説明

射出装置

【課題】シリンダ部材内に進退可能に配設されたスクリュを駆動するための駆動部材を、可動プレートの後方に位置調整可能に取り付けることによって、射出部材の芯調整を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】ボールねじ機構によって可動プレートを進退させてスクリュ14を進退させる射出装置10であって、前記可動プレートの後方に取り付けられ、該可動プレートに対する前記スクリュ14の回転運動を許容する伝達部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機においては、加熱シリンダ内において加熱され、溶融させられた樹脂を高圧で射出して金型装置のキャビティに充填(てん)し、該キャビティ内において樹脂を冷却し、固化させることによって成形品を成形するようになっている。
【0003】
そのため、前記金型装置は固定金型及び可動金型から成り、型締装置によって前記可動金型を進退させ、前記固定金型に対して接離させることによって、型開閉、すなわち、型閉、型締及び型開を行うことができるようになっている。また、金型装置の型締が行われると、射出装置が前進させられ、加熱シリンダのノズルが固定プラテンに形成されたノズル通過孔(こう)を通って、固定金型の背面に配設されたスプルーブッシュに押し付けられ、密着させられる。続いて、溶融された樹脂が高圧で前記ノズルから射出され、スプルーブッシュ及びスプルーを通って固定金型と可動金型との合わせ面に形成されたキャビティ内に充填されるようになっている。
【0004】
そして、前記射出装置は、加熱シリンダ内に配設されたスクリュを回転及び進退させるための駆動装置を有する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−108175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の射出装置においては、射出部材としてのスクリュの後端が可動プレートとしての移動フレームに回転可能に、かつ、軸方向に移動不能に取り付けられているので、前記スクリュと可動プレートとの相対的な位置調整を行うことができず、前記スクリュの芯(しん)調整を行うことができなかった。すなわち、前記可動プレートの加熱シリンダに対する横方向の位置精度は、前記可動プレートをガイド部材としてのレールに取り付ける際の位置精度によって決定されてしまうので、スクリュと可動プレートとの相対的な位置調整を行うことができないと、スクリュの加熱シリンダに対する横方向の位置を調整する芯調整を行うことができなくなってしまう。
【0006】
本発明は、前記従来の射出装置の問題点を解決して、シリンダ部材内に進退可能に配設されたスクリュを駆動するための駆動部材を、可動プレートの後方に位置調整可能に取り付けることによって、射出部材の芯調整を容易に行うことができる射出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の射出装置においては、ボールねじ機構によって可動プレートを進退させてスクリュを進退させる射出装置であって、前記可動プレートの後方に取り付けられ、該可動プレートに対する前記スクリュの回転運動を許容する伝達部を有する。
【0008】
本発明の他の射出装置においては、さらに、前記伝達部は、前記スクリュからのスラスト荷重を受ける荷重受け部、及び、スクリュ回転用モータの回転を前記スクリュに伝達する回転伝達部を備え、該回転伝達部は、前記可動プレートに着脱可能に取り付けられている。
【0009】
本発明の更に他の射出装置においては、さらに、前記スクリュ回転用モータは、前記可動プレートに取り付けられている。
【0010】
本発明の更に他の射出装置においては、さらに、前記スクリュ回転用モータは、前記回転伝達部に取り付けられている。
【0011】
本発明の更に他の射出装置においては、さらに、前記伝達部は、前記スクリュからのスラスト荷重を受ける荷重受け部、及び、スクリュ回転用モータの回転を前記スクリュに伝達する回転伝達部を備え、前記荷重受け部及び回転伝達部は、前記可動プレートに着脱可能に取り付けられている。
【0012】
