説明

導電性微粒子

【課題】微細な導電性微粒子であり、且つ、バインダー樹脂への分散性に優れ、電気接続時のショート発生を抑制できる導電性微粒子を提供する。
【解決手段】本発明の導電性微粒子は、樹脂粒子からなる基材と、該基材の表面に形成された少なくとも一層の導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、前記樹脂粒子の個数平均粒子径が、1.0μm〜2.5μmであり、粒子径が0.25μm〜0.70μmの範囲内にある微小粒子の含有量(個数基準)が0.10%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な導電性微粒子に関するものであり、特に、電気接続に用いた場合のショートの発生を低減できる導電性微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高機能化が益々進展している。それに伴い、電気機器に搭載される電子部品の小型化、高密度実装化が進んでおり、電子回路における電極や配線は一層微細化、狭小化する流れにある。従来、電子機器の組み立てにおいて、対向する多数の電極や配線間の電気的接続を行うために、異方性導電材料による接続方式が採用されている。異方性導電材料は、導電性微粒子をバインダー樹脂等に混合した材料であり、例えば異方性導電ペースト(ACP)、異方性導電フィルム(ACF)、異方性導電インク、異方性導電シート等がある。また、異方性導電材料に用いられる導電性微粒子としては、金属粒子や基材とする樹脂粒子の表面を導電性金属層で被覆したものが使用されている。
【0003】
そして、上述したように電子回路の電極や配線の微細化、狭小化が進展するなか、異方性導電材料に用いられる導電性微粒子についても、粒子径がより小さなものが要求されている。このような粒子径の小さな導電性微粒子として、例えば、樹脂や無機化合物からなり、平均粒子径が0.5〜2.5μm、粒子径のCV値が20%以下である微球を基材として用いた導電性微粒子が提案されている(特許文献1(段落0009、0010)参照)。
【0004】
ところで、樹脂粒子は、アンチブロッキング剤、液晶パネルスペーサー等の用途に使用されており、これらの用途では粒径が均一なものが要求されている。そのため、例えば、シード重合法により樹脂粒子を製造する際に、単量体成分をシード粒子に吸収させる工程において、反応液を攪拌するための攪拌翼の形状、周速度を制御して単分散樹脂粒子を得る方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−30526号公報
【特許文献2】特開2005−272779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、平均粒子径の小さい(例えば、平均粒子径が1.0μm〜2.5μm)導電性微粒子は、従来の平均粒子径が5μm程度の導電性微粒子に比べて、電気接続に用いた場合のショート発生率が高くなるという問題がある。本発明者らが検討したところ、この問題は樹脂粒子に含まれる粒子径が非常に小さい(例えば、粒子径0.70μm以下)微小粒子に起因することが判明した。
すなわち、導電性微粒子の粒子径を小さくするためには、基材となる樹脂粒子についても、平均粒子径の小さいものを作製する必要がある。平均粒子径の小さい樹脂粒子を作製する場合、従来の分級技術では微小粒子除去が困難となり、微小粒子が混入しやすくなる。そのため、このような樹脂粒子を用いて導電性微粒子を作製した場合、微小粒子を基材とする導電性微粒子も生成することとなる。そして、微小粒子を基材とする導電性微粒子は全質量に対するメッキ質量の比率が高くなり、高比重、高硬度となる。
ところで、導電性微粒子の粒子径を小さくした場合、ACPやACFにおける粒子個数密度が高くなり、ACPやACF作製用組成物を調製する際に、混合物の粘度が高くなる傾向がある。そのため、調製時には高いせん断力を加える必要があるが、この際、前記微小粒子を基材とする導電性微粒子によりショート発生原因となる金属片が生じる。具体的には、微小粒子を基材とする導電性微粒子が高比重、高硬度であるため、他の導電性微粒子の金属層に損傷を与えてしまい、金属磨耗片が生じる。また、前記微小粒子を基材とする導電性微粒子の金属層自体が割れてしまい、金属破片が生じることがある。
このように、平均粒子径が小さい導電性微粒子においては、基材となる樹脂粒子に所定の大きさの微小粒子が含まれると、電気接続に使用した場合にショート発生率が高くなるという問題があることを見出した。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、微細な導電性微粒子であって、且つ、異方性導電材料に用いた場合に電気接続時のショート発生を抑制できる導電性微粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することができた本発明の導電性微粒子は、樹脂粒子からなる基材と、該基材の表面に形成された少なくとも一層の導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、前記樹脂粒子の個数平均粒子径が、1.0μm〜2.5μmであり、粒子径が0.25μm〜0.70μmの範囲内にある微小粒子の含有量(個数基準)が0.10%以下であることを特徴とする。前記導電性微粒子自体の個数平均粒子径は、1.1μm〜2.8μmが好ましい。
また、本発明には、導電性微粒子の基材に用いられる樹脂粒子であって、個数平均粒子径が、1.0μm〜2.5μmであり、粒子径が0.25μm〜0.70μmの範囲内にある微小粒子の含有量(個数基準)が0.10%以下である樹脂粒子;前記導電性微粒子を含有する異方性導電材料(好ましくは、導電性微粒子と、バインダー樹脂とを含有する異方性導電ペースト。)も含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電性微粒子を小径化しても、この導電性微粒子を含有する異方性導電材料を電気接続に用いた場合のショート発生を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.導電性微粒子
本発明は、微細な導電性微粒子の改良を目的とする。この導電性微粒子の基材となる樹脂粒子も粒子径が小さく、その個数基準の平均粒子径が1.0μm以上、好ましくは1.1μm以上、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.3μm以上であり、2.5μm以下、好ましくは2.3μm以下、より好ましくは2.1μm以下、さらに好ましくは1.9μm以下である。基材の平均粒子径がこの範囲内であれば、微細な導電性微粒子が得られ、微細化、狭小化された電極や配線の電気接続に対して、好適に使用できる。
