説明

対基板作業支援装置

【課題】 作業結果の品質低下に関して対基板作業を支援するための支援装置の実用性を向上させる。
【解決手段】 支援装置10を、検査機26,34,30の検査データを基に、対基板作業の品質を示す品質指標として、(a)対基板作業機24,30,38自体の品質指標である作業機品質指標と、(b)1以上の作業部位からなる部位グループについての品質指標である部位グループ品質指標とを算出するように構成し、また、それら2つの品質指標を表示装置49に表示させるように構成する。それら2種の品質指標を参酌して、オペレータは、対基板作業機の品質低下を把握しつつ、容易に、その低下の要因を把握することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路を構成する回路基板に対して対基板作業機が行う対基板作業を支援するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路製造ラインによる電気回路の製造の支援に対しては、従来から、種々の検討がなされており、例えば、製造された電気回路の品質に関する支援を行うシステムとして、下記特許文献に記載されたシステムが存在する。このシステムは、クリームはんだの印刷作業,電気部品の装着作業等の回路基板に対する作業(以下、「対基板作業」と言う場合がある)を行う機器である対基板作業機と、その対基板作業機による作業結果を検査する検査機を備えており、その検査機の検査データに基づいて、不良と認定される基準に達しないまでの作業結果の品質低下を把握し、それに対処することで、製造される電気回路の品質に対する高い信頼性を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−112295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対基板作業を支援する上記のような装置には、改良の余地を多分に残しており、何らかの改良を加えることで、その支援を行う装置の実用性が向上するものと思われる。そのような実情に鑑みてなされたものであり、作業結果の品質低下(以下、単に「品質低下」という場合がある)に関して対基板作業を支援するための装置であって、実用性の高い装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の対基板作業支援装置は、電気回路を構成する回路基板に対して対基板作業機によって行われる対基板作業を支援するための装置であって、対基板作業機によって行われた対基板作業の作業結果についての検査データを基に、その対基板作業の品質を示す品質指標として、(a)対基板作業機自体の品質指標である作業機品質指標と、(b)1以上の作業部位からなる部位グループについての前記品質指標である部位グループ品質指標とを算出する品質指標算出部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の対基板作業支援装置(以下、単に「支援装置」と言う場合がある)によれば、上記作業機品質指標に加え、上記部位グループ品質指標が算出されるため、本発明の支援装置を利用することにより、その対基板作業における品質低下の要因を把握することが容易となる。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。そして、請求可能発明の態様のうちのいくつかのものが請求項に記載の発明となり得る。
【0008】
具体的には、以下の各項において、(2)項が請求項1に相当し、(12)項が請求項2に、(13)項が請求項3に、(14)項が請求項4に、(16)項が請求項5に、(3)項が請求項6に、(7)項が請求項7に、(20)項が請求項8に、(17)項が請求項9に、(18)項が請求項10に、それぞれ相当する。
【0009】
(1)電気回路を構成する回路基板に対して対基板作業機によって行われる対基板作業を支援するための対基板作業支援装置であって、
前記対基板作業機によって行われた対基板作業の作業結果についての検査データを基に、その対基板作業の品質を示す品質指標として、1以上の作業部位からなる部位グループについての前記品質指標である部位グループ品質指標を算出する品質指標算出部を備えた対基板作業支援装置。
【0010】
本項の態様の支援装置では、上記部位グループの品質指標が算出されるため、その品質指標を利用することにより、容易に、対基板作業の品質低下の要因を把握することが可能である。
【0011】
「対基板作業」は、一般的な電気回路製造において回路基板(以下、単に「基板」と言う場合がある)に対して行われる作業を意味し、例えば、基板の表面にクリーム状はんだを印刷するはんだ印刷作業,はんだが印刷された基板に電気部品(以下、単に「部品」と言う場合がある)を装着する部品装着作業,部品が装着された基板を加熱・冷却してはんだを溶融・凝固することで部品を基板に固定する部品固定作業等、種々の作業が含まれる。また、「対基板作業機」は、それらの対基板作業を行うはんだ印刷機,部品装着機,リフロー炉等の機器が含まれる。
【0012】
「作業部位」は、対基板作業に応じて異なり、一般的には、例えば、はんだ印刷作業では、印刷されるはんだランド(「はんだパッド」と呼ぶこともできる)が、部品装着作業では、装着された電気部品の各々が、部品固定作業では、基板に固定された部品とその部品を固定するために凝固させられたはんだの各々が、それぞれ相当する。また、「部位グループ」は、1以上の作業部位から構成されるものであり、作業部位の基板内の位置,大きさ、当該作業部位の対基板作業に関与する作業用デバイス等に応じ、任意に設定することができる。「部位グループ品質指標」は、そのような部位グループの品質を示すものであり、部位グループを構成する作業部位をいかに設定するかによって、種々の品質指標となる。詳しく言えば、基板における局所的な品質指標,作業用デバイス等に関わる対基板作業機の構成における部分的な品質指標,作業における動作速度等の作業条件の如何が強く反映した品質指標といった、様々な品質指標となる。そうであるが故、部位グループの設定が適切に行われた部位グループ品質指標を利用することにより、対基板作業の品質低下の要因を把握することが容易となるのである。なお、部位グループ品質指標は、部位グループを構成する1以上の作業部位の各々の品質を示す指標を意味するものではなく、その部位グループ全体の品質を示す指標を意味するものである。ちなみに、品質指標算出部は、1つの部位グループに対して、1つの部位グループ品質指標を算出するものであってもよく、複数種の部位グループ品質指標を算出するものであってもよい。また、1つの部位グループに対してだけ部位グループ品質指標を算出するように構成されてもよく、複数の部位グループの各々に対して部位グループ品質指標を算出するように構成されてもよい。
【0013】
「品質指標」は、正規の作業結果からのズレの程度を表すものであり、具体的には、例えば、対基板作業がはんだ印刷作業である場合には、印刷されたはんだランドの正規の印刷位置からの位置ズレ(回転位置つまり方位についてのズレをも含む概念である)、擦れ,はみ出し,突起等の正規の面積,体積からのズレ(増加,減少)等の程度を表わすもの、部品装着作業である場合には、装着された部品の正規の装着位置からの位置ズレ等の程度を表わすもの、部品固定作業である場合には、固定された部品の正規の固定位置からの位置ズレ、凝固したはんだのはみ出し等の正規の面積からのズレ(増加)等の程度を表すもの等を採用することができる。しかしながら、品質指標は、単に、上記ズレの程度をを表すものではなく、作業結果の安定度、つまり、作業結果のバラつきの程度をも表わすものであることが望ましい。安定度を表わす品質指標は、作業部位が不良部位となる可能性の高さを予測するのに好適な指標であり、その指標を基に、品質の変化についての判断を行うことで、作業品質の低下,改善等の判断を適格に行うことが可能となる。具体的には、品質指標は、上記各種のズレについての基準値からのズレ量の平均,そのズレ量の管理限界値との関係,ズレのバラつき範囲,工程能力指数等、品質管理の分野で使用されている各種の統計的指標を用いることができる。
【0014】
本項の態様の支援装置は、1の対基板作業機による対基板作業を支援するものであってもよく、複数の対基板作業機による複数の対基板作業を支援するものであってもよい。例えば、複数の対基板作業機が配置されたまた電気回路製造ライン(以下、単に「製造ライン」という場合がある)において、それら複数の対基板作業機のうちの複数のものによる対基板作業を支援するものであってもよいのである。製造ラインに配置された対基板作業機による対基板作業を支援する場合、支援装置は、その製造ラインの外部に設けられるものであってもよく、製造ラインの一部、詳しくは、対基板作業機若しくはその対基板作業機による対基板作業の結果を検査する検査機の一部を構成するものであってもよい。また、支援装置は、上記の品質指標算出部を始めとするいくつかの機能部を有する場合、それらの機能部のすべてが一体となって単一の機器として実現されるものであってもよく、それら機能部の一部が、対基板作業機,検査機等の機器に配設され、2以上の機器によって実現されるものであってもよい。
【0015】
(2)前記品質指標算出部が、前記品質指標として、対基板作業機自体の前記品質指標である作業機品質指標をも算出するように構成された(1)項に記載の対基板作業支援装置。
【0016】
本項の態様の支援装置によれば、上記部位グループ品質指標に加え、上記作業機品質指標も算出されるので、それらの指標を利用することにより、対基板作業機の品質低下を把握しつつ、その低下の要因を容易に把握することが可能となる。すなわち、対基板作業機による作業品質の低下に対して、より綿密な支援が可能となる。なお、品質指標算出部は、上記部位グループ品質指標の算出と同様に、1つの対基板作業機に対して、1つの作業機品質指標を算出するものであってもよく、複数種の作業機品質指標を算出するものであってもよい。
【0017】
(3)当該対基板作業支援装置が、さらに、前記部位グループを特定する部位グループ特定部を有し、
前記品質指標算出部が、前記部位グループ特定部によって特定された前記部位グループについての前記品質指標を、前記部位グループ品質指標として算出するように構成された(1)項または(2)項に記載の対基板作業支援装置。
【0018】
本項の態様の支援装置では、上記部位グループ特定部の特定に関する設定は任意であり、その設定の如何により、互いに利用目的の異なる種々の部位グループを特定させることが可能であり、また、部位グループの特定の有無を種々の条件に依存させることも可能である。
【0019】
(4)前記対基板作業機が、対基板作業を行うために必要な複数の作業用デバイスを備え、
前記部位グループ特定部が、前記複数の作業用デバイスのうちの1つが対基板作業において関与する1以上の作業部位からなる部位グループを、前記部位グループとして特定するように構成された(3)項に記載の対基板作業支援装置。
【0020】
「作業用デバイス」は、対基板作業機を構成する各種の部品,装置,機器を意味する。その作業用デバイスが、部品装着機の部品保持デバイス,部品供給デバイス等のように、基板におけるすべての作業部位のうちの一部の対基板作業にのみ関与するうなものである場合、本項の態様の支援装置では、部位グループ特定部によって特定される部位グループの部位グループ品質指標は、その作業用デバイス自体の作業の正確性を表すものとなる。つまり、その作業用デバイスの精度,動作の安定性等を示す指標となる。したがって、そのような部位グループ品質指標を利用すれば、作業用デバイスに起因した品質低下、ひいては、作業用デバイスの良否を、容易に把握することが可能となる。
【0021】
(5)前記部位グループ特定部が、それぞれが前記部位グループである複数の部位グループを特定するように構成され、
前記品質指標算出部が、それら複数の部位グループの各々の前記部位グループ品質指標を算出するように構成された(3)項または(4)項に記載の対基板作業支援装置。
【0022】
本項の態様の支援装置によれば、複数の部位グループ品質指標を利用できることで、品質低下の要因の把握等がより容易に行うことができ、また、品質低下に対してより信頼性に富んだ支援が可能となる。
【0023】
(6)前記対基板作業機が、対基板作業を行うために必要な複数の作業用デバイスを備え、
前記部位グループ特定部が、前記複数の作業用デバイスのうちの複数のものの各々が関与する1以上の作業部位からなる部位グループを、前記複数の部位グループとして認定するように構成された(5)項に記載の対基板作業支援装置。
【0024】
本項の態様の支援装置は、各種の作業用デバイスを装備した対基板作業機,作業用デバイスを数多く装備した対基板作業機等による対基板作業の支援に好適である。本項の態様の支援装置によれば、作業用デバイスに起因した品質低下の把握に幅広く対応することが可能となる。
【0025】
(7)当該対基板作業支援装置が、さらに、前記対基板作業機による対基板作業の作業条件の変動である作業条件変動を認識する条件変動認識部を備え、
前記部位グループ特定部が、その条件変動認識部によって認識された前記作業条件変動が作業結果に影響を及ぼす可能性のある1以上の作業部位からなる部位グループを、前記部位グループとして認定するように構成された(3)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【0026】
「対基板作業の作業条件」とは、装備される各種デバイス等の対基板作業機の構成や対基板作業機のステータス(状態)、対基板作業において使用される基板,部品,はんだ等の資材、対基板作業における作業手順,作業動作の態様、対基板作業機が動作する若しくは操作される環境等、様々なものが、どのようなものであるかを意味する概念であり、「作業条件変動」とは、それら様々なものが変化する若しくは変更されることを意味する概念である。また、「作業条件変動の認識」とは、作業条件変動が発生したことを確認することだけを意味するのではなく、発生した作業条件変動の内容を特定することも含まれる。なお、作業条件変動の認識は、その作業条件変動を誘因する事象を認識すること、つまり、作業条件変動事象を認識することをも意味する。
【0027】
作業条件変動は、対基板作業の品質低下を招く1つの大きな要因であり、また、対基板作業の品質低下は、作業条件変動が生じた場合に多く発生する。そのため、作業条件変動に基づいて特定された部位グループの部位グループ品質指標を利用すれば、作業品質の低下の原因を容易に把握することができるとともに、対基板作業の品質低下に対して効率的な支援が可能となる。なお、作業条件変動に基づく特定は、作業条件変動の作業品質への影響の現れ易さを考慮して設定された規則に基づいて行えばよい。その規則は、言い換えれば、作業条件変動によって品質がより低下し易い作業部位を選出するための規則であり、対基板作業の種類,作業条件変動の内容等に応じて、作業部位の大きさ、作業部位の基板上の位置,作業条件変動が作業用デバイスに関連するものである場合にはその作業用デバイス等に基づいて設定すればよい。
【0028】
(8)前記条件変動認識部が、対基板作業において前記対基板作業機が行った動作と前記対基板作業機に対して行われた処置との少なくとも一方に関する情報を含む作業機関連情報に基づいて、前記作業条件変動を認識するように構成された(7)項に記載の対基板作業支援装置。
【0029】
「作業機関連情報」は、対基板作業機が、1つの基板に対して対基板作業を行った際、どのようなデバイスや資材が使用されたか,どのような動作が行われたか,当該作業機の状態がどのような状態にあったか等を表わす情報を広く意味する。作業機関連情報には、上記「対基板作業機が行った作業に関する情報(以下、「作業実績情報」と言う場合がある)」と上記「対基板作業機に対して行われた処置に関する情報(以下、「処置情報」と言う場合がある)」との少なくとも一方が含まれる。それらの情報の具体例は、以下の説明の中で、挙げることとする。なお、作業機関連情報は、主に、対基板作業機から送られてくる情報であるが、他の機器から送られてくる情報であってもよく、例えば自身が備える操作パネル等へのオペレータの入力等に基づいて、支援装置自らが取得する情報であってもよい。
