説明

容易に分散できる脂質相

本発明は、低エネルギー又は手動操作の適用によって水中油型エマルションを製造するのに適する油及び親油性添加剤(LPA)を含む脂質相の使用に関する。該脂質相は、エマルションの油滴内部に自己集合構造を形成する親油性添加剤(LPA)を含有する。該水相は、親水性乳化剤を含有し、該脂質相及び水相は、古典的な高せん断装置類又はホモジナイザー類を使用することなく混合される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、低エネルギー又は手動操作の適用により水中油型エマルションを製造するのに適する油及び親油性添加剤(LPA)を含む脂質相に関する。
【0002】
[発明の背景]
産業におけるエマルション
脂質相、例えば油類又は脂肪類は、多くの様々な製品に使用される共通の成分である。脂質相を含有する製品に許容範囲にある物理的均一性及び「保存寿命」(油と水が互いに混合しない)を与えるためには、バルクの脂質相を小さな油滴に離散させなければならない、即ち、油相を水の連続相中に分散させなければならない。得られた生成物は、水中油型エマルションである。その分散した油滴は、油滴の周りに安定化層を形成する界面活性分子によって安定化される。分散相の液滴を安定化するために使用する界面活性分子(乳化剤とも称される)の溶解性によって、水中油型及び油中水型エマルションの両方を形成させることができる。水中油型エマルションは親水性界面活性分子によって安定化されるのに対して油中水型エマルションは親油性乳化剤によって安定化される。
【0003】
安定且つ/又は均一な水中油型エマルションを製造するためには、油相を、約100nmから数百ミクロンの半径を有する小さな油滴として、連続水相中に分散させなければならない。このためには、ホモジナイザー、即ち高いエネルギーを油−水混合物に加えることができる機械を使用する必要がある。均一化ステップの間の油滴の周りの安定化層の形成は、油滴を、融合、凝集、凝析、オストワルド熟成又はクリーミングに対して動力学的に安定化させる。水中油型系のエマルション製品中に使用される界面活性物質は、低分子量の親水性界面活性剤、例えばポリソルベート、リゾレシチンなど、又はポリマー類、例えばタンパク質、例えばゼラチン若しくはミルク、大豆由来、又は多糖類、例えばアラビアゴム若しくはキサンタン、又は(ナノ又はマイクロ)粒子類、例えばシリカ粒子、又はそれらの混合物のいずれかであり得る。
【0004】
水中油型エマルションに基づく製品は、食品、化粧品、医薬品又は農薬に広く普及している。顕著な水中油型エマルション系食品は、例えば、ミルク、マヨネーズ、サラダ用ドレッシング類、ソース類、又は臨床製品である。化粧品工業又は医薬工業で使用される顕著な水中油型エマルションに基づく製品は、ローション類、クリーム類、乳液類、ピル類、錠剤類、糖衣錠類などである。かかる製品中の油滴は、通常、脂質、例えばトリグリセリド類、ジグリセリド類、ワックス類、脂肪酸エステル類、脂肪酸類、アルコール類、鉱物油類、又は炭化水素類でできている。
【0005】
エマルションの使用
エマルションは、出発材料、中間体又は最終生成物として、或いは最終生成物への添加剤としてのいずれかで使用される。
【0006】
工業におけるエマルションの使用の1つは、活性化合物又は機能性分子、例えばフレーバー類、ビタミン類、抗酸化物質類、栄養補助食品類、植生化学物質類、薬物類、化学物質類等を送達することである。活性成分の投与には、有効量の活性成分を製品及び/又は所望の作用場所に持っていくための適切なビヒクルの使用が必要である。水中油型エマルションは、それらが親油性の活性化合物の水に対して油中への増大した溶解性の利点を利用するので共通して使用される送達系である。欧州特許第1116515号明細書では、フレーバー性能を制御するためのエマルション使用の例として、製品をさらに加工する間に導入した活性成分の安定性を増すために、フレーバー成分など疎水性活性成分を、母体中に押出機によって水中油型エマルションの形で混合している。国際公開第00/59475号パンフレットでは、医薬品の水中油型エマルションの例として、イオン化疎水性治療薬の改良された送達のための組成物及び方法が記載されており、それはイオン化剤、界面活性剤及びトリグリセリドと共に混合して水中油型エマルションを形成している。国際公開第99/63841号パンフレットは、食品分野におけるエマルションの使用例として、エマルション又はマイクロエマルションの形成が原因で水相中の高められた溶解性及び分散性を有するフィトステロールを含む組成物を記載している。
【0007】
エマルションの形で脂質を水相中に分散させるもう1つの理由は、均一で動力学的に安定化した油と水を含有する製品を生み出すためである。これは、多種多様の異なる製品の製造において必要なことであり、例えば、冷凍する前のアイスクリーム配合物を調製する間のアイスクリームの製造において、マヨネーズ、ソース類、ドレッシング類、クリーム類、ローション類、スプレー類の製造において、及び動力学的に安定であり、均一な中間物又は最終生成物を得るために連続水相中に脂質相を組み込まなければならない数々のより多くの油を含有する製品において必要である。これらの応用のすべてにおける1つの欠点は、油相の十分な分散性を得るために、油−水混合物を高いエネルギーによって処理しなければならないことである。即ち、安定なエマルションを得るために、特定の、時には高価であり高機能の「高エネルギー投入」機械、例えばホモジナイザー、高せん断ミキサー、超音波、ジェットミキサーなどを使用することが必要である。
【0008】
水−油混合物の動力学的安定化のために、ホモジナイザー又はその他の高エネルギー投入機械を利用できないか使用することができない場合、状況は厳しいことになる。この事実に悩まされる製品の1つの種類は、通常は手動操作、例えば振動させること又は攪拌することのみで調理できるインスタント又は台所製品である。インスタント製品は、消費者にはよく知られている。それらは、その調理が容易であり、高機能の高エネルギーミキサーを使う必要がないため十分一般に認められた製品である。例としては、インスタントのスープ類、スパイス類、ペースト類、調味料類、バター代用品類などがある。それらは、家庭又はレストランで食品を調理する途中で、濃厚な貯蔵組成物(ペースト、粉末、液体)をお好みの製品に加えるという原則に基づいている。そうして用意された製品は、脂質相が調理後素早く大きな層分離を引き起こす不均一な状態で製品中に分布されるために限られた保存安定性しか有さないという不都合を有する。調理した製品中のこの種の不安定性又は不均一性は、インスタント製品が油又はその他の脂質成分を含有するときに主として見られる。それ故、「不均一性」という語は、油相が製品中に均一な、即ち一様な状態で分布されていない事実を表している。この状況は、特定の油着色技術によって油/脂肪の場所を見つけ出すことを可能にする光学顕微鏡法によって容易に視覚化することができる。油の不均一性が極めて顕著である場合は分散していない巨視的な油の斑点を視覚によっても見ることができる。一般に、油性成分は、水又は水性の製品中に高エネルギーの処理を施さずに加えたときは不十分な分散特性を示す。手動操作は、一般に、安定な製品を得るには不十分であり、それ故、速やかに相分離し、物理的に安定性を損なう非常に不均一なエマルションの形成をもたらす。油含有製品の不均一性は、低エネルギーの混合を用いるとき生成されたエマルション滴が非常に大きく(数百ミクロン)、多分散系であるという事実による。
【0009】
米国特許第4160850号明細書は、広げられるバター代用品の消費者の調理に適する配合物について記載している。この場合の最終生成物は油中水型エマルションである。該配合物は、固い脂肪、油及び油中水型乳化剤の混合物からなり、それは、該バター代用品を家庭で調理する途中で油中水型エマルションを形成するために、添加される水相を安定化させるために標準的な家庭用ミキサーを用いて油/脂肪相に消費者によって添加される。これらの製品は、室温で保存された場合極めて不安定であり、製品の安定性を改善するためには冷蔵しなくてはならない。
【0010】
