説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】自動で定着ニップの圧力を解除又は低減させることができると共に、専用の駆動手段が不要な定着装置を提供する。
【解決手段】本定着装置は、駆動手段から回転力が伝達される切換ギヤ31と、軸方向の異なる位置に配設された2つのギヤ部32a,32bに欠歯部321,322を設けた操作ギヤ32と、操作ギヤ32と一体的に回転して、支持部材25を付勢手段27に抗して押圧する押圧状態と、支持部材25を押圧しない非押圧状態とに切換操作される圧解除部材33と、切換ギヤ31を軸方向に往復移動させて、切換ギヤ31を2つのギヤ部32a,32bの間で切り換えて噛合可能に配置する軸方向移動手段29,30とを備える。圧解除部材33が非押圧状態に配設され、一方の欠歯部321が切換ギヤ31に対向する位置に配設された状態で、圧解除部材33の回転を規制するストッパ34を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上の未定着画像を当該記録媒体に定着する定着装置、及びその定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の電子写真方式の画像形成装置には、紙等の記録媒体に画像を定着させる定着装置が設けられている。定着装置は一対の定着部材を有し、定着部材は、例えば、内部に加熱源を有する定着ローラと、定着ローラを加圧する加圧ローラによって構成される。そして、定着ローラと加圧ローラとが互いに圧接して形成された定着ニップに、記録媒体を通過させることによってトナー画像が記録媒体に定着される。
【0003】
ところが、画像形成動作が長期間行われないと、定着ローラや加圧ローラが長時間加圧されることによるクリープが発生することがある。また、定着ニップにおいて紙詰まりが発生した場合は、紙が定着ローラと加圧ローラによって所定の圧力で挟まれているため、紙の除去処理を行いにくいと言った問題がある。
【0004】
そこで、上記クリープや紙詰まり処理の問題を解決するために、定着ローラと加圧ローラとの加圧力を解除する又は低減させる手段を備えた定着装置が提案されている。例えば、特許文献1に記載の定着装置は、定着ニップの圧力を解除する圧力解除レバーを備えている。この場合、圧力外除レバーを手動で操作することによって、加圧ローラを定着ローラに対して離間させ、定着ニップの圧力を解除する。また、特許文献2に記載されているように、電動で定着ニップの圧力を解除できる圧力解除機構を備えた定着装置もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、手動でニップ圧の解除を行う構成では、圧力解除レバーの操作が煩わしかったり、レバーを操作し忘れたりする不具合がある。また、圧力解除レバーは定着装置の近くに設けられていることが多く、定着装置が加熱されることにより圧力解除レバーも熱くなる虞があるため、手動でレバーを操作するのは安全上好ましくない。
【0006】
また、近年、画像形成装置の小型化に伴って定着ローラ等の小径化することによる定着ニップのニップ幅の減少と、通紙速度の高速化に伴う紙への付与熱量の低下によって、定着性が十分に得られにくくなるため、定着性を向上させるべく、加圧ローラの加圧力を強くして定着ニップを十分に確保するようにしている。このように、加圧ローラの加圧力を強く設定した構成においては、特に圧力解除レバーの操作をし難くなる。
【0007】
これに対し、電動でニップ圧の解除を行う構成では、手動で圧力を解除する構成における上記問題を解決することができる。しかしながら、この場合は、圧力解除機構を駆動させるための専用のモータ等を設ける必要があり、装置の大型化やコスト増となる問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑み、自動で定着ニップの圧力を解除又は低減させることができると共に、専用の駆動手段が不要な定着装置、及びその定着装置を備えた画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、記録媒体上の画像を当該記録媒体に定着させる一対の定着部材と、前記定着部材に回転力を与える駆動手段と、前記定着部材を互いに接近離間可能に支持する一対の支持部材と、前記定着部材を互いに接近させる方向に前記支持部材を付勢する付勢手段とを備えた定着装置において、前記駆動手段から回転力が伝達される切換ギヤと、軸方向の異なる位置に配設された2つのギヤ部の一方に欠歯部を設けた操作ギヤと、前記操作ギヤと一体的に回転して、前記一対の支持部材の一方を前記付勢手段に抗して押圧する押圧状態と、前記支持部材を押圧しない非押圧状態とに切換操作される圧解除部材と、前記切換ギヤと前記操作ギヤを相対的に軸方向に往復移動させて、前記切換ギヤを前記2つのギヤ部の間で切り換えて噛合可能に配置する軸方向移動手段とを備え、前記欠歯部を、前記圧解除部材が前記非押圧状態に配設された状態で切換ギヤと対向する位置に配設し、 前記欠歯部が前記切換ギヤに対向する位置に配設された状態で、前記圧解除部材の回転を規制するストッパを設けたものである。
【0010】
一対の定着部材間の圧力を解除する場合は、軸方向移動手段によって、切換ギヤを操作ギヤの欠歯部を設けていないギヤ部に移動させて噛合させる。この状態で、切換ギヤが駆動手段から回転力が付与されると、操作ギヤと圧解除部材が一体的に回転する。そして、圧解除部材が支持部材の一方を付勢手段に抗して押圧することにより、一対の定着部材が互いに離間する方向に移動され、それらの間の圧力が解除される。また、圧力解除部材が支持部材を押圧する押圧状態となったとき、駆動手段の駆動を停止する。これにより、定着部材間の圧力が解除された状態で維持される。
【0011】
また、定着部材間の圧力を戻す場合は、軸方向移動手段によって、切換ギヤを操作ギヤの欠歯部を設けているギヤ部に移動させて噛合させる。この状態で、切換ギヤが駆動手段から回転力が付与されると、操作ギヤと圧解除部材が一体的に回転し、圧解除部材が上記押圧状態から支持部材を押圧しない非押圧状態へ切り換えられる。これにより、一対の定着部材が互いに接近する方向に移動し、それらの間の圧力が元に戻される。また、非押圧状態となったとき、欠歯部が切換ギヤに対向する位置に配設されることにより、切換ギヤと操作ギヤとの噛合が解除される。このため、その後、切換ギヤが回転し続けても、操作ギヤに回転力が伝達されることはない。このように、定着部材間の圧力が戻された状態(圧力解除部材の非押圧状態)では、駆動手段を駆動させて定着動作を行っても、圧解除部材は回転することがないので、定着動作時に圧力が解除されることはない。
