説明

実装構造、配線基板組立体及び固定方法

【課題】 アンダーフィル材を用いずに、半導体装置の接合部の耐圧迫性や長期信頼性を改善することができる実装構造を提供することを課題とする。
【解決手段】 電子部品4の電極4cを接続端子8を介して配線基板2の電極パッド2aに接合する。配線基板2を貫通して延在する貫通開口2bが、配線基板2の電子部品4が実装される領域の周囲に設けられる。クランプ部材10は貫通開口2bを貫通して延在する。クランプ部材10は、貫通開口2bを貫通して延在する中間部10cと、中間部10cの両端において屈曲された先端部10a,10bとを有する。先端部10a,10bの間で電子部品4と配線基板2とを挟み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の実装構造、配線基板組立体及び固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、半導体装置等の電子部品が実装された配線基板が組み込まれることが多い。近年の電子機器は小型化が進み、組み込まれる配線基板は高密度実装で小型化され、配線基板に搭載される半導体装置等の電子部品も小型化されている。これに伴い、電子部品を配線基板に実装するための実装構造も小型となっている。
【0003】
半導体装置を配線基板に実装するための接合部材として、はんだバンプが用いられることが多い。はんだバンプによるはんだ接合により電気的接続を得るとともに半導体装置を機械的に配線基板に固定する。上述のように実装構造が小型となり、はんだバンプが小さくなると、はんだ接合部も小さくなるので、熱応力や外部からの圧力により容易にはんだバンプ接合部が変形し損傷してしまい、接続不良が発生しやすくなる。
【0004】
ここで、実装構造としてはんだバンプ接合部に外力が加わった場合のはんだバンプの変形について、図1(a)、(b)を参照しながら説明する。図1(a)において、半導体装置の電極パッド101がはんだバンプ102により配線基板103の接続パッド104に接合された実装構造が示されている。はんだバンプ102は、はんだリフローの際に溶融してから固化し、電極パッド101及び接続パッド104に密着したはんだ接合部102aが形成されている。図1(a)に示す状態は、はんだバンプ102に外力が加わる前の状態であり、はんだバンプ102は変形していない。
【0005】
配線基板103の図1(a)に示す位置に外力が作用すると、配線基板103は外力が加わった部分が上に上がるように変形すると同時に、はんだバンプ102も図1(b)に示すように変形する。外力が加わる位置がはんだバンプ102の中心からずれているため、外力が加わる位置に近い側のはんだ接合部102aの端部に応力が集中する。外力が無くなると応力も無くなり、はんだバンプ102の変形も無くなって図1(a)に示すもとの形状にもどる。
【0006】
このような外力が繰り返し配線基板103に作用すると、はんだ接合部102aと接続パッド104との間に繰り返して応力集中が発生し、はんだ接合部102aの端部が接続パッド104から剥離することがある。この剥離が内部に伝播するとはんだ接合部102aと接続パッド104との電気的接続が無くなり、接続不良となってしまう。
【0007】
そこで、実装した半導体装置と配線基板との間にアンダーフィル材を充填してはんだ接合部を補強することが行なわれている。すなわち、エポキシ樹脂等からなるアンダーフィル材をはんだ接合部の周囲に充填してはんだ接合部を周囲から補強し、且つ半導体装置の底面と配線基板の表面とをアンダーフィル材で接着して機械的に固定する。これにより、はんだ接合部の耐圧力性や長期信頼性が向上する。
【0008】
近年、特にノーパソコン等の携帯型コンピュータや携帯電話などの電子機器は、小型化、高機能化が進み、電子機器の筐体に加わった圧力が内部の配線基板や実装構造部分に伝わり易くなっている。そこで、はんだ接合部の耐圧力性や長期信頼性をさらに向上させるために、より高い接着強度とより高いヤング率を有するアンダーフィル材が用いられるようになっている。ところが、このようにアンダーフィル材の接着強度が大きくなると、一旦アンダーフィル材で固定した半導体装置を配線基板から取りはずすことが困難となってしまう。
