説明

導電性パターンの形成方法

【課題】本発明の目的は、高精細な配線パターンが要求され、且つ、高い導電性が求められる用途の導電性パターンの形成方法において、導電性を低下させることなく、且つ厚付け無電解めっき浴を用いてめっきした際に導電性パターン以外の部分に発生する好ましくない金属の析出を抑制した導電性パターンの形成方法を提供することにある。
【解決手段】基板上に、少なくとも一層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を、(A)画像状露光、(B)硬化現像処理、(C)未硬化部の除去を実施した後、無電解めっき処理を施すまでの処理工程の少なくとも一工程で、ハロゲン化銀溶剤を含有する処理剤で定着処理することを特徴とする導電性パターンの形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムやガラス基板等の基板上に導電性のパターンを形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に導電性パターンを設ける導電性パターンの形成方法としては、基本的には印刷方式、フォトリソグラフィー方式、銀塩方式およびその他の方式とに大別される。印刷方式には、導電性金属インキやペーストをスクリーン印刷等の手段によって印刷した後、導電性を付与するために焼成する方法(例えば特許文献1)や、無電解めっき触媒を含有する樹脂塗料等を印刷した後、無電解めっきを施して導電性パターンを付与する方法(例えば特許文献2)などが知られている。
【0003】
フォトリソグラフィー方式には、均一な導電金属層を有する基板上にフォトレジストを塗布し、露光、現像後、レジストが剥離された導電性金属層をエッチング除去し導電性パターンを得るサブトラクティブ方式をとるもの(例えば特許文献3)、無電解めっき触媒を含有するレジストを支持体上に塗布し、露光、現像し未露光部のレジストを除去後、無電解めっきすることにより導電性パターンを得るアディティブ方式をとるもの(例えば特許文献4)などが知られている。
【0004】
その他の方式としては、透明支持体上に銀めっき等を施すことによって銀粒子層からなる導電性画像形成層を形成させ、その画像形成層に高密度エネルギー光を照射することにより照射部の画像形成層と支持体との結合力を低下せしめるアブレーション現像を利用した、導電性パターンを得る方法(特許文献5)などの提案がなされている。
【0005】
しかしながら印刷を用いる方式では、印刷精度の問題から高精細の導電パターンの形成は一般的に困難とされており、フォトリソグラフィー方式では、高精細の導電パターン形成が可能とされているが、一般的に製造工程が複雑であるため、工程に用いる材料のロスが多いという課題を抱えている。また、アブレーション現像を利用した方法ではアブレーションにより微少な飛散物が生じるという問題を抱えている。
【0006】
感光性ハロゲン化銀を用いる銀塩方式としては、銀塩拡散転写方式を用いたもの(特許文献6)および化学現像銀を利用するもの(特許文献7)が提案されている。これらの銀塩方式のうち、特許文献7に示されているような化学現像銀を用いる方式は、露光された部位のハロゲン化銀が現像液中に存在する現像主薬によって還元されてできる化学現像銀を触媒核として、無電解めっきを施すことによって導電性とするものである。
【0007】
しかしながら、生成した化学現像銀の周囲に存在する、ハロゲン化銀乳剤のバインダーであるゼラチンが無電解めっきの抑制因子として働く。従って、生成した化学現像銀と水溶性バインダーであるゼラチンとの体積比がポイントであり、無電解めっきの効率を上げて導電性を確保するためには、極力バインダー量を減ずる必要がある。しかし、バインダー量の減量には限度があり、塗布安定性およびハロゲン化銀写真乳剤の特性確保にはマイナス因子として働き好ましくない。
【0008】
一方、銀塩拡散転写方式を用いるものは、支持体上に物理現像核と称する、銀錯体が現像主薬によって還元されて金属銀となるための触媒核層およびその上層にハロゲン化銀乳剤層を設けた材料を使うものである。また、現像液中には現像主薬の他にハロゲン化銀を溶解する化合物(ハロゲン化銀溶剤)を添加させておく。この材料に露光および現像を行うと、露光部のハロゲン化銀は化学現像銀に変換されて、ハロゲン化銀乳剤層に留まる。一方、未露光部のハロゲン化銀は、上記現像液中に添加されたハロゲン化銀溶剤によって溶解され、銀錯体となり支持体上の物理現像核層まで移動・拡散し、そこで現像主薬により還元されることにより、導電性の金属銀を析出させている。その後、露光部位にある化学現像銀を含む乳剤層は、ウォッシュオフを行うことにより除去している。しかしながら、支持体上にはなお当該物理現像核層が残存したままであり、透明性確保のためにはマイナス因子となっている。更に、極薄い物理現像核層の塗布を含めて製造工程が煩雑となる等の課題があった。
【0009】
本出願人は、上記課題を克服するため、高精度の導電性パターンを、比較的簡便な方式で得る導電性パターンの形成方法として特願2007−139881号を提案している。かかる導電性パターンの形成方法は硬化現像法を利用する導電性パターンの形成方法である。
【0010】
一方、携帯電話やデジタルカメラのような小型装置に用いられる配線基板やプラズマディスプレイに用いられるような電磁波シールドフィルムのように、高精細な配線パターンが要求され、且つ、高い導電性が求められる用途では、ある程度の厚みを持った導電性パターンが必要である。
【0011】