【0030】
(9)当該対基板作業支援装置が、さらに、前記品質指標算出部によって算出された前記品質指標の変動を監視する品質指標変動監視部を備えた(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【0031】
本項の態様の支援装置は、上記品質指標変動監視部によって対基板作業の品質低下が判断されるように構成することもでき、そのような構成とするれば、便利な支援装置を構築することができる。
【0032】
(10)当該対基板作業支援装置が、さらに、前記品質指標変動監視部によって前記品質指標の値が設定程度を下回ったと認識されたことを条件に、対基板作業の品質を改善させるための処置を決定する品質改善処置決定部を備えた(9)項に記載の対基板作業支援装置。
【0033】
本項の態様の支援装置によれば、ある程度の品質低下が認められた場合に、上記品質改善処置が自動的に決定される。その決定された品質改善処置は、オペレータが品質改善処置を自らが実施する若しくは対基板作業機に実施させる際に有用な情報となる。したがって、本項の態様の支援装置を利用すれば、品質低下に対して、オペレータによる適切な支援が可能となる。
【0034】
「品質指標の値が設定程度を下回った」かどうかについての判断手法は、特に限定されるものではない。例えば、何らかの限界値を設けて、品質指標の値がその限界値を超えた場合に、上記設定程度を下回ったと判断してもよく、また、例えば、品質指標の値を経時的に,連続的に,若しくは,何らかの時点を挟む前後のものを算出し、品質指標の値が前回以前に算出された値と比較して設定値以上低下した場合に、上記設定程度を下回ったと判断してもよい。
【0035】
どのような処置を上記品質改善処置として決定するかは、例えば、いずれの部位グループの部位グループ品質指標の値が低下したかに応じて、また、作業条件変動に起因して品質指標の値が低下した場合にはその作業条件変動に応じて予め設定しておき、その設定に従って行えばよい。品質改善処置は、1つのみ決定されるものであってもよいが、複数の品質改善処置を決定することが望ましい。なぜならば、オペレータに選択の余地を残すことが効果的である場合があり、また、1つの品質改善処置の実施によっては改善の効果が見られないときに別の品質改善処置を実施する場合に好都合であるからである。
【0036】
(11)当該対基板作業支援装置が、さらに、前記品質指標算出部によって算出された前記品質指標を表示装置に表示させる表示処理部を備えた(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【0037】
本項の態様の支援装置によれば、品質指標を表示させることができるため、オペレータは、対基板作業の品質低下を容易に把握することができる。なお、「表示装置」は、支援装置自体が有するものであってもよく、対基板作業機の操作パネルのディスプレイ等、対基板作業機が備えるものであってもよい。製造ラインのオペレータは、当該製造ライン内を移動しつつ作業に従事することを考慮すれば、表示装置は、携帯端末等、オペレータが携帯できるものであることが望ましい。
【0038】
(12)前記品質指標算出部が、前記品質指標として、対基板作業機自体の品質指標である作業機品質指標をも算出するように構成され、
前記表示処理部が、その作業機品質指標と前記部位グループ品質指標との両者を表示させるように構成された(11)項に記載の対基板作業支援装置。
【0039】
本項の態様の支援装置によれば、表示装置に上記2種の品質指標が表示されるため、オペレータは、対基板作業機の品質低下を把握しつつ、その低下の要因を容易に把握することができる。
【0040】
(13)前記表示処理部が、前記作業機品質指標と前記部位グループ品質指標とを、それらが一画面に含まれるように表示させるように構成された(12)項に記載の対基板作業支援装置。
【0041】
本項の態様の支援装置によれば、上記2種類の品質指標を表示装置の一画面内において見比べるといったことが可能となり、オペレータは、対基板作業の品質低下の要因をより容易に把握することができる。
【0042】
(14)当該対基板作業支援装置が、さらに、前記品質指標算出部によって算出された前記品質指標の変動を監視する品質指標変動監視部を備え、
前記表示処理部が、前記品質指標を、前記品質指標変動監視部によってそれの値が設定程度を下回ったと認識されたことを条件に表示させるように構成された(11)項ないし(13)項のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【0043】
本項の態様の支援装置によれば、ある程度低下した品質指標しか表示装置に表示されないため、オペレータは、品質低下の要因を効率的に把握できる。なお、作業機品質指標と部位グループ品質指標とが表示装置に表示される場合、上記条件に従った表示は、それら2種の品質指標の両者について行われるようにしてもよく、一方のみについて行われるようにしてもよい。ちなみに、「品質指標の値が設定程度を下回った」かどうかについての判断手法は、先の項におけるものと同様である。ただし、本項における「設定程度」は、先の項における設定程度と同じ程度に設定されてもよく、先の項における設定程度より低く若しくは高く設定されてもよい。
【0044】
(15)当該対基板作業支援装置が、さらに、それぞれが前記部位グループである複数の部位グループを認定する部位グループ特定部を備えるとともに、前記品質指標算出部が、その部位グループ特定部によって特定された前記複数の部位グループの各々の品質指標を、前記部位グループ品質指標として算出するように構成され、
前記表示処理部が、前記品質指標算出部によって算出された前記複数の部位グループの各々の前記部位グループ品質指標を、それらの値の高低に従って配列表示させるように構成された(11)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【0045】
本項の態様の支援装置によれば、部位グループ品質指標を低下の程度の高い若しくは低い順に表示装置に表示させることができるため、オペレータは、より容易に、品質低下の要因を把握することができる。また、品質改善処置を実施する場合、オペレータは、より緊急度の高い部位グループについての品質改善処置の優先実施を、容易に、図ることができる。
【0046】
(16)前記表示処理部が、前記品質指標算出部によって算出された前記品質指標を、前記対基板作業機によって対基板作業が行われた回路基板の数の進捗に伴う変動を示すグラフィック表示にて表示させるように構成された(11)項ないし(15)項のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【0047】
「グラフィック表示」は、いわゆる画像表示と呼ぶことのできる表示であり、具体的には、例えば、折れ線グラフ,棒グラフ等のグラフや、品質指標の上昇,下降若しくは維持を示す矢印等のシンボル等が含まれる。本項の態様の支援装置によれば、表示装置に表示されるグラフィック表示により、オペレータは、品質指標の経時的な変動の様子を直観的に若しくは感覚的に認識することができる。したがって、オペレータは、例えば、これから先の品質低下を、容易に予測することができる。
【0048】
(17)前記対基板作業機が、前記対基板作業として回路基板に電気部品を装着する部品装着作業を実行する部品装着機であり、装着された電気部品の各々を前記作業部位として扱う(1)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【0049】
(18)前記対基板作業機が、前記対基板作業として回路基板にクリームはんだを印刷するはんだ印刷作業を実行するはんだ印刷機であり、印刷されたはんだランドの各々を前記作業部位として扱う(1)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【0050】
上記2つの項に係る支援装置の態様は、それぞれ、対基板作業機および対基板作業の種類と、その対基板作業における作業部位とに限定を付加した態様である。
【0051】
(19)前記品質指標算出部が、作業部位ごとの作業結果の正規の結果に対するズレを基に統計的手法によって導き出された指標を、前記品質指標として算出するように構成された(1)項ないし(18)項のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【0052】
(20)前記品質指標算出部が、前記品質指標として、工程能力指数を算出するように構成された(1)項ないし(19)項のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【0053】
上記2つの項に係る態様は、それぞれ、品質指標に限定を付加した態様である。「品質指標」については、先の項の説明において、詳しく説明されているため、ここでの詳しい説明は省略する。なお、上記2つの項のうちの後者における「工程能力指数」は、統計の分野においては一般的な指標であり、対基板作業の品質低下を把握するための指標として、特に好適である。ちなみに、上記2つの項に係る態様のうちの後者は、前者の下位に位置付けられるものと考えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例の対基板作業支援装置としての電気回路製造支援装置と、それが支援する対基板作業機が配置された電気回路製造ラインを示す斜視図である。
【図2】電気回路製造ラインを構成するはんだ印刷機を、外装パネルを外した状態において示す斜視図である。
【図3】印刷作業結果検査機による検査を説明するための模式図である。
【図4】部品装着機を構成する装着モジュールの内部構造を示す斜視図である。
【図5】装着モジュールに取り付け可能な各種作業ヘッドを示す斜視図である。
【図6】それぞれが品質指標である作業機工程能力指数,部位グループ工程能力指数がそれぞれ格納される作業機工程能力指数格納テーブル,部位グループ工程能力指数格納テーブルを示す概念図である。
【図7】電気回路製造支援装置において実行される部位グループ特定プログラムを示すフローチャートである。
【図8】電気回路製造支援装置において実行される品質指標算出プログラムを示すフローチャートである。
【図9】電気回路製造支援装置において実行される品質指標変動監視プログラムを示すフローチャートである。
【図10】作業品質を改善するための品質改善処置がリストアップされた品質改善処置テーブルを示す概念図である。
【図11】携帯端末に表示されるいくつかの画面を示す図であらる。
【図12】電気回路製造支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、請求可能発明を実施するための形態として、請求可能発明の実施例である対基板作業支援装置について、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【実施例】
【0056】
図1に示すように、実施例の対基板作業支援装置の一種である電気回路製造支援装置10(以下、単に「支援装置10」と言う場合がある)は、電気回路製造ライン20が行う電気回路の製造、詳しくは、電気回路製造ライン20に配置された対基板作業機による対基板作業を支援する。以下に、まず、電気回路製造ラインについて説明し、その後に、支援装置10による支援処理の概要,いくつかの支援処理の具体例について説明する。
【0057】
≪1.電気回路製造ライン≫
i)電気回路製造ラインの全体構成
図1に示すように、電気回路製造ライン20(以下、単に、「製造ライン20」と略す場合がある)は、上流側から順に、基板投入器22,はんだ印刷機24,印刷作業結果検査機26,第1搬送経路切換器28,部品装着機30,第2搬送経路切換器32,装着作業結果検査機34,リフロー炉36,最終検査機38が、並んで配置されており、複数の基板が、それら機器を順次通過して、電気回路の製造が行われる。はんだ印刷機24,部品装着機30,リフロー炉36が、対基板作業機であり、それぞれが行うはんだ印刷作業,部品装着作業,部品固定作業が、対基板作業である。
【0058】
上記機器の各々について、簡単に説明すれば、基板投入器22は、複数の基板をスタックして収納しており、順次、基板を1枚ずつ、当該製造ライン20に、詳しく言えば、はんだ印刷機24に投入する。はんだ印刷機24は、投入された基板の表面にクリームはんだをスクリーン印刷する作業(はんだ印刷作業)を行う。印刷作業結果検査機26は、はんだ印刷機24によるはんだ印刷作業の結果を検査する。後に詳しく説明するが、部品装着機30は、2レーンで作業を行うことが可能とされており、第1搬送経路切換器28は、印刷作業結果検査機26から搬出された基板を、部品装着機30の2レーンに振り分ける機能を有している。部品装着機30は、1つのベース40と、ベース40に並んで配置されてそれぞれが部品装着装置として機能する6つの装着モジュール42と、それら装着モジュール42を統括して制御する統括制御装置としてのモジュール統括コントローラ44とから構成されており、はんだが印刷された基板が、6つの装着モジュール42を順次通過して搬送される間に、各装着モジュール42によって部品を装着する作業(部品装着作業)が行われて、当該基板への部品装着作業が完了するように構成されている。このような構成から、部品装着機30は、6つの装着モジュール42の各々が部品装着機として機能するものと考えることができるため、以下の説明において、装着モジュール42の各々を1つの部品装着機として扱う場合がある。第2搬送経路切換器32は、部品装着機30において2レーンで搬送されてきた基板の搬送経路を1つの経路に集める機能を有している。装着作業結果検査機34は、部品装着機30による部品装着作業の結果を検査する。リフロー炉36は、部品が装着された基板を加熱することによってクリームはんだを溶融させた後、冷却することでそのはんだを凝固させて、部品の基板への固定作業(部品固定作業)を行う。最終検査機38は、当該製造ライン20の末尾に配置され、各機器によって対基板作業が行われて製造された電気回路の最終検査を行う。なお、本製造ライン20は、各機器24,26,30,34,36,38を統括して制御するラインコントローラ46を備えている。このラインコントローラ46は、それらの各機器とLAN48を介して接続されている。また、支援装置10も、LAN48に接続されており、LAN48を介して、各機器24,26,30,34,36,38およびラインコントローラ46と接続されている。さらに、支援装置10には、オペレータが携帯するためのタブレット型携帯端末(PDA)49が、無線通信によって接続されている。以下に、主要な機器について、個別に詳しく説明する。
【0059】
ii)はんだ印刷機
はんだ印刷機24は、図2に示すように、角パイプを主体に構成されたベースフレーム50を有しており、そのベースフレーム50に支持されて配設された基板コンベア装置52,基板保持・昇降装置54(図では、スクリーン56に隠れて一部しか現われていない),スクリーン保持装置58,スキージ装置60,クリーニング装置62等によって構成されている。
【0060】
基板コンベア装置52は、基板を上流側から下流側に搬送するとともに、スクリーン56の下方における所定の作業位置に停止させる機能を有している。基板保持・昇降装置54は、作業位置に停止している基板を保持して上昇・下降させる。スクリーン保持装置58は、スクリーン56を保持する保持枠64と、スクリーン56の位置を調整すべく保持枠64の位置調整を行う4つの保持枠位置調整機構66とを有している。スキージ装置60は、1対のスキージ68と、それら1対のスキージ68の各々を上下させるスキージ上下機構70とを有するスキージユニット72と、1対のスキージ68を前後に動かすべくスキージユニット72を前後に移動させるユニット移動機構74とを含んで構成されている。