【0009】
例えば、半導体装置を配線基板に実装後に半導体装置に機能不良が発生した場合、機能不良を起こした半導体装置のみを配線基板から取り外して交換することができない。したがって、高価な配線基板全体を交換しなければならなくなり、配線基板の仕損費が増大してしまう。また、機能不良が生じていると予測される半導体装置を単体で機能を調べて不良原因の解析を行うことができないため、機能不良の原因を明らかにすることができず、不良率が増大するおそれもある。
【0010】
そこで、放熱板を大きなクリップとして形成し、このクリップによりプリント基板と半導体部品とを挟み込んで固定する実装構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。クリップにより挟み込む力が半導体部品に常に加わっているので、半導体部品の外部接続端子は常にプリント基板の電極パッドに押圧されており、接続不良が発生する可能性は小さい。したがって、アンダーフィル等の接着材で半導体部品をプリント基板に固定して接続信頼性を得る必要はなく、クリップを外すことで容易に半導体部品をプリント基板から取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−347486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の特許文献1に開示された実装構造では、一端側が開いたコの字状の大きなクリップでプリント基板に重ねられた半導体部品の全体を挟み込む。このため、半導体部品がプリント基板の縁の近くに実装される場合にはクリップを用いることができる。しかし、半導体部品がプリント基板の中央の側に実装される場合には、半導体部品まで届くような長いクリップを用いなければならず、実用的ではない。
【0013】
そこで、アンダーフィル材を用いずに、半導体装置の接合部の耐圧迫性や長期信頼性を改善することができ、実装した半導体装置を容易に配線基板から取り外すことができる実装構造の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施態様によれば、電子部品を配線基板に実装する実装構造であって、前記電子部品の外部接続端子が前記配線基板の電極パッドに接合されており、前記配線基板には、前記電子部品の実装領域の周囲に設けられ、前記配線基板を貫通して延在する貫通開口が形成され、前記貫通開口を貫通して延在する中間部と、該中間部の両端において屈曲された先端部とを有するクランプ部材における、該先端部の間で前記電子部品と前記配線基板とを挟み込んだ実装構造が提供される。また、電子部品と、前記電子部品が実装される配線基板と、上述の実装構造とを有する配線基板組立体が提供される。
【0015】
また、配線基板組立体であって、表面に電極パッドが配置される配線基板と、外部接続端子が前記配線基板の電極パッドに接合される電子部品と、前記電子部品と前記配線基板とを挟み込むクランプ部材と、を備え、前記配線基板には、前記電子部品の実装領域の周囲に設けられ、前記配線基板を貫通して延在する貫通開口が形成され、前記クランプ部材は、前記貫通開口を貫通して延在する中間部と、該中間部の両端において屈曲された先端部とを有し、該先端部の間で前記電子部品と前記配線基板とを挟み込んだ配線基板組立体が提供される。
【0016】
さらに、電子部品を配線基板に固定する固定方法であって、配線基板に設けられた貫通開口にクランプ部材を貫通させ、前記クランプ部材の一端を前記配線基板の裏面に係合させ、前記クランプ部材の他端を前記電子部品に係合させる固定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】はんだバンプ接合部に外力が加わった場合のはんだバンプの変形を示す図である。
【図2】一実施形態による実装構造を有する配線基板組立体の平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】配線基板に実装されてクランプ部材で固定された半導体装置の斜視図である。
【図5】クランプ部材で配線基板と半導体装置を挟み込むときの工程を示す図である。
【図6】クランプ部材で配線基板と半導体装置を挟み込むときの工程を示す図である。
