説明

家庭電化機器

【課題】動作状況を正確に把握することができる家庭電化機器を提供する。
【解決手段】動作プログラムが格納された第1の記憶部23と、動作プログラムに従い鍋加熱コイル5を駆動する加熱駆動部28を制御する炊飯制御部10と、鍋加熱コイル5の状況を検知する鍋温度センサ7が検知した情報と炊飯制御部10が制御した内容を記憶する第2の記憶部24及び第2の記憶部24に記憶されている情報が動作プログラムの所定のタイミングで書き込まれる第3の記憶部25とを具備し、少なくとも第1の記憶部23と第2の記憶部24が第一のマイコン30aに内蔵され、第3の記憶部25は、第二のマイコン23bに内蔵され、第3の記憶部25は、第二のマイコン30bの動作電圧以下でも記憶を保持するように構成されたもので、使用者は異常状態を容易に認識できると共に販売店やメーカ等が家庭電化機器の現在までの動作状況を正確に把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な家庭において用いられる炊飯器、電気湯沸かし器、冷蔵庫、洗濯機等の家庭電化機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略称する)を内蔵した高機能な各種家庭電化機器が提供されている。従来の高機能な家庭電化機器においては、使用者の選択した指令に応答して、マイコンに格納された対応する動作プログラムが起動し、使用者が望む動作が実行される。当該家庭電化機器においては、動作プログラムが起動することにより、各種動作が指定された順に稼働し、使用者が選択した所望の動作が実行される。
【0003】
しかし、家庭電化機器の動作中に、例えば、使用者の誤操作、部品の故障、断線、停電等の異常状態が生じる場合がある。このように異常状態が生じた場合、使用者が指令した動作プログラムに従って忠実に実行できないため、当該動作プログラムに代わって安全性を確保しつつ動作を終了させるために特別なプログラムが実行されている。このような異常状態が生じた場合には、その異常状態を出来るだけ早く確実に検知して、使用者に通知する必要がある。そのため、従来の家庭電化機器においては、各種センサを設けて異常状態を検知し、その異常状態を使用者に報知する手段が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1に記載された家庭電化機器は炊飯器であり、この炊飯器においては、異常状態を検知した場合、その異常状態を記憶する記憶手段が設けられており、その記憶手段からの出力により、使用者に対して異常表示手段や異常報知手段を用いて、異常状態を表示及び/又は異常状態の報知が行われている。このように表示及び/又は報知されて、当該炊飯器における異常状態を認識した使用者は、当該炊飯器において異常状態に対する処置を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−41845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された炊飯器においては、その動作中において発生した異常状態を炊飯器に設けられた異常表示手段や異常報知手段により使用者に知らせるだけの構成であり、過去の動作において異常状態が発生していても、そのような動作状況を示すデータは記憶されていないため、使用者は、現在の異常状態のみしか確認できなかった。
【0007】
また、従来の炊飯器においては、個々のセンサにより検知した値が、正常か/異常かの判断だけを行っており、その時の動作状況等の各種条件を考慮した総合的な判断を行っていなかった。さらに、従来の炊飯器においては、過去の動作プログラムにおいて、どのような工程がどのような状況で実行されていたかを示すデータが全く記憶されていないため、現在の異常状態が過去の動作状況に起因するものであっても、使用者及びメーカにおいては、その異常状態の正確な分析を行うことができなかった。
【0008】
また、当該炊飯器が異常状態と認識しない場合であっても使用者が好ましくないと判断
した動作に関して、販売店等において使用者から問い合わせを受けた場合、販売店等においては、当該炊飯器における過去の動作状況を分析できないため回答が困難であるという問題があった。
【0009】
また、商用電源のバラツキ、室温、水温の環境の変化により炊飯状況が悪化し、使用者にとって不満が残る状態に仕上がる場合がある。このような炊飯状況が悪化した状態を、販売店及びメーカ等のサービスマンが再現しようとしても再現できないため、原因を特定できず、商品交換や、基板交換を行って対応する場合があった。したがって、このような処置を行うことは、使用者にとっては、原因究明のために待たされるという問題があり、正常な商品の交換や基板の交換が行われる恐れがあるため、経済的なロスが発生するという問題を抱えていた。
【0010】
また、従来の炊飯器においては、データを記憶するための記憶手段は一般的に揮発性記憶手段であるため、記憶手段への電源が一旦遮断されるとデータが消去されてしまうという課題があり、炊飯動作中に記憶されたデータであっても、一旦電源が遮断されると、そのデータが消えるという課題があった。
【0011】
このような問題点を解消するため、従来の炊飯器においては、過去のデータを保存するために、電池を電源とした新たな記憶手段を設けたものがあった。しかし、このような家庭電化機器においては、構成が複雑となり、別の記憶手段と電源手段を設けるために特別の配置空間を確保しなければならない、という課題があった。
【0012】
また、炊飯器においては、商用電源のバラツキ、室温、水温の環境の変化等により、ご飯の炊き上がりが悪いという使用者からの苦情に対して、当該機器が本当に異常であるのか、環境の変化に起因するものか、使用者の誤使用によるものか等を正確に分析できる機器が求められていた。