一般に無電解めっき浴には、プリント基板のスルーホールめっきに用いられる薄付け用のめっき浴や、フルアディティブ法のための厚付け用のめっき浴などがある。前者は、めっき膜厚は0.1〜0.3μmと薄いが、浴温度が低く安定であり、電気的につながったパターンでその後に電解めっきを行う場合などに適している。一方、後者は高温浴で、めっき膜厚は10μm以上にもなり、孤立パターンのめっきなどに適している。
【0012】
しかしながら、前述したように高精細な配線パターンが要求され、且つ、高い導電性が求められる用途において、本出願人が提案した導電性パターンの形成方法により導電性パターンを形成した後、高温浴である厚付け用の無電解めっき浴を用いてめっきした際、導電性パターン以外の部分にも、めっきによる金属析出物が発生する問題があった。
【0013】
析出した金属は極めて微量であるため、プリント基板やアドレス電極のような用途では隣接する配線間に更に導電性が生じ、誤動作を引き起こしたり、ショートしてしまうといった問題は生じないものの、消費者に不快な印象を与え商品価値を損なってしまうという問題があった。また電磁波シールドフィルム等のディスプレイ用途では光透過性が損なわれてしまい、やはり消費者に不快な印象を与え商品価値を損なってしまうと言う問題があった。
【特許文献1】特開昭55−91199号公報
【特許文献2】国際公開第04/39138号パンフレット
【特許文献3】特開平5−16281号公報
【特許文献4】特開平11−170421号公報
【特許文献5】特開平10−151858号公報
【特許文献6】国際公開第04/007810号パンフレット
【特許文献7】特開2004−221564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って本発明の目的は、高精細な配線パターンが要求され、且つ、高い導電性が求められる用途の導電性パターンの形成方法において、導電性を低下させることなく、且つ厚付け無電解めっき浴を用いてめっきした際に導電性パターン以外の部分に発生する好ましくない金属の析出を抑制した導電性パターンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記の課題は、基板上に、少なくとも一層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を、(A)画像状露光、(B)硬化現像処理、(C)未硬化部の除去を実施した後、無電解めっき処理を施すまでの処理工程の少なくとも一工程で、ハロゲン化銀溶剤を含有する処理剤で定着処理することを特徴とする導電性パターンの形成方法によって解決される。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、導電性を低下させることなく、且つ厚付け無電解めっき浴を用いてめっきした際に導電性パターン以外の部分に発生する好ましくない金属の析出を抑制した導電性パターンの形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
硬化現像法とは、J.Photo.Sci.誌11号 p1、A.G.Tull著(1963)あるいは「The Theory of the photographic Process(4th edition,p326−327)」、T.H.James著等に記載されている様に、フィルム等の支持体上に塗布した実質的に硬膜剤を含まない未硬膜の感光性ハロゲン化銀乳剤層を、ポリヒドロキシベンゼン系等の現像主薬を含む現像液で処理することによって、現像主薬が露光部のハロゲン化銀を還元した際に、現像主薬自身から生成された酸化体により、ゼラチンを架橋させて画像状に硬膜させる方法である。未露光部のハロゲン化銀は現像主薬による還元を受けないため、現像主薬の酸化化合物の生成はなくゼラチン硬膜反応は生じない。これを現像後に温水などで洗浄すると、水溶性ゼラチンを主たるバインダーとして含有する未露光部のハロゲン化銀乳剤層は除去され、露光部で架橋された画像部だけが支持体上に残り、レリーフ画像が形成される。
【0018】
従来から感光性ハロゲン化銀感光材料における硬化現像法を用いた印刷版や画像表示材料は知られている。例えば、回路パターンを形成するための露光用マスク材料への応用については、特開2003−315957号公報に記載されており、硬化現像による着色レリーフコロイド状画像を得る方法に関しては、特開昭59−64837号公報、特開昭59−64838号公報および特開昭62−141535号公報に開示がなされている。しかしながら、この硬化現像法のその他の応用については、印刷版や画像表示材料に留まっていた。
【0019】
本発明における導電性パターンとは、連続する導電性配線画像または非連続な導電性孤立配線画像であり、前者は、主に格子、ハニカム、渦巻き、放射状、円形、直線、多角形などの形状を有しており、任意の端部から最遠部の端部までの導通が図られているものである。一方、後者の非連続な導電性孤立配線画像とは、主に円形、直線、多角形、星形などの形状を有する孤立した配線画像のことである。
【0020】
本発明にかかる画像状露光の方法に関しては、ハロゲン化銀乳剤の当該感光域に適した均一光でマスクフィルムを介して露光を行うか、または当該感光域に発振波長を有するレーザー光を画像状に照射する方法等がある。
【0021】
本発明の写真感光材料が有する基板としては、基紙の両面をポリエチレン系樹脂等で被覆した樹脂被覆紙、合成もしくは半合成高分子フィルム、例えば、PET等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、セルローストリアセテートフィルム等、当業界で公知のフィルム素材を使用することができる。ガラス基板としては、当業界で公知のガラス素材を使用することができる。用途、求められる性能等によって選択する必要があるが、例えば、ソーダ石灰、ホワイトクラウン等のソーダライムガラス、ホウケイ酸、無アルカリ、アルミノケイ酸等の低膨張ガラス、合成石英ガラス等が挙げられる。
