説明

導体捻り装置

【課題】簡素な構成で多層の複数導体を周方向に捻ることができる導体捻り装置を提供すること。
【解決手段】導体捻り装置は、環状のステータコアの端面から軸方向に突出して径方向に並んだ複数の電気導体を周方向に捻るために、複数の電気導体の先端を保持する円筒形状を有する複数のリング状保持部211〜218と、これら複数のリング状保持部211〜218の一部と連結部311、313、315、317を介して連結された第1の回転駆動機構と、複数のリング状保持部211〜218の残りと連結部312、314、316、318を介して連結されて第1の回転駆動機構による回転方向と反対に回転させる第2の回転駆動機構とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層のリング状に配置した複数の導体をチャック保持する導体捻り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、環状のステータコアに形成された複数のスロットにU字状導体を挿入し、反挿入側の軸方向端面から突出した導体を周方向に捻ることによりコイル成形を行うステータコイル捻り装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このステータコイル捻り装置には、ステータコアの軸方向端面から突出した複数(径方向に沿って4本)の導体を捻るために、複数の捻り治具とそれぞれの捻り治具を別々に回転させる複数の回転駆動機構が備わっている。
【特許文献1】特許第3196738号公報(第4−7頁、図1−8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示されたステータコイル捻り装置では、ステータコアの軸方向端面から突出する導体を周方向に捻るために、径方向に沿って並んだこの導体の本数分の捻り治具と回転駆動機構が必要となるため、導体の本数が増加した場合に構成が複雑になるという問題があった。例えば、径方向に8本以上の本数の導体が並んだステータの場合には、捻り治具と回転駆動機構の数も8以上になる。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、簡素な構成で多層の複数導体を周方向に捻ることができる導体捻り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の導体捻り装置は、環状のステータコアの端面から軸方向に突出して径方向に並んだ複数の電気導体を周方向に捻るものであり、複数の電気導体の先端を保持する円筒形状を有する複数のリング状保持部と、複数のリング状保持部の一部と直接あるいは連結部を介して間接的に連結され、これら一部のリング状保持部を一方向に回転させる第1の回転駆動機構と、複数のリング状保持部の残りと直接あるいは連結部を介して間接的に連結され、これら残りのリング状保持部を第1の回転駆動機構による回転方向と反対に回転させる第2の回転駆動機構とを備えている。第1および第2の回転駆動機構を用いて径方向に沿って並んだ複数本(例えば8本)の電気導体を周方向に捻ることができるため、径方向に沿って並んだ電気導体の本数と同じ数の回転駆動部を備える場合に比べて構成を簡素化することができる。
【0006】
また、上述した第1の回転駆動機構は、一部のリング状保持部のそれぞれと連結部を介して別々に連結されて回転可能な第1の回転駆動リング群と、第1の回転駆動リング群を同時に回転駆動する第1の回転駆動部とを備え、第2の回転駆動機構は、残りのリング状保持部のそれぞれと連結部を介して別々に連結されて回転可能な第2の回転駆動リング群と、第2の回転駆動リング群を同時に回転駆動する第2の回転駆動部とを備えることが望ましい。リング状保持部とは別に第1および第2の回転駆動リング群を備えることにより、これらを回転駆動に適した大きさおよび形状とすることが容易となる。
【0007】
また、上述した第1の回転駆動部は、第1の回転駆動リング群に連結された第1の駆動レバーを備え、第2の回転駆動部は、第2の回転駆動リング群に連結された第2の駆動レバーを備え、第1および第2の駆動レバーを、共通の駆動源(例えば、ボールネジ)を用いて互いに反対方向に回転させることが望ましい。これにより、ボールネジを回転させるモータの数を減らすことができ、構成をさらに簡素化することができる。
【0008】