【0012】
また、圧解除部材を非押圧状態の位置へ回転させた際、欠歯部が切換ギヤと対向した状態で、ストッパによって圧解除部材の回転を規制することができるので、欠歯部が切換ギヤとの対向位置からずれるのを防止することができる。これにより、操作ギヤと切換ギヤとが不測に噛合することがなく、非押圧状態の圧解除部材が切換ギヤから回転力を受けて押圧状態となることがないので、定着動作時に定着部材間の圧力が解除されることによる定着不良の発生を防止できる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の定着装置において、前記ストッパは、前記押圧状態から前記非押圧状態へ回転した前記圧解除部材に当接してその回転方向の移動を規制するように構成されたものである。
【0014】
圧解除部材を押圧状態から非押圧状態に戻したとき、圧解除部材にはそのときの回転方向の慣性力が作用するが、ストッパが圧解除部材に当接することにより、その慣性力に抗して圧解除部材を所定の位置に停止させることができる。これにより、操作ギヤの欠歯部が切換ギヤに対向した位置を越えて回転することがないので、不測に操作ギヤと切換ギヤとが噛合することがなく、圧解除部材が切換ギヤから回転力を受けて押圧状態となることがない。このように、ストッパによって圧解除部材を所定の位置に確実に停止させることができるので、定着動作時に定着部材間の圧力が不測に解除されることによる定着不良の発生を防止できる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の定着装置において、前記駆動手段を定着動作時の正回転及びそれと逆回転可能に構成し、前記軸方向移動手段は、前記駆動手段によって正逆回転されることにより相対的に軸方向に往復移動可能な一対のハスバギヤを有し、前記ハスバギヤの一方を前記切換ギヤと一体的に回転可能に設け、正回転時に生じる前記ハスバギヤ間の軸方向移動によって、前記切換ギヤを前記欠歯部を設けた前記ギヤ部に移動させ、逆回転時に生じる前記ハスバギヤ間の軸方向移動によって、前記切換ギヤを異なる前記ギヤ部に移動させるように構成したものである。
【0016】
定着動作時の正回転によって生じるハスバギヤ間の軸方向移動により、切換ギヤを欠歯部を設けたギヤ部に移動させ、切換ギヤと操作ギヤとの噛合を解除することができる。これにより、定着動作時に切換ギヤが正回転し続けても、操作ギヤに回転力が伝達されることはないので、定着部材間の圧力が解除されることはない。また、この場合、一対のハスバギヤによって、駆動手段から得られる回転力を軸方向の移動力に変換して付与することができるので、別途アクチュエータを設けるよりも、回転力を効果的に利用することができ、小型化及び低コスト化を図れる。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の定着装置において、前記欠歯部を設けた前記ギヤ部とは異なる前記ギヤ部に、別の欠歯部を設け、当該別の欠歯部を、前記圧解除部材が前記押圧状態に配設された状態で切換ギヤと対向する位置に配設したものである。
【0018】
この場合、圧解除部材を押圧状態としたとき、切換ギヤと対向する位置に欠歯部が配設されるので、切換ギヤと操作ギヤとの噛合が解除される。これにより、圧力解除部材が押圧状態となったときに、駆動手段の駆動を停止させなくても、操作ギヤに回転力が伝達されることはないので、圧力解除部材の押圧状態(定着部材間の圧力を解除した状態)を維持することができる。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の定着装置において、前記圧解除部材の前記支持部材を押圧する押圧面を、平面状に形成したものである。
【0020】
圧解除部材の押圧面を平面状に形成することにより、圧解除部材によって支持部材を押圧した状態で、圧解除部材は不測に回転しにくくなるので、押圧状態を安定して維持することができる。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の定着装置において、前記圧解除部材の回転中心と前記支持部材を押圧する押圧面との距離よりも、前記回転中心と前記押圧面の回転方向両側に配設した面との距離を長くなるように設定したものである。
【0022】
圧解除部材の回転中心と押圧面との距離よりも、回転中心と押圧面の回転方向両側に配設した面との距離を長く設定することにより、圧解除部材が支持部材を押圧した状態で、圧解除部材が不測に回転するのを防止又は抑制することができる。
【0023】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の定着装置において、前記圧解除部材が押圧する前記支持部材が揺動可能に構成されている場合、前記圧解除部材を、前記支持部材に対してその揺動中心から遠い側から近い側へ向かって摺動して押圧するように構成したものである。
【0024】
圧解除部材を、支持部材に対してその揺動中心から遠い側から近い側へ向かって摺動する場合は、それと反対向きに摺動する場合に比べて、小さい力で支持部材を押圧することが可能である。これにより、支持部材を押圧する際の圧解除部材や各ギヤ等にかかる負荷を軽減することができると共に、確実に圧解除を行うことができる。
【0025】
請求項8の発明は、請求項3に記載の定着装置において、前記ハスバギヤを、射出成形された樹脂で構成したものである。
【0026】
これにより、ハスバギヤを小型で安価に生産することができる。
【0027】
請求項9の発明は、請求項8に記載の定着装置において、前記樹脂を、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び、これらのアロイ樹脂等より構成したものである。
【0028】
これにより、ハスバギヤを小型で安価に生産することができる。
【0029】
請求項10の発明は、請求項1から9のいずれか1項に記載の定着装置を備えた画像形成装置である。
【0030】
画像形成装置が、請求項1から9のいずれか1項に記載の定着装置を備えているので、これらの定着装置による上記効果が得られる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、定着部材間の圧解除を自動で行うことができるので、従来のような圧解除レバーを操作する煩わしさや操作のし忘れがなく、操作性と信頼性を向上させることができる。また、熱くなる虞のある圧力解除レバーを手動で操作する必要がないため、安全性も向上する。
【0032】