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、家庭電化機器における過去から現在までの動作状況を示す必須の各種データを保存して、当該家庭電化機器における正常な動作状態及び異常な動作状態を使用者が容易に認識できると共に、販売店及びメーカ等においても当該家庭電化機器に関する過去から現在に至るまでの動作状況を正確に把握することができ、小型で構成が容易な家庭電化機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するために、本発明の家庭電化機器は、動作プログラムが格納された第1の記憶手段と、被駆動部を駆動する駆動手段と、前記動作プログラムに従い前記駆動手段を制御する制御手段と、前記被駆動部の状況を検知する検知手段と、前記検知手段が検知した前記被駆動部の状況を示す情報と前記制御手段が前記駆動手段を制御した内容を示す情報とを記憶する第2の記憶手段、及び 前記第2の記憶手段に記憶されている情報が前記動作プログラムの所定のタイミングで書き込まれる第3の記憶手段とを具備し、少なくとも前記第1の記憶手段と前記第2の記憶手段が第一のマイクロコンピュータに内蔵されており、前記第3の記憶手段は第二のマイクロコンピュータに内蔵されてあり、前記第3の記憶手段は、前記第二のマイクロコンピュータの動作電圧以下でも記憶を保持するように構成されたもので、使用者が当該家庭電化機器の異常状態を容易に認識できると共に、販売店やメーカ等が当該家庭電化機器に関する過去から現在に至るまでの動作状況を正確に把握することができ、その動作状況において生じた異常状態に対して素早く確実に適切な処置をとることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、家庭電化機器に関する過去から現在までの動作状況を示す情報(各種
データ)をマイクロコンピュータ内部に確実に記憶し保存できるよう構成することができ、使用者が当該家庭電化機器における異常状態を容易に認識できると共に、販売店やメーカ等においても当該家庭電化機器に関する過去から現在に至るまでに発生した異常状態を正確に把握し、素早く確実で適切な処置をとることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における家庭電化機器の一例である炊飯器の概略構成を示す縦断面図
【図2】同炊飯器の構成を示すブロック図
【図3】同炊飯器の具体的な炊飯動作を説明するフローチャート
【図4】同炊飯器の検知部の構成を示す部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、動作プログラムが格納された第1の記憶手段と、被駆動部を駆動する駆動手段と、前記動作プログラムに従い前記駆動手段を制御する制御手段と、前記被駆動部の状況を検知する検知手段と、前記検知手段が検知した前記被駆動部の状況を示す情報と前記制御手段が前記駆動手段を制御した内容を示す情報とを記憶する第2の記憶手段、及び前記第2の記憶手段に記憶されている情報が前記動作プログラムの所定のタイミングで書き込まれる第3の記憶手段とを具備し、少なくとも前記第1の記憶手段と前記第2の記憶手段が第一のマイクロコンピュータに内蔵されており、前記第3の記憶手段は第二のマイクロコンピュータに内蔵されてあり、前記第3の記憶手段は、前記第二のマイクロコンピュータの動作電圧以下でも記憶を保持するように構成されたもので、使用者が当該家庭電化機器の異常状態を容易に認識できると共に、販売店やメーカ等が当該家庭電化機器に関する過去から現在に至るまでの動作状況を正確に把握することができ、その動作状況において生じた異常状態に対して素早く確実に適切な処置をとることが可能となる。
【0018】
第2の発明は、特に、第1の発明の第3の記憶手段は、不揮発性記憶手段で構成されたもので、当該家庭電化機器に関する過去から現在に至るまでの動作状況を販売店やメーカ等において正確に把握することができる。
【0019】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の所定のタイミングを、動作プログラムの終了時点としたもので、必要な情報(情報には各種データを含む)を確実に記憶し、保持することが可能となる。
【0020】
第4の発明は、特に、第1または第2の発明の動作プログラムは、複数の動作工程を有し、所定のタイミングを、各動作工程の開始時点又は終了時点としたもので、動作プログラムの動作状況を表す必要な情報を確実に記憶し、保持することが可能となる。
【0021】
第5の発明は、特に、第1または第2の発明における家庭電化機器において、家庭電化機器への電源供給の停止を検知する停電検知手段を有し、所定のタイミングを、前記停電検知手段が電源供給の停止を検知したときとしたもので、動作プログラムの動作状況において停電に関する情報を確実に記憶し、保持することが可能となる。
【0022】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか一つの発明の家庭電化機器は、炊飯器の形態をとったもので、炊飯器に関する過去から現在に至るまでの動作状況を正確に把握することができ、その動作状況において生じた異常状態に対して素早く確実に適切な処置をとることが可能となる。
【0023】
第7の発明は、特に、第1〜5のいずれか一つの発明の家庭電化機器は、電気湯沸かし器の形態をとったもので、電気湯沸かし器に関する過去から現在に至るまでの動作状況を
正確に把握することができ、その動作状況において生じた異常状態に対して素早く確実に適切な処置をとることが可能となる。
【0024】
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか一つの発明の第3の記憶手段に記憶される情報を、時間情報及び/又は温度情報としたもので、記憶され保持された時間情報及び/又は温度情報から動作プログラムの実際の動作状況を確実に把握することが可能となる。
【0025】
第9の発明は、特に、第1〜8のいずれか一つの発明の第3の記憶手段に記憶された情報を表示する表示手段を備えたもので、当該家庭電化機器に関する過去から現在に至るまでの動作状況を容易に把握することができ、その動作状況において生じた異常状態に対して素早く確実に適切な処置をとることが可能となる。
【0026】
第10の発明は、特に、第1〜9のいずれか一つの発明の第3の記憶手段に記憶された情報を、音又は音声で報知する報知手段を備えたもので、当該家庭電化機器に関する過去から現在に至るまでの動作状況を容易に把握することができる構成となる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
なお、以下に説明する実施の形態においては、家庭電化機器として炊飯器を例に説明するが、本発明は炊飯器に限定されるものではなく、電気湯沸かし器、IHクッキング機器、エアコン、食器洗い乾燥機、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機、等の高機能を有する一般的な家庭電化機器に適用できるものである。