また、上述した第1の回転駆動機構によって一方向に回転させる一部のリング状保持部と、第2の回転駆動機構によって反対方向に回転させる残りのリング状保持部は、径方向に沿って交互に配置されていることが望ましい。これにより、ステータコアのスロット内で径方向に一列に並んだ電気導体を、互いに周方向反対側に規則正しく捻ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した一実施形態の導体捻り装置について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、車両エアコンのコンプレッサー動力発生用に用いられる一実施形態の回転電機としてのモータの軸方向断面図である。また、図2はステータコイルの一部をなすセグメントの斜視図である。図3は、ステータコアに設けられたスロット内におけるセグメントの収容状態を示す部分断面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のモータ100は、ステータコア(固定子鉄心)1、ロータ2、ステータコイル(固定子巻線)3、ハウジング4、回転軸7を含んで構成されている。ステータコア1は、ハウジング4の周壁内周面に固定される。ステータコイル3は、ステータコア1の各スロットに巻装されている。ロータ2は、ハウジング4に回転自在に支持された回転軸7に固定されたIPM型ロータであり、ステータコア1の内径側に配置されている。ステータコイル3は、三相電機子巻線であって、外部のバッテリに接続された三相インバータから給電されている。
【0012】
このモータ100は、二次電池車又は燃料電池車又はハイブリッド車の車両エアコンのコンプレッサー動力を発生する永久磁石型三相ブラシレスDCモータ(同期モータ)であるが、モータ構造としては、公知の種々の形式に置換可能である。このような種々の形式の同期機自体は周知であるので動作原理についての詳細な説明は省略する。
【0013】
ステータコイル3は、図2に示す所定形状(U字状)の電気導体としてのセグメント33をステータコア1の一方の端面側からステータコア1の各スロットに挿通し、スロットから各セグメント33の飛び出し端部をステータコア1の他方の端面側に必要な長さだけ突出させ、各セグメント33の飛び出し端部を周方向にほぼ電気角でπ/2だけそれぞれ捻り、各セグメント33の飛び出し端部の先端部(接合部)を所定の組み合わせで溶接して構成されている。セグメント33は、溶接部分すなわち上記飛び出し端部の先端部(端部先端部ともいう)を除いて樹脂皮膜(絶縁皮膜)で被覆された長板U字形状を有している。
【0014】
なお、図1に示すように、本実施形態のステータコイル3では、内周側に配置されたセグメントセットS1と外周側に配置されたセグメントセットS2のそれぞれが図2に示す大小のセグメント33を組み合わせた構造を有している(図3)。
【0015】
次に、2本のセグメント33からなるセグメントセットS1(セグメントセットS2についても同様である)の詳細を更に詳しく説明する。セグメントセットS1は、ほぼU字状のターン部としての頭部と、この頭部の両端から直線的に伸びてスロットに収容されている一対のスロット導体部と、両スロット導体部の先端からそれぞれ伸びる一対の飛び出し端部とをそれぞれ有する2つのセグメント33からなっている。これら2つのセグメント33において、小さい方を小セグメント332、この小セグメント332を囲む大きい方を大セグメント331と称する。なお、ステータコア1の各スロット35に挿入される前の状態では、周方向に捻られた飛び出し端部が形成されておらず、スロット導体部と飛び出し端部に相当する部分が直線部を形成している。
【0016】
ステータコイル3は、ステータコア1の一方の端面側に全体としてリング状に存在する第一のコイルエンド部(頭部側コイルエンド部)31と、ステータコア1の他方の端面側に全体としてリング状に存在する第二のコイルエンド部(端部側コイルエンド部)32と、スロット内に存在するスロット導体部とに区分される。つまり、図1において、頭部側コイルエンド31は、各セグメント33の上記頭部により構成され、端部側コイルエンド32は各セグメント33の上記飛び出し端部により構成されている。
【0017】
大セグメント331は、スロット導体部331a、331bと、頭部331cと、飛び出し端部331f、331gとを有する。飛び出し端部331f、331gの先端部331d、331eは、接合部分であるので端部先端部又は接合部とも称する。
【0018】
小セグメント332は、スロット導体部332a、332bと、頭部332cと、飛び出し端部332f、332gとを有する。飛び出し端部332f、332gの先端部332d、332eは、接合部分であるので端部先端部又は接合部とも称する。
【0019】
符号「’」は、図示しない大セグメント331または小セグメント332の符号「’」がない部分と同じ部分を示す。したがって、図2では、互いに径方向に隣接する接合部332dと接合部331d’とが溶接され、互いに径方向に隣接する接合部332eと接合部331e’とが溶接されている。
