説明

導電体パターンの欠陥検査方法及び欠陥検査装置

【課題】基板全体の画像を取得する必要がなく、透明導電体パターンの欠陥個所を短時間で検出できる導電体パターンの欠陥検査方法及び欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】プローブ15aを奇数番目の導電体パターン31の左端部に接続し、プローブ15bを偶数番目の導電体プローブ31の右端部に接続して、プローブ15a,15b間に所定の電圧を印加する。導電体パターン31に短絡欠陥がある場合は、その導電体パターン31に電流が流れて発熱する。赤外線カメラ12を導電体パターン31に直交する方向に移動させて、発熱している導電体パターン31を検出する。その後、発熱している導電体パターン31に沿って赤外線カメラ31を移動し、直線から外れた部分の発熱個所を検出し、その位置を短絡個所として記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステリック型液晶表示装置の配線の短絡や断線等の欠陥検出に好適な導電体パターンの欠陥検査方法及び欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック型液晶表示装置の製造時には、ガラス等の基板の上にITO(Indium-Tin Oxide)等の光透過性の導電材料からなる多数の配線や電極等(以下、これらの配線や電極等を「導電体パターン」という)を形成した後、これらの導電体パターンの短絡や断線等の欠陥の有無を検出する電気検査が行われる。
【0003】
一般的に、電気検査は、各導電体パターンの端部にそれぞれプローブピンを接触させ、1本の導電体パターンの両端における電気抵抗や、相互に隣接する導電体パターン間の電気抵抗及び電気容量を測定することにより行っている。この電気検査により欠陥の有無を検出することは比較的容易であるが、欠陥を修復するためには欠陥個所を特定することが必要となる。
【0004】
欠陥個所の特定には、作業者が拡大鏡(顕微鏡)を使用して基板を観察する方法と、カメラで基板を撮影し、画像処理を行って欠陥個所を自動的に検出する方法とがある。前者の方法では、作業者の負荷が大きく、また作業者により検出効率及び検出精度が大きく異なるという問題がある。
【0005】
後者の方法では、作業者の負荷が小さく、作業を効率的に行うことができる。しかし、光透過性の導電材料からなる導電体パターンは光を透過するため、カメラで撮影した画像のコントラストが低く、検出ミスが発生しやすい。検出ミスを低減するために高解像度の光学系を使用することも考えられるが、そうすると検査装置のコストが高くなることに加え、画像処理に要する時間が長くなるという問題がある。また、基板に光を遮断する異物等が付着していると、コントラストが大きく変化して透明導電体パターンの欠陥検出が困難になるという問題もある。
【0006】
特許文献1〜3には、導電体パターンに電圧を印加して抵抗発熱させ、赤外線カメラで基板を撮影して欠陥個所を検出することが提案されている。このような方法では、抵抗発熱している部分(通電している部分)とそうでない部分(通電していない部分)とのコントラストの差が大きい画像が得られるため、欠陥の有無の判定及び欠陥個所の特定が容易になるという利点がある。
【特許文献1】特開平1−185454号公報
【特許文献2】特開平5−340905号公報
【特許文献3】特開平6−51011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本願発明者らは、上記の特許文献1〜3に記載された技術には以下に示す問題点があると考える。すなわち、特許文献1〜3に記載された方法では、いずれも基板の全体像を取り込んでいる。基板の全体像を取り込むためには、例えば高解像度の赤外線カメラを基板から離れた位置に配置して、この赤外線カメラにより基板の全体像を1度に撮影することが考えられる。しかし、この場合は、高解像度の赤外線カメラとそれに対応する高性能の画像処理装置とが必要となり、検査装置のコストが高くなる。
【0008】
