説明

導電性ポリマー材料、導電性ポリマー材料の製造方法及び電極材料

【課題】光耐久性、透明性、導電性、ヘイズに優れた導電性ポリマー材料、導電性ポリマー材料の製造方法、電極材料を提供する。
【解決手段】本発明の導電性ポリマー材料は、支持体10上に、少なくとも1層の導電性ポリマーを含有する層20と、少なくとも1層の酸性化合物又は還元剤を含む層30とが積層されてなる。前記導電性ポリマーは、好適にはポリチオフェン又はその誘導体であり、特にポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンであることが好適である。前記導電性ポリマーを含有する層20は、ポリスチレンスルホン酸を含有することが好ましい。前記酸性化合物又は還元剤は、ポリリン酸、ヒドロキシ化合物、カルボキシ化合物、スルホン酸化合物、チオエーテル化合物、スクシンイミド化合物、ポリオール化合物、ヒドロキサム酸化合物又はヒドロキシアミン化合物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ポリマー材料、導電性ポリマー材料の製造方法及び電極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、さらにエレクトロルミネッセンス(EL)素子などに代表される画像表示体(ディスプレイ)が、テレビ、コンピューターや近年普及してきた各種モバイル装置などの様々な分野で広く用いられるようになってきており、目覚しい発展を遂げている。一方、地球環境に配慮した脱化石エネルギーの1つとして太陽電池が注目され、太陽電池の更なる普及の要求に応えるべく、高機能化などに関する研究が求められている。このような表示素子や太陽電池には導電性膜が使用されている。
【0003】
ITO系導電性膜をはじめとする金属系材料を用いた導電性膜は、金属系材料を真空蒸着法やスパッタリング法などの気相法によって、ガラス基板上に製膜して製造するのが一般的である。携帯電話やモバイルなどの表示素子については軽量化が進められ、表示素子基板についてもガラスからプラスチックへの移行が求められている。プラスチック基板の導入で表示素子の重量は従来の半分以下となり、強度や耐衝撃性が著しく向上している。
【0004】
しかしながら、ITO系導電性膜ではガラス基板からプラスチックフィルムに代えることにより密着性が低下し、基材と形成された導電性膜とが剥がれやすいという問題があった。またITOなどの金属系材料は通常、スパッタなどの気相法を用いて成膜するため高価な製造装置を使用しなければならない。
【0005】
これらに代わる導電性材料として導電性ポリマーが知られている。導電性ポリマーを用いることで、導電性を発現する薄膜を塗布によって形成することが可能となり、安価に製造できるという利点を有する。また、導電性ポリマーで作られた電極はITO電極よりフレキシブルであり、脆性が低く、可撓性を有するものに使用しても破損し難い。そのため、特に高フレキシブル電極が必要とされるタッチスクリーンに、導電性ポリマーで作られた電極を適用すると、装置の寿命を延ばすことができるという利点をも有するものである。
【0006】
このような導電性ポリマーとしてポリアニオンを含むポリチオフェンが開発され、これを用いて導電性膜を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この導電性膜は耐久性がITO膜などに比較してやや弱く、ある用途に対しては実用上充分な耐久性を達成し得ないことが明らかになった。
【0007】
一方、透明性や導電性にも優れた導電性膜を得るため、ポリチオフェンにポリエチレングリコールを添加する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この技術では製造直後における導電性膜の透明性や導電性が改善されるものの、ある程度以上の光が照射された後では透明性および導電度が低下することが明らかとなった。導電性膜を表示装置などに適用する場合には、光耐久性の問題は重要である。
【0008】
これに対して、ポリチオフェンにポリリン酸や特定のフェノール化合物を添加した導電性膜が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この文献によれば、ポリリン酸等を添加することで光耐久性、即ち、光に暴露されたときの表面抵抗率の増大が抑えられるとされている。
【特許文献1】欧州特許第440957号明細書
【特許文献2】特開2006−282942号公報
【特許文献3】特開2006−505099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献3の技術によって確かに光耐久性が向上するものの、ポリチオフェン等の導電性ポリマーとポリリン酸又は特定のフェノール化合物とを混ぜ合わせると、場合によっては導電性ポリマーが凝集し、成膜したときに均一な膜が得られ難いことが明らかとなった。この凝集の結果、導電性膜の透明性も低下し(ヘイズが増大)、製造直後の表面抵抗率も増大していることが判明した。
そこで本発明の課題は、光耐久性、透明性、導電性、ヘイズに優れた導電性ポリマー材料、導電性ポリマー材料の製造方法、電極材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記状況に鑑みた本発明者らの鋭意研究により、特定のポリチオフェン等の導電性ポリマーを含む液にポリリン酸等の酸性化合物又は特定のフェノール化合物を添加すると導電性ポリマーの凝集が起こること、および酸性化合物や還元剤を導電性ポリマーを含有する層とは別の層に添加すると光耐久性向上の効果が奏されること、を知見として得、この知見に基づいてさらに検討し、本発明を完成するに至った。
なお、本発明において「光耐久性」とは、屋外光、もしくは例えばキセノンランプ光源などの光源で一定時間照射した後の透過率および表面抵抗率の変動をいい、この透過率および表面抵抗率の変動が小さいほど光耐久性に優れる。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0011】
<1> 支持体上に、少なくとも1層の導電性ポリマーを含有する層と、少なくとも1層の酸性化合物又は還元剤を含む層とが、積層されてなることを特徴とする導電性ポリマー材料である。
【0012】
<2> 前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン及びその誘導体から選択される少なくとも1つのポリマーであることを特徴とする前記<1>に記載の導電性ポリマー材料である。
【0013】
<3> 前記導電性ポリマーが、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンを含むことを特徴とする前記<2>に記載の導電性ポリマー材料である。
【0014】
<4> 前記導電性ポリマーを含有する層が、ポリスチレンスルホン酸を含有することを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0015】
<5> 前記酸性化合物が、ポリリン酸、ヒドロキシ化合物、カルボキシ化合物及びスルホン酸化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0016】
<6> 前記還元剤が、チオエーテル化合物、スクシンイミド化合物、ポリオール化合物化合物、ヒドロキサム酸化合物及びヒドロキシアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0017】
<7> 前記酸性化合物又は還元剤を含む層が、前記導電性ポリマーを含有する層よりも前記支持体から遠い側に設けられてなることを特徴とする前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料である。
【0018】
<8> 前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料を有する電極材料である。
【0019】
<9> 前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料の製造方法であって、
前記導電性ポリマーを含有する層及び酸性化合物又は還元剤を含む層のうち少なくとも2層を、同時重層塗布によって形成することを特徴とする導電性ポリマー材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光耐久性、透明性、導電性、ヘイズに優れた導電性ポリマー材料、導電性ポリマー材料の製造方法、電極材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0022】
<導電性ポリマー材料>
本発明の導電性ポリマー材料は少なくとも、(1)支持体と、(2)導電性ポリマーを含有する層(以下「導電性ポリマー層」と称する場合がある)と、(3)酸性化合物又は還元剤を含む層(以下「ドープ状態安定化層」と称する場合がある)とを備え、(1)支持体上に(2)導電性ポリマーを含有する層と(3)酸性化合物又は還元剤を含む層とが積層されてなる。
【0023】
(1)支持体
本発明で使用し得る支持体としては、安定な板状物であって、必要な可撓性、強度、耐久性等を満たせばいずれのものも使用できる。また、ここで得られた導電性ポリマー材料を画像表示素子、太陽電池等に用いる場合には、高い透明性が要求されるため、表面が平滑な透明基材を用いることが好ましい。
【0024】
本発明において支持体の材質としては、ガラス、透明セラミックス、金属、プラスチックフィルム等が挙げられる。ガラス、透明セラミックスは、金属、プラスチックフィルムに比べ、柔軟性に欠ける。また、プラスチックフィルムは金属より安価であり、且つ柔軟性を有する。そこで本発明の支持体としては、プラスチックフィルムが好ましく、たとえば二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリアリレート等の樹脂を用いたフィルムなどが挙げられる。特に、ポリエステル系樹脂(以下、適宜、「ポリエステル」と称する)が好ましい。ポリエステルとしては、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルが好ましい。
【0025】
本発明に用い得るポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−フタレンジカルボキシレート等が挙げられる。このうち、入手の容易性、経済性及び効果の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が好ましい。
【0026】
また、フィルムの素材として、本発明の効果を損なわない限りにおいて、これらの共重合体の混合物、又はこれら重合体と小割合のその他の樹脂との混合物なども用いることができる。
【0027】
更に、このポリエステルフィルムの中には、滑り性を良くするために少量の無機又は有機の粒子、たとえば、酸化チタン、炭酸カルシュウム、シリカ、硫酸バリュウム、シリコーン等の如き無機フィラー、アクリル、ベンゾグアナミン、テフロン(登録商標)、エポキシ等の如き有機フィラー、ポリエチレングリコール(PEG)、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等の接着性向上剤や帯電防止剤を含有させることができる。
【0028】
本発明に用いるポリエステルフィルムは、前記の如きポリエステル樹脂を溶融押出しでフィルム状にし、縦及び横二軸延伸による配向結晶化及び熱処理による結晶化させることにより形成し得る。これらフィルムの製造方法及び条件は、公知の方法及び条件を適宜選択して用いることができる。
【0029】
支持体の厚みは目的により適宜選択することができるが、一般的には、5〜500μmの範囲である。
【0030】
(2)導電性ポリマー層
(導電性ポリマー)
本発明に用いられる導電性ポリマーとは、10−6s・cm−1以上の導電性を示すポリマーをいい、これに該当する高分子化合物であれば、いずれのものも使用することができる。より好ましくは、10−1s・cm−1以上の導電性を有する高分子化合物である。
【0031】
導電性ポリマーは、好ましくは芳香族炭素環または芳香族ヘテロ環を、単結合または二価以上の連結基で連結した非共役高分子または共役高分子である。
非共役高分子または共役高分子における前記芳香族炭素環としては、例えばベンゼン環が挙げられ、更に縮環を形成してもよく、置換基を有してもよい。
非共役高分子または共役高分子における前記芳香族ヘテロ環としては、例えばピリジン環、ビラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、ペンゾイミダゾール環、及びイミダゾピリジン環などが挙げられ、更に縮環を形成してもよく、置換基を有してもよい。
【0032】
また、非共役高分子または共役高分子における前記二価以上の連結基としては、炭素原子、珪素原子、窒素原子、硼素原子、酸素原子、硫黄原子、金属、金属イオンなどで形成される連結基が挙げられる。好ましくは、炭素原子、窒素原子、珪素原子、硼素原子、酸素原子、硫黄原子およびこれらの組み合わせから形成される基であり、組み合わせにより形成される基としては、置換もしくは無置換のメチレン基、カルボニル基、イミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、エステル基、アミド基、及びシリル基などが挙げられる。
【0033】
導電性ポリマーとしては、具体的には、例えば、置換および非置換の導電性ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセチレン、ポリピリジルビニレン、及びポリアジン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、また、目的に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、所望の導電性を達成できる範囲であれば、導電性を有しない他のポリマーとの混合物として用いることもでき、これらのモノマーと導電性を有しない他のモノマーとのコポリマーも用いることができる。
【0035】
導電性ポリマーとしては、共役高分子であることが更に好ましい。共役高分子の例としては、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリフルオレン、ポリアズレン、ポリ(パラフェニレンサルファイド)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、複鎖型共役系高分子(ポリペリナフタレンなど)、金属フタロシアニン系高分子、その他共役系高分子(ポリ(パラキシリレン)、及びポリ[α−(5,5’−ビチオフェンジイル)ベンジリデン]など)が挙げられる。
好ましくはポリ(パラフェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレンが挙げられ、より好ましくはポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェン、及びポリ(パラフェニレンビニレン)などが挙げられる。
これら共役高分子は置換基を有していてもよく、該置換基としては後述の一般式(I)においてR11として説明する置換基を挙げることができる。
【0036】
本発明では、特に導電性ポリマーが下記一般式(I)で表される部分構造を有すること(即ちポリチオフェン及びその誘導体であること)が、高い透明性と導電性を両立するという観点から好ましい。
【0037】
【化1】