【0020】
図2では、最内層のスロット導体部331aと中内層のスロット導体部332aが、ステータコア1の一のスロット35に収容される場合、同じ大セグメント331および小セグメント332の最外層のスロット導体部331bと中外層のスロット導体部332bは、この一のスロット35から所定奇数磁極ピッチT(たとえば1磁極ピッチ(電気角度π))離れた他のスロット35に収容される。小セグメント332の頭部332cは大セグメント331の頭部331cに囲まれるようにして配置されている。
【0021】
ステータコア1の各スロット35におけるセグメントの配置状態を図3を用いて説明する。各スロット35には径方向に沿って8個の導体収容位置P1〜P8が設定され、各導体収容位置P1〜P8にはそれぞれ1本のスロット導体部が収容されている。各スロット35は、上述した2つのセグメントセットS1、S2を径方向へ順番に収容し、導体収容位置P1〜P4はセグメントセットS1を、導体収容位置P5〜P8はセグメントセットS2を収容している。
【0022】
内側のセグメントセットS1を一例として詳しく説明すると、最内層のスロット導体部331aはステータコア1のスロット35の径方向最内側に配置され、以下、径方向外側へ順に、中内層のスロット導体部332a、中外層のスロット導体部332b’、最外層のスロット導体部331b’の順に配置され、結局、各スロット35はセグメントセットS1に関して4本のスロット導体部を4層1列に収容する。図3において、スロット導体部331b’、332b’は、スロット導体部332a、331aをもつ大セグメント331、小セグメント332とは異なる大セグメント331、小セグメント332に属している。セグメントセットS2は上記と同様の配置を有している。図4は、大セグメント331と小セグメント332とからなるセグメントセットS1をスロット35に挿入する状態を示す図である。
【0023】
ところで、上述した2つのセグメントセットS1、S2に含まれる飛び出し端部331f、331g、332f、332gは、導体捻り装置を用いて同時に成形される。図5は、導体捻り装置の部分的な断面図である。図5に示す本実施形態の導体捻り装置200は、コイル押さえ部210、8つのリング状保持部211〜218、ワーク固定部220、222を備えている。
【0024】
コイル押さえ部210は、セグメントセットS1、S2をステータコア1の各スロット35に挿入した状態で飛び出し端部331f、332f、332g、331gを周方向に互いに反対側に捻る際に、外側に配置された大セグメント331の頭部331cの軸方向移動を制限するためのものである。ワーク固定部220、222は、捻り成形時にステータコア1が動かないように固定する。
【0025】
8つのリング状保持部211〜218は、円筒形状を有しており、セグメントセットS1、S2をステータコア1の各スロット35に挿入した際に、捻り前の飛び出し端部331f、332f、332g、331gの先端を保持する。これらのリング状保持部211〜218は、各飛び出し端部を軸方向に押圧する押圧部も兼ねている。
【0026】
図6は、リング状保持部211〜218の部分的な平面図であり、飛び出し端部に対向する側の形状が示されている。リング状保持部211〜218は同心状に配置されており、回転駆動機構(後述する)によって交互に周方向反対向きに回転駆動される。また、図6に示すように、リング状保持部211〜218のそれぞれの先端面には、捻り前の飛び出し端部の先端が挿入されて保持される凹部としての挿入部211a〜218aが設けられている。これら8つの挿入部211a〜218aは、飛び出し端部を捻る前の状態では径方向に一列に配置されており、隣接するもの同士が2つ1組になって1つの凹部(合計4つの凹部)を形成している。
【0027】
具体的には、リング状保持部211に形成された挿入部211aがセグメントセットS1の大セグメント331の一方の飛び出し端部331fの端部を保持し、リング状保持部212に形成された挿入部212aがセグメントセットS1の小セグメント332の一方の飛び出し端部332fの端部を保持する。これら2つの飛び出し端部331f、332fが捻り成形後に互いに接合され、これらに対応する2つの挿入部211a、212aが全体として1つの凹部を形成する。また、リング状保持部213に形成された挿入部213aがセグメントセットS1の小セグメント332の他方の飛び出し端部332gの端部を保持し、リング状保持部214に形成された挿入部214aがセグメントセットS1の大セグメント331の他方の飛び出し端部331gの端部を保持する。