説明

射出成形方法、射出成形品及び射出成形金型

【課題】異なる樹脂材料を用いて形成した複数の成形部材を備える射出成形品に関し、機能性の要求と外観品質の要求を両立させること。
【解決手段】成形用可動入れ子26を含む固定側金型22と可動側金型24との間に形成した、大断面積空間と小断面積空間とが連続している形状の第一成形空間へ溶融結晶性樹脂R1を射出し、第一成形空間へ射出された溶融結晶性樹脂R1が固化した後に移動させた成形用可動入れ子26を含む固定側金型22と可動側金型24との間に形成した、大断面積空間のうち小断面積空間と連続している部分以外を包囲する形状の第二成形空間へ溶融非結晶性樹脂R2を射出し、溶融非結晶性樹脂R2を固化させて射出成形品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクカートリッジを設置するヘッドキャリッジ等、耐摩耗性が要求される部分と外観品質が要求される部分を有する射出成形品と、その射出成形品を製造する射出成形金型及び射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の異なる樹脂材料を用いて形成した射出成形品としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。
特許文献1に開示されている射出成形品は、異なる樹脂材料から形成された二つの成形部材で構成されており、一方の成形部材が他方の成形部材の一部を覆って形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10‐100193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、単に、異なる樹脂材料で二種類の成形部材を形成し、これらの成形部材を結合するために、一方の成形部材が他方の成形部材の一部を覆っている構成となっている。また、特許文献1に開示されている技術では、樹脂材料と成形部材との関連性を特定していない。
このため、例えば、インクカートリッジを設置するヘッドキャリッジ等、耐摩耗性等の機能性が要求される部分と、意匠等の外観品質が要求される部分を有する射出成形品の製造に関し、機能性の要求と外観品質の要求を両立させることは困難である。
本発明の課題は、異なる樹脂材料を用いて形成した複数の成形部材を備える射出成形品に関し、機能性の要求と外観品質の要求を両立させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係る射出成形方法は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型(例えば、図2の固定側金型22及び可動側金型24)のうち少なくとも一方に取り付けられている成形用可動入れ子(例えば、図2の成形用可動入れ子26)を含む前記一組の金型間に、前記型閉じ状態において第一成形空間を形成する第一成形空間形成工程と、前記第一成形空間形成工程で形成した前記第一成形空間へ、溶融した結晶性樹脂及び溶融した非結晶性樹脂のうち一方の溶融樹脂(例えば、図4の溶融結晶性樹脂R1)を射出する第一射出工程と、前記第一射出工程において前記第一成形空間へ射出された前記一方の溶融樹脂が固化した後に前記成形用可動入れ子を移動させて、当該移動させた前記成形用可動入れ子を含む前記一組の金型間に前記型閉じ状態において第二成形空間を形成する第二成形空間形成工程と、前記第二成形空間形成工程で形成した前記第二成形空間へ、溶融した前記結晶性樹脂及び溶融した前記非結晶性樹脂のうち他方の溶融樹脂(例えば、図6の溶融非結晶性樹脂R2)を射出する第二射出工程と、を有し、前記第一成形空間形成工程では、前記一組の金型の型閉じ及び型開き方向から見た断面積が互いに異なる大断面積空間と小断面積空間とが連続している形状の前記第一成形空間を形成し、前記第二成形空間形成工程では、前記大断面積空間のうち前記小断面積空間と連続している部分以外を包囲する形状の前記第二成形空間を形成することを特徴としている。
【0006】
このような構成により、第二成形空間へ射出した他方の溶融樹脂が固化すると、固化した一方の溶融樹脂からなる部材と固化した他方の溶融樹脂からなる部材とを離間させる方向への力に対する抜け止め部が形成されることとなる。
これにより、互いの相溶性が非常に低い樹脂である結晶性樹脂と非結晶性樹脂を用いて、固化した一方の溶融樹脂からなる部材と、固化した他方の溶融樹脂からなる部材を成形しても、これらの部材は、互いの相対変位を抑制可能な構成となる。
【0007】
また、本発明の一態様に係る射出成形方法は、前記第一射出工程では、溶融した前記結晶性樹脂を前記第一成形空間へ射出し、前記第二射出工程では、溶融した前記非結晶性樹脂を前記第二成形空間へ射出し、前記非結晶性樹脂のガラス転移点温度は、前記結晶性樹脂のガラス転移点温度よりも低いことを特徴としている。
このような構成により、第二射出工程において、第二成形空間へ射出した、溶融した非結晶性樹脂が有する熱により、既に固化を完了した状態の結晶性樹脂が再び溶融することを防止することが可能となる。
これにより、固化した結晶性樹脂により実際に成形した部材の形状寸法と予め設定した形状寸法との差異を減少させることが可能となり、実際に製造した射出成形品の形状寸法と予め設定した形状寸法との差異を減少させることが可能となる。
【0008】
また、本発明の一態様に係る射出成形方法は、前記第一射出工程では、溶融した前記非結晶性樹脂を前記第一成形空間へ射出し、前記第二射出工程では、溶融した前記結晶性樹脂を前記第二成形空間へ射出し、前記結晶性樹脂のガラス転移点温度は、前記非結晶性樹脂のガラス転移点温度よりも低いことを特徴としている。
このような構成により、第二射出工程において、第二成形空間へ射出した、溶融した結晶性樹脂が有する熱により、既に固化を完了した状態の非結晶性樹脂が再び溶融することを防止することが可能となる。
これにより、固化した非結晶性樹脂により実際に成形した部材の形状寸法と予め設定した形状寸法との差異を減少させることが可能となり、実際に製造した射出成形品の形状寸法と予め設定した形状寸法との差異を減少させることが可能となる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る射出成形方法は、前記第一射出工程で前記第一成形空間へ射出する樹脂の温度と前記第二射出工程で前記第二成形空間へ射出する樹脂の温度との温度差を、40℃以上とすることを特徴としている。
このような構成により、上記の温度差を40℃未満とした場合と比較して、第二成形空間へ射出した溶融樹脂が有する熱により、既に固化を完了した状態の溶融樹脂が再び溶融することを、さらに防止することが可能となる。
これにより、上記の温度差を40℃未満とした場合と比較して、実際に成形した射出成形品の形状寸法と予め設定した形状寸法との差異を、さらに減少させることが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る射出成形品(例えば、図1の射出成形品P)は、結晶性樹脂により形成されている機能性要求部材(例えば、図1の機能性要求部材1)と、非結晶性樹脂により形成されている外観品質要求部材(例えば、図1の外観品質要求部材2)と、を備え、前記機能性要求部材及び前記外観品質要求部材のうち一方の部材は、前記機能性要求部材及び前記外観品質要求部材のうち他方の部材における前記一方の部材に最も近い面を貫通する貫通部(例えば、図1の貫通部6)と、当該貫通部と連続して前記他方の部材の内部に嵌合するアンカー部(例えば、図1のアンカー部8)と、を有し、前記アンカー部の一部(例えば、図1の突出部分8a)は、前記貫通部と前記アンカー部が連続する方向から見て、前記他方の部材のうち前記貫通部が貫通していない部分と重なっていることを特徴としている。
