説明

小さい光学的層厚さ、狭い滞留時間分布および多い処理量で光化学プロセスを連続的に実施するためのデバイス

本発明は、光化学反応を連続的に実施するためのデバイスに関する。かかるデバイスでは、狭い滞留時間分布および大きい処理速度で小さい光学的層厚さの照射が容易に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光化学反応を連続的に実施するデバイスであって、狭い滞留時間分布および大きい処理速度で小さい光学的層厚さの照射が容易に行えるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光化学反応は、マイクロ反応技術を用いることによって特に有利に実施することができる。マイクロ反応技術では、基本的には、最小特性の寸法が数マイクロメーター〜数ミリメーターの範囲となった要素が用いられる。物質、熱および/または照射線の輸送が行われる装置では小さい寸法は特に有利である。照射線の照射が主たる工程となった光化学反応の技術的に好適な態様では、用いられるビーム源が特に経済的に最適に利用される必要がある。このため、未使用の照射線が残されることがないように、また、照射される出発溶液が量的にできる限り反応に付されるように、溶液へと入射される照射線が最適に利用される。ランベルト−ベールの法則によると、吸光は、光学的層厚さ、吸収する物質の濃度および吸光係数に依存している。常套の光化学反応は比較的大きい体積で操作されるので、プロセス媒質(process medium)を攪拌し、透明な壁の近傍でプロセス媒質が最大限に入れ替わって照射線が導入されるようにしている。更に、フォトリアクター(または光化学反応用リアクター)は、しばしば回路で操作される。このような態様では、「照射時間」と「出発物質の最大限使用可能な濃度」との間で折り合いがつくポイントを実験的に把握しなければならない。
【0003】
性能を向上させる手法の1つとしては、照射されるプロセス媒質を空間的(体積的)に制限することである。つまり、照射されるプロセス媒質を液体層として用い、プロセス媒質の全深さにて照射線が十分に吸収される液体層厚さにすることである。入射される照射線の90%が吸収される最適な層厚さd90%は、ランベルト−ベールの法則から次のように算出される:
90%=1/(εc)
(ε=吸光係数、c=濃度)
【0004】
フォトリアクターは従来より知られている。例えば、DE10341500.9Aには、滞留時間分布を狭くすべくマイクロチャンネルに沿って底部から上方へと薄い層厚さとなるような流れを形成するフォトリアクターが開示されている(尚、照射源としての高出力発光ダイオードが用いられている)。
【0005】
EP1415707A1には、流体流れに光触媒要素が加えられるマイクロ流体フォトリアクターが開示されている。DE10209898A1には、好ましくは100〜500μmの直径を有するコーティングされたチャンネルで不均一触媒化学反応を実施する平面状透明カバーを備えたフォトリアクターが開示されている。
【0006】
US2003/0118486A1には、10〜5000μmの幅のチャンネルで並列に化学反応を実施するための構成が開示されている。2次元的または3次元的に反応流体が流れることになる。まず、反応流体は、光化学フローセルを流れた後、反応チャンバー(照射は行われない)を流れることになる。
【0007】
EP1400280A1には、圧力ベッセルを備えたマイクロリアクターが開示されている。かかるマイクロリアクターは、リアクターの内部と周囲環境との間で生じ得る圧力を回避することができるので、流速が大きい場合においてマイクロチャンネルの変形が回避されている。従来技術では、マイクロリアクターを光化学用途で用いるべく、圧力ベッセル内に十分な出力の適当な照射源を取り付けるには、技術的に相当に手間/費用がかってしまう。
【0008】
US2004/0241046A1には、透明カバーを備えたマイクロリアクターの構成が開示されている。かかるマイクロリアクターは、光化学用途に適当であるものの、処理量が大きいと層厚さの十分な安定性を得ることができない。
【0009】
US2003/0042126A1には、同心に設けられた2つのチューブから実質的に構成された照射装置が開示されている。しかしながら、かかる装置では、層厚さが、開示の用途に関連するものに限定して適用されるにすぎない。
【0010】
