説明

導電性ゴムローラ及びその製造方法

【課題】カーボンブラックを用いて均一分散と抵抗制御を容易に達成し、抵抗ムラが小さく、通電劣化に優れ、安定かつ良好な均一帯電・転写・現像特性と出力画像品質が得られる導電性ゴムローラおよび該導電性ゴムローラの製造方法を提供する。
【解決手段】導電性ゴム層が、少なくとも極性ゴムおよびカーボンブラックからなり、該導電性ゴム層の切片の電子顕微鏡でカーボンブラックを観察した時、一次粒子の周囲長Lと一次粒子径Rの比a(=L/R)およびアグリゲートを構成する一次粒子の数bが下記で区分される3種が観察されること。なお、それぞれの含有量は、極性ゴム成分100質量部に対して、(A)8〜30質量部、(B)2〜6質量部および(C)10〜80質量部である。
(A):R=10〜50nm、a=3.2〜3.7かつb=22〜47個。
(B):R=10〜50nm、a=4.3〜4.8かつb=40〜65個。
(C):R=100〜800nm、a=3.1〜3.5かつb=1〜3個。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを利用した画像形成装置(以下、電子写真装置ということがある)の帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等に使用可能な導電性ゴムローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
接触帯電、接触転写方式の電子写真装置においては、帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等にそれぞれに適する形態の導電性ゴムローラが使用されている。
【0003】
導電性ゴムローラは、図1に示した概略断面図で見られるように、導電性支持体(芯金)1の外周に導電性のゴム層2が形成されており、必要に応じてその外周に抵抗調整や汚れ・ブリード防止のための表面層3が設けられた複数層の形態とされていることが多い。
【0004】
電子写真装置において用いられる導電性ゴムローラは以下の理由により、感光体と一様なニップ幅を保つことが要求されている。すなわち、帯電ローラでは感光体と当接して均一な帯電を行うため。現像ローラではトナー(現像剤)を均一な薄膜担持し、かつ感光体上に形成された静電潜像を均一に現像するトナー搬送体としての機能性を確保するため。また、転写ローラでは感光体上のトナー像を紙等の画像担持体である転写部材に均一に転写するため。したがって、これら用途の導電性ゴムローラは、導電性ゴム層は適当な硬さ及び当接による圧縮力に対して充分な回復性を有する必要があり、ニップ幅を保持するために圧接して使用するのに適した低硬度のローラが使用されている。
【0005】
しかし、導電性ゴム層を低硬度化するために多量の軟化剤・可塑剤を添加した場合、長期間、同一部を圧接したままで放置すると、導電性ゴム層から軟化剤、可塑剤等の低分子量物質がブリードして感光体を汚染することがある。
【0006】
電子写真装置に用いられる導電性ゴムローラは、半導電性領域(体積抵抗値で104Ωcmから1010Ωcmの範囲)に導電性が制御されている。そのため、導電性ゴム層に4級アンモニウム塩などのイオン導電剤が添加されて、必要な抵抗値が達成されている。しかしながら、イオン導電剤を多量に添加すると導電性ゴムローラ表面にブリードし、感光体を汚染することが問題になる。
【0007】
一方、ブリードして感光体を汚染することが少なく、安価であるのでカーボンブラックを導電剤として添加する方法があるが、カーボンブラックは分散状態や集積構造によって抵抗値が変動し、導電性ゴムローラの抵抗値を制御することが困難となりやすい。また、導電性ゴム層中の微小部分の分散状態によっては局所的な画像不良が発生するという問題もある。
【0008】
導電性カーボンブラックは、導電性ゴム層内で一般的にカーボンブラック粒子同士がつながった構造となりやすく、すなわち、導電チャンネルを形成しやすく、そのため少量添加で導電性を付与するのに効果がある。しかし、均一に分散させることは難しく、偏在することが多い。したがって、導電性ゴムローラは少なからず抵抗ムラを有することとなり、電子写真装置の帯電ローラ、現像ローラあるいは転写ローラとして用いたときに、得られる画像に画像不良を引き起こす原因となる。例えば、帯電ローラにおいては、カーボンブラックが多く偏在した微小な低抵抗部分では感光体が過帯電となり、結果として画像に白スジ、白ポチなどが現れ、画像不良を引き起こす。逆に、カーボンブラックが少なくて微小な高抵抗部分では感光体の帯電が不十分となり、黒ポチや黒スジなどの画像不良が発生する。
【0009】
また、導電性ゴム層に印加される電気的エネルギーや機械的な繰り返し圧縮によって、カーボンブラックの一次粒子の凝集体構造(ストラクチャー)やカーボンブック粒子同士のつながりが破壊されたり、ゴム自身が劣化したりすることで高抵抗化してしまう、いわゆる通電劣化の問題がある。
【0010】
カーボンブラックを添加して分散状態や抵抗値を制御する手段として、体積抵抗率が1Ωcm以下のカーボンブラック(例えば、ケッチェンブラック(商品名))と表面積が100m2/g以下のカーボンブラック(例えば、MTカーボンブラック)を併用することが提案されている(特許文献1)。しかし、表面積が100m2/g以下のカーボンブラックは導電性がほとんどないので、導電性ゴム層の導電性の調整は体積抵抗率1Ωcm以下のカーボンブラックに依存することになる。ところが、体積抵抗率1Ωcm以下のカーボンブラックは窒素吸着比表面積が大きく、かつ、DBP吸油量が大きいので、導電性ゴム層内での分散状態が不安定になりやすく、抵抗値のばらつきが大きくなってしまう可能性がある。
【0011】
