説明

射出成形機及び油圧アクチュエータ

【課題】より効率的に被駆動部を上下動させることができる油圧アクチュエータを備える射出成形機を提供すること。
【解決手段】射出装置20を上下動させる油圧アクチュエータ100BL、100BRを備える射出成形機200は、ピストン1BLa、1BRaで画成されるヘッド側油室1BLb、1BRbとロッド側油室1BLc、1BRcとを有し、ヘッド側油室1BLb、1BRbにある油で射出装置20の自重圧を受ける片ロッド油圧シリンダ1BL、1BRと、一方のポートがロッド側油室1BLc、1BRcに連通され、他方のポートがヘッド側油室1BLb、1BRbに連通される双方向油圧ポンプと、双方向油圧ポンプを駆動する電動モータと、を備え、電動モータは、射出装置20の自重圧を受けるヘッド側油室1BLb、1BRbにある油の流出圧に抗するように、双方向油圧ポンプを駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧を利用して被駆動部を上下動させる油圧アクチュエータに関し、特に、シリンダ内壁及びピストンで画成されるロッド側油室とヘッド側油室とを有し、そのロッド側油室又はそのヘッド側油室にある油でその被駆動部の自重圧を受ける片ロッド油圧シリンダを備えた油圧アクチュエータ及びその油圧アクチュエータを備える射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ポンプが吐出する油圧を利用して被駆動部を上下動させる片ロッド油圧シリンダであり、そのロッド側油室にある作動油でその被駆動部の自重圧を受ける片ロッド油圧シリンダを備えた流体圧式駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この流体圧式駆動装置は、その油圧シリンダのロッド側油室に接続される作動油戻り路に電磁流量調整弁を配置し、そのロッド側油室から流出する作動油の流量を制限し、そのロッドの下方への伸長速度が増大し過ぎないようにしている。
【0004】
また、図1は、特許文献1に記載されるような従来の流体圧アクチュエータの構成を示す概略図であり、流体圧アクチュエータ50は、ピストン1a及びシリンダ内壁によって画成されるヘッド側油室1b及びロッド側油室1cを有する不動部材としての油圧シリンダ1と、電動モータ2と、電動モータ2によって駆動される、その吸入ポートが圧油タンクTに連通されその吐出ポートが油圧シリンダ1のヘッド側油室1bに連通される油圧ポンプ3と、ピストン1aから鉛直下方に延び被駆動部Wを保持する可動部材としてのロッド4と、ロッド4の位置を検出する位置センサ5と、油圧ポンプ3が吐出する作動油の流れ方向を切り替え且つ油圧シリンダ1に流入する作動油の流量を制御する流量制御弁6と、位置センサ5の出力に基づいて電動モータ2及び流量制御弁6を制御する制御装置7と、ロッド側油室1c内の圧力が所定値以上となる場合にロッド側油室1cと流量制御弁6とを連通させ、ロッド側油室1c内の圧力が所定値未満となる場合にロッド側油室1cと流量制御弁6とを遮断するカウンタバランス弁8と、ロッド側油室1cから流量制御弁6への流れを禁止しながら流量制御弁6からロッド側油室1cへの流れを許容するチェック弁9とで構成される。
【0005】
制御装置7は、ヘッド側油室1bの断面積に基づいて、被駆動部Wを所望の速度で下降させるために必要な、ヘッド側油室1bに流入する作動油の流量を算出し、その算出した流量に応じて電動モータ2及び流量制御弁6に制御信号を出力し、ヘッド側油室1bに流入する作動油の流量を制御しながら被駆動部Wを所望の速度で下降させるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−287206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されるような従来の流体圧アクチュエータ50は、被駆動部Wを適切な速度で下降させるために、電磁流量調整弁やカウンタバランス弁8等を利用して、重力による被駆動部Wの自然落下に抗する力を作動油戻り路内に常に発生させておく必要があり、エネルギー効率の点で問題がある。
【0008】
