説明

小スポット蛍光X線(XRF)分析装置

手持ち型自蔵式蛍光X線(XRF)分析装置(200)が、ミリメートルサイズの特性寸法の試料(604)領域の元素組成を問い合わせるために試料(604)上に小さなX線スポットを生じさせる。分析装置(200)は、X線ビーム(304)を試料(604)上の所望の場所に向かって照準合わせするX線源を有する。分析装置(200)は、分析装置(200)を照準合わせしやすいようX線スポットによって問い合わせされる又は問い合わせされそうである試料(604)の部分の方へ差し向けられたディジタルカメラ(316)を有するのが良い。分析装置は、X線ビーム(304)によって照明される又は照明されそうである試料(604)の部分を指示するよう表示画像中にレチクル(908,910)を発生させるのが良い。分析装置(200)は、スポットと検出器(314)との間の光路に沿って位置決めされた検出器用コリメータ(1200)を有するのが良い。分析装置(200)は、ビーム(304)及び応答信号(312)が通過するチャンバと、パージガスをチャンバに提供するためのパージガスタンク(2502)の端部を受け入れる継手とを有するのが良い。分析装置(200)は、チャンバ内に存在している周囲ガスの量を検出するよう動作するセンサを有するのが良い。分析装置(200)内におけるレチクルの存在場所を較正する較正用標的(2200)及び方法(2300〜2308)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手持ち型の蛍光X線分析装置(「X線蛍光分析装置」とも称される)に関し、特に、試料上の小さなスポットをX線で照明(照射)するかかる分析装置に関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2007年2月12日にパイオレック等(Piorek, et al.)により出願された米国特許仮出願第60/889,465号(発明の名称:Small Spot X-Ray Fluorescence (XRF) Analyzer)の権益主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
種々の化学的組成を分析することは、多くの状況において重要であり、かかる状況としては、金属再生処理施設、各種工場における品質管理検査及び法医学的作業において金属の種類を突き止めて分離することが挙げられる。数種類の分析方法の利用が可能である。通常の一分析方法は、蛍光X線(XRF)を用いる。試料中に存在する各原子は、源からの高エネルギー一次X線に当てられると、特定の原子について本質的にフィンガープリントである独特な1組の特性蛍光X線を生じる。蛍光X線分析装置は、試料上のスポットをX線で照明し、サンプル中の種々の原子により放出された特性X線のスペクトルを測定することにより試料の化学的性質を求める。X線の主要源は、X線管又は放射性物質、例えば放射性同位体であるのが良い。
【0004】
本明細書で用いる「X線」という用語は、約1keV〜約150keVのエネルギーの光子を含み、したがって、励起状態の原子によりこの原子が脱励起したときに放出される特性X線、電子が原子によって散乱したときに放出される制動X線、一般にレイリー散乱放射線及びコンプトン散乱放射線とそれぞれ呼ばれる弾性散乱光子及び非弾性散乱光子及び励起状態の核が脱励起したときに放出されるこのエネルギー範囲内のガンマ線を含むであろう。
【0005】
繰り返しになるが、試料中に存在する各原子は、源からの高エネルギー一次X線に当てられると、特定の原子について本質的にフィンガープリントである独特な1組の特性蛍光X線を生じる。蛍光X線分析装置は、試料上のスポットをX線で照明し、サンプル中の種々の原子により放出された特性X線のスペクトルを測定することにより試料の化学的性質を求める。X線の主要源は、X線管又は放射性物質、例えば放射性同位体であるのが良い。
【0006】
原子レベルでは、十分なエネルギーの光子が試料中の原子に当たると、原子の内側軌道殻のうちの1つから電子が離脱しながら特性蛍光X線が生じる。原子は、次に、ほぼ瞬時に安定性を取り戻し、内側軌道殻に残された空孔を原子のより高いエネルギー(外側の)軌道殻のうちの1つからの電子で満たす。過剰のエネルギーは、原子の2つの量子状態相互間の差を特徴づけるエネルギーの蛍光X線の形態で放出される場合がある。
【0007】
試料中の種々の元素により放出される広範な種々の特性蛍光X線を誘起して測定することにより、XRF分析装置は、特定エネルギーで生じる蛍光X線の数に基づいて、試料中に存在する元素を突き止めることができるだけでなくこれらの相対濃度を計算することができる。化学組成範囲が知られている試料、例えばありふれた等級の金属合金を試験すると、XRF分析装置は、既知の材料のプログラムされた表又はライブラリを参照することにより試料を性質で識別することもできる。
【0008】
特別な環境に存在する場合を除き、軽元素(陽子数又はZ番号の小さい元素)の低い濃度を携帯型XRF分析装置では直接測定できないということが通例であることに注目することが重要である。というのは、エネルギーが約2.5キロエレクトロンボルト(keV)以下の蛍光X線は、空気の短い経路長内で吸収されるからである。この理由で、軽元素XRF分析装置は、関連のX線が通過する容積部のヘリウムガスパージか排気かのいずれかを必要とする。
【0009】
試料上のX線スポットのサイズは、試料のどれだけ多くが分析されるかを決定する。或る場合には、小さなX線スポットが望ましいことがある。例えば、プリント回路板上の小さな部品及びはんだ接合部を分析する(例えば、再生処理工場において)ユーザは、手持ち型XRF分析装置が非常に小さなスポットを生じれば、したがって、関心のある部品又ははんだ接合物を蛍光X線が周囲の部品を照射することなく、したがって、試験対象のアイテムの化学組成を前の物質の化学組成で混乱させることなく分析することができれば、携帯型XRF分析装置を用いることから恩恵を受けるであろう。別の例では、試料の一連の小さな互いに間隔を置いた部分を分析することにより、ユーザは、試料の均質性を判定することができるであろう。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一実施形態は、試料の組成を分析する手持ち型自蔵式試験機器を提供する。この試験機器は、試料から応答信号を発生させるために試料の少なくとも一部分上のスポットを照明する透過性放射線のビームを生じさせる源を有する。この源は、X線源、例えばX線管から成るのが良い。他の場合、この源は、放射性同位体は別のガンマ線源から成っていても良い。分析装置は、ビームのためのコリメータを有する。コリメータは、横方向寸法によって特徴づけられる遠位出口孔を有する。横方向寸法は、約8mm以下、約3mm以下、約1mm以下、又は約0.3mm以下であるのが良い。遠位出口は、試料から横方向寸法の約2倍以下の距離のところに配置される。場合によっては、遠位出口は、試料からほぼ横方向寸法以下の距離のところに配置される。遠位出口孔は、分析されるべき試料の表面に実質的に平行であるのが良い。試験機器は、応答信号を受け取り、出力信号を生じさせる検出器を有する。試験機器は、検出器に結合されていて、検出器からの出力信号を処理するようプログラムされたプロセッサ及び源及びプロセッサに電力を供給する電池を更に有する。
【0011】
コリメータは、管状コリメータから成るのが良い。試料の最も近くに位置するコリメータの遠位端部は、コリメータの残部よりも薄い壁厚(肉厚)を有するのが良い。コリメータの遠位端部は、テーパすると共に(或いは)段付けされているのが良い。コリメータの内部断面形状は、円形であっても非円形であっても良い。
【0012】
試験機器は、源と試料との間に配置されたシャッタを更に有するのが良い。シャッタは、選択的に、ビームがスポットを照明することができるようにし又はビームがスポットを照明するのを阻止することができる。コリメータとシャッタは、少なくとも2つの位置相互間で一緒に動くことができる。第1の位置では、ビームは、コリメータを通過してスポットを照明する。第2の位置では、ビームは、スポットを照明するのが阻止される。第2の位置では、シャッタは、ビームを蛍光化することができ、蛍光化された放射線を試料に当てることなく経路に沿って検出器に向かって差し向けることができる。
【0013】
試験機器は、ビームのための第2のコリメータを更に有するのが良い。第2のビームコリメータは、第2の横方向寸法によって特徴づけられる第2の遠位出口孔を有する。ビームが第2のコリメータを通過してスポットを照明する場合、第2の遠位出口は、試料から第2の横方向寸法の約2倍以下の距離のところに配置される。第2の横方向寸法は、約8mm以下、約3mm以下、約1mm以下、又は約0.3mm以下であるのが良い。コリメータ(第1のコリメータ)と第2のコリメータは、少なくとも2つの位置相互間で一緒に動くことができる。第2の位置では、ビームは、第1のコリメータを通過してスポットを照明する。2つのコリメータの遠位出口孔は、分析されるべき試料の表面に実質的に平行であるのが良い。第2の位置では、ビームは、第2のコリメータを通過してスポットを照明する。試験機器は、源とサンプルとの間に配置されたシャッタを更に有するのが良い。シャッタは、選択的に、ビームがスポットを照明することができるようにし又はビームがスポットを照明するのを阻止することができる。コリメータ(第1のコリメータ)、第2のコリメータ及びシャッタは、少なくとも3つの位置相互間で一緒に動くことができる。これら位置のうちの少なくとも1つでは、シャッタは、ビームがスポットを照明するのを阻止する。
【0014】
試験機器は、穴を構成するシャッタを更に有するのが良い。コリメータ及びシャッタは、少なくとも3つの位置相互間で一緒に動くことができる。第1の位置では、ビームは、コリメータを通過してスポットを照明する。第2の位置では、ビームは、穴を通過してスポットを照明する。第3の位置では、シャッタは、ビームがスポットを照明するのを阻止する。
【0015】
本発明の別の実施形態は、試料の組成を分析する手持ち型自蔵式試験機器を提供する。試験機器は、試料から応答信号を発生させるために試料の少なくとも一部分上のスポットを照明する透過性放射線のビームを生じさせる源を有する。試験機器は、ビームのための源用コリメータを更に有する。源用コリメータは、横方向寸法によって特徴づけられる遠位出口孔を有する。遠位出口孔は、試料から横方向寸法の約2倍以下の距離のところに配置される。試験機器は、応答信号を受け取り、出力信号を生じさせる検出器を更に有する。試験機器は、スポットと検出器との間の光路に沿って位置決めされた検出器用コリメータを更に有する。応答信号は、検出器に到達する前に、検出器用コリメータを通過する。試験機器は、検出器に結合されていて、検出器からの出力信号を処理するようプログラムされたプロセッサを更に有する。試験機器の内部に設けられた電池が、源及びプロセッサに電力を供給する。
【0016】
本発明の更に別の実施形態は、試料の組成を分析する手持ち型自蔵式試験機器を提供する。試験機器は、試料から応答信号を発生させるために試料の少なくとも一部分上のスポットを照明する透過性放射線のビームを生じさせる源と、応答信号を受け取り、出力信号を生じさせる検出器とを有する。試験機器は、検出器に結合されたプロセッサを更に有する。プロセッサは、検出器からの出力信号を処理するようプログラムされている。試験機器の内部に設けられたディジタルカメラが、試料の上述の部分に向かって差し向けられている。試験機器の内部に設けられた電池が、源、プロセッサ及びカメラに電力を供給する。
【0017】
