説明

導電性インク組成物及び該組成物を用いて形成された太陽電池モジュール

【課題】電極又は電気配線、特に、太陽電池の集電極において、電極幅の更なる細線化及び低抵抗化が可能であり、また細線化された狭い密着面積においても十分な密着性を有するとともに、耐熱性及び耐水性に優れた信頼性の高い電極を形成する。
【解決手段】導電性インク組成物は、導電性粒子と、熱硬化性樹脂組成物、硬化剤及び溶剤を含む有機系ビヒクルとを含有する。導電性粒子は、平均粒径が1nm以上100nm未満であるナノ銀粒子と、平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下であるフレーク状銅粒子とを含有する。また導電性粒子はフレーク状銅粒子をナノ銀粒子より質量割合で多く含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の電極又は電気配線の形成に用いられる導電性インク組成物に関する。更に詳しくは、太陽電池モジュールにおける電気配線、又は太陽電池セルの電極の形成に好適に用いることができる導電性インク組成物及び該組成物を用いて形成された太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性インク組成物をフィルム、基板、電子部品等の基材に塗布又は印刷した後、加熱して乾燥硬化させることにより、電極又は電気配線等を形成するという方法は、従来から広く用いられている。しかし、近年の電子機器の高性能化に伴い、導電性インク組成物を用いて形成される電極や電気配線等には、より低抵抗で信頼性が高いことが要求され、その要求は年々高まりつつある。太陽電池の分野においては、光起電力素子が、表面にテクスチャ構造が形成された結晶性の半導体基板等からなる光電変換層と、光電変換層上に設けられた集電極とを備え、この集電極の幅をできるだけ細線化し、その抵抗を極力小さく設計することが求められている。一般に、太陽電池は使用する材料の種類によって、結晶系の単結晶型又は多結晶型や、アモルファス型、化合物型、或いは単結晶型若しくは多結晶型とアモルファス型を組合せたハイブリッド型等に分類される。
【0003】
図4に示すように、ハイブリッド型太陽電池における太陽電池セル1は、n型単結晶シリコン基板2と、この基板2の受光側の面に積層された非晶質のアモルファスシリコン層3と、このアモルファスシリコン層3の受光側の面に積層された透明導電層4と、この透明導電層4の受光側の面に形成された集電極6とを備える。またn型単結晶シリコン基板2の受光側の面とは反対側の面(反受光側の面)には、非晶質のアモルファスシリコン層7が積層され、このアモルファスシリコン層7の反受光側の面には透明導電層8が積層され、更にこの透明導電層8の反受光側の面に集電極9が形成される。アモルファスシリコン層3は、i型アモルファスシリコン層3aとp型アモルファスシリコン層3bとを積層した非晶質シリコン層であり、アモルファスシリコン層7は、i型アモルファスシリコン層7aとn型アモルファスシリコン層7bとを積層した非晶質シリコン層である。また透明導電層4,8のうち集電極6,9が形成される面は、光閉じ込め効果を得るために、凹凸4a形状を有するテクスチャ構造になっているのが一般的である。
【0004】
図5に示すように、集電極6は、一般に、太陽電池セル1の縦方向に延びかつ横方向に比較的広い間隔をあけて透明導電層4上に配設された一対のバスバー部6aと、太陽電池セル1の横方向に延びかつ縦方向に比較的狭い間隔をあけて透明導電層4上に配設された複数のフィンガー部6bとを有する。バスバー部6aとフィンガー部6bとは互いに直交して電気的に接続される。光電変換層である上記n型単結晶シリコン基板2及びアモルファスシリコン層3,7(図4)にできるだけ多くの光を吸収させ、抵抗損失なく電力を取り出すことが要求されることから、集電極6の幅、特にフィンガー部6b(図5)の幅を細線化し、太陽電池セル1の受光面の面積をより広く確保すること、また集電極4の抵抗をより小さくすることが要求される。
【0005】
このような集電極の幅の細線化及び低抵抗化を実現すべく、例えば、集電極が、粒状導電性フィラーとフレーク状導電性フィラーを含有する導電性ペーストであって、導電性フィラー全体に対する粒状導電性フィラーの含有量が40質量%以上である導電性ペーストを用いて形成された光起電力素子が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。従来、スクリーン印刷法を用いて集電極を形成した場合、導電性ペースト中にフレーク状導電性フィラーが多く含まれると、スクリーン版に目詰まりが生じ易く、印刷パターンにかすれや断線を起こし、細線化が困難であったけれども、特許文献1に示された発明では、導電性フィラー全体に対する粒状導電性フィラーの含有量を40質量%以上とすることにより、即ちフレーク状導電性フィラーの含有量を60質量%以下とすることにより、低抵抗化及び細線化が可能であって、しかもテクスチャ構造の下地に対する接触抵抗の小さい集電極が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−76398号公報(請求項1、段落[0006]、段落[0009])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に示された発明では、フレーク状導電性フィラーの含有量を少なくすることで良好な導電性が損なわれないようにするため、導電性ペースト中に含まれるフレーク状導電性フィラーのフレーク径(フレーク平面の最長長さ)が5μm以上、好ましくは6〜8μmとされており(特許文献1の段落[0012])、比較的大きなフレーク径の導電性フィラーを使用しなければならない。そのため、導電性ペーストをスクリーン印刷法等を用いて印刷する際、微細なパターンの印刷が困難となり、形成される集電極の幅を細線化するという効果は十分ではなかった。
【0008】
