説明

小型マルチバンド・アンテナ

【課題】本発明は、小型マルチバンド・アンテナに関する。
【解決手段】小型マルチバンド・アンテナは、グラウンド面(3)に実装した箱形形状を有する第2の導電アーム部(11)と、第2の導電アーム部に接続された第1の導電アーム部(10)とを含む第1のダイポール型素子(1)を有し、第1及び第2の導電アーム部は、個別に設けられ、第2の導電アーム部を拡張した前記グラウンド面に、スロット型の第2の素子(2)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型マルチバンド・アンテナに関し、より詳しくは、DVB−Hフォーマット(Digital Video Broadcast Handheld)の地上デジタル・テレビジョン(TNT)信号の受信機であって、PDA(Personal Digital Assistant)の様な、携帯型装置となり得る受信機に接続可能な小型アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、PDA又は同様な携帯形装置の多くが備えるマイクロプロセッサの計算パワーにより、これら装置での受信が可能である。DVB−H規格は、H264と呼ばれる映像のデジタル圧縮の新しい規格を利用し、この新しい画像フォーマットを、UHFバンド(470から870MHzの周波数帯)又はLバンド(1.5GHz付近の周波数帯)でのモバイル・アプリケーションのために使用することを勧告している。さらに、上記携帯端末は、GSM900型(Global System for Mobile communications 900MHz)のセルラ網を使用して通信可能でなければならない。結果、対象とするUHFバンドは、選択フィルタによって、470から700MHz帯に制限されなければならない。
【0003】
この種の端末に使用可能なアンテナは、よって、十分に小さく、かつ、上記制約に適合するものでなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、DVB−H受信の観点から広帯域であり、Lバンドへのアクセスのためマルチバンドであり、かつ、GSM部分をフィルタリングする、PDA又は携帯端末に対するアクセサリ形式の小型マルチバンド・アンテナを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
よって、本発明の目的は、グラウンド面に実装した箱形形状を有する第2の導電アーム部と、第2の導電アーム部に接続された第1の導電アーム部とを含むダイポール型素子により構成され、第1及び第2の導電アーム部が個別に設けられ、前記第2の導電アーム部を拡張した前記グラウンド面に、スロット型の第2の素子が設けられている小型マルチバンド・アンテナである。
【0006】
好ましくは、携帯型端末のアクセサリとしての使用を促進するため、第1及び第2の導電アーム部は、互いに回転する様に実装される。よって、ポケットに簡単に収めることができる小型のものとする様に、第1の導電アーム部を第2の導電アーム部上に収納することが可能になる。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、第1の導電アーム部は、第2の導電アーム部との接続位置において、三角の先細部を有する平面形状であり、三角形状の先細部は、方形又は四角形の部分から伸びている。第2の導電アーム部の特定形状は、最小サイズを維持しながら広帯域動作得ることを可能にする。この様に、アンテナはUHFバンドを対象とするのに適したものとなる。
【0008】
さらに、第2の導電アーム部は箱型形状を有し、前記箱型形状のサイズは、電子カードを挿入するのに適したものである。好ましくは、この電子カードは、DVB−H規格に準拠し、映像ストリームを受信し、携帯端末やPDAに送信することを可能にする回路を少なくとも含んでいる。
【0009】
本発明の他の特徴によると、ダイポール型素子が、インピーダンス整合回路に接続される。このインピーダンス整合回路は、映像ストリームの処理回路とアンテナ間の伝送を最大とする様に最適化される。さらに、インピーダンス整合回路は、UHFバンドの低周波側、つまり、470MHzから700MHzの帯域専用であり、GSMバンド、つまり、900MHz付近において、付加的なフィルタリング機能を実行する。
【0010】
さらに、好ましい実施形態によれば、スロット型素子は、互いに逆向きで実装される2つのU字型スロットを含んでいる。前記2つの共鳴スロットは、ダイポール型素子の第2の導電アーム部の拡張であるグラウンド面に実現される。共鳴スロットは、Lバンド、つまり、ヨーロッパにおいては1452MHzから1492MHz、アメリカ合衆国においては1670MHzから1675MHzにおいて、アンテナ位置での正しいインピーダンス整合を実現する様にサイズが決められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して行う、好ましい実施形態についての以下の記述から明らかになる。記述を簡単にするため、図の同じ要素には同じ参照符号を使用する。
【0012】
まず、図1を参照して、本発明による小型マルチバンド・アンテナの実施形態を説明する。
【0013】
図1Bにより詳細を示す様に、アンテナは、ダイポール型素子1とスロット型素子2によって構成されている。2つの機能は、隣同士ではなく、一方が他方の内部に配置されている。UHFバンドにおいて効果的にするためと、Lバンド信号のインピーダンスを整合させるスロットを組み込むために、必然的に大きなサイズのグラウンド面を使用する。ダイポール型素子は、平面形状の第1のアーム部10を備え、第1のアーム部10は、三角形状で、著しく先が細い先細部10aを含み、先細部10aは、方形部10bから伸びている。求めている広帯域動作を得ることができる最小のサイズを、三角形状の先細部に選択する。