比較的低解像度の赤外線カメラを基板の近くに配置し、赤外線カメラを基板に対し相対的に移動(スキャン)させて基板の全体像を取得することも考えられる。しかし、この場合は、基板の全体像を取得するまでに時間がかかり、スループットが低下する。
【0009】
以上から、本発明の目的は、基板全体の画像を取得する必要がなく、透明導電体パターンの欠陥個所を短時間で検出できる導電体パターンの欠陥検査方法及び欠陥検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、基板に形成された複数の導電体パターンの欠陥を検査する導電体パターンの欠陥検査方法において、前記複数の導電体パターンに電圧を印加する第1の工程と、赤外線検出器を前記複数の導電体パターンと交差する方向に移動させて前記導電体パターンが発熱しているか否かを調べる第2の工程とを有する導電体パターンの欠陥検査方法が提供される。
【0011】
また、本発明の他の観点によれば、複数の導電体パターンが形成された基板が載置されるステージと、前記ステージの上方に配置された赤外線検出器と、前記赤外線検出器及び前記基板の少なくとも一方を、前記基板の面に平行な第1の方向に移動させる第1の移動機構と、前記赤外線検出器及び前記基板の少なくとも一方を、前記基板の面に平行かつ前記第1の方向に交差する第2の方向に移動させる第2の移動機構と、前記導電体パターンに電圧を印加する電圧印加部と、前記赤外線検出器から出力される信号に基づいて前記導電体パターンが発熱しているか否かを判定する主制御部とを有し、前記主制御部は、前記電圧印加部を制御して前記複数の導電体パターンに電圧を印加し、前記第1の移動機構及び前記第2の移動機構を制御して前記赤外線検出器を前記複数の導電体パターンと交差する方向に相対的に移動させ、前記赤外線検出器の出力に基づいて発熱している導電体パターンを検出する導電体パターンの欠陥検査装置が提供される。
【0012】
本発明において、例えば短絡検査時には、隣接する導電体パターン間に電圧を印加する。これらの導電体パターン間に短絡欠陥がない場合は、これらの導電体パターン間には電流が流れず、導電体パターンは発熱しない。一方、これらの導電体パターン間に短絡欠陥がある場合は、導電体パターンに電流が流れてジュール熱が発生し、導電体パターンが発熱する。赤外線検出器を導電体パターンと交差する方向に移動させながら赤外線検出器の出力を信号処理(画像処理)することにより、発熱している導電体パターン(すなわち、短絡欠陥を有する導電体パターン)と発熱していない導電体パターン(すなわち、短絡欠陥欠陥がない導電体パターン)とを区別することができる。
【0013】
短絡個所を有する導電体パターンを検出したときは、その導電体パターンに沿って赤外線検出器を移動し、導電体パターンの設計データに基づく判定基準から外れる発熱個所を検出する。例えば、直線状の導電体パターンの場合、直線から外れる発熱個所を検出したときに、その発熱個所を短絡個所とする。このようにして、本発明においては、欠陥個所を検出する。
【0014】
本発明においては、基板の全体像を取得するのではなく、赤外線検出器を導電体パターンと交差する方向に相対的に移動させて発熱している導電体パターンを検出し、その結果に基づいて欠陥の有無を判定する。このため、高解像度の赤外線カメラや高解像度の画像を処理するための高性能の画像処理装置が不要であり、装置コストを低減できるとともに検査に要する時間を短縮できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電体パターンの欠陥検査装置の構成を示す模式図である。本実施形態においては、コレステリック型液晶表示装置用基板の導電体パターンの欠陥検出に適用した例について説明する。
【0017】
