説明

射出成形システム、配管部材

【課題】加熱・冷却を繰り返しても、配管のフランジ部と管状部との継ぎ目の部分に亀裂が生じるのを防ぎ、信頼性を高めることのできる射出成形システム、スリーブ、配管部材を提供することを目的とする。
【解決手段】スリーブ140Aを配管部材110、120の連結部に挿入配置することで、フランジ部112、122と管状体111、121の継ぎ目近傍の内側にスリーブ140Aを位置させて、スリーブ140Aにより断熱効果を発揮させる。スリーブ140Aは、配管部材110、120とは線膨張係数が異なり、熱伝導率がより低い材料で形成する。スリーブ140Aの筒状部141の外径を管状体111、121およびフランジ部112、122の内径よりも小さく設定し、筒状部141の外周面と管状体111、121およびフランジ部112、122の内周面との間に隙間200を形成するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒体として水や蒸気を用いて金型を加熱・冷却しながら射出成形を行う射出成形システム、およびそれに用いる配管部材に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の射出充填工程において、射出装置から金型のキャビティ内に充填された溶融樹脂の表面が急速に固化する。この際、成形品に対する金型のキャビティ面の転写が不十分となったり、また、成形品表面に、ウエルドライン、シルバー(銀状)と呼ばれる欠陥が生じたりすることがある。
これらを防止し成形品の品質を向上させるために、射出充填、保圧、冷却、型開閉といった一連の工程において、金型の媒体通路に、樹脂の充填を開始するまでの間に加熱媒体を供給して金型を加熱し、樹脂の充填開始後の所定時間経過後から型開きまでの間に冷却媒体を供給して金型を冷却する成形方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。これにより、予め樹脂の熱変形温度以上の温度まで加熱した金型に溶融樹脂を充填して樹脂表面の固化を遅らせ、樹脂の充填後、金型を樹脂のガラス転移温度、又は、熱変形温度以下まで冷却してから型開きを行うことができ、上記のような欠陥の発生を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−110905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したような加熱・冷却機構を備えた射出成形機においては、金型を経た加熱媒体および冷却媒体は、金型から戻り配管を経て、冷却用媒体供給装置へと循環される。この戻り配管において、配管同士を接続するフランジ部と配管の管状部との継ぎ目の部分などに温度変化による熱応力が発生し、場合によっては亀裂が生じ、加熱媒体や冷却媒体が漏れてしまうという問題が存在する。加熱媒体や冷熱媒体が漏れてしまうと、安定した成形運転を阻害するとともに設備のさびや故障の発生、特に高温の媒体が漏れた場合には周囲への安全性に大きな影響を与える。
【0005】
これは、配管の管状部とフランジ部とでは、例えば、管状部の肉厚が2.8mmであるのに対し、フランジ部は、径方向の肉厚つまりフランジ径から配管内径を除いた部分の厚さが約45mm、配管が連続する方向における厚さつまりフランジの厚みが16mmと、その寸法が大きく異なり、熱容量に大きな差が生じることに起因する。つまり、肉厚の小さな管状部は、配管内を通過する加熱媒体や冷却媒体の温度により、温度が変動しやすいのに対し、肉厚の大きく熱容量の大きいフランジ部は、温度が上がりにくく、また温度が下がりにくいため、温度の変動速度が遅い。その結果、管状部とフランジ部とで、温度差が生じやすくなる。
金型では、製品の射出成形を行う射出サイクルごとに、加熱媒体による加熱、冷却媒体による冷却を繰り返す。多数の製品を連続的に生産するために、射出サイクルを多数回繰り返すと、配管の管状部とフランジ部とで熱による膨張・収縮の度合いが異なるため、管状部とフランジ部との継ぎ目に熱応力が作用し、その結果、継ぎ目に亀裂等が生じてしまうのである。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、加熱・冷却を繰り返しても、配管のフランジ部と管状部との継ぎ目の部分に亀裂が生じるのを防ぎ、信頼性を高めることのできる射出成形システム、スリーブ、配管部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもとになされた本発明の射出成形システムは、金型を開閉する型締装置、および金型のキャビティに成形材料を射出する射出装置を備えた射出成形機と、キャビティを加熱するため金型に形成された熱媒体通路に加熱媒体を供給する加熱媒体供給装置と、キャビティを冷却するため熱媒体通路に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置と、加熱媒体供給装置、冷却媒体供給装置における加熱媒体、冷却媒体の供給を制御する加熱・冷却制御装置と、加熱媒体供給装置または冷却媒体供給装置から加熱媒体または冷却媒体を熱媒体通路に送り込み、熱媒体通路を経て冷却媒体供給装置または排水経路に戻す配管と、を備える。そして、配管は、管状体の端部にフランジ部を備えた配管部材を複数連結することによって構成され、二つの配管部材どうしの連結部分に、互いに突き合わされる双方の配管部材の少なくともフランジ部の内周側を覆い、配管内を流れる加熱媒体または冷却媒体の熱がフランジ部と配管部材の管状部との連結部に伝わるのを抑制する、筒状の熱伝達抑制部が設けられていることを特徴とする。
このように、二つの配管部材どうしの連結部分に、互いに突き合わされる双方の配管部材の少なくともフランジ部の内周側を覆う筒状の熱伝達抑制部を設けることで、配管内を流れる加熱媒体または冷却媒体の熱がフランジ部と配管部材の管状部との連結部に伝わるのを抑制することができる。
【0007】
このような熱伝達抑制部は、配管部材よりも熱伝導性の低い材料で形成するのが好ましい。
また、熱伝達抑制部は、配管部材よりも線膨張係数の大きな材料で形成するのが好ましい。これらを満たす材料としては、例えば樹脂がある。熱伝達抑制部を形成する材料としては、樹脂以外を用いても良いが、例えば、セラミックスの場合、配管部材よりも熱伝導性は低いものの、線膨張係数は配管部材よりも小さい。したがって、熱伝達抑制部を形成する材料は、配管部材よりも熱伝導性が低く、かつ線膨張係数の大きな材料を選択するのが好ましい。
【0008】
また、熱伝達抑制部は、配管部材の管状体の内周面と対向する部分に、外周側に突出する突起を備える形状としても良く、突起が管状体の内周面に突き当たることで、突起が接している以外の部分において、配管部材のフランジ部および管状体の内周面との間に所定の隙間が形成されている状態を維持できる。配管部材のフランジ部および管状体との間に隙間が形成されることで、この隙間を断熱層として熱伝達の抑制を有効に機能させることができる。
なお、突起は、熱伝達抑制部の外周全周に設けても良いが、熱伝達抑制部の外周部に、周方向に間隔を隔てた複数を設けても良い。
【0009】