現在までに提案されている解決手法の全てに共通する特徴は、処理媒質の狭い滞留時間分布が達成されておらず、かかる解決手法は大きい処理速度に対してのみ限定的に用いることができることである。現在までに開示されている多くのマイクロフォトリアクターでは、平面状の照射ゾーンが用いられている。化学品を製造するのに適当な処理量でフォトリアクターを操作するに際して、チャンネルが小さいと、チャンネルの一般的に透明なカバー(照射線の入射のために用いられる透明カバー)に対して高い内圧が必然的に加えられてしまう。例えば、流速が10ml/minであって、厚さ20μm×幅10cm×長さ10cmの照射ゾーンである場合、圧力が約3.2バールとなってしまう。このような構成における圧力損失は、使用される媒質の粘度に依存しており、粘度が増加すれば圧力損失も増加する。尚、1.3mPa・sの動的粘度が想定されている。このような圧力は、1cm厚さのガラス板でさえ変形させてしまうものであり、適当に設けられていない場合では、ガラス板が破壊されてしまうことになる。このような変形に起因して、チャンネルの寸法が変化することになり、特に光学的層の厚さが許容範囲を超えて変化することになる。つまり、流速が大きいとマイクロフォトリアクターの利点が得られなくなってしまう。
【0011】
このことから分かるように、現在までのところ、マイクロチャンネルで照射を行うことを特徴とし、かつ、流速が大きい条件で操作されるように構成されている化学リアクターは存在していないといえる。
【0012】
現在までに提案されている解決手法の全てに共通する別の特徴は、システムの要素において、プロセス媒質が、部分的に、反応空間で異なる時間長さに付されることであり、それによって、反応に関する滞留時間分布の幅が非常に大きくなることである。反応領域において比較的短い時間しかプロセス媒質が付されないと化学反応が十分に行われない一方、反応領域(例えば、デッドゾーン)で非常に長い時間にプロセス媒質が付されると、かかるデッドゾーンでは照射が不足するために所望の光化学反応が生じず、望ましくない逐次反応が生じ得る。それゆえ、最適な処理量、選択率および反応収率を達成するのが難しくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上述のような従来技術の不利益を有さないデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことではあるが、連続プロセスで光化学反応を実施するデバイスとして、照射される媒質の層厚さ(layer thickness)が流体圧力に関係なく照射方向に一定に維持されるマイクロチャンネルを備えた反応ゾーン(reaction zone)を有して成るデバイスを見出した。
【0015】
それゆえ、本発明は、光化学反応を連続的に実施するのに好ましく使用されるデバイスであって、照射される反応媒質(または反応媒体、reaction medium)の照射方向における層厚さが流体圧力に関係なく一定に維持されるマイクロチャンネルを備えた照射可能反応ゾーンを有して成るデバイスに関する。
【0016】
本発明のデバイスは、図1または図2に示すような構造を有していることが好ましい。図1を参照して説明すると、本発明のデバイスは、例えば、LED、レーザーまたは放電ランプなどの光化学反応に必要とされる光源(照射源)に加えて、反応媒質のための適当な供給部(11)および排出部(11)を備えた少なくとも1つの反応ゾーン・プレート(1)、O−リングなどの少なくとも1つの封止要素(2)、透明カバー(3)、照射源のための開口部(6)を備えた支持要素(5)として用いられる取付けゴムマット、オプションとして照射源(8)用保持プレート(7)を好ましくは有して成る。
【0017】
図2を参照して説明すると、本発明のデバイスは、光化学反応に必要とされる光源に加えて、反応媒質のための適当な供給部および排出部(17〜21)を備えた少なくとも1つの軸対称反応ゾーン・ボディー(13)、O−リングなどの少なくとも2つの封止要素(15)、透明カバー(14)を好ましくは有して成る。透明カバー(14)は好ましくは円錐形状に処理されたチューブである。
【0018】
図1に示す態様および図2に示す態様のいずれであっても、光源は、透明カバーを介して外側から反応媒質が照射されるように配置されることが好ましい。
【0019】
照射される媒質は、好ましくは反応温度で液体または気体の形態を有する物質を含んで成る。また、照射される媒質は、室温で固体であるものの、好ましくは反応温度で物理形態を液体または気体へと変化する物質を含んで成る。それゆえ、あらゆる無機物質または有機物質、更には有機金属物質を使用してもよい。反応温度は、好ましくは−60℃〜200℃、より好ましくは0℃〜30℃である。
【0020】
反応ゾーンに設けられたマイクロチャンネルは、直線状に延在してもよいし、湾曲して延在してもよいし、あるいは、蛇行して若しくは向きを変えるように延在していてもよい。その場合、反応流体は、マイクロチャンネルに沿って底部(下方)から上方へと流れることが好ましい(即ち、上昇するフィルムとして流れることが好ましい)。かかるチャンネルは、好ましくは10μm〜50cm、より好ましくは10μm〜25cm、更に好ましくは10μm〜1000μmである。
