小動物の位置測定システム
【課題】1Kg程度の飼育ケース内に存在する10〜30g程度と軽量な小動物の位置情報を、安価に収集するシステムを提供する
【解決手段】重心の変化を求める荷重計とは別に、重量を支える支柱2を用意することにより、広いダイナミックレンジの荷重計を用いる必要が無くなり、システムを低コストで提供することが可能となる。安価なシステムを提供できれば、これまで容易に評価できなかった開発機関でも導入がすすみ、より多くの研究者が積極的に研究できる体制を整備することが可能となる。また、医薬品や機能性食品等の研究開発における学術レベルの向上に貢献できる。
【解決手段】重心の変化を求める荷重計とは別に、重量を支える支柱2を用意することにより、広いダイナミックレンジの荷重計を用いる必要が無くなり、システムを低コストで提供することが可能となる。安価なシステムを提供できれば、これまで容易に評価できなかった開発機関でも導入がすすみ、より多くの研究者が積極的に研究できる体制を整備することが可能となる。また、医薬品や機能性食品等の研究開発における学術レベルの向上に貢献できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数カ所の荷重を計測することで飼育ケース内のマウス等小動物の位置情報を収集するための位置測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小動物の位置情報のみならず、物体の動きや位置を収集する手法として、ビデオカメラ等を用いて撮像し、画像処理や人間の目により動きや位置を取得する方法が一般的に用いられている。
【0003】
また、赤外線センサを多数(64個)用いて小動物の位置を測定する手法が提案されている。(フェノタイプアナライジング社製 KUROBOX)
【0004】
また重心動揺計のように荷重の加わるプレート周辺部に複数の荷重センサを設けて荷重を計測し、その結果から重心、すなわち小動物の位置を導き出す手法も考えられる。(特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】特開昭48−17784
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビデオカメラ等を用いる手法は、機材が高価で画像処理まで行う場合は専門知識も必要となる。さらに10匹程度を同時に観察するにはビデオカメラの台数も多数必要となり初期投資が大きくなる。また暗所での観察も必要な場合、さらに高額な赤外線ビデオカメラが必要となる。
【0007】
赤外線センサを用いる手法は、空間分解能を上げるために赤外線センサが多数必要で、やはり高額なシステムとなってしまう。
【0008】
重心動揺計のような構造を用いて重心や重量を導き出す手法は、荷重計を複数設置することから荷重計のコストが全体のコストに影響を与える。
【0009】
ここで、重心動揺計と同じ手法で飼育ケース内の実験用マウスを観察することを考える。実験用マウスは重量が10g〜30g程度と非常に軽量で、その移動による数十mg程度の荷重変化を的確に捉えるために、荷重計には高い感度が要求される。
【0010】
一方飼育ケースは、一般的なものは餌や水をセットすると1kg程度になり、荷重計にはこの重量を測定できるだけの測定レンジが必要である。
【0011】
このように全体の重量が重い中で軽量な小動物の動きによる微小な変化を観察する場合、ある程度ダイナミックレンジの広い荷重計が必要であり、このような荷重計を用いたシステムでは、やはり高額なシステムとなってしまう。
【0012】
本発明は、上記のように高額な機器を用いることなく、安価に小動物の位置測定システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
重心動揺計のような機構を用いて重心を求める手法において、重心の変化による微少な荷重変化を計測する荷重計とは別に、重量を主に支える支点を追加し、さらに小動物の位置情報を推定するために必要なリファレンスデータを取得するという機能を付加したシステムとする。
【0014】
具体的には、重心動揺計のように荷重の加わるプレートの周辺部に複数の荷重計を設けて重心を求める装置を用い、その上に置いた飼育ケース内に存在するマウス等小動物の位置情報を得るようなシステムにおいて、飼育ケースを設置するプレートを有し、前記プレートの周辺部にプレートを保持する荷重計を4個有し、前記4個の荷重計の力点を頂点とする四角形の内側に荷重を支える支柱を1個有することを特徴とする荷重測定部を持ち、荷重計より得られる情報を小動物の位置情報に変換するためのリファレンスデータ収集機能と演算機能を有し、得られた位置情報を出力する機能と、蓄積する機能とを有することを特徴とする小動物の位置測定システムである。
【0015】
また、荷重計を3個有し、前記3個の荷重計の力点を頂点とする三角形の内側に荷重を支える支柱を1個有することを特徴とする小動物の位置測定システムであってもよい。
【0016】
また、荷重計を2個有し、プレートにかかる荷重を支える支柱を1個有し、荷重計2個の力点と支柱1個で三角形が構成できることを特徴とする小動物の位置測定システムであってもよい。
【0017】
また、4個の荷重計のうち隣り合う2個の荷重計にのみ、もしくは3個の荷重計にのみセンサが付加されていることを特徴とする小動物の位置測定装置であってもよい。
【0018】
また、荷重の計測方法として、片持ちの板バネを形成し、ひずみゲージにより変位を求めることを特徴とする小動物の位置測定装置であってもよい。
【0019】
小動物の位置情報とは、測定対象であるマウス等小動物が、飼育ケース内のxy平面上(底面)のどの場所に存在するかを示す情報である。
【0020】
荷重計の力点とは、荷重計に対して荷重が加わる部分であり、具体的には荷重計と飼育ケースを設置するプレートの接点である。飼育ケースを設置するプレートに荷重計が備わっている場合は、荷重計と地面、もしくは荷重計と下部プレートの接点を指す。
【0021】
リファレンスデータとは、飼育ケース内の小動物の実際の位置と、その位置での荷重計より得られる情報との関係を示す値である。
【0022】
荷重計より得られる情報とは、実際の重量(グラム)であったり、荷重計の変位による抵抗値の変化であったりする。
【0023】
荷重計が4個の場合は、例えば図1のような配置になる。図1は上面から見た図である。荷重計の力点132、142、152、162を頂点とする四角形111の内側に荷重を支える支柱2が存在する。中央部分に支柱2が表現してあるが特に中央部分でなくてもよい。