本発明の更に他の射出装置においては、さらに、前記回転伝達部の可動プレートに対する位置を調整することによって、前記スクリュの芯調整を可能とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、射出装置においては、シリンダ部材内に進退可能に配設されたスクリュを駆動するための駆動部材を、可動プレートの後方に位置調整可能に取り付けるようになっている。そのため、射出部材の芯調整を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態における射出装置の全体構成を示す平面図、図2は本発明の実施の形態における射出装置の要部側面図であり図1のA−A矢視図である。
【0016】
図1において、10は、射出成形機に使用される射出装置であり、図示されない射出装置フレームに取り付けられている。そして、前記射出装置10の前方(図1における左方)には、固定金型及び可動金型から成る金型装置を備える図示されない型締装置が配設され、前記射出装置10は、型締装置に対して前進及び後退させられるようになっている。
【0017】
また、11は、電気ヒータ、温水ジャケット等の図示されない加熱装置を備えるシリンダ部材としての加熱シリンダであり、12は該加熱シリンダ11の先端部に取り付けられた射出ノズルである。そして、前記加熱シリンダ11の後端部近傍には、該加熱シリンダ11の一部を冷却するための冷却ジャケット13が取り付けられ、該冷却ジャケット13に形成された原料投入孔13aから、樹脂ペレット等の原料樹脂が前記加熱シリンダ11内に投入される。また、14は、該加熱シリンダ11内に回転可能に、かつ、軸方向に移動可能に配設された射出部材としてのスクリュであり、その後端部近傍が前記加熱シリンダ11の後方(図における右方)に突出している。
【0018】
そして、前記冷却ジャケット13には、加熱シリンダ固定部材としての前方フランジ部材16が、ボルト等の固定手段によって固定されている。また、前記前方フランジ部材16の後方(図における右方)には、射出用モータ固定部材としての後方フランジ部材17が配設されている。そして、前記前方フランジ部材16及び後方フランジ部材17は、前記加熱シリンダ11に対して固定された固定部材として機能し、射出装置フレームに取り付けられている。また、前記前方フランジ部材16及び後方フランジ部材17は、前端部及び後端部がねじ止め等によって前方フランジ部材16及び後方フランジ部材17にそれぞれ固定されたガイドロッド18によって連結されている。なお、該ガイドロッド18は、単数であっても複数であってもよく、何本であってもよいが、本実施の形態においては、四本であるものとして説明する。
【0019】
さらに、前記前方フランジ部材16と後方フランジ部材17との間には、スクリュ支持部材であって可動プレートとしてのプレッシャプレート21がスクリュ14の軸方向に移動可能に、かつ、他の方向に移動不能に配設されている。ここで、前記プレッシャプレート21は、前記ガイドロッド18に沿って、前記スクリュ14とともに、前進又は後退(図における左方向又は右方向に移動)させられる。
【0020】
そして、前記プレッシャプレート21において前記スクリュ14に対応する位置には、該スクリュ14の後端部が進入する貫通孔21aが形成されている。また、該貫通孔21aに対応する位置において、前記プレッシャプレート21の後面(図における右側面)には、ボルト91によって、伝達部としての減速機53の減速機フレーム54が取り付けられている。ここで、前記ボルト91は、減速機フレーム54のフランジに形成された貫通孔を通過するようになっているが、該貫通孔の内径は前記ボルト91の外径よりも少し大きく形成されているので、減速機フレーム54をプレッシャプレート21に取り付ける際に、ボルト91を緩めた状態で、減速機フレーム54の横方向、すなわち、スクリュ14の軸方向に垂直な方向の位置を調整することができる。調整後は、ボルト91を締めて、スクリュ14の位置をプレッシャプレート21に対して拘束させる。
【0021】
