説明

定着装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】簡易な構成で、放熱部材118fの交換時期又は清掃時期を必要とする寿命を容易かつ正確に把握することを可能とする。
【解決手段】放熱部材118fの表面に付着したトナー等の付着物の量を検知し、その付着量の検知結果に基づいて前記放熱部材118fの交換時期又は清掃時期である寿命を判断する寿命判断手段118g〜118pを付設し、個々のユーザー毎に異なる放熱部材の寿命に基づく交換時期又は清掃時期が、放熱部材118fの表面に付着した付着物の量を検知することによって容易かつ正確に予測するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱部材に当接する加圧部材の表面に熱伝導体からなる放熱部材を当接させることによって加圧部材を降温させるように構成された定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置などの各種装置において、熱及び圧力を付与することによって記録媒体上にトナー像を定着させる定着装置が広く用いられている。そのような定着装置において、近年、エネルギーの利用効率を高めるべく、定着フィルム等からなる加熱部材の熱容量を小さくし、その加熱部材を定着動作可能温度まで上昇させるまでのエネルギー(電力)を低減化する技術が数多く提案され実用化されている。
【0003】
ところが、そのように小熱容量化を図った定着フィルム等の加熱部材では、熱伝導性が長手軸方向に低下する傾向があり、記録媒体が通過する通紙領域と、通過しない非通紙領域との間で温度差が生じて、長手軸方向の温度分布が不均一になる場合がある。すなわち、非通紙領域の温度が上昇することによって加熱部材(定着フィルム)の表面に形成されている高離型性層(一般にはPFA、PTFE等のフッ素樹脂層あるいはSiゴム層)が熱劣化するおそれがある。
【0004】
そのため、例えば図12に示されているように、加熱部材としての定着フィルム1の下面側に加圧部材として当接配置されている加圧ローラ2の外周表面に、長手軸方向のほぼ全長にわたって熱伝導体からなる放熱ローラ3を放熱部材として当接させるようにした構成が従来から提案されている。このような放熱ローラ3を備えた定着装置によれば、記録媒体の通紙領域と非通紙領域の温度不均一を解消させることが可能となる。このとき、上述した定着フィルム(加熱部材)1と、加圧ローラ(加圧部材)2との接触部位には定着ニップ部Nが形成されているが、その定着ニップ部Nに対して前記放熱ローラ(放熱部材)3は、通常、前記定着フィルム1及び加圧ローラ2の回転移動方向の下流側、すなわち排紙側の領域に配置されている。これは、その放熱ローラ(放熱部材)3の交換作業を排紙側から容易に行うことができるようにするためである。
【0005】
ところが、上述したように放熱ローラ(放熱部材)3が、定着ニップ部Nの下流側に配置されていると、定着動作に伴って発生する微量なオフセットトナーや、記録媒体から発生する紙粉(以下、トナー等という。)が、加圧ローラ(加圧部材)2を介して放熱ローラ3へ移行するようにして付着していき、定着動作が繰り返されているうちにトナー等が放熱ローラ3の表面上に徐々に蓄積されていく傾向がある。そして、そのように放熱ローラ3の表面上にトナー等が蓄積されることによって、当該放熱ローラ3の降温作用が次第に弱められていくとともに、その蓄積したトナー等が装置の内壁面に等に接触して回転駆動の負荷抵抗を増大させることによって、交換や清掃が必要な寿命に至ることとなる。
【0006】
すなわち、上述したようにして寿命に至った放熱ローラ3(放熱部材)には、定期的な交換や清掃が必要となってくるが、その放熱ローラ3の表面に蓄積するトナー等の量には、ユーザーの使用状況(使用原稿、使用環境、使用用紙)によるバラツキがあり、交換や清掃が必要となる寿命の到来が個々のユーザー毎に異なることから画像形成枚数(プリント枚数)のみからでは推測することができないという問題がある。そのため、従来装置においては、放熱ローラ3の寿命が到来する前に早めに交換や清掃を行うことが多くなっているが、寿命の到来による交換時期又は清掃時期を逸して不具合が生じてから交換や清掃を行わねばならない場合もある。
【0007】
【特許文献1】特開2000−315028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、簡易な構成で、加圧部材の放熱手段における寿命の到来を容易かつ正確に把握することができるようにした定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明では、加熱部材に当接して定着ニップ部を形成する加圧部材に、熱伝導体からなる放熱部材を当接させた構成を有する定着装置において、前記放熱部材の表面に付着した付着物を検知し、その検知結果に基づいて前記放熱部材の寿命を判断する寿命判断手段を備えた構成が採用されている。