【図7】半導体チップが樹脂封止されていない半導体装置を配線基板に搭載した場合の配線基板組立体の平面図である。
【図8】パッケージ基板の全面が樹脂封止部により覆われている半導体装置を配線基板に搭載した場合の配線基板組立体の平面図である。
【図9】図8におけるIX−IX線に沿った断面図である。
【図10】小さなクランプ部材を用いて半導体装置の4隅を固定した場合を示す斜視図である。
【図11】枠状のクランプ部材を用いて半導体装置の各辺全体を一つのクランプ部材で固定した場合を示す斜視図である。
【図12】枠状のクランプ部材を用いて半導体装置の4隅を固定した場合の配線基板の裏面を示す斜視図である。
【図13】クランプ部材により半導体装置を固定したことによる効果を調べるためにはんだバンプに生じる応力をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
【図14】クランプ部材の変形例を示す図である。
【図15】クランプ部材の他の変形例を示す図である。
【図16】図15に示すクランプ部材の係合部と固定部を分離した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図2は一実施形態による実装構造を有する配線基板組立体の平面図である。図3は図2のIII−III線に沿った断面図である。図2及び図3に示す配線基板組立体は、配線を有する配線基板2に、電子部品の一例である半導体装置4と抵抗やコンデンサ等の受動素子6を実装したものである。配線基板2はその表面及び/又はその内部に配線を有している。半導体装置4の電極4cは、接合部材としてのはんだバンプ8により、配線基板2の電極パッド2aに接合される。
【0020】
配線基板2は、例えばガラスエポキシ等の有機基板材で形成された基板である。配線基板2の表面には、半導体装置4の電極4cがはんだバンプ8を介して接合される電極パッド2aが配列されている。
【0021】
図2及び図3に示す例では、半導体装置4は、パッケージ基板4a(サブストレート基板とも称する)上に半導体チップを実装し、半導体チップを樹脂封止して形成されたものである。パッケージ基板4aの裏側に複数の電極4cが形成され、電極4cの各々に外部接続端子としてはんだバンプ8が接合されている。パッケージ基板4aの外周部は、封止樹脂部4bから外側に延在している。
【0022】
本実施形態では、配線基板2を貫通して延在するクランプ部材10により、配線基板2と半導体装置4とを挟み込むことで、半導体装置4を配線基板2に押し付けながら固定する。クランプ部材10は、例えばバネ性を有する金属板(例えば、SUS304CSP等)をコの字状に屈曲して形成したもので、コの字形状の上下端で平行に延在する先端部10a及び10bの間に配線基板2及び半導体装置4を挟み込む。クランプ部材10の締め付け力により半導体装置4は常に配線基板2に押圧されることとなる。
【0023】
図4は配線基板2に実装されてクランプ部材10で締め付けられた半導体装置4の斜視図である。図2及び図4に示すように、クランプ部材10は半導体装置4の4隅部分を挟み込むように4個設けられる。配線基板2のクランプ部材10が設けられる部分には、クランプ部材10が貫通して延在できるように、配線基板2を貫通して延在する貫通開口としてスリット2bが形成されている。
【0024】
ここで、配線基板2と半導体装置4を挟み込むようにクランプ部材10を取り付けて半導体装置4を配線基板に固定する固定方法について説明する。図5はクランプ部材10で配線基板2と半導体装置4を挟み込むときの工程を示す図である。
【0025】
図5(a)に示すように、半導体装置4が実装される領域の4隅に対応する位置において、配線基板2にスリット2bが設けられており、クランプ部材10をスリット2bに挿入して配線基板2を貫通させることで、配線基板2と半導体装置4を同時に挟み込む。
【0026】
まず、図5(b)に示すように、クランプ部材10の先端部10aをスリット2bに斜め方向から差し込む。次に、図5(c)に示すように、クランプ部材10の先端部10aが配線基板2の上に出て、反対側の先端部10bが配線基板2の裏面に当接するまで、クランプ部材10をスリット2bに挿入する。これにより、クランプ部材10の中間部10cがスリット2bを貫通して延在した状態となる。
