説明

導電パターン形成装置と導電パターン形成方法

【課題】樹脂成分を含まない導電性粒子よりなる導電パターン前駆体を、パターン形状を保持したまま、高い転写効率で対象基板にパターンを転写する。
【解決手段】導電微粒子分散液により誘電性薄膜体上に形成された導電パターン前駆体を転写する方法として、現像直後の導電パターン前駆体に残存する液膜を一度除去した後、再び導電パターン前駆体上に溶媒を再供給することで導電性粒子パターンを再帯電する。その後、溶媒を介在させた電気泳動による静電転写により対象基板にパターンを転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板等に導電パターンを形成する導電パターン形成装置及び導電パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高価なマスクと多段工程を有するフォトリソグラフ方式の代替技術として、スクリーン印刷法,ディスペンサ,インクジェット印刷,電子写真印刷などの工程簡便な印刷プロセスによる導電パターン形成方式が注目されている。いずれのプロセスも導電性粒子を溶媒中に分散した導電性粒子分散溶液や樹脂中に導電性粒子を内添したトナー利用し、版やスクリーンを使った間接塗布,ノズル走査による直接塗布、または静電吸着によりパターニングを行う。そしてこれを、加熱焼成することで微粒子同士を融着させて導体化し配線を得る。
【0003】
上記の各種印刷プロセスのなかで、静電気力を利用して絶縁基板上に所望の導電パターンを形成する電子写真方式は、大量生産や大面積パターン形成に対応可能であるだけでなく、多品種少量生産に有利な導電パターンの変更も容易であるため、他のプロセスと比較して有利な点が多い。また、電子写真方式のなかでも特に、導電性粒子を溶媒中に分散した導電性粒子分散溶液を現像剤として用いる液体現像方式は、液中に微粒子を分散することで飛散を防止可能であり、より小粒径の導電性粒子を扱えるため、パターンの高解像度化および導電性粒子の融着導体化時の焼成温度低減に有利な方式である。
【0004】
液体現像方式を用いたパターン形成装置では、まず、感光体上を一様に帯電しレーザ走査露光により任意の静電潜像を形成する。次に、液体現像剤を接触させ液中に分散したパターン形成材料粒子を電気泳動により静電潜像に静電吸着させることによりパターン現像し、得られた現像パターンを対象基板に直接または間接的に転写を行う。
【0005】
ここで、上記プロセスにおける転写手段としては、熱や圧力を加えて転写する方法がある。あるいは、粒子に電界を与えることで静電気力により転写をする方法がある(例えば特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−91171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、液体現像方式による導電パターン形成において、感光体上に現像された導電パターン前駆体を、対象となる基板に熱や圧力で転写する場合、導電性粒子分散溶液中に樹脂成分が分散している必要、あるいは、導電性粒子の最外層に樹脂層を持っている必要がある。これは、熱や圧力による転写には、樹脂成分により発現する粘着性が必須であるためである。しかしながら、これらの樹脂成分を、導電性粒子分散溶液中に存在させると、加熱焼成による導体化時にパターン中に樹脂成分が残存し、形成される導体パターンの抵抗値を上昇させる原因となる課題がある。
【0008】
液体現像方式による導電パターン形成において、感光体上に現像された導電パターン前駆体を静電気力により転写する場合、現像直後の導電パターン前駆体上に残存する溶媒を除去せずに、転写時に感光体および対象基板間に溶媒を介在させ電気泳動により転写する方法や、特許文献1記載のように現像直後の導電パターン前駆体上に残存する溶媒を乾燥除去し、乾燥した導電パターン前駆体を帯電器により再帯電し対象基板に静電吸着する方法がある。
【0009】
