容器ホルダ
【課題】コストダウンや異音発生防止を可能とした容器ホルダを提供する。
【解決手段】容器ホルダCHは、基材12の外側に配設した表皮14の一部をなし、有底筒部30により画成された容器収容部20の内壁面を構成するよう陥凹成形された被覆部32と、被覆部32に一体成形されて容器収容部20の内側へ延出し、該容器収容部20へ収容された飲料容器に当接して撓曲変形可能な容器保持部34とから構成されている。容器保持部34は、被覆部32の周方向へ所要長に延在する舌片状を呈しており、該被覆部32の内周面に複数個が形成されている。被覆部32および容器保持部34は、反応射出成形技術に基づいて表皮14を成形するに際し、該表皮14と一体的に成形される。
【解決手段】容器ホルダCHは、基材12の外側に配設した表皮14の一部をなし、有底筒部30により画成された容器収容部20の内壁面を構成するよう陥凹成形された被覆部32と、被覆部32に一体成形されて容器収容部20の内側へ延出し、該容器収容部20へ収容された飲料容器に当接して撓曲変形可能な容器保持部34とから構成されている。容器保持部34は、被覆部32の周方向へ所要長に延在する舌片状を呈しており、該被覆部32の内周面に複数個が形成されている。被覆部32および容器保持部34は、反応射出成形技術に基づいて表皮14を成形するに際し、該表皮14と一体的に成形される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器ホルダに関し、更に詳細には、外側に表皮を配設した車両内装部材に外方へ開口する有底筒状の容器収容部を画成し、各種寸法の飲料容器を該容器収容部に保持するようにした容器ホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年生産される殆どの自動車では、乗員室内の快適性向上に寄与する室内装備品の一つとして、コーヒーやジュース等の飲料水を収容したカン、ビン、ペットボトル、アルミボトルまたは紙製コップ等の種々飲料容器を受容保持可能な容器ホルダが、乗員室内に配設されたインストルメントパネル、フロアコンソール、アームレスト、ドアパネル等の車両内装部材の所要位置(少なくとも乗員の手が届く範囲)に配設されている。例えば図13は、概略的な形状で例示した車両内装部材10の断面図であって、この車両内装部材10を構成する基材12の上面(外面)所要位置には、上方(外方)へ開口する容器収容部20からなる容器ホルダCH1が設けられている。この容器ホルダCH1は、常には車両内装部材10の上面に開口しており、上方からの飲料容器Bを受容および取り出しが許容されるようになっている。
【0003】
また前述した種々飲料容器Bは、形状、サイズ、材質等が多種に亘っている。このため容器ホルダCH1は、各種寸法の飲料容器に対応してこれを安定的に受容保持し得る汎用性が要求されるため、例えば特許文献1または特許文献2等に開示された構成のもの等が実用化されている。図14は、特許文献1に開示された容器ホルダと類似構成のものを概略的に例示した説明断面図であって、この容器ホルダCH1は、上方へ開口した容器収容部20を画成した有底筒体状の容器収容部材22からなり、容器収容部材22の外側壁面には、容器収容部20に対して出没可能に配設されて常には板バネ26で突出した状態に付勢保持される容器保持体24を装備している。従って、容器収容部20へ受容される飲料容器Bに押圧されて容器保持体24が容器収容部20から適宜に後退変位することで、各種寸法の飲料容器Bの受容を許容し得ると共に、板バネ26の弾力付勢により何れの飲料容器Bでも安定的に保持するようになっている。なお図13では、図14に例示した容器ホルダCH1を装備した車両内装部材10を例示している。
【0004】
一方、図15は、特許文献2に開示された容器ホルダを概略的に例示した説明断面図であって、この容器ホルダCH1は、上方へ開口した容器収容部20を画成した有底筒体状の容器収容部材22からなり、容器収容部材22の上部開口部の周囲には、ゴムまたはウレタン等を材質として柔軟性を有する容器保持片28を装備している。従って、受容される飲料容器Bに押圧されて容器保持片28が下方へ撓曲的に変形することで、各種寸法の飲料容器Bの受容を許容し得ると共に、容器保持片28の復帰弾力により何れの飲料容器Bでも安定的に保持するようになっている。
【0005】
また、図13に例示した車両内装部材10は、その質感向上および触感向上等を図る目的で、前述した基材12の外側に合成樹脂製の表皮14を配設した構造となっている。この表皮14は、その製造方法から分類すると、(1)樹脂シート材から真空成形されたもの、(2)樹脂粉末からパウダースラッシュ成形されたもの、(3)ウレタン材からスプレー成形されたもの、等が好適に実施に供されている。
【特許文献1】実開平6−050969号公報
【特許文献2】特開平8−295169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図14に例示した容器ホルダCH1および図15に例示した容器ホルダCH1では、各種寸法の飲料容器Bを安定的に保持するため、容器収容部材22とは別体に形成された容器保持体24や容器保持片28を装備する必要があるため、部品点数増加や作業工数増加等により製造コストが嵩む問題を内在していた。また、容器収容部20を画成する容器収容部材22が、硬質な樹脂成形部材から形成されて該容器収容部20へ露出しているため、この容器収容部20へ受容される飲料容器Bが直接的に接触するようになり、殊にアルミ缶やアルミボトル等の金属材質からなる飲料容器Bの場合には、受容する時や取り出す時、または走行中の振動等で異音が発生する等の不都合もあった。
【0007】
また前述した表皮14は、前述した各種成形技術の技術的特性から、外面形状や厚み等を自由に設定することが不可能となっており、基材12の外面形状に合致した形状に成形して該基材12の外面にだけ装着するようになっていた。すなわち表皮14は、図13に例示したように、容器ホルダCH1を構成する容器収容部材22の内壁面を被覆するように成形することが困難な場合が多く、この表皮14の一部で内壁面を被覆するという技術的思想は殆どなかった。
【0008】