また、DBP吸油量が大きい高ストラクチャーのカーボンブラックに代えて、窒素吸着比表面積20m2/g以上130m2/g以下かつDBP吸油量60ml/100g以上120ml/100g以下の中ストラクチャーのカーボンブラックを用いることが提案されている(特許文献2)。しかし、中ストラクチャーのカーボンブラックを用い、所望の抵抗値を得ようとすると、カーボンブラックを多量に使用しなければならず、導電性ゴム層が硬くなってしまうことがある。
【特許文献1】特開平09−058077号公報
【特許文献2】特開平07−053860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、電子写真装置に用いられる導電性ゴムローラにおいて、カーボンブラックを用いて均一分散と抵抗制御を容易に達成し、抵抗ムラが小さく、通電劣化に優れ、安定かつ良好な均一帯電・転写・現像特性と出力画像品質が得られる導電性ゴムローラおよび該導電性ゴムローラの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討し、カーボンブラックの形状とストラクチャーの組合せを最適化することによって、均一な分散と抵抗制御を容易にでき、抵抗ムラが小さく、耐通電劣化性に優れ、安定かつ良好な均一帯電・転写・現像特性と出力画像品質が得られる導電性ゴムローラを得られることを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の構成を有する。
【0015】
〔1〕導電性支持体上に導電性ゴム層を有する導電性ゴムローラにおいて、
該導電性ゴム層が、少なくとも極性ゴムおよびカーボンブラックからなり、
該導電性ゴム層を電子顕微鏡でカーボンブラックを観察した時、一次粒子径R、一次粒子の周囲長Lと一次粒子径Rの比a(=L/R)およびアグリゲートを構成する一次粒子の数bで区分したとき、少なくとも下記3種のカーボンブラック粒子が観察され、かつ、それらの含有量が、極性ゴム成分100質量部に対して、(A)8質量部以上30質量部以下、(B)2質量部以上6質量部以下および(C)10質量部以上80質量部以下である
ことを特徴とする導電性ゴムローラ。
(A): 10nm≦R≦ 50nm、3.2≦a≦3.7かつ22個≦b≦47個。
(B): 10nm≦R≦ 50nm、4.3≦a≦4.8かつ40個≦b≦65個。
(C):100nm≦R≦800nm、3.1≦a≦3.5かつ 1個≦b≦ 3個。
【0016】
〔2〕極性ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムから選ばれたものであることを特徴とする上記の導電性ゴムローラ。
【0017】
〔3〕導電性支持体上に導電性ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
該導電性ゴム層が少なくとも極性ゴムおよびカーボンブラックからなり、
該導電性ゴム層中に含ませるカーボンブラックが、窒素吸着法による比表面積cおよびDBP吸油量dで区分したときに、少なくとも下記の3種であり、かつ、それらの含有量が、極性ゴム成分100質量部に対して、(D)8質量部以上30質量部以下、(E)2質量部以上6質量部以下および(F)10質量部以上80質量部以下である
ことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
(D):30m2/g≦c≦45m2/gかつ110ml/100g≦d≦550ml/100g。
(E):800m2/g≦c≦1300m2/gかつ350ml/100g≦b≦550ml/100g。
(F):5m2/g≦c≦15m2/gかつ30ml/100g≦b≦50ml/100g。
【0018】
〔4〕極性ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムから選択されていることを特徴とする上記の導電性ゴムローラの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の導電性ゴムローラは、抵抗ムラが小さく、通電劣化に優れ、安定かつ良好な均一帯電・転写・現像特性と出力画像品質が得られる優れたものであり、また、本発明の導電性ゴムローラの製造方法によると、上記優れた性能を有する導電性ゴムローラを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明の導電性ゴムローラは、図1に断面図を示したように、導電性支持体1上に導電性ゴム組成物からなる導電性ゴム層2を有している。そして、必要によりあるいは使用目的により表面層3が形成されている。
【0022】
導電性支持体としては、少なくとも表面が導電性を有し、導電性ゴムローラの支持体として機能するものであれば特に制限はない。その材料としては、例えば、SUS、鉄、銅、ステンレス、真鍮、導電性プラスチック等を使用することができる。導電性支持体の形状は、円柱状の他、中心部分を空洞とした円筒形状とすることもできる。また、導電性支持体は、通常、径が4.0mmから8.0mmの範囲が適当である。
【0023】
導電性ゴム層は、少なくとも極性ゴムおよびカーボンブッラクからなるものであり、その厚みは、導電性ゴムローラの使用目的にもよるが、通常、0.5mmから5.0mmの範囲が適当である。
【0024】
ここで使用される極性ゴムは、それ自身の固有体積抵抗値が比較的小さく、カーボンブラックの分散性に優れるので、アクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムが好ましい。
【0025】
導電性ゴム層中のカーボンブラックは、電子顕微鏡で観察した際のカーボンブラック像において、一次粒子の周囲長をL、同一次粒子径をRとし、その比a(=L/R)とアグリゲートを構成する一次粒子の数bとで区分したとき、少なくとも下記の3種のカーボンブラック(A)〜(C)が観察されることが必要である。
(A): 10nm≦R≦ 50nm、3.2≦a≦3.7かつ22個≦b≦47個。