国際公開第03/053149号パンフレットは、ベース組成物を油及び/又は水と単純な手動操作によって混合するステップを含む、広げられる油と水のエマルションを調製する方法を開示している。このベース組成物は、冷間水和増粘剤、例えば冷間水和デンプン又は多糖類など、親水性乳化剤、例えば加水分解レシチン、又はカゼイネート若しくはカゼイネートの代わりとなるもの、及び場合によっては酸性化剤を含む。ベース組成物中の増粘剤、特に多糖類の存在は、最終的な水中油型エマルション中の平均油滴サイズがより小さい製品をもたらす。
【0011】
水中油型エマルション中の油滴が、極めて小さく、例えば数ナノメートルから約200nmの直径であり、自発的に形成される場合(高エネルギーを摂取させる装置を使用しない)、そのエマルションは、「水中油型マイクロエマルション」と呼ばれる(Evans,D.F.;Wennerstrom,H.(編);「The Colloidal Domain」、Wiley−VCH、New York、(1999))。これらのエマルションは、透明で、熱力学的に安定であり、それ故、当業者にとっては、熱力学的に不安定であり一般に濁っている通常のエマルションとは異なる。
【0012】
公開特許公報第2004−008837号明細書は、油滴中に存在する水溶性固体粒子を含有する水中油型エマルションを開示している。その粒子は、20nmから10μmの大きさの範囲内である。粒子を、脱水(即ち、自発的過程ではない)によって油中水型(w/o)エマルションの形で調製した後に、全体の粒子/油(S/O)懸濁液を、多孔質膜乳化方法を用いて水相に分散させる。
【0013】
国際公開第02/076441号パンフレットは、固体ナノ粒子を調製するための前駆物質としてのフルオロカーボン中のアルコール型マイクロエマルションの使用を開示している。そのナノ粒子は、200〜300ナノメートルより下の直径を有する。ナノ粒子の形成は、自発的ではなく、前駆物質のマイクロエマルションを約35℃より下に冷却するか、又は前駆物質のマイクロエマルション中のアルコールを蒸発させるか、又はそのマイクロエマルションを適当な極性溶媒で希釈することによって引き起こされる。
【0014】
米国特許出願公開第2004/022861号明細書は、油滴がタンパク質又は別の親水性物質を含有する水性の微細な水相を含有するw/o/w型ダブルエマルションを開示している。そのダブルエマルション全体は、タンパク質が詰まった微小粒子を製造するために、毛細管ノズルによって例えば液体窒素中に噴射される。
【0015】
これらの例は、すべて、w/o型マイクロエマルション又はw/o型若しくはw/o/w型ダブルエマルションを用い、油滴の内部の親水性ドメインの固化に対する外部からのきっかけを必要とする固体の親水性(ナノ)粒子の非自発的形成について記載している。(ナノ)粒子の調製後、それらは、温度、pH、又は外側流体の性質などの環境因子によって大きくは影響されない。水滴が固化されない、即ち流体である通常のw/o型マイクロエマルションは、上記のような環境因子によって大きく影響されることを述べておかなくてはならない。
【0016】
本発明の目的は、高エネルギーを摂取させる混合機械を使用しないで、台所、レストランにおいて、又はフードサービスの装置において使用される手動操作、例えば手による振動又はスプーン又は同等の低エネルギー装置を用いる手による攪拌などのみを使用して、脂質相を水相に分散させて水中油型エマルションを形成することを可能にする新たな溶液を提供することである。低エネルギー装置は、膜乳化、ナノ及びマイクロ流体装置又はスタティックミキサーを用いて油滴を形成することを可能にする方法から選択することもできる。本発明のエマルションを製造するために使用する脂質相は、調製するのが容易であり高機能の混合装置を必要としない。
【0017】
[発明の説明]
本発明は、油相が親油性添加剤(LPA)を含有するとき、通常の油滴の内側に新たなナノサイズの自己集合構造を見出したことに基づいている。その油滴の内側の構造は、熱力学的に安定であり、親油性添加剤(LPA)によって安定化されている。それ故、本発明において、油又は脂肪及び脂質添加剤からなる脂質相は、ナノサイズの自己集合内部構造を有する油滴を含む水中油型エマルションがそこからつくられるものと定義される。油層内部のナノサイズの自己集合構造の存在は、水相と脂質相の間に生じる界面張力の著しい低下に関与し、それは一般的なドロップシェイプアナリシス(drop shape analysis)張力計によって測定される。一般的に、水相(追加の乳化剤は含まない)又は通常の水道水と本発明の脂質相(トリグリセリドなどの油+不飽和モノグリセリド(DIMODAN U/J)などのLPA)の間の測定された界面張力は、10〜100秒未満の吸着時間の後測定したとき、1〜5mN/mの間である。水とトリグリセリド油相中にLPAが添加されていない油の間のそれぞれの界面張力は、使用された油の純度及び水相中の塩の含量(乳化剤又は界面活性剤は加えられていない)によって、室温で6と30mN/mの間であることが測定されている。水(追加の乳化剤は含有しない)−油界面張力が、100秒未満の吸着時間(この時間は水相中に浸された油滴の「寿命」とも呼ばれる)の後に約5mN/mより低い場合、油の小さくて均一な液滴への分解は、高エネルギー摂取装置を用いなくても著しく促進される。そのような条件のもとでは、製品中に小さくて均一に分布した油滴を含有するエマルションを形成することが可能である。作り出された油滴をそれらが形成された後の融合に対しても同様に安定にするために、その系に親水性乳化剤を加える。このようにして、安定で均一なエマルションを、低エネルギーを用いるか手動操作を行うだけで製造することができる。高せん断ホモジナイザーは、この場合不必要である。このことは、混合のステップの前に、親油性添加剤、例えばモノグリセリドなどを、脂質相全体に対して約2〜3重量%を超える濃度で、低エネルギー手段、例えば手動操作、手による振動又はスプーンによる攪拌、或いは同様の低エネルギーの操作方法のみを用いて油相に加える場合は均一で安定な水中油型エマルションを調製することができることを意味する。この親油性添加剤の低い方の濃度限界は、しかしながら、LPA及び油の両方の化学構造に依存し、油相に対して0.1%のLPA程度の低さであり得る。
【0018】
本発明の脂質相と水相の間で測定される特徴的な低界面張力は、水相中に余分な親水性両親媒性分子、界面活性剤又は乳化剤が存在しない中でのみ計量化することができる。今回の場合、標準的な張力計、例えば、懸滴(Pendant Drop)張力計(例えば、フランスのTeclis−IT Concept製のTRACKER張力計、又はドイツ、ベルリンのSINTERFACE Technologies製のPAT張力計)又は滴容(drop volume)張力計(例えば、ドイツのLauda製のTVT2)などを用いて容易に測定及び監視をすることができる。その測定は、追加の親水性乳化剤を水相に加えると測定を乱すおそれがあるので、追加の親水性乳化剤は一切なしで行う。余分な乳化剤はまた、界面に吸着され測定される界面張力を低下させるであろう。勿論、本発明のエマルションを製造するとき、親水性乳化剤は、生成したエマルションの液滴を融合に対して安定化させるために必要である。
【0019】
得られた本発明のエマルションの均一性は、また、比較的低い測定される平均油滴サイズにも反映される。例えば、脂質相全体に基づいて計算して40%の大豆油と1〜10%のDIMODAN U/J(LPA)、並びにカゼイン酸Naの5重量%水溶液の60%を含有する本発明のエマルションを、プロペラミキサーを用いて調製することにより生成した油滴は、DIMODAN U/Jを含有しないエマルションの液滴よりそれぞれ2〜4倍小さい。
【0020】
本発明の別の実施形態においては、該水中油型エマルションは、2チャンバのアセンブリを用いて製造される。この2チャンバのアセンブリは、混合前に本発明の脂質相と水相を別々に保存することを可能にする。そのアセンブリは、その出口に、本発明の水中油型エマルションを製造するために脂質相と親水相とを混合することを可能にする手段を含有する。低エネルギーの混合装置は、そのアセンブリの末端に固定されているスタティックミキサーであり得る。脂質相及び水相を下方に加圧すると、それらの相は、低エネルギー混合装置を通過してエマルションが形成される。実験によると、LPAなしか又は0.25重量%(脂質相全体に対して計算)より低いLPA濃度を有するトリグリセリド類などの油相を用いることによって、安定且つ均一なエマルションは2チャンバ装置では調製できないことが示されている。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態においては、該水中油型エマルションは、本発明の均一且つ安定な水中油型エマルションを生成させるために、親油相及び水相のプレエマルションを加圧してスタティックミキサーを通すことによって製造される。本発明の均一なエマルションは、また、本発明の脂質相及び水相を含有する袋を単に振動させるか押し付けるだけでも形成させることができる。そのようなエマルション生成物は、例えば、不安定な油−水混合物を混合するための機械的力が非常に弱いチューブによる食物摂取の適用に向く臨床又は経腸栄養法において使用される。