従って本発明では、反応射出成形技術に基づいて表皮を成形するようにすることで、容器収容部の内壁面を被覆する被覆部および飲料容器を保持する容器保持部を該表皮の一部に形成するようにして、コストダウンや異音発生防止を可能とした容器ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、
外側に表皮を配設した車両内装部材に外方へ開口する有底筒状の容器収容部を画成し、各種寸法の飲料容器を該容器収容部に保持するようにした容器ホルダにおいて、
前記表皮の一部をなし、前記容器収容部の内壁面を構成するよう陥凹成形された被覆部と、
前記被覆部に一体成形されて前記容器収容部の内側へ延出し、該容器収容部へ収容された飲料容器に当接して撓曲変形可能な容器保持部とから構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る容器ホルダによれば、容器保持部が表皮の一部から形成されているため、従来の容器ホルダのような容器保持体や容器保持片を別途準備する必要がなくなり、これらを製作するための作業工程や組み付けるための作業工程が削減されるので、大幅なコストダウンが可能となる有益な効果を奏する。また容器収容部の内壁面は、表皮の一部から形成された被覆部で構成されているので、アルミ缶やアルミボトル等の金属製の飲料容器であっても、受容する時や取り出す時、または走行中の振動等により異音が発生することが好適に防止される等の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明に係る容器ホルダにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお、図13〜図15に既出の部材・部位と同一の部材・部位については、同一の符号を付して説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、車両内装部材の所要位置に設けられた好適実施例に係る容器ホルダを例示した概略斜視図であり、図2は、図1のII−II線断面図であり、図3は、本実施例の容器ホルダが設けられた車両内装部材を概略的な形状で例示した断面図である。本実施例の容器ホルダCHは、外側に表皮14を配設した車両内装部材(インストルメントパネルやフロアコンソール等)10に外方へ開口する有底筒状の容器収容部20を画成し、各種寸法の飲料容器Bを該容器収容部20に保持し得るようになっている。しかも、表皮14が後述する反応射出成形技術に基づいて成形されるため、この表皮14の一部をなして容器収容部20の内壁面を構成する被覆部32と、この被覆部32に一体成形された容器保持部34とを有した構造となっている。
【0013】
車両内装部材10を構成する基材12は、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)等の合成樹脂素材からインジェクション成形技術に基づいて成形されたもので、当該の車両内装部材10の意匠形状に応じた所定の形状・サイズに形成されている。そして、容器ホルダCHの容器収容部20を画成するための有底筒部30が、この基材12の上面所要位置に一体的に成形されており、容器収容部20が基材12の上面から外方へ開口している。この有底筒部30は、図5に例示するように、500mlのペットボトルやアルミボトルは勿論、これ以上の内容量を有する大型の紙製コップや紙製容器等が収容可能なサイズに設定されており、基材12と略同等の厚みに形成されていて充分な剛性を有している。なお本実施例では、図4に例示したように、有底筒部30を円筒形態とした場合を例示したが、形状はこれに限定されるものではなく、例えば楕円筒形態や多角筒形態等としてもよい。
【0014】
また本実施例では、有底筒部30を基材12に一体的に成形した形態を例示しているが、インジェクション成形型による成形作業上または脱型作業上等の都合により一体成形が不可能な場合は、該有底筒部30を基材12とは別体に成形するようにして後作業工程で組み付けるようにしてもよい。
【0015】
表皮14は、公知技術である「反応射出成形(Reaction Injection Molding成形)技術」に基づいて成形されたウレタン成形材である。この反応射出成形技術は、成形型内に画成した所定形状のキャビティに向けて原料であるポリオールとイソシアネートとを攪拌しながら射出し、これらを該キャビティ内で反応させることで、該キャビティと同一形状のウレタン成形材を成形する方法である。従って、例えば部位毎に厚みが異なるシート状部材や、複雑な外面凹凸形状を有する部材、表側外面形状と裏側外面形状とが異なる部材等、一般的なインジェクション成形技術と同様に、成形型から脱型可能な形状であれば多種多様な形状のウレタン成形材が成形可能な特徴を有している。
【0016】
このような反応射出成形技術に基づいて成形されるウレタン成形材である表皮14は、後述すると共に図8等に例示するように、予備成形した前述の基材12をセットし得る表皮成形型40のキャビティ56内で成形するようになっており、成形すると同時に基材12へ被着形成されたものである。そして、基材12をセットしたもとで型閉めした際に画成されるキャビティ56は、基材12の外面全体に臨む第1空間56Aと、この第1空間56Aに連通して有底筒部30の内壁面に臨む第2空間56Bと、この第2空間56Bに連通する第3空間56C,56Cとからなっている。従って、このキャビティ56内全体へ射出されたウレタン原料Uが硬化した際には、図8に例示したように、第1空間56Aにおいて基材12の外面全体を被覆する表皮14が成形され、第2空間56Bにおいて有底筒部30の内壁面全体を被覆する被覆部32が形成され、第3空間56Cにおいて容器保持部34が形成されるようになり、表皮14の成形と同時に被覆部32および容器保持部34が形成され得るようになる。
【0017】
これにより本実施例の容器ホルダCHは、表皮14の一部をなし、有底筒部30により画成された容器収容部20の内壁面を構成するよう陥凹成形された被覆部32と、この被覆部32に一体成形されて容器収容部20の内側へ延出し、該容器収容部20へ収容された飲料容器Bに当接して撓曲変形可能な容器保持部34とから構成されている。すなわち、容器ホルダCHを構成するこれら被覆部32および容器保持部34は、基材12をセットした表皮成形型40を使用した反応射出成形技術に基づいて表皮14を成形するに際し、有底筒部30の内壁面に密着した状態で該表皮14と一体的に成形されたものである。
【0018】