【0038】
一般式(I)中、R11は置換基を表し、m11は0〜2の整数を表す。m11が2を表すとき、複数のR11は互いに同一であっても異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。n11は1以上の整数を表す。
【0039】
11で表される置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、2−オクテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノなどが挙げられる。)、
【0040】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、
【0041】
アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0042】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、
【0043】
ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12で、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。具体的には、例えばピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。
【0044】
上記R11で表される置換基は、さらに置換されていてもよい。また、置換基を複数有する場合、それらの置換基は互いに同じでも異なっていてもよく、また可能な場合は連結して環を形成してもよい。形成される環としては例えば、シクロアルキル環、ベンゼン環、チオフェン環、ジオキサン環、ジチアン環等が挙げられる。
【0045】
11で表される置換基として、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基である。特に好ましくは、m11が2のとき、2つのR11が環を形成したアルコキシ基、アルキルチオ基であり、ジオキサン環、ジチアン環を形成することが好適である。
【0046】
一般式(I)においてm11が1のとき、R11はアルキル基であることが好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がより好ましい。
また、R11が、アルキル基であるポリ(3−アルキルチオフェン)であるとき、隣り合ったチオフェン環との連結様式はすべて2−5’で連結した立体規則的なものと、2−2’、5−5’連結が含まれる立体不規則的なものがあるが、立体的不規則なものが好ましい。
【0047】
本発明では、導電性ポリマーとしては、高い透明性と導電性を両立するという観点から、3,4−エチレンジオキシ−ポリチオフェン(下記具体例化合物(6))であることが特に好ましい。
【0048】
一般式(I)で表されるポリチオフェン及びその誘導体は、J. Mater. Chem., 2005, 15, 2077〜2088.およびAdvanced Materials 2000, 12(7), page 481など公知の方法によって作製することができる。また、市販品として、Denatron P502(ナガセケミ社製)、 3,4-ethylenedioxythiophene (BAYTRON(登録商標)M V2)、3,4-polyethylenedioxythiopene/polystyrenesulfonate (BAYTRON(登録商標) P)、BAYTRON(登録商標) C)、BAYTRON(登録商標) F E、BAYTRON(登録商標) M V2、BAYTRON(登録商標) P、BAYTRON(登録商標) P AG、BAYTRON(登録商標) P HC V4、BAYTRON(登録商標) P HS、BAYTRON(登録商標) PH、BAYTRON(登録商標) PH 500、BAYTRON(登録商標) PH 510(以上、シュタルク社製)などを入手することができる。
ポリアニリン及びその誘導体としては、ポリアニリン(アルドリッチ社製)、ポリアニリン(エレラルダイン塩)(アルドリッチ社製)などを入手することができる。
ポリピロール及びその誘導体としては、ポリピロール(アルドリッチ社製)などを入手することができる。
【0049】
以下に、導電性ポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの他にも、WO98/01909記載の化合物等が挙げられる。
【0050】
【化2】