上述の点に鑑み、本発明は、より効率的に被駆動部を上下動させることができる油圧アクチュエータ及びその油圧アクチュエータを備える射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係る射出成形機は、被駆動部を上下動させる油圧アクチュエータを備える射出成形機であって、ピストンで画成されるロッド側油室とヘッド側油室とを有し、該ロッド側油室又は該ヘッド側油室にある油で該被駆動部の自重圧の少なくとも一部を受ける片ロッドシリンダと、一方のポートが前記片ロッドシリンダのロッド側油室に連通され、他方のポートが前記片ロッドシリンダのヘッド側油室に連通される双方向油圧ポンプと、前記双方向油圧ポンプを駆動するモータと、を備え、前記モータは、前記被駆動部の自重圧の少なくとも一部を受ける前記ロッド側油室又は前記ヘッド側油室にある油の流出圧に抗するように、前記双方向油圧ポンプを駆動する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の実施例に係る油圧アクチュエータは、被駆動部を上下動させる油圧アクチュエータであって、ピストンで画成されるロッド側油室とヘッド側油室とを有し、該ロッド側油室又は該ヘッド側油室にある油で該被駆動部の自重圧の少なくとも一部を受ける片ロッドシリンダと、一方のポートが前記片ロッドシリンダのロッド側油室に連通され、他方のポートが前記片ロッドシリンダのヘッド側油室に連通される双方向油圧ポンプと、前記双方向油圧ポンプを駆動するモータと、を備え、前記モータは、前記被駆動部の自重圧の少なくとも一部を受ける前記ロッド側油室又は前記ヘッド側油室にある油の流出圧に抗するように、前記双方向油圧ポンプを駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述の手段により、本発明は、より効率的に被駆動部を上下動させることができる油圧アクチュエータ及びその油圧アクチュエータを備える射出成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の流体圧アクチュエータの構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例に係る油圧アクチュエータの構成例を示す概略図である。
【図3】被駆動部を下降させる場合の油圧アクチュエータの動作を示す。
【図4】被駆動部を上昇させる場合の油圧アクチュエータの動作を示す。
【図5】本発明の別の実施例に係る油圧アクチュエータの構成例を示す概略図である。
【図6】本発明の実施例に係る油圧アクチュエータを備える射出成形機の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。
【0014】
図2は、本発明の実施例に係る油圧アクチュエータ100の構成例を示す概略図であり、図2において、従来の流体圧アクチュエータと同じ構成要素は、同じ参照符号を有するものとする。
【0015】
油圧アクチュエータ100は、竪型射出成形機、油圧プレス装置、又は油圧昇降装置等に適用可能な油圧アクチュエータであって、閉回路駆動方式を採用し、主に、ピストン1a及びシリンダ内壁によって画成されるヘッド側油室1b及びロッド側油室1cを有する油圧シリンダ1と、電動モータ2と、ピストン1aから鉛直下方に延び被駆動部Wを保持するロッド4と、ロッド4の位置を検出する位置センサ5と、双方向油圧ポンプ10と、フラッシング弁11と、チェック弁12L、12Rと、安全弁13L、13Rと、制御装置14と、プレフィル弁15とから構成される。
【0016】
双方向油圧ポンプ10は、電動モータ2によって駆動され、その第一ポートが油圧シリンダ1のヘッド側油室1bに連通されその第二ポートが油圧シリンダ1のロッド側油室1cに連通される。
【0017】
フラッシング弁11は、油圧シリンダ1のヘッド側油室1bと双方向油圧ポンプ10の第一ポートとを繋ぐ管路、及び、ロッド側油室1cと双方向油圧ポンプ10の第二ポートとを繋ぐ管路のうちの圧力が低いほうの管路とタンクT1とを連通させるための三位置四ポートのスプール弁である。
【0018】
チェック弁12Lは、油圧シリンダ1のヘッド側油室1bと双方向油圧ポンプ10の第一ポートとを繋ぐ管路内の圧力がタンクT1の圧力未満となった場合に、タンクT1からその管路に作動油を供給するための弁である。
【0019】
チェック弁12Rは、油圧シリンダ1のロッド側油室1cと双方向油圧ポンプ10の第二ポートとを繋ぐ管路内の圧力がタンクT1の圧力未満となった場合に、タンクT1からその管路に作動油を供給するための弁である。
【0020】
安全弁13Lは、油圧シリンダ1のヘッド側油室1bと双方向油圧ポンプ10の第一ポートとを繋ぐ管路内の圧力が所定圧力以上となった場合に、その管路内の作動油をタンクT1に逃がすための弁である。
【0021】
安全弁13Rは、油圧シリンダ1のロッド側油室1cと双方向油圧ポンプ10の第二ポートとを繋ぐ管路内の圧力が所定圧力以上となった場合に、その管路内の作動油をタンクT1に逃がすための弁である。