【0022】
次に本発明の写真感光材料が有するハロゲン化銀乳剤層について説明する。本発明の導電性パターンの形成方法に利用する写真感光材料は、少なくとも一層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を有する。該感光性ハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀結晶としては、例えば、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、およびこれらにヨウ化銀を含むハロゲン化銀結晶等が挙げられる。ハロゲン化銀結晶は、ロジウム塩、イリジウム塩、パラジウム塩、ルテニウム塩、ニッケル塩、白金塩等の重金属塩を含んでいても良く、その添加量はハロゲン化銀1mol当たり1×10-8〜1×10-3molである。ハロゲン化銀の結晶形態は特に制限はなく、立方体乃至14面体粒子、更にはコアシェル型、平板状粒子であっても良い。ハロゲン化銀結晶は、単分散、多分散結晶であっても良く、その平均粒径は0.05〜0.8μmの範囲である。好ましい例の一つとしては、ロジウム塩もしくはイリジウム塩を含む、塩化銀が80mol%以上の単分散もしくは多分散結晶がある。
【0023】
本発明に係わるハロゲン化銀乳剤層のバインダーとしては、水溶性ゼラチン単独または水溶性ゼラチンとカゼイン、デキストリン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、澱粉等の他の水溶性高分子化合物と組み合わせることができる。水溶性ゼラチンにおいては酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、ゼラチン誘導体、グラフト化ゼラチン等のいずれも使用することができる。
【0024】
ハロゲン化銀乳剤は、それが製造される時または塗布される時に種々な方法で増感することができる。例えば、チオ硫酸ナトリウム、アルキルチオ尿素によって、または金化合物、例えばロダン金、塩化金によって、またはこれら両者の併用など当該技術分野に於いて良く知られた方法で化学的に増感することが好ましい。ハロゲン化銀乳剤はまた、例えばシアニン、メロシアニン等の色素によってポジティブにもネガティブにも増感または減感され得る。その増感または減感され得る波長域に特に制限はない。従って、オルソ増感、パンクロ増感、ヘリウム−ネオンレーザー用増感、アルゴンレーザー用増感、LED用増感、半導体レーザー用増感もなし得るし、可視光増感もなし得る。
【0025】
また、本発明のハロゲン化銀乳剤には、イラジエーションあるいはハレーションによる画像劣化に対応するために通常のハロゲン化銀写真乳剤に使用される染料や顔料を添加することができる。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤層または/および任意に設けられる層に含有される染料、および顔料としては、当業者で周知のものを単独、あるいは組み合わせて使用することができる。染料と顔料という用語は使用する産業ごとに独特の定義があるために、明確に両者を区別する一般的な基準がないが、染料とは水中で均一に溶解する着色料であり、顔料とは水にほとんど溶解せず、水中で粒子を形成している着色料として区別するとわかりやすい。染料は水への溶解性を高めるために、分子中にスルホン酸基またはカルボン酸基等の水溶性基を複数含有していることが好ましい。
【0026】
更に、本発明のハロゲン化銀乳剤層には、必要に応じて当業界内で知られている添加剤を添加することができる。アニオン、カチオン、ベタイン、ノニオン系の各種界面活性剤、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤、消泡剤等の塗布助剤、エチレンジアミンテトラアセテート等のキレート剤、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン類、3−ピラゾリジノン類等の現像主薬を含有させても良い。また、アザインデン類、複素環式メルカプト化合物等の安定剤、かぶり抑制剤を添加することもできる。
【0027】
本発明に用いる写真感光材料は必要に応じて支持体のハロゲン化銀乳剤層と反対面に裏塗層やハロゲン化銀乳剤層の上にオーバー層、ハロゲン化銀乳剤層の下に下引き層など任意の層を設けることができる。
【0028】
本発明に用いる写真感光材料のオーバー層、裏塗層についてはハロゲン化銀乳剤層と同様のバインダーを用いることができる。また、特にめっき層と基板との密着性の点から下引き層を設けることが好ましく、下引き層としては上記ハロゲン化銀乳剤層と同様の水溶性ゼラチンや水溶性高分子化合物と、ポリマーラテックスとを併用することが好ましい。下引き層に用いられるポリマーラテックスとしては、単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては例えば酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン重合体などがあり、共重合体としては例えばエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトオキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ポリエーテル系ウレタン、ポリエステル系ウレタン、ポリカーボネート系ウレタンなどが挙げられる。中でもウレタンラテックス、更にはポリカーボネート系ウレタンラテックス、ポリエーテル系ウレタンラテックスもしくはポリエステル系ウレタンラテックスが無電解めっき処理による高い導電性と、基板と金属パターンの強い密着力を得られる点で好ましい。下引き層の固形分量塗布量としては0.1〜5g/m2が好ましく、更に好ましくは0.3〜2g/m2である。