【0029】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における家庭電化機器について、図1〜4を用いて説明する。図1は、本実施の形態における家庭電化機器の一例である炊飯器の概略構成を示す縦断面図、図2は、同炊飯器の構成を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、本実施の形態における炊飯器は、調理物(米及び水)が入る鍋3を着脱自在に収納する有底円筒状の鍋収納部4を有する炊飯器本体1と、この炊飯器本体1に回動自在にヒンジ軸15で軸止された蓋体2とを有して外観が構成されている。蓋体2は、炊飯器の上部外観を構成しており、蓋体2が閉成された時、鍋3の開口部分である上面開口部14が蓋体2により覆われる構成である。
【0031】
炊飯器本体1の内部には、鍋3を誘導加熱するための鍋加熱手段である鍋加熱コイル5が設けられている。鍋加熱コイル5は、鍋3の側面部分を誘導加熱する側面加熱コイル5aと、鍋3の底面部分を誘導加熱する底面加熱コイル5bにより構成されている。
【0032】
また、鍋収納部4に収納された鍋3の底部外面の略中央部分に接触するように、鍋3の温度を検知する鍋温度検知手段である鍋温度センサ7が設けられている。鍋温度センサ7は、炊飯及び保温時の鍋3の温度を常時検知しており、その検知データは後述する炊飯制御部10に送信されて、鍋3内の調理物が最適な温度状態になるように制御される。
【0033】
ヒンジ軸15を介して炊飯器本体1に回動可能に接続された蓋体2は、炊飯器本体1内の鍋3の開閉を行うよう構成されている。蓋体2におけるヒンジ軸15と対向する反対側の位置には、フックボタン(図示無し)が設けられており、このフックボタンが炊飯器本体1に設けた係合部(図示無し)に係止されて蓋体2が炊飯器本体1を閉成状態となるよう構成されている。フックボタンが上方から指で押圧されると、係合部との係止状態が外れると共に、蓋体2を開成方向に常時押圧しているバネ(図示せず)により、蓋体2が開
成される。
【0034】
蓋体2において、鍋収納部4に収納された鍋3に対向する面(図1における下面側)には、蓋放熱板11が配設されている。蓋放熱板11の内面側(図1における上面側)には誘導加熱コイルである蓋加熱コイル6が設けられている。ここでは、蓋加熱コイル6が蓋加熱手段である。また、蓋体2の内部には、蓋放熱板11に感温部が接触する蓋温度検知手段である蓋温度センサ8が設けられている。蓋温度センサ8により検知された蓋放熱板11の温度データは、他のセンサ等からのデータとあわせて、当該炊飯器における炊飯動作の現状把握に用いられ、被駆動部である鍋加熱コイル5及び蓋加熱コイル6の制御が行われる。
【0035】
本実施の形態の炊飯器においては、被駆動部は、鍋加熱コイル5及び蓋加熱コイル6であるが、本発明が適用される家庭電化機器により、被駆動部は異なり、その家庭電化機器における駆動手段により駆動される負荷である、ヒータ、モータ、誘導加熱機器等も含まれる。
【0036】
蓋体2の上部における正面側(図1における左側)には、表示手段である表示部12と、操作手段である操作部13が設けられている。表示部12においては、当該炊飯器の現在の動作状況の表示、設定時のコース表示、米種の表示、炊き上がり時間表示等の炊飯動作において、使用者に報知すべき各種情報が液晶表示等により表示される。
【0037】
また、当該炊飯器には、使用者に音声や音により各種情報を報知するための報知手段である報知部22、例えば音声により炊飯状況を知らせる音声発生機構、音色の違いにより使用者に現状を知らせるブザーやメロディ発生器等の音発生機構が設けられている。
【0038】
本実施の形態における炊飯器においては、使用者による操作部13の操作により、指令を受け付けたことを知らせる入力受付報知、炊飯動作の終了を知らせる炊飯動作終了報知、炊飯器における再加熱動作が終了したことを知らせる再加熱動作終了報知等のためにブザー(図示せず)が設けられている。
【0039】
図2において、操作部13には、使用者が当該炊飯器による炊飯動作を設定(指令)するときに用いる複数の操作スイッチ(図示せず)が操作基板9上に設けられており、操作部13からの使用者の指令(炊飯コース選択、炊飯予約等)や炊飯器内部に設けられた各種検知手段(鍋温度センサ7、蓋温度センサ8、後述する室温度センサ20(図2参照)等)からの検知データ等は、炊飯器内部に設けられた第一のマイクロコンピュータ30a(以下「第一のマイコン30a」という)の炊飯制御部10に入力されて処理される。その処理結果に基づき、炊飯制御部10は、当該炊飯器における適切な動作プログラムを選択して、炊飯器内の各種構成部品を制御する。
【0040】
本実施の形態の炊飯器に用いた第一のマイコン30aには、基本プログラムを含む動作プログラムである各種炊飯プログラム、被駆動部の出力タイミング、検知の入力タイミング等が記憶された第1の記憶手段である第1の記憶部23、使用者が指定した炊飯プログラムに基づいて実行される炊飯動作における逐次データが記憶される第2の記憶手段である第2の記憶部24、また第二のマイクロコンピュータ30b(以下「第二のマイコン30b」という)には、実行された炊飯動作において予め設定された炊飯条件のときの必須データを記憶する第3の記憶手段である第3の記憶部25が設けられている。
【0041】
ここで、第1の記憶部23は、動作プログラムが予め格納されたフラッシュメモリであり、第2の記憶部24は、データの書き込み消去が可能な揮発性メモリのRAMであり、第3の記憶部25は、データの書き込みが可能な不揮発性メモリで形成されている。
【0042】
上記のように構成された本実施の形態における炊飯器において、第一のマイコン30a内部の炊飯制御部10は、使用者による操作部13からの指令等に基づき、鍋加熱コイル5、蓋加熱コイル6、表示部12、及び報知部22等を、使用者が指定した炊飯プログラムに従って適切に制御し、炊飯動作を行う。
【0043】
なお、本実施の形態の炊飯器においては、加熱手段として、誘導加熱を行う鍋加熱コイル5及び蓋加熱コイル6を用いたが、通常の電流を流したときに電気抵抗により生じるジュール熱を利用した電気ヒータを用いてもよい。
【0044】
本実施の形態の炊飯器においては、蓋体2の内部に、室温度検知手段である室温度センサ20が設けられている。この室温度センサ20は、当該炊飯器が置かれている部屋の温度を検知するものである。室温度センサ20により検知された室温度データは、当該炊飯器における保温工程において、低温保温コースと高温保温コースのいずれかのコースを選択する際に用いられる。
【0045】