本発明の目的は、電極又は電気配線、特に、太陽電池の集電極において、電極幅の更なる細線化及び低抵抗化が可能であり、また細線化された狭い密着面積においても十分な密着性を有するとともに、耐熱性及び耐水性に優れた信頼性の高い電極を形成し得る導電性インク組成物を提供することにある。本発明の別の目的は、上記導電性インク組成物を用いて電極を形成することにより、光電変換効率の高い太陽電池セル及び太陽電池モジュールを提供することにある。本発明の更に別の目的は、上記導電性インク組成物を用いて電気配線を形成することにより、光電変換効率の高い太陽電池モジュールとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、導電性粒子と、熱硬化性樹脂組成物、硬化剤及び溶剤を含む有機系ビヒクルとを含有する導電性インク組成物において、導電性粒子が、平均粒径が1nm以上100nm未満であるナノ銀粒子と、平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下であるフレーク状銅粒子とを含有し、導電性粒子がフレーク状銅粒子をナノ銀粒子より質量割合で多く含有することを特徴とする導電性インク組成物である。
【0010】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更にナノ銀粒子とフレーク状銅粒子との含有割合が質量比で(1:99)〜(40:60)であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更にナノ銀粒子が、球状と、球状以外の異方性の粒子とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の観点は、第1ないし第3の観点に基づく発明であって、更に熱硬化性樹脂組成物と導電性粒子の含有割合が質量比で(5:95)〜(25:75)であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の観点は、第1ないし第4の観点に基づく発明であって、更に熱硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の観点は、第1ないし第5の観点に基づく発明であって、更に硬化剤がイミダゾール類、第3級アミン類、又はフッ化ホウ素を含むルイス酸、或いはその化合物であることを特徴とする。
【0015】
本発明の第7の観点は、第1ないし第6の観点に基づく発明であって、更に基板に塗布後、温度100〜220℃の範囲内で加熱硬化することを特徴とする。
【0016】
本発明の第8の観点は、第1ないし第7の観点のいずれかに記載の導電性インク組成物を用いて集電極が形成された太陽電池セルである。
【0017】
本発明の第9の観点は、第8の観点に基づく発明であって、更に集電極が透明導電層上に形成されたことを特徴とする。
【0018】
本発明の第10の観点は、第8又は第9の観点の太陽電池セルを備えた太陽電池モジュールである。
【0019】
本発明の第11の観点は、第1ないし第7の観点の導電性インク組成物を用いてリード線が形成された太陽電池モジュールである。
【0020】
本発明の第12の観点は、溶剤と熱硬化性樹脂組成物と硬化剤とを混合して有機系ビヒクルを調製する工程と、平均粒径が1nm以上100nm未満であるナノ銀粒子と平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下であるフレーク状銅粒子とをナノ銀粒子よりフレーク状銅粒子を質量割合でより多く含有するように混合して導電性粒子を調製する工程と、有機系ビヒクルと導電性粒子とを混練してペースト化することによりインク組成物を調製する工程とを含む導電性インク組成物の製造方法である。
【0021】
本発明の第13の観点は、第12の観点に記載の方法で製造された導電性インク組成物を用いて透明導電層上に集電極を形成する太陽電池セルの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の観点の導電性インク組成物及び本発明の第12の観点の導電性インク組成物の製造方法では、導電性粒子が、平均粒径が1nm以上100nm未満であるナノ銀粒子と、平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下であるフレーク状銅粒子とを含有し、導電性粒子がフレーク状銅粒子をナノ銀粒子より質量割合で多く含有するので、電極又は電気配線、特に、太陽電池セルの集電極の幅の更なる細線化及び低抵抗化が可能になる。また細線化された狭い密着面積においても十分な密着性を有するとともに、耐熱性に優れた高い信頼性の集電極を形成することができる。
【0023】
本発明の第7の観点の導電性インク組成物では、この組成物を比較的低温の100〜220℃で加熱しても、ナノ銀粒子同士がバルク化し、ナノ銀粒子とフレーク状銅粒子との界面で銅が銀に原子レベルで拡散する原子拡散が起こって接合するので、銀ナノ粒子とフレーク状銅粒子とが単なる接触ではなく焼結した状態になる。この結果、導電性インク組成物が加熱硬化して得られた電極又は電気配線は極めて低抵抗となる。
【0024】
本発明の第8の観点の太陽電池セル、第10の観点の太陽電池モジュール、又は第13の観点の太陽電池セルの製造方法では、上記導電性インク組成物を用いて形成された集電極の幅がより細線化され、低抵抗化されるため、この電極を有する太陽電池セルの光電変換効率が高くなり、この太陽電池セルを備えた太陽電池モジュールの光電変換効率も高くなる。
【0025】
本発明の第11の観点の太陽電池モジュールでは、上記導電性インク組成物を用いて形成されたリード線が、従来のものよりも低抵抗であるため、太陽電池モジュールの光電変換効率が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明実施形態の太陽電池セルを示す図2のA−A線断面図である。
【図2】その太陽電池セルの平面図である。
【図3】複数の太陽電池セルを並べた太陽電池モジュールの要部斜視図である。
【図4】従来の太陽電池セルを示す図5のB−B線断面図である。