これら2つの飛び出し端部332g、331gが捻り成形後に互いに接合され、これらに対応する2つの挿入部213a、214aが全体として1つの凹部を形成する。同様に、リング状保持部215に形成された挿入部215aがセグメントセットS2の大セグメント331の一方の飛び出し端部331fの端部を保持し、リング状保持部216に形成された挿入部216aがセグメントセットS2の小セグメント332の一方の飛び出し端部332fの端部を保持する。これら2つの飛び出し端部331f、332fが捻り成形後に互いに接合され、これらに対応する2つの挿入部215a、216aが全体として1つの凹部を形成する。また、リング状保持部217に形成された挿入部217aがセグメントセットS2の小セグメント332の他方の飛び出し端部332gの端部を保持し、リング状保持部218に形成された挿入部218aがセグメントセットS2の大セグメント331の他方の飛び出し端部331gの端部を保持する。これら2つの飛び出し端部332g、331gが捻り成形後に互いに接合され、これらに対応する2つの挿入部217a、218aが全体として1つの凹部を形成する。
【0028】
図6に示す例では、最内周に配置されたリング状保持部211を1番目、最外周に配置されたリング状保持部218を8番目とすると、奇数番目に配置された4つのリング状保持部211、213、215、217が反時計回り方向に回転駆動され、偶数番目に配置されたリング状保持部212、214、216、218が時計回り方向に回転駆動される。図6では、矢印によって回転駆動方向が示されている。
【0029】
次に、8つのリング状保持部211〜218を回転駆動する回転駆動機構について説明する。図7は、回転駆動機構の詳細を示す部分的な断面図である。図7に示すように、本実施形態の導体捻り装置200に備わった回転駆動機構は、8つのリング状保持部211〜218のそれぞれに連結部311〜318を介して連結された8つの回転駆動リング321〜328と、2つの駆動レバー340、342と、これらの駆動レバー340、342を周方向に沿った互いに反対側に回転駆動する駆動源としての回転駆動部350とを含んで構成されている。連結部311、313、315、317、回転駆動リング321、323、325、327、駆動レバー340、回転駆動部350によって第1の回転駆動機構が構成されている。連結部312、314、316、318、回転駆動リング322、324、326、328、駆動レバー342、回転駆動部350によって第2の回転駆動機構が構成されている。また、回転駆動リング321、323、325、327が第1の回転駆動リング群に、回転駆動リング322、324、326、328が第2の回転駆動リング群に、回転駆動部350が第1および第2の回転駆動部にそれぞれ対応する。駆動レバー340が第1の駆動レバーに、駆動レバー342が第2の駆動レバーにそれぞれ対応する。
【0030】
8つの回転駆動リング321〜328のそれぞれは、8つのリング状保持部211〜218のそれぞれと1対1に対応している。すなわち、回転駆動リング321がリング状保持部211に連結されており、回転駆動リング321を回転させることでリング状保持部211を回転させることができる。同様に、回転駆動リング322がリング状保持部212に連結されており、回転駆動リング322を回転させることでリング状保持部212を回転させることができる。回転駆動リング323がリング状保持部213に連結されており、回転駆動リング323を回転させることでリング状保持部213を回転させることができる。回転駆動リング324がリング状保持部214に連結されており、回転駆動リング324を回転させることでリング状保持部214を回転させることができる。回転駆動リング325がリング状保持部215に連結されており、回転駆動リング325を回転させることでリング状保持部215を回転させることができる。回転駆動リング326がリング状保持部216に連結されており、回転駆動リング326を回転させることでリング状保持部216を回転させることができる。回転駆動リング327がリング状保持部217に連結されており、回転駆動リング327を回転させることでリング状保持部217を回転させることができる。回転駆動リング328がリング状保持部218に連結されており、回転駆動リング328を回転させることでリング状保持部218を回転させることができる。
【0031】