また、熱伝達抑制部は、外周側に張り出し、互いに突き合わされる双方のフランジ部の間に挟み込まれる突出部をさらに備えても良い。これにより、熱伝達抑制部が配管部材の連続する方向にずれるのを防止できる。
【0010】
熱伝達抑制部は、配管部材の少なくとも管状体の内周面と対向する部分に、周方向に連続して外周側に突出する突条が、配管部材の長さ方向に間隔を隔てて複数設けられた構成とすることもできる。これにより、加熱媒体や冷却媒体が交互に流れることによって生じる温度変化にともない、熱伝達抑制部が配管部材の連続する方向に伸縮する。このとき、突条部分が配管部材の内周面と擦り合うため、配管の内面に付着したスケール分などをセルフクリーニングする効果を発揮する。
【0011】
このような熱伝達抑制部は、互いに突き合わされる配管部材の双方にまたがるように設けても良いし、互いに突き合わされる配管部材のそれぞれに分割して設けても良い。熱伝達抑制部を互いに突き合わされる配管部材のそれぞれに分割して設ける場合、それぞれの配管部材の筒状部の内周面の一定長部分と、フランジ部の内周面とを覆うようにスリーブを設け、互いに突き合わされる二つの配管部材のスリーブにより、熱伝達抑制部を構成するのである。このとき、スリーブは、フランジ部において他の配管部材のフランジ部と突き合わされるフランジ面の少なくとも一部をも覆うように設けるのが好ましい。
【0012】
熱伝達抑制部は、フランジ部において他の配管部材のフランジ部と突き合わされるフランジ面の少なくとも一部と、管状体の内周面の一部およびフランジ部の内周面とに、熱伝達抑制部を形成する材料をスプレーなどで吹き付けることで形成しても良い。
【0013】
ところで、配管部材内を流れる加熱媒体または冷却媒体によりフランジ部を加熱または冷却するため、フランジ部に、配管部材内を流れる加熱媒体または冷却媒体を流通させる流通路を設けるようにしても良い。ここで、流通路はフランジ部内部に設けてもよいし、外部から熱交換可能なようにフランジ部外部に設けてもよい。
【0014】
また、互いに対向する配管部材のフランジ部どうしが、配管部材の管状体の外径よりも大きな内径を有した一対の環状のプレートで挟み込まれることで連結され、環状のプレートと配管部材のフランジ部との間には、環状のプレートよりも断熱性の高い断熱材が挟み込まれた構成とすることもできる。これにより、配管部材の熱変動がプレートに伝わりにくく、その結果、プレートと配管部材との間での熱影響が相互に伝わるのを抑えることができる。
【0015】
本発明は、射出成形機の金型の温度を調整するために金型を加熱または冷却する熱媒体を流す熱媒体配管を構成する配管部材同士の連結部に挿入されるスリーブであって、互いに突き合わされる双方の配管部材の少なくともフランジ部の内周側を覆い、配管内を流れる加熱媒体または冷却媒体の熱がフランジ部に伝わるのを抑制するため、配管部材よりも熱伝導性の低い材料で形成された筒状部と、筒状部の外周側に張り出し、互いに突き合わされる双方のフランジ部の間に挟み込まれる突出部と、を有することを特徴とするスリーブとすることもできる。
【0016】
本発明は、射出成形機の金型の温度を調整するために金型を加熱または冷却する熱媒体を流す熱媒体配管を構成する配管部材であって、管状体と、管状体の端部に設けられたフランジ部と、配管内を流れる加熱媒体または冷却媒体の熱がフランジ部に伝わるのを抑制するため、少なくともフランジ部の内周側を覆い、配管部材よりも熱伝導性の低い材料で形成された熱伝達抑制部と、を備えることを特徴とする配管部材とすることもできる。
【0017】
本発明は、金型を開閉する型締装置、および金型のキャビティに成形材料を射出する射出装置を備えた射出成形機と、キャビティを加熱するため金型に形成された熱媒体通路に加熱媒体を供給する加熱媒体供給装置と、キャビティを冷却するため熱媒体通路に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置と、加熱媒体供給装置、冷却媒体供給装置における加熱媒体、冷却媒体の供給を制御する加熱・冷却制御装置と、加熱媒体供給装置または冷却媒体供給装置から加熱媒体または冷却媒体を熱媒体通路に送り込み、熱媒体通路を経て冷却媒体供給装置または排水経路に戻す配管と、を備え、配管の少なくとも一部は、管状体の端部にフランジ部を備えた配管部材を複数連結することによって構成され、二つの配管部材どうしの連結部分において、フランジ部に、配管部材内を流れる加熱媒体または冷却媒体を交互に流通させ、フランジ部を加熱または冷却する流通路が設けられていることを特徴とする射出成形システムとすることもできる。
このような射出成形システムによれば、配管部材内を流れる加熱媒体または冷却媒体を流通路に流通させることによって、配管の温度変化とほぼ等々の速度でフランジ部を加熱または冷却することができ、管状体との温度差を小さくすることができる。
【0018】
本発明は、金型を開閉する型締装置、および金型のキャビティに成形材料を射出する射出装置を備えた射出成形機と、キャビティを加熱するため金型に形成された熱媒体通路に加熱媒体を供給する加熱媒体供給装置と、キャビティを冷却するため熱媒体通路に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置と、加熱媒体供給装置、冷却媒体供給装置における加熱媒体、冷却媒体の供給を制御する加熱・冷却制御装置と、加熱媒体供給装置または冷却媒体供給装置から加熱媒体または冷却媒体を熱媒体通路に送り込み、熱媒体通路を経て冷却媒体供給装置または排水経路に戻す配管と、を備え、配管は、管状体の端部にフランジ部を備えた配管部材を複数連結することによって構成され、二つの配管部材どうしの連結部分において、互いに対向する配管部材のフランジ部どうしが、配管部材の管状体の外径よりも大きな内径を有した一対の環状のプレートで挟み込まれることで連結され、環状のプレートと配管部材のフランジ部との間には、環状のプレートよりも断熱性の高い断熱材が挟み込まれていることを特徴とする射出成形システムとすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、筒状の熱伝達抑制部、スリーブを設けることで、配管内を流れる加熱媒体または冷却媒体の熱がフランジ部に伝わるのを抑制することができる。これにより、加熱・冷却を繰り返しても、配管のフランジ部と管状部との継ぎ目の部分に亀裂が生じるのを防ぐことができ、信頼性を高めることができる。
【0020】
また、本発明によれば、配管部材内を流れる加熱媒体または冷却媒体を流通路に流通させることによって、フランジ部を加熱または冷却することができ、管状体との温度差を小さくすることができる。これにより、加熱・冷却を繰り返しても、配管のフランジ部と管状部との継ぎ目の部分に亀裂が生じるのを防ぐことができ、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態における射出成形機の全体構成を示す図である。
【図2】金型の温度調整を行うための構成を示す図である。
【図3】戻り配管部の一例を示す図である。
【図4】第一の実施形態における配管部材どうしの連結部分の構造を示す半断面図である。
【図5】第二の実施形態における配管部材どうしの連結部分の構造を示す半断面図である。