(B): 10nm≦R≦ 50nm、4.3≦a≦4.8かつ40個≦b≦65個。
(C):100nm≦R≦800nm、3.1≦a≦3.5かつ 1個≦b≦ 3個。
【0026】
導電性ゴム層中のカーボンブラックは、以下のように観察する。
【0027】
図1のように導電性ゴム層2を長手方向に対して垂直に切断し、導電性ゴム層2の厚み方向の中央部分をクライオミクロトーム「Leica EM FCS」(商品名、ライカマイクロシステムズ株式会社製)を用いて切削温度−100℃にて、50nm程度の厚みの超薄切片を作製する。この超薄切片を、透過型電子顕微鏡「H−7500」(商品名、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて100kV、10,000倍で観察し、画像処理ソフト「image−pro plus」(商品名、Media Cybernetics社製)を用い、以下の計測を実施する。
【0028】
なお、本発明の導電性ゴムローラの導電性ゴム層を透過型電子顕微鏡で観察したカーボンブラックの画像では、図2の模式図に示すように、比較的スムースな表面で小さな一次粒子が連なったアグリゲートを形成したカーボンブラック像((A)に相当)、表面が毛羽立ったような小さな一次粒子が連なったアグリゲートを形成したカーボンブラック像((B)に相当)および比較的スムースな表面でかなり大きな一次粒子が多くても数個しか連なっていない(アグリゲートをほとんど形成していない)カーボンブラック像((C)に相当)が観察される。
【0029】
そして、これらの一次粒子を個々に見てみると、それぞれ図3〜5に示すような一次粒子像とすることが可能である。なお、この一次粒子像について外接する楕円を当てはめ、その短径と長径の平均を当該一次粒子の一次粒子径Rとした。また、当該一次粒子の画像上で測定した周囲長LとRの比a(=L/R)は、カーボンブラック(A)の像およびカーボンブラック(C)の像では約3.14であり、カーボンブラック(B)の像では3.14より大幅に大きい値となる。したがって、この値を比べることにより、カーボンブラック(A)とカーボンブラック(B)は容易に区別できる。なお、カーボンブラック(A)とカーボンブラック(C)とは一次粒子径Rの大きさにより区別する。
【0030】
なお、本発明では、観察画像内で、隣接するカーボンブラックの一次粒子について、Rが2.5倍以上異なる像やaが0.5を超えて異なる像はそれぞれ別種のカーボンブラックからの画像であり、その繋がりはアグリゲートを形成していないとみなす。すなわち、上述した範囲内にあるカーボンブラックの一次粒子の繋がりをアグリゲートとし、アグリゲートを構成している一次粒子の数bをカウントする。一次粒子径に関して、カーボンブラック(A)は10nm≦R≦50nm、カーボンブラック(B)は10nm≦R≦50nm、カーボンブラック(C)は100nm≦R≦800nmであることが、導電性と機能性の点から必要である。
【0031】
ここで、観察されるカーボンラック(A)は、aが3.2以上3.7以下であること、また、bが22個以上47個以下であることが、カーボンブラック(B)の分散性を補助する機能が達成されるために必要である。また、カーボンブラック(B)は、aが4.3以上4.8以下であり、bが40個以上65個以下で、充分にストラクチャーが発達していることが重要であり、これにより導電性ゴム層の導電性を達成する。さらに、カーボンブラック(C)は、aが3.1以上3.5以下で、この一次粒子のつながりは、殆んどないと判断されるbが1個以上3個以下である。これより、カーボンブラックが導電性ゴム層中で均一な分散を達成する。したがって、少なくとも、これらカーボンブラック(A)から(C)のいずれもが導電性ゴム層中に存在することが必要であり、いずれかが欠けると、カーボンブラックの分散が良好でなく、導電性ゴムローラに抵抗ムラが発生する。
【0032】
なお、後記するカーボンブラック粉末を極性ゴムに練り込んで作製した試料により透過型電子顕微鏡で観察したときに得られるカーボンブラック像と対比し、カーボンブラック(A)〜(C)はそれぞれカーボンブラック(D)〜(F)由来と判断される。したがって、これらカーボンブラック(A)〜(C)は、分散性、導電性等を考慮したとき、カーボンブラック(D)〜(F)の添加量に関して後記するような含有量であることが好ましい。すなわち、それらの含有量が、極性ゴム成分100質量部に対して、(A)8質量部以上30質量部以下、(B)2質量部以上6質量部以下および(C)10質量部以上80質量部以下である。
【0033】
本発明の導電性ゴムローラの導電性ゴム層は、その抵抗値Rrが1×104Ωcmから1×106Ωcmの範囲にあることが好ましい。この抵抗値Rrは、使用する各種ゴムの組成、導電剤の種類や添加量などにより適宜調整することができる。なお、導電性ゴムローラの抵抗値Rr(Ωcm)の測定は以下のように行う。
【0034】
導電性ゴムローラを23℃、60%RH(NN環境)に24時間以上置いた後、導電性支持体の両端部に各500gの荷重をかけて径30mmのSUS製ドラムに圧接し、SUS製ドラムを30rpmで回転させ、導電性ローラをつれ回りさせる。この状態で導電性支持体の露出部の一方から直流電圧(−200Volt)を印加し、SUS製ドラムに直列に接続した抵抗体(1kΩ)にかかる電圧を3秒間測定し、その平均値Vr(Volt)を求め、抵抗値Rrを下記式より算出する。
Rr=200×103/Vr
【0035】
なお、導電性ゴム層は、極性ゴムおよびカーボンブラック以外に、必要に応じて、可塑剤、充填剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤、滑材、受酸剤などの配合剤が適宜配されていても良い。なお、該導電性ゴム層形成には、極性ゴム原料、カーボンブラックと共に加硫剤、加硫促進剤が配された組成物から通常形成されている。
【0036】
