説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】操作者自らが安全に画像形成装置における着脱作業を行うことが可能な定着装置及び該定着装置を備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置本体に着脱可能な定着装置100であって、当該定着装置100を持つための取っ手部101を当該定着装置100に着脱可能に有し、取っ手部101は、当該定着装置100を画像形成装置本体の外で取り扱うときに取り付けられ、当該定着装置100を画像形成装置本体に装着するときに取り外されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び該定着装置を備える画像形成装置に関し、詳しくは搬送するシート上のトナーを加熱して定着する定着装置及び電子写真方式を用いて形成するトナー画像をシート上に転写した後に定着して画像を形成する複写機、プリンタ、ファクシミリ装置あるいはこれらの複合機等の前記定着装置を備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像形成装置では、定着装置における紙詰まり対応や部品交換等のメンテナンス作業を容易にするために、定着装置をユニット化して画像形成装置本体への着脱が容易な構造が採用されている(例えば、引用文献1〜3参照。)。
【0003】
また、定着装置には、図1に示すように、取っ手支持軸91sを回転中心とする取っ手91が内蔵されており、この取っ手91を立てた状態で使用して画像形成装置本体から外部に取り外された定着装置90をメンテナンス作業の場所まで持ち運んだり、メンテナンス作業が終了した定着装置90を画像形成装置本体に装着するために該画像形成装置本体のそばに持ち運んだりすることが行われている。また、定着装置90を画像形成装置本体に装着する際には、取っ手91は定着装置90の筐体90cに設けられた凹部に収納された状態で、定着装置90とともに画像形成装置本体内に組み込まれる。
【0004】
ここで、この状態で画像形成装置が稼動すると、定着装置90の熱源(不図示)の発熱により定着装置90の筐体温度はおのずと上昇し、これに伴って取っ手91の温度も上昇してしまった。また、複写機、プリンタ等による電子写真電子写真方式の画像形成装置では高生産性を達成するため、熱量を多くかけて対応するようになってきているため、取っ手91の温度はとくに上昇していた。そのため、画像形成装置の使用直後に定着装置90を画像形成装置本体から取り外そうとしても、取っ手91が高温のため素手で扱うことができなかった。このとき、取っ手91の温度上昇の防止を目的として、取っ手91等に断熱シート等を貼って対応する方法もあるが、素手で持てる温度以下にするには、多くの断熱材を必要とするため現実的ではなかった。また、定着装置90の熱源からの温度が伝わらないように取っ手91と熱源の距離を長くとる方法もあるが、広い空間を必要とするため好ましいものではなかった。
【0005】
また、手袋を付けて直接手に伝わる熱を低減させて取っ手91をもつようにしたり、取っ手91を自然放熱するまで待つなどの方法もあるが、十分に安全性を確保することが難しく、専門の保守作業者以外の者には画像形成装置における定着装置の着脱作業を行わせないようにしてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、保守作業者のみに定着装置の着脱作業を行わせるのでは、保守作業者への連絡等の作業以外の時間も要するため、着脱作業終了までに多くの時間が掛かり、引いては画像形成装置のダウンタイムが増大してしまうという問題があった。また昨今、電子写真印刷用途の画像形成装置においては、高生産性に関わるダウンタイムの短縮が以前にも増して求められてきており、操作者自ら定着装置の交換ができるような対応が求められてきている。
【0007】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、操作者自らが安全に着脱作業を行うことが可能な定着装置及び該定着装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。なお、カッコ内に本発明を実施するための形態において対応する部位及び符号等を示す。
〔1〕 画像形成装置(画像形成装置200)本体に着脱可能な定着装置であって、当該定着装置を持つための取っ手部(取っ手部101)を当該定着装置に着脱可能に有し、前記取っ手部は、当該定着装置を画像形成装置本体の外で取り扱うときに取り付けられ、当該定着装置を画像形成装置本体に装着するときに取り外されるものであることを特徴とする定着装置(定着装置100、図4〜図8)。