また、本発明によれば、定着部材に回転力を付与するための駆動手段の駆動力を用いて、定着部材間の圧解除を行うことができる。すなわち、本発明は、1つの駆動手段の駆動力を用いて定着動作と圧解除動作を行うことが可能であるので、圧解除を行うための専用の駆動手段を備える必要がない。これにより、定着装置及び画像形成装置の小型化や低コスト化を実現することができる。
【0033】
また、本発明によれば、欠歯部が切換ギヤと対向した状態で、ストッパによって圧解除部材の回転を規制することができるので、定着動作時に定着部材間の圧力が不測に解除されることがなく、定着不良の発生を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る画像形成装置の実施の一形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る定着装置の一端部側の外観斜視図である。
【図3】前記定着装置の側面図である。
【図4】(a)は、前記定着部材に設けた圧解除部材が加圧プレートを押圧していない非押圧状態を示す図であり、(b)は、前記圧解除部材が加圧プレートを押圧している押圧状態を示す図である。
【図5】前記圧解除部材の拡大図である。
【図6】前記定着装置の一端部側の外観斜視図である。
【図7】本発明の圧解除機構の動作を説明するための図である。
【図8】前記圧解除機構の動作を説明するための図である。
【図9】前記圧解除機構の動作を説明するための図である。
【図10】前記圧解除機構の動作を説明するための図である。
【図11】前記圧解除機構の動作を説明するための図である。
【図12】本発明に他の実施形態に係る定着装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0036】
図1は、本発明に係るカラー画像形成装置の概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、画像形成装置本体100に対して着脱可能に構成された4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkを備えている。各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。
【0037】
各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkは、像担持体としての感光体ドラム2と、感光体ドラム2の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ3と、感光体ドラム2の表面にトナーを供給してトナー画像を形成(現像)する現像手段としての現像装置4と、感光体ドラム2の表面をクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニングブレード5等を一体的に有している。
【0038】
各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの上方には、感光体ドラム2の表面を露光する露光手段としての露光装置6が配設されている。また、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの下方には、転写装置7が配設されている。転写装置7は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト8を有する。中間転写ベルト8は、駆動ローラ9及び従動ローラ10に張架され、図の矢印の方向に回転(周回走行)可能に構成されている。
【0039】
4つの感光体ドラム2に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11が配設されている。各一次転写ローラ11はそれぞれの位置で中間転写ベルト8の内周面を押圧しており、中間転写ベルト8の押圧された部分と各感光体ドラム2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。また、駆動ローラ9に対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト8の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。
【0040】
また、中間転写ベルト8の図の右端側の外周面には、中間転写ベルト8の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置13が配設されている。このベルトクリーニング装置13から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、転写装置7の下方に配設された廃トナー収容器14の入口部に接続されている。
【0041】
画像形成装置本体100の下部には、記録媒体としての記録用紙Pを収容した給紙トレイ15や、給紙トレイ15から記録用紙Pを搬出する給紙ローラ16等が設けてある。一方、画像形成装置本体100の上部には、記録用紙を外部へ排出するための一対の排紙ローラ17と、排出された記録媒体をストックするための排紙トレイ18とが配設されている。
【0042】
また、画像形成装置本体100内には、下部の給紙トレイ15から上部の排紙トレイ18へ記録用紙Pを案内するための搬送路R1が形成されている。この搬送路R1において、給紙ローラ16から二次転写ローラ12に至る途中には、一対のレジストローラ19が配設されている。また、二次転写ローラ12から排紙ローラ17に至る途中に、記録用紙上の画像を定着させるための定着装置20を配設している。
【0043】
また、本実施形態の画像形成装置は、記録用紙Pの両面に画像形成を行うための機構を備える。詳しくは、画像形成装置本体内100に、記録用紙Pの表裏を反転させて送るための反転路R2が形成されている。反転路R2は、搬送路R1の搬送方向下流端部の手前で分岐すると共に、レジストローラ19の手前で搬送路R1に合流している。また、上記排紙ローラ17は、記録用紙Pを排出する回転方向と逆方向に回転することによって記録用紙Pを反転路R2にスイッチバックさせるスイッチバックローラとして機能を有している。
【0044】
以下、図1を参照して上記画像形成装置の基本的動作について説明する。