【0061】
基板コンベア装置52によって、上流側から搬入された基板は、上記作業位置で停止させられ、その停止させられた基板は、基板保持・昇降装置54によって保持され、その後上昇させられ、スクリーン56の下面に押し当てられる。スクリーン56には、はんだランド(「はんだパッド」とも呼ばれる)を形成するための開口(透孔)が設けられる一方、スクリーン56の上面には、クリームはんだが供給されている。1対のスキージ68の一方のみがスクリーンの56の上面に押し当てられた状態で、スキージユニット72が、ユニット移動機構74によって、前後の一方に移動させられることで、スクリーン56の上面に供給されているクリームはんだが、スクリーン56の開口を通って、押し当てられた基板の上面に付着させられる。それによって、はんだランドが、開口によって規定される特定のランドパターンで基板の上面に形成される。このようにして、基板表面へのはんだ印刷が完了する。印刷が完了した基板は、基板保持・昇降装置54に下降させられた後、保持が解除され、基板コンベア装置52によって、下流側に搬出される。はんだ印刷機では、このようにして、1つの基板に対するはんだ印刷作業が行われる。
【0062】
なお、はんだ印刷の際、スクリーン56と基板保持・昇降装置54によって保持された基板との位置合わせが行われる。図には省略しているが、はんだ印刷機24は、スクリーン56と、上昇させられる前の状態の基板との間を移動してスクリーン56の下面と基板の上面との両者を撮像可能な撮像装置を有している。この撮像装置によって、基板の表面に付された基板基準マークと、スクリーン56の下面に付されたスクリーン基準マークとが撮像され、それらの撮像によって得られた撮像データを基に、基板とスクリーンとの相対位置ズレ量が把握される。その把握された相対位置ズレ量に基づいて、保持枠位置調整機構66によってスクリーン56の位置が調整され、その後に、基板保持・昇降装置54によって基板が上昇させられ、はんだ印刷が行われる。
【0063】
上記クリーニング装置62は、はんだランドの擦れ,はみ出しといった面積・体積の過少若しくは過多が発生した場合等に、スクリーン56の下面を清浄する装置である。クリーニング装置62は、1対のローラに捲回されてそれらの間に渡された不織布76と、洗浄液であるアルコールを不織布76に含浸させるためのノズル78とを有するクリーニングユニット80を有しており、そのクリーニングユニット80が、図では隠れているユニット移動機構によって、前後に移動させられるように構成されている。不織布76がスクリーン56の下面に接触する状態で、ユニット移動機構によって、クリーニングユニット80が移動させられることで、スクリーン56の下面が、その不織布76によって拭かれるようにして清浄される。なお、不織布76の下方には、その不織布76をバックアップするバックアップ部材82が設けられており、不織布76はそのバックアップ部材82にバックアップされた状態で、スクリーン56の下面に接触させられる。クリーニングユニット80には、図示しないバキューム吸引器が設けられており、その吸引器によって、バックアップ部材82に設けられたスロットおよび不織布76を介して、スクリーン56に付着している付着物を吸引することが可能となっている。クリーニング装置62によるクリーニングは、アルコールの不織布76への含浸および吸引器による吸引を伴わずに行われるドライクリーニング,アルコールの含浸を伴って行われるウェットクリーニング,アルコールの含浸および吸引を伴って行われるバキュームクリーニングの3つのモードで実施可能とされており、それらのモードのいずれかが選択されて、その選択されたモードで、スクリーン56の下面が清浄される。なお、クリーニング装置62は、定期的に自動で、外部からの信号に基づいて自動で、あるいは、オペレータの操作によって手動で、クリーニングを行うようにされている。
【0064】
はんだ印刷機24は、コンピュータを主体とした制御装置であるコントローラ84を備えており、当該はんだ印刷機24を構成する上述の各装置,各機構の作動は、そのコントローラ84によって行われる。ちなみに、コントローラ84は、オペレータの操作パネルの操作によって入力されたはんだIDを基に、現在供給されているクリームはんだを把握、管理している。なお、はんだ印刷機24は、スクリーン56の上面に供給されているクリームはんだの粘度調整等のため、当該はんだ印刷機24の内部の温度を調整するエアコンディショナ86をも備えている。
【0065】
iii)印刷作業結果検査機
印刷作業結果検査機26は、内部構造の図示は省略するが、基板コンベア装置と、検査ヘッドと、その検査ヘッドを移動させるヘッド移動装置とを含んで構成されている。基板コンベア装置は、はんだが印刷された基板を上流側から搬入して下流側に搬出するとともに、所定の検査位置に定置させる機能を有している。検査ヘッドは、検査位置に定置させられた基板の表面の情報を得るための作業ヘッドである。ヘッド移動装置は、いわゆるXY型の移動装置であり、検査ヘッドを基板搬送方向に平行な方向(X方向)に移動させるX方向移動機構と、その機構自体をX方向に直角な方向(Y方向)に移動させるY方向移動機構とを含んで構成されており、基板の上方において、検査ヘッドを、基板の表面に平行な一平面に沿って移動させる。
【0066】
はんだ印刷作業の結果、基板の表面には、それぞれが作業部位となる複数のはんだランド(「はんだパッド」と呼ぶこともできる)が形成されている。詳しい説明は省略するが、図3に模式的に示すように、検査ヘッドは、はんだ印刷作業の結果を検査するための印刷結果検査ヘッド90であり、この印刷結果検査ヘッド90は、基板の表面に格子が形成されるよう4方向から斜めにスリット光を照射する光源と、基板の表面に形成された光の格子を2方向から斜めに撮像する撮像装置としてのカメラとを含んで構成されている。照射されたスリット光によってできる格子を構成する光の線92は、基板上のはんだランド94、つまり、はんだが印刷された箇所に形成された部分が、はんだランド94が形成されていない基板自体の表面に形成された部分からシフトすることになる。このシフトの量は、はんだランドの厚み(高さ)によって異なる。このような原理を利用し、カメラによって得られた撮像データを処理することにより、印刷作業結果検査機26は、はんだランド94の、印刷位置についてのズレ量である印刷位置ズレ量、詳しくは、X方向およびY方向の位置ズレ量,回転方向の位置ズレ量(回転角度若しくは方位におけるズレ量)や、面積および体積を取得する。なお、上記カメラは、複数のはんだランド94を一視野に収めて撮像可能であり、印刷作業結果検査機26では、一度に複数のはんだランド94の検査が可能とされている。
【0067】
印刷作業結果検査機26は、あるはんだランド94についての上記印刷位置ズレ量,面積の正規の面積からのズレ量である面積ズレ量,体積の正規体積からのズレ量である体積ズレ量が、そのはんだランド94について規定された限界値(不良判定用限界値)を超えている場合に、そのはんだランド94が、不良部位であると認定し、操作パネルのディスプレイ等を介して、オペレータに、その不良となった作業部位,その不良の内容等の印刷不良情報を報知する。オペレータは、上記報知された情報に基づいて、はんだ印刷機24によるはんだ印刷作業の条件の変更(プログラムの変更,温度の変更,はんだの追加供給,クリーニング装置62によるスクリーン56のクリーニング等が含まれる)を行う。
【0068】
iv)部品装着機
部品装着機30は、基板に部品を装着するための作業機であり、先に説明したように、ベース40と、6つの装着モジュール42と、モジュール統括コントローラ44とを含んで構成されている。図4は外装パネルを外した状態の装着モジュール42を示しており、この図を参照しつつ説明すれば、装着モジュール42は、モジュールベース100と、モジュールベース100に上架されたビーム102と、モジュールベース100に配設された基板コンベア装置104と、当該モジュール42の正面側においてモジュールベース100に交換可能に取り付けられてそれぞれが部品供給デバイス(作業用デバイスの一種である)として機能する複数の部品フィーダ106と、基板コンベア装置104と複数の部品フィーダ106との間においてモジュールベース100に固定されたベース固定式の部品カメラ108と、複数の部品フィーダ106のいずれかから供給される部品を保持してその部品を基板Sに装着するために離脱させる装着ヘッド110(「作業ヘッド」の一種である)と、ビーム102に配設されて装着ヘッド110を移動させるヘッド移動装置112とを含んで構成されている。
【0069】
基板コンベア装置104は、基板を搬送するトラック(レーン)を2つ有しており、各トラックに基板を上流側から搬入し、各トラックから下流側に搬出する。基板コンベア装置104は、各トラックの下部に昇降可能な支持テーブルを有しており、所定の位置にまで搬入された基板Sは、上昇した支持テーブルによって支持され、その位置において固定される。つまり、基板コンベア装置104は、部品装着作業において基板Sを所定の作業位置に固定する基板固定装置として機能する。基板コンベア装置104は、各装着モジュール42に配設されているため、当該部品装着機30は、2レーンで部品装着作業を実施可能とされている。ちなみに、基板コンベア装置104による基板の搬送方向である基板搬送方向は、図に示すX方向(Y方向,Z方向とともに矢印で図示)である。
【0070】
ヘッド移動装置112は、いわゆるXY型移動装置であり、装着ヘッド110が脱着可能に取り付けられるヘッド取付体114と、そのヘッド取付体114をX方向に移動させるX方向移動機構と、ビーム102に支持され、そのX方向移動機構を、装着ヘッド110を部品フィーダ106と基板Sとにわたって移動させるべく移動させるY方向移動機構とを含んで構成されている。なお、ヘッド取付体114の下部には、基板Sの表面を撮像するための基板カメラ116が固定されている。
【0071】
装着ヘッド110は、いわゆるインデックス型の装着ヘッドであり。図5(a)に示すように、それぞれが、部品保持デバイス(作業用デバイスの一種である)として機能して負圧の供給(「圧力が大気圧よりも低下させられること」を意味する)によって部品を下端部において吸着保持する8つの吸着ノズル118を有しており、それらは、リボルバ120に保持されている。リボルバ120は、間欠回転し、特定位置に位置する1の吸着ノズル118が、ノズル昇降機構によって、昇降可能、つまり、上下方向(Z方向)に移動可能とされている。特定位置に位置する吸着ノズル118は、下降した際に、負圧が供給されることによって、部品を保持し、また、負圧の供給が断たれることで、吸着保持している部品を離脱させる。ちなみに、8つの吸着ノズル118の各々は、ノズル回転機構によって、自身の軸線(以下、「ノズル軸線」という場合がある)回りに、つまり、ノズル軸線を中心に回転させられるようになっており、当該装着ヘッド110は、各吸着ノズル118によって保持されている部品の回転位置(「回転姿勢」,「方位」と言うこともできる)を、変更・調整することが可能とされている。
【0072】
複数の部品フィーダ106の各々には、部品保持テープ(複数の部品がテープに保持されたものであり、「部品テーピング」とも呼ばれる)が捲回されたリールが、セットされており、複数の部品フィーダ106の各々は、その部品保持テープを間欠的に送り出すことによって、所定の部品供給部位において、順次、部品を1つずつ供給する。部品の補給は、リールを交換しつつ、部品テーピングを繋ぎ合わせるようにして行ってもよく(スプライシング)また、部品フィーダ106ごとリールを交換して行ってもよい。なお、装着モジュール42は、複数の部品フィーダ106に代えて、いわゆるトレイ型の部品供給装置をも取付可能とされている。なお、部品は部品IDにて管理されており、各装着モジュール42は、自身のコントローラによって、自身においてどんな部品が供給されているかを把握している。
【0073】
1の装着モジュール42による部品装着作業について説明すれば、まず、基板コンベア装置104によって、作業に供される基板Sが、上流側から搬入され、所定の作業位置にて固定される。次いで、基板カメラ116がヘッド移動装置112によって移動させられ、基板Sの上面に付された基準マークが撮像される。その撮像によって得られた撮像データに基づき、装着位置の基準となる座標系が決定される。次に、ヘッド移動装置112によって、装着ヘッド110が複数の部品フィーダ106の上方に位置させられ、8つの吸着ノズル118の各々において部品が順次保持される。装着ヘッド110が基板Sの上方に移動させられる際中に、部品カメラ108の上方を通過し、吸着ノズル118の各々に保持された部品が、部品カメラ108によって撮像される。その撮像データに基づき、各部品のノズル軸線に対する位置ズレ量(回転位置ズレをも含む概念である)が把握される。続いて、装着ヘッド42は、基板Sの上方に移動させられ、上記位置ズレ量に基づく補正を行いつつ、各部品が、順次、装着プログラムによって定められた設定位置に装着される。装着プログラムによって定められた回数部品フィーダ106と基板Sとの間を装着ヘッド42が往復させられ、装着ヘッド42による部品の保持・装着が、上記のように繰り返されて、1つの装着モジュール42による部品装着作業が完了する。1つの基板Sが、6つの装着モジュール42を通過する際、1つの基板Sに対する各装着モジュール42による上述の部品装着作業が順次行われ、部品装着機30による1つの基板に対する装着作業が完了する。なお、部品装着作業において、吸着ノズル118が複数の部品フィーダ106からの部品を吸着保持する際に、ミスをする(吸着保持できない)場合がある。この吸着保持ミスが発生した場合は、再度、同じ吸着ノズル118で同じ部品フィーダ106からの部品を吸着保持することでリカバリされる。ちなみに、この吸着保持ミスは、部品ごと、吸着ノズル118ごとに、カウントされる。
【0074】
装着モジュール42は、装着ヘッド110に代えて、他の作業ヘッドを取り付け可能である。例えば、図5(b)に示す装着ヘッド122を取り付けることができる。この装着ヘッド122は、いわゆるシングルノズル型の装着ヘッドである。この装着ヘッド122は、部品保持デバイスとしての吸着ノズル124が1つだけ設けられている。一度に1つの部品しか吸着保持することができないが、比較的大きな部品をも吸着保持可能とされている。この装着ヘッド122も、ノズル昇降機構,ノズル回転機構を備えており、吸着ノズル124は、部品の保持・離脱の際に昇降させられ、かつ、部品の回転位置の変更・調整のためにノズル軸線回りに回転させられる。ちなみに、装着ヘッド110が有する8つの吸着ノズル118,装着ヘッド122が有する吸着ノズル124は、自動的に交換可能となっており、交換用の吸着ノズル118,124は、基板コンベア装置104と複数の部品フィーダ106との間に配置されたノズルストッカ126に収容されている。なお、X方向においてノズルストッカ126とで部品カメラ108を挟んだ位置には、ノズルクリーナ128が配設されている。このノズルクリーナ128は、ブラシを主要構成要素とするものであり、吸着ノズル118,124の下端をそのブラシに接触させるようにして装着ヘッド110,122がヘッド移動装置112によって移動させられることで、吸着ノズル118,124に付着している異物等を除去する機能を有している。また、吸着ノズル118,124、装着ヘッド110,122には、ノズルID,ヘッドIDが付されるとともに、各装着モジュール42は、そのノズルID,ヘッドIDを認識する機能を有しており、自身の現在の部品装着作業において使用されている吸着ノズル,作業ヘッドを把握している。
