説明

密封型ピンコネクター及びその製造方法

【課題】本発明は、密封性が良好で、製作コストを低く抑える事が出来る密封型ピンコネクター及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂材製ケースと、前記ケースを貫通して伸びるピンと、前記ケースと前記ピンとの間隙からの漏洩を防止する為のゴム状弾性材製パッキン部材とより成る密封型ピンコネクターにおいて、前記ケースが、前記ピンの中間部位が露出する空隙を備えており、前記空隙が前記パッキン部材により満たされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封型ピンコネクター及びその製造方法に関するものである。
また、自動車や汎用機械等に使用される密封型ピンコネクターに関する。
更に詳しくは、自動車のオートマチックトランスミッションに使用して有益な密封型ピンコネクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や汎用機械等に使用される密封型ピンコネクターとしては、図7及び図8に示す構造のものが提案された。(特許文献1)
すなわち、この種密封型ピンコネクターは、図7に示す様に、ゴム状弾性材製パッキン部材300に形成した複数個の貫通孔301に、ピン200を挿通したものを、図8に示す樹脂材製ケース100に嵌着する構成としていた。
しかし、ピン200は、非常に細く、剛性が弱い為、貫通孔301にピン200を挿通することが困難で、作業効率を低下させていた。
【0003】
そこで、ピン200とゴム状弾性材製パッキン部材300とを一体成形する方法が試みられたが、ピン200は、非常に細く、剛性が弱い為、ピン200に付着したゴムバリを取除く為に多くの手間が掛り、ピン200を変形させる等の問題も招来し、製作コストを引き上げる要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−299665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて、密封性が良好で、製作コストを低く抑える事が出来る密封型ピンコネクター及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明にあっては、樹脂材製ケースと、前記ケースを貫通して伸びるピンと、前記ケースと前記ピンとの間隙からの漏洩を防止する為のゴム状弾性材製パッキン部材とより成る密封型ピンコネクターにおいて、前記ケースが、前記ピンの中間部位が露出する空隙を備えており、前記空隙が前記パッキン部材により満たされていることを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するために本発明にあっては、ピンと、前記ピンが挿通される貫通孔を有する樹脂材製第1のケースと、前記ピンが挿通される貫通孔とスペース用突起とを備えた樹脂材製第2のケースとを準備する工程と、前記第1のケースと前記第2のケースとを重ね合わせ、前記貫通孔及び前記貫通孔に前記ピンを挿通する工程と、前記スペース用突起により形成された空隙にゴム状弾性材製パッキン部材を充填する事により、前記第1のケース、前記第2のケース及び前記ピンを一体化する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明の密封型ピンコネクターによれば、密封性が良好で、製作コストを低く抑える事が出来る。
請求項2記載の発明の密封型ピンコネクターによれば、密封型ピンコネクターが装着される相手部材との間の良好な密封性が維持出来る。
【0009】
更に、請求項3記載の発明の密封型ピンコネクターによれば、空隙を備えた樹脂材製ケースを安価に製作出来る。
更に、請求項4記載の発明の密封型ピンコネクターによれば、密封性が良好で、成形時に発生した、ピンに付着した余分なゴム状弾性材(バリ)の除去が不要となる為、バリ除去の手間が省けるばかりでなく、バリ除去の際に、ピンを変形させる問題を解消出来る。
【0010】
更に、請求項5記載の発明の密封型ピンコネクターによれば、密封性が良好で、製作コストがより安い密封型ピンコネクターを容易に製作出来る。
更に、請求項6記載の発明の密封型ピンコネクターによれば、ピンとゴム状弾性材製パッキン部材との一体化が確実に行えると共に、ピンの不要な箇所に接着剤及びバリが付着する事が無い。
【0011】
更に、請求項7記載の発明の密封型ピンコネクターによれば、第1のケース、前記第2のケース及び前記ピンとの一体化が確実に行えると共に、ケース外周面側にガスケット部を確実に形成出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る第1の形態の製造工程を示す図。
