説明

導電性フィルム

【課題】 表面反射が抑制されていて透明性に優れ、液晶ディスプレイ(LCD)透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極や電磁波シールド材として好適な導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】 基材フィルムの少なくとも片面に、屈折率が1.63〜1.93の中屈折率層および透明導電塗膜層をこの順に積層し、表面抵抗値が10〜5×10Ω/□、波長550nmにおける表面反射率が4%以下である導電性フィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性フィルムに関するものである。さらに詳しくは、透明性および導電性だけでなくその表面反射防止性にも優れ、液晶ディスプレイ(LCD)透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極や電磁波シールド材として好適に使用することができる透明導電性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として透明導電性フィルムが好適に用いられている。かかる透明導電性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等の透明フィルム表面の少なくとも片面に、酸化インジウム(In)、酸化錫(SnO)、InとSnOの混合焼結体(ITO)等を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスによって設けたものがよく知られている。
【0003】
しかし、通常透明導電性フィルムは、ウェブ状での連続加工や打ち抜き加工があり、また、表面加工中も曲げられた状態で用いられたり、また保管されたりするため、上記ドライプロセスにより得られる透明導電性フィルムは、該加工工程や保管している間にクラックが発生して表面抵抗が増大したりすることがあった。
【0004】
一方、透明基材フィルムの上に導電性高分子を塗布すること(ウエットプロセス)により形成される透明導電塗膜層は、膜自体に柔軟性があり、クラックなどの問題は生じがたい。また、導電性高分子を塗布することによって透明導電性フィルムを得る方法は、ドライプロセスとは異なって製造コストが比較的安く、またコーティングスピードも一般的に速いので生産性に優れるという利点もある。このような導電性高分子の塗布によって得られる透明導電性フィルムは、これまで一般的に用いられてきたポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等は、開発の初期段階では高い導電性が得られないために帯電防止用途などに使用が限定されていたり、導電塗膜層自体の色相が問題となったりしていた。しかし、最近では製法の改良などによりこれらの問題も改善されてきている。例えば、3,4−ジアルコキシチオフェンをポリアニオン存在下で酸化重合することによって得られるポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンとからなる導電性高分子(特許文献1)は、近年の製法の改良(特許文献2および特許文献3)などにより、高い光線透過率を保ったまま非常に低い表面抵抗を発現している。
【0005】
しかしながら、これらの導電性高分子を透明導電塗膜層として用いた導電性フィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)透明タッチパネルなどに用いた場合、その光線透過率は未だ不足しており、さらなる改善が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開平1−313521号公報
【特許文献2】特開2002−193972号公報
【特許文献3】特開2003−286336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記背景技術を鑑みなされたもので、その目的は、表面反射が抑制され、優れた透明性を呈する導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、透明導電塗膜層と基材フィルムとの間に特定の屈折率を有する中屈折率層を設けた場合に表面反射が十分抑制され、透明性がさらに向上した導電性フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
かくして本発明によれば、「基材フィルムの少なくとも片面に、屈折率が1.63〜1.93の中屈折率層および透明導電塗膜層がこの順で積層された導電性フィルムであって、該導電性フィルムの表面抵抗値が10〜5×10Ω/□、波長550nmにおける表面反射率が4%以下であることを特徴とする導電性フィルム。」が提供される。
【0010】
また好ましい態様として、該透明導電塗膜層が、下記一般式
【化1】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとから構成される導電性高分子を含有すること、
該中屈折率層が、チタンまたはジルコニウムのアルコキシド化合物を塗布して得られる金属酸化物塗膜であること、
基材フィルムと中屈折率層との間に、ポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド基とを有するアクリル樹脂を構成成分として含有するアンカーコート層を設けたこと、
の少なくともいずれか一つを具備する導電性フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性フィルムは、透明導電塗膜層と基材フィルムとの間に、特定の屈折率を有する中屈折率層が形成されているため、透明導電塗膜層の表面抵抗値に影響を与えることなく、光の表面反射率を低減させることができ、優れた透明性と導電性とを兼備した導電性フィルムを生産性よく提供することができる。また、本発明の透明導電性フィルムは表面反射率が抑制されていて透明性に優れているので、透明タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンス素子等の透明電極や電磁波シールド材として特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の導電性フィルムを、まず図面を用いて説明する。図1は、本発明の導電性フィルムの断面図、すなわち層構成の一例を示すものである。図1中、符号1は基材フィルム、符号2は中屈折率層、符号3は透明導電塗膜層を示す。図1から分かるように、本発明の導電性フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に中屈折率層が積層され、その上にさらに透明導電塗膜層が積層されたものである。このような構成を有するものであれば、例えばアンカーコート層等の他の機能層が、本発明の目的を損なわない限りにおいて形成されていてもよく、また、透明導電塗膜層を形成した面とは反対側にアンカーコート層、ハードコート層などが設けられていてもよい。