図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。図8に示すように、一方の駆動レバー340は、最内周に配置された回転駆動リング321に端部が固定されている。また、最内周に配置された回転駆動リング321を1番目、最外周に配置された回転駆動リング328を8番目とすると、この駆動レバー340は、最内周の回転駆動リング321以外の奇数番目の回転駆動リング323、325、327のそれぞれに対して周方向に隙間が生じないように貫通している。このため、駆動レバー340を図8において反時計回り方向に回転させることにより、奇数番目の4つの回転駆動リング321、323、325、327を一体として回転駆動することができる。なお、この回転駆動時に、駆動レバー340が偶数番目の回転駆動リング322、324、326、328と干渉しないように、これら偶数番目の回転駆動リングには周方向に沿った逃げ部322a、324a、326a、328aが形成されている。
【0032】
図9は、図7のIX−IX線断面図である。図9に示すように、他方の駆動レバー342は、2番目に配置された回転駆動リング322に端部が固定されている。この駆動レバー342は、2番目の回転駆動リング322以外の偶数番目の回転駆動リング324、326、328のそれぞれに対して周方向に隙間が生じないように貫通している。このため、駆動レバー342を図9において時計回り方向に回転させることにより、偶数番目の4つの回転駆動リング322、324、326、328を一体として回転駆動することができる。なお、この回転駆動時に、駆動レバー342が奇数番目の回転駆動リング323、325、327と干渉しないように、これら奇数番目の回転駆動リングには周方向に沿った逃げ部323a、325a、327aが形成されている。
【0033】
図10は、図7のX−X線断面図であり、回転駆動部350の詳細が示されている。図10に示す回転駆動部350は、モータ351、減速機352、カップリング353、ベアリング354、ボールネジ355、可動部356、358を含んで構成されている。なお、図7に示した回転駆動部350の形状は、図10のVII−VII線断面を示している。
【0034】
モータ351の回転力が減速機352、カップリング353を介してボールネジ355に伝達される。反モータ側に配置された一方の可動部356は、ボールネジ355が所定方向に回転したときにモータ351から遠ざかる向きに移動し、モータ側に配置された他方の可動部358は、ボールネジ355が所定方向に回転したときにモータ351に近づく向きに移動するように、それぞれに設けられた雌ねじ溝の向きが設定されている。
【0035】
また、図8に示すように、可動部356は、駆動レバー340の筒状の先端部が収容されてこの先端部の移動および回転が所定範囲で可能な凹部340aを有している。ボールネジ355が延在する向きに沿って一方向(図8では左から右への向き)に可動部356が移動したときに、駆動レバー340は、回転駆動リング321の中心軸を回転中心として回転駆動される。同様に、可動部358は、駆動レバー342の筒状の先端部が収容されてこの先端部の移動および回転が所定範囲で可能な凹部342aを有している。ボールネジ355が延在する向きに沿って一方向(図9では右から左への向き)に可動部358が移動したときに、駆動レバー342は、回転駆動リング322の中心軸を回転中心として回転駆動される。したがって、駆動レバー340の回転に伴って回転駆動リング321、323、325、327が図8において同時に反時計回り方向に回転駆動され、駆動レバー342の回転に伴って回転駆動リング322、324、326、328が図9において同時に時計回り方向に回転駆動される。
【0036】
このように、本実施形態の導体捻り装置200では、駆動レバー340、342を含む回転駆動機構を用いて、径方向に沿って並んだ8本の電気導体を周方向に捻ることができるため、径方向に沿って並んだ電気導体の本数と同じ数の駆動レバーやこれらを個別に駆動するための構成が不要であり、構成を簡素化することができる。また、2本の駆動レバー340、342を1本のボールネジ355を用いて同時に駆動しているため、駆動レバー340、342の回転駆動に必要なモータの数を減らすことができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。上述した実施形態では、2つの駆動レバー340、342を共通の回転駆動部350で回転駆動したが、2つの駆動レバー340、342のそれぞれに対応させて回転駆動部を備えるようにしてもよい。また、駆動レバー340、342をボールネジ355を用いた駆動源としての回転駆動部350で互いに反対方向に回転させたが、他の駆動源を用いるようにしてもよい。
【0038】
