説明

容器

【課題】容器に塗装を行なう場合に塗膜表面の滑り性の低下や塗膜の密着性の低下を抑制しつつ、マット感(艶消し感)を有する塗膜を有する容器を提供する。
【解決手段】内容物が充填可能な容器基体12と、容器基体12の外周面に形成され標記が付される印刷層142と、印刷層142の艶消しをする艶消し剤を含み印刷層142を保護するために印刷層142上に形成されるトップコート層143とを備え、トップコート層143に含まれる艶消し剤は、光の散乱により印刷層142の艶消しを行なう第1の艶消し剤と、第1の艶消し剤とは異なる成分からなり光の散乱を更に増大させる第2の艶消し剤と、を含むことを特徴とする容器10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に係るものであり、容器の一例として飲料を充填する金属缶等に使用される容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、飲料を充填するために金属缶が用いられることがある。この場合、缶基体の材料である金属の保護や金属地を隠蔽するために塗装が行なわれるのが一般的である。また最近では、金属缶等の外観をさらに向上させて付加価値を高めるために、塗装について種々の工夫がなされる場合がある。
【0003】
特許文献1には、BET比表面積が250〜350m/gであり、コールターカウンター法による平均粒径がl.2〜1.8μmで、かつ8μm以上の粗粒子が存在せずlμm以下の粒子が全体の10〜30%であるトップコート用艶消しシリカが開示されている。
また特許文献2には、金属製缶基体の外面が塗装された金属缶であって、塗膜の最外層として、樹脂成分中に粒子状の艶消し剤を分散させてなるマット調トップコート層を有することを特徴とするマット調金属缶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−170030号公報
【特許文献2】特開2009−35297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで容器の外観としてマット感(艶消し感)を有する塗膜が求められることがある。そしてこのために容器に塗装を行なう際に使用する塗料に艶消し剤を添加することがある。しかしながらマット感を強調するために艶消し剤の添加量を増加させると、塗膜表面の滑り性が低下したり、塗膜の密着性が低下して塗膜が剥離しやすくなることがあった。
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記の問題点に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明の目的は、容器に塗装を行なう場合に塗膜表面の滑り性の低下や塗膜の密着性の低下を抑制しつつ、マット感(艶消し感)を有する塗膜を有する容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして本発明によれば、内容物が充填可能な容器基体と、容器基体の外周面に形成され、標記が付される標記層と、標記層の艶消しをする艶消し剤を含み、標記層を保護するために標記層上に形成される保護層と、を備え、保護層に含まれる艶消し剤は、光の散乱により標記層の艶消しを行なう第1の艶消し剤と、第1の艶消し剤とは異なる成分からなり、光の散乱を更に増大させる第2の艶消し剤と、を含むことを特徴とする容器が提供される。
【0008】
ここで、容器によっては、容器基体と標記層との間に容器基体の素地を隠蔽するための隠蔽層を更に備えることが好ましい。また第1の艶消し剤は、シリカからなり、第2の艶消し剤は、酸化チタンからなることが好ましく、第1の艶消し剤は、個数平均径で1μm〜5μmであり、第2の艶消し剤は、個数平均径で50nm〜250nmであることが好ましい。
【0009】
更に、本発明によれば、内容物が充填可能な容器基体と、容器基体の外周面に形成される塗膜と、を備え、塗膜は、塗膜の最外層において塗膜の艶消しをする艶消し剤を含み、艶消し剤は、光の散乱により塗膜の艶消しを行なう第1の艶消し剤と、第1の艶消し剤とは異なる成分からなり光の散乱を更に増大させる第2の艶消し剤とを含むことを特徴とする容器が提供される。
【0010】