【図6】第三の実施形態における配管部材どうしの連結部分の構造を示す半断面図である。
【図7】第四の実施形態における配管部材どうしの連結部分の構造を示す半断面図である。
【図8】第五の実施形態における配管部材どうしの連結部分の構造を示す半断面図である。
【図9】第六の実施形態における配管部材どうしの連結部分の構造を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における射出成形機10の概略構成を説明するための図である。
図1に示すように、射出成形機10の型締装置は、基台11に固定ダイプレート12が固設され、固定ダイプレート12に固定側金型(金型)13が取り付けられている。固定側金型13に対向する可動側金型(金型)14は、固定ダイプレート12に対向して配置された可動ダイプレート15に取り付けられている。可動ダイプレート15は、基台11に敷設されたガイドレール16にガイドされ、リニアベアリングを介して固定ダイプレート12に対向して移動可能とされている。型開閉のための可動ダイプレート15の移動には電動ボールねじ17が用いられる。
【0023】
複数のタイバー18が、固定ダイプレート12に内蔵する複数の型締油圧シリンダ12a内で摺動するラム19に直結して設けられている。各タイバー18の先端部は、可動ダイプレート15の貫通孔を貫通している。タイバー18の先端部にはねじ溝18aが形成されており、このねじ溝18aに可動ダイプレート15の反金型側に配置された半割りナット18bが係合することで、タイバー18の引張方向を固定拘束している。
【0024】
射出ユニット(射出装置)20は、電動駆動方式である。固定側金型13の樹脂入り口に当接しているノズルを備えた射出シリンダ21には、射出シリンダ21と一体のフレーム21aが設けられている。このフレーム21aに射出シリンダ21の中心線の両側に対称に、一対の射出駆動サーボモータ22、22が取り付けられ、射出駆動サーボモータ22、22の出力軸にボールねじ軸23、23が直結されている。ボールねじ軸23、23には、移動フレーム24に取り付けられた一対のボールねじナット25、25が螺合している。一対の射出駆動サーボモータ22、22が同期回転駆動されることにより、射出スクリュ21bは射出シリンダ21の中を軸方向に前後進する。
射出シリンダ21の射出スクリュ21bは、移動フレーム24に取り付けられた射出スクリュ回転駆動モータ26によって回転駆動され、射出シリンダ21内の樹脂の回転送り出しと可塑化を行う。
【0025】
射出成形制御装置50は、成形工程のプログラムに従って、型締油圧シリンダ12aに作動油を送り、射出ユニット20の射出駆動サーボモータ22、22に電流を送って射出スクリュ21bを前後進させ、射出スクリュ21bの射出スクリュ回転駆動モータ26に電流を送って樹脂の可塑化を指示する。
【0026】
射出ユニット20は、固定側金型13と可動側金型14が型締されることによって形成された金型キャビティの中に溶融樹脂を射出させる。成形品が冷却固化した後は、可動側金型14は固定側金型13との型締結合を解き、移動用の電動ボールねじ17の作動により固定側金型13から離れて成形品を取出すようになっている。
【0027】
固定側金型13、可動側金型14には、金型表面を加熱、冷却するための熱媒体通路30、31が形成されている。熱を早く伝達して金型キャビティ面を急速に加熱冷却するため、熱媒体通路30、31は金型キャビティにできるだけ近い位置に形成されている。そして、この熱媒体通路30、31には、外部から熱媒体を熱媒体通路30、31に送り込むための熱媒体供給管32Iと、熱媒体通路30、31から熱媒体を外部に排出するための熱媒体排出管32Oとが、それぞれ接続されている。
【0028】
図2に示すように、熱媒体供給管32Iには、加熱媒体を供給する加熱媒体供給装置33と、冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置34とが接続されている。本実施の形態においては、加熱媒体、冷却媒体には、蒸気、水(液体)、エアー等を用いることができる。
加熱媒体供給装置33は、加熱媒体を図示しないポンプによって熱媒体供給管32Iを通して熱媒体通路30、31に送り込むとともに、熱媒体通路30、31を経た加熱媒体を、熱媒体排出管32Oを通して加熱媒体供給装置33に循環させる。
冷却媒体供給装置34は、冷却媒体を図示しないポンプによって熱媒体供給管32Iを通して熱媒体通路30、31に送り込むとともに、熱媒体通路30、31を経た冷却媒体を、熱媒体排出管32Oを通して冷却媒体供給装置34に循環させる。
【0029】
これら加熱媒体供給装置33、冷却媒体供給装置34は、温度調整装置60に接続されている。温度調整装置60には、熱媒体供給管32Iに供給する熱媒体を切り替えるために、加熱媒体供給装置33、冷却媒体供給装置34からの加熱媒体、冷却媒体の送給管をそれぞれ開閉可能な開閉弁(図示無し)が設けられている。
【0030】
温度調整装置60の各開閉弁は、金型温度制御装置(加熱・冷却制御装置)70により、予め定められたプログラムに基づいてその開閉が制御され、加熱媒体、冷却媒体の熱媒体供給管32Iへの供給・遮断を切り替える。すなわち、固定側金型13、可動側金型14を加熱するときには、加熱媒体供給装置33で加熱された加熱媒体を、熱媒体供給管32Iに送り込み、固定側金型13、可動側金型14を冷却するときには、冷却媒体供給装置34から供給される冷却媒体を、熱媒体供給管32Iに送り込む。
【0031】
図1、図2に示したように、固定側金型13、可動側金型14のキャビティ面に接して、金型温度センサ40が配置されている。金型温度センサ40で検出した金型温度の信号は金型温度制御装置(加熱・冷却制御装置)70に送られる。
また、図2に示したように、熱媒体供給管32Iには、管内の熱媒体の温度を検出するための熱電対等の熱媒体温度センサ41の他に、熱媒体の圧力を検出するための圧力センサ42とが設けられることもある。これら熱媒体温度センサ41、圧力センサ42で検出した熱媒体の温度、圧力の信号は金型温度制御装置70に送られる。
【0032】
金型温度制御装置70では、金型温度センサ40で検出された金型温度と、熱媒体温度センサ41、圧力センサ42で検出された熱媒体の温度、圧力に基づき、温度調整装置60を制御して、加熱媒体供給装置33、冷却媒体供給装置34の開閉弁(図示無し)を開閉させ、熱媒体供給管32Iへの加熱媒体、冷却媒体の供給タイミングを制御する。
【0033】
一連の射出成形サイクル中、金型温度制御装置70は、予め導入されたコンピュータプログラムに基づいて定められた処理を実行し、熱媒体供給管32Iへの加熱媒体、冷却媒体の供給を制御することで、以下に示すような温度コントロールを行う。
型閉から昇圧の工程においては、金型温度制御装置70で温度調整装置60を制御して、加熱媒体供給装置33で加熱された加熱媒体を熱媒体供給管32Iに送り込み、固定側金型13、可動側金型14を加熱する。
そして、固定側金型13、可動側金型14の加熱後、固定側金型13と可動側金型14が型締されることによって形成された金型キャビティへの溶融樹脂の射出を開始する。この後、加熱媒体供給装置33から熱媒体供給管32Iへの加熱媒体の供給を停止する。加熱媒体の供給停止は、金型温度制御装置70で温度調整装置60を制御して行う。
