態で用いているエンドレス部材11は機械的強度の異なる複数の層12,13,14で構成されており、比較的強度の弱い弾性体層12,14の破壊や層間剥離が予想される。そのような部材の破壊を検出するために本実施例で用いている画像形成装置には上記速度検出手段を用いた自己診断ルーチンが搭載されている。
【0038】
図7は、自己診断ルーチンを示すフローチャートである。
【0039】
この自己診断ルーチンでは、まず、加熱ローラ2の芯材16に負荷されている駆動力による回転速度(角速度)と加熱ローラ2の半径の関係から加熱ローラ2の周速Aを計算して求める(ステップST1)。これと同時に上記のように速度検出ローラ17を用いて加熱ローラ2の周速Bを検出する(ステップST2)。
【0040】
ついで、周速A、Bの値の大小関係を判定するためにその差A−Bを求める(ステップST3)。
【0041】
これら周速A、Bは加熱ローラ2に破壊がない場合には同じになる。加熱ローラ2に破壊がある場合には、破壊した部分で回転の滑りが生じ、破壊部分より外側の部分は内側の部分の回転速度より遅い速度で回転、もしくはまったく回転しない状態になる。
【0042】
そのため、ローラ周速Bはローラ周速Aより遅くなる。このことからA−B>0となった場合にはローラ2が破壊していると判断する(ステップST4)。この場合には、制御手段29により画像形成装置の運転を停止し、故障が生じていること、部品の交換が必要であることをユーザーやサービスマンなどに知らせるために、例えば画像形成装置本体の操作部の表示パネルにその旨を表示する。この自己診断ルーチンは速度検出対象の加熱ローラ2が回転しているときには常に働いている。
【0043】
この実施の形態では周速A、Bの値の比較のために速度差を用いたが、これに限られず速度比なども用いることができ、周速A、Bの値の大小が比較できれば比較方法は何でも良い。
【0044】
また、自己診断ルーチンにより加熱ローラ2の破壊が検出された際に、本実施例では画像形成装置を停止させているが、定着装置1のみ、或いは加熱ローラ2の回転のみ、または、加熱のみを停止させても良い。
【0045】
また、この実施の形態では、自己診断ルーチンは、速度検出対象のローラが回転しているときには常に働いているとしたが、画像形成装置が稼動中は常に働いているとしても良く、自己診断ルーチンがいつ働いているかにより本発明の範囲を限定することはない。
【0046】
図8は、本発明の第3の実施の形態である定着装置を示す構成図である。
【0047】
なお、上記した第1の実施の形態で示した部分と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
第2の実施の形態では、加熱ローラ2に駆動力を付与して回転させ、それに加圧ローラ3を従動させて回転させたが、この第3の実施の形態では、加圧ローラ3に対して駆動モータ31により回転力を付与して回転させ、それに加熱ローラ2を従動回転させる。
【0049】
この加熱ローラ2の周速Dを第2の実施の形態と同様の方法で検出する。詳細は省略する。そして、本実施例で用いている画像形成装置には従動して回転する加熱ローラ2と加圧ローラ3の間の滑りを検出する滑り検出ルーチンを備えている。
【0050】
図9は滑り検出ルーチンを示すフローチャート図である。図15の回路と合わせて、この滑り検出ルーチンを以下に説明する。
【0051】
この滑り検出ルーチンでは、定着装置の駆動が開始されると、速度比較回路50はROM51から加熱ローラ2及び加圧ローラ3の速度差許容値Eを読み出す(ST11)。その後、加圧ローラ3に付加されている駆動力を加圧ローラ駆動手段52から読み出し、回転速度(角速度)とローラ3の半径との関係から加圧ローラの周速度Cを求める(ST12)。ついで、検出手段53により加熱ローラ2の周速Dを検出する(ステップ13)。
【0052】
次に、これらC,Dの値の大小関係を判定するためにその差C−Dを求め、その誤差を許容値Eと比較する(ST14)。上記差が許容値E以上であれば、ローラ2,3間で滑りが発生していると判断し、許容値E以内であれば、滑りは発生していないと判断する(ST15)。
【0053】
この場合には、画像形成装置の運転を停止し、故障が生じていることをユーザーやサービスマンなどに知らせるために、例えば画像形成装置本体の操作部の表示パネルにその旨を表示する。この滑り検出ルーチンは速度検出対象のローラが回転しているときには常に働いている。
【0054】
この実施の形態では周速C,Dの値の比較のために速度差を用いたが、他にも速度比なども用いることができ、C、Dの値の大小が比較できれば比較方法は何でも良い。
【0055】