被覆部32は、図2および図4に例示したように、有底筒部30の内壁面全面を被覆するよう陥凹成形され、容器保持部34,34が形成されている位置を基準として、これより上方(開口側)に位置する上側部分32Aの厚みが下方(底面側)に位置する下側部分32Bの厚みより小さく設定されており、これにより容器収容部20は底面側が一回り小径となった段差形態とされている。この段差は、容器保持部34の板厚より大きく設定させればよく、基材12に段差を設けて被覆部32の厚みを一定にしても形成することができる。これは、後述すると共に図12に例示するように、表皮成形型40による成形完了後に脱型時に、脱型作業に支障を来たさないようにするためである。なお、上側部分32Aの厚みは1mm程度、下側部分32Bの厚みは2mm程度とされる。但し、図8〜図11に例示する後述の脱型方法を採用する場合には、上側部分32Aおよび下側部分32Bの厚みを同一として段差を設けなくてもよい。
【0019】
容器保持部34は、前述した被覆部32の周方向へ所要長に延在する舌片状を呈しており、本実施例の容器ホルダCHでは、2つが該被覆部32の内周面に対向的に形成されている。これら容器保持部34は、延在長L1が30mm程度、厚みが1mm程度に設定されているため、ウレタンが具有する柔軟性が充分に発現されて飲料容器Bに当接すると適度に撓曲変形可能となっている。従って図5に例示したように、外形寸法が小さい飲料容器Bを容器収容部20へ収容した場合には変形量が小さく、外形寸法が大きい飲料容器Bを該容器収容部20へ収容した場合には変形量が大きくなり、外形寸法が異なる各種寸法の飲料容器Bの安定的な保持を図り得る。
【0020】
次に、前述した表皮14と、被覆部32および容器保持部34の成形作業工程につき、図8〜図11を引用して説明する。そこで、成形作業工程を説明するに先立ち、前述した表皮成形型40の構成につき概略的に説明する。
【0021】
図6(a)は、表皮14を成形するための表皮成形型40を、有底筒部30に対応した部位で破断した縦断面図であり、図6(b)は、図6(a)のVIb−VIb線断面図である。この表皮成形型40は、基材12をセットする上型42および該上型42と対をなす下型44とからなり、上型42には前述した有底筒部30が突入する凹型部46が形成されていると共に、下型44には該有底筒部30の内側へ突入する凸型部48が設けられている。そして凸型部48は、図7(a)に例示するように、下型44に一体成形された固定型部50と、この固定型部50の中央凹部へ分離可能に整合する可動型部52とからなり、これら固定型部50と可動型部52との間には、容器保持部34,34を形成するための前述の第3空間56C,56Cが画成されるようになっている。また可動型部52は、下型44内を貫通する支持軸54の先端に取り付けられており(図6)、この支持軸54が下型44に対して軸方向に沿ったスライド移動および回動が可能となっていることにより、下型44に対する昇降移動および回動が可能となっている。すなわち可動型部52は、前述した一対の容器保持部34,34を成形するための所謂「入れ子」である。
【0022】
このような表皮成形型40を使用して表皮14、被覆部32および容器保持部34を成形する場合は、先ず図6(a),(b)に例示するように、前述した可動型部52を固定型部50の中央凹部へ整合させておき、予備成形した基材12を上型42のセット部へセットしたもとで、上型42と下型44とを近接移動させて表皮成形型40の型閉めを行なう。これにより、下型44と基材12との間に表皮14が成形されるキャビティ56の第1空間56Aが画成され、有底筒部30へ突入した凸型部48と該有底筒部30との間に被覆部32が成形される第2空間56Bが画成されると共に、固定型部50と可動型部52との境界部分に容器保持部34,34が成形される第3空間56C,56Cが画成される。
【0023】
前述した表皮成形型40の型閉めが完了したら、図示しない注入口を介してウレタン原料Uの注入作業を行なう。ウレタン原料Uは、前述したキャビティ56の各空間56A,56B,56Cへ順次充填され、適宜時間後に硬化するようになる。これにより図8(a),(b)に例示するように、基材12の外面に密着するように表皮14が形成され、この表皮14に連設されると共に接合有底筒部30の内壁面に密着する被覆部32が形成されると共に、この被覆部32に連設される容器保持部34,34が形成される。
【0024】
ウレタン原料Uが硬化して表皮14、被覆部32および容器保持部34の成形が完了したら、図9(a),(b)に例示するように、上型42から下型44を離間させて表皮成形型40の型開きを行なう。この際に、後退移動する下型44に同期させて支持軸54を該下型44から延出(前進)するよう制御することで、凸型部48の可動型部52は被覆部32の内側に停止保持され、固定型部50だけが被覆部32から抜出するようにする。
【0025】
下型44の離間移動が完了したら、図10(a),(b)に例示するように、支持軸54を軸心を中心として何れかの方向へ90度だけ回動させる。これにより可動型部52が、各容器保持部34,34とオーバーラップしない位置へ変位するようになる。従って図11(a),(b)に例示するように、この状態で支持軸54を後退するよう制御することで、各容器保持部34,34へ干渉することなく可動型部52が被覆部32から抜出するようになる。すなわち、可動型部52の抜出に際して、各容器保持部34,34が変形することがない。
【0026】
なお、容器保持部34,34が柔軟性を有していると共に、被覆部32の上側部分32Aが薄肉に形成されているため、例えば図12に例示するように、支持軸54を回動させずに後退させても可動型部52の抜出は可能である。すなわち、下型44の離間移動完了後に支持軸54を回動させずに後退させることで、移動した可動型部52により各容器保持部34,34が被覆部32へ密着するまで折曲変形するため、該可動型部52の抜出が許容されるからである。
【0027】
前述した成形方法により形成された本実施例の容器ホルダCHは、表皮14を反応射出成形技術に基づいて成形するようにしたため、基材12に一体的に形成されて容器収容部20を画成した有底筒部30の内側に、表皮14の一部をなして該容器収容部20の内壁面を構成するよう陥凹成形された被覆部32と、この被覆部32に一体成形されて容器収容部20の内側へ延出し、該容器収容部20へ収容された飲料容器Bに当接して撓曲変形可能な容器保持部34とを有している。従って、容器保持部34が表皮14の一部から形成されているため、図14に例示した従来の容器ホルダCHや図15に例示した従来の容器ホルダCHのような容器保持体24や容器保持片28を別途準備する必要がなくなり、これらを製作するための作業工程や組み付けるための作業工程が削減されるので、大幅なコストダウンが可能となる。