【0013】
このように本発明の透明導電性フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に、屈折率が1.63〜1.93、好ましくは1.65〜1.90の範囲である中屈折率層および透明導電塗膜層がこの順で積層されていることが必要である。例えば積層の順がこの逆になると表面抵抗値が高くなったり、反射率低減効果が低下したりするので好ましくない。
【0014】
さらに、上記の積層構造を有する本発明の透明導電性フィルムは、波長550nmにおける表面反射率が4%以下、好ましくは3%以下であることが必要である。該反射率が4%を超える場合には、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として用いたときに、透明性が不十分となる。なお、本発明の導電性フィルムの全光線透過率は、60%以上、好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上であることが望ましい。このような全光線透過率は、後述する基材フィルムおよび透明導電塗膜層として透明なものを選定すれば容易に調整できる。
【0015】
また、本発明の導電性フィルムの透明導電塗膜層の表面抵抗値は、10〜5×10Ω/□の範囲にあることが必要である。該表面抵抗値が上限を超えると、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として用いたときに、電極として十分に機能しなかったり、十分な電磁波シールド特性が得られなくなる。一方、下限未満にすることは製造工程が不安定になりやすくなるので好ましくない。好ましい表面抵抗値は10〜5×10Ω/□の範囲である。
【0016】
以下、本発明の導電性フィルムを形成する各層について、さらに詳述する。
本発明における中屈折率層は、前記屈折率の要件を満足するものであれば特に制限されないが、チタンまたはジルコニウムのアルコキシドを塗布して得られる金属酸化物塗膜からなることが好ましい。すなわち、チタンまたはジルコニウムのアルコキシドを溶剤で希釈し、塗布、乾燥工程中に加水分解反応および縮合反応をさせて形成する金属酸化物塗膜が好ましい。なおこの金属酸化物膜には、平均粒径が1〜100nmの粒子がアルコキシド加水分解物に対して重量比で0.1〜25%分散されていることが好ましい。かくすることにより、金属酸化物膜の表面に微細な凹凸が形成され、本発明の導電性フィルムをロール状に巻き取った際にブロッキングが抑えられ、きれいに巻き取ることができるようになる。
【0017】
チタンまたはジルコニウムのアルコキシドとしては、具体的にはチタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−i−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec−ブトキシド、チタンテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−i−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、もしくはそれらの2〜6量体が挙げられる。さらにはジエトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジプロポキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジブトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジエトキシジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジプロポキシジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジブトキシジルコニウムビスアセチルアセトネート等のキレート化合物も挙げることができる。
【0018】
チタンまたはジルコニウムのアルコキシドに分散させる粒子としては、その平均粒径が1〜100nmの範囲にあれば、その粒度分布のピークが一つであっても、2つ以上であっても構わない。また、この粒子は、溶媒に分散させた状態で加えるのが好ましいが、加えた後の分散が十分であれば、特に分散させる方法に制限はない。
【0019】
粒子の種類としては、チタン、珪素、錫、鉄、アルミニウム、銅、マグネシウム、インジウム、アンチモン、マンガン、セリウム、イットリウム、亜鉛、ジルコニウムの金属単体もしくはこれらの酸化物であることが好ましく、これらは2種以上を併用することもできる。こうした材料は、透明性、硬度、あるいは安定性の点で優れている。
【0020】
また粒子の添加量は、上記のとおりチタンのアルコキシドの重量に対し、0.1〜25重量%の範囲であればよいが、特に好ましい範囲は0.3〜5重量%である。この添加量が多くなりすぎるとヘーズが高くなって透明性が低下する場合があり、逆に少なすぎると滑りが悪くなってブロッキングを起こしやすくなる場合がある。
【0021】
上記アルコキシドを溶解する溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、リグロイン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、ブタノール、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の飽和炭化水素、アルコール、ケトン、エステル類、ハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素があげられ、これらは併用してもかまわない。
【0022】
中屈折率層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などにより、適正な膜厚が得られるように塗液の濃度等を調整して塗布すればよい。
【0023】
なお、かかる中屈折率層を形成するための塗液を基材フィルム上に塗布する際には、必要に応じて、さらに密着性・塗工性を向上させるための予備処理として、アンカーコート層を設けてもよく、またコロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理を施してもよい。
また、該中屈折率層の膜厚は特には限定されないが、好ましくは0.01〜0.3μm、特に好ましくは0.02〜0.2μmである。
【0024】
次に、上記の中屈折率層の上に設ける透明導電塗膜層は、表面抵抗を下げられ、かつ透明性も具備するものであれば特に制限されないが、下記一般式