【0010】
このような構成を有する本発明によれば、放熱部材の表面に付着したトナー等の付着物の量が寿命判断手段により検知されることによって、個々のユーザー毎に異なる放熱部材の寿命の到来による交換時期又は清掃時期が容易かつ正確に判断されることとなり、放熱部材の交換又は清掃が無駄なく良好に行われるようになっている。
【0011】
また本発明における寿命判断手段は、前記放熱部材又は前記加圧部材の一方に印加した一定の検知電圧に対応して前記放熱部材又は加圧部材の他方に流れる電流を測定する電流検知手段を有し、その電流検知手段で測定された電流値に基づいて前記放熱部材の寿命を判断するように構成することが可能である。
【0012】
また本発明におげる寿命判断手段は、前記放熱部材から一定間隔だけ離して配置された導体からなる接触検知部材を有し、前記放熱部材の表面に付着した付着物の層厚が前記一定間隔を越えて当該付着物が前記接触検知部材に接触したときに、前記放熱部材の寿命を判断するように構成することが可能である。
【0013】
また本発明における寿命判断手段は、前記放熱部材の回転速度を検出する回転検知手段を有し、その回転検知手段により検出された回転速度に基づいて前記放熱部材の寿命を判断するように構成すれることが可能である。
【0014】
このときの本発明における回転検知手段は、前記放熱部材に取り付けた反射部からの反射光を受光するように構成された反射型センサーを含むように構成されることが可能である。
【0015】
このような各構成を有する本発明によれば、放熱部材の表面に付着したトナーの量を、簡易な構成の電気的検知手段を有する寿命判断手段で検知することによって、個々のユーザー毎に異なる放熱部材の寿命の到来による交換時期又は清掃時期が容易かつ正確に判断されるようになっている。
【0016】
また本発明では、上述したいずれかに記載の定着装置を備えた画像形成装置とすることが可能であり、このような構成を有する本発明によれば、画像形成装置において同様な作用が得られる。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように本発明にかかる定着装置及びそれを備えた画像形成装置は、放熱部材の表面に付着したトナーの量を検知し、その付着トナー量の検知結果に基づいて前記放熱部材の寿命の到来を判断する寿命判断手段を付設し、個々のユーザー毎に異なる寿命の到来による放熱部材の交換時期又は清掃時期を、放熱部材の表面に付着したトナーの量を検知することによって容易かつ正確に判断し、放熱部材の交換又は清掃を無駄なく良好に行われるように構成したものであるから、簡易な構成で、放熱部材の交換又は清掃を無駄なく行うことができ、定着装置及びそれを備えた画像形成装置の信頼性を安価かつ大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、定着装置及びそれを備えた画像形成装置としての複写機に本発明を適用した実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明を適用した複写機の全体構成は、図1に示されているように、画像形成装置本体Aの各部に、スキャナ部B、画像形成部C及びシートデッキDを備えたものとなっている。そして、上記画像形成装置本体Aの上部に、ブック原稿の画像情報を読み取る画像読取手段であるスキャナ部Bが配置されているとともに、その画像形成装置本体Aの下部には画像形成手段となる画像形成部Cが設けられ、さらにその画像形成部Cの下部側にシートデッキDが組み付けられている。
【0020】
上述したスキャナ部Bは、走査系光源201、プラテンガラス202、画像形成装置本体Aに対して開閉可能な原稿圧板203、ミラー204、受光素子(光電変換素子)205、及び画像処理部などの各部から構成されている。そして、前記プラテンガラス202上に、本、記録紙等からなるブック原稿又はシート状原稿などを原稿面を下向きにして載置して原稿圧板203により背面を押圧して静止状態にセットし、読取スタートキーを押すと、走査系光源201がプラテンガラス202の下部を矢印a方向に走査して原稿面の画像情報を読み取る。走査系光源201により読み取られた原稿の画像情報は画像処理部で処理され、電気信号に変換されて、画像形成部Cのレーザスキャナ111に伝送される。ここで、画像形成装置本体Aは、画像形成部Cのレーザスキャナ111に画像処理部の処理信号を入力すれば複写機として機能し、外部装置(コンピュータ)の出力信号を入力すればプリンタとして機能する。また、画像形成装置本体Aは、他のファクシミリ装置からの信号を受信したり、画像処理部の信号を他のファクシミリ装置に送信したりすれば、ファクシミリ装置としても機能する。