また、前記減速機53は出力回転軸としての連結軸22を有し、該連結軸22はその前端部が前記スクリュ14の後端部に接続され、かつ、前記減速機フレーム54に取り付けられている。この場合、前記連結軸22は、継ぎ手部材23とボルト92によって、スクリュ14の後端部に固定されている。スクリュ14は、継ぎ手部材23とスクリュ14の後方においてスプライン係合することで位置を拘束された状態となっている。なお、前記継ぎ手部材23は貫通孔21aに進入した位置にあり、スクリュ14の後端部と連結軸22とは接続された状態で前記貫通孔21aを貫通するようになっている。そして、前記連結軸22は、スラストベアリング26及びスラストベアリング27を介して、前記減速機フレーム54に対して軸方向に移動不能に、かつ、回転可能に取り付けられている。
【0022】
このように、前記スクリュ14と連結軸22とが、互いに回転不能に、かつ、軸方向に移動不能に接続され、さらに、前記連結軸22が減速機フレーム54に対して軸方向に移動不能に、かつ、回転可能に取り付けられているので、前記スクリュ14が受けるスラスト荷重は、減速機フレーム54を介してプレッシャプレート21に伝達される。逆に、該プレッシャプレート21からスクリュ14にスラスト荷重を伝達することもできる。すなわち、伝達部としての減速機53はスクリュ14の回転運動を許容する。また、前記減速機53は、スクリュ14からのスラスト荷重を受ける荷重受け部としても機能し、さらに、後述される計量用モータ63の回転を前記スクリュ14に伝達する回転伝達部としても機能する。この場合、伝達部は荷重受け部及び回転伝達部を備えると言える。
【0023】
また、前記減速機フレーム54には、図2に示されるように、前記連結軸22と平行して駆動ギヤ軸57が配設され、該駆動ギヤ軸57に取り付けられた小径の駆動ギヤ58と、前記連結軸22の後端部22aに取り付けられたより大径の従動ギヤ56とが互いに噛(か)み合って減速機構を構成する。なお、前記駆動ギヤ軸57は、複数のラジアルベアリングを介して、減速機フレーム54に回転可能に、かつ、軸方向に移動不能に取り付けられている。また、前記連結軸22の最後端部もラジアルベアリングを介して減速機フレーム54に取り付けられている。
【0024】
そして、駆動ギヤ軸57の後端部(図における右端部)は減速機フレーム54から後方に突出するモータ接続部57aとなっていて、カップリング61を介して、スクリュ回転用モータであって計量用駆動源としての計量用モータ63の計量用モータ軸64の前端部(図における左端部)に接続されている。ここで、前記計量用モータ63は、例えば、サーボモータであるが、回転角度、回転速度及び回転方向を制御可能なモータであれば、いかなる種類のモータであってもよい。また、前記計量用モータ軸64の後端面には、該計量用モータ軸64の回転を計測するために、ロータリーエンコーダ等の回転計測器65が接続されている。この場合、駆動ギヤ軸57と計量用モータ軸64とは、互いに回転不能に、かつ、軸方向に移動不能に接続されている。なお、前記計量用モータ63は減速機フレーム54によってプレッシャプレート21に取り付けられているが、前記計量用モータ63の重量によって連結軸22が偏芯する恐れがある場合には、図示されない取り付け部材を介して、前記プレッシャプレート21に取り付けることも可能である。
【0025】
そのため、前記計量用モータ63が作動して計量用モータ軸64が回転すると、その回転が駆動ギヤ58及び従動ギヤ56を介して、連結軸22に伝達され、スクリュ14が回転するようになっている。なお、減速機53は、前記駆動ギヤ58及び従動ギヤ56から成る減速機構に加えて、更に、他の駆動ギヤ及び従動ギヤから成る減速機構を備え、多段階に減速を行うものであってもよい。また、駆動ギヤ58及び従動ギヤ56から成る減速機構に代えて、歯付きプーリ及び歯付きベルトから成る減速機構等、他の種類の減速機構を備えるものであってもよい。例えば、ベルトを減速機構として用いた場合には、前記計量用モータ63を、プレッシャプレート21上に残したままの状態で、荷重受け部などをプレッシャプレート21より着脱させることができる。なお、前記計量用モータ63は、プレッシャプレート21とともに前進又は後退するようになっているので、プレッシャプレート21が前進又は後退しても、前記計量用モータ軸64の回転は、スクリュ14に正確に伝達される。
【0026】