【0028】
そして、容器収容部20へ各種寸法の飲料容器Bを受容させた際には、当該飲料容器Bのサイズに応じて各容器保持部34,34が適度に撓曲変形するようになり、飲料容器Bの安定的な保持が図られる。また容器収容部20の内壁面は、表皮14の一部をなす被覆部32で構成されていて硬質の有底筒部30が露出していないため、アルミ缶やアルミボトル等の金属製の飲料容器Bであっても、受容する時や取り出す時、または走行中の振動等により異音が発生することが好適に防止される。
【0029】
なお前述した実施例では、被覆部32の周方向へ所要長に延在する舌片状の容器保持部34が、該被覆部32の内周面において対向的に2つ形成した場合を例示したが、この容器保持部34の形成個数は2つに限定されるものではなく、3つ以上の複数個を形成するようにしてもよい。また容器保持部34は、被覆部32の内周面において1つだけ形成するようにしてもよい。
【0030】
但し、容器保持部34の合計の延在長L(実施例の場合はL1+L1)は、被覆部32の内周面の全周長Sの1/2以下に設定するのが望ましい。これは、前述した表皮成形型40により表皮14と共に被覆部32および容器保持部34を形成した後、凸型部48の可動型部52を脱型する際に支障が生ずることを防止する理由からである。
【0031】
なお前述した実施例では、表皮成形型40に基材12をセットしたもとで、表皮14、被覆部32および容器保持部34を成形することで、これらの成形と同時に基材12へ被着させる場合を例示したが、表皮14、被覆部32および容器保持部34を別工程で成形した後、基材12の外面および有底筒部30の内壁面へこれらを貼り込むようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る容器ホルダは、外側に表皮を配設した車両内装部材に外方へ開口する有底筒状の容器収容部を画成し、各種寸法の飲料容器を該容器収容部に保持するようにした容器ホルダである。ここで車両内装部材とは、例えばインストルメントパネル、フロアコンソール、アームレスト、ドアパネル等であるから、このような車両内装部材を配設した車両等に好適に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】車両内装部材の所要位置に設けられた好適実施例に係る容器ホルダを例示した概略斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】本実施例の容器ホルダが設けられた車両内装部材を概略的な形状で例示した断面図である。
【図4】表皮および該表皮に一体的に形成された被覆部および容器保持部を、基材から分離させた状態で示した説明斜視図である。
【図5】本実施例の容器ホルダに、各種寸法の飲料容器を受容させた状態を示した説明図である。
【図6】表皮、被覆部および容器保持部を成形するための表皮成形型を、有底筒部に対応した部位で破断した説明断面図であって、(a)はその縦断面図であり、(b)は、(a)のVIb−VIb線断面図である。
【図7】表皮成形型の下型における凸型部を示した斜視図であって、(a)は、固定型部に可動型部が整合している状態を示し、(b)は、可動型部が上昇変位および回動が可能なことを示している。
【図8】基材をセットした表皮成形型を型閉めし、画成されたキャビティ内へウレタン原料を射出した状態を示した説明断面図であって、(a)はその縦断面図であり、(b)は、(a)のVIIIb−VIIIb断面図である。
【図9】ウレタン原料の硬化により表皮、被覆部および容器保持部が形成された後、可動型部だけを固定して下型を離間移動させた状態を示した説明断面図であって、(a)はその縦断面図であり、(b)は、(a)のIXb−IXb断面図である。
【図10】下型の離間移動完了後に可動型部を90度回動させた状態を示した説明断面図であって、(a)はその縦断面図であり、(b)は、(a)のXb−Xb断面図である。
【図11】回動させた可動型部を被覆部から抜出した状態を示した説明断面図であって、(a)はその縦断面図であり、(b)は、(a)のXIb−XIb断面図である。
【図12】下型の移動完了後に可動型部を回動させずに抜出する脱型態様を例示した説明断面図である。
【図13】従来実施に係る容器ホルダが設けられた車両内装部材を概略的な形状で例示した断面図である。
【図14】従来実施に係る容器ホルダを例示した説明断面図である。
【図15】従来実施に係る別形態の容器ホルダを例示した説明断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 車両内装部材
12 基材
14 表皮
20 容器収容部
32 被覆部
34 容器保持部
40 表皮成形型(成形型)
B 飲料容器
L 延在長(容器保持部34の)
S 全周長(被覆部32の)
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器ホルダに関し、更に詳細には、外側に表皮を配設した車両内装部材に外方へ開口する有底筒状の容器収容部を画成し、各種寸法の飲料容器を該容器収容部に保持するようにした容器ホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年生産される殆どの自動車では、乗員室内の快適性向上に寄与する室内装備品の一つとして、コーヒーやジュース等の飲料水を収容したカン、ビン、ペットボトル、アルミボトルまたは紙製コップ等の種々飲料容器を受容保持可能な容器ホルダが、乗員室内に配設されたインストルメントパネル、フロアコンソール、アームレスト、ドアパネル等の車両内装部材の所要位置(少なくとも乗員の手が届く範囲)に配設されている。例えば図13は、概略的な形状で例示した車両内装部材10の断面図であって、この車両内装部材10を構成する基材12の上面(外面)所要位置には、上方(外方)へ開口する容器収容部20からなる容器ホルダCH1が設けられている。この容器ホルダCH1は、常には車両内装部材10の上面に開口しており、上方からの飲料容器Bを受容および取り出しが許容されるようになっている。