樹脂の射出が完了した時点で、金型キャビティ内の保圧を行うこともできる。射出〜保圧の間、固定側金型13、可動側金型14の温度は、加熱媒体の供給停止にともない、自然放熱により低下する。
【0034】
この後、固定側金型13、可動側金型14の冷却に移行する。固定側金型13、可動側金型14の冷却は、金型温度制御装置70で温度調整装置60を制御して、冷却媒体供給装置34から供給される冷却媒体を、熱媒体供給管32Iに送り込む。冷却媒体の送り込みによって固定側金型13、可動側金型14は急冷される。固定側金型13、可動側金型14の温度が低下したら、金型温度制御装置70で温度調整装置60を制御して熱媒体供給管32Iへの冷却媒体の供給を停止する。
樹脂が冷却固化し、金型キャビティ内に成形品が形成された後は、可動側金型14は固定側金型13との型締結合を解いて型開きする。続いて、さらに可動側金型14を移動用の電動ボールねじ17の作動により固定側金型13から離し、成形品を取出す。
この後は、上記と同様のサイクルを繰り返すことで、成形品を順次射出成形し生産することができる。
【0035】
さて、ここで、熱媒体通路30、31を経た加熱媒体、冷却媒体を、冷却媒体供給装置34に循環させるための熱媒体排出管32Oには、以下に示すような戻り配管部(配管)100が備えられている。
図3に示すように、戻り配管部100は、熱媒体通路30、31から送り出された熱媒体をそのまま加熱媒体供給装置33、冷却媒体供給装置34に送り込むメイン配管101と、熱媒体通路30、31から送り出された熱媒体が蒸気である場合に、蒸気の少なくとも一部を冷却して復水させる復水機102と、メイン配管101から復水機102へと熱媒体を分岐させる分岐管103と、を備えている。
メイン配管101には、自動開閉弁104が設けられており、金型温度制御装置70による制御によって、その開閉・開度が自動的に調整制御される。
【0036】
分岐管103は、復水機102の上流側において二本の管路103A、103Bに分岐している。一方の管路103Aには、手動開閉弁105が設けられており、これは通常は常時開とされている。
他方の管路103Bには、自動開閉弁106が設けられており、金型温度制御装置70による制御によって、その開閉・開度が自動的に調整制御され、復水機102に送り込む蒸気の圧力を調整できるようになっている。
【0037】
上記のような戻り配管部100において、自動開閉弁104、106は、所定長の配管部材110の一部として、管状体111の中間部に組み込まれている。配管部材110は、管状体111の端部に、管状体111から外周側に向けて張り出す円環板状のフランジ部112が一体に設けられている。
このような自動開閉弁104、106は、両端のフランジ部112を、メイン配管101、分岐管103の管路103Bを構成する配管部材120の端部に設けられたフランジ部122に、ボルト等の締結手段を介して締結されている。
【0038】
以下、このような配管部材110と、配管部材120との連結部の構造の複数の形態について説明する。以下の説明においては、配管部材110と配管部材120との連結部の構造が異なるのみで、他の、射出成形機全般に関わる部分の構成は共通している。したがって、各形態で異なる点のみを中心に説明し、各形態において共通する構成については同符号を付してその説明を省略する。
〔第一の実施形態〕
図4に示すように、フランジ部112と、フランジ部122とは、互いに突き合わせられ、フランジ部112とフランジ部122は、管状体111、121の外周側に張り出した部分において、周方向に間隔を隔てて配置された複数本のボルト・ナット130により連結されている。この状態で、配管部材110の管状体111と、配管部材120側の管状体121とは、その内周面111a、121aが連続している。
互いに対向するフランジ部112のフランジ面112aとフランジ部122のフランジ面122aとの間には、弾性を有した材料からなる環状のガスケット131を挟み込むのが好ましい。
【0039】
フランジ部112、122のフランジ面112a、122aには、内周側に、環状の段部113、123が形成されている。これにより、フランジ部112とフランジ部122とを付き合わせた状態で、その連結部分において、管状体111、121の内周面111a、121aから外周側に凹んだ溝132が形成されている。環状の段部は互いに向き合うフランジの双方に設ける必要はなく、どちらか一方でもよい。または、ガスケット131を挟むことで生じるフランジ管のスキマを利用しても良い。
【0040】
このような配管部材110、120の連結部の内周側には、スリーブ(熱伝達抑制部)140Aが挿入配置されている。
スリーブ140Aは、筒状部141と、筒状部141の中間部において外周側に張り出す円環板状のリング部(突出部)142とが一体に形成された構成を有している。
【0041】
筒状部141は、少なくともフランジ部112、122の内周面に対向した部分を覆うよう設けられている。筒状部141は、さらに、フランジ面112a、122aから端部141aまでの長さSが、フランジ部112、122の厚さをtとしたとき、
S≧t+30
となるように形成されている。これにより、筒状部141は、管状体111、121の内周面を、その軸線方向の一定長にわたって覆い、管状体111、121とフランジ部112、122の連結部を覆っている。
【0042】
また、筒状部141は、その外径が、管状体111、121およびフランジ部112、122の内径よりも、予め定められた一定寸法小さくなるよう形成されている。
また、筒状部141の内周側の縁部(角部)141bは、面取りまたはR加工を施し、筒状部141の内側を流れる熱媒体の流れを乱すのを抑えるようにするのが好ましい。
【0043】
そして、筒状部141の両端部には、外周側に突出する突起143が、周方向に連続して形成されていてもよい。突起143は、その外径が、管状体111、121およびフランジ部112、122の内径とほぼ同寸法となるよう形成されている。
この突起143が管状体111、121の内周面111a、121aに突き当たることで、突起143以外の部分において、筒状部141の外周面と管状体111、121およびフランジ部112、122の内周面111a、121aとの間に、例えば寸法δ=0.2〜1.0mmの隙間200が形成される。隙間200の寸法δが、前記の範囲を下回ると、加熱媒体によりスリーブ140Aの温度が上昇し熱膨張したときに、筒状部141から管状体111、121との間の隙間200が小さくなり熱が伝達されやすくなるため、後述の隙間200による断熱効果が薄れ、前記の範囲を上回ると、隙間200内に熱媒体が入り込み、熱媒体から管状体111、121に熱が伝達されやすくなり、断熱効果が薄れてしまう。
なお、この突起143、143は、筒状部141の外周面に周方向に連続して設けることは必須ではなく、筒状部141と管状体111、121との間に隙間200を確保できるのであれば、筒状部141の外周面に、周方向に間隔を隔てた複数箇所に突起を設けるようにしても良い。また、スリーブ140A側ではなく、管状体111、121の内周面111a、121a側に突条や突起を設けることで、筒状部141と管状体111、121との間に隙間200を確保することを排除するものでもない。