【0024】
荷重計が3個の場合は、例えば図2のような配置になる。荷重計の力点232、242、272を頂点とする三角形211の内側に荷重を支える支柱2が存在する。中央部分に支柱2が表現してあるが特に中央部分でなくてもよい。
【0025】
荷重計が2個の場合は、例えば図3のような配置になる。荷重計の力点332、342と荷重を支える支柱2が三角形311を構成している。三角形を構成するという意味は、平面を作るという意味である。3点が一直線上に並ぶ場合は、平面を構成できないため不都合が生じる。
【0026】
4個の荷重計のうち隣り合う2個の荷重計にのみセンサが付加されているということは、残りの2個の荷重計はセンサを付加しない、つまり荷重に伴い変位はするが出力はないということである。荷重計を片持ちの板バネで4個作成し、そのうちの2個にのみ、ひずみゲージなどのセンサを付加する場合などが相当する。また、3個の荷重計にのみセンサが付加されているということも同様である。
【0027】
隣り合う2個の荷重計とは、例えば図1において荷重計132と荷重計142、もしくは荷重計142と荷重計152、もしくは荷重計152と荷重計162、もしくは荷重計162と荷重計132のいずれかである。
【0028】
荷重を主に支える支点を設けて、その他の場所で荷重を測定するという考え方によく似たものとして自動車タイヤのアンバランスを測定する技術がある(特許文献2参照)。重心があると思われる位置を支え、周辺部に複数の荷重計を設置し、その荷重計の出力からアンバランス量およびアンバランスを修正する位置を算出するものである。
【0029】
【特許文献2】特開昭57−146125
【0030】
特許文献2の技術は、アンバランス量とそのアンバランスを修正する位置を求めることができるだけであり、そのままでは小動物の位置情報を得ることはできない。
【0031】
本発明は、小動物の位置情報を得るために、リファレンスデータを収集するという機能を付加することで、荷重計から得られる情報を、リアルタイムで小動物の位置に変換することを可能とするものである。
【発明の効果】
【0032】
重量を主に支える支点を設けることにより、荷重変化を計測する荷重計には大きな荷重がかからなくなり、その結果広いダイナミックレンジを必要としない安価な荷重計でシステムを構築できる。
【0033】
また、実験用マウス等小動物の位置情報を収集し、その行動を分析する動物行動学は、医薬品開発や機能性食品等の開発を行う現場において、その効果や機能を評価する有効な手段となっている。
【0034】
しかし、小動物の位置情報は思うほど安易に収集できるものではなく、実現するには高価な機材を使用し、システムを構築しなければならない。また有意差で判断するような実験では、通常10匹程度のマウスで同時に実験するため、システム構築には多額の費用が必要となり、研究開発の高いハードルとなっている。
【0035】
安価なシステムを提供できれば、これまで容易に評価できなかった研究開発機関でも導入がすすみ、より多くの研究者が積極的に研究できる体制を整備することが可能となる。そのため、医薬品や機能性食品等の研究開発における学術レベルの向上に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
まず、荷重計が4個である場合について図4と図5で説明する。図4は荷重測定部を上面から見た構成図であり、図5は側面から見た構成図である。荷重の計測方法としては、片持ちの板バネを形成し、ひずみゲージにより変位を求める形態である。位置測定装置のプレート1の上には、マウスの飼育ケース8を載せてあり、中にはマウスがいるものとする。
【0037】
プレート1の中央部分には、重量を支えるための支柱2を設置する。この支柱は特にプレートの中央でなくてもよいが、重量を十分に支えるためには中央付近であることが望ましい。以下支柱2は便宜的に中央支柱2と呼ぶこととする。
【0038】
プレート1の周辺部には、中央支柱2を対角線の交点とする長方形の頂点部分が力のかかる力点になるように、同じ形状の片持ち板バネ31、41、51、61を形成する。各力点には支柱32、42、52、62を設置する。以下中央支柱2以外の支柱を便宜的に周辺支柱と呼ぶこととする。
【0039】
中央支柱2は、周辺支柱が作る四角形の対角線の交点に存在しなくてもよいが、演算の容易さを考慮すると交点が望ましい。
【0040】
周辺支柱32、42、52、62および中央支柱2は基本的に下部プレート9に固定するが、特に固定しなくてもよい。また下部プレート9は特になくてもよく、その場合は荷重測定部を直接テーブルや地面に設置する。
【0041】
周辺支柱32、42、52、62および中央支柱2の長さは、下部プレート9に固定する場合は同じ長さにする。固定しない場合は、使用する際に荷重の変化に伴いプレート1が傾く場合でも4個の周辺支柱が下部プレート9もしくは地面から離れることがないように長さを調整する。
【0042】
ストッパー33、43、53、63は、意図しない荷重がかかった際に片持ち板バネを保護する。その長さは、プレート1の傾きを阻害しない長さに調整する。
【0043】
各片持ち板バネ31、41、51、61の根本にひずみゲージ34、44、54、64(表側)、35、45、55、65(裏側)を貼付する。ひずみゲージを8枚貼ることで感度を上げることが可能となる。
【0044】
ひずみゲージの枚数は特に8枚である必要はなく、最も少ない場合は隣り合う片持ちバネ2つにそれぞれ1枚ずつ合計2枚貼ればよい。多い場合はスペースの許す限り取り付けることは可能である。
【0045】
荷重測定部は、中央支柱2を支点とする360度シーソーのような動きをすることから重心の変化によるひずみゲージの変化量は基本的に数1および数2のような関係にある。
【数1】
【数2】
【0046】
このため、ひずみゲージの抵抗値を電圧値に変換する平衡ブリッジは図10のように組むことが可能となる。その結果、ひずみゲージの抵抗値は出力A、出力Bの2つにまとめられ、パソコン等にデータを取り込むためのA/D変換のチャンネル数は2つとなる。出力A、Bは必要に応じて増幅してA/D変換してもよい。
【0047】
飼育ケースの各辺に平行にx軸、y軸を設定すると出力A、出力Bは図4のようになる。出力Aは中央支柱2から支柱42方向、もしくは支柱62方向のベクトルとなり、出力Bは中央支柱2から支柱32方向、もしくは支柱52方向のベクトルとなる。平行ブリッジの電圧のかけ方にもよるが、便宜的に支柱42方向および支柱32方向をそれぞれ正とする。これをx軸y軸方向それぞれの値に変換するには数3を用いる。