試験機器は、カメラによって捕捉された画像を表示できるディスプレイスクリーンを有するのが良い。ディスプレイスクリーンは、試験機器に取り付けられたPDAの一部分であるのが良い。電池は、ディスプレイスクリーンに電力を供給することができる。試験機器は、カメラにより捕捉された画像を表示するデータを外部装置に提供するデータポートを有するのが良い。プロセッサは、カメラにより捕捉された画像に対して平坦化アルゴリズムを実行するようプログラムされているのが良い。プロセッサは、レチクルをカメラにより捕捉された画像中に挿入するようプログラムされているのが良い。レチクルは、スポットの存在場所を指示することができる。試験機器は、透過性放射線のスポットに該当する場所で可視スポットを試料上に投影するよう差し向けられるレーザを有するのが良い。試験機器は、源とサンプルとの間に設けられた蛍光スクリーンを有するのが良い。このスクリーンは、ビームにより照明されると可視光を生じさせる物質から成るのが良い。プロセッサは、検出器からの出力信号を処理することにより得られた結果を、カメラにより捕捉された画像中に含めるようプログラムされているのが良い。
【0018】
本発明の一実施形態は、サンプルの組成を分析する手持ち型自蔵式試験機器を提供する。試験機器は、試料から応答信号を発生させるために試料の少なくとも一部分上のスポットを照明する透過性放射線のビームを生じさせる源と、応答信号を受け取り、出力信号を生じさせる検出器とを有する。試験機器は、ビーム及び応答信号が通過するチャンバを有する。試験機器は、パージガスタンクの端部を受け入れる継手と、タンク継手とチャンバとの間の流体連絡経路とを更に有する。試験機器は、検出器に結合されたプロセッサを有する。プロセッサは、検出可能な出力信号を処理するようプログラムされている。試験機器の内部に設けられた電池が、源及びプロセッサに電力を供給する。試験機器の取り外し可能な部分は、電池及びタンクを収容するのが良い。
【0019】
本発明の別の実施形態は、サンプルの組成を分析する手持ち型自蔵式試験機器を提供する。試験機器は、試料から応答信号を発生させるために試料の少なくとも一部分上のスポットを照明する透過性放射線のビームを生じさせる源と、応答信号を受け取り、出力信号を生じさせる検出器とを有する。試験機器は、検出器に結合されたプロセッサを有する。プロセッサは、検出器からの出力信号を処理するようプログラムされている。試験機器の内部に設けられた電池が、源及びプロセッサに電力を供給する。試験機器は、ビーム及び応答信号が通過するチャンバと、チャンバ内に存在する周囲ガスの量を検出するよう働くセンサとを有する。
【0020】
センサは、チャンバ内のアルゴン、チャンバに入るパージガスの流量及び(又は)チャンバ内のガス圧力を検出するよう働くことができる。
【0021】
本発明の別の実施形態は、少なくとも3つの隣り合う部分を備えたシートを有する較正用標的を提供する。これら部分は、共通の頂点を有し、各部分は、頂角を有する。頂角の合計は、約360°である。各部分は、蛍光X線分析により他の部分の材料から識別可能な材料から成る。各部分は、パイ形状に構成されているのが良い。これら部分の各々は、銅、ニッケル、鉄、亜鉛又はアルミニウムで作られるのが良い。
【0022】
本発明の更に別の実施形態は、蛍光X線分析により銅から識別できる材料から成るシートに取り付けられた直径約3.5mmの銅プラグを有する較正用標的を提供する。このシートは、固体重合体から成るのが良く、固体重合体は、少量の別の物質、例えば約5%チタンを含むのが良い。
【0023】
本発明の一実施形態は、蛍光X線分析装置内におけるレチクルの存在場所を較正する方法を提供する。この方法は、分析装置を較正用標的の一部分のところに照準合わせするステップと、較正用標的の部分の組成を測定するステップとを有する。測定された組成が所望範囲内に収まっていない場合、分析装置を較正用標的に対して再位置決めし、測定ステップを繰り返す。他方、測定された組成が所望範囲内に収まっている場合、レチクルの存在場所を較正用標的上の所定の場所に対応させる。
【0024】
本発明の別の実施形態は、蛍光X線分析装置内におけるレチクルの存在場所を較正する方法を提供する。この方法は、較正用標的上の複数の別々の場所のところの較正用標的の部分の組成を測定し、複数の測定値を得るステップと、複数の測定値に曲線を当てはめるステップとを有する。レチクルの存在場所を曲線上の所定の場所に対応させる。曲線は、放物線であるのが良く、組成は、較正用標的上の少なくとも5つの別々の場所で測定可能である。
【0025】
本発明の更に別の実施形態は、種々の組成を分析する方法を提供する。この方法は、試料の少なくとも一部分を、試料から応答信号を生じさせる透過性放射線のビームに当てるステップと、応答信号を検出するステップとを有する。この方法は、応答信号から出力信号を生じさせるステップと、出力信号を処理して試料の組成を決定するステップとを更に有する。この方法は、試料の少なくとも一部分のディジタル画像を得るステップと、試料の決定された組成の表示と共にディジタル画像の記録を記憶させるステップとを更に有する。試料は、手持ち型自蔵式分析装置により分析可能である。
【0026】
本発明は、添付の図面と関連して特定の実施形態についての以下の詳細の説明を参照すると、完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】先行技術の自蔵式手持ち型XRF分析装置を使用状態で示す略図である。
【図2】本発明の一実施形態による自蔵式手持ち型XRF分析装置の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による図2のXRF分析装置のスナウトの拡大図であり、第1の位置にあるコリメート型シャッタを示す図である。
【図4】図2のスナウトの拡大図であり、別の位置にあるコリメート型シャッタを示す図である。
【図5】図2のスナウトの正面図である。
【図6】図5のスナウトの断面図である。
【図7A】図3〜図5のコリメート型シャッタの正面図である。
【図7B】図3〜図5のコリメート型シャッタの底面図である。
【図7C】図3〜図5のコリメート型シャッタの背面図である。
【図8】図7A〜図7Cのコリメート型シャッタの断面図である。
【図9】先行技術のシャッタの斜視図である。
【図10】本発明の別の実施形態によるコリメート型シャッタの正面図である。
【図11】本発明の更に別の実施形態によるコリメート型シャッタの正面図である。
【図12】本発明の一実施形態による検出器用コリメータの斜視図である。
【図13】図12の検出器用コリメータを有するXRF分析装置のスナウトの断面図である。
【図14】使用中における図13の検出器用コリメータの略図である。
【図15】本発明の一実施形態による使用状態の源用コリメータ及び検出器用コリメータの略図である。
【図16】本発明の一実施形態による分析装置のスナウト内に設けられているカメラにより作られた例示の画像を示す図である。
【図17】本発明の一実施形態によるスナウトの窓内に又はこの窓の近くに蛍光スクリーンを有するスナウトの断面図である。
【図18】本発明の一実施形態によるレチクル較正用標的の斜視図である。
【図19】本発明の別の実施形態によるレチクル較正用標的の平面図である。
【図20】本発明の一実施形態によるレチクルを較正する較正用標的の使用法を説明する流れ図である。
【図21】本発明の一実施形態によるXRF分析装置へのガスライン沿い設けられたブレーカウェイ継手の図である。
【図22】本発明の一実施形態によるパージガス供給を提供するよう小形ガスタンクが連結された分析装置の斜視図である。
【図23】本発明の一実施形態による窓が窓ガラス及びガス密ガスケットを備えている図22の分析装置のスナウトの断面図である。
【図24】本発明の一実施形態によるレチクルを較正可能なモデルの略図である。
【図25】図24のモデルに従ってレチクルを較正するために読みが取られる場所の略図である。
【図26】本発明の別の実施形態によるレチクルを較正する較正用標的の使用法を説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態によれば、手持ち型分析装置による試料又はその一部のXRF分析を容易にするために試料上に透過性放射線の小さなスポットを生じさせる方法及び装置が開示される。分析装置は、透過性放射線のビームを試料上の所望の場所に照準合わせし、試料上に生じたスポットのサイズを測定するコリメータを有する。コリメータは、選択的にビームが試料を照明することができるようにし又はビームを遮断し、それによりビームによる試料の照明を阻止するシャッタを有する。スポットのサイズは、一定であっても良く、或いは調節可能であっても良い。
【0029】
種々の形式のビームを試料の表面に当て、それにより蛍光X線を生じさせることができるが、説明を簡単にするために、X線ビームを用いた実施形態について説明する。しかしながら、透過性放射線の任意適当なビームを用いても、表面上のスポットを照明して試料から応答信号を生じさせ、それにより試料の一領域の元素組成を問い合わせ又は識別することができる。そのようなビームは、放射性同位体により発生されるようなガンマ線ビームであってよい。
【0030】
手持ち型XRF分析装置は、試料と検出器との間に設けられていて、検出器により観察される偽(スプリアス)蛍光及び反射一次X線を制限する第2のコリメータを有するのが良い。
【0031】
手持ち型XRF分析装置は、X線スポットの周囲の範囲内で照明され又は照明されそうである試料の部分の方に差し向けられたディジタルカメラを有するのが良い。このカメラは、カメラにより生じた画像の表示と共に、X線ビームが試料の所望の部分を照明するよう分析装置を照準合わせし易くする。平坦化プロセスを画像に適用すると、カメラの配置場所により生じる画像の歪みを矯正し、X線スポットに対して照準合わせすることができる。オプションとして、分析装置は、X線ビームにより照明され又は照明されそうである試料の部分を指示し、即ち、X線スポットのサイズ及び存在場所を指示するレチクルを表示された画像中に有する。
【0032】
レチクルを較正し、その結果、レチクルがX線スポットの位置、サイズ及び(又は)形状を正確に反映するようにする方法及び装置が開示される。
【0033】
分析装置は、分析された試料に関する情報を含むテキスト又は図形を画像中に含めるのが良い。この情報は、試料の被試験部分の化学的組成、試験の日付及び時刻、ユーザの氏名、ユーザにより入力された注意書き(例えば、試料の出所)等を含むのが良い。画像は、手持ち型分析装置内に記憶され、又は外部記憶又はディスプレイに提供されるのが良い。その結果、手持ち型分析装置は、分析された試料の部分の画像と試料の被試験部分の分析の両方を含むアーカイブ記録を生じさせることができる。画像は、分析対象の試料の静止画像であっても良く、或いはビデオクリップであっても良い。オプションとして、画像は、分析情報とは別個に記憶されても良いが、これと関連しているのが良い。例えば、画像又は分析情報は、他のものに対するポインタ(例えば、ユニホーム・リソース・ロケータ(URL))又は他の基準を含むのが良い。
【0034】
分析装置が軽原子量元素を測定することができるようにするため、分析装置内のチャンバから空気をパージするのにヘリウムガスを用いるのが良い。種々の機構体が、チャンバ内のパージガスの流量若しくは存否又は周囲ガス(空気又はその成分)の存否をモニタし、パージガスの流量を自動的に調節し、或いはチャンバ内の周囲ガスの存否についてユーザに警告を出すのが良い。変形例として、空気がチャンバ内に存在している場合に、相当量の空気をチャンバから排気しても良い。
【0035】
蛍光X線(XRF)を用いた化学的分析
図1は、使用中における先行技術の自蔵式手持ち型XRF分析装置100の略図である。図1は、手持ち型分析装置100の平面図と側面図の両方を示している。一次X線源101が、試料104の表面に差し向けられたX線ビーム102を生じさせる。一次X線ビーム102のエネルギーにより、内殻の電子(図1には拡大された状態で示されている)を試料104の個々の原子のこれらの軌道から飛び出させる。例えば、電子106は、矢印108で示されているように内側(低エネルギー)の殻から飛び出る。飛び出た電子106により後に残された空孔110は、外側(高エネルギー)の殻からの電子112で満たされる。プロセスに関与する2つのエネルギー殻相互間のエネルギー差は、X線、即ち蛍光X線114の形態で放出される。エネルギー差は、電子106を放出する元素について特有である。蛍光X線114のエネルギー及び強度を測定することにより、それぞれ元素を識別して定量化することができる。