作像動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体ドラム2が図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体ドラム2の表面が帯電ローラ3によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体ドラム2の表面には、露光装置6からレーザ光がそれぞれ照射されて、それぞれの感光体ドラム2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体ドラム2に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体ドラム2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像(現像剤像)として可視像化される。
【0045】
駆動ローラ9が図の反時計回りに回転駆動されることにより、中間転写ベルト8が図の矢印で示す方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ11と各感光体ドラム2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体ドラム2に形成された各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト8はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。
【0046】
トナー画像が転写された後の各感光体ドラム2の表面に付着する残留トナーは、クリーニングブレード5によって除去され、次いで、その表面が図示していない除電装置によって除電作用を受け、その表面電位が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0047】
また、画像形成装置の下部では、給紙ローラ16が回転駆動することによって、給紙トレイ15に収容された記録用紙Pが搬送路R1に送り出される。搬送路R1に送り出された記録用紙Pは、レジストローラ19によってタイミングを計られて、二次転写ローラ12とそれに対向する駆動ローラ9との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト8上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上のトナー画像が記録用紙P上に一括して転写される。トナー画像が転写された記録用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20においてトナー画像が記録用紙P上に定着される。そして、トナー画像が定着された記録用紙Pは、排出ローラ17によって排紙トレイ18へと排出される。また、転写後の中間転写ベルト8上に残留するトナーは、ベルトクリーニング装置13によって除去され、除去されたトナーは、廃トナー収容器14へ搬送され回収される。
【0048】
また、記録用紙Pの両面に画像を形成する場合は、上述のように記録用紙Pの片面(表側の面)にトナー画像を定着した後、排紙ローラ17を記録用紙Pを排出する回転方向と逆方向に回転させ、記録用紙Pを反転路R2にスイッチバックさせる。記録用紙Pが反転路R2を通過することによって、記録用紙Pの表裏が反転されて再び搬送路R1へ案内される。そして、上記と同様にして、記録用紙Pの裏面にトナー画像を転写・定着した後、その記録用紙Pを排紙トレイ18へ排出する。
【0049】
以上の説明は、記録用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0050】
次に、本実施形態の画像形成装置に設けられている定着装置の構成及び動作について説明する。
図1に示すように、本実施形態の定着装置20は、記録用紙に画像を定着させる一対の定着部材として、定着回転体としての定着ローラ21、加圧回転体としての加圧ローラ22等を有する。ここで、定着ローラ21は、アルミニウム、鉄等の金属材料からなる円筒体(肉厚が1mm、外径が30mm)上にシリコーンゴム、フッ素ゴム、発泡性シリコーンゴム
等の弾性材料で形成され(肉厚は1mm程度)、その表層に離型層としてPFA(4フッ化
エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、PTFA(ポリテトラフルオロエチレン)が数十μmの厚みで形成されている。また、上記円筒体の内部には熱源としてのヒータ23が固設されている。ヒータ23は、ハロゲンヒータであって、その両端部が定着装置20のフレームに固定されている。そして、画像形成装置本体の電源部(交流電源)により出力制御されたヒータ23からの輻射熱によって金属材料からなる円筒体が加熱され、さらに弾性材料、離型層へと熱が伝えられ、記録媒体上のトナー画像に熱が加えられる。ヒータ23の出力制御は、定着ローラ21表面に非接触で対向するサーモパイル(不図示)によるローラ表面温度の検知結果に基づいて行われる。詳しくは、サーモパイルの検知結果に基づいて定められた通電時間だけ、ヒータ23に交流電圧が印加される。このようなヒータ23の出力制御によって、定着ローラ21の温度(定着温度)を所望の温度(目標制御温度)に調整制御することができる。また、定着ローラ21は、駆動モータ(不図示)によって回転駆動されるようになっている。
【0051】
続いて、加圧ローラ22は、金属芯金上にシリコーンゴム、フッ素ゴム、発泡性シリコーンゴム等からなる肉厚が4mmの弾性材料が形成されたものである。加圧ローラ22は外
径が35mm程度に設定されている。なお、弾性材料の表層にPFA、PTFE等からなる離
型層を設けることもできる。そして、加圧ローラ22は後述の加圧機構によって定着ローラ21に圧接する。こうして、加圧ローラ22と定着ローラ21との間に、所望のニップ(定着ニップ)が形成される。なお、本実施形態において、加圧ローラ22を直接的に加熱するヒータ等の加熱手段を設置したり、ヒータ23の出力制御にローラ表面に接触対向するサーミスタを用いたりすることも可能である。
【0052】
また、定着ローラ21と加圧ローラ22との当接部(ニップ)の入口側には、記録用紙の搬送を案内するガイド板(不図示)が配設されている。また、定着ローラ21に当接する位置であって、ニップの出口側近傍には、ニップ部から送り出された記録用紙(定着工程後の記録用紙)が定着ローラ21に巻き付く不具合を抑止する分離板(不図示)が設置されている。
【0053】
上述のように構成された定着装置20は、次のように動作する。