前者の場合は、導電性粒子分散溶液中に樹脂成分が無くても溶液中の導電性粒子がイオン吸着により帯電していれば電気泳動が可能である。しかし、現像された粒子間の密着性が弱く外力で容易にパターンが破壊されてしまうため、対象基板への転写時に起こる溶媒流れによる影響をうけパターン形状を保持できない課題があった。また、感光体上の残存潜像電荷と液で帯電した導電性粒子の相互作用があるため、対象基板に転写される導電性粒子の転写効率が低下するといった課題がある。
【0010】
後者に記載した特許文献1の方法では、現像後のパターンを乾燥し、転写時にも溶媒を介さないため、溶媒の流れによるパターン破壊は発生しない。ただし、特許文献1の方法は導電パターン形成が目的ではなく色成分による画像形成が目的としており、乾燥後の粒子を帯電器により再帯電し静電転写を適用するために、粒子は樹脂層を持つことが必須となる。もし、この方法で導電パターン形成をするとしたなら、前述したように、樹脂成分の存在が配線の抵抗値を上昇させてしまう。
【0011】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、電子写真による導電パターン形成において、得られる導電パターンの抵抗値を高くする原因となる樹脂成分を用いないで、導電パターン前駆体を目的の対象基板上に、パターンを保持したまま高転写効率で転写する方法、およびそれを備えた導電パターン形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明では、導電微粒子分散液により感光体上に形成された導電パターン前駆体を転写する方法として、現像直後にパターン上に残る溶媒を一旦除去し、感光体上の残存静電潜像を再び導電パターン前駆体上に溶媒を再供給することで導電性粒子パターンをイオン吸着により再帯電し、その後静電気力により対象基板にパターンを転写する手段を提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の転写方式によれば、低温焼成で低抵抗な配線を提供できる樹脂成分を含まない導電性粒子によりなる導電パターン前駆体を、パターン形状を保持したまま、高転写効率で対象基板上に転写することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る電子写真方式による導電パターン形成方法について図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明における電子写真法による導電パターン形成方法を適用した装置を模式的に示したものである。本装置は主に、帯電装置1,誘電性薄膜体4,露光装置3,導電性粒子分散溶液6,現像装置7,液膜除去手段21,液膜付与手段22,転写手段9,パターン形成対象基板8,加熱装置13により構成される。
【0016】
本実施例では、静電潜像の形成手段として、感光性を有する誘電性薄膜体4を表面に設けたドラム状の感光体を使用している。この感光体の周囲に設けた帯電装置1(コロトロン帯電器又は、ローラ接触帯電器又は、ブラシ接触帯電器のいずれかで構成されている)により、その表面を一様に帯電する。帯電装置1で一様帯電された領域2に、パソコンなどの画像情報処理装置からの画像信号に応じてレーザ光を走査する露光装置3により任意の部分に光を照射し、目的の静電潜像パターン5を形成する。また他の方法として、予め目的のパターン形状を表面に加工した静電潜像転写体の凸部分に静電荷を付与し、これを一様帯電された誘電性薄膜体4の表面に接触させるスタンプ帯電により目的の静電潜像パターン5を形成する方法を用いても良い。しかし、静電潜像パターン5の容易な変更を実現するには、前者の一様に帯電した領域2に光を照射することで静電潜像パターン5を形成する方法を用いることが好ましい。ここで、いずれの方法においても、付与される静電潜像は、正電荷および負電荷のどちらによるものでも構わない。
【0017】