本発明の導電性ゴムローラは、さらに導電性ゴム層の上に機能を調整するための表面層が形成されていることがある。
【0037】
本発明の導電性ゴムローラは、以下のようにして製造される。
【0038】
まず、上記極性ゴムに本発明で重要な少なくとも3種のカーボンブラックの他、可塑剤、充填剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤、滑材、受酸剤等の配合剤を配合し、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロールなどの一般的な混練機を用いて分散混練して未加硫の導電性ゴム層用の原料ゴム組成物を作製する。
【0039】
原料ゴム組成物は、導電性支持体である芯金をセットした円筒状金型に注入され、クロスヘッドを備えたベント式の押出し機を用いて芯金と共に押出し出され、あるいは押出し機で円筒状に押し出された後に切断されたものに芯金が挿入されて、芯金の上に円筒状に成形される。その後、加硫缶やバッチ式熱風炉、連続加硫、プレス加硫などの方法で加硫される。
【0040】
円筒状金型を使用する場合、加硫を金型内で完了しても、金型から取り出した後でも、また、金型内で一次加硫し、取り出して二次加硫を行っても良い。原料ゴム組成物が円筒状に押し出されたものにあっては、押出し機から押し出されてすぐに連続加硫処理され、加硫済のものを切断し、芯金を挿入することもできる。この場合は、芯金挿入後に二次加硫を行うこともできる。なお、いずれの方法であっても、芯金にゴム層を形成した後、端部を突き切る等して、端部を整えることが好ましい。特に、芯金と共に原料ゴム組成物が押し出される場合は、加硫前に端部を整えておくことが望ましい。
【0041】
上記したようにして、芯金の周りにゴム層を形成したローラは、そのままでも十分に導電性ゴムローラとして使用可能であるが、表面特性や形状を調整するために、乾式研磨や湿式研磨などの研磨加工することができる。
【0042】
ここで、使用するカーボンブラックとして、窒素吸着比表面積cとDBP吸油量dが異なる下記3種類のカーボンブラックを用いる。これにより、ゴム層に導電性付与と抵抗制御を行うとともに均一分散状態が達成できる。
【0043】
・カーボンブラック(D)
窒素吸着比表面積c:30m2/g以上45m2/g以下
DBP吸油量d :110ml/100g以上550ml/100g以下
・カーボンブラック(E)
窒素吸着比表面積c:800m2/g以上1300m2/g以下
DBP吸油量d :350ml/100g以上550ml/100g以下
・カーボンブラック(F)
窒素吸着比表面積c:5m2/g以上15m2/g以下
DBP吸油量d :30ml/100g以上50ml/100g以下
【0044】
カーボンブラック(E)は、cとdが共に大きい、高ストラクチャーのカーボンブラックであり、極性ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上6質量部以下添加する。これにより原料ゴムの体積抵抗値(109Ωcmから1011Ωcmの間にある)を107Ωcmから108Ωcmの間に下げる。このカーボンブラックを6質量部より多く充填すると、カーボンブラックのパーコレーション領域に入るために抵抗が急激に低下する。そのため抵抗制御が困難になり、高ストラクチャーカーボンの導電性が支配的になり、分散状態も悪化してしまう。そのために、望ましい充填量は2質量部から4質量部の範囲である。なお、cとdが上記範囲にあることが、導電性ゴム層へ良好な導電性を達成するために望ましい。
【0045】
カーボンブラック(D)は、cが小さく、dが中から大の範囲にあり、カーボンブラック(E)が形成するネットワークの内部で導電性を補助する役割を果たす。cが小さいとポリマーへの分散性が良好になるとともに、硬度上昇への寄与が小さく、充填量を増やすことが可能となる。
【0046】
また、全ゴム量に対するカーボンブラックの充填量が少ないと、ゴム中における導電パスあたりの電気的・力学的エネルギー負荷が大きくなるために、通電劣化が大きくなり易い。よって、硬度上昇による弊害が生じない範囲で、導電性に寄与するカーボンブラックの充填量は多い方が、均一分散、抵抗制御、通電劣化が良好になり好ましい。そのため、カーボンブラック(D)のcは30〜45m2/gが望ましく、その添加量は、極性ゴム成分100質量部に対して、8質量部から30質量部の範囲、好ましくは12質量部から20質量部の範囲が望ましい。
【0047】
また、カーボンブラック(D)は、dが大きく(ストラクチャーが発達している)、カーボンブラック(E)のネットワーク内部で橋かけ状態を形成し、導電性の補助を果たしていると考えられる。ストラクチャーが小さ過ぎると橋かけが届かないために導電性の補助の役割を果たすことができないので、導電性ゴム層はカーボンブラック(E)の導電性が支配的となり、カーボンブラックの均一分散や導電性ゴム層の抵抗制御が困難になってしまう。そのため、カーボンブラック(D)のdは110ml/100gから550ml/100gの範囲が望ましく、好ましくは440ml/100gから550ml/100gの範囲である。
【0048】
カーボンブラック(F)は、cとdが共に小さいので、導電性は低いが、BIT(CARBON BLACK INCORPORATION TIME)が短く、混練時において最初にゴム中に分散して、ゴム中にカーボンブラック(F)のマトリクスを形成する。その後に、そのカーボンブラック(F)とゴムのマトリクス間をカーボンブラック(D)およびカーボンブラック(E)が分散するのでストラクチャーの形成が安定する。また、カーボンブラック(F)が最初にゴム中に分散しているのでゴムの粘度が上昇して、混練時のせん断が上昇し、分散の向上が達成される。
【0049】