【0036】
検出器116が、個々のX線の出来事(イベント)を記録し、電気信号をプリアンプ(前置増幅器)118に送る。プリアンプ118は、検出器116からの信号を増幅し、増幅した信号をディジタル信号プロセッサ(DSP)120に送る。DSP120は、経時的に生じたX線に関する出来事を収集してディジタル化し、結果的に得られたスペクトルデータをメインプロセッサ122に送る。プロセッサ122は、スペクトルデータを数学的に分析し、詳細な組成分析結果を生じさせる。結果的に得られた組成分析結果をメモリ124に記憶されている内部表と比較して被試験試料104に関する合金等級又は他の記号・表示を求めるのが良い。分析結果を手持ち型分析装置100の頂部に設けられたタッチスクリーン126上に表示し、オプションとして、メモリ124に記憶させる。例えば符号128のところに示されたボタン及び他の制御装置並びにタッチスクリーン126により、ユーザは、プロセッサ122と対話することができる。取り外し可能な充電式電池126は、分析装置100内のプロセッサ122及び他の電気部品に電力を供給する。
【0037】
先行技術の分析装置100は、選択的に一次X線ビーム102が、分析装置から出て試料104の表面に当たることができるようにし又は一次X線ビーム102が分析装置から出て試料104の表面に当たるのを阻止するシャッタを有する。図9は、かかる先行技術のシャッタ900の斜視図である。シャッタは、シャッタ900を2つの位置相互間で側方に(矢印904で示されているように)並進させるよう平歯車(図示せず)と噛み合うことができるラック歯車902を有する。一方の位置では、X線ビーム102は、矢印908で示されているように第1の穴906を通過して試料104の表面に当たる。他方のシャッタ位置では、X線ビームは、第2の穴910を通過し、傾斜部分912の裏側に設けられた較正試料と相互作用し、この較正試料は、矢印914で示されているように検出器に向かって差し向けられる較正スペクトルを生じさせる。かくして、シャッタ900が第2の位置にあるとき、X線ビームは、分析装置100から出ることはない。その代わり、X線ビームは、較正スペクトルを生じさせて分析装置100を較正するために使用される。
【0038】
先行技術の分析装置100は、試料上に小さなX線スポットを生じさせることができない。注目されるように、試料を小さなX線スポットで照明することは、小さな試料又は試料の小さな部分、例えば印刷回路板上の部品又ははんだ接合部を分析するのを容易にする。
【0039】
小さなX線スポット
図2は、本発明の一実施形態としての自蔵式手持ち型XRF分析装置200の斜視図である。分析装置200は、分析結果及び画像を表示し、オペレータ入力を受け入れる(オプションとして受け入れる)スクリーン210(例えば、内蔵タッチスクリーン若しくは非タッチ型スクリーン又は取り付け状態の携帯型情報端末(PDA))と、指令及びデータを記憶し、分析装置200の動作を制御するプロセッサ及びメモリ(図示せず)と、オペレータインタフェースボタン212と、分析を開始させるトリガスイッチ208と、分析装置200の電気部品全てに電力を供給する取り外し可能な充電式電池214とを有する。
【0040】
スナウト部分202は、分析装置200が試料の表面上に小さなX線スポットを生じさせることができるようにするコリメート型シャッタ(図2では見えないが、以下に詳細に説明する)を収容している。動作において、スナウト202の前方壁204が、試料に押し付けられる。前方壁204が試料に接触すると、前方壁204に設けられているバネで留められているモーメンタリ接触スイッチ206が、試料によって押し込まれる。スイッチ206は、もし分析装置が試料に押し付けられなければ、分析装置200の外部へX線が放出されるのを阻止する安全インターロックとしての役割を果たすことができる。別の動作モードでは、分析装置200は、サンプルの保持とスイッチ206の押し込みの両方を行うスタンド又は台(図示せず)内に配置される。
【0041】
図3は、コリメート型シャッタ(平行シャッタ)300(大部分、想像線で示されている)を示すスナウト202の拡大図である。コリメート型シャッタ300は、管308を有する。X線源(符号302のところに概略的に示されている)が、コリメート型シャッタ300の一方の側(裏側)の方に差し向けられるX線ビーム304を生じさせる。矢印306で示されているように、コリメート型シャッタ300は、少なくとも2つの位置相互間で側方に又は回転的に動くことができる。図3に示されている位置では、管308は、X線源302と窓310との間でX線ビーム304と整列し、その結果、X線ビームは、管308を通過し、窓310を介してスナウト202から出て、試料(図示せず)に当たることができるようになっている。一次X線を放出させる管308の端部は、遠位出口孔311を備えている。試料からの蛍光X線312が、窓310に入って検出器314(想像線で示されている)に当たる。窓310は、汚れ又は他の汚染要因物が窓310を通ってスナウト202に入るのを阻止するためにX線に対して透明な材料の薄いシート、例えばポリイミドフィルムにより覆われるのが良い。適当なポリイミドフィルムは、イー・アイ・デュポン・ド・ネムール・アンド・カンパニー(E. I. du Pont de Nemours and Company)からカプトン(Kapton)という商標名で入手できる。
【0042】
図4は、コリメート型シャッタ300を別の位置で、即ち、矢印306に沿って側方に動かされた状態で示すスナウト202の拡大図である。図4に示す位置では、管308は、X線源302と窓310との間には整列していない。コリメート型シャッタは、X線ビーム304が窓310から出るのを阻止し、かくして、この位置では、コリメート型シャッタ300は、閉鎖シャッタとして働く。X線ビーム304は、窓310から出ないで、穴402を通過し、コリメート型シャッタ300の傾斜部分400によって散乱する。散乱したX線ビームのうちの少なくとも何割かは、検出器314に達する。コリメート型シャッタ300のこの位置では、検出器314は、例えばX線スペクトルのエネルギー尺度、特性X線のエネルギー分解能、X線ビームの強度等のスペクトルパラメータに関して分析装置200を較正するために使用できる。オプションとして、較正スペクトルを生じさせるために較正試料、例えば銀を傾斜部分400の裏側に被着させるのが良い。
【0043】
図5は、コリメート型シャッタ300を図3に示されているのと同一の位置で、即ち、X線ビームが窓310から出ることができるようにする位置で示すスナウト202の正面の図である。図5で理解できるように、X線ビームが管308を通過することができる位置では、窓310の最も近くに位置する管308の端部は、窓310内にほぼ心出しされる(左から右へ)。注目されるように、コリメート型シャッタ300の他の位置(図4に示されている)、即ち、X線ビームが窓310を通って出ることができないようにする位置では、管308は、場合によっては管308が窓310を介してもはや見ることができないほどの遠くまで窓310内で側方に変位されている。
【0044】
図6は、図5のA‐A線に沿って取ったスナウト202の断面図である。一次X線源の出力部分は、符号600で概略的に示されている。この出力部分600は、超小型X線管(図示せず)のアノード、封入された放射性物質(放射性同位体)の一部又はX線の任意他の適当な源上に作られるX線スポットであるのが良い。一次フィルタ(図示せず)をX線源600とコリメート型シャッタ300との間に導入して一次X線ビームの強度スペクトルに対するエネルギーの関係を調節するのが良い。一次X線源がX線管である場合、X線管に供給される電圧を変化させると、一次X線ビームのエネルギーを調節することができる。
【0045】
射線(射線602で例示されている)により示されているように、X線ビームは、管308を通過し、窓310を介してスナウト202から出て試料の表面604上のスポットを照明する。管308は、X線ビームを通過させる中央ボア606を備えている。遠位出口孔311は、ボア606が試料の表面604の最も近くに位置する管の端部612から出る場所に構成されている。符号600のところの無限小又は極小の一次X線スポットは、表面604上に半影部又は曖昧な部分を生じさせず、これに対し、符号600のところの大きな一次X線スポットは、半影部を生じさせる。半影部のサイズは、表面604に対する遠位出口孔311の密接度によって制限される場合がある。かくして、試料表面604上のスポットのサイズは、主として、一次X線源スポットのサイズ、中央ボア606の幾何学的形状、特に遠位出口孔311のサイズ及び遠位出口孔311と表面604との間の距離610によって定められる。
【0046】
遠位出口孔311のサイズは、横方向寸法、即ち、管308の端部612の近くでボア606の軸線に垂直に取った管308の断面に沿って測定されたボア606の寸法で特徴づけられる。ボア606の断面形状は、円形であっても楕円形であっても正方形であっても、或いは、X線ビームを通過させるのに適した任意他の形状であっても良い。ボアが円形断面を有する場合、この寸法は直径とすることができる。
【0047】
遠位出口孔311は、試料から横方向寸法の2倍以下の距離のところに配置されるべきである。好ましくは、任意出口孔311は、試料から横方向寸法よりも小さい又はそれ以下の距離のところに配置されるべきである。遠位出口孔311と離隔距離610がほぼ等しい場合、スポットサイズは、遠位出口孔311のサイズにほぼ等しく又はこれよりも僅かに大きい。
【0048】
一実施形態では、遠位出口孔311は、試料の表面604から約2.8mmのところに配置され、遠位出口孔311は、約2.8mmの横方向寸法を有し、それにより試料の表面604上に直径が約3mmのX線スポットが生じる。他の実施形態では、横方向寸法は、約0.3mm〜約8mmであり、遠位出口孔311は、表面604から約0.3mm〜約8mmのところに配置されるのが良い。他の横方向寸法及び変位量も又可能である。遠位出口孔311と種々の表面604との間の距離は、管308の長さで決まる場合があり、管の長さは、少なくとも1つには、機械的強度及び剛性に関する要件に起因して、管604の壁の厚さで決まる場合がある。
【0049】
管の壁厚は、少なくとも1つについては、関与するX線束で決まる場合がある。即ち、高X線束だと、管の壁を厚くする必要がある。距離と孔サイズの最適な組み合わせは、源のフラックス特性(例えば、源により生じるビームの強度(フラックス))及び用途の特徴特性(例えば、試料上のどれほど狭い領域がスポットにより照明されるべきであるか)により決められる場合がある。管の壁厚は、X線のエネルギーとこれらの強度の両方で決まる場合がある。管308を通過したX線のエネルギーは、X線管に印加される電圧及びX線の濾波具合で決まる。吸収材料が所与の場合、吸収のログ(I/Io)は、I=Ioexp(−μt)により、吸収厚さtで線形的に決まるが、X線エネルギーの1.5〜2乗で決まる。
【0050】
伸縮型コリメータ(図示せず)又は他のコリメータ構造を用いても、本発明の範囲内で試料上に調節可能なサイズのスポットを生じさせることができる。
【0051】
試料表面604上のスポットの形状は、主として遠位出口孔311の形状を含む中央ボア606の幾何学的形状及び試料表面604の平面と管308の端部612の平面の幾何学的関係で定められる。仮に管308の端部612の平面がボア606の軸線に垂直である場合には、投影されたX線スポットは、楕円形になりそうである。しかしながら、図8を参照して以下に説明するように、管308の端部612は、端部612が試料の表面604にほぼ平行であるように形作られるのが良い。この平行関係により、X線スポットの偏心度が減少する。加うるに、管308の上縁部614は、試料中で励起された放射線のうちの何割かが検出器314に到達するのを阻止する。これにより、X線スポットの一部分がカットオフされると共にX線スポットが検出器314から見ると一層円形に見えるようになる。さらに、検出器314は、斜めの角度で試料の表面604を見ることができ、X線スポットの見掛けの偏心度が一段と減少する。