現像装置7は、感光体上に形成された静電潜像パターン5に導電性粒子分散溶液6を接触して供給することで、導電パターンを現像形成する。この現像装置7は、導電性粒子分散溶液6を貯蔵するタンクと、誘電性薄膜体4上の静電潜像パターン5に供給するための供給手段(供給ロール)を具備している。この供給ロール上に導電性粒子分散液の膜を形成し、形成された膜を静電潜像パターン5に接触させて供給するものである。貯蔵タンク内には導電性粒子分散溶液6の濃度を検出する濃度検出手段が設けてある。この検出手段により得られた濃度情報に基づいて貯蔵タンク内に無極性溶媒15の添加、又は導電性粒子17を添加することにより、濃度を調整する濃度調整手段を設けてある。また、貯蔵タンクには、沈降防止,全領域濃度均一化のために攪拌手段が具備されている。攪拌手段としては、導電性粒子分散液に超音波を照射することで攪拌する超音波照射手段、または液中内を機械的に攪拌するための攪拌羽根等を使用する攪拌手段、または貯蔵タンク自体を加振することで攪拌する加振手段などを用いることができる。また、導電性粒子分散溶液6の供給手段としては、前述のロール上に導電性粒子分散溶液6の層を形成し、これを静電潜像に接触させる方法の他、ノズルにより導電性粒子分散溶液6を吹き付ける方法や、導電性粒子分散溶液6を貯めた溶液中に静電潜像パターン5を形成した誘電性薄膜体4を浸す方法などが挙げられる。
【0018】
導電性粒子分散溶液6の詳細を図2に示す。導電性粒子分散溶液6は表面にイオン性有機分子16が吸着した粒径100nm以下の導電性粒子17を無極性溶媒15中に分散させてなる。
【0019】
イオン性有機分子16としては、高分子の場合は、ポリスチレン,ポリ−p−クロルスチレン,ポリビニルトルエン,スチレン−p−クロルスチレン共重合体,スチレン−ビニルトルエン共重合体等のスチレンおよびその置換体の単独重合体およびそれらの共重合体,スチレン−アクリル酸メチル共重合体,スチレン−アクリル酸エチル共重合体,スチレン−アクリル酸−n−ブチル共重合体等のスチレンとアクリル酸エステルとの共重合体,スチレン−メタクリル酸メチル共重合体,スチレン−メタクリル酸エチル共重合体,スチレン−メタクリル酸−n−ブチル共重合体等のスチレンとメタクリル酸エステルとの共重合体,スチレンとアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの多元共重合体,スチレン−アクリロニトリル共重合体,スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体,スチレン−ブタジエン共重合体,スチレン−ビニルメチルケトン共重合体,スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレンと他のビニル系モノマーとのスチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート,ポリブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル樹脂,ポリアクリル酸メチル,ポリアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル樹脂,ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,シクロオレフィン共重合体など、以上に挙げた高分子樹脂単独または混合した高分子樹脂に、カルボン酸基やアミノ酸基などのイオン性を付与できる官能基が付いたものが挙げられる。
【0020】
低分子量の有機分子の場合は、シュウ酸,マロン酸,コハク酸,アジピン酸,グルタル酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2,4−ジエチルグルタル酸,ピメリン酸,アゼライン酸,セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸,マレイン酸,フマル酸,ジグリコール酸などのジカルボン酸や、カプリル酸,ラウリル酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,アラキン酸,ベヘニン酸,リノール酸,オレイン酸,リノレン酸などの脂肪酸や、乳酸,ヒドロキシピバリン酸,ジメチロールプロピオン酸,クエン酸,リンゴ酸,グリセリン酸などのヒドロキシカルボン酸、などの脂肪族カルボン酸による脂肪族カルボン酸イオン19と、Ag,Cu,Au,Pd,Pt,Ni,W,Mo,Crなどの無機イオン18、からなる脂肪族カルボン酸無機塩などが挙げられる。