【0022】
制御装置14は、油圧アクチュエータ100の各種構成要素を制御するための装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータであって、各種演算をCPUに実行させながら、電動モータ2及びプレフィル弁15を制御する。
【0023】
具体的には、制御装置14は、被駆動部Wを下降させる場合、位置センサ5が検出した被駆動部Wの現在位置(高さ)と入力装置(図示せず。)を通じて操作者が入力する被駆動部Wの目標位置(高さ)との間の差ΔD(cm)を算出し、その差ΔD(cm)に応じた被駆動部Wの目標下降速度V(cm/秒)を決定する。
【0024】
その後、制御装置14は、決定した被駆動部Wの目標下降速度V(cm/秒)に油圧シリンダ1のロッド側油室1cの断面積A(cm)を乗算して目標流量Q(cm/秒)を導き出す。
【0025】
その後、制御装置14は、目標流量Q(cm/秒)を双方向油圧ポンプ10の一回転当たりの吐出量q(cm/回転数)で除算して目標回転数N(rps(revolution per second):1秒当たりの回転数)を導き出し、その導き出した目標回転数N(rps)に対応する制御信号(モータ回転指令値)を電動モータ2に対して出力する。被駆動部Wを上昇させる場合についても同様であり、制御装置14は、目標上昇速度(cm/秒)を決定した上で、油圧シリンダ1のロッド側油室1cの断面積A(cm)に基づいて、電動モータ2に出力するための制御信号(モータ回転指令値)を算出する。
【0026】
また、制御装置14は、ロッド側油室1cから作動油を吸い出しヘッド側油室1bに向けて作動油を吐出するように双方向油圧ポンプ10を回転させる場合に、所定の制御信号をプレフィル弁15(後述)に出力してその設定位置を第一設定位置とし、油圧シリンダ1のヘッド側油室1b内の圧力がタンクT2の圧力未満となったときにタンクT2からそのヘッド側油室1b内に作動油を補填できるようにする。なお、タンクT2は、タンクT1と一体であってもよく、別体であってもよい。
【0027】
一方で、制御装置14は、ヘッド側油室1bから作動油を吸い出しロッド側油室1cに向けて作動油を吐出するように双方向油圧ポンプ10を回転させる場合には、所定の制御信号をプレフィル弁15に出力してその設定位置を第二設定位置とし、ヘッド側油室1b内の作動油をタンクT2に向けて排出できるようにする。
【0028】
プレフィル弁15は、タンクT2とヘッド側油室1bとの間の作動油の流れを制御するための二位置二ポートのスプール弁であり、制御装置14からの制御信号に応じて位置を切り替えるようにする。
【0029】
プレフィル弁15の第一設定位置(図中右側)は、油圧シリンダ1のヘッド側油室1b内の圧力がタンクT2の圧力未満となったときにタンクT2からそのヘッド側油室1b内に作動油を補填できるようにする。
【0030】
また、プレフィル弁15の第二設定位置(図中左側)は、ヘッド側油室1bとタンクT2とを連通し、両者間を作動油が流通できるようにする。
【0031】
なお、プレフィル弁15は、第一設定位置及び第二設定位置のそれぞれが担う機能と同様の機能を有するパイロットチェック弁で構成されてもよい。
【0032】
次に、図3及び図4を参照しながら、被駆動部Wを上下動させる場合の油圧アクチュエータ100の動作について説明する。
【0033】
最初に、図3を参照しながら、被駆動部Wを下降させる場合の油圧アクチュエータ100の動作について説明する。
【0034】
入力装置(図示せず。)を通じて被駆動部Wの目標位置(高さ)が操作者により入力されると、制御装置14は、位置センサ5の出力に基づいて被駆動部Wの現在位置(高さ)を検出し、現在位置(高さ)と目標位置(高さ)との間の差(cm)を算出し、その差の大きさに応じた目標下降速度(cm/秒)を決定する。
【0035】
その後、制御装置14は、決定した被駆動部Wの目標下降速度V(cm/秒)に油圧シリンダ1のロッド側油室1cの断面積A(cm)を乗算して目標流量Q(cm/秒)を導き出し、目標流量Q(cm/秒)を双方向油圧ポンプ10の一回転当たりの吐出量q(cm/回転数)で除算して目標回転数N(rps)を導き出し、その導き出した目標回転数N(rps)に対応する制御信号(モータ回転指令値)を電動モータ2に対して出力する。
【0036】
電動モータ2は、そのモータ回転指令値に応じた速度で回転して双方向油圧ポンプ10を回転駆動し、油圧シリンダ1のロッド側油室1cから作動油を吸い出させるようにし(矢印AR1及びAR2参照。)、且つ、その吸い出した作動油を油圧シリンダ1のヘッド側油室1bに向けて吐出させるようにする(矢印AR3参照。)。