図2に示すように、本実施の形態の炊飯器において、第一のマイコン30aは、炊飯制御部10と、第1の記憶部23と、第2の記憶部24を有している。
【0046】
操作部13により、使用者が指定した炊飯プログラムに応じて、炊飯制御部10は、加熱駆動部28を制御して、鍋加熱コイル5及び蓋加熱コイル6を駆動する。炊飯検知部29には、鍋温度センサ7、蓋温度センサ8、室温度センサ20、後述するふきこぼれ検知部35、及び商用電源26の電圧を検知する電源電圧検知部27からの検知データ(情報)が入力され、炊飯動作の状況、各センサの異常検知、各センサにおける断線の検知、ふきこぼれ状態、商用電源26の入力電圧の異常検知、商用電源26における停電状態の検知等を検知して、それらの検知結果を炊飯制御部10に伝送するようになっている。
【0047】
炊飯制御部10においては、炊飯検知部29から伝送された各種検知結果を示す情報を考慮して、指定された炊飯プログラムに応じて炊飯動作を行うと共に、それらの検知結果を示す情報をRAM領域である第2の記憶部24に記憶する。また、後述するように、炊飯動作において、予め決められた条件を満足したタイミングで、その時の炊飯動作等を示す各種情報(時間情報及び/又は温度情報を含む)が、第二のマイコン30bにある第3の記憶部25に記憶される。
【0048】
次に、本実施の形態における炊飯器の具体的な炊飯動作について説明する。図3は、本実施の形態における炊飯器の具体的な炊飯動作を説明するフローチャートである。
【0049】
使用者は、米とその米量に対応する所定量の水が入れられた鍋3を炊飯器本体1内の所定位置に配置して、蓋体2を閉め、所望の炊き方を操作部13により設定する。
【0050】
例えば、本実施の形態の炊飯器においては、使用者が、操作部13にあるコース選択ボタン(図示せず)により、「白米」コース、「無洗米」コース、「早炊き」コース、「すし」コース、「おかゆ」コース、「玄米」コース、「発芽玄米」コース、及び「蒸し」コースの中からいずれかのコースを指定するように構成されている。使用者がコースを指定して、操作部13にある炊飯キー(図示せず)を押圧することにより、指定されたコースの炊飯プログラムが開始される。このとき、指定されたコースを示すデータが、その時の日付、時刻と共に第3の記憶部25に記憶される。
【0051】
上記のように、使用者により所望の炊き方が指定された炊飯器は、その炊き方に対応する炊飯プログラムを始動させる。この炊飯プログラムは、第一のマイコン30aの第1の
記憶部23に予め記憶された動作プログラムの1つであり、炊飯制御部10は、第1の記憶部23から該当する炊飯プログラムを読み込み始動させる。第1の記憶部23に記憶されている動作プログラムには、使用者の好みに対応できるように、各種の炊飯プログラムが含まれているが、本実施の形態の炊飯器の炊飯動作の説明においては、通常の炊飯プログラムによる炊飯動作について説明する。
【0052】
本実施の形態の炊飯器における通常の炊飯動作は、浸水工程(「待機」ステップ、「前炊き1」ステップ、「前炊き2」ステップ)、炊き上げ工程(「ならし」ステップ、「炊飯量判定」ステップ、「パワーダウン(PD)」ステップ)、沸騰維持工程(「沸騰1」ステップ、「沸騰2」ステップ)、及び蒸らし工程(「休止」ステップ、「追炊き」ステップ、「蒸らし」ステップ)の各工程に大別される。
【0053】
以下に説明する各工程におけるステップは、通常の炊飯プログラムの一例であり、米種、使用者の好み、炊飯状況等の各種条件に応じて変更されるものである。なお、以下に述べる各ステップにおける具体的な数値は、本実施の形態の炊飯器において実施されている炊飯プログラムにおける例示であり、本発明を限定するものではない。
【0054】
浸水工程の「待機」ステップにおいて、使用者が指定した炊飯プログラムの開始から所定時間(例えば、1分30秒)待機した後、浸水した米を約50℃の温度で保持する「前炊き1」ステップ及び「前炊き2」ステップに移行する。
【0055】
浸水工程は、米に水を吸水させる工程である。浸水工程は、糊化温度よりも低温の水に米を浸し、予め米に吸水させておくことにより、浸水工程より後の工程において、米の中心部まで十分に糊化させるために設定されている。また、浸水工程は、米に含まれるアミラーゼにより澱粉を分解しグルコースを生成させる工程でもあり、この工程において、飯の甘味を生み出すものである。
【0056】
浸水工程の「前炊き1」ステップにおいては、例えば5分40秒間、鍋加熱コイル5により鍋温度が50℃になるまで一気に加熱する。50℃到達したときには「前炊き2」ステップへ移行する。但し、5分40秒経過しても50℃に達しない場合でも、5分40秒経過後には「前炊き2」ステップへ移行する。「前炊き1」ステップから「前炊き2」ステップへの移行が、どの条件(温度条件なのか時間条件なのか)を満足して実行されたかを示すデータは、第3の記憶部25に記憶される。
【0057】
浸水工程の「前炊き2」ステップにおいては、鍋温度が14分間、50℃に保持されるよう、鍋加熱コイル5への入力が調整される。「前炊き2」ステップにおいて、鍋温度が50℃に調温されることは、鍋3内の米が充分に、且つ均一に水を吸水するための必要条件である。このため、浸水工程においては、鍋温度が上記の予め設定した温度を保つように、鍋温度センサ7により鍋3の温度が常時検知され、その検知データは、炊飯検知部29に入力される。炊飯検知部29は、鍋3の温度を示す検知データを炊飯制御部10に伝送して、鍋温度が50℃を維持されるよう炊飯制御部10により制御される。
【0058】
浸水工程終了後、炊き上げ工程に移行する。炊き上げ工程では、鍋3の温度が水の沸点近傍(通常90℃近傍)になるまで、鍋3を加熱する。この炊き上げ工程においては、鍋3の温度を素早く立ち上げるために、鍋3は、加熱コイル5により最大加熱量で加熱される。
【0059】
炊き上げ工程においては、「ならし」ステップ、「炊飯量判定」ステップ、「パワーダウン(PD)」ステップの段階がある。「ならし」ステップにおいて、米と水を収容している鍋3を鍋加熱コイル5により最大の加熱量で加熱して、鍋温度を上昇させる。
【0060】
鍋温度が80℃に到達すると、「炊飯量判定」ステップに移行する。「炊飯量判定」ステップにおいては、使用者が鍋3の内部に入れた米量(炊飯量)を判定する。鍋温度が80℃に到達したとき、炊飯量判定のための時間計測を開始し、蓋温度センサ8が蓋放熱板11の温度が70℃に到達したのを検知すると、炊飯量判定の時間計測を終了する。この炊飯量判定の時間計測の結果を示すデータは、第一のマイコン30aの炊飯検知部29において算出され、炊飯制御部10に送られる。