【0021】
一方、上述した画像形成部Cの下部にはシートカセット1が装着されている。このシートカセット1は、下段カセット1aと上段カセット1bの2個で1つの給送ユニットを構成しており、本実施形態では、2つの給送ユニットU1及びU2による計4個のカセットが装着可能になされている。そして、上方側に配置された1つの給送ユニットU1は、前記画像形成装置本体Aに対して着脱可能に取り付けられ、下方側の給送ユニットU2は、シートデッキDに対して着脱可能に取り付けられている。
【0022】
このような下段カセット1a及び上段カセット1bの内部に収容されたシート状記録媒体(用紙)は、給送回転体となるピックアップローラ3により繰り出され、フィードローラ4とリタードローラ5との協動作用により1枚ずつ分離・給送された後、搬送ローラ104、105によってレジストローラ106まで搬送され、該レジストローラ106によって後述する画像形成動作に同期するようにして画像形成部Cへと給送される。また、前述したシートカセット1とは別に、手差しトレイ6が画像形成装置本体Aの側面に配置されており、手差しトレイ6上のシートSは手差し給紙ローラ7により、レジストローラ106へと繰り出される。
【0023】
また、前記画像形成部Cは、電子写真感光ドラム112、画像書き込み光学系113、帯電ローラ116、現像器114及び転写帯電器115等を備えた構成になされている。そして、帯電ローラ116により一様に帯電された感光体ドラム112の表面に、レーザスキャナ111から射出された画像情報に対応するレーザ光が画像書き込み光学系113により走査されて静電潜像が形成され、その静電潜像が現像器114により現像されることによりトナー像が形成される。その感光体ドラム112上のトナー像は、当該感光体ドラム112の回転に同期して上記レジストローラ106から送り出されたシート状記録媒体(用紙)の第1面に、転写帯電器115が配置された転写部で転写されるようになっている。
【0024】
ここで、図中の符号117は、上述したようにしてトナー像を形成されたシート状記録媒体を搬送する搬送部を示し、また符号118及び119は、定着装置及び排出ローラをそれぞれ示している。上記搬送部117は、トナー像を形成された被加熱材としてのシート状記録媒体(記録用紙)を搬送可能とする構成になされていて、トナー像を形成されたシート状記録媒体は、上記搬送部117により定着装置118に搬送され、そこで加熱及び加圧が行われることによってトナー像が表面に定着された後、排出ローラ119によって機外のトレイ120に向かって排出され積載される構成になされている。
【0025】
また、シート状記録媒体(記録用紙)の両面に画像を記録する場合には、定着装置118から排出されたシート状記録媒体が排出ローラ119に挟持されて当該シート状記録媒体の後端が分岐点207を通過した時点で上記排出ローラ119が逆転方向に回転駆動される。それにより上記シート状記録媒体は両面トレイ121上に一旦載置され、その後に搬送ローラ104、105により搬送されてレジストローラ106に到達し、その反転されたシート状記録媒体の第2面に上述と同様にして画像が形成された後、トレイ120に排出・積載される構成になされている。
【0026】
ここで、本実施形態における定着装置118は、加圧部材駆動型のフィルム加熱方式を採用した加熱装置により構成されたものであって、特に図2に示されているように、周知構造のヒータスティ118aに保持されたフィルムガイド118bに、移動加熱部材としてのエンドレス耐熱性フィルム体(以下、定着フィルムと呼ぶ。)118cが装着されている。上記移動加熱部材としての定着フィルム118cの図示下面側には、加圧部材としての加圧ローラ118dが接触配置されており、その定着フィルム118cと加圧ローラ118dとが接触配置された部位に定着ニップ部Nが形成されている。そして、その定着ニップ部N内にシート状記録媒体が、入口ガイド117aを通して挿通されることによってトナー像の定着が行われるようになっている。
【0027】
上述した定着装置118のヒータスティ118aに保持されたフィルムガイド118bは、横長形状をなす耐熱性樹脂製部材から形成されており、前記定着フィルム(移動加熱部材)118cの内面ガイド部材を構成しているとともに、当該フィルムガイド118bの図示下端面に加熱体としてのヒータ118eが下方側に向かって露出するように取り付けられている。本実施形態におけるヒータ118eは、1mmのAL2O3(アルミナ)基板に、銀(Ag)の発熱抵抗体を所定の幅・厚みにスクリーン印刷し、発熱体表面に保護用のガラスをコートしたものが用いられており、上述したフィルムガイド118bに接着固定されている。