〔2〕 前記取っ手部は、該取っ手部を当該定着装置に取り付けたままでは、当該定着装置の画像形成装置本体への装着を阻害する突起部(突起部105)を有することを特徴とする前記〔1〕に記載の定着装置(図8)。
〔3〕 前記取っ手部(取っ手部101)は、人の手で把持可能な長さを有するハンドル部材(ハンドル部材101a)と、前記ハンドル部材の長手方向両端それぞれに設けられる2つのアーム部材(アーム部材101b)と、前記2つのアーム部材それぞれに設けられる2つのピン部材(ピン部材102,103)と、を有し、当該定着装置の筐体(筐体100c)に、前記2つのピン部材をそれぞれ挿抜可能な2つの支持穴(支持穴111,112)が設けられていることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の定着装置(図4,図5)。
〔4〕 前記2つのピン部材は、前記2つのアーム部材それぞれに先端を前記ハンドル部材の長手方向と平行かつ同一方向に突出して設けられており、前記取っ手部を前記ハンドル部材の長手方向へスライドさせて、前記2つの支持穴に前記2つのピン部材を挿入することにより、前記取っ手部を当該定着装置に取り付けて前記ハンドル部材を持つことによる当該定着装置の持ち運びを可能とし、前記取っ手部を前記ハンドル部材の長手方向へスライドさせて、前記2つの支持穴から前記2つのピン部材を抜き取ることにより、前記取っ手部を当該定着装置から取り外し可能とすることを特徴とする前記〔3〕に記載の定着装置(図4〜図7)。
〔5〕 前記2つのピン部材のうち、少なくとも一方のピン部材(ピン部材102)の先端部分(頭頂部102a)は、その断面が非円形であって対応する支持穴(支持穴111)の穴形状と一致する抜け止め構造を有することを特徴とする前記〔3〕または〔4〕に記載の定着装置(図4,図7)。
〔6〕 前記2つの支持穴は、当該定着装置の重心位置の鉛直上方に設けられていることを特徴とする前記〔3〕〜〔5〕のいずれかに記載の定着装置。
〔7〕 当該定着装置の筐体は、前記取っ手部の少なくともハンドル部材と一方のアーム部材と該一方のアーム部材に設けられたピン部材を収納可能な凹部(凹部110)を有することを特徴とする前記〔3〕〜〔6〕のいずれかに記載の定着装置(図4)。
〔8〕 前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の定着装置(定着装置100)を用いることを特徴とする画像形成装置(画像形成装置200、図2)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の定着装置によれば、装置の使用直後であっても、予め取り外され冷えた状態にある取っ手部が定着装置に取り付けられるので、定着装置の着脱作業を安全に行うことができる。
本発明の画像形成装置によれば、本発明の定着装置を用いるので、作業者を限定することなく定着装置の着脱作業を行うことができ、高生産性を達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来の定着装置における取っ手の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明に係る定着装置の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の定着装置における筐体及び取っ手部の構成(1)を示す斜視図である。
【図5】図4の取っ手部の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の定着装置における筐体及び取っ手部の構成(2)を示す斜視図である。
【図7】本発明の定着装置における筐体及び取っ手部の構成(3)を示す斜視図である。
【図8】本発明の定着装置を画像形成装置本体に装着するときの様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る定着装置及び画像形成装置の構成について説明する。
図2に、本発明に係る画像形成装置であるタンデム型のカラー複写機の構成を示す。
カラー複写機(画像形成装置)200は、装置本体中央部に位置する画像形成部200Aと、該画像形成部200Aの下方に位置する給紙部200Bと、画像形成部200Aの上方に位置する図示しない画像読取部を有する高速機であり、画像形成部200Aに本発明の定着装置100を組み込んでいる。
【0012】