【0011】
そして、上記樹脂粒子(基材)は、その粒子径が0.25μm〜0.70μmの範囲内にある微小粒子の含有量(個数基準)が0.10%以下、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.02%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。このような、特性を有する樹脂粒子を基材として用いることにより、導電性金属層を形成する際に微小粒子を基材とする導電性微粒子の含有量を低減できる。このような導電性微粒子を使用すれば、ACPやACF作製用組成物を調製する際に、金属片の発生を抑制できる。よって、本発明の導電性微粒子を用いたACPやACFは、電気接続時のショート発生が抑制される。なお、本発明では、平均粒子径等は、コールターカウンターにより測定するものとし、測定方法については後述する。
また、本発明において、微小粒子とは、所定の超音波分散処理を施した後の粒子径測定により検出される、粒子径が0.25μm〜0.70μmの粒子である。つまり、所定の超音波分散処理を施した場合に、独立に分散した状態で存在する粒子であり、超音波分散処理後にも他の粒子に強固に付着しているようなものは除く。
【0012】
前記樹脂粒子(基材)は、樹脂成分を含んでいればよく、有機材料のみから構成される粒子に限られず、有機無機複合材料から構成される粒子でもよい。樹脂粒子を用いることで、弾性変形特性に優れた導電性微粒子が得られる。
【0013】
前記樹脂粒子を構成する有機材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリアミド;ポリイミド;フェノールホルムアルデヒド樹脂;メラミンホルムアルデヒド樹脂;メラミンベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂;尿素ホルムアルデヒド樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。また、有機無機複合材料としては、前記有機材料とポリシロキサン骨格とを含む材料(例えば、ポリシロキサン骨格とビニル重合体が複合化されてなる材料等)が挙げられる。これらの樹脂粒子を構成する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
前記樹脂粒子を構成する材料の中でも、ビニル重合体及び/又はポリシロキサン骨格を含むものが好ましい。ビニル重合体を含む材料は、ビニル基が重合して形成された有機系骨格を有し、加圧接続時の弾性変形に優れる。特に、ジビニルベンゼンを重合成分として含むビニル重合体は、導電性金属被覆後の粒子強度の低下が少ない。また、ポリシロキサン骨格を含む材料は、加圧接続時において被接続体に対する接触圧が優れる。特にポリシロキサン骨格とビニル重合体を複合化した材料は、弾性変形性及び接触圧に優れ、得られる導電性微粒子の接続信頼性がより優れたものとなるため好ましい。
【0015】
前記ビニル重合体はビニル基含有単量体を重合(ラジカル重合)したものであり、「ビニル基」には、炭素−炭素二重結合のみならず、(メタ)アクリロキシ基、アリル基、イソプロペニル基、ビニルフェニル基、イソプロペニルフェニル基のような重合性炭素−炭素二重結合を有する置換基も含まれる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロキシ基」、「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」は、「アクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」や「アクリル及び/又はメタクリル」を示すものとする。
【0016】
前記ビニル基含有単量体には、分子中に一つのビニル基を有する単量体(1)、分子中に一つのビニル基とビニル基以外の官能基(カルボキシル基、水酸基等のプロトン性水素含有基、アルコキシ基等の末端官能基等)を有する単量体(2)、1分子中に2以上のビニル基を有する架橋性のビニル基含有単量体(3)(以下「架橋性ビニル基含有単量体」と称することがある。)が含まれる。これらの単量体(1)〜(3)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも単量体(1)、架橋性ビニル基含有単量体(3)が好ましい。
【0017】
前記単量体(1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等のスチレン系単官能モノマー;等が挙げられる。単量体(1)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレン系単官能モノマーが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0018】
また、前記単量体(2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシ基含有スチレン類等のヒドロキシ基を有する単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類等のアルコキシ基を有する単量体;等が挙げられる。単量体(2)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ここで、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基等は、反応(結合)相手となる基が他の単量体に存在する場合には架橋構造を形成し得る。
【0019】
前記単量体(3)(架橋性ビニル基含有単量体)としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のヘテロ原子含有架橋剤;等が挙げられる。これらの架橋性ビニル基含有単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体、スチレン系多官能モノマーが好ましく、スチレン系多官能モノマーが好ましい。前記1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の中でも、1分子中に2以上のアクリロイル基を有する単量体が好ましく、1分子中に2個のアクリロイル基を有する単量体(ジアクリレート類)がより好ましく、アルカンジオールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレートがさらに好ましく、特にアルカンジオールジアクリレートが好ましい。前記スチレン系多官能モノマーの中でも、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0020】