【0011】
このような構成により、射出成形品に対し、機能性要求部材と外観品質要求部材が離間する方向への応力が加わった場合であっても、他方の部材のうち貫通部が貫通していない部分とアンカー部の一部により、機能性要求部材と外観品質要求部材との相対変位が抑制されることとなる。
これにより、互いの相溶性が非常に低い樹脂である結晶性樹脂と非結晶性樹脂を用いて、機能性要求部材と外観品質要求部材を成形しても、これらの機能性要求部材と外観品質要求部材は、互いの相対変位を抑制可能な構成となる。
このため、結晶性樹脂を用いて形成した機能性要求部材と非結晶性樹脂を用いて形成した外観品質要求部材との結合力が強く、機能性の要求と外観品質の要求を両立させることが可能な、射出成形品を製造することが可能となる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る射出成形金型(例えば、図2の射出成形金型20)は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型のうち少なくとも一方に取り付けられている成形用可動入れ子と、前記型閉じ状態において前記成形用可動入れ子を含む前記一組の金型間に形成され、且つ溶融した結晶性樹脂及び溶融した非結晶性樹脂のうち一方の溶融樹脂が射出される第一成形空間を形成する第一成形空間形成部(例えば、図2の、成形用可動入れ子26、取り出し用可動入れ子28及び可動側金型24の固定側開口部30と対向する面)と、前記第一成形空間へ射出された前記一方の溶融樹脂が固化した後に移動させた前記成形用可動入れ子を含む前記一組の金型間に前記型閉じ状態において形成され、且つ溶融した前記結晶性樹脂及び溶融した前記非結晶性樹脂のうち他方の溶融樹脂が射出される第二成形空間を形成する第二成形空間形成部(例えば、図3の、移動した成形用可動入れ子26と、移動していない取り出し用可動入れ子28)と、を備え、前記第一成形空間及び前記第二成形空間の一方の成形空間は、前記一組の金型の型閉じ及び型開き方向から見た断面積が互いに異なる大断面積空間と小断面積空間とが連続している形状であり、前記第一成形空間及び前記第二成形空間の他方の成形空間は、前記大断面積空間のうち前記小断面積空間と連続している部分以外を包囲する形状であることを特徴としている。
【0013】
このような構成により、第二成形空間へ射出した他方の溶融樹脂が固化すると、固化した一方の溶融樹脂からなる部材と固化した他方の溶融樹脂からなる部材とを離間させる方向への力に対する抜け止め部が形成されることとなる。
これにより、互いの相溶性が非常に低い樹脂である結晶性樹脂と非結晶性樹脂を用いて、固化した一方の溶融樹脂からなる部材と、固化した他方の溶融樹脂からなる部材を成形しても、これらの部材は、互いの相対変位を抑制可能な構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】射出成形品の構成を示す図である。
【図2】射出成形金型の概略構成を示す図である。
【図3】射出成形金型の概略構成を示す図である。
【図4】第一射出工程において第一成形空間へ溶融樹脂を射出した状態の、射出成形金型の概略構成を示す図である。
【図5】第二成形空間形成工程において第二成形空間を形成した状態の、射出成形金型の概略構成を示す図である。
【図6】第二射出工程において第二成形空間へ溶融樹脂を射出した状態の、射出成形金型の概略構成を示す図である。
【図7】取り出し工程において取り出し用可動入れ子を移動させた状態の、射出成形金型の概略構成を示す図である。
【図8】取り出し工程において固定側金型と可動側金型を型開き状態とした状態の、射出成形金型の概略構成を示す図である。
【図9】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【図10】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【図11】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明に係る射出成形品と、射出成形金型及び射出成形方法の実施の形態(実施形態)を説明する。
(第一実施形態)
(構成)
(射出成形品の構成)
まず、図1を用いて、第一実施形態における、射出成形品の構成について説明する。
図1は、射出成形品Pの概略構成を示す図であり、射出成形品Pの断面図である。
射出成形品Pは、例えば、インクカートリッジを設置するヘッドキャリッジ等であり、機能性要求部材1と、外観品質要求部材2を備えている。
機能性要求部材1は、固化した結晶性樹脂により形成されており、射出成形品Pのうち、他の部材と摺動する部分等、耐摩耗性が要求される部分を構成している。
【0016】
第一実施形態では、一例として、機能性要求部材1のうち、外観品質要求部材2と対向する面と反対側の面(図1中では下側の面。以降の説明でも同様)が、射出成形品Pと他の部材との摺動面を形成している場合を説明する。
機能性要求部材1を形成する結晶性樹脂としては、例えば、POM(Polyacetal)、PA(Polyamide)、PPS(Polyphenylenesulfide)、PP(Polypropylene)、PE(Polyethylene)等を用いることが可能である。
上記のような結晶性樹脂は、摺動部分や、耐摩耗性が要求される部分に用いることが好適な特性と、後述する非結晶性樹脂と比較して、成形時(固化時)の収縮率(以下、「成形収縮率」と記載する場合がある)が大きい特性を有する樹脂である。
【0017】
また、機能性要求部材1は、機能面保有部4と、貫通部6と、アンカー部8を備えている。
機能面保有部4は、平板状に形成されており、機能性要求部材1のうち、射出成形品Pと他の部材との摺動面を有している。
貫通部6は、機能面保有部4のうち、外観品質要求部材2と対向する面(図1中では上側の面。以降の説明でも同様)上に、機能面保有部4と連続して形成されている。
貫通部6の中心は、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向(図1中では上下方向。以降の説明でも同様)から見て、機能面保有部4の中心と同一または略同一となっている。
【0018】
また、貫通部6は、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向から見た断面積が、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向から見た機能面保有部4の断面積よりも小さくなるように形成されている。
アンカー部8は、貫通部6と連続して形成されており、貫通部6を間に挟んで、機能面保有部4と連続している。
アンカー部8の中心は、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向から見て、機能面保有部4及び貫通部6の中心と同一または略同一となっている。
【0019】
また、アンカー部8は、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向から見た断面積が、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向から見た機能面保有部4の断面積よりも小さく、且つ機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向から見た貫通部6の断面積よりも大きくなるように形成されている。
これにより、アンカー部8は、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向から見て、貫通部6よりも機能面保有部4の外周面側へ突出している突出部分8aを有している。