【0022】
本発明のさらに別の実施形態においては、該水中油型エマルションは、粉末の形のそれぞれのエマルションを冷水中に溶解することによって製造される。この場合は、親油性添加剤を含有する油は、容易に分散し、粉末材料は、例えば室温又は25℃未満の温度でスプーンによって攪拌することによって容易に再構成されて均一且つ安定な水中油型エマルションを生ずる。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態においては、形成された油滴が、ナノサイズの自己集合構造をそれらの内部に示す。この内部の油滴構造は、親油性添加剤(LPA)の存在によって形成され、主として、ナノサイズの、熱力学的に安定な親水性ドメイン、即ち水滴、水ロッド又は水チャネルからなる。エマルション油滴内部に自発的に(熱力学的に誘導された)形成されたナノサイズのドメイン類は、LPAによって安定化される。その親油性添加剤(LPA)は、わずかに両親媒性の特徴を有し、即ちそれは親水性頭部基及び親油性の鎖を含有する。LPA分子の親水性部分は、親水性ドメイン構造の一部である。その親水性ドメイン類は、直径が0.5〜200nmの大きさのものであり得る。好ましくは、直径が0.5〜150nmの範囲であり、さらにより好ましくは、直径が0.5〜100nmの範囲であり、そして最も好ましくは、0.5〜50nmの範囲である。親水性ドメインの大きさは、油滴中に加えられるLPAの量及び使用される油のタイプ(化学構造)に大きく依存する。油滴内部のナノサイズの自己集合構造の自発的な形成は、エマルションを製造するために使用されるエネルギー摂取には依存しない。
【0024】
本明細書では、「親水性ドメイン」は、水ドメイン類及びLPA分子の親水性頭部領域からなる。極端に小さなサイズのために、それらはまた、様々な異なる化合物の可溶化に対して好適な場所となる大きな表面積も提供する。
【0025】
本発明に関するエマルションは、水−油−水ダブルエマルションとして普通に知られているエマルションとははっきりと区別される。w/o/w(水/油/水)ダブルエマルションは、油滴がミクロンサイズの水滴を含む水中油型エマルションである(Garti,N.;Bisperink,C;Curr.Opinion in Colloid & Interface Science(1998)、3、657〜667)。分散しているダブルエマルション油滴の内側の水滴は、機械的エネルギー入力、例えば、均質化によって調製(分散)され、結果として熱力学的に不安定であり、自己集合ではない。w/o/wダブルエマルション中の内部の水滴の直径は、300nmの直径より大きい。本発明のエマルションは、本発明のエマルションの油滴の内側のナノサイズの自己集合構造の形成が、自発的であり、熱力学的に進められ、水滴又はチャネルの平均直径が200nm未満であるので、通常のw/o/wダブルエマルションとは容易に区別することができる。
【0026】
したがって、本発明は、0.5nmから200nmの範囲の親水性ドメインを備えたナノサイズの自己集合構造を含む油滴に向けられている。その油滴は、低エネルギー又は手動操作の適用によって形成される。「自己集合」又は「自己組織化」という概念は、別々の分子による凝集体(結合体)又はナノ構造の自発的な形成を指す。自己集合構造中の分子は、もっぱら、与えられた分子間力、例えば疎水性、水和作用又は静電気の力等によるそれらの構造及び化学特性に基づくそれらの適切な位置を見出す[Evans,D.F.;Wennerstrom,H.(編);「The Colloidal Domain」、Wiley−VCH、New York、(1999)]。自己集合の結果は、方法自体には依存せず、その系の最低エネルギーの状態(安定平衡)に相当する。
【0027】
エマルション調合物
本発明は、水中油型エマルションを調製するための油と親油性添加剤(LPA)とを含む脂質相の使用に関するものであり、その脂質相中のLPA含量は0.25重量%と84重量%の間である。好ましくは、そのLPA含量は、2.5重量%と80重量%の間である。さらにより好ましくは、前記LPA含量は、5重量%と80重量%の間である。さらに最も好ましくは、そのLPA含量は、10重量%と80重量%の間であり、水相は親水性乳化剤を含有し、両方の相が混合される。本発明の脂質相と親水性乳化剤を含有していない水相の間の界面張力は、100秒以下で測定した場合5mN/mに満たない。
【0028】
さらに、本発明は、脂質相と水相の混合が手動操作又は低エネルギー装置を使用して行われる脂質相の使用に関する。
【0029】
本発明の別の目的は、本発明の脂質相と親水性乳化剤を含有する水相の容器中でのプレミックスを含み、本発明の水中油型エマルションを調製するためのさらなる手段を含むアセンブリを提供することである。
【0030】
他の目的は、両方の相を混合し、本発明の水中油型エマルションを調製するための手段を含む出口を備えた容器中に親水性乳化剤を含有する水相から分離している脂質相を含むアセンブリを提供することである。
【0031】
他の目的は、脂質相及び親水性乳化剤を含有する水相が柔軟性のある袋の中にある両方の相を含むアセンブリを提供することである。
【0032】
別の目的は、脂質相及び親水性乳化剤を含有する水相を含む水中油型エマルションを提供することであり、その手段は、手絞り、電磁攪拌、手による振動、スプーン又は泡だて器による攪拌、ボルテックス混合、膜乳化、スタティックミキサー、調理用ミキサー、ナノ及びマイクロ流体デバイス、袋混合又は乱流を生ずる任意のミキサー、或いはそれらの組合せからなる群から選択される。
【0033】
本発明は、また、水相の低エネルギー混合の後、油滴が親油性添加剤(LPA)によって形成される親水性ドメインを含むナノサイズの構造化を示す水中油型エマルションを生じる脂質相にも関する。そのLPAは、化学的、生化学的、酵素的又は生物学的手段によってそれ自体を添加するかin−situで製造することができる。
【0034】
本発明のエマルション中に存在する油滴の量(油滴体積分率)は、通常の水中油型エマルション製品において一般に使用される量である。脂質相のその体積分率は、脂質相が高価な薬物、栄養素、化学成分又はその他の機能性親油性成分である治療用の水中油型エマルションにおいて使用されるような、1パーセントのかけら(製品全体に対して<0.001%)から、例えば高脂肪マヨネーズなどのHIPE類(High Internal Phase Emulsions)で見られるように、最高80%(製品全体に対して)まで変動させることができる。
【0035】
より正確には、本発明は、
(i)鉱物油類、炭化水素類、植物油類、脂肪類、ワックス類、アルコール類、脂肪酸類、モノ−、ジ−、又はトリアシルグリセロール類、精油類、フレーバー油類、親油性ビタミン類、エステル類、栄養補助食品類、テルピン類、テルペン類及びそれらの混合物からなる群から選択された油と、
(ii)親油性添加剤(LPA)又は約10より低い、好ましくは8より低い結果としてのHLB値(親水性−親油性バランス)を有する親油性添加剤と親水性添加剤の混合物と、
(iii)水又はポリオール等の非水性極性液体を含む液滴、ロッド又はチャネルの形の親水性ドメインと
を含むナノサイズの自己集合構造化内部を有する分散した油滴、
及び
エマルション安定剤又は乳化剤類を含有する水の連続相
を含む脂質相及びその対応する水中油型エマルションを対象とする。
【0036】
本明細書で使用される「脂質相」とは、一定量の「親油性添加剤」を含有する油相を指す。その油相は、また、一部結晶化した脂肪、例えば硬化ヤシ油、硬化パーム核油、使用温度におけるバター脂肪などであり得る。そのエマルション形成の温度は、4℃と100℃の間であり得る。