【0061】
なお、「ならし」ステップにおいて、25分経過しても80℃にならない場合には、通常の炊飯プログラムから外れた「湯炊き」ステップに移行する。「湯炊き」ステップにおいては、鍋加熱コイル5及び蓋加熱コイル6を用いて鍋3の温度を高温度にして炊飯動作を終了させる。
【0062】
上記のように、「炊飯量判定」ステップにおいては、鍋3の底に接触する鍋温度センサ7により、鍋3の温度が検出され、この鍋3の温度が所定の温度(本実施の形態の炊飯器においては、80℃)以上に到達すると、炊飯量の判定のための時間計測を開始する。そして、鍋加熱コイル5により鍋3が一定の加熱量で加熱されると、鍋3の内部温度は徐々に上昇していくが、鍋3の内部の水が沸騰するまでは、蓋放熱板11まで蒸気がほとんど上がってこないため、蓋放熱板11の上面に接触している蓋温度センサ8が検知する温度はほとんど上昇しない。しかし、鍋3の内部の水が沸騰すると、多量の蒸気が蓋放熱板11を加熱するため、蓋温度センサ8により検知される蓋放熱板11の温度は急激に上昇する。
【0063】
このようにして、蓋体2に設けられた蓋温度センサ8により検知された温度が所定の温度(本実施の形態の炊飯器においては、70℃)以上に到達したとき、炊飯量判定のための時間計測を終了する。この時間計測結果は、第一のマイコン30aの炊飯制御部10において演算処理され、当該炊飯器における炊飯量が判定される。炊飯動作においては、炊飯量が多くなればなるほど、「炊飯量判定」ステップにおける計測時間が長くなる。このため、「炊飯量判定」ステップにおける時間計測結果を知ることにより、炊飯量の判定を行うことができる。「炊飯量判定」ステップにおいて判定された当該炊飯動作における炊飯量または、時間計測結果は、第二のマイコン30bの第3の記憶部25に記憶される。
【0064】
炊飯制御部10においては、炊飯量の判定結果に基づいて、炊飯動作における炊飯電力を決定する。このように決定された炊飯電力に応じて、以後の沸騰維持工程の「沸騰1」ステップ、及び「沸騰2」ステップにおいて用いられる鍋加熱コイル5と蓋加熱コイル6の加熱量が制御される。
【0065】
前述の「炊飯量判定」ステップにおける炊飯量を判定するための時間計測が終了すると、「パワーダウン(PD)」ステップへ移行する。この「パワーダウン(PD)」ステップにおいては、判定された炊飯量に応じた時間と加熱量で、鍋3の温度が115℃を維持するよう鍋温度センサ7からのデータに基づき調温動作が行われる。
【0066】
炊き上げ工程終了後、沸騰維持工程に移行する。沸騰維持工程においては、鍋3に水が存在する間は、鍋温度センサ7の検知温度が、水の沸点(通常100℃近傍)で沸騰状態を維持するように、鍋加熱コイル5に高周波電流を供給し、鍋3を誘導加熱する。そして、沸騰維持工程が経過していくと、鍋3内の水が蒸発して、鍋3内に水がなくなり、鍋3の温度が急激に上昇する。
【0067】
鍋温度センサ7の検知温度が、水の沸点以上(通常130℃近傍)に到達すると、第一のマイコン30aの炊飯制御部10は、鍋3内に水がなくなったと判断して、沸騰維持工
程を終了する。この沸騰維持工程は、米澱粉を糊化させる工程であり、炊飯後の飯の糊化度は100%近くに達するが、この沸騰維持工程終了時には、糊化度は50〜60%程度となる。
【0068】
沸騰維持工程においては、炊飯量に応じて沸騰状態が維持される「沸騰1」ステップ及び「沸騰2」ステップの炊飯動作が行われる。「沸騰1」ステップでは、判定された炊飯量に応じた加熱量で鍋3が加熱される。但し、7分経過後に鍋温度が115℃に到達しない場合には「湯炊き」ステップに移行する。「沸騰1」ステップにおいて、鍋温度が115℃に達した場合には、「沸騰2」ステップへ移行する。
【0069】
「沸騰2」ステップにおいても炊飯量に応じた加熱量で鍋3が加熱され、130℃に到達したとき、蒸らし工程の「休止」ステップへ移行する。ただし、「沸騰1」及び「沸騰2」を合わせて19分経過しても130℃に到達しない場合には、炊飯動作を終了する。
【0070】
蒸らし工程は、沸騰維持工程に引き続き、米澱粉を糊化させる工程であり、蒸らし工程の開始時には、糊化度は50〜60%程度であったものが、蒸らし工程終了時、すなわち、炊飯終了時には、糊化度は100%近くに達する。この蒸らし工程では、炊き上がったごはんを蒸らして鍋3内のご飯を均一に仕上げる工程であり、この工程で炊飯動作が終了する。
【0071】
蒸らし工程の「休止」ステップにおいては、3分間加熱せず、そのままの状態を維持する。「追炊き」ステップでは、前述の「炊飯量判定」ステップにおいて判定された炊飯量に応じた時間と加熱量で追炊きを実行する。「蒸らし」ステップにおいては、5分間加熱しない状態を維持して、蒸らしを実行する。「蒸らし」ステップの完了により、当該炊飯プログラムによる炊飯動作は終了する。その時の日付、時刻と共に、第3の記憶部25に記憶される。
【0072】
以上のように、本実施の形態の炊飯器においては、使用者により指定された炊飯プログラムにおける浸水工程(「待機」ステップ、「前炊き1」ステップ、「前炊き2」ステップ)、炊き上げ工程(「ならし」ステップ、「炊飯容量判定」ステップ、「パワーダウン(PD)」ステップ)、沸騰維持工程(「沸騰1」ステップ、「沸騰2」ステップ)、及び蒸らし工程(「休止」ステップ、「追炊き」ステップ、「蒸らし」ステップ)の各工程が、炊飯動作状況、各センサの検知データ、判定された炊飯量等に基づいて適宜実行される。
【0073】
本実施の形態の炊飯器では、炊飯動作において実行された各ステップの終了時点で当該ステップを通過したことが第3の記憶部25に記憶される。また、第3の記憶部25には、各ステップへの移行経緯における、次のステップへ移行の条件(移行理由)が記憶される。
【0074】
本実施の形態の炊飯器において、第二のマイコン30bの不揮発性メモリである第3の記憶部25に記憶されるデータには、上記のように使用者が現在までに指定した各炊飯動作がいずれのステップ(工程)を経過して実行されたかを示すデータや、各ステップへの移行理由を示すデータ等の各種情報が含まれるが、その他に、炊飯動作において、ふきこぼれた回数である「ふきこぼれ回数」、最初にふきこぼれを検知した工程名(又はステップ名)である「ふきこぼれ初検知工程名」、炊飯開始時の商用電源の周波数を検知した「電源周波数」、最初に異常電圧を検知した工程名(又はステップ名)である「異常電圧初検知工程」、異常電圧を検知した回数である「異常電圧回数」、最初に停電を検知した工程名(又はステップ名)である「停電初検知工程名」、停電を検知した回数である「停電検知回数」、最後に長期間(例えば16秒以上)の停電を検知した工程名(又はステップ