カーボンブラック(F)は、前記特性から分かるように硬度上昇への寄与が極めて小さいので、充填量を増やすことが可能となる。そのため、均一分散、抵抗制御、通電劣化が良好になる。したがって、カーボンブラック(F)の添加量は、極性ゴム成分100質量部に対して、10質量部から80質量部の範囲、好ましくは20質量部から40質量部の範囲が望ましい。
【0050】
ここで用いるカーボンブラック(D)〜(F)をそれぞれ極性ゴムに練り込んで、ゴムシートを作成し、該ゴムシートから作成した透過電子顕微鏡試料により測定した電子顕微鏡のカーボンブラック一次粒子の像は、それぞれ図3〜5に示すようである。すなわち、上記したローラ中の導電性ゴム層で観察されたカーボンブラック(A)〜(C)とそれぞれ同じ形状を示している。
【0051】
また、これらの図において、観察されるカーボンブラックの一次粒子像に外接する楕円を当てはめ、その長径と短径の平均から求めた当該カーボンブラックの一次粒子の粒子径Rと、その円周長Lから、L/R(=a)を計算するとそれぞれ下記のようになる。
【0052】
カーボンブラック(D)〜(F)の粒子径、周囲長は、それぞれ図3〜5に示すように(R1+R1′)/2、L1;(R2+R2′)/2、L2;(R3+R3′)/2、L3である。各カーボンブラックについて、aを計算すると、カーボンブラック(D)とカーボンブラック(F)はほぼ3.14となり、カーボンブラック(E)は3.14より大幅に大きい値となる。これはカーボンブラック(D)とカーボンブラック(F)はcが小さいために、粒子表面に細孔が少なく、比較的真球状の形態をしていることを反映している。一方、カーボンブラック(E)はcが大きいために粒子表面に細孔が多く凹凸した形態をしていることを反映している。したがって、cの異なるカーボンブラック(E)とカーボンブラック(D)も、a(=L/R)によって分類可能である。
【0053】
一方、カーボンブラックのDBP吸油量は、ストラクチャーの発達度合いやアグリゲートを構成しているカーボンブラック粒子数を反映していることが知られている。アグリゲートは集合体としてアグロメレート(ストラクチャー)を形成するために、分散の進行度によってもその大きさが異なる。しかし、本発明の場合、第一に、cとdが小さいカーボンブラック(F)がゴム中に分散して点在するようにマトリクスを形成する。次いで、カーボンブラック(F)を結ぶようにカーボンブラック(E)が繋がることで主となる導電パスを形成する。さらに、カーボンブラック(D)がカーボンブラック(E)のストラクチャーを橋かけして導電性を補助するという特徴的な分散状態をとる(図2参照)。
【0054】
このように、カーボンブラック(F)がゴム中にマトリクス状に点在して分散しているので(特に、その充填量が多いと)、その他のカーボンブラックはストラクチャーの形成に制限を受ける状態になる。そのため、最もストラクチャーの大きいカーボンブラック(E)でも、カーボンブラック(F)に対しては、アグリゲートサイズ以上のストラクチャーを形成することが容易ではなくなる。つまり、分散の制御が容易になる。
【0055】
以上より、導電性ゴム層内へ分散したカーボンブラック(D)〜(F)は、それぞれ、カーボンブラック(A)〜(C)として観察され、定義することができる。
(D)=(A):10nm≦R≦50nm、3.2≦a≦3.7かつ22個≦b≦47個
(E)=(B):10nm≦R≦50nm、4.3≦a≦4.8かつ40個≦b≦65個
(F)=(C):100nm≦R≦800nm、3.1≦a≦3.5かつ1個≦b≦3個
【0056】
本発明の導電性ゴムローラは、電子写真装置の帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等に好適に使用できる。
【0057】
本発明の導電性ゴムローラは、電子写真装置に用いるには、トナーや外添剤の付着防止、抵抗調整、感光体への汚染防止を制御するため、表面層を設けることが好ましい。
【0058】
表面層を設ける場合、柔軟性、耐磨耗性及び機械強度のある高分子バインダーを結着樹脂とし、これらの樹脂中に上記したような導電剤を分散して抵抗調整して使用される。高分子バインダーとしては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂等が使用される。
【0059】
導電性ゴムローラに表面層を設ける場合の好ましい方法として、次のような方法が挙げられる。まず、高分子バインダーを溶剤に溶解し、その中に導電剤を加え、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、ペイントシェーカーなどの塗料分散機を用いて分散する。これを浸漬塗工、スプレー塗工、ロールコートなどの塗工方法によって導電性ゴム層の外周に塗布する。さらに熱風循環乾燥機や赤外線乾燥炉などを用いて溶剤を除去して導電性ゴム層の上に表面層を形成する。
【0060】
また、導電性ゴムローラは、上記表面層の形成の代わりに、電子線、紫外線、X線、赤外線、プラズマなどのエネルギー線を照射し、導電性ゴム層の最表面を高架橋化することも好ましい。中では、特に紫外線による高架橋化が好ましい。紫外線を照射することで所望の電気特性にすることができ、また、粘着性や摩擦係数が低下するので、トナーや外添剤が導電性ゴムローラ表面へ付着するのを防止できる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により、本発明を説明する。
【0062】
まず、実施例、比較例で使用した原料を、また、カーボンブラックについては、前述した方法によって観察、定義したR、aおよびbの値も記載する。
【0063】
1)極性ゴム
・NBR :アクリロニトリルブタジエンゴム「ニッポールDN219」(商品名、日本ゼオン株式会社製、アクリロニトリル量:33.5%、ムーニー粘度:27.0ML(1+4)100℃)
・CHR :エピクロルヒドリンゴム「エピクロマーCG105」(商品名、ダイソー株式会社製、ムーニー粘度:65.0ML(1+4)100℃)