なお、コレステリック型液晶表示装置は、一対の透明基板間にコレステリック液晶を封入し、背面に光吸収層を配置した構造を有する反射型の表示装置である。一方の透明基板には横方向(X軸方向)に伸びる複数の透明導電体パターンが形成され、他方の透明基板には縦方向(Y軸方向)に伸びる複数の透明導電体パターンが形成されている。一方の基板に形成された透明導電体パターンと他方の基板に形成された透明導電体パターンとが交差する部分がそれぞれ画素となる。コレステリック液晶は、印加する電圧に応じて光を透過するフォーカルコニック状態又は特定の波長の光を反射するプレーナ状態に変化し、電圧の印加を停止してもその直前の状態を保持する。従って、電圧を供給しなくても文字又は画像等の表示が可能であり、消費電力が極めて少ない表示装置を実現できる。また、赤色光を反射する液晶パネルと、緑色光を反射する液晶パネルと、青色光を反射する液晶パネルとを重ね合せて、フルカラーの表示装置とすることも可能である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る導電体パターンの欠陥検査装置は、ステージ11、赤外線カメラ(赤外線検出器)12、X軸ガイドレール13、Y軸ガイドレール14、プローブ15a,15b、主制御部16、X軸駆動制御部17、Y軸駆動制御部18、電圧印加部19、プローブ駆動部20、設計データ記憶部21及び欠陥個所記憶部22により構成されている。
【0019】
検査する基板30は、ステージ11上に載置される。ここでは、図1に示すように、基板30の表面にはITO等の透明導電体材料からなる多数の直線状の導電体パターン31が、X軸方向(横方向)に平行にかつY軸方向(縦方向)に一定の間隔で配列して形成されているものとする。
【0020】
赤外線カメラ12は、基板30の上方に配置される。この赤外線カメラ12は、X軸ガイドレール13によりX軸方向に移動可能に支持されている。また、X軸ガイドレール13は、Y軸ガイドレール14によりY軸方向に移動可能に支持されている。赤外線カメラ12のX軸方向及びY軸方向の位置は、主制御部16によりX軸駆動制御部17及びY軸駆動制御部18を介して制御される。なお、X軸駆動制御部17及びY軸駆動制御部18にはそれぞれ赤外線カメラ12のX軸方向の位置及びY軸方向の位置を検出するエンコーダ(図示せず)が設けられており、主制御部16はこれらのエンコーダの出力により赤外線カメラ12の位置(X座標及びY座標)を知ることができる。
【0021】
プローブ15a,15bは、その下側に複数のプローブピン(図示せず)が設けられている。プローブ15aはプローブ駆動部20により駆動され、導電体パターン31の左側の端部にプローブピンを接触させる。また、プローブ15bはプローブ駆動部20により駆動され、導電体パターン31の右側の端部にプローブピンを接触させる。
【0022】
電圧印加部19は、主制御部16からの信号に基づき、プローブ15a,15bを介して所定の導電体パターン31に所定の電圧を供給する。
【0023】
設計データ記憶部21には、導電体パターン31の設計データが記憶される。主制御部16は、設計データ記憶部21に記憶されている設計データから検査対象の導電体パターン31の規則性を抽出する。導電体パターンの規則性は、その導電体パターンの形状の概略を示すデータであり、欠陥の有無の判定に用いられる。例えば、本実施形態では導電体パターン31がいずれもX軸に平行な直線であるので、主制御部16は導電体パターン31の規則性として、導電体パターン31の始点と終点との間が連続的につながっており、かつX座標の急激な変化がないことを欠陥無しの判定条件(判定基準)とする。
【0024】
主制御部16は、X軸駆動制御部17、Y軸駆動制御部18、電圧印加部19及びプローブ駆動部20を制御するとともに、赤外線カメラ12から出力される信号を入力して画像処理を行う。そして、上述の導電体パターンの規則性に基づいて欠陥の有無を判定し、欠陥有りと判定した場合はそのときの赤外線カメラ12のX座標及びY座標の位置を欠陥個所の位置として欠陥個所記憶部22に記憶する。
【0025】
以下、本実施形態に係る導電体パターンの欠陥検査方法について、図2に示すフローチャート及び図3〜図5に示す模式図を参照して説明する。なお、ここでは、短絡欠陥を検出する場合の動作について説明する。また、ここでは、図3,図4に破線円で囲んだ部分に短絡欠陥が発生しているものとする。
【0026】
短絡欠陥を検出する場合、ステップS11において、主制御部16はプローブ駆動部20を制御して、図4に示すようにプローブ15aのプローブピンを奇数番目の導電体パターン31の左端部に接続し、プローブ15bのプローブピンを偶数番目の導電体パターン31の右端部に接続する。そして、ステップS12に移行し、電圧印加部19を制御してプローブ15a,15b間に所定の電圧を供給する。プローブ15a,15b間に供給する電圧は、直流電圧でもよく、交流電圧でもよい。また、三角波若しくは矩形波の交番電圧でもよい。