【図5】その太陽電池セルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本発明の導電性インク組成物は、導電性粒子と、熱硬化性樹脂組成物、硬化剤及び溶剤を含む有機系ビヒクルとを含有する。導電性粒子は、平均粒径が1nm以上100nm未満であるナノ銀粒子と、平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下であるフレーク状銅粒子とを含有する。本発明の導電性インク組成物では、導電性粒子として上記ナノ銀粒子を含むことにより、このナノ銀粒子が比較的低温で焼結し、フレーク状銅粒子同士の隙間を埋めるため、フレーク状銅粒子の平均フレーク径を従来より小さくしても、高い導電性を維持できる。また平均フレーク径の小さなフレーク状銅粒子が使用できるため、フレーク状銅粒子の含有割合を減らさなくても、スクリーン印刷法を用いて印刷する場合に生じていたスクリーン目詰まりといった不具合も解消される。
【0028】
ナノ銀粒子の平均粒径を上記範囲としたのは、1nm未満では、強固な凝集等が起こり易く不安定な材料となり、100nm以上になると、100〜150℃付近の低温で焼成した場合、ナノ銀粒子の低温での焼結が不十分となり本発明の効果が得られ難いからである。このうち、ナノ銀粒子の平均粒径は5〜90nmが好ましい。またフレーク状銅粒子の平均フレーク径を上記範囲としたのは、フレーク状銅粒子の平均フレーク径が0.1μm未満であると、比表面積が大きくなるため、組成物の粘度が高くなり過ぎたり、またフレーク状銅粒子を入れることにより高い導電性を得るという効果が得られ難くなるからである。一方、3μmを越えると、形成される電極の低抵抗化が困難であったり、またスクリーン印刷法等を用いて印刷する際、スクリーン目詰まりを起こし、かすれなどの印刷不良を起こす。このうち、フレーク状銅粒子のフレーク径は0.15〜2.0μmであることが好ましい。
【0029】
ここで、ナノ銀粒子の平均粒径及びフレーク状銅粒子の平均フレーク径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製 LA−950)にて測定し、粒子径基準を個数として演算した50%平均粒子径(D50)をいう。このレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置による個数基準平均粒径又は平均フレーク径の値は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製 S−4300SE及びS−900)により観察した画像において、任意の50個の粒子について粒径を実測したときのその平均粒径又は平均フレーク径とほぼ一致する。なおフレーク状であるか球状であるかは、上記走査型顕微鏡で観察した像で識別したアスペクト比(直径/厚さ)が2以上のものをフレーク状とし、2未満のものを球状と識別する。またフレーク状銅粒子の平均フレーク径とは、フレーク状銅粒子の直径(長径)の平均値をいう。フレーク状銅粒子のアスペクト比(直径/厚さ)は2〜20の範囲であることが好ましい。厚みは0.005〜1.5μmの範囲であることが好ましく、0.005〜0.5μmの範囲であることが特に好ましい。
【0030】
導電性粒子は上記フレーク状銅粒子を上記ナノ銀粒子より質量割合で多く含有する。即ち、ナノ銀粒子とフレーク状銅粒子との含有割合は質量比で(1:99)〜(40:60)、好ましくは(5:95)〜(30:70)に設定される。ナノ銀粒子とフレーク状銅粒子との含有割合を質量比で(1:99)〜(40:60)の範囲に限定したのは、(1:99)未満では導電性インク組成物の加熱硬化後に銀の銅との焼結量が少な過ぎて集電極等の導電性が低くなり、(40:60)を越えると高価なナノ銀粒子が増加して製造コストが増大してしまうからである。また導電性粒子に含まれるナノ銀粒子は、球状だけでなく、球状以外にフレーク状やロッド状といった異方性のナノ銀粒子を含ませることもできる。異方性のナノ銀粒子を含ませることで、導電性を更に向上させる効果が期待できる。
【0031】
一方、本発明の導電性インク組成物を構成する有機系ビヒクルは、熱硬化性樹脂組成物、硬化剤及び溶剤を含有する。有機系ビヒクルを構成する熱硬化性樹脂組成物には、従来よりも更に細線化され、接着面積が狭くなった集電極において高い密着性を発現させる必要があるという理由から、エポキシ樹脂組成物を使用するのが好ましい。好適なエポキシ樹脂組成物には、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ビフェニル混合型、クレゾールノボラック型、ナフタレン型、ジシクロペンタジエン型等のエポキシ樹脂組成物が挙げられる。このうち、ビフェニル型又はビフェニル混合型のエポキシ樹脂が特に好ましい。ビフェニル型エポキシ樹脂には、例えば、ビフェノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(日本化薬社製:NC−3000、NC−3000L、ジャパンエポキシレジン社製:YX4000、YL6640等)が挙げられる。またビフェニル混合型には、o−クレゾールノボラックのポリグリシジルエーテルとビフェノールグリシジルエーテルとを混合したエポキシ樹脂(日本化薬社製:CER−1020等)が挙げられる。また上記エポキシ樹脂組成物の中でも、特に、室温では、固体で存在し、かつ150℃における溶融粘度が0.1Pa・s以下であるという性質を有するものが特に好ましい。その理由は、硬化剤との反応を瞬時に進めることができ、また、高い密着性を発現させ、比抵抗を低下させるのに好適だからである。一方、150℃における溶融粘度が0.1Pa・sを越えると、硬化反応が瞬時に進まず、密着不良等の不具合が生じ易いため好ましくない。ここで示した溶融粘度の値は、例えば、コーン及びプレート型のICI粘度計(Research Equipment London社製)を用いて測定された値である。
【0032】