画像形成装置本体の電源スイッチが投入されると、交流電源からヒータ23に交流電圧が印加(給電)されるとともに、不図示の駆動モータによって定着ローラ21が回転駆動を開始されて、それと同時に加圧ローラ22が従動回転する。その後、給紙トレイ15から記録用紙Pが給送されて、二次転写ニップの位置で記録用紙P上に未定着画像が担持される。未定着画像(トナー像)が担持された記録用紙Pは、定着装置20に搬送されて、圧接状態にある定着ローラ21と加圧ローラ22のニップに送入される。そして、定着ローラ21による加熱と、定着ローラ21及び加圧ローラ22の押圧力とによって、記録用紙Pの表面にトナー画像が定着される。その後、回転する定着ローラ21及び加圧ローラ22によってそのニップから送り出された記録用紙Pは、排紙ローラ17によって排紙トレイ18に排出される。
【0054】
以下、図2〜図6に基づいて、本発明の特徴部分の構成について説明する。
図2は、定着装置20の一端部側の外観斜視図であり、図3は、その側面図である。図2及び図3に示すように、本実施形態の定着装置20は、定着ローラ21を回転可能に支持する支持部材としての定着プレート24と、加圧ローラ22を回転可能に支持する支持部材としての加圧プレート25を有する。定着プレート24と加圧プレート25は、それぞれの下部に設けた支軸26を介して連結されており、加圧プレート25はこの支軸26を中心に揺動可能に構成されている。これにより、加圧ローラ22は定着ローラ21に対して接近離間可能に構成されている。
【0055】
本実施形態では、定着プレート24が画像形成装置本体に対して固定され、加圧プレート25が揺動するように構成されているが、この構成に限定されるものではない。反対に、加圧プレート25を固定し、定着プレート24を揺動させるように構成することも可能である。また、定着プレート24と加圧プレート25の両方を揺動可能に構成してもよい。
【0056】
定着プレート24と加圧プレート25は、付勢手段としての加圧バネ27によって定着ローラ21と加圧ローラ22を互いに接近させる方向に付勢されている。ここでは、加圧バネ27として圧縮バネを用いているが、引張バネによって同様に付勢力を作用させてもよい。この加圧バネ27の付勢力によって、定着ローラ21と加圧ローラ22とが互いに圧接して定着ニップを形成する。
【0057】
また、定着装置20は、定着ローラ21と加圧ローラ22との圧接を解除する加圧解除機構を備えている。具体的には、図2又は図3に示すように、加圧解除機構は、駆動ギヤ28と、定着ギヤ29と、移動力発生ギヤ30と、切換ギヤ31と、操作ギヤ32と、圧解除部材33等によって構成されている。
【0058】
駆動ギヤ28は、定着プレート24に回転可能に設けてある。また、駆動ギヤ28は、画像形成装置本体に設けられた図示しない駆動装置(駆動手段)と連結され、駆動力が伝達されるようになっている。
【0059】
定着ギヤ29は、定着ローラ21の一端部に設けられている。また、定着ギヤ29は、駆動ギヤ28と噛合している。これにより、駆動ギヤ28からの回転力が定着ギヤ29に伝達され、定着ローラ21が回転するようになっている。
【0060】
移動力発生ギヤ30と切換ギヤ31は、同軸上でかつ軸方向に異なる位置に配設されており、それぞれ定着プレート24に回転可能に設けられている。さらに、移動力発生ギヤ30と切換ギヤ31は、定着プレート24に対して図2の矢印A及びBで示す軸方向に往復移動可能に支持されている。また、移動力発生ギヤ30は上記定着ギヤ29と噛合しており、移動力発生ギヤ30と定着ギヤ29はそれぞれハスバギヤで構成されている。ハスバギヤは、その歯列がギヤの回転方向に対して傾斜して配設されており、ギヤ間の駆動力を軸方向にも伝達することが可能なギヤである。このため、移動力発生ギヤ30と定着ギヤ29とが正回転又は逆回転することにより、これらのギヤ間に図2の矢印A又はBで示す軸方向に移動力が生じるようになっている。すなわち、本実施形態では、移動力発生ギヤ30と定着ギヤ29は、軸方向移動手段としても機能する。また、定着ギヤ29と噛合する駆動ギヤ28も、ハスバギヤとなっているが、駆動ギヤ28及び定着ギヤ29は図示しないストッパによって軸方向に移動しないように構成されている。
【0061】
本実施形態では、移動力発生ギヤ30及び切換ギヤ31を、射出成形された樹脂で一体的に構成している。これにより、小型で安価に生産することができる。その樹脂の材料としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び、これらのアロイ樹脂等を適用可能である。なお、移動力発生ギヤ30と切換ギヤ31とを別体で構成することも可能である。また、本実施形態では、移動力発生ギヤ30と切換ギヤ31におけるそれぞれの歯列の基準ピッチ円の直径を異ならせている。これにより、各ギヤ28〜32や圧解除部材33の配置の自由度が高まり、ギヤの配列の省スペース化及び定着装置20の小型化を図ることが可能となる。なお、移動力発生ギヤ30と切換ギヤ31におけるそれぞれの歯列の基準ピッチ円の直径を同一に設定しても、本発明の本質を逸脱するものではない。また、移動力発生ギヤ30と切換ギヤ31を、軸方向に連続して形成された1つのギヤにて構成することも可能である。
【0062】
操作ギヤ32は、同軸上で軸方向に異なる位置に配設された第1ギヤ部32aと第2ギヤ部32bとを有している。本実施形態では、第1ギヤ部32aと第2ギヤ部32bは、射出された樹脂によって一体的に構成されている。これにより、小型で安価に生産することが可能である。その樹脂の材料としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び、これらのアロイ樹脂等を適用可能である。なお、各ギヤ部32a,32bを別体で構成することも可能である。また、各ギヤ部32a,32bを軸方向に連続して形成された1つのギヤにて構成してもよい。各ギヤ部32a,32bの周方向の一部には、それぞれ歯列の無い欠歯部321,322が設けられている。各ギヤ部32a,32bに設けられた欠歯部321,322は、互いに周方向に異なる位置に配設されている。
【0063】
上記切換ギヤ31は、軸方向に往復移動することによって、第1ギヤ部32aと第2ギヤ部32bとの間で切り換えて噛合されるようになっている。なお、本実施形態において、移動力発生ギヤ30と定着ギヤ29の歯列(ハスバ)の傾斜を逆向きに形成すれば、回転に伴って発生する軸方向の移動力が逆向きに生じるので、第1ギヤ部32aと第2ギヤ部32bの配置を入れ換えることが可能である。また、本実施形態においては、各ギヤ部32a,32bの歯列は、切換ギヤ31と同じ平歯で構成されているが、各ギヤ部32a,32b及び切換ギヤ31をハスバで構成しても、本発明の本質を逸脱するものではない。
【0064】