なお、第一実施形態では、一例として、アンカー部8の構成を、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向と直交する方向(図1中では紙面の厚さ方向。以降の説明でも同様)から見た断面形状が方形である構成とした場合を説明する。
【0020】
外観品質要求部材2は、固化した非結晶性樹脂により形成されており、射出成形品Pのうち、ユーザーから目視される部分等、意匠面等の外観品質が要求される部分を構成している。
第一実施形態では、一例として、外観品質要求部材2のうち、機能性要求部材1と対向する面と反対側の面(図1中では上側の面。以降の説明でも同様)が、射出成形品Pの意匠面を形成している場合を説明する。
【0021】
外観品質要求部材2を形成する非結晶性樹脂としては、例えば、ABS(Acrylonitrile・Butadiene・Styrene共重合合成樹脂)、PS(Polystyrene)、メタクリル(Methacrylate)樹脂等を用いることが可能である。
上記のような非結晶性樹脂は、結晶性樹脂と比較して、成形収縮率が小さい特性を有する樹脂である。また、非結晶性樹脂は、結晶性樹脂との相溶性が非常に低い樹脂であり、固化した非結晶性樹脂と固化した結晶性樹脂は、互いに面接触している状態であっても、結合力は非常に少ない。
【0022】
また、外観品質要求部材2は、意匠面保有部10と、アンカー嵌合部12と、貫通孔部14を備えている。
意匠面保有部10は、平板状に形成されており、外観品質要求部材2のうち、射出成形品Pの意匠面を有している。
アンカー嵌合部12は、意匠面保有部10の内部に形成された空間であり、その内部に、アンカー部8が嵌合している。
【0023】
アンカー嵌合部12の中心は、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向から見て、意匠面保有部10の中心と同一または略同一となっている。
貫通孔部14は、外観品質要求部材2における機能性要求部材1に最も近い面(図1中では下側の面。以降の説明でも同様)に開口した貫通孔であり、アンカー嵌合部12と連続して形成され、その内部に、貫通部6が貫通している。
【0024】
また、貫通孔部14の中心は、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向から見て、意匠面保有部10及びアンカー嵌合部12の中心と同一または略同一となっている。
また、貫通孔部14は、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向から見た断面積が、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向から見たアンカー嵌合部12の断面積よりも小さくなるように形成されている。
【0025】
以上により、図1中に示すように、貫通孔部14に貫通部6を貫通させ、アンカー嵌合部12の内部にアンカー部8を嵌合させた状態では、貫通部6とアンカー部8が連続する方向(図1中では上下方向。以降の説明でも同様)から見て、アンカー部8の一部である上述した突出部分8aが、外観品質要求部材2のうち貫通部6が貫通していない部分、すなわち、意匠面保有部10のうち貫通孔部14の周辺部分と重なっている。
【0026】
これにより、図1中に示すように、貫通孔部14に貫通部6を貫通させ、アンカー嵌合部12の内部にアンカー部8を嵌合させた状態では、射出成形品Pに対し、機能性要求部材1と外観品質要求部材2が離間する方向への応力が加わった場合であっても、意匠面保有部10のうち貫通孔部14の周辺部分とアンカー部8の突出部分8aにより、機能性要求部材1と外観品質要求部材2との相対変位が抑制されることとなる。
【0027】
(射出成形金型の構成)
次に、図1を参照しつつ、図2を用いて、第一実施形態における、射出成形金型の構成について説明する。
図2は、射出成形金型20の概略構成を示す図であり、射出成形金型20の断面図である。
図2中に示す射出成形金型20は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型が、型閉じ状態である場合において、一組の金型間に形成される成形空間(キャビティ)内に、二種類の溶融樹脂を段階的に射出して個別に固化させ、これら二種類の固化した溶融樹脂を組み合わせて射出成形品を製造する、二色成形が可能な装置である。なお、成形空間に関する説明は、後述する。
【0028】
射出成形金型20は、図2中に示すように、上述した一組の金型として、固定側金型22と、可動側金型24を備えている。これに加え、射出成形金型20は、成形用可動入れ子26と、取り出し用可動入れ子28を備えている。なお、図2中では、型閉じ状態の射出成形金型20を示している。
固定側金型22は、ボルト等を用いて、射出成形金型20を保持するための固定盤(図示せず)に取り付けられており、その内部に、固定側開口部30と、成形用入れ子変位用空隙部32と、取り出し用入れ子変位用空隙部34と、樹脂通路(図示せず)が設けられている。
【0029】
固定側開口部30は、溶融樹脂を充填する空間であり、固定側金型22のうち、可動側金型24と対向する面(図2中では、下側の面)に開口している。
成形用入れ子変位用空隙部32は、成形用可動入れ子26を内部に配置可能な空間であるとともに、内部に配置した成形用可動入れ子26を移動可能な空間であり、固定側開口部30と連続している。
取り出し用入れ子変位用空隙部34は、取り出し用可動入れ子28を内部に配置可能な空間であるとともに、内部に配置した取り出し用可動入れ子28を移動可能な空間であり、固定側開口部30と連続している。
【0030】
樹脂通路は、溶融樹脂が通過可能に形成されている。また、樹脂通路の一端側は、固定側開口部30に開口しており、樹脂通路の他端側は、図外の樹脂射出装置に連通している。なお、第一実施形態では、一例として、樹脂通路の一端側に、可動式のノズルが設けられている場合を説明する。このノズルは、例えば、成形用可動入れ子26内に配置して、成形用可動入れ子26と共に移動可能な構成とする。
樹脂射出装置は、射出成形品の容積・形状等に応じて、結晶性樹脂または非結晶性樹脂の樹脂材料(固形樹脂材料等)を計量・可塑化し、この計量・可塑化した溶融樹脂を、樹脂通路へ射出する装置である。
【0031】
また、固定側金型22は、固定側開口部30内へ突出可能なエジェクターピン(図示せず)を有している。このエジェクターピンは、固定側開口部30内に突出していない状態が通常の状態である。
なお、エジェクターピンを駆動させるための具体的な構成例としては、例えば、エジェクターピン及び公知のリターンピンが設けられた上側板材と、エジェクターピン及びリターンピンを押さえて固定するための下側板材を備えた構成がある。この場合、射出成形金型20が有する公知のエジェクター装置により、固定側開口部30内へエジェクターピンを突出させ、固定側開口部30内で固化させた射出成形品を取り出すこととなる。
【0032】
可動側金型24は、図外の駆動機構に連結されており、駆動機構が発生する駆動力を用いて、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向(図2中における上下方向。以降の説明でも同様)へ移動可能に形成されている。なお、駆動機構とは、例えば、モーターの回転運動を用いた機械式のものや、油等の液体に圧力を加えた液圧式のものがある。
【0033】
成形用可動入れ子26は、射出成形品Pのうち、外観品質要求部材2に対応する形状寸法で形成されており、成形用入れ子変位用空隙部32内へ移動可能に配置されている。ここで、成形用入れ子変位用空隙部32内における成形用可動入れ子26の移動方向は、固定側開口部30へ近づく方向及び固定側開口部30から離れる方向である。