硬化剤としては、一般的に用いられるイミダゾール類、第3級アミン類又はフッ化ホウ素を含むルイス酸、或いはその化合物が好適である。イミダゾール類には、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール又は2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。第3級アミン類には、ピペリジン、ベンジルジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イソフォロンジアミン又はジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。フッ化ホウ素を含むルイス酸には、フッ化ホウ素モノエチルアミン等のフッ化ホウ素のアミン錯体が挙げられる。またジシアンジアミド(DICY)のような潜在性の高い硬化剤を用い、その促進剤として上記硬化剤を組み合わせても良い。このうち、密着性向上の理由から、イミダゾール類の2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール又は2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールが特に好ましい。
【0033】
溶剤としては、ジオキサン、ヘキサン、トルエン、メチルセロソルブ、シクロヘキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジアセトンアルコール、ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、α−テルピネオール等が挙げられる。このうち、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、α−テルピネオールが特に好ましい。
【0034】
本発明の導電性インク組成物は、例えば、以下のような方法で調製される。先ず、好ましくは温度20〜30℃、更に好ましくは25℃の条件で、上記溶剤100質量部に対し、上記熱硬化性樹脂組成物を好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは20〜40質量部を混合し、次いで上記硬化剤を適量混合して有機系ビヒクルを調製する。また導電性粒子として、上記ナノ銀粒子とフレーク状銅粒子とを混合し、十分に振り混ぜたものを用意する。次いで、上記調製された有機系ビヒクルと、上記導電性粒子とを、例えば3本ロールミル等の混練機を用いて混練し、ペースト化することにより導電性インク組成物が調製される。このとき、調製される導電性インク組成物に適性な粘度、及び必要な流動性を持たせるために、有機系ビヒクルを5〜30質量%、導電性粒子を70〜95質量%の割合で混合するのが好ましい。有機系ビヒクルが下限値の5質量%未満、即ち導電性粒子が95質量%を越えると、インク組成物としての適性な流動性が得られ難く、一方、有機系ビヒクルが上限値の30質量%を越える、即ち導電性粒子が70質量%未満になると、導電性粒子が不足し、良好な導電性が得られ難くなるからである。このうち、有機系ビヒクルを8〜20質量%、導電性粒子を80〜92質量%の割合で混合するのが特に好ましい。
【0035】
また導電性インク組成物中の熱硬化性樹脂組成物と導電性粒子の含有割合は、導電性の高い電極を形成するのに好適であるという理由から、質量比で(5:95)〜(25:75)であることが好ましい。このうち、更に好ましくは、(5:95)〜(17:83)である。
【0036】
このように調製された本発明の導電性インク組成物は、30〜200Pa・sの適正な粘度を有する。これによりスクリーン印刷法を用いて基板等に塗布する場合、形状の乱れやかすれを生じることなく、微細なパターンの印刷ができる。また基板や太陽電池セルにおける積層体上等に塗布又は印刷した後、好ましくは100〜220℃、更に好ましくは150〜200℃の温度で硬化する性質を有する。100℃未満では、硬化が不十分となる。また単結晶型若しくは多結晶型とアモルファス型とを組合せたハイブリッド型の太陽電池セルにおいては、220℃を越えると、温度で焼成した場合、太陽電池セルの性能に支障を来す。具体的には次の通りである。アモルファスシリコン層の表面には、ダングリングボンド、即ち結合に関与しない電子で占められた結合手(原子における未結合手)が多く存在するため、これらのダングリングボンドは水素で終端されており、アモルファスシリコン層の表面にはSi−H結合が多く存在する。しかし、これらのSi−H結合は220℃を越える温度になると切れてしまうため、光電変換層で太陽光が電子に変換されても、その切れた部分でこれらの電子が捕捉されて、太陽電池として機能しなくなる。本発明の導電性インク組成物を上記のように比較的低温の100〜220℃で加熱すると、ナノ銀粒子同士がバルク化し、ナノ銀粒子とフレーク状銅粒子との界面で銅が銀に原子レベルで拡散する原子拡散が起こって接合するので、銀ナノ粒子とフレーク状銅粒子とが単なる接触ではなく焼結した状態になる。この結果、導電性インク組成物が加熱硬化して得られた電極又は電気配線は極めて低抵抗となる。
【0037】
本発明の導電性インク組成物は、太陽電池セルの集電極を形成するために用いられる。ハイブリッド型太陽電池における太陽電池セルは、図1に示すように、n型単結晶シリコン基板12と、この基板12の受光側の面に積層された非晶質のアモルファスシリコン層13と、このアモルファスシリコン層13の受光側の面に積層された透明導電層14と、この透明導電層14の受光側の面に形成された集電極16とを備える。またn型単結晶シリコン基板12の受光側の面とは反対側の面(反受光側の面)には、非晶質のアモルファスシリコン層17が積層され、このアモルファスシリコン層17の反受光側の面には透明導電層18が積層され、更にこの透明導電層18の反受光側の面に集電極19が形成される。アモルファスシリコン層13は、i型アモルファスシリコン層13aとp型アモルファスシリコン層13bとを積層した非晶質シリコン層であり、アモルファスシリコン層17は、i型アモルファスシリコン層17aとn型アモルファスシリコン層17bとを積層した非晶質シリコン層である。また透明導電層14,18のうち集電極16,19が形成される面は、光閉じ込め効果を得るために、凹凸14a形状を有するテクスチャ構造になっているのが一般的である。
【0038】