【0027】
短絡欠陥がない場合は、奇数番目の導電体パターン31と偶数番目の導電体パターン31とがつながっていないため、導電体パターン31は発熱しない。しかし、図3,図4に示すように短絡欠陥がある場合は、図4中に太線で示すように電流が流れてジュール熱が発生し、電流が流れた部分の導電体パターン31の温度が上昇する。
【0028】
プローブ15a,15b間に所定の電圧を印加し、短絡した導電体パターン31の温度が十分上昇するのに要する時間が経過した後、ステップS13に移行する。そして、主制御部16は、X軸駆動制御部17及びY軸駆動制御部18を制御して、図4に示すように赤外線カメラ12を第1行目(最上部)の導電体パターン31の右端上部に移動させる。その後、ステップS14に移行し、主制御部16はY軸駆動制御部18を制御して赤外線カメラ12を図4中矢印Aで示すように+Y方向(上から下)に一定の速度で移動させながら、赤外線カメラ12で撮影した画像を画像処理して、発熱している(一定量以上の赤外線を放出している)導電体パターン31の有無を判定する。発熱している導電体パターン31を検出したときは、その位置(Y座標)を記憶しておく。
【0029】
赤外線カメラ12が最終行(最下部)の導電体パターン31を通過したら、ステップS15に移行し、主制御部16は発熱している導電体パターン31が有ったか否かを判定する。ここで、発熱している導電体パターン31が無かったと判定した場合(NOの場合)は、短絡欠陥がないものとして短絡検査を終了する。
【0030】
一方、ステップS15において発熱している導電体パターン31が有ったと判定した場合(YESの場合)は、ステップS16に移行する。そして、主制御部16は、Y軸駆動制御部18を制御して赤外線カメラ12を発熱している導電体パターン31の右端の位置まで移動させる。
【0031】
その後、ステップS17に移行し、主制御部16はX軸駆動制御部17を制御し、図5に示すように発熱している導電体パターン31に沿って赤外線カメラ12を左方向(X軸方向)に移動させる。また、主制御部16は、赤外線カメラ12で撮影した画像を画像処理し、その結果に基づいて発熱している導電体パターン31が赤外線カメラ12の視野の中央に位置するようにY軸駆動制御部18を制御して、赤外線カメラ12の位置を調整する。そして、主制御部16は、X軸駆動制御部17及びY軸駆動制御部18から取得される赤外線カメラ12のX座標及びY座標を監視し、赤外線カメラ12の移動が導電体パターンの規則性に適合しているか否かを判定する。
【0032】
導電体パターンの規則性に適合している場合、すなわち赤外線カメラ12の移動が直線的である箇所は欠陥個所でないと判定する。一方、導電体パターンの規則性から外れる場合、すなわち赤外線カメラ12がY軸方向に急激に移動した場合は、その場所を欠陥個所と判定する。そして、ステップS18において、そのときの赤外線カメラ12の位置(X座標及びY座標)を欠陥個所の位置として欠陥個所記憶部22に記憶する。
【0033】
このようにして、短絡欠陥の有無が自動的に検査され、短絡欠陥が有ると判定した場合は欠陥箇所の位置(X座標及びY座標)が欠陥箇所記憶部22に記憶される。なお、発熱している導電体パターン31が複数ある場合は、それぞれの導電体パターン31についてステップS16からステップS18までの処理を行う。また、短絡欠陥は、例えば短絡検査工程の後の修復工程でレーザにより短絡個所を切断することにより修復される。
【0034】
本実施形態では、上述したように、各導電体パターン31に電圧を印加した状態で赤外線カメラ(赤外線検出器)12を導電体パターン31と交差する方向(上記の例では+Y方向)に移動させて短絡欠陥が発生している導電体パターンを検出し、次に短絡が発生している導電体パターン31に沿って赤外線カメラ12を移動させて短絡個所を特定する。従って、従来のように基板の全体像を取得する必要がなく、短絡検査に要する時間が短縮される。また、赤外線カメラ12は基板30の一部を撮影するだけであるので、比較的低解像度のものでよく、装置コストを低減できるという利点もある。