そして、前記後方フランジ部材17には、駆動部材であって射出用駆動源としての射出用モータ33A及び射出用モータ33Bが取り付けられている。射出用モータは、単数であっても複数であってもよく、いくつであってもよいが、ここでは、射出用モータ33A及び射出用モータ33Bで代表する。この場合、前記射出用モータ33A及び射出用モータ33Bは、スラスト荷重を計測する荷重計測部材としてのロードセル34A及びロードセル34Bを介して、後方フランジ部材17に取り付けられている。
【0027】
また、前記プレッシャプレート21の射出用モータ33A及び射出用モータ33Bに対応する位置には、ボールねじ機構としてのボールねじナット31A及びボールねじナット31Bがそれぞれ取り付けられている。そして、前記ボールねじナット31A及びボールねじナット31Bには、射出用モータ33A及び射出用モータ33Bによって回転させられる従動回転軸としてのボールねじ軸32A及びボールねじ軸32Bがそれぞれ螺(ら)入されている。なお、前記ボールねじナット31Aとボールねじ軸32A、及び、ボールねじナット31Bとボールねじ軸32Bは、それぞれ、いわゆる、ボールねじ機構を構成し、回転運動を直線運動に変換する運動方向変換部材として機能する。また、前記プレッシャプレート21においてボールねじナット31A及びボールねじナット31Bが取り付けられる位置には、ボールねじ軸32A及びボールねじ軸32Bの先端部分が通過する通過孔29A及び通過孔29Bがプレッシャプレート21を貫通するように形成されている。このように、駆動部材としての射出用モータ33A及び射出用モータ33Bと、運動方向変換部材としてのボールねじナット31A及びボールねじ軸32A並びにボールねじナット31B及びボールねじ軸32Bとは同一直線上に配設されている。
【0028】
ここで、前記ボールねじナット、ボールねじ軸及び通過孔は、射出用モータに対応する数に対応するものであり、単数であっても複数であってもよく、いくつであってもよいが、ここでは、ボールねじナット31A及びボールねじナット31B、ボールねじ軸32A及びボールねじ軸32B並びに通過孔29A及び通過孔29Bで代表する。これ以降、射出用モータ33A及び射出用モータ33B、ボールねじナット31A及びボールねじナット31B、ボールねじ軸32A及びボールねじ軸32B、通過孔29A及び通過孔29B並びにロードセル34A及びロードセル34Bを統合的に説明する場合には、それぞれ、射出用モータ33、ボールねじナット31、ボールねじ軸32、通過孔29及びロードセル34として説明する。
【0029】
本実施の形態において、前記射出用モータ33A及び射出用モータ33Bは、ボルト等の固定手段によって後方フランジ部材17に回転不能に、かつ、軸方向に移動不能に取り付けられ、また、前記ボールねじナット31A及びボールねじナット31Bは、ボルト等の固定手段によってプレッシャプレート21に、回転不能に、かつ、軸方向に移動不能に取り付けられている。そして、プレッシャプレート21と後方フランジ部材17とは、互いに、前記射出用モータ33A及び射出用モータ33B並びにボールねじナット31A及びボールねじナット31Bの軸方向に移動可能に、かつ、他の方向に移動不能になっている。そのため、前記射出用モータ33A及び射出用モータ33Bを作動させてボールねじ軸32A及びボールねじ軸32Bを回転させることによって、ボールねじナット31A及びボールねじナット31Bを前進又は後退させることができ、これにより、プレッシャプレート21及びスクリュ14を前進又は後退させることができる。なお、前記射出用モータ33A及び射出用モータ33Bは、同期して作動し、ボールねじナット31A及びボールねじナット31Bを同時に同方向に同量だけ移動させるようになっている。
【0030】
そして、前記ボールねじ軸32は、表面に螺旋状のボールねじ溝が形成されたスクリュ部32a、スラストベアリングが取り付けられる軸受け部32b、並びに、表面に軸方向に延在するスプライン溝が形成された接続部32cを有する。そして、後方フランジ部材17には、ボールねじ軸32が通過する貫通孔17aが形成され、該貫通孔17a内に前記ボールねじ軸32の後半部分に形成された軸受け部32bを回転可能に、かつ、軸方向に移動不能に支持する荷重伝達部材としてのベアリングホルダ35が挿入されている。該ベアリングホルダ35は、概略円筒状の形状を有し、内部を通過する前記軸受け部32bを第1の軸受けとしてのスラストベアリング及び第2の軸受けとしてのスラストベアリングを介して支持する。