【数3】
【0048】
ここで、x軸、y軸方向の値は、飼育ケース内の位置を直接的に示すものではないため、飼育ケースの座標と対応させる変換が必要になる。
【0049】
座標変換を図11を用いて説明する。
【0050】
座標A1、A2、A3、A4は、マウスが飼育ケースの隅にいたときに得られる出力A、Bから求められるx軸、y軸方向の値をそのままxy平面にプロットしたものである。小動物が飼育ケース内を移動した場合、得られるデータはこの4点を頂点とする四角形(A1、A2、A3、A4)の範囲におおむね納まる。この四角形が歪な理由は、ひずみゲージの個体差、ひずみゲージの貼付ばらつき、板バネの長さ、厚さ、幅のばらつき、初期重心の中央支柱2からのズレ等による。
【0051】
座標B1、B2、B3、B4は飼育ケースの四隅の座標をプロットしたものである。A1をB1に、A2をB2に、A3をB3に、A4をB4に変換する演算を行い、内部の点も等比分布するように演算することでほぼ実際の位置に近似できる。
【0052】
まず、A1をB1に変換することを考える。D1はA1における変換のベクトル(大きさと方向)を表すものである。A1をB1に変換するということは、四角形(A1、A2、A3、A4)が四角形(B1、A2、A3、A4)になるということである。
【0053】
この変換により、四角形(A1、A2、A3、A4)内部の任意の座標C1は座標C2に変換される。D2はC1における変換のベクトルであり、その方向はD1と同じとなる。
【0054】
ここで線分(A3、A4)と線分(A3、A2)は変換後も変わらないことから、仮にC1が線分(A3、A4)上もしくは線分(A3、A2)上にある場合は変換されず同じ座標にとどまることになる。つまり線分(A3、A4)や線分(A3、A2)に近い座標ほど変換の大きさは小さくなり、逆に座標A1に近い座標ほど変換の大きさはD2の大きさに近づくことになる。
【0055】
その比を求めるためにE1、E2、E3、E4を決定する。ここで直線1はA3、A4を通る直線である。同様に直線2はA1、A2を、直線3はA1、A4を、直線4はA3、A2を通る直線である。
【0056】
直線5は、直線3と直線4の交点と、C1を通る直線である。直線3と直線4が平行である場合は、直線3と同じ傾きでC1を通る直線とする。直線5と直線1の交点をE4、直線5と直線2の交点をE2とする。
【0057】
直線6は、直線1と直線2の交点と、C1を通る直線である。直線1と直線2が平行である場合は、直線1と同じ傾きでC1を通る直線とする。直線6と直線3の交点をE1、直線6と直線4の交点をE3とする。
【0058】
線分(E4、E2)と線分(E3、E1)それぞれをC1で分割することにより、C1における変換の大きさをその線分の比で表すことがでる。ベクトルD2の大きさは数4で求められる。
【数4】
【0059】
同様の変換をA2、A3、A4で行うことで四角形(A1、A2、A3、A4)の内部の座標は四角形(B1、B2、B3、B4)の内部の座標に変換できる。
【0060】
この変換は、マウスが飼育ケースの4隅にいるときの座標A1、A2、A3、A4を把握できれば任意の座標C1の変換量が導き出せるため、実験初期の段階でA1、A2、A3、A4をリファレンスデータとして把握する機能をプログラムに付加する。
【0061】
具体的には、パソコン画面に飼育ケースの底面を模した四角形を表示させておく。実験用マウスが飼育ケースの各4隅に近づいたときに、実験用マウスの位置を目視で確認し、パソコン画面の四角形の対応する位置をカーソルでクリックする。プログラム内部ではクリックされたパソコン画面上のxy座標が得られるため、それを飼育ケースの座標に置き換えることで実現できる。
【0062】
この方法は、実験用マウスがちょうど4隅まで動かない場合でも、その近傍で簡単かつ的確に指定できるため、リファレンスデータの収集の手間を大幅に削減できる。
【0063】
この演算は、すべてのデータを収集した後に、座標A1、A2、A3、A4を収集したデータの中から拾い出し、まとめて行うことも可能である。
【0064】
次に荷重計が3個である場合について図6、図7で説明する。片持ち板バネ、支柱、ストッパーなどの構造は荷重計が4個である場合と同じである。支柱72と中央支柱2が作る直線はx軸に平行になるように配置してあるが、特に平行でなくてもよい。
【0065】
ひずみゲージは3個の板バネすべての両面に合計6枚貼付する。それぞれ片面だけに貼付することも可能である。
【0066】
貼付したひずみゲージは、それぞれの板バネ単位で平衡ブリッジを組むこととなる。その結果、ひずみゲージの値は出力A、出力B、出力Cの3つとなり、A/D変換のチャンネル数は3つとなる。
【0067】
飼育ケースの各辺に平行にx軸、y軸を設定すると出力A、B、Cは図6のようになる。出力Aは中央支柱2から支柱42方向、もしくはその180度逆の方向のベクトルとなり、出力Bは中央支柱2から支柱32方向、もしくはその180度逆の方向のベクトルとなり、出力Cは中央支柱2から支柱72方向、もしくはその180度逆の方向のベクトルとなる。平行ブリッジの電圧のかけ方にもよるが、便宜的に支柱42方向および支柱32方向および支柱72方向をそれぞれ正とする。これをx軸y軸方向それぞれの値に変換するには数5を用いる。
【数5】
【0068】
ここで、支柱72と中央支柱2が作る直線がx軸に平行でない場合は、出力Cにある係数を乗算した値を、数5のy軸方向の値に加算もしくは減算する。
【0069】
飼育ケースの座標への変換は、荷重計が4個の場合と同じである。
【0070】
次に荷重計が2個の場合について図8、図9で説明する。これは、荷重計が4個ある場合の隣り合う2個の荷重計が存在しない構成である。片持ち板バネ、支柱、ストッパーなどの構造は荷重計が4個である場合と同様であるが、この構成の場合は下部プレート9に支柱32、42を固定することが必須となる。中央支柱2は、飼育ケースの重心がほぼ真上に来ることができるようにプレート1の中央付近に設置することが望ましい。
【0071】
ひずみゲージは2個の板バネの両面に合計4枚貼付する。それぞれ片面だけに貼付することも可能である。
【0072】
貼付したひずみゲージは、それぞれの板バネ単位で平衡ブリッジを組むこととなる。その結果、ひずみゲージの値は出力A、出力Bとなり、A/D変換のチャンネル数は2つとなる。
【0073】