【図2】本発明に係る第1の形態の製造工程を示す図。
【図3】本発明に係る第1の形態の密封型ピンコネクターの縦断面図。
【図4】本発明に係る第2の形態の製造工程を示す図。
【図5】本発明に係る第2の形態の製造工程を示す図。
【図6】本発明に係る第2の形態の密封型ピンコネクターの縦断面図。
【図7】従来技術に係るピンをパッキン部材に挿入した断面図。
【図8】図7のパッキン部材を樹脂材製ケースに装着した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1乃至図3に基づき本発明に係る第1の形態について、実施例に基づいて説明する。
【0014】
本発明の密封型ピンコネクターは、図3に示す様に、樹脂材製ケース1と、このケース1を貫通して伸びるピン2と、ケース1とピン2との間隙からの漏洩を防止する為のゴム状弾性材製パッキン部材3とより構成されている。
そして、ケース1は、ピン2の中間部位21が露出する空隙11を備えており、この空隙11には、ゴム状弾性材製パッキン部材3により満たされている。
また、このパッキン部材3は、ケース1の外周面側に存在してガスケット部31を形成している。
【0015】
更に、このケース1は、第1のケース12と第2のケース13の2部材で構成され、この第2のケース13には、スペース用突起14が一体的に設けられている。
このことにより、第1のケース12と第2のケース13と間に空隙11が形成され、ピン2の中間部位21は、この空隙11に露出する形で配置されている。
この中間部位21には、接着剤が塗布され、このことにより、ゴム状弾性材製パッキン部材3との接着一体化が確実に行える。
【0016】
接着剤は、ピン2の中間部位21以外には塗布されていない。特に電気的接続を伴うピン2の上下両端部(樹脂材製ケース1から露出している箇所)には、接着剤を塗布しない様留意する必要が有る。
【0017】
この様な構成とする事により、樹脂材製ケース1とピン2との間隙から浸入した流体は、空隙11を満たしているゴム状弾性材製パッキン部材3により、それ以上の浸入を確実に阻止される。
また、ゴム状弾性材製パッキン部材3を成形する際、金型と樹脂材製ケース1との接合により、ゴム状弾性材(バリ)がピン2に付着する事を確実に回避出来るため、バリ除去の手間が省けるばかりでなく、バリ除去の際に、ピンを変形させる問題を解消出来る。
【0018】
ついで、本発明に係る第1の形態の製造工程を図1乃至図3に基づき説明する。
まず、図1に示す様に、金属材製のピン2と、このピン2が挿通される貫通孔121を有する樹脂材製第1のケース12と、ピン2が挿通される貫通孔131とスペース用突起14とを備えた樹脂材製第2のケース13とを各々製作しておく。
また、ピン2の中間部位21(図上網掛けハッチングで示した箇所)と、第1のケース12及び第2のケース13の全外表面には、予め接着剤を塗布しておく。
【0019】
ついで、図2に示す様に、第1のケース12と第2のケース13とを重ね合わせ、貫通孔121及び貫通孔131にピン2を挿通する。
ついで、図3に示す様に、スペース用突起14により形成された空隙11に、図示しない成形金型を用いて、ゴム状弾性材製パッキン部材3を充填すると共に、ケース1の外周面側にガスケット部31を形成する。
【0020】
この事により、第1のケース12、第2のケース13及びピン2が、密着一体化される。
本発明で使用されるゴム状弾性材製パッキン部材3の材質は、FKM、シリコーンゴム、EPDM、ニトリルゴム、アクリルゴム、HNBR等の各種のゴム状弾性体を適宜選択して使用出来る。
また、本発明で使用されるピン2は、厚さ0.03〜1.00mm、幅2〜7mm程度の導電性金属板若しくは直径0.05〜1.00mm程度の導電性金属線で構成されている。
【0021】
更に、ピン2には、図示しない電子部品と接続される。
この為、ピン2の電気的接続に必要な領域(図上網掛けハッチングで示した箇所以外)には、接着剤を塗布しないか、塗布した場合は、ショットブラスト、研磨等の物理的方法若しくは溶剤で溶解して徐去する。
導電性金属材としては、SUS、SPCC、銅合金等が適宜選択して用いられる。
また、ピン2とゴム状弾性材製パッキン部材3との接着表面は、ゴムとの接着性を高める目的で、ショットブラストや研磨により荒らした状態としておくことが好ましい。
【0022】
樹脂材製ケース1の材料としては、特に限定されず、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフイン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニルアクリル共重合樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂等が用いられ、ガラス繊維強化合成樹脂が、機械的強度の点から特に好ましく、これらの合成樹脂材料は再生品であってもよい。