【0028】
一方、定着フィルム(移動加熱部材)118cは、上述したように加熱体としてのヒータ118eに接触するようにして前記フィルムガイド118bに外嵌された無端環状体から形成されたものであって、その定着フィルム118cの内周長は、上記ヒータ118eを含むフィルムガイド118bの外周相当長に対して例えば3mm程度大きく形成されている。それによって、当該定着フィルム118cは、上記ヒータ118eを含むフィルムガイド118bに対して周長が余裕を持ったルーズな状態になされて環状に移動可能となるように構成されている。
【0029】
本実施形態における定着フィルム118cは、熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために膜厚が総厚で約50μmのポリイミド樹脂に、耐熱性、離型性、強度、耐久性等を考慮して約10μmのPTFE、PFA等のフッ素樹脂に導電剤を添加したコート層が被着された構成になされており、本実施形態では直径が24mm(φ)のものが用いられている。
【0030】
一方、上述したように加圧ローラ118dは、前記定着フィルム118cを加圧しながら移動させる回転駆動体を構成するものであって、加熱部材としての定着フィルム118cに当接して定着ニップ部Nを形成する加圧部材を構成している。そして、その加圧ローラ118dは、前記ヒータ118eの加熱面に対して、上記定着フィルム118cを介して図示を省略した付勢手段により所定の圧力で当接されている。当該加圧ローラ118dは、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス等からなる金属芯軸と、その金属芯軸に外装された、ASKER/C硬度で53度の離型性の良い導電性シリコンゴム等の耐熱ゴム弾性体からなるローラ部とを有しており、本実施形態では直径が23mm(φ)のものが用いられている。さらに、この加圧ローラ118dの表面部分には、被加熱材としてのシート状記録媒体及び定着フィルム118cに対する搬送性、並びにトナーの汚れ防止等の理由から、高離型性層を有する表層、例えばフッ素樹脂を分散させたコート層として約50μmのPFAチューブが装着されている。
【0031】
このような加圧ローラ118dの金属芯軸の軸方向一端部は、定着装置駆動用モータ(図示省略)に適宜のギアを介して連結されており、当該加圧ローラ118dが図中の矢印で示されたように反時計方向に回転駆動されるように構成されている。そして、この加圧ローラ118dの回転駆動によって、上述した定着フィルム118cは、その内面が上記ヒータ118eの加熱表面(図示下面)に密着摺動しながら図中の矢印で示されたように時計方向に従動状態で回転駆動されることによりシート状記録媒体(記録用紙)を搬送するようになっている。
【0032】
一方、前述したように加圧部材としての加圧ローラ118dは、加熱部材としての定着フィルム118cに当接して定着ニップ部Nを構成するものであるが、その加圧ローラ(加圧部材)118dに熱伝導体からなる放熱部材を当接させた構成、すなわち、加圧ローラ(加圧部材)118dの外周面に放熱ローラ118fを当接させた構成が採用されている。この放熱ローラ(放熱部材)118fは、金属芯軸に対して、アルミ(AL)、銅(CU)などの金属、又はアルミナ等の良熱伝導性の材料からなる、例えば直径12mm(φ)の金属ローラが取り付けられた構成になされている。この放熱ローラ118fは、上述した加圧ローラ118dの軸方向のほぼ全長にわたって当接するように接触配置されている。
【0033】
この加圧ローラ118dに対する前記放熱ローラ118fの圧接状態は、図示を省略した付勢手段によって維持されており、前述した加圧ローラ118dの回転駆動に伴って受動的に回転する構成になされている。そして、そのように放熱部材としての放熱ローラ(放熱部材)118fが加圧ローラ118dに当接されて従動回転されることによって、前記加圧ローラ118dを降温させるように構成されており、特に小サイズ紙を使用する際における軸方向両端部分における温度上昇、すなわち端部昇温を緩和して軸方向における温度分布を均一化させる機能を有している。
【0034】
このとき、上記放熱ローラ(放熱部材)118fには、加圧ローラ118dの外周表面上に残留するオフセットトナーが回収されるようにして付着したり、シート状記録媒体から発生した紙粉が付着し、それらのトナー等の付着物が徐々に蓄積していく傾向があり、そのようなトナー等の付着物の蓄積による寿命の到来に対応して放熱ローラ118fには定期的な清掃や交換が必要となる。そこで、本実施形態においては、放熱ローラ118fに対して次のような寿命判断手段が付設されている。