また、滑り検出ルーチンによりローラ2,3間の滑りが検出された際に、本実施例では画像形成装置を停止させているが、定着装置のみ、或いは加熱装置のみを停止させても良い。
【0056】
さらに、この実施の形態では滑り検出ルーチンは、速度検出対象のローラが回転しているときには常に働いているとしたが、画像形成装置が稼動中は常に働いているとしても良く、滑り検出ルーチンがいつ働いているかにより本発明の範囲を限定することはない。
【0057】
また、本実施例では加圧ローラ3に駆動力を付加し、加熱ローラ2の周速を速度検出手段により検出したが、加熱ローラ2に駆動力を付加し、上記と同様の方法で加圧ローラ3の周速を検出することや、その値を用いて滑り検出を行うことは当然可能である。
【0058】
この滑り検出ルーチンでは駆動力が付加されているローラの破壊によるローラの回転不良も検出できる。加圧ローラに上記エンドレス部材11を用いた場合にも滑り検出ルーチンが使用可能であることは言うまでも無い。
【0059】
図10は、本発明の第4の実施の形態である定着装置を示すものである。
【0060】
なお、上記した第1の実施の形態で示した部分と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
この実施の形態では、加熱ローラ2にエンドレス部材11を用い、加圧ローラ3は芯材33の周囲にシリコンやフッ素などのゴム層34を被覆して構成されている。加熱ローラ2側の弾性層12の厚さは4.73mm、加圧ローラ3側のゴム層34の厚さは2mmとされ、加熱ローラ2の厚さが厚く、表面硬度が柔らかくされている。
【0062】
このような構成にすることで定着後の加熱ローラ2からの用紙Pの剥離性が良くなることが期待できる。
【0063】
この実施の形態ではゴム層12,34の厚さを変えることで加熱ローラ2の硬度を加圧ローラ3の硬度より柔らかくしたが、ゴムの材質を加熱ローラ2の方が加圧ローラ3より柔らかいものにすることで加熱ローラ2の硬度を加圧ローラ3の硬度より柔らかくしても良い。
【0064】
図11は、本発明の第5の実施の形態である定着装置を示す構成図である。
【0065】
エンドレス部材11が柔らかく変形し易いものであることや、長期間にわたる使用での変形、加熱時の熱膨張による変形が予想以上に大きくなることが考えられる。
【0066】
従って、第1の実施の形態の装置構成だと加熱ローラ2側の剥離爪5がローラ2の変形によりローラ2の表面から離れたり、ローラ2に予想以上に強く押し付けられ、意図したとおりに機能しないことが考えられる。
【0067】
そこで、この実施の形態では、調整手段40により剥離ブレード20を保持するとともに、その両端部に位置決めローラ19,19を取り付け、これら位置決めローラ19,19を加熱ローラ2の表面に図示しない押圧機構により当接させている。これにより、図12に示すように位置決めローラ19,19によって位置決めされた剥離ブレード20と加熱ローラ2との間の距離が常に一定に保持され、定着後の用紙22を剥離する。
【0068】
剥離ブレード20の方向は図示しないガイドによって固定されている。図中のEは剥離ブレード20の有効な範囲であり、その長さは310mmと用紙22の幅より広くされている。
【0069】
このような構成にすることで加熱ローラ2が変形した場合にも位置決めローラ19,19がその変形に追従し、ローラ2と剥離ブレード20との間の距離を一定に保ち、剥離ブレード20を有効に機能させることができる。
【0070】
なお、この実施の形態では、剥離ブレード20を用いたが、同様の方法で剥離爪を用いても良い。
【0071】
図13は本発明の第6の実施の形態を示すものである。
【0072】
なお、上記した第1の実施の形態で示した部分と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0073】
この実施の形態では、加圧ローラ3に上記エンドレス部材11を用い、加熱ローラ2は芯材37の周囲にシリコンやフッ素などのゴム層38を被覆して構成されている。加圧ローラ3側の弾性層12の厚さは4.73mmで、加熱ローラ2側のゴム層38の厚さは10mmと厚くされ、加熱ローラ2の表面硬度が柔らかくされている。
【0074】
このように、用紙上に形成されたトナーの溶融が行われる加熱ローラの硬度を加圧ローラの硬度よりも高くすることで定着後の加熱ローラ2からの用紙の剥離性が良くなることが期待できる。
【0075】
本実施例ではゴム層38の厚さを変えることで加熱ローラ2の硬度を加圧ローラ3の硬度より柔らかくしたが、ゴムの材質を加熱ローラ2の方が加圧ローラ3より柔らかいものにすることで加熱ローラ2の硬度を加圧ローラ3の硬度より柔らかくしても良い。
【0076】
