説明

導電性ローラーの再生方法

【課題】劣化した導電性ローラーをリサイクルし再利用できる導電性ローラーの再生方法を提供する。
【解決手段】所定の径を有すると共に、基材となるローラーシャフト31の周面31aに導電性を有する被覆層32を備える帯電ローラー3の再生方法であって、被覆層32を除去する除去工程と、上記除去工程の後、上記所定の径になるように被覆層32を再形成する被覆層形成工程とを有する手法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラーの再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用するコピー機やプリンター等の画像形成装置は、例えば帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程等の一連の画像形成プロセスによって、紙等の記録媒体上に、トナーからなる画像を形成する。帯電工程においては、導電性ローラー(帯電ローラー)を所定の帯電ギャップを空けて像担持体の近傍に配置し、帯電バイアスを印加することによって像担持体の表面を一様に帯電させる。また、現像工程においては、導電性ローラー(現像ローラー)にバイアス電圧を印加することでその周面にトナーを電気的に吸着させて搬送し、像担持体に静電潜像に基づくトナー像を現像する。この導電性ローラーは、例えば下記特許文献1や特許文献2に開示されている。導電性ローラーは、ローラーシャフトの周面に導電性を有する被覆層を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−121480号公報
【特許文献2】特開2006−72064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導電性ローラーは、像担持体等の部材との摩擦や、電圧の印加による放電現象等により、被覆層がダメージを受け、ローラーシャフトよりも先に劣化してしまう。このような劣化が生じた場合、所望の機能を発揮できないため、従来では、該製品を廃棄し交換していた。しかしこれでは、劣化していない資源(ローラーシャフト)までも廃棄することとなり、資源の浪費に繋がる。さらに、近年のエコロジー的な考えからも好ましくない。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、劣化した導電性ローラーをリサイクルし再利用できる導電性ローラーの再生方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、所定の径を有すると共に、基材となるローラーシャフトの周面に導電性を有する被覆層を備える導電性ローラーの再生方法であって、上記被覆層の少なくとも一部を除去する除去工程と、上記除去工程の後、上記所定の径になるように被覆層を再形成する被覆層形成工程とを有する手法を採用する。
これにより本発明では、被覆層の劣化した一部あるいは全てを除去し、ローラーシャフトの周面に再び、被覆層を所定の径となるように形成することにより、導電性ローラーに所望の機能を取り戻させる。
【0007】
また、本発明においては、上記除去工程では、上記被覆層を削剥または研磨して除去する機械加工処理と、上記被覆層を溶解剤で溶解して除去する溶解処理との少なくともいずれか一方を行うという手法を採用する。
これにより本発明では、被覆層の劣化の状態に応じて、機械加工処理や溶解処理を行い、被覆層を除去する。
【0008】
また、本発明においては、上記被覆層形成工程では、上記除去工程で除去された上記ローラーシャフトの表層の厚さ分だけ上記再形成する被覆層の厚さを大きくするという手法を採用する。
これにより本発明では、除去工程で被覆層と共にローラーシャフトの表層が除去された場合であっても、その分、被覆層を厚く再形成することで、リサイクルされた後の径が小さくならず、機内における設置位置(像担持体に対する相対位置等)を変更することなく再設置できる。
【0009】
また、本発明においては、上記被覆層形成工程では、導電性剤を塗布して上記被覆層を形成する塗布処理と、上記ローラーシャフトを固定した上記所定の径を有する型に導電性剤を射出して上記被覆層を形成する射出成形処理との少なくともいずれか一方を行うという手法を採用する。
これにより本発明では、被覆層を除去した後、塗布処理や射出成型処理を行い、被覆層を再形成する。
【0010】
また、本発明においては、上記再形成した回数を上記ローラーシャフトの所定の位置に記録する再生数記録工程を有するという手法を採用する。