【0037】
本明細書において使用される「親油性添加剤」(「LPA」と略されもする)とは、バルク及び分散した油相中に安定なナノサイズの自己集合構造を自発的に形成する親油性両親媒性物質を指す。油相中に自己集合構造を形成するために、油相中のLPA濃度はCMC(臨界ミセル濃度)より大きくなければならない。この濃度より下では、自己集合構造は形成されない。例えば、トリグリセリド油類中の不飽和モノグリセリド類のCMCは、2重量%前後であり、スクアレン又はケロシン中では0.1重量%である。(J.Busら、Progr Colloids Polymer Sci(1990)82、122〜130)。この出版物に示されているように、CMCは、油と乳化剤即ちLPAの分子構造に著しく依存する。
【0038】
その親油性添加剤(混合物)は、脂肪酸類、ソルビタンエステル類、プロピレングリコールモノ−又はジエステル類、ペギル化脂肪酸類、モノグリセリド類、モノグリセリド類の誘導体類、ジグリセリド類、ペギル化植物油類、ポリオキシエチレンソルビタンエステル類、リン脂質類、ケファリン類、脂質類、糖エステル類、糖エーテル類、スクロースエステル類、ポリグリセロールエステル類及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
本発明の第1の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、L構造又はL2構造及び油構造の組合せ(マイクロエマルション又は等方性液滴)とからなる群から取られる内部構造を有する油滴を示す。
【0040】
本発明の第2の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造(マイクロエマルション又は等方性液滴)を有する油滴を示す。
【0041】
本発明の第3の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造(マイクロエマルション又は等方性液滴)又は逆ミセルキュービック構造又は逆バイコンティニュアスL3、及びそれらの組合せからなる群から選択される内部構造を有する油滴を示す。
【0042】
本発明の第4の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、内部逆ミセルキュービック構造を有する油滴を示す。
【0043】
本発明の第5の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、内部逆ヘキサゴナル構造を有する油滴を示す。
【0044】
本発明の第6の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、これまでに記載した構造の組合せである内部構造を有する油滴を示す。
【0045】
上記の内部構造は、すべて紛れもなく、小角X線散乱(SAXS)分析及び低温電子顕微鏡(cryo−TEM)[Qiuら、Biomaterials(2000)21、223〜234、Seddon.Biochimica et Biophysica Acta(1990)1031、1〜69、Delacroixら、J.MoI.Biol.(1996)258、88〜103、Gustafssonら、Langmuir(1997)13、6964〜6971、Portes.J.Phys:Condens Matter(1992)4、8649〜8670]、並びにcryo−TEM画像の高速フーリエ変換(FFT)によって測定することができる。
【0046】
一定の用途に対しては、100℃より高い温度を使用すること(例えば、レトルトにかける温度)も可能であり、本発明の対象である。
【0047】
親油性添加剤(LPA)は、また、親水性添加剤(10より大きいHLBを有する)と混合して、全体的な混合物のHLBが10又は好ましくは8を超えない量までの混合物とすることもできる。その添加剤(混合物)は、また、化学的、生化学的、酵素的又は生物学的手段によってin−situで製造することもできる。
【0048】
添加される親油性添加剤の量は、αとして定義される。αは、比LPA/(LPA+油)×100として定義される。αは、好ましくは0.25より高く、より好ましくは、0.5より高く、さらにより好ましくは、1より高く、そしてさらにより好ましくは、2より高い。比α=LPA/(LPA+油)100は、好ましくは84より低く、より好ましくは、70より低い。その低い範囲と高い範囲の任意の組合せが、本発明の領域に含まれる。αは、重量%又はモル%のいずれかで示すことができる。αの下限及び上限は、用いた油及びLPAの特性、例えば極性、分子量、誘電率など、或いは油滴相中のLPAの臨界凝集濃度又は臨界ミセル濃度(CMC)などの物理的特性に依存する。αの下限は、一般に使用したLPA/油混合物によって与えられたCMC測定値と同程度以上である。「同程度」とは、ここではαが>0.2×CMCであることを意味する。
【0049】
該エマルションは、通常の水中油型エマルションの液滴を安定化させるのに適する親水性乳化剤によって安定化される。該エマルションは、使用する乳化剤によって、凝集(凝結)させたりさせなかったりすることができる。その親水性乳化剤は、8を超えるHLBを有する低分子量界面活性剤類、ゼラチン、例えばミルク又は大豆由来のタンパク質類、ペプチド類、タンパク質加水分解物類、ブロックコポリマー類、界面活性親水コロイド類、例えばアラビアゴム、キサンタンゴムなど、ジブロックコポリマー又はアポタンパク質に似たバイオポリマー類、例えばタンパク質−多糖複合体類若しくはコアセルベート類、又はタンパク質−多糖、タンパク質−タンパク質、若しくは多糖−多糖ハイブリッド類、又はポリマー類とバイオポリマー類の複合体類若しくはコアセルベート類若しくは混合物類、或いはタンパク質ナノ粒子類、界面活性剤−タンパク質ナノ粒子類又はその他の水中油型エマルションを安定化させるのに適するナノ若しくはマイクロ粒子類などからなる群から選択される。
【0050】
親水性乳化剤は、LPA、又は油、或いはLPA及び油と混合することもできる。このことは、親水性乳化剤は、油滴の内部にも一部存在することができ、内部のナノサイズの自己集合構造及び該エマルションの調製の間の混合挙動に影響を及ぼし得ることを意味する。
【0051】
比β=親水性乳化剤/(LPA+油+乳化剤)×100は、油+LPA含量に対する、油滴を安定化するために用いられる乳化剤の量を表している。βは、好ましくは0.1を超え、より好ましくは、0.5を超え、より好ましくは、1を超え、より好ましくは、2を超え、そしてさらにより好ましくは、5を超える。
【0052】
比β=乳化剤/(LPA+油+乳化剤)×100は、好ましくは90未満であり、より好ましくは、75未満であり、さらにより好ましくは、50未満である。下方及び上方範囲の任意の組合せが本発明の範囲に含まれる。βは、重量%又はモル%で示すことができる。βの下限と上限は、採用した乳化剤、油及びLPAの性質に依存する。
【0053】
様々な有効成分を、油滴のナノサイズ自己集合構造化内部に可溶化することができる。それらは、栄養補助食品類、例えば、ルテイン、ルテインエステル類、β−カロテン、トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコトリエノール、リコペン、Co−Q10、亜麻油、リポ酸、ビタミンB12、ビタミンD、α−及びγ−ポリ不飽和脂肪酸類、フィトステロール類、フラボノイド類、ビタミンA、ビタミンC若しくはその誘導体類、糖類、食品サプリメント類、機能性成分類、食品添加物類、植物エキス類、薬剤類、薬物類、薬理活性成分類、化粧品活性成分類、ペプチド類、タンパク質類又は炭水化物類、芳香、塩類、フレーバー類などからなる群から選択される油溶性、油不溶性、結晶性又は水溶性成分であり得る。
【0054】