図14は、本発明の第7の実施の形態である定着装置を示すものである。
【0077】
なお、上記した第1の実施の形態で示した部分と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0078】
この第7の実施の形態では、加熱ローラ2と加圧ローラ3とが略同様に構成され、その弾性体層12の材料のみが異なる。加熱ローラ2側の弾性体層12の材料にはASKER−C硬度が10°の発泡ゴムが用いられ、加圧ローラ3側の弾性体層12の材料にはASKER−C硬度が40°の発泡ゴムが用いられている。即ち、加圧ローラ3の硬度が加熱ローラ2の硬度よりも高くなるように構成されている。このような構成にすることで、定着後の用紙22が確実に加熱ローラ2から剥離できるようにする。
【0079】
この実施の形態では、弾性体層12のみの材料を異ならせることでローラ硬度を異ならせたが、弾性体層12、導体層13、弾性体層14、離型層15、芯材16等の全ての構成要素について、材料及び厚さを2つのローラ2,3間で互いに異ならせても良い。
【0080】
このようにして、上記エンドレス部材の構成要素の材料、厚さを2つのローラ2,3間で互いに異ならせてローラ2,3の硬度や熱伝導率を変化させ、設計者がある程度の範囲で自由に設定できるため、定着装置の定着性能や加熱時の昇温速度、熱容量の調整ができ、また、用紙の剥離性能の向上を図ることができる。
【0081】
なお、上記した各実施の形態では、加熱ローラ2のみを誘導加熱で加熱したが、磁束発生コイル100を加圧ローラ3側にも設置することや、両方のローラ2,3を加熱できる位置に磁束発生コイル100を設置することで加圧ローラ3も同時に加熱することも可能である。
【0082】
また、加熱ローラ2を加熱する方式として誘導加熱装置を用いたが、他の加熱方法でも問題ない。例えば、加熱ローラ2の外側に設置したリフレクタ付のハロゲンランプを用いてもよいし、上記エンドレス部材11の導体層13の内側や外側に抵抗発熱層を用いて加熱しても良い。
【0083】
さらに、加熱ローラ2の内側に磁束発生コイルを設けて内側から加熱ローラ2を誘導加熱しても良い。
【0084】
また、加熱ローラ2や加圧ローラ3など、回転体としてローラを用いたがエンドレス部材11は芯材を持たない場合などにはベルトとしても構成可能であるので、回転体としてベルトを用いた場合も本発明の要旨の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施の形態である定着装置を示す概略的構成図。
【図2】同定着装置の加熱ローラを示す断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態である定着装置を示す概略的構成図。
【図4】同定着装置の検出手段を示す図。
【図5】同定着装置の加熱ローラに形成されるマークを示す図。
【図6】同定着装置の加熱ローラに形成される他のマークを示す図。
【図7】同検出手段の動作を示すフローチャート図。
【図8】本発明の第3の実施の形態である定着装置を示す概略的構成図。
【図9】同定着装置の滑り検出ルーチンを示すフローチャート図。
【図10】本発明の第4の実施の形態である定着装置を示す概略的構成図。
【図11】本発明の第5の実施の形態である定着装置を示す概略的構成図。
【図12】同定着装置の剥離手段を示す平面図。
【図13】本発明の第6の実施の形態である定着装置を示す断面図。
【図14】本発明の第7の実施の形態である定着装置を示す断面図。
【図15】本発明の第3の実施の形態の検出回路の概略を示す図。
【符号の説明】
【0086】
2…加熱ローラ(加熱回転体)、12…弾性体層、13…導体層、16…芯材、17…検出ローラ、18…光学読取素子、19…位置決めローラ、20…剥離手段、21…駆動モータ(駆動手段)、22a…現像剤像、22…用紙(被定着材)、25,26…耐熱接着剤、28…検出手段、29…制御手段、40…調整手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転体と、
この第1の回転体と周面が接触され、前記第1の回転体と接触される領域により被転写体を搬送する第2の回転体と、
前記第1の回転体の周面もしくは前記第2の回転体の周面との間の距離を一定に維持する調整手段と、
この調整手段に設けられ、前記第1の回転体の周面もしくは前記第2の回転体の周面から被転写体を剥離する剥離手段と、
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記剥離手段は、ブレード状あるいは爪状であることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記剥離手段は、前記第1の回転体の周面に対して所定の距離に位置されることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項4】