【0029】
また、下引き層は架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、水に対する溶解性が0.5質量%以上である架橋剤が好ましく、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基を二個以上有する化合物、エポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテルやポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等、あるいはこれら以外に「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)の2・6・7章、5.2章、9・3章など記載の架橋剤等の公知の高分子架橋剤を含有させることもできる。中でもエポキシ基を分子中に二個以上有する水溶性架橋剤が好ましい。
【0030】
下引き層における架橋剤の添加量は水溶性ゼラチンや水溶性高分子化合物およびポリマーラテックスの合計量に対して1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは3〜7質量%が好ましい。更に裏塗層、オーバー層、下引き層には公知の界面活性剤、現像抑制剤、イラジエーション防止色素、顔料、マット剤、滑剤などを含有することもできる。
【0031】
本発明にかかる(B)硬化現像処理の工程に於いて用いられる現像液は、現像主薬としてポリヒドロキシベンゼン類(例えばピロガロール、カテコール、ハイドロキノン)を用いる。更に、3−ピラゾリジノン類等の補助現像主薬を含有せしめることもできるが、ハロゲン化銀乳剤層がこれらを含有する場合、現像液は必ずしも含有する必要はない。また、アルカリ性物質として、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化リチウム、第3リン酸ナトリウム、アミン化合物等、保恒剤として、例えば亜硫酸ナトリウム等、増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース等、かぶり防止剤として、例えば臭化カリウム等、現像調節剤として、例えばポリオキシアルキレン化合物等、ハロゲン化銀溶剤として、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、チオサリチル酸、メソイオン性化合物等の添加剤等を含ませることができる。現像液のpHは、通常10以上14以下が好ましい。
【0032】
(C)未硬化部の除去は、硬化現像処理後の未硬化部(非画像部)のハロゲン化銀乳剤層を除去し、基版あるいは必要に応じて設けられた下引き層の表面を露出する工程である。ハロゲン化銀乳剤層の除去を主目的としているため、本工程で用いられる処理液は水を主成分とするが、pH緩衝成分を含有しても良い。また、除去したゼラチンの腐敗を防止する目的で、防腐剤を含有することができる。
【0033】
次に本発明の一連の、硬化現像法を用いた導電性パターンの形成方法について、以下に図面を参酌しながら詳細に説明する。図1は本発明の導電性パターンの形成プロセスの実施形態の一例を示す模式図である。
【0034】
図1の(イ)は本発明に用いる写真感光材料の好ましい一例を示したものであり、基板1a上に感光性ハロゲン化銀乳剤層2が塗設されている。
【0035】
図1の(ロ)は、画像状に露光される工程を示すものであり、(ロ)においてはその一例としてマスクフィルム4を介して画像状露光される状態を示す。なお画像状露光の方式に関してはマスクフィルム4を介さずとも、例えばレーザー光等による直接露光方式を用いても良い。
【0036】
図1の(ハ)は画像状露光を施した後に硬化現像処理により得られた硬化画像部2aが形成され、その後未硬化部の除去が施された状態を示す。未硬化部であるハロゲン化銀乳剤層を除去する方法としては、スポンジ等で擦り取る方法、ローラーを膜面に当ててスリップさせることによってはがしとる方法、ローラーを膜面に接触させてローラーに巻き付ける方法等がある。物理的な接触は不都合なピンホール等を誘発するため、好ましくは物理的接触でハロゲン化銀乳剤層を除去する工程を実質的に含まない方が良い。本発明における硬化現像処理後の好ましい態様としては、処理液流をハロゲン化銀乳剤面に当てることによって、ハロゲン化銀乳剤を除去するのが良い。処理液流をハロゲン化銀乳剤面に当てる方法としては、シャワー方式、スリット方式等を単独、あるいは組み合わせて使用できる。また、シャワーやスリットを複数個設けて、除去の効率を高めることもできる。本発明においてはこの(ハ)の形態が形成された後であって、無電解めっき処理を施すまで処理工程の少なくとも一工程で、ハロゲン化銀溶剤を含有する処理剤で定着処理を実施する。
【0037】
図1の(ニ)は、前記(ハ)の形態が形成された後、無電解めっき触媒5の付与が施された状態を示したものである。無電解めっき触媒5は硬化画像部2a、および未硬化部の除去に伴い露出した基板(あるいは必要に応じて設けられた下引き層)の表面近傍に無電解めっき触媒5が付与される。無電解めっき触媒5の付与は、無電解めっきを実施する際の核となる触媒金属(一般にはパラジウム−錫錯体が用いられる)を吸着させるキャタリスト付加工程、次いで錫塩を溶解させ酸化還元反応により金属パラジウムを生成させるアクセレーターと称する工程からなる。
【0038】