画像形成部200Aには、水平方向に延びる転写面を有する転写ベルト210が配置されており、該転写ベルト210の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)による像を担持可能な像担持体としての感光体205Y、205M、205C、205Kが転写ベルト210の転写面に沿って並置されている。
【0013】
各感光体205Y、205M、205C、205Kはそれぞれ同じ方向(反時計回り方向)に回転可能なドラムで構成されており、その周りには、回転過程において画像形成処理を実行する光書込み装置201、帯電装置202Y,202M,202C,202K、現像装置203Y,203M,203C,203K、1次転写装置204Y,204M,204C,204K及びクリーニング装置が配置されている。また、各現像装置203Y,203M,203C,203Kには、それぞれのカラートナーが収容されている。
【0014】
転写ベルト210は、駆動ローラと従動ローラに掛け回されて感光体205Y、205M、205C、205Kとの対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。また、従動ローラの1つであるローラ211に対向する位置に転写ローラ212が設けられている。また、転写ローラ212から定着装置100までの記録媒体Pの搬送経路は横パスとなっている。
【0015】
なお、定着装置100に付帯して、定着装置100で使用された記録媒体Pの離型性改善のためのオイルを回収するオイルタンク251、オイルタンク251内のオイルを再度定着装置100に供給するオイルポンプ252などのオイル循環機構を備えている。
【0016】
給紙部200Bは、記録媒体としての記録媒体Pを積載収容する給紙トレイ220と、該給紙トレイ220内の記録媒体Pを最上のものから順に1枚ずつ分離して、転写ローラ212の位置まで搬送する搬送機構を有している。
【0017】
本発明の画像形成装置200における画像形成に当たっては、感光体205Yの表面が帯電装置202Yにより一様に帯電され、光書込み装置201により画像読取部からの画像情報に基づいて感光体205Y上に静電潜像が形成される。該静電潜像はイエローのトナーを収容した現像装置203Yによりトナー像として可視像化され、該トナー像は所定のバイアスが印加される1次転写装置204Yにより転写ベルト210上に1次転写される。他の感光体205M、205C、205Kでもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像が転写ベルト210上に静電気力で順に転写されて重ね合わせられる。
【0018】
つぎに、感光体205Y、205M、205C、205Kから転写ベルト210上に1次転写されたトナー像Tは、ローラ211、転写ローラ212により搬送されてきた記録媒体Pに転写される。トナー像Tが転写された記録媒体Pは、さらに定着装置100まで搬送され、定着装置100内の定着ベルト12と加圧ローラ13との定着ニップ部Nにて定着が行なわれた後に定着ニップ部Nの出側に排出される。
ついで、定着ニップ部Nから排出された記録媒体Pは排出経路に沿ってスタッカ215へ送り出される。
【0019】
つぎに、本発明に係る定着装置について説明する。
図3は、本発明に係る定着装置の内部構成を示す断面概略図である。
図3に示すように、本発明に係る定着装置100は、筐体100cの内部に、定着ローラ11及び加熱ローラ14に一定のテンションで架け渡された定着部材(定着ベルト12)と、該定着部材(定着ベルト12)に対して下側で回動可能に圧接し定着ニップ部Nを形成する加圧部材(加圧ローラ13)と、前記定着ニップ部Nのシート排出側であって先端が定着部材(定着ベルト12)に近接して配置され該定着部材(定着ベルト12)への記録媒体Pの巻き付きを防止する分離爪16aと、前記定着ニップ部Nのシート排出側であって先端が加圧部材(加圧ローラ13)に当接して配置され該加圧部材(加圧ローラ13)への記録媒体Pの巻き付きを防止する分離爪16bと、クリーニングウェブを押し付けて定着ベルト12のクリーニングを行うクリーニング機構17と、を備える。
【0020】