【0035】
更に、本実施形態では、単に発熱量により短絡個所を特定するのではなく、導電体パターンの規則性からのずれにより短絡個所を特定するので、短絡個所の面積が大きく発熱量が少ない場合であっても、短絡個所の特定が容易である。
【0036】
次に、断線欠陥の有無の検査時の動作について、図6に示す模式図及び図7に示すフローチャートを参照して説明する。なお、ここでは、図6に破線円で囲んだ部分に断線欠陥が発生しているものとする。
【0037】
断線欠陥を検出する場合、ステップS21において、主制御部16はプローブ駆動部20を制御して、図6に示すようにプローブ15aのプローブピンを各導電体パターン31の左端部に接続し、プローブ15bのプローブピンを各導電体パターン31の右端部に接続する。そして、ステップS22に移行し、電圧印加部19を制御してプローブ15a、15b間に所定の電圧を印加する。
【0038】
断線欠陥がない場合は、導電体パターン31に電流が流れてジュール熱が発生する。しかし、図6に示すように断線欠陥がある場合は、その導電体パターン31には電流が流れないため、導電体パターン31は発熱しない。
【0039】
プローブ15a、15b間に所定の電圧を印加し、導電体パターン31の温度が十分に上昇するのに要する時間が経過した後、ステップS23に移行する。そして、主制御部16はX軸駆動制御部17及びY軸駆動制御部18を制御して、図6に示すように赤外線カメラ12を第1行目(最上部)の導電体パターン31の右端上部に移動させる。その後、ステップS24に移行し、主制御部16はY軸駆動制御部18を制御して赤外線カメラ12を図6中矢印Aで示すように+Y方向(上から下)に一定の速度で移動させて、発熱していない(赤外線の放出量が少ない)導電体パターン31を検出する。発熱していない導電体パターン31を検出したときは、その位置(Y座標)を記憶しておく。
【0040】
赤外線カメラ12が最終行の導電体パターン31を通過したら、ステップS25に移行し、主制御部16はX軸駆動制御部17を制御して、赤外線カメラ12を最終行の導電体パターン31の左端下部に移動させる。その後、ステップS26に移行し、主制御部16は、Y軸駆動制御部18を制御して赤外線カメラ12を図6中破線矢印Bで示すように−Y方向(下から上)に一定の速度で移動させて、発熱していない導電体パターン31を検出する。
【0041】
次いで、ステップS27に移行し、主制御部16は発熱していない(断線している)導電体パターン31の位置を欠陥個所記憶部22に記憶する。このようにして、本実施形態に係る導電体パターン検査装置では、断線が発生している導電体パターン31を自動的に検出することができる。
【0042】
上述したように、本実施形態によれば、断線検査の場合も、基板30の全体像を取得する必要がなく、高価な高解像度の赤外線カメラが不要であり、検査に要する時間が短縮されるという利点がある。
【0043】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係る導電体パターンの欠陥検査装置の構成を示す模式図である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は短絡欠陥修復用のレーザ装置が設けられていることにあり、その他の構成は基本的に第1の実施形態と同様であるので、図8において図1と同一物には同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0044】
本実施形態においては、X軸ガイドレール13に、赤外線カメラ12とともに短絡欠陥修復用のレーザ装置41が支持されている。これらの赤外線カメラ12及びレーザ装置41は、X軸ガイドレール13に沿って一体的に移動する。赤外線カメラ12とレーザ装置41との間隔(オフセット量Δx)は、主制御部16に記憶されている。
【0045】
以下、本実施形態の欠陥検査装置を用いた短絡欠陥検査時の動作について説明する。ここでも、図3,図4を参照する。
【0046】