【0037】
このとき、ロッド側油室1c内の圧力(双方向油圧ポンプ10の吸入側ポートとロッド側油室1cとを繋ぐ管路内の圧力)は、被駆動部Wの自重圧のために所定値よりも高い圧力となっているので、フラッシング弁11は、図の左側に移動させられ(矢印AR4参照。)、双方向油圧ポンプ10の吐出側ポートとヘッド側油室1bとを繋ぐ管路をタンクT1に連通させる。
【0038】
これにより、双方向油圧ポンプ10とヘッド側油室1bとの間の距離が長くその間の圧力損失が大きい場合、双方向油圧ポンプ10が吐出する作動油は、ヘッド側油室1bに至ることなく、フラッシング弁11を通じてタンクT1に排出されることとなる(矢印AR5〜AR8参照。)。
【0039】
一方、双方向油圧ポンプ10からの作動油の供給が絶たれたヘッド側油室1bは、その内部の圧力が低下するために、第一設定位置となっているプレフィル弁15を通じてタンクT2から作動油が補填されることとなる(矢印AR9参照。)。
【0040】
これにより、プレフィル弁15は、ヘッド側油室1bに流入する作動油量とロッド側油室1cから流出する作動油量との間の差(ヘッド側油室1bに流入する作動油量がロッド側油室1cから流出する作動油量よりも少ない)を吸収することができる。
【0041】
なお、双方向油圧ポンプ10とヘッド側油室1bとの間の距離が短くその間の圧力損失が小さい場合には、双方向油圧ポンプ10が吐出する作動油は、フラッシング弁11を通じてタンクT1に排出されることなく、ヘッド側油室1bに供給されることとなる。
【0042】
この場合においても、ヘッド側油室1bの断面積がロッド側油室1cの断面積よりも大きいことに起因して、双方向油圧ポンプ10が吐出する作動油の油量は、ロッド4が下降するにつれて増大するヘッド側油室1bの体積を完全に満たすには十分でないため、ヘッド側油室1bは、双方向油圧ポンプ10が吐出する作動油がフラッシング弁11を通じてタンクT1に排出される場合と同様に、第一設定位置となっているプレフィル弁15を通じてタンクT2から作動油が補填されることとなる(矢印AR9参照。)。
【0043】
このようにして、制御装置14は、被駆動部Wの下降速度を抑制するように双方向油圧ポンプ10を回転駆動させ、ロッド側油室1c内の作動油を吸い出させるようにするので、被駆動部Wの自重圧を吸収しながら被駆動部Wの下降速度を適切に制御することができる。
【0044】
次に、図4を参照しながら、被駆動部Wを上昇させる場合の油圧アクチュエータ100の動作について説明する。
【0045】
入力装置(図示せず。)を通じて被駆動部Wの目標位置(高さ)が操作者により入力されると、制御装置14は、位置センサ5の出力に基づいて被駆動部Wの現在位置(高さ)を検出し、現在位置(高さ)と目標位置(高さ)との間の差(cm)を算出し、その差の大きさに応じた目標上昇速度(cm/秒)を決定する。
【0046】
その後、制御装置14は、決定した被駆動部Wの目標上昇速度V(cm/秒)に油圧シリンダ1のロッド側油室1cの断面積A(cm)を乗算して目標流量Q(cm/秒)を導き出し、目標流量Q(cm/秒)を双方向油圧ポンプ10の一回転当たりの吐出量q(cm/回転数)で除算して目標回転数N(rps)を導き出し、その導き出した目標回転数N(rps)に対応する制御信号(モータ回転指令値)を電動モータ2に対して出力する。
【0047】
電動モータ2は、そのモータ回転指令値に応じた速度で回転して双方向油圧ポンプ10を回転駆動し、油圧シリンダ1のヘッド側油室1bから作動油を吸い出させるようにし(矢印AR10及びAR11参照。)、且つ、その吸い出した作動油を油圧シリンダ1のロッド側油室1cに向けて吐出させるようにする(矢印AR12及びAR13参照。)。
【0048】
このとき、ロッド側油室1c内の圧力(双方向油圧ポンプ10の吐出側ポートとロッド側油室1cとを繋ぐ管路内の圧力)は、被駆動部Wの自重圧を上回る吐出圧のために所定値よりも高い圧力となっているので、フラッシング弁11は、被駆動部Wを下降させる場合と同様、図の左側に移動させられ(矢印AR14参照。)、双方向油圧ポンプ10の吸入側ポートとヘッド側油室1bとを繋ぐ管路をタンクT1に連通させる。
【0049】
これにより、ヘッド側油室1bから流出する作動油の一部は、双方向油圧ポンプ10を通じてロッド側油室1cに送られることなく、フラッシング弁11を通じてタンクT1に排出されることとなる(矢印AR15〜AR18参照。)。