なお、成形用可動入れ子26は、例えば、入れ子駆動部(図示せず)の駆動により移動する。ここで、入れ子駆動部は、例えば、エアシリンダー、油圧シリンダー、モーター等を用いて形成されており、固定側金型22に内蔵されている。なお、入れ子駆動部の構成は、固定側金型22の外面に取り付けられている構成としてもよい。
【0034】
また、入れ子駆動部の駆動は、例えば、入れ子駆動制御部(図示せず)により行う。ここで、入れ子駆動制御部には、予め、結晶性樹脂及び非結晶性樹脂の樹脂材料の物性(ガラス転移点等)や射出成形品の形状寸法(肉厚等)に応じた、溶融樹脂が冷却されて内部の固化を完了するまでに要する固化完了時間と、機能性要求部材1及び外観品質要求部材2の形状寸法に応じた、成形用可動入れ子26の移動量を記憶させておく。
【0035】
また、成形用可動入れ子26は、具体的に、第一成形部26aと、第二成形部26bと、第三成形部26cを備えている。
第一成形部26aは、外観品質要求部材2のうち貫通孔部14の外周側に対応する形状寸法で形成されており、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向に沿って分割されている。なお、第一実施形態では、一例として、第一成形部26aが、固定側金型22の中心付近において、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向に沿って二分割されている場合を説明する。すなわち、分割されている第一成形部26aは、それぞれ、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向から見て、略コの字型に形成されている。
【0036】
また、分割されている第一成形部26aは、それぞれ、その移動方向が、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向と直交する方向(図2中では左右方向。以降の説明でも同様)に設定されている。なお、図2中では、分割されている第一成形部26aが、それぞれ、固定側開口部30へ最も近づいた位置へ移動した状態を示している。
これに伴い、成形用入れ子変位用空隙部32は、第一成形部26aが配置される空間である、第一空隙部32aを有する構成となる。第一空隙部32aの形状寸法は、第一成形部26a全体を収容可能に設定されている。
【0037】
第二成形部26bは、外観品質要求部材2のうちアンカー嵌合部12の外周側に対応する形状寸法で形成されており、第一成形部26aと同様、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向に沿って分割されている。なお、第一実施形態では、一例として、第二成形部26bが、固定側金型22の中心付近において、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向に沿って二分割されている場合を説明する。すなわち、分割されている第二成形部26bは、それぞれ、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向から見て、略コの字型に形成されている。
【0038】
また、分割されている第二成形部26bは、それぞれ、その移動方向が、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向と直交する方向に設定されている。なお、図2中では、分割されている第二成形部26bが、それぞれ、固定側開口部30へ最も近づいた位置へ移動した状態を示している。
これに伴い、成形用入れ子変位用空隙部32は、第二成形部26bが配置される空間である、第二空隙部32bを有する構成となる。第二空隙部32bの形状寸法は、第二成形部26b全体を収容可能に設定されている。
第三成形部26cは、外観品質要求部材2のうち残りの部分に対応する形状寸法で形成されており、平板状に形成されている。
【0039】
また、第三成形部26cの移動方向は、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向に設定されている。なお、図2中では、第三成形部26cが、固定側開口部30へ最も近づいた位置へ移動した状態を示している。
これに伴い、成形用入れ子変位用空隙部32は、第三成形部26cが配置される空間である、第三空隙部32cを有する構成となる。第三空隙部32cの形状寸法は、第三成形部26c全体を収容可能に設定されている。
取り出し用可動入れ子28は、射出成形品Pのうち、機能性要求部材1に対応する形状寸法、具体的には、機能面保有部4の外周面に対応する平面を有する部分と、この平面を有する部分から固定側開口部30へ突出して貫通部6のうち貫通孔部14内に配置されない部分に対応する突出部を有する部分で形成されている。
【0040】
また、取り出し用可動入れ子28は、取り出し用入れ子変位用空隙部34内へ移動可能に配置されている。ここで、取り出し用入れ子変位用空隙部34内における取り出し用可動入れ子28の移動方向は、固定側開口部30へ近づく方向及び固定側開口部30から離れる方向である。
なお、取り出し用可動入れ子28は、成形用可動入れ子26と同様、例えば、入れ子駆動部の駆動により移動する。また、入れ子駆動部の駆動は、成形用可動入れ子26と同様、例えば、入れ子駆動制御部により行う。ここで、入れ子駆動制御部には、予め、射出成形品Pの形状寸法に応じた、取り出し用可動入れ子28の移動量を記憶させておく。
【0041】
また、取り出し用可動入れ子28は、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向に沿って分割されている。なお、第一実施形態では、一例として、取り出し用可動入れ子28が、固定側金型22の中心付近において、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向に沿って二分割されている場合を説明する。すなわち、分割されている取り出し用可動入れ子28は、それぞれ、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向から見て、略コの字型に形成されている。
また、分割されている取り出し用可動入れ子28は、それぞれ、その移動方向が、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向と直交する方向に設定されている。なお、図2中では、分割されている取り出し用可動入れ子28が、それぞれ、固定側開口部30へ最も近づいた位置へ移動した状態を示している。
【0042】
ここで、図2中に示すように、分割されている第一成形部26aと、分割されている第二成形部26bと、第三成形部26c及び分割されている取り出し用可動入れ子28が、それぞれ、固定側開口部30へ最も近づいた位置へ移動した状態では、成形用可動入れ子26、取り出し用可動入れ子28及び可動側金型24の固定側開口部30と対向する面が、第一成形空間を形成する第一成形空間形成部を構成している。
したがって、第一実施形態の射出成形金型20は、型閉じ状態において成形用可動入れ子26を含む固定側金型22と可動側金型24との間に形成され、溶融した結晶性樹脂及び溶融した非結晶性樹脂のうち一方の溶融樹脂が射出される第一成形空間を形成する第一成形空間形成部を備えている。
【0043】
第一成形空間の形状は、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向から見た断面積が互いに異なる、大断面積空間と小断面積空間とが連続している形状である。