図1の(ホ)は、無電解めっき触媒5が付与された後に硬化画像部2aが除去された状態を表す。硬化画像部の除去には後述する酵素含有処理液が用いられる。そして図1の(ヘ)に示すように硬化画像部2aが除去された後に無電解めっき処理が行われ無電解めっき部3が形成される。
【0039】
なお、上記図1は本発明の導電性パターンの形成プロセスの実施形態の一例を示すものであり、その他には前記(ニ)の形態を得た後、硬化画像部の除去に用いた酵素含有処理液によって硬化画像部2a表面を軽くエッチング処理することで(例えば処理条件を低温、短時間化する、あるいは酵素含有処理液中の酵素濃度を調整(低減)することにより)、硬化画像部2a上の無電解めっき触媒5を除去し、硬化画像部2aの一部またはその大半を残した状態で、無電解めっき処理を施し、その後必要に応じて硬化画像部2aを除去しても良い。この実施形態においても本発明のハロゲン化銀溶剤を含有する処理剤での定着処理は、上述の(ハ)の形態が形成された後であって、無電解めっき処理が行われる前に実施される。
【0040】
一般に高い導電性が求められる場合、写真感光材料を利用した銀塩方式により得られた導電性パターンの導電性では不十分である場合があり、これを補うために導電性パターンの厚みを高めるための処理が実施される。電気的につながったパターンであれば電解めっきを施すことで、あるいは無電解めっき処理を施した後に電解めっきを施すことで、その導電性を高めることが可能である。一方、孤立するパターンが存在する場合、電解めっきにより導電性を高めることができないため厚付け用である高温浴の無電解めっき浴での処理が必要となる。しかしながら厚付け用の無電解めっき浴を使用した場合、導電性パターン以外の部分にめっきされた金属が析出してしまう問題があった。この理由は定かではないが、硬化現像により得られた硬化画像部中になお存在すると推測される未現像のハロゲン化銀粒子、または硬化画像部中になお存在すると推測される銀イオンの影響により、更には除去された未硬化部にになお存在すると推測される未現像のハロゲン化銀粒子あるいは銀イオンの影響により、これらが厚付け用の無電解めっき浴中で活性化されて触媒となり、導電性パターン以外の部分にめっきされた金属が析出するものと考えられる。
【0041】
本発明者らは上記推測に基づき鋭意検討した結果、(A)画像状露光と(B)硬化現像処理に引き続き(C)未硬化部の除去をすることで得られた上述の図1(ハ)の形態が形成された後であって、無電解めっき処理が行われる前に、ハロゲン化銀溶剤を含有する処理剤で定着処理を施すことで導電性を低下させることなく、好ましくない析出金属を抑制できることを見出した。本発明の定着処理は、前記図1(ハ)の形態が形成された後であって(D)無電解めっき触媒5の付与が行われるまでの期間、(D)無電解めっき触媒5の付与が行われた後であって(E)硬化画像部2aが除去されるまでの期間、あるいは(E)硬化画像部2aが除去された後であって無電解めっき処理が行われる前の期間であれば、いずれの期間でもその優れた効果が得られる。本発明の定着処理の好ましい実施形態としては、(E)硬化画像部の除去に用いる酵素含有処理液にハロゲン化銀溶剤を含有せしめることで、硬化画像部の除去と共に定着処理を施すことにより処理工程の増加を伴うことなく、本発明の効果を得ることが可能となる。なお本発明でいう定着処理とは未現像のハロゲン化銀および銀イオンを溶解除去する処理工程のことをいう。
【0042】
本発明の定着処理に用いる定着液としては、公知の銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができ、「写真の化学」(笹井著、(株)写真工業出版社)p321記載の定着液などが挙げられる。
【0043】
当該定着液はハロゲン化銀溶剤を含有しており、ハロゲン化銀溶剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、1,10−ジチア−18−クラウン−6、2,2′−チオジエタノールなどのチオエーテル類、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸およびその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0044】
これらのハロゲン化銀溶剤の中では、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンの例としては、例えばN−アミノエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、N−エチル−2,2′−イミノジエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。また、チオシアン酸塩についてはハロゲン化銀に対する溶解能力が高いが、人体に対する安全性の観点から使用することは好ましくない。
【0045】
これらのハロゲン化銀溶剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。また、添加量としてはハロゲン化銀溶剤の合計で、0.1〜300g/lが好ましく、より好ましくは1〜200g/lの範囲である。
【0046】
本発明による定着液には、前述の現像主薬およびまたは補助現像主薬など、ハロゲン化銀または銀イオンを還元することができる還元剤を実質的に含有しないことが望ましい。ここで実質的に含有しないとは、還元剤の含有量が0.1g/l未満であることを意味する。
【0047】