【0021】
ある態様では、フィルムは、好ましくは1〜50cmの幅および対応する層厚さで照射ゾーンを流れる。かかる態様では、更に区画(または領域)に分けることなく、「処理ゾーン」および「念入りに構成された技術的構成を有する照射ゾーン」において流れが均一となることが求められる。
【0022】
照射される反応媒質の層厚さは、特に好ましくは10〜1000μmである。照射される反応媒質の層厚さは、本発明のデバイスで一定に維持されることが好ましい(照射ゾーン約250mmに対して約1μm以内の測定精度)。
【0023】
本発明のある態様において、本発明のデバイスは、少なくとも1つの支持要素によって張力(tension)が加えられている透明材料(または「少なくとも1つの支持材料によって引っ張られている透明材料」)で反応ゾーンがカバーされていることを特徴としている。「張力(または引っ張り)」に起因して、流体の圧力に抗する対抗圧力が透明プレートに形成され、かかる対抗圧力によって透明プレートが所望の形状および位置に保持されることになる。
【0024】
透明材料は、好ましくはガラス(例えば、石英ガラス、ホウ珪酸ガラスなど)または透明プラスチック(例えば、PMMA、PVC、ポリカーボネート、PET、PVDF、PTFE、PIなど)であり、プレート形態で用いられることが好ましい。
【0025】
本明細書にいう「支持要素」は、好ましくは、適当なデバイスによって透明カバーへと押圧され得る弾性材料(例えばゴムマットまたはゴム要素)であり、あるいは、金属もしくはプラスチックなどの他の適当な材料から成る機械要素である。支持要素の弾性特性によって、ガラス・プレートには最大限に均一に張力が加えられることになる。
【0026】
光化学反応を連続プロセスで実施する本発明のデバイスは、反応媒質の供給用のマイクロチャンネルが組み込まれた又は(例えばリソグラフィーによって)形成された反応ゾーン・プレート、透明カバー、1つ以上の弾性支持要素および適当なビーム源を好ましくは有して成る。
【0027】
かかるガラス・プレート上には、好ましくは弾性材料から成るプレートが設けられる。「好ましくは弾性材料から成るプレート」は、
(i)流体側とは反対の側部からガラス・プレートを支持し、対抗圧力を加え、それゆえ、ガラス・プレートが撓む(又は曲がる)ことを防止すると共に、
(ii)照射線が入射されるための開口部を備えている。
【0028】
開口部は、照射デバイスが収容できるような大きさであることが好ましく、あるいは、照射線が十分に通過できるような大きさであることが好ましい。
【0029】
マイクロチャンネルは、常套の手法で反応ゾーン・プレートにマイクロ技術により組み込んでよく、あるいは、マイクロチャンネルを平面状形態または円錐状形態で設けてもよく、そのために、透明カバーと反応ゾーン・プレートとの間に配置されるスペーサーを使用してもよい。スペーサーは、ワイヤーから成るものであってよく、または、金属シートもしくはプラスチック・シートから成るものであってよい(例えばリング形状または他の形状であってよい)。金属シートまたはプラスチック・シートは、化学的に不活性であって形状的に安定であることが好ましい。
【0030】
好ましい態様において、マイクロ技術の形成法によってマイクロチャンネルが組み込まれた平面状反応ゾーン・プレート、あるいは、金属もしくは透明カバー用プラスチックから成るスペーサーを1つ以上使用することによってマイクロチャンネルが形成された平面状反応ゾーン・プレートが使用される。許容されるパラメーターを有する流れ条件となっている限り、個々のチャンネルへと横方向に分割されていない所望の小さい層厚さを有する幅広い液体フロントを使用してもよい。かかる態様では、対抗圧力を生じさせる支持構造は、適当な開口部を有する格子もしくはマットから構成されていてよく、あるいは、弾性材料(好ましくは、バイトン、ゴム、ラテックス、シリコンなどのエラストマー・プラスチック)から成る個々の支持要素から構成されていてもよい。
【0031】
本発明の好ましい態様において、反応ゾーン及びそれを包囲する透明カバーは、流体圧力によって機械的に変形しないように構成されている。
【0032】
これは、反応ゾーン(reaction zone)およびカバー(covering)を同軸に構成することによって達成される(例えば図2参照)。好ましくは、反応ゾーンおよびカバーは、相互に垂直に嵌まり込んで同軸に配置された円錐形状のボディーおよびチューブから成る。この場合、ボディーとチューブとの間隔によって規定される層厚さは、かかるボディーおよびチューブを垂直方向に動かすことによって調整される。