本発明による水中油型エマルションにおいて、親油性添加剤は、ミリスチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、PEG1−4ステアレート、PEG2−4オレエート、PEG−4ジラウレート、PEG−4ジオレエート、PEG−4ジステアレート、PEG−6ジオレエート、PEG−6ジステアレート、PEG−8−ジオレート、PEG−3−16ヒマシ油、PEG5−10水素化ヒマシ油、PEG6−20トウモロコシ油、PEG6−20アーモンド油、PEG−6オリーブ油、PEG−6ラッカセイ油、PEG−6パーム核油、PEG−6水素化パーム核油、PEG−4カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、植物油及びソルビトールのモノ−、ジ−、トリ−、テトラエステル類、ペンタエリトリチルジ−、テトラステアレート、イソステアレート、オレエート、カプリレート又はカプレート、ポリグリセリル−3ジオレエート、ステアレート、又はイソステアレート、ポリグリセリル4−10ペンタオレエート、ポリグリセリル2−4オレエート、ステアレート、又はイソステアレート、ポリグリセリル4−10ペンタオレエート、ポリグリセリル−3ジオレエート、ポリグリセリル−6ジオレエート、ポリグリセリル−10トリオレエート、ポリグリセリル−3ジステアレート、CからC20脂肪酸のプロピレングリコールモノ−又はジエステル類、CからC20脂肪酸のモノグリセリド類、モノグリセリド類の乳酸誘導体類、ジグリセリド類の乳酸誘導体類、モノグリセリド類のジアセチル酒石酸エステル、トリグリセロールモノステアレートコレステロール、フィトステロール、PEG5−20大豆ステロール、PEG−6ソルビタンテトラ、ヘキサステアレート、PEG−6ソルビタンテトラオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノトリオレエート、ソルビタンモノ及びトリステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンセスキステアレート、PEG−2−5オレイルエーテル、POE2−4ラウリルエーテル、PEG−2セチルエーテル、PEG−2ステアリルエーテル、スクロースジステアレート、スクロースジパルミテート、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、ポロキサマー類、ホスホリピッド類、レシチン類、ケファリン類、オート脂質及びその他の植物に由来する親油性両親媒性脂質類、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0055】
本発明による脂質相は通常、液体又はペースト形態である。本発明の他の実施形態によれば、脂質相は乾燥しており、粉末形態で入手できる。該粉末は、水相又は純水相中に加えると容易に戻すことができる。本発明の別の実施形態によれば、該脂質相は、他の成分、例えばスパイス類、ハーブ類、又は芳香類を含有することができる。
【0056】
本発明による脂質相は、最終生成物又は添加剤又は中間生成物のいずれかである。最終生成物中のその添加剤の量は、決定的に重要ではなく、変化させることができる。
【0057】
本発明により本発明の脂質相の水相の低エネルギー混合によって得られる水中油型エマルションは、最終生成物又は添加剤のいずれかである。最終生成物の添加剤の量は重要ではなく、多様であり得る。
【0058】
本発明に記載のエマルションは、内部自己集合(nternally elf−ssembled)である構造を含有する油滴の特有の性質を説明し、油滴が親水性ドメインを含むナノサイズ自己集合構造を持たないナノエマルション及びマイクロエマルションを含む、通常の水中油型又はw/o/wダブルエマルションから本発明のエマルションを除外するために、本出願人等が「ISAMULSION」と命名する新規な型のエマルションである。ISAMULSION液滴は、基本的に親水性ドメインを含むナノサイズ自己集合構造を有する油滴からなる。このナノ構造は、L2、マイクロエマルション、等方性液相、ミセルキュービック、ヘキサゴナルH2、又は両連続L3又は相を含む逆性構造であり得る。油相におけるこれらの構造は、単一のナノ構造、又は種々のナノ構造の混合物として出現することができる。
【0059】
したがって、水−油混合物に単に低エネルギーを加えることによって水中油型エマルション調合物を容易に調製することが可能な脂質相又はこの脂質相を含有する配合物を提供することが本発明の目的である。その脂質相は、それ自体で使用することができ、又は台所、レストラン、食堂(cantine)、キャンプ中又はその他の高せん断装置が自由に使用できない類似の場面において、料理又は食事の準備をする間にエマルション製品を新たに調製するために使用することができる、すぐ使用できる製品の一部であり得る。そのすぐ使用できる製品は、BBQソース又はその他のソース類、マリネ、マヨネーズ、ケチャップ、サラダ用ドレッシング類、調味料類、スパイス類、及び同様のタイプの製品を新たに調製するために使用することができる。
【0060】
本発明の脂質相又は脂質相を含有するすぐに使用できる製品の応用のもう1つの分野は、自家製の製品に脂質の(易分散性ではない)機能性分子、例えば栄養素類、芳香類、味覚エンハンサー類などを強化するためのものである。
【0061】
応用のもう1つの分野は、水不溶相(脂質相)をある時点でホモジナイザーを使用することなく添加することに人が関与する工業生産又は半工業生産におけるものである。
【0062】
脂質相及びその直後の水中油型エマルションの上記の性質は、食品、ペットフード、栄養補助食品類、機能性食品、洗剤類、栄養化粧品類(Nutri−cosmeticals)、化粧品類、医薬品類、薬物送達、ペイント類、医化学又は農芸化学工業、火薬類、繊維類、鉱業、石油採掘、製紙業、高分子工業などについての新しいすぐに使用できる油含有製品を設計するためにも容易に使用することができる。
【0063】
図1は、親油性添加剤の含量%(LPA%=α=100*LPA/(LPA+油))及び温度の関数として、ISAMULSIONの分散油滴内部に見出された典型的な構造順序を示す。αを、即ち油滴中のLPAの含量を変化させることにより、液滴内部のナノ構造を変化させ、調節することが可能である。L2は、逆マイクロエマルション様構造を表し、LCは、液晶相、又は様々な液晶相の混合物、例えば逆ミセル又は逆ヘキサゴナル、或いは逆バイコンティニュアスキュービックなどの存在を表す。図1が示すように、油滴内部において、所与の温度及び添加される親油性添加剤の特定量(α値)で、明確なナノサイズ自己集合構造が形成される(言及した構造のより詳しい説明は、Evans,D.F.;Wennerstrom,H.(編):「The Colloidal Domain」、Wiley−VCH、New York(1999)を参照のこと)。添加するLPAの量により、自己集合構造の型、親水性ドメインに存在する水の量、内部界面の量、及びISAMULSION液滴内部に形成される自己集合ナノ構造の大きさ、寸法を正確に制御することが可能となる。使用される油の種類及び親油性添加剤の種類によって、自己集合内部液滴構造の自発的形成を開始するために必要なLPA(α)の最低量(臨界ミセル濃度CMC又は臨界凝集濃度のようにも称される)は、0.1と15重量%(油相に対して)の間である。さらに、油滴中での相変化が見られるα値もまた、使用された油及び/又は親油性添加剤の種類に依存する。エマルション中の油滴の内部ナノサイズ自己集合構造は、低温透過型電子顕微鏡(Cryo−Transmission Electron Microscopy)又はSAXSを用いて検出することができる。
【0064】
図2のcryo−TEM画像は、Adrianら(Adrianら、Nature(1984)308、32〜36)の標準的な技法を用いて得られたものである。試料を凍結するために、自家製切断機を用いた。試料分散液3μlの液滴を、直径約2μmの穴を含有する穴の開いたカーボン膜で被覆された銅グリッドに載せた。過剰な試料溶液を除去するために、グリッドの液体側を濾紙で押さえた(ブロッティング)。液体を除去した直後に、ピンセットで保持したグリッドを、液体エタンに浸漬した。凍結したグリッドを液体窒素中に貯蔵し、−180℃に保持した低温ホルダーに移した。Philips CM12 TEMにおいて、電圧80kVで試料の分析を行った。電子線損傷を最小限にするために、低線量法を適用した。一部の例では、Egelhaafら(Egelhaafら、J.Microsc.(2000)200、128〜139)に記載されているものに類似した自家製の環境チャンバを用いた。薄化及びガラス状化前の温度を25℃に設定し、湿度100%を用いた。ISAMULSIONは、油滴内部の小さな明るい形状の存在によって同定できる。図2は、典型的なISAMULSIONのCryo−TEM顕微鏡写真であり、明るい形状間の特性距離約7〜8nmを示している。そのような明るい形状は標準的な非構造化エマルションでは認められず、エマルション液滴の構造化されていない内部にはコントラストがないことに留意されたい。