【0051】
【化3】

【0052】
本発明で用いる導電性ポリマーの重量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは10,000〜500,000であり、さらに好ましくは10,000〜100,000である。
【0053】
(ドーパント)
導電性ポリマー層には、前記導電性ポリマーのほかに少なくとも一種のドーパントを含有することが、導電性ポリマーの溶媒への分散性が改善されるという観点から好ましい。導電性ポリマー層の形成は、後述のように塗布によることが好ましく、分散性が良好な分散液を得ることは製造の観点から重要である。
なお本発明においてドーパントとは、導電性ポリマーに添加することにより、その導電性を向上させる作用を有する添加物を意味する。
このようなドーパントとしては、電子受容性(アクセプター)ドーパント、電子供与性(ドナー)ドーパントが挙げられる。
【0054】
電子受容性(アクセプター)ドーパントの例としては、ハロゲン(Cl,Br,I,ICl,ICl,IBr,IF)、ルイス酸(PF,AsF,SbF,BF,BCl,BBr,SO)、プロトン酸(HF,HCl,HNO,HSO,HClO,FSOH,CISOH,CFSOH,各種有機酸,アミノ酸など)、遷移金属化合物(FeCl,FeOCl,TiCl,ZrCl,HfCl,NbF,NbCl,TaCl,MoF,MoCl,WF,WCl,UF,LnCl(Ln=La,Ce,Pr,Nd,Smなどのランタノイド)、電解質アニオン(Cl,Br,I,ClO,PF,AsF,SbF,BF,各種スルホン酸アニオン)、その他O,XeOF,(NO)(SbF),(NO)(SbCl),(NO)(BF),FSOOOSOF,AgClO,HIrCl,La(NO・6HO等が挙げられる。
【0055】
電子供与性(ドナー)ドーパントの例としてはアルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs)、アルカリ土類金属(Ca,Sr,Ba)、ランタノイド(Euなど)、その他(R,R,RAs,R,アセチルコリン)等が挙げられる。
【0056】
ドーパントと前記導電性ポリマーとの組み合わせとしては、例えば:
(A) ポリアセチレンとI,AsF,FeClなど;
(B) ポリ(p−フェニレン)とAsF,K,AsFなど;
(C) ポリピロールとClOなど;
(D) ポリチオフェン類とClO,スルホン酸化合物、特にポリスチレンスルホン酸、ニトロソニウム塩、アミニウム塩、キノン類など;
(E) ポリイソチアナフテンとIなど;
(F) ポリ(p−フェニレンサルファイド)とAsF
(G) ポリ(p−フェニレンオキシド)とAsF
(H) ポリアニリンとHClなど;
(I) ポリ(p−フェニレンビニレン)とHSOなど;
(J) ポリチオフェニレンビニレンとIなど;
(K) ニッケルフタロシアニンとIなど;
等が挙げられる。
【0057】
これらの組み合わせの中でも、好ましくは前記(D)の組み合わせであり、より好ましくは、ドープ状態の安定性が高いという観点から、ポリチオフェン類(ポリチオフェン及びその誘導体)とスルホン酸化合物の組み合わせであり、更に好ましくは、水分散液が調整可能であり、塗布により簡便に導電性薄膜が調整できるという観点から、ポリチオフェン類とポリスチレンスルホン酸の組み合わせである。
【0058】
導電性ポリマーとドーパントの比率は、いかなるものであってもよいが、ドープ状態の安定性と導電性を両立させるという観点から、好ましくは、質量比で、導電性ポリマー:ドーパント=1.0:0.0000001〜1.0:10の範囲であり、好ましくは1.0:0.00001〜1.0:1.0の範囲、より好ましくは1.0:0.0001〜1.0:0.5の範囲である。
【0059】
一方、導電性ポリマーの分散性を高めるために、高分子鎖に電解質をドープしたイオン導電性ポリマーとしてもよい。該高分子鎖の例としては、ポリエーテル(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、ポリエステル(ポリエチレンサクシネート、ポリ−β−プロピオラクトンなど)、ポリアミン(ポリエチレンイミンなど)、ポリスルフィド(ポリアルキレンスルフィドなど)などが挙げられ、ドープされた電解質としては各種アルカリ金属塩などが挙げられる。
【0060】
前記アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属イオンとしてはLi、Na、K、Rb、Csなどが、対塩を形成するアニオンとしてはF、Cl、Br、I、NO、SCN、ClO、CFSO、BF、AsF、BPhなどが挙げられる。
【0061】
高分子鎖とアルカリ金属塩の組み合わせとしては、例えばポリエチレンオキシドとLiCFSO、LiClOなど、ポリエチレンサクシネートとLiClO、LiBF、ポリ−β−プロピオラクトンとLiClOなど、ポリエチレンイミンとNaCFSO、LiBFなど、ポリアルキレンスルフィドとAgNOなどが挙げられる。
【0062】
導電性ポリマー層には、更に後述の溶媒や、このほかに更に添加剤を添加することも可能である。更に含有し得る添加剤としては、紫外線吸収剤、膜強度を高める目的で無機微粒子、ポリマー微粒子、シランカップリング剤、屈折率を下げて透明性を高める目的でフッ素系化合物(特に、フッ素系界面活性剤)などを挙げることができる。
【0063】
導電性ポリマー層の膜厚は特に制限はないが、1nm〜2μmの範囲であることが好ましく、10nm〜1μmの範囲であることがより好ましい。導電性ポリマー層の膜厚がこの範囲内であれば、充分な導電性と透明性とを達成することができる。
【0064】
(3)ドープ状態安定化層
本発明では、前記導電性ポリマー層のほか、ドープ状態安定化層(酸性化合物又は還元剤を含む層)を備える。
本発明における「酸性化合物」とは、解離性水素を有し、その解離定数がpHが6以下であるものを意味する。
本発明における「還元剤」とは、電子ドナー性化合物を意味する。
なお、酸化化合物と還元剤の両方の機能を有する化合物も存在し、本発明ではこのような化合物を使用することもできる。よって、上述の酸化化合物及び還元剤の定義に該当すれば、酸化化合物であるか還元剤であるかを明確に区別する必要は無い。
【0065】
ここで、酸性化合物および還元剤による作用機能を以下のように推測するが、本発明は当該推測によって限定されることはない。
「酸性化合物」は導電性ポリマーのドープ状態を安定化させ、「還元剤」は導電性ポリマーが経時で酸化された場合、その還元作用によって酸化状態からドープ状態に回復させ、その結果導電性ポリマーの性能の劣化を抑制しているものと推測される。このように、酸性化合物及び還元剤のいずれも、導電性ポリマーのドープ状態を一定に維持するよう機能しているものと推測される。
【0066】
また、酸性化合物又は還元剤を導電性ポリマーとは別の層に添加した場合に導電性ポリマーのドープ状態を維持できることについて、その作用機能は明らかになっていないが、以下のように推測される。但し、本発明は当該推測によって限定されない。
酸性化合物又は還元剤は層間を移動して導電性ポリマー含有層に到達しドープ状態を維持しているのではないかと推測され、或いは酸性化合物又は還元剤が酸素をトラップして導電性ポリマーの酸化を防ぎ、結果、導電性ポリマーのドープ状態を維持しているのではないかと推測される。
酸性化合物又は還元剤と導電性ポリマーとを別々の層に添加した場合には、同じ層に加える場合に比べて酸性化合物又は還元剤と導電性ポリマーとの距離が離れており、且つ各層には界面が存在する。このような状態にも拘らず光耐久性等が向上することは予期せぬ効果である。
【0067】
本発明にかかる酸性化合物及び還元剤は、上述の定義に該当する化合物であれば特に限定されない。
本発明に用いられる酸性化合物としては、ポリリン酸、ヒドロキシ化合物、カルボキシ化合物、又はスルホン酸化合物が挙げられ、導電性ポリマーのドープ状態を安定性の観点から、酸性度の高いポリリン酸又はスルホン酸化合物がより好ましく、特に好ましくはポリリン酸である。なお、これらの化合物であっても、置換基の種類などによっては、還元剤として機能するものも存在する。
【0068】
本発明に用いられる還元剤としては、チオエーテル化合物、スクシンイミド化合物、ポリオール化合物、ヒドロキサム酸化合物、その他のアミド化合物、含窒素ヘテロ環化合物、ヒドロキシアミン化合物などが挙げられ、適度な強さの還元力を有するという観点から、チオエーテル化合物、スクシンイミド化合物、ポリオール化合物、ヒドロキサム酸化合物、ヒドロキシアミン化合物が好ましく、スクシンイミド化合物、ポリオール化合物、ヒドロキサム酸化合物がより好ましい。なお、これらの化合物であっても、置換基の種類などによっては、酸性化合物として機能するものも存在する。
【0069】
本発明にかかる酸性化合物及び還元剤は、上記定義に該当するものであれば、ポリリン酸、ヒドロキシ化合物、カルボキシ化合物、スルホン酸化合物、チオエーテル化合物、スクシンイミド化合物、ポリオール化合物、ヒドロキサム酸化合物、その他のアミド化合物、含窒素ヘテロ環化合物、及びヒドロキシアミン化合物のうちの2以上に該当する化合物であってもよい。
以下では、本発明において酸性化合物又は還元剤として使用し得る化合物について、更に詳細に説明する。
【0070】
−ポリリン酸−
本発明に係るポリリン酸には、二リン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、メタリン酸及ポリリン酸、及びこれらの塩が含まれる。これらの混合物であってもよい。
本発明におけるポリリン酸は、二リン酸、ピロリン酸、三リン酸、ポリリン酸であることが好ましく、ポリリン酸であることがより好ましい。
ポリリン酸は、HPOを充分なP10(無水リン酸)とともに加熱することにより、或いはHPOを加熱して水を除去することにより合成できる。
【0071】
−ヒドロキシ化合物−
ヒドロキシ化合物は水酸基を少なくとも1つ有する化合物であり、フェノール性水酸基を有することが好ましい。
ヒドロキシ化合物としては、下記一般式(II)で表される化合物が好ましい。
【0072】
【化4】