図2に示すように、集電極16は、一般に、太陽電池セル11の縦方向に延びかつ横方向に比較的広い間隔をあけて透明導電層14上に配設された一対のバスバー部16aと、太陽電池セル11の横方向に延びかつ縦方向に比較的狭い間隔をあけて透明導電層14上に配設された複数のフィンガー部16bとを有する。バスバー部16aとフィンガー部16bとは互いに直交して電気的に接続される。上記集電極16の幅、特にフィンガー部16bの幅は、より多くの光を受光面に照射させるために、できるだけ細線化することが求められているが、本発明の導電性インク組成物では、平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下と、従来のものに比べて小さいフレーク状銅粒子を使用しているため、微細なパターンの印刷を行うことができ、形成される太陽電池セル11の集電極16の更なる細線化が可能となる。またフレーク径の小さいフレーク状銅粒子を使用することにより、スクリーン印刷法を用いて印刷する際、従来技術で問題とされていたスクリーンの目詰まりといった不具合も解消される。また本発明の導電性インク組成物では、従来のものに比べ、平均フレーク径の小さいフレーク状銅粒子を使用しているが、ナノ銀粒子が比較的低温で焼結し、フレーク状銅粒子同士の隙間を埋めるため、高い導電性を維持できる。更に、接着性の高いエポキシ樹脂を用いているため、より細線化され、狭められた接着面積においても、高い密着性が得られる。この結果、本発明の導電性インク組成物を用いて形成された集電極16を有する太陽電池セル11では、集電極16の細線化により、より多くの光を受光面に照射させ、n型単結晶シリコン基板12(光電変換層)に吸収させることができるため、高い光電変換効率が得られる。
【0039】
本発明の導電性インク組成物は、太陽電池モジュールのリード線を形成するために用いられる。太陽電池モジュールは、図3に示すように、一般に、セラミックやガラス等により形成された絶縁基板21と、この絶縁基板21上に縦横にそれぞれ所定の間隔をあけて配設された複数の太陽電池セル11と、これらの太陽電池セル11の集電極16,19同士を電気的に接続するリード線22とを備える。このリード線22は、太陽電池モジュール20の特性を高めるために、より低抵抗のものを用いることが要求されることから、通常、銅箔が使用され、この銅箔は半田などにより被覆される。本発明の導電性インク組成物は、リード線22における銅箔の代替として利用でき、印刷法による形成が可能であることから、簡便な方法で低抵抗のリード線22の形成が可能になる。この結果、本発明の導電性インク組成物を用いて形成されたリード線22を備えた太陽電池モジュール20は、従来の銅箔等により形成されたリード線よりも低抵抗であるため、高い光電変換効率が得られる。
【実施例】
【0040】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製した。また有機系ビヒクルを構成する熱硬化性樹脂組成物としてエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:YX4000)を、硬化剤としてイミダゾール系硬化剤の2−エチル−4−メチルイミダゾールを、また溶剤としてブチルカルビトールアセテートを用意した。先ず、温度25℃の条件で、ブチルカルビトールアセテート100質量部に対し、エポキシ樹脂30質量部を混合し、更に上記混合物に2−エチル−4−メチルイミダゾールを適量添加して有機系ビヒクルを調製した。次に、得られた有機系ビヒクル10質量%と、上記導電性粒子90質量%とを3本ロールミルにて混練し、ペースト化することにより導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例1とした。
【0041】
<実施例2>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例2とした。
<実施例3>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例3とした。
<実施例4>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例4とした。
【0042】
<実施例5>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例5とした。
<実施例6>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例6とした。
<実施例7>
平均フレーク径1.0μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例7とした。
【0043】
<実施例8>
平均フレーク径1.0μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例8とした。
<実施例9>
平均フレーク径1.0μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例9とした。
<実施例10>
平均フレーク径1.0μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例10とした。
【0044】
<実施例11>
平均フレーク径1.0μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例11とした。
<実施例12>
平均フレーク径1.0μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例12とした。
<実施例13>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例13とした。
【0045】
<実施例14>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例14とした。
<実施例15>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例15とした。
<実施例16>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例16とした。
【0046】
<実施例17>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例17とした。
<実施例18>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例18とした。