【0075】
装着モジュール42は、さらに、装着ヘッド110に代えて、例えば、図5(c)に示す検査ヘッド130を取り付け可能である。この検査ヘッド128は、基板Sの表面を撮像可能な撮像装置として、基板カメラ132を備えている。この基板カメラ132は、比較的大きな視野を有し、基板Sに装着された複数の部品を一視野に収めて撮像可能であり、また、比較的解像度の高いカメラである。したがって、基板カメラ132は、装着された部品の装着位置のズレ等に関する検査に適したカメラである(その意味で、以下、「検査用カメラ130」と言う場合がある)。検査ヘッド130を取り付けた装着モジュール42は、部品装着機30の下流側に配置された装着作業結果検査機34と同等の機能を有することとなる。つまり、検査モジュールとして機能することとなる。例えば、検査対象となる部品、つまり、作業部位が多い場合には、この検査機34だけでは、装着結果の検査作業に時間がかかり過ぎることになる。そのような場合に、例えば、6つの装着モジュール42の最下流側に位置するものに検査ヘッド130を取り付け、装着作業結果検査機34に加えてそのモジュール42をも装着作業結果検査機として機能させることで、検査長時間化による当該電気回路製造ラインの生産性の低下を、抑制することが可能となる。なお、それらの作業ヘッド110,122,130の相互の交換は、レバー操作によって、ワンタッチにて行うことができるようになっている。
【0076】
なお、装着モジュール42の各々は、モジュールIDによって識別され、モジュール統括コントローラ44は、そのモジュールIDを把握することで、どの装着モジュール42がベース40上のどの位置に配置されているかを認識している。
【0077】
v)装着作業結果検査機
装着作業結果検査機34は、内部構造の図示は省略するが、印刷作業結果検査機26と同様、基板コンベア装置と、検査ヘッドと、その検査ヘッドを移動させるヘッド移動装置とを含んで構成されている。基板コンベア装置は、部品が装着された基板を上流側から搬入して下流側搬出するとともに、所定の検査位置に定置させる機能を有している。基板コンベア装置およびヘッド移動装置は、印刷作業結果検査機26のものと同様の構成となっているが、検査ヘッドは、印刷作業結果検査機26のものとは異なる構成となっている。装着検査結果検査機34が備える検査ヘッド、つまり、装着検査ヘッドは、基板表面と基板に装着された部品の上面とを上方から撮像する撮像装置としての基板カメラを主要構成要素として構成されたものであり、その基板カメラによって、二次元的な撮像データが取得される。
【0078】
部品装着作業によって、数多くの部品が基板の表面に装着され、それらの部品のそれぞれが作業部位となる。装着作業結果検査機34は、装着検査ヘッドの基板カメラによって取得された撮像データに基づいて、部品の装着位置についてのズレ量である装着位置ズレ量、詳しくは、X方向およびY方向の位置ズレ量,回転方向の位置ズレ量(回転角度若しくは方位におけるズレ量)を取得し、部品の欠品,部品立ち(いわゆる「チップ立ち」)の発生を確認する。部品の欠品,部品立ちの発生を確認した場合は、その発生の事実をもってその作業部位が作業不良であると認定、つまり、その作業部位が不良部位であると認定する。一方、装着位置の位置ズレに関しては、ある部品の上記装着位置ズレ量が、その部品について規定された限界値(不良判定用限界値)を超えている場合に、その部品、つまり、その作業部位が不良部位であると認定する。作業不良を認定した場合に、その不良部位と作業不良の内容等の装着不良情報を、操作パネルのディスプレイ等を介して、オペレータに報知する。オペレータは、上記報知された情報に基づいて、部品装着機30による部品装着作業の条件の変更(位置ズレ補正量等に関するプログラムの変更)や、吸着ノズル,供給される部品の交換等を行う。ちなみに、装着作業結果検査機34の装着検査ヘッドが有する基板カメラは、印刷作業結果検査機26の印刷検査ヘッド90の有するカメラ、部品装着機30に取付られる検査ヘッド122の検査用基板カメラ132と同様、一視野に複数の作業部位(装着された部品)を収めることができ、当該装着作業結果検査機34は、一度に複数の部品についての作業の結果を検査することが可能となっている。
【0079】
vi)リフロー炉
リフロー炉36は、装着作業結果検査機34から搬入された基板、つまり、部品が装着された基板を搬出口まで搬送するコンベア装置と、コンベア装置によって搬送される基板を加熱するための熱風式,赤外線式等のヒータとを含んで構成されている。部品が装着された基板が、コンベア装置で搬送される最中に、ヒータによって加熱されることで、クリームはんだが溶融し、搬出口付近で冷却(自然冷却)されることによって、そのはんだが凝固して、部品が固定される。コンベア装置による基板の搬送速度、炉内の温度プロファイル(基板が炉内を搬送される際の搬送位置変化に対する基板加熱温度の変化の様子)等は、製造される基板の大きさ,部品数,クリームはんだの種類等に応じて、任意に設定可能とされている。ちなみに、リフロー炉36による部品固定作業に関しては、固定された部品およびそれに対応するはんだランドが作業部位として扱われる。
vii)最終検査機
最終検査機38は、装着作業結果検査機34と略同様の構成とされている。検査ヘッドが有する基板カメラによって取得された撮像データに基づいて、部品固定位置についてズレ量である固定位置ズレ量、詳しくは、X方向およびY方向の位置ズレ量,回転方向の位置ズレ量(回転角度若しくは方位におけるズレ量)を取得し、部品の欠品,部品立ち(いわゆる「チップ立ち」)の発生を確認する。部品の欠品,部品立ちの発生を確認した場合は、その発生の事実をもってその作業部位が作業不良であると認定、つまり、その作業部位が不良部位であると認定する。一方、部品固定位置の位置ズレに関しては、ある部品の上記固定位置ズレ量が、その部品について規定された限界値(不良判定用限界値)を超えている場合に、その部品、つまり、その作業部位が不良部位であると認定する。本最終検査機38は、それらに加え、凝固したはんだについての検査をも実行する。具体的に言えば、上記撮像データに基づいて、各部品が載置されているはんだランドの各々の外形寸法の正規の外形寸法に対する差(外形寸法ズレ量)、簡単に言えば、はんだランドの形状不良を確認する。例えば、はんだがダレてはんだランドの面積が過多となった場合には、隣接するはんだランドと繋がり、電気回路がショート等してしまうことになり、はんだランドの外形は、そのような観点から検査され、はんだランドどうしが互いに接触している場合に、それらのはんだランドが不良部位であると認定する。その不良部位と作業不良の内容等の不良情報を、操作パネルのディスプレイ等を介して、オペレータに報知する。オペレータは、上記報知された情報に基づいて、リフロー炉36の搬送速度,温度プロファイルを調整する。なお、部品の固定位置についての不良は、リフロー炉36による部品固定作業の不良だけではなく、部品装着機30による部品装着作業の作業品質の低下によっても引き起こされる。したがって、その意味において、最終検査機38は、リフロー炉36による部品固定作業の作業結果のみならず、部品装着装置30による装着作業の結果を検査する検査機としても機能するものとなっている。つまり、最終検査機38は、装着作業結果検査機としても、また、固定作業結果検査機としても機能するものとなっている。
viii)ラインコントローラ
ラインコントローラ46は、製造ライン20を統括して制御する機能を主機能とする制御装置であり、現時点において各機器によって作業されている基板の把握、基板が製造ライン20による電気回路の製造予定数および製造実績数,製造ライン20の製造タクト等の管理、各機器について共通した設定項目についてのオペレータの入力操作による設定処理等を行う。なお、各機器は、現在自身が作業を行っている基板の基板IDを認識する機能を有している。各機器は、自身が対基板作業を行う基板の基板IDを把握しており、ラインコントローラ46は、各機器からの基板ID情報を基に、製造ライン20を通過する基板を管理している。なお、ラインコントローラ46は、そのような機能の他に、オペレータを管理する機能をも有し、オペレータ自身によって入力されたオペレータIDに基づいて、誰が現在製造ライン20のオペレータであるかを把握している。
【0080】
≪2.電気回路製造支援装置による支援処理の概要≫
電気回路製造支援装置10は、汎用コンピュータによって構成されており、その汎用コンピュータが所定のプログラムを実行することによって実現される。支援装置10は、製造ライン20によって製造される電気回路の品質面における支援を行う。詳しく言えば、先に説明したように、それぞれが対基板作業機であるはんだ印刷機24,部品装着機30,リフロー炉36による対基板作業の作業不良については、印刷作業結果検査機26,装着作業結果検査機34,最終検査機38によって検出されるため、本支援装置10は、製造される電気回路の品質に対する高い信頼性を維持すべく、不良と認定される基準に達しないまでの品質低下を把握するための支援処理を行う。簡単に言えば、品質低下の判断のための指標として、後に説明する「品質指標」を算出し、その算出された品質指標のうちのいくつかをオペレータに対して表示するとともに、品質低下が生じている場合には、その旨をオペレータに告知する。その一方で、品質低下の態様に応じた改善処置を決定し、その品質改善処置に関する情報をオペレータに知らせる。以下に、支援処理において用いられる情報,データおよび品質指標を説明した上で、支援処理を構成する各種の処理について説明し、その後で、本支援装置10の機能構成について説明する。
【0081】
なお、支援装置10による支援処理では、後に詳しく説明するが、各対基板作業機によって対基板作業が行われた作業部位のうちの1以上の作業部位からなるグループ(以下、「部位グループ」という場合がある)という概念を採用し、部位グループに対する品質変動をも監視する。この部位グループの品質変動の監視に関して、2つのモードが用意されており、支援処理は、その2つのモードのいずれかが選択されて行われる。2つのモードの一方は、特定の部位グループを常時監視する「常時監視モード」である。また、もう一方は、対基板作業の作業条件の変動(以下、「作業条件変動」という場合がある)を認識し、その作業条件変動が認識された場合に、その作業条件変動が作業品質に影響を及ぼす可能性のある部位グループを特定して、その特定された部位グループの品質変動を監視する「条件変動依拠監視モード」である。以下の説明においては、それら2つのモードによる支援処理の差異についても説明する。
【0082】
[A]支援処理で用いられる情報,データ
支援処理において用いられる情報,データは、大きくは、2つに類別することができる。その1つは、作業条件変動を認識するための情報である「作業機関連情報」であり、もう1つは、品質変動を監視するためのデータである「検査データ」である。ちなみに、それらの情報,データは、支援処理にあたって、支援装置10が有する情報・データ格納部に格納される。以下に、それぞれについて、順次説明する。
【0083】
i)作業機関連情報
作業機関連情報は、上記条件変動依拠監視モードにおいて作業条件変動を認識するための情報であり、簡単に言えば、対基板作業機が1つの基板に対して対基板作業を行った際、どのようなデバイスや資材が使用されたか,どのような動作が行われたか,当該作業機の状態がどのような状態であったか等を表す情報である。作業機関連情報は、2つに類別することができる。その1つは、対基板作業機が実際に行った作業に関する情報(作業実績情報)であり、もう1つは、対基板作業機に対して実際に行われた処置に関する情報(処置情報)である。作業機関連情報は、主に、各対基板作業機が1つの基板に対して対基板作業を完了した都度、その対基板作業機から支援装置に送信される。なお、先に説明したオペレータに関する情報も作業機関連情報の一種であり、そのような情報は、ラインコントローラ46から送信される。
【0084】
作業実績情報の具体例について以下に列挙すれば、はんだ印刷機24に関しては、例えば、はんだIDから認識可能な現在供給されているクリームはんだの種別,ロット番号,供給元(ベンダ)、はんだ印刷機24が把握しているスクリーンID,スキージID等の各デバイスのID、スキージのスクリーンへの加圧力(印圧),スキージの速度等はんだ印刷の際のスキージの動作についての情報、スクリーン56の基板からの離脱速度、機内の温度,湿度等が、作業実績情報に含まれる。また、撮像装置による基板基準マークの撮像データから得られる情報等も、広い意味で、作業実績情報に含まれる。部品装着機30に関しては、例えば、部品IDから認識可能な現在供給されている部品の種別,ロット番号,供給元、部品装着機30が把握している部品フィーダID,トレイID,ノズルID,ヘッドID,モジュールID等の各種デバイスのID、装着動作におけるノズルの下降速度等の種々のデバイスの動作速度、装着プログラムにおいて設定されていた各部品の装着位置等が、作業実績情報に含まれる。また、基板カメラ116による基板基準マークの撮像データから得られる情報、吸着ノズル118,124に吸着保持された部品の部品カメラ108による撮像データから得られる情報(ノズル軸線に対する部品の位置ズレ,部品若しくは吸着ノズル毎の吸着ミスの回数等)等も、広い意味で、作業実績情報に含まれる。リフロー炉36に関しては、例えば、設定されていた基板の搬送速度、設定されていた温度プロフィール等が、作業実績情報に含まれる。作業実績情報は、端的には、1の基板に対する対基板作業についてのものと、他の1つの基板に対する対基板作業についてのものを比較することによって、作業条件が変動したこを把握可能な情報であると言える。
【0085】
処置情報の具体例について以下に列挙すれば、はんだ印刷機24に関しては、例えば、クリームはんだが追加供給された,各種のデバイスが交換された,はんだ印刷機の動作プログラムが変更された等の処置を行った事実、スクリーン56に対してクリーニングが行われた事実およびその行われたクリーニングのモード等に関する情報が、処置情報に含まれる。部品装着機30に関しては、部品が追加補給された,各種デバイス(ノズル,ヘッド,モジュール等)が交換された,装着プログラム(装着位置等)が変更されたといった事実等に関する情報が、処置情報に含まれる。リフロー炉36に関しては、例えば、基板の搬送速度,温度プロフィールが変更された事実に関する情報が、処置情報に含まれる。処置情報は、端的には、作業条件変動を引き起こす処置が実際に行われたことを直接的に表す情報であると言える。
【0086】
検査データは、対基板作業が行われた作業部位についてのその対基板作業の作業結果を検査する検査機、具体的には、印刷作業結果検査機26,装着作業結果検査機34,最終検査機38による検査データが、装着モジュール42が検査モジュールとされた場合にはその装着モジュール42による検査データが含まれる。検査データは、それらの検査機が1の基板に対する検査を行った都度、それら検査機から支援装置10に送信される。検査データは、対基板作業の作業品質の変動を監視するために用いられるデータであることから、相当数の基板の各々についてのデータであることが望ましく、本支援装置10の情報・データ格納部には、連続して製造される若しくは製造された相当数の基板についての検査データが、格納されるようになっている。検査データの具体例について以下に列挙すれば、印刷作業結果検査機26に関して言えば、例えば、上述の各はんだランドの印刷位置ズレ量,面積ズレ量,体積ズレ量等が、検査データに含まれる。また、装着作業結果検査機34に関して言えば、例えば、上述の各部品の装着位置ズレ量等が、最終検査機38に関して言えば、例えば、上述の各部品の固定位置ズレ量,はんだランドの外形寸法ズレ量等が、それぞれ、検査データに含まれる。なお、支援処理の説明を簡単に行うため、以下の説明では、印刷作業結果検査機26の検査データは、専ら、はんだ印刷機24によるはんだ印刷作業の作業品質の変動の監視に、装着作業結果検査機34の検査データは、専ら、部品装着機30による部品装着作業の作業品質の変動の監視に、最終検査機38検査データは、専ら、リフロー炉36による部品固定作業の作業品質の変動の監視に、それぞれ用いられることとする。