【0073】
一般式(II)中、Rはスルホ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基を表し、nは1〜6を示し、mは0〜5を示す。
Rとしては、スルホ基、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、スルホ基がより好ましい。
nは、1〜5が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
mは、0〜5であり、0〜4が好ましく、0〜3が更に好ましい。
【0074】
−ポリオール化合物−
ポリオール化合物はアルコール性水酸基を少なくとも2つ有する化合物である。
ポリオール化合物としては、下記一般式(VIII)で表される化合物が好ましい。
【0075】
【化5】

【0076】
一般式(VIII)中、Aは二価の連結基を表す。このような二価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基又はアルケニレン基と、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子との組み合わせが好ましく、アルキレン基又はアリーレン基と、酸素原子又は硫黄原子との組み合わせがより好ましい。
なお、二価の連結基がアルキレン基と硫黄原子との組み合わせの場合、当該化合物は後述のチオエーテル化合物にも該当する。このようなチオエーテル化合物の使用も好適である。
【0077】
Aで表される二価の連結基がアルキレン基を含むとき、該アルキレン基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、ヒドロキシ基、アリール基が好ましく、ヒドロキシ基を置換基として有することがより好ましい。
【0078】
−カルボキシ化合物−
カルボキシ化合物は、カルボキシ基を少なくとも1つ有する化合物である。
カルボキシ化合物としては、下記一般式(III)又は(IV)で表される化合物が好ましい。
【0079】
【化6】

【0080】
一般式(III)中、Aは二価の連結基を表す。該二価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基又はアルケニレン基と、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子との組み合わせが好ましく、アルキレン基又はアリーレン基と、酸素原子又は硫黄原子との組み合わせがより好ましい。
なお、二価の連結基がアルキレン基と硫黄原子との組み合わせの場合、当該化合物は後述のチオエーテル化合物にも該当する。このようなチオエーテル化合物の使用も好適である。
Aで表される二価の連結基がアルキレン基を含むとき、該アルキレン基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基が好ましく、カルボキシ基を置換基として有することがより好ましい。
【0081】
【化7】

【0082】
一般式(IV)中、Rはスルホ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基を表し、nは1〜6を示し、mは0〜5を示す。
Rとしては、スルホ基、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、スルホ基、アルコキシカルボニル基がより好ましい。
nは、1〜5が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
mは、0〜5であり、0〜4が好ましく、0〜3が更に好ましい。
【0083】
−スルホン酸化合物−
スルホン酸化合物は、スルホ基を少なくとも1つ有する化合物であり、好ましくはスルホ基を2つ以上有することが好ましい。
スルホン酸化合物として好ましくは、アリール基、アルキル基に置換されたものであり、より好ましくは、アリール基に置換されたものである。
【0084】
なお、上記で説明したヒドロキシ化合物及びカルボキシ化合物において、置換基としてスルホ基を有する化合物も好適である。
【0085】
−チオエーテル化合物−
チオエーテル化合物は、チオエーテル構造を分子内に有する化合物であれば特に制限されない。より好ましくは、チオエーテル構造を2つ以上繰り返すポリチオエーテルである。チオエーテル化合物は、例えば以下のチオエーテル構造を有する。
【0086】
【化8】

【0087】
このようなチオエーテル構造を有する化合物は、更に置換基を有していてもよい。このような置換基としては、アルキル基、アリール基、含窒素ヘテロ環などを挙げることができ、特にアルキル基又はアリール基を有している場合が好適である。
【0088】
−スクシンイミド化合物−
スクシンイミド化合物としては、下記一般式(V)で表される化合物が好ましい。
【0089】
【化9】

【0090】
一般式(V)におけるR及びRは各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ポリビニル基、ポリプロピレン基又はポリスチレン基であり、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基又はフェニル基であることがより好ましい。また、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。
【0091】
及びRで表されるアルキル基は更に置換されていてもよく、該置換基としては、スルホ基若しくはこの塩、ホスホン基、カルボキシ基、又はヒドロキシ基が好ましく、スルホ基若しくはこの塩、又はカルボキシ基若しくはこれらの塩基がより好ましい。
及びRは同一でも異なっていてもよいが、入手しやすさからは、R及びRが同一のものである。
【0092】
−ヒドロキサム酸化合物及びヒドロキシアミン化合物−
ヒドロキサム酸化合物及びヒドロキシアミン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0093】
【化10】