【0014】
図1Aに示す様に、第1のアーム部10は、全長35mmで幅35mmと、特に小型である。この第1のアーム部10は、三角形の先細部の先端位置で、接続素子12により、ダイポールの第2のアーム部11に接続されている。第2のアーム部11は、体積形状であり、より詳しくは、方形又は四角形の箱型形状であり、スロットを設ける平面部が伸びている。素子1の第1及び第2のアーム部は、導電性材料、すなわち、金属又は金属化材料でできている。図1Aに示す様に、第2のアーム部11は、長さ35mm、幅35mm、厚さ16mmの体積形状部と、平面部とを備えている。2つのアーム部10及び11は、軸12で回転する様に取り付けられ、輸送時には、第1のアーム部10を、第2のアーム部11上に収納可能となっている。アンテナは、図1に示す様に、第1のアーム部10が収納されていないとき、使用モードとなる。
【0015】
図1に示す様に、第2のアーム部11は、グラウンド面3上に固定されている。このグラウンド面は、例えば、導電性材料、すなわち、金属又は金属化材料でできている。さらに、図1Bに示す様に、アンテナは、スロット型素子2を含んでいる。より詳しくは、互いに逆向き(ヘッド・トゥ・テイル)で実装される2つのU字型スロット20、21が、第2のアーム部11を拡張する金属面3上に設けられている。このU字型スロットは共鳴スロットであり、Lバンド、すなわち、ヨーロッパでは1452MHzから1492MHz、アメリカ合衆国では1670MHzから1675MHzの帯域において、アンテナ位置にて−10dB未満のS11の値という、正しいインピーダンス整合の提供を可能とする。
【0016】
本発明及び図1Bによれば、箱型形状の第2のアーム部11は、電子カード4を受け入れるサイズで、受け入れる可能な様に実現され、図1Bの箱11から突き出している先端が、PDA又は同様な装置といった携帯端末のコネクタに挿入可能となっている。
【0017】
続いて、アンテナAと、アンテナが受信する映像ストリームの処理回路への入力部に設けられるLNA(低雑音増幅器)との間の伝送を最大にする、インピーダンス整合回路の実施形態について、図2を参照して説明する。このインピーダンス整合回路は、接続点12でアンテナに接続されている。インピーダンス整合回路は、図2に示す様に、アンテナAへの接続点と、LNAの入力部との間に直列に実装される2つのコンデンサC1、C11と、2つの自己インピーダンスL1、L11とを含み、自己インピーダンスL1は、コンデンサC1への入力点とグラウンドを接続し、自己インピーダンスL11は、コンデンサC11への入力点とグラウンドを接続している。
【0018】
このインピーダンス整合回路は、UHFバンドの最低部、つまり、470MHzから700MHzにおいて、LNAとアンテナ間の伝送を最大とする様に、かつ、900MHz付近のGSMバンドでの付加的なフィルタリング機能を提供する様に、最適化されている。
【0019】
図に示す実施形態において、インピーダンス整合回路の素子は、以下の値を持つ。
C1=2.22pF、C11=12.4pF
L1=19.8nH、L11=10.8nH
【0020】
続いて、本発明の枠組みで使用され、アンテナの第2のアーム部11で形成される箱に挿入可能である電子カードの実施形態について、図3を参照して説明する。この電子盤4は、70mmから80mmの長さと、この箱に適合する35mmの幅を有している。この電子カードは、この様に、アンテナの出力部に、恐らくは、上述したインピーダンス整合回路経由で接続されるLNA40を含んでいる。この回路40は、UHFバンド及びLバンドで動作するチューナ41に接続されている。チューナ41の出力は、復調器DVB−H42に送られる。復調器の出力は、SDIO(セキュア・デジタル入出力)インタフェース回路43に送られる。このインタフェースは、SDIOコネクタ44により、PDAの様な携帯端末に映像ストリームを送ることを可能にする。
【0021】
図1及び図2を参照して記述したインピーダンス整合回路を有するアンテナをシミュレートした。回路シミュレータADS2004を、アンテナとLNA間の伝送を最大にするインピーダンス整合回路の値の最適化及び選択のために使用した。電磁シミュレータIE3Dを、前記ソフトウェアで最適化したインピーダンス整合回路に関連付けられているアンテナの利得、効率曲線及び放射パターンを、周波数の関数として得るために使用した。シミュレーションにより図4から7の曲線と、図8の放射パターンが得られた。
【0022】
図4の曲線は、図3の電子回路のLNAとアンテナとの間の伝送損失が、周波数の関数として変動する様子を示している。これら損失は、DVB−H規格で使用される全UHFバンド(つまり、470MHzと700MHzの間)に渡り最小化及び平滑化されていることが分かる。しかしながら、900MHz付近に大きな損失が見られ、これは、インピーダンス整合回路が、この周波数でフィルタ機能を実行していることを表している。
【0023】
図5は、アンテナ利得を周波数の関数として示したものである。この曲線から、UHFバンドで、ダイポールに似た動作(理論的にダイポールは2.17dBの指向性を持つ)をするが、Lバンドにおいては、より強い指向性を示すことが分かる。利得曲線は、1.6GHzで5dBiに近づき、より強い指向性の放射パターンという意義がある。1.6GHzでの指向性は、放射パターンが特定方向において加算される、2つの放射スロットのネットワークを配置したという事実により説明される。