【0003】
また前述した種々飲料容器Bは、形状、サイズ、材質等が多種に亘っている。このため容器ホルダCH1は、各種寸法の飲料容器に対応してこれを安定的に受容保持し得る汎用性が要求されるため、例えば特許文献1または特許文献2等に開示された構成のもの等が実用化されている。図14は、特許文献1に開示された容器ホルダと類似構成のものを概略的に例示した説明断面図であって、この容器ホルダCH1は、上方へ開口した容器収容部20を画成した有底筒体状の容器収容部材22からなり、容器収容部材22の外側壁面には、容器収容部20に対して出没可能に配設されて常には板バネ26で突出した状態に付勢保持される容器保持体24を装備している。従って、容器収容部20へ受容される飲料容器Bに押圧されて容器保持体24が容器収容部20から適宜に後退変位することで、各種寸法の飲料容器Bの受容を許容し得ると共に、板バネ26の弾力付勢により何れの飲料容器Bでも安定的に保持するようになっている。なお図13では、図14に例示した容器ホルダCH1を装備した車両内装部材10を例示している。
【0004】
一方、図15は、特許文献2に開示された容器ホルダを概略的に例示した説明断面図であって、この容器ホルダCH1は、上方へ開口した容器収容部20を画成した有底筒体状の容器収容部材22からなり、容器収容部材22の上部開口部の周囲には、ゴムまたはウレタン等を材質として柔軟性を有する容器保持片28を装備している。従って、受容される飲料容器Bに押圧されて容器保持片28が下方へ撓曲的に変形することで、各種寸法の飲料容器Bの受容を許容し得ると共に、容器保持片28の復帰弾力により何れの飲料容器Bでも安定的に保持するようになっている。
【0005】
また、図13に例示した車両内装部材10は、その質感向上および触感向上等を図る目的で、前述した基材12の外側に合成樹脂製の表皮14を配設した構造となっている。この表皮14は、その製造方法から分類すると、(1)樹脂シート材から真空成形されたもの、(2)樹脂粉末からパウダースラッシュ成形されたもの、(3)ウレタン材からスプレー成形されたもの、等が好適に実施に供されている。
【特許文献1】実開平6−050969号公報
【特許文献2】特開平8−295169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図14に例示した容器ホルダCH1および図15に例示した容器ホルダCH1では、各種寸法の飲料容器Bを安定的に保持するため、容器収容部材22とは別体に形成された容器保持体24や容器保持片28を装備する必要があるため、部品点数増加や作業工数増加等により製造コストが嵩む問題を内在していた。また、容器収容部20を画成する容器収容部材22が、硬質な樹脂成形部材から形成されて該容器収容部20へ露出しているため、この容器収容部20へ受容される飲料容器Bが直接的に接触するようになり、殊にアルミ缶やアルミボトル等の金属材質からなる飲料容器Bの場合には、受容する時や取り出す時、または走行中の振動等で異音が発生する等の不都合もあった。
【0007】
また前述した表皮14は、前述した各種成形技術の技術的特性から、外面形状や厚み等を自由に設定することが不可能となっており、基材12の外面形状に合致した形状に成形して該基材12の外面にだけ装着するようになっていた。すなわち表皮14は、図13に例示したように、容器ホルダCH1を構成する容器収容部材22の内壁面を被覆するように成形することが困難な場合が多く、この表皮14の一部で内壁面を被覆するという技術的思想は殆どなかった。
【0008】
従って本発明では、反応射出成形技術に基づいて表皮を成形するようにすることで、容器収容部の内壁面を被覆する被覆部および飲料容器を保持する容器保持部を該表皮の一部に形成するようにして、コストダウンや異音発生防止を可能とした容器ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、
外側に表皮を配設した車両内装部材に外方へ開口する有底筒状の容器収容部を画成し、各種寸法の飲料容器を該容器収容部に保持するようにした容器ホルダにおいて、
前記表皮の一部をなし、前記容器収容部の内壁面を構成するよう陥凹成形された被覆部と、
前記被覆部に一体成形されて前記容器収容部の内側へ延出し、該容器収容部へ収容された飲料容器に当接して撓曲変形可能な容器保持部とから構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る容器ホルダによれば、容器保持部が表皮の一部から形成されているため、従来の容器ホルダのような容器保持体や容器保持片を別途準備する必要がなくなり、これらを製作するための作業工程や組み付けるための作業工程が削減されるので、大幅なコストダウンが可能となる有益な効果を奏する。また容器収容部の内壁面は、表皮の一部から形成された被覆部で構成されているので、アルミ缶やアルミボトル等の金属製の飲料容器であっても、受容する時や取り出す時、または走行中の振動等により異音が発生することが好適に防止される等の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明に係る容器ホルダにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお、図13〜図15に既出の部材・部位と同一の部材・部位については、同一の符号を付して説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、車両内装部材の所要位置に設けられた好適実施例に係る容器ホルダを例示した概略斜視図であり、図2は、図1のII−II線断面図であり、図3は、本実施例の容器ホルダが設けられた車両内装部材を概略的な形状で例示した断面図である。本実施例の容器ホルダCHは、外側に表皮14を配設した車両内装部材(インストルメントパネルやフロアコンソール等)10に外方へ開口する有底筒状の容器収容部20を画成し、各種寸法の飲料容器Bを該容器収容部20に保持し得るようになっている。しかも、表皮14が後述する反応射出成形技術に基づいて成形されるため、この表皮14の一部をなして容器収容部20の内壁面を構成する被覆部32と、この被覆部32に一体成形された容器保持部34とを有した構造となっている。