ここで、定着ベルト12は、無端ベルトであり、断面構造としては、例えばニッケル、ステンレス、ポリイミドなどの基材にシリコーンゴム層などの弾性層を形成した2層構造となっている。また、定着ローラ11は、金属の芯金にシリコーンゴムを有したものである。ウォームアップ時間短縮のため、定着ベルト12の熱を吸収しにくいように、発泡のシリコーンゴムを用いることもある。また、加熱ローラ14は、アルミ又は鉄の中空ローラで内部にハロゲンヒータなどのヒータ14hからなる熱源を有している。熱源は誘導加熱機構(IH)でもよい。また、加熱ローラ14の中空ローラの肉厚部分には複数の中空のパイプがその長手方向が加熱ローラ14の幅方向とされ、加熱ローラ14の円周方向に均等に埋め込まれたヒートパイプ14aを有する。ヒートパイプ14aにより、ヒータ14hからローラ表面への熱伝達が改善され、定着ベルト12が速く均一に加熱されるようになる。
【0021】
また、定着ローラ11、加熱ローラ14は、いずれもローラ径が50mmφ以上、例えば80mmφであり、ローラ長(幅)が300mmL以上、例えば400mmLである。いずれも金属ローラであるため、2つのローラ合計で数〜十数kg、例えば10kg程度の重量となる。
【0022】
定着装置100の駆動の際には、例えば加圧ローラ13が外部から入力される駆動力によって駆動されて図中反時計回り方向に回転する。これに伴って、定着ローラ11が図中時計回り方向につれ回りされる結果、定着ベルト12がテンションローラ15の押圧により適切なテンションが付与された状態で記録媒体Pを排出する方向(図3では時計回り方向)に回転する。また、定着の際には、定着ベルト12は、加熱ローラ14内部に配置されたヒータ14hの発熱によりサーミスタ(不図示)で検出される温度が所定の温度(例えばトナー定着に適する温度)まで加熱される。なお、本発明では、定着部材として、図3に示す定着ベルト12(無端ベルト)の形態を示したが、これに限定されるものではなく、中空円筒形状のローラ(定着ローラ)としてもよい。
【0023】
加圧ローラ13は、通常はアルミ又は鉄等の芯金の上にシリコーンゴム等の弾性層が設けられた円筒形状のローラである。定着の際など必要なときに、加圧ローラ13は、内部に配置されたヒータ13hの発熱により所定の温度まで加熱される。
【0024】
また、本発明では、加圧部材として、図3に示す加圧ローラ13(ローラタイプ)の形態を示したが、これに限定されるものではなく、2つのローラに架け渡された無端ベルト状の加圧部材(ベルトタイプ)としてもよい。
【0025】
また、定着装置100では、定着ベルト12、加圧ローラ13が回転駆動された状態で、定着ベルト12の表面は所定の温度まで加熱されており、定着ニップ部Nに未定着のトナー像Tが形成された記録媒体Pが通され(図3中、右側から左側方向への通紙)、定着ニップ部Nにおける加圧及び加熱により未定着トナーを記録媒体P上に熱融着させて定着を行う。
【0026】
図3において、トナー定着された記録媒体Pは定着ニップ部Nから排出されるが、このとき記録媒体Pが定着ベルト12あるいは加圧ローラ13に巻き付いたまま出てくることがある。その対策として、定着ベルト12にオイルを塗布して離型性を改善するオイル塗布装置21と、加圧ローラ13にオイルを塗布して離型性を改善するオイル塗布装置22を備える。なお、ここで使用されるオイルは、耐熱性かつ不揮発性のオイルが好ましく、例えばシリコーンオイルが挙げられる。また、分離爪16a,16bの先端が記録媒体Pの先頭端部に当接することにより、該記録媒体Pを定着ベルト12あるいは加圧ローラ13から分離させるようになっている。定着ニップ部Nから排出された記録媒体Pは、所定の排出経路を通過して定着装置100から送り出される。
【0027】
ここで、本発明の根幹を成す部分の構成について図4〜図8を用いて説明する。
図4は、定着装置100における筐体及び取っ手部の構成(1)を示す斜視図である。
定着装置100は、図4に示すように、画像形成装置200の本体に着脱可能な定着装置であって、当該定着装置100を持つための取っ手部101を当該定着装置100の筐体101cの上部に着脱可能に有する。
【0028】
ここで、取っ手部101は、定着装置100をメンテナンス作業等で画像形成装置200本体の外で取り扱うときに取り付けられ、定着装置100を画像形成装置200本体に装着するときに取り外されるものである。
【0029】
なお、画像形成装置200は、装置外に延伸可能なガイドレールを有しており、このガイドレールを利用することにより、定着装置100を画像形成装置200本体内部の適正な位置に案内したり、画像形成装置200の外に取り出したりすることを可能にしている。すなわち、定着装置100を画像形成装置200に装着するときは、まず定着装置100に取り付けられた取っ手部101を持って定着装置100を運んで画像形成装置200の外部まで延伸されたガイドレール上に配置し、取っ手部101を取り外した後に、定着装置100をガイドレール上を移動させて画像形成装置200に装着することを行う。このとき、定着装置100に取っ手部101が取り付けられていなくても、定着装置100は画像形成装置200において定着装置として正常に機能する。