【0050】
ヘッド側油室1bから流出する作動油量とロッド側油室1cに流入する作動油量との間の差(ヘッド側油室1bから流出する作動油量がロッド側油室1cに流入する作動油量よりも多い)を吸収するためである。
【0051】
また、ロッド4が上昇するにつれてその体積が減少するヘッド側油室1bから流出する作動油の一部は、第二設定位置となっているプレフィル弁15を通じてタンクT2に排出される(矢印AR19参照。)。
【0052】
ヘッド側油室1bから流出する作動油の一部がフラッシング弁11を通じてタンクT1に排出される場合と同様、ヘッド側油室1bから流出する作動油量とロッド側油室1cに流入する作動油量との間の差(ヘッド側油室1bから流出する作動油量がロッド側油室1cに流入する作動油量よりも多い)を吸収するためである。
【0053】
このようにして、制御装置14は、ヘッド側油室1bから流出する作動油量とロッド側油室1cに流入する作動油量との間の差を吸収しながら、被駆動部Wの上昇速度を適切に制御することができる。
【0054】
以上の構成により、油圧アクチュエータ100は、従来の流体圧アクチュエータ50に搭載されるようなカウンタバランス弁を省略することができ、また、カウンタバランス弁を省略することによって、カウンタバランス弁のリリーフ圧を超えるようにするために必要とされたヘッド側油室1bの加圧を省略することができ、余分な圧力損失を発生させずに、より効率的に被駆動部Wを上下動させることができる。
【0055】
次に、図5を参照しながら、本発明の別の実施例に係る油圧アクチュエータ100Aについて説明する。
【0056】
油圧アクチュエータ100Aは、油圧シリンダ1A、ロッド4A、及び被駆動部Wの配置が異なる点で油圧アクチュエータ100と相違するが、その他の点で共通する。そのため、共通部分の説明を省略しながら、相違部分を詳細に説明するものとする。
【0057】
油圧シリンダ1Aは、ピストン1Aa及びシリンダ内壁によって画成されるヘッド側油室1Ab及びロッド側油室1Acを有し、ヘッド側油室1Abが双方向油圧ポンプ10の一方のポートに連通され、ロッド側油室1Acが双方向油圧ポンプ10の他方のポートに連通されている。
【0058】
ロッド4Aは、油圧アクチュエータ100における可動部材としてのロッド4とは異なり、その上端が外部の不動部材に固定された不動部材である。
【0059】
一方で、油圧シリンダ1Aは、油圧アクチュエータ100における不動部材としての油圧シリンダ1とは異なり、不動部材としてのロッド4Aに対して上下動可能な可動部材として構成される。
【0060】
被駆動部Wは、上下動可能な可動部材としての油圧シリンダ1Aの下端に固定され、ロッド4Aに対する油圧シリンダ1Aの上下動と共に上下動可能となっている。
【0061】
ロッド側油室1Acがヘッド側油室1Abの上に配置されるこのような構成においても、ロッド側油室1Acが被駆動部Wの自重圧を受けることに変わりはなく、制御装置14は、油圧アクチュエータ100の場合と同様、被駆動部Wを下降させる場合には、被駆動部Wの目標下降速度V(cm/秒)に油圧シリンダ1Aのロッド側油室1Acの断面積A(cm)を乗算して目標流量Q(cm/秒)を導き出した上で、その目標流量Q(cm/秒)を双方向油圧ポンプ10の一回転当たりの吐出量q(cm/回転数)で除算して目標回転数N(rps)を導き出し、その導き出した目標回転数N(rps)に対応する制御信号(モータ回転指令値)を電動モータ2に対して出力する。被駆動部Wを上昇させる場合についても同様である。
【0062】
以上の構成により、油圧アクチュエータ100Aは、油圧アクチュエータ100の場合と同様に、余分な圧力損失を発生させずに、より効率的に被駆動部Wを上下動させることができる。
【0063】
なお、油圧アクチュエータ100、100Aは、ロッド側油室1c、1Acにある油で被駆動部Wの自重圧を受ける。しかしながら、本発明は、これに限定されない。油圧アクチュエータ100、100Aは、ヘッド側油室1b、1Abにある油で被駆動部Wの自重圧を受ける構成であってもよい。
【0064】
ここで、図6を参照しながら、本発明の実施例に係る油圧アクチュエータを射出成形機に適用した場合について説明する。なお、図6は、本発明の実施例に係る油圧アクチュエータを備える射出成形機200の構成例を示す図である。
【0065】