【0094】
一般式(1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はヘテロアリール基を表す。
一般式(1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はスルホニル基を表す。
【0095】
一般式(1)におけるR及びRは、各々置換基を有していてもよい。置換基としては、以下に述べる置換基群Vが挙げられる。
【0096】
(置換基群V)
ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素);メルカプト基;シアノ基;カルボキシル基;リン酸基;スルホ基;ヒドロキシ基;炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、モルホリノカルバモイル基);炭素数0〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ピペリジノスルファモイル基);ニトロ基;炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−フェニルエトキシ基);炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、ナフトキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基、トリクロロアセチル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基);
【0097】
炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基);炭素数0〜20、好ましくは炭素数0〜12、更に好ましくは炭素数0〜8の置換もしくは無置換のアミノ基(例えば、無置換のアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基);炭素数0〜15、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜6のアンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基);炭素数0〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基);炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のウレイド基(例えばウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基);炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のイミド基(例えばスクシンイミド基);
【0098】
炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基);炭素数6〜80、好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ基);炭素数1〜80、好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ基、3−ピリジルチオ基、4−ピリジルチオ基、2−キノリルチオ基、2−フリルチオ基、2−ピロリルチオ基);炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ベンジルオキシカルボニル基);炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基);
【0099】
炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の無置換のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基);炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の置換アルキル基{例えばヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、カルボキシエチル基、エトキシカルボニルメチル基、アセチルアミノメチル基、またここでは炭素数2〜18、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれることにする};炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、更に好ましくは炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−カルボキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、p−シアノフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−トリル基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニル);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数4〜6の置換もしくは無置換のヘテロ環基(例えばピリジル基、5−メチルピリジル基、チエニル基、フリル基、モルホリノ基、テトラヒドロフルフリル基);が挙げられる。
【0100】
上記置換基群Vの置換基は、ベンゼン環やナフタレン環が縮合した構造を形成することができる。
さらに、これらの置換基は更に置換されていてもよい。当該更なる置換基としても、上記置換基群Vから選ばれるいずれかの置換基が挙げられる。
【0101】
一般式(1)のRで表されるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜60、より好ましくは炭素数1〜50、更に好ましくは炭素数1〜40のアルキル基である。
具体的には、例えば、メチル、t−ブチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘキサデシル、3−ドデシルオキシプロピル、又は3−(2’,4’−di−tert−ペンチルフェノキシ)プロピルなどである。
【0102】
一般式(1)のRで表されるアシル基としては、好ましくは炭素数1〜60、より好ましくは炭素数1〜50、更に好ましくは炭素数1〜40のアシル基である。
具体的には、例えば、アセチル、ベンゾイル、トリクロロアセチル、フェニルカルボニル基、又はエチルカルボニル基などである。
【0103】
一般式(1)のRで表されるアリール基としては、好ましくは炭素数6〜60、より好ましくは炭素数6〜50、更に好ましくは炭素数6〜40のアリール基である。
具体的には、例えばフェニル、1−ナフチル、p−トリル、o−トリル、4−メトキシフェニル、4−ヘキサデシルオキシフェニル、3−ペンタデシルフェニル、2,4−di−tert−ペンチルフェニル、8−キノリル、又は5−(1−ドデシルオキシカルボニルエトキシカルボニル)−2−クロロフェニルなどである。
【0104】
一般式(1)のRで表されるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜60、より好ましくは炭素数1〜50、更に好ましくは炭素数1〜40のアルコキシ基である。
具体的には例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、メトキシエトキシ、又はn−オクチルオキシなどである。
【0105】
一般式(1)のRで表されるアリールオキシ基としては、好ましくは炭素数6〜60、より好ましくは炭素数6〜50、更に好ましくは炭素数6〜40のアリールオキシ基である。
具体的には、例えばフェノキシ、4−tert−オクチルフェノキシなどである。
【0106】
一般式(1)のRで表されるヘテロアリール基としては、N,S,O及びSeのヘテロ原子を少なくとも一つ含む5員〜8員のヘテロアリール基であることが好ましい。
具体的には、例えば4−ピリジル、2−フリル、2−ピロール、2−チアゾリル、3−チアゾリル、2−オキサゾリル、2−イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾトリアゾリル、2−キノリル、又は3−キノリルなどを挙げることができる。
【0107】
一般式(1)のRで表されるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜60、より好ましくは炭素数1〜50、更に好ましくは炭素数1〜40のアルキル基である。
具体的には例えば、メチル、t−ブチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘキサデシル、3−ドデシルオキシプロピル、又は3−(2’,4’−di−tert−ペンチルフェノキシ)プロピルなどである。
【0108】
一般式(1)のRで表されるアリール基としては、好ましくは炭素数6〜60、より好ましくは炭素数6〜50、更に好ましくは炭素数6〜40のアリール基である。
具体的には例えば、フェニル、1−ナフチル、p−トリル、o−トリル、4−メトキシフェニル、4−ヘキサデシルオキシフェニル、3−ペンタデシルフェニル、2,4−di−tert−ペンチルフェニル、8−キノリル、又は5−(1−ドデシルオキシカルボニルエトキシカルボニル)−2−クロロフェニルなどである。
【0109】
一般式(1)のRで表されるヘテロアリール基としては、N,S,O及びSeのヘテロ原子を少なくとも一つ含む5員〜8員のヘテロアリール基が好ましい。
具体的には例えば、4−ピリジル、2−フリル、2−ピロール、2−チアゾリル、3−チアゾリル、2−オキサゾリル、2−イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾトリアゾリル、モルホリニルなど)、アシル基(例えばアセチル、ブタノイル、ドデカノイル、ベンゾイルなどである。
【0110】
一般式(1)のRで表されるスルホニル基としては、好ましくは炭素数1〜60、より好ましくは炭素数1〜50、更に好ましくは炭素数1〜40のスルホニル基である。具体的にいえば、フェニルスルホニル、メチルスルホニル、エチルスルホニル、又はプロピルスルホニルなどが挙げられる。
【0111】
また、R及びRは同じでも異なっていてもよい。また、RとRとが互いに連結して環を形成してもよい。
【0112】
本発明に用いられる一般式(1)で表されるヒドロキサム酸化合物及びヒドロキシアミン化合物は、下記一般式(2)で表されるヒドロキサム酸又は下記一般式(3)で表されるヒドロキシアミン化合物が好適である。
【0113】
【化11】

【0114】
一般式(2)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基であり、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基又は置換されてもよいフェニル基であることがより好ましい。
【0115】
一般式(2)のRで表されるアルキル基は、炭素数1〜60のアルキル基が好ましく、炭素数1〜50のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜40のアルキル基が更に好ましい。該アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。
【0116】
一般式(2)のRで表されるアルキル基は更に置換されていてもよく、該置換基としては、ポリビニル基、ポリプロピレン基、ポリスチレン基、フッ素原子、塩素原子、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、置換されてもよいアミノ基又はアンモニウム基が好ましく、ポリビニル基、ポリプロピレン基、ポリスチレン基、フッ素原子、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基又はアンモニウム基がより好ましく、スルホ基、ホスホン基又はカルボキシ基が更に好ましい。
該置換基としてのポリビニル基、ポリプロピレン基、ポリスチレン基は繰り返し単位数が、10〜100,000であることが好ましく、10〜10,000であることがより好ましく、10〜5,000であることが粘性の観点から更に好ましい。
【0117】
一般式(2)のRで表されるアリール基は、炭素数6〜60のアリール基が好ましく、炭素数6〜30のアリール基がより好ましく、フェニル基又はナフチル基が更に好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0118】
一般式(2)のRで表されるアリール基は更に置換されていてもよく、該置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、スルホ基若しくはこの塩、ホスホン基、カルボキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ヘテロアリール基又は置換されてもよいアミノ基が好ましく、アルキル基、ハロゲン原子、スルホ基若しくはこの塩、ホスホン基、カルボキシ基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基がより好ましく、アルキル基、カルボキシ基又はヒドロキシ基が更に好ましい。
で表されるアリール基の置換基としてのアルキル基は、炭素数1〜60が好ましく、炭素数1〜40がより好ましく、炭素数1〜30が更に好ましい。
【0119】
がフェニル基のときの置換基数は、0〜5であることが好ましく、0〜4であることがより好ましい。
がフェニル基の場合の該置換基の置換位置は特に制限されないが、好ましくは、一般式(2)のカルボニル基に対してメタ位又はパラ位である。
【0120】
一般式(2)のRで表されるヘテロアリール基は、一般式(1)のRで表されるヘテロアリール基と同義であり、好適な範囲も同様である。
【0121】
一般式(2)のRで表されるアルコキシ基は、1〜60が好ましく、炭素数1〜50がより好ましく、炭素数1〜40が更に好ましい。一般式(2)のRで表されるアルコキシ基は更に置換されていてもよく、該置換基としては、ヒドロキシ基、ホスホン基、スルホ基、カルボキシ基が挙げられる。
【0122】
一般式(2)のRで表されるアリールオキシ基は、炭素数6〜60のアリールオキシ基が好ましく、炭素数6〜50のアリールオキシ基がより好ましく、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基が更に好ましい。
一般式(2)のRで表されるアリールオキシ基は更に置換されていてもよく、該置換基としては、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基及びこれらの塩基、置換されてもよいアミノ基、アルキル基、ヒドロキシ基、アリール基又はヘテロアリール基が好ましく、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基、アミノ基、アンモニウム基、ヒドロキシ基又はアルキル基がより好ましい。
【0123】
一般式(2)におけるRは、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であることが好ましく、水素原子、アルキル基又はアリール基であることがより好ましく、水素原子、アルキル基又はフェニル基であることが更に好ましい。
【0124】
一般式(2)のRで表されるアルキル基は、炭素数1〜60のアルキル基が好ましく、炭素数1〜50のアルキル基が好ましく、炭素数1〜40のアルキル基が好ましい。
一般式(2)のRで表されるアルキル基は更に置換されていてもよく、該置換基としては、ヒドロキシ基、ホスホン基、スルホ基、カルボキシ基が挙げられる。
【0125】
一般式(2)のRで表されるアリール基は、炭素数6〜60のアリール基が好ましく、炭素数6〜50のアリール基がより好ましく、フェニル基、ナフチル基が更に好ましい。
一般式(2)のRで表されるアリール基は更に置換されていてもよく、該置換基としては、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基及びこれらの塩基、置換されてもよいアミノ基、アルキル基、ヒドロキシ基、アリール基、ヘテロアリール基が好ましく、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基、アミノ基、アンモニウム基、ヒドロキシ基、アルキル基がより好ましい。
で表されるアリール基の置換基としてのアルキル基は、炭素数1〜60が好ましく、炭素数1〜50がより好ましく、炭素数1〜40が更に好ましい。
【0126】
一般式(2)のRがフェニル基のときの置換基数は、0〜4であることが好ましく、0〜3であることがより好ましい。
一般式(2)のRがフェニル基の場合の該置換基の置換位置は特に制限されないが、好ましくは、一般式(2)のカルボニル基に対してメタ位又はパラ位である。
【0127】
一般式(2)のRで表されるヘテロアリール基は、一般式(1)のRで表されるヘテロアリール基と同義であり、好適な範囲も同様である。
【0128】
【化12】