本発明による定着液には、その他にも保恒剤として亜硫酸塩、重亜硫酸塩、pH緩衝剤として酢酸、ホウ酸アミン、リン酸塩などを含むことができる。また、硬膜剤として水溶性アルミニウム(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、カリ明ばん等)、アルミニウムの沈殿防止剤として二塩基酸(例えば、酒石酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム等)または三塩基酸(クエン酸ナトリウム、クエン酸リチウム、クエン酸カリウム等)も含有させることができる。定着処理温度は通常10℃から45℃の間で選ばれるが、より好ましくは25〜40℃である。
【0048】
前記図1の(ホ)を得るために用いる硬化画像部を除去する処理液としてはハロゲン化銀乳剤層を構成するバインダーに作用できる酵素を含有する。例えば、通常ハロゲン化銀乳剤にはゼラチンが水溶性バインダーとして用いられるが、この場合ゼラチンが蛋白質であることから蛋白分解酵素を用いる。またセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースをバインダーに用いる場合はセルロース分解酵素を用いる必要がある。その他使用するバインダーに応じて使用する分解酵素を使い分ける必要がある。
【0049】
本発明において蛋白質分解酵素を用いる場合は、植物性または動物性酵素で公知のものが用いられる。例えば、ペプシン、レンニン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、フィシン、トロンビン、レニン、コラゲナーゼ、ブロメライン、細菌プロテアーゼ(例えば、長瀬産業(株)製のビオプラーゼ)等が挙げられる。この中でも特に、トリプシン、パパイン、フィシン、細菌プロテアーゼが好ましい。
【0050】
本発明において用いるその他の酵素としては各種公知の酵素が使え、例えばアミラーゼ、イソアミラーゼ、ウルコアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等があり、ハロゲン化銀乳剤に使用するバインダーに応じて用いることができる。
【0051】
本発明において酵素処理液には上記酵素単独で用いても良いし、複数を混合して使用しても良い。処理液中の酵素の含有量は0.5〜50g/l程度が適当である。また酵素処理液は、前述したように処理工程の増加を伴うことなく、本発明の効果を得るためには前述の定着液が含有するハロゲン化銀溶剤を含有することもできる。なおハロゲン化銀溶剤量としては、前述した定着液の添加量と同様である。硬化画像部の除去にあたっては、例えば蛋白分解酵素を用いる場合には、10〜80℃の蛋白分解酵素含有溶液中に少なくとも60秒以上、好ましくは90秒以上浸漬することで硬化画像部を分解除去することが可能である。
【0052】
次に無電解めっき処理について説明する。めっき処理には、電解法と無電解法があるが、本発明において定着処理の後に行われるめっき処理は、無電解めっき法である。無電解めっき技術に関しては「無電解めっき」(電気鍍金研究会編、日刊工業新聞社、1994年)に記載されている。本発明の無電解めっきは、ニッケルや銅などの金属イオンが還元剤によって還元析出し、この析出反応が連続的に進行してめっき膜が形成される、いわゆる自己触媒型化学還元めっきである。今日工業的に多く使用されているのはニッケル−リンや銅を利用した無電解めっきであり、本発明はいずれのものにも効果がある。
【0053】
本発明は前述のように、高い導電性を得るために利用する厚付け用の無電解めっき浴を用いた際に発生する問題を改善するものである。一般的な厚付け用無電解めっき浴は金属析出速度の向上と皮膜の機械的な特性を改善することを目的として高温タイプの無電解めっき浴として使用される。厚付け用の無電解めっき浴とはこのような高温タイプの無電解めっき浴のことであり、金属イオンと安定な錯化剤を含有し、50℃以上の高温のめっき浴を用いた無電解めっき浴を意味する。
【0054】
本発明における無電解銅めっき液には硫酸銅や塩化銅など銅の供給源、ホルマリンやグリオキシル酸、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボランなど還元剤、EDTAやジエチレントリアミン5酢酸、ロシェル塩、グリセロール、メソ−エリスリトール、アドニトール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ2酢酸、t−1,2−シクロヘキサンジアミン4酢酸、1,3−ジアミノプロパン−2−オール,グリコールエーテルジアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の銅の錯化剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのpH調整剤などが含有される。更にその他に浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジル、o−フェナントロリン、ネオクプロイン、チオ尿素、シアン化物などを含有させることもできる。
【0055】
無電解銅めっきでは前述の通り種々の錯化剤を用いることができるが、錯化剤の種類により酸化銅が共析し、導電性に大きく影響したり、あるいはトリエタノールアミンなど銅イオンとの錯安定定数の低い錯化剤は銅が沈析しやすいため、安定しためっき液やめっき補充液が作り難いなどということが知られている。従って工業的に通常用いられる錯化剤は限られており、本発明においても同様の理由でめっき液の組成として特に錯化剤の選択は重要である。特に好ましい錯化剤としては銅錯体の安定定数の大きいEDTAやジエチレントリアミン5酢酸などが挙げられ、このような好ましい錯化剤を用いためっき液としては例えばプリント基板の作製に使用される高温タイプの無電解銅めっきがある。高温タイプの無電解銅めっきの手法については「無電解めっき 基礎と応用」(電気鍍金研究会編)p105などに詳しく記載されている。高温タイプのめっきでは通常50〜70℃で処理し、処理時間は無電解めっき処理後に電解めっき処理を施すかどうかで変わってくるが、通常1〜30分、好ましくは3〜20分無電解めっき処理を行うことで本発明の目的を達することができる。