飼育ケースの各辺に平行にx軸、y軸を設定すると出力A、Bは図8のようになる。出力Aは中央支柱2から支柱42方向、もしくはその180度逆の方向のベクトルとなり、出力Bは中央支柱2から支柱32方向、もしくはその180度逆の方向のベクトルとなる。平行ブリッジの電圧のかけ方にもよるが、便宜的に支柱42方向および支柱32方向をそれぞれ正とする。これをx軸y軸方向それぞれの値に変換するには数3を用いる。
【0074】
飼育ケースの座標への変換は荷重計が4個の場合と同じである。
【0075】
片持ち板バネとひずみゲージを用いた荷重計測について説明したが、ロードセルや感圧センサなど荷重を直接測定できるものを用いてもよく、小動物の位置への変換はひずみゲージを用いた場合と同様の方法で実現できる。
【実施例1】
【0076】
図4に示す荷重計が4個で、板バネを形成しひずみゲージを貼付する構成で実施した。
【0077】
プレート1は厚さ1mmの普通鉄板を用いた。大きさは30cm×22cmとした。周辺支柱が作る長方形は27cm×19cmとした。板バネの幅は1cm、長さは根本から支柱を取り付ける位置までを8cmとした。ひずみゲージは一般的な箔ゲージで120オームのものを8枚使用し、各板バネの根本にゲージの先端がくるように貼付した。各支柱の長さは1.5cmとし、下部プレート9に固定した。ストッパーの長さは0.8cmとした。
【0078】
ひずみゲージは図10のように結線されるようにひずみ測定器(共和電業社製UCAM−70A:A/D変換を行う)に接続した。ひずみ測定器はパソコンに接続されており、任意のタイミングでひずみ量をパソコンへ送出する。
【0079】
プレート1上に底面が約19cm×13cmの飼育ケースを、マウスを入れた状態で設置した。
【0080】
実験用マウスがケース内を移動して飼育ケースの隅に近づいたとき、パソコン画面上にある飼育ケースの底面を模した長方形内で、実験用マウスが存在する地点に対応する位置をクリックしリファレンスデータを取得した。4隅すべてでリファレンスデータを取得し、実際の位置に変換するための係数を把握した。
【0081】
以後、定時間ごとに歪み測定器からのデータをパソコンで収集し、マウスの実際の位置を演算処理により求め、位置情報をパソコン画面に表示すると同時に蓄積した。モニタリング中の実験用マウスの位置を示すパソコン画面を図12に示す。黒い部分は過去10個の位置情報の軌跡を示し、白い部分はそれ以前の位置情報の軌跡を示している。
【実施例2】
【0082】
図6に示すように荷重計が3個の構成である以外は実施例1と同様の方法でシステムを構築し、同様の結果を得た。
【実施例3】
【0083】
図8に示すように荷重計が2個の構成である以外は実施例1と同様の方法でシステムを構築し、同様の結果を得た。
【実施例4】
【0084】
図4に示すように荷重計が4個の構成で、ひずみゲージ44とひずみゲージ34の2枚だけ貼付したこと以外は実施例1と同様の方法でシステムを構築し、同様の結果を得た。
【実施例5】
【0085】
図8に示すように荷重計が2個の構成で、ひずみゲージ44とひずみゲージ34の2枚だけ貼付したこと以外は実施例1と同様の方法でシステムを構築し、同様の結果を得た。
【実施例6】
【0086】
図1に示すように板バネを形成せず、周辺支柱4個を直接プレート1に取り付け、地面との接点に感圧センサを設置し、その出力をOPアンプで増幅して収集すること以外は実施例1と同様の方法でシステムを構築し、同様の結果を得た。
【実施例7】
【0087】
図2に示すように板バネを形成せず、周辺支柱3個を直接プレート1に取り付け、地面との接点に感圧センサを設置し、その出力をOPアンプで増幅して収集すること以外は実施例1と同様の方法でシステムを構築し、同様の結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】荷重計4個と中央支柱1個の位置関係を説明した構成図である。
【図2】荷重計3個と中央支柱1個の位置関係を説明した構成図である。
【図3】荷重計2個と中央支柱1個の位置関係を説明した構成図である。
【図4】荷重計を4個有する荷重計測部の上面から見た構成図である。
【図5】荷重計を4個有する荷重計測部の側面から見た構成図である。
【図6】荷重計を3個有する荷重計測部の上面から見た構成図である。
【図7】荷重計を3個有する荷重計測部の側面から見た構成図である。
【図8】荷重計を2個有する荷重計測部の上面から見た構成図である。
【図9】荷重計を2個有する荷重計測部の側面から見た構成図である。
【図10】荷重計を4個有し、ひずみゲージを8枚貼付した場合の平行ブリッジ回路図である。
【図11】荷重計の出力結果を位置情報に変換するイメージ図である。
【図12】実験用マウスの位置情報モニタリング中のパソコン画面である。
【符号の説明】
【0089】
1 プレート
2 中央支柱
31、41、51、61、71 片持ち板バネ
32、42、52、62、72 周辺支柱
33、43、53、63、73 ストッパー
34、44、55、65、74 表面ひずみゲージ
35、45、55、65、75 裏面ひずみゲージ
8 飼育ケース
9 下部プレート
132、142、152、162 荷重計の力点の位置
232、242、272、332、342 荷重計の力点の位置
111 4個の荷重計の力点を頂点とする四角形
211 3個の荷重計の力点を頂点とする三角形
311 2個の荷重計の力点と中央支柱を頂点とする三角形
【技術分野】
【0001】
本発明は、数カ所の荷重を計測することで飼育ケース内のマウス等小動物の位置情報を収集するための位置測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小動物の位置情報のみならず、物体の動きや位置を収集する手法として、ビデオカメラ等を用いて撮像し、画像処理や人間の目により動きや位置を取得する方法が一般的に用いられている。
【0003】
また、赤外線センサを多数(64個)用いて小動物の位置を測定する手法が提案されている。(フェノタイプアナライジング社製 KUROBOX)
【0004】
また重心動揺計のように荷重の加わるプレート周辺部に複数の荷重センサを設けて荷重を計測し、その結果から重心、すなわち小動物の位置を導き出す手法も考えられる。(特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】特開昭48−17784
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビデオカメラ等を用いる手法は、機材が高価で画像処理まで行う場合は専門知識も必要となる。さらに10匹程度を同時に観察するにはビデオカメラの台数も多数必要となり初期投資が大きくなる。また暗所での観察も必要な場合、さらに高額な赤外線ビデオカメラが必要となる。