ここで、大断面積空間とは、アンカー部8及びアンカー嵌合部12に対応する形状寸法の空間であり、小断面積空間とは、貫通部6に対応する形状寸法の空間である。また、第一成形空間のうち、大断面積空間及び小断面積空間以外の残りの部分は、機能面保有部4に対応する形状寸法の空間である。
したがって、第一成形空間の形状は、機能面保有部4と、貫通部6及びアンカー部8に対応した形状、すなわち、機能性要求部材1に対応した形状となる。
【0044】
また、入れ子駆動制御部は、第一成形空間へ射出された溶融樹脂が固化した後に、入れ子駆動部を駆動させて、成形用可動入れ子26を、固定側開口部30から離れる方向へ移動させる。
この場合、図3中に示すように、分割されている第一成形部26aと、分割されている第二成形部26bと、第三成形部26cが、それぞれ、固定側開口部30から離れる方向へ移動した状態では、移動した成形用可動入れ子26と、移動していない取り出し用可動入れ子28が、第二成形空間を形成する第二成形空間形成部を構成している。なお、図3は、射出成形金型20の概略構成を示す図であり、射出成形金型20の断面図である。
【0045】
したがって、第一実施形態の射出成形金型20は、第一成形空間へ射出された溶融樹脂が固化した後に移動させた成形用可動入れ子26を含む固定側金型22と可動側金型24との間に型閉じ状態において形成され、溶融した結晶性樹脂及び溶融した非結晶性樹脂のうち他方の溶融樹脂が射出される第二成形空間を形成する第二成形空間形成部を備えている。
【0046】
第二成形空間の形状は、上述した大断面積空間のうち、上述した小断面積空間と連続している部分以外を包囲する形状である。すなわち、第二成形空間の形状は、分割されている第一成形部26aと、分割されている第二成形部26bと、第三成形部26c及び分割されている取り出し用可動入れ子28が、それぞれ、固定側開口部30へ最も近づいた位置へ移動した状態における、成形用可動入れ子26の形状と同じ形状となる(図2参照)。
したがって、第二成形空間の形状は、意匠面保有部10と、アンカー嵌合部12及び貫通孔部14に対応した形状、すなわち、外観品質要求部材2に対応した形状となる。
【0047】
(射出成形方法)
次に、図1から図3を参照しつつ、図4から図8を用いて、上述した構成の射出成形金型20を用いて、射出成形品を製造する工程について説明する。
第一実施形態では、射出成形品を製造する際に、第一成形空間形成工程と、第一射出工程と、第一保圧工程と、第一冷却工程と、第二成形空間形成工程と、第二射出工程と、第二保圧工程と、第二冷却工程と、取り出し工程を含む、射出成形方法を用いる。
【0048】
(第一成形空間形成工程)
以下、第一成形空間形成工程における射出成形金型20の動作を説明する。なお、以下の説明は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型、すなわち、固定側金型22と可動側金型24が型開き状態である状態を前提とする。
第一成形空間形成工程では、成形用可動入れ子26を含む固定側金型22と可動側金型24との間に、型閉じ状態において第一成形空間を形成する。
具体的には、まず、可動側金型24を固定側金型22側へ移動させて、可動側金型24と固定側金型22とを接触させ、図2中に示すように、固定側金型22と可動側金型24を型閉じ状態とする。
【0049】
このとき、入れ子駆動制御部は、入れ子駆動部を駆動させて、分割されている第一成形部26aと、分割されている第二成形部26bと、第三成形部26c及び分割されている取り出し用可動入れ子28を、それぞれ、固定側開口部30へ最も近づいた位置へ移動させる(図2参照)。
これにより、成形用可動入れ子26、取り出し用可動入れ子28及び可動側金型24の固定側開口部30と対向する面により、機能性要求部材1に対応した形状の空間である第一成形空間、すなわち、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向から見た断面積が互いに異なる、大断面積空間と小断面積空間とが連続している形状の第一成形空間を形成して、第一成形空間形成工程を終了する。
【0050】
(第一射出工程、第一保圧工程及び第一冷却工程)
以下、第一射出工程、第一保圧工程及び第一冷却工程における射出成形金型20の動作を説明する。
第一射出工程では、第一成形空間形成工程で形成した第一成形空間へ、溶融した結晶性樹脂及び溶融した非結晶性樹脂のうち一方の溶融樹脂を射出する。
ここで、第一実施形態では、一例として、溶融した結晶性樹脂を、第一成形空間形成工程で形成した第一成形空間へ射出する場合について説明する。
具体的には、図4中に示すように、第一成形空間形成工程において形成した第一成形空間へ、計量・可塑化して溶融した結晶性樹脂(以降の説明及び図中では、「溶融結晶性樹脂R1」と記載する場合がある)を射出して、第一射出工程を終了し、第一保圧工程へ移行する。なお、図4は、第一射出工程において第一成形空間へ溶融樹脂を射出した状態の、射出成形金型20の概略構成を示す図であり、射出成形金型20の断面図である。
【0051】
第一保圧工程では、可動側金型24、成形用可動入れ子26及び取り出し用可動入れ子28の位置を保持し、第一成形空間において、第一射出工程で射出した溶融結晶性樹脂R1を、予め設定した時間をかけて保圧する(図4参照)。第一保圧工程を終了した後、第一冷却工程へ移行する。
第一冷却工程では、上記の第一射出・第一保圧工程において第一成形空間へ射出された溶融結晶性樹脂R1を、固定側金型22及び可動側金型24との熱交換作用により冷却して固化させる(図4参照)。
第一成形空間へ射出された溶融結晶性樹脂R1が固化すると、機能面保有部4、貫通部6及びアンカー部8が成形されて、機能性要求部材1が成形される。
【0052】
また、上記のように表面及び内部が固化した溶融結晶性樹脂R1には、内部の固化が進行する際に発生する収縮により、ヒケが発生する。
ここで、結晶性樹脂は、上述したように、非結晶性樹脂と比較して、成形収縮率が大きいため、溶融結晶性樹脂R1が固化する際に発生するヒケは、第一実施形態と異なり、第一成形空間へ射出する溶融樹脂として、溶融した非結晶性樹脂を用いる場合と比較して、大きなものとなる。
【0053】
(第二成形空間形成工程)
以下、第二成形空間形成工程における射出成形金型20の動作を説明する。
第二成形空間形成工程では、第一射出工程において第一成形空間へ射出された溶融結晶性樹脂R1が固化した後に、成形用可動入れ子26を移動させて、この移動させた成形用可動入れ子26を含む固定側金型22と可動側金型24との間に、型閉じ状態において第二成形空間を形成する。
具体的には、第一射出工程において第一成形空間へ射出された溶融結晶性樹脂R1が表面及び内部の固化を完了した後に成形用可動入れ子26を移動させて、固化を完了した溶融結晶性樹脂R1と成形用可動入れ子26とを離間させる。
【0054】
このとき、入れ子駆動制御部は、入れ子駆動部を駆動させて、固定側開口部30へ最も近づいた位置へ移動している、第一成形部26aと、第二成形部26b及び第三成形部26cを、それぞれ、固定側開口部30から離れる方向へ移動させる(図3参照)。すなわち、第一成形部26a及び第二成形部26bを、それぞれ、分割させて移動させる。
これにより、図5中に示すように、移動した成形用可動入れ子26と、移動していない取り出し用可動入れ子28によって、外観品質要求部材2に対応した形状の空間である第二成形空間、すなわち、大断面積空間のうち小断面積空間と連続している部分以外を包囲する形状の第二成形空間を形成して、第二成形空間形成工程を終了する。なお、図5は、第二成形空間形成工程において第二成形空間を形成した状態の、射出成形金型20の概略構成を示す図であり、射出成形金型20の断面図である。
【0055】
(第二射出工程、第二保圧工程及び第二冷却工程)
以下、第二射出工程、第二保圧工程及び第二冷却工程における射出成形金型20の動作を説明する。