【0056】
めっき浴は自身で調製しても良いが、メルテックス(株)や奥野製薬工業(株)などから市販されているものが安定に用いられる。まためっき液は安定性を増すためエアレーションを行う事が好ましい。
【0057】
以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。なお、記載中特に断りのない限り%は質量基準である。
【実施例1】
【0058】
本発明に使用される写真感光材料を作製するために、裏面にはハレーション防止用途といて着色されためっき用マスキングフィルムを張り合わせた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに下記内容の下引き層を塗布し、乾燥した後、50℃で1日加温した。
【0059】
<下引き層/1m2当たり>
ハイドランWLS210(大日本インキ化学工業社製ポリカーボネート系ウレタンラテックス、平均粒径:0.05μm) 1.9g(固形分0.66g)
ゼラチン 0.25g
シーホスターKE30P(日本触媒社製 球状微粉体)
5mg
デナコールEX614(ナガセケムテックス社製ソルビトールポリグリシジルエーテル)
10mg
界面活性剤(下記S1) 3mg
水にて固形分が5.5%になるように調製した。
【0060】
【化1】

【0061】
臭化銀65.5mol%、塩化銀34.0mol%、ヨウ化銀0.5mol%の組成を有する、ヨウ塩臭化銀結晶を有する感光性ハロゲン化銀乳剤を中性シングルジェット法により調製した。該ヨウ塩臭化銀ゼラチン乳剤の平均粒径は0.45μmであった。続いて該感光性ハロゲン化銀乳剤にゼラチンを加え、次いでチオ硫酸ナトリウムを添加して化学増感を行った。更に、安定剤、界面活性剤を加えた後、上記、下引き層を塗布したフィルム上にこれを塗布、乾燥し、感光性ハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を作製した。なお、ハロゲン化銀乳剤層は銀(硝酸銀換算)1.0gに対してゼラチンを1.0g含有し、感光性ハロゲン化銀乳剤の塗布銀量1.0g(硝酸銀換算)になるように感光性ハロゲン化銀層を塗布し写真感光材料を得た。
【0062】
次いで、得られた写真感光材料を、20μmのラインおよび200μmのスペースを有するネガ原稿を密着して露光を行った。露光済みの写真感光材料を下記硬化現像液(20℃)に10秒間浸した後、直ちに、約35℃の温水シャワーで洗浄した所、マスクフィルム画像に対して反転した、20μmのスペースおよび200μmのラインの硬化画像が得られた。
【0063】
<硬化現像液>
炭酸ナトリウム 30g
亜硫酸ナトリウム 1g
硫酸ナトリウム 100g
カテコール 2g
脱イオン水にて1000mlとした。
pH(25℃)は10.7に調整した。
【0064】
画像状露光、硬化現像処理、および未硬化部の除去を行って得られた上記試料について下記定着液A1にて25℃1分間浸積処理を実施した。
【0065】
<定着液A1>
モノエタノールアミン 100g
更に水を加えて全量を1lとした。
【0066】
これらを更に無電解めっき触媒を含有するメルテックス(株)製のめっき前処理液(下記条件)で浸漬処理を行った。
1)エンプレートアクチベーター444
(パラジウム−錫錯体含有液/触媒付与) 室温 3分
2)メルプレートPA−360 (密着増強) 〃 〃
3)水洗 〃 1分
【0067】
次に上記めっき前処理液による浸漬処理に続いて基板上の硬化画像部の除去として、酵素処理液として40℃の1%ビオプラーゼ溶液(ナガセケムテックス社製プロテアーゼ)に3分間漬けて硬化画像部を分解し、約35℃の温水シャワーにて洗浄することにより、硬化画像部を除去した。更に、メルテックス社製の厚付け用無電解銅めっき液Cu−5100を標準希釈で建浴し、めっき厚み5μmになるように60℃15分間行い、導電性パターン材料を得た。
【0068】
こうして原稿と同じパターンが得られた導電性材料の裏面マスクキングフィルムをはがし全光線透過率をスガ試験機製ダブルビーム方式ヘーズコンピューターで網目パターン状銀薄膜の部分の全光線透過率を測定した。この結果を表1に示す。また非画像部の状態を目視で観察した結果を表1に示す。表1中、○は非画像部に銅の析出が全く認められない、△は僅かに析出が認められるが不快感を与えない、×は析出が認められ不快感を与えるレベルであることを示す。また、表面抵抗値を三菱化学社製Loresta−GP MCP−T610を用いて測定した結果も表1に示す。
【実施例2】
【0069】
上記実施例1と同様に、画像状露光、硬化現像処理、および未硬化部の除去を行って得られた試料について実施例1で使用した定着液A1を下記定着液A2に変えた以外は実施例1と同様にして導電性材料を得た。この導電性材料を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0070】
<定着液A2>
チオ硫酸ナトリウム 100g
更に水を加えて全量を1lとする。
【実施例3】
【0071】
上記実施例1と同様に、画像状露光、硬化現像処理、および未硬化部の除去を行って得られた試料について実施例1で使用した定着液A1を下記定着液A3に変えた以外は実施例1と同様にして導電性材料を得た。この導電性材料を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0072】