【0007】
赤外線センサを用いる手法は、空間分解能を上げるために赤外線センサが多数必要で、やはり高額なシステムとなってしまう。
【0008】
重心動揺計のような構造を用いて重心や重量を導き出す手法は、荷重計を複数設置することから荷重計のコストが全体のコストに影響を与える。
【0009】
ここで、重心動揺計と同じ手法で飼育ケース内の実験用マウスを観察することを考える。実験用マウスは重量が10g〜30g程度と非常に軽量で、その移動による数十mg程度の荷重変化を的確に捉えるために、荷重計には高い感度が要求される。
【0010】
一方飼育ケースは、一般的なものは餌や水をセットすると1kg程度になり、荷重計にはこの重量を測定できるだけの測定レンジが必要である。
【0011】
このように全体の重量が重い中で軽量な小動物の動きによる微小な変化を観察する場合、ある程度ダイナミックレンジの広い荷重計が必要であり、このような荷重計を用いたシステムでは、やはり高額なシステムとなってしまう。
【0012】
本発明は、上記のように高額な機器を用いることなく、安価に小動物の位置測定システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
重心動揺計のような機構を用いて重心を求める手法において、重心の変化による微少な荷重変化を計測する荷重計とは別に、重量を主に支える支点を追加し、さらに小動物の位置情報を推定するために必要なリファレンスデータを取得するという機能を付加したシステムとする。
【0014】
具体的には、重心動揺計のように荷重の加わるプレートの周辺部に複数の荷重計を設けて重心を求める装置を用い、その上に置いた飼育ケース内に存在するマウス等小動物の位置情報を得るようなシステムにおいて、飼育ケースを設置するプレートを有し、前記プレートの周辺部にプレートを保持する荷重計を4個有し、前記4個の荷重計の力点を頂点とする四角形の内側に荷重を支える支柱を1個有することを特徴とする荷重測定部を持ち、荷重計より得られる情報を小動物の位置情報に変換するためのリファレンスデータ収集機能と演算機能を有し、得られた位置情報を出力する機能と、蓄積する機能とを有することを特徴とする小動物の位置測定システムである。
【0015】
また、荷重計を3個有し、前記3個の荷重計の力点を頂点とする三角形の内側に荷重を支える支柱を1個有することを特徴とする小動物の位置測定システムであってもよい。
【0016】
また、荷重計を2個有し、プレートにかかる荷重を支える支柱を1個有し、荷重計2個の力点と支柱1個で三角形が構成できることを特徴とする小動物の位置測定システムであってもよい。
【0017】
また、4個の荷重計のうち隣り合う2個の荷重計にのみ、もしくは3個の荷重計にのみセンサが付加されていることを特徴とする小動物の位置測定装置であってもよい。
【0018】
また、荷重の計測方法として、片持ちの板バネを形成し、ひずみゲージにより変位を求めることを特徴とする小動物の位置測定装置であってもよい。
【0019】
小動物の位置情報とは、測定対象であるマウス等小動物が、飼育ケース内のxy平面上(底面)のどの場所に存在するかを示す情報である。
【0020】
荷重計の力点とは、荷重計に対して荷重が加わる部分であり、具体的には荷重計と飼育ケースを設置するプレートの接点である。飼育ケースを設置するプレートに荷重計が備わっている場合は、荷重計と地面、もしくは荷重計と下部プレートの接点を指す。
【0021】
リファレンスデータとは、飼育ケース内の小動物の実際の位置と、その位置での荷重計より得られる情報との関係を示す値である。
【0022】
荷重計より得られる情報とは、実際の重量(グラム)であったり、荷重計の変位による抵抗値の変化であったりする。
【0023】
荷重計が4個の場合は、例えば図1のような配置になる。図1は上面から見た図である。荷重計の力点132、142、152、162を頂点とする四角形111の内側に荷重を支える支柱2が存在する。中央部分に支柱2が表現してあるが特に中央部分でなくてもよい。
【0024】
荷重計が3個の場合は、例えば図2のような配置になる。荷重計の力点232、242、272を頂点とする三角形211の内側に荷重を支える支柱2が存在する。中央部分に支柱2が表現してあるが特に中央部分でなくてもよい。
【0025】
荷重計が2個の場合は、例えば図3のような配置になる。荷重計の力点332、342と荷重を支える支柱2が三角形311を構成している。三角形を構成するという意味は、平面を作るという意味である。3点が一直線上に並ぶ場合は、平面を構成できないため不都合が生じる。
【0026】
4個の荷重計のうち隣り合う2個の荷重計にのみセンサが付加されているということは、残りの2個の荷重計はセンサを付加しない、つまり荷重に伴い変位はするが出力はないということである。荷重計を片持ちの板バネで4個作成し、そのうちの2個にのみ、ひずみゲージなどのセンサを付加する場合などが相当する。また、3個の荷重計にのみセンサが付加されているということも同様である。
【0027】
隣り合う2個の荷重計とは、例えば図1において荷重計132と荷重計142、もしくは荷重計142と荷重計152、もしくは荷重計152と荷重計162、もしくは荷重計162と荷重計132のいずれかである。
【0028】
荷重を主に支える支点を設けて、その他の場所で荷重を測定するという考え方によく似たものとして自動車タイヤのアンバランスを測定する技術がある(特許文献2参照)。重心があると思われる位置を支え、周辺部に複数の荷重計を設置し、その荷重計の出力からアンバランス量およびアンバランスを修正する位置を算出するものである。
【0029】
【特許文献2】特開昭57−146125
【0030】
特許文献2の技術は、アンバランス量とそのアンバランスを修正する位置を求めることができるだけであり、そのままでは小動物の位置情報を得ることはできない。
【0031】
本発明は、小動物の位置情報を得るために、リファレンスデータを収集するという機能を付加することで、荷重計から得られる情報を、リアルタイムで小動物の位置に変換することを可能とするものである。
【発明の効果】
【0032】
重量を主に支える支点を設けることにより、荷重変化を計測する荷重計には大きな荷重がかからなくなり、その結果広いダイナミックレンジを必要としない安価な荷重計でシステムを構築できる。
【0033】
また、実験用マウス等小動物の位置情報を収集し、その行動を分析する動物行動学は、医薬品開発や機能性食品等の開発を行う現場において、その効果や機能を評価する有効な手段となっている。