前記剥離手段は、前記第2の回転体の周面に対して所定の距離に位置されることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記第1の回転体の周面もしくは前記第2の回転体の周面と接して回転されるローラ体を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
第1の回転体と、第1の回転体と周面が接触され、第1の回転体と接触される領域により被転写体を搬送する第2の回転体と、第1の回転体の周面もしくは第2の回転体の周面から被転写体を剥離する剥離手段を支持する調整手段と、を有する定着装置において、
前記調整手段は、第1の回転体の周面もしくは第2の回転体の周面に接するローラ体を、第1の回転体または第2の回転体の周面の変位に応じて追随させることにより、第1の回転体の周面もしくは第2の回転体の周面との間の間隔を一定に維持することを特徴とする定着装置の剥離手段の間隔の調整方法。
【請求項7】
剥離手段を支持した位置決めローラを、第1の回転体または第2の回転体の周面に接触することにより、剥離する手段と第1の回転体または第2の回転体の表面との間の距離が一定となるように調節することを特徴とする請求項6記載の定着装置の剥離手段の間隔の調整方法。
【請求項1】
第1の回転体と、
この第1の回転体と周面が接触され、前記第1の回転体と接触される領域により被転写体を搬送する第2の回転体と、
前記第1の回転体の周面もしくは前記第2の回転体の周面との間の距離を一定に維持する調整手段と、
この調整手段に設けられ、前記第1の回転体の周面もしくは前記第2の回転体の周面から被転写体を剥離する剥離手段と、
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記剥離手段は、ブレード状あるいは爪状であることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記剥離手段は、前記第1の回転体の周面に対して所定の距離に位置されることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項4】
前記剥離手段は、前記第2の回転体の周面に対して所定の距離に位置されることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記第1の回転体の周面もしくは前記第2の回転体の周面と接して回転されるローラ体を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
第1の回転体と、第1の回転体と周面が接触され、第1の回転体と接触される領域により被転写体を搬送する第2の回転体と、第1の回転体の周面もしくは第2の回転体の周面から被転写体を剥離する剥離手段を支持する調整手段と、を有する定着装置において、
前記調整手段は、第1の回転体の周面もしくは第2の回転体の周面に接するローラ体を、第1の回転体または第2の回転体の周面の変位に応じて追随させることにより、第1の回転体の周面もしくは第2の回転体の周面との間の間隔を一定に維持することを特徴とする定着装置の剥離手段の間隔の調整方法。
【請求項7】
剥離手段を支持した位置決めローラを、第1の回転体または第2の回転体の周面に接触することにより、剥離する手段と第1の回転体または第2の回転体の表面との間の距離が一定となるように調節することを特徴とする請求項6記載の定着装置の剥離手段の間隔の調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−176324(P2008−176324A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6148(P2008−6148)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【分割の表示】特願2004−61141(P2004−61141)の分割
【原出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【分割の表示】特願2004−61141(P2004−61141)の分割
【原出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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