まず、第1の実施形態と同様に、主制御部16はプローブ駆動部20を制御して、奇数番目の導電体パターン31の左端部にプローブ15aのプローブピンを接触させ、偶数番目の導電体パターン31の右端部にプローブ15bのプローブピンを接触させる。その後、主制御部16は、電圧印加部19を制御して、プローブ15a,15b間に所定の電圧を印加する。
【0047】
次に、主制御部16は、X軸駆動制御部17及びY軸駆動制御部18を制御し、赤外線カメラ12を第1行目(最上部)の導電体パターン31の右端上部に配置し、その後赤外線カメラ12を+Y方向(上から下)に移動させる。このとき、主制御部16は、赤外線カメラ12で撮影した画像を画像処理して、発熱している導電体パターン31の有無を判定する。発熱している導電体パターン31を検出したときは、その位置を記憶しておく。
【0048】
赤外線カメラ12が最終行(最下部)の導電体パターン31の上を通過した後、主制御部16は発熱している導電体パターンが有ったか否かを判定する。ここで、発熱している導電体パターンが無かったと判定したときは、短絡欠陥が無いものとして短絡検査を終了する。
【0049】
一方、発熱している導電体パターン31が有ったと判定したときには、主制御部16は赤外線カメラ12を発熱している導電体パターン31の右端の位置まで移動させる。その後、図9(a)に示すように、発熱している導電体パターン31に沿って赤外線カメラ12を左方向に移動させつつ、主制御部16により赤外線カメラ12で撮影した画像を画像処理して、導電体パターンの規則性から外れる箇所、すなわち短絡箇所を検出する。そして、短絡箇所を検出した場合は、その位置を欠陥個所記憶部22に記憶する。ここまでの工程は、第1の実施形態と基本的に同じである。
【0050】
次に、主制御部16は、オフセットΔx分だけ赤外線カメラ12及びレーザ装置41を移動し、レーザ装置41を短絡個所の上方に配置する。そして、図9(b)に示すように、レーザ装置41を駆動し短絡個所を切断する。この場合に、一般的にレーザ装置にはレーザ照射位置を確認するために光学顕微鏡が設けられているので、主制御部16はレーザ装置に設けられた光学顕微鏡の画像をCCD(charge-coupled device)等の素子を介して取得し、その画像に基づいて切断箇所の決定とレーザ装置の焦点距離の最適化等の処理を行う。
【0051】
このようにして、本実施形態の欠陥検査装置によれば、導電体パターン31の短絡個所の検出及び修復が自動的に行われる。なお、欠陥の修復が行われた基板は、再度欠陥検査を行って欠陥が除去されていることを確認することが好ましい。
【0052】
上述の第1及び第2の実施形態では、いずれも短絡欠陥検出時に図10(a)に括弧付きの数字で示す順番で赤外線カメラ12を移動させている。すなわち、赤外線カメラ12をY軸方向に最終行の導電体パターン31の上まで移動させて発熱している導電体パターン31を検出し、その後赤外線カメラ12を発熱している導電体パターン31に沿ってX軸方向に移動させて各導電体パターン31の短絡個所を特定している。しかし、図10(b)に括弧付きの数字で示す順番で赤外線カメラ12を移動させてもよい。すなわち、赤外線カメラ12をY軸方向に移動させて発熱している導電体パターン31を検出したら、その導電体パターン31に沿って赤外線カメラ12をX軸方向に移動させて短絡個所を特定し、その後赤外線カメラ12を導電体パターン31の端部までX軸方向に移動させた後、Y軸方向に移動させて次の発熱している導電体パターン31を探すようにしてもよい。
【0053】
なお、上記第1及び第2の実施形態ではいずれも赤外線カメラ12がX軸方向及びY軸方向に移動するものとしたが、例えば赤外線カメラ12がX軸方向に移動し、基板30を載置するステージ11がY軸方向に移動するようにしてもよく、赤外線カメラ12が固定され、ステージ11がX軸方向及びY軸方向に移動するようにしてもよい。
【0054】
以下、上述の本発明に係る方法により欠陥検出及び短絡個所の修復を行った実施例について、比較例と比較して説明する。
【0055】