第二射出工程では、第二成形空間形成工程で形成した第二成形空間へ、溶融した結晶性樹脂及び溶融した非結晶性樹脂のうち一方の溶融樹脂を射出する。
ここで、第一実施形態では、上述したように、一例として、溶融した結晶性樹脂を第一成形空間へ射出している。このため、第一実施形態では、溶融した非結晶性樹脂を、第二成形空間形成工程で形成した第二成形空間へ射出する。
【0056】
具体的には、図6中に示すように、第二成形空間形成工程において形成した第二成形空間へ、計量・可塑化して溶融した非結晶性樹脂(以降の説明及び図中では、「溶融非結晶性樹脂R2」と記載する場合がある)を射出する。なお、図6は、第二射出工程において第二成形空間へ溶融樹脂を射出した状態の、射出成形金型20の概略構成を示す図であり、射出成形金型20の断面図である。
【0057】
ここで、第一実施形態では、一例として、溶融非結晶性樹脂R2を形成する非結晶性樹脂を、そのガラス転移点温度が、溶融結晶性樹脂R1を形成する結晶性樹脂のガラス転移点温度よりも低い樹脂とする場合を説明する。
したがって、第二射出工程では、第二成形空間へ射出した溶融非結晶性樹脂R2が有する熱により、既に固化を完了した状態の溶融結晶性樹脂R1が再び溶融することが、防止されている。
【0058】
また、第一実施形態では、一例として、第二成形空間へ射出する溶融非結晶性樹脂R2の温度を、第一射出工程において第一成形空間へ射出した溶融結晶性樹脂R1の温度よりも、40[℃]以上の温度差で低い温度とする場合を説明する。これにより、第一実施形態では、第一射出工程で第一成形空間へ射出する樹脂の温度と第二射出工程で第二成形空間へ射出する樹脂の温度との温度差を、40[℃]以上とする。
したがって、第二射出工程では、第一射出工程で第一成形空間へ射出した溶融結晶性樹脂R1の温度と第二射出工程で第二成形空間へ射出した溶融非結晶性樹脂R2の温度との温度差が、40[℃]未満である場合と比較して、溶融非結晶性樹脂R2が有する熱により、既に固化を完了した状態の溶融結晶性樹脂R1が再び溶融することが、さらに防止されている。
【0059】
また、上述したように、第一射出工程において第一成形空間へ射出した溶融結晶性樹脂R1を形成する結晶性樹脂は、非結晶性樹脂と比較して成形収縮率が大きいため、第一冷却工程で冷却して固化させた溶融結晶性樹脂R1に発生するヒケは大きなものとなる。
このため、第二射出工程において、第二成形空間へ溶融非結晶性樹脂R2を射出すると、固化を完了した状態の溶融結晶性樹脂R1に発生している大きなヒケのうち、第二成形空間に面している部分に発生しているヒケの内部へ溶融非結晶性樹脂R2が充填されることとなる。
【0060】
第二成形空間へ溶融非結晶性樹脂R2を射出すると、第二射出工程を終了し、第二保圧工程へ移行する。
第二保圧工程では、可動側金型24、成形用可動入れ子26及び取り出し用可動入れ子28の位置を保持し、第二成形空間において、第二射出工程で射出した溶融非結晶性樹脂R2を、予め設定した時間をかけて保圧する(図6参照)。第二保圧工程を終了した後、第二冷却工程へ移行する。
【0061】
第二冷却工程では、上記の第二射出・第二保圧工程において第二成形空間へ射出された溶融非結晶性樹脂R2を、成形用可動入れ子26及び取り出し用可動入れ子28を含む固定側金型22との熱交換作用により冷却して固化させる(図6参照)。
第二成形空間へ射出された溶融非結晶性樹脂R2が固化すると、意匠面保有部10と、アンカー嵌合部12及び貫通孔部14が成形されて、外観品質要求部材2が成形される。すなわち、第二成形空間へ射出された溶融非結晶性樹脂R2が固化すると、図6中に示すように、機能性要求部材1が備えるアンカー部8のうち、貫通部6と連続している部分以外を包囲する形状の外観品質要求部材2が成形される。
【0062】
これにより、アンカー部8がアンカー嵌合部12内に嵌合した状態で、外観品質要求部材2が成形されるため、アンカー部8の突出部分8aと、貫通孔部14のうち、貫通部6とアンカー部8が連続する方向から見て突出部分8aと重なっている部分により、機能性要求部材1と外観品質要求部材2とを離間させる方向への力に対する抜け止め部が形成されることとなる。
このため、上述したように、互いの相溶性が非常に低く、固化した状態で互いに面接触している状態であっても、結合力が非常に少ない樹脂である結晶性樹脂と非結晶性樹脂を用いて、機能性要求部材1及び外観品質要求部材2を成形しても、機能性要求部材1と外観品質要求部材2は、互いの相対変位を抑制可能な構成となる。
【0063】
また、非結晶性樹脂は、上述したように、結晶性樹脂と比較して、成形収縮率が小さいため、溶融非結晶性樹脂R2が固化する際に発生するヒケは、溶融結晶性樹脂R1が固化する際に発生したヒケと比較して、小さなものとなる。
すなわち、固化した溶融非結晶性樹脂R2により形成された、射出成形品Pの外観品質要求部材2は、固化により形成されたシンクマークの窪み量が、第一冷却工程で機能性要求部材1に形成されたシンクマークの窪み量よりも小さい。このため、外観品質要求部材2の面精度は、機能性要求部材1の面精度よりも高くなる。
なお、上記の「シンクマーク(ひけマーク)」とは、固化した溶融樹脂の表面に形成された浅い窪みであり、成形空間内に射出された溶融樹脂が冷却されるに従って生じる局部的な内部収縮により、固化した溶融樹脂の表面が窪むことで形成される部位である。
【0064】
また、上述したように、第二射出工程では、固化を完了した状態の溶融結晶性樹脂R1に発生している大きなヒケのうち、第二成形空間に面している部分に発生しているヒケの内部へ、溶融非結晶性樹脂R2が充填される。
このため、第二冷却工程において溶融非結晶性樹脂R2が固化すると、溶融非結晶性樹脂R2のうち、第二成形空間へ射出されて固化した部分に加え、固化を完了した状態の溶融結晶性樹脂R1に発生している大きなヒケのうち、第二成形空間に面している部分に発生しているヒケの内部へ充填されて固化した部分も、固化に伴って発生するヒケが小さい状態で固化することとなる。
これにより、第二冷却工程において溶融非結晶性樹脂R2の固化が完了すると、射出成形品P全体としてヒケが小さい状態となり、実際に製造した射出成形品Pの形状寸法と予め設定した形状寸法との差異を、減少させることが可能となる。
【0065】
(取り出し工程)
以下、取り出し工程における射出成形金型20の動作を説明する。
取り出し工程では、まず、入れ子駆動制御部により入れ子駆動部を駆動させて、固定側開口部30へ最も近づいた位置へ移動している取り出し用可動入れ子28を、図7中に示すように、固定側開口部30から離れる方向へ、それぞれ、分割させて移動させる。なお、図7は、取り出し工程において取り出し用可動入れ子28を移動させた状態の、射出成形金型20の概略構成を示す図であり、射出成形金型20の断面図である。
【0066】
具体的には、取り出し用可動入れ子28を移動させて、取り出し用可動入れ子28のうち上述した突出部を有する部分を、固定側金型22と可動側金型24との型閉じ及び型開き方向から見て射出成形品と重ならない位置まで移動させる。なお、図7中では、固化した溶融結晶性樹脂R1及び溶融非結晶性樹脂R2により形成された射出成形品を、符号「P」を付して示している。
これにより、移動させた取り出し用可動入れ子28によって、固定側金型22内に、射出成形品Pが移動可能な空間を形成する。
【0067】
次に、型閉じ状態の固定側金型22及び可動側金型24に対し、可動側金型24を固定側金型22から離れる方向へ移動させて、図8中に示すように、可動側金型24と固定側金型22とを離間させ、固定側金型22と可動側金型24を型開き状態とする。なお、図8は、取り出し工程において固定側金型22と可動側金型24を型開き状態とした状態の、射出成形金型20の概略構成を示す図であり、射出成形金型20の断面図である。