【0035】
すなわち、前記寿命判断手段は、上述した放熱ローラ(放熱部材)118fの表面に付着したトナー等の付着物の量を検知し、その付着量の検知結果に基づいて当該放熱ローラ118fの寿命を判断するように構成されており、放熱ローラ118fの交換時期又は清掃時期を良好に予測するようにしている。そして、図2に示されている第1の実施形態にかかる寿命判断手段は、前記放熱部材としての放熱ローラ118fに印加した一定の検知電圧に対応して前記加圧ローラ(加圧部材)118dに流れる電流を測定する電流検知手段を有している。
【0036】
具体的には、本実施形態における電流検知手段は、前記放熱ローラ(放熱部材)118fの金属芯軸に一定の検知電圧を印加するAC電源118gを有している。また、前記放熱ローラ(放熱部材)118fが当接している前記加圧ローラ(加圧部材)118dの金属芯軸は、グランド接続されており、そのグランド回路の途中に、電流検知手段としての電流計118iが配置されている。そして、前記AC電源118gから放熱ローラ118fに印加された一定の検知電圧に対応して加圧ローラ118dには所定の電流が流されることとなるが、その加圧ローラ118dに流れる電流が、上述した電流計(電流検知手段)118iにより測定される構成になされている。
【0037】
また、前記電流検知手段としての電流計118iは、図示を省略したCPU(中央演算装置)を有するDCコントローラに接続されており、上述したようにして電流計(電流検知手段)118iで測定された電流値が、上記DCコントローラに予め閾値として設定されている規定量未満となっているときに前記放熱ローラ(放熱部材)118fの寿命が到来したものと判断し、その放熱ローラ118fの交換又は清掃を促す警告を発するように構成されている。
【0038】
このように本実施形態の寿命判断手段は、上述した放熱ローラ(放熱部材)118fの表面上に付着するトナー等の付着物の蓄積量を、前記加圧ローラ118dに流れ込む電流量の変化で判定するように構成されたものである。その判定手順が、例えば図3に示されている。すなわち、まず上述したようにして放熱ローラ118fから加圧ローラ118dに流れ込む電流a(ステップ1)が、DCコントローラ(図示省略)に設定された閾値bと比較され(ステップ2)、当該放熱ローラ118fから加圧ローラ118dに流れ込む電流aにおける前記閾値bに対する上下関係が判定される(ステップ3)。そして、上記電流aが閾値bを下回っている場合、つまり測定された電流値が規定量未満となっているときには(a<b)、前述した画像形成装置本体Aの上部に設けられた操作表示部(図示省略)に、前記放熱ローラ(放熱部材)118fの交換又は清掃を促す警告が表示される(ステップ4)。一方、放熱ローラ118fに流れ込む電流aが閾値bと同じか上回っている場合には(a≧b)、そのままコピー動作(画像形成動作)が継続される(ステップ5)。
【0039】
このような本実施形態にかかる構成において、画像印字率5%原稿にてコピー耐久枚数試験を行った結果が次の[表1]に示されている。すなわち、[表1]には、5K枚(5000枚)毎にAC1.5KVを放熱ローラ(放熱部材)118fに印加したときに前記放熱ローラ118fから加圧ローラ118dに流れ込む電流量(μA)の耐久枚数(k枚)に関する測定結果が表されている。
【表1】

【0040】
この[表1]のように、例えば初期時、つまりオフセットトナーや紙粉などのトナー等の付着物が付着していない状態にある放熱ローラ(放熱部材)118fが当接する加圧ローラ118dに流れ込む電流量は0.59μAであり、40K枚(40000枚)の耐久使用後において放熱ローラ118fから加圧ローラ118dに流れ込む電流量は0.14μAとなっている。すなわち、図4に示されているように、耐久枚数(図4の横軸;k)が進むにつれて、前記放熱ローラ118fに上述したトナー等の付着物が堆積していき、その放熱ローラ118fから加圧ローラ118dに流れ込む電流量(図4の縦軸;μA)は次第に小さくなることから、そのような傾向を利用して放熱ローラ118fの寿命検知を可能としたものが本実施形態である。
【0041】
そして、このコピー耐久試験においては、放熱の不均一化による異常画像の発生が25k枚(25000枚)から始まることが判明したことから、そのときの電流値0.309μAを本実施形態では上述した閾値bとして設定しており、放熱ローラ118fに流れる電流値が0.309μA以下になれば当該放熱ローラ118fの交換時期又は清掃時期、すなわち寿命が到来したものと判定することとしている。なお、このときの閾値bは、定着装置の構成や、トナーの材質等に基づいて任意・自由に設定することができることは当然である。