また、定着装置100を画像形成装置200から取り出すときは、まず取っ手部101のついていない定着装置100をガイドレールを利用して画像形成装置200の外部まで移動させ、定着装置100に取っ手部101を取り付けた後に、取っ手部101を持って定着装置100をメンテナンス作業等を行う場所まで持ち運ぶことを行う。
【0030】
図5に、取っ手部101の構成例を示す。
取っ手部101は、図5に示すように、人の手で把持可能な長さを有するハンドル部材101aと、ハンドル部材101aの長手方向両端それぞれに設けられる2つのアーム部材101bと、2つのアーム部材101bそれぞれのハンドル部材101aとは反対側の端部に設けられる2つのピン部材102,103と、を有している。また、2つのピン部材102,103は、2つのアーム部材101bそれぞれにその先端をハンドル部材101aの長手方向と平行かつ同一方向に突出して設けられている。
【0031】
また、ハンドル部材101aは、その長手方向中央部にアーム部材101bの延伸方向とは逆方向に突起するキー部材104を有する。なお、キー部材104は取っ手部101を起こすための操作部材も兼ねている。
【0032】
一方、定着装置100における筐体100cも取っ手部101に対応した構造を有する。すなわち、図4に示すように、筐体100c上部における壁面に、2つのピン部材102,103をそれぞれ挿抜可能な2つの支持穴111,112を有する。このとき、支持穴111はピン部材102の挿抜が可能であり、支持穴112はピン部材103の挿抜が可能である。また、ピン部材102,103は、支持穴111,112に同時に挿入され、支持穴111,112から同時に抜き取られる。
【0033】
また、2つのピン部材102,103を2つの支持穴111,112に挿入すると、取っ手部101は筐体100cに取り付けられた状態になり、人がハンドル部材101aを持って定着装置100を持ち上げたり、運んだりすることが可能となる。したがって、支持穴111,112及びピン部材102,103は、定着装置100の持ち運びに対応した強度を有する。
【0034】
また、2つのピン部材102,103を2つの支持穴111,112から抜き取ると、取っ手部101を筐体100cから外された状態になり、取っ手部101を定着装置100から取り外すことが可能となる。
【0035】
また、筐体100cは、その上面部分に、取っ手部101の少なくともハンドル部材101aと一方のアーム部材101bと該一方のアーム部材101bに設けられたピン部材102を収納可能な凹部110を有する。また、凹部110は、キー部材104がちょうど収納される程度の大きさの窪みである第1のキー溝113とキー部材104よりも大きな窪みである第2のキー溝114を有する。なお、第1のキー溝113と第2のキー溝114は収納されたキー部材104がスライドして移動可能に内部でつながっている。
【0036】
(取っ手部101の取り付け)
取っ手部101の定着装置100への取り付け手順は次のとおりである。
(S11) キー部材104を第1のキー溝113の位置に合わせて、取っ手部101を筐体100cの凹部110に収納する(図4)。このとき、凹部110には、ハンドル部材101a,一方のアーム部材101bとともに、ピン部材102が支持穴111に挿入されていない状態で収納される。
(S12) 取っ手部101をハンドル部材101aの長手方向(図4におけるA方向)へスライドさせて、2つの支持穴111,112に2つのピン部材102,103を挿入する(図6)。このとき、キー部材104もスライド移動して第2のキー溝114から見える状態となる。
(S13) 第2のキー溝114にあるキー部材104をつまんで持ち上げると、取っ手部101はピン部材102,103(すなわち支持穴111,112)を回転軸として90度回転し、ハンドル部材101aが筐体100cの上方となるように、取っ手部101は起き上がる(図7)。作業者は、この状態のハンドル部材101aを持つことによる定着装置100を持ち上げたり、運んだりすることが可能となる。
【0037】