【0065】
図3のSAXS曲線は、シールド管Cu陽極を備えた、40kV及び50mAで操作するX線発生装置(Philips、PW1730/10)を用いる標準的な装置(Bergmannら、J.Appl.Cryst.(2000)33、869〜875)によって得られたものである。Gobelミラーを用いて、発散多色X線ビームをCuKα照射の集束された線状ビームに変換する(λ=0.154nm)。二次元散乱パターンはイメージングプレート検出器によって記録され、SAXSQuantソフトウェア(Anton Paar、グラーツ、オーストリア)を用いて一次元散乱関数I(q)に統合されるが、ここでqは、q=(4π/λ)Sinθ/2で定義される散乱ベクトルの長さであり、λは、波長であり、θは、散乱角である。散乱プロファイルの幅広いピークは、これらのデータを一般化間接フーリエ変換(Generalized Indirect Fourier Transformation)法に適合させることによってデスミアした(Bergmannら(2000)、33、1212〜1216)。特性距離は、d=2π/qで示される。図3は、ISAMULSION(図2で調査したものと同じ)の小角X線散乱パターンを、その製造に用いる相当する非分散バルク油相(LPAによってナノ構造化)、及び相当する通常のエマルション(LPAなし、ナノ構造なし)と共に示す。ISAMULSIONは、その製造に用いる非分散バルク油相と同じピーク位置を示すことが分かる。共に特性距離は、約7.5nmである。この特性距離は、親水性ドメインの直径より大きい。したがって、親水性ドメインは、7nmより小さい大きさを有する。当業者には、親水性ドメインがこのように小型であるのは、油滴の内部構造が熱力学的に安定であることを実証するものである。さらに、LPAを添加しない相当する通常のエマルション(ナノ構造なし)については、ピークは認められない。これは、ISAMULSIONの油滴内部にナノサイズ自己集合構造が存在することのさらなる証明である。内部ISAMULSION液滴構造は水に分散されたときにも変化せず、その構造が熱力学的平衡状態にあることを示している。
【0066】
図5は、LPAの添加によってナノ構造化された油滴の概略図である。親水性ドメインの構造定義を明示する。親水性ドメインはLPAの極性部分(頭部)を含む(炭化水素尾部及び水部分は含まない)。親水性ドメインの最小直径は、水分子を含有しない2つの頭部基のほぼ断面である、約0.5nmであり得る。親油性添加剤又は乳化剤の極性部分の最小サイズは、約0.2nmである。水分子の直径は、約0.3nmである。
【0067】
図6及び7は、油(大豆油)中のLPA(DIMODAN U)含量の関数としての油−水張力測定結果を示している。
【0068】
図8は、大豆油相中のDIMODAN U含量の関数としての低エネルギー摂取により製造されたエマルションのザウター直径D32を示す。
【0069】
[実施例]
本発明の種々の実施形態は、親油性添加剤(LPA)の存在により、分散油滴が親水性ドメインのナノサイズ自己集合構造を示す水中油型エマルションを提供する。油相中のLPAの存在により、低エネルギー摂取の混合のみを使用して水中油型エマルションを調製することが可能となる。以下の実施例は本質的に例示的なものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0070】
実施例1:ISAMULSIONの一般的な例−規範モデル系における特定のISAMULSION液滴構造の検出のやり方を示す。
典型的には、テトラデカンなどの鉱油1〜5重量%を、既に乳化剤(Tween 80又はPluronic F127)0.375重量%を含有する水95重量%に添加した。次いで、LPA(モノリノール酸グリセロール)0.5〜4重量%を混合物に添加した。親油性分子(鉱油+LPA)の総量は、4.625重量%であった(αは9と80の間である)。
【0071】
次いで20分間、超音波処理を行った。これらのエマルションのISAMULSION特性は、図2及び図3〜4などのCryo−TEM画像及びSAXS曲線によって確認した。図2及び図3は、鉱油(テトラデカン)2.4重量%、LPA2.2重量%(α=48)、主要乳化剤(pluronic F127)0.375重量%、水95重量%の組成による、これらの一般的な実施例から得たものである。さらに、対応するバルク試料(油及びLPAを含むが、エマルション安定剤は含まない非分散試料)を調製し、分析した。油(テトラデカン)/LPA(モノリノール酸グリセロール)重量比は、1.1/1.0であった。油−LPA−水の混合物を、試料が均質化されるまでボルテックスにより加熱及び混合した。水0、5、又は10重量%を油/LPA混合物に添加した後、試料は透明となり、水が油/LPA混合物に完全に可溶化され、w/oマイクロエマルションが形成されたことを示した。より大量の水を添加した後、試料は相分離を示す。15及び20重量%の水を含有する試料は、相当するISAMULSION試料(鉱油2.4重量%、LPA2.2重量%、乳化剤0.375重量%)と同じSAXS曲線を示すことを示した。これは、ISAMULSION液滴が、相当するバルク相で観察されたものと同じ7.5nmの特性距離を示すことを実証している(図2及び3を参照のこと)。図4は、既に比較的低含量のLPA及び高含量の油を含む場合(例えば、鉱油(テトラデカン)3.9重量%、LPA(モノリノール酸グリセロール、α=16)0.725重量%、乳化剤(Pluronic F127)0.375重量%、水95重量%)、ISAMULSIONが形成される(例えば、SAXS曲線にピークが認められる)ことを示している。しかしながら、図3に示したように、LPAが存在しないとき、ISAMULSIONは形成されない(組成:油(テトラデカン)4.625重量%、Pluronic F127 0.375重量%、水95重量%)。さらに、より大量のLPAを含む場合(α値)(組成の例:テトラデカン1.32重量%、LPA3.3重量%(α=71)、Pluronic F127 0.375重量%)、ISAMULSIONは形成される。SAXS曲線(図6;上の曲線)で示したように、その構造は低いα値(LPA含量)で観察されたものより規則的であり、親水性ドメインの逆ミセルキュービック配置を示す。
【0072】
実施例2:ヒドロトロープルート及びボルテクシングにより得られるISAMULSION
1重量%の乳化剤(Pluronic F127)を、89重量%の水に溶解して水溶液を形成した。2.5重量%の鉱物油(テトラデカン)と2.5重量%のLPA(グリセロールモノリノレート、α=50)を、5重量%のエタノールに溶解して脂質溶液を形成した。その水溶液を、ボルテックスしながら脂質溶液にゆっくり加えた。その工程の終わりに、ISAMULSION、即ち内部ナノサイズ自己集合構造を有する液滴が形成された。
【0073】
実施例3:脂質相と水相の手振動によって得られるISAMULSION類
0.5〜4.5重量%の大豆油(エマルション生成物全体に対して)を、最初に、0.5〜2.0重量%のLPA(Dimodan U/J、Danisco、デンマーク;エマルション生成物全体に対して、10≦α≦80)と混合して脂質相を調製した。この混合物を0.375%の乳化剤(Pluronic F127)を含有する95%の水に加えた。脂質相の全体量(油+LPA;エマルション生成物全体に対して与えられる)は、4.625重量%であった。その混合物を手で振動させた。均一なミルク状の、比較的安定なエマルションが形成された。そのエマルションのISAMULSIONの特徴をcryo−TEM画像及びSAXSにより確認した。
【0074】
実施例4:脂質相と脱脂乳をプロペラ攪拌機により攪拌することによって得られるISAMULSION類