【0044】
このようなスリーブ140Aは、リング部142の両側の筒状部141が、一方の配管部材110の管状体111と他方の配管部材120の管状体121とに挿入され、リング部142が、一方の配管部材110のフランジ部112と他方の配管部材120のフランジ部122との間に挟み込まれ、溝132に挿入された状態で装着される。
【0045】
スリーブ140Aは、配管部材110、120を構成する材料とは、熱伝導率の異なる材料で形成するのが好ましい。本実施形態における射出成形機10の金型温度調整用の熱媒体を搬送する配管部材110、120には、炭素鋼管やステンレス配管等の鋼材が用いられる。そこで、スリーブ140Aには、配管部材110、120を形成する鋼材と比較して熱伝導率が著しく低い樹脂材料を用いることが好ましく、特に熱媒体の熱に対する耐熱性を有したポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene, PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等により形成するのが好ましい。
【0046】
このようなスリーブ140Aを配管部材110、120の連結部に挿入配置することで、フランジ部112、122と管状体111、121の継ぎ目近傍の内側にはスリーブ140Aが位置することになり、スリーブ140Aにより断熱効果が発揮される。その結果、加熱媒体・冷却媒体による加熱・冷却が繰り返されても、フランジ部112、122と管状体111、121の継ぎ目近傍における温度変動を抑えることができる。
【0047】
このとき、スリーブ140Aは、配管部材110、120とは線膨張係数が異なり、熱伝導率がより低い材料で形成されている。スリーブ140Aを配管部材110、120と同材料で形成した場合に対し、高い断熱効果を発揮することができる。
【0048】
また、スリーブ140Aの筒状部141の外径が管状体111、121およびフランジ部112、122の内径よりも小さく設定され、さらに突起143、143が管状体111、121の内周面111a、121aに突き当たることで、筒状部141の外周面と管状体111、121およびフランジ部112、122の内周面111a、121aとの間に隙間200が形成される。この隙間200によっても、断熱効果を発揮することができ、加熱媒体・冷却媒体による加熱・冷却が繰り返されても、フランジ部112、122と管状体111、121の継ぎ目近傍における温度変動を抑えることができる。
【0049】
このようにして、フランジ部112、122と管状体111、121の継ぎ目に亀裂等が生じるのを防ぐことができる。その結果、射出成形機の温調システムの耐久性、信頼性を高めることが可能となる。
【0050】
また、スリーブ140Aは、配管部材110、120よりも熱膨張係数が大きいため、温度上昇に伴って配管部材110、120よりも大きく膨張する。これにより、リング部142が、配管部材110、120の連結部、特に溝132との接触面圧が上昇し、連結部におけるシール性を高めることができる。
【0051】
スリーブ140Aの筒状部141は、外径が管状体111、121およびフランジ部112、122の内径よりも小さく設定されており、端部のみに、管状体111、121の内周面111a、121aに突き当たる突起143、143が設けられているため、スリーブ140Aと配管部材110、120の填め合いがきつくなることもなく、容易に組み立て作業を行うことができる。
【0052】
スリーブ140Aは、リング部142が、一方の配管部材110のフランジ部112と他方の配管部材120のフランジ部122との間に挟み込まれた状態とされる。これにより、熱媒体が流れても、スリーブ140Aが配管部材110、120の連続する方向にずれるのを防止することができる。
【0053】
なお、リング部142は、スリーブ140Aの全周に連続して設けるのではなく、スリーブ140Aの外周部に、周方向に間隔を隔てて複数箇所に突出部を設けるようにしても良い。この突出部を、一方の配管部材110のフランジ部112と他方の配管部材120のフランジ部122との間に挟み込むことでも、上記と同様の効果が得られる。
【0054】
〔第二の実施形態〕
次に、配管部材110、120の連結構造の他の例を示す。以下に示す例では、上記第一の実施形態とは、スリーブ140Bの構成が異なるのみであり、他の共通する構成についてはその説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態におけるスリーブ(熱伝達抑制部)140Bは、上記第一の実施形態で示したスリーブ140Aを、リング部142を中心として二分割したような形状を有している。すなわち、スリーブ140Bは、二つのスリーブ分割体145、145からなる。
【0055】
各スリーブ分割体145は、筒状部146と、筒状部146の一端において外周側に張り出す円環板状のリング部(突出部)147とが一体に形成された構成を有している。
【0056】
筒状部146は、その外径が、管状体111、121およびフランジ部112、122の内径よりも、予め定められた一定寸法小さくなるよう形成されている。
そして、筒状部146の両端部には、外周側に突出する突起143が、周方向に連続して形成されている。突起143は、その外径が、管状体111、121およびフランジ部112、122の内径とほぼ同寸法、あるいはそれよりも若干大きな寸法となるよう形成されている。
この突起143が管状体111、121の内周面111a、121aに突き当たることで、筒状部146の外周面と管状体111、121およびフランジ部112、122の内周面111a、121aとの間に隙間200が形成される。
【0057】
このようなスリーブ140Bは、二つのスリーブ分割体145を、一方の配管部材110と他方の配管部材120とに挿入する。このとき、筒状部146を配管部材110、120の管状体111、121内に挿入し、リング部147を、配管部材110、120のフランジ部112、122の段部113、123に突き当てる。
そして、一方の配管部材110のフランジ部112と他方の配管部材120のフランジ部122を突き当てる。するとこの状態で、一方のスリーブ分割体145のリング部147と他方のスリーブ分割体145のリング部147とが突き当たり、これら二つのスリーブ分割体145により、上記第一の実施形態で示したスリーブ140Aと同様の構成を実現できる。
【0058】
このようなスリーブ140Bを用いることにより、上記第一の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、スリーブ140Bは、二つのスリーブ分割体145、145により構成されているので、組立に際しては、それぞれのスリーブ分割体145を配管部材110、120の端部に挿入・設置した後、配管部材110、120を互いに突き合わせて接続すればよく、作業性に優れる。
【0059】