ここで、第1の艶消し剤は、シリカからなり、第2の艶消し剤は、酸化チタンからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容器に塗装を行なう場合に塗膜表面の滑り性の低下や塗膜の密着性の低下を抑制しつつ、マット感(艶消し感)を有する塗膜を有する容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)〜(b)は、本実施の形態の容器が使用される第1の実施形態について説明した図である。
【図2】本実施の形態の艶消し剤を含むトップコート層の概念図である。
【図3】本実施の形態の艶消し剤の粒度分布について説明した概念図である。
【図4】(a)〜(b)は、本実施の形態の容器が使用される第2の実施形態について説明した図である。
【図5】(a)〜(b)は、本実施の形態の容器が使用される第3の実施形態について説明した図である。
【図6】容器の代表的な製造方法を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施する形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0014】
<容器の第1の実施形態についての説明>
図1(a)〜(b)は、本実施の形態の容器が使用される第1の実施形態について説明した図である。ここで図1(a)は、本実施の形態の容器が使用される缶体の概略を示した図であり、図1(b)は、図1(a)の断面の一部分を拡大した図である。
図1(a)〜(b)に示すように缶体1は、本実施の形態の容器10と、容器10の上部を塞ぐための蓋部材20とから構成される。
【0015】
そして容器10は、内容物が充填可能な容器基体12と、容器基体12の外周面に形成される塗膜14とからなる。また本実施の形態では、塗膜14は、容器基体12の外周面に形成され標記が付される標記層としての印刷層142と、印刷層142を保護するために印刷層142上に形成される保護層としてのトップコート層143とから構成されている。
【0016】
容器基体12は、本実施の形態では、内容物を充填するため例えば、図中上部が開口する有底円筒状を採る。内容物としては、特に限定されることはないが、例えばビールなどのアルコール類、ジュースなどのソフトドリンク類に例示される飲料である。また容器基体12の材料としては、内容物を充填可能であるものであれば特に限定されるものではなく、PET(Polyethylene terephthalate)等の樹脂類やアルミニウム、鉄(スチール)等の金属類を使用することができる。ただし本実施の形態は、特に金属類を容器基体12の材料とする場合に好適に適用することができる。
容器基体12として金属類を使用した場合、蓋部材20は、外縁部をいわゆる巻き締めすることで容器10に固定されている。蓋部材20には、内容物が飲料である場合には、飲み口としての開口部を形成するためにプルタブ(図示せず)が備えられていてもよい。
【0017】
塗膜14の印刷層142は、本実施の形態では、容器基体12に直接印刷される層である。印刷層142により文字や図形などを含む種々の図柄が印刷され、これにより容器10を見る者に、商品名、商標名を認識させることができる。さらに容器10を見る者に美観等を与える装飾性を向上させることができる。
印刷層142を形成させるために、例えば顔料を含む金属印刷用のインキを用いることができる。ここで顔料(色量)としては、各種の有機顔料や無機顔料が用いられる。また、インキの展色剤(ビヒクル)としては、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の樹脂を主成分とすることができる。そして熱硬化性樹脂としては、アルキッド型又はポリエステル型の樹脂等が用いられる。また紫外線硬化性樹脂としては、紫外線ラジカル重合型、紫外線カチオン重合型の樹脂等が用いられる。さらに、インキには添加剤が含有されていてもよい。添加剤としては、艶消し剤、ワックス類(天然系、石油系、合成系)、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、架橋剤、ゲル化剤、増粘剤、皮張り防止剤、安定剤、消泡剤、光重合開始剤等が挙げられる。
【0018】