【0013】
車両内装部材10を構成する基材12は、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)等の合成樹脂素材からインジェクション成形技術に基づいて成形されたもので、当該の車両内装部材10の意匠形状に応じた所定の形状・サイズに形成されている。そして、容器ホルダCHの容器収容部20を画成するための有底筒部30が、この基材12の上面所要位置に一体的に成形されており、容器収容部20が基材12の上面から外方へ開口している。この有底筒部30は、図5に例示するように、500mlのペットボトルやアルミボトルは勿論、これ以上の内容量を有する大型の紙製コップや紙製容器等が収容可能なサイズに設定されており、基材12と略同等の厚みに形成されていて充分な剛性を有している。なお本実施例では、図4に例示したように、有底筒部30を円筒形態とした場合を例示したが、形状はこれに限定されるものではなく、例えば楕円筒形態や多角筒形態等としてもよい。
【0014】
また本実施例では、有底筒部30を基材12に一体的に成形した形態を例示しているが、インジェクション成形型による成形作業上または脱型作業上等の都合により一体成形が不可能な場合は、該有底筒部30を基材12とは別体に成形するようにして後作業工程で組み付けるようにしてもよい。
【0015】
表皮14は、公知技術である「反応射出成形(Reaction Injection Molding成形)技術」に基づいて成形されたウレタン成形材である。この反応射出成形技術は、成形型内に画成した所定形状のキャビティに向けて原料であるポリオールとイソシアネートとを攪拌しながら射出し、これらを該キャビティ内で反応させることで、該キャビティと同一形状のウレタン成形材を成形する方法である。従って、例えば部位毎に厚みが異なるシート状部材や、複雑な外面凹凸形状を有する部材、表側外面形状と裏側外面形状とが異なる部材等、一般的なインジェクション成形技術と同様に、成形型から脱型可能な形状であれば多種多様な形状のウレタン成形材が成形可能な特徴を有している。
【0016】
このような反応射出成形技術に基づいて成形されるウレタン成形材である表皮14は、後述すると共に図8等に例示するように、予備成形した前述の基材12をセットし得る表皮成形型40のキャビティ56内で成形するようになっており、成形すると同時に基材12へ被着形成されたものである。そして、基材12をセットしたもとで型閉めした際に画成されるキャビティ56は、基材12の外面全体に臨む第1空間56Aと、この第1空間56Aに連通して有底筒部30の内壁面に臨む第2空間56Bと、この第2空間56Bに連通する第3空間56C,56Cとからなっている。従って、このキャビティ56内全体へ射出されたウレタン原料Uが硬化した際には、図8に例示したように、第1空間56Aにおいて基材12の外面全体を被覆する表皮14が成形され、第2空間56Bにおいて有底筒部30の内壁面全体を被覆する被覆部32が形成され、第3空間56Cにおいて容器保持部34が形成されるようになり、表皮14の成形と同時に被覆部32および容器保持部34が形成され得るようになる。
【0017】
これにより本実施例の容器ホルダCHは、表皮14の一部をなし、有底筒部30により画成された容器収容部20の内壁面を構成するよう陥凹成形された被覆部32と、この被覆部32に一体成形されて容器収容部20の内側へ延出し、該容器収容部20へ収容された飲料容器Bに当接して撓曲変形可能な容器保持部34とから構成されている。すなわち、容器ホルダCHを構成するこれら被覆部32および容器保持部34は、基材12をセットした表皮成形型40を使用した反応射出成形技術に基づいて表皮14を成形するに際し、有底筒部30の内壁面に密着した状態で該表皮14と一体的に成形されたものである。
【0018】
被覆部32は、図2および図4に例示したように、有底筒部30の内壁面全面を被覆するよう陥凹成形され、容器保持部34,34が形成されている位置を基準として、これより上方(開口側)に位置する上側部分32Aの厚みが下方(底面側)に位置する下側部分32Bの厚みより小さく設定されており、これにより容器収容部20は底面側が一回り小径となった段差形態とされている。この段差は、容器保持部34の板厚より大きく設定させればよく、基材12に段差を設けて被覆部32の厚みを一定にしても形成することができる。これは、後述すると共に図12に例示するように、表皮成形型40による成形完了後に脱型時に、脱型作業に支障を来たさないようにするためである。なお、上側部分32Aの厚みは1mm程度、下側部分32Bの厚みは2mm程度とされる。但し、図8〜図11に例示する後述の脱型方法を採用する場合には、上側部分32Aおよび下側部分32Bの厚みを同一として段差を設けなくてもよい。
【0019】
容器保持部34は、前述した被覆部32の周方向へ所要長に延在する舌片状を呈しており、本実施例の容器ホルダCHでは、2つが該被覆部32の内周面に対向的に形成されている。これら容器保持部34は、延在長L1が30mm程度、厚みが1mm程度に設定されているため、ウレタンが具有する柔軟性が充分に発現されて飲料容器Bに当接すると適度に撓曲変形可能となっている。従って図5に例示したように、外形寸法が小さい飲料容器Bを容器収容部20へ収容した場合には変形量が小さく、外形寸法が大きい飲料容器Bを該容器収容部20へ収容した場合には変形量が大きくなり、外形寸法が異なる各種寸法の飲料容器Bの安定的な保持を図り得る。
【0020】
次に、前述した表皮14と、被覆部32および容器保持部34の成形作業工程につき、図8〜図11を引用して説明する。そこで、成形作業工程を説明するに先立ち、前述した表皮成形型40の構成につき概略的に説明する。
【0021】
図6(a)は、表皮14を成形するための表皮成形型40を、有底筒部30に対応した部位で破断した縦断面図であり、図6(b)は、図6(a)のVIb−VIb線断面図である。この表皮成形型40は、基材12をセットする上型42および該上型42と対をなす下型44とからなり、上型42には前述した有底筒部30が突入する凹型部46が形成されていると共に、下型44には該有底筒部30の内側へ突入する凸型部48が設けられている。そして凸型部48は、図7(a)に例示するように、下型44に一体成形された固定型部50と、この固定型部50の中央凹部へ分離可能に整合する可動型部52とからなり、これら固定型部50と可動型部52との間には、容器保持部34,34を形成するための前述の第3空間56C,56Cが画成されるようになっている。また可動型部52は、下型44内を貫通する支持軸54の先端に取り付けられており(図6)、この支持軸54が下型44に対して軸方向に沿ったスライド移動および回動が可能となっていることにより、下型44に対する昇降移動および回動が可能となっている。すなわち可動型部52は、前述した一対の容器保持部34,34を成形するための所謂「入れ子」である。