<定着液A3>
チオ硫酸ナトリウム 240g
28%酢酸 48ml
ホウ酸 7.5g
粉末カリ明ばん 15g
脱イオン水にて全量を1lとする。
【実施例4】
【0073】
上記実施例1において定着液A1による定着処理を行わず、未硬化部の除去の後に、めっき前処理液による浸漬処理および基板上の硬化画像部の除去をした後に、定着液A1で25℃1分間浸漬処理を実施した以外は実施例1と同様にして導電性材料を得た。この導電性材料を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0074】
上記実施例4と同様に、めっき前処理液による浸漬処理および基板上の硬化画像部の除去をした後に、実施例4で使用した定着液A1を定着液A2に変えた以外は実施例4と同様にして導電性材料を得た。この導電性材料を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【実施例6】
【0075】
上記実施例4と同様に、めっき前処理液による浸漬処理および基板上の硬化画像部の除去をした後に、実施例4で使用した定着液A1を定着液A3に変えた以外は実施例4と同様にして導電性材料を得た。この導電性材料を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0076】
(比較例1)
上記実施例1において定着液A1による定着処理を実施しない以外は実施例1同様にして導電性材料を得た。この導電性材料を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【実施例7】
【0077】
上記実施例1と同様に、未硬化部を除去した後に定着液A1による定着処理を実施し、めっき前処理液に浸漬処理を行った後に、酵素処理液である1%ビオプラーゼ溶液にハロゲン化銀溶剤として、チオ硫酸ナトリウム50gを添加した以外は実施例1と同様にして導電性材料を得た。この導電性材料を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【実施例8】
【0078】
上記比較例1において、酵素処理液である1%ビオプラーゼ溶液にハロゲン化銀溶剤として、チオ硫酸ナトリウム50gを添加し、定着処理および硬化画像部の除去を同時に実施した以外は比較例1と同様にして導電性材料を得た。この導電性材料を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【実施例9】
【0079】
上記実施例2と同様に、未硬化部の除去した後に定着液A2による定着処理を実施し、めっき前処理液に浸漬処理を行った後に、酵素処理液である1%ビオプラーゼ溶液にハロゲン化銀溶剤として、トリエタノールアミン50gを添加した以外は実施例1と同様にして導電性材料を得た。この導電性材料を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【実施例10】
【0080】
上記比較例1において、酵素処理液である1%ビオプラーゼ溶液にハロゲン化銀溶剤として、トリエタノールアミン50gを添加し、定着処理および硬化画像部の除去を同時に実施した以外は比較例1と同様にして導電性材料を得た。この導電性材料を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【実施例11】
【0081】
上記実施例1において、下引き層を設けないで感光性ハロゲン化銀乳剤層を塗布し作製した写真感光材料を用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性材料を得た。この導電性材料を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
以上の結果より本発明は、高精細な配線パターンで且つ、高い導電性が求められる用途の導電性パターンの形成方法において、導電性を低下させることなく、且つ厚付け無電解めっき浴を用いてめっきした際の導電性パターン以外の部分に発生する好ましくない金属の析出を抑制していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の導電性パターン形成プロセスの実施形態の一例を示す模式図
【符号の説明】
【0085】
1a 基板
2 感光性ハロゲン化銀乳剤層
2a 硬化画像部(乳剤層ゼラチン架橋部)
3 無電解めっき部
4 マスクフィルム
5 無電解めっき触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも一層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を有する写真感光材料を、(A)画像状露光、(B)硬化現像処理、(C)未硬化部の除去を実施した後、無電解めっき処理を施すまでの処理工程の少なくとも一工程で、ハロゲン化銀溶剤を含有する処理剤で定着処理することを特徴とする導電性パターンの形成方法。
【請求項2】
前記、定着処理が(C)未硬化部の除去、(D)無電解めっき触媒の付与、の後に施される(E)硬化画像部の除去である請求項1記載の導電性パターンの形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−218303(P2009−218303A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58894(P2008−58894)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】