【0047】
<実施例19>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径20nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例19とした。
<実施例20>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径20nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例20とした。
<実施例21>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径20nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例21とした。
【0048】
<実施例22>
平均フレーク径1.0μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径20nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例22とした。
<実施例23>
平均フレーク径1.0μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径20nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例23とした。
<実施例24>
平均フレーク径1.0μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径20nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例24とした。
【0049】
<実施例25>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径20nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例25とした。
<実施例26>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径20nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例26とした。
<実施例27>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径20nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を実施例27とした。
【0050】
<比較例1>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銀粒子95質量%と、平均粒径1000nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例1とした。
<比較例2>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銀粒子95質量%と、平均粒径1000nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例2とした。
<比較例3>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銀粒子70質量%と、平均粒径1000nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例3とした。
【0051】
<比較例4>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径1000nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例4とした。
<比較例5>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径1000nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例5とした。
<比較例6>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径1000nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例6とした。
【0052】
<比較例7>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径120nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例7とした。
<比較例8>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径120nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例8とした。
<比較例9>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径120nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例9とした。
【0053】
<比較例10>
平均フレーク径0.5μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径200nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例10とした。
<比較例11>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径200nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例11とした。
<比較例12>
平均フレーク径3.0μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径200nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例12とした。
【0054】
<比較例13>
平均フレーク径3.5μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例13とした。
<比較例14>
平均フレーク径3.5μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例14とした。
<比較例15>
平均フレーク径3.5μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例15とした。
【0055】
<比較例16>
平均フレーク径3.5μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例16とした。
<比較例17>
平均フレーク径3.5μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例17とした。
<比較例18>
平均フレーク径3.5μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例18とした。
【0056】
<比較例19>
平均フレーク径0.05μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例19とした。
<比較例20>
平均フレーク径0.05μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例20とした。
<比較例21>
平均フレーク径0.05μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径10nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例21とした。
【0057】
<比較例22>
平均フレーク径0.05μmのフレーク状銅粒子95質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子5質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例22とした。
<比較例23>
平均フレーク径0.05μmのフレーク状銅粒子90質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子10質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例23とした。
<比較例24>
平均フレーク径0.05μmのフレーク状銅粒子70質量%と、平均粒径50nmのナノ銀粒子30質量%とを混合した後、十分に振り混ぜて導電性粒子を調製したこと以外は、実施例1と同様にして導電性インク組成物を得た。この導電性インク組成物を比較例24とした。
【0058】
<比較試験1及び評価>
実施例1〜27及び比較例1〜24の導電性インク組成物の粘度、スクリーン印刷性、スクリーン目詰まり及び最小線幅を調べた。また実施例1〜27及び比較例1〜24の導電性インク組成物を用いて形成された電極の比抵抗を測定するとともに、電極の剥離の有無を調べた。その結果を表3及び表4に示す。なお、表1及び表2には、実施例1〜27及び比較例1〜24の導電性インク組成物の各成分の混合割合を示す。
【0059】
導電性インク組成物の粘度は、ブルックフィールド粘度計(HBDV-II+Pro Cp)を用いて測定した。また、導電性インク組成物のスクリーン印刷性は、スクリーン印刷法により100×100mm角のガラス基板上に印刷されたパターンの状況により評価した。具体的には、パターン形状が確認できた場合を「良好」とし、印刷時のかすれ等でパターン形状が僅かに乱れた場合を「可」とし、印刷時にレオロジー特性の関係からパターンが全く印刷できなかったり、著しいかすれによりライン欠損が全体にわたってみられた場合を「不可」とした。また導電性インク組成物のスクリーン目詰まりは、スクリーン版の目詰まりの状況により評価した。具体的には、スクリーン版が目詰まりして連続印刷が困難な場合、又はライン形状に目詰まりによる未塗布箇所がみられた場合を「有」とし、未塗布箇所がみられなかった場合を「無」とした。更に導電性インク組成物の最小線幅は次のように評価した。40、50、70、100、150及び200μmの線幅で開口部が設計されたスクリーン版を用いて100×100mm角のガラス基板上にパターンを印刷し、ラインが重ならずに乱れることなく印刷できた最小の線幅を、最小線幅とした。
【0060】
一方、電極の比抵抗は次のように調べた。先ず実施例1〜27及び比較例1〜24の導電性インク組成物を、スクリーン印刷法を用いて100×100mm角のガラス基板上にそれぞれ印刷塗布した後、これらのガラス基板を熱風循環炉に投入し、200℃の温度で30分間焼成して10×10mm角の電極をそれぞれ形成した。次に表面固有抵抗表面抵抗計(三菱化学社製:ローレスタ)を用いて、四端子四探針方式により測定した表面抵抗値と、レーザー顕微鏡(キーエンス社製:VK−9600)を用いて測定した膜厚の値から、電極の比抵抗(Ω・cm)を算出した。また電極の剥離の有無はレーザー顕微鏡で目視により調べた。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

表3及び表4から明らかなように、フレークの平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下の範囲より大きい比較例13〜18の導電性インク組成物の粘度は162.7〜169.7Pa・sと低く、フレークの平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下の範囲より小さい比較例19〜24の導電性インク組成物の粘度は210.7〜223.5Pa・sと高かった。これらに対し、フレークの平均フレーク径が0.1〜3.0μmの範囲内にある比較例1〜12及び実施例1〜27の導電性インク組成物の粘度は171.9〜183.0Pa・sと中間の値を示した。
【0065】