なお、上記実施形態において、スリーブ分割体145の突き合わせ面において、シール性能を高めるために、リング部147の最内周部から外径方向(半径方向)に向けて高さ(厚さ)が暫減し、最内周部がもっとも厚くなる形状とすることが好ましい。これにより、リング部147、147を、配管部材110、120のフランジ部112、122の段部113、123で挟み込んだときに、その最内周部でもっとも強く互いに押しつけられ、シール性が高まる。
またスリーブ140Bの外周と配管部材110の内周のシール性を高めるために、スリーブ140Bにおいて、流れ方向上流側の端部から、スリーブ分割体145、145の突き合わせ部分に向けて、その内径が漸次小さくなるようにするのも好ましい。これにより、スリーブ140B内を流れる熱媒体の圧力によりスリーブ140Bを外周側に押し付けることができ、これによってスリーブ140Bの外周と配管部材110の内周のシール性が高まる。また、テーパ形状とすることで、熱媒体の流れの乱れ抑制にも有効である。
【0060】
〔第三の実施形態〕
次に示す第三の実施形態で示すスリーブ140Cは前記第一の実施形態で示したスリーブ140Aの筒状部141の外周面に複数の突条149を形成したものであり、他の構成は上記第二の実施形態に共通する。
図6に示すように、スリーブ(熱伝達抑制部)140Cの筒状部141の外周面には、周方向に連続する突条149が、スリーブ140Cの軸線方向に間隔を隔てて多数配列されている。
この突条149は、リング状としてもよいし、筒状部141の外周面に螺旋状に形成してもよい。
【0061】
突条149は、その外径が、管状体111、121およびフランジ部112、122の内径とほぼ同寸法となるよう形成され、管状体111、121の内周面111a、121aに突き当たるようになっている。
【0062】
このような突条149が管状体111、121の内周面111a、121aに突き当たることで、筒状部141(突条149)の外周面と管状体111、121およびフランジ部112、122との間に隙間210が形成される。スリーブ140Cおよび隙間210によって、断熱効果を発揮することができ、上記第一の実施形態で示したのと同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、本実施形態においては、筒状部141の外周面に突条149を多数形成して凹凸を形成することで、熱媒体の通過によりスリーブ140Cの温度が変動するに伴い、スリーブ140Cが軸線方向に膨張・収縮を繰り返す。これによって、突条149が管状体111、121およびフランジ部112、122の内周面111a、121aを擦ることになり、セルフクリーニング効果を発揮して、スケール(堆積物)の付着を防止することができる。
これは、スケールの付着による断熱性の低下を抑制するとともに、配管部材110、120を外して分解する際の配管部材110、120とスリーブ140Cとの固着を抑制することができメンテナンス性を確保することに有効に作用する。
【0064】
なお、このようなスリーブ140Cは、前記第二の実施形態と同様、二つのスリーブ分割体からなる構成としたが、これを、前記第一の実施形態と同様、一体化した構成とすることもできる。
【0065】
〔第四の実施形態〕
次に示す形態は、スリーブ140Dを形成する材料を、配管部材110、120の連結部の内周面に吹き付けた後、硬化させる構成の例を示す。
【0066】
図7に示すように、スリーブ(熱伝達抑制部)140Dは、各配管部材110、120の端部に、筒状部151と、筒状部151の一端において外周側に張り出す円環板状のリング部(突出部)152とが一体に形成された構成を有している。
【0067】
筒状部151は、管状体111、121およびフランジ部112、122の内周面111a、121aに密着して形成され、双方のフランジ部112、122間において互いに突き合わせられるリング部152、152が、一方の配管部材110のフランジ部112と他方の配管部材120のフランジ部122との間に挟み込まれている。
【0068】
このようなスリーブ140Dは、スリーブ140Dを形成する前述の材料を、配管部材110、120の連結部の内周面にそれぞれ吹き付けた後、硬化させることで形成される。
【0069】
このようなスリーブ140Dを配管部材110、120の連結部に形成・配置することで、フランジ部112、122と管状体111、121の継ぎ目近傍の内側にはスリーブ140Dが位置することになり、スリーブ140Dにより断熱効果が発揮される。その結果、加熱媒体・冷却媒体による加熱・冷却が繰り返されても、フランジ部112、122と管状体111、121の継ぎ目近傍における温度変動を抑えることができる。
【0070】
このとき、スリーブ140Dは、配管部材110、120とは熱伝達率の低い材料で形成されているため、熱が伝わりにくく、高い断熱効果を発揮することができる。
【0071】
このようにして、フランジ部112、122と管状体111、121の継ぎ目に亀裂等が生じるのを防ぐことができる。その結果、射出成形機の温調システムの耐久性、信頼性を高めることが可能となる。
【0072】
また、スリーブ140Dは吹き付けにより形成されるため、スリーブ140Dの両端部153は、その厚さが端部に向けて漸次小さくなり、配管部材110、120の管状体111、121の内周面111a、121aに向けてなだらかにつながる。これにより、配管部材110、120内を流れる熱媒体の流れを乱すのを抑えることができる。
【0073】
〔第五の実施形態〕
次に示す実施形態は、スリーブ140A〜140Dを用いることなく、配管部材110、120のフランジ部112、122と管状体111、121の継ぎ目近傍における温度変動を抑えるため、フランジ部112、122に熱媒体流路(流通路)160を設けるというものである。
図8に示すように、本実施形態においては、配管部材110、120の連結部に、熱媒体流路160が形成されている。熱媒体流路160は、フランジ部112、122の表面、または内部に、環状に連続するよう形成されたものである。
このような熱媒体流路160には、管状体111、121の外周側、または管状体111、121の内部に設けられたバイパス流路161を介し、配管部材110、120の内部を流れる熱媒体が流れ込む。
【0074】
これにより、流れる熱媒体の温度変化にともない、フランジ部112、122の温度を積極的に変化させることができ、管状体111、121とフランジ部112、122との温度差が少なくなる。すると、配管部材110、120内を加熱媒体と冷却媒体が交互に流れるときに、管状体111、121とフランジ部112、122との温度差によって管状体111、121とフランジ部112、122との連結部近傍に与えられるストレスを抑えることができる。
その結果、フランジ部112、122と管状体111、121の継ぎ目に亀裂等が生じるのを防ぐことができ、射出成形機10の耐久性、信頼性を高めることが可能となる。
【0075】
なお、上記実施形態においては、熱媒体流路160は、フランジ部112、122の直近の配管部材110、120から連通して形成されている。しかし、熱媒体流路160は、フランジ部112、122の直近の配管部材110、120に限らず、他の部分、例えば別途設けられた熱媒体供給源から、熱媒体を直接流通可能なように設けてもよい。熱媒体流路160に別回路で熱媒体を直接供給可能なようにすることにより、昇温あるいは降温が遅れるフランジ部112、122に対して、前記フランジ部112、122内部に加熱媒体(あるいは冷却媒体)が流入するよりも先行して加熱媒体(あるいは冷却媒体)を熱媒体流路160に流入させることもできるので、熱媒体流路160の昇温(あるいは降温)の遅れを更に縮小することができる。