射出成形機200は、主に、射出装置20及び型締装置30から構成される。図6(A)は、射出装置20が上昇した状態で且つ型締装置30が型開状態にある射出成形機200の側面図を示し、図6(B)は、射出装置20が下降した状態で且つ型締装置30が型締状態にある射出成形機200の側面図を示す。図6(C)は、後述のシャッタ43の上面図である。なお、図6(A)及び図6(B)における斜線ハッチング部分はその部分が部分的な断面図であることを示す。
【0066】
射出装置20は、樹脂供給装置としてのホッパ21を通じて供給される樹脂を射出シリンダ22内で溶融・可塑化する。具体的には、射出装置20は、計量モータ(図示せず。)により射出シリンダ22内でスクリュ(図示せず。)を回転させ、溶融樹脂を射出シリンダ22の先端にあるノズル部23に給送する。
【0067】
本実施例では、本発明に係る油圧アクチュエータとして機能する2つの油圧アクチュエータ100BL、100BRが、型締装置30上で、被駆動部Wとしての射出装置20を保持し且つ上下動させる。
【0068】
油圧アクチュエータ100BLの油圧シリンダ1BLは、ピストン1BLaとシリンダ内壁とによって画成されるヘッド側油室1BLb及びロッド側油室1BLcを有する。また、油圧アクチュエータ100BRの油圧シリンダ1BRは、ピストン1BRaとシリンダ内壁とによって画成されるヘッド側油室1BRb及びロッド側油室1BRcを有する。
【0069】
射出装置20は、取り付け金具24を介して、ピストン1BLa及びピストン1BRaのそれぞれから鉛直上方に延びるロッド4BL、4BRに固定される。油圧シリンダ1BL、1BRは、可動プラテン32の上面に固定される。
【0070】
なお、図6では、明瞭化のため、油圧アクチュエータ100BL、100BRを構成する電動モータ、双方向油圧ポンプ、位置センサ、フラッシング弁、チェック弁、安全弁、制御装置の図示を省略する。しかしながら、油圧シリンダ1BL、1BRには、図2又は図5で示すような配置で電動モータ、双方向油圧ポンプ、位置センサ、フラッシング弁、チェック弁、安全弁、制御装置が接続されている。また、油圧アクチュエータ100BL、100BRは、ヘッド側油室1BLb、1BRbとタンクとを繋ぐ管路、及び、プレフィル弁を必要としない。ロッド側油室1BLc、1BRcよりも断面積が大きいヘッド側油室1BLb、1BRbにある油が射出装置20の自重圧を受けるためである。すなわち、射出装置20を上下動する際にヘッド側油室1BLb、1BRbの圧力がタンクの圧力未満にならないためである。
【0071】
また、射出装置20は、ノズル部23に給送された溶融樹脂を金型装置60内のキャビティ空間(図示せず。)に射出する。具体的には、射出装置20は、射出モータ(図示せず。)によりノズル部23に向かってスクリュを軸方向移動させ、溶融樹脂をノズル部23からキャビティ空間内に射出する。金型装置60は、固定プラテン31に取り付けられる固定金型60Fと、可動プラテン32に取り付けられる可動金型60Mとで構成される。キャビティ空間は、可動金型60Mを固定金型60Fに接触させることによって金型装置60内に形成される。
【0072】
型締装置30は、型開閉動作及び型締動作を実行する。具体的には、型締装置30は、可動プラテン32を固定プラテン31に近づけるように移動させ、可動金型60Mを固定金型60Fに接触させる。また、型締装置30は、可動プラテン32を固定プラテン31から遠ざけるように移動させ、可動金型60Mから固定金型60Fを分離させる。
【0073】
本実施例では、本発明に係る油圧アクチュエータとして機能する2つの油圧アクチュエータ100CL、100CRが、固定プラテン31上で、被駆動部Wとしての可動プラテン32を保持し且つ上下動させる。
【0074】
油圧アクチュエータ100CLの油圧シリンダ1CLは、ピストン1CLaとシリンダ内壁とによって画成されるヘッド側油室1CLb及びロッド側油室1CLcを有する。また、油圧アクチュエータ100CRの油圧シリンダ1CRは、ピストン1CRaとシリンダ内壁とによって画成されるヘッド側油室1CRb及びロッド側油室1CRcを有する。
【0075】
可動プラテン31は、ピストン1CLa及びピストン1CRaのそれぞれから鉛直上方に延びるロッド4CL、4CRに固定される。油圧シリンダ1CL、1CRは、エンドプレート33に固定される。
【0076】
なお、図6では、明瞭化のため、油圧アクチュエータ100CL、100CRを構成する電動モータ、双方向油圧ポンプ、位置センサ、フラッシング弁、チェック弁、安全弁、制御装置の図示を省略する。しかしながら、油圧シリンダ1CL、1CRには、図2又は図5で示すような配置で電動モータ、双方向油圧ポンプ、位置センサ、フラッシング弁、チェック弁、安全弁、制御装置が接続されている。また、油圧アクチュエータ100CL、100CRは、ヘッド側油室1CLb、1CRbとタンクとを繋ぐ管路、及び、プレフィル弁を必要としない。ロッド側油室1CLc、1CRcよりも断面積が大きいヘッド側油室1CLb、1CRbにある油が可動プラテン32の自重圧を受けるためである。すなわち、可動プラテン32を上下動する際にヘッド側油室1CLb、1CRbの圧力がタンクの圧力未満にならないためである。