【0087】
[B]品質指標
本支援装置10では、上記検査データを基に、対基板作業の品質を示す指標である品質指標を算出し、その算出された品質指標の変動を監視することにより、不良と認定される基準に達しないまでの品質低下を判断する。品質指標は、対基板作業機ごとの品質指標(作業機品質指標)と、いずれかの対基板作業機によって対基板作業が行われた特定の1以上の作業部位からなる部位グループについての品質指標(部位グループ品質指標)との両方が算出され、それらの両方が監視される。品質指標として、具体的には、工程能力指数が採用されている。以下に、工程能力指数,作業機品質指標,部位グループ品質指標等について、個々に詳しく説明する。
【0088】
i)工程能力指数
工程能力指数CpKは、品質管理の分野で常用されている品質指標であり、作業若しくは作業結果の安定度を示す安定度指標と考えることができる。工程能力指数は、作業部位ごとの作業結果の正規の結果に対するズレを基に、統計的手法によって導き出せる。具体的には、例えば、部品装着作業では、装着された各部品の上記装着位置ズレを基に、はんだ印刷作業では、各はんだランドの上記印刷位置ズレ量,面積ズレ量,体積ズレ量を基に、部品固定作業では、固定された各部品の上記固定位置ズレ量を基に、導き出すことができる。
【0089】
工程能力指数CpKは、具体的には、次式に従って算出される。
pK=MIN{(USL−μ)/3σ,(μーLSL)/3σ]
MIN{ , }:{ }の中の最も小さいものを意味する関数
USL:ズレ量のプラス方向の許容値(許容上限値)
LSL:ズレ量のマイナス方向の許容値(許容下限値)
μ:算出対象ロットにおける各作業部位のズレ量の平均値
σ:算出対象ロットにおける各作業部位のズレ量の標準偏差
ちなみに、上記許容上限値USL,許容下限値LSLは、正規の結果を示す標準値からの差が上述した不良判定用限界値よりも小さく設定されている。また、算出対象ロットは、1の工程能力指数CpKを算出するための基準となる作業部位のロットであり、1ロットを構成する作業部位の数は、上記作業機品質指標,部位グループ品質指標についてそれぞれ設定されている。
【0090】
ii)作業機品質指標
作業機品質指標は、対基板作業機自体の作業品質を示す品質指標であり、本支援装置10では、その作業機品質指標として、対基板作業機ごと、つまり、はんだ印刷機24,部品装着機30の装着モジュール42,リフロー炉36の各々ごとに、その各々の工程能力指数(以下、「作業機工程能力指数CpKM」という場合がある)が算出される。算出対象ロットは、1枚の基板に含まれるすべての作業部位によって構成される。詳しく言えば、はんだ印刷作業の場合は、1枚の基板に印刷されたすべてのはんだランドの各々によって、部品装着作業の場合は、1枚の基板に装着されたすべての部品の各々によって、部品固定作業の場合は、1枚の回路基板に固定されたすべての部品の各々によって、それぞれ、算出対象ロットが構成される。つまり、作業機工程能力指数CpKMは、対基板作業機自体の対基板作業における基板単位の工程能力指数と考えることができる。
【0091】
iii)部位グループ品質指標
部位グループ品質指標は、特定の1以上の作業部位からなる部位グループの作業品質を示す品質指標である。部位グループは、任意に設定可能である。例えば、作業部位の大きさ,基板における位置,対基板作業機が備える複数の作業用デバイスのいずれが対基板作業に関与したか等によって、部位グループを設定することができる。本支援装置10では、具体的には、はんだ印刷作業に関しては、比較的面積の小さい1以上のはんだランドからなるグループ(小面積グループ),比較的面積の大きい1以上のはんだランドからなるグループ(大面積グループ),最も近接した2つのはんだランドからなるグループ(近接グループ),X方向Y方向のそれぞれにおける基板の両端の各々に最も近い1以上のはんだランドからなるグループ(最端グループ),基板の最も中央に位置する1以上のはんだランドからなるグループ(中央グループ)が、それぞれ設定されている。また、部品装着作業に関しては、装着モジュール42に配備,装着されている部品供給デバイスである部品フィーダ106,部品保持デバイスである吸着ノズル118,124に対応し、各部品フィーダ106ごとに、その部品フィーダ106から供給されて装着された1以上の部品からなるグループ(フィーダグループ)が、各吸着ノズル118,124ごとに、その部品の各々ごとに、その吸着ノズル118,124によって保持されて装着された1以上の部品からなるグループ(ノズルグループ)が、それぞれ設定されている。さらに、部品固定作業に関しては、比較的小さい1以上の部品からなるグループ(小部品グループ),比較的大きい1以上の固定された部品からなるグループ(大部品グループ),X方向Y方向のそれぞれにおける基板の両端の各々に最も近い位置に固定された1以上の部品からなるグループ(最端グループ),基板の最も中央に近い位置に固定された1以上の部品からなるグループ(中央グループ)が、それぞれ設定されている。
【0092】
部位グループ品質指標として、上記部位グループごとに、その各々の工程能力指数(以下、「部位グループ工程能力指数CpKP」という場合がある)が算出される。部位グループ工程能力指数CpKPでは、上記算出対象ロットは、各部位グループごとに設定されている。具体的には、各部位グループを構成する作業部位の延べ作業数が、設定数(例えば30〜150)となった場合に、それら設定数の作業部位によって、算出対象ロットが構成される。
【0093】
上述した作業機工程能力指数CpKMは、対基板作業機全体の工程能力指数、つまり、作業部位に依らない対基板作業機自体の工程能力であるのに対して、部位グループ工程能力指数CpKPは、基板における局所的な、作業用デバイス等に関する対基板作業機の部分的な、あるいは、作業条件の如何が強く反映した工程能力指数と考えることができる。このような部位グループ品質指標を採用し、それの変動をも監視することで、対基板作業の品質低下を、綿密に若しくは高い信頼性の下で把握することが可能である。
【0094】
iv)工程能力指数とズレの項目との関係
先に説明したように、作業部位ごとの作業結果の正規の結果に対するズレには、いろいろな項目のズレが含まれる。具体的には、はんだ印刷作業に関しては、印刷位置についてのX方向およびY方向の位置ズレ,回転方向の位置ズレ,面積ズレ,体積ズレといった項目のズレが、部品装着作業に関しては、装着位置についてのX方向およびY方向の位置ズレ,回転方向の位置ズレといった項目のズレが、部品固定作業に関しては、固定位置についてのX方向およびY方向の位置ズレ,回転方向の位置ズレといった項目のズレが、それぞれ含まれる。上記作業機工程能力指数CpKM,部位グループ工程能力指数CpKPは、上記いくつかの項目のズレの各々に基づいて算出された項目ごとの工程能力指数CpKの各々を、作業機工程能力指数CpKM,部位グループ工程能力指数CpKPとして扱うこともできる。つまり、1つ対基板作業機,1つの部位グループに対して、複数の作業機工程能力指数CpKM,複数の部位グループ工程能力指数CpKPを算出して、それらの各々を監視することも可能である。一方、1つ対基板作業機,1つの部位グループに対して算出された複数の作業機工程能力指数CpKM,部位グループ工程能力指数CpKPを、平均したり、それらの最も小さい値のものを採用する等して、1つ対基板作業機,1つの部位グループに対して1つの作業機工程能力指数CpKM,部位グループ工程能力指数CpKPを算出し、その算出された1つの作業機工程能力指数CpKM,部位グループ工程能力指数CpKPを、監視することも可能である。本支援装置10では、上記最も小さい値のものを、1つの作業機工程能力指数CpKM,部位グループ工程能力指数CpKPとして算出し、それを監視するように構成されている。
【0095】
v)工程能力指数の高低の程度
作業機工程能力指数CpKM,部位グループ工程能力指数CpKP(以下、それらを区別する必要がないときには、「工程能力指数CpK」を総称する場合がある)の各々に対しては、工程能力指数CpKごとに、品質低下と判断される限界程度(品質低下限界値CpK0)が設定されている。この品質低下限界値CpK0(例えば、0.7〜1.30程度)を下回った場合に、作業機工程能力指数CpKMに対応する対基板作業機によって行われる対基板作業の全体品質や,部位グループ工程能力指数CpKPに対応する部位グループを構成する作業部位についての作業品質が低下したと判断される。ちなみに、工程能力指数の高低の程度を示す程度指標として、工程能力指数CpKの算出の都度、それの品質低下限界値CpK0に対する百分率(対限界百分率)も計算される。なお、この対限界百分率も、工程能力指数CpKPをも、対基板作業の品質を示す品質指標と考えることができ、詳しくは、対作業機工程能力指数CpKMについての対限界百分率を、作業機品質指標と、部位グループ工程能力指数CpKPについての対限界百分率を、部位グループ品質指標と、それぞれ考えることができる。
【0096】
なお、本支援装置10では、部位グループの品質低下の判断手法として、上述したように、品質指標の値が限界値を下回ったことを条件として、その部位グループの品質が低下したと判断する手法を採用している。その品質低下の判断手法のオプションとして、その条件に、品質指標が前回算出した値を設定差以上下回ったことという条件、または、連続して設定回数前回の値を設定差以上下回ったという条件追加し、その追加した条件をも充足した場合に品質低下であると判断するような手法を採用することも可能である。
【0097】
vi)工程能力指数格納テーブル
工程能力指数CpKは、支援装置10が有する情報・データ格納部に設定されている作業機工程能力指数格納テーブル,部位グループ工程能力指数格納テーブルに、格納される。作業機工程能力指数格納テーブルは、図6(a)に示すようなテーブルであり、各対基板作業機について、その各対基板作業機に対応して、現時点での作業機工程能力指数CpKM,対限界百分率%CpKが格納される。なお、後に説明する品質低下フラグFQの値も、それらに付随して格納される。なお、図において、〔GPX〕,〔NXT1〕〜〔NXT6〕,〔REF〕は、それぞれ、はんだ印刷機24,部品装着機30の各装着モジュール42,リフロー炉36を示す記号であるが、以下、それらのいずれかを示す場合における対基板作業機の記号として、〔&&&&〕を用いる場合がある。また、図では、工程能力指数CpK,対限界百分率%CpK,品質低下フラグFQについては、具体的な数値に代えて、〔・・・〕,〔**%〕,〔※〕で示されている。ちなみに、品質低下フラグFQについては、品質低下であると判断された場合に“1”が、品質低下ではない場合には、“0”が格納される。さらに、作業機工程能力指数格納テーブルでは、基板ごとの履歴情報として、前回までに行った設定枚数分の基板に対する作業機工程能力指数CpKM が、工程能力指数履歴領域に、現時点での作業機工程能力指数CpKM等に付随して格納される。
【0098】
一方、部位グループ工程能力指数格納テーブルは、図6(b)に示すようなテーブルであり、対基板作業機ごとに、監視対象として特定されている部位グループのみが、リストアップされており、リストアップされた各部位グループに対応して、現時点での部位グループ工程能力指数CpKP,対限界百分率%CpKが表形式で格納される。作業機工程能力指数格納テーブルと同様に、品質低下フラグFQの値も、それらに付随して格納される。なお、図において、部位グループ名は、具体的な記号に代えて、〔###−###〕で示されており、また、作業機工程能力指数格納テーブルと同様に、部位グループ工程能力指数CpKP,対限界百分率%CpK,品質低下フラグFQについても、具体的な数値に代えて、〔・・・〕,〔**%〕,〔※〕で示されている。なお、品質低下フラグFQの扱いも、作業機工程能力指数格納テーブルにおける場合と同様である。
【0099】
[C]部位グループ特定処理
上記作業機品質指標である作業機工程能力指数CpKMは、常時、すべての対基板作業機に対して、監視対象とされるが、上記部位グループ品質指標である部位グループ工程能力指数CpKPは、先に説明したように、常時監視モードと、条件変動依拠監視モードとによって、監視対象として特定される部位グループが異なる。部位グループ特定処理は、モードに応じて、監視対象となる部位グループを特定するための処理である。この部位グループ特定処理は、図7にフローチャートを示す部位グループ特定プログラムが実行されることによって行われる。このプログラムは、いずれかの対基板作業機が1の基板に対して対基板作業を完了したことをトリガとして、その対基板作業について、開始され、その対基板作業を行う対基板作業機が、はんだ印刷機24,部品装着機30,リフロー炉36のいずれであっても、当該プログラムの実行によって、その対基板作業機に応じた処理がなされる。
【0100】
以下に、フローチャートに沿って、当該処理の内容を説明する。まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)において、常時監視モードと、条件変動依拠監視モードとのいずれの下で支援処理が行われているかが判断される。常時監視モード下で支援処理が行われていると判断された場合には、S2において、設定されている部位グループが、監視対象部位グループとして特定され、部位グループ工程能力指数格納テーブルにリストアップされる。具体的には、はんだ印刷機24の場合は、上述の小面積グループ,大面積グループ,近接グループ,最端グループ,中央グループが、部品装着機30の装着モジュール42の場合は、その装着モジュール42が備える部品フィーダ106の各々に対応したすべての上記フィーダグループ,吸着ノズル118,124の各々に対応したすべての上記ノズルグループが、リフロー炉36の場合には、上述の小部品グループ,大部品グループ,最端グループ,中央グループが、それぞれ、監視対象部位グループとして特定され、リストアップされる。
【0101】
それに対し、S1において条件変動依拠監視モード下で支援処理が行われるいると判断された場合には、S3において、条件変動認識処理、つまり、認識すべき作業条件変動(要認識作業条件変動)があったか否かを判断する処理が、実行される。その処理について簡単に説明すれば、対基板作業機から送られてくる上記作業機関連情報に基づいて、その情報を構成する上記処置情報の中に、要認識作業条件変動を引き起こす処置が実際に行われた旨の情報が含まれている場合や、今回対基板作業が行われた基板(今回作業基板)についての上記作業実績情報と前回対基板作業が行われた基板(前回作業基板)についての上記作業実績情報とを比較して、要認識作業条件変動に相当する差異が存在する場合に、作業条件変動があったと認識される。S3において要認識作業条件変動があったと判断された場合には、S4において、その作業条件変動が作業結果へ影響与える影響を把握し易いことに鑑みて、1以上の部位グループが、監視対象部位グループとして特定され、その特定された部位グループが、部位グループ工程能力指数格納テーブルにリストアップされる。具体的には、はんだ印刷機24の場合は、上述の小面積グループ,大面積グループ,近接グループ,最端グループ,中央グループが、リフロー炉36の場合には、上述の小部品グループ,大部品グループ,最端グループ,中央グループが、それぞれ、特定される。なお、本支援装置10では、説明の単純化を目的として、部品装着機30の装着モジュール42において部位グループの品質低下が生じる可能性のある作業条件変動は、部品フィーダ106,部吸着ノズル118,124に関するもの、詳しくは、部品フィーダ106の交換とその部品フィーダ106から供給される部品の追加,交換等との一方や、吸着ノズル118,124の清掃,曲がりの修正,交換等に限定されているものと仮定し、装着モジュール42の場合には、作業条件変動が作業結果に影響を及ぼす可能性のある作業部位からなる部位グループ、つまり、作業条件変動に係る部品フィーダ106若しくは吸着ノズル118,124が部品装着作業に関与した作業部位からなる上記フィーダグループ若しくはノズルグループが、監視対象部位グループとして特定される。