【0076】
なお、上記第五の実施形態で示した構成は、前記の第一〜第四の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0077】
〔第六の実施形態〕
次に、本発明にかかる第六の実施形態を示す。
図9に示すように、配管部材110、120のフランジ部112、122どうしを、ルーズフランジ(プレート)170を用いて接続する例を示す。
配管部材110、120のフランジ部112、122どうしは、環状のシールパッキン171を介して対向している。
そして、フランジ部112,122を挟んだその両側には、ルーズフランジ170、170が配置されている。ルーズフランジ170は、内径が配管部材110、120の管状体111、121の外径よりも大きな環状で、管状体111、121とは接触しないよう設けられている。これらルーズフランジ170、170は、その外周部において、ボルト・ナット172、172によって締結されている。
【0078】
このとき、ルーズフランジ170、170と、配管部材110、120のフランジ部112、122との間には、断熱材175が設けられている。
断熱材175は、環状で、例えば、テフロン(登録商標)系材料、ガラス、アルミナ、シリカ等の焼成材等から形成することができる。
【0079】
このような構成においては、配管部材110、120のフランジ部112、122どうしを連結するルーズフランジ170、170が、環状とされることで、管状体111、121とは接触せず、しかも配管部材110、120のフランジ部112、122に対しても、断熱材175を介して接触している。これにより配管部材110、120と、これらを互いに連結するルーズフランジ170、170との熱伝達が行われにくく、ルーズフランジ170、170による熱影響を抑えることができる。したがって、配管部材の管状体111、121とフランジ部112、122とに温度差が生じるのを抑えることができる。その結果、例えフランジ部112,122の近くに溶接部Wがあったとしても、熱影響が及んで溶接部Wが割れたりするのを防ぐことができる。
【0080】
なお、上記構成においては、上記第一の実施形態で示したスリーブ(熱伝達抑制部)140Aを始め、他の形態で示したスリーブを挿入配置することができる。
これにより、上記効果は一層顕著なものとなる。
【0081】
また、ルーズフランジ170、170と配管部材110、120のフランジ部112、122との間での熱伝達を抑えることができるのであれば、断熱材175としてはいかなるものを用いても良い。また、断熱材175に代えて、例えば、ルーズフランジ170、170と配管部材110、120のフランジ部112、122との接触面積がなるべく小さくするように、ルーズフランジ170、170と配管部材110、120のフランジ部112、122のいずれか一方に、突起等を設け、突起の先端部のみでルーズフランジ170、170と配管部材110、120のフランジ部112、122とが接触するようにしてもよい。
【0082】
ところで、上記各実施形態で示したような構成を採用する射出成形機10においては、以下のような構成を採用することもできる。
すなわち、図3に示したように、自動開閉弁106が設けられた管路103Bは、管路103Aに対して直交するよう、T字型のエルボ180により管路103Aに接続されている。そして、管路103Aは、T字型のエルボ180の両側において、螺旋状に1回転ループしたループ部181が形成されている。自動開閉弁106が設けられた管路103Bがその軸線方向に伸縮した場合、ループ部181が、その直径が拡大・縮小するよう、閉じたり開いたりして伸縮する。これにより、管路103Bの熱膨張による変形を許容することが可能となる。
これによっても、管状体111、121とフランジ部112、122との連結部近傍に与えられるストレスを抑えることができる。
【0083】
また、上記したような各実施形態に示す構成を備えたとしても、配管部100に亀裂が生じて液体が漏出してしまう可能性がある。
そのような場合に備え、液体漏出センサ190を備え、液体漏出センサ190で液体の漏出を検知した場合には、射出ユニット20の熱媒体通路30、31への熱媒体の供給を遮断するよう、射出ユニット20で制御しても良い。
【0084】
ここで、液体漏出センサ190としては、熱応力により破損が生じやすい場所の近傍に、湿度センサ191を備えることができる。さらに、射出ユニット20の装置の下方にドレンパン192を設け、このドレンパン192内に水漏れセンサを備えることがある。
【0085】
なお、上記実施の形態では、配管部材110、120の連結部分に本発明を適用する例を挙げたが、連結部分以外の射出成形機の構成については、上記に挙げた以外の構成とすることもできる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
10…射出成形機、13…固定側金型(金型)、14…可動側金型(金型)、20…射出ユニット(射出装置)、30、31…熱媒体通路、32I…熱媒体供給管、32O…熱媒体排出管、33…加熱媒体供給装置、34…冷却媒体供給装置、70…金型温度制御装置(加熱・冷却制御装置)、100…配管部(配管)、110…配管部材、111…管状体、111a…内周面、112…フランジ部、112a…フランジ面、120…配管部材、121…管状体、122…フランジ部、122a…フランジ面、132…溝、140A、140B、140C、140D…スリーブ(熱伝達抑制部)、141、146、151…筒状部、142、147、152…リング部(突出部)、143…突起、145…スリーブ分割体、149…突条、160…熱媒体流路(流通路)、161…バイパス流路、170…ルーズフランジ(プレート)、171…シールパッキン、175…断熱材、181…ループ部、200、210…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を開閉する型締装置、および前記金型のキャビティに成形材料を射出する射出装置を備えた射出成形機と、
前記キャビティを加熱するため前記金型に形成された熱媒体通路に加熱媒体を供給する加熱媒体供給装置と、
前記キャビティを冷却するため前記熱媒体通路に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置と、
前記加熱媒体供給装置、前記冷却媒体供給装置における前記加熱媒体、前記冷却媒体の供給を制御する加熱・冷却制御装置と、
前記加熱媒体供給装置または前記冷却媒体供給装置から前記加熱媒体または前記冷却媒体を前記熱媒体通路に送り込み、前記熱媒体通路を経て前記冷却媒体供給装置または排水経路に戻す配管と、を備え、
前記配管は、管状体の端部にフランジ部を備えた配管部材を複数連結することによって構成され、