これにより本発明では、導電性ローラーにトレーサビリティを備えさせ、再生数を管理し、この再生数に基づいてローラーシャフトの劣化状態を把握して、被覆層を再形成するか、あるいは廃棄するかを判断する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態における本発明の実施形態におけるプリンターを示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態における感光体及び帯電ローラーを模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施形態における帯電ローラーの再生工程を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態における被覆層形成工程について説明する図である。
【図5】本発明の実施形態における再生数記録工程について説明する図である。
【図6】本発明の実施形態における被覆層形成工程で用いる導電性塗料塗布装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。先ず、本発明に係る導電性ローラー(帯電ローラー)を備える画像形成装置の概略構成を説明し、その後に、導電性ローラーの再生方法について説明する。本実施形態の画像形成装置としては、レーザビームプリンター(以下、プリンターと称する)を例示する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態におけるプリンター1を示す概略構成図である。図2は、本発明の実施形態における感光体2及び帯電ローラー3を模式的に示す図である。
プリンター1は、図1に示すように、静電潜像及びトナー像を担持する感光体2を有しており、この感光体2の周囲には、感光体2を帯電させる帯電ローラー(導電性ローラー)3と、感光体2に静電潜像を形成する露光装置4と、感光体2の静電潜像をトナーで現像する現像装置5と、感光体2のトナー像を転写する転写装置6と、感光体2をクリーニングするクリーニング装置7とが配置される。
【0014】
感光体2は、円筒状の導電性基材と、その周面(外周面)に形成された感光層とを有する。この感光体2における導電性基材には、例えばアルミニウム等の導電性の管が用いられ、感光層には、従来公知の有機感光体が用いられる。そして、感光体2は、軸方向において両側面にそれぞれ突設された回転軸2aが不図示の軸受を介して回転自在に支持され、モータ等の駆動源を有する不図示の回転駆動装置により軸周り(本実施形態では、図1中矢印方向(時計回り))に所定速度で回転する構成となっている。
【0015】
帯電ローラー3は、基材となるローラーシャフト31と、ローラーシャフト31の周面31aを被覆する被覆層32と、直流電圧と交流電圧とを重畳したバイアス電圧を印加する不図示のバイアス電源とを有する(図2及び図3(a)参照)。
ローラーシャフト31は、金属材や樹脂材からなるローラーシャフトであり、その周面31aには、導電性を備える被覆層32(抵抗層)が形成されている。被覆層32は、例えば、ポリウレタンやアクリル等の樹脂材をベースとして、カーボンブラックや酸化錫等の導電剤を添加して分散させたものから構成される。
【0016】
帯電ローラー3の軸方向両端部には、感光体2との帯電ギャップGを所定の距離(例えば10〜50μm程度)に規制するためのギャップ部材33が設けられる。このギャップ部材33は、例えば一定膜厚の樹脂フィルムを巻き付けることにより形成される。
帯電ローラー3には、軸方向両側の側壁31bから軸心と一致するようにそれぞれ回転軸31b1が突設される。各回転軸31b1は、それぞれ軸受31b2に回転自在に支持されている。各軸受31b2には、それぞれ付勢装置31b3が接続されている。帯電ローラー3は、付勢装置31b3により感光体2側に付勢され、ギャップ部材33と感光体2の周面とを圧接させ、帯電ギャップGを形成する。そして、バイアス電源から直流電圧と交流電圧とを重畳した電圧を印加された帯電ローラー3は、感光体2と同期回転しつつ帯電ギャップGをおいて感光体2を非接触帯電させる。
【0017】
露光装置4は、例えばレーザ光等により帯電状態の感光体2に静電潜像を書き込む。また、現像装置5は、現像ローラー5a、トナー供給ローラー5bおよびトナー層厚規制部材5cを有している。そして、トナー供給ローラー5bによって現像ローラー5a上に現像剤であるトナーが供給されるとともに、この現像ローラー5a上のトナーがトナー層厚規制部材5cによりその厚みを規制されて感光体2の方へ搬送され、搬送されたトナーで感光体2上の静電潜像が現像されて感光体2上にトナー像が形成される。
【0018】