【0042】
このような構成を有する本実施形態によれば、放熱ローラ(放熱部材)118fの表面に付着したトナーの付着物の量が寿命判断手段により検知されることによって、個々のユーザー毎に異なる放熱ローラ118fの交換時期又は清掃時期、すなわち寿命が容易かつ正確に判断されることとなるため、従来のように放熱ローラ118fの交換又は清掃が早すぎたり遅すぎたりすることなく、交換又は清掃が無駄なく良好に行われるようになっている。
【0043】
一方、上述した第1の実施形態と同一の構成部材に対して同一の符号を付与した図5にかかる第2の実施形態においても、放熱ローラ(放熱部材)118fの表面に付着したトナー等の付着物の量を検知し、その付着量の検知結果に基づいて放熱ローラ118fの交換時期又は清掃時期である寿命を判断する寿命判断手段が設けられている。本実施形態にかかる寿命判断手段は、前記放熱ローラ118fから一定間隔tだけ離して配置された導体からなる接触検知部材118jを有している。そして、放熱ローラ(放熱部材)118fの表面に付着した付着物の層厚が前記一定間隔tを越えて当該付着物が前記接触検知部材118jに接触したときに、前記放熱ローラ118fの交換又は清掃を促す警告を発する構成になされている。
【0044】
本実施形態における接触検知部材118jとしては、アモルファス繊維等の除電針が用いられており、導通を確保するとともに接触による付加低減が図られた構成になされている。この接触検知部材118jは、不図示の抵抗118kを通してグランド接続されており、そのグランド回路の途中位置に電流計118iが配置されている。
【0045】
一方、放熱ローラ(放熱部材)118fの金属芯軸には、DCまたはAC電圧を印加する電源装置118mが接続されており、前記放熱ローラ118fの表面に付着したトナー等の付着物の層厚が前記一定間隔tを越えて当該付着物が前記接触検知部材118jに接触したときに、前記放熱ローラ118fの寿命が到来したものと判断して交換又は清掃を促す警告を発するように構成されている。
【0046】
すなわち、本実施形態においては、図6に示されているように、上述した放熱ローラ(放熱部材)118fの導通状態が確認された後に(ステップ11)、適宜のDCコントローラ(図示省略)によって導通状態の有無が判定される(ステップ12)。そして、前記接触検知部材118jを含むグランド回路が導通状態となっているときには(ステップ13のYes)、前述した画像形成装置本体Aの上部に設けられた操作表示部(図示省略)に交換又は清掃を促す警告が表示される(ステップ14)。また、上述した接触検知部材118jを含むグランド回路が導通状態になされない場合には(ステップ13のNo)、そのままコピー動作(画像形成動作)が継続される(ステップ15)。
【0047】
このような本実施形態にかかる構成において、画像印字率5%原稿にてコピー耐久枚数試験を行ったときの前記放熱ローラ(放熱部材)118fの外径変化に関する測定結果が、次の[表2]に示されている。
【表2】

【0048】
この[表2]にかかる耐久試験の結果によれば、図7に示されているように、耐久枚数(図7の横軸;k)が進むにつれて、放熱ローラ(放熱部材)118fにはオフセットトナーや紙粉等の付着物が堆積していき、外周の直径(図7の縦軸;mm)が次第に大きくなっていく。この傾向を利用して放熱ローラ118fの寿命検知を行うようにしたのが本実施形態である。
【0049】
そして、このコピー耐久試験においては、放熱の不均一化による異常画像の発生が25k枚(25000枚)から始まることが判明したことから、そのときの外径14.291mmを本実施形態では閾値bとして設定するとともに、上述した接触検知部材118jを放熱ローラ118fの中心位置から14.291mmの半分(=14.291/2)の位置に設置している。そして、この場合には、放熱ローラ(放熱部材)118fの外径が14.291mmより大きくなり、当該放熱ローラ118f上のトナーが前記接触検知部材118jに接触してDCコントローラにより導通が確認されたときに、表示部に交換又は清掃を促す警告が表示される構成になされている。なお、このときの閾値bも、定着装置の構成や、トナーの材質等に基づいて任意・自由に設定することができることは当然である。
【0050】
このような第2実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様な作用・効果が得られる。
【0051】