前記ビニル重合体としては、構成成分として、前記単量体(1)を含む態様;前記架橋性ビニル基含有単量体(3)を含む態様;前記単量体(1)と前記架橋性ビニル基含有単量体(3)を含む態様が好ましい。具体的には、構成成分として、スチレン系単官能モノマーを含む態様;スチレン系多官能モノマーを含む態様;スチレン系単官能モノマーと1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体とを含む態様;スチレン系単官能モノマーとスチレン系多官能モノマーとを含む態様がより好ましく、中でもスチレン系単官能モノマーとスチレン系多官能モノマーとを含む態様が特に好ましい。
【0021】
前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を加水分解縮合することで得られ、前記シラン系単量体としては、非架橋性シラン系単量体、架橋性シラン系単量体が挙げられる。前記非架橋性シラン系単量体として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルシラン等の2官能性シラン系単量体;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルシラン等の1官能性シラン系単量体等が挙げられる。
【0022】
前記架橋性シラン系単量体は、架橋構造を形成し得る。架橋性シラン系単量体により形成される架橋構造としては、有機重合体骨格(例えば、ビニル系重合体骨格)と有機重合体骨格とを架橋するもの(第一の形態);ポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第二の形態);有機重合体骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第三の形態);が挙げられる。
【0023】
第一の形態を形成し得るものとしては、例えば、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等が挙げられる。第二の形態を形成し得るものとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン系単量体;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性シラン系単量体等が挙げられる。第三の形態を形成し得るものとしては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するもの;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するもの;等が挙げられる。
【0024】
ここで、ポリシロキサン骨格は、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合(例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基)を有する重合性ポリシロキサン由来の骨格を有することが好ましい。つまり、ポリシロキサン骨格は、構成成分として、少なくとも前記第三の形態の架橋構造を形成し得る架橋性シラン系単量体(好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するもの、より好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を加水分解及び縮合することにより形成されたポリシロキサン骨格を含有することが好ましい。
【0025】
前記樹脂粒子は、重合体を構成する全単量体成分中、架橋性単量体(架橋性ビニル基含有単量体、架橋性シラン系単量体)の含有量が5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、80質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0026】
前記所定の平均粒子径、微小粒子の含有量を有する樹脂粒子の製造方法としては、例えば、シード粒子調製工程、吸収工程、重合工程を含むシード重合法において、吸収工程で使用する単量体成分の乳化液における単量体成分の液滴径(ds)とシード粒子の個数平均粒子径(de)との比(de/ds)を制御する方法等が挙げられる。単量体成分の液滴径を制御し、単量体成分の液滴総表面積を増加させることで、シード粒子への単量体成分の吸収効率を高めることができるため、微小粒子の含有量を低減することができる。なお、微小粒子の含有量を低減する方法として、分級(例えば、篩い分け)も採用することができる。しかしながら、微小粒子は、比較的粒子径の大きい粒子の表面に付着し易いため、分級により含有量を0.10%以下にすることは困難である。
【0027】
前記シード重合法では、例えば、有機材料のみから構成される粒子を合成する場合には、前記ビニル系単量体からシード粒子を調製すればよく、有機材料とポリシロキサン骨格を有する材料から構成される粒子を合成する場合には、前記シラン系単量体からシード粒子(ポリシロキサン粒子)を調製すればよい。
【0028】
ビニル系単量体からシード粒子を調製する方法は、従来用いられる方法を採用することができ、例えば、ソープフリー乳化重合、分散重合等が挙げられる。この場合、シード粒子を構成する単量体成分としては、スチレン等のスチレン系単官能モノマーが好ましい。
【0029】
シラン系単量体からシード粒子(ポリシロキサン粒子)を調製する方法としては、水を含む溶媒中で加水分解して縮重合させる方法が挙げられる。前記シラン系単量体としては、上述した架橋性シラン系単量体、非架橋性シラン系単量体を用いることができる。また、ポリシロキサン骨格とビニル重合体を複合化させる場合には、シラン系単量体として、ラジカル重合性基を有する架橋性シラン系単量体を使用し、重合性ポリシロキサン粒子(ラジカル重合性基を有するポリシロキサン骨格を有する粒子)を調製すればよい。加水分解と縮重合は、一括、分割、連続等、任意の方法を採用できる。加水分解し、縮重合させるにあたっては、触媒としてアンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の塩基性触媒を好ましく用いることができる。