なお、ピン部材102の先端部分に当る頭頂部102aは、その断面が非円形であって対応する支持穴111の穴形状と一致する抜け止め構造を有することが好適である。例えば、ピン部材102は、図5に示すように、軸部分よりも径が大きく、断面形状として円の一部が削られたD形の頭頂部102aを有する。また、支持穴111は、図4に示すように、取っ手部101が凹部110に収納された状態(ステップS11の状態)のときのピン部材102の頭頂部102aの断面形状に対応したD形の穴形状を有するものとする。これにより、ステップS12で取っ手部101をスライド移動させると、ピン部材102の頭頂部102aは支持穴111の穴形状と一致するため(形状の位相が合うため)、支持穴111を通り抜けるようになる。つぎに、ステップS13で取っ手部101が起き上がると、ピン部材102の頭頂部102aは回転するため、その状態のまま取っ手部101をスライド移動させても頭頂部102aの断面形状は支持穴111の穴形状と一致せず頭頂部102aは支持穴111を通り抜けない抜け止めの状態となる。したがって、取っ手部101が外れることがなくなるので、作業者はハンドル部材101aを持って定着装置100を安全に持ち運ぶことができる。
【0038】
また、2つの支持穴111,112は、定着装置100の重心位置の鉛直上方に設けられているとよい。これにより、作業者は定着装置100の重量バランスのよい状態で、ハンドル部材101aを持つことができ、定着装置100を安全に持ち運ぶことが可能となる。
【0039】
(取っ手部101の取り外し)
取っ手部101の定着装置100からの取り外し手順は前述した取り付け手順の逆であり、次のとおりである。
(S21) 図7の取っ手部101が起き上がった状態において、ハンドル部材101aをもってピン部材102,103(すなわち支持穴111,112)を回転軸として前記ステップS13のときとは逆方向に取っ手部101を90度回転させ、ハンドル部材101a、アーム部材101bを凹部110に収納する(図6)。このとき、キー部材104は第2のキー溝114に収納される。
(S22) 図6の取っ手部101をハンドル部材101aの長手方向(図6におけるB方向)へスライドさせて、2つの支持穴111,112から2つのピン部材102,103を抜き取る。このとき、ピン部材102の頭頂部102aと支持穴111の形状の位相は一致しているため、頭頂部102aは支持穴111を通過する。
(S23) キー部材104が第1のキー溝113にある状態は、2つのピン部材102,103が2つの支持穴111,112から完全に抜けた状態であり(図4)、取っ手部101を筐体100cから取り外すことが可能となる。
【0040】
なお、取っ手部101は、該取っ手部101を定着装置100に取り付けたままでは、定着装置100の画像形成装置200本体への装着を阻害する突起部を有するとよい。例えば、図5に示すように、画像形成装置200本体へ定着装置100を装着しようとした場合に、その先頭側となるアーム部材101b(ピン部材103が設けられたアーム部材101b)に突起部105を設けている。これにより、図8に示すように、定着装置100に取っ手部101(点線で表示)を取り付けたままでは、取っ手部101を筐体100cの凹部110に収納した状態としても、突起部105が筐体100cの上面レベルよりも上に突起するようになり、定着装置100をC方向に移動して画像形成装置200の筐体200cの開口部200aから挿入しようとすると、突起部105が筐体200cに接触して定着装置100の挿入を阻害するようになる。そして、定着装置100から取っ手部101を取り外した状態(図8において点線で示す取っ手部101がない状態)とすることにより、はじめて定着装置100を筐体200cの開口部200aから挿入することができ画像形成装置200への装着が可能となる。
【0041】
このように、取っ手部101に突起部105を設けることにより、取っ手部101の取り外し忘れの防止を図ることができる。あるいは、取っ手部101を定着装置100に取り付けたままでも画像形成装置200への装着が可能であるが、突起部105が所定のスイッチ部材に接触して画像形成装置200が稼動できないようにしてもよい。
【0042】
以上のように、取っ手部101が定着装置100から取り外し可能となっていることから、定着装置100を画像形成装置200本体に装着するときに取っ手部101を取り外しておくことにより、定着装置100の熱影響による取っ手部101の温度上昇を回避することができる。したがって、定着装置100をメンテナンス作業等で画像形成装置200本体の外で取り扱うときに該定着装置100に常温の取っ手部101を取り付けることにより、操作者が作業者としてこの取っ手部101を持つことにより画像形成装置200稼動直後等の高温状態にある定着装置100を持ち運ぶことが可能になり、作業者を限定することなく定着装置100の着脱作業を安全に行うことができ、画像形成装置200のダウンタイムの短縮を図り高生産性を実現できる。