【化2】

で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェン(以下、“ポリ(3,4−ジ置換チオフェン)”と称することがある)と、ポリアニオンとから構成される導電性高分子からなることが好ましい。すなわち、この導電性高分子はポリ(3,4−ジ置換チオフェン)とポリアニオンとの複合化合物であることが好ましい。
【0025】
この導電性高分子を構成するポリ(3,4−ジ置換チオフェン)のRおよびRは相互に独立して水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数が1〜12のアルキレン基を表す。RおよびRが一緒になって形成される、置換基を有してもよい炭素数が1〜12のアルキレン基の代表例としては、1,2−アルキレン基(例えば、1,2−シクロヘキシレンおよび2,3−ブチレンなど)があげられる。また、RおよびRが一緒になって形成される炭素数が1〜12のアルキレン基の好適な例としては、メチレン、1,2−エチレンおよび1,3−プロピレン基があげられ、1,2−エチレン基が特に好適である。具体例としては、アルキル置換されていてもよいメチレン基、炭素数1〜12のアルキル基もしくはフェニル基で置換されていてもよい1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基が挙げられる。
【0026】
一方、該導電性高分子を構成するポリアニオンとしては、高分子状カルボン酸類(例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸など)、高分子状スルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸など)などがあげられる。これらの高分子状カルボン酸およびスルホン酸類は、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸類と他の重合可能な低分子化合物、例えばアクリレート類およびスチレンなどとの共重合体であってもよい。これらポリアニオンの中でもポリスチレンスルホン酸およびその全べてもしくは一部が金属塩であるものが好ましく用いられる。
【0027】
本発明における透明導電塗膜層を形成するためのコーティング組成物は、上述の導電性高分子を主成分として水に分散させた分散液を用いるが、必要に応じてポリエステル、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラールなどの適当な有機高分子材料をバインダーとして添加することができる。
【0028】
さらに必要に応じて、バインダーを溶解させる目的、もしくは基材フィルムへの濡れ性を改善する目的、固形分濃度を調整する目的などで、水と相溶性のある適当な溶媒を添加することができる。例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)、アミド類(ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド)などが好ましく用いられる。
【0029】
また得られる透明導電塗膜層の塗膜強度を向上させる目的で、さらにアルコキシシランまたはアシロキシシランを添加してもよい。これらのシラン化合物は、加水分解され、その後の縮合反応された反応生成物の形態で透明導電塗膜層中に存在する。これらのシラン化合物としては、例えばメチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどがあげられる。なかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシランなどのテトラアルコキシシランおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコキシ基以外の反応性官能基を有するトリアルコキシシランが好ましく、特にグリシドキシ基を有するトリアルコキシシランが好ましい。
【0030】
このようなシラン化合物の加水分解/縮合を効率よく進行させるためには触媒を併用することが好ましい。触媒としては酸性触媒または塩基性触媒のいずれをも用いることができる。酸性触媒としては、酢酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、しゅう酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸等が好適である。一方塩基性触媒としてはアンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の有機アミン化合物、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物などが好適である。
【0031】
さらに、上記の透明導電塗膜層形成用のコーティング組成物には、基材フィルムに対する濡れ性を向上させる目的で、少量の界面活性剤を加えてもよい。好ましい界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、およびフッ素系界面活性剤(例えばフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル4級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなど)があげられる。
【0032】
透明導電塗膜層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などが好ましく挙げられる。熱硬化性樹脂をバインダーとして併用した場合には、透明導電塗膜層の塗設はそれぞれの成分を含む塗液を基材フィルムに塗布し、加熱乾燥させて塗膜を形成させる。加熱条件としては80〜160℃で10〜120秒間、特に100〜150℃で20〜60秒間が好ましい。UV硬化性樹脂またはEB硬化性樹脂をバインダーとして併用した場合には、一般的には予備乾燥を行った後、紫外線照射または電子線照射を行なう。
【0033】
また、かかる透明導電塗膜層を形成するための塗液を中屈折率層上に塗布する際には、必要に応じて、さらに密着性・塗工性を向上させるための予備処理として、コロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理を施しても構わない。
【0034】
透明導電塗膜層の厚みは0.01〜0.30μmの範囲、特に0.02〜0.25μmの範囲であることが好ましい。該塗膜の厚さが薄すぎると十分な導電性が得られないことがあり、逆に厚すぎると、透過率が不足したり、ブロッキングを起こしたりすることがある。
【0035】