【0077】
型締装置30は、可動金型60Mを固定金型60Fに接触させた状態で、型締機構40により型締力を発生させ、可動金型60Mを固定金型60Fに更に押し付ける。
【0078】
型締機構40は、主に、センターロッド41、油圧アクチュエータ42、シャッタ43から構成される。
【0079】
センターロッド41は、固定プラテン31から下方に突出するロッドであり、本実施例では金型装置60の中央部に対応する固定プラテン31の底面上の一点を中心とする円の円周上に90度間隔で4本配置される。
【0080】
油圧アクチュエータ42は、タイバー34を介して可動プラテン32に固定されるエンドプレート33に搭載される装置である。また、油圧アクチュエータ42は、型締力を発生させる油圧機構であり、図6(B)で示すように、ピストン42aとシリンダ内壁とによって画成される下側油室42b及び上側油室42cを有する。なお、油圧アクチュエータ42は、パスカルの原理を利用して力を発生させる公知の機構である。そのため、図6では、明瞭化のため、油圧アクチュエータ42を構成する他の構成部品の図示を省略する。
【0081】
シャッタ43は、油圧アクチュエータ42が発生させた型締力をセンターロッド41に伝達するための部材である。具体的には、シャッタ43は、油圧アクチュエータ42のピストン42aの上面と、4つのセンターロッド41の下端部の底面のそれぞれとの間の空間を選択的に埋めるスペーサ部を有する。図6(C)は、シャッタ43の上面図であり、本実施例では、シャッタ43は、4つのセンターロッド41a〜41dのそれぞれの下端部の底面を受ける4つのスペーサ部43a〜43dを有する。なお、図6(C)の一点鎖線円は、4つのスペーサ部43a〜43dのそれぞれが受ける4つのセンターロッド41a〜41dのそれぞれの下端部の底面を示す。
【0082】
また、シャッタ43は、例えば、ピストン42aの上面に、回転中心43eを中心として回転可能に支持され、図示しない駆動部によって回転駆動される。例えば、図6(A)に示す型開状態では、シャッタ43は、スペーサ部43a〜43dのそれぞれがセンターロッド41a〜41dのそれぞれの下端部と接触しないように、図6(C)の破線で示す位置まで回転駆動される。この場合、センターロッド41a〜41dのそれぞれは、ピストン42aに設けられた四つの孔42dのそれぞれを貫通してその下端部がピストン42aの下側に至る。一方で、図6(B)に示す型締状態では、シャッタ43は、スペーサ部43a〜43dのそれぞれがセンターロッド41a〜41dのそれぞれの下端部と接触するように、図6(C)の実線で示す位置まで回転駆動される。この場合、型締機構40が作動すると、センターロッド41a〜41dのそれぞれは、シャッタ43を介してピストン42aの上昇を抑え、その結果、エンドプレート33を下方に押す力、すなわち、可動プラテン32を下方に引く力(型締力)を発生させる。
【0083】
射出装置20は、図6(B)に示す型締状態において、ノズル部23に給送された溶融樹脂を金型装置60内のキャビティ空間内に射出する。
【0084】
その後、所定時間が経過し、キャビティ空間内の溶融樹脂が冷えて固化した後、型締装置30は、2つの油圧アクチュエータ100CL、100CRにより、可動プラテン32を固定プラテン31から遠ざけるように移動させ、可動金型60Mと固定金型60Fとを分離する。
【0085】
以上の構成により、射出成形機200に搭載される油圧アクチュエータ100BL、100BRは、余分な圧力損失を発生させずに、より効率的に射出装置20を上下動させることができる。
【0086】
また、射出成形機200に搭載される油圧アクチュエータ100CL、100CRは、余分な圧力損失を発生させずに、より効率的に可動プラテン32を上下動させることができる。
【0087】
なお、油圧アクチュエータ100BL、100BR、100CL、100CRは、ヘッド側油室1BLb、1BRb、1CLb、1CRbにある油で射出装置20又は可動プラテン23の自重圧を受ける。しかしながら、本発明は、これに限定されない。油圧アクチュエータ100BL、100BR、100CL、100CRは、ロッド側油室1BLc、1BRc、1CLc、1CRcにある油で射出装置20又は可動プラテン23の自重圧を受ける構成であってもよい。