また、フレークの平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下の範囲より大きい比較例13〜18の導電性インク組成物や、フレークの平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下の範囲より小さい比較例19〜24の導電性インク組成物では、スクリーン印刷性が『可』であり、印刷時のかすれ等でパターン形状が僅かに乱れた。これらに対し、フレークの平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下の範囲内にある比較例1〜12及び実施例1〜27の導電性インク組成物では、スクリーン印刷性が『良好』であり、パターン形状を確認できた。
【0066】
更に、フレークの平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下の範囲より大きい比較例13〜18の導電性インク組成物では、スクリーン目詰まりが有った。これに対し、フレークの平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下の範囲より小さい比較例19〜24の導電性インク組成物や、フレークの平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下の範囲内にある実施例1〜27の導電性インク組成物では、スクリーン目詰まりは無かった。なお、比較例1〜24及び実施例1〜27の導電性インク組成物では、最小線幅が40μm又は50μmと同等であった。
【0067】
一方、Ag粒子の平均粒径が1nm以上100nm以下の範囲より大きい比較例1〜12の導電性インク組成物を用いて形成された電極や、フレークの平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下の範囲より大きい比較例13〜18の導電性インク組成物を用いて形成された電極や、フレークの平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下の範囲より小さい比較例19〜24の導電性インク組成物を用いて形成された電極では、比抵抗が23.4〜211.4Ω・cmと大きかった。これらに対し、Ag粒子の平均粒径が1nm以上100nm以下の範囲内にあり、かつフレークの平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下の範囲内にある実施例1〜27の導電性インク組成物を用いて形成された電極では、比抵抗が4.9〜5.9Ω・cmと小さくなった。なお、比較例1〜24及び実施例1〜27の導電性インク組成物を用いて形成された電極に剥離は無かった。
【符号の説明】
【0068】
11 太陽電池セル
14,18 透明導電層
16,19 集電極
20 太陽電池モジュール
22 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子と、熱硬化性樹脂組成物、硬化剤及び溶剤を含む有機系ビヒクルとを含有する導電性インク組成物において、
前記導電性粒子が、平均粒径が1nm以上100nm未満であるナノ銀粒子と、平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下であるフレーク状銅粒子とを含有し、
前記導電性粒子が前記フレーク状銅粒子を前記ナノ銀粒子より質量割合でより多く含有する
ことを特徴とする導電性インク組成物。
【請求項2】
ナノ銀粒子とフレーク状銅粒子との含有割合が質量比で(1:99)〜(40:60)である請求項1記載の導電性インク組成物。
【請求項3】
ナノ銀粒子が、球状と、球状以外の異方性の粒子とを含む請求項1又は2記載の導電性インク組成物。
【請求項4】
熱硬化性樹脂組成物と導電性粒子の含有割合が質量比で(5:95)〜(25:75)である請求項1ないし3いずれか1項に記載の導電性インク組成物。
【請求項5】
熱硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物である請求項1ないし4いずれか1項に記載の導電性インク組成物。
【請求項6】
硬化剤がイミダゾール類、第3級アミン類、又はフッ化ホウ素を含むルイス酸、或いはその化合物である請求項1ないし5いずれか1項に記載の導電性インク組成物。
【請求項7】
基板に塗布後、温度100〜220℃の範囲内で加熱硬化する請求項1ないし6いずれか1項に記載の導電性インク組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか1項に記載の導電性インク組成物を用いて集電極が形成された太陽電池セル。
【請求項9】
集電極が透明導電層上に形成された請求項8記載の太陽電池セル。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の太陽電池セルを備えた太陽電池モジュール。
【請求項11】
請求項1ないし7いずれか1項に記載の導電性インク組成物を用いてリード線が形成された太陽電池モジュール。
【請求項12】
溶剤と熱硬化性樹脂組成物と硬化剤とを混合して有機系ビヒクルを調製する工程と、
平均粒径が1nm以上100nm未満であるナノ銀粒子と平均フレーク径が0.1μm以上3μm以下であるフレーク状銅粒子とを前記ナノ銀粒子より前記フレーク状銅粒子を質量割合でより多く含有するように混合して導電性粒子を調製する工程と、
前記有機系ビヒクルと前記導電性粒子とを混練してペースト化することによりインク組成物を調製する工程と
を含む導電性インク組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法で製造された導電性インク組成物を用いて透明導電層上に集電極を形成する太陽電池セルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−44509(P2011−44509A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190549(P2009−190549)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】