本発明においては、必要に応じて、前記中屈折率層と基材フィルムとの間にアンカーコート層を設けてもよい。かかるアンカーコート層を形成する成分は、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール/ポリエチレン共重合体など、透明性を備えるものであれば特に制限はされないが、密着性の観点から、特にポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂の両方を構成成分とする高分子バインダーが好ましい。
【0036】
ここで用いられるポリエステル樹脂も特に制限はなく、以下に示す多塩基酸とポリオールとからなるポリエステルを例示することができるが、特に水(多少の有機溶剤を含有していてもよい)に可溶性または分散性のポリエステルが好ましい。
【0037】
ポリエステル樹脂の多塩基酸成分としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等を挙げることができる。なかでも、これら酸成分を2種類以上含有する共重合ポリエステルが好ましい。なお、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分や、p−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
【0038】
またポリオール成分としては例えば、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0039】
一方オキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂も、水(多少の有機溶剤を含有していてもよい)に可溶性または分散性のアクリル樹脂が好ましい。かかるオキサゾリン基とポリアルキレンオキシ鎖とを有するアクリル樹脂としては例えば、以下に示すモノマーを共重合成分として含むものをあげることができる。
【0040】
まずオキサゾリン基を有するモノマーとしては、例えば2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中で2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手しやすく好適である。かかるオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を用いることによりアンカーコート層の凝集力が向上し、透明導電塗膜層との密着性がより強固になる。さらにフィルム製膜工程内や透明導電塗膜層加工工程における金属ロールに対する耐擦傷性を基材フィルム表面に付与できる。なお、オキサゾリン基を含有するモノマーの含有量は、該アクリル樹脂中の含有量として2〜40重量%、好ましくは3〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0041】
次にポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたものを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖はポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド等を挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は3〜100であることが好ましい。かかるポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を用いることによりアンカーコート層中のポリエステル樹脂とアクリル樹脂の相溶性がポリアクリレンオキシド鎖を含有しないアクリル樹脂と比較してよくなり、アンカーコート層の透明性を向上させることができる。ここでポリアルキレンオキシド鎖の繰返し単位が3より小さいとポリエステル樹脂とアクリル樹脂との相溶性が低下してアンカーコート層の透明性が悪くなり、逆に100より大きいとアンカーコート層の耐湿熱性が下がり、高湿度、高温下での透明導電塗膜層との密着性が悪化する。なお、ポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーの含有量は、該アクリル樹脂中の含有量として3〜40重量%、好ましくは4〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0042】
アクリル樹脂のその他の共重合成分としては、例えば以下のモノマーを挙げることができる。すなわちアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシ基またはその塩を有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アクリロイルモルフォリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマル酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等であるが、これらのモノマーに限定されるものではない。
【0043】
アンカーコート層を形成するポリエステル樹脂のアンカーコート層中の含有割合は5〜95重量%であることが好ましく、特に50〜90重量%であることが好ましい。アンカーコート層を形成するオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂のアンカーコート層中の含有割合は5〜90重量%であることが好ましく、特に10〜50重量%であることが好ましい。ポリエステル樹脂が95重量%を超える、もしくはオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂が5重量%未満になるとアンカーコート層の凝集力が低下し、透明導電塗膜層の密着性が不十分になる場合がある。
【0044】
上記アンカーコート層(以下「塗膜」ということがある)を基材フィルム上に形成させるために、上記の成分を水溶液、水分散液または乳化液等の水性塗液の形態として使用することが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記成分以外に他の成分、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を添加することもできる。特に滑剤を添加することにより、耐ブロッキング性をさらに良好なものとすることができる。
【0045】
アンカーコート層の塗工に用いる水性塗液の固形分濃度は通常20重量%以下であるが特に1〜10重量%であることが好ましい。この割合が1重量%未満であると、基材フィルムへの濡れ性が不足することがあり、一方20重量%を超えると塗液の貯蔵安定性やアンカーコート層の外観が悪化することがある。
【0046】