名)である「長期停電最後検知工程名」、炊飯動作時の最大電源電圧値である「炊飯時最大電圧値」、炊飯動作時の最小電源電圧値である「炊飯時最小電圧値」、保温動作時の最大電源電圧値である「保温時最大電圧値」、保温動作時の最小電源電圧値である「保温時最小電圧値」及び各センサ(鍋温度センサ7、蓋温度センサ8、室温度センサ20等)における異常状態(断線等)をビットで示す「異常状態」等が含まれる。また、第3の記憶部25に記憶されるデータには、実行された炊飯プログラムにおける各ステップに要した時間情報、及び各ステップにおける温度の推移を示す温度情報が含まれる。
【0075】
次に、本実施の形態の炊飯器において、第二のマイコン30bの第3の記憶部25に記憶される前述の「ふきこぼれ回数」及び「ふきこぼれ初検知工程名」における「ふきこぼれ」を検知するためのふきこぼれ検知手段であるふきこぼれ検知部35について、図4を用いて説明する。
【0076】
図4は、本実施の形態における炊飯器のふきこぼれ検知部35を説明するための部分拡大断面図である。
【0077】
ふきこぼれ検知部35は、蓋体2に設けられた蒸気筒31に形成されている。蒸気筒31は、炊飯動作中に生じるご飯からの蒸気を炊飯器外部に排出するものである。ご飯からの蒸気は、蓋放熱板11の孔11aを通って、蒸気筒31の蒸気進入口31aから蒸気筒31の内部に入り、排気口31bから炊飯器の外部へ排出される。蒸気進入口31aには炊飯動作中の沸騰時に生じる糊状のねばり体(おねば)が進入できるよう構成されている。
【0078】
図4に示すように、蒸気筒31の内部には、円柱状のマグネット32が設けられている。蒸気筒31の底面(蓋体2が閉成状態における最下面)に、図に示すように斜面が形成され、その斜面の最下位置に蒸気進入口31aが形成されている。マグネット32は、蒸気筒31の斜面に張り付けられた斜面案内板33上を自由に上下に転がることができるよう配設されている。蓋体2が閉成状態にあるときは、マグネット32は、通常は重力により最下位置にあり、蒸気進入口31aの真上に所定距離(斜面案内板33の板厚分の距離)を有して配置されている。また、ふきこぼれ検知部35には、マグネット32が最下位置(蒸気進入口31aの真上位置)にあることを検知するリードスイッチ34が蓋体2に設けられている。
【0079】
リードスイッチ34は、マグネット32が最下位置(蒸気進入口31aの真上位置)にあるときのマグネット32の磁力にのみ反応してオン状態となるよう設定されている。したがって、マグネット32が最下位置から外れて、上方に移動したとき(図4において2点鎖線にて示すようにマグネット32が斜め上方に移動したとき)、リードスイッチ34はオフ状態となり、マグネット32の上方への移動を検知することができる。
【0080】
本実施の形態における炊飯器の炊飯動作中の「ふきこぼれ」は、沸騰時に生じる糊状のねばり体(おねば)が、蒸気進入口31aから蒸気筒31内に進入し、その「おねば」が鍋3内の圧力上昇により押し上げられてマグネット32を斜面案内板33上を上方へ転がり移動したときをいう。したがって、上記の「ふきこぼれ」が発生すると、マグネット32がリードスイッチ34から遠ざかり、リードスイッチ34がオフ状態となる。
【0081】
このように、リードスイッチ34のオフ状態により、「ふきこぼれ」を検知することができる。なお、マグネット32は、蒸気圧のみでは移動せず、「おねば」の上昇に伴い移動するように、マグネット32の重量及び蓋体2が閉成状態における斜面案内板33の水平面に対する傾斜角度が設定されている。なお、本実施の形態の炊飯器においては、マグネット32を円筒状のものを用いたが、「おねば」の進入により移動する形状のものであ
ればどんな形状(球体を含む)のものでも用いることが可能である。
【0082】
上記のように構成されたふきこぼれ検知部35においては、「ふきこぼれ」の発生を検知すると、その信号は、第一のマイコン30aの炊飯検知部29に送信され、炊飯検知部29において、最初の「ふきこぼれ」が炊飯プログラムのいずれのステップで発生したか確認すると共に、「ふきこばれ」の発生回数をカウントする。
【0083】
このように、炊飯検知部29において検知された「ふきこぼれ初検知工程名」及び「ふきこぼれ回数」は、第二のマイコン30bにおける第3の記憶部25に記憶される。なお、使用者が米量に対して所定の量以上の水を鍋3内に入れて炊飯を行った場合、沸騰維持工程におけるふきこぼれ回数は、判定された炊飯量に対する標準ふきこぼれ回数より多くなる。このため、第3の記憶部25のデータを解析することにより、そのときの炊飯動作において使用者が米量に対して適切な量の水を鍋内に入れているか否かを把握することが可能となる。
【0084】
以上のように、本実施の形態の炊飯器におけるふきこぼれ検知部35は、蒸気筒31、マグネット32、斜面案内板33、及びリードスイッチ34で構成されている。
【0085】
本実施の形態の炊飯器において、「電源周波数」、「停電初検知工程名」、「停電検知回数」、及び「長期停電最後検知工程名」を検知する停電検知手段(図示せず)は、電源電圧検知部27の内部に構成されている。停電検知手段は、同期パルス発生手段(図示せず)とパルスカウンタ(図示せず)で構成されている。同期パルス発生手段は、交流電源電圧を分圧する分圧抵抗(図示せず)と前記分圧抵抗の出力に応じてオンオフするトランジスタ(図示せず)で構成され、電源電圧波形に同期して、ハイまたはロー信号を出力する。
【0086】
パルスカウンタは、同期パルス発生手段の所定時間当りのパルス数をカウントし、所定パルス数を超えると60Hz、所定パルス以下なら50Hzと判定する。また、停電検知手段は、パルスカウンタが、同期パルス発生手段のパルスが予め設定した時間(20ms)の間に、パルスをカウントしない場合に停電と判断する。
【0087】
また、本実施の形態の炊飯器においては、「電源周波数」、「停電初検知工程名」、「停電検知回数」、及び「長期停電最後検知工程名」は、電源電圧検知部27(図2参照)にある停電検知手段で、商用電源26の電圧を常時監視することにより検知される。停電検知手段による監視結果を示すデータは、第一のマイコン30aの炊飯検知部29に送信されて、第2の記憶部24及び第二のマイコン30bの第3の記憶部25に記憶されるよう構成されている。
【0088】