【0102】
一方、S3において、要認識作業条件変動がなかったと判断された場合には、S4はスキップされ、いずれの対基板作業機であっても、いずれの部位グループも監視対象部位グループとしては特定されず、部位グループ工程能力指数格納テーブルにリストアップされない。つまり、条件変動依拠監視モード下で支援処理を行う場合には、作業条件変動がない限り、部位グループの特定は行われないため、常時監視モード下での支援処理に比べ、部位グループの品質指標変動の監視に関する処理に対する負担が軽減されることになる。S4に続いて、若しくは、S4がスキップされた後、S5において、監視対象部位グループとして特定された部位グループの削除処理が行われる。この削除処理は、後に説明する品質指標変動監視処理の一部と考えることもでき、この処理では、監視対象部位として特定されている部位グループについての部位グループ工程能力指数CpKPが、それに対して設定されている上記品質低下限界値CpK0を下回っていなかった場合に、その部位グループが、部位グループ工程能力指数格納テーブルから削除される。削除処理は、要認識作業条件変動がその部位グループの作業品質に影響を及ぼさなかった場合や、後に説明する品質改善処置により、その部位グループの作業品質が改善された場合に、その部位グループを監視対象から除外するための処理である。
【0103】
なお、本支援装置10では、上記S5の削除処理において、品質指標が限界値を下回っていなかったことを条件として、その部位グループを監視対象から除外する処理を行っている。上述のオプションの判断手法の考え方を採用し、上記S5では、その条件と、品質指標の値が要認識作業条件変動前の値を設定差以上下回らないという条件とのいずれかを充足した場合に、監視対象とされていた部位グループを監視対象から除外する処理を行ってもよい。
【0104】
[D]品質指標算出処理
品質指標算出処理は、それぞれが作業機品質指標,部位グループ品質指標である上記作業機工程能力指数CpKM,部位グループ工程能力指数CpKPを算出するための処理である。この処理は、図8にフローチャートを示す品質指標算出プログラムが実行されることによって行われる。このプログラムは、いずれかの検査機、つまり、印刷作業結果検査機26,装着作業結果検査機34,最終検査機38のいずれかによって、1つの基板に対して行われたはんだ印刷機24によるはんだ印刷作業,部品装着機30による部品装着作業,リフロー炉36による部品固定作業のいずれかの作業結果についての検査が終了したことをトリガとして、そのいずれかの対基板作業機による対基板作業の結果について、開始される。ちなみに、装着作業結果検査機34による検査が終了した場合には、それぞれが部品装着機として機能する部品装着機30を構成する6つの装着モジュール42の各々による部品装着作業の結果について、開始される
【0105】
以下に、フローチャートに沿って、当該処理の内容を説明する。まず、S11において、検査機から送信されて当該支援装置10に送信されて情報・データ格納部に格納された検査データを基に、その検査機の検査対象となっている対基板作業を行った対基板作業機(以下、「対象作業機」という場合がある)について、対基板作業が行われた1つの基板に対するその対象作業機の作業機工程能力指数CpKMが算出される。詳しくは、その対基板作業が行われたすべての作業部位の上記各種のズレ量に基づいて、上記手法に従って算出される。算出された作業機工程能力指数CpKMは、上記作業機工程能力指数格納テーブルのその対基板作業機についての現時点での作業機工程能力指数CpKMとして格納される。次いで、S12において、その作業機工程能力指数CpKMについての上記対限界百分率%CpKが算出され、算出された対限界百分率%CpKが、作業機工程能力指数格納テーブルに、作業機工程能力指数CpKMに付随して格納される。続くS13において、作業機工程能力指数CpKMについての履歴更新処理が行われる。この履歴更新処理では、上記工程能力指数履歴領域に格納されている前回までの各基板に対する作業機工程能力指数CpKMが1つずつ後尾に向かって移動させられるとともに、現時点での作業機工程能力指数CpKMとして格納されていた作業機工程能力指数CpKMが、工程能力指数履歴領域の先頭に移動させられる。
【0106】
次いで、S14において、情報・データ格納部に格納された上記検査データに基づいて、場合によっては、前回以前に対基板作業が行われた基板について既に格納されている検査データにも基づいて、対象作業機についての部位グループ工程能力指数格納テーブルにリストアップされている部位グループに対して、部位グループ工程能力指数CpKPが算出され、その算出された部位グループ工程能力指数CpKPが、その部位グループについての現時点での部位グループ工程能力指数CpKPとして、その部位グループ工程能力指数格納テーブルに格納される。続く、S15において、算出されて格納された部位グループ工程能力指数CpKPについての上記対限界百分率%CpKが算出され、算出された対限界百分率%CpKが、部位グループ工程能力指数格納テーブルに、部位グループ工程能力指数CpKPに付随して格納される。なお、先に説明したように、部位グループ工程能力指数CpKPは、算出対象ロットとなるのに必要な上記設定数の作業部位の検査データが必要となることから、場合によっては、前回以前に対基板作業が行われた基板について既に格納されている検査データにも基づいて算出される。また、今回の検査データでは、前回算出された以後、若しくは、新たに監視対象としてリストアップされた以後、対基板作業が行われた作業部位の数が上記設定数に満たない場合には、今回の処理では、部位グループ工程能力指数CpKPおよび対限界百分率%CpKの算出は行われないようにされている。また、S14以下の処理は、部位グループ工程能力指数格納テーブルに監視対象としてリストアップされている部位グループの数に応じて、繰り返し行われ、部位グループが1つもリストアップされていない場合には、行われない。なお、後に説明する品質改善処置の実施が完了した場合には、その完了をトリガとして、その品質改善処置に関連する対基板作業機,部位グループに対して、新たな算出対象ロットについての工程能力指数CpKの算出が開始される。つまり、上記設定数に対する基板のカウント,作業部位のカウントがリセットされるのである。
【0107】
[E]品質指標変動監視処理
品質指標変動監視処理は、上記品質指標算出処理において算出された上記作業機工程能力指数CpKM,部位グループ工程能力指数CpKPの値の変動を監視し、対基板作業の作業品質の低下を発見するための処理である。この品質指標変動監視処理は、品質指標変動監視プログラムが、品質指標算出プログラムが実行された都度、そのプログラムに引き続き実行されることによって行われる。
【0108】
フローチャートに沿って説明すれば、まず、S21において、算出された作業機工程能力指数CpKMが、それに対して設定されている上記品質低下限界値CpK0を下回っているか否かが判断される。下回っている場合には、S22において、対象作業機の作業品質の低下を認識したとして、作業機工程能力指数格納テーブルに格納されている対象作業機の上記品質低下フラグFQの値が“1”とされる。一方で、作業機工程能力指数CpKMが品質低下限界値CpK0を下回っていない場合は、S23において、対象作業機の作業品質の低下を認識しないとして、その品質低下フラグFQの値が“0”とされる。なお、S21において、既に情報・データ格納部に格納されている検査データをも利用し、先に説明したオプションの判断手法に従う判断を行って、対象作業機の作業品質が低下しているか否かを認識するようにしてもよい。
【0109】
続いて、S24において、対象作業機の部位グループについて、算出された部位グループ工程能力指数CpKPが、それに対して設定されている上記品質低下限界値CpK0を下回っているか否かが判断される。下回っている場合には、S25において、その部位グループについての作業品質の低下を認識したとして、対象作業機についての部位グループ工程能力指数格納テーブルに格納されているその部位グループの上記品質低下フラグFQの値が“1”とされる。一方で、部位グループ工程能力指数CpKMが品質低下限界値CpK0を下回っていない場合は、S26において、その部位グループについての作業品質の低下を認識しないとして、その品質低下フラグFQの値が“0”とされる。なお、S24以下の処理は、部位グループ工程能力指数格納テーブルに監視対象としてリストアップされている部位グループの数に応じて、繰り返し行われ、部位グループが1つもリストアップされていない場合には、行われない。
【0110】
[F]品質改善処置決定処理
品質改善処置決定処理は、対基板作業機およびそれにおいて監視対象とされている部位グループについての作業品質が低下した場合に、その品質を改善するための品質改善処置を決定するための処理である。この品質改善処置決定処理は、上記品質指標変動監視処理が実行された都度行われる。詳しく説明すれば、作業機工程能力指数格納テーブルにおいて、対象作業機の上記品質低下フラグFQの値が“1”とされている場合に、情報・データ格納部に、その対基板作業機についての品質改善処置テーブルが設定され、また、対象作業機についての部位グループ工程能力指数格納テーブルにおいて、上記品質低下フラグFQの値が“1”とされている部位グループが存在する場合に、情報・データ格納部に、その存在する部位グループごとに、品質改善処置テーブルが設定される。なお、対象作業機の品質低下フラグFQの値が“0”となっている場合、部位グループの品質低下フラグFQの値が“0”となっている場合において、対象作業機,その部位グループについての品質改善処置テーブルが既に設定されているときには、その設定されている品質改善処置テーブルは、情報・データ格納部から削除される。
【0111】
品質改善処置テーブルは、図10に示すように、いくつかの品質改善処置がリストアップされたテーブルであり(1つの品質改善処置しかリストアップされない場合もあり、1つの品質改善処置もリストアップされない場合もある)、対基板作業機についての品質改善処置テーブルの場合には、その対基板作業機に、部位グループの品質改善処置テーブルの場合には、その部位グループおよびその部位グループが存在する対基板作業機に、それぞれ、関連付けられている。図に示すものは、部位グループの品質改善処置テーブルである。情報・データ格納部には、対基板作業機の種類,部位グループの種類にごとに、その種類の対基板作業機,部位グループに好適な品質改善処置がリストアップされたマスターテーブルが格納されており、設定される品質改善処置テーブルには、対象作業機,対象となる部位グループに応じて、対応する種類のマスタテーブルにリストアップされている品質改善処置がリストアップされる。なお、リストアップされた品質改善処置の順序は、その処置の実施容易さ,その処置による効果の高さ等を考慮して、マスターテーブルにおいて、任意に設定することが可能である。
【0112】
品質改善処置決定処理に関連して、品質改善処置テーブルに対して、以下のような更新処置が行われる。品質改善処置テーブルには、リストアップされた品質改善処置の各々に付随して、処置選択フラグFS,処置実施完了フラグFCの各々の値が格納される。図では、それらの値は、〔※〕で示されているが、それらの値は、初期には“0”とされる。リストアップされた品質改善のいずれを実施するかは、オペレータの選択に委ねられており、後に説明するオペレータの操作に基づいて、いずれかの品質改善処置が選択された場合に、その処置に対応する処置選択フラグFSの値が“1”とされる。また、その選択された品質改善処置の実施が完了した場合に、処置実施完了フラグFCの値が“1”とされる。なお、いずれかの品質改善処置が選択された場合、既にいずれか別の品質改善措置が選択されているときには、その別の品質改善処置は、品質改善処置テーブルから削除される。また、品質改善処置テーブルには、2つの工程能力指数CpK、詳しくは、第1工程能力指数CpK,第2工程能力指数CpKが、第1工程能力指数CpKは、品質改善処置テーブルの対象となる対基板作業機若しくは部位グループの現時点での工程能力指数CpKが格納される。具体的には、現時点で、作業機工程能力指数格納テーブルに格納されている作業機工程能力指数CpKM、若しくは、部位グループ工程能力格納テーブルに格納されている部位グループ工程能力指数CpKMの値が、格納される。それに対して、第2工程能力指数CpKは、品質改善処置の実施が完了したことを、つまり、処置実施完了フラグFCの値が“1”とされたことをトリガとして、第1工程能力指数CpKの値が移される。つまり、品質改善処置との関係で言えば、第2工程能力指数CpKは、品質改善処置の実施前の工程能力指数CpKを、第1工程能力指数CpKは、品質改善処置の実施が完了後の工程能力指数CpKを表すものとなっている。
【0113】
[G]表示処理
本支援装置10は、表示装置として機能する携帯端末49に、詳しくは、それのディスプレイに、支援処理に関する情報を表示させる。オペレータは、その表示された情報に基づいて、対基板作業の作業品質を認識し、品質が低下している場合に、種々の品質改善処置の実施を図る。表示処理は、この携帯端末49へ支援処理に関する情報を表示させるための処理、詳しく言えば、携帯端末49の操作に従って、携帯端末49の表示画面を形成するためのデータ(以下、「画面用データ」という場合がある)を作成して送信する処理を行う。携帯端末49には、後に説明するいくつかの画面を表示可能とされている。携帯端末49のディスプレイは、タッチパネルとなっており、そのディスプレイから画面の切り替え操作が可能である。いくつかの画面のいずれかを表示させる旨の操作がなされた場合に、その操作情報が、支援装置10に送信され、その送信された操作情報に応じた画面を表示させるべく、支援装置10は、その画面に対応した画面用データを作成し、携帯端末49に送信する。携帯端末49は、その送信されてきた画面用データに基づいて、操作が意図するその画面をディスプレイに表示させるのである。以下に、携帯端末49に表示されるいくつかの画面の各々について、その各々の画面の表示内容および画面用データについて説明する。
【0114】
i)作業機品質表示画面
携帯端末49には、表示される情報の異なる各種の画面が設定されている。その画面の1つが、図11(a)に示す作業機品質表示画面である。この画面には、当該電気回路製造ライン20に配備されている各対基板作業機の品質指標等が表示される。この画面には、はんだ印刷機24,部品装着機30の6つの装着モジュール42,リフロー炉36に対応して、8段の表示領域が設けられている。最上段の表示領域から順に、当該電気回路製造ライン20における基板搬送方向に従って、各対基板作業機に領域が割り当てられている。各表示領域には、画面左側から順に、対基板作業機の種別を示すアイコン,対基板作業機名(ID),作業機工程能力指数CpKMおよび対限界百分率%CpKのグラフ,作業機工程能力指数CpKMの変動グラフが表示されている。作業機品質表示画面におけるそれらのグラフ(グラフィック表示の一種である)は、オペレータにとって、対基板作業機の作業品質を感覚的に把握するのに役立っている。
【0115】