次に、上述した第1及び第2の実施形態と同一の構成部材に対して同一の符号を付与した図8及び図9に示された第3の実施形態における寿命判断手段、すなわち放熱ローラ(放熱部材)118fの表面に付着したトナー等の付着物の量を検知し、その付着量の検知結果に基づいて放熱ローラ118fの寿命を判断して交換時期又は清掃時期を表示する手段は、前記放熱ローラ118fの回転速度を検出する回転検知手段を有している。そして、その回転検知手段により検出された回転速度が規定量以上となっているときに前記放熱ローラ118fの交換又は清掃を促す警告を発するように構成されている。
【0052】
本実施形態における回転検知手段は、前記放熱ローラ(放熱部材)118fに取り付けた反射部からの反射光を受光するように構成された反射型センサーを含むように構成されている。より具体的には、放熱ローラ118fの軸方向端部の非画像域118X、すなわち前記加圧ローラ118dとの非接触部に取り付けられた反射部118nを有しているとともに、その反射部118nからの反射光を受光するように構成された反射型センサー118pを含む構成になされている。
【0053】
上記反射型センサー118pは、上述した反射部118nからの反射光を受光したときに検知信号を出力する構成になされており、その反射型センサー118pからの検知信号が、グランド回路の途中位置に配置された電流計118iにより測定され、その測定された検知信号の間隔値に基づいて、上述した放熱ローラ(放熱部材)118fの周速が回転速度として検知されるようになっている。そして、その回転検知手段としての反射型センサー118pによって検出された放熱ローラ118fの回転速度(周速)が、規定量以上となっているときに、前記放熱ローラ118fの寿命が到来したものと判断して交換又は清掃を促す警告を発するように構成されている。
【0054】
すなわち、本実施形態においては、図10に示されているように、上述した放熱ローラ118fの回転速度(周速)aが検知されると(ステップ21)、適宜のDCコントローラ(図示省略)に予め設定された回転速度(周速)の閾値bと比較される(ステップ22)。そして、その放熱ローラ118fの回転速度(周速)aの閾値bに対する上下が判定され、上記回転速度(周速)aが前記閾値bを下回っていれば(a<b)、装置本体の表示部(図示省略)に交換又は清掃を促す警告が表示される(ステップ23)。また、放熱ローラ118fの回転速度(周速)aが閾値bと同じか上回っていれば(a≧b)、そのままコピー動作(画像形成動作)が継続される(ステップ24)。
【0055】
このような本実施形態にかかる構成において、画像印字率5%原稿にてコピー耐久枚数試験を行ったときの前記放熱ローラ(放熱部材)118fの回転速度(周速)に関する測定結果が、次の[表3]に示されている。
【表3】

【0056】
この[表3]にかかる耐久試験の結果によれば、図11に示されているように、耐久枚数(図11の横軸;k)が進むにつれて、放熱ローラ(放熱部材)118fにはオフセットトナーや紙粉が堆積していき、周速(図12の縦軸;rpm)が次第に低下していく。この傾向を利用して放熱ローラ118fの寿命検知を行うようにしたのが本実施形態である。
【0057】
そして、このコピー耐久試験においては、放熱の不均一化による異常画像の発生が25k枚から始まることが判明し、そのことから、そのときの回転速度(周速)である183.175を閾値bとして設定しており、放熱ローラ118fの周速aがその閾値bより小さくなれば放熱ローラ118fの寿命、つまり交換時期又は清掃時期が到来したものと判定している。なお、このときの閾値bも、定着装置の構成や、トナーの材質等に基づいて任意・自由に設定することができることは当然である。
【0058】
このような第3実施形態においても、上述した第1及び第2の実施形態と同様な作用・効果が得られる。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることはいうまでもない。
【0060】
例えば、上述した最初の実施形態には、放熱ローラ(放熱部材)に印加した一定の検知電圧に対応して加圧ローラ(加圧部材)に流れる電流を測定する電流検知手段を有する寿命判断手段が開示されているが、それとは逆に、加圧ローラ(加圧部材)に印加した一定の検知電圧に対応して放熱ローラ(放熱部材)に流れる電流を測定する電流検知手段を有する寿命判断手段を備えたものとすることが可能である。すなわち、本発明における寿命判断手段は、放熱部材又は加圧部材の一方に印加した一定の検知電圧に対応して放熱部材又は加圧部材の他方に流れる電流を測定する電流検知手段を有することにより、その電流検知手段で測定された電流値に基づいて前記放熱部材の寿命を判断するように構成することができる。
【0061】