【0034】
しかし、小動物の位置情報は思うほど安易に収集できるものではなく、実現するには高価な機材を使用し、システムを構築しなければならない。また有意差で判断するような実験では、通常10匹程度のマウスで同時に実験するため、システム構築には多額の費用が必要となり、研究開発の高いハードルとなっている。
【0035】
安価なシステムを提供できれば、これまで容易に評価できなかった研究開発機関でも導入がすすみ、より多くの研究者が積極的に研究できる体制を整備することが可能となる。そのため、医薬品や機能性食品等の研究開発における学術レベルの向上に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
まず、荷重計が4個である場合について図4と図5で説明する。図4は荷重測定部を上面から見た構成図であり、図5は側面から見た構成図である。荷重の計測方法としては、片持ちの板バネを形成し、ひずみゲージにより変位を求める形態である。位置測定装置のプレート1の上には、マウスの飼育ケース8を載せてあり、中にはマウスがいるものとする。
【0037】
プレート1の中央部分には、重量を支えるための支柱2を設置する。この支柱は特にプレートの中央でなくてもよいが、重量を十分に支えるためには中央付近であることが望ましい。以下支柱2は便宜的に中央支柱2と呼ぶこととする。
【0038】
プレート1の周辺部には、中央支柱2を対角線の交点とする長方形の頂点部分が力のかかる力点になるように、同じ形状の片持ち板バネ31、41、51、61を形成する。各力点には支柱32、42、52、62を設置する。以下中央支柱2以外の支柱を便宜的に周辺支柱と呼ぶこととする。
【0039】
中央支柱2は、周辺支柱が作る四角形の対角線の交点に存在しなくてもよいが、演算の容易さを考慮すると交点が望ましい。
【0040】
周辺支柱32、42、52、62および中央支柱2は基本的に下部プレート9に固定するが、特に固定しなくてもよい。また下部プレート9は特になくてもよく、その場合は荷重測定部を直接テーブルや地面に設置する。
【0041】
周辺支柱32、42、52、62および中央支柱2の長さは、下部プレート9に固定する場合は同じ長さにする。固定しない場合は、使用する際に荷重の変化に伴いプレート1が傾く場合でも4個の周辺支柱が下部プレート9もしくは地面から離れることがないように長さを調整する。
【0042】
ストッパー33、43、53、63は、意図しない荷重がかかった際に片持ち板バネを保護する。その長さは、プレート1の傾きを阻害しない長さに調整する。
【0043】
各片持ち板バネ31、41、51、61の根本にひずみゲージ34、44、54、64(表側)、35、45、55、65(裏側)を貼付する。ひずみゲージを8枚貼ることで感度を上げることが可能となる。
【0044】
ひずみゲージの枚数は特に8枚である必要はなく、最も少ない場合は隣り合う片持ちバネ2つにそれぞれ1枚ずつ合計2枚貼ればよい。多い場合はスペースの許す限り取り付けることは可能である。
【0045】
荷重測定部は、中央支柱2を支点とする360度シーソーのような動きをすることから重心の変化によるひずみゲージの変化量は基本的に数1および数2のような関係にある。
【数1】
【数2】
【0046】
このため、ひずみゲージの抵抗値を電圧値に変換する平衡ブリッジは図10のように組むことが可能となる。その結果、ひずみゲージの抵抗値は出力A、出力Bの2つにまとめられ、パソコン等にデータを取り込むためのA/D変換のチャンネル数は2つとなる。出力A、Bは必要に応じて増幅してA/D変換してもよい。
【0047】
飼育ケースの各辺に平行にx軸、y軸を設定すると出力A、出力Bは図4のようになる。出力Aは中央支柱2から支柱42方向、もしくは支柱62方向のベクトルとなり、出力Bは中央支柱2から支柱32方向、もしくは支柱52方向のベクトルとなる。平行ブリッジの電圧のかけ方にもよるが、便宜的に支柱42方向および支柱32方向をそれぞれ正とする。これをx軸y軸方向それぞれの値に変換するには数3を用いる。
【数3】
【0048】
ここで、x軸、y軸方向の値は、飼育ケース内の位置を直接的に示すものではないため、飼育ケースの座標と対応させる変換が必要になる。
【0049】
座標変換を図11を用いて説明する。
【0050】
座標A1、A2、A3、A4は、マウスが飼育ケースの隅にいたときに得られる出力A、Bから求められるx軸、y軸方向の値をそのままxy平面にプロットしたものである。小動物が飼育ケース内を移動した場合、得られるデータはこの4点を頂点とする四角形(A1、A2、A3、A4)の範囲におおむね納まる。この四角形が歪な理由は、ひずみゲージの個体差、ひずみゲージの貼付ばらつき、板バネの長さ、厚さ、幅のばらつき、初期重心の中央支柱2からのズレ等による。
【0051】
座標B1、B2、B3、B4は飼育ケースの四隅の座標をプロットしたものである。A1をB1に、A2をB2に、A3をB3に、A4をB4に変換する演算を行い、内部の点も等比分布するように演算することでほぼ実際の位置に近似できる。
【0052】
まず、A1をB1に変換することを考える。D1はA1における変換のベクトル(大きさと方向)を表すものである。A1をB1に変換するということは、四角形(A1、A2、A3、A4)が四角形(B1、A2、A3、A4)になるということである。
【0053】
この変換により、四角形(A1、A2、A3、A4)内部の任意の座標C1は座標C2に変換される。D2はC1における変換のベクトルであり、その方向はD1と同じとなる。
【0054】
ここで線分(A3、A4)と線分(A3、A2)は変換後も変わらないことから、仮にC1が線分(A3、A4)上もしくは線分(A3、A2)上にある場合は変換されず同じ座標にとどまることになる。つまり線分(A3、A4)や線分(A3、A2)に近い座標ほど変換の大きさは小さくなり、逆に座標A1に近い座標ほど変換の大きさはD2の大きさに近づくことになる。
【0055】
その比を求めるためにE1、E2、E3、E4を決定する。ここで直線1はA3、A4を通る直線である。同様に直線2はA1、A2を、直線3はA1、A4を、直線4はA3、A2を通る直線である。
【0056】
直線5は、直線3と直線4の交点と、C1を通る直線である。直線3と直線4が平行である場合は、直線3と同じ傾きでC1を通る直線とする。直線5と直線1の交点をE4、直線5と直線2の交点をE2とする。
【0057】