【0030】
前記水を含む溶媒中には、水や触媒以外に有機溶剤を含めることができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロへキサン等の(シクロ)パラフィン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等を挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
加水分解縮合ではまた、アニオン性、カチオン性、非イオン性の界面活性剤や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の高分子分散剤を併用することもできる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。加水分解縮合は、原料となるシラン系単量体と、触媒や水及び有機溶剤を含む溶媒を混合した後、温度0℃以上100℃以下、好ましくは0℃以上70℃以下で、30分以上100時間以下撹拌することにより行うことができる。
【0032】
前記吸収工程では、シード粒子に単量体成分を吸収させる。吸収させる方法は、シード粒子の存在下に、単量体成分を存在させた状態で進行するものであれば特に限定されない。したがって、シード粒子を分散させた溶媒中に単量体成分を加えてもよいし、単量体成分を含む溶媒中にシード粒子を加えてもよい。なかでも、前者のように、予めシード粒子を分散させた溶媒中に、単量体成分を加えるのが好ましい。特に、加水分解、縮合工程で得られたシード粒子を反応液(シード粒子分散液)から取り出すことなく、この反応液に単量体成分を加える方法は、工程が複雑にならず、生産性に優れるため好ましい。前記吸収工程において、単量体成分の添加のタイミングは特に限定されず、一括で加えてもよいし、数回に分けて加えてもよいし、任意の速度でフィードしてもよい。
【0033】
ここで、樹脂粒子中の微小粒子量を低減するために、単量体成分を加えるにあたって、単量体成分を予め乳化剤で水又は水性媒体に分散させた乳化液とし、かつ、乳化液中の単量体成分の液滴径の体積平均粒子径を0.8μm以上、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.2μm以上、10μm以下、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下に制御する。なお、液滴径の制御は、乳化液調整時の攪拌速度等を適宜調整すればよい。攪拌方法は特に限定されないが、例えば、ホモミクサー等を用いればよい。
【0034】
またこの時、単量体成分の液滴径(ds)とシード粒子の個数平均粒子径(de)との比(de/ds)は、5.0以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは3.0以下である。前記比(de/ds)を上記範囲内とすることにより、得られる樹脂粒子の微小粒子の含有量を低減することができる。
【0035】
前記乳化剤は特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン性界面活性剤が、シード粒子、単量体成分を吸収した後のシード粒子の分散状態を安定化させることもできるので好ましい。これらの乳化剤は、1種のみを使用しても2種以上を併用してもよい。
【0036】
また、単量体成分を乳化剤で乳化分散させる際には、単量体成分の質量に対して0.3倍以上10倍以下の水や水溶性有機溶剤を使用するのが好ましい。前記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、sec‐ブタノール、t‐ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。
【0037】
吸収工程は、0℃以上60℃以下の温度範囲で、5分間以上720分間以下、撹拌しながら行うのが好ましい。これらの条件は、用いるシード粒子や単量体の種類等によって、適宜設定すればよく、これらの条件は1種のみ、あるいは2種以上を合わせて採用してもよい。吸収工程において、単量体成分がシード粒子に吸収されたかどうかの判断については、例えば、単量体成分を加える前及び吸収段階終了後に、顕微鏡により粒子を観察し、単量体成分の吸収により粒子径が大きくなっていることを確認することで容易に判断できる。
【0038】
重合工程では、シード粒子に吸収された単量体成分を重合反応させる。ここで、シード粒子が重合性ポリシロキサンである場合には、吸収させた単量体成分と重合性ポリシロキサン骨格が有するラジカル重合性基とが重合して、ポリシロキサン骨格とビニル重合体とが複合化する。重合方法は特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤を用いる方法が挙げられ、前記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化物系開始剤や、アゾ系開始剤等が使用可能である。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0039】
ラジカル重合を行う際の反応温度は40℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上であり、100℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以下である。反応温度が低すぎる場合には、重合度が十分に上がらず複合粒子の機械的特性が不充分となる傾向があり、一方、反応温度が高すぎる場合には、重合中に粒子間の凝集が起こりやすくなる傾向がある。なお、ラジカル重合を行う際の反応時間は、用いる重合開始剤の種類に応じて適宜変更すればよいが、通常、5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上であり、600分以下が好ましく、より好ましくは300分以下である。反応時間が短すぎる場合には、重合度が十分に上がらない場合があり、反応時間が長すぎる場合には、粒子間で凝集が起こり易くなる傾向がある。
【0040】