1.2重量%の大豆油(エマルション生成物全体に対して)を、最初に、1.8重量%のLPA(Dimodan U/J、Danisco、デンマーク;エマルション生成物全体に対して、α=60)と混合して脂質相を調製した。この脂質相の3重量%を、97%の脱脂乳に加えた。その混合物をプロペラ攪拌機により攪拌した。均一なミルク状の安定なエマルションが形成された。マルヴァーン(Malvern)社のマスターサイザー(Mastersizer)で測定すると、乳化した油滴の50%が44μmより小さかった。測定されたD32は、10μmであった。そのミルクとミルク中の油滴は、冷蔵温度で1週間保存後でも依然として安定であった。しかしながら、同じ調製法を用いて大豆油のみ(油相にLPAを添加しない)から作製したそれぞれのミルク生成物と比較した場合、その油滴は、本発明のエマルション中の油滴(油滴はLPAを含む)より著しく大きく、そのミルクは、冷蔵温度での1週間の保存後、著しくクリーム状になった。調製後のミルク中の油滴のわずか50%が、150μm未満であった(D32は、35μmであった)。このことは、油が60%(脂質相に対して)のLPAを含有する本発明のエマルション中の油滴よりそれらが3倍を超える大きさであることを意味する。
【0075】
実施例5:脂質相と水性カゼイン酸Na相をプロペラ攪拌機により攪拌することによって得られるISAMULSION類
39重量%の大豆油(エマルション生成物全体に対して)を、最初に、1.0重量%のLPA(Dimodan U/J、Danisco、デンマーク;エマルション生成物全体に対して、α=2.5)と混合して脂質相を調製した。この脂質相の40重量%を、60%の5重量%カゼイン酸Na溶液に加えた。その混合物をプロペラ攪拌機により攪拌した。均一なミルク状の安定な水中油型エマルションが形成された。マルヴァーン(Malvern)社のマスターサイザー(Mastersizer)で測定すると、乳化した油滴の50%が73μmより小さかった。測定されたD32は、13μmであった(図9参照)。そのエマルションとエマルション中の油滴は、冷蔵温度で1週間保存後でも依然として安定であった。しかしながら、同じ調製法を用いて大豆油のみ(油相にLPAを添加しない)から作製したそれぞれのエマルションと比較した場合、その油滴は、本発明のエマルション中の油滴より著しく大きく(油滴はLPAを含む、図9参照)、そのエマルションは、冷蔵温度での1週間の保存後、著しくクリーム状となり、溶液の表面にいくらかの遊離の油が検出された。このエマルションにおける油滴の大きさに関しては、その油滴の50%は、調製後150μmより小さく、D32は、35μmであった(図9参照)。即ち、油が2.5重量%のLPAを含有する(油相をもとに計算して)本発明のそれぞれのエマルションより依然として著しく大きかった。
【0076】
ISAMULSION調合物について発生するより小さい平均液滴サイズは、脂質相(大豆油+DIMODAN U/J)と純水の間で現れる界面張力γ(γ≦5mN/m)が、油(DIMODAN U/Jの添加なし)と純水の間で測定される界面張力(γ>5mN/m)と比較して低いことと関連している(図7及び8参照)。
【0077】
上述の実施例に従って調製されたISAMULSIONは、そのまま、又は添加剤として用いることができる。
【0078】
本発明を十分に説明したが、本発明の範囲又は本発明のいずれの実施形態にも影響を及ぼすことなく、混合条件、及び処方の広範且つ同等の範囲内で同様に実施できることを、当業者は理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】α=100*LPA/(LPA+油)の関数として、ISAMULSION油滴内部に見出された構造を示す図である。
【図2】単一の油滴内部のナノサイズの親水性ドメインを示している典型的なISAMULSIONのCryo−TEM顕微鏡写真を示す図である。
【図3】ISAMULSION、ISAMULSIONの製造に用いたバルク油相(LPAによってナノ構造化)、及び相当する通常のエマルション(LPAなし、ナノ構造なし)の小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。通常のエマルションの散乱曲線は、ISAMULSIONの曲線とははっきりと異なる。
【図4】様々なLPAの量、即ちα値(α=100*LPA/(LPA+油))を含有する、ISAMULSIONの小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。油=テトラデカン、LPA=モノリノレイン。LPAの含量が、油滴内部の自己集合親水性ドメインの濃度及び大きさを決定する。
【図5】親水性ドメインを含有するISAMULSION油滴の概略図である。親水性ドメインは、球状、又は非球状、即ちロッド、ディスク又はチャネルであり得ることに留意されたい。その親水性ドメインは、LPAの極性の頭部基及び可溶化された水からなる。
【図6】逆ミセルキュービックFd3m構造を有する油滴を含有するISAMULSIONの小角X線散乱(SAXS)曲線を示す(上の曲線)図である。
【図7】純水に対して本発明の脂質相(この場合は大豆油+LPAとしてのDimodan U/J)の間で懸滴技法を用いて測定された、DIMODAN U/J含量の関数としての界面張力を示す図である。
【図8】純水に対して本発明の脂質相(この場合は大豆油+LPAとしてのDimodan U/J)の間で滴容(drop volume)張力計を用いて測定された、DIMODAN U/J含量の関数としての界面張力を示す図である。
【図9】大豆油中のDimadan U/Jの重量%として示される油相中のDIMODAN U/J含量の関数としてのISAMULSIONの油滴の大きさD32(ザウター液滴直径、ミクロンで示される)を示す図である。ISAMULSIONの油相(大豆油+DIMODAN U/J)は、すべてのエマルションにおいて一定の40容量%である。エマルションは、5重量%のカゼイン酸Na(水相に対して)によって安定化し、エマルションは、低エネルギー攪拌機を用いて調製する。マルヴァーン(Malvern)社のマスターサイザー(Mastersizer)のデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油及び親油性添加剤(LPA)を含む脂質相の使用であって、水中油型エマルションを調製するための該脂質相中のLPA含量が、0.25重量%と84重量%の間であり、該脂質相と乳化剤を含有する水相の混合を手動操作又は低エネルギー装置を用いることによって行う使用。
【請求項2】
脂質相中のLPA含量が、2.5重量%と80重量%の間である、請求項1に記載の油及び親油性添加剤(LPA)を含む脂質相の使用。
【請求項3】
脂質相中のLPA含量が、5重量%と80重量%の間である、請求項1に記載の油及び親油性添加剤(LPA)を含む脂質相の使用。
【請求項4】
脂質相中のLPA含量が、10重量%と80重量%の間である、請求項1に記載の油及び親油性添加剤(LPA)を含む脂質相の使用。
【請求項5】
容器中に請求項1〜4のいずれかに記載の脂質相及び水相のプレミックスを含むアセンブリであって、請求項1に記載の水中油型エマルションを調製するためのさらなる手段を含むアセンブリ。
【請求項6】
出口を備えた容器中に請求項1〜4のいずれかに記載の乳化剤を含有する水相から分離している脂質相を含むアセンブリであって、両方の相を混合し、請求項1〜4のいずれかに記載の水中油型エマルションを調製する手段を有するアセンブリ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の脂質相及び水相を含み、両方の相が柔軟性のある袋中にあるアセンブリ。
【請求項8】
手動操作又は低エネルギー装置が、手絞り、電磁攪拌、手による振動、スプーン又は泡だて器による攪拌、ボルテックス混合、膜乳化、スタティックミキサー、調理用ミキサー、ナノ及びマイクロ流体デバイス、袋混合、乱流を生ずる任意のミキサー、又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項4〜7のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の脂質相及び水相を含む水中油型エマルションであって、該油滴は、5nmから数百ミクロンの範囲の直径のものであり、該液滴が、親油性添加剤の存在によって、脂質相中に0.5から200nmの範囲の直径の大きさを有する親水性ドメインを有するナノサイズの自己集合構造化を示す水中油型エマルション。