アンカーコート層の膜厚は、十分な密着向上効果を発現しかつ透明性を損なわない範囲であれば特に制限されないが、通常は0.001〜0.10μm、好ましくは0.005〜0.090μm、特に好ましくは0.01〜0.085μmの範囲が適当ある。
【0047】
次に本発明における基材フィルムは特に制限する必要はないが、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート(以下、PETと称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下、PENと称することがある。)などのポリエステル(全酸成分を基準として20モル%以下、好ましくは10モル%以下の第3成分を共重合していてもよい)やアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボニル基等の官能基で一部変性した樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などからなるフィルムが好適である。これらの基材フィルムのうち、機械特性や透明性、生産コストの点からポリエステル(PET、PENおよびそれらの共重合ポリエステル)フィルムが特に好ましい。基材フィルムの厚みも特に制限されないが、500μm以下が好ましい。500μmより厚い場合には剛性が強すぎて、得られたフィルムをディスプレイなどに貼付ける際の取扱い性が低下しやすい。
【0048】
基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合には、アンカーコート層を設けるための上述の水性塗料塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましい。特に配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。
【0049】
ここで配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向、また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。
【0050】
なかでも未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムにアンカーコート層を形成するための水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0051】
アンカーコート層を形成するための水性塗液を基材フィルムに塗布する際には、密着性や塗布性を向上させるための予備処理として、フィルム表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
【0052】
かかる界面活性剤は、上記アンカーコート層を形成する水性塗液の基材フィルムへの濡れを促進するものであり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪族エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は塗膜を形成する組成物中に0.1〜10重量%含まれていることが好ましい。
【0053】
アンカーコート層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用すればよい。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などを例示することができ、これらの方法を単独または組み合わせて用いることができる。なお、塗膜は必要に応じてフィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0054】
本発明の導電性フィルムは、上述のとおり基材フィルムの少なくとも片面に中屈折率層および透明導電塗膜層がこの順序で積層されていることが必要であるが、透明導電塗膜層が形成される側と反対の面には必要に応じてアンカーコート層、ハードコート層などの塗膜を設けることもできる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法にしたがった。
(1)反射率、膜厚および塗膜の屈折率
反射率については、反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名「FE−3000」)を用いて試料導電性フィルムの透明導電塗膜層側の波長300〜800nmにおける反射率を測定した。
一方中屈折率層および透明導電塗膜層の膜厚と屈折率は、上述の反射率測定値について代表的な屈折率の波長分散の近似式としてn−k Cauchyの分散式を引用し、スペクトルの実測値とフィッティングさせることにより求めた。
(2)表面抵抗
三菱化学社製Lorester MCP−T600を用いて、JIS K7194に準拠して測定した。測定は任意の箇所を5回測定し、それらの平均値とした。
【0056】
[実施例1]
<アンカーコート層形成用塗液の調整>
ポリエステル:酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸65モル%/イソフタル酸30モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=80℃、平均分子量13000)。
【0057】
なお、かかるポリエステルは特開平6−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル44部、イソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール34部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃までに上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。
【0058】
アクリル:メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されている(Tg=50℃)。
【0059】
なお、かかるアクリルは特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち、四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、さらにモノマー類であるメタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート酸40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるように調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%のアクリルの水分散体を得た。
【0060】