合成後の樹脂粒子の個数基準の平均粒子径は1.0μm以上、好ましくは1.1μm以上、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.3μm以上であり、2.5μm以下、好ましくは2.3μm以下、より好ましくは2.1μm以下、さらに好ましくは1.9μm以下である。
【0041】
本発明の導電性微粒子は、基材(樹脂粒子)表面に形成された少なくとも一層の導電性金属層を有する。導電性金属層を構成する金属としては特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム及びニッケル−リン、ニッケル−ホウ素等の金属や金属化合物、及び、これらの合金等が挙げられる。これらの中でも、金、ニッケル、パラジウム、銀、銅、スズが導電性に優れており好ましい。また、安価な点で、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、銀、銀合金、スズ、スズ合金が好ましく、中でもニッケル、ニッケル合金(Ni−P、Ni−B、Ni−Zn、Ni−Sn、Ni−W、Ni−Co、Ni−Ti)等が好ましい。導電性金属層は、単層でもよいし複層であってもよい。複層の場合には、例えば、ニッケル/金、ニッケル/パラジウム、ニッケル/パラジウム/金、ニッケル/銀等の組合せが好ましく挙げられる。
【0042】
また、導電性金属層が硬い材質である程、樹脂粒子中の微小粒子に起因するショート発生が起こり易い傾向がある。そのため、導電性金属層が硬い材質である程、微小粒子を低減することによるショート抑制効果がより顕著となる。このような硬い材質からなる導電性金属層としてニッケル層、ニッケル合金層が挙げられる。なお、導電性金属層が柔らかい程ほどショートの発生が抑制されることから、導電性金属層を構成する金属としてニッケルを採用する場合、ニッケル合金とすることが好ましく、中でもNi−P合金、Ni−B合金が好ましい。これらのニッケル合金を採用する場合、Ni−P合金中のP含有量、及び、Ni−B合金中のB含有量は、4質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上である。P又はB含有量が多い程、ニッケル合金層が柔らかくなり、ショートの発生が一層抑制される。また、Ni−P合金のP含有量は15質量%以下が好ましく、Ni−B合金のB含有量は10質量%以下が好ましい。P含有量、B含有量が少ない程、金属層の電気抵抗値が低くなる。なお、ニッケル合金中のP、B含有量は、無電解ニッケルメッキ液中のP、B濃度や、メッキ液のpHを調整することで制御できる。
【0043】
前記導電性金属層の厚さは、0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、0.20μm以下が好ましく、より好ましくは0.18μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下である。導電性金属層の厚さが上記範囲内であれは、導電性微粒子を異方性導電材料として用いる際に、安定した電気的接続が維持でき、且つ、重合体粒子の機械的特性を十分に生かすことができる。金属層の厚さが、0.08μm以上、0.2μm以下である場合に、本発明における0.25〜0.70μmの微小粒子が所定値以下の樹脂粒子を用いる効果が顕著となるので好ましい。
【0044】
導電性金属層の形成方法は特に限定されず、例えば、基材表面に無電解メッキ法、電解メッキ法等によってメッキを施す方法;基材表面に真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等の物理的蒸着方法により導電性金属層を形成する方法;等により製造できる。これらの中でも特に無電解メッキ法が、大掛かりな装置を必要とせず容易に導電性金属層を形成できる点で好ましい。
【0045】
本発明の導電性微粒子の個数平均粒子径は、1.1μm以上が好ましく、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.3μm以上、特に好ましくは1.4μm以上であり、2.8μm以下が好ましく、より好ましくは2.6μm以下、さらに好ましくは2.4μm以下、特に好ましくは2.2μm以下である。個数平均粒子径がこの範囲内であれば、微細化、狭小化された電極や配線の電気接続に対して、好適に使用できる。
【0046】
また、本発明の導電性微粒子は、その表面が平滑であっても凹凸状であっても良い。導電性微粒子を異方性導電材料に使用する場合、バインダー樹脂を効果的に排除して電極との接続を行える点で、表面に複数の突起を有することが好ましい。突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる。
【0047】
2.樹脂被覆導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、導電性金属層の表面に、さらに絶縁性樹脂層を有するものであってもよい。上記絶縁性樹脂層としては、導電性微粒子の粒子間における絶縁性が確保でき、一定の圧力及び/又は加熱により容易にその絶縁性樹脂層が崩壊あるいは剥離するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンなどのポリオレフィン類;ポリメチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート重合体および共重合体;ポリスチレン;などの熱可塑性樹脂や特にその架橋物;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂;ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0048】
但し、基材となる樹脂粒子に比べて絶縁性樹脂層が硬過ぎる場合には、絶縁性樹脂層の破壊よりも先に樹脂粒子自体が破壊してしまうおそれがある。したがって、絶縁性樹脂層には、未架橋または比較的架橋度の低い樹脂を用いることが好ましい。
【0049】
前記絶縁性樹脂層は、単層であっても、複数の層からなるものであってもよい。例えば、単一又は複数の皮膜状の層;絶縁性を有する粒状、球状、塊状、鱗片状その他の形状の粒子を導電性微粒子の表面に付着した層;さらに、導電性微粒子の表面を化学修飾することにより形成された層;であってもよい。上記樹脂絶縁層の厚さは0.01μm〜1μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜0.5μmである。樹脂絶縁層の厚さが前記範囲内であれば、導電性微粒子による導通特性を良好に維持しつつ、粒子間の電気絶縁性が良好となる。