転写装置6は、転写ローラー6aを有し、この転写ローラー6aにより感光体2上にトナー像が転写紙や中間転写媒体等の転写媒体13に転写される。そして、トナー像が転写媒体13である転写紙に転写された場合には、転写紙上のトナー像が図示しない定着装置によって定着され、転写紙に画像が形成され、また、トナー像が転写媒体13である中間転写媒体に転写された場合には、中間転写媒体上のトナー像が更に転写紙に転写された後、転写紙上のトナー像が図示しない定着装置によって定着され、転写紙に画像が形成される。
【0019】
続いて、図3〜図6を参照して、帯電ローラー3の再生方法について説明する。
図3は、本発明の実施形態における帯電ローラー3の再生工程を説明する図である。図4は、本発明の実施形態における被覆層形成工程について説明する図である。図5は、本発明の実施形態における再生数記録工程について説明する図である。図6は、本発明の実施形態における被覆層形成工程で用いる導電性塗料塗布装置100の構成を示す図である。
【0020】
先ず、摩擦や放電現象により被覆層32が劣化した帯電ローラー3をプリンター1から取り外し回収する。
次に、図3(a)に示す回収した帯電ローラー3から、被覆層32を除去する(除去工程)。除去工程では、機械処理や溶解処理により被覆層32を除去する。なお、帯電ローラー3の場合、除去工程においてギャップ部材33も共に除去する。
機械処理においては、砥石を用いた研磨や、カッターやグラインダーを用いた削剥により被覆層32を除去する。例えば、研磨の場合は、帯電ローラー3の軸方向に移動可能なスライダーに砥石を取り付けて、該砥石を回転させつつ、帯電ローラー3の一端から他端まで移動させ、被覆層32を削る。また、この移動に合わせて帯電ローラー3を軸周りに回転させても良い。一方、削剥の場合は、被覆層32の端部にカッターで切り込みを入れて、被覆層32を剥離する。あるいは、グラインダーで被覆層32を削り落としても良い。
【0021】
溶解処理においては、被覆層32を構成する材料に応じて選択した溶解剤(有機溶剤等)を所定の温度に加熱し、帯電ローラー3を浸して被覆層32を溶解させる。また、この溶解でギャップ部材33も共に溶解させても良い。
また、機械処理により完全に被覆層32が除去できない場合、例えばローラーシャフト31の周面31aが所定の表面粗さを有して被覆層32が強固に密着している場合は、機械処理と合わせて溶解処理を行うことが望ましい。
【0022】
上記除去工程により、帯電ローラー3は、図3(b)に示すように、ローラーシャフト31のみとなる。次工程では、このローラーシャフト31に、被覆層32を再形成する(被覆層形成工程)。被覆層形成工程では、帯電ローラー3が初期(除去前)の径となるように、被覆層32を再形成する。
被覆層形成工程においては、例えば図6に示す導電性塗料塗布装置100を用いる。導電性塗料塗布装置100は、ローラーシャフト31の両端部をチャック101で把持し、さらに、ローラーシャフト31を軸心周りに回転させつつ、軸心方向に延びるスライド102に沿って導電剤が分散した樹脂塗料Aをスプレー103から噴射し、ローラーシャフト31の周面全体に塗布する。そして、不図示の加熱炉で樹脂塗料Aを熱硬化させ、樹脂塗料Aをローラーシャフト31上に定着させることで、被覆層32を形成する。
【0023】
また、被覆層形成工程では、円筒形の金型にローラーシャフト31を固定し、導電剤が分散した液状の樹脂材を該金型に注入した後に加熱して、注入した樹脂材を熱硬化させ被覆層32を形成するインサート成形処理(射出成形処理)を行っても良い。
あるいは、導電性熱収縮チューブを用いて、ローラーシャフト31を被覆した後、加熱し熱収縮させて被覆層32を形成しても良い。
【0024】
上記被覆層形成工程により、帯電ローラー3に被覆層32を再形成する(図3(c)参照)。そして、軸方向両端部にフィルム部材を巻き付けギャップ部材33を形成することで帯電ローラー3を再生する。
【0025】
つまり、上記実施形態によれば、所定の径を有すると共に、基材となるローラーシャフト31の周面31aに導電性を有する被覆層32を備える帯電ローラー3の再生方法であって、被覆層32を除去する除去工程と、上記除去工程の後、上記所定の径になるように被覆層32を再形成する被覆層形成工程とを有する手法を用いることにより、劣化した被覆層32を除去し、ローラーシャフト31の周面31aに被覆層32を再形成でき、帯電ローラー3に所望の機能を取り戻させることが可能となる。したがって、本実施形態によれば、ローラーシャフト31を廃棄することなくリサイクルできるため、資源の浪費しいては低コスト化が実現できる。
【0026】