なお、停電検知手段が、「電源周波数」を第3の記憶部25に記憶するタイミングは、炊飯開始したときである。また、停電検知手段が、「停電初検知工程名」を第3の記憶部25に記憶するタイミングは、停電を検知したときである。さらに、停電検知手段が、「停電検知回数」、及び「長期停電最後検知工程名」を第3の記憶部25に記憶するタイミングは、当該炊飯動作が終了した時点である。
【0089】
「異常電圧初検知工程」、「異常電圧回数」、「炊飯時最大電圧値」、「炊飯時最小電圧値」、「保温時最大電圧値」、及び「保温時最小電圧値」を検知する電源電圧検知部27の中にある異常電圧検知手段(図示せず)は、複数の抵抗からなる分圧回路(図示せず)と前記分圧回路の出力をピークホールドするピークホールド回路(図示せず)で構成されている。なお、ピークホールド回路は、トランジスタを用いたエミッタフォロア回路(図示せず)と、電解コンデンサ(図示せず)と、電解コンデンサを放電する放電抵抗(図
示せず)で構成されている。異常電圧検知手段は、交流電源電圧に相当する電圧値Voutを、AD変換器を介して8ビット換算し、商用電源の異常電圧、商用電源の最大電圧値、商用電源の最小電圧値を検知している。
【0090】
前述の「異常電圧初検知工程」、「異常電圧回数」、「炊飯時最大電圧値」、「炊飯時最小電圧値」、「保温時最大電圧値」及び「保温時最小電圧値」は、電源電圧検知部27(図2参照)にある異常電圧検知手段において商用電源26の電圧を常時監視することにより検知される。異常電圧検知手段による監視結果を示すデータは、第一のマイコン30aの炊飯検知部29に送信されて、第2の記憶部24及び第二のマイコン30bの第3の記憶部25に記憶されるよう構成されている。
【0091】
異常電圧検知手段が、「異常電圧初検知工程」を第3の記憶部25に記憶するタイミングは、異常電圧を検知したときであり、「異常電圧回数」を第3の記憶部25に記憶するタイミングは、当該炊飯動作が終了した時点である。
【0092】
さらに、異常電圧検知手段が、炊飯動作時の最大電源電圧値である「炊飯時最大電圧値」、及び炊飯動作時の最小電源電圧値である「炊飯時最小電圧値」、保温動作時の最大電源電圧値である「保温時最大電圧値」、及び保温動作時の最小電源電圧値である「保温時最小電圧値」を第3の記憶部25に記憶するタイミングは、当該炊飯動作及び保温動作が終了した時点である。
【0093】
上記のように、第二のマイコン30bの第3の記憶部25には、過去から現在までに実行された各炊飯動作における各ステップ(工程)の推移、各ステップへの移行理由の他に、「電源周波数」、「ふきこぼれ回数」、「ふきこぼれ初検知工程名」、「異常電圧初検知工程」、「異常電圧回数」、「停電初検知工程名」、「停電検知回数」、「長期停電最後検知工程名」、「炊飯時最大電圧値」、「炊飯時最小電圧値」、「保温時最大電圧値」、「保温時最小電圧値」、及び「異常状態」等のデータが記憶される。
【0094】
また、第3の記憶部25には、実行された炊飯プログラムにおける各ステップに要した時間情報、及び各ステップにおける温度の推移を示す温度情報が記憶される。これらのデータが、第3の記憶部25に記憶されるタイミングは、各炊飯動作が終了した時点でもよい。なお、第3の記憶部25にデータが記憶されるタイミングとしては、そのデータが取得された時点でよく、各工程又はステップにおける開始時点又は終了時点でもよい。上記のように、第3の記憶部25に記憶された各種データは、表示部12(図2参照)で表示されるよう構成されている。
【0095】
なお、第3の記憶部25にデータが記憶されるタイミングとしては、所定時間、例えば1秒毎もよい。さらに、鍋温度センサ7、蓋温度センサ8、及び室温度センサ20の検知温度を所定時間毎、例えば1秒毎に記憶させてもよい。
【0096】
また、データは、第2の記憶部24(RAM)に保存し、炊飯終了後、または、保温終了後、または、使用者が炊飯器の動作を停止する切動作後にそれらのデータすべてを、第3の記憶部25に一括して書き込むことにより、第3の記憶部25のデータ書き込み回数を少なくすることが可能となる。
【0097】
また、本実施の形態の炊飯器において、第3の記憶部25に記憶される情報には、炊飯器の動作回数が含まれる構成としてもよい。このように構成された本実施の形態における炊飯器においては、当該炊飯器が何回炊飯動作を行ったかの情報を持つことができるため、使用者から苦情があった場合、使用者の誤使用なのか、部品の経年変化による商品の劣化なのかを判断することが可能となる。
【0098】
さらに、第二のマイコン30aは、フラッシュマイコンであり、動作保証電圧範囲は2.0Vから5.5Vに設定され、過去の炊飯動作における必須のデータが記憶される不揮発性メモリである第3の記憶部25を含んで構成されている。
【0099】
第3の記憶部25は、不揮発性メモリ(いわゆるEEPROM)が第二のマイコン30bに内蔵されたものであり、一度書き込んだデータは消去することができず、電源の遮断や、リセット(第二のマイコン30bの動作保証電圧範囲は2.0V未満)がかかっても記憶されているデータは保持される機能を有する。したがって、前述のように第3の記憶部25に逐次記憶された過去の各炊飯動作における各種データは、正常動作、異常動作にかかわらず、当該炊飯器内部において確実に保持される。
【0100】
本実施の形態の炊飯器においては、上記のように第二のマイコン30bの不揮発性メモリである第3の記憶部25に、過去の炊飯動作における各種データが記憶され、保持されている。このため、当該炊飯器において不都合な状態、例えばご飯が美味しく炊けない、指定した炊飯プログラムに従って動作していない等の状態が生じて、使用者が、販売店又はメーカ等に故障として持ち込んだ場合には、販売店又はメーカ等が、当該炊飯器において使用者がどのような炊飯プログラムを指定して、実際には、どのような工程(ステップ)が実行され、各工程においてどのような動作状況であるか等を、第3の記憶部25に記憶されたデータを取り出すことにより、容易に、且つ確実に把握することができる。
【0101】
また、正常動作にもかかわらずご飯が美味しく炊けないという使用者の苦情に対して、使用者に、お米の研ぎ具合等の使用方法を聞くとともに、当該炊飯器に記憶されている過去の情報を分析することにより、ご飯を美味しく炊くための適切なアドバイスを使用者にすることが可能となる。
【0102】