【0050】
3.異方性導電材料
本発明の導電性微粒子は、異方性導電材料の構成材料としても好適であり、本発明の導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料もまた、本発明の好ましい実施態様の1つである。異方性導電材料を相対向する基材同士や電極端子間に設けることで、電気的に接続することができる。なお、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料には、液晶表示素子用導通材料(導通スペーサーおよびその組成物)も含まれる。
【0051】
上記異方性導電材料は、本発明の導電性微粒子を用いてなるものであればその形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等、様々な形態が挙げられる。異方性導電ペーストは、例えば、導電性微粒子等とバインダー樹脂等を含む樹脂組成物をペースト状にすることにより得られる。得られた異方性導電ペーストは、例えば、適当なディスペンサーに入れられ、接続すべき電極上に所望の厚さで塗工され、塗工された異方性導電ペースト上に対向電極を重ね合わせ、加熱しながら加圧して樹脂を硬化させることにより、電極間の接続に使用される。異方性導電フィルムは、例えば、導電性微粒子等とバインダー樹脂等を含むフィルム形成用組成物に溶媒を加えて液状にし、この液をポリエチレンテレフタレート製等のフィルム上に塗布した後、溶媒を蒸発させることにより得ることができる。得られた異方性導電フィルムは、例えば、電極上に配置され、この異方性導電フィルム上に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0052】
前記異方性導電材料は、絶縁性のバインダー樹脂中に、本発明の導電性微粒子を分散させ、所望の形態とすることで製造されるが、もちろん、絶縁性のバインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用して、基材間あるいは電極端子間を接続してもかまわない。
【0053】
上記バインダー樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などの熱可塑性樹脂;グリシジル基を有するモノマーやオリゴマーおよびイソシアネートなどの硬化剤との反応により硬化する硬化性樹脂組成物や、光や熱により硬化する硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
【0054】
本発明の異方性導電材料において、導電性微粒子の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、異方導電性材料の全量に対して1体積%以上が好ましく、より好ましくは2体積%以上、さらに好ましくは5体積%以上であり、50体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下である。導電性微粒子の含有量が少なすぎると、充分な電気的導通が得られ難い場合があり、一方、導電性微粒子の含有量が多すぎると、導電性微粒子同士が接触してしまい、異方性導電材料としての機能が発揮され難い場合がある。
【0055】
本発明の異方性導電材料におけるフィルム膜厚、ペーストや接着剤の塗工膜厚、印刷膜厚等については、使用する本発明の導電性微粒子の粒子径と、接続すべき電極の仕様とを考慮し、接続すべき電極間に導電性微粒子が狭持され、且つ接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるように、適宜設定することが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0057】
1.評価方法
1−1.平均粒子径
<乳化液中の単量体成分の液滴径>
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)により、0.7μm〜10μmの範囲で30000個の液滴の粒子径を測定し、体積平均粒子径を求めた。
<樹脂粒子>
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数平均粒子径を求めた。
<導電性微粒子>
フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製、「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、導電性微粒子3000個の粒子径(μm)を測定し、個数平均粒子径を求めた。
【0058】
1−2.微小粒子含有量
樹脂粒子0.05部をエーテル型非イオン性界面活性剤(花王社製、「エマルゲン(登録商標)430」)の10%水溶液2.5部とイオン交換水15部との混合液に超音波分散させ、分散液を調製した。なお、超音波分散は、超音波洗浄器の槽(総容量9.5L)に水2Lを入れ、ここに分散液17.55gを入れたビーカーを浸して、超音波(出力180W、周波数42kHz)を10min照射した。
この分散液を、フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製、「FPIA−3000」)を用いて総カウント数10万個で分析し、円形度0.95以上、0.25μm〜200μmの範囲の粒子総数A(個)を求めた。
続いて、0.25μm以上0.70μm以下の粒子径を有する微小粒子の総数B(個)を求め、下記式により粒子の含有量b(ppm)を求めた。また、樹脂粒子の個数平均粒子径をDとして、0.70μm超D/2μm以下の粒子径を有する粒子の総数C(個)を求め、下記式によりこの粒子の含有量c(ppm)を求めた。
微小粒子含有量b(ppm)=1000000×(B/A)
粒子含有量c(ppm)=1000000×(C/A)
【0059】
1−3.導電性金属層膜厚
フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製、「FPIA−3000」)を用いて、樹脂粒子3000個の粒子径、導電性微粒子3000個の粒子径を測定し、樹脂粒子の個数平均粒子径X(μm)、導電性微粒子の個数平均粒子径Y(μm)を求めた。そして、下記式に従って導電性金属層の膜厚を算出した。
導電性金属層膜厚(μm)=(Y−X)/2
【0060】
1−4.ACP試験
導電性微粒子20質量部にバインダー樹脂としてのエポキシ樹脂(三菱化学製、「JER828」)100質量部に硬化剤(三新化学社製、「サンエイド(登録商標) SI−150」)2質量部、及びトルエン50質量部を加え、三本ロールミルで攪拌し、異方性導電ペーストを得た。