圧解除部材33は、操作ギヤ32と一体的に回転可能に構成されている。本実施形態において、圧解除部材33と操作ギヤ32は、射出された樹脂によって一体的に構成されている。これにより、小型で安価に生産することが可能である。圧解除部材33を構成する樹脂材料は、上述の操作ギヤ32に用いるものを適用可能である。なお、圧解除部材33と操作ギヤ32を別体で構成してもよい。また、圧解除部材33は、操作ギヤ32が回転することによって一体的に回転し、加圧プレート25に当接して押圧するように構成されている。
【0065】
図4において、(a)は、圧解除部材33が加圧プレート25を押圧していない非押圧状態を示す図であり、(b)は、圧解除部材33が加圧プレート25を押圧している押圧状態を示す図である。
図4(a)に示す非押圧状態では、第1ギヤ部32aと第2ギヤ部32bのそれぞれの欠歯部321,322のうち、第1ギヤ部32aの欠歯部321が、切換ギヤ31に対向した位置に配設されている。これに対し、図4(b)に示す押圧状態では、第2ギヤ部32bの欠歯部322が切換ギヤ31と対向して配設されている。このように、本実施形態では、非押圧状態と押圧状態とにおいて、異なる欠歯部321,322が切換ギヤ31と対向するように構成されている。
【0066】
図5は、圧解除部材33の拡大図である。
図5に示すように、本実施形態では、圧解除部材33の上記加圧プレート25を押圧する押圧面33aは、平面状に形成されており、その押圧面33aの回転方向両側に配設した面33b,33cは、凸曲面状に形成されている。ここで、圧解除部材33の回転中心Qと各凸曲面状の面33b,33cとの距離Db,Dcは、前記回転中心Qと押圧面33aとの距離Daよりも長くなるように設定されている。ただし、圧解除部材33の形状は図5に示す形状に限定されるものではない。
【0067】
また、図3に示すように、定着装置20には、圧解除部材33の回転を規制するストッパ34が設けられている。ストッパ34は、定着プレート24から突出した棒状の部材で構成されている(図6参照)。このストッパ34が非押圧状態の圧解除部材33に当接することにより、当該圧解除部材33の図3における反時計回りの回転が規制される。また、ストッパ34と圧解除部材33とが当接している状態で、第1ギヤ部32aの欠歯部321が切換ギヤ31に対向するように、ストッパ34の配設位置が設定されている。
【0068】
本実施形態では、上記ストッパ34は圧解除部材33に当接してその回転を規制するように構成されているが、操作ギヤ32の回転を規制することによって、圧解除部材33の回転を規制することも可能である。例えば、操作ギヤ32の回転軸などに突起部を設け、ストッパ34をその突起部に当接させて操作ギヤ32の回転を規制するように構成してもよい。また、ストッパ34を圧解除部材33に対して係止・離脱可能に設け、ストッパ34によって圧解除部材33の両方向の回転を規制するように構成してもよい。
【0069】
以下、上記圧力解除機構の作用・効果について説明する。
定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力を解除する場合は、画像形成装置本体に設けた図示しない駆動装置(駆動手段)を定着動作時の回転方向(正回転)と逆回転させる。これにより、図7に示すように、駆動装置から駆動力を受けた駆動ギヤ28は図の反時計回りに回転し、定着ギヤ29、移動力発生ギヤ30及び切換ギヤ31はそれぞれ図の矢印の方向へ回転する。このとき、回転開始時の切換ギヤ31は、操作ギヤ32の第1ギヤ部32aに設けられた欠歯部321に対向しているため、切換ギヤ31の回転力は操作ギヤ32には伝達されない。このため、操作ギヤ32は、切換ギヤ31が回転を開始した時点では回転しない。
【0070】
上記のように、各ギヤが回転すると、定着ギヤ29と移動力発生ギヤ30との間には、図7の矢印Aで示す方向の軸方向力が発生する。これにより、切換ギヤ31は、第1ギヤ部32aに対向する位置から第2ギヤ部32bに対向する位置に移動し、図8に示す状態となる。また、切換ギヤ31は、第2ギヤ部32bに対向する位置まで移動したとき、その軸方向(図の矢印A方向)の移動が不図示のストッパによって止められる。
【0071】
そして、図8に示すように、切換ギヤ31と第2ギヤ部32bとが対向した状態では、第2ギヤ部32bの欠歯部322は、切換ギヤ31とは対向しない位置に配設されているので、切換ギヤ31は第2ギヤ部32bと噛合し、第2ギヤ部32bに切換ギヤ31からの回転力が伝達される。これにより、操作ギヤ32は図8の時計回りに回転する。また、操作ギヤ32が回転することにより、圧解除部材33もそれと一体的に回転する。
【0072】
上記のように、圧解除部材33が回転すると、図9に示すように、圧解除部材33は加圧プレート25の被押圧部25aに当接する。そして、圧解除部材33は加圧バネ27に抗して加圧プレート25を押圧し、加圧プレート25を定着プレート24に対して離間させる方向に移動させる。これに伴い、加圧ローラ22が定着ローラ21に対して離間する方向に移動され、定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力が解除される。その後、画像形成装置本体に設けた駆動装置の駆動を停止する。
【0073】
このように、定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力が解除されることによって、定着ローラ21及び加圧ローラ22にクリープが発生するのを抑制又は防止することができる。また、定着ニップにおいて紙詰まりが発生した場合は、定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力を解除することによって、紙の除去処理が行いやすくなる。なお、本発明で言う上記「圧解除」は、定着ローラと加圧ローラとを完全に離間させて両ローラ間に接触圧が全く作用しない状態にする場合以外に、定着ローラと加圧ローラとが接触しているがその接触圧を低減する場合を含む。
【0074】
また、図9に示すように、圧解除部材33が加圧プレート25を押圧する押圧状態となったとき、第2ギヤ部32bの欠歯部322が切換ギヤ31に対向する位置に配置されるため、第2ギヤ部32bと切換ギヤ31との噛合が解除される。これにより、上記押圧状態となった後、切換ギヤ31がしばらく回転しても操作ギヤ32が回転することがなく、圧解除部材33も回転しないため、確実に押圧状態を維持することが可能である。
【0075】