塗膜14のトップコート層143は、上述の通り印刷層142を保護するために設けられる層である。トップコート層143の成分は、主として樹脂である。この樹脂の種類は透明であれば特に限定されるものではなく、エポキシ/フェノール樹脂、ポリエステル/アミノ系樹脂、エポキシ/ポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂等を使用することができる。このうちエポキシ/ポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂を使用した場合は、水性塗料とすることができる。そのため詳しくは後述するが、容器10の製造時における塗膜14の焼付け乾燥時に揮発する有機溶剤量が少ない利点がある。また、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、低分子ポリエステル樹脂、天然油脂、蝋等の添加剤も任意に配合することができる。さらに、トップコート層143の塗装に使用する塗布液は、エクソンモービル社製のソルベッソ(登録商標)等の溶剤や添加剤を加えて所要粘度の液状塗料として調製されるが、塗布後の焼付け乾燥によって塗布液中の不揮発成分のみが残留する。従って、トップコート層143は、上述した樹脂組成物や後述する艶消し剤等の不揮発成分によって構成されている。
【0019】
本実施の形態において塗膜14の厚さは、例えば、2μm〜10μmとすることができる。
【0020】
ここで缶体1が例えば、容器基体12に金属を使用した飲料用缶である場合、飲料用缶に塗布する塗膜14に求められる機能として、まず金属である容器基体12の腐食を防止するための耐食性向上といった基本的な機能がある。またそのほかに、広告的機能も重要である。つまり内容物の容量によって違いはあるが、容量が同じであれば、飲料用缶の形状や寸法は、一見して違いが分からないくらい同じである。つまり、飲料メーカーが違っても、内容物の容量が同じであれば、各社の飲料用缶の外観形状は、ほとんど変わらない。そのため、形状の同じ飲料用缶が大量に店頭に混在して並ぶ中、多彩な色彩やその製品のコンセプトを象徴したデザインが人の目を引くことにより、その製品としての存在をアピールし、最終的に顧客に製品を選択させるといった広告的要素も非常に重要な機能になっている。
【0021】
よって、飲料メーカーが塗装に求める要求は非常に厳しいことが多い。そのような飲料メーカーからの要求のなかに、塗膜14のマット感を強調したいという要求がある。そのために従来技術として塗膜14のトップコート層143にシリカ等の艶消し剤を添加する方法がある。この場合一般的に艶消し剤の量を多くすると、よりマット感が強調される。
【0022】
しかしながらマット感をより強調して出すために艶消し剤の量を多くしすぎると、トップコート層143表面の滑り性が低下しやすくなる。さらにトップコート層143の密着性が低下し、剥離しやすくなる。そのためマット感を出すための艶消し剤として、例えばシリカを使用する場合、個数平均粒径で1μm〜4μmのものを2.5wt%〜5wt%程度添加するのが一般的である。この場合このシリカを5wt%を超えて添加すると、上述したトップコート層143の剥離等の問題が生じやすくなる。
【0023】
<艶消し剤の説明>
そこで本実施の形態の容器10では、塗膜14のマット感を強調するために以下に説明するような形態を採る。
即ち本実施の形態の容器10では、トップコート層143に、艶消し剤を含み、そしてこの艶消し剤は、機能の異なる2種類の艶消し剤からなる。
【0024】
図2は、本実施の形態の艶消し剤を含むトップコート層143の概念図である。
図2に示すトップコート層143は、図1(b)で説明したのと同様に容器基体12上に塗膜14として印刷層142とトップコート層143が順に塗布されている。そしてトップコート層143には、艶消し剤16が含まれている。艶消し剤16は、第1の艶消し剤である大粒子161と、第1の艶消し剤とは異なる成分からなる第2の艶消し剤である小粒子162とを含む。
【0025】
そしてこのとき第1の艶消し剤は、光の散乱により印刷層142の艶消しを行う。また第2の艶消し剤は、光の散乱を更に増大させる。
つまり図2に示すように大粒子161は、トップコート層143の表面から露出しやすい。そのため大粒子161がトップコート層143に含まれることで、トップコート層143の表面に凹凸が生じやすくなる。そしてこれによりトップコート層143に照射された光は、トップコート層143中で散乱するとともにトップコート層143表面においても散乱する。そのために反射する光は、特定の方向に反射されずに拡散して反射されやすい。つまり大粒子161を含ませることで、光の散乱により印刷層142の艶消しを行なうことができる。ここで本実施の形態では、最外層であるトップコート層143に艶消し剤16を含ませており、これにより印刷層142等の最外層でない層に艶消し剤16を含ませた場合よりも光の散乱効果を大きくすることができる。
【0026】