【0043】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
11 定着ローラ
12 定着ベルト
13 加圧ローラ
13h,14h ヒータ
14 加熱ローラ
14a ヒートパイプ
15 テンションローラ
16a,16b 分離爪
17 クリーニング機構
21,22 オイル塗布装置
90,100 定着装置
90c,100c 筐体
91 取っ手
91s 取っ手支持軸
101 取っ手部
101a ハンドル部材
101b アーム部材
102,103 ピン部材
102a 頭頂部
104 キー部材
105 突起部
110 凹部
111,112 支持穴
113 第1のキー溝
114 第2のキー溝
200 画像形成装置
200A 画像形成部
200B 給紙部
200a 開口部
200c 筐体
201 光書込み装置
202Y,202C,202M,202K 帯電装置
203Y,203M,203C,203K 現像装置
204Y,204M,204C,204K 1次転写装置
205Y,205C,205M,205K 感光体
210 転写ベルト
211 従動ローラ
212 転写ローラ
215 スタッカ
220 給紙トレイ
251 オイルタンク
252 オイルポンプ
P 記録媒体
T トナー像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開2001−100576号公報
【特許文献2】特開2006−003714号公報
【特許文献3】特開2006−162997号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置本体に着脱可能な定着装置であって、
当該定着装置を持つための取っ手部を当該定着装置に着脱可能に有し、
前記取っ手部は、当該定着装置を画像形成装置本体の外で取り扱うときに取り付けられ、当該定着装置を画像形成装置本体に装着するときに取り外されるものであることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記取っ手部は、該取っ手部を当該定着装置に取り付けたままでは、当該定着装置の画像形成装置本体への装着を阻害する突起部を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記取っ手部は、人の手で把持可能な長さを有するハンドル部材と、前記ハンドル部材の長手方向両端それぞれに設けられる2つのアーム部材と、前記2つのアーム部材それぞれに設けられる2つのピン部材と、を有し、
当該定着装置の筐体に、前記2つのピン部材をそれぞれ挿抜可能な2つの支持穴が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記2つのピン部材は、前記2つのアーム部材それぞれに先端を前記ハンドル部材の長手方向と平行かつ同一方向に突出して設けられており、
前記取っ手部を前記ハンドル部材の長手方向へスライドさせて、前記2つの支持穴に前記2つのピン部材を挿入することにより、前記取っ手部を当該定着装置に取り付けて前記ハンドル部材を持つことによる当該定着装置の持ち運びを可能とし、
前記取っ手部を前記ハンドル部材の長手方向へスライドさせて、前記2つの支持穴から前記2つのピン部材を抜き取ることにより、前記取っ手部を当該定着装置から取り外し可能とすることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記2つのピン部材のうち、少なくとも一方のピン部材の先端部分は、その断面が非円形であって対応する支持穴の穴形状と一致する抜け止め構造を有することを特徴とする請求項3または4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記2つの支持穴は、当該定着装置の重心位置の鉛直上方に設けられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
当該定着装置の筐体は、前記取っ手部の少なくともハンドル部材と一方のアーム部材と該一方のアーム部材に設けられたピン部材を収納可能な凹部を有することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−32472(P2012−32472A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170054(P2010−170054)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】