また、2つの駆動レバー340、342を用いて8つの回転駆動リング321〜328を回転させたが、8つの回転駆動リング321〜328のそれぞれに別々に駆動レバーを連結し、合計8本の駆動レバーを2グループに分けてそれぞれのグループ毎に異なる向きに回転駆動するようにしてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態では、リング状保持部211〜218に連結部311〜318を介して連結された回転駆動リング321〜328に駆動レバー340、342を取り付けることによりリング状保持部211〜218に間接的に駆動レバー340、342を取り付けたが、リング状保持部211〜218に駆動レバー340、342を直接取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】車両エアコンのコンプレッサー動力発生用に用いられる一実施形態の回転電機としてのモータの軸方向断面図である。
【図2】ステータコイルの一部をなすセグメントの斜視図である。
【図3】ステータコアに設けられたスロット内におけるセグメントの収容状態を示す部分断面図である。
【図4】大セグメントと小セグメントとからなるセグメントセットをスロットに挿入する状態を示す図である。
【図5】導体捻り装置の部分的な断面図である。
【図6】リング状保持部の部分的な平面図である。
【図7】回転駆動機構の詳細を示す部分的な断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図7のIX−IX線断面図である。
【図10】図7のX−X線断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ステータコア
2 ロータ
3 ステータコイル
4 ハウジング
7 回転軸
33 セグメント
100 モータ
200 導体捻り装置
210 コイル押さえ部
211〜218 リング状保持部
220、222 ワーク固定部
311〜318 連結部
321〜328 回転駆動リング
331 大セグメント
332 小セグメント
340、342 駆動レバー
350 回転駆動部
351 モータ
352 減速機
353 カップリング
354 ベアリング
355 ボールネジ
356、358 可動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のステータコアの端面から軸方向に突出して径方向に並んだ複数の電気導体を周方向に捻る導体捻り装置において、
前記複数の電気導体の先端を保持する円筒形状を有する複数のリング状保持部と、
前記複数のリング状保持部の一部と直接あるいは連結部を介して間接的に連結され、これら一部の前記リング状保持部を一方向に回転させる第1の回転駆動機構と、
前記複数のリング状保持部の残りと直接あるいは連結部を介して間接的に連結され、これら残りの前記リング状保持部を前記第1の回転駆動機構による回転方向と反対に回転させる第2の回転駆動機構と、
を備えることを特徴とする導体捻り装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の回転駆動機構は、前記一部のリング状保持部のそれぞれと前記連結部を介して別々に連結されて回転可能な第1の回転駆動リング群と、前記第1の回転駆動リング群を同時に回転駆動する第1の回転駆動部とを備え、
前記第2の回転駆動機構は、前記残りのリング状保持部のそれぞれと前記連結部を介して別々に連結されて回転可能な第2の回転駆動リング群と、前記第2の回転駆動リング群を同時に回転駆動する第2の回転駆動部とを備えることを特徴とする導体捻り装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の回転駆動部は、前記第1の回転駆動リング群に連結された第1の駆動レバーを備え、
前記第2の回転駆動部は、前記第2の回転駆動リング群に連結された第2の駆動レバーを備え、
前記第1および第2の駆動レバーを、共通の駆動源を用いて互いに反対方向に回転させることを特徴とする導体捻り装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記第1の回転駆動機構によって一方向に回転させる一部の前記リング状保持部と、前記第2の回転駆動機構によって反対方向に回転させる残りの前記リング状保持部は、径方向に沿って交互に配置されていることを特徴とする導体捻り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−79353(P2008−79353A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251990(P2006−251990)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】