【0064】
2)カーボンブラック
・CB1 :カーボンブラック「旭#HS−500」(商品名、旭カーボン株式会社製、c=42m2/g、d=500ml/100g、R=38nm、a=3.2〜3.7、b=22〜47個)、カーボンブラック(D)に相当
・CB2 :ケッチェンブラックEC600JD(商品名、ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製、c=1270m2/g、R=34nm、d=495ml/100g、a=4.3〜4.8、b=40〜65個)、カーボンブラック(E)に相当
・CB3 :MTカーボンブラック N990(Engineered Carbons Inc.製、c=9m2/g、d=38ml/100g、R=300nm、a=3.1〜3.5、b=1〜3個)、カーボンブラック(F)に相当
・CB4 :カーボンブラック「シースト G−SO」(商品名、東海カーボン株式会社製、c=42m2/g、d=115ml/100g、R=43nm、a=3.2〜3.7、b=22〜38個)、カーボンブラック(D)に相当
・CB5 :カーボンブラック「旭#35」(商品名、旭カーボン株式会社製、c=24m2/g、d=50ml/100g、R=78nm、a=3.2〜3.6、b=4〜15個)、カーボンブラック(D)の代替
・CB6 :カーボンブラック「三菱カーボンブラック#3350B」(商品名、三菱化学株式会社製、c=125m2/g、d=165ml/100g、R=24nm、a=4.0〜4.5、b=25〜40個)、カーボンブラック(D)の代替
【0065】
3)充填剤、加硫剤、その他
・CaCO3:炭酸カルシウム「シルバーW」(商品名、白石工業株式会社製)
・ZnO :亜鉛華2種(ハクスイテック株式会社製)
・StZn :ステアリン酸亜鉛
・DM−P :加硫促進助剤、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド「ノクセラーDM−P」(商品名、大内新興化学株式会社製)
・TBZTD:加硫促進助剤、テトラベンジルチウラムジスルフィド「ノクセラーTBZTD」(商品名、大内新興化学株式会社製)
・硫黄 :加硫剤、硫黄「サルファックスPMC」(商品名、鶴見化学工業株式会社製)
【0066】
導電性ゴムローラの性能は、抵抗値、抵抗ムラ、耐通電劣化および画像均一性について下記の方法で評価した。
【0067】
[抵抗値および抵抗ムラ]
実施例、比較例で作成した導電性ゴムローラを23℃、60%RH(NN環境)に24時間以上置いた後、導電性支持体の両端部に各500gの荷重をかけて径30mmのSUS製ドラムに圧接し、SUS製ドラムを30rpmで回転させ、導電性ローラをつれ回りさせる。この状態で導電性支持体の露出部の一方から直流電圧(−200Volt)を印加し、SUS製ドラムに直列に接続した抵抗体(1kΩ)にかかる電圧を3秒間連続して測定し、その平均値をVr(Volt)とする。そして、このときの電圧(絶対値)の最大(Vrmax)と最小(Vrmin)から、比(Vrmax/Vrmin)を求め、抵抗ムラ(倍)とした。そして、抵抗値Rrは測定電圧Vrから下記式にて算出した。
Rr=200×103/Vr
【0068】
[耐通電劣化]
上記抵抗値および抵抗ムラ測定後、さらに、−200Voltを印加したまま、SUS製ドラムを30rpmで回転させて、導電性ゴムローラをSUS製ドラムにつれ回りした状態で1時間通電した。その後、SUS製ドラムに直列に接続した抵抗体(1kΩ)にかかる電圧を3秒間測定し、その平均をVr1h(Volt)とする。Vr1hから1時間後の抵抗値Rr1hを算出した。この抵抗値Rr1hが上記で測定した抵抗値Rrに対する割合(%)を求め、耐通電劣化の指標とした。
【0069】
[画像均一性]
実施例、比較例で作製した導電性ゴムローラを、キヤノン株式会社製のレーザービームプリンター「LBP5500」(商品名)の黒のオールインワンカートリッジに帯電ローラとして組み込み、LL環境(温度15℃、湿度10%)に24時間置いた。このカートリッジを「LBP5500」にセットし、ハーフトーン画像と実用画像(写真画像)を出力した。得られた画像を目視により観察し、カーボンブラックの分散の不均質さ、抵抗ムラ等が原因で生じる白・黒ポチ、白・黒スジ等の画像不良の有無により、下記基準で評価した。
○:画像不良が全く無い。
△:実用画像には画像不良は無いが、ハーフトーン画像に観察される。
×:実用画像、ハーフトーン画像の両方に画像不良が観察される。
【0070】
実施例1
極性ゴムとしてNBR 100質量部、カーボンブラック(D)としてCB1 8質量部、カーボンブラック(E)としてCB2 4質量部、カーボンブラック(F)としてCB3 40質量部、CaCO3 10質量部、ZnO 5質量部およびStZn 1質量部を加圧式ニーダーで20分間混練した。なお、炭酸カルシウム(CaCO3)は研磨性を向上させる目的で添加している。
【0071】
これに、DM−P 1質量部、TBZTD 3質量部および硫黄1質量部を加え、さらに、10分間混練して、未加硫ゴム組成物を作製した。
【0072】
次に、80℃に設定したクロスヘッドを備えた、株式会社イー・エム技研製の押出し成型機(直径50mmベント式押出し機、L/D=16)によって、SUS製の径6.0mmで長さ258.0mm導電性支持体(芯金)に同軸状に未加硫ゴム組成物を押出した。芯金端部から10.0mmまでの余分なゴムを切り離し、芯金上の未加硫ゴム組成物の長さを238.0mmにした後、熱風乾燥炉中160℃で1時間加硫した。加硫後、乾式研磨加工によって、ゴム中央の外径を8.5mm、ゴム端部の外径を8.25mmのクラウン形状に研磨した。その後、低圧水銀ランプを用いて紫外線による表面処理を施し、導電性ゴムローラを得た。なお、表面処理は60mW/cm2の紫外線強度で、ゴムローラを30rpmで回転させながら100秒間実施した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは2.0×105Ωcmであった。