【0052】
ボア606は、円形又はほぼ円形のX線スポットを生じさせるよう断面が円形の形をしているのが良い。しかしながら、注目されるように、X線スポットは、円又は楕円である必要はない。特定の用途では、任意の形状のX線スポット、例えば正方形のX線スポットが許容可能である。
【0053】
検出器314は、好ましくは、X線スポットよりも大きく、好ましくは、分析装置のハウジング及び他の部品の空間的制約の範囲内に楽に収容できるほどの大きさである。検出器314は、必要ならば、ノイズ、例えば「暗電流」を減少させるよう冷却されるのが良い。従来型熱電冷却機構又は任意他の適当な冷却機構を使用することができる。
【0054】
図7A〜図7Cは、それぞれ、コリメート型シャッタ300の正面図、底面図及び背面図であり、図8は、図7AのB−B線に沿って取ったコリメート型シャッタの断面図である。コリメート型シャッタ300は、シャトル700並びに上述した管308及び傾斜部分400を有している。管308は、例えばボア内でシャトル700に固定されている。管308は、管308をボア内に圧力嵌めすることにより、適当な接着剤、例えばロックタイト(Loctite)接着剤(コネチカット州ロッキーヒル所在のヘンケル・コーポレイション(Henkel Corp.)から入手できる)により、管308をシャトル700のボア内にねじ込むことにより、又は任意他の適当な機構によりボア内に固定できる。傾斜部分400は、シャトル700の一部として形成されても良く、或いは、傾斜部分400は、例えば適当な接着剤又は溶接によりシャトル700に取り付けられても良い。
【0055】
シャトル700、管308及び傾斜部分400は、好ましくは、X線に対して不透明な材料、例えばタングステン合金又は焼結混合物で作られる。適当な材料としては、タングステン合金又は約90%タングステンを含む混合物が挙げられる。かかる材料は、ヘビメット(Hevimet)及びデンスアロイ(Densalloy)という商標名で市販されている。管308の壁厚、並びにシャトル700及び傾斜部分400の幾つかの部分の厚さが、X線を阻止するのに十分大きい場合、用いるタングステンの割合を低くすることができる。タングステンは、その機械加工性を向上させるようニッケル、銅、クロム又は他の材料と合金化されるのが良い。コリメート型シャッタ300用の他の適当な材料としては、鉛、タンタル又は代表的には原子番号が45より大きい他の元素が挙げられる。鋼又は別の材料は、コリメート型シャッタ300又はその幾つかの部分を作るよう鉛で内張りされ又は被覆されるのが良い。シャトル700、管308及び傾斜部分400又はこれらの幾つかの部分は、中実材料片から機械加工されても良く、或いは、粉末冶金技術を用いて作られても良い。
【0056】
シャトル700、管308及び傾斜部分400又はこれらの幾つかの部分は又、1つ又は2つ以上の部品として射出形成されても良い。かかる一実施形態では、タングステン又は鉛粉末入りのポリマーが、コリメート型シャッタ300を単一品として射出成形するために用いられる。
【0057】
注目されるように、又、図8に見えるように、コリメート型シャッタ300は、管308を通る軸線800に沿って中央ボア606を備えている。図6及び図8で理解できるように、中央ボア606は、段付けされており、即ち、ボア606は、X線が管308から出る端部612のところよりもX線が管308に入る管308の端部802のところの方が大径である。シャトル700は、X線が一次X線源からシャトル700に入る更に大径の開口部804を備えている。管308及びシャトル700の開口部804は、一緒になって、一次X線ビームのためのコリメータを形成している。機械加工を容易にするために、コリメータは、管308を貫通したボアの段付き部分及び管308によって形成されていて、管がシャトル700につながる段部806により例示されているように段付けされるのが良い。しかしながら、コリメータを通る円錐形、テーパ付き形状又は他の形状をした通路が、許容可能である。
【0058】
管308の端部612は、好ましくは、試料の表面604にほぼ平行であり、それにより、遠位出口孔311も又、試料の表面604にほぼ平行になっている。かくして、角度808は、管308の端部612が試料の表面604にほぼ平行になるように選択される。
【0059】
コリメータのX線源側端部のところの開口部804をより大径にすると、X線管アノード又は他の一次X線源上のX線放出スポットのサイズ又は場所が幾分不正確になる場合がある。しかしながら、管308の端部612が試料の表面604に対して近く位置するので(即ち、距離610(図6)が短いので))、考えられる視差(パララックス)の効果が最小限に抑えられる。
【0060】
管308の端部612が表面604の近くに位置することにより、管308の部分が、蛍光X線のうちの何割かが検出器314に達するのを阻止し、即ち、管308の部分が、検出器314を「遮光する」。さらに、試料からの蛍光X線並びに試料の表面604から反射した一次X線は、管308の幾つかの部分と反応して管308から偽蛍光X線又は反射X線を生じさせる。これら偽X線は、検出器314に到達する場合があり、分析システムに対するノイズの一因となる。検出器314の遮光量を減少させると共に偽X線の発生のおそれを減少させるため、管308の外部の端部702(図7Bの底面図参照)は、テーパしている。オプションとして又は代替的に、管の外部が段付きになっていても良く、或いは、この外部に別の対称又は非対称の形が与えられても良い。かくして、図8の断面図で最も良く理解できるように、管308の端部の近くの壁厚は、減少している。ただし、この減少は、管の周囲に関して非対称であっても良い。管308の端部を上述したように付形することにより、試料からの蛍光及び反射一次X線の経路中における管308の材料の量が減少する。それにもかかわらず、管308の一部分は、検出器314の視界の範囲内に位置したままであるのが良い。
【0061】
図10は、別の実施形態としてのコリメート型シャッタ1000の正面図である。コリメート型シャッタ1000は、2本の管1002,1004を有している。管1002,1004の各々は、互いに別々の直径の中央ボア(及びかくして、互いに別々の遠位出口孔寸法)及び(又は)別々の長さを有している。これら管は、直径又は長さの任意の順序で配置可能である。
【0062】
コリメート型シャッタ1000は、例えばラック歯車1008と平歯車(図示せず)により又は任意他の適当な機構により、矢印1006で示されているように側方に並進して少なくとも3つの位置のうちの1つに動かされるのが良い。1つの又は第1の位置では、上述したように、一次X線ビームは、試料に達するのが阻止され、傾斜部分1010が、一次X線ビームを検出器中に反射する。第2の位置では、管のうちの一方(1002又は1004)が、一次X線源と試料との間に整列する。第3の位置では、他方の管が、一次X線源と試料との間に整列する。
【0063】
かくして、コリメート型シャッタ1000は、2本の管1002,1004によりそれぞれ構成された2つのコリメータを有する。管1002,1004の各々は、試料上に互いに異なる直径のX線スポットを生じさせる。好ましくは、管を長くすると、中央ボアの直径(試料の最も近くに位置する管の端部のところの直径)を小さくし、したがって、小さな一次X線スポットを生じさせる管は、大きなスポットを生じさせる管よりも試料表面の近くに位置するようになる。一実施形態では、2本の管1002,1004は、それぞれ、約3mm及び約8mmの中央ボア直径を有し、管1002,1004の長さは、X線ビームが試料上のスポットを照明することができるような位置に各管が配置されているとき、管の端部が試料の表面からそれぞれ約3mm又は約8mmのところに位置するようなものである。ボア直径及び長さの他の対を用いて他のサイズのX線スポットを生じさせることができる。他の実施形態は、別の本数の管を有しても良く、かくして、他の数の種々の直径のX線スポットを生じさせることができる。
【0064】
図11は、更に別の実施形態としてのコリメート型シャッタ1100の正面図である。コリメート型シャッタ1100は、管1102及び大径穴1104を有している。大径穴1104は、図9を参照して上述した穴906とほぼ同じである。コリメート型シャッタ1100は、上述したように側方に並進して少なくとも3つの位置のうちの1つに動かされるのが良い。1つの又は第1の位置では、上述したように、一次X線ビームは、試料に達するのが阻止され、傾斜部分1106が、一次X線ビームを検出器中に反射する。第2の位置では、管1102が、一次X線源と試料との間に整列する。第3の位置では、穴1104が、一次X線源と試料との間に整列する。管1102及び穴1104は、試料上に互いに異なるサイズの一次X線スポットを生じさせる。管1102の寸法は、小さなスポット、例えば上述したように直径が約0.3mm〜約8mmのスポットを生じさせるよう選択されるのが良い。穴1104の寸法は、先行技術の場合と同様、直径が約1cmのX線スポットを生じさせるようなものである。当然のことながら、管1102又は穴1104の寸法を変えることにより大きな又は小さなスポットを生じさせることができる。
【0065】
コリメート型シャッタの種々の実施形態を1本又はそれ以上の管を有するものとして説明した。これら管の各々は、コリメータの少なくとも一部をなす。内側断面が円形の管状コリメータがかかる形状を比較的製造しやすいので比較的好ましいが、他の形状(例えば、正方形、長円形又は三角形の断面)が許容可能である。さらに、注目されるように、コリメータの内壁は、段付けされても良く、滑らかであっても良く、或いは、かかる内壁は、互いに異なる内側直径又は形状を備えた区分相互間の他形式の移行部を備えても良い。
【0066】
一次X線源と試料との間に管状コリメータ(又は、幾つかの管状コリメータのうちの1つ)か反射面かのいずれかを介在させるように、コリメート型シャッタが側方に動くことができるものとして説明したが、他の運動、例えば円形運動及び他の機構体、例えばタレットを用いて所望のコリメータ又は反射面をX線源と試料との間の定位置に選択的に動かしても良い。
【0067】
分析装置がコリメート型シャッタを有するものとして説明したが、本発明の分析装置は、一次X線ビームが試料上のスポットを照明するために定位置に出入りしない管状コリメータを有しても良い。換言すると、管状コリメータは、定位置に固定されていても良い。X線が分析装置の窓から出るのを阻止するために、X線管への電力は、例えばプロセッサの制御下で中断されても良い。代替的に又は追加的に、シャッタは、X線ビームを遮り、オプションとして、X線ビームを反射して検出器に向けるために一次X線源とコリメータ又は試料との間に配置されても良い。かかるシャッタは、中実面、絞り又はX線ビームを選択的に遮断する任意他の適当な機械的、電子的、化学的又は電気化学的(例えば、加えられた電界に応答してX線不透明度を変化させるポリマー分散液晶)機構を有するのが良い。かくして、シャッタは、管状コリメータとは別個のものであるのが良い。
【0068】
検出器用コリメータ
注目されるように、試料からの蛍光X線、並びに試料の表面604又は表面604のすぐ下の材料から反射された一次X線は、管308の幾つかの部分と反応して管308から偽蛍光又は反射X線を生じさせる場合がある。加うるに、試料からの蛍光又は散乱一次X線は、試料の他の部分又は分析装置に当たって偽二次蛍光を誘起させる場合がある。これら偽X線は、検出器314に達して分析システムに対するノイズの一因となる場合がある。
【0069】