【0022】
このような表皮成形型40を使用して表皮14、被覆部32および容器保持部34を成形する場合は、先ず図6(a),(b)に例示するように、前述した可動型部52を固定型部50の中央凹部へ整合させておき、予備成形した基材12を上型42のセット部へセットしたもとで、上型42と下型44とを近接移動させて表皮成形型40の型閉めを行なう。これにより、下型44と基材12との間に表皮14が成形されるキャビティ56の第1空間56Aが画成され、有底筒部30へ突入した凸型部48と該有底筒部30との間に被覆部32が成形される第2空間56Bが画成されると共に、固定型部50と可動型部52との境界部分に容器保持部34,34が成形される第3空間56C,56Cが画成される。
【0023】
前述した表皮成形型40の型閉めが完了したら、図示しない注入口を介してウレタン原料Uの注入作業を行なう。ウレタン原料Uは、前述したキャビティ56の各空間56A,56B,56Cへ順次充填され、適宜時間後に硬化するようになる。これにより図8(a),(b)に例示するように、基材12の外面に密着するように表皮14が形成され、この表皮14に連設されると共に接合有底筒部30の内壁面に密着する被覆部32が形成されると共に、この被覆部32に連設される容器保持部34,34が形成される。
【0024】
ウレタン原料Uが硬化して表皮14、被覆部32および容器保持部34の成形が完了したら、図9(a),(b)に例示するように、上型42から下型44を離間させて表皮成形型40の型開きを行なう。この際に、後退移動する下型44に同期させて支持軸54を該下型44から延出(前進)するよう制御することで、凸型部48の可動型部52は被覆部32の内側に停止保持され、固定型部50だけが被覆部32から抜出するようにする。
【0025】
下型44の離間移動が完了したら、図10(a),(b)に例示するように、支持軸54を軸心を中心として何れかの方向へ90度だけ回動させる。これにより可動型部52が、各容器保持部34,34とオーバーラップしない位置へ変位するようになる。従って図11(a),(b)に例示するように、この状態で支持軸54を後退するよう制御することで、各容器保持部34,34へ干渉することなく可動型部52が被覆部32から抜出するようになる。すなわち、可動型部52の抜出に際して、各容器保持部34,34が変形することがない。
【0026】
なお、容器保持部34,34が柔軟性を有していると共に、被覆部32の上側部分32Aが薄肉に形成されているため、例えば図12に例示するように、支持軸54を回動させずに後退させても可動型部52の抜出は可能である。すなわち、下型44の離間移動完了後に支持軸54を回動させずに後退させることで、移動した可動型部52により各容器保持部34,34が被覆部32へ密着するまで折曲変形するため、該可動型部52の抜出が許容されるからである。
【0027】
前述した成形方法により形成された本実施例の容器ホルダCHは、表皮14を反応射出成形技術に基づいて成形するようにしたため、基材12に一体的に形成されて容器収容部20を画成した有底筒部30の内側に、表皮14の一部をなして該容器収容部20の内壁面を構成するよう陥凹成形された被覆部32と、この被覆部32に一体成形されて容器収容部20の内側へ延出し、該容器収容部20へ収容された飲料容器Bに当接して撓曲変形可能な容器保持部34とを有している。従って、容器保持部34が表皮14の一部から形成されているため、図14に例示した従来の容器ホルダCHや図15に例示した従来の容器ホルダCHのような容器保持体24や容器保持片28を別途準備する必要がなくなり、これらを製作するための作業工程や組み付けるための作業工程が削減されるので、大幅なコストダウンが可能となる。
【0028】
そして、容器収容部20へ各種寸法の飲料容器Bを受容させた際には、当該飲料容器Bのサイズに応じて各容器保持部34,34が適度に撓曲変形するようになり、飲料容器Bの安定的な保持が図られる。また容器収容部20の内壁面は、表皮14の一部をなす被覆部32で構成されていて硬質の有底筒部30が露出していないため、アルミ缶やアルミボトル等の金属製の飲料容器Bであっても、受容する時や取り出す時、または走行中の振動等により異音が発生することが好適に防止される。
【0029】
なお前述した実施例では、被覆部32の周方向へ所要長に延在する舌片状の容器保持部34が、該被覆部32の内周面において対向的に2つ形成した場合を例示したが、この容器保持部34の形成個数は2つに限定されるものではなく、3つ以上の複数個を形成するようにしてもよい。また容器保持部34は、被覆部32の内周面において1つだけ形成するようにしてもよい。
【0030】
但し、容器保持部34の合計の延在長L(実施例の場合はL1+L1)は、被覆部32の内周面の全周長Sの1/2以下に設定するのが望ましい。これは、前述した表皮成形型40により表皮14と共に被覆部32および容器保持部34を形成した後、凸型部48の可動型部52を脱型する際に支障が生ずることを防止する理由からである。
【0031】
なお前述した実施例では、表皮成形型40に基材12をセットしたもとで、表皮14、被覆部32および容器保持部34を成形することで、これらの成形と同時に基材12へ被着させる場合を例示したが、表皮14、被覆部32および容器保持部34を別工程で成形した後、基材12の外面および有底筒部30の内壁面へこれらを貼り込むようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る容器ホルダは、外側に表皮を配設した車両内装部材に外方へ開口する有底筒状の容器収容部を画成し、各種寸法の飲料容器を該容器収容部に保持するようにした容器ホルダである。ここで車両内装部材とは、例えばインストルメントパネル、フロアコンソール、アームレスト、ドアパネル等であるから、このような車両内装部材を配設した車両等に好適に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】車両内装部材の所要位置に設けられた好適実施例に係る容器ホルダを例示した概略斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】本実施例の容器ホルダが設けられた車両内装部材を概略的な形状で例示した断面図である。