そして、固定側金型22と可動側金型24を型開き状態とした後、固定側開口部30内へエジェクターピンを突出させて、固定側開口部30内(第一成形空間及び第二成形空間内)で固化させた射出成形品Pを取り出して、射出成形品Pの製造を終了する。
【0068】
以上により、第一実施形態の射出成形方法であれば、第一射出工程において、大断面積空間と小断面積空間とが連続している形状の第一成形空間へ溶融結晶性樹脂R1を射出する。これに加え、溶融結晶性樹脂R1が固化した後に、第二射出工程において、大断面積空間のうち小断面積空間と連続している部分以外を包囲する形状の第二成形空間へ溶融非結晶性樹脂R2を射出する。
これにより、第二成形空間へ射出した溶融非結晶性樹脂R2が固化すると、機能性要求部材1と外観品質要求部材2とを離間させる方向への力に対する抜け止め部が形成されることとなる。
【0069】
その結果、互いの相溶性が非常に低い樹脂である結晶性樹脂と非結晶性樹脂を用いて、固化した溶融結晶性樹脂R1である機能性要求部材1と、固化した溶融非結晶性樹脂R2である外観品質要求部材2を成形しても、これらの機能性要求部材1と外観品質要求部材2は、互いの相対変位を抑制可能な構成となる。
このため、互いの相溶性が非常に低い樹脂である結晶性樹脂と非結晶性樹脂を用いても、結晶性樹脂を用いて形成した機能性要求部材1と非結晶性樹脂を用いて形成した外観品質要求部材2との結合力が強く、機能性の要求と外観品質の要求を両立させることが可能な、射出成形品Pを製造することが可能となる。
【0070】
また、第一実施形態の射出成形方法であれば、第一射出工程では、溶融結晶性樹脂R1を第一成形空間へ射出し、第二射出工程では、ガラス転移点温度が結晶性樹脂よりも低い非結晶性樹脂を溶融させた溶融非結晶性樹脂R2を第二成形空間へ射出している。
これにより、第二射出工程において、第二成形空間へ射出した溶融非結晶性樹脂R2が有する熱により、既に固化を完了した状態の溶融結晶性樹脂R1が再び溶融することを防止することが可能となる。
このため、実際に成形した機能性要求部材1の形状寸法と予め設定した形状寸法との差異を減少させることが可能となり、実際に製造した射出成形品Pの形状寸法と予め設定した形状寸法との差異を減少させることが可能となるため、射出成形品Pの形状が予め設定した形状から変化することを抑制することが可能となる。
【0071】
また、第一実施形態の射出成形方法であれば、第一射出工程で第一成形空間へ射出する溶融結晶性樹脂R1の温度と第二射出工程で第二成形空間へ射出する溶融非結晶性樹脂R2の温度との温度差を、40[℃]以上としている。
これにより、上記の温度差を40[℃]未満とした場合と比較して、溶融非結晶性樹脂R2が有する熱により、既に固化を完了した状態の溶融結晶性樹脂R1が再び溶融することを、さらに防止することが可能となる。
このため、上記の温度差を40[℃]未満とした場合と比較して、実際に成形した機能性要求部材1の形状寸法と予め設定した形状寸法との差異を、さらに減少させることが可能となる。
【0072】
また、上述したように、第一実施形態の射出成形品Pでは、貫通部6とアンカー部8が連続する方向から見て、アンカー部8の一部である突出部分8aが、意匠面保有部10のうち貫通孔部14の周辺部分と重なっている。
これにより、射出成形品Pに対し、機能性要求部材1と外観品質要求部材2が離間する方向への応力が加わった場合であっても、意匠面保有部10のうち貫通孔部14の周辺部分とアンカー部8の突出部分8aにより、機能性要求部材1と外観品質要求部材2との相対変位が抑制されることとなる。
【0073】
その結果、互いの相溶性が非常に低い樹脂である結晶性樹脂と非結晶性樹脂を用いて、機能性要求部材1と外観品質要求部材2を成形しても、これらの機能性要求部材1と外観品質要求部材2は、互いの相対変位を抑制可能な構成となる。
このため、結晶性樹脂を用いて形成した機能性要求部材1と非結晶性樹脂を用いて形成した外観品質要求部材2との結合力が強く、機能性の要求と外観品質の要求を両立させることが可能な、射出成形品Pを製造することが可能となる。
【0074】
また、上述したように、第一実施形態の射出成形金型20であれば、第一成形空間形成部により形成した第一成形空間は、大断面積空間と小断面積空間とが連続している形状である。これに加え、第二成形空間形成部により形成した第二成形空間は、大断面積空間のうち小断面積空間と連続している部分以外を包囲する形状である。
これにより、第二成形空間へ射出した溶融非結晶性樹脂R2が固化すると、機能性要求部材1と外観品質要求部材2とを離間させる方向への力に対する抜け止め部が形成されることとなる。
【0075】
その結果、互いの相溶性が非常に低い樹脂である結晶性樹脂と非結晶性樹脂を用いて、固化した溶融結晶性樹脂R1である機能性要求部材1と、固化した溶融非結晶性樹脂R2である外観品質要求部材2を成形しても、これらの機能性要求部材1と外観品質要求部材2は、互いの相対変位を抑制可能な構成となる。
このため、射出成形金型20の構成が、互いの相溶性が非常に低い樹脂である結晶性樹脂と非結晶性樹脂を用いても、結晶性樹脂を用いて形成した機能性要求部材1と非結晶性樹脂を用いて形成した外観品質要求部材2との結合力が強く、機能性の要求と外観品質の要求を両立させることが可能な、射出成形品Pを製造することが可能な構成となる。
【0076】
また、第一実施形態では、二色成形により、機能性要求部材1と外観品質要求部材2を一体成形して射出成形品Pを製造しているため、機能性要求部材1と外観品質要求部材2とを個別に成形し、これらの成形した部材を組み合わせて射出成形品Pを製造する場合と比較して、製造工程を簡略化・合理化することが可能となる。
これにより、第一実施形態では、機能性要求部材1と外観品質要求部材2とを個別に成形し、これらの成形した部材を組み合わせて射出成形品Pを製造する場合と比較して、射出成形品Pの製造コストを低減することが可能となる。
【0077】
また、第一実施形態では、二色成形により射出成形品Pを製造しているため、例えば、インサート成形により射出成形品Pを製造する場合と比較して、製造工程を簡略化・合理化することが可能となる。
これにより、第一実施形態では、例えば、インサート成形により射出成形品Pを製造する場合と比較して、射出成形品Pの製造コストを低減することが可能となる。
【0078】
(変形例)
以下、第一実施形態の変形例を列挙する。
第一実施形態においては、第一成形空間に射出する溶融樹脂を溶融結晶性樹脂R1とし、第二成形空間に射出する溶融樹脂を溶融非結晶性樹脂R2としたが、これに限定するものではなく、第一成形空間に射出する溶融樹脂を溶融非結晶性樹脂R2とし、第二成形空間に射出する溶融樹脂をと溶融結晶性樹脂R1してもよい。
この場合、溶融結晶性樹脂R1を形成する結晶性樹脂を、そのガラス転移点温度が、溶融非結晶性樹脂R2を形成する非結晶性樹脂のガラス転移点温度よりも低い樹脂とする。
【0079】
このように、第一成形空間に射出する溶融樹脂を溶融非結晶性樹脂R2とし、第二成形空間に射出する溶融樹脂を溶融結晶性樹脂R1とした場合、第二射出工程において、第二成形空間へ射出した溶融結晶性樹脂R1が有する熱により、既に固化を完了した状態の溶融非結晶性樹脂R2が再び溶融することを防止することが可能となる。
このため、実際に成形した外観品質要求部材2の形状寸法と予め設定した形状寸法との差異を減少させることが可能となり、実際に製造した射出成形品Pの形状寸法と予め設定した形状寸法との差異を減少させることが可能となるため、射出成形品Pの形状が予め設定した形状から変化することを抑制することが可能となる。
【0080】