これらの偽X線及び他の偽X線は、検出器用コリメータにより検出器314に達するのが阻止されるのが良い。図12は、本発明の一実施形態としての検出器用コリメータ1200の斜視図である。図13は、図12の検出器用コリメータ1200を有するXRF分析装置のスナウト202の断面図である。図12で最も良く理解されるように、試料の最も近くに位置する検出器用コリメータ1200の端部の一部分1202は、管308に関して上述したようにテーパしているのが良い。内壁は、検出器用コリメータ1200の断面で理解されるように、互いに平行であっても良く、或いは平行でなくても良く、即ち、検出器用コリメータ1200は、全体がテーパしているものであって良い。さらに、検出器用コリメータ1200の内壁は、滑らかであっても良く、若しくは段付けされていても良く、或いは、かかる内壁は、他の何らかの形状をしていても良い。検出器用コリメータ1200は、コリメート型シャッタ300に関して上述したようにX線に対して不透明な材料で作られるべきである。オプションとして、検出器用コリメータ1200の内壁は、検出器用コリメータ1200の壁から散乱した又はかかる壁中に生じた偽放射線の強度を減少させる材料の1つ又は2つ以上の層で覆われ又は被覆されるのが良い。図14に概略的に示されているように、検出器用コリメータ1200は、偽X線のうちの多くが検出器314に到達するのを阻止する。
【0070】
検出器用コリメータの入口1204(図12)、即ち、試料の表面604の最も近くに位置する開口部は、検出器314で試料表面上を見て、径が有効スポットサイズほどであるべきである。しかしながら、入口1204は、有効スポットサイズよりも小径であっても良い。
【0071】
図15に概略的に示されているように、源用コリメータ1500は、円筒形又は僅かに円錐形の照明野1502を備え、検出器用コリメータ1504は、円筒形又は僅かに円錐形の視野1506を備えている。源用コリメータ1500と検出器用コリメータ1504の両方を用いて、検出器は、2つの野1502,1506の交差部により構成される容積部だけから出たX線を受け取る。かくして、2つのコリメータ1500,1504を正しく配向すると共に寸法決めすることにより、試料の表面のところ又はこれよりも僅かに下のところに位置する関心のある試料のサイズ及び場所を特定することができ、試料の他の部分又はどこか他の場所からの散乱又は蛍光X線が検出器314に到達するのを阻止することができる。
【0072】
被試験試料のディジタル画像化
小さなX線スポットを利用する手持ち型XRF分析装置を照準合わせすることは、特に、スナウトの前壁がスポットよりもかなり大きい試料の領域を覆っているので、困難な場合がある。本発明の幾つかの実施形態は、スナウトの内部に設けられていて、分析装置を照準合わせしやすくするディジタルカメラを有する。ディジタルカメラにより得られる画像をタッチスクリーン210(図2)上に表示することができる。オプションとして、X線スポットがどこに位置するか又はどこに位置しそうになるかを指示するレチクルも又、タッチスクリーン210上に位置した状態で示される。代替的に又は追加的に、画像を遠隔スクリーン、例えばコンピュータに取り付けられたスクリーン上に表示することができる。分析装置は、分析装置が画像をワイヤード又はワイヤレスリンクにより遠隔ディスプレイに送ることができる手段としてのポートを有するのが良い。オプションとして、画像は、カメラの画像平面の中央部分又は別の選択された部分にディジタル式にズームされ又は違ったやり方で再配向されるのが良い。画像をズーム、パン(カメラの首振り)、あおり等する指令は、ユーザによりタッチスクリーン210を介して又はオペレータインタフェースボタン212を介して入力できる。
【0073】
図3に示されているように、ディジタルカメラ316、例えば、単一チップ型レンズ付きディジタルカメラが、スナウト202内に位置決めされており、このカメラは、蛍光X線312を発生させる試料の部分の方へ差し向けられている。適当なカメラは、アイダホ州ボイズ所在のマイクロン・テクノロジー・インコーポレイテッド(Micron Technology, Inc.)から部品番号MT9V112で入手でき、適当なレンズは、ニュージャージ州バリントン所在のエドムンズ・オプティックス・インコーポレイテッド(Edmunds Optics, Inc.)から部品番号NT47-725で入手できる。ディジタルカメラ316の信号を処理する適当なソフトウェアは、ワシントン州レドモンド所在のマイクロソフト(Microsoft)社からDirectShow APIという商標名で入手できる。
【0074】
可視光源318、例えば表面実装型LEDが、窓310を介して見える試料の表面を照明するよう検出器314の上に設けられている。着色フィルム、例えば橙色のカプトン(Kapton)ポリイミドフィルムが窓310を覆っている場合、同様な色の光を生じさせるLEDを選択すべきである。もしそうでなければ、LEDによって生じた光の他の色は、効果的には着色フィルムを透過せず、光のこれら他の色は、カメラ316により得られる画像にはそれほど寄与しない。その結果、光の他の色を生じさせるためにLEDによって消費されるエネルギーは、本質的に無駄になり、それにより、電池214を充電しなければならなくなるようなときまでに分析装置を動作させることができる時間の長さが減少する。単一チップディジタルカメラ又は処理ソフトウェアで使える自動ホワイトバランス及び従来型色補正アルゴリズムは、画像の橙色(又は他の色)の色調を補正し、かくして、タッチスクリーン210上若しくは外部モニタ(図示せず)上に表示可能に又は画像がメモリに記憶される場合に自然な色の画像を生じさせる。
【0075】
理想的には、カメラ316は、カメラの画像平面が試料の表面に平行であり、したがって、カメラがX線スポット上に心出し又は中央配置されるよう設けられるべきである。しかしながら、図5で理解できるように、シャトル300の位置に応じて、管308又は傾斜部分400は、カメラの視野を妨げる場合がある。加うるに、かかる理想的な配置状態ではカメラを取り付けるためのスペースが不十分な場合がある。したがって、カメラは、X線スポットに対してオフセンタ状態で取り付けられると共に試料平面に垂直な線に対して傾けられるのが良い。カメラのかかる位置及び配向の結果として、幾分歪んだ画像が生じるが、これは、それにもかかわらず、分析装置を照準合わせするのに有用である。オプションとして、プロセッサは、補正された画像をタッチスクリーン210上又はどこか他の場所に表示する前に歪みの大部分又は全てを取り除くための平坦化(flattening)アルゴリズムを実行するのが良い。平坦化アルゴリズムは、画像を平坦化するためのホモグラフィー(homography)マトリックス又は他の周知の方法を採用することができる。
【0076】
分析装置の照準合わせの容易化
分析装置のスナウト内に設けられたカメラにより得られる画像は、ユーザが分析装置の照準を試料上の所望の場所に合わせるのを助けることができるが、大抵のディジタルカメラは、X線に対して敏感ではなく、かくして、大抵のかかる画像は、直接的にはX線スポットを示すことはない。ユーザが分析装置の照準合わせを助けるための種々の実施形態が開示される。
【0077】
本発明の幾つかの実施形態は、ユーザが分析装置の照準合わせを助けるために、X線スポットが位置し又は位置しそうである試料上に可視光のスポットを投影する。図6に示されているように、レーザダイオード又はLED616をコリメータ管308又はどこか他の場所に取り付けるのが良く、かかるレーザダイオード又はLEDは、レーザダイオード又はLED616により得られたビームが、X線スポットが位置し又は位置しそうである試料の表面604の一部分上に可視スポットを作るよう照準合わせされる。可視光スポットは、X線スポットと同一のサイズである必要はない。可視光源は、パルス化されるのが良く、したがって、可視スポットが、試料の表面上の特徴部を見やすくするよう点滅するようになっている。
【0078】
図17に示されているように、本発明の幾つかの実施形態は、スナウト202の窓310内又はその近くに位置する蛍光スクリーン2000を有し、したがって、一次X線ビームが、カメラ(図17には示されていない)により画像化できる可視スポットを生じさせるようにする。蛍光スクリーンは、X線で照明されたときに可視光を生じさせる任意適当な材料で作られるのが良い。
【0079】
本発明の幾つかの実施形態は、X線スポットが位置し又は位置しそうである場所を指示するレチクルをカメラにより得られた画像に追加する。レチクルは、十字線(クロスヘヤ)、ハッシュマーク又はユーザが分析装置を試料上の関心のある場所に照準合わせするのを助ける他の形状又は形状の組み合わせであるのが良い。レチクルは、X線スポットの輪郭の形状寸法及び場所に近似した円又は他の形状から成っていても良い。「レチクル」という用語は、分析装置の照準合わせを容易にするようカメラにより得られた画像に追加される任意の1つ又は複数の形状を意味している。レチクルという用語は、この用語が他の状況、例えば、顕微鏡又は他の光学機器で用いられた場合のような十字線、同心円、細かいドット等には限定されない。
【0080】
図16は、分析装置のスナウト内に設けられたカメラにより得られた例示の画像を示す図である。この画像は、プリント回路板1902にはんだ付けされた電気部品1900(例えば、抵抗器)を含む。画像は、回路トレース(回路配線)1904及び部品1900のリードとトレース1904との間のはんだ接合部1906を更に含む。レチクル円1908は、画像内に含まれた状態で分析装置により形成される。オプションとしてのレチクル十字線1910も又、X線スポットの中心を示すために画像中に含まれた状態で分析装置により形成されるのが良い。
【0081】
レチクルが背景に対して見えることができるようにするためにレチクルの全体又は一部分について色を動的に選択するのが良い。一実施形態では、色は、下に位置する画素の色に基づいてレチクル十字線1910について動的に選択され、したがって、十字線1910が、下に位置する画素の色とは無関係に、常時見えるようになっている。一実施形態では、十字線1910の色は、2つの色値(明色及び暗色と呼ばれる)、例えば以下のように黒色及び白色のうちの一方であるよう動的に選択される。十字線1910により占められるべき画素について平均輝度が計算される。画素の輝度(例えば、0〜255の値)は、画素の赤色、緑色及び青色の強度の合計の1/3として定められる。平均画素輝度が所定のしきい値(T)と所定のヒステリシス値(H)の差未満(即ち、T−H未満)であり且つ十字線1910が暗色で現在引かれている場合、十字線1910の色は、明色に変えられる。他方、平均画素輝度がT+Hよりも大きく且つ十字線1910が明色で現在引かれている場合、十字線1910の色は、暗色に変えられる。その他の場合、色は、不変のままである。T=175及びH=10のそれぞれのしきい値及びヒステリシス値は、満足の行く結果をもたらすことが判明しており、かかる結果は、十字線が例えば画像ノイズに起因して色相互間で過度に明滅するのを阻止する。T及びHについての他の値を用いることが可能である。
【0082】
色は、レチクルを半透明にするようレチクルの全体又は一部分について動的に選択されるのが良い。一実施形態では、ベースカラー(例えば、赤橙色)が、レチクル円1908について選択される。この場合、円1908の各画素の色は、下に位置にする画素の色に基づいて動的に変更され、したがって、試料の表面上のテキスト又は他の特徴部が円1908によって完全に見えなくされるようにはならないようになっている。半透明なレチクルが上に位置することになる各画素に関し、画素の赤色、緑色及び青色強度は、各々、部分光透過をシミュレートするよう強度に番号K(0<K<1)を乗算することにより変更される。レチクルのベースカラーは、1−Kだけスケール変更され(乗算され)、下に位置する画素のそれぞれの変更された赤色、緑色及び青色強度に追加される。K=0.4という値は、満足の行く結果をもたらすことが判明したが、Kについて他の値を用いることができる。
【0083】
レチクル較正用標的
分析装置により得られる画像内のレチクルの存在場所は、X線スポットの存在場所を正確に反映することが必要である。しかしながら、製造上の許容誤差により、試料の表面上のX線スポットの存在場所には分析装置ごとのばらつきが生じる。加うるに、分析装置の使用により、X線源の交換の結果として又は例えば輸送中における分析装置の震動に起因して、試料の表面上のX線スポットの存在場所が、変わる場合がある。したがって、例えば製造中、X線源の交換後、又は分析装置の保守中、レチクルの存在場所を較正し又は再較正することが必要な場合があり又は望ましい場合がある。レチクルの存在場所、形状及び(又は)寸法を較正し又は再較正する(以下、ひとまとめに単に較正すると称する)ための種々の方法及び装置が開示される。幾つかの実施形態では、較正用標的を用いると、レチクルの較正を容易に実施することができる。