作業機品質表示画面を表示させるための画面用データは、先に説明した作業機工程指数格納テーブルのデータに基づいている。補足すれば、作業機工程能力指数CpKMの下に表示されている対限界百分率%CpKは、帯グラフで表示されており、また、作業機工程能力指数CpKMの変化のグラフは、作業機工程指数格納テーブルの作業機工程能力指数CpKMおよび工程能力指標履歴領域のデータに基づく折れ線グラフであり、対基板作業機によって対基板作業が行われた回路基板の数の進捗に伴う品質指標の変動を示すものとなっている。なお、作業機工程指数格納テーブルに格納されている品質低下フラグFQの値が“1”になっている対基板作業機に対応する表示領域は、それの背景色が他の表示領域の背景色とは異なるようにされる。ちなみに、図では、部品装着機30の2番目の装着モジュール42である〔NXT2〕に対応する表示領域の背景色が、他の表示領域と異なっており、そのことから、〔NXT2〕自体の作業品質が相当に低下していることがうかがえる。
【0116】
ii)部位グループ品質表示画面
いずれかの表示領域を選択して画面を切り替える操作を行うことで、その表示領域に対応する対基板作業機についての部位グループ品質表示画面が表示される。この部位グループ品質表示画面は、図11(b)に示すようなものであり、最上段に、対基板作業機それ自体についての表示領域が設けられ、2段目から下に、その対基板作業機において監視対象部位グループとして特定されたいくつかの部位グループについての表示領域が設定される。対基板作業機の表示領域には、左から順に、対基板作業機の種類を示すアイコン,対基板作業機名(ID),作業機工程能力指数CpKMおよび対限界百分率%CpKのグラフが表示される。ここまでは、作業機品質表示画面の各表示領域と同じ表示内容であるが、作業機工程能力指数CpKMおよび対限界百分率%CpKのグラフの右側に、品質改善処置選択インジケータが、さらにそれの右側に品質改善処置完了インジケータが、表示される。一方、部位グループについての表示領域の各々には、対基板作業機についての表示領域と同様に、左から順に、対基板作業機の種類を示すアイコン,部位グループ名(ID),部位グループ工程能力指数CpKPおよび対限界百分率%CpKのグラフ,品質改善処置選択インジケータ,品質改善処置完了インジケータが表示される。
【0117】
対基板作業機の表示領域に表示させるための画面データは、主に、作業機工程能力指標格納テーブルのデータに基づいている。その作業機工程能力指標格納テーブルにおいて、品質低下フラグFQの値が“1”となっている対基板作業機の場合、その表示領域は、作業機品質表示画面と同様に、背景色が変更される。
【0118】
部位グループに表示させるための画面用データは、主に、上述の部位グループ工程能力指標格納テーブルのデータに基づいている。しかしながら、部位グループの表示領域の設定が、先に説明した常時監視モードと条件変動依拠監視モードとのいずれの下で支援処置を行っているかによって、異なる。常時監視モード下では、品質低下フラグFQの値が“1”になっている部位部ループに対応して表示領域が設定される。つまり、ある程度作業品質が低下している部位グループだけについて、品質に関する情報が表示される。ちなみに、その場合の表示は、それらの部位グループが品質指標の一種である対限界百分率%CpKの低い順に上から並ぶようにされる。つまり、部位グループについての画面用データは、対限界百分率%CpKに従って並び換えられて作成されるのである。一方、条件変動依拠監視モード下では、品質低下フラグFQの値に拘わらず、監視対象部位グループとして部位グループ工程能力指標格納テーブルにリストアップされている部位グループが、すべて表示され、品質低下フラグFQの値が“1”となっている部位グループ、つまり、作業品質がある程度低下している部位グループについての表示領域は、作業機品質表示画面と同様に、背景色が変更される。ちなみに、条件変動依拠監視モード下では、条件変動に関連した若しくは条件変動の品質への影響を把握し易い部位グループしか監視対象とされていないことから、多くの場合、相当に少ない数の表示領域しか必要とされない。なお、部位グループの表示領域が存在する領域は、スクロール表示可能となっとり、監視対象とされている部位グループの数が多い場合であってもそれら部位グループの品質情報をすべて認識することができる。
【0119】
上述のように、部位グループ品質表示画面では、対基板作業機自体の品質指標と、その対基板作業機において監視対象とされた部位グループの品質指標とが、一画面内において表示される。また、常時監視モード下では、ある程度の作業品質の低下が認められた部位グループの品質指標だけが、作業品質の低下の程度の高低に従って配列されて表示され、条件変動依拠監視モード下では、要認識作業条件変動が作業品質に影響を及ぼす可能性のある部位グループの品質指標だけが表示されている。このような表示により、オペレータは、対基板作業の作業品質の低下要因を、容易に推測することができる。
【0120】
品質改善処置選択インジケータ,品質改善処置完了インジケータについての画面用データは、上述の品質改善処置テーブルの処置選択フラグFS,処置実施完了フラグFCに基づいている。対基板作業機,それついての部位グループのいずれかにおいて、品質改善処置が選択されている場合、そのいずれかの処置選択フラグFSの値が“1”となっており、そのときに、品質改善処置が選択されている対基板作業機,部位グループについての品質改善処置選択インジケータが、その選択を示す表示とされる。また、同様に、対基板作業機,それついての部位グループのいずれかにおいて、品質改善処置の実施が完了している場合、そのいずれかの処置実施完了フラグFCの値が“1”となっており、そのときに、品質改善処置の実施が完了している対基板作業機,部位グループについての品質改善処置完了インジケータが、その完了を示す表示とされる。ちなみに、図では、1番上の部位グループの品質改善処置選択インジケータ,品質改善処置完了インジケータが、それぞれ、選択,完了を示す表示となっており、また、上から2番目の部位グループの品質改善処置選択インジケータが、選択を示す表示となっている。
【0121】
iii)品質改善処置画面
品質改善処置画面は、作業品質が低下している対基板作業、若しくは、部位グループに対しての品質改善処置を選択する際や、その選択された品質改善処置を実施する、若しくは、実施が完了した際に表示される画面である。品質改善処置画面は、部位グループ品質表示画面において、品質低下が生じている対基板作業機、若しくは、部位グループのいずれかを選択して、画面を切り替える操作を行うことで、表示される。
【0122】
品質改善処置画面は、図11(c)に示すような画面であり、この画面を表示させるための画面用データは、品質改善処置テーブルに格納されているデータに基づいている。品質改善処置画面における最上段の表示領域には、品質改善処置の対象となる対基板作業機,若しくは、部位グループの種類を示すアイコン,対基板作業機名(ID)、若しくは、部位グループ名(ID)が表示され、その右側において、2つの工程能力指数CpKが、上下に並んで表示される。2つの程能力指数CpKの上方側のものは、先に説明した第1工程能力指数であり、下方側のものは、先に説明した第2工程能力指数である。2段目以降には、品質改善処置テーブルに格納されているいくつかの品質改善処置が列挙され、各段において、品質改善処置の右側には、先に説明した品質改善処置選択インジケータ,品質改善処置完了インジケータが表示される。
【0123】
オペレータは、品質改善処置画面において、実施すべきであると考える品質改善処置を選択する。この選択は、品質改善処置選択インジケータをタッチ操作することによって行われる。いずれかの品質改善処置が選択された場合に、その品質改善処置に対応して品質改善処置テーブルに格納されている処置選択フラグFSの値が“1”とされ、それに伴って、品質改善処置選択インジケータが、選択されたことを示す表示とされる。選択された品質改善処置が、対基板作業機が自動的に実施可能である場合には、支援装置10から、その対基板作業機に、実施指令が発令され、その対基板作業機は、自動でその品質改善処置を実施する。一方、手動で行う品質改善処置である場合には、オペレータ自らが、対基板作業機に対してその品質改善処置を行う。その品質改善処置の実施が完了した際、その品質改善処置が自動で実施されたものである場合には、その実施の完了情報が対基板作業から支援装置10に送られる。その情報を基に、品質改善処置テーブルに格納されている処置実施完了フラグFCの値が“1”とされ、品質改善処置完了インジケータが、実施の完了を示す表示とされる。一方、品質改善処置が手動で実施されたものである場合には、オペレータが、品質改善処置完了インジケータをタッチ操作することで、実施の完了情報が携帯端末49から支援装置10に送信される。その情報を基に、品質改善処置テーブルに格納されている処置実施完了フラグFCの値が“1”とされ、品質改善処置完了インジケータが、実施の完了を示す表示とされる。
【0124】
なお、既に、列挙されたいくつかの品質改善処置のうちの1つが選択されている場合において、別の1つが選択されたときには、選択されていた品質改善処置の実施を断念した、若しくは、選択されていた品質改善処置による効果が期待したものではなかったと推認することができるため、その選択されていた品質改善処置は、品質改善処置テーブルから削除される。
【0125】
上述のように、品質改善処置画面には、品質改善処置の対象となる対基板作業機、若しくは、部位グループの第1工程能力指数および第2工程能力指数が表示される。品質改善処置の実施との関係では、先に説明したように、第1工程能力指数は、品質改善処置の実施完了後の作業品質を示す品質指標となっており、また、第2工程能力指数は、品質改善処置の実施完了前の作業品質を示す品質指標となっている。したがって、オペレータは品質改善処置画面の表示を参照することで、実施された品質改善処置による品質改善の効果を認識することが可能となる。
【0126】
iv)表示画面の変形例
本支援装置10の表示処理によれば、上述したように、作業機品質表示画面において、8つの対基板作業機が製造ライン20内の配置に従って上から順に並んで表示されるが、それらが作業機工程能力指数CpKM若しくは対限界百分率%CpKの低い順に並ぶように表示させる表示処理を行うようにしてもよい。
【0127】
また、本支援装置10の表示処理によれば、上述したように、作業機品質表示画面,部位グループ品質表示画面が、それぞれ表示されるが、それら2つの画面に変えて、それら2つの画面が複合されたような画面を表示させる表示処理を行うようにしてもよい。その画面は、例えば、1つの画面を、上下若しくは左右に、2つの領域に分割し、それらの一方の領域に、各対基板作業機の品質指標が表示される領域が並び、他方の領域に、監視対象とされた部位グループの各々の品質指標が表示される領域が並ぶような画面とすることができる。その場合、各対基板作業機に対応した領域、若しくは、各部位グループに対応した領域が、1つ画面を分割した2つの領域の片方に収まらないときには、その片方の領域内において、各対基板作業機に対応した領域、若しくは、各部位グループに対応した領域がスクロールできるようにすればよい。
【0128】
さらに、作業機品質表示画面,部位グループ品質表示画面,品質改善処置画面の他に、オペレータによる情報入力を受け付けるための画面を表示させるようにしてもよい。例えば、オペレータが上記品質改善処置画面に基づいて何らかの品質改善処置を実施した場合、具体的には、上記品質改善処置完了インジケータをタッチ操作したような場合等に、その品質改善処置に関連するコメントを入力するための画面が表示されるようしてもよい。このコメントは、当該製造ライン10を管理する上で重要な情報となるため、そのコメントの内容は、品質改善処置の実施の事実とともに、情報・データ格納部に格納されるようにしてもよい。
【0129】
[H]電気回路製造支援装置の機能構成
以上説明した支援処理を行う支援装置10は、その支援処理を構成する種々の処理に対応して、種々の機能部を有していると考えることが可能である。具体的には、図12に示すような機能構成を有していると考えることができる。詳しく説明すれば、支援装置10は、それぞれが内部バス150によって互いに繋がる仮想的な機能部である情報・データ入手部152,条件変動認識部154を内部に含む部位グループ特定部156,品質指標算出部158,品質指標変動監視部160,品質改善処置決定部162,表示処理部164,対携帯端末通信部166,情報・データ格納部168を有している。そして、支援装置10は、LAN48を介して、それぞれが対基板作業機であるはんだ印刷機24,部品装着機30,リフロー炉36と、また、印刷作業結果検査機26,装着作業結果検査機34,最終検査機38と繋がっている。さらに、携帯端末49とも無線通信で繋がっている。
【0130】
各機能部について説明すれば、対基板作業機および検査機から、作業実績情報,処置情報等の上記作業機関連情報、検査データ等を入手する機能を有する。条件変動認識部154は、上記作業機関連情報に基づいて作業条件変動を認識する機能を、部位部ループ特定部156は、条件変動認識部154によって認識された作業条件変動,予めなされている設定等に基づいて、監視対象となる作業部位のグループを特定する機能を、品質指標算出部158は、各対基板作業機,部位部ループ特定部156によって監視対象として特定された部位グループについての品質指標を算出する機能を、品質指標変動認識部160は、品質指標算出部158よって算出され品質指標の変動を監視する機能を、品質改善処置決定部162は、作業品質の低下に対応してその作業品質の改善に有効な品質改善処置を決定する機能を、表示処理部164は、表示装置としての携帯端末49に表示させる各種の画面に対応した画面用データを作成する処理、簡単に言えば、携帯端末49による画面表示を制御する機能を、携帯端末通信部166は、携帯端末49に対して行われた操作に関するデータ,上記画面用データ等を、携帯端末49との間において、無線通信する通機能を、情報・データ格納部164は、上記作業機関連情報,上記検査データを始め、先に説明した各種の情報,データ,テーブル,各種の設定等を格納する機能を、それぞれ有している。
【0131】
先に説明した処理との関係で言えば、部位グループ特定処理を行う機能部が、部位グループ特定部156に、部位グループ特定処理のうちS3の条件変動認識処理を行う部分が、条件変動認識部154に、品質指標算出処理を行う機能部が、品質指標算出部158に、品質指標変動監視処理を行う機能部が、品質指標変動監視160に、品質改善処置決定処理を行う機能部が、品質改善処置決定部162に、表示処理を行う機能部が、表示処理部164に、それぞれ相当する。
【0132】
≪3.電気回路製造支援装置による支援処理の具体例≫
次に、支援装置10によって行う支援処理のいくつか具体例を、図11に示す作業機品質表示画面,部位グループ品質表示画面,品質改善処置画面の表示内容を中心に説明する。なお、具体例は、はんだ印刷機24に対する支援処理と、部品装着機30に対する支援処理とに関するものを挙げ、それらの説明は、区別して行う。いずれの対基板作業機に対する支援処理も。常時監視モード下での処理と、条件変動依拠監視モード下での処理とでは異なり、その両方について説明する。ちなみに、それら2つのモードに関して言えば、電気回路製造ライン20を構成するすべての対基板作業機に対して、いずれか1つのモード下で支援処理を行わなければならないわけではなく、対基板作業機ごとに、いずれか1つのモードを選択して、その選択されたモード下での支援処理が可能とされている。
【0133】
[A]はんだ印刷機に対する支援処理の具体例
i)常時監視モード下での支援処理
常時監視モード下での支援処理では、先に説明した小面積グループ,大面積グループ,近接グループ,最端グループ,中央グループのすべてが監視対象部位グループとして特定され、それらすべてについての品質指標の変動が監視される。オペレータは、作業機品質表示画面を見て、はんだ印刷機24の品質がある程度低下していると判断した場合は、はんだ印刷機24の部位グループ品質表示画面に切り替える。部位グループ品質表示画面には、品質指標の値が設定程度を下回った部位グループについての品質指標が、作業品質の低い順に並べられて表示されるため、その表示によって、はんだ印刷機24の品質低下の要因を容易に推測することができる。