ところで、除去工程では、図4に示すように、ローラーシャフト31が厚さTだけ小さくなる場合がある。例えば、機械加工処理で、ローラーシャフト31の表層を被覆層32と共に除去した場合や、溶解処理で、樹脂材から形成されるローラーシャフト31の表層が被覆層32と共に溶解した場合等が挙げられる。
この場合、被覆層32の厚さを初期の厚さで形成すると帯電ローラー3の径が小さくなり、設置位置や特性(周速度等)が変化してしまい、画像形成特性に影響を与える虞がある。そのため、被覆層形成工程において形成する被覆層32の厚さを、図4に示すように除去された表層の厚さTだけ厚くすることで、その径を補完する。例えば、導電性熱収縮チューブを用いる場合は、初期のものより厚さが大きいものを用いる。また、導電性塗料塗布装置100を用いる場合は、塗布する樹脂塗料Aの量を多くする。なお、インサート成型処理の場合は、金型により外径が規定されるため、被覆層32を形成するにあたり変更点はない。
【0027】
また、本手法では、図5に示すように、ローラーシャフト31の側壁(所定の位置)31bに被覆層32の再生数を記録する記録部50を設けて、該再生数を記録・管理する工程(再生数記録工程)を設けても良い。この工程を設けることで、回収時に記録部50から再生数を読み取り、ローラーシャフト31の劣化状態(寿命)を把握することができる。例えば、再生数が3回以上となった場合には、ローラーシャフト31の劣化が進んでいると判断できるため、再生を行わずに廃棄する。なお、記録部50には、ICチップやバーコード、あるいはマーキング等の手段が用いられる。
【0028】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0029】
例えば、上記実施形態では、帯電ローラー3を例に挙げて導電性ローラーの再生方法について説明したが、本発明は帯電ローラー3のみならず、例えば、現像ローラー5aにも適用することが可能である。
【0030】
また、上記実施形態では、除去工程において被覆層32の全てを除去すると説明したが、一部のみ(劣化した部位)のみを除去し、被覆層形成工程ではこの除去部のみを再形成する構成であっても良い。この場合、図6に示す導電性塗料塗布装置100で樹脂塗料Aを部分的(選択的)に塗布することにより、除去部に被覆層32を形成する。あるいは、インサート成形処理を用いる場合は、樹脂材の注入口から除去部に繋がる流路(溝)を被覆層32に形成し、除去部に被覆層32を再形成する手法を用いることが望ましい。
【符号の説明】
【0031】
3…帯電ローラー(導電性ローラー)、31…ローラーシャフト、31a…周面、31b…側壁(所定の位置)、32…被覆層、50…記録部、T…厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の径を有すると共に、基材となるローラーシャフトの周面に導電性を有する被覆層を備える導電性ローラーの再生方法であって、
前記被覆層の少なくとも一部を除去する除去工程と、
前記除去工程の後、前記所定の径になるように被覆層を再形成する被覆層形成工程とを有することを特徴とする導電性ローラーの再生方法。
【請求項2】
前記除去工程では、前記被覆層を削剥または研磨して除去する機械加工処理と、前記被覆層を溶解剤で溶解して除去する溶解処理との少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラーの再生方法。
【請求項3】
前記被覆層形成工程では、前記除去工程で除去された前記ローラーシャフトの表層の厚さ分だけ前記再形成する被覆層の厚さを大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ローラーの再生方法。
【請求項4】
前記被覆層形成工程では、導電性剤を塗布して前記被覆層を形成する塗布処理と、前記ローラーシャフトを固定した前記所定の径を有する型に導電性剤を射出して前記被覆層を形成する射出成形処理との少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性ローラーの再生方法。
【請求項5】
前記再形成した回数を前記ローラーシャフトの所定の位置に記録する再生数記録工程を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性ローラーの再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−181465(P2010−181465A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22670(P2009−22670)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】