【0084】
図18は、レチクル較正用標的2100の斜視図である。較正用標的2100は、シート2104内に埋め込まれ又はシート2104の表面にくっつけられたプラグ2102を有している。プラグ2102は、比較的小さいことが必要であり、即ち、X線スポットのサイズのオーダーのものであることが必要である。プラグ2102は、シート2104とは異なる材料で作られている。一実施形態では、プラグは、直径が約3.5mmであり、厚さが約10ミルであり、このプラグは、銅で作られており、シートは、チタン、固体重合体又はチタン入りの固体重合体で作られるのが良い。一実施形態では、シートは、厚さが約12mmであり、直径が約31mmであり、このシートは、酸化物として5%チタンを含む固体重合体を有する。較正用標的2100の材料のうちの少なくとも1つは、分析装置により検出可能であることが必要である。オプションとして、較正用標的2100は、プラグ2102を中心とした十字線又はスポットの形態をした標識2106,2108を更に有する。図18に示されている較正シート2100は、正方形であるが、較正用標的は、他の形状、例えば円であっても良い。
【0085】
使用にあたり、分析装置のスナウトの前壁を較正用標的2100に押し付けてスナウトの窓がプラグ2102を覆うようにする。測定値を取り、分析装置を各測定後に動かして(較正用標的2100に対して)、ついには、プラグ2102の材料について最大の読み(或る程度の誤差許容範囲内にある)が得られるようにする。この時点では、X線スポットは、プラグ2102上に心出しされている又はプラグ2102を中心として位置合わせされているものと見なすことができ、レチクルをプラグ2102の存在場所に対応させるのが良い。プラグ2100の画像をタッチスクリーン又は別のディスプレイスクリーン上に表示するのが良く、そしてレチクルの存在場所を画像中のプラグ2102の存在場所に対応させるのが良い。標識2106,2108(又は図示していない他の標識)は、レチクル又はレチクルの幾つかの部分をプラグ2102の中心に位置合わせしやすくすることができる。
【0086】
プラグ2102の材料とシート2104の材料が共に分析装置によって検出可能である場合、上述の手順は、プラグ2102の材料に関する最大の読みが取られ、それと同時に、シート2100の材料に関する最小の読みが取られるまで、測定値を取るステップと分析装置を動かすステップを交互に実施するステップを含むのが良い。
【0087】
プラグ2102が分析装置によって検出可能ではない材料で作られている場合、上述の手順は、シート2104の材料に関する最小の読みが取られるまで利用されるのが良い。この点に関し、プラグ2102に代えて、シート2104に設けられた穴を用いても良い。
【0088】
試験を受けている試料のリアルタイム画像が例えば分析装置のタッチスクリーン又は別のディスプレイスクリーン上で利用できる場合、管308の遠位部分が、画像中に見える場合がある。分析装置は、管308の想像上の延長線がプラグ2102と交差するよう較正用標的2100に対して位置決めされるのが良い。レチクルを画像中のプラグ2102の存在場所に対応させるのが良い。レチクルの存在場所は、上述したように又は後述するように改善されるのが良い。
【0089】
図19は、別のレチクル較正用標的2200の平面図である。較正用標的2200は、各々が分析装置により検出可能な複数個のパイ形状の区分2202,2204,2206,2208を有している。本明細書で用いる「パイ形状」という表現は、各区分の2つの隣り合う側部が角度2210によって例示されている角度(「頂角」)を形成することを意味している。
【0090】
図19に示されている較正用標的2200は、4つの区分を有しているが、他の数の区分を用いても良く、しかしながら、各区分2202〜2208は、互いに異なる材料で作られる。図19に示されているレチクル較正用標的2200は、鉄の区分2202、亜鉛の区分2204、銅の区分2206及びニッケルの区分2208を有するが、検出可能な材料の他の組み合わせを用いることができる。好ましくは、パイの形をした区分2202〜2208は全て、パイの形をした区分が較正用標的2200の中心2212で互いに交わる同一の頂角(角度2210で例示されている)を有する。しかしながら、等しくはない頂角が用いられる場合、較正アルゴリズムは、それぞれの頂角に基づいてそれぞれの区分の材料の予想比を考慮に入れるべきである。全ての区分2202〜2208の頂角の合計は、360°である。
【0091】
使用にあたり、分析装置のスナウトの前壁を較正用標的2200に押し付けてスナウトの窓が較正用標的2200の中心2212を覆うようにする。測定値を取り、分析装置を各測定後に動かして(較正用標的2200に対して)、ついには、較正用標的2200の材料の全てについて同量を指示する測定値が取られるようにする。この時点では、X線スポットは、較正用標的2200の中心2212上に心出しされているものと見なすことができ、レチクルを中心2212の存在場所に対応させるのが良い。中心2212を例えばロッド、十字線又は他の標識(図示せず)により較正用標的2200上にマーク付けするのが良い。さらに、図18を参照して上述したように、較正用標的2200は、レチクル又はレチクルの幾つかの部分をX線スポットの存在場所に位置合わせしやすくする他の標識を有するのが良い。
【0092】
材料の他のパターンを較正用標的に用いることができる。パターンの小片全てを別々の材料で作る必要はない。分析装置を較正用標的の互いに異なる部分に照準合わせした場合に互いに異なる読みを生じさせる材料の任意のパターン及び組み合わせを用いても良い。
【0093】
レチクルを較正するための較正用標的の使用法を図20の流れ図によって説明する。ステップ2300では、分析装置を較正用標的の一部分に照準合わせする。ステップ2302では、分析装置が照準合わせされた較正用標的の部分の組成の測定値を取る。ステップ2304では、測定された組成が所望の範囲内に収まっていない場合、制御は、ステップ2306に移り、このステップでは、分析装置を較正用標的上の別の場所に動かし、次に、制御は、ステップ2302に戻る。他方、測定された組成が所望の範囲内に収まっている場合、制御は、ステップ2308に移り、このステップでは、レチクル又はレチクルの一部分をこれが較正用標的上の既知の場所、例えば、プラグ又は複数のパイ形状の小片の頂点が互いに交わり又はオーバーラップする箇所に対応させる。
【0094】
レチクルの存在場所を較正する他の方法では、予想蛍光X線応答関数を較正用標的に合わせてモデル化し、このモデルに従ってレチクルを測定された読みに位置合わせする。かかる一実施形態では、図18を参照して上述した較正用標的2100とほぼ同じ較正用標的を用いる。プラグ2102に対する予想蛍光X線応答関数が、図24に図式的に示されている。このモデルによれば、予想応答関数は、放物面2700、即ち、放物線2702をその対称軸線2704回りに回転させることによって得られた表面である。放物面2700は、プラグ2102と位置合わせされていると仮定され、したがって、軸線2704は、較正用標的の表面に垂直であり、軸線2704は、プラグ2102の中心を通過するようになる。以下に詳細に説明するように、分析装置について5つの読みが取られ、放物面2700に関する方程式が、5つの読みに当てはめられ、放物面の頂点2706の場所は、この方程式から求められ、レチクルは、放物面2700の頂点に位置合わせされる。
【0095】
分析装置は、X線スポットがプラグ2102の場所にほぼ一致するよう較正用標的に照準合わせされる。これは、プラグ2102を上述したように管308の想像上の延長線に視覚的に位置合わせすることにより達成できる。プラグ2102が見える試料の画像上の場所は、分析装置又は分析装置のカメラに結合された外部コンピュータで突き止められる。一実施形態では、これは、十字線カーソルを画像中のプラグ2102の存在場所に対応させることによって達成される。例えば、オペレータは、マウス又はジョイスティックを用いてカーソルを画像中に位置決めすることができる。蛍光X線の読みは、この場所で取られ、この場所を第1の場所と称する。
【0096】
分析装置又は外部コンピュータは、第1の場所の近くに位置する少なくとも4つの追加の場所を計算する。一実施形態では、図25に概略的に示されているように、4つの追加の場所2800,2802,2804,2806は、第1の場所2808を中心とする正方形のコーナ部又は角のところに位置している。一実施形態では、試料上の約3mmX線スポットの場合、4つの追加の場所2800〜2806は、2mm×2mmの正方形の角のところに位置する。追加の場所を選択するために他の規則的な又は不規則の形状及び他の寸法の形状を用いることができる。
【0097】
分析装置又は外部コンピュータは、追加の場所2800〜2806のうちの1つの場所のところでスクリーン上にレチクル又は他の指標又は目印を生じさせ、オペレータは、分析装置をプラグ2102がレチクル内に心出しされるよう再位置決めする。この場所で、第2の蛍光X線の読みを取る。プロセスは、他の追加の場所2800〜2806の各々について繰り返し実施し、全部で5つの読みが得られる。
【0098】
放物面2700の表面は、次の方程式により説明できる。
【0099】
【数1】

【0100】
上式において、x,yは、x‐y平面内における点の座標であり、zは、x‐y平面上のこの点の高さであり、即ち、プラグ2102の材料の測定された濃度である。このモデルでは、x,yは、場所の平面内における場所2800〜2808の座標である。X0及びY0は、放物面2700の頂点2706の座標であり、A0及びA1は、一定の係数であり、A0は、頂点2706のところのzの値である。5つの読みは、一定の係数を計算するために用いられる。
【0101】
これら係数をいったん計算すると、頂点2706の座標を計算し、レチクルを頂点2706の場所に対応させる。
【0102】
放物面を用いた較正方法を説明したが、他の方法では、2本又は3本以上の一次元曲線を用いて応答関数をモデル化することができる。一実施形態では、2つの放物線が用いられる。この実施形態では、少なくとも5つの試料点が、曲線を当てはめるために取られる。
【0103】
較正用標的及びレチクルを較正するための応答関数のモデルの使用法を図26の流れ図で説明する。ステップ2900では、較正用標的上の複数の別々の場所で測定値を取る。測定値のうちの1つを較正用標的上の所定の場所、例えばプラグに近似した場所のところで取るのが良い。他の測定値の場所を所定の場所の存在位置に基づいて計算することができる。ステップ2902では、予想応答関数を表す曲線をステップ2900で取られた測定値に当てはめる。応答関数は、三次元関数、例えば放物面であっても良く、或いは、2つ又は3つ以上の二次元関数、例えば放物線であっても良い。ステップ2904では、レチクルの存在場所を曲線上の所定の場所、例えば曲線中のピークに一致させる。
【0104】
蛍光材料のシートを用いて、レチクルの寸法又は形状を較正することができる。使用にあたり、分析装置のスナウトの前壁を蛍光材料のシートに押し付け、分析装置を動作させる。X線スポットのサイズ、形状は、蛍光材料がX線スポットによって励起された場合、蛍光材料により放出される可視光のスポットにより明らかとなる。レチクルを可視スポットの寸法及び(又は)形状に一致させるのが良い。
【0105】
レチクルの寸法又は形状を較正する他の方法は、X線を検出する他の装置を用い、かかる装置としては、能動型X線検出器、例えばシリコンPINダイオード、増幅器又は比例計数管に連結されたテルル化カドミウム検出器が挙げられる。検出器は、一寸法方向又は二寸法方向の位置感度を有するのが良い。
【0106】
試料分析結果に関する注釈付き試料画像