【0073】
実施例2
CB1の配合量を16質量部と増やし、初めの混練時間を25分とした以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作製した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは1.0×105Ωcmであった。
【0074】
実施例3
CB1の配合量を25質量部と増やし、初めの混練時間を30分とした以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作製した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは5.0×104Ωcmであった。
【0075】
実施例4
CB3の配合量を10質量部と減らした以外は実施例2と同様にして導電性ゴムローラを作製した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは1.3×105Ωcmであった。
【0076】
実施例5
CB3の配合量を70質量部と増やした以外は実施例2と同様にして導電性ゴムローラを作製した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは6.7×104Ωcmであった。
【0077】
実施例6
カーボンブラック(D)としてCB4を16質量部使用した以外は実施例2と同様にして導電性ゴムローラを作製した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは1.5×105Ωcmであった。
【0078】
実施例7
極性ゴムとしてCHR 100質量部を用い、CB2およびCB3をそれぞれ2質量部、20質量部と減らした以外は実施例2と同様にして導電性ゴムローラを作製した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは1.0×105Ωcmであった。
【0079】
比較例1
CB1を使用せず、初めの混練時間を16分とした以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作製した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは2.1×105Ωcmであった。
【0080】
比較例2
CB1の配合量を40質量部と増やし、初めの混練時間を30分とした以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作製した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは4.0×104Ωcmであった。
【0081】
比較例3
CB3の配合量を5質量部と減らした以外は実施例2と同様にして導電性ゴムローラを作製した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは1.7×105Ωcmであった
【0082】
比較例4
CB3の配合量を90質量部と増やした以外は実施例2と同様にして導電性ゴムローラを作製した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは5.7×104Ωcmであった。
【0083】
比較例5
CB1に代えCB5 16質量部を使用した以外は実施例2と同様にして導電性ゴムローラを作製した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは3.3×105Ωcmであった。なお、CB5の電顕用試料を作成し、観察をしたところa=3.2〜3.6、b=4〜15個であった。
【0084】
比較例6
CB1に代えCB6 16質量部を使用した以外は実施例2と同様にして導電性ゴムローラを作製した。得られた導電性ゴムローラの抵抗値Rrは3.3×104Ωcmであった。なお、CB6の電顕用試料を作成し、断面観察をしたところa=4.0〜4.5、b=25〜40個であった。
【0085】
以上の実施例、比較例で作成した導電性ゴムローラを帯電ローラとして用いて、抵抗ムラ、耐通電劣化および画像均一性の評価を上記により行った。得られた結果を表1(実施例)および表2(比較例)に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
実施例1は、カーボンブラック(D)の配合量が少ないために、画像均一性は△、耐通電劣化は75%、抵抗ムラは1.5倍であった。
【0089】
実施例2および3は、カーボンブラック(D)が実施例1よりも増えたために画像均一性が向上し、耐通電劣化は87%、95%と良化している。但し、実施例3では導電性ゴムローラの硬度が上昇したために均質なニップが保持しにくくなったことが原因で画像均一性が△になった。抵抗ムラは実施例2では1.3倍と更に良化したが、実施例3では未加硫ゴムのムーニー粘度上昇にともない押出し成形時の吐出安定性が低下したために1.6倍になった。
【0090】
実施例4は、カーボンブラック(F)が実施例2よりも減ったことで、マトリクスの形成が全ゴム領域に対して低下しために画像均一性が△、耐通電劣化が72%に低下し、抵抗ムラも1.7倍になった。
【0091】
実施例5は、カーボンブラック(F)が実施例2よりも増えたために、硬度が上昇して画像均一性が△になったが、耐通電劣化は96%と良化し、抵抗ムラも1.5倍となった。
【0092】
実施例6はCB1よりもDBP吸油量が小さいCB4(a=3.2〜3.7、b=22〜38個)を用いたところ、画像均一性は〇、耐通電劣化は90%、抵抗ムラは1.6倍であった。
【0093】