【0021】
導電性粒子パターン12を導体化するには、導電性粒子17周りの有機成分を加熱して焼き飛ばす必要がある。なお、高分子成分よりも低分子成分の方が焼成に必要な熱エネルギーが低い。従って、導電パターン形成用の対象基板8として、耐熱温度が低いポリイミドなどの樹脂性の基板を用いる場合は、焼成温度が低い低分子有機分子を用いた方が良い。また、低分子有機分子を用いると、導体化したパターンの高抵抗化を招く導体パターン中の残存有機分子比率が高分子有機分子を用いた場合に比べ低くなる。以上の観点から、導電性粒子17周りの有機分子成分は、低分子量の有機分子であることが好ましい。
【0022】
導電性粒子17の粒径は低温融着を可能にし、導電パターン14が高解像度となるように、100nm以下である必要がある。ただし、200度以下の温度で加熱して導電性粒子17を融着し導電性粒子パターン12を導体化させるためには導電性粒子17の粒径を10nm以下とする。100nm以下の線幅の導電パターン14が必要な時は、導電性粒子17の粒径を5nm以下にする。
【0023】
導電性粒子17には、AgまたはCu,Au,Pd,Pt,Ni,W,Mo,Cr等の単体金属、またはこれらの金属の酸化物、これらの金属の合金を用いる。導電体が必要な時は、体積抵抗率の低いAgまたはCuを用いる。なお、上記金属か、又はその酸化物、又はその合金を複数混合して用いることもできる。
【0024】
無極性溶媒15には、脂肪族炭化水素系溶媒を用いる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、イソパラフィン系または石油ナフサ系,アイソパー(エクソンケミカル社),IPソルベント(出光石油社),ソルトール(フィリップス石油社),その他の炭化水素がある。
【0025】
本発明における電子写真方式による導電パターン形成手段では、誘電性薄膜体4上に現像された導電性粒子パターン12を、対象となる対象基板8上に転写する工程を有する。転写手段9は対象基板8の被転写層を介した背面から電圧を与え、静電力により誘電性薄膜体4上に現像された導電性粒子パターン12を対象基板8上に転写する静電転写方式を採用している。導電性粒子パターン12をなす導電性粒子17は、溶媒中でのみ帯電するため、静電転写を行う時には、誘電性薄膜体4と対象基板8との間のギャップには溶媒の介在が必須となる。現像直後の誘電性薄膜体4上は導電性粒子分散溶液6中の無極性溶媒15による液膜が存在する。このため、液膜層をそのまま転写工程に必須な溶媒として利用することができる。しかし、誘電性薄膜体4上に形成された導電性粒子パターン12中の導電性粒子17は、粒子間力があまり高くない。このため、転写手段9部において起こる液流の流れにより再分散して、簡単にパターンが破壊されてしまう。また、現像直後から液膜を有したまま転写手段9部まで運ばれると、感光体上には、現像時に利用した潜像パターンが残存したままである。このため、導電性粒子パターン12をなす導電性粒子
17と誘電性薄膜体4上の潜像との静電相互作用が強く導電性粒子17が離脱しにくくなる。このため、転写手段9部において対象基板8に転写する割合である転写効率が著しく低下する。
【0026】
そのため、本発明では、図4に示すように転写工程に移る前に現像工程により形成される導電性粒子パターン12上の液膜を、除去する液膜除去工程(溶媒除去工程)と、その後、転写工程に移る前に再び液膜を付与する液膜付与工程(溶媒再添加工程)を有する方法とする。現像直後の導電性粒子パターン12上から液膜を一度除去することにより、導電性粒子パターン12を構成する導電性粒子17が凝集し、粒子間力が増加する。このため、パターンの保持性が向上し、転写時のパターン破壊を防止できる。また、液膜除去により誘電性薄膜体4上に残存する静電潜像が消去され、導電性粒子パターン12は誘電性薄膜体4上より剥離し易くなるため転写効率が向上する。但し、電気泳動による静電転写時には誘電性薄膜体4と対象基板8間に溶媒の介在が必須であるため、溶媒を除去した導電性粒子パターン12上に溶媒を再塗布する工程を設ける。
【0027】