一方、小粒子162は、トップコート層143内部で光の散乱を発生させ、第1の艶消し剤である大粒子161により生じた光の散乱を更に増大させ、マット感を更に強調させることができる。つまり本実施の形態では、大粒子161により光の散乱による艶消しを行なうとともに、小粒子162によりマット感を強調させることで、容器10を見る者は、容器10の塗膜14部分により大きなマット感を感じる。これが大粒子161のみであると艶消し効果が十分でなくなることが多い。さらに小粒子162のみであるとマット感がほとんど生じないばかりかトップコート層143が白く着色しやすくなる。
【0027】
また図3は、本実施の形態の艶消し剤16の粒度分布について説明した概念図である。図3では、横軸が粒径を表わし、そして縦軸が所定の粒径に対する頻度分布を個数%で表わしている。
図3に示すように艶消し剤の粒度分布は、粒径がaのときと、粒径がbのときについて2つの極大値を有している。このうち頻度曲線の極大値のうち粒径が大きい方(粒径b)の極大値を主として形成するのは第1の艶消し剤であり、粒径が小さい方(粒径a)の極大値を主として形成するのは、第2の艶消し剤である。
そして本実施の形態において第1の艶消し剤は、シリカ(SiO)からなり、第2の艶消し剤は、酸化チタン(TiO)からなることが好ましい。
また本実施の形態では、第1の艶消し剤は、個数平均径で1μm〜5μmであり、第2の艶消し剤は、個数平均径で50nm〜250nmであることが好ましい。また添加する重量としては、第1の艶消し剤がトップコート層143の重量に対し2.5wt%〜5wt%になるようにし、第2の艶消し剤が、トップコート層143の重量に対し0.1wt%〜2wt%になるようにすることが好ましい。第2の艶消し剤の酸化チタン等の添加量については、この量が0.1wt%未満であると、マット感が生じにくい。またこの量が2wt%を超えるとトップコート層143が白く着色しやすくなる。そのため印刷層142が視認しにくくなるとともに容器10の美観等を損ねやすくなる。また更にトップコート層143の密着性が低下し、剥離が生じやすくなる。なお本実施の形態では、粒度分布はレーザー回折式の粒度分布測定装置により測定している。
【0028】
なお第2の艶消し剤は、酸化チタンに限られるものではなく、他の種類でもよい。例えば、アクリル、アクリロニトリル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等からなる樹脂ビーズなども使用することができる。ただしこれらの樹脂ビーズおよび酸化チタンについては、同量を添加した場合、酸化チタンが、よりマット感が生じやすい。そのため酸化チタンを使用することが、より好ましい。
【0029】
このように本実施の形態では、塗膜14の最外層(図2では、トップコート層143)において塗膜14の艶消しをする艶消し剤16を含む。そしてこの艶消し剤16は、上述したように粒径が大きい第1の艶消し剤と粒径が小さい第2の艶消し剤を含む。
塗膜14の最外層をこのような構成にすることで、塗膜14表面の滑り性の低下や塗膜14の密着性の低下を抑制しつつ、マット感(艶消し感)を有する塗膜14を有する容器10が実現できる。そして容器10を、その用途の一例として、飲料用缶に使用した場合に、塗膜14の剥がれが発生しにくいため、美観に優れ、さらに滑り性の低下が生じにくいため、持ちやすい飲料用缶が製造できる。また、飲料用缶を含めた、容器10は、塗膜14の密着性の低下が起きにくいことにより、輸送時においてもトップコート層143が剥離しにくく、また、塗膜14表面の滑り性の低下が生じにくいため、輸送時に容器10同士や、容器10とその他の物との間で擦れが生じにくく、耐輸送性に優れる。
【0030】
<容器の第2の実施形態についての説明>
図4(a)〜(b)は、本実施の形態の容器が使用される第2の実施形態について説明した図である。ここで図4(a)は、本実施の形態の容器が使用される缶体の概略を示した図であり、図4(b)は、図4(a)の断面の一部分を拡大した図である。
図4(a)〜(b)に示した缶体1は、図1(a)〜(b)で説明したものと類似の構成を採る。つまり缶体1は、本実施の形態の容器10と、容器10の上部を塞ぐための蓋部材20とから構成される。そして容器10は、容器基体12と、容器基体12の外周面に形成される塗膜14とからなる。さらに塗膜14は、印刷層142とトップコート層143を備える。
【0031】
一方本実施の形態では、塗膜14について、容器基体12と印刷層142との間に容器基体12の素地を隠蔽するための隠蔽層としてのベースコート層141が設けられている。
【0032】