【0027】
次に、図5(d)に示すように、クランプ部材10の先端部10bを配線基板2の裏面に係合させながら、反対側の先端部10aを引張ることにより、クランプ部材10の先端部10aと先端部10bの間を広げる。そして、クランプ部材10の先端部10aが半導体装置4のパッケージ基板4aの隅の上になるようにクランプ部材10をスリット2b内で移動させる。
【0028】
そして、先端部10aを放すと、図5(e)に示すように、クランプ部材10はバネ性により元の形状に戻ろうとし、先端部10aが半導体装置4のパッケージ基板4aに係合する。このとき、反対側の先端部10bは配線基板2の裏面に係合しているので、半導体装置4のパッケージ基板4aと配線基板2とは、クランプ部材10の先端部10aと先端部10bとの間に挟み込まれた状態となる。
【0029】
クランプ部材10が取り付けられた状態において、クランプ部材10のバネ性により半導体装置4は配線基板2に押し付けられ、はんだバンプ8には常に圧縮力が作用することとなる。したがって、はんだバンプ8の接合部に外力に起因した引張り応力が繰り返し生じることが無く、はんだバンプ8の接合部の割れや剥離を抑制することができるので、接合信頼性が向上する。したがって、アンダーフィル材を用いずに接合信頼性を向上することができる。
【0030】
半導体装置4を配線基板2から取り外す際には、クランプ部材10を外してからはんだバンプ8を溶かすことで、容易に取り除くことができる。あるいは、クランプ部材10を取り付けたままはんだバンプ8を溶融させることで半導体装置4が沈み込み、自然とクランプ部材10が外れた状態となる。
【0031】
次に、クランプ部材10を取り付ける別の方法について説明する。図6はクランプ部材10で配線基板2と半導体装置4を挟み込むときの工程を示す図である。
【0032】
上述のように、半導体装置4が実装される領域の4隅に対応する位置において、配線基板2にスリット2bが設けられており、クランプ部材10をスリット2bに挿入して配線基板2を貫通させることで、配線基板2と半導体装置4を同時に挟み込む。図6に示す取り付け方法では、クランプ部材10は最初にL字形状に曲げられており、図6(a)に示すように、L字形状のクランプ部材10を配線基板2のスリット2bに挿入する。すなわち、クランプ部材10は先端部10bのみが屈曲されて形成されており、先端部10aは中間部10cから真っ直ぐに延在しているままである。先端部10bの屈曲角度は90度より小さくなっている。中間部10cから真っ直ぐに延在している先端部10aからスリット2bに挿入し、屈曲された先端部10bが配線基板2の裏面に係合するまで挿入する。
【0033】
そして、図6(b)に示すように、屈曲された先端部10bの屈曲角度が90度となって全体が配線基板2の裏面に接触するまでクランプ部材10を挿入したら、その状態で先端部10aを屈曲させてクランプ部材10をコの字形状に変形させる。先端部10aを半導体装置4のパッケージ基板4aに係合(接触)するまで屈曲したら、クランプ部材10を押し上げている力を解放する。これにより、図6(c)に示すように、先端部10bの屈曲角度が元にもどろうとして、半導体装置4のパッケージ基板4aと配線基板2とは、クランプ部材10の先端部10aと先端部10bとの間に挟み込まれた状態となる。図6に示す取り付け方法によれば、クランプ部材10の直線状の部分をスリット2bに挿入するだけなので、スリット2bはクランプ部材10の断面形状より僅かに大きな開口であればよい。
【0034】
図2乃至図6に示す例では半導体装置4のパッケージ基板4aの外周部は封止樹脂部4bから外側に延在して露出しているが、図7に示すように半導体装置4において半導体チップ4dは樹脂封止されていなくてもよい。図7は半導体チップ4dが樹脂封止されていない半導体装置4を配線基板2に搭載した場合の配線基板組立体の平面図である。図7に示す例でも、上述の方法と同様に、クランプ部材10を半導体装置4のパッケージ基板4bの4隅に取り付けることができる。
【0035】