得られた異方性導電ペーストを抵抗測定用の線を有した全面アルミ蒸着ガラス基板と30μmピッチに銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板間に挟み込み、5MPa、200℃の圧着条件で熱圧着して試験片を作製した。試験片100片について導通性試験を行いショートの有無を調べ、ショートが発生した割合を求め3段階で評価した。具体的には、ショートが発生しなかったものを「A」、ショートの発生率が5%未満のものを「B」、ショートの発生率が5%以上のものを「C」とした。
【0061】
2.導電性微粒子の製造
2−1.製造例1
樹脂粒子
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水2200部と、25%アンモニア水24部、メタノール200部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100部を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、メタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を調製した。このポリシロキサン粒子の個数基準の平均分散粒子径は0.83μmであった。
【0062】
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製:「ハイテノール(登録商標)NF−08」)の20%水溶液7.5部をイオン交換水300部で溶解した溶液に、スチレン150部、ジビニルベンゼン(新日鐵化学社製、「DVB960」)150部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製:「V−65」)4.5部を溶解した溶液を加え、高速乳化分散機(プライミクス社製、「T.K.ホモミクサーMarkII Model2.5」)を用い、モータ回転数8000rpm、攪拌時間5分間の条件で乳化分散させて単量体成分の乳化液を調製した。得られた乳化液中の単量体成分の液滴径を測定すると、体積平均粒子径は3.55μmであった。
反応開始から2時間後、得られた乳化液を、ポリシロキサン粒子(シード粒子)の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体を吸収して肥大化していることが確認された。
【0063】
次いで、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の20%水溶液20部を加え、窒素雰囲気下で反応液を65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下120℃で2時間真空乾燥し、樹脂粒子No.1を得た。この樹脂粒子No.1の個数平均粒子径は1.54μmであった。
【0064】
無電解メッキ
樹脂粒子に水酸化ナトリウムによるエッチング処理を行った後、二塩化スズ溶液によるセンシタイジングを行った。さらに二塩化パラジウム溶液によるアクチベーティングを行い、パラジウム核を形成させた。次いで、パラジウム核を形成させた触媒化樹脂粒子10部をイオン交換水500部に添加し、超音波処理を10分間行い、粒子を十分分散させて微粒子懸濁液を得た。別途、硫酸ニッケル六水和物濃度が50g/L、次亜リン酸ナトリウム一水和物濃度が20g/L、クエン酸ナトリウム濃度が50g/Lであり、水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.5に調整した無電解ニッケルメッキ液を調製した。前記微粒子懸濁液を50℃で撹拌しながら、該無電解ニッケルメッキ液100部を徐々に添加して、膜厚が0.1μmになるまで基材粒子の無電解ニッケルメッキを行った。ニッケルメッキ層を形成させた後、金置換メッキを行い0.02μmの金層を形成させた。その後、イオン交換水で洗浄後、アルコール置換を行って真空乾燥を行い、導電性微粒子No.1を得た。導電性微粒子No.1を王水でメッキ膜を溶解し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP、島津製作所社製:「ICPE−9000」)で分析した結果、ニッケルメッキ層におけるリン含有率は7.2%であった。
【0065】
2−2.製造例2
単量体成分の乳化液の調製条件を、高速乳化分散機のモータ回転数を10000rpm、攪拌時間を7分間に変更したこと以外は製造例1と同様にして樹脂粒子No.2を作製した。なお、乳化液における単量体成分液滴径の体積平均粒子径は2.32μmであった。この樹脂粒子No.2の個数平均粒子径は1.54μmであった。得られた樹脂粒子No.2に対して、製造例1と同様に無電解メッキを行い、導電性微粒子を得た。
【0066】
2−3.製造例3
単量体成分の乳化液の調製条件を、高速乳化分散機のモータ回転数を4000rpm、攪拌時間を3分間に変更したこと以外は製造例1と同様にして樹脂粒子No.3を作製した。なお、乳化液における単量体成分液滴径の体積平均粒子径は8.28μmであった。この樹脂粒子No.3の個数平均粒子径は1.53μmであった。得られた樹脂粒子No.3に対して、製造例1と同様に無電解メッキを行い、導電性微粒子を得た。
【0067】
2−4.製造例4
重合後に得られた樹脂粒子100部に対し、イオン交換水400部を加え超音波分散させた後、2000rpmで5分間遠心分離にかけたこと以外は、製造例3と同様にして樹脂粒子No.4を作製した。この樹脂粒子No.4の個数平均粒子径は1.54μmであった。得られた樹脂粒子No.4に対して、製造例1と同様に無電解メッキを行い、導電性微粒子を得た。
【0068】
2−5.製造例5
単量体成分の乳化液の調製装置、調整条件を、高速乳化分散機(プライミクス社製、「T.K.ホモミクサーMarkII Model 20」)、モータ回転数を8000rpm、攪拌時間を10分間に変更したこと以外は製造例1と同様にして樹脂粒子No.5を作製した。なお、乳化液における単量体成分液滴径の体積平均粒子径は1.10μmであった。この樹脂粒子No.5の個数平均粒子径は1.55μmであった。得られた樹脂粒子No.5に対して、製造例1と同様に無電解メッキを行い、導電性微粒子を得た。
【0069】
2−6.製造例6
樹脂粒子