実施例7は、極性ゴムとして、エピクロルヒドリンゴムを用いた。使用したエピクロルヒドリンゴムのムーニー粘度が高いためにカーボンブラック(F)の配合量を減らした。画像均一性は〇であり、耐通電劣化は78%、抵抗ムラは1.3倍であった。
【0094】
比較例1は、カーボンブラック(D)を使用しなかったので、カーボンブラック(E)の導電性が支配的になり、分散が不均一な状態になっていると考えられる。画像均一性は×であり、耐通電劣化は68%、抵抗ムラは1.6倍であった。
【0095】
比較例2は、カーボンブラック(D)が実施例3よりも増えたために導電性ゴムローラの硬度がさらに上昇し、ニップの確保が不十分になり、画像均一性が△になった。耐通電劣化は96%と良化したが、粘度上昇による吐出安定性が低下し、抵抗ムラは2.3倍になった。
【0096】
比較例3は、カーボンブラック(F)が実施例4よりも減ったために、マトリクスの形成が不十分となり、画像均一性が×となった。また、耐通電劣化も60%に低下した。抵抗ムラは1.4倍であった。
【0097】
比較例4は、カーボンブラック(F)が実施例5よりもさらに増えたために、硬度と粘度が上昇したことにより、画像均一性が×となり、抵抗ムラも2.1倍になった。耐通電劣化は95%であった。
【0098】
比較例5は、DBP吸油量がCB1よりも小さく窒素吸着比表面積が同程度のCB5(a=3.2〜3.6、b=4〜15個)を用いたので、耐通電劣化は85%、抵抗ムラは1.7倍であったが、画像均一性は×になった。
【0099】
比較例6は、窒素吸着比表面積がCB1よりも大きく、DBP吸油量がCB1とCB4の中間にあるCB6を用いた。窒素吸着比表面積が大きいために、分散性が悪くなり、ムーニー粘度と導電性ゴムローラ硬度が高くなり、画像均一性は×であり、耐通電劣化は66%、抵抗ムラが2.4倍になった。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】導電性ゴムローラの概略断面図である。
【図2】導電性ゴム層のカーボンブラックの分散状態の概略模式図である。
【図3】カーボンブラック(D)((A))の一次粒子の観察概略図である。
【図4】カーボンブラック(E)((B))の一次粒子の観察概略図である。
【図5】カーボンブラック(F)((C))の一次粒子の観察概略図である。
【符号の説明】
【0101】
1 芯金(導電性支持体)
2 導電性ゴム層
3 表面層(保護層)
R1 カーボンブラック(D)の一次粒子の長直径
R1’ カーボンブラック(D)の一次粒子の短直径
L1 カーボンブラック(D)の一次粒子の周囲長
R2 カーボンブラック(E)の一次粒子の長直径
R2’ カーボンブラック(E)の一次粒子の短直径
L2 カーボンブラック(E)の一次粒子の周囲長
R3 カーボンブラック(F)の一次粒子の長直径
R3’ カーボンブラック(F)の一次粒子の短直径
L3 カーボンブラック(F)の一次粒子の周囲長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に導電性ゴム層を有する導電性ゴムローラにおいて、
該導電性ゴム層が、少なくとも極性ゴムおよびカーボンブラックからなり、
該導電性ゴム層を電子顕微鏡でカーボンブラックを観察した時、一次粒子径R、一次粒子の周囲長Lと一次粒子径Rの比a(=L/R)およびアグリゲートを構成する一次粒子の数bで区分したとき、少なくとも下記3種のカーボンブラック粒子が観察され、かつ、それらの含有量が、極性ゴム成分100質量部に対して、(A)8質量部以上30質量部以下、(B)2質量部以上6質量部以下および(C)10質量部以上80質量部以下である
ことを特徴とする導電性ゴムローラ。
(A): 10nm≦R≦ 50nm、3.2≦a≦3.7かつ22個≦b≦47個。
(B): 10nm≦R≦ 50nm、4.3≦a≦4.8かつ40個≦b≦65個。
(C):100nm≦R≦800nm、3.1≦a≦3.5かつ 1個≦b≦ 3個。
【請求項2】
極性ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムから選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
導電性支持体上に導電性ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
該導電性ゴム層原料が少なくとも極性ゴムおよびカーボンブラックからなり、
該導電性ゴム層中に含ませるカーボンブラックが、窒素吸着法による比表面積cおよびDBP吸油量dで区分したときに、少なくとも下記の3種であり、かつ、それらの含有量が、極性ゴム成分100質量部に対して、(D)8質量部以上30質量部以下、(E)2質量部以上6質量部以下および(F)10質量部以上80質量部以下である
ことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
(D):30m2/g≦c≦45m2/gかつ110ml/100g≦d≦550ml/100g。
(E):800m2/g≦c≦1300m2/gかつ350ml/100g≦b≦550ml/100g。
(F):5m2/g≦c≦15m2/gかつ30ml/100g≦b≦50ml/100g。
【請求項4】
極性ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムから選択されることを特徴とする請求項3に記載の導電性ゴムローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−3368(P2008−3368A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173748(P2006−173748)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】