また、第一実施形態においては、アンカー部8の構成を、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向と直交する方向から見た断面形状が方形である構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図9中に示すように、アンカー部8の構成を、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向と直交する方向(図9中では紙面の厚さ方向。以降の説明でも同様)から見た断面形状が円形である構成としてもよい。なお、図9は、第一実施形態の変形例を示す図である。
【0081】
同様に、例えば、図10中に示すように、アンカー部8の構成を、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向と直交する方向(図10中では紙面の厚さ方向。以降の説明でも同様)から見た断面形状が三角形である構成としてもよい。なお、図10は、第一実施形態の変形例を示す図である。また、特に図示しないが、アンカー部8の構成を、機能性要求部材1と外観品質要求部材2の配列方向と直交する方向から見た断面形状が五角形以上の多角形である構成としてもよい。
【0082】
また、第一実施形態においては、機能性要求部材1が貫通部6とアンカー部8を備え、外観品質要求部材2がアンカー嵌合部12と貫通孔部14を備えている構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図11中に示すように、外観品質要求部材2が貫通部6とアンカー部8を備え、機能性要求部材1がアンカー嵌合部12と貫通孔部14を備えている構成としてもよい。なお、図11は、第一実施形態の変形例を示す図である。
【0083】
また、第一実施形態においては、成形用可動入れ子26を固定側金型22内で移動させる(ダイスライド法)ことにより、射出成形品Pを製造したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、インサート法やローテーションにより、射出成形品Pを製造してもよい。
また、第一実施形態においては、固定側金型22に成形用可動入れ子26及び取り出し用可動入れ子28が取り付けられている構成としたが、これに限定するものではなく、可動側金型24に成形用可動入れ子26及び取り出し用可動入れ子28が取り付けられている構成としてもよい。また、固定側金型22及び可動側金型24に、それぞれ、成形用可動入れ子26及び取り出し用可動入れ子28が取り付けられている構成としてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 機能性要求部材、2 外観品質要求部材、4 機能面保有部、6 貫通部、8 アンカー部、8a 突出部分、10 意匠面保有部、12 アンカー嵌合部、14 貫通孔部、20 射出成形金型、22 固定側金型、24 可動側金型、26 成形用可動入れ子、26a 第一成形部、26b 第二成形部、26c 第三成形部、28 取り出し用可動入れ子、30 固定側開口部、32 成形用入れ子変位用空隙部、32a 第一空隙部、32b 第二空隙部、32c 第三空隙部、34 取り出し用入れ子変位用空隙部、P 射出成形品、R1 溶融結晶性樹脂、R2 溶融非結晶性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型閉じ及び型開きが可能な一組の金型のうち少なくとも一方に取り付けられている成形用可動入れ子を含む前記一組の金型間に、前記型閉じ状態において第一成形空間を形成する第一成形空間形成工程と、
前記第一成形空間形成工程で形成した前記第一成形空間へ、溶融した結晶性樹脂及び溶融した非結晶性樹脂のうち一方の溶融樹脂を射出する第一射出工程と、
前記第一射出工程において前記第一成形空間へ射出された前記一方の溶融樹脂が固化した後に前記成形用可動入れ子を移動させて、当該移動させた前記成形用可動入れ子を含む前記一組の金型間に前記型閉じ状態において第二成形空間を形成する第二成形空間形成工程と、
前記第二成形空間形成工程で形成した前記第二成形空間へ、溶融した前記結晶性樹脂及び溶融した前記非結晶性樹脂のうち他方の溶融樹脂を射出する第二射出工程と、を有し、
前記第一成形空間形成工程では、前記一組の金型の型閉じ及び型開き方向から見た断面積が互いに異なる大断面積空間と小断面積空間とが連続している形状の前記第一成形空間を形成し、
前記第二成形空間形成工程では、前記大断面積空間のうち前記小断面積空間と連続している部分以外を包囲する形状の前記第二成形空間を形成することを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
前記第一射出工程では、溶融した前記結晶性樹脂を前記第一成形空間へ射出し、
前記第二射出工程では、溶融した前記非結晶性樹脂を前記第二成形空間へ射出し、
前記非結晶性樹脂のガラス転移点温度は、前記結晶性樹脂のガラス転移点温度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載した射出成形方法。
【請求項3】
前記第一射出工程では、溶融した前記非結晶性樹脂を前記第一成形空間へ射出し、
前記第二射出工程では、溶融した前記結晶性樹脂を前記第二成形空間へ射出し、
前記結晶性樹脂のガラス転移点温度は、前記非結晶性樹脂のガラス転移点温度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載した射出成形方法。
【請求項4】
前記第一射出工程で前記第一成形空間へ射出する樹脂の温度と前記第二射出工程で前記第二成形空間へ射出する樹脂の温度との温度差を、40℃以上とすることを特徴とする請求項2または請求項3に記載した射出成形方法。
【請求項5】
結晶性樹脂により形成されている機能性要求部材と、非結晶性樹脂により形成されている外観品質要求部材と、を備え、
前記機能性要求部材及び前記外観品質要求部材のうち一方の部材は、前記機能性要求部材及び前記外観品質要求部材のうち他方の部材における前記一方の部材に最も近い面を貫通する貫通部と、当該貫通部と連続して前記他方の部材の内部に嵌合するアンカー部と、を有し、
前記アンカー部の一部は、前記貫通部と前記アンカー部が連続する方向から見て、前記他方の部材のうち前記貫通部が貫通していない部分と重なっていることを特徴とする射出成形品。
【請求項6】
型閉じ及び型開きが可能な一組の金型のうち少なくとも一方に取り付けられている成形用可動入れ子と、
前記型閉じ状態において前記成形用可動入れ子を含む前記一組の金型間に形成され、且つ溶融した結晶性樹脂及び溶融した非結晶性樹脂のうち一方の溶融樹脂が射出される第一成形空間を形成する第一成形空間形成部と、
前記第一成形空間へ射出された前記一方の溶融樹脂が固化した後に移動させた前記成形用可動入れ子を含む前記一組の金型間に前記型閉じ状態において形成され、且つ溶融した前記結晶性樹脂及び溶融した前記非結晶性樹脂のうち他方の溶融樹脂が射出される第二成形空間を形成する第二成形空間形成部と、を備え、
前記第一成形空間及び前記第二成形空間の一方の成形空間は、前記一組の金型の型閉じ及び型開き方向から見た断面積が互いに異なる大断面積空間と小断面積空間とが連続している形状であり、
前記第一成形空間及び前記第二成形空間の他方の成形空間は、前記大断面積空間のうち前記小断面積空間と連続している部分以外を包囲する形状であることを特徴とする射出成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−250509(P2012−250509A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126688(P2011−126688)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】