添加剤:シリカフィラー(平均粒系100nm)(日産化学株式会社製:商品名スノーテックスZL)
濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名ナロアクティーN−70)
【0061】
<基材フィルムおよびアンカーコート層の形成>
溶融ポリエチレンテレフタレート(〔η〕=0.62dl/g、Tg=78℃)をダイより押し出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍延伸した後、その両面に上述のポリエステル60部、アクリル30部、添加剤5部、濡れ剤5部からなる塗液をイオン交換水で濃度8%に調整し、ロールコーターで均一に塗布した。次いで塗工後にこのフィルムを横方向に125℃で3.6倍延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させ熱固定を行い、アンカーコート層が形成された、厚さ188μmの基材フィルムを得た。なお、アンカーコート層の厚さは0.04μmであった。
【0062】
<中屈折率層の形成>
得られたアンカーコート層が形成された基材フィルムの上に、テトラブチルチタネートの4量体(日本曹達製TBT B?4 )のリグロイン/n?ブタノール(3/1)溶液に二酸化珪素粒子(日本エアロジル製AEROSIL R972 平均粒径20nm)をアルコキシドに対し0.5重量%添加し分散させたものをマイクログラビアコーティングにより塗工し、150℃で2分間乾燥して厚さ0.06μmになる膜を形成した。得られた中屈折率層の屈折率は1.83であった。
【0063】
<透明導電塗膜層の形成>
導電性ポリマーとしてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%を含んでなるポリマーの水分散体(BaytronP:バイエルAG製)97部に対して3部のジエチレングリコールを添加した塗液を、マイヤーバーを用いて上記のアンカーコート層を設けた基材フィルム上に塗工し、130℃で2分間の乾燥を行い、透明導電塗膜層を得た。得られた透明導電塗膜層の厚みは0.12μm、屈折率は1.50であった。得られた導電性フィルムの評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例2]
中屈折率層および透明導電塗膜層の厚みを表1に記載のとおり変更した以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0065】
[実施例3]
基材フィルムを形成する材料として溶融ポリエチレン−2,6−ナフタレート([η]=0.65dl/g、Tg=121℃)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍延伸した後、その両面に実施例1と同様に濃度8%の水性塗液をロールコーターで均一に塗布した。次いで塗工後にこのフィルムを横方向に125℃で3.6倍延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させ熱固定を行い、アンカーコート層が形成された、厚さ188μmの基材フィルムを得た。なお、アンカーコート層の厚さは0.05μmであった。中屈折率層および透明導電塗膜層の塗布については実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0066】
[実施例4]
アンカーコート層を形成しなかった以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。評価結果を表1に示す。
【0067】
[比較例1]
中屈折率層としてアクリル系HC(商品名 HC900: 大日精化製)をマイヤーバーを用いて塗工した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた中屈折率層の膜厚は0.05μm、屈折率は1.51であった。評価結果を表1に示す。
【0068】
[比較例2]
中屈折率層を形成しなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
上記表1からわかるように、透明導電塗膜層の下に特定の屈折率の層を設けることにより透明導電塗膜層の表面反射を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上に説明した本発明の導電性フィルムによれば、優れた導電性を維持しながら、表面反射が抑制されているために透明性を向上させることができ、特に透明タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンス素子等の透明電極や電磁波シールド材として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 基材フィルム
2 中屈折率層
3 透明導電塗膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に、屈折率が1.63〜1.93の中屈折率層および透明導電塗膜層がこの順で積層された導電性フィルムであって、該導電性フィルムの表面抵抗値が10〜5×10Ω/□、波長550nmにおける表面反射率が4%以下であることを特徴とする導電性フィルム。
【請求項2】
透明導電塗膜層が、下記一般式
【化1】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとからなる導電性高分子を含有する請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
中屈折率層が、チタンまたはジルコニウムのアルコキシド化合物を塗布して得られる金属酸化物塗膜である請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
基材フィルムと中屈折率層との間に、ポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂を構成成分として含有するアンカーコート層を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の導電性フィルム。
【請求項5】
基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートで構成される請求項1〜4のいずれかに記載の導電性フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−302562(P2006−302562A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119535(P2005−119535)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】