【0129】
一般式(3)中、R及びRは各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基であり、水素原子、アルキル基、アリール基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、フェニル基であることがより好ましい。
【0130】
一般式(3)のR又はRで表されるアルキル基は、炭素数1〜60のアルキル基が好ましく、炭素数1〜50のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜40のアルキル基が更に好ましい。RとRは互いに連結して環を形成してもよい。
【0131】
一般式(3)のR又はRで表されるアルキル基は更に置換されていてもよく、該置換基としては、ヒドロキシ基、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基、ポリビニル基、ポリプロピレン基、ポリスチレン基が好ましく、ヒドロキシ基、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基、アミノ基、アンモニウム基、ポリビニル基、ポリプロピレン基、ポリスチレン基がより好ましく、ヒドロキシ基、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基が更に好ましい。
該置換基としてのポリビニル基、ポリプロピレン基、ポリスチレン基は繰り返し単位数が、10〜100,000であることが好ましく、10〜10,000であることがより好ましく、10〜5,000であることが粘度の観点から更に好ましい。
【0132】
一般式(3)のR又はRで表されるアリール基は、炭素数6〜60のアリール基が好ましく、炭素数6〜50のアリール基がより好ましく、フェニル基、ナフチル基が更に好ましい。
【0133】
一般式(3)のR又はRで表されるアリール基は更に置換されていてもよく、該置換基としては、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、置換されてもよいアミノ基が好ましく、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基、アルキル基、ヒドロキシ基がより好ましく、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基が更に好ましい。
で表されるアリール基の置換基としてのアルキル基は、炭素数1〜60が好ましく、炭素数1〜50がより好ましく、炭素数1〜40が更に好ましい。
【0134】
がフェニル基のときの置換基数は、0〜5であることが好ましく、0〜4であることがより好ましい。
又はRがフェニル基の場合の該置換基の置換位置は特に制限されないが、好ましくは、一般式(3)のアミノ基に対してパラ位である。
【0135】
一般式(3)のR又はRで表されるヘテロアリール基は、一般式(1)のRで表されるヘテロアリール基と同義であり、好適な範囲も同様である。
【0136】
一般式(3)のR又はRで表されるアルコキシ基は、1〜60が好ましく、炭素数1〜50がより好ましく、炭素数1〜40が更に好ましい。一般式(2)のRで表されるアルコキシ基は更に置換されていてもよく、該置換基としては、ヒドロキシ基、ホスホン基、スルホ基、カルボキシ基が挙げられる。
【0137】
一般式(3)のR又はRで表されるアリールオキシ基は、炭素数6〜60のアリールオキシ基が好ましく、炭素数6〜50のアリールオキシ基がより好ましく、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基が更に好ましい。
一般式(3)のRで表されるアリールオキシ基は更に置換されていてもよく、該置換基としては、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基及びこれらの塩基、置換されてもよいアミノ基、アルキル基、ヒドロキシ基、アリール基、ヘテロアリール基が好ましく、スルホ基、ホスホン基、カルボキシ基、アミノ基、アンモニウム基、ヒドロキシ基、アルキル基がより好ましい。
【0138】
一般式(3)のR及びRは同一でも異なっていてもよいが、入手しやすさからは、R及びRが同一のものである。
【0139】
−含窒素ヘテロ環化合物−
含窒素ヘテロ環化合物としては、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピリジンが好ましく、下記一般式(IX)で表される化合物が高いドープ状態の安定化効果という観点からより好ましい。
【0140】
【化13】

【0141】
一般式(IX)におけるRは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、炭素数1〜60のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜40のアルキル基であることがより好ましい。
【0142】
Rで表されるアルキル基は更に置換されていてもよく、該置換基としては、一般式(IX)におけるRを取り除いた基であることが好ましい。
【0143】
以下に本発明に用いられる酸性化合物及び還元剤の具体例を示すが、本発明の酸性化合物及び還元剤はこれら具体例に限定されない。
【0144】
【化14】