【0033】
外側のチューブは、流体チャンネルをカバーする「精密に処理された石英チューブ」から成ることが好ましい。また、内側のボディーは金属(例えばステンレス鋼、チタン、ニッケル系合金)から成ることが好ましい。外側チューブと内側ボディーとの間の間隔、即ち、反応流体の層厚さは、垂直に設けられている外側チューブおよび内側ボディーを垂直方向に動かすことによって決定される。そのように垂直方向に動かすことは、適当な機構によって行うことができる。
【0034】
更に、同軸配置は、1つの位置にスロット(細長い穴)が形成されたチューブから内側のボディーが形成されるように構成してもよい。チューブは、スロットの位置において外側が封止されており、クランプ構成によって正確に一体的に引っ張られるようになっている。このようにして、内側ボディーの直径を変えることができるので、層厚さの調整が可能となる。かかる配置では、実験によって層厚さを把握できる。例えば、適当な波長感度および濃度を有する化学光量計を導入することによって、層厚さを把握することができる。
【0035】
好ましい態様では、反応ゾーンは、好ましくはスチールまたはセラミックから成る凸形状のボディー(反応ゾーン・ボディー)の側面に存在しており、処理媒質の所望の層厚さが達成されるように透明チューブで包囲されている。端部においては、チューブおよびボディーは、適当なフレームによって中心に位置するように施されており、流体が供給されることになる。熱的に制御するために、反応ゾーン・ボディーは、好ましくは、熱制御媒体が通過できるチャンネルが設けられた構造を有している。ボディーの温度は温度センサーによって測定される。照射源は、更なるチューブ(例えばプラスチックまたはスチールから成るチューブ)に好ましくは設けられている。かかるチューブは、透明チューブの上方に設けられており、2つのチューブの間には支持要素が配置されている。支持要素は、透明チューブの外側に縦方向(または長手方向)に分布するバー(棒状部材)から形成されるものであってよい。
【0036】
本発明のかかる態様の反応ゾーンのカバーのための透明材料としては、好ましくは、チューブの形態に処理されたガラス(例えば、石英ガラス、ホウ珪酸ガラスなど)または透明プラスチック(例えば、PMMA、PVC、ポリカーボネート、PET、PVDF、PTFE、PIなど)が用いられる。
【0037】
本発明の上述した全ての態様において、光化学反応の照射時間は、処理媒質の流速を変えること及び/または反応ゾーンの幾何学的形状のサイズを変更することによって、要件を満たすべく調整することができる。
【0038】
本発明のデバイスは、デバイス内の滞留時間分布が狭くなるように反応流体が好ましくは重力に抗して流れることを特徴としている。重力に抗して小さい層厚さとして強制的に流れる(上昇するフィルムとして流れる)ことに起因して、流体は、壁部の既知の粘着効果によってもたらされる抵抗(抵抗)の影響を受けることになる。特に、小さいチャンネルの通常放物線状の流速分布がフラット化する。
【0039】
好ましくは、照射源として、ダイオード・レーザー、発光ダイオードまたはそれらの組合せ等の有機半導体光源または無機半導体光源が用いられる。放電ランプも照射源として用いてもよい。特に好ましい態様では、小さいスペクトルバンド幅、高効率およびコンパクトな構造によって特徴付けられる高性能LED構成が使用される。マイクロ光リアクター全体としての照射量は、用いられる照射源の総数およびデバイスで用いられる照射能力に依存する。
【0040】
照射源がコンパクトであるので、行われるべき合成に必要な照射波長および照射量の点で容易に変更を施すことができるデバイスを得ることができる。本発明のデバイスでは、照射ゾーンに沿って波長プロファイルを容易に設定することができる。例えば、最初は特定の波長または特定の波長範囲で照射を行い、最後には異なる波長で照射を行うようにできる。このようにして、逐次的な光化学反応または多段階反応を最適に行うことができる。異なるビーム源を用いることによって、波長の変更が可能である。あるいは、半導体光源(レーザー・ダイオード、発光ダイオード)の場合では、冷却温度または操作電流を変えることによって波長を変更することができ、照射波長のより精密な制御が実質的に可能となる。半導体光源は、温度依存性および電流依存性の発光スペクトルが一般的に生じることになる。
【0041】
本発明の別の態様では、マイクロチャンネルは、触媒活性物質でコーティングされていてもよく、反応ゾーンの内側または外側が触媒活性物質でコーティングされていてもよい。不均一触媒活性物質によるコーティングは、光化学反応自体に影響を与えたり、または、光化学反応自体を開始させたりし、あるいは、その前の反応工程またはその後の反応工程に対して影響を与えることができる。