直線6は、直線1と直線2の交点と、C1を通る直線である。直線1と直線2が平行である場合は、直線1と同じ傾きでC1を通る直線とする。直線6と直線3の交点をE1、直線6と直線4の交点をE3とする。
【0058】
線分(E4、E2)と線分(E3、E1)それぞれをC1で分割することにより、C1における変換の大きさをその線分の比で表すことがでる。ベクトルD2の大きさは数4で求められる。
【数4】
【0059】
同様の変換をA2、A3、A4で行うことで四角形(A1、A2、A3、A4)の内部の座標は四角形(B1、B2、B3、B4)の内部の座標に変換できる。
【0060】
この変換は、マウスが飼育ケースの4隅にいるときの座標A1、A2、A3、A4を把握できれば任意の座標C1の変換量が導き出せるため、実験初期の段階でA1、A2、A3、A4をリファレンスデータとして把握する機能をプログラムに付加する。
【0061】
具体的には、パソコン画面に飼育ケースの底面を模した四角形を表示させておく。実験用マウスが飼育ケースの各4隅に近づいたときに、実験用マウスの位置を目視で確認し、パソコン画面の四角形の対応する位置をカーソルでクリックする。プログラム内部ではクリックされたパソコン画面上のxy座標が得られるため、それを飼育ケースの座標に置き換えることで実現できる。
【0062】
この方法は、実験用マウスがちょうど4隅まで動かない場合でも、その近傍で簡単かつ的確に指定できるため、リファレンスデータの収集の手間を大幅に削減できる。
【0063】
この演算は、すべてのデータを収集した後に、座標A1、A2、A3、A4を収集したデータの中から拾い出し、まとめて行うことも可能である。
【0064】
次に荷重計が3個である場合について図6、図7で説明する。片持ち板バネ、支柱、ストッパーなどの構造は荷重計が4個である場合と同じである。支柱72と中央支柱2が作る直線はx軸に平行になるように配置してあるが、特に平行でなくてもよい。
【0065】
ひずみゲージは3個の板バネすべての両面に合計6枚貼付する。それぞれ片面だけに貼付することも可能である。
【0066】
貼付したひずみゲージは、それぞれの板バネ単位で平衡ブリッジを組むこととなる。その結果、ひずみゲージの値は出力A、出力B、出力Cの3つとなり、A/D変換のチャンネル数は3つとなる。
【0067】
飼育ケースの各辺に平行にx軸、y軸を設定すると出力A、B、Cは図6のようになる。出力Aは中央支柱2から支柱42方向、もしくはその180度逆の方向のベクトルとなり、出力Bは中央支柱2から支柱32方向、もしくはその180度逆の方向のベクトルとなり、出力Cは中央支柱2から支柱72方向、もしくはその180度逆の方向のベクトルとなる。平行ブリッジの電圧のかけ方にもよるが、便宜的に支柱42方向および支柱32方向および支柱72方向をそれぞれ正とする。これをx軸y軸方向それぞれの値に変換するには数5を用いる。
【数5】
【0068】
ここで、支柱72と中央支柱2が作る直線がx軸に平行でない場合は、出力Cにある係数を乗算した値を、数5のy軸方向の値に加算もしくは減算する。
【0069】
飼育ケースの座標への変換は、荷重計が4個の場合と同じである。
【0070】
次に荷重計が2個の場合について図8、図9で説明する。これは、荷重計が4個ある場合の隣り合う2個の荷重計が存在しない構成である。片持ち板バネ、支柱、ストッパーなどの構造は荷重計が4個である場合と同様であるが、この構成の場合は下部プレート9に支柱32、42を固定することが必須となる。中央支柱2は、飼育ケースの重心がほぼ真上に来ることができるようにプレート1の中央付近に設置することが望ましい。
【0071】
ひずみゲージは2個の板バネの両面に合計4枚貼付する。それぞれ片面だけに貼付することも可能である。
【0072】
貼付したひずみゲージは、それぞれの板バネ単位で平衡ブリッジを組むこととなる。その結果、ひずみゲージの値は出力A、出力Bとなり、A/D変換のチャンネル数は2つとなる。
【0073】
飼育ケースの各辺に平行にx軸、y軸を設定すると出力A、Bは図8のようになる。出力Aは中央支柱2から支柱42方向、もしくはその180度逆の方向のベクトルとなり、出力Bは中央支柱2から支柱32方向、もしくはその180度逆の方向のベクトルとなる。平行ブリッジの電圧のかけ方にもよるが、便宜的に支柱42方向および支柱32方向をそれぞれ正とする。これをx軸y軸方向それぞれの値に変換するには数3を用いる。
【0074】
飼育ケースの座標への変換は荷重計が4個の場合と同じである。
【0075】
片持ち板バネとひずみゲージを用いた荷重計測について説明したが、ロードセルや感圧センサなど荷重を直接測定できるものを用いてもよく、小動物の位置への変換はひずみゲージを用いた場合と同様の方法で実現できる。
【実施例1】
【0076】
図4に示す荷重計が4個で、板バネを形成しひずみゲージを貼付する構成で実施した。
【0077】
プレート1は厚さ1mmの普通鉄板を用いた。大きさは30cm×22cmとした。周辺支柱が作る長方形は27cm×19cmとした。板バネの幅は1cm、長さは根本から支柱を取り付ける位置までを8cmとした。ひずみゲージは一般的な箔ゲージで120オームのものを8枚使用し、各板バネの根本にゲージの先端がくるように貼付した。各支柱の長さは1.5cmとし、下部プレート9に固定した。ストッパーの長さは0.8cmとした。
【0078】
ひずみゲージは図10のように結線されるようにひずみ測定器(共和電業社製UCAM−70A:A/D変換を行う)に接続した。ひずみ測定器はパソコンに接続されており、任意のタイミングでひずみ量をパソコンへ送出する。
【0079】
プレート1上に底面が約19cm×13cmの飼育ケースを、マウスを入れた状態で設置した。
【0080】
実験用マウスがケース内を移動して飼育ケースの隅に近づいたとき、パソコン画面上にある飼育ケースの底面を模した長方形内で、実験用マウスが存在する地点に対応する位置をクリックしリファレンスデータを取得した。4隅すべてでリファレンスデータを取得し、実際の位置に変換するための係数を把握した。
【0081】
以後、定時間ごとに歪み測定器からのデータをパソコンで収集し、マウスの実際の位置を演算処理により求め、位置情報をパソコン画面に表示すると同時に蓄積した。モニタリング中の実験用マウスの位置を示すパソコン画面を図12に示す。黒い部分は過去10個の位置情報の軌跡を示し、白い部分はそれ以前の位置情報の軌跡を示している。
【実施例2】
【0082】
図6に示すように荷重計が3個の構成である以外は実施例1と同様の方法でシステムを構築し、同様の結果を得た。
【実施例3】
【0083】