本実施の形態では、ベースコート層141は、主として樹脂である。樹脂としては、ポリエステル/エポキシ/アミノ系樹脂及びポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂等を使用することができる。また紫外線硬化型塗料によりベースコート層141を形成する場合は光重合開始剤を含有させたエポキシ/ポリエチレン系樹脂等が使用できる。また、容器基体12の金属色を打ち消すために、添加剤として白色顔料を添加してもよい。ベースコート層141の厚さは、例えば、2μm〜10μmとすることができる。
【0033】
このようなベースコート層141を設けることにより、容器基体12の金属色等の地色を隠蔽することができ、印刷層142の色彩をより鮮明にすることができる。
【0034】
なお印刷層142およびトップコート層143の構成については、図1〜図3で説明した場合と同様である。
【0035】
<容器の第3の実施形態についての説明>
図5(a)〜(b)は、本実施の形態の容器が使用される第3の実施形態について説明した図である。ここで図5(a)は、本実施の形態の容器が使用される缶体の概略を示した図であり、図5(b)は、図5(a)の断面の一部分を拡大した図である。
図5(a)〜(b)に示した缶体1についても、図1(a)〜(b)で説明したものと類似の構成を採る。つまり缶体1は、本実施の形態の容器10と、容器10の上部を塞ぐための蓋部材20とから構成される。そして容器10は、容器基体12と、容器基体12の外周面に形成される塗膜14とからなる。ただし本実施の形態では、塗膜14について、トップコート層143の一層から構成されている。そしてトップコート層143の構成については、図1〜図3で説明した場合と同様である。
【0036】
これにより例えば、容器10について、容器基体12の金属色にマット感を出すといった特有の視覚効果が生じる。
【0037】
このように塗膜14の最外層としてトップコート層143を塗布し、これに上述した艶消し剤16を含ませれば、マット感を有する容器10を製造することが可能である。なお塗膜14の最外層に上述した艶消し剤16を含ませれば、本実施の形態の艶消し効果は得ることができる。つまり例えば、ベースコート層141上に本実施の形態の艶消し剤16を含ませたトップコート層143を塗布する形態でも容器10にマット感を付与することができる。
また上述した艶消し剤16を含むトップコート層143は、部分的に形成されていてもよい。つまりトップコート層143について艶消し剤16を含む部分と、艶消し剤16を含まない部分とに分けて形成を行なう。これにより容器10の外観が部分的にマット感を有するものとなる。そして容器10の一部についてマット感を強調させるものとなり、容器10を見る者にさらに異なる特有の視覚的効果を与えることができる。
【0038】
<容器の製造方法の説明>
次に、容器10の製造方法について説明する。
図6は、容器10の代表的な製造方法を説明した図である。ここでは容器10を構成する容器基体12(図1参照)の材料としてアルミニウムを使用し、図1に示した容器10を製造する場合を例に取り説明を行なう。
図6に示すように、本実施の形態における容器10の製造工程には、アンコイラー(UC)工程50、ルブリケーター(LU)工程51、カッピングプレス(CP)工程52、ボディメーカー(BM)工程53、トリマー(TR)工程54、ウォッシャー(WS)工程55、プリンタ(PR)工程56、ピンオーブン(PO)工程57が設けられている。また、インサイドスプレー(INS)工程58、ベークオーブン(BO)工程59、ネッカー・フランジャー(QNF)工程60、ディフェクティブキャンテスター(DCT)工程61、ライトテスター(LT)工程62、パレタイザー(PT)工程63が設けられている。
【0039】
アンコイラー工程50では、コイル状に巻かれた例えばアルミニウム板の巻き解きを行う。ルブリケーター工程51では、アンコイラー工程50にて巻き解かれたアルミニウム板に対して成形加工のための潤滑油を塗布する。カッピングプレス工程52では、円形のブランク材を打ち抜くとともに、金型を用い、絞り加工により浅いカップ状素材を成形する。ボディメーカー工程53では、金型を用い、上記カップ状素材に対して絞り加工およびしごき加工を施し、カップ状素材を延伸する。そしてトリマー工程54にて、カップ状素材の開口側における縁部を切り揃える。これにより、底部を有した円筒状の素缶体(容器基体12の一例)が成形される。
【0040】