【0023】
ついで、図4乃至図6に基づき、本発明に係る第2の形態の製造工程を説明する。
先に説明した第1の形態と相違する点は、ピン2の一端側が、予め樹脂材製第2のケース13に一体成形されている点である。
【0024】
すなわち、図4に示す様に、ピン2と、このピン2が挿通される貫通孔121を有する樹脂材製第1のケース12と、ピン2の一端側に一体成形されると共に、スペース用突起14とを備えた樹脂材製第2のケース13とを各々準備しておく。
【0025】
ついで、図5に示す様に、ピン2の他端側を貫通孔121に挿通し、第1のケース12と第2のケース13とを重ね合わせる。
【0026】
ついで、図6に示す様に、スペース用突起14により形成された空隙11に、図示しない成形金型を用いて、ゴム状弾性材製パッキン部材3を充填すると共に、ケース1の外周面側にガスケット部31を形成している。
【0027】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
自動車のオートマチックトランスミッションに使用される密封型ピンコネクターとして有益である。
【符号の説明】
【0029】
1 樹脂材製ケース
2 ピン
3 パッキン部材
11 空隙
12 樹脂材製第1のケース
13 樹脂材製第2のケース
14 スペース用突起
21 中間部位
31 ガスケット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材製ケース(1)と、前記ケース(1)を貫通して伸びるピン(2)と、前記ケース(1)と前記ピン(2)との間隙からの漏洩を防止する為のゴム状弾性材製パッキン部材(3)とより成る密封型ピンコネクターにおいて、
前記ケース(1)が、前記ピン(2)の中間部位(21)が露出する空隙(11)を備えており、前記空隙(11)が前記パッキン部材(3)により満たされていることを特徴とする密封型ピンコネクター。
【請求項2】
前記パッキン部材(3)は、前記ケース(1)の外周面側に存在してガスケット部(31)を形成していることを特徴とする請求項1記載の密封型ピンコネクター。
【請求項3】
前記ケース(1)は、第1のケース(12)と第2のケース(13)の2部材で構成され、前記第1のケース(12)若しくは前記第2のケース(13)の何れか一方に設けたスペース用突起(14)により前記空隙(11)を形成していることを特徴とする請求項1または2記載の密封型ピンコネクター。
【請求項4】
ピン(2)と、前記ピン(2)が挿通される貫通孔(121)を有する樹脂材製第1のケース(12)と、前記ピン(2)が挿通される貫通孔(131)とスペース用突起(14)とを備えた樹脂材製第2のケース(13)とを準備する工程と、
前記第1のケース(12)と前記第2のケース(13)とを重ね合わせ、前記貫通孔(121)及び前記貫通孔(131)に前記ピン(2)を挿通する工程と、
前記スペース用突起(14)により形成された空隙(11)にゴム状弾性材製パッキン部材(3)を充填する事により、前記第1のケース(12)、前記第2のケース(13)及び前記ピン(2)を一体化する工程を含む密封型ピンコネクターの製造方法。
【請求項5】
ピン(2)と、前記ピン(2)が挿通される貫通孔(121)を有する樹脂材製第1のケース(12)と、前記ピン(2)の一端側に一体成形されると共に、スペース用突起(14)とを備えた樹脂材製第2のケース(13)とを準備する工程と、
前記ピン(2)の他端側を前記貫通孔(121)に挿通し、前記第1のケース(12)と前記第2のケース(13)とを重ね合わせる工程と、
前記スペース用突起(14)により形成された空隙(11)にゴム状弾性材製パッキン部材(3)を充填する事により、前記第1のケース(12)、前記第2のケース(13)及び前記ピン(2)を一体化する工程を含む密封型ピンコネクターの製造方法。
【請求項6】
前記ピン(2)の前記空隙(11)に露出する外周面にのみ接着剤が塗布されていることを特徴とする請求項4または5記載の密封型ピンコネクターの製造方法。
【請求項7】
前記第1のケース(12)及び前記第2のケース(13)の全面に接着剤が塗布されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の密封型ピンコネクターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−190668(P2012−190668A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53652(P2011−53652)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】