本実施形態では、上記のように、圧解除部材33の押圧面33aが平面状に形成されているので(図5参照)、圧解除部材33の押圧面33aによって加圧プレート25(被押圧部25a)を押圧した状態で、圧解除部材33は不測に回転しにくく、押圧状態が安定して維持されるようになっている。さらに、押圧面33aの両側に配設された凸曲面状の面33b,33cと回転中心Qとの距離Db,Dcが、押圧面33aと回転中心Qとの距離Daよりも長くなるように設定されているため(図5参照)、各凸曲面状の面33b,33cによって、圧解除部材33の不測な回転を防止又は抑制できるようになっている。これにより、押圧状態をより安定して維持することが可能である。
【0076】
また、本実施形態において、圧解除部材33が加圧プレート25の被押圧部25aを押圧する際、圧解除部材33は被押圧部25aに対して図9の上から下に向かって摺動するようになっている。すなわち、圧解除部材33は、被押圧部25aに対して揺動中心としての支軸26から遠い側から近い側へ向かって摺動するように構成されているので、それと反対向きに摺動する場合に比べて、小さい力で加圧プレート25を押圧して離間する方向へ移動させることが可能である。これにより、加圧プレート25を押圧する際の圧解除部材33や各ギヤ等にかかる負荷を軽減することができると共に、確実に圧解除を行うことができる。
【0077】
次に、定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力を元に戻して定着動作を行う場合について説明する。
定着動作を開始する場合は、画像形成装置本体に設けた図示しない駆動装置(駆動手段)を正回転させる。これにより、図10において、駆動ギヤ28は、図の時計回りに回転し、定着ギヤ29、移動力発生ギヤ30及び切換ギヤ31はそれぞれ図の矢印の方向に回転する。このとき、回転開始時の切換ギヤ31は、操作ギヤ32の第2ギヤ部32bに設けられた欠歯部322に対向しているため、切換ギヤ31の回転力は操作ギヤ32には伝達されない。このため、操作ギヤ32は、切換ギヤ31が回転を開始した時点では回転しない。
【0078】
上記のように、各ギヤが回転すると、定着ギヤ29と移動力発生ギヤ30との間には、図10の矢印Bで示す方向の軸方向力が発生する。これにより、切換ギヤ31は、第2ギヤ部32bに対向する位置から第1ギヤ部32aに対向する位置に移動し、図11に示す状態となる。また、切換ギヤ31の軸方向(図の矢印B方向)の移動は、切換ギヤ31が第1ギヤ部32aに対向した位置で不図示のストッパによって止められる。
【0079】
そして、図11に示すように、切換ギヤ31と第1ギヤ部32aとが対向した状態では、第1ギヤ部32aの欠歯部321は、切換ギヤ31とは対向しない位置に配設されているので、切換ギヤ31は第1ギヤ部32aと噛合し、第1ギヤ部32aに切換ギヤ31からの回転力が伝達される。これにより、操作ギヤ32は図11の反時計回りに回転し、圧解除部材33もそれと一体的に回転して、図7に示す非押圧状態に戻される。また、このとき、圧解除部材33はストッパ34に当接し、その回転が規制される(図3参照)。そして、圧解除部材33が非押圧状態に戻されると同時に、加圧ローラ22は定着ローラ21に対して接近して圧接し、各ローラ21,22間の圧力が元に戻る。その後、正回転する定着ローラ21と加圧ローラ22との間を、記録用紙が通過することによってトナー画像が記録用紙上に定着される。
【0080】
また、図7に示す非押圧状態では、第1ギヤ部32aの欠歯部321が切換ギヤ31に対向する位置に配置されるため、第1ギヤ部32aと切換ギヤ31との噛合が解除される。これにより、非押圧状態となった後、切換ギヤ31が正回転し続けても操作ギヤ32が回転することがなく、圧解除部材33も回転しないため、定着動作時に圧解除部材33によって圧力が解除されることがない。
【0081】
また、圧解除部材33を押圧状態から非押圧状態に戻したとき、圧解除部材33にはそのときの回転方向の慣性力が作用するが、ストッパ34を設けていることにより、その慣性力に抗して圧解除部材33を所定の位置に停止させることができる。これにより、第1ギヤ部32aの欠歯部321が切換ギヤ31に対向した位置を越えて回転することがないので、不測に第1ギヤ部32aと切換ギヤ31とが噛合することがなく、圧解除部材33が切換ギヤ31から回転力を受けて押圧状態となることがない。このように、ストッパ34によって圧解除部材33を所定の位置に確実に停止させることができるので、定着動作時に定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力が不測に解除されることによる定着不良の発生を防止できる。
【0082】
図12に、本発明の他の実施形態に係る定着装置の構成を示す。
図12に示す実施形態は、上記実施形態と比較すると、第2ギヤ部32bの上記欠歯部322を省略している。すなわち、第1ギヤ部32aにのみ欠歯部321を形成している。さらに、この実施形態では、ハスバギヤから成る上記移動力発生ギヤ30も省略している。その代わりに、図示しないアクチュエータによって切換ギヤ31を図の矢印A又はBで示す軸方向に往復移動可能に構成している。ただし、軸方向移動手段として一対のハスバギヤを用いる方が、別途アクチュエータを設けるよりも、駆動装置から得られる回転力を効果的に利用することができ、小型化及び低コスト化を図れるメリットがある。また、上記アクチュエータによって、切換ギヤ31ではなく、操作ギヤ32を軸方向に往復移動させるように構成することも可能である。
【0083】
図12に示す実施形態において、定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力を解除する場合は、図示しないアクチュエータによって切換ギヤ31を図の矢印Aの方向に移動させ、第2ギヤ部32bと噛合させる。そして、切換ギヤ31から第2ギヤ部32bに回転力が伝達されることにより、圧解除部材33が回転し加圧プレート25を押圧して定着ニップ圧が解除される。このとき、本実施形態では、圧解除部材33が加圧プレート25を押圧した状態で駆動装置の逆回転を停止させる必要がある。
【0084】