【0042】
触媒活性物質として、種々の金属酸化物(例えば、TiO、Al、SiO、ZrO、ゼオライトなど)、有機染料(例えば、適当な担体に固定化されたフタロシアニン染料など)、それらの物質の混合物、または、それらの物質に属し得るもの(それらの物質の下位概念に属する物質)を用いてもよい。コーティングは、例えば、ゾル−ゲル法によって適用することができる。
【0043】
平面状または軸対称形状のデバイスのマイクロチャンネルは、カバーと反応ゾーン・プレートとの間に配置されるワイヤーによって形成することができる。
【0044】
最後に、マイクロチャンネルは、マイクロ加工技術を用いて反応ゾーン・プレートに組み込んでもよい。マイクロチャンネル自体は、直線状に延在してもよいし、湾曲して延在していてもよいし、あるいは、蛇行して若しくは向きを変えるように延在していてもよい。
【0045】
特にマイクロチャンネルが蛇行して延在する場合では、照射時間が長くなる利点が供される。また、マイクロチャンネルが向きを変えるように延在する場合、反応流体が意図的に向きを変えることになり、マイクロチャンネル内で拡散混合が行われるように構成することができる。照射量がより多くなるように、チャンネルの下流側の流体ゾーンを前方の上流側へと配置してもよい。
【0046】
光化学反応自体は一般的にあまり温度依存性を有していないものの、温度制御を必要とする副反応または逐次反応が通常存在する。更に、多くの照射源は、赤外スペクトル範囲に相当多くの発光成分を有するので、多くの媒質が加熱され得る。それゆえ、必要に応じて、デバイスの反応ゾーンの熱制御を行ってもよい。かかる熱制御は、熱制御用流体が循環できるチャンネルを、プレートまたはシリンダーに組み込むことによって行うことが好ましい。用いられる小さい流体層は、効率的な伝熱を可能とし、反応ゾーン・プレートまたは反応ゾーン・ボディーに取り付けられた温度センサーによって温度制御が満足のいくように行われる。熱制御用チャンネルを好適に配置することによって、生じ得る逐次反応および副反応の熱制御を可能にする温度プロファイルを設定できる。
【0047】
デバイスの別の好ましい態様では、マイクロミキサー、マイクロセパレーター、マイクロリアクター、マイクロ熱交換機などのマイクロ技術による得られる要素を更に含んでおり、それによって、光化学照射工程が含まれる非常にコンパクトな化学処理システムを得ることができる。
【0048】
また、本発明は、本発明のデバイスを用いて化学反応を実施する方法に関する。好ましくは、かかるデバイスは、均一な出発溶液から天然物質および薬理活性剤を製造するのに適している(ナノメーター範囲の粒子サイズの固体成分を用いても用いなくてもよい)。例えば、カプロラクタム、およびその誘導体、ローズオキサイド、同様の臭い物質および香味物質、異性体的に純粋なビタミンA、他のオレフィン、ハロゲン化化合物などを製造することができる。製造されるものに応じて、照射源、材料、処理パラメーターおよび周辺装置が選択される。
【0049】
更に、本発明は、例えば光環化、光ニトロソ化、光異性化、光ハロゲン化および光酸化などの化学反応を実施するための本発明のデバイスの使用(または使用法)にも関している。
【0050】
本発明の例示的な態様は図面に表されており、以下にてより詳細に説明される。尚、かかる態様はあくまでも例示にすぎず本発明を限定するものではない。
【0051】
図1は、平面状の反応ゾーン・プレート(1)を備えたデバイスの好ましい態様を模式的に示している。デバイスは、反応媒質のための適当な供給部および排出部(11)を備えた反応ゾーン・プレート(1)、反応ゾーンを封止するO−リング(2)、石英ガラス・プレート(3)、石英ガラス・プレートを保持するフランジ部材(4)、照射源のための開口部(6)を備えた支持要素としてのゴムマット(5)、照射源(8)のための保持プレート(7)を実質的に有して成る。デバイスは、適当なネジ(10)およびデバイス要素に設けられたネジ穴(9)を用いて組み立てられる。マイクロチャンネル(12)は、金属シートまたはプラスチック・シートから成るスペーサーによって形成されているが、石英ガラス・プレートと反応ゾーン・プレートとの間に配置され、フレームによって押圧されている。照射される反応媒質の種々の層厚さは、種々の厚さのシートを用いることによって達成することができる。フレームによって正確に押圧される弾性ゴムマット(5)によって、石英ガラス・プレートに背圧が加えられる。好ましくは、流体が重力に反して反応ゾーン・プレート上を流れるように、デバイスがセットされる。
【0052】