【請求項10】
(i)鉱物油類、炭化水素類、植物油類、ワックス類、アルコール類、脂肪酸類、モノ−、ジ−、トリ−アシルグリセロール類、精油類、フレーバー油類、親油性ビタミン類、エステル類、栄養補助食品類、テルピン類、テルペン類及びそれらの混合物からなる群から選択された油と、
(ii)親油性添加剤(LPA)又は約10より低い結果としてのHLB値(親水性−親油性バランス)を有する親油性添加剤と親水性添加剤の混合物と、
(iii)水又はポリオール等の非水性極性液体を含む液滴ロッド又はチャネルの形の親水性ドメインと
を含むナノサイズの自己集合構造化内部を有する分散した油滴を含み、
及び
エマルション安定剤又は乳化剤類を含有する水の連続相を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項11】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造及びL2構造と油構造の組合せとからなる群に取り込まれる内部構造を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項12】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、L2内部構造を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項13】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造、逆ミセルキュービック、又は逆バイコンティニュアスL3構造、及びそれらの組合せからなる群に取り込まれる内部構造を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項14】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、逆ミセルキュービック内部構造を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項15】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、逆ヘキサゴナル内部構造を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項16】
油滴が、フレーバー類、フレーバー前駆物質類、薬物類、栄養補助食品類(ルテイン、ルテインエステル類、β−カロテン、トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコトリエノール、リコペン、Co−Q10、亜麻油、リポ酸、ビタミンB12、ビタミンD、α−及びγ−ポリ不飽和脂肪酸類又はフィトステロール、食品サプリメント類、食品添加物類、植物エキス類、薬剤類、薬用化粧品類、ペプチド類、タンパク質類又は炭水化物類、栄養素類、芳香類、芳香前駆物質類を含む群から選択される)からなる群から選択される油溶性、油不溶性又は水溶性材料を含有する、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項17】
LPAが、長鎖アルコール類、脂肪酸類、ペギル化脂肪酸類、グリセロール脂肪酸エステル類、モノグリセリド類、ジグリセリド類、モノ−ジグリセリド類の誘導体類、ペギル化植物油類、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンエステル類、プロピレングリコールモノ−又はジエステル類、リン脂質類、ホスファチド類、セレブロシド類、ガングリオシド類、ケファリン類、脂質類、糖脂質類、スルファチド類、糖エステル類、糖エーテル類、スクロースエステル類、ステロール類、ポリグリセロールエステル類の群から選択される、請求項1〜14のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項18】
LPAが、ミリスチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、PEG1−4ステアレート、PEG2−4オレエート、PEG−4ジラウレート、PEG−4ジオレエート、PEG−4ジステアレート、PEG−6ジオレエート、PEG−6ジステアレート、PEG−8−ジオレート、PEG−3−16ヒマシ油、PEG5−10水素化ヒマシ油、PEG6−20トウモロコシ油、PEG6−20アーモンド油、PEG−6オリーブ油、PEG−6ラッカセイ油、PEG−6パーム核油、PEG−6水素化パーム核油、PEG−4カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、植物油及びソルビトールのモノ−、ジ−、トリ−、テトラエステル類、ペンタエリトリチルジ−、テトラステアレート、イソステアレート、オレエート、カプリレート又はカプレート、ポリグリセリル−3ジオレエート、ステアレート、又はイソステアレート、ポリグリセリル4−10ペンタオレエート、ポリグリセリル2−4オレエート、ステアレート、又はイソステアレート、ポリグリセリル4−10ペンタオレエート、ポリグリセリル−3ジオレエート、ポリグリセリル−6ジオレエート、ポリグリセリル−10トリオレエート、ポリグリセリル−3ジステアレート、CからC20脂肪酸のプロピレングリコールモノ−又はジエステル類、CからC20脂肪酸のモノグリセリド類、モノグリセリド類の乳酸誘導体類、ジグリセリド類の乳酸誘導体類、モノグリセリド類のジアセチル酒石酸エステル、トリグリセロールモノステアレートコレステロール、フィトステロール、PEG5−20大豆ステロール、PEG−6ソルビタンテトラ、ヘキサステアレート、PEG−6ソルビタンテトラオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノトリオレエート、ソルビタンモノ及びトリステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンセスキステアレート、PEG−2−5オレイルエーテル、POE2−4ラウリルエーテル、PEG−2セチルエーテル、PEG−2ステアリルエーテル、スクロースジステアレート、スクロースジパルミテート、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、ポロキサマー類、ホスホリピッド類、レシチン類、ケファリン類、オート脂質及びその他の植物に由来する親油性両親媒性脂質類、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載の水中油型エマルション。
【請求項19】
乳化剤が、8を超えるHLBを有する低分子量界面活性剤類、ミルク又は大豆に由来するタンパク質類、ペプチド類、タンパク質加水分解物類、ブロックコポリマー類、アラビアゴム、キサンタンゴムなどの界面活性親水コロイド類、界面活性剤−タンパク質ナノ粒子類、界面活性剤安定化ナノ若しくはマイクロシリカ粒子及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜18のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項20】
室温又は寒い気温で水相に容易に戻される粉末の形態である、請求項1〜19のいずれかに記載の脂質相。
【請求項21】
最終生成物である、請求項1〜20のいずれかに記載の脂質相。
【請求項22】
出発材料、中間生成物又は最終生成物への添加剤である、請求項1〜20のいずれかに記載の脂質相。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−523061(P2009−523061A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541737(P2008−541737)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068739
【国際公開番号】WO2007/060171
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】