また、定着ローラ21と加圧ローラ22との間の圧力を戻す場合は、上記アクチュエータによって切換ギヤ31を図の矢印Bの方向に移動させ、第1ギヤ部32aと噛合させる。そして、切換ギヤ31から第1ギヤ部32aに回転力が伝達されることにより、圧解除部材33が回転し加圧プレート25を押圧しない状態に戻され、定着ニップ圧が元に戻る。この場合は、上述の実施形態と同様に、第1ギヤ部32aの欠歯部321が切換ギヤ31に対向する位置に配置されるため、切換ギヤ31が正回転し続けても圧解除部材33が回転することがなく、定着動作時に圧力が解除されることはない。なお、図12に示す実施形態において、上記説明した構成以外は、図2等に示す上述の実施形態と同様に構成されているので説明を省略する。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上述の実施形態では、定着ローラ21を主たる駆動ローラ、加圧ローラ22を従動ローラとして機能させているが、加圧ローラ22を主たる駆動ローラ、定着ローラ21を従動ローラとして機能させることも可能である。また、定着ローラ21又は加圧ローラ22の代わりに、無端状のベルト等で構成された定着部材を適用することも可能である。また、本発明の定着装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等に搭載することも可能である。
【0086】
以上説明したように、本発明によれば、定着ニップの圧解除を自動で行うことができるので、従来のような圧解除レバーを操作する煩わしさや操作のし忘れがなく、操作性と信頼性を向上させることができる。また、熱くなる虞のある圧力解除レバーを手動で操作する必要がないため、安全性も向上する。
【0087】
また、本発明によれば、定着部材に回転力を与えるための駆動手段(駆動装置)の駆動力を用いて、定着ニップの圧解除を行うことができる。すなわち、本発明は、1つの駆動手段の駆動力を用いて定着動作と圧解除動作を行うことが可能であるので、圧解除を行うための専用の駆動手段を備える必要がない。これにより、定着装置及び画像形成装置の小型化や低コスト化を実現することが可能となる。
【0088】
また、本発明によれば、圧解除部材を非押圧位置へ回転させた際、ストッパによって圧解除部材の回転を規制することができるので、定着動作時に定着ローラと加圧ローラとの間の圧力が不測に解除されることがなく、定着不良の発生を防止することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
20 定着装置
21 定着ローラ(定着部材)
22 加圧ローラ(定着部材)
24 定着プレート(支持部材)
25 加圧プレート(支持部材)
26 支軸
27 加圧バネ(付勢手段)
31 切換ギヤ
32 操作ギヤ
32a 第1ギヤ部
32b 第2ギヤ部
33 圧解除部材
33a 押圧面
34 ストッパ
321 欠歯部
322 欠歯部
Da,Db,Dc 回転中心との距離
Q 回転中心
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【特許文献1】特開2009−122243号公報
【特許文献2】特開2009−139682号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上の画像を当該記録媒体に定着させる一対の定着部材と、前記定着部材に回転力を与える駆動手段と、前記定着部材を互いに接近離間可能に支持する一対の支持部材と、前記定着部材を互いに接近させる方向に前記支持部材を付勢する付勢手段とを備えた定着装置において、
前記駆動手段から回転力が伝達される切換ギヤと、
軸方向の異なる位置に配設された2つのギヤ部の一方に欠歯部を設けた操作ギヤと、
前記操作ギヤと一体的に回転して、前記一対の支持部材の一方を前記付勢手段に抗して押圧する押圧状態と、前記支持部材を押圧しない非押圧状態とに切換操作される圧解除部材と、
前記切換ギヤと前記操作ギヤを相対的に軸方向に往復移動させて、前記切換ギヤを前記2つのギヤ部の間で切り換えて噛合可能に配置する軸方向移動手段とを備え、
前記欠歯部を、前記圧解除部材が前記非押圧状態に配設された状態で切換ギヤと対向する位置に配設し、
前記欠歯部が前記切換ギヤに対向する位置に配設された状態で、前記圧解除部材の回転を規制するストッパを設けたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ストッパは、前記押圧状態から前記非押圧状態へ回転した前記圧解除部材に当接してその回転方向の移動を規制するように構成された請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記駆動手段を定着動作時の正回転及びそれと逆回転可能に構成し、
前記軸方向移動手段は、前記駆動手段によって正逆回転されることにより相対的に軸方向に往復移動可能な一対のハスバギヤを有し、
前記ハスバギヤの一方を前記切換ギヤと一体的に回転可能に設け、
正回転時に生じる前記ハスバギヤ間の軸方向移動によって、前記切換ギヤを前記欠歯部を設けた前記ギヤ部に移動させ、逆回転時に生じる前記ハスバギヤ間の軸方向移動によって、前記切換ギヤを異なる前記ギヤ部に移動させるように構成した請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記欠歯部を設けた前記ギヤ部とは異なる前記ギヤ部に、別の欠歯部を設け、当該別の欠歯部を、前記圧解除部材が前記押圧状態に配設された状態で切換ギヤと対向する位置に配設した請求項1から3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記圧解除部材の前記支持部材を押圧する押圧面を、平面状に形成した請求項1から4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記圧解除部材の回転中心と前記支持部材を押圧する押圧面との距離よりも、前記回転中心と前記押圧面の回転方向両側に配設した面との距離を長くなるように設定した請求項1から5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記圧解除部材が押圧する前記支持部材が揺動可能に構成されている場合、前記圧解除部材を、前記支持部材に対してその揺動中心から遠い側から近い側へ向かって摺動して押圧するように構成した請求項1から6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記ハスバギヤを、射出成形された樹脂で構成した請求項3に記載の定着装置。
【請求項9】
前記樹脂を、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び、これらのアロイ樹脂等より構成した請求項8に記載の定着装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−149990(P2011−149990A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8949(P2010−8949)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】