図8に示すように荷重計が2個の構成である以外は実施例1と同様の方法でシステムを構築し、同様の結果を得た。
【実施例4】
【0084】
図4に示すように荷重計が4個の構成で、ひずみゲージ44とひずみゲージ34の2枚だけ貼付したこと以外は実施例1と同様の方法でシステムを構築し、同様の結果を得た。
【実施例5】
【0085】
図8に示すように荷重計が2個の構成で、ひずみゲージ44とひずみゲージ34の2枚だけ貼付したこと以外は実施例1と同様の方法でシステムを構築し、同様の結果を得た。
【実施例6】
【0086】
図1に示すように板バネを形成せず、周辺支柱4個を直接プレート1に取り付け、地面との接点に感圧センサを設置し、その出力をOPアンプで増幅して収集すること以外は実施例1と同様の方法でシステムを構築し、同様の結果を得た。
【実施例7】
【0087】
図2に示すように板バネを形成せず、周辺支柱3個を直接プレート1に取り付け、地面との接点に感圧センサを設置し、その出力をOPアンプで増幅して収集すること以外は実施例1と同様の方法でシステムを構築し、同様の結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】荷重計4個と中央支柱1個の位置関係を説明した構成図である。
【図2】荷重計3個と中央支柱1個の位置関係を説明した構成図である。
【図3】荷重計2個と中央支柱1個の位置関係を説明した構成図である。
【図4】荷重計を4個有する荷重計測部の上面から見た構成図である。
【図5】荷重計を4個有する荷重計測部の側面から見た構成図である。
【図6】荷重計を3個有する荷重計測部の上面から見た構成図である。
【図7】荷重計を3個有する荷重計測部の側面から見た構成図である。
【図8】荷重計を2個有する荷重計測部の上面から見た構成図である。
【図9】荷重計を2個有する荷重計測部の側面から見た構成図である。
【図10】荷重計を4個有し、ひずみゲージを8枚貼付した場合の平行ブリッジ回路図である。
【図11】荷重計の出力結果を位置情報に変換するイメージ図である。
【図12】実験用マウスの位置情報モニタリング中のパソコン画面である。
【符号の説明】
【0089】
1 プレート
2 中央支柱
31、41、51、61、71 片持ち板バネ
32、42、52、62、72 周辺支柱
33、43、53、63、73 ストッパー
34、44、55、65、74 表面ひずみゲージ
35、45、55、65、75 裏面ひずみゲージ
8 飼育ケース
9 下部プレート
132、142、152、162 荷重計の力点の位置
232、242、272、332、342 荷重計の力点の位置
111 4個の荷重計の力点を頂点とする四角形
211 3個の荷重計の力点を頂点とする三角形
311 2個の荷重計の力点と中央支柱を頂点とする三角形
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重心動揺計のように荷重の加わるプレートの周辺部に複数の荷重計を設けて重心を求める装置を用い、その上に置いた飼育ケース内に存在するマウス等小動物の位置情報を得るようなシステムにおいて、飼育ケースを設置するプレートを有し、前記プレートの周辺部にプレートを保持する荷重計を4個有し、前記4個の荷重計の力点を頂点とする四角形の内側に荷重を支える支柱を1個有することを特徴とする荷重測定部を持ち、荷重計より得られる情報を小動物の位置情報に変換するためのリファレンスデータ収集機能と演算機能を有し、得られた位置情報を出力する機能と、蓄積する機能とを有することを特徴とする小動物の位置測定システム。
【請求項2】
荷重計を3個有し、前記3個の荷重計の力点を頂点とする三角形の内側に荷重を支える支柱を1個有することを特徴とする請求項1記載の小動物の位置測定システム。
【請求項3】
荷重計を2個有し、プレートにかかる荷重を支える支柱を1個有し、荷重計2個の力点と支柱1個で三角形が構成できることを特徴とする請求項1記載の小動物の位置測定システム。
【請求項4】
4個の荷重計のうち隣り合う2個の荷重計にのみ、もしくは3個の荷重計にのみセンサが付加されていることを特徴とする請求項1記載の小動物の位置測定装置。
【請求項5】
荷重の計測方法として、片持ちの板バネを形成し、ひずみゲージにより変位を求めることを特徴とする請求項1、2、3または4のいずれか記載の小動物の位置測定装置。
【請求項1】
重心動揺計のように荷重の加わるプレートの周辺部に複数の荷重計を設けて重心を求める装置を用い、その上に置いた飼育ケース内に存在するマウス等小動物の位置情報を得るようなシステムにおいて、飼育ケースを設置するプレートを有し、前記プレートの周辺部にプレートを保持する荷重計を4個有し、前記4個の荷重計の力点を頂点とする四角形の内側に荷重を支える支柱を1個有することを特徴とする荷重測定部を持ち、荷重計より得られる情報を小動物の位置情報に変換するためのリファレンスデータ収集機能と演算機能を有し、得られた位置情報を出力する機能と、蓄積する機能とを有することを特徴とする小動物の位置測定システム。
【請求項2】
荷重計を3個有し、前記3個の荷重計の力点を頂点とする三角形の内側に荷重を支える支柱を1個有することを特徴とする請求項1記載の小動物の位置測定システム。
【請求項3】
荷重計を2個有し、プレートにかかる荷重を支える支柱を1個有し、荷重計2個の力点と支柱1個で三角形が構成できることを特徴とする請求項1記載の小動物の位置測定システム。
【請求項4】
4個の荷重計のうち隣り合う2個の荷重計にのみ、もしくは3個の荷重計にのみセンサが付加されていることを特徴とする請求項1記載の小動物の位置測定装置。
【請求項5】
荷重の計測方法として、片持ちの板バネを形成し、ひずみゲージにより変位を求めることを特徴とする請求項1、2、3または4のいずれか記載の小動物の位置測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−2715(P2009−2715A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162031(P2007−162031)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(591155242)鹿児島県 (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(591155242)鹿児島県 (56)
【Fターム(参考)】
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