ウォッシャー工程55では、素缶体を洗浄し、加工のために塗布した潤滑油やその他の付着物を除去する。又、必要に応じて素缶体に化成皮膜処理を施す。プリンタ工程56では、塗布機により塗膜14の塗布を行なう。そして素缶体の外周面に塗膜14である印刷層142とトップコート層143がそれぞれ塗布される。本実施の形態では、印刷層142はオフセット印刷により行なうことができ、またトップコート層143は、ロールコータにより塗布することができる。またこのときトップコート層143を塗布するための塗布液には、上述した艶消し剤16が含まれている。この艶消し剤16は、塗布液を調合する際に添加され、撹拌機等により撹拌することで、塗布液中に分散させることができる。
【0041】
ピンオーブン工程57では、素缶体の外周面に塗布された塗膜14を、200℃〜220℃で焼き付ける。これにより塗膜14の焼付け乾燥が行なわれる。ここで、図4で説明したベースコート層141を設ける場合は、図示はしていないが、ウォッシャー工程55とプリンタ工程56の間にベースコータ工程及びピンオーブン工程57と同様のピンオーブン工程を別に設ける。ベースコータ工程において、素缶体にベースコート層141をロールコータにより塗布し、素缶体は、別に設けられたピンオーブン工程で、ピンオーブン工程57と同様に焼き付けられ、プリンタ工程56に送られる。
【0042】
インサイドスプレー工程58では、素缶体の内面に対して塗装を行う。ベークオーブン工程59では、素缶体の内面に対して行われた上記塗装を、200℃〜220℃で焼き付ける。ネッカー・フランジャー工程60では、素缶体の開口縁を縮径するとともに、蓋部材20(図1参照)が取り付けられる際に用いられるフランジを成形する。本工程により、最終形状の容器10が作製される。
【0043】
その後、ディフェクティブキャンテスター工程61において、容器10の外観および印刷の状態が検査され、不良品があれば取り除かれる。そして、ライトテスター工程62において、容器10の穴あきの有無が検査され、不良品があれば取り除かれる。最後に、パレタイザー工程63において、検査に合格した容器10がパレットに積載される。
【0044】
なお、図6において、二重線または単線で接続されている工程はコンベアによる移送工程を示している。また、各工程における枠線が直結する箇所は、素缶体や容器10を移送することなく連続して処理を行うことを示している。また、二重線で示す箇所は、素缶体や容器10を整列させることなくマスコンベアにより移動させることを示し、単線で示す箇所は、素缶体や容器10が一列に整列した状態で移動されることを示している。
また、ボディメーカー工程53、トリマー工程54、インサイドスプレー工程58、およびディフェクティブキャンテスター工程61は、複数台の装置を用いてそれぞれの工程を実施している。これらの工程では、処理の都合上、他の工程よりも時間がかかる傾向にある。このため、複数台の装置で平行して処理を行い、全体の工程をよどみなく進行させている。なお、各装置の処理速度が速い場合には、複数台の装置ではなく一台の装置により処理を行うこともできる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。
【0046】
<容器の作製>
(実施例1〜3)
実施例1〜3では、容器として図1に示した容器10を、図6で説明した製造方法により作製した。このとき容器基体12としてアルミニウムからなるアルミ缶基体を用いた。またトップコート層143としては、エポキシ/ポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂に下記表1で示した種類(艶消し剤A〜艶消し剤B)と量の艶消し剤を含ませたものを形成させた。このとき艶消し剤Aは第1の艶消し剤に対応し、艶消し剤Bは第2の艶消し剤に対応する。なお印刷層142とトップコート層143の合計の厚さ、即ち塗膜14の厚さは、5μmになるようにした。
【0047】
(比較例1〜5)
比較例1〜5では、艶消し剤の種類と量を表1で示したものに変更したこと以外は、実施例1〜3と同様に容器を作製した。
【0048】
<評価方法>
以下の方法により容器のマット感、滑り性、トップコート層143の密着性について評価を行なった。
【0049】
(マット感)
まずBYK−Gardner社製のマイクロ・トリ・グロスメータにより容器表面の60度鏡面光沢度の評価を行なった。つまり容器表面における法線に対して光の入射角を60度、反射角を60度とした場合の鏡面光沢度を測定した。そして艶消し剤を添加しない比較例1の60度鏡面光沢度を100%としたときの60度鏡面光沢度の比率(%)を算出した。つまりこの数値が小さいほどマット感が強いと考えられる。