【0145】
【化15】

【0146】
【化16】

【0147】
【化17】

【0148】
【化18】

【0149】
【化19】

【0150】
【化20】

【0151】
【化21】

【0152】
【化22】

【0153】
【化23】

【0154】
【化24】

【0155】
【化25】

【0156】
【化26】

【0157】
【化27】

【0158】
【化28】

【0159】
【化29】

【0160】
ドープ状態安定化層の膜厚は特に制限はないが、0.01nm〜1000μmの範囲であることが好ましく、0.1nm〜100μmの範囲であることがより好ましく、1nm〜50μmの範囲であることが更に好ましい。ドープ状態安定化層の膜厚がこの範囲内にあると、高い導電性と高い耐久性の両立が可能となり好適である。
【0161】
本発明に係る酸性化合物又は還元剤の付与量は、高い導電性と高い耐久性の両立の観点から、0.000001〜100g/mであることが好ましく、0.00001〜10g/mであることがより好ましく、0.0001〜2g/mであることがより好ましい。
【0162】
本発明に係る酸性化合物又は還元剤と導電性ポリマーの比率は、いかなるものであってもよいが、高い導電性と高い耐久性の両立の観点から、好ましくは、質量比で、酸性化合物又は還元剤:導電性ポリマー=0.00001:1.0〜1000:1の範囲であり、好ましくは0.0001:1.0〜500:1の範囲、より好ましくは0.0005:1.0〜100:1の範囲である。
【0163】
ドープ状態安定化層には、更に後述の溶媒や、このほかに更に添加剤を添加することも可能である。更に含有し得る添加剤としては、紫外線吸収剤、膜強度を高める目的で無機微粒子、ポリマー微粒子、シランカップリング剤、屈折率を下げて透明性を高める目的でフッ素系化合物(特に、フッ素系界面活性剤)などを挙げることができる。
【0164】
(4)層構成
本発明の導電性ポリマー材料は、支持体上に、少なくとも1層の導電性ポリマー層と、少なくとも1層のドープ状態安定化層とが積層されてなることを特徴とする。
【0165】
具体的な導電性ポリマー材料の層構成の例を、図1(A)〜(D)に示す。
図1(A)の導電性ポリマー材料は、支持体10上に、支持体側から順に、導電性ポリマー層20、ドープ状態安定化層30が積層されてなる。
図1(B)の導電性ポリマー材料は、支持体10上に、支持体側から順に、ドープ状態安定化層30、導電性ポリマー層20が積層されてなる。
図1(C)の導電性ポリマー材料は、支持体10上に、支持体側から順に、導電性ポリマー層20、ドープ状態安定化層30、導電性ポリマー層20が3層積層されてなる。
図1(D)の導電性ポリマー材料は、支持体10上に、支持体側から順に、導電性ポリマー層20、中間層40、ドープ状態安定化層30が3層積層されてなる。
【0166】
導電性ポリマー層20又はドープ状態安定層30と、支持体10との密着性を向上させる目的で易接着層(図示せず)を形成してもよい。易接着層としては、スチレン−ブタジエン共重合体(以下、適宜、「SBR」と略称する)又は水系ウレタン樹脂と架橋剤とを含有する構成が好ましい。SBRは、スチレンとブタジエンとを主体とした共重合体であり、更に必要に応じて他の成分を共重合したものを意味する。この共重合体は、スチレンとブタジエンとの含有比率を調整することにより、様々な物性のものを得られることが知られている。
【0167】
本発明の如く易接着層を形成する場合、スチレン−ブタジエン共重合体はラテックスであることが好ましい。具体的には、日本ゼオン社のニポール(商品名)、住友ノーガタック社のノーガテックス(商品名)、武田薬品工業社のクロスレン(商品名)、旭ダウ社の旭ダウラテックス(商品名)が挙げられ、その他に大日本インキ化学工業社や海外メーカーから販売されている市販品を用いることもできる。
【0168】
ラテックスの分散体粒子の粒径は、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.2μm以下が更に好ましい。粒子径がこの範囲内にあると、塗布工程で粒子の凝集が生じ難く、フィルムの透明性、光沢なども良好である。更に塗布層の厚さを薄くする必要がある場合には、それに応じて粒径を小さくすることが好ましい。
【0169】
易接着層のスチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレン/ブタジエンの含有比率は50/50〜80/20程度であることが好ましい。ラテックス中に含まれるSBRの割合は、固型分重量として30〜50重量%であることが好ましい。
【0170】
また、この易接着層には、SBRの物性を向上させるために架橋剤が添加されるが、ここで用いられる架橋剤としてはトリアジン系架橋剤が好ましい。
【0171】
図1(D)に示すように、本発明の導電性ポリマー材料は、ドープ状態安定化層30と導電性ポリマー層20とが隣接していなくともよいが、好ましくは隣接している場合である。
なお、ドープ状態安定化層の酸性化合物又は還元剤による酸素のトラップ効果を狙うのであれば、図1(A),(C)又は(D)のように、少なくとも1層のドープ状態安定化層30が、導電性ポリマー層20よりも支持体から遠い側にあることが好ましい。
【0172】
図1(A)〜(D)では、支持体上に2又は3の層を備える導電性ポリマー材料を示したが、4層以上を備えていてもよい。
【0173】
<導電性ポリマー材料の製造方法>
本発明の導電性ポリマー材料は、(1)支持体上に、(2)導電性ポリマー層と(3)ドープ状態安定層とを積層する。
【0174】
大面積の導電性ポリマー材料を一度に作製できるという簡便性の観点からは、塗布によって導電性ポリマー層とドープ状態安定層を形成することが好ましい。塗布以外の方法としてはスピンコート、転写などを挙げることができる。
塗布液は、水分散液であってもよいし、有機溶剤であってもよい。
【0175】
(導電性ポリマー層塗布液)
導電性ポリマー層を形成するための塗布液(以下「導電性ポリマー層塗布液」と称する。)には、少なくとも前記導電性ポリマーを含み、塗布のための溶媒や前記ドーパントを状況に応じて適宜添加する。このほかに導電性ポリマー層に添加し得る前述の添加剤を添加することも可能である。
【0176】
導電性ポリマー層塗布液の溶媒としては、水、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アミドなどを用いることができ、コストの観点からは水、低級アルコールが好ましく、環境を考慮すると水を用いることが好適である。
【0177】
水を溶媒として用いた場合、導電性ポリマーを分散させる方法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、ジョークラッシャ法、超遠心粉砕法、カッティングミル法、自動乳鉢法、ディスクミル法、ボールミル法、超音波分散法などの分散方法を挙げることができる。
【0178】
導電性ポリマー層塗布液中の導電性ポリマーの濃度は、粘度などを考慮して適宜調整することが望ましいが、一般的には、0.01質量%〜450質量%であることが好ましく、0.1質量%〜10質量%であることがより好ましい。
【0179】
(ドープ状態安定層塗布液)
ドープ状態安定層を形成するための塗布液(以下「ドープ状態安定層塗布液」と称する。)には、少なくとも前記酸性化合物又は還元剤を含み、塗布のための溶媒を状況に応じて適宜添加する。このほかにドープ状態安定層に添加し得る前述の添加剤を添加することも可能である。
【0180】
ドープ状態安定層塗布液の溶媒としては、水、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アミドなどを用いることができ、溶解性の観点からは水、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、が好ましい。
なお、ドープ状態安定層塗布液の溶媒は、導電性ポリマー層塗布液の溶媒と同じものであってもよいし、異なってもよい。
【0181】
ドープ状態安定層塗布液中の酸性化合物又は還元剤の濃度は、粘度などを考慮して適宜調整することが望ましいが、一般的には、0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.1質量%〜10質量%であることがより好ましい。
【0182】
(層の形成)
導電性ポリマー層塗布液およびドープ状態安定層塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法によって行うことができる。
【0183】
導電性ポリマー層およびドープ状態安定層の形成では、1層塗布する毎に乾燥し、次の層を塗布する方法であっても、2層以上を同時重層塗布で形成してもよい。同時重層塗布は、製造コストの低減、製造時間の短縮化の観点から好適である。ここで、「同時重層塗布」とは、2つの塗布液が接した状態で塗布することを意味する。
【0184】
前記同時重層塗布は、カーテンコーター、スライドコーター、エクストロージョンコーター等によって行うことができ、中でも、カーテンコーターが好ましい。
【0185】
<用途>
本発明の導電性ポリマー材料は、フレキシブルエレクトロルミネッセンス装置(OLED)、タッチスクリーン、有機TFT、アクチュエーター、センサー、電子ペーパー、フレキシブル調光材料、太陽電池などに好適に使用することができる。
また、導電性ポリマーとして3,4−エチレンジオキシ−ポリチオフェンなどの透明材料を選択することで、導電性ポリマー材料を透明とすることが可能である。透明な導電性ポリマー材料は、フレキシブル液晶ディスプレイなどの画像表示素子や太陽電池などに好適に用いることができる。
本発明の導電性ポリマー材料は、電子材料の配線や電極(基板電極など)として好適に用いることができる。特に塗布による導電性膜の形成が可能であることから大面積の導電性ポリマー材料を作製しやすく、基板電極への応用に適している。
【実施例】
【0186】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の実施例に制限されるものではない。
【0187】
[実施例1]
PETフィルム上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン及びポリスチレンスルホン酸を含む水分散液(Denatron P502、ナガセケミ社製)を、9番バーコーターを用いて塗工し、乾燥した。得られた層の厚みは200nmであった。
なお、Denatron P502における、水分散液中のポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン含有率は3.9質量%である。
【0188】
次に、ポリリン酸(東京化成社製)の10質量%水溶液を9番バーコーターを用いて塗工し乾燥させた。ポリリン酸を含む層の厚みは1.8μmであった。
塗布液の濃度と形成された層の厚さから概算して、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンとポリリン酸の質量比は、1:9であり、ポリリン酸の塗布量は、1.8g/mであった。
得られた導電性ポリマー材料−1の評価を以下の方法で行なった。
【0189】
<透過率の測定>
透過率は、UV/visスペクトルメーター(島津U2400)にて測定した。作製直後の導電性ポリマー材料−1の4箇所を測定しその平均値を測定値とした。結果を表1に示す。
【0190】
<表面抵抗率の測定>
表面抵抗率は、ロレスタ抵抗測定装置(三菱化学製)にて測定した。作製直後の導電性ポリマー材料−1の4箇所を測定しその平均値を測定値とした。結果を表1に示す。
【0191】
<光耐久性の評価>
UVカットフィルター(370nmの光を90%吸収)を介してキセノンランプ光源(15万ルクス)で80時間、導電性ポリマー材料−1を照射し、照射後における透過率および表面抵抗率を上記方法で測定した。結果を表1に示す。
【0192】
<ヘイズの測定>
NIPPON DENSHOKU(株)製のヘイズ測定装置MODEL1001DPを用い、作製直後の導電性ポリマー材料−1のヘイズを測定した。結果を表1に示す。
【0193】
[実施例2〜3]
実施例1と同様にして、但しポリリン酸の代わりに、表1に示す化合物を添加して、導電性ポリマー材料−2〜3を作製した。なお表1に示す化合物は、実施例1で添加したポリリン酸と同じ質量になるよう添加した。得られた導電性ポリマー材料−2〜3の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
【0194】
[実施例4]
ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水分散液(Denatron P502、ナガセケミ社製)を、PETフィルム上に9番バーコーターを用いて塗工し乾燥させた。
次に、ポリリン酸(東京化成社製)の10質量%水溶液を9番バーコーターを用いて塗工し、乾燥した。
更に、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水分散液(Denatron P502、ナガセケミ社製)を、PETフィルム上に9番バーコーターを用いて塗工し、乾燥して、3層構成である導電性ポリマー材料−4を作製した。
得られた導電性ポリマー材料−4の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
【0195】
[実施例5]
ポリリン酸(東京化成社製)の10質量%水溶液をPETフィルム上に9番バーコーターを用いて塗工し、乾燥した。
次にポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水分散液(Denatron P502、ナガセケミ社製)を、9番バーコーターを用いて塗工し乾燥させ、導電性ポリマー材料−5を作製した。
得られた導電性ポリマー材料−5の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
【0196】
[実施例6〜8]
実施例1において使用したDenatron P502(ナガセケミ社製)の代わりに、下記の水分散液をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、導電性ポリマー材料−6〜8を作製した。
(実施例6) ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水分散液(Baytron P、シュタルク社製、)
(実施例7) ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水分散液(Baytron P-HC V4、シュタルク社製、)
(実施例8) ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水分散液(Baytron P-AG、シュタルク社製、)
【0197】
得られた導電性ポリマー材料−6〜8の評価を実施例1と同様にして行なったところ、表1に示す結果が得られた。
【0198】
[実施例9,10]
実施例1において使用したポリリン酸の代わりに、前述の具体例化合物C−6又はN−1をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、導電性ポリマー材料−9及び10を作製した。なおC−6及びN−1は、実施例1で添加したポリリン酸と同じ質量になるよう添加した。
得られた導電性ポリマー材料−9及び10の評価を実施例1と同様にして行なったところ、表1に示す結果が得られた。
【0199】
[実施例11〜14]
実施例1において使用したポリリン酸の代わりに、具体例化合物SA−1、H−6、HA−6、又はS−4をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、導電性ポリマー材料−11〜14を作製した。
得られた導電性ポリマー材料−11〜14の評価を実施例1と同様にして行なったところ、表1に示す結果が得られた。
【0200】
[実施例15]
PET基板の代わりにガラス基板を用いた以外は実施例1と同様にして、導電性ポリマー材料−15を作製した。
得られた導電性ポリマー材料−15の評価を実施例1と同様にして行なったところ、表1に示す結果が得られた。
【0201】
[実施例16]
PETフィルム上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン及びポリスチレンスルホン酸を含む水分散液(Denatron P502、ナガセケミ社製)と、ポリリン酸(東京化成社製)の10質量%水溶液とを用いて同時重層塗布を行った。ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン及びポリスチレンスルホン酸を含む水分散液を含む層およびポリリン酸(東京化成社製)の10質量%水溶液層は、乾燥前の状態で各々20μmとなるように塗布し、乾燥させた。
得られた導電性ポリマー材料−19の評価を実施例1と同様にして行なったところ、表1に示す結果が得られた。
【0202】
[比較例1]
ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水分散液(Denatron P502、ナガセケミ社製)に対して、同量のポリリン酸(東京化成社製)10質量%水溶液を添加したところ、ポリマーが凝集した。この液をPETフィルム上に塗布するとムラが発生した。この比較の導電性ポリマー材料−1の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
【0203】
[比較例2]
比較例1におけるポリリン酸をA−7に代えた以外は比較例1と同様にして塗布液を調製した。
この塗布液を用いた以外は実施例1と同様の方法で、比較の導電性ポリマー材料−2を作製した。この比較の導電性ポリマー材料−2の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
[比較例3]
比較例1におけるポリリン酸をHO−3に代えた以外は比較例1と同様にして塗布液を調製した。この塗布液は、一部ポリマー粒子の凝集が観測された。
この塗布液を用いた以外は実施例1と同様の方法で、比較の導電性ポリマー材料−3を作製した。この比較の導電性ポリマー材料−3の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
【0204】
【表1】