現像直後の導電性粒子パターン12上から液膜を一度除去する液膜除去手段21としては、次のような方法が考えられる。まず、加熱や熱風吹き付けにより溶媒を蒸発乾燥させる加熱手段による加熱方式や、気体流を液膜に吹き付け液膜を吹き流して導電性粒子パターン12上から液膜を除去する送風手段を設けた気体流方式などが考えられる。なお、加熱方式は液体が蒸発するためにかかる時間が長いことや、熱により誘電性薄膜体4の劣化促進が懸念される。このため、気体流方式を用いることが好ましい。気体流を吹き付ける向きは、吹き流された液膜が転写する方向(既に除去された導電性粒子パターン12方向)や、現像方向(液膜を有した現像直後の導電性粒子パターン12方向)へ流れていくことは好ましくない。従って、転写位置と現像位置の中間で、中央から誘電性薄膜体4端部方向(幅方向)に液膜を吹き流すか、あるいは同じく幅方向に一方の誘電性薄膜体4端部からもう一方の誘電性薄膜体4端部に液膜を吹き流す方法が好ましい。さらにこの時、誘電性薄膜体4端部には吹き流された液膜を回収する液膜回収手段を有していることが好ましい。液膜回収手段としては、誘電性薄膜体4端部に溝を形成し、この溝に液膜を回収する方法や、液膜を吸収できるスポンジ部材を備える方法が考えられる。さらに、液体除去時間を短縮するために、誘電性薄膜体4の端部に負圧により流れてきた液膜を吸引回収する構成であっても良い。なお、回収された溶媒は現像装置7に運ばれ、リサイクルされる構成とすることが好ましい。
【0028】
液膜を除去した導電性粒子パターン12上に再び溶媒を再添加し液膜を形成する液膜付与手段22としては、溶媒を満たした受け皿状の部材に導電性粒子パターン12を保持した誘電性薄膜体4を浸しながら通過させる方法や、スプレーにより溶媒を噴霧し液膜を再形成する方法などが考えられる。ここで、前述したように、液膜を再度塗布した後の導電性粒子パターン12は、液膜除去時の残存潜像消去に伴い、誘電性薄膜体4表面との相互作用が低下しているため、物理的外力により剥離し易くなっている。このため、気流の拭き付けに伴い物理的な力を受けるスプレー噴霧による液膜再形成法はパターンの破壊が懸念される。このため、溶媒を満たした受け皿に導電性粒子パターン12を浸しながら通過させる方法の方がより好ましい。ここで、最添加される溶媒は、導電性粒子分散溶液6における無極性溶媒15成分と同様のものであることが好ましい。
【0029】
電子写真方式による導電パターン形成手段では、液膜付与手段22によって液膜を再形成する。これにより、液中で再帯電された導電性粒子17からなる導電パターン前駆体
12を、誘電性薄膜体4上から対象となる対象基板8上にパターンを保持したまま移動させるための転写手段9を備えている。この転写方法としては、図5に示すように、導電性粒子パターン12が、誘電性薄膜体4面と対象基板8表面に挟まれた状態となる。誘電性薄膜体4と対象基板8表面との間のギャップは、液膜付与手段によって付与された溶媒により満たされた状態となる。この状態で対象基板8の背面から電圧を印加することにより、導電性粒子パターン12が誘電性薄膜体4側から対象基板8側に電気泳動により転写する、静電転写方式である。転写手段9に印加する電圧は、導電性粒子パターン12を構成する導電性粒子17が液中で負帯電の場合は正バイアス、正帯電の場合は負バイアスとなる。また、電圧を印加する部材は導電性の弾性体を表面設けられたロール構成で、転写時に誘電性薄膜体4の回転方向に従動回転方向に回転しながら、誘電性薄膜体4に対し100g重/cm以上の加圧力を付与できる構成であることが好ましい。
【0030】
本発明における転写の対象としては、導電パターンを形成される対象基板上に直接転写する方法、あるいは一次的に導電性粒子パターン12を導電パターン保持基板(中間転写体)に保持し、その後、転写されたパターンを更に対象基板8上に転写する方法がある。直接目的の対象基板8上に転写する方法の場合、対象基板8は200〜250℃の加熱に対し耐性を有し、さらに対象基板8背面からの転写バイアス印加に対応するために、厚さ1mm以下のシート状の部材であることが好ましい。上記対象基板8を構成する部材の例としては、ポリイミドからなる樹脂シートやセラミックグリーンシートなどが挙げられる。