【0134】
例えば、小面積グループの品質指標が大きく低下している場合には、マスクの詰まり、はんだの粘性が高くなりすぎていること等の要因が考えられる。小面積グループの作業品質を改善させるべく、小面積グループを選択して品質改善処置画面に切り替えると、その画面に、小面積グループの作業品質を改善させるための処置が、列挙して表示される。具体的には、例えば、『マスクのクリーニング』,『印刷機内温度を下降させる』等の処置が列挙される。オペレータは、例えば、品質改善処置画面において、『マスクのクリーニング』を選択する操作を行うことで、マスクのクリーニングが自動的に実施され、その実施の完了が品質改善処置画面に表示される。マスクのクリーニングによって、小面積グループの品質指標が設定程度を超えて向上した場合には、マスクのクリーニングによる品質改善の効果があったと判断され、部位グループ品質表示画面から、小面積グループについての表示領域は削除され、小面積グループについての品質改善処置画面も表示されなくなる。
【0135】
一方、マスクのクリーニングによっては、品質指標の向上が見られない場合、オペレータは、品質改善処置画面に表示される小面積グループのクリーニング実施前と実施後の品質指標を比較することにより、認識することができる。その場合、オペレータは、次の品質改善処置として、『印刷機内温度を下降させる』を選択する。この選択により、『マスクのクリーニング』は、品質改善処置画面から削除されるともに、はんだ印刷機24のエアコンディショナ86が自動で起動されて、はんだ印刷機24内の温度が設定温度上昇させられる。その温度の上昇をもって品質改善処置の実施が完了したものとされる。はんだ印刷機24内の温度を上げたことによって、小面積グループについての品質指標が設定程度を超えて向上した場合には、温度上昇による品質改善の効果があったと判断される。品質改善効果が見られない場合には、オペレータは、品質改善処置画面を見て、順次、別の品質改善処置の実施を図ることができる。
【0136】
また、例えば、大面積グループの品質指標が大きく低下している場合には、マスク上に供給されているはんだ量の不足、スキージの移動速度が速すぎる等の要因が考えられる。大面積グループの作業品質を改善させるべく、大面積グループを選択して品質改善処置画面に切り替えると、その画面に、大面積グループの作業品質を改善させるための処置が、列挙して表示される。具体的には、例えば、『はんだの供給』,『スキージの移動速度の減少』等の処置が列挙される。オペレータは、例えば、品質改善処置画面において、『はんだ供給』を選択する操作を行い、自身で、はんだを追加供給する。はんだの供給の完了後、品質改善処置画面において、それの実施完了の旨の操作を行うことで、その旨が品質改善処置画面に表示される。はんだの供給によって、大面積グループの品質指標が設定程度を超えて向上した場合には、はんだの供給による品質改善の効果があったと判断され、部位グループ品質表示画面から、大面積グループについての表示領域は削除され、大面積グループについての品質改善処置画面も表示されなくなる。一方、はんだの供給によっては、品質指標の向上が見られない場合、オペレータは、先に説明した小面積グループの作業品質の改善の場合と同様に、別の品質改善処置である『スキージの移動速度の減少』等を順次選択し、順次、別の品質改善処置の実施を図ることができる。
【0137】
ii)条件変動依拠監視モード下での支援処理
条件変動依拠監視モード下での支援処理では、要認識作業条件変動が認識された場合に、先に説明したすべての部位グループが監視対象部位グループとして特定され、それらすべてについての品質指標の変動が監視される。その場合、部位グループ品質表示画面に、それらの部位グループについての品質指標が表示される。オペレータは、その部位グループ品質表示画面を見て、それらの部位グループについて、作業品質の低下が生じているか否かを認識する。
【0138】
例えば、要認識作業条件変動を引き起こす処置として、マスクのドライクリーニングが行われたとする。上記の部位グループのいずれかの品質指標が設定程度を下回った場合には、オペレータは、その部位グループに関する表示の変化により、その事実を認識する。オペレータは、その部位グループを選択して、品質改善処置画面を表示させると、その部位グループに関連した品質改善処置が列挙される。列挙された品質改善処置の中に、例えば、『ウェットクリーニング』,『ウェット・バキュームクリーニング』,『マスクの交換』等の品質改善処置が含まれている場合、オペレータは、まず、『ウェットクリーニング』を選択し、それの実施を図る。以後、常時監視モード下での支援処理の場合と同様に、品質改善処置画面を見て、その実施による品質改善の効果を確認しつつ、品質改善の効果が見られない場合には、順次、品質改善処置画面を操作しつつ、『ウェット・バキュームクリーニング』,『マスクの交換』等の別の品質改善処置の実施を図ることができる。
【0139】
[B]部品装着機に対する支援処理の具体例
i)常時監視モードの下での支援処理
先に説明したように、それぞれが作業用デバイスである部品フィーダ106,吸着ノズル118,124に対応して、複数のフィーダグループ,複数のノズルグループが設定されており、常時監視モード下での支援処理では、それら複数のフィーダグループ,複数のノズルグループのすべてが監視対象部位グループとして特定され、それらすべてについての品質指標の変動が監視される。オペレータは、作業機品質表示画面を見て、いずれかの装着モジュール42の品質指標がある程度低下していると判断した場合は、その装着モジュール42についての部位グループ品質表示画面に切り替える。部位グループ品質表示画面には、品質指標の値が設定程度を下回ったフィーダグループ,ノズルグループの品質指標が表示され、オペレータは、その部位グループ品質表示画面を見ることにより、その装着モジュール42の品質指標の低下の要因が、いずれの部品フィーダ106に関するものであるか、或いは、いずれの吸着ノズル118,124に関するものであるかを、容易に認識することができる。つまり、いずれの作業用デバイスが関係する品質の低下であるかを容易に判断することができるのである。
【0140】
例えば、いずれかのフィーダグループの品質指標が大きく低下している場合には、その部位グループを構成する作業部位としての部品とその部品を供給する部品フィーダ106との少なくとも一方に、品質低下の要因があると考えられる。そのフィーダグループの作業品質を改善させるべく、そのフィーダグループを選択して品質改善処置画面に切り替えると、その画面に、フィーダグループの作業品質を改善させるための処置が、列挙して表示される。具体的には、例えば、『部品の交換』,『フィーダの交換』,『部品およびフィーダの両方の交換』等の品質改善処置が列挙される。オペレータは、例えば、品質改善処置画面において、『部品の交換』を選択する操作を行い、自身で、部品を交換する。部品交換の完了後、品質改善処置画面において、それの実施完了の旨の操作を行うことで、その旨が品質改善処置画面に表示される。そのフィーダグループの品質指標が設定程度を超えて向上した場合には、部品の交換による品質改善の効果があったと判断され、部位グループ品質表示画面から、そのフィーダグループについての表示領域は削除され、そのフィーダグループについての品質改善処置画面も表示されなくなる。一方、部品の供給によっては、品質指標の向上が見られない場合、オペレータは、先に説明したはんだ印刷機における支援処理の場合と同様に、別の品質改善処置である『フィーダの交換』,『部品およびフィーダの両方の交換』等を順次選択して、順次、その選択された品質改善処置の実施を図ることができる。
【0141】
また、例えば、いずれかのノズルグループの品質指標が大きく低下している場合には、その部位グループを構成する作業部位である部品を吸着保持した吸着ノズル118,124に、品質低下の要因があると考えられる。そのノズルグループの作業品質を改善させるべく、そのノズルグループを選択して品質改善処置画面に切り替えると、その画面に、のノズルグループの作業品質を改善させるための処置が、列挙して表示される。具体的には、例えば、『吸着ノズルの清掃』,『吸着ノズルの曲がりの修正』,『吸着ノズルの交換』等の品質改善処置が列挙される。オペレータは、例えば、品質改善処置画面において、『吸着ノズルの清掃』を選択する操作を行うことで、装着モジュール42は、ノズルクリーナ128を利用して、自動で、吸着ノズル118,124を清掃する。吸着ノズル118,124が清掃された旨の情報が装着モジュール42から支援装置10に送信されることで、品質改善処置画面において、それの実施完了の旨が表示される。その完了の後、そのノズルグループの品質指標が設定程度を超えて向上した場合には、吸着ノズル118,124の清掃による品質改善の効果があったと判断され、部位グループ品質表示画面から、そのノズルグループについての表示領域は削除され、そのノズルグループについての品質改善処置画面も表示されなくなる。一方、吸着ノズル118,124の清掃によっては、品質指標の向上が見られない場合、オペレータは、先に説明したフィーダグループの品質低下の場合と同様に、別の品質改善処置である『吸着ノズルの曲がりの修正』,『吸着ノズルの交換』等を選択して、順次、その選択された品質改善処置の実施を図ることができる。
【0142】
ii)条件変動依拠監視モード下での支援処理
条件変動依拠監視モード下での支援処理では、要認識作業条件変動が認識された場合に、具体的に言えば、ある部品フィーダ106とその部品フィーダ106から供給される部品との少なくとも一方が交換された場合、若しくは、ある吸着ノズル118,124に対して清掃,曲がりの修正,交換等が行われた場合に、その部品フィーダ106から供給されて装着される部品についての部位グループ、若しくは、その吸着ノズル118,124によって装着される部品についての部位グループが、監視対象部位グループとして特定され、その部位グループの品質指標の変動が監視される。その場合、部位グループ品質表示画面に、その部位グループについての品質指標が表示される。オペレータは、その部位グループ品質表示画面を見て、それらの部位グループについて、作業品質の低下が生じているか否かを認識する。
【0143】
作業品質の低下が生じなかった場合には、監視対象とされた部品グループは、監視対象から外される。一方、作業品質の低下が生じている場合には、先に説明した常時監視モードの下での支援処理、詳しく言えば、いずれかのフィーダグループの品質指標が低下している場合、若しくは、いずれかのノズルグループの品質指標が低下している場合における携帯端末49の品質改善処置画面と同様の画面が表示がなされ、オペレータは、その画面に対する操作を行って、順次、適切な品質改善処置の実施を図ることができる。
【符号の説明】
【0144】
10:電気回路製造支援装置〔対基板作業支援装置〕 20:電気回路製造ライン 24:はんだ印刷機〔対基板作業機〕 26:印刷作業結果検査機 30:部品装着機〔対基板作業機〕 36:リフロー炉〔対基板作業機〕 38:最終検査機 42:装着モジュール〔対基板作業機〕 106:部品フィーダ〔作業用デバイス〕 49:携帯端末〔表示装置〕 118:吸着ノズル,124:吸着ノズル〔部品保持デバイス〕 152:情報・データ入手部 154:条件変動認識部 156:部位グループ特定部 158:品質指標算出部 160:品質指標変動監視部 162:品質改善処置決定部 164:表示処理部 166:対携帯端末通信部 168:情報・データ格納部 CpK:工程能力指数〔品質指標〕 CpKM:作業機工程能力指数〔作業機品質指標〕 CpKP:部位グループ工程能力指数〔部位グループ品質指標〕 %CpK:対限界百分率〔品質指標〕


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路を構成する回路基板に対して対基板作業機によって行われる対基板作業を支援するための対基板作業支援装置であって、
前記対基板作業機によって行われた対基板作業の作業結果についての検査データを基に、その対基板作業の品質を示す品質指標として、対基板作業機自体の前記品質指標である作業機品質指標と、1以上の作業部位からなる部位グループについての前記品質指標である部位グループ品質指標とを算出する品質指標算出部を備えた対基板作業支援装置。
【請求項2】
当該対基板作業支援装置が、さらに、前記品質指標算出部によって算出された前記品質指標を表示装置に表示させる表示処理部を備え、
その表示処理部が、前記作業機品質指標と前記部位グループ品質指標との両者を表示させるように構成された請求項1に記載の対基板作業支援装置。
【請求項3】
前記表示処理部が、前記作業機品質指標と前記部位グループ品質指標とを、それらが一画面に含まれるように表示させるように構成された請求項2に記載の対基板作業支援装置。
【請求項4】
当該対基板作業支援装置が、さらに、前記品質指標算出部によって算出された前記品質指標の変動を監視する品質指標変動監視部を備え、
前記表示処理部が、前記品質指標を、前記品質指標変動監視部によってそれの値が設定程度を下回ったと認識されたことを条件に表示させるように構成された請求項2または請求項3に記載の対基板作業支援装置。
【請求項5】
前記表示処理部が、前記品質指標算出部によって算出された前記品質指標を、前記対基板作業機によって対基板作業が行われた回路基板の数の進捗に伴う変動を示すグラフィック表示にて表示させるように構成された請求項2ないし請求項4のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【請求項6】
当該対基板作業支援装置が、さらに、前記部位グループを特定する部位グループ特定部を有し、
前記品質指標算出部が、前記部位グループ特定部によって特定された前記部位グループについての前記品質指標を、前記部位グループ品質指標として算出するように構成された請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【請求項7】
当該対基板作業支援装置が、さらに、前記対基板作業機による対基板作業の作業条件の変動である作業条件変動を認識する条件変動認識部を備え、
前記部位グループ特定部が、その条件変動認識部によって認識された前記作業条件変動が作業結果に影響を及ぼす可能性のある1以上の作業部位からなる部位グループを、前記部位グループとして認定するように構成された請求項6に記載の対基板作業支援装置。
【請求項8】
前記品質指標算出部が、前記品質指標として、工程能力指数を算出するように構成された請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【請求項9】
前記対基板作業機が、前記対基板作業として回路基板に電気部品を装着する部品装着作業を実行する部品装着機であり、装着された電気部品の各々を前記作業部位として扱う請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。
【請求項10】
前記対基板作業機が、前記対基板作業として回路基板にクリームはんだを印刷するはんだ印刷作業を実行するはんだ印刷機であり、印刷されたはんだランドの各々を前記作業部位として扱う請求項1ないし請求項8ののいずれか1つに記載の対基板作業支援装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−105897(P2013−105897A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248812(P2011−248812)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】