【0205】
上表中、積層(A)、積層(B)、積層(C)および積層(D)は、それぞれ図1(A)、(B)、(C)及び(D)の積層構成であることを示す。
【0206】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜16の導電性ポリマー材料は、光照射前のサンプルにおいて、比較例よりも透過率が高く、表面抵抗率が低く、ヘイズが小さいことから、透明性および導電性に優れていることがわかる。
また、実施例1〜16では、光照射後の透過率は光照射前よりも僅かに低下しているものの略同等の値を示した。
更に、実施例1〜16では、光照射後の表面抵抗率は光照射前よりも僅かに増大しているが、比較例のサンプルと比べた場合、殆ど変化していないと言える程度の増大であり、充分に実用の許容範囲内であった。照射前後のヘイズは略同じレベルであった。
このように実施例1〜16の導電性ポリマー材料は、光照射後における透過率及び表面抵抗率の変化が少ないことから、光耐久性に優れていることが分かる。
【0207】
一方、比較例1では、塗布液作製の段階でポリマーの凝集が起こり、この塗布液を用いて作製したサンプルではムラが発生した。その結果、光照射前の比較例1のサンプルは、実施例1〜16よりも透過率が極めて低く、表面抵抗率は著しく高く、ヘイズは増大した(13%)。
比較例1のサンプルは、光照射によって更に透過率が低下し、表面抵抗率は著しく増大し、ヘイズはさらに増大した(28%)。よって、光耐久性の点でも実施例1〜16の方が優れていることが分かる。
【0208】
比較例2は、光照射前及び後の表面抵抗率が実施例2に比べて増大した。よって、導電性及び光耐久性が、比較例2よりも実施例2で優れていることが分かる。
【0209】
比較例3のサンプルは、実施例1〜16に比べて、光照射前の透過率が低く、表面抵抗率が高く、ヘイズが増大した(10%)。また、比較例3のサンプルは、光照射によって更に透過率性が低下し、表面抵抗率は著しく増大し、ヘイズは更に増大した(25%)。
【0210】
[実施例17]
実施例1において使用したDenatron P502(ナガセケミ社製)の代わりに、キシレン中にポリアニリン(アルドリッチ社製)を3.0質量%含有する分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、導電性ポリマー材料−17を作製した。
得られた導電性ポリマー材料−17の評価を実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0211】
[比較例4]
実施例17と同様に、但し、ポリリン酸を含む層を設けずに比較の試料−4を作製した。得られた比較の試料−4の評価を実施例1と同様にして行なった。結果を表2に示す。
【0212】
【表2】

【0213】
[実施例18]
(タッチパネル装置の製造)
ガラス基板上にインジウムスズオキサイドを蒸着により付設した基板を用意し、厚み4μmのドットスペーサー(東洋紡製、レジストCR-103C)をフォトリソグラフィーにて形成した後、配線を銀ペースト(東洋紡製、DW-250H-5)のスクリーン印刷により形成した。更に、絶縁インク(十条ケミカル製、商品名:JELCON IN)にて絶縁部位を形成した。最後に、実施例1で作製した導電性ポリマー材料−1を貼り合せてタッチパネル装置を作製した。
【0214】
(タッチパネル装置の評価)
上記タッチパネル装置を屋外光が入射される条件下で作動させたところ、良好なタッチパネル特性を示すことがわかった。すなわち、本発明の導電性組成物から形成されるタッチパネル装置は、光に対する耐久性が高いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】図1(A)〜(D)は、本発明の導電性ポリマー材料の層構成の例を示す断面概略図である。
【符号の説明】
【0216】
10 支持体
20 導電性ポリマー層
30 ドープ状態安定化層
40 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも1層の導電性ポリマーを含有する層と、少なくとも1層の酸性化合物又は還元剤を含む層とが、積層されてなることを特徴とする導電性ポリマー材料。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン及びその誘導体から選択される少なくとも1つのポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項3】
前記導電性ポリマーが、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンを含むことを特徴とする請求項2に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項4】
前記導電性ポリマーを含有する層が、ポリスチレンスルホン酸を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項5】
前記酸性化合物が、ポリリン酸、ヒドロキシ化合物、カルボキシ化合物及びスルホン酸化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項6】
前記還元剤が、チオエーテル化合物、スクシンイミド化合物、ポリオール化合物、ヒドロキサム酸化合物及びヒドロキシアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項7】
前記酸性化合物又は還元剤を含む層が、前記導電性ポリマーを含有する層よりも前記支持体から遠い側に設けられてなることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料を有する電極材料。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料の製造方法であって、
前記導電性ポリマーを含有する層及び酸性化合物又は還元剤を含む層のうち少なくとも2層を、同時重層塗布によって形成することを特徴とする導電性ポリマー材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−211847(P2009−211847A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51324(P2008−51324)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】