【0031】
本発明における導電パターン形成装置において対象基板8に転写された導電性粒子パターン12を、対象基板8に定着し、かつ、導電性粒子17同士を融着して導体化し導電パターン14とするための加熱装置13を具備している。加熱装置13は、導電性粒子17を融着させるだけでなく、導電性粒子17表面に付与した分散剤層を焼成する。この時、加熱と同時に導電性粒子パターン12を対象基板8上に加圧できる機構を備えていても良い。この時の加熱温度は、導電性粒子17を十分に融着し、イオン性有機分子を焼成させ、かつ対象基板8の変形や変性を防ぐために300℃以下であることが好ましい。この時、焼成された有機物成分を排気する排気手段を設置しても良い。
【0032】
本発明における導電パターン形成装置において、誘電性薄膜体4は導電パターンを転写後、再び潜像が形成され導電性粒子パターン12を現像される構成であっても良い。形状としてはベルト状またはドラム状であることが好ましい。また、この時、転写後の誘電性薄膜体4の残留静電潜像を消去する残留潜像消去手段10、および残留した導電性粒子
17を除去・回収する残留導電性粒子クリーニング手段11を備えている。残留導電性粒子クリーニング手段11としては、誘電性薄膜体4にブレードを接触させ掻きとる方法や、溶媒により洗い流す方法が挙げられる。また、除去・回収された導電性粒子17は、現像装置7に戻されて、再び導電性粒子分散溶液6中に分散されてリサイクルされても良い。
【0033】
本発明の導電性粒子分散溶液6により形成された導電パターン14は、例えばパーソナルコンピュータ,大型電子計算機,ノート型パソコン,ペン入力パソコン,ノート型ワープロ,携帯電話,携帯カード,腕時計,カメラ,電気シェーバ,コードレス電話,ファックス,ビデオ,ビデオカメラ,電子手帳,電卓,通信機能付き電子手帳,携帯コピー機,液晶テレビ,電動工具,掃除機,バーチャルリアリティ等の機能を有するゲーム機器,玩具,電動式自転車,医療介護用歩行補助機,医療介護用車椅子,医療介護用移動式ベッド,エスカレータ,エレベータ,フォークリフト,ゴルフカート,非常用電源,ロードコンディショナ,電力貯蔵システムなどの基板配線として使用することが出来る。また、民生用の他,軍需用,宇宙用としても用いることができる。
【0034】
ここで、本発明における現像パターンの転写について、具体的な例をあげるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0035】
本発明では、まず、a−Si無機感光体ドラム(京セラ製)から30mm×30mmに切り出したa−Si無機感光体に、ガラスマスクを用いた投影露光によりL/S=10〜100μmの正の静電潜像パターン形成した。次に、得られた潜像パターンを、銀ナノ粒子を無極性溶媒のアイソパーG(エクソンケミカル社製)中に分散した銀ナノ粒子現像剤に接触させ、L/S=10〜100μmの銀ナノ粒子パターンを得た。この時、銀ナノ粒子の分散剤層はステアリン酸である。また、上記の操作はすべて暗環境で行った。
【0036】
現像直後の銀ナノ粒子パターン上における液膜(アイソパーG)にエアースプレーを吹き当て、パターン上の液膜を感光体端部に全て吹き流して除去した。約十秒後、アイソパーGを満たしたシャーレに銀ナノ粒子パターンが形成された感光体表面をゆっくりと浸し、銀ナノ粒子パターン上に再び液膜を付与した。液膜を再度付与された銀ナノ粒子パターン上にポリイミドシートを重ね、ポリイミドシート背面より導電性ゴムからなる転写ロールを荷重1000g重で押し当てた。このまま、転写バイアス+1000Vを加えながら、ポリイミド上を転がし、感光体上の銀ナノ粒子パターン(L/S=10〜100μm)を、パターンを保持したまま90%以上の転写効率で、ポリイミド上に転写した。
【0037】
以上の方法で対象基板上に、高精度の導電パターンを形成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明における電子写真法による導電パターン形成方法の模式図である。
【図2】本発明における導電性粒子分散溶液の概略図である。