アナライザのスナウト内に設けられているカメラにより得られる試料の画像に試料の分析結果で自動的に注釈を付けることができる。図16に示されているように、試験を受けている試料中に見つけられた化学成分1912をタッチスクリーンの右上のコーナ部に表示することができる。他の情報、例えば試料の分析時刻及び日付1914、自動的に生じた又はユーザにより入力された試料の数、分析装置のシリアルナンバー、モデルナンバー及びソフトウェア改訂レベル又は分析装置により生じた警告メッセージ(例えば、以下に説明するように機器から周囲ガスをパージすることに関連している)を画像中に含めることができる。さらに、ユーザは、インターフェイスボタン212(図2)及び/又はタッチスクリーン210上に表示されたソフトキーボードを介してテキストを入力することができ、このテキストは、画像に注釈を付けるためにも使用できる。加うるに、非テキスト情報、例えばスペクトル又は化学組成を表すグラフを画像中に含めることができる。注釈の画素は、不透明であっても良く、或いは半透明であっても良く、これらの色は、上述したように動的に選択可能である。
【0107】
分析装置は、分析装置のスナウトにより覆われる試料部分よりも広い試料の画像を捕捉するよう位置決めされたディジタルカメラを有するのが良い。図2の分析装置200は、オプションとして外部ビュー型ディジタルカメラ216を有する。カメラ216により得られたビューを補強するために第2の外部ビュー型ディジタルカメラ(見えない)を分析装置200の他方の側に設けるのが良い。かかる1つ又は2つ以上の外部ビュー型カメラにより得られた画像を分析装置200のスナウトの内部に設けられたカメラにより得られる画像に含ませても良く、これと関連させても良く、或いはこれに代えて用いても良い。
【0108】
ヘリウムパージ
注目されるように、軽元素(Zが小さい元素)は、一般に、携帯型XRF分析装置では直接的には測定できない。というのは、約2.5keV以下のエネルギーの蛍光X線は、空気中で減衰するからである。この問題を解決するため、先行技術の携帯型XRF分析装置の中には、ガスコネクタを備えているものがある。かかる分析装置は、携帯型ガスタンク、例えば分析装置のオペレータの背中に着用されるガスタンクに連結されるのが良い。タンクは、ヘリウムを収容し、ヘリウムは、フレキシブルチューブを介して分析装置に送られる。分析装置は、ヘリウムを用いて試料の表面と検出器との間の容積部、例えばスナウトの内部の一部分から空気をパージする。ヘリウムは蛍光X線に対して比較的透明なので、かかる「ヘリウムパージ」システムにより、分析装置は、軽元素を検出することができる。
【0109】
しかしながら、かかる「着用可能な」ガスタンクシステムの管類は、オペレータに引き外しの危険をもたらす場合がある。加うるに、管類は、オペレータが動き回っているときに他の機器と絡まった状態になる場合があり又はこれを倒してしまう場合がある。
【0110】
長い管類と関連した危険性は、ガスラインに沿ってタンクと分析装置との間に継手を設けることにより最小限に抑えることができる。かかる構成が、図21に示されている。分析装置2400は、ガスライン、例えばフレキシブルチューブ2404を連結することができるポート2402を有している。フレキシブルチューブ2404は、着用可能なガスタンク2406に連結されている。ガスラインは、ブレーカウェイ継手2408を有している。所定量を超える張力がフレキシブルチューブの長さに沿って加えられた場合、例えばフレキシブルチューブ2404が固定されている物体又は重い物体に引っ掛かった状態になるので、ブレーカウェイ継手2408は2つの部分に分離する。一方の部分は、タンク2406に連結されている管2404の部分2410に連結されたままである。他方の部分2412は、分析装置2400に連結された管2404の部分24012に連結されたままである。好ましくは、管の部分2410に連結されたままの管部分は、2つの部分2410,2412が互いに分離したときに作動される自動遮断弁を有する。
【0111】
変形例として、ブレーカウェイ継手2408をフレキシブルチューブ2404に沿うどこか別の場所、例えば、分析装置2400の近くの場所又は分析装置のポートのところに位置決めしても良い。オプションとして、フレキシブルチューブ2404の長さに沿って2つ以上のブレーカウェイ継手を設けても良い。一実施形態では、1つのブレーカウェイ継手は、タンクの近くに位置決めされ、別のブレーカウェイ継手は、分析装置2400の近くに位置決めされる。
【0112】
ユーザの中には、着用可能なガスタンクが不格好であり又は不快であると感じる人が存在する。図22は、小形ガスタンク(これはガス「カートリッジ」とも呼ばれる)2502がガス供給を提供するよう連結できる継手(見えない)を備えた分析装置2500を有しており、この場合、着用可能なタンク又は長いフレキシブルチューブに関する欠点がない。ガスカートリッジ2502は、カートリッジのネックに設けられたねじ山付き部分2504を分析装置2500の継手の対応の雌型ねじ山付き(雌ねじ付き)部分にねじ込むことにより分析装置2500に結合可能である。分析装置の継手は、カートリッジ2502を継手にねじ込んだときにカートリッジに設けられているシールを穿通してガスがカートリッジ2502から分析装置に流れることができるようにするための尖った箇所又は他の適当な部材を有している。分析装置は、必要に応じて、カートリッジ2502からのガスの流れを制御するための適当な遮断弁、圧力調整器、流量制御弁等を有するのが良い。かかるガスカートリッジ2502は、カートリッジ内のガスが消費されると、容易に交換可能である。
【0113】
分析装置2500の継手は、分析装置2500の外部又は内部のどこか他の場所に設けられても良い。例えば、継手は、分析装置2500のスナウトの頂部又は後部2506の後ろ若しくは下に配置可能である。分析装置のハウジングの一部分(例えば、ヒンジ止め又は取り外し可能なドア)を開くと、ガスカートリッジ2502を挿入できる凹部が現われるようにするのが良く、その後ドアを閉じる。
【0114】
ガスカートリッジは、取り外し可能な部分2508内に設けられた充電式電池と共に配置されるのが良い。かかる一構成例(図22の挿絵に示されている)では、ボア2510が、使い捨て可能又は詰め替え可能(補給可能)であるガスカートリッジを受け入れる。分析装置の取っ手部分2512の底部に設けられた適当な継手は、ガスカートリッジのネックと嵌合し、取り外し可能な部分2508を分析装置2500の取っ手部分2512に取り付けたときにシールを穿通する。
【0115】
別の実施形態では、ボア2510に代えて、永続的に用いられる詰め替え可能なガスカートリッジ(図示せず)が、取り外し可能な部分2508内に設けられる。この場合、取り外し可能な部分2508は、取っ手部分2512の底部に設けられた継手と嵌合する適当なネック又は継手を有する。このガスカートリッジは、例えば、取り外し可能な部分2508が電池を充電するために分析装置2500の残部から取り外されたときに、詰め替え可能である。充填ステーション(図示せず)が電池を充電すると共にガスカートリッジを補給する設備を有するのが良い。かかる充電ステーションは、複数のガスカートリッジを連続して又は並行して補給するのに十分大きなガスタンクに結合されるのが良い。
【0116】
分析装置からパージガスの逃げ出しを最小限に抑えるため、スナウトは、ガスが導入される比較的ガス密のチャンバを有することが必要である。かくして、ガスの源(即ち、着用可能なタンク、ガスカートリッジ、自立型タンク又は任意他の適当なガス源、これらは以下、総称してタンクと称する)とチャンバとの間に流体連通経路が作られる。チャンバは、コリメート型シャッタ300及び上述の他の部品を有するのが良い。
【0117】
図23に示されているように、窓310は、ガス密ガスケット2602により窓開口部に取り付けられた窓ガラス2600、例えばポリプロピレンのシートを備えるのが良い。窓ガラス2600は、励起ビーム及び蛍光X線に対して比較的透明であることが必要である。窓ガラス2600は、励起エネルギービーム及び蛍光X線による脆弱化及び劣化に対して比較的高い抵抗度を示すと共にこれらエネルギー源への暴露により生じた熱からの熱軟化及び劣化に対する耐性を示すことが必要である。窓ガラス2600に適した材料は、フロリダ州パーム・シティ所在のケムプレックス・インダストリーズ・インコーポレイテッド(Chemplex Industries, Inc.)からProleneという商標名で入手できる。
【0118】
分析装置は、チャンバ内に導入されるパージガスの量を制御する自動機構を有するのが良く、その結果、ガスの使用料は最少であり、しかも周囲ガス(空気)がチャンバの内部から十分にパージされて周囲ガスによるX線の吸収がなくなり又は適度に制限されるようになっている。分析装置は、適正な(又は、不適正な)量のパージガスがチャンバ内に存在しているか(又は、チャンバ内に入っているか)どうか又は過剰の(又は、十分に僅かな)量の周囲ガスがチャンバ内に存在しているかどうかを判定するためのセンサを有するのが良い。この判定は、直接行われても良く(例えば、周囲又はパージガスを試験することにより又はパージガスの流量を測定することにより)又は間接的に行われても良い(例えば、周囲又はパージガスの量と相関関係がある量を測定することにより)。分析装置は、センサからの出力に基づいてパージガスの導入を自動的に制御することができる。チャンバ内に存在する又はチャンバ内に流入しているパージガスが不十分であり又は周囲ガスが過剰であることが検出された場合、分析装置は、1つ又は2つ以上のアクションを実行することができる。アクションの中で、分析装置は、分析結果を記憶するのを差し控えたり、分析結果と共に警告メッセージを表示したり、或いは、可聴アラーム(例えば、音声発振器)又は可視警報(例えば、タッチスクリーン上の灯又は指示器)を表示したりすることができる。例えばタンクが空であるためにタンクにより提供できるガスの量が不十分である場合にも警報が出されるのが良い。
【0119】
一実施形態では、流量調節器は、パージガスを所定の定められた体積流量でチャンバ内に導入し、かかる体積流量は、オプションとして、周囲大気圧に変化があると自動的に調節可能である。かかる体積流量は、パージガスがチャンバから逃げ出るあらかじめ推定された、計算された又は測定された量に近似し又はこれを超えるよう選択されるのが良い。流量は、流体連通経路に設けられた絞りにより且つ(或いは)圧力調整器によって制限できる(例えば、所定量まで)。
【0120】
別の実施形態では、パージガスの流量は、センサからの出力に応答して自動的に制御される。かくして、過剰の周囲ガスが検出された場合又は不十分なパージガスが検出された場合、流量を自動的に増大させることができる。十分に僅かな量の周囲ガスが検出された場合又は十分な量のパージガスが検出された場合、流量を自動的に減少させることができ、場合によってはゼロにすることができる。
【0121】
パージガスの流量を制御するために電気式弁を分析装置内に設けられたプロセッサ又は他の制御回路により制御するのが良い。流量は、2値弁(即ち、中間設定値のない全開又は全閉弁)を選択的に開閉することにより又は開度可変弁を選択的に動作させることにより制御可能である。2値弁が用いられる場合、特に、かかる弁が迅速に切り替えられる場合、流体連通経路は、弁から見て下流側に設けられていて、パージガスをより安定した圧力で提供するアキュムレータを有するのが良い。
【0122】
パージガスの流量は、流体連通経路内に設けられた流量センサにより測定可能である。流量が所定値未満であると測定された場合、弁を調節し又は動作させることにより流量を自動的に増大させることができる。
【0123】
チャンバ内のパージガスの量は、チャンバ内の圧力を測定することにより求めることができる。圧力が所定値未満である場合、パージガスの流量を自動的に増大させることができる。
【0124】
チャンバ内の周囲ガスの量は、例えば試料分析中、上述したように蛍光X線を用いてチャンバ内のアルゴンの量を測定することにより測定可能である。チャンバ内のアルゴンの量は、チャンバ内の空気の量に比例している。かくして、アルゴンは、チャンバ内の空気の代理手段として利用できる。一実施形態では、チャンバ内で検出されたアルゴンの量が所定値を超えている場合、自動的にパージガスをチャンバ内に導入し又は流量を増大させることができる。