本実施の形態の炊飯器においては、第二のマイコン30bの第3の記憶部25に記憶されているデータが、炊飯器の外部に取り出せるように構成されている。具体的には、炊飯器本体1内部にデータ取り出し用端子が設けられている。なお、第3の記憶部25のデータを外部に取り出すために、そのデータを、半導体集積回路(ICチップ)に記憶させて、炊飯器本体1内部のアンテナを介して非接触で機器外部の装置に送信できるように構成してもよい。また、第3の記憶部25に記憶されたデータは、インターネットを介して伝送可能に構成することも可能である。
【0103】
上記のように使用者が持ち込んだ炊飯器に関する過去の炊飯状況は、当該炊飯器の第3の記憶部25に記憶されているデータを入手することにより、販売店又はメーカ等において容易に、且つ確実に把握できるため、異常状態の原因追及が容易となり、故障箇所の特定が簡単となる。また、異常状態の原因が使用者側にある場合には、その時の炊飯動作を示すデータを使用者に提示することにより、異常状態の原因を使用者に納得させることが容易となる。
【0104】
一方、販売店又はメーカ等において、第3の記憶部25に記憶されているデータから故障箇所が特定された場合には、当該炊飯器の早期の補修が可能となり、場合によっては、故障した部品を素早く販売店に届けて交換することが可能となる。なお、炊飯器における第3の記憶部25に記憶されたデータが、インターネットを介してメーカが入手できるように構成された場合には、メーカにおいて当該炊飯器に関する故障箇所を特定して、部品交換の場合には、直ぐ交換部品を販売店に届けることが可能となり、素早い対応が可能となる。
【0105】
上記実施に形態において、家庭電化機器として炊飯器を例に挙げて説明したが、本発明
はこのような炊飯器に特定されるものではなく、他の家庭電化機器、例えばフラッシュマイコンを有する電気湯沸かし器、IHクッキング機器、エアコン、食器洗い乾燥機、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機等の各種機器が含まれる。
【0106】
上記のように、本発明に係る家庭電化機器においては、フラッシュメモリを内蔵するマイコンであるフラッシュマイコンが家庭電化機器に設けられているため、小型で簡単な構成により、家庭電化機器に関する過去から現在までの動作状況を示す必須の各種データを保存して、当該家庭電化機器における異常状態を使用者が容易に認識できると共に、販売店及びメーカ等においても当該家庭電化機器に関する過去から現在に至るまでの動作状況を正確に把握することが可能となる。
【0107】
なお、上記実施の形態は、本発明の特徴を詳細に説明するものであるが、この実施の形態における開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものであり、各構成要素の組合せや順序の変化は、特許請求の範囲及び本発明の技術的思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のように、本発明に係る家庭電化機器は、異常状態に対して確実で適切な処置をとることが可能となるため、家庭電化機器の分野において有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 炊飯器本体
2 蓋体
3 鍋
4 鍋収納部
5 鍋加熱コイル(被駆動部)
6 蓋加熱コイル(被駆動部)
7 鍋温度センサ(検知手段)
8 蓋温度センサ(検知手段)
9 操作基板
10 炊飯制御部(制御手段)
11 蓋放熱版
12 表示部(表示手段)
13 操作部
14 上面開口部
15 ヒンジ軸
20 室温度センサ(検知手段)
22 報知部(報知手段)
23 第1の記憶部(第1の記憶手段)
24 第2の記憶部(第2の記憶手段)
25 第3の記憶部(第3の記憶手段)
26 商用電源
27 電源電圧検知部(停電検知部)
28 加熱駆動部(駆動手段)
29 炊飯検知部
30a 第一のマイクロコンピュータ(第一のマイコン)
30b 第二のマイクロコンピュータ(第二のマイコン)
32 マグネット
33 斜面案内板
34 リードスイッチ
35 ふきこぼれ検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作プログラムが格納された第1の記憶手段と、被駆動部を駆動する駆動手段と、前記動作プログラムに従い前記駆動手段を制御する制御手段と、前記被駆動部の状況を検知する検知手段と、前記検知手段が検知した前記被駆動部の状況を示す情報と前記制御手段が前記駆動手段を制御した内容を示す情報とを記憶する第2の記憶手段、及び 前記第2の記憶手段に記憶されている情報が前記動作プログラムの所定のタイミングで書き込まれる第3の記憶手段とを具備し、少なくとも前記第1の記憶手段と前記第2の記憶手段が第一のマイクロコンピュータに内蔵されており、前記第3の記憶手段は第二のマイクロコンピュータに内蔵されてあり、前記第3の記憶手段は、前記第二のマイクロコンピュータの動作電圧以下でも記憶を保持するように構成された家庭電化機器。
【請求項2】
第3の記憶手段は、不揮発性記憶手段で構成された請求項1に記載の家庭電化機器。
【請求項3】
所定のタイミングを、動作プログラムの終了時点とした請求項1又は2に記載の家庭電化機器。
【請求項4】
動作プログラムは複数の動作工程を有し、所定のタイミングを、各動作工程の開始時点又は終了時点とした請求項1又は2に記載の家庭電化機器。
【請求項5】
家庭電化機器への電源供給の停止を検知する停電検知手段を有し、所定のタイミングを、前記停電検知手段が電源供給の停止を検知したときとした請求項1又は2に記載の家庭電化機器。
【請求項6】
炊飯器の形態をとった請求項1〜5のいずれか1項に記載の家庭電化機器。
【請求項7】
電気湯沸かし器の形態をとった請求項1〜5のいずれか1項に記載の家庭電化機器。
【請求項8】
第3の記憶手段に記憶される情報が、時間情報及び/又は温度情報である請求項1〜7のいずれか1項に記載の家庭電化機器。
【請求項9】
第3の記憶手段に記憶された情報を表示する表示手段を備えた請求項1〜8のいずれか1項に記載の家庭電化機器。
【請求項10】
第3の記憶手段に記憶された情報を、音又は音声で報知する報知手段を備えた請求項1〜9のいずれか1項に記載の家庭電化機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−10939(P2011−10939A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158730(P2009−158730)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】