さらに容器のマット感を視覚により5段階で判定した。このとき艶消し剤を添加しない比較例1の場合を1とし、最もマット感を感じたものを5とした。つまりこの数値が大きいほどマット感が強く感じられることを意味する。
【0050】
(滑り性)
容器表面の滑り性を、新東科学株式会社製の静摩擦係数測定器HEIDON・10により静摩擦係数を測定することで評価を行なった。つまりこの数値が小さいほど滑り性が良好であると考えられる。
【0051】
(トップコート層の密着性)
容器のトップコート層143の密着性をIMV株式会社製の振動試験装置VS−300−2を使用することで評価を行なった。即ちこの振動試験装置により周波数5Hz〜50Hzで、加速度0.75Gの振動を発生させ、この振動を24本の容器に45分加えた。そしてこの24本の容器について直径2mm以上の塗膜剥離が生じた箇所の個数により評価を行なった。つまりこの数値が小さいほどトップコート層143の密着性が良好であると考えられる。
【0052】
<評価結果>
結果を以下の表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1からわかるように実施例1〜3の艶消し剤A(大粒子シリカ)とともに艶消し剤B(小粒子酸化チタン)を添加したものは、マット感、滑り性、トップコート層143の密着性の全てについて良好な結果となった。
【0055】
一方、比較例2のように艶消し剤Aだけを添加したものは、マット感が足りなかった。また艶消し剤Aだけを5wt%を超えて添加した比較例3では、マット感は良好であるもののトップコート層143の密着性が劣る結果となり、さらに滑り性も悪化した。
そして比較例4のように艶消し剤Bの添加量が0.1wt%未満のものは、マット感が足りなかった。また比較例5のように艶消し剤Bを2wt%を超えて添加したものは、マット感は良好であるもののトップコート層143の密着性が劣る結果となり、さらに滑り性も悪化した。
【符号の説明】
【0056】
10…容器、12…容器基体、14…塗膜、141…ベースコート層、142…印刷層、143…トップコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填可能な容器基体と、
前記容器基体の外周面に形成され、標記が付される標記層と、
前記標記層の艶消しをする艶消し剤を含み、当該標記層を保護するために当該標記層上に形成される保護層と、
を備え、
前記保護層に含まれる前記艶消し剤は、
光の散乱により前記標記層の艶消しを行なう第1の艶消し剤と、
前記第1の艶消し剤とは異なる成分からなり、光の散乱を更に増大させる第2の艶消し剤と、
を含むことを特徴とする容器。
【請求項2】
前記容器基体と前記標記層との間に当該容器基体の素地を隠蔽するための隠蔽層を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記第1の艶消し剤は、シリカからなり、前記第2の艶消し剤は、酸化チタンからなることを特徴とする請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
前記第1の艶消し剤は、個数平均径で1μm〜5μmであり、前記第2の艶消し剤は、個数平均径で50nm〜250nmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の容器。
【請求項5】
内容物が充填可能な容器基体と、
前記容器基体の外周面に形成される塗膜と、
を備え、
前記塗膜は、当該塗膜の最外層において当該塗膜の艶消しをする艶消し剤を含み、
前記艶消し剤は、光の散乱により前記塗膜の艶消しを行なう第1の艶消し剤と、当該第1の艶消し剤とは異なる成分からなり光の散乱を更に増大させる第2の艶消し剤とを含むことを特徴とする容器。
【請求項6】
前記第1の艶消し剤は、シリカからなり、前記第2の艶消し剤は、酸化チタンからなることを特徴とする請求項5に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−171636(P2012−171636A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33678(P2011−33678)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000186854)昭和アルミニウム缶株式会社 (155)
【Fターム(参考)】