【0088】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0089】
例えば、上述の実施例において、油圧シリンダ1、1Aは、ロッド4、4Aが鉛直方向に延びるように配置され、被駆動部Wを鉛直方向に上下動させるようにするが、ロッド4、4Aが斜め方向に延びるように配置され、被駆動部Wを斜め方向に直線運動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1、1A、1BL、1BR、1CL、1CR・・・油圧シリンダ 1a、1Aa、1BLa、1BRa、1CLa、1CRa・・・ピストン 1b、1Ab、1BLb、1BRb、1CLb、1CRb・・・ヘッド側油室 1c、1Ac、1BLc、1BRc、1CLc、1CRc・・・ロッド側油室 2・・・電動モータ 3・・・油圧ポンプ 4、4A・・・ロッド 5・・・位置センサ 6・・・流量制御弁 7・・・制御装置 8・・・カウンタバランス弁 9・・・チェック弁 10・・・双方向油圧ポンプ 11・・・フラッシング弁 12L、12R・・・チェック弁 13L、13R・・・安全弁 14・・・制御装置 15・・・プレフィル弁 20・・・射出装置 21・・・ホッパ 22・・・射出シリンダ 23・・・ノズル部 24・・・取り付け金具 30・・・型締装置 31・・・固定プラテン 32・・・可動プラテン 33・・・エンドプレート 34・・・タイバー 40・・・型締機構 41、41a〜41d・・・センターロッド 42・・・油圧アクチュエータ 42a・・・ピストン 42b・・・上側油室 42c・・・下側油室 43・・・シャッタ 43a〜44d・・・スペーサ部 43e・・・回転中心 60・・・金型装置 60M・・・可動金型 60F・・・固定金型 50、100、100A、100BL、100BR、100CL、100CR・・・油圧アクチュエータ 200・・・射出成形機 T、T1、T2・・・タンク W・・・被駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動部を上下動させる油圧アクチュエータを備える射出成形機であって、
ピストンで画成されるロッド側油室とヘッド側油室とを有し、該ロッド側油室又は該ヘッド側油室にある油で該被駆動部の自重圧の少なくとも一部を受ける片ロッドシリンダと、
一方のポートが前記片ロッドシリンダのロッド側油室に連通され、他方のポートが前記片ロッドシリンダのヘッド側油室に連通される双方向油圧ポンプと、
前記双方向油圧ポンプを駆動するモータと、を備え、
前記モータは、前記被駆動部の自重圧の少なくとも一部を受ける前記ロッド側油室又は前記ヘッド側油室にある油の流出圧に抗するように、前記双方向油圧ポンプを駆動する、
ことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記モータは、前記双方向油圧ポンプを駆動して、前記ロッド側油室又は前記ヘッド側油室から流出する油の流量を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記ヘッド側油室に油を補填するプレフィル弁又はパイロットチェック弁を更に有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形機。
【請求項4】
被駆動部を上下動させる油圧アクチュエータであって、
ピストンで画成されるロッド側油室とヘッド側油室とを有し、該ロッド側油室又は該ヘッド側油室にある油で該被駆動部の自重圧の少なくとも一部を受ける片ロッドシリンダと、
一方のポートが前記片ロッドシリンダのロッド側油室に連通され、他方のポートが前記片ロッドシリンダのヘッド側油室に連通される双方向油圧ポンプと、
前記双方向油圧ポンプを駆動するモータと、を備え、
前記モータは、前記被駆動部の自重圧の少なくとも一部を受ける前記ロッド側油室又は前記ヘッド側油室にある油の流出圧に抗するように、前記双方向油圧ポンプを駆動する、
ことを特徴とする油圧アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−106483(P2012−106483A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206448(P2011−206448)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】