また、半導体装置4のパッケージ基板4aの全面が封止樹脂部4bにより覆われている場合は、クランプ部材10の先端部を樹脂封止部4bの4隅に取り付けるようにすればよい。図8はパッケージ基板4aの全面が樹脂封止部により覆われている半導体装置4を配線基板2に搭載した場合の配線基板組立体の平面図である。図9は図8におけるIX−IX線に沿った断面図である。図9に示すように、クランプ部材10の先端部10aが半導体装置4の封止樹脂部4bの隅部に係合し、先端部10bが配線基板2の裏面に係合するようにクランプ部材10を取り付けることで、半導体装置4と配線基板2とをクランプ部材10で挟み込むことができる。
【0036】
以上説明した例では、半導体装置4の4隅をクランプ部材10で固定しているが、クランプ部材10の各々大きさは、図10に示すように小さくしてもよい。あるいは、図11に示すように半導体装置4の4辺全体を固定するような枠状のクランプ部材としてもよい。図11に示す枠状のクランプ部材は、半導体装置4に係合する部分が枠状となっており、枠状の部分から細い中間部が配線基板2のスリット2bを貫通して配線基板2の裏面側まで延在している。すなわち、半導体装置4の4辺に係合する枠状の部分が先端部10aに相当し、中間部10cの反対側に先端部10bが形成され、枠状の先端部10aと反対側の4隅に設けられた先端部10bとの間に半導体素子4と配線基板2が挟まれた状態となる。このような枠状のクランプ部材を取り付けるには、クランプ部材10の枠状の部分(先端部10aに相当)から延在する4本の中間部10cと先端部10bを配線基板2の表側からスリット2bに挿入しながら、枠状の部分を半導体装置4の各辺に係合させ、中間部10cの先にある先端部10bを屈曲してコの字状とすることで、枠状の部分と先端部10bとで半導体装置4と配線基板2を挟み込む。
【0037】
図12は図11に示すような枠状のクランプ部材を配線基板2の裏面側から取り付けた場合の配線基板2の裏面を示す斜視図である。この場合、クランプ部材の枠状の部分(先端部10aに相当)は配線基板2の裏面に係合し、枠状の部分から延在する4本の中間部10cがスリット2bを貫通して配線基板2の表側に延在する。そして、中間部10cの先の先端部10bが屈曲されて半導体装置4の4隅に係合してコの字状にする。これにより、半導体装置4の4隅において、枠状の部分と先端部10bとで半導体装置4と配線基板2を挟み込むことができる。
【0038】
図13はクランプ部材により半導体装置を固定したことによる効果を調べるためにはんだバンプに生じる応力をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。シミュレーション条件として、半導体装置の大きさを27mm角とし、配線基板を厚さ1mmのガラスエポキシで形成し、はんだバンプの直径を0.6mmとし、はんだバンプの間隔を1mmとした。以上の条件で半導体装置を配線基板に実装したものとし、配線基板に4kgの外力を加えた場合にはんだバンプに生じる応力を求めた。通常、はんだバンプのうち半導体装置の4隅に設けられたはんだバンプに発生する応力が最も大きくなるので、4隅に設けられたはんだバンプに発生する応力を求めた。今回のモデルの場合、はんだバンプに生じる応力が500N/mm以下であれば、十分な接続信頼性が得られることが分っている。
【0039】
図13において、No.1は半導体装置をクランプ部材で固定しない場合(すなわち、従来の実装構造)におけるシミュレーション結果である。はんだバンプに生じる応力は750N/mmであった。No.2は、半導体装置の4隅をクランプ部材で固定した場合であって、クランプ部材の厚さを0.2mmとし、幅を2mmとしたときのシミュレーション結果である。はんだバンプに生じる応力は500N/mmより低い480N/mmであった。
【0040】
図13において、No.3は、半導体装置の4隅をクランプ部材で固定した場合であって、クランプ部材の厚さを0.5mmとし、幅を2mmとしたときのシミュレーション結果である。はんだバンプに生じる応力は440N/mmであった。クランプ部材の厚さを0.2mmより大きくしても、はんだバンプに生じる応力は大きく減少しないことがわかった。
【0041】
図13において、No.4は、半導体装置の4隅をクランプ部材で固定した場合であって、クランプ部材の厚さを0.2mmとし、幅を1mmとしたときのシミュレーション結果である。はんだバンプに生じる応力は500N/mmであった。クランプ部材の幅を0.1mmに低減しても、はんだバンプに生じる応力は大きく増大しないことがわかった。