図2は、調整可能な層厚さを生じる本発明のデバイスの好ましい軸対称の態様を示している(図2(a)および図2(b)は、相互に接合される面をそれぞれ示している)。かかる態様は、外側が円錐形状になったステンレス鋼製のボディー(13)(安定性を向上させるために基礎部が設けられている)と、それに対して設けられる内側が円錐形状になった石英チューブ(14)(同様に基礎部が設けられていてもよい)と、ボディー(13)およびチューブ(14)を封止するO−リング(15)とから実質的に構成されている。ボディー(13)およびチューブ(14)は、蓋(図示せず)によってセンタリングされており、必要に応じて封止される。熱流体および反応流体は、蓋を介して供給および排出される。照射される反応媒質のデバイス内における流れは、矢印によって示している。反応媒質供給部(19)、および、ステンレス鋼ボディー(18)の内部に延在する少なくとも1つのボア(穴)を介して、反応媒質は、ステンレス鋼ボディーの周縁に形成された溝へと流れる。その後、反応媒質は、ボディー(13)とチューブ(14)との隙間を上方に流れることになる。周縁に形成された溝(17)では、照射された媒質が収集されることになり、少なくとも1つのボア(20)および媒質排出部(21)を介してデバイスから排出される。照射される媒質の層厚さは、ボディー(13)とチューブ(14)との間のギャップの幅によって規定され、ボディー(13)とチューブ(14)とを相対的に移動させることによって条件に合うように変更することができる。ボディー(13)とチューブ(14)とを相対的に移動させるには、適当な調整機構が用いられる(図2に図示せず)。層厚さの精度を増加させるスペーサー要素をボディー(13)とチューブ(14)との間に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、平面状の反応ゾーン・プレート(1)を備えたデバイスの好ましい態様を模式的に示している。
【図2】図2は、調整可能な層厚さを生じる本発明のデバイスの好ましい軸対称の態様を示している(図2(a)および図2(b)は、相互に接合される面をそれぞれ示している)。
【符号の説明】
【0054】
1:反応ゾーンを備えた底プレート
2:O−リング
3:石英ガラス・プレート
4:石英ガラス・プレートのためのフランジ部品
5:支持要素(ゴムマット)
6:支持要素に設けられた照射用開口部
7:照射源用支持プレート
8:照射源
9:ネジ穴
10:ネジ
11:反応媒質の供給口および排出口
12:金属またはプラスチック・シートから成るスペーサー
13:基礎部を備えた円錐形状のステンレス鋼シリンダー
14:基礎部を備えた円錐形状の石英チューブ
15:O−リング
16:反応媒質を供給するための周縁溝
17:反応媒質を排出するための周縁溝
18:反応媒質を供給するための内側ボア
19:反応媒質
20:反応媒質を排出するための内側ボア
21:反応媒質の排出

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射方向における反応媒質の層厚さが流体圧力に拘わらず一定に維持されるマイクロチャンネルを備えた照射可能な反応ゾーンを有して成る、化学反応を実施するためのデバイスであって、
反応ゾーンは、少なくとも1つの支持要素によって張力が加えられている透明材料によってカバーされており、ならびに/または
反応ゾーンおよびカバーが、相互に嵌まり込んで同軸に設けられる円錐形状のボディーおよびチューブとから成り、
ボディーとチューブとの間隔によって規定される層厚さが、ボディーとチューブとに共通する回転軸に沿ってボディーおよびチューブを動かすことによって調整されることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて光化学反応を実施することを特徴とする方法。
【請求項3】
光化学反応を実施するための請求項1に記載のデバイスの使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−528264(P2008−528264A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552554(P2007−552554)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000388
【国際公開番号】WO2006/079470
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(505211400)エーアフェルト・ミクロテッヒニク・ベーテーエス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (7)
【氏名又は名称原語表記】Ehrfeld Mikrotechnik BTS GmbH
【Fターム(参考)】