二つの前記配管部材どうしの連結部分に、互いに突き合わされる双方の前記配管部材の少なくとも前記フランジ部の内周側を覆い、前記配管内を流れる前記加熱媒体または前記冷却媒体の熱が前記フランジ部と前記配管部材の管状部との連結部分に伝わるのを抑制する、筒状の熱伝達抑制部が設けられていることを特徴とする射出成形システム。
【請求項2】
前記熱伝達抑制部は、前記配管部材よりも線膨張係数の大きな材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項3】
前記熱伝達抑制部は、前記配管部材よりも熱伝導性の低い材料で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形システム。
【請求項4】
前記熱伝達抑制部は、前記配管部材の前記管状体の内周面と対向する部分に、外周側に突出する突起を備え、
前記突起が前記管状体に突き当たることで、前記突起以外の部分において、前記配管部材の前記フランジ部および前記管状体との間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の射出成形システム。
【請求項5】
前記熱伝達抑制部は、外周側に張り出し、互いに突き合わされる双方の前記フランジ部の間に挟み込まれる突出部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の射出成形システム。
【請求項6】
前記熱伝達抑制部は、前記配管部材の少なくとも前記管状体の内周面と対向する部分に、周方向に連続して外周側に突出する突条が、前記配管部材の長さ方向に間隔を隔てて複数設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の射出成形システム。
【請求項7】
前記熱伝達抑制部は、互いに突き合わされる前記配管部材のそれぞれに分割して設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の射出成形システム。
【請求項8】
前記熱伝達抑制部は、前記フランジ部において他の前記配管部材の前記フランジ部と突き合わされるフランジ面の少なくとも一部と、前記管状体の内周面の一部および前記フランジ部の内周面とに、前記熱伝達抑制部を形成する材料を吹き付けることで形成されていることを特徴とする請求項7に記載の射出成形システム。
【請求項9】
前記配管部材内を流れる前記加熱媒体または前記冷却媒体により前記フランジ部を加熱または冷却するため、前記フランジ部に、前記配管部材内を流れる前記加熱媒体または前記冷却媒体を流通させる流通路を設けることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の射出成形システム。
【請求項10】
互いに対向する前記配管部材の前記フランジ部どうしが、前記配管部材の前記管状体の外径よりも大きな内径を有した一対の環状のプレートで挟み込まれることで連結され、
前記環状のプレートと前記配管部材の前記フランジ部との間には、前記環状のプレートよりも断熱性の高い断熱材が挟み込まれていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の射出成形システム。
【請求項11】
射出成形機の金型の温度を調整するために前記金型を加熱または冷却する熱媒体を流す熱媒体配管において当該熱媒体配管を構成する配管部材同士の連結部に挿入されるスリーブであって、
互いに突き合わされる双方の前記配管部材の少なくともフランジ部の内周側を覆い、前記配管内を流れる前記熱媒体の熱が前記フランジ部に伝わるのを抑制するため、前記配管部材よりも熱伝導性の低い材料で形成された筒状部と、
前記筒状部の外周側に張り出し、互いに突き合わされる双方の前記フランジ部の間に挟み込まれる突出部と、を有することを特徴とするスリーブ。
【請求項12】
射出成形機の金型の温度を調整するために前記金型を加熱または冷却する熱媒体を流す熱媒体配管を構成する配管部材であって、
管状体と、
前記管状体の端部に設けられたフランジ部と、
前記配管内を流れる前記熱媒体の熱が前記フランジ部に伝わるのを抑制するため、少なくとも前記フランジ部の内周側を覆い、前記配管部材よりも熱伝導性の低い材料で形成された熱伝達抑制部と、
を備えることを特徴とする配管部材。
【請求項13】
金型を開閉する型締装置、および前記金型のキャビティに成形材料を射出する射出装置を備えた射出成形機と、
前記キャビティを加熱するため前記金型に形成された熱媒体通路に加熱媒体を供給する加熱媒体供給装置と、
前記キャビティを冷却するため前記熱媒体通路に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置と、
前記加熱媒体供給装置、前記冷却媒体供給装置における前記加熱媒体、前記冷却媒体の供給を制御する加熱・冷却制御装置と、
前記加熱媒体供給装置または前記冷却媒体供給装置から前記加熱媒体または前記冷却媒体を前記熱媒体通路に送り込み、前記熱媒体通路を経て前記冷却媒体供給装置または排水経路に戻す配管と、を備え、
前記配管は、管状体の端部にフランジ部を備えた配管部材を複数連結することによって構成され、
二つの前記配管部材どうしの連結部分において、前記フランジ部に、前記配管部材内を流れる前記加熱媒体または前記冷却媒体を流通させ、前記フランジ部を加熱または冷却する流通路が設けられていることを特徴とする射出成形システム。
【請求項14】
金型を開閉する型締装置、および前記金型のキャビティに成形材料を射出する射出装置を備えた射出成形機と、
前記キャビティを加熱するため前記金型に形成された熱媒体通路に加熱媒体を供給する加熱媒体供給装置と、
前記キャビティを冷却するため前記熱媒体通路に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置と、
前記加熱媒体供給装置、前記冷却媒体供給装置における前記加熱媒体、前記冷却媒体の供給を制御する加熱・冷却制御装置と、
前記加熱媒体供給装置または前記冷却媒体供給装置から前記加熱媒体または前記冷却媒体を前記熱媒体通路に送り込み、前記熱媒体通路を経て前記冷却媒体供給装置または排水経路に戻す配管と、を備え、
前記配管は、管状体の端部にフランジ部を備えた配管部材を複数連結することによって構成され、
二つの前記配管部材どうしの連結部分において、互いに対向する前記配管部材の前記フランジ部どうしが、前記配管部材の前記管状体の外径よりも大きな内径を有した一対の環状のプレートで挟み込まれることで連結され、
前記環状のプレートと前記配管部材の前記フランジ部との間には、前記環状のプレートよりも断熱性の高い断熱材が挟み込まれていることを特徴とする射出成形システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−167925(P2011−167925A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33714(P2010−33714)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(505139458)三菱重工プラスチックテクノロジー株式会社 (50)
【Fターム(参考)】