【0042】
図13において、No.5は、半導体装置の4隅を4個のクランプ部材で固定した場合であって、クランプ部材の厚さを0.2mmとし、幅を4mmとしたときのシミュレーション結果である。はんだバンプに生じる応力は430N/mmであった。クランプ部材の幅を0.2mmに増大しても、はんだバンプに生じる応力は大きく減少しないことがわかった。
【0043】
図13において、No.6は、半導体装置の4辺全体を枠状のクランプ部材で配線基板の表側から固定した場合であって(図11に示す構造)、クランプ部材の厚さを0.2mmとし、幅を1mとしたときのシミュレーション結果である。はんだバンプに生じる応力は580N/mmであった。
【0044】
図13において、No.7は、半導体装置の4辺全体を枠状のクランプ部材で配線基板の裏側から固定した場合であって(図12に示す構造)、クランプ部材の厚さを0.2mmとし、幅を1mとしたときのシミュレーション結果である。はんだバンプに生じる応力は310N/mmであった。No.7の条件が最も応力を低減する効果があったが、これは枠状のクランプ部材が配線基板に係合するため、配線基板自体の変形が抑制されるためであると考えられる。
【0045】
次に、クランプ部材の他の例について説明する。
【0046】
図14はクランプ部材の変形例を示す図である。図14に示すクランプ部材20は、上述のクランプ部材10の中間部10cをばね20cとしたものである。すなわち、先端部20aと20bとの間をばね20cで接続したものである。ばね20cは先端部20aと 20bとの間隔が狭まる方向に付勢する。
【0047】
図15はクランプ部材の他の変形例を示す図である。図15に示すクランプ部材30は、半導体装置4に係合する係合部30aと、配線基板2に固定され固定部30bとに分かれている。図16に示すように、係合部30aの一端側は、固定部30bの穴に挿入されて係合する。係合部30aの固定部30の穴に挿入される部分には小さな突起が形成されており、且つ固定部30の穴の内面には小さな凹部が形成されている。
【0048】
係合部30aを固定部30bの穴に挿入すると、係合部30aの小さな突起が固定部30の穴の内面の凹部に係合することで、係合部30aは固定部30bに対して固定される。係合部30aの先端を半導体装置4に係合させながら係合部30aを固定部30bに対して固定することで、係合部30aの先端部と固定部30bの先端とで半導体装置4と配線基板2を挟み込むことができる。
【0049】
以上のように、配線基板を貫通して延在するクランプ部材により半導体装置と配線基板を挟み込んで固定することにより、はんだバンプの接合部を常に圧縮しておくことで、接合信頼性を向上することができる。これにより、半導体装置をアンダーフィル材で配線基板に接着しなくても接合信頼性を確保できることとなり、半導体装置を配線基板から容易に取り外すことができるようになる。
【0050】
本明細書は以下の事項を開示する
(付記1)
電子部品を配線基板に実装する実装構造であって、
前記電子部品の電極を前記配線基板の電極パッドに接合する接続端子と、
前記配線基板の前記電子部品が実装される領域の周囲に設けられ、前記配線基板を貫通して延在する貫通開口と、
該貫通開口を貫通して延在するクランプ部材と
を含み、
前記クランプ部材は、前記貫通開口を貫通して延在する中間部と、該中間部の両端において屈曲された先端部とを有し、
該先端部の間で前記電子部品と前記配線基板とを挟み込んだ実装構造。
(付記2)
付記1記載の実装構造であって、
前記クランプ部材はバネ性を有する金属板により形成される実装構造。
(付記3)
付記1又は2記載の実装構造であって、
前記クランプ部材は、平面が四辺形の前記電子部品の4隅に別個に係合するように4個設けられる実装構造。
(付記4)
付記1又は2記載の実装構造であって、
前記クランプ部材の前記先端部の一つは、前記電子部品の外周に係合する枠形状であり、該枠形状の先端部から前記中間部が延在して前記貫通開口を貫通して前記配線基板の裏面まで延在し、前記中間部から延在する前記先端部の他方は前記配線基板の裏面側で前記中間部に対して屈曲されている実装構造。