試験体として、1枚に付き5箇所の短絡個所を有する基板を用意した。1枚の基板の大きさは300mm×250mmである。基板上にはITOからなる直線状の導電体パターン(配線)が240μmのピッチで1024本配列されている。各導電体パターンの長さは200mmであり、導電体パターン間の間隔(ギャップ)は15μmである。
【0056】
(比較例1)
上記試験体の基板を電気検査して、短絡が発生している導電体パターンを特定した。その後、作業者が拡大鏡(顕微鏡)を用いて導電体パターンを検査し、短絡個所を特定した。次いで、作業者がYAG第2高調波を発生するレーザ装置を操作して短絡個所を切断し、その後再度電気検査を行って、短絡個所が修復されていることを確認した。
【0057】
この比較例1では、試験体の基板1枚当たり電気検査に約5分間かかり、短絡個所の特定及びレーザ装置による短絡個所の修復に約10分間かかった。
【0058】
(比較例2)
従来の検査装置を用いて試験体の基板の導電パターンの短絡個所を自動的に検出した。すなわち、カメラ(赤外線カメラではない)を走査して試験体の基板の全体像を撮影し、その後撮影した画像を画像処理して短絡箇所を特定した。この検査装置では基板上に付着した異物も短絡個所と同様に検出してしまうため、作業者が顕微鏡を用いて短絡個所を調べ、短絡と確認された個所をYAG第2高調波を発生するレーザ装置を使用して切断した。次いで、電気検査を行って、短絡個所が修復されていることを確認した。
【0059】
この比較例2では、試験体の基板1枚当たり電気検査に約5分間かかり、短絡個所の確認及びレーザ装置による短絡個所の修復に約2分間かかった。
【0060】
(実施例1)
第1の実施形態で説明した欠陥検査装置により、試験体の基板の短絡個所を特定した。なお、導電体パターンには、周波数が100Hz、振幅が100Vの矩形波交番電圧を印加した。電圧を印加してから5秒後に赤外線カメラをY軸方向に移動して、発熱している導電体パターンを検出した。発熱している導電体パターンを検出したときには、その箇所をマーキングした。この操作に約5秒かかった。
【0061】
次に、マーキングした導電体パターンに沿って赤外線カメラを移動し、導電体パターンの規則性から外れる部分、すなわち短絡個所を検出してその箇所をマーキングした。この短絡箇所の検出には、導電体パターン1本当たり約5秒かかった。
【0062】
次に、赤外線カメラとは別に配置されたレーザ装置を短絡個所に移動し、レーザ光を照射して短絡個所を切断した。レーザ装置の移動及び短絡個所の切断に、1つの短絡個所毎に約5秒かかった。次いで、奇数番目の導電体パターンと偶数番目の導電体パターンとの間に電圧を印加し、赤外線カメラをY軸方向に移動して、発熱している導電体パターンがないこと、すなわち短絡個所が修復されていることを確認した。この実施例1では、試験体の基板1枚当たりの処理時間は約1分間であった。
【0063】
(実施例2)
第2の実施形態で説明した装置を使用し、図10(a)に示すように赤外線カメラ及びレーザ装置を移動させて、短絡個所の特定及び修正を行った。短絡個所を修正した後は、奇数番目の導電体パターンと偶数番目の導電体パターンとの間に電圧を印加し、赤外線カメラをY軸方向に移動させて、発熱している導電体パターンがないこと、すなわち短絡個所が修復されていることを確認した。この実施例2では、試験体の基板1枚当たりの処理時間は約0.5分間であった。
【0064】
(実施例3)
第2の実施形態で説明した装置を使用し、図10(b)に示すように赤外線カメラ及びレーザ装置を移動させて、短絡個所の特定及び修正を行った。短絡個所の修正を行う毎に導電体パターンに電圧を印加し、導電体パターンが発熱しないこと、すなわち短絡個所が修復されていることを確認した。この実施例3では、試験体の基板1枚当たりの処理時間は約0.5分間であった。
【0065】
上記の実施例1〜3及び比較例1,2の比較から、本願発明は導電体パターンの短絡欠陥の検出及び修復に要する時間が短縮されることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電体パターンの欠陥検査装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、実施形態に係る導電体パターンの欠陥検査方法(短絡欠陥検査時)を示すフローチャートである。