【0031】
一方、駆動部材としての射出用モータ33は、概略円筒状の形状を備えるモータフレーム41、並びに、該モータフレーム41の前端面及び後端面にボルト等の固定手段によって固定された前部端板42及び後部端板43を有する。前記モータフレーム41の内面には、コイルから成るステータ45が取り付けられている。また、前記射出用モータ33の内部に回転可能に配設された駆動回転軸としてのモータ軸47の外周面には、ロータとしての磁石46が前記ステータ45に対向する位置に取り付けられている。
【0032】
ここで、該モータ軸47は、ラジアルベアリングを介して、前記前部端板42及び後部端板43に回転可能に、かつ、軸方向に移動不能に取り付けられている。そして、前記モータ軸47の後端面には、該モータ軸47の回転を計測するために、ロータリーエンコーダ等の回転計測器51が接続されている。また、前記モータ軸47の前端部には、内面に軸方向に延在するスプライン溝が形成された凹状の接続部が形成されている。そして、該接続部内にはボールねじ軸32の後端部に形成された接続部32cが挿入され、スプライン接続されている。
【0033】
そして、前記ベアリングホルダ35及び射出用モータ33は、荷重計測部材としてのロードセル34を介して、後方フランジ部材17に取り付けられている。前記ロードセル34は、概略穴空き円盤状の形状を有し、外周近傍部分である固定部がボルト等の固定手段によって後方フランジ部材17の後面(図1における右側面)に固定されている。また、前記ロードセル34の内周近傍部分である受圧部は、前記ベアリングホルダ35と射出用モータ33の前部端板42とによって挟まれた状態で、前記ベアリングホルダ35と前部端板42とに固定されている。この場合、前記ベアリングホルダ35、受圧部及び前部端板42の三つの部材は、該三つの部材を貫通するボルト等の固定手段によって一体的に固定されることが望ましい。
【0034】
次に、前記構成の射出装置10の動作について説明する。
【0035】
まず、該射出装置10において計量工程が行われる場合について説明する。該計量工程においては、スクリュ14を回転させ、冷却ジャケット13に形成された原料投入孔13aから加熱シリンダ11内に投入された原料樹脂を溶融させてスクリュ14の前方に溶融された樹脂を所定量だけ蓄えるようになっている。
【0036】
この場合、計量用モータ63が作動すると、計量用モータ軸64の回転がカップリング61、駆動ギヤ軸57、駆動ギヤ58及び従動ギヤ56を介して連結軸22に伝達され、該連結軸22が回転する。そして、該連結軸22の回転が継ぎ手部材23を介してスクリュ14に伝達され、該スクリュ14が加熱シリンダ11内において回転し、原料樹脂が溶融させられながら前方に送られ、前記スクリュ14の前方に蓄えられる。
【0037】
なお、計量工程においては、樹脂の前進に伴って背圧が発生し、該背圧によってスクリュ14を後退させる方向のスラスト荷重が発生する。すると、該スラスト荷重は、継ぎ手部材23、連結軸22及びスラストベアリング26を介して、減速機53の減速機フレーム54に伝えられる。そして、前記スラスト荷重は、前記減速機フレーム54が取り付けられているプレッシャプレート21に伝達され、さらに、該プレッシャプレート21に取り付けられたボールねじナット31を介して、ボールねじ軸32に伝達される。さらに、前記スラスト荷重は、ボールねじ軸32からベアリングホルダ35に伝達され、更に、ロードセル34の受圧部に伝達される。これにより、前記ロードセル34の歪み部に歪みが生じるので、該歪みを歪み計測手段によって計測して、背圧を示すスラスト荷重を計測することができる。
【0038】
ここで、前記ボールねじ軸32の接続部32cと射出用モータ33のモータ軸47の接続部とは、回転不能に、かつ、軸方向に移動可能に接続されている。そのため、前記スラスト荷重は、モータ軸47に伝達されることがなく、射出用モータ33によって受けられることがない。したがって、前記ロードセル34の歪み部における歪みを計測することによって、射出用モータ33の影響を受けることなく、背圧を示すスラスト荷重を高い精度で計測することができる。