【図3】低分子量のイオン性有機分子を有する導電性粒子の概略図である。
【図4】本発明における現像パターンを基板上に転写するプロセスの概略図である。
【図5】本発明における電気泳動による静電転写の概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1…帯電装置、2…領域、3…露光装置、4…誘電性薄膜体、5…静電潜像パターン、6…導電性粒子分散溶液、7…現像装置、8…対象基板、9…転写手段、10…残留潜像消去手段、11…残留導電性粒子クリーニング手段、12…導電性粒子パターン、13…加熱装置、14…導電パターン、15…無極性溶媒、16…イオン性有機分子、17…導電性粒子、18…無機イオン、19…脂肪酸イオン、20…転写ロール、21…液膜除去手段、22…液膜付与手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料による任意の導電性パターンを形成する導電パターン形成方法において、
誘電性薄膜体上に現像された導電パターン前駆体上の液膜を一度除去し、再び導電パターン前駆体に液膜を付与した後、対象となる基板上に静電転写を特徴とする導電パターン形成方法。
【請求項2】
誘電性薄膜体を表面に備えた感光体と、前記感光体上に静電潜像パターンを形成し、前記静電潜像パターンを導電性粒子分散液にて現像する現像装置と、前記感光体上に現像された導電性パターン前駆体から液膜を除去する液膜除去手段と、前記液膜を除去された導電パターン前駆体に再び液膜を形成する液膜付与手段と、前記液膜を再付与された導電パターン前駆体を対象基板に転写する転写手段とからなる導電パターン形成装置。
【請求項3】
前記液膜除去手段が、導電パターン前駆体を加熱する加熱手段で構成され、加熱手段で導電パターン前駆体表面を加熱することで溶媒を蒸発させて液膜を除去することを特徴とする請求項2記載の導電パターン形成装置。
【請求項4】
前記液膜除去手段が、導電パターン前駆体表面に気流を吹き付ける送風手段で構成され、前記送風手段で液膜を誘電性薄膜体端部に吹き流し、液膜を除去することを特徴とする請求項2記載の導電パターン形成装置。
【請求項5】
前記送風手段が現像装置と転写手段の中間部に設けられ、その気流吹き付け方向が、感光体の幅方向の一方の端部側からもう一方の端部側方向、あるいは感光体の幅方向の中央から両端部側方向であることを特徴とする請求項4記載の導電パターン形成装置。
【請求項6】
前記感光体端部には吹き流された液膜を負圧により回収する手段を設けたことを特徴とする請求項5記載の導電パターン形成装置。
【請求項7】
前記液膜付与手段が、前記液膜除去手段と転写手段との間に設けられ、液膜となる溶媒が入った容器からなり、前記容器中に導電パターン前駆体を表面に有する誘電性薄膜体を浸漬させる構成としたことを特徴とする請求項2記載の導電パターン形成装置。
【請求項8】
前記液膜付与手段が、前記液膜除去手段と転写手段との間に設けられ、液膜となる溶媒を噴霧する溶媒噴霧装置からなり、導電パターン前駆体上に溶媒を噴霧することで液膜を再び形成することを特徴とする請求項2記載の導電パターン形成装置。
【請求項9】
前記導電性粒子分散溶液は、加熱または加圧により導体化する導電性粒子を液中に分散させた溶液であることを特徴とする請求項2記載の導電パターン形成装置。
【請求項10】
前記導電性粒子分散溶液中に分散させる導電性粒子の粒径を100nm以下としたことを特徴とする請求項9記載の導電パターン形成装置。
【請求項11】
前記導電性粒子分散溶液中の導電性粒子は表面にイオン性有機分子を有しており、無極性溶媒中に分散させていることを特徴とする請求項9記載の導電パターン形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−34495(P2008−34495A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204070(P2006−204070)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】