【図3】図3は、実施形態に係る導電体パターンの欠陥検査方法(短絡欠陥検査時)を示す模式図(その1)である。
【図4】図4は、実施形態に係る導電体パターンの欠陥検査方法(短絡欠陥検査時)を示す模式図(その2)である。
【図5】図5は、実施形態に係る導電体パターンの欠陥検査方法(短絡欠陥検査時)を示す模式図(その3)である。
【図6】図6は、実施形態に係る導電体パターンの欠陥検査方法(断線欠陥検査時)を示す模式図である。
【図7】図7は、実施形態に係る導電体パターンの欠陥検査方法(断線欠陥検査時)を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態に係る導電体パターンの欠陥検査装置の構成を示す模式図である。
【図9】図9(a),(b)は、短絡欠陥の修復方法を示す模式図である。
【図10】図10(a),(b)は、赤外線カメラの移動方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
11…ステージ、
12…赤外線カメラ、
13…X軸ガイドレール、
14…Y軸ガイドレール、
15a,15b…プローブ、
16…主制御部、
17…X軸駆動制御部、
18…Y軸駆動制御部、
19…電圧印加部、
20…プローブ駆動部、
21…設計データ記憶部、
22…欠陥個所記憶部、
30…基板、
31…導電体パターン、
41…レーザ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された複数の導電体パターンの欠陥を検査する導電体パターンの欠陥検査方法において、
前記複数の導電体パターンに電圧を印加する第1の工程と、
赤外線検出器を前記複数の導電体パターンと交差する方向に移動させて前記導電体パターンが発熱しているか否かを調べる第2の工程と
を有することを特徴とする導電体パターンの欠陥検査方法。
【請求項2】
前記第2の工程により検出した発熱している導電体パターンに沿って前記赤外線検出器を移動させ、前記導電体パターンの設計データに基づく判定基準から外れる発熱箇所を短絡個所として検出する第3の工程を有することを特徴とする請求項1に記載の導電体パターンの欠陥検査方法。
【請求項3】
前記第3の工程の後に、前記短絡個所にレーザ光を照射して短絡を修復する第4の工程を有することを特徴とする請求項2に記載の導電体パターンの欠陥検査方法。
【請求項4】
前記基板が、コレステリック型液晶表示装置用の基板であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電体パターンの欠陥検査方法。
【請求項5】
複数の導電体パターンが形成された基板が載置されるステージと、
前記ステージの上方に配置された赤外線検出器と、
前記赤外線検出器及び前記基板の少なくとも一方を、前記基板の面に平行な第1の方向に移動させる第1の移動機構と、
前記赤外線検出器及び前記基板の少なくとも一方を、前記基板の面に平行かつ前記第1の方向に交差する第2の方向に移動させる第2の移動機構と、
前記導電体パターンに電圧を印加する電圧印加部と、
前記赤外線検出器から出力される信号に基づいて前記導電体パターンが発熱しているか否かを判定する主制御部とを有し、
前記主制御部は、前記電圧印加部を制御して前記複数の導電体パターンに電圧を印加し、前記第1の移動機構及び前記第2の移動機構を制御して前記赤外線検出器を前記複数の導電体パターンと交差する方向に相対的に移動させ、前記赤外線検出器の出力に基づいて発熱している導電体パターンを検出することを特徴とする導電体パターンの欠陥検査装置。
【請求項6】
更に、導電体パターンの短絡箇所を切断するレーザ装置を有することを特徴とする請求項5に記載の導電体パターンの欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−121894(P2009−121894A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295008(P2007−295008)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】