また、上述した各実施形態は、複写機に対して本発明を適用したものであるが、プリンタ等の画像形成装置、あるいはその他の装置に対しても本発明は同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上述べたように本発明にかかる定着装置及びそれを備えた画像形成装置は、プリンタや複写機などの多種多様な画像形成装置等に対して広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明を適用する画像形成装置の一例としての複写機における全体構成の概略を表した縦断面説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における定着装置に付設された寿命判断手段の構成を模式的に表したブロック図である。
【図3】図2に示された本発明の第1実施形態にかかる寿命判断手段の動作を表したフロー図である。
【図4】耐久枚数(横軸;k)が進むにつれて加圧部材に流れ込む電流量(縦軸;μA)が次第に小さくなることを表した線図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における定着装置に付設された寿命判断手段の構成を模式的に表したブロック図である。
【図6】図5に示された本発明の第2実施形態にかかる寿命判断手段の動作を表したフロー図である。
【図7】耐久枚数(横軸;k)が進むにつれて放熱部材の直径(縦軸;mm)が次第に大きくなることを表した線図である。
【図8】本発明の第3の実施形態における定着装置に付設された寿命判断手段の構成を模式的に表したブロック図である。
【図9】図8に示された本発明の第3実施形態における放熱部材の構成を模式的に表した外観斜視説明図である。
【図10】図8及び図9に示された本発明の第3実施形態にかかる寿命判断手段の動作を表したフロー図である。
【図11】耐久枚数(横軸;k)が進むにつれて放熱部材の周速(縦軸;rpm)が次第に小さくなることを表した線図である。
【図12】定着装置の一般的な構成を表した縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0064】
A 画像形成装置本体
B 画像読取スキャナ
C 画像形成部
D シート状記録媒体デッキ
R 画像転写部
N 定着ニップ部
112 感光ドラム
115 転写ローラ
118 定着装置
118a ヒータスティ
118b フィルムガイド
118c 定着フィルム(加熱部材)
118d 加圧ローラ(加圧部材)
118e ヒータ(加熱体)
118f 放熱ローラ(放熱部材)
118g〜118p 寿命判断手段
118g AC電源
118i 電流計(電流検知手段)
118j 接触検知部材
118k 抵抗
118m 電源装置
118n 反射部
118p 反射型センサー
118X 非画像域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部材に当接して定着ニップ部を形成する加圧部材に、熱伝導体からなる放熱部材を当接させた構成を有する定着装置において、
前記放熱部材の表面に付着した付着物を検知し、その検知結果に基づいて前記放熱部材の寿命を判断する寿命判断手段を備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記寿命判断手段は、前記放熱部材又は前記加圧部材の一方に印加した一定の検知電圧に対応して前記放熱部材又は加圧部材の他方に流れる電流を測定する電流検知手段を有し、
その電流検知手段で測定された電流値に基づいて前記放熱部材の寿命を判断するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記寿命判断手段は、前記放熱部材から一定間隔だけ離して配置された導体からなる接触検知部材を有し、
前記放熱部材の表面に付着した付着物の層厚が前記一定間隔を越えて当該付着物が前記接触検知部材に接触したときに、前記放熱部材の寿命を判断するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記寿命判断手段は、前記放熱部材の回転速度を検出する回転検知手段を有し、
その回転検知手段により検出された回転速度に基づいて前記放熱部材の寿命を判断するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記回転検知手段は、前記放熱部材に取り付けた反射部からの反射光を受光するように構成された反射型センサーを含むように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−26466(P2010−26466A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191319(P2008−191319)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】