【0039】
ところで、前記背圧は成形品の品質に影響を及ぼすので適正値となるように制御される必要がある。そして、該適正値は樹脂の種類、成形条件等によって変化する。そのため、前記射出装置10の制御装置は、歪み計測手段の出力信号を受信して背圧を示すスラスト荷重を計測すると、その値が樹脂の種類、成形条件等によってあらかじめ定められた適正値となるように、射出用モータ33を作動させてスクリュ14を徐々に後退させ、背圧が適正な値となるように制御する。この場合、前記射出用モータ33が作動するとモータ軸47が回転し、該モータ軸47の回転がボールねじ軸32に伝達され、該ボールねじ軸32がボールねじナット31に対して回転する。これにより、回転運動が直線運動に変換され、ボールねじナット31が後退するのでプレッシャプレート21が後退し、スクリュ14が後退させられる。
【0040】
この場合、射出用モータ33が作動してモータ軸47が回転すると、該モータ軸47に軸方向の微小振動であるリップルが発生するが、モータ軸47とボールねじ軸32とは軸方向に移動可能に接続されているので、前記リップルがボールねじ軸32に伝達されることがない。そのため、前記リップルは、ロードセル34の受圧部に伝達されることもないので、スラスト荷重の計測に影響を及ぼすことがない。したがって、射出用モータ33を作動させているときも、該射出用モータ33の影響を受けることなく、背圧を示すスラスト荷重を高い精度で計測することができる。これにより、背圧を正確に計測することができ、背圧が適正な値となるように高い精度で制御することができる。
【0041】
次に、射出装置10において射出工程が行われる場合について説明する。
【0042】
まず、計量工程が終了して所定量の溶融された樹脂がスクリュ14の前方に蓄えられ、図示されない型締装置によって金型装置の型締が行われると、射出装置10全体が前進させられ、加熱シリンダ11に取り付けられた射出ノズル12の先端が固定プラテンに形成されたノズル通過孔を通って、固定金型の背面に配設されたスプルーブッシュに押し付けられ、密着させられる。そして、射出用モータ33が作動するとモータ軸47が回転し、該モータ軸47の回転がボールねじ軸32に伝達され、該ボールねじ軸32がボールねじナット31に対して回転する。これにより、回転運動が直線運動に変換され、ボールねじナット31が前進するのでプレッシャプレート21が前進し、スクリュ14が前進させられる。これにより、加熱シリンダ11内でスクリュ14の前方に蓄えられ、溶融された樹脂が、高圧で前記射出ノズル12から射出され、スプルーブッシュ及びスプルーを通って固定金型と可動金型との合わせ面に形成されたキャビティ内に充填される。
【0043】
次に、射出装置10においてスクリュ14の取り外し及び取り付けが行われる場合について説明する。
【0044】
前記射出装置10を長期間に亘(わた)って使用した後や、樹脂の種類を変更する樹脂替えを行う場合には、スクリュ14を加熱シリンダ11から取り出して清掃を行うことがある。この場合、継ぎ手部材23を連結軸22から取り外し、続いて、減速機53をプレッシャプレート21に取り付けるためのボルト等の固定手段を取り外すことによって、減速機53及び計量用モータ63をプレッシャプレート21から取り外す。前記減速機53がプレッシャプレート21の後面に取り付けられているので、前記減速機53及び計量用モータ63をプレッシャプレート21から容易に取り外すことができる。これにより、スクリュ14を加熱シリンダ11の後端から容易に取り出すことができる。
【0045】
また、スクリュ14を取り付ける場合には、前述された動作を逆に行うことによって、前記スクリュ14を加熱シリンダ11内に挿入して取り付けることができる。この場合、減速機53をプレッシャプレート21に取り付ける際に、減速機53の横方向、すなわち、スクリュ14の軸方向に垂直な方向の位置を調整することによって、加熱シリンダ11の軸心に対するスクリュ14の軸心の位置を調整すること、すなわち、芯調整を行うことができる。そして、スクリュ14の芯調整を完了した後、減速機53をプレッシャプレート21に取り付けるためのボルト等の固定手段を締め付けることによって、減速機53が横方向に移動しないようにし、スクリュ14の軸心の位置がずれないようにする。