(付記5)
付記1又は2記載の実装構造であって、
前記クランプ部材の前記先端部の一つは、前記電子部品の外周形状に相当する枠形状であり、前記配線基板の裏目に係合した前記枠形状の先端部から前記中間部が延在して前記貫通開口を貫通して前記配線基板の表面まで延在し、前記中間部から延在する前記先端部の他方は前記配線基板の表面側で前記中間部に対して屈曲されて前記電子部品に係合している実装構造。
(付記6)
電子部品と、
前記電子部品が実装される配線基板と、
付記1乃至5のうちいずれか一項記載の実装構造と
を有する配線基板組立体。
(付記7)
電子部品を配線基板に固定する固定方法であって、
配線基板に設けられた貫通開口にクランプ部材を貫通させ、
前記クランプ部材の一端を前記配線基板の裏面に係合させ、
前記クランプ部材の他端を前記電子部品に係合させる
固定方法。
(付記8)
付記7記載の固定方法であって、
前記クランプ部材を予めコの字状に形成しておき、
前記クランプ部材の一端を、前記配線基板の裏面側から前記貫通開口に挿入して前記配線部材の表面側に延在させ、
前記クランプ部材の他端を前記配線基板の裏面に係合させ、
前記クランプ部材の一端を引張りながら前記電子部品に係合させる
固定方法。
(付記9)
付記7記載の固定方法であって、
前記配線基板の裏面に係合する前記クランプ部材の一端を予め屈曲しておき、
前記クランプ部材の他端を、前記クランプ部材を前記貫通開口に挿入して前記配線部材の表面側に延在させた状態で屈曲して前記電子部品に係合させる
固定方法。
【符号の説明】
【0051】
2 配線基板
2a 電極パッド
2b スリット
4 半導体装置
4a パッケージ基板
4b 封止樹脂部
4c 電極
4d 半導体チップ
6 受動素子
8 はんだバンプ
10 クランプ部材
10a,10b 先端部
10c 中間部
20 クランプ部材
20a,20b 先端部
20c ばね
30 クランプ部材
30a 係合部
30b 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を配線基板に実装する実装構造であって、
前記電子部品の外部接続端子が前記配線基板の電極パッドに接合されており、
前記配線基板には、前記電子部品の実装領域の周囲に設けられ、前記配線基板を貫通して延在する貫通開口が形成され、
前記貫通開口を貫通して延在する中間部と、該中間部の両端において屈曲された先端部とを有するクランプ部材における、
該先端部の間で前記電子部品と前記配線基板とを挟み込んだ実装構造。
【請求項2】
請求項1記載の実装構造であって、
前記クランプ部材はバネ性を有する金属板により形成される実装構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の実装構造であって、
前記クランプ部材は、平面が四辺形の前記電子部品の4隅に別個に係合するように4個設けられる実装構造。
【請求項4】
配線基板組立体であって、
表面に電極パッドが配置される配線基板と、
外部接続端子が前記配線基板の電極パッドに接合される電子部品と、
前記電子部品と前記配線基板とを挟み込むクランプ部材と、を備え、
前記配線基板には、前記電子部品の実装領域の周囲に設けられ、前記配線基板を貫通して延在する貫通開口が形成され、
前記クランプ部材は、前記貫通開口を貫通して延在する中間部と、該中間部の両端において屈曲された先端部とを有し、該先端部の間で前記電子部品と前記配線基板とを挟み込んだ配線基板組立体。
【請求項5】
電子部品を配線基板に固定する固定方法であって、
配線基板に設けられた貫通開口にクランプ部材を貫通させ、
前記クランプ部材の一端を前記配線基板の裏面に係合させ、
前記クランプ部材の他端を前記電子部品に係合させる
固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−4165(P2012−4165A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135115(P2010−135115)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】