【0024】
図6は、図2を参照して説明したインピーダンス整合セルを有するアンテナシステムの効率を示している。この場合、60%より良いアンテナ効率が、DVB−H規格の全UHFバンドに渡り達成され、90%より良いアンテナ効率が、DVB−H規格(ヨーロッパ及びアメリカ合衆国)の全Lバンドに渡り達成されているが、900MHz付近のGSMバンドにおいては、20%未満の効率となっている。よって、これは、GSMバンドにおけるフィルタ機能を反映している。
【0025】
図7は、2GHzまでのアンテナのインピーダンス整合を、つまり、50オーム負荷のときの、1GHz以降における、インピーダンス整合回路及びアンテナのS11パラメータの値を示している。Lバンドにおいて、−10dB未満のインピーダンス整合が得られている。このインピーダンス整合は、グラウンド面において、その長さ及び幅を、ヨーロッパのLバンドである1452MHzから1492MHzと、アメリカ合衆国のLバンドである1670MHzから1675MHzの両方を対象とする様に最適化したスロット20及び21の共鳴によるものである。
【0026】
図8は、図1のアンテナの600MHz及び1600MHzでの放射パターンを示している。
【0027】
600MHzでの形状は、そのヌルとなる軸が、アンテナの長手方向軸に対応している、典型的なダイポール(トロイダル)のものである。
【0028】
1.6GHzでの形状は、“金属の箱”近くのグラウンド面上のスロット位置によって生成される非対称構造と、2つのスロットのダイアグラムの組合せの両方によるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による小型マルチバンド・アンテナの上面図(A)と斜視図(B)である。
【図2】インピーダンス整合回路の実施形態を示す図である。
【図3】本発明のアンテナで使用される電子カードを示す図である。
【図4】電子カードの入力部に設けられる増幅器と、アンテナとの間の伝送損失を示す図である。
【図5】本発明によるアンテナの利得を、周波数の関数として示す図である。
【図6】インピーダンス整合セルを有する図1のアンテナの効率を、周波数の関数として示す図である。
【図7】図1のアンテナに従うアンテナの、50オーム負荷で2GHzまでのインピーダンス整合を示す図である。
【図8】図1のアンテナの、600MHzと1600MHzそれぞれの放射パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ダイポール型素子
2 スロット型素子
3 グラウンド面
4 電子カード
10 第1のアーム部
10a 先細部
10b 方形部
11 第2のアーム部
12 接続素子
20、21 スロット
40 LNA
41 チューナ
42 復調器
43 SDIOインタフェース回路
44 SDIOコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラウンド面(3)に実装した箱形形状を有する第2の導電アーム部(11)と、
第2の導電アーム部に接続された第1の導電アーム部(10)と、
を含む第1のダイポール型素子(1)を有し、
前記第1及び第2の導電アーム部は、個別に設けられ、
前記第2の導電アーム部を拡張した前記グラウンド面に、スロット型の第2の素子(2)が設けられている、
小型マルチバンド・アンテナ
【請求項2】
前記第1及び第2の導電アーム部は、互いに回転する様に実装されている、
請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
第1の導電アーム部(10)は、方形又は四角形の部分(10b)から伸びており、第2の導電アーム部と接続する先細部(10a)を含む平面形状である、
請求項1又は2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記箱型形状は、電子カード(4)を挿入できるサイズである、
請求項1又は2に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記ダイポール型素子が、インピーダンス整合回路に接続されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記インピーダンス整合回路が、フィルタリング機能を実行する、
請求項5に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記スロット型素子(2)は、互いに逆向きで実装される2つのU字型スロットを含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項8】
UHFバンド又はLバンドで動作し、GSMバンドでフィルタリングする、
請求項1から7のいずれか1項に記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−507443(P2009−507443A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529666(P2008−529666)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050828
【国際公開番号】WO2007/028918
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】