【0046】
このように、本実施の形態においては、スクリュ14を回転させる計量用駆動部として機能する減速機53がプレッシャプレート21の後部に固定手段によって取り付けられている。そのため、プレッシャプレート21に対する減速機53の位置を調整することによって、プレッシャプレート21の位置を調整しなくても、スクリュ14の芯調整を行うことができる。これにより、プレッシャプレート21の加熱シリンダ11に対する横方向の位置精度が低くても、加熱シリンダ11の軸心に対してスクリュ14の軸心を一致させることができ、加熱シリンダ11とスクリュ14との組み立て精度を高くすることができる。
【0047】
また、プレッシャプレート21の加熱シリンダ11に対する横方向の位置精度が低くてもよいので、前方フランジ部材16、後方フランジ部材17、ガイドロッド18、プレッシャプレート21等の加工精度及び組み立て精度を高くする必要がなく、コストを低減することができる。
【0048】
さらに、減速機53がプレッシャプレート21の後部に取り付けられているので、減速機53及び計量用モータ63をプレッシャプレート21から取り外すことができる。
【0049】
さらに、加熱シリンダ11内で前進又は後退するようにスクリュ14を駆動するための駆動部としての射出用モータ33のモータ軸47がボールねじ軸32に軸方向に移動可能に接続され、該ボールねじ軸32の受けるスラスト荷重がロードセル34の受圧部に伝達されるようになっている。そのため、前記射出用モータ33の影響を受けることなく、ボールねじ軸32の受けるスラスト荷重を計測することができ、背圧を示す前記スラスト荷重を高い精度で計測することができる。
【0050】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態における射出装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態における射出装置の要部側面図であり図1のA−A矢視図である。
【符号の説明】
【0052】
10 射出装置
14 スクリュ
21 プレッシャプレート
31、31A、31B ボールねじナット
32、32A、32B ボールねじ軸
53 減速機
63 計量用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ボールねじ機構によって可動プレートを進退させてスクリュを進退させる射出装置であって、
(b)前記可動プレートの後方に取り付けられ、該可動プレートに対する前記スクリュの回転運動を許容する伝達部を有することを特徴とする射出装置。
【請求項2】
(a)前記伝達部は、前記スクリュからのスラスト荷重を受ける荷重受け部、及び、スクリュ回転用モータの回転を前記スクリュに伝達する回転伝達部を備え、
(b)該回転伝達部は、前記可動プレートに着脱可能に取り付けられている請求項1に記載の射出装置。
【請求項3】
前記スクリュ回転用モータは、前記可動プレートに取り付けられている請求項2に記載の射出装置。
【請求項4】
前記スクリュ回転用モータは、前記回転伝達部に取り付けられている請求項2に記載の射出装置。
【請求項5】
(a)前記伝達部は、前記スクリュからのスラスト荷重を受ける荷重受け部、及び、スクリュ回転用モータの回転を前記スクリュに伝達する回転伝達部を備え、
(b)前記荷重受け部及び回転伝達部は、前記可動プレートに着脱可能に取り付けられている請求項1に記載の射出装置。
【請求項6】
前記回転伝達部の可動プレートに対する位置を調整することによって、前記スクリュの芯調整を可能とする請求項5に記載の射出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−35572(P2006−35572A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217298(P2004−217298)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】