【0125】
所定値は、XRF分析装置の測定限度内で小さな値であっても良く、或いはゼロであっても良い。しかしながら、銀がX線の経路中に存在する場合、銀のスペクトル線(2.98keV及び3.15keVのスペクトル線)は、アルゴンのスペクトル線(2.96keV及び3.19keVのスペクトル線)とオーバーラップする場合がある。かくして、アルゴンをチャンバからフラッシングすると、アルゴンのスペクトル線の見掛けの高さは、減少する場合があるが、ゼロにはならない。かくして、所定値は、アルゴンをチャンバからパージした後の銀のスペクトル線の予想高さに基づくのが良い。
【0126】
ヘリウムの濃度は、空気と比較したヘリウムの高い熱伝導率を利用することにより測定できる。一実施形態では、チャンバ内に設けられているサーミスタの一定温度を維持するのに必要な電流の大きさをモニタする。電流の大きさが変化する場合、ヘリウムの濃度は、変化したものと見なされる場合があり、或いは、多少のヘリウムが補償するのに導入されても良い。
【0127】
上述した分析装置の観点を他形式の分析装置、例えばアーク/スパーク光学発光分光法(OES)レーザ有機ブレークダウン分光法(LIBS)又はこれらの組み合わせを採用した分析装置と関連して利用できる。これら観点としては、検出器用コリメータ、ディジタルカメラ、画像収集、画像注釈、試料画像及び分析データの同時アーカイブ、レチクル、レチクル較正、ガスパージ(場合によっては、アルゴン又は別のガスを用いる)、ブレーカウェイ継手、ガスカートリッジ及びパージガス流量制御が挙げられるが、これらには限定されない。
【0128】
化学組成分析装置を、メモリに記憶された指令により制御されるプロセッサを有するものとして説明した。メモリは、読取り書込み記憶装置(RAM)、読取り専用記憶装置(ROM)、フラッシュメモリ又は制御ソフトウェア又は他の指令及びデータを記憶するのに適した任意他のメモリ又はこれらの組み合わせであって良い。分析装置により実行される機能のうちの幾つかを流れ図を参照して説明した。当業者であれば容易に理解すべきであるように、流れ図の各ブロックの全て若しくは一部分又はブロックの組み合わせの機能、動作、欠点等は、コンピュータプログラム指令、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア又はこれらの組み合わせとして具体化できる。当業者であればこれ又容易に理解されるべきこととして、本発明の機能を定める指令又はプログラムを多くの形態でプロセッサに送ることができ、かかる形態としては、書き込みできない記憶媒体(例えば、コンピュータ内の読み取り専用記憶装置、例えば、ROM又はコンピュータI/Oとアタッチメントにより読み取り可能な装置、例えばCD‐ROM又はDVDディスク)に永続的に記憶されている情報、書き込み可能な記憶媒体(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、リムーバブルフラッシュメモリ及びハードドライブ)に既に記憶されている情報又はワイヤード若しくはワイヤレスコンピュータネットワークを含む通信媒体によりコンピュータに送られる情報が挙げられるが、これらには限定されない。加うるに、本発明は、ソフトウェアの状態で具体化できるが、本発明を具体化するのに必要な機能は、変形例として、ファームウェア及び(又は)ハードウェアコンポーネント、例えば組み合わせ論理、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)若しくは他のハードウェア又はハードウェア、ソフトウェア及び(又は)ファームウェアコンポーネントの何らかの組み合わせを用いて部分的に又は全体的に具体化されても良い。
【0129】
本発明を上述の例示の実施形態により説明したが、当業者であれば、本明細書において開示した発明の技術的思想から逸脱することなく、例示の実施形態の改造例及び変形例を相当できることは理解されよう。さらに、好ましい実施形態を種々の例示のデータ構造と関連して説明したが、当業者であれば、種々のデータ構造を用いてシステムを具体化できることは認識されよう。さらに、開示した観点又はこれら観点の幾つかの部分を上述していない仕方で組み合わせることができる。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲及び精神による場合を除き、限定されるものとして解釈されてはならない。
【符号の説明】
【0130】
200 XRF分析装置
202 スナウト
210 スクリーン
212 インターフェイスボタン
214 電池
308 管
310 窓
311 遠位出口孔
314 検出器
316 カメラ
318 可視光源
400 傾斜部分
402 穴
600 一次X線源の出力部分
604 試料表面
610 離隔距離
612 端部
1200 検出器用コリメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の組成を分析する手持ち型自蔵式試験機器(200)であって、前記試験機器(200)が、前記試料(604)から応答信号(312)を発生させるために前記試料(604)の少なくとも一部分上のスポットを照明する透過性放射線のビーム(304)を生じさせる源(302)と、前記ビーム(304)のための源用コリメータ(308)と、前記応答信号(312)を受け取り、出力信号を生じさせる検出器(314)と、前記検出器(314)に結合されていて、前記検出器からの前記出力信号を処理するようプログラムされたプロセッサと、前記源及び前記プロセッサに電力を供給する電池(214)とを有する、試験機器において、前記試験機器(200)は、
前記スポットと前記検出器(314)との間で光路に沿って位置決めされた検出器用コリメータ(1200)を有し、前記応答信号(312)は、前記検出器(314)に達する前に、前記検出器用コリメータ(1200)を通過するようになっている、試験機器。
【請求項2】
前記試料(604)の最も近くに位置する前記検出器用コリメータ(1200)の端部は、テーパしている、請求項1記載の試験機器。
【請求項3】
前記試料(604)の最も近くに位置する前記検出器用コリメータ(1200)の端部のサイズは、前記検出器(314)で見える試料(604)表面上の有効スポットサイズ以下である、請求項1記載の試験機器。
【請求項4】
試料の組成を分析する手持ち型自蔵式試験機器(2500)であって、前記試験機器(2500)が、前記試料(604)から応答信号(312)を発生させるために前記試料(604)の少なくとも一部分上のスポットを照明する透過性放射線のビーム(304)を生じさせる源(302)と、前記応答信号(312)を受け取り、出力信号を生じさせる検出器(314)と、前記ビーム(304)及び前記応答信号(312)が通過するチャンバと、前記検出器に結合されていて、前記検出器(314)からの前記出力信号を処理するようプログラムされたプロセッサと、前記源(302)及び前記プロセッサに電力を供給する電池(214)とを有する、試験機器において、前記試験機器(2500)は、
パージガスタンク(2502)の端部を受け入れる継手と、
前記タンク継手と前記チャンバとの間の流体連絡経路とを有する、試験機器。
【請求項5】
前記電池及びタンクを収容した取り外し可能な部分(2508)を更に有する、請求項4記載の試験機器。
【請求項6】
試料の組成を分析する手持ち型自蔵式試験機器(200)であって、前記試験機器(200)が、前記試料(604)から応答信号(312)を発生させるために前記試料(604)の少なくとも一部分上のスポットを照明する透過性放射線のビーム(304)を生じさせる源(302)と、前記応答信号(312)を受け取り、出力信号を生じさせる検出器(314)と、前記検出器に結合されていて、前記検出器(314)からの前記出力信号を処理するようプログラムされたプロセッサと、前記源(302)及び前記プロセッサに電力を供給する電池(214)と、前記ビーム(304)及び前記応答信号(312)が通過するチャンバとを有する、試験機器において、前記試験機器(200)は、
前記チャンバ内に存在する周囲ガスの量を検出するよう働くセンサを有する、試験機器。
【請求項7】
前記センサは、前記チャンバ内のアルゴンを検出するよう働く、請求項6記載の試験機器。
【請求項8】
前記センサは、前記チャンバに入るパージガスの流量を検出するよう働く、請求項6記載の試験機器。
【請求項9】
前記センサは、前記チャンバ内のガス圧力を検出するよう働く、請求項6記載の試験機器。
【請求項10】
前記チャンバは、排気される、請求項6記載の試験機器。
【請求項11】
共通頂点(2212)を有する少なくとも3つの隣り合う部分(2202,2204,2206,2208)を含むシートを備えた較正用標的(2200)であって、各前記部分(2202,2204,2206,2208)は頂角(2210)を有し、前記頂角(2210)の合計は約360°であり、各前記部分(2202,2204,2206,2208)は、蛍光X線分析によって他の部分の材料から識別可能な材料から成る、較正用標的。
【請求項12】
各前記部分(2202,2204,2206,2208)はパイ状に形成されている、請求項11記載の較正用標的。
【請求項13】
前記部分(2202,2204,2206,2208)の各々は、銅、ニッケル、鉄、亜鉛及びアルミニウムから成るリストから選択された材料で構成されている、請求項11記載の較正用標的。
【請求項14】
較正用標的であって、蛍光X線分析により銅から識別可能な材料から成るシートに取り付けられた直径が約3.5mmの銅プラグを含む、較正用標的。
【請求項15】
前記シートは、固体重合体から成る、請求項14記載の較正用標的。
【請求項16】
前記シートは、約5%のチタンを含む固体重合体から成る、請求項14記載の較正用標的。
【請求項17】
蛍光X線分析装置内におけるレチクルの存在場所を較正する方法であって、
(a)前記分析装置を較正用標的の一部分のところに照準合わせするステップ(2300)と、
(b)前記較正用標的の前記部分の組成を測定するステップ(2302)と、
(c)前記測定された組成が所望範囲内に収まっていない場合(2304)、前記分析装置を前記較正用標的に対して再位置決めし、前記ステップ(b)を繰り返すステップ(2306)と、
(d)前記測定された組成が所望範囲内に収まっている場合、前記レチクルの存在場所を前記較正用標的上の所定の場所に対応させるステップ(2308)とを有する、方法。
【請求項18】
蛍光X線分析装置内におけるレチクルの存在場所を較正する方法であって、
較正用標的上の複数の別々の場所のところの較正用標的(2100)の部分の組成を測定し、複数の測定値を得るステップと、
前記複数の測定値に曲線(2700)を当てはめるステップと、
前記レチクルの存在場所を前記曲線上の所定の場所に対応させるステップとを有する、方法。
【請求項19】
前記組成測定ステップは、前記較正用標的(2100)上の少なくとも5つの別々の場所(2800,2802,2804,2806,2808)のところで組成を測定するステップを含み、前記曲線(2700)当てはめステップは、放物面を表す曲線を当てはめるステップを含む、請求項18記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2010−518406(P2010−518406A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549683(P2009−549683)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/053691
【国際公開番号】WO2008/100914
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(508019894)サーモ ニトン アナライザーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (12)
【Fターム(参考)】