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水2000部と、25%アンモニア水24部、メタノール400部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100部を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、メタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を調製した。このポリシロキサン粒子の個数基準の平均分散粒子径は1.02μmであった。
【0070】
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製:「ハイテノール(登録商標)NF−08」)の20%水溶液7.5部をイオン交換水300部で溶解した溶液に、スチレン250部、ジビニルベンゼン(新日鐵化学社製、「DVB960」)250部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製:「V−65」)7.5部を溶解した溶液を加え、高速乳化分散機(プライミクス社製、「T.K.ホモミクサーMarkII Model2.5」)を用い、モータ回転数10000rpm、攪拌時間10分間の条件で乳化分散させて単量体成分の乳化液を調製した。得られた乳化液中の単量体成分の液滴径を測定すると、体積平均粒子径は2.45μmであった。
反応開始から2時間後、得られた乳化液を、ポリシロキサン粒子(シード粒子)の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体を吸収して肥大化していることが確認された。
【0071】
次いで、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の20%水溶液30部を加え、窒素雰囲気下で反応液を65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下120℃で2時間真空乾燥し、樹脂粒子No.6を得た。この樹脂粒子No.6の個数平均粒子径は2.15μmであった。得られた樹脂粒子No.6に対して、製造例1と同様に無電解メッキを行い、導電性微粒子を得た。
【0072】
2−7.製造例7
製造例2で得られた樹脂粒子No.2に対し、水酸化ナトリウムによるエッチング処理を行った後、二塩化スズ溶液によるセンシタイジングを行った。さらに二塩化パラジウム溶液によるアクチベーティングを行い、パラジウム核を形成させた。次いで、パラジウム核を形成させた触媒化樹脂粒子10部をイオン交換水500部に添加し、超音波処理を10分間行い、粒子を十分分散させて微粒子懸濁液を得た。別途、硫酸ニッケル六水和物濃度が50g/L、次亜リン酸ナトリウム一水和物濃度が20g/L、クエン酸ナトリウム濃度が50g/Lを含み、水酸化ナトリウム水溶液でpHを11.0に調整した無電解ニッケルメッキ液を調製した。微粒子懸濁液を50℃で撹拌しながら、無電解ニッケルメッキ液100部を徐々に添加して、膜厚が0.1μmになるまで基材粒子の無電解ニッケルメッキを行った。ニッケルメッキ層を形成させた後、金置換メッキを行い0.02μmの金層を形成させた。その後、イオン交換水で洗浄後、アルコール置換を行って真空乾燥を行い、導電性微粒子No.7を得た。導電性微粒子No.7を王水でメッキ膜を溶解し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP、島津製作所社製:「ICPE−9000」)で分析した結果、ニッケルメッキ層におけるリン含有率は3.8%であった。
【0073】
2−8.製造例8
製造例5で得られた樹脂粒子No.5に対し、製造例7と同様の無電解メッキを行い、導電性微粒子を得た。
【0074】
各製造例で得た導電性微粒子について、基材粒子の個数平均粒子径及び微小粒子含有量、並びに評価結果を表1に示した。
【0075】
【表1】

【0076】
製造例1、2、5〜8の導電性微粒子は、樹脂粒子の個数平均粒子径が1.0μm〜2.5μmであり、且つ、粒子径が0.25μm〜0.70μmである微小粒子含有量が0.10%以下の場合である。これらを用いたACPは、いずれも電気的接続時のショート発生率が低かった。また、これらの導電性微粒子の評価結果より、粒子径が0.70μm超D/2μm以下(Dは樹脂粒子の個数平均粒子径)である粒子の含有量は、ショート発生率に影響しないことがわかる。
製造例3、4は、樹脂粒子の微小粒子含有量が0.10%を超える場合であるが、いずれもペースト作製時に微小粒子のメッキ層が剥離することで、電気的接続時のショート発生率が高くなった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の導電性微粒子は、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等の異方性導電材料に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子からなる基材と、該基材の表面に形成された少なくとも一層の導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、
前記樹脂粒子の個数平均粒子径が、1.0μm〜2.5μmであり、粒子径が0.25μm〜0.70μmの範囲内にある微小粒子の含有量(個数基準)が0.10%以下であることを特徴とする導電性微粒子。
【請求項2】
導電性微粒子自体の個数平均粒子径が、1.1μm〜2.8μmである請求項1に記載の導電性微粒子。
【請求項3】
個数平均粒子径が、1.0μm〜2.5μmであり、粒子径が0.25μm〜0.70μmの範囲内にある微小粒子の含有量(個数基準)が0.10%以下であることを特徴とする、導電性微粒子基材用の樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の導電性微粒子を含有することを特徴とする異方性導電材料。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の導電性微粒子と、バインダー樹脂とを含有することを特徴とする異方性導電ペースト。

【公開番号】特開2013−30439(P2013−30439A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167566(P2011−167566)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】