【図4】表皮および該表皮に一体的に形成された被覆部および容器保持部を、基材から分離させた状態で示した説明斜視図である。
【図5】本実施例の容器ホルダに、各種寸法の飲料容器を受容させた状態を示した説明図である。
【図6】表皮、被覆部および容器保持部を成形するための表皮成形型を、有底筒部に対応した部位で破断した説明断面図であって、(a)はその縦断面図であり、(b)は、(a)のVIb−VIb線断面図である。
【図7】表皮成形型の下型における凸型部を示した斜視図であって、(a)は、固定型部に可動型部が整合している状態を示し、(b)は、可動型部が上昇変位および回動が可能なことを示している。
【図8】基材をセットした表皮成形型を型閉めし、画成されたキャビティ内へウレタン原料を射出した状態を示した説明断面図であって、(a)はその縦断面図であり、(b)は、(a)のVIIIb−VIIIb断面図である。
【図9】ウレタン原料の硬化により表皮、被覆部および容器保持部が形成された後、可動型部だけを固定して下型を離間移動させた状態を示した説明断面図であって、(a)はその縦断面図であり、(b)は、(a)のIXb−IXb断面図である。
【図10】下型の離間移動完了後に可動型部を90度回動させた状態を示した説明断面図であって、(a)はその縦断面図であり、(b)は、(a)のXb−Xb断面図である。
【図11】回動させた可動型部を被覆部から抜出した状態を示した説明断面図であって、(a)はその縦断面図であり、(b)は、(a)のXIb−XIb断面図である。
【図12】下型の移動完了後に可動型部を回動させずに抜出する脱型態様を例示した説明断面図である。
【図13】従来実施に係る容器ホルダが設けられた車両内装部材を概略的な形状で例示した断面図である。
【図14】従来実施に係る容器ホルダを例示した説明断面図である。
【図15】従来実施に係る別形態の容器ホルダを例示した説明断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 車両内装部材
12 基材
14 表皮
20 容器収容部
32 被覆部
34 容器保持部
40 表皮成形型(成形型)
B 飲料容器
L 延在長(容器保持部34の)
S 全周長(被覆部32の)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側に表皮(14)を配設した車両内装部材(10)に外方へ開口する有底筒状の容器収容部(20)を画成し、各種寸法の飲料容器(B)を該容器収容部(20)に保持するようにした容器ホルダにおいて、
前記表皮(14)の一部をなし、前記容器収容部(20)の内壁面を構成するよう陥凹成形された被覆部(32)と、
前記被覆部(32)に一体成形されて前記容器収容部(20)の内側へ延出し、該容器収容部(20)へ収容された飲料容器(B)に当接して撓曲変形可能な容器保持部(34)とから構成した
ことを特徴とする容器ホルダ。
【請求項2】
前記容器保持部(34)は、前記被覆部(32)の周方向へ所要長に延在する舌片状を呈し、該被覆部(32)の内周面に複数個が形成されている請求項1記載の容器ホルダ。
【請求項3】
前記容器保持部(34)は、前記被覆部(32)の周方向へ所要長に延在する舌片状を呈し、該被覆部(32)の内周面に一つだけ形成されている請求項1記載の容器ホルダ。
【請求項4】
前記容器保持部(34)の延在長(L)は、前記被覆部(32)の内周面の全周長(S)の1/2以下に設定されている請求項2または3記載の容器ホルダ。
【請求項5】
前記被覆部(32)および容器保持部(34)は、前記車両内装部材(10)を構成する基材(12)をセットした成形型(40)による反応射出成形技術に基づいて前記表皮(14)を成形するに際し、前記容器収容部(20)の内側において該表皮(14)と一体的に成形される請求項1〜4の何れかに記載の容器ホルダ。
【請求項1】
外側に表皮(14)を配設した車両内装部材(10)に外方へ開口する有底筒状の容器収容部(20)を画成し、各種寸法の飲料容器(B)を該容器収容部(20)に保持するようにした容器ホルダにおいて、
前記表皮(14)の一部をなし、前記容器収容部(20)の内壁面を構成するよう陥凹成形された被覆部(32)と、
前記被覆部(32)に一体成形されて前記容器収容部(20)の内側へ延出し、該容器収容部(20)へ収容された飲料容器(B)に当接して撓曲変形可能な容器保持部(34)とから構成した
ことを特徴とする容器ホルダ。
【請求項2】
前記容器保持部(34)は、前記被覆部(32)の周方向へ所要長に延在する舌片状を呈し、該被覆部(32)の内周面に複数個が形成されている請求項1記載の容器ホルダ。
【請求項3】
前記容器保持部(34)は、前記被覆部(32)の周方向へ所要長に延在する舌片状を呈し、該被覆部(32)の内周面に一つだけ形成されている請求項1記載の容器ホルダ。
【請求項4】
前記容器保持部(34)の延在長(L)は、前記被覆部(32)の内周面の全周長(S)の1/2以下に設定されている請求項2または3記載の容器ホルダ。
【請求項5】
前記被覆部(32)および容器保持部(34)は、前記車両内装部材(10)を構成する基材(12)をセットした成形型(40)による反応射出成形技術に基づいて前記表皮(14)を成形するに際し、前記容器収容部(20)の内側において該表皮(14)と一体的に成形される請求項1〜4の何れかに記載の容器